窓
際
族
都 市 ス ト ッ ク に 生 活 景 を
0021
窓 都
際 市
私は防潮堤
ス
この街の最前線
ト
族 ッ
ク
街を波や風から守っている
命を守る大事な仕事
でもそれは遠い昔の話
に
今は私より前線で戦う後輩がいる
生
私にだってまだできることはあるのに
もう何も出来ないと思われている
置かれた場所に咲きなさい
私は今置かれている場所で
活
どんな花を咲かすことができるだろうか
また街の人と関われる日が来るだろうか
景
を
埋 め 立 て に よ っ て 、 波 か ら 人 の 生 命・財 産 を 守 る と い う 本 来 の 機 能 を 失 っ た防潮堤。人々に忘れ去られた「窓際族的な防潮堤」である。このよう な忘れ去られた土木構築物は日本全国にあるだろう。今まで見過ごして きたようなストックに目を向けると、そこには日常生活の延長の場とし て新しい生活景を描くことができる可能性を秘めている。 窓際族の防潮堤が再び都市の生活景を生み出すまでの提案である。
01 窓際族
[ ベルコン跡 ]
[ 風速観測塔跡 ]
[防潮堤跡 ]
本 で は ス ク ラ ッ プ ア ン ド ビ ル ド の 文 化 は 根 強 く、街 の 風 景 や人々の記憶の一部になっている 建 築 で さ え も 取 り 壊 さ れ る。一 方 で 海 外 に 目 を 向 け る と、フ ラ ン ス では駅舎を利用したオルセー美術 館 や、オ ー ス ト リ ア に は ガ ス タ ン クを商業施設に改修した例がある。 いずれの建築もスクラップアンド ビルドを免れたことで 街のアイデ ンティティーとして再復興を果た し た。持 続 可 能 な 都 市 を 形 成 す る ためにも都市ストックの効果的活 用方法を模索するべきである。 ま た、昨 今 の 都 市 の 生 活 景 に は 暮 ら し の 場 所 が 見 ら れ な く な っ た。 こ の よ う な 場 所 は 人 が 都 市 の 中、 或いは社会の中で生きていく上で、 自身を客観的に位置付けることが で き、人 と の 繋 が り や 社 会 と の 繋 がりを感じられる場所になると考 える。 都市の中には人々から忘れられて しまったような土木や建築が多く ある。 そ の よ う な 場 所 を 取 り 上 げ、そ こ に新たな生活景を設計することで、 人の生き方や建築の在り方を思考 する。
提 案 は 対 象 敷 地 を 兵 庫 県 神 戸 市 垂 水 区 平 磯 埋 立 地 と す る。 特に敷地内に存在する防潮堤跡を 設 計 対 象 と し、人 や 生 き 物 の 暮 ら しの場所へと変えていくことを目 的 と し て い る。こ の 防 潮 堤 跡 は、 波から人の生命や財産を守るとい う 機 能 を、埋 め 立 て と い う 行 為 に よ っ て 奪 わ れ、人 々 に 存 在 を 忘 れ ら れ た、あ る い は 認 知 さ れ て い な い場所である。 国 道 2 号 線 と 大 阪 湾 に 面 す る 平 磯 埋 立 地。そ の 二 つ の 間 に あ る 不 思 議 な 防 潮 堤 の 痕 跡。平 磯 埋 立 地 は汚水処理場、多目的グラウンド、 緑 地 公 園、海 づ り 公 園 が あ る 市 民 生 活 の 場 所。そ の 埋 立 地 と 2 号 線 の 間 に あ る の が こ の 防 潮 堤。役 割 を引退した今も形をそのままに存 在 す る。背 後 に は ア パ ー ト や 住 宅 が 建 て ら れ て い て、2 号 線 側 か ら 間はかつての
はこの防潮堤の姿を確認できない。 防潮堤と埋立地の
海 岸 線 を 可 視 化 し て い て、開 発 行 為や都市計画を批判している気が
[ 防潮堤断面 ]
す る。線 引 き に よ り 生 ま れ た 不 思
至 大阪湾
至 国道2号
誰も立ち入れない溝 線引きにより 生じた不思議な空間
議な空間。 埋立地 アパート・住宅 が建てられている
[ 震災遺構 ]
日
本
植生が生まれている 防潮堤 昔の海岸線
0 0 1 暮 ら す 場 所 t o 都 市 の 窓 際 族
忘れられた建築と 世の中の片隅で起こる話 都 市 ス ト ッ ク
都市の発展と安全のために作られた 建築・土木構築物
しかし今は機能を失い、風景となって影をひそめる
02 窓際族
03 窓際族
04 窓際族
し、なんとか大きな海を渡っていくのだ し、 し、なんとか生きてますっ
禍福は糾える縄の如し。
していきたいと考える様になった。
セリみたいな場所かもしれないが、大事に大切に
れられた都市の窓際族はある。埋立地の中ではパ
している感じがする。そんな敷地の片隅に忘れら
と、なんとか折り合いをつけて前にまだ進もうと
市民の活動がこの埋立地で行われているのを見る
て 感 じ だ ろ う。施 設 は 全 部 く た び れ て い る け ど、
平磯埋立地も
ろう。
し、
たい。そしたら次に見えてくるものがあるだろう。
のではなくて、時間が掛かろうとも、まず理解し
たり。自分にとって難しいことは、すぐに諦める
とに繋がっていたり、生きていくことに必要だっ
たい事だけど、それを受けいれる事が成長するこ
な矛盾した話はよく起きる事だろう。受け入れが
別に都市に限った事ではなくても、人にもこん
は障害となるだろうが、 NIMBY がなくな NIMBY れば、普通の生活すら送れなくなることもある。
て い る。確 か に 快 適 な 市 民 生 活 を 送 る 上 で
関わらず、市民の目の届かないところに建設され
施設は私たちの市民生活を支える根幹であるにも
感じられる。 1974年に稼働した処理場は現在ま で休むことなく働いている。この様な NIMBY の
軽に利用できる様にするといった、政策的配慮が
︵ Not in My Back Yard ︶に該当する下 NIMBY 水処理場を埋立地に作り、余った土地は市民が気
ンド、海釣り公園などが作られている。
隠す様にビオトープ、芝生広場、スポーツグラウ
在している。そしてそれらの施設をまるで
磯埋立地には下水処理のための施設が点
少し色あせた埋立地。
物 事 は 表 裏 一 体 で 何 が 起 き る の か わ か ら な い
02: なぎさの池 01: 垂水処理場
そんなものが感じられる
SITE
P LAN
平磯埋立地
し、逃げてもいいから、歩みを止めないことが大 切なのだろう。
05 平 磯 芝 生 広 場
神戸市の息遣い。
垂水区
08: 海づり公園 06: 東垂水駅 05: 平磯芝生広場 09: 風速観測棟
01 垂 水 処 理 場 01 垂 水 処 理 場
ANALYSIS
兵庫県神戸市
02 な ぎ さ の池 03 水 環 境 セ ン タ ー 04 垂 水 ス ポ ー ツ ガ ー デ ン
07 滝 の 茶 屋 駅 06 東 垂 水 駅
SI T E 01 垂水処理場
SITE
平
SITE:
09 風速観測棟
08 海 釣 り 公 園
N
04: 垂水スポーツガーデン
05 窓際族
00 3 M A R I N
INDUSTRY
豊かな漁場、 明石海峡を 舞台にした生業
パセリな場所
00 1 F I S H I N G
DEBRIS
見過ごされる パセリな場所
木製のベンチ 花壇
都市の窓際族を
バケツ
る漁やタコ壷を使用し一本釣り漁もあるが、
人の行為が淀む。 潮の淀みに溜まる プラスチックゴミ。
潮通しがよくプランクトンや小魚が豊富に集
その形態に大きな変化がなく、食習慣も同様
潮の緩んでいる場所にはゴミが溜まりやすい。
人口増加や産業発展などもあいまって、海水
まる明石海峡は全国でも有数の漁場である。
である。
マイクロプラスチックというワード共に海洋
の汚濁やゴミの増加を引き起こし、海の生き
特に鹿の背と呼ばれる漁場には和歌山や岡山
多い年には 1000 トンの水揚げ量があったが、
ゴミ問題はよく取り上げられるが、実際にそ
物の生息環境を悪化させ、生物多様性の低下
からも真鯛やマダコを取りに船が集まる。
海水温の低下を原因に近年の漁獲量はピーク
の光景を目の前にすると言葉が出ない。
を招く結果となった。
また潮通しの良さから毎年、いくつもの海苔
時の4割程度となっている。
どこから流れてきたのか分からない、大量の
埋立行為は、物流・生産機能強化のためや、
網が海に浮かぶ。須磨沖から明石沖にかけて
各漁協は、資源保護のために週に一度の禁漁
ゴミが海を漂い続け、その下を魚が泳いでい
背後に集積する人の生命・財産を保護するた
ために「パセリな場所」と呼ぶ。これは暮ら
海苔網がはられるが現在はその担い手が減少
日を設けたり禁漁区域を設定している。
く。食卓に並ぶ魚がマイクロプラスチックを
めに、安心安全な国民生活を支えるための行
しの場所がちょうど料理で言うパセリの様な
してきている。
全国有数の明石海峡を舞台にした生業は近年、
食べてしまっている個体でも何も不思議では
為でもある。しかし特にこれからの時代は、
存在であると考えた点から始まる。一皿の中
他にも明石のマダコ漁は全国的にも有名であ
担い手不足や、資源の現象によって不安定な
ないと感じる。ヒトの安心安全を保障するた
自然に対して物質化する行為はより慎重にな
でメインではなく、添えられたものがパセリ
る。2000 年以上前にイイダコを捕獲していた
状況にある。
めには自然の安心安全を保障するところから
らなけらばいけない。
であり、地味ではあるが確かに彩りを添えて
タコ壷が発見され、古代よりタコ漁が行われ ていたことがわかる。マダコ漁については弥 生時代から現代までほとんどが底引き網によ
a
始めなければいけないだろう。特に大阪湾は 埋立地などの整備により、自然海浜、藻場、 干潟などのが縮小、消失すると共に、海水が 停滞しやすい水域が発生している。背後圏の
暮らしの場所へ
柄 青い郵便受
「暮らし」は都市の中に生活景を作り出すこと ができ、そのような生活景は都市の個性や魅 力を創造する一部となると考えた。本計画で は暮らしの場所が都市の中で細やかな魅力を 発する場所であることに注目する。このよう な暮らしの場所の存在を比喩的な表現をする
a
い る。少し地味なパセリな場所は人のアク ティビティの痕跡が滲み出し、確かな安心感
水槽になった側溝 緑のネット a:潮目に溜まる小さなゴミの数々。大阪湾は閉鎖水域のためこうしたゴミの溜まり場があちらこ
竹のトンネル
ちらにできる。
c
b
00 4 W E A T H E R
&
台風や嵐の日。 安心、安全は 都市インフラのおかげ。
a:タコ漁出船の様子。b:タコ漁出船時に掲げる旗。 (旗のない船には禁漁区が設けられている) 。 c:船を陸に上げるための設備。
00 2 S M A L L L I F E 目の前に広がる 大きな海に 小さな命。
人が決まった場所で暮らす。 【暮らす】 寝たり 起きたり 食事をしたり 遊んだり 仕事 をしたり などして 1 日を生きていく。 都市のなかで人の暮らしの痕跡は目立つこ ともなければ、 気にしない人もいる。しかし 「暮 らし」は、ちょうど料理で言うパセリの様な
センキューパセリ
ものな気がする。少し地味なパセリな場所は
食事に添えて出されるパセリ
確かな安心感を得られる。ここに暮らしてい
パセリがある時、ない時 ないと、殺風景で寂しい
いんですよと人々に訴える場所だ。
そこにパセリがいることに気づく
DISASTER は批判できない。神戸市もこの様な状況を鑑 みて、海釣り公園や、須磨海岸、大蔵海岸、 須磨水族園など海と関わりを持てる様な事業 を行なっている。
神戸の海は南からの風が吹くと海が大きく荒
都市の安全や自然の保全保護を両立する様な
れる。大きな波が幾度となく、防潮堤にぶつ
新しい形の都市インフラが求められてる。都
かる。 「ドゴーン!」とすごい音を立てながら
市インフラや、土木建築は絶対的な悪では無
ぶつかってくる。そのたびに思うのはこの防
くて、私たちの活動を支えてくれている側面
潮堤がなければ、大変な被害が街に出るだろ
を忘れてはいけない。その規模が大きいだけ
うな。 。 。ということだ。特に神戸から明石に
に自然破壊行為の様に映る都市設備もあるか
かけての海岸はもともと砂地で、波の浸食を
もしれないが、そういう場所こそ魅力的な力
受けやすい土地柄だった。現在の神戸や明石
を秘めていそうなものである。ストックの可
に自然海浜が少ないのはその様な地理的背景
能性を広げる様な設計をこれからの建築では
がある。神戸には自然の海がないと一方的に
考えるのだろう。
a
DITCH AQUARIUM
を得られる。 【住む】
a
b
00 5 S M A L L
SPACE
豊かな暮らしの 空間と時間は 小さな場所にも。
a:体長 3cm カワハギの幼魚
00 6 N A T U R A L
a:Site drawing
&
ARTIFICIAL
アニミズム。 アメニモマケズ。 カゼニモマケズ。
大きい海を目にすると、ついつい忘れてしま
わっていくが、何か別の、安心できて心が落
本設計で対象とする防潮堤の溝は幅が広いと
うが写真の様な体長3cm にも満たない魚も海
ち着く様な暮らす場所があるのではないだろ
ころでも3 m 程しかない。残されているのは
あらゆる現象・事物に霊魂の存在を認める考
の中では泳いでいる。もちろんこの魚より小
うか。この様な場所は誰かに作って貰える様
垂直方向と、300m という防潮堤の長い距離
え方。
さい生き物も。生き物が自分自身の成長に合
なものでも、誰かが作れる様なものでも無い
だけである。
熊本県上色見熊野座神社。自然と灯籠が融合
わせて暮らす場所を変える様に、人にもその
のかもしれないが、本設計はそこを目指して
写真は幅 1600mm ぐらいの登山道だが、周り
時々の暮らす場所が本来あるのかもしれない。
いる。ヒューマンスケールに従った未来の暮
a:台風時の防潮堤の様子。b:防潮堤後に水が溜まる様子。埋立地に溜まった雨水の排水は防潮
の自然などの様々な要素によって魅力の詰
間と空間の為に必要な要素を複合させて行き
然と人が対話をしながら形成していく様な場
そこにある自然からも人からも受け入れられ
社会的なステージはもちろん成長と共に変
らしの場所を志向する試み。
堤後を使って行われている様だ。
まった空間となっている。豊かな暮らしの時
小さな場所に変化をもたらしたい。
所はいつまでも受容され続けるのだろう。
る建築を考える
【アニミズム】
して美しい姿をしていた。長い年月を経て自
06 窓際族
間軸を伴って場所として存在することができる。
ば こ れ ま で 一 つ の 建 築 で は 扱 え な か っ た よ う な、長 い 時
な っ て し ま う 傾 向 が あ る。し か し そ の 時 間 の 利 を 活 か せ
何かを想起する。結節点。埋立地内の所作が交わ node. り、衣 れ の 音 が す る。こ こ を 起 点 に ア ク テ ィ ビ テ ィ が
れ て い る。
散歩をする人、体操をする人、釣りをする人、スポー 始 ま る。暇 潰 し に 眺 め て い る と、人 影 が 防 波 堤 を 浸 し て
磯 埋 立 地 内 に は 様 々 な ア ク タ ー で
ツ を 教 え る 人、漁 業 関 係 者、配 水 場 処 理 施 設 で 働 く 人、
光が揺れている。でも消えない光を見るんです。
い も す る。太 陽 の 光 が 水 面 を ゆ ら ゆ ら と 照 ら す。一 筋 の
少し高い所から世界を見る。海が遠くにあっ view point. て、広 が っ て い る。ほ ん の 少 し 波 音 が 聞 こ え て、潮 の 匂
みることができる。橋物語が生まれるんです。
た か な。な ん で も な い、誰 か の 時 間 に 少 し 想 い を は せ て
溝 の 間 を 渡 す た め に 橋 を か け る。埋 立 地 に 向 bridge. か う 時 に 誰 か と す れ 違 う。よ く 釣 れ た か な。ヒ ッ ト 打 て
考え、それらをソースにしながらデザインを行っていく。
所 作 を 内 包 す る 建 築 を 作 る た め に、6 の プ ロ グ ラ ム を
れると考える。
築 を 作 る こ と で、こ の 場 所 に し か な い 新 し い 生 活 景 が 作
域 に 住 む 人。こ の よ う な 人 達 の 所 作 を 内 包 す る よ う な 建
ス ポ ー ツ を し に 来 る 子 供、公 園 を 清 掃 す る 人、そ し て 地
秘めている。
延長の場として新しい風景を描くことができる可能性を
ま で 見 過 ご し て き た よ う な ス ト ッ ク に 目 を 向 け る と、そ
な 忘 れ 去 ら れ た 土 木 構 築 物 は 日 本 全 国 に あ る だ ろ う。今
こ こ の 人 々 の 所 作 に よ っ て 色 付 け さ れ て い く。こ の よ う
全長 300m に及ぶこの防潮堤は、 6 つのプログラムに よ り 新 た な 日 常 を 描 き 始 め る。そ こ に 内 包 さ れ る 空 間 は
です。
み 出 し て い く。材 料 を 集 め て、こ の 防 波 堤 を 作 り 込 む ん
新 し い 場 所 を 自 由 に 作 る。こ こ に 来 る 人 が こ の グ grid. リッドを起点にしながら自分たちなりの場所や空間を生
ことは、トンネルの中で何かを思った証拠なんです。
見 出 す。ト ン ネ ル を 抜 け た 先 に 何 か を 感 じ ら れ る と い う
を 覚 え た り す る。段 々 と 慣 れ て き て、そ な 中 に 楽 し さ を
空 間 を 明 確 に 分 け る。歩 い て い る と ふ と 全 く 違 tunnel. う 世 界 に 入 る。今 ま で の 環 境 と は 違 っ て ど こ か に 違 和 感
いくのが見えるんです。
者なのか。
建 築 家 の 職 能 と は な ん だ ろ う か。そ し て 建 築 と は 一 体 何
人 で あ る。諸 行 無 常。是 の 世 界 が 空 と 表 現 さ れ る 中 で、
な い が、不 確 か な 情 勢 の 都 市 で 生 き て い く 様 子 は ま る で
本 卒 業 設 計 は こ の コ ン テ ク ス ト に 注 目 し、暮 ら し の 場
テンシャルがこの防波堤にはある。
た。こ の よ う な コ ン テ ク ス ト を 受 け 継 ぐ こ と が で き る ポ
五 感 で 海 を 感 じ ら れ な く な っ た。さ ら な る 埋 め 立 て が 行
や う ね り、潮 の 満 ち 引 き に 対 し て の 感 覚 は 鈍 り、街 か ら
い 止 め る こ と が で き た。一 方 で 海 に 対 し て の 感 覚、波 音
に よ り、地 域 住 民 の 生 命 や 財 産、そ し て 海 岸 の 侵 食 を 食
人、一 人 の 人 生 の 時 間 は 儚 く 短 い。建 築 は そ の 受 け 皿 と
node
われ、防波堤は機能を失い海とは遠い存在になってしまっ
tunnnel
所 を 作 る こ と を 試 み た。こ の 防 波 堤 は 絶 対 的 な 存 在 で は
grid grid tunnel
node gate
し て 成 立 し な け れ ば な ら な い。こ の 防 波 堤 が で き た こ と
何 か を 潜 る。そ れ は と て も 新 鮮 な 行 為 だ。次 に 広 gate. が る 世 界 へ の 期 待 や、不 安 も あ る。逆 も あ る だ ろ う。過
耐用年数の長い土木建築は﹁人﹂との関わりが希薄に
gate
こ に は 多 く の 可 能 性 が 含 ま れ て い る。つ ま り 日 常 生 活 の
去 を し ま っ て お く た め に も 使 え る。そ う や っ て 門 を 開 け
view point
たり閉めたりしながら進むんです。
平
view point bridge
所 作 を 内 包 し て い く 設 計 6のプログラムをデザインソースとする。
bridge
0 0 2 actor program
暮 ら す 場 所 t o 都 市 の 窓 際 族
忘れられた建築と 世の中の片隅で起こる話 そして新たな日常を描き、生活景となる。
窓際族は再び不確かな都市の中で何かを掴む。
07 窓際族
Program1 / シャボン玉と煙草のブリッジ
910
910
5460
3640
国道からはスムーズにアプローチできる階 段で防潮堤を超えていくことを意識する。
1800
境界を渡る
防潮堤によって橋を支え、構
埋め立て地に対して直交に
造体としての機能をもたらす。
降りる階段は、海だった場 所へ降りることへの畏怖。
断面図 Scale=1:50 防潮堤と呼応するようにアールを掛けた木材は、 元々の海岸線を埋立地に反射させる。
Section S=1:100
相反するものが繋がる
N
Plan S=1:100
微妙な隙間には暖かな光景が広がる 08 窓際族
Program6 / 月とコーヒーのトンネル
455
910
445 455
1350
1350
水平な屋根が防潮堤に蓋 をする。上からは見えな
2350
い部分が生まれる。
南側の屋根の開口によっ て暗がりのトンネルに日 光が差し込んでくる。
Section S=1:100
誰もいない時でもそこには誰かがいた跡が残る
N
Plan S=1:100
屋根の下でゆっくりと目の前のものと向き合う 09 窓際族
Program2 / 安心な僕らのゲート
幅の太いゲートは明確に領 域を分けるきっかけとなる。
窓から見える景色に誰かのアクティビ ティが混入し、その変化を楽しむ。ま るでそれはかつての海のようだろう。 2000
防潮堤の屈折を利用して、 先へのつながりを意識する。 のスペースにパセリな場所 が広がる。
2000
デッキ通路の両側 900mm
Elevation S=1:100
人も建築も色々な節目を迎える
ゲートとゲートの間で安心する
N 10 窓際族
Program3 / 海を渡るビューポイント
木々と建物に囲まれ、防潮堤の上空 までもが都市の隙間になっているこ
かつて海だった場所に立ちながら
とを感じる。
2520
2520
約 200 メートル先の海を眺める。
埋立地側と元々の海岸線側を交互に 登る階段によって境界を編むように
520
2520
2520
10600
して人のアクティビティが生まれる。
910
455
1820
455 455
3640
3640
3640
3640
3640
4095
26390
登って、海の音、都市の音を聞く
海が見えないところにも いい時間と場所が。
N 11 窓際族
Program4 / 起きぬけのグリッド 910mm の親しみある寸法でグ リッドを構成し、人が自由に棚 板を設置することを促進する。
防潮堤までの隙間を設け防潮堤 内で完結せず、そのアクティビ ティを周辺に享受していく 910
910
500
590
910
910
450
1000
1000mm の軒が出ることで、人 や物をしっかりと風雨から守る。
Plan S=1:100 910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
910
Section S=1:100
910
Elevation S=1:100
座ったり、ものを置いたり 防潮堤の中の景色はここから始まる
N 12 窓際族
Program5 / 衣擦れのノード
埋立地側からのびる床。元々の土地 側から伸びてきた梁との交錯。活動 が交錯し、両側に拡がっていく。
910
2730
2730
上部を斜めにカットした2丁合わせ の柱で梁を挟み元々の土地から海側
4055
防潮堤に再び人影を
2245
530
4585
へと伸びていくイメージを持たせる。
隙間を持たせることで、断面 的なつながりを生む。防潮堤 の中の空気が上部に引き込む。
Section S=1:100
Plan S=1:100
それぞれの情報交換が行われる
N
13 窓際族
窓 都
ス
際 市
私は防潮堤
ト
ク
族 ッ
は
井
ずっと世界の片隅で生きていた。
の
明日の私もまたあなたといるだろう。
一歩ずつ、与えられる建築から
与える建築へと変わっていけたなら
あなた達となら生きていける
そう思える人がいるだけで
私は幸せなのかもしれない
けっして腐ることなく
誰かのために私はこれからもここに
小さな煙をあげる
中
の
蛙