Yushi Kume _ Master's Portfolio

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DISLOCATION ISM 断層主義

時間を感覚可能にする断層的建築について

久米雄志


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DISLOCATIONISM 断層主義 時間を感覚可能にする断層的建築について 久米 雄志 YUSHI KUME 指導教員 西沢立衛教授 平倉圭准教授

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図 0-1 大正噴火後の桜島。( 山口鎌次撮影 )

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図 0-2 ロバート・スミッソン<部分的に埋められた小屋> (Alex Gildzen 撮影 )

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図 0-3 1885 年セントラルパーク。北西から見下ろす。

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図 0-4 東高島駅周辺。うっすら残る路線跡。埋め立てにより取り残された場所。

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CONTENTS 1. 序論 1-1. 本研究の動機 1-2. 背景 1-2-1.location 1-2-2. 先行形態論 1-2-3. 空間人類学 1-2-4.location の意味の喪失 1-3. 目的 1-3-1. 断層をみる 1-3-2. 断層が内包する時間 1-3-3. dislocation 1-3-4. 断層的建築

2. 事例研究 2-1. ニューバビロン ( コンスタント・ニーヴェンホイス ) 2-2. スパイラル・ジェッティ ( ロバート・スミッソン ) 2-3. インスタント・シティ ( アーキグラム ) 2-4. 事例考察 2-4-1. 韻を踏む 2-4-2. 地層的時間と共鳴する境界面を構築する 2-4-3. 予感を持たせる 2-4-4. つなぎ合わせる 3. ケーススタディ 3-1. 時層建築 溶岩に失われた大地の再考 ( 卒業設計 ) 3-2. 周縁を内包する場所 廃棄が形作る新しい文化の発信地 ( 藤原スタジオ ) 3-3. LIVE COMPLEX 同時多発的文化拠点 ( 大西スタジオ ) 3-4. Landscape architecture escape from the ground.( 西沢スタジオ ) 3-5. ケーススタディ考察 3-5-1.「dislocation」における場所の再解釈 3-5-2.「断層的建築」に表れる過剰性、暴力性 3-5-3.「断層的建築」が内包する運動性

4. 結論

[ 参考文献 ] [ 図版一覧 ]

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1. 序論

図 1-1 エルサレム - 紀元前の遺跡の上に重なる道路とペデストリアンデッキ

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dislocation- 名詞 : 断層、転移、脱臼、食い違い… 1-1. 本研究の動機 地盤がずれた証である断層をみると、その場所の地層的時間 1 が一目瞭然となる。( 図 1-2) エルサレ ムでは紀元前の遺跡に覆いかぶさるように新しい街が重なり、その場所が地形とともにどのような 歴史を辿って来たかが一瞬でわかる。( 図 1-1) しかし、日本においてそのように時間が瞬時に感覚 可能となる場所はごく稀である。 建築史家、陣内秀信は『東京の空間人類学』( 図 1-3) において古地図を持って歩くことで、東京の 地形や歴史がいかにして現在に引き継がれているかわかることを示した。それは都市の中に埋もれ た時間を浮き彫りにする研究であった。2 このような研究の背景には、日本が近代以降、時間を無視 して空間を作ってきたことがある。次々とスクラップ & ビルドを繰り返してきた日本の都市において、 どのようにして時間を見出していくかが陣内たちの挑戦であった。 陣内は著書において「「都市組織」を読めば、どのような順番で都市ができたのか想像できる」3 と 述べている。「都市組織」とは地形といった大地の要素から人間の営みといったものまでが織り込ま れて都市ができているという考え方である。 地層的時間から人間の営みの時間までを巻き込み、断層のように一目瞭然とその場所の時間が感覚 可能となる建築を作れないだろうか。深遠な時間から目先の時間まで、あらゆる時間をつなぎ合わせ、 予感させる建築は、人間の枠にとらわれず、より解放された建築につながるはずである。以上が本 研究の動機である。 本論では、断層が持つ可能性に着目し、断層のような建築がいかにして成り立ち、何をもたらすか に迫っていく。

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図 1-2 伊豆大島の地層切断面


1-2. 背景 断層は英語で「fault( 欠点 )」あるいは「dislocation( 脱臼 )」と記述される。ここで私は断層的状 態を表す言葉として「dislocation」を採用する。本項では、「dislocation」を考える前提として重要 な「場所 =「location」」が持つ本来の意味とは何かを示す。

1-2-1. location まず「location」について考えてみる。 「location」は直訳すると「場所」である。ニュアンスとしては以下のようになる。 location -位置、場所、所在地、ありか 場所柄のような環境を含めた場所 ( 空間を含む ) このように考えると「location」には時間の概念が含まれていることがわかる。4 ここで「場所 =「location」」が本来持つ時間性に着目した概念として、中谷礼仁の「先行形態論」、 陣内秀信の「空間人類学」を参照する。

1-2-2. 先行形態論 5 建築史家、中谷礼仁は『セヴェラルネス + 事物連鎖と都市・建築・人間』( 図 1-4) において次のよ うに述べている。 「場所とはすでに固有な意味や自然・都市・建築的スケールでの特異な形態が存在している経緯を示 している。」6 中谷は著書の中で、かつてあった古墳の形態が、都市に対して輪郭を残しながら持続している様を 紐解いていく。( 図 1-5,6) このように都市に残り続け、影響を与える形態を中谷は「先行形態」と 定義した。

図 1-3

図 1-5 古墳の形態を引き継ぐ街区

図 1-6 古墳の形態が残る

古墳跡によるカーブが残る

図 1-4

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中谷はさらに「先行形態」について考えを深めていく。消滅してしまった都市である広島に「先行形態」 はあるのか。彼の研究によると、広島が復興後たどり着いた都市計画道路は、近世の道にほぼぴっ たりと寄り添っていた。 ( 図 1-7) このように「先行形態」は都市において、連綿として残り続ける のである。 また、 「先行形態」を意識した例として、丹下健三の広島平和記念公園の計画を取り上げている。 ( 図 1-8) この計画を中谷は「都市の深い層での転用」7 と述べ、さらに丹下の言葉に着目して以下のよう に述べている。「構造を改造するのではなく、構造に「衝撃を与える」と表現している- ( 中略 ) - つまりは先行形態に衝撃を与え、転用し、新しい場所を生み出すことに成功した。」8

1-2-3. 空間人類学 先述した『東京の空間人類学』において、陣内はてんでバラバラのように思える複雑な東京でも、 緻密な地形に対する計画があることを発見した。彼はこのような地形、水、都市、建築、人間の生 活などの総体を「空間人類学」と呼称し、都市の時間を掘り起こす研究を行った。 別の著書の中で陣内は「建築に、そして都市に、さらにテリトーリオに受け継がれた時間の集積、 歴史の重なりを掘り起こし、それに今日的な価値を与え、イメージ豊かに生活環境を作ることが重 要なのである。」9 と述べており、新しく物を作る上でのヒントを与えている。

1-2-4. location の意味の喪失 これらの研究は、本来「場所 =「location」」は地形、地質といった地層的時間を内包していることを 示している。そして、建築をつくる上で陣内が述べていることについて考えるとき、それは地層的 時間もとりこむことを示唆している。しかし、いざ建築をつくるとなると、往々にして地層的時間 を忘れ、人間中心主義の「location」となっていることが多い。これは本来の「location」の意味の 喪失とも言える。10

図 1-7 今の道と過去の道。 14

いくつか重なる部分が存在する。

図 1-8 広島平和記念公園模型。 原爆ドームへと伸びる軸線。


1-3. 目的 以上のように建築をつくる時、「location」の意味を簡易的にしてしまう傾向に対して、建築に地層 的時間を取り込むことを提案する。そうすることによって、その場所の時間が真に感覚可能となる のである。本項では、地層的時間が一目瞭然とである断層をみることによって、本研究の目的であ る「dislocation」を形成すること、それによる「断層的建築」の出現を追っていく。

1-3-1. 断層をみる 断層について考えてみる。断層は明らかにその場所から浮いた存在である。そして、浮いているが 故に、地層的時間の認識を促す。( 図 1-9) 時間を引き継ぎつつ、浮いてしまった状態を作ることによっ て、その場所の時間が感覚可能となる建築が生まれるのではないだろうか。

1-3-2. 断層が内包する時間 時間の観点からより詳しく考えてみると、断層には二種類の時間が内包されていることがわかる。 第一に、断層は地層的時間を明らかにする。それは、その場所の深遠な時間をあらわにする。決し て表層の時間のみにとらわれず、地層的時間を内包する。 第二に、断層は周囲から対比された状態である。すなわち現在と過去の対比によって明確に時間が 感覚可能となる。 すなわち、断層とは、 ①層的時間 ②対比的時間 の両方の時間を内包する。( 図 1-10)

図 1-9 断層のイメージ

層的

対比的

ハレとケ

図 1-10 層的 / 対比的 新旧

時間表現 15


またケヴィン・リンチは『時間の中の都市』( 図 1-11) において、変化の視覚化の手法として以上の 二つの時間を示している ( 図 1-12,13) と同時に、層的時間を視覚化 ( 感覚可能 ) にするには、新し い時間の層 ( 未来に向けられた層 ) を作り出さなければいけない、と述べている。11 この際、大抵 は新しい「人間にとっての」時間の層となってしまうことは前述したとおりである。ゆえにこの時、 地層的時間すらも取り込んだ新しい時間の層でなくてはならない。

1-3-3. dislocation 以上のような断層的状況を「dislocation」と呼ぶとする。 1-2 で述べられている「location」の本来的な意味を建築に取り込み、新しく作られるものは 「dislocation」でなくてはならない。 「dis-location/ 離れた - 場所」は人間中心的になってしまった「location」に対して、人間から離れ た時間すらもそのまま建築に取り込むことを意識している言葉である。前項より「dislocation」は 次のような特徴を持っていると予想される。 ①地層的時間を浮き彫りにし、取り込む ②対比的に時間を表す ③未来を暗示する ( 起こっていない事象を表す )

図 1-11

図 1-12 イギリスのエイブベリーの村。中世に起源を持つ村。 先史時代の環状の土塁、古墳等に囲まれて生活が営まれる。

図 1-13 ローマのウェスパシアヌス神殿を描いたピラネー 16

ジの銅版画 (1756) -巨大な遺跡と街の対比が描かれる。


1-3-4. 断層的建築 「dislocation」の総体として「断層的建築」は構築される。すなわち「断層的建築」とは、地層的時 間を内包し、周囲と対比し、それらが未来に向けられる ( 新しい時間の層 ) 建築であり、それによっ て時間が感覚可能となる。 以上、 「location」から「dislocation」、そして「断層的建築」についてまとめると以下のようになる。 location -中谷、陣内が行なった研究、地層的時間から短期的時間まで含まれる場所性。設計の際、 人間中心と捉えられがちである。 dislocation -本来的な location を取り入れるには、これを形成することが必要。人間から離れた場所。 断層的建築- dislocation の総体としての建築 次章では、事例を取り上げながら「dislocation」を形成する具体的な方法を検討していく。

[ 注釈 ] 1 -地質学的時間よりもさらに広義の意味とするために地層的時間と述べている。地質以外も含めた長大な時間のニュアンス をもたせている。 2 -陣内秀信『東京の空間人類学』筑摩書房、1992 年 3 -陣内秀信、高村雅彦『建築史への挑戦 住居から都市、そしてテリトーリオへ』鹿島出版会、2019 年、29 頁 4 −場所の意味を持つ英語として、以下がある。 place:( ある特定の ) 場所、( 抽象概念としての ) 場所 location:位置、場所、所在地、ありか、場所柄のような環境を含めた場所 ( 空間を含めた立体 ) spot:( 特定の ) 場所、地点、何か意味を持つ場所 site:建築用地、跡地、予定地、何かを置いたり据付ける場所、環境、背景 場所柄とは、歴史や時間が含まれるニュアンスがある。ゆえに、本研究では場所を表す言葉として、「location」を採用した。 5 -中谷礼仁『セヴェラルネス+ 事物連鎖と都市・建築・人間』鹿島出版会、2011 年、263-297 頁 6 -同上、264 頁 7 -同上、295 頁 8 -同上、296-297 頁 9 -同 1、9 頁 10 -このような人間中心主義の表層の時間を考えて建築を構築する主義を「dislocationism」と対比させるため、ここでは便 宜的に「locationism」と呼ぶことにする。 11 -ケヴィン・リンチ『時間の中の都市』東京大学大谷幸夫研究室訳、鹿島出版会、2010 年、p211-240 より リンチは時間変化を視覚化する方法として、以下をあげている。 ①時間のコラージュ ②エピソードの対比 ③変化の直接表示 ④運動のデザイン ⑤長期的変化のパターン化 この 5 つの項目をリンチの言説から解釈すると、以下のように考えられる。 ①積層法-時間の積層を表す。この際、新しく積層される建築は、新しい時間 ( 未来 ) を含まなければならない。 ②対比法-新旧を対比させることで時間を表す。この際、変わり目が最も劇的であり、重要である。( ハレとケ ) ③短期的運動-連続的な運動を示す。 ④シークエンス-人間の移動性のデザイン。 ⑤長期的運動-持続的な変化をする環境を感覚可能にする。知覚範囲を拡大する。 以上をまとめると ① , ②-時間について ③ , ⑤-運動について ④-運動のデザインについて となる。これらの考え方は、「dislocation」が運動的 / 状況的となることへと繋がる。

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2. 事例研究 2-1.NEW BABYLON 2-2.SPIRAL JETTY 2-3.INSTANT CITY 「dislocation」があると感じる 3 つの事例から、方法を取り出す。 事例としては、 ・時間を表現することを徹底的に意図したものであり、 ・形を作る際、人間的起因以外のことからもつくられているもの ( 地層的 時間をみるため ) に焦点を当てて選出した。

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2-1. ニューバビロン ( コンスタント・ニーヴェンホイス )

図 2-1

[ 概要 ] シチュアシオニスト・インターナショナル ( 以降 SI) の一員であったコンスタント・ニーヴェンホイスは 「ニューバビロン」( 以降 NB) というアンビルド作品を 発表している。NB は大量の作品がある。コンスタント は初期の SI に所属していた。しかし、制作を進めるに つれ徐々に作家性が強くなっていく。これに対して、NB 自体がスペクタクルに消費されてしまうことを危惧し、 SI はコンスタントを脱退させた。彼は SI 脱退後も NB の 構想を続ける。後期になるにつれ、よりディストピア 的様相を成していく NB は、前期では外観や模型が多く、 後期では内観が多くなっていった。( 図 2-1,2) 彼はここ で断片を集積したものとして NB を制作しており、そこ の住人たちは自由に組み替えながら住むという可変性 をイメージしている。しかし、実際に出来上がったも のを見ると、いかにして可変であるかも何も示されず、 ただひたすら終わりのない連鎖が見られる。 図 2-2

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[ 分析 ] ・歪められた形 NB は全体性がない建築である。そしてドローイングに おいては往々にして既存建築物が描かれず、地面と構 築物の対比のみが描かれている。しかし、彼は何枚か 実際の都市に NB を重ね合わせたドローイング ( 投影ド ローイング ) を描いており、その中で彼が作り出した構 築物が都市によって歪められているという面白い現象 が見られる ( 図 2-3,4)1。都市の既存建築物や広場といっ たものを避けたり貫入したりする操作、あるいはかつ ての痕跡を辿るようにして NB は既存の中に張り巡らさ れる。

・都市を地質学的にみる この背景には SI の都市に対する姿勢が隠れている。SI のメンバーの一人、イヴァン・ウラジミロヴィッチ・シェ グロフは、「すべての都市は地質学的なものである。」2 と主張し、過去の階層化による合理化に抵抗する都市構 想を思いついた。SI にとって、都市は廃墟であり、そ れらは正しい使われ方を待っているものだったのだ。3

図 2-3 ロッテルダムの投影ドローイング

図 2-4 アムステルダムの投影ドローイング

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・都市のリズムを記述する

・多声的建築

投影ドローイング以外の NB の作品を見てみる。( 図

都市と韻を踏むことにより、NB はバキバキと雁行し、

2-5) をみると、コンスタントが地面にいくつもの線を

連続性を見せ始める。また、彼が目論んだ可変的な材料

刻んでいることがわかる。また ( 図 2-6) をみると、地

たちが表面に顔を出す。人間の活動に対して韻を踏む

形に対して、NB が構築されていっていることがわかる。

とも言える。これによって、NB は単言語の建築ではなく、

ここでコンスタントは都市を線の要素や地形といった

多声的建築 5 の様相 ( 図 2-8) を見せ始めている。

ものに抽象化して、都市のリズムを記述している。こ

・地層的時間の忘却

の記述の際、彼は地層的時間と人間的な時間両者を共

一方、( 図 2-9) をみると、NB は具体的な地層的時間に

存させることを目論んでいる。このことは都市をあり

対してあまり反応していないことがわかる。ゆえに、地

のまま地質学的に見るという姿勢が彼にもあったこと

面から完璧に離れてしまい、脈絡がない ( 上部構造はあ

を感じさせる。

るが )。まさしく、地に足がついていない状態である。

・都市と韻を踏む

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地面に対して、何かを考えていそうな模型をいくつか

記述されたリズムに対し、いかにズラし、いかに呼応

作っているが ( 図 2-10) それらも地層的時間からという

するかを検討している。少し線と離れた部分で、トレー

よりは、建築の要求からもたらされたものである。 こ

スしたり、線を貫通したり ( 図 2-7)、リズムに対して

の地層的時間の忘却とも言える現象は、NB を最終的に

NB は反応していく。この操作を「韻を踏む」と定義す

コンスタント自身の趣味性の加速へと導いてしまって

る。このようにコンスタントは韻を踏むことにより、

いるように感じる。

「dislocation」をつくりだし、対比的に時間を浮き彫り にすることを試みているのだ。

図 2-7 韻のダイアグラム 図 2-6 Sectoren in berglandschap(Sectors in Mountain Landscape) 図 2-8 Ambiance de depart (Environment of Departure) あらゆる言語が重なる多声的状況

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谷と山に呼応する


図 2-5 Groep sectoren (Group of Sectors) スクラッチされた模型 の地面とそれに応答す るストラクチャー

図 2-9 Doorsnede grote gele sector(Section of Large Yellow Sector)

図 2-10 Industrieel landschap(Industrial Landscape)

何もない茫漠とした地面

建築から形づけられる地面

[ 注釈 ] 1 - Simon Sadler『The Situationist City』The MIT Press,1998 より「例えば、アムステルダムでの重ね合わせでは、NB は歴史 中心地区に敬意を払っていたし、ロッテルダムにおいては第二次世界大戦でほぼ完全に破壊された町の中心の上空に低く位置 することにためらいはなかった。」 2 -同上 119 頁 ,「All cities are geological.」 3 -同上 107 頁 , この考え方は、SI が提起した主要概念である「剽窃 Détournement」が背景にある。資本主義システムが出したメッ セージやイメージを新しい解釈と文脈によって置き直し、システムに反撃するというものである。再利用 / 再使用のニュアン スを持っており、NB は建築が古い都市や既存芸術資源から再使用 (Détournement) されることを期待されていた。 4 -平倉圭『かたちは思考する』東京大学出版会、2019 年、15-17 頁より、韻について影響を受けている。 5 -ここで「多言語的建築」ではなく「多声的建築」としたのは、言語同士がバラバラと独立してあるのではなく、調和を伴っ て、つなぎ合わされていることを表すためである。

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2-1. スパイラル・ジェッティ ( ロバート・スミッソン )

図 2-11

図 2-12 一度沈んで浮かび上がった SJ Great Salt Lake, Utah, 16 August 2003 (Martin Hogue 撮影 )

[ 概要 ] スパイラル・ジェッティ ( 以下 SJ) はユタ州グレートソルト湖にある芸術家ロバート・スミッソンに よるアースワークである。岸から飛び出て荒々しくつくられたこの突堤は、ゴロゴロした石が敷き 詰められ、螺旋状の形態をとっている。スミッソンは、同時に作品の制作プロセスを撮影している。 ( 図 2-19)1 SJ は 2003 年ごろまで、約 30 年間、湖に沈んでいた。( 図 2-12) この出来事に焦点を当てて、 分析をしていく。

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図 2-13

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[ 分析 ] ・破壊が重ねられた場所

・地層的時間と共鳴する境界面

スミッソンが選んだ場所は、断層帯が走る地質学的破

SJ が一度沈んで、再び顔を出したことに目を向ける。

壊がある場所である。この断層の亀裂から、石油が滲

SJ がない場合、ここまで明快に水面の上昇、下降は見

み出しグレートソルト湖を汚染した歴史がある。すな

て取れないはずである。ここで、SJ は地層的時間と共

わち、この敷地は、地質学的破壊と産業の廃墟化が重

鳴し、それを顕在化する境界面として存在している。( 図

なった位置にある。( 図 2-13) 彼はこの作品を作る前か

2-18)

ら、すでに地層的時間を考慮し、二重の破壊という多

この境界面は環境が動く様を表す。すなわち、「地層的

声的状況に耳を傾けていたことがわかる。

時間」と共鳴する境界面を構築することにより、環境

・水 / 地面 / 塩の間、岩石による構築

の移り変わりが現れ、物体と環境の間に「dislocation」

スミッソンは、周辺から取ってきた岩石によって SJ を

が生まれるのだ。2

構築することを決定する。映画には、岩石によって荒々

・根拠のない形

しく作られていく様子が描かれる。( 図 2-14) また塩湖

そして螺旋のイメージへと連続していく。この一見脈絡

であるグレートソルト湖には、塩の結晶がよく見られ

のない形は、突拍子もなく見えると同時に、その場所

る。スミッソンが、この塩の結晶を意識していることは、

の時間の理解を促す。ここで用いられている螺旋とい

映画のカットシーンからも明らかである。( 図 2-15)

う記号は、地層的時間という具体的なものに結びつく。

( 図 2-16) には、水と岩石、塩の結晶がそれぞれ描かれ、

そうすることによって、どこかその場所から浮いた存

( 図 2-17) ではこのバラバラの岩石が螺旋を形作ること

在ながらも、地層的時間を認識させ、なおかつ来るべ

が描かれている。スミッソンは、破壊が重ねられたと

き水面の上昇という未来を予感させている。新しい形

いう場所性と塩、水といったものによる侵食を表現す

を作ることによって、その場所の深遠な時間の再解釈

るため岩石を選んだのだ。

を促しているのだ。このように、SJ は地層的時間と共 鳴する境界面を作りながら、その形を浮遊 3 させること によって、「dislocation」を作り出している。

図 2-18 境界面で移り変わる水面のダイアグラム

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図 2-14 岩と土で埋め立てている様子

図 2-15 岩にこびりつく塩の結晶


図 2-16 SJ の断面ドローイング

図 2-17 SJ の平面ドローイング

図 2-19 SJ の映画のスチールカット

[ 注釈 ] 1 - Robert Smithson『Spiral Jetty』1970 年、カラー、16 ミリ、約 35 分。監督ロバート・スミッソン。撮影ロバート・フィオー レ、ナンシー・ホルト、ロバート・ウーガン、ロバート・スミッソン。録音ロバート・フィオーレ、ロバート・ローガン。編 集バーバラ・ジャーヴィス。 2 - Robert Smithson, Jack Flam『Robert Smithson

The Collected Writings』University Of California Press,1996, p157-171,

『FREDERICK LAW OLMSTED AND THE DIALECTICAL LANDSCAPE(1973)』 より強い示唆を受けている。この論は、世界で初めてランドスケー プ・アーキテクトを名乗ったフレデリック・ロー・オルムステッドによるセントラル・パークについて論じたものである。「セ ントラル・パークは必要と偶然からなる大地の仕事であり、それは大地に固く基礎付けられながら、永遠に振動することを止 めない対比的視点の領域なのだ。」( 訳平倉圭 ) 3 -物理的な対比と時間的な対比、未来を意識させることを意味して「浮遊」という言葉を用いた。

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2-3. インスタント・シティ ( アーキグラム )

図 2-20 地形を再解釈する

図 2-21

[ 概要 ] インスタント・シティ ( 以下 IC) は、エンターテイメント施設の移動キャラバンである。「旅するメ トロポリス」のコンセプトで、様々な場所に降り立ち、その場所を新しい都市に変えてしまうよう 28

なダイナミックな提案である。


図 2-22 IC の作業手順。 まちが再解釈される。

[ 分析 ] ・IC の作業順序 IC の作業順序は大まかに以下のようになる。( 図 2-22) 1. 既存都市の情報収集 2. 場所によっての部品選択 3.IC の到着 4. また移動していく ( 詳しくは注釈 1 参照 )

・都市に応じて変形される IC の手順を考えると、それらは既存都市と IC の組み合 わせによって変化する。( 図 2-23) 運び込まれる部品は、 都市から決定される。既存都市は、新しく運び込まれた 部品と合わさって、新たな都市とされる。短期的な未来 ( 運動 ) を予感させる IC は、既存の都市と対比するこ とで、その間に「dislocation」を形成する。( 図 2-24)

図 2-24 新旧の対比による 「dislocation」

図 2-23 リサーチからどのように IC が 巡っていくかを示すネットワーク図

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・つなぎ合わせられる都市

・再解釈される都市

飛来した部品は都市と対応していく。それは、都市にお

IC が来て「dislocation」ができたことによって、既存

いてバラバラになってしまったものをつなぎ合わせる 2

都市は新しい解釈をされる。例えば、スクリーンが吊

役割をしている。例として、( 図 2-27,28) を見ると、高

られる場合、屋上は絶好の鑑賞席となるかもしれない。

架道路その下の道、周辺の建物といった一見無関係に

ただの道も大道芸が行われる特殊なストリートに変わ

できてきたものが、IC によって一つにつなぎ合わされ

るかもしれない。このように浮遊した IC は既存都市の

ていることがわかる。

新しい可能性をあぶり出している。

また、アーキグラムは記述の中で「その土地の建物や

・「dislocation」により生み出される状況

道路のほうへもはみだしていく。それも「都市」の一

以上より、一見脈絡なさそうに飛来した IC は、既存都

断片になる。」3 と述べている。このように都市の認識

市や地形を考えており、韻を踏むようにして部品が対

範囲を広げ、周辺環境まで広げていく。( 図 2-25)

応していることがわかった。ここで起こっている事象

・「dislocation」-脱臼ということ

を見ると、「dislocation」が生み出す状況的場面が見て

以上より「dislocation」が形成されるときにはズレや食

取れる。浮遊した未来的なものが、 「dislocation」を作り、

い違いと同時に、つなぎ合わせも起きていることがわ

そこで生まれた状況が運動的なものであることを示唆

かる。そのつなぎ合わせこそ、都市の再解釈につながっ

している。( 図 2-26)

ていく。「dislocation」は脱臼という意味も持っている。 脱臼とは断絶ではなく、ズレながらもつながっている 状態を示唆している。

図 2-25 つなぎ合わせのダイアグラム

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図 2-26

図 2-27


図 2-28 [ 注釈 ] 1 -磯崎新『建築の解体 一九六八年の建築情況』鹿島出版会、1997 年、344-345 頁、IC の作業順序は以下のように記述されている。 「①「都市」部品はトレーラーに積みこまれる。 ②風船からテントが吊り下げられ、飛行船によってひっぱられる。 ③「都市」の訪問にさきだって、一群の調査員、電気専門家が、目的地のコミュニティで空家をみつけ、これを集積、情報、 連携基地に改造する。 ④「都市」が到着する。それは、敷地やその地区の性格に合わせて組みたてられる。全部の部品が使われなくてもいい。そ の土地の建物や道路のほうへもはみだしていく。それも「都市」の一断片になる。 ⑤イヴェント、展示、教育プログラムは、一部はその土地のコミュニティがうけもち、一部は「都市」代理店がうけもつ。 それに加えて、その土地のまつり、フェスティヴァル、市、集会などが、トレーラーや腰掛けや展示などを用いて、気ままな やりかたでおこなわれる。「インスタント・シティ」のイヴェントは、その地区でバラバラにおこっているようなイヴェント をひとまとめにしたようなものになるだろう。 ⑥屋根テント、空気構造の風よけ、そのほかのシェルターが建てられる。「都市」のほとんどのユニットには、それに合わせ た覆いがついている。 ⑦「都市」は全期間逗留する。 ⑧そして、次の場所へ移動する。 ⑨多くの場所を訪問したのち、各地の連携基地はランド・ラインでむすばれる。 ⑩結局、この物理的、電子的、近く的な、そしてプログラムをもったイヴェントの組み合わせと、各地の展示センターの設 立によって、コミュニケーションの「都市」は、全国的ネットワークの中心都市 ( メトロポリス ) となる。 ⑪おそらく、旅行して歩く施設は、一区切り動いたあと、つくりかえられることになるだろう。二、三年後には、一定期間 の仕事がおわり、ネットワークもとりさられてしまうことも、また確かなことであろう。( アーキグラム「インスタント・シティ」 1969 年 )」 2 -同上、344 頁より、磯崎はこのことについて「ルーズな結合」と称している。 3 - 1 の④から引用。

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2-4. 事例考察 以上の事例より、「dislocation」を形成するための 4 つの具体的な方法を抽出する。

2-4-1. 韻を踏む 都市のリズムを記述し、それに対して呼応する。これを「韻を踏む」と定義した。このことによって、 現在の時間を対比的に表している。場所に錯綜する時間を記述し、それに対して韻を踏んでいくこ とで、あらゆる時間が組み合わされ、再構築される。それによってできたものは様々なずれを内包 しており、そこに「dislocation」がつくられていく。その際、物質的に人間の活動も取り出す。様々 な時間を物質的に捉え、韻を踏むことによって、多声的建築となり、都市の時間を反映したものに つながる。

2-4-2. 地層的時間と共鳴する境界面を構築する 長大な時間である「地層的時間」と共鳴する境界面を構築する。それは、来るべき未来を待ってい る状態である。1 地層的時間の変化によって、建築に「dislocation」が形成されていく。

2-4-3. 予感を持たせる 前項と重なる部分もあるが、より広範の意味で未来に対する予感を含まなければならない。IC では テンポラルな未来を、SJ では地層的時間という壮大な未来を顕在化させている。また、日常と非 日常によって移り変わることもある。このように何かしら予感を持った形は、現在の時間に対して 「dislocation」となっている。

2-4-4. つなぎ合わせる バラバラになってしまっているものをつなぎ合わせることによっても「dislocation」は形成される。 ズタズタに引き裂かれた都市や、開発されてしまった自然、放棄された土地といったバラバラになっ てしまったものをつなぐことは、現在の状態とつなぎ合わせた状態との間に「dislocation」を生む。 以上に挙げられたことは、1-3-3 で仮定した「dislocation」の定義を満たしており、断層的建築を構 築する上で有効である。 次章においては、事例考察で得られたことをベースにケーススタディを行う。

[ 注釈 ] 1 -原広司『空間<機能から様相へ>』岩波書店、1987 年より、原は建築が来るべき時に待機している建築の姿を「待つ」と 表現した。

32


図 2-25 エジプト、サッカラのピラミッド周辺-遺跡と屋根

33


34


3. ケーススタディ 3-1.

3-2.

3-3.

3-4.

時層建築 周縁を内 LIVE

Landscape

溶岩に失われた包する場

architecture

大地の再考

所 廃棄が形作る 新しい文化の 発信地

COMPLEX

同時多発的文化escape 拠点

from the ground.

この章においては自分の設計を通して、どのように 2 で出てきた方法が実 行され、「dislocation」が形成されているかを検討していく。

35


36


3-1. 時層建築 溶岩に失われた大地の再考

卒業設計 制作期間:2017/10-2018/01

37


時層建築 溶岩に失われた大地の再考 CONSTRACTION

38


RE-CONSTRUCTION

桜島の玄関口である横山町は、溶岩により埋め立てられた周囲と時間の連続性を失った土地であ る。そこには、桜島ならではの火山とともにある人々の営みの風景はなく、地形を無視した郊外 型の開発がなされ無味乾燥な風景が広がっている。そこで、地形を顕在化させるように建築が大 地の上に重なり、様々な事象に対して構えを持つ建築を提案する。自然のあいだを縫い、様々な 事象をまとい、最終的に溶岩をいなし、復興の軸となるような建築である。

39


RESERCH 鹿児島の人々の原風景としての桜島

鹿児島の人々にとって桜島はアイデンティ ティのような場所である。噴煙をあげる桜島 を見て、薩摩人は育っていった。

40


桜島の集落の営み

桜島には海と山を繋ぐ道が葉脈のように広がる。集落は自然の隙間を縫うようにして存在し、人々の暮らしは自然と 一体となって存在していた。

敷地 : 横山町 ( 桜島の営みの対極として)

横山町はかつて最も栄えていたが溶岩に埋もれた場所である。現在はフェリーターミナルもあるため、最も人が利用 する場所である。しかし、行われた開発は郊外型であり、大地は削られ、コンクリートが敷き詰められている。

鹿児島県における桜島の位置 姶良

霧島

錦江湾

敷地

鹿児島市街地

桜島

大隅半島

錦江湾の中心に桜島は位置する。そもそも錦江湾自体が 2 万年以上前の桜島の噴火活動によって陥没し生まれた。 鹿児島市から大隅半島へ行く際、桜島はよくショートカットとして利用される。大隅半島への玄関口となる。

41


TIMELINE OF SAKURAJIMA -1913

大正噴火前、集落の営みは連続しており、自然の合間を縫って

もともと桜島は島だった。

営まれていた。

1914 大正噴火

大正噴火により、溶岩に埋もれてしまう集落。大きな断絶が生

溶岩は近くにあった島をも飲み込んだ。

まれ、集落同士は分断されてしまう。

1915-

溶岩により埋もれた大地はコンクリートがしかれ、地形を無視

大正噴火後の桜島。

した開発がなされていった。

大地の 顕在化

42

人の手により削れた大地に新たな地層を重ねるように建築を作

既存の削られた大地。縫うように張り

る。大地の顕在化をはかる。

巡らされるメッシュ。


縫う 山と海を つなぐ一 つの軸を 作ること 集落の営みが自然を縫うようにあることから、この建築も縫う

縫うように大地をはう建築。

ようにいくつもの線が海から山にのび、つなぐ。

まとう

それらの線は、人の活動や自然に反応し、様々な空間を作る。

人の居場所に屋根がかかる。

人々はこの建築において出会う。

いなす

地形と建築により、溶岩をいなし山から海へ一つの軸を作るよ

溶岩をいなす壁が立ち現れ、自然に対

うな建築を提案する。埋もれる大地の軸となる。

峙するものが人の居場所となる。

再び噴火 が起こっ たら

復興の拠点となるフレーム。仮設の屋根をかけ、海からの物資 の搬入も行われる。新しい大地とともにある暮らしの軸となる。 噴火後、仮設の屋根がフレームにかかる。

遺跡のよ うに残っ ていく

溶岩が予想より上回る、またはさらに噴火しなだれ込んだとき、

物資が建築内を行き来する。

メッシュが新しい大地となり暮らしの軸となる。 43


SITE MAP

横山町 この山に溶岩がぶつ かり横山へ流れた 大正溶岩 のエッジ

鹿児島市街地へ

44


PROGRAM N

集落からの人

フェリー 敷地

200 年以上前の植生 大正溶岩 大隅半島へ抜ける

大正溶岩によって分断されると同時

大正溶岩のエッジとして存在する場所

に接続した桜島。玄関口として敷地

である。そこに植生の違いを見せる植

はある。

物園が現れる。

観光客 住民 住民 観光客 観光客 住民

観光客 住民 研究者

研究者 研究者

様々な人が行き交うフェリーターミナルに第三者として研究者を巻き込む。 住民は桜島の重要性を再認識し、観光客はそこを訪れることで桜島を知る。

RE-CONSTRUCTION PROCESS 噴火前

噴火後

司令塔

火山観測研究所

復興会議場

ホール 植物園 資料室兼図書館

物資の流通経路として 一時物が置かれ る場所となる

フェリーターミナル

港から物資が送られる

S=1/5000 メッシュはそれぞれの場所に応

噴火後、溶岩をいなすことにより海と山

じ、場所をまとう。

をつなぐ。物資を運ぶ動線が確保され、 軸を持ちつつ場所ごとに役割がふられる。

STRUCTURE

海からの風景。

溶岩をいなす壁は RC の分厚い壁で作られ

屋根は構造的に分離している。噴

る。ダブルスキンの部分や衝突力が大き

火時は耐えるのではなく壊れる。

い部分は盛り土などで耐える。

45


46


47


A-A’PLAN

B'

i

i

仮眠室

A'

機械室

地震計室 h

倉庫 h

g

ホールから連続する

f

中庭空間 ホール 機械室 g

e ホワイエ 厨房 機械室 桜島全 体の

収納庫

d

食堂 倉庫

200 年 分の植 生が見 植物園 られる 事務室

事務室

f c

閉架書庫

b e

d

資料室 倉庫 c

バスターミナルオフィス

b 機械室

フェリーターミナルオフィス

a

a

A

B 48


B-B’PLAN

C-C’PLAN

D-D’PLAN

研究所

E-E’PLAN

火山観測所

展望台

資料展 示室

溶岩の エッジ をわた る。植 スタディルーム

生の違

研究者や住民も利用できる

いを時 空間的 に体験 する。 鹿児島 全体の 植生が 見られ

温室空間

る温室 空間

桟橋から道路をまたいで 資料室へ 半屋外広場 フェリーターミナルオフィス 屋内待合室

売店 観光案内所 半屋外待合所

桟橋から直接道路に出る

S=1/1000

49


A-A’SECTION

B A

斜めスラブは国道と桟橋 をつなぎ、溶岩を妨げる a

B-B’SECTION

B A

桟橋から人がくる。

a 50

b


B' A'

S=1/1000 桜島の植生を体 験できる植物園 c d

b

植生の境界をまたぐスラブ、植物

展望台から

園の時間が桜島の時間につながる e

f

g

h

i

山が見える 火山観測室

B’ A’

S=1/1000 道をオーバーラップする 図書空間

基壇から

通路のように連なる

中庭と

基壇へと

食堂

連続す

移動する c

d

e

f

g

るホー h

ル空間 i

壁の内部 資料展示

は仮眠室 等になる j 51


52

植物園と展望台。地形と連続する。


バスターミナルとフェリーターミナルを見る。

食堂を見る。 53


[ 分析 ] ①韻を踏む 記述-溶岩のエッジや駐車場などを平面で描いていく。また断面においては山の稜線を描く。 韻-現在ある駐車場と、昔からある山の稜線、溶岩の境目などと呼応するようにして、現在も残っ ているかたちの断片を集積している。それらがメッシュ状に再構築されている。断面としても山や 地形と韻を踏む。

②境界面を構築する 境界面として、地面からは溶岩をいなす壁、地形的なメッシュが現れる。これらはどちらも来るべ き大噴火といった地層的時間に共鳴している。

③予感を持たせる 壁-通常時:バックヤード、倉庫 災害時:溶岩をいなす メッシュ-通常時:屋根機能 災害時:新しい大地となる

④つなぎ合わせる 構造体と地形がつなぎ合わせられる。郊外型開発された駐車場、港、桟橋、溶岩のエッジ、そして 遠景としての火山。張り巡らされたメッシュによって連続していく。

[ 効果 ] 以上の方法によって、海、陸、火山の関係が再解釈されていく ( 現在との「dislocation」)。火山に 対する構造体としてストラクチャーが立ち上がるため、人間にとっては過剰で暴力的なスケールを 持つ ( 人間との「dislocation」)。しかし、それゆえ桜島の地層的時間につながることを可能にして いる。住民、研究者、観光客が交差する短期的運動と、自然に対する長期的運動が見られている。

54


3-2. 周縁を内包する場所 廃棄が形作る新しい文化の発信地

藤原スタジオ 制作期間 :2019/10-2020/01

55


周縁を内包する場所 廃棄が形作る新しい文化の発信地

56


この課題は、横浜インナーハーバー構想に基づいて、横浜の未来について考えるプロジェクトで ある。敷地は東高島駅付近。最も初期の埋立地である。軍事利用、貨物倉庫、スクラップ置場と いう過程をたどり、現在ここは東神奈川駅から近いにもかかわらず、都市から忘れ去られたよう な場所である。ここに貨物線や道路を引き込み、インナーハーバー中の産業廃棄物を取り扱うリ サイクル場、市場、巨大なスタジオなどを設ける。ブラックボックスである廃棄の過程が可視化 され、そこが集まる場所となることで、廃棄という言葉がなくなるような未来を描く。都市の周 縁的な場所を都市が内包し、そこが新たな文化を創造する場所として立ち現れる。 57


RESERCH 廃棄について - 周縁的な場所が持つポテンシャル 廃棄がある場所

廃棄に集まる人々

都市の周縁部に廃棄は集まる。人々はそれをブラック

廃棄は人々を惹きつける力がある。その物量やエネル

ボックスに封じ込め、見ないようにする。一方、周縁

ギーは、人々の廃棄の概念を転換させるきっかけとな

的な場所はあらゆる制度から解放され、自由でもある。

るかもしれない。

廃棄の時間軸を考える 廃棄された場所の時間

人間の介入

再利用

放棄

荒廃

人間の介入

放棄

人間が開発したが、用をなさなくなった結果、 遺棄さ

そのような場所に、他の生態系も介入しながら、放棄

れた場所は多く存在する。しかし、そこはある人々、

された場ではなく、意味を持たせるにはどうするか。

生態系にとっては重要かもしれない。

再利用の時間軸を考えてみる。

再利用

廃棄されたものの時間 集まる場所として

人間の使用

放棄

ブラックボックス

処分

人間の使用

放棄

廃棄物の行方は、忌避される傾向にある。見えないもの

ブラックボックスを解き放ち、処分まで猶予を与える

とすることにより、人々は認識しないようになり、そ

ことで、人が集まる場を作れないか?可視化すること

れに携わる人々を差別する。

で廃棄に対する価値観を転換する。

58


敷地 - 東高島

- 都市の中でうち捨てられた場所 -

うっすらと残る鉄道の痕跡。

だだっ広い空き地。

貨物線越しに青果市場を見る。

埋立地をつなぐ緩い傾斜。

廃棄のランドスケープ。

放置された船。

かつてあった貨物線の名残である鉄橋。

フェンスは微妙に歪み、かつてあった線路をうつしとる。

現在の配送場の様子。

SITE MAP 至東神奈川駅

生鮮市場

青果市場 至瑞穂埠頭 59


TIMELINE DIAGRAM インナーハーバーから

PROGRAM 廃線から

産業廃棄物 インナーハーバー外の処分場へ 今まで海は横浜にとって周縁であっ た。

横浜港が貿易や産業によって盛ん だった時代、横浜臨港線は活発で、 幾多もの線を伸ばし、都市の動脈と して扱われていた。

現在の廃棄のあり方。ブラックボックス 化されたもの。インナーハーバー内から 追い出されるものたち。

再利用

市場 インナーハーバー構想は海に中心を 据えた計画である。

市場

しかし、貿易が減り、車メインの現在、 貨物線は廃れ、ただの通過地点とし て貨物は成り立っている。 産業廃棄物 リユース / リサイクル

処分の過程に余裕を持たせる。市場がで き、人々が集まる場が生まれる。

このままいくと、かつて周縁だった 場所を中心とするため、再び周縁の 位置が変わり、廃棄された場所は外 へと追いやられていくであろう。

工房 公園 公園

住居

アトリエ

産業廃棄物

かつてあった廃棄の場としての自由さを 残しながら、様々な人、生態系が享受で インナーハーバー内で廃棄の問題を 解決することは、これまでの嫌なも のに蓋をする思想と異なり、そのよ うな場所こそを新たに中心に据え置 くことになる。

廃棄された貨物を動脈としてではな く、静脈として扱う ( グリーンロジ スティクス )。

きる場を設計する。

産業廃棄物

60

周縁を内包する場所が中心になり、 そこで得られたものが新たに横浜に 広がっていく。ここから文化が生ま れ、そして発信されていく。

廃棄された場所やものが中心となり、多 くのものを許容する場となり得るか。


NEW DISPOSAL PROCESS 住民、アーティスト 外から来る人々

住居

産業廃棄物

リサイクル場

トラック 荷捌き

貨物線

プラットフォーム ( 無選別市場 )

選別市場

工房

ガラクタ市場

船 アーティスト

アトリエ、オフィス、工房

展示

ARCHITECTURAL DIAGRAM 断面 - 地形を操作すること -

街から少し離れた場所。少し盛り上がっていたり、地続きで廃棄物があるため、人から離れた場所になっている。

街側は公園的な風景。運河側は工場的な風景。地形を操作し、これら相反する状況を共存させていく。また地形を掘 ることでモノや人がたまる場所ができる。地形の掘る深度をモノの過程に沿わせるため体感としてもプロセスが可視 化される。

平面 - 人やモノの流れ、まちへ広がる -

車 LRT 貨物線

人、インフラの流れ。

流れから現れる地形 - 尾根道 / 窪地を作っていく。 61


インフラ的屋根と被膜屋根

地形に囲われた窪地とものの流れ。

クレーンを使い、海と陸両方のものの行き来をスムー ズにするインフラ的屋根をかける。

62


インフラ的屋根をランドスケープを形作る被膜屋根

上下の屋根間の空間には設備やギャラリー、人の動

で覆う。

線が広がる。

器官のような建築。

63


A

SL:0-4m PLAN まち側に還っていくモノたち まち側から集まってくるモノたち

緑地が広がる +3m 公園 +4m

ジャンク市場 +3m

+

倉庫

+4m 野外劇場 +3m

奈落

食堂

+1m

ガラ EV +2m +4m

+3m 倉庫

フローティングボード 工房

+3m

屋外作業場

+0m

銭湯 FABLAB 市民も使える工房 +4m

+4m

倉庫

ゲストハウス

EV オフィス

+5.5m

64

A'


+2m

N

展示 搬入口

既存倉庫をリノベー ションし、ギャラリー に改築する +1m

EV 展示 運河から作品が搬入される

倉庫

展示

EV

+3m

+4m

ラクタ市場

'

WC

水上荷下ろし場 船のルート

選別市場 選別されたモノたちが並ぶ

+5.5m

+4m

トラックヤード 車から運ばれるモノたち

EV

プラットフォーム ( 無選別市場 ) 選別前のモノたちが並ぶ

貨物線

倉庫

貨物から運び込まれるモノ

S=1/1000

65


A

SL:5-9m PLAN

+5m カフェ

+6m +7m +8m +9m

ジャンクショップ EV +5m

+9m +8m +7m +6m +5m

ジャンクショップ +5m

野外劇場

周囲から見 屋台 舞台

+5m

EV

+5m

+6m

EV ゲストハウス

+9m +8m

+6m +5m

66

+7m


N

EV

EV +5m

見下ろせる市場

EV

A'

S=1/1000

67


A

SL:9-12m PLAN

カフェ

EV

掲示板通路 +12

+10m 丘の頂上から連続する

+10m

スタディルーム

ギャラリー +10m( 梁間 ) +12m

舞台機構

ギャラリ ギ

EV 設備 +10m( 梁間 )

+10m

駅から連続する

EV +10.5m LRT ステーション

駅間通路

68


N

EV

2m

EV

リー通路 ギャラリーを見下

ろしながらわたる ジム +10m( 梁間 )

+12m

駅から連続する

+10.5m

EV

LRT ステーション

S=1/1000

69

A'


ガラクタ市場を見る。大きな空間にインフラ的屋根が状況をもたらす。

まちから登る丘。向こう側に屋根が見える。

A-A' SECOTION-1 ポリカを用いた半透明の屋根

ラチス梁 (1000 × 2000)

緑が入り込む

ラチス柱 (1000 × 1000) ジャンクショップ ジャンク市場 まち

70

駐車場

まちから運ばれ、まちへと出て行く

日常のガラクタが並ぶ


地形を利用した半屋外劇場。ここで滞在したアーティストなどの発表の場となる。

ガラクタ市場を見下ろす。

ラチス梁により梁間が空間となり 周囲とシームレスにつながる 梁間ギャラリー

屋台のようにジャンク品が並ぶ

状況によって巨大空間を 利用した展示が行われる

ガラクタ市場

S=1/300

71


A-A' SECOTION-2

設備

選別市場 大きなものが大量に並べ 運河 状況に応じて変化する運河の使われ方

72

水運から運び込まれるモノ


場 べられる

架構が引き延ばされる。

駅から連続した通路

LRT ステーション

プラットフォーム ( 無選別市場)

貨物線

S=1/300

73


74


運河から見る。大地が様々なモノの居場所となる。 75


丘から見下ろす。

76

地形やスラブによって光が構成される。


ダイナミックな架構。

三層の動線空間。 77


[ 分析 ] ①韻を踏む 記述-埋立の歴史から生まれたゆるい地形。かつてあった路線の名残。ゴルフの打ちっ放しの鉄骨。 運河の形などを記述していく。 韻-それら都市に残存する取るに足らない事象にも韻を踏むことで、廃棄された場所の雰囲気を内 在させていく。また埋立を繰り返した歴史と韻を踏み、地形を作っていく。運河の形等をズレた位 置でトレースしたり、運河をまたいだりと韻を踏んでいる。1

②境界面を構築する 境界面として、地形が現れる。ここで取り上げられる地層的時間とは、埋立の歴史であり、それと 共鳴するようにして地形が生まれていく。また、ものの集合と拡散を繰り返し表すことにより、廃 棄物 ( 人間から出たが、人間が処理しきれなかったある意味での地層的時間 ) に対しての境界面も 構築している。

③予感を持たせる 谷地形-通常時:VOID 運動時:ものの溜まり場 まち側の地形-常に動的、植物の場所 インフラ的架構-常に動的、テンポラル

④つなぎ合わせる 韻を踏みながら、ストラクチャーを張り巡らす。周辺環境に対して公園化していく部分とその上を オーバーラップする架構によって、放棄された場所である敷地と周辺の住宅地をつなぎ合わせる。 また、廃棄された路線や運河、廃棄物といったネガティブなものをプログラム的にも形としてもつ なぎ合わせていく。

[ 効果 ] 以上の方法によって、廃棄された場所、もの、路線、運河といったものが編み込まれ再解釈される。 住宅地とこの巨大な空地の間に調停するようにたつ建築であり、「dislocation」が形成されている。 産業廃棄物に対する巨大な空間を成り立たせるためのストラクチャーがたち、人間との「dislocation」 が発生する。しかし、それによって循環の運動を感じるような建築になっている。

[ 注釈 ] 1 -ここで興味深いことは、埋立の手法と地形を作ること、といった物質的な韻ではなく、意味的な韻を踏んでいることだ。 埋立の手法と地形を作ること。これによって、よりその場所の時間が経験できるようになっている。無限に続くサイクルと呼 応し絵いるからだろうか。このことは本論の目的から逸れてしまうと思われるため、示唆にとどめていく。 78


3-3.LIVE COMPLEX 同時多発的文化拠点

大西スタジオ 制作期間 :2018/04-2018/07

79


LIVE COMPLEX 同時多発的拠点

80


新京極通は、京都市内の繁華街のうちでも最も古い賑わいの場所である。かつては寺町として栄 え、境内や通りに芝居小屋が立ち並び、多くの芸能文化を生み出した。現在は小売店が立ち並ぶ ただのアーケード街となっている。そこで、今は文化的中心を失いつつあるこの場所に新たな文 化を生むきっかけとして新しいアーケードを挿入する。アーケードは舞台機構のような機能を 持っており、同時多発的に様々な場所で行われる出来事は通りを介して刺激をしあう。新たな文 化的界隈として生まれ変わっていくことを目論む。

81


RESERCH 通りと境内から生まれた芸能文化 公界・無縁という言葉がある。公界は誰のものでない独立し た場所をさし、無縁は世俗の対立や戦乱から切り離された状 態をさす。かつて京都では通りは「公界」であり、河原は「無 縁」の場所であった。その状況噛み合った場所として四条河 原一帯は存在した。人は日常を忘れ、楽しんだ。 1. 通り

洛中洛外図 / 四条通周辺 通りは誰のものでもなかった。京都の人々は通りを巷所として使ったり、祭 りの時は山鉾が通ったり、通りを占拠して見せ物をしたりした。同時多発的 に様々見世物、出来事が起こっていた。

2. 境内

一遍上人聖絵 / 現在の新京極通にあった寺境内 境内は通りから隔絶されていたが、塀に囲まれた広場の役割を持っていた。 人々は自由に境内に入り、聖と俗が入り交じる空間であった。

新京極に面する旗竿寺院。

敷地 : 新京極通 祇園 鴨川

新京極

京都御所

京都駅

二条城

新京極は京都の鴨川近くに存在する。鴨川を挟んで祇園があり、現在は祇園に芸能の名残がある。新京極通は三条通 と四条通に挟まれており、京都の人が集まる中心地として存在している。 82


寺へのアプローチ。

逆蓮華寺前広場

道でスケートボードをする若者たち

賑やかな通りの裏には多くの墓。

誓願寺前広場

蛸薬師前広場

新京極の敷地周辺 / 性質 四条通

蛸薬師通

六角通

三条通

姉小路通

河原町通

裏寺町通

新京極通 寺町通

御幸町通 旧境内があった範囲 昔あった堀 御土居があった場所 四条通

蛸薬師通

六角通

三条通

姉小路通

大通り 裏道的

通る

アーケード 性質

幅員

寺町通

狭い

新京極通

人 自 / 転車 車 /

広い

河原町通

83


TIMELINE OF SHINKYOGOKU 1590

東山

失われた境内を街中で見つけ出す 現在、京都市内にはかつてあった芝居小屋や映画館といった 大衆娯楽は激減している。伝統芸能は観光重視となり、芸能

鴨川 御土居

文化は京都人にとってますます遠い。そこで、新たな大衆文 化を生むきっかけを作る。かつて大衆文化は同時多発的に互 いに触発し合って発展してきた。その状況を現代に落とし込

寺町 寺町通

み、新たな京都の文化の発信地として新京極界隈を生まれ変 わらせる。

秀吉が防衛のため、鴨川、御 土居、そして寺町を整備する。

1600

現在 ①新京極通と寺町通のズレ 鴨川 御土居 寺町

寺町通

境内に人が集まってくる。寺は 境内空間を貸し出し、そこを中 心に一気ににぎわいを見せる。

新京極通ができた際、隣の寺町通と微妙なズレが生じた。 これはかつての境内への参道や動線が道になったからである。

1700 東山

②異なる二つの広場 祇園 鴨川 御土居が道になっていく

寺町 寺町通

幕府により芝居小屋が整理さ れ、芸能の中心は御土居を乗り 越え祇園に移る。しかし、寺町

大きなズレを VOID として扱う。賑わう寺の近くでもあり、多

は依然にぎわいを見せる。

くの人が訪れる場所である。

鴨川

1872

河原町通

③同時多発的な場所として 寺町

新京極通 寺町通

明治の上地後、寺は縮小。新京

84

極通ができる。芝居小屋は徐々

広場を作り出すと同時に、空き店舗や寺との関係などから、

に衰退。繁華街化し始める。

通りから貫入するような場所も VOID として作る。


④アーケードが舞台機構となる

既存のアーケードは老朽化が進んでお り、雨から守るためだけにある。看板 などがぶら下がる。

アーケードを舞台機構として設計する。 キャットウォークなどが道の歪みに反 応したり、桟敷として利用されたり、 レールがつられたりする。

⑤通りを巻き込む

新京極通

劇場界隈 寺町通

アーケードを介して通りを巻き込んだ 一大劇場となる。

かつての境内をかたどるようにフライタワーが立ち上がる。 85


N

GL+0m PLAN

カフェ A 舞台

工房 ブックカフェ 舞台

逆蓮華寺 テラス

誓願寺前広場

前広場 舞台 A'

蛸薬師寺前広場 舞台

GL+3200m

楽屋 カフェ

A

楽屋

オフィス

舞台

楽屋 A'

A-A' SECTION-1

楽屋

カフェ 86


GL+5700m

倉庫

A

楽屋

楽屋

楽屋

A'

GL+9000m

A

楽屋

A'

S=1/1000

フライタワー

フライタワー

工房

工房 誓願寺前広場では大規模なパフォーマンスが行われている。

寺を背景とした演劇空間。 S=1/300 87


全体模型 S=1/100

A-A' SECTION

A-A' SECTION-2

88

ストリートパフォーマンス


連続する架構

蛸薬師寺前と逆蓮華寺前を見る。

架構が既存建物の隙間に入り込む。

側面から見た通り

フライタワー

楽 屋

ライブパフォーマンス

S=1/300

89


誓願寺前広場

90

蛸薬師寺前広場と逆蓮華寺前広場


部分模型 S=1/30

アーケード 91


92

ストリートパフォーマンス。


瞬間的なパフォーマンスステージ Model photos by Yuji Harada 93


[ 分析 ] ①韻を踏む 記述-鴨川、寺町としての境内の痕跡、新京極通としての賑わい、河原町における芸能的アクティ ビティ、アーケードと看板、鳥居、墓といったものを記述する。 韻-上記の記述に対して韻を踏んでいく。かつての境内の痕跡や鳥居、既存建物のファサードといっ たもの。

②境界面を構築する 他 3 作品と大きく異なるところは、現在もかなり賑わっている繁華街というところである。地層的 時間として境内の名残を拾い上げ、芸能文化の場所柄を引き継ぎつつ、ハレとケを行き来する境界 面を構築した。

③予感を持たせる アーケード-ケ:歩行者のための空間、ネオン、看板、ライト ハレ:スポットライト、スクリーン、 舞台機構として キャットウォーク-ケ:店などが用いる半公共空間 ハレ:桟敷として 広場-ケ:VOID ハレ:劇場

④つなぎ合わせる 都市計画によってバラバラに引き裂かれた境内をつなぎ合わせている。これによって、かつての寺 町としての歴史を取り込みつつ、現代版に解釈された連続した劇場的界隈を生み出している。

[ 効果 ] 以上の方法によって、提案された構築物は、通りと広場が混在した新しい劇場的界隈を作り出して いる。このアーケードによって、既存都市は劇場としていかに成り立つかの再解釈を迫られている。 現状、バラバラである状態をつなぎ合わせ、境内の名残を顕在化することで「dislocation」を生み 出している。また、仮説的なものがつけられるように構築され、より運動的な建築となっている。

94


3-4.Landscape architecture escape from the ground.

西沢スタジオ 制作期間 :2018/10-2019/01

95


Landscape architecture escape from the ground.

96


移ろう時間や環境に合わせて機能も変化していくような動的な建築を考える。スプロールの末端 にあり、周囲と関係なく横たわっていた高架という巨大人工物を獲得することで大地の恵みを享 受する場を作る。

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RESERCH 敷地 : 港北横浜ジャンクショ N

横浜北線 工場地帯

鶴見川 小机大橋

港北横浜ジャンクション 第三京浜道路 遊水池運動公園 小机城址

日産スタジアム

日産スタジアム

港北横浜ジャンクション

小机城址 鶴見川

小机大橋からの風景

畑越しに高架を見る。

工場地帯から高架を見る。

巨大高架道路

川と高架

大地の恵み -「幻の海」と呼ばれる現象

洪水時の遊水地として

遊水地に水が溜まると広大な水たまりが生まれる。周辺の住民からは「幻の海」と呼ばれ、洪水後には多くの見物客 が訪れる。しかし、近年増加している突発的なゲリラ豪雨により遊水池の面積が足りない懸念が出ている。鬼怒川の 豪雨規模になると遊水池は決壊し、新横浜に多くの水が流れる。 98


TIMELINE OF TSURUMI RIVER

巨大人工物を自然の恵みを享受する場と変えていく 様々な道を巻き込む

縄文〜江戸

鶴見川は暴れ川である。人々は鶴見川から水を引

複雑に交差している高架の道を引き込み、車のプ

き暮らしていた。周囲は湿地や田畑が広がり、豊

ラットホームを作る。そこを足がかりに人の居場

かな自然があった。明治維新後は水運にも使われ、

所ができる。人の居場所にアクセスするため大地

貿易のための中継地だった。

からの道も引き込まれ、高架全体に道が絡みつい てくる。

大地を守る / 湿地を広げる

高度経済成 長期

高度成長期、鶴見川流域は急激な開発が行われる。

高架が建つ大地もランドスケープとして作ってい

それに伴い洪水の頻度が増し、生態系も失われて

く。建築は高架にそいフットプリントを小さく、

いった。

また川沿いの高架は堤防を壊し、湿地を広げ自然 堤防とする。

高架を獲得する 遊水地建設 (2002)

洪水対策として遊水地が建設される。大規模な遊

高架を獲得することで、周囲の人々や車で訪れる

水地は通常はスポーツやイベントに使われる。洪

人々が自然を享受する場になる。

水時には水が溜まり、「幻の海」ができる。

高架は災害時の拠点となる 高架建設 ( 現在 )

周囲の環境とは無関係に横たわる巨大な人工物が

様々な災害時、この建築が避難所あるいは復興拠

でき始める。かつて自然の恵みを享受していた場

点となる。各プラットホームには隣接して備蓄庫

はいつしか人が近寄らない寂しげな場所となって

があり、高架や巻き込んだ道を利用して各地に運

しまった。

ばれる。 99


CONSTRUCTIONAL DIAGRAM 湿地を広げる

道とポートと備蓄庫

既存の堤防を壊し、遊水地と同じ考え方で湿地帯の

遊水地からの人や、高架道路を巻き込むことによっ

面積を増やす。

て新たな流れを生み出す。

周辺に呼応する機能

巡る人の動線

高架道路の流れや周囲の環境との関係から立ち現れ

それぞれの場所と周辺をめぐる人の動線を作る。

る建築。

MASTER PLAN

通常プログラム

農業研究所、加工所、出荷所

災害プログラム

鶴見川観測所 カフェ / 資料館 ポート ( 駐車場 / 荷捌き所 ) 備蓄庫

図書館

ボルダリング / ボート競技施設 遊水湿地

STRUCTURE スラブ 鉄骨梁

吊るされるスラブ SRC 構造

増減築を可能とする構造体

通常時

100


PLAN 通常時

N

巨大な閉架書庫。本は道路網 を利用して各地に配布される。

図書館

ボルダリング / ボート

鶴見川 遊水地と建築をつなぐ橋。 カフェ / 資料館 港北横浜ジャンクション 鶴見川観測所

遊水地 農業研究所 農家や研究者が既存

加工 / 出荷 道路網を利用する。

第三

普段は公園として使われる。

京浜 道路

の土地を利用して、農 業研究を行っている。

S=1/6000

災害時

備蓄庫 鶴見川 湿地により川

ボート場から、救援物資が 船に乗せて支給される。

幅が広がる。

鶴見川観測所の駐車場が ヘリポートになる。川岸 はドックになる。 備蓄庫 救援物資は道路網を

川が氾濫する。

使用して輸送される。

S=1/6000

災害時

101


A SECTION 1 7 8 9

EV

第三京浜道路

3

S=1/750

C SECTION 1 5

4

2

6

3

11 農地

ELEVATION-1 C ポート 直売所 事務所

102

倉庫

定温 倉庫

冷蔵 倉庫

ポー

休憩


B SECTION

12 2

10 11

まち

梱包室 ート事務所 憩所 作業所

S=1/750 1. ポート 2. 事務所 3. テラス 4. 定温倉庫 5. 冷蔵倉庫 6. 作業室 7. 観測室 8. 会議室 9. ホール 10. 閲覧室 11. 通路 12. 備蓄庫

S=1/750

A 駐車場 / ヘリポート 事務所 備蓄庫 会議室 観測室 モニター室 ホール

備蓄庫

第三京浜道路

テ ラ ス

S=1/1500

103

国道


ELEVATION-2 B 湿地観測テラス カフェ 厨房 倉庫

104

資料館

事務所

備蓄庫 備蓄庫 ボ ポート 事務室 閲覧室 梱包室 閲覧室 テラス / 半屋外広場


部分模型 S=1/200

ボルダリング

ボート場

ポート 遊水地へ渡る橋

S=1/1500

105


対岸から見る。

106

道がまとわりつく。


高架と地面をつなぐ道。 Model photos by Yuji Harada 107


[ 分析 ] ①韻を踏む 記述-鶴見川の歴史から紐解いていく。田んぼ、高架道路、橋、城址、スタジアム、遊水池、そこ を走る道、緑が残っている場所、高架の柱、工場地帯のボリューム、川とのギャップ、蛇行してい る場所などを記述していく。 韻-それら記述されたものと韻を踏む。この際意識しているのは、すでに断絶 1 している田んぼ、 川と高架道路の関係をどうするかである。この際、その中間のようなリズムで韻を踏むことにより、 断絶ではなく「dislocation」を形成することを目論んでいる。

②境界面を構築する 鶴見川の氾濫に対する境界面を構築する。 また、高架道路と地面との間でゆらぐ境界面である。

③予感を持たせる 地面と高架をつなぐ架構-通常時:日常利用、自然を享受する場として 災害時:備蓄庫、物資運 搬の起点 道路-通常時:移動動線 災害時:物資輸送 駐車場-通常時:駐車場 災害時:ヘリポート

④つなぎ合わせる 地面と高架道路をつなぎ合わせる。また高架道路や人の動線を巻き込み、つなぎ合わせている。

[ 効果 ] 以上の方法によって、高架道路と地面、川の関係性が再解釈される。鶴見川の大氾濫というダイナミッ クな現象を祝祭するかのように立ち現れる建築である。地面と高架という人間にとって常軌を逸す るスケールから立ち上がるため、暴力的で過剰なストラクチャーとなっている。また、動線をいく つも引き込むことによって、運動が常に起こるような状態を目指している。しかし、実際は機能を 当てはめすぎたため、動的な建築としてはあまり理解しづらいものとなってしまっている。つまり、 架構を構築するまでは「dislocation」であったが、そこにハコが入ってしまったため、切断の作用 を持ってしまった。「dislocation」は細部に至るまでそうあるべきであることがわかった。

[ 注釈 ] 1 -断絶とは、何の脈絡もなく無関係に関係が切れてしまっている状態である。これと比較すると「dislocation」は location から起因しているため、全く違う状況である。

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3-5. ケーススタディ考察 以上のケーススタディを踏まえて、事例研究を通して抽出された方法は確かに「dislocation」を生 み出すことが確認できた。また、次のことが明確に現れてきた。

3-5-1.「dislocation」における場所の再解釈 「dislocation」となっている建築 =「断層的建築」においては、その場所の歴史やかたちが今まで以 上に浮き彫りになる。そして時間を感覚可能にし、新しい都市の見方を提供する。

3-5-2.「断層的建築」に表れる過剰性、暴力性 「dislocation」は地層的時間を内包する。ゆえに、その総体である「断層的建築」はそれに対して応 答する形としてあらわれる。そのため、人間にとっては過剰に感じられ、暴力性を持ち始める。地 形的スケールが出現する。

3-5-3.「断層的建築」が内包する運動性 「断層的建築」は「地層的時間」から人間の営みまで内包したものとしてつくられる。それが起因し てのことなのか、建築自体が運動的な様相を見せる。長期、短期問わず、様々な時間が交錯する。 長期的運動は地層的時間に結びつき、短期的運動はテンポラルな時間に結びつく。そしてこれらは、 「断層的建築」内で以下のようなかたちで現れていることがわかってきた。 長期的運動-地面付近 (4-1 の壁、4-2 の地形など ) 短期的時間-上空、浮遊している (4-2、4-3 の架構、4-4 の中間地点 )

109


110


4. 結論 「dislocation」は人間が無意識に過ごしている深遠な時間を顕在化し、そ の場所を浮き彫りにしていく。人間から「離れた-場所」はその場所の時 間を感覚可能にし、人々が生きていく上でより豊かな経験をもたらすはず である。また、ケーススタディからは「断層的建築」はそれすらも移り変 わっていく、運動する様が捉え始められた。 地層的時間をも内包する「断層的建築」は、ある特定の人間のための建築 ではなく、より解放された建築へと向かう。それは建築が自由に使われ、 生きられた場所になる可能性を示唆しているのではないだろうか。1

[ 注釈 ] 1 -多木浩二『生きられた家 経験と象徴』青土舎、1984 年、建築が運動的になりエントロピッ クな状態を内包することは、生きられた建築に近づくという考え方に結びついた。

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[ 参考文献 ] 1. 序論 陣内秀信、高村雅彦『建築史への挑戦 住居から都市、そしてテリトーリオへ』鹿島出版会、2019 年 陣内秀信『東京の空間人類学』筑摩書房、1992 年 平倉圭『かたちは思考する』東京大学出版会、2019 年 中谷礼仁『セヴェラルネス+ 事物連鎖と都市・建築・人間』鹿島出版会、2011 年 ケヴィン・リンチ『時間の中の都市』東京大学大谷幸夫研究室訳、鹿島出版会、2010 年 ケヴィン・リンチ『廃棄の文化誌 ゴミと資源のあいだ』有岡孝、工作舎、2008 年 加藤耕一『時がつくる建築 リノベーションの西洋建築史』東京大学出版会、2017 年 五十嵐太郎『大地を刻む-ランドスケープからランドスクレイプへ』10+1 No.9 風景 / ランドスケープ INAX 出版、1997 年 David Goldblatt『The Dislocation of the Architectural Self』The Journal of Aesthetixs and Art Criticism Vol.49 No.4, 1991 アルド・ロッシ『都市の建築』大島哲蔵 福田晴虔訳、大竜堂書店、1991 年 2. 事例 2-1. ニューバビロン Simon Sadler『The Situationist City』The MIT Press,1998 Laura Stamps, Willemijn Stokvis『Constant: New Babylon. To Us, Liberty』Hatje Cantz Verlag Gmbh & Co Kg,2016 今村創平『現代都市理論講義』オーム社、2013 年 南後由和『コンスタントのニューバビロンと 1960 年代の建築カイトの相互関係』https://garage-sale.hatenablog.com/ entry/20110703/1309663896、2011 ギー・ドゥボール『スペクタクルの社会』筑摩書房、2003 年 アンリ・ルフェーブル『都市への権利』森本和夫訳、筑摩書房、2011 年 2-2. スパイラル・ジェッティ Robert Smithson『Spiral Jetty』Smarthistory,1970(Film) Robert Smithson, Jack Flam『Robert Smithson

The Collected Writings』University Of California Press,1996

Eugenie Tsai, Alexander Alberro『Robert Smithson』University Of California Press,2004 ハル・フォスター『反美学 ポストモダンの諸相』室井尚訳、勁草書房、1987 年 石岡良治『抽象からテリトリーへ ジル・ドゥルーズと建築のフレーム』10+1 No.40 神経系都市論 身体・都市・クライシ ス INAX 出版、2005 年 2-3. インスタントシティ 磯崎新『建築の解体 一九六八年の建築情況』鹿島出版会、1997 年 アーキグラム『アーキグラム』浜田邦裕訳、鹿島出版会、1999 年 Archigram『The Archigram Archival Project』http://archigram.westminster.ac.uk 2-4. 事例考察 ロバート・ヴェンチューリ『建築の多様性と対立性』伊藤公文、鹿島出版会、1982 年 原広司『空間<機能から様相へ>』岩波書店、1987 4. 結論 多木浩二『生きられた家 経験と象徴』青土舎、1984 年

※重複している文献は省略

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[ 図版一覧 ] 図 0-1:https://www.gsj.jp/data/openfile/no0525/data/10/10-007.JPG (2020/08/26 時点 ) 図 0-2:Eugenie Tsai, Alexander Alberro『Robert Smithson』University Of California Press,2004,p3 図 0-3:Robert Smithson, Jack Flam『Robert Smithson

The Collected Writings』University Of California Press,1996,p157

図 0-4:筆者撮影 (2019/10 撮影 ) 1. 序論 図 1-1:筆者撮影 (2017/03 撮影 ) 図 1-2:https://oshima-navi.com/geopark/stratum.html(2020/08/26 時点 ) 図 1-3:『東京の空間人類学』表紙 図 1-4:『セヴェラルネス + 事物連鎖と都市・建築・人間』表紙 図 1-5:https://dailyportalz.jp/kiji/150312192969 (2020/08/26 時点 ) 図 1-6:陣内秀信、高村雅彦『建築史への挑戦 住居から都市、そしてテリトーリオへ』鹿島出版会、2019 年、220 頁 図 1-7:中谷礼仁『セヴェラルネス+ 事物連鎖と都市・建築・人間』鹿島出版会、2011 年、284 頁 図 1-8:https://www.tangeweb.com/works/works_no-1/ (2020/8/26 時点 ) 図 1-9:筆者作成 図 1-10:筆者作成 図 1-11:『時間の中の都』表紙 図 1-12:ケヴィン・リンチ『時間の中の都市』東京大学大谷幸夫研究室訳、鹿島出版会、2010 年、218 頁 図 1-13:同上、223 頁 2. 事例研究 図 2-1:Laura Stamps, Willemijn Stokvis『Constant: New Babylon. To Us, Liberty』Hatje Cantz Verlag Gmbh & Co Kg,2016 図 2-2:同上、p22 図 2-3:同上、p160 図 2-4:同上、p166 図 2-5:同上、p145 図 2-6:同上、p182 図 2-7:筆者作成 図 2-8:同上、p124 図 2-9:同上、p138-139 図 2-10:同上、p123 図 2-11:http://supergaigaigigi.blog22.fc2.com/blog-entry-28.html (2020/08/26 時点 ) 図 2-12:Eugenie Tsai, Alexander Alberro『Robert Smithson』University Of California Press,2004,p103 図 2-13:同上、p32 図 2-14:Robert Smithson『Spiral Jetty』Smarthistory,1970(Film) 図 2-15:同上 図 2-16:Eugenie Tsai, Alexander Alberro『Robert Smithson』University Of California Press,2004,p73 図 2-17:同上、p67 図 2-18:筆者作成 図 2-19:同上、p71 図 2-20 - 24:http://archigram.westminster.ac.uk (2020/8/26 時点 ) 図 2-25:筆者作成 図 2-26 - 28:http://archigram.westminster.ac.uk (2020/8/26 時点 ) 図 2-29:筆者撮影 (2019/3) 図 4-1:筆者撮影

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図 4-1 新潟県佐渡島-北沢浮遊選鉱場跡

114


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