入門編
体験
デザイン活動に 取り組む 新しい学びの世界 へ ようこそ!
この本は、学校で働く先生やこどもの学びにかかわる方のた めにつくりました。総合的な学習の時間でどんな授業をやろ うか悩んでいるとき、美術の授業でデザインの題材を考える とき、この本を手にとって参考にしてもらえたら幸いです。 デザイナーとして働いている人々が日頃行っている行為を学 びの場面に取り入み、デザインの活動をこどもたちに体験し てもらうことで生まれる、新しい学びをここに提案します。
はじめに:デザインの学びの世界へようこそ!
P1
̶こどもたちに取り組んでもらいたい活動̶
観察する
P2-7
発見する
P8-11
理由をさがしてみる
P12-15
P16-19
人の気持ちを想像してみる
P20-23
おわりに
P24-25
あとがき
P26
視点を変えてみる
ーはじめにー
デザイン
の学びの世界へようこそ!
デザインって何のこと? か っ こ い い も の 、オ シ ャ レ な も の を つ く る こ と ? い え い え 、そ れ だ け で は あ り ま せ ん 。 デ ザ イ ン と は 、人 び と の 生 活 の あ り 方 を 見 つ め 、考 え 、 新しい考え方を提案していくことです。 デ ザ イ ン を す る と き に は 、か く れ て い る 問 題 を 見 つ け た り 、 い つ も と は ち ょ っ と ち が う 視 点 を 持 っ た り 、ま た 、誰 か の 気 持 ち を 考 え な が ら 、大 切 に も の に か た ち を 与 え て い き ま す 。 デ ザ イ ン の 活 動 に 取 り 組 ん で み れ ば 、い ろ ん な こ と が 学 べ る は ず 。 こ の 本 で は 、デ ザ イ ン 活 動 に 大 切 な 5 つ の こ と を 取 り 上 げ 、 学びに役立つヒントを紹介します。
1
観察しよう
「観察する」ということはただ何かを見る、 ということではありません。 じっくりと自分の目で見てみて、聞こえて くる音に耳を傾けてみよう。 ふだんの散歩道でも、いつもは気づかなか った美しさに気づいたり、なぜだろう?と 思う疑問が生まれるかもしれません。 さあ、観察にでかけてみよう。
2
でかける準備
動きやすい服
カメラや スケッチブックがあれば 気になったことを すぐ記録したり メモしたりできる
ふしぎ!美しい! と思う気持ちや 好奇心があれば 歩きやすい靴
準備OK
3
耳をすましてみる
遠くから はなれてみる
近づいてみる
においをかぐ
4
じっくりみる
くらべてみる
さわってみる
5
さわりごごちは?
色は?
何か面白いものがないかな?とさがしながら歩いてみると、 いつもとちがうものが目に入ってくるかも
形は?
使いやすさは?
6
しくみは?
香りは?
音は?
7
発見しよう
きれい!かわいい!面白い!なんかいい! 素直に感じる心の動きを大切にしてみよう。 では、心ひかれたのは、どんなところ? 色や形、それとも音や匂いかな? 五感を使って色々なものと向き合ってみよう。
面白い ちょっと 不思議!
気持ちがいい∼
毎日使って いるのに あきない
なんか変
気になったものについて、 どんな感想をもったか言葉で表現してみよう。 そして他の人に伝えてみよう。 人に伝えることでまたさらに発見があるかも 10
ほかのと ちがう!
なぜ きれい
だろう?
いい匂い
かわいい
便利!
のなかみを
考えてみよう
11
理由を さがしてみよう
「なぜ?」や「ふしぎ」と思ったことには、 どんな秘密があるか、考え、調べてみよう。 ものの形や色、しくみには、かならず 理由があるはず。また、「いいな」と思った ものについて、いいと思った理由や特に好き なポイントをさがしてみよう。
この公園には みかんの木が 多い気がする。 どうしてかな?
葉っぱのもようが 気になったのは どんなところ?
毎日使っている ポットやカップには どんな秘密が かくれている?
かんきつ系の植物には、 鳥や蝶があつまってくるよ。 自然とふれあえる公園になるよ うに設計されているんだって
葉脈(水分の通り道)が植物の種類に よってぜんぜんちがってて面白い!
カップの持ち手のおかげで 温かいのみものを飲むときに やけどしないで おいしく飲めるんだね
視点を 変えてみよう
「あたりまえ」だと思っていたことやものに ついてじっくり見たり考えたりしたあとは、 「あたりまえ」を疑ってみよう。 ふだん目にしているものについて、「もし ・・・だったら」を考えてみよう。思いがけ ない発見が生まれるかもしれません。
16
17
も し
場所
時間
別の
大きさ
色
人や動物 もの
使いみち
他にも色んなもし? を考えてみよう これだ!と思った アイディアは すかさずメモしておこう
宇宙だったら? 日本じゃなかったら?
未来だったら?昔だったら?
ものすごーく小さい or 大きい
透明だったら? 派手な色だったら?
ネコだったら? お父さんだったら? 石ころだったら?
食べられるものだったら? 身につけるものだったら?
人の気持ちを 想像してみよう
世の中にはさまざまな人がいます。 自 分 と ち が う 性 別 、年 齢 、身 体 的 特 徴 、国 籍 、 考え方・・色んな人の立場にたって考えてみ ましょう。 困っている人はいませんか?その人たちはど んな気持ちでいるでしょうか? そしてその人たちのために何ができるか考え てみよう。
たと え ば こん な ものが 使う 人 の 気持 ち を 考え た
漁 の 寒 上 も ら 前 が
デザ イ ン
師 セ く で 迷 れ と な
の ー て 見 わ る 後 い
お タ 暗 え ず よ ろ ん
じ ー い な す う の だ
さ は 海 く ぐ に 区 よ
ん 、 の て 着 、 別
暑がりな人・寒がりな人
違う地域・国に住んでいる人
からだの不自由な人
毎日仕事で 転校生
人前で話すのが 苦手な人
とっても
忙しい人
お年寄り
シ 目 リ デ
ャ の ン コ
ン 見 ス ボ
プ え と コ
ー な 区 が
の い 別 あ
ボ 人 で る
学
トルには、 でも きるように !
学
学 学
S ha m p oo
教 正 と 分
外国から
科 し め か
書 い ・ り
で 文 は や
使 字 ね す
わ が ・ い
れ 学 は 文
て べ ら 字
い る い な
る文字は、 ように、 が んだね
異なる宗教の人
日本にやってきた人 おなかに
家族と離れて暮らしている人
赤ちゃんがいる人
おわりに
観察する
発見する
理由を さがす
視点を
人の気持ち
変える
を想像する
私たちがくらすこの世界は
では
デザインでいっぱい。デザ
どんな題材を
インは、毎日使う道具を便
選べばよいの?
利にすることから、地球規 模 の 課 題 ま で 、さ ま ざ ま な 問題に立ち向かっています。 こどもたちの興味や視野の 広がりに合わせて、題材を 選んでみては?
24
̶視野の広がり̶ 自分の身のまわり ↓ 家族や友達 ↓ 学校社会・地域社会 ↓ 世間一般 ↓ 国際社会
そして 考えたことを かたちにしていく
身にまとう
快適な
もの
空間
効果的な
便利で
情報
役立つ
伝達
道具
(例)
(例)
(例)
(例)
● ふとんやカーテンの布
●家の庭
● 自分の名前を表す文字
●文房具
●制服
●学校の建物
● 教科書の文字
●部活用具
●地域の布織物
●地域の環境問題
● ポスターで使う文字
● 高齢者の乗り物
●民族衣装
●都市景観
●公共広告
● 公共の交通手段
● エシカルファッション
●地球温暖化
● 情報インフラの格差
●宇宙開発 25
あとがき デザインはこれまで経済を前進させ、産業を発達させる ために活躍してきました。しかし、デザインは資本主義 の社会のためだけのものでしょうか?限られたごく一部 の豊かな人だけのものでしょうか? 私はデザインは、あらゆる人の生活に役立つべきものだ と考えています。そして、くらしを豊かにする視点や考 え方は多くの人に共有されるべきではないかという考え 方にもとづいて、この本をつくりました。 この本が、いまある毎日のくらしを見つめ、明日からの 生活に楽しいヒントを与えられることを願っています。 多摩美術大学大学院 美術研究科 デザイン専攻 コミュニケーションデザイン領域
竹内まゆ
発行日:2014年1月23日