OECD Economic Surveys: JAPAN 2024 - Japanese version

OECD対日経済審査報告書2024 Executive summary 2024年１月

• 高いリスクはショックに対する強靱さを高める重要性を浮き彫りに • 財政の持続可能性の確保が鍵 • 生産性の改善策を優先すべき • 政府はエネルギー安全保障を確保しつつ、気候変動目標を達成することを目指す • 人口動態の逆風を抑えるには多角的な改革が必要

2 . OECD ECONOMIC SURVEY OF SPAIN 2023 – EXECUTIVE SUMMARY

OECDについて

経済協力開発機構（OECD）は各国政府が協働して国際化による 経済、社会、環境問題に取り組む比類なきフォーラムです。OECD はまた、コーポレート・ガバナンスや情報化社会、高齢化における課 題など、変化と問題を理解し、政府の対応を支援する最前線に立 っています。OECDは、政策の知見の比較、共通課題に対する解決 策の追求、グッド・プラクティスの特定、そして国内外の政策の協調の ための環境を提供します。

国別審査部について 国別審査部は、最高の情報と分析を提供し、各国の改革を支援し ます。我々の経済審査では、その国が直面している最も差し迫った 課題を明らかにする特別な状況について、カスタマイズされた方法で その国の経済状況を評価します。審査は、成長をすべての人にとって 有益なものとするための改革を実現するために政策立案者が講じる ことができる具体的な道筋を示すことで、より強靭な経済をつくり、ウ ェルビーイングを向上させることに寄与します。我々は 60 年間にわた って審査を実施してきましたが、そのいずれも各国の当局との緊密な 連携に立脚しています。こうした信頼関係により、私たちは人々の生 活を向上させる改革への洞察を得ることができます。すべてのチーム は「改革精神」を持ち、その専門知識、視野及び経験は、政府が改 革を行う上で役立つことでしょう。

報告書本体はこちら

OECD ECONOMIC SURVEYS:

JAPAN 2024

OECD Publishing, Paris https://doi.org/10.1787/41e807f9-en

© OECD 2024 The use of this work, whether digital or print, is governed by the Terms and Conditions to be found at http://www.oecd.org/termsandconditions.

OECD ECONOMIC SURVEY OF JAPAN 2024 – EXECUTIVE SUMMARY . 3

高いリスクはショックに対する強靱さを高める重要性を浮き彫りに 世界的な経済、金融政策、金融セクターの変化により、リスクと不確実性が増大している。サプライ・チェ ーンの回復、観光客数の増加、需要抑制の反動と緩和的な金融政策に支えられた昨今の回復は、近 頃勢いを失っている（図1）。 海外の不確実性が外需を圧迫する中、引き続き内 日本は２％の物価目標設定以来、その安定的な 需が成長の主な原動力となるだろう。労働市場は 達成に最も近づいた転換点にある。長期に渡る 引き続き逼迫しており、2024年及び2025年の高い 低インフレの後、日本銀行が金融政策の指針とす 賃金上昇に寄与するだろう。賃金上昇、政府による る指標である生鮮食品を除く消費者物価上昇率 補助金、新たな経済対策が個人消費と投資を下支 は、2022年4月以降、目標の2％を上回っている （図 えするだろう。 2）。 過去30年間で最高水準となる直近の春闘の好 調な成果は、再分配と成長の好循環の実現及び金 リスクは主に海外に存在する。主な下振れリスク 融政策の正常化に向けた第一歩である。政府の補 は、世界経済の見通し、地政学的な緊張、新たな供 助金の終了、GDPギャップの解消、賃金上昇の加速 給制約による。 上振れ要因としては、観光業と国内 に従って、2024～25年の総合及びコア消費者物価 消費が予想よりも力強く回復する可能性がある。 上昇率は約2％になると見込まれる （表1 ）。

図1.パンデミック後の回復は最近勢いを失っている 実質GDP Index 2019Q4=100 110

OECD Japan 100

90

80

2019Q4

出典: OECD国民経済計算データベース

2020Q4

2021Q4

2022Q4

4 . OECD ECONOMIC SURVEY OF JAPAN 2024 – EXECUTIVE SUMMARY

表1. GDP成長率は緩やかになる見込み 2022

2023

2024

2025

GDP（市場価格）

1.0

1.9

1.0

1.1

国内総需要

1.5

1.1

0.7

1.0

244.8

243.5

243.3

242.3

失業率

2.6

2.6

2.5

2.4

消費者物価指数(CPI)

2.5

3.2

2.6

2.0

コアCPI（食料品・エネルギーを除く)

0.3

2.7

2.3

2.0

(特に明記されていない限り、対前年比)

公的債務残高（対GDP比）

出典: OECD経済見通しデータベース(No.114)より四半期GDP速報（2023年7-9月期・２次速報）を踏まえて更新

他国との金融政策の違いが困難を生んでいる。短 期政策金利は-0.1%で据え置かれているが、2022 年12月以降、イールドカーブ・コントロールはより 柔軟に運用されてきた。 インフレの継続と賃金動向 の予測に基づけば、イールドカーブ・コントロール のより柔軟な運用と、短期政策金利の緩やかな引 き上げが適切となるだろう。 ただし、 インフレを巡る 不確実性は高い。

銀行は短期的には強靱に見えるが、 リスクを注視 する必要がある。 潜在的な脆弱性としては、緊急支 援策の段階的廃止、上昇した海外金利及び海外融 資リスク、住宅ローンにおける変動金利割合の高 さ、 ＤＴＩ比率（債務返済額対所得比率）の上昇な どが挙げられる。人口動態の逆風の中で、合併を 支援し、地方銀行のビジネスモデルを改善する政 策は継続されるべきである。

図2.インフレ率は目標を上回って推移 % 4

Headline Excluding food and energy Excluding fresh food

2

0

-2

2016

出典：総務省

2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

OECD ECONOMIC SURVEY OF JAPAN 2024 – EXECUTIVE SUMMARY . 5

財政の持続可能性の確保が鍵 長期金利上昇の可能性に伴う利払費上昇リスクの増大を踏まえ、財政バッファーの再構築と債務の持続可 能性の確保が優先されるべきである。急速な高齢化は支出を圧迫し、すでに多額である高齢者への移転支 出を増加させる。 パンデミックとエネルギーショックに対処するた る余地があるものと考えられる。改革の優先事項 めの財政支援により、公的債務残高は2022年に には、資力調査を通じてより裕福な高齢者への自 はGDPの約245％という前例のない水準に増加し 己負担率を引き上げることや、介護を病院外のケ た。 いまだ残るエネルギーショックに対する支援措 アにシフトすることが含まれる。 置は、段階的な廃止を視野に対象を絞るべきであ る。補正予算と予備費への過度の依存は、財政の 日本は歳入を増やすために主に消費税（付加価 現在の10%という税率は 見通しや目標に対する透明性を低下させる。中期 値税）に頼るべきである。 さらに、個人所 的に財政健全化を可能にする具体的な歳入・歳出 OECDの中で最も低い部類に入る。 施策を策定すれば、財政政策の信頼性と持続可能 得税に対するさまざまな控除により課税ベースが 侵食されている。税制改革は、低所得世帯に対象 性が高まるだろう。 を絞った支援策を伴うべきである。 支出の増加を抑制するには、医療・介護分野の改 革が必要である。入院期間が長いことや受診回数 が頻繁であることから、高齢化する日本人に質の 高いケアを提供するにあたっては効率を向上させ

6 . OECD ECONOMIC SURVEY OF JAPAN 2024 – EXECUTIVE SUMMARY

生産性の改善策を優先すべき イノベーションの枠組みとスタートアップに対するインセンティブを改善するための改革は、生産性と潜在成長力 を高め、高齢化の圧力に抗うための鍵となる。

ビジネスの新陳代謝は弱く、 スタートアップが比 較的少ない。 政府は経営者保証に依存しない融資 を推進しており、 これによりスタートアップの資金 調達が容易になる可能性があるほか、政府保証融 資への依存度が軽減される可能性がある。 規模が 小さいベンチャーキャピタルなどのイノベーション 資本の環境を改善し、 またM&Aを奨励することは、 規模に関する成長障壁の克服に役立つ。

図3.中小企業の研究開発費は少ない傾向 研究開発費に占める中小企業の割合（2021年以降 Share of SMEs in total R&D expenditure の最新年） 2021 or latest year available

% 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10

JPN DEU USA SWE KOR CZE NLD AUT ITA POL IRL FIN GRC BEL OECD SVK ESP PRT NOR EST NZL LVA ISL LTU

研究開発投資に対する公的支援は多いが、 さらな るイノベーションの浸透が必要である。中小企業 が研究開発費全体に占める割合はわずか6%に過 ぎない(図3)。 既存の研究開発税額控除はすぐに還 付を受けることができず、繰り越すこともできない ため、税負担が限られている若くて革新的な企業 のイノベーションを促進する効果は低い。

注：高等教育機関及び民間非営利団体を含む 出典: OECD研究開発統計データベース

0

OECD ECONOMIC SURVEY OF JAPAN 2024 – EXECUTIVE SUMMARY . 7

政府はエネルギー安全保障を確保しつつ、気候変動目標を達成すること を目指す 化石燃料への依存度が高いことを考えると、2050年までに実質ゼロ排出を達成することはチャレンジングであ ろう。再生可能エネルギーは総エネルギー供給量の11%、総電力供給量の22%にすぎない。 政府は、グリーン投資、グリーンイノベーション、 カ ーボンプライシングを組み合わせて目標達成する ことを計画している。炭素価格を低い水準から徐 々に引き上げ、排出量取引制度を導入するという 約束は、貫徹されるべきである。炭素価格の詳細 は十分前もって発表されるべきであり、 その設計は 国際的なベストプラクティスに従い、民間投資を惹 起するに十分なインセンティブと確実性が示され るべきである。

まだ費用対効果が高くない革新的な技術や原子 力発電による排出削減予測には不確実性が伴う。 テクノロジーの変化を考慮すると、 エネルギー源開 発のさまざまな将来を考慮してエネルギーシナリ オとロードマップを作成することが重要である。 電力供給に対する再生可能エネルギーの貢献が 大きくないことは電力システムの分断が一因とな っているが、その向上のための継続的な取り組み はさらに強化されるべきである。電力網を強化す れば、気候目標を達成し、エネルギー安全保障を 高めることにつながる。

8 . OECD ECONOMIC SURVEY OF JAPAN 2024 – EXECUTIVE SUMMARY

人口動態の逆風を抑えるには多角的な改革が必要 予想される人口と雇用の減少は、出生率の低下を反転させ、女性や高齢者の雇用に対する障害を取り除 き、外国人労働者の活用を拡大する政策によって緩和されるべきである。 政府は出生率低下の反転を最優先課題に掲げ、子 育て政策予算を倍増する計画である。 出生率は1.3 まで低下しており、政策変更なしの仮定に基づく人 口動態予測では、日本の人口は2060年までに約4 分の1減少することが示されている。 老齢依存率は 2050年までに79%に達すると予測されている (図4)。

加にあたっては、 その質と十分な数のスタッフが確 保されるべきである。

過去の労働市場改革により雇用は増加したが、正 規・非正規の二元化を打破するにはさらなる取組 が必要である。 若年労働者や女性労働者の非正規 雇用割合は高く、賃金もキャリアの見通しも低くな るため、家族形成が遅れ、女性の労働参加が弱ま ワーク・ライフ・バランスの改善など、家族と子供た り、男女賃金格差の一因となっている可能性があ ちを支援する政策は、出生率の低下を反転させる る。同一労働同一賃金を含む働き方改革を継続す のに役立つ可能性がある。 父親の育児休暇の取得 ることは、60歳で非正規に移行する高齢労働者の 正規労働 率は低く、期間は短い。 これは休暇中の収入の減 労働条件も下支えすることになるだろう。 少、キャリアへの悪影響への懸念、及び中小企業 者と非正規雇用労働者との間の社会保険適用と の育児休暇の資金調達能力の限界を反映してい 訓練についての格差はさらに縮小されるべきであ る。計画されている幼児教育と保育への支出の増 る。

OECD ECONOMIC SURVEY OF JAPAN 2024 – EXECUTIVE SUMMARY . 9

図4 .日本は2050年においてもOECDの中で最も高齢化率の高い国の一つであると予測されている %

老齢依存率

80 2022 2050 60

40

20

0

United States

OECD

Canada

United Kingdom

Germany

France

Italy

Japan

注: 20 ～ 64 歳人口に占める 65 歳以上の割合 出典: OECD人口統計データベース

終身雇用、年功序列賃金、定年制といった日本の 人口減少に対処するには、増加しているとはいえ 伝統的な労働モデルは、高齢者や女性の雇用と労 依然として低い外国人労働者の役割を増やすため 働力の流動性を阻害している。企業が定年（通常 の最近の政策を更に強化することも必要である。 60歳）を設定する権利を廃止すれば、雇用が増加 労働者とその家族に長期滞在資格を提供すれば、 し、賃金設定における年功序列の役割が弱まり、 日本はより多くのより高度なスキルを持った外国 女性や若年労働者にも利益をもたらす可能性があ 人労働者を惹き付けられるだろう。外国人労働者 る。 平均余命の上昇に合わせて年金支給開始年齢 の融和を促進する広範な政策の優先度を上げる を65歳の目標を超えて引き上げることもまた、就 べきである。 労インセンティブを強化することになるだろう。 こ れらの改革には、生涯学習への参加率が比較的低 い高齢労働者のリ・スキリング施策を伴うべきであ る。

“

出生率は1.3まで低下―― 政策変更がなければ、日本の人口は 2060年までに約4分の1減少すると予測 されている――

■ 主な調査結果 | ● 主要な提言 ショックに対するレジリエンスを高める ■ 金融政策は依然として非常に緩和的である一方、 イールドカーブ・コントロールの運用の柔軟性は2022年12

月以降高まっている。 2024年及び2025年の総合及びコア（食品とエネルギーを除く）消費者物価上昇率は約2 ％になると予測されており、賃金の伸びは勢いを増すと見込まれる。 ただし、依然として不確実性は高い。 ● インフレ率が安定的に２％程度にとどまると予測されることを前提として、 イールドカーブ・コントロールの 運用の軟性をさらに高め、緩やかな政策金利の引き上げを開始すべき。 ■ 金融システムは、 海外金利や銀行の海外融資及び不動産融資の増加による潜在的なリスクに直面している。

パンデミック中に付与された実質無利子や完全保証された融資の返済は、特に地方銀行にとってさらなるリ スクを生み出す。 ● 上昇する海外金利リスクと潜在的な信用リスクを注意深く監視するため、 金融監督当局によるシステミックリ スク評価の範囲を拡大すべき。 ■ パンデミックとエネルギーショックから家計と企業を守るための措置により、 公共支出が増加した。 ■ 近年の経済ショックは、 中期的な財政課題を悪化させた。 公的債務残高対GDP比は2022年に245％に達した。 ■ 財政の見通しや目標の信頼性、 政策の評価など、財政の枠組みには改善の余地がある。 ● パンデミックやエネルギーショック関連の支援を段階的に廃止し、 財政赤字を削減すべき。 ● 政府債務残高比率を低下傾向にするため、 具体的な歳出と税制施策に裏打ちされた、基礎的財政黒字を達成

するための明確で信頼できるロードマップを綿密に作成すべき。

● 補正予算や予備費の使用は大きなマクロ経済ショックに限定し、 事後的に評価すべき。

■ 介護用を含む総病床数と平均入院日数はOECD平均を上回る。 ● 介護を病院から、 軽度および中等度のニーズを持つ人々に対する在宅ケアや重度のニーズを持つ人に対する施

設でのケアへと移行させるべき。

■ 税収はOECD平均に近いが、 消費税と個人所得税の割合は比較的低い。 ● 消費税率を小刻みにさらに引き上げることなどにより、 徐々に税収を増やすべき。

生産性の飛躍的な向上 ■ 中小企業 （SME）による研究開発投資はOECDの中で最も低い部類。

● 革新的なスタートアップや初期段階の中小企業による投資のインセンティブを強化するために、 研究開発税

額控除を還付可能にし、 または繰越制度を復活させるべき。

■ ビジネスの新陳代謝は弱く、 スタートアップや生産性の低い企業の退出は比較的少ししかない。 中小企業 融資

に対する寛大な政府保証は、銀行の信用リスク管理の改善に向けたインセンティブを低下させる。

● ベンチャー・キャピタルやM&Aに向けた規制上のインセンティブを強化することにより、 存続可能な中小企業の

経営資源の強化を促進すべき。

● 公的融資保証のカバー率をさらに引き下げるべき。

■ 主な調査結果 | ● 主要な提言 2050年までに実質ゼロ・エミッションを達成 ■ 野心的な気候目標が依拠する排出削減経路は、 まだ費用対効果が高くない不確実な技術や原子力に依存し

ている。

● 技術開発の道行きの不確実性を反映したエネルギーシナリオとロードマップを作成することにより、 不測の事

態に備えた計画について強化すべき。

■ 電力システムの分断は、 大部分の再生可能電源のコスト効率的な統合を妨げている。 ● 費用対効果分析に基づいて送配電インフラへの投資を継続し、 送電網を強化して再生可能電力の供給増加

を支えられるようにすべき。

■ 排出権取引制度 （ETS）を導入し、炭素価格を低水準から引き上げる計画があるが、緩慢な引き上げでは2030

年の目標達成への貢献が限定的となる可能性がある。 ● 計画されているカーボン・プライシング政策が十分なインセンティブを提供することを確実なものとし、 2030 年目標の達成に貢献するため、 より迅速な段階的導入を検討すべき。

人口動態の逆風への対応 ■ 2022年に育児休暇を取得したのは、 対象となる女性は 80%であったのに対し、男性は17%であった。 政府は

男性について2025年までに50％、2030年までに85％という目標を設定することを検討している。 2021年に育 児休暇を取得した男性の半数以上が2週間未満であった。 ●すべての親への （育児休業）給付を引き上げ、企業に対象従業員の休暇取得率の開示を義務付ける ことで、父親の育児休暇の取得と期間を増やすべき。 ■ 女性従業員に占める非正規雇用労働者の割合は、 過去30年間で55％にまで急増した。 日本の二元的労働市

場における非正規雇用労働者の低賃金は、女性の雇用を阻害し、日本の男女賃金格差の一因となっていると 同時に、就業を通じた訓練機会を失わせ、生産性の伸びを鈍化させている。 二元的市場は若者や高齢の労働者 にも悪影響を及ぼす。 ● 正規労働者の雇用保護を緩和し、 透明性を高めることで、二元的労働市場を打破すべき。 ● 社会保険の適用拡大や訓練を非正規雇用労働者に拡充すべき。 ■ 定年退職や年功序列賃金などの日本の伝統的な労働市場慣行は、 急速な高齢化の状況ではもはや適切では

ない。2022年時点では70%の企業が定年を60歳に設定している。 賃金と年功序列との関係は依然として強 い。 ● 定年廃止を念頭にさらに定年を引き上げ、 働き方改革における同一労働同一賃金規定の全労働者への適用 を図るべき。

■ 日本はOECD諸国の中で平均寿命が最も長いが、 年金受給開始年齢（厚生年金の報酬比例部分）はそれぞれ

男性で64歳、女性で62歳にすぎない。

● 平均余命の上昇に合わせて年金支給開始年齢を65歳の目標を超えて引き上げることで、 就労インセンティブ

を強化し、年金給付を増やし、財政コストを削減すべき。

■ 移民統合政策の国際ランキングで日本は下位にランクされており、 これは統合の取組が初期段階にあるとい

う事実を反映している。

● 差別を防止し、 教育や住宅へのアクセスを改善することなど、 移民を統合するための包括的な戦略を実施し、

日本の外国人労働者誘致能力を向上させるべき。

OECD対日経済審査報告書2024

oe.cd/japan

Photo Credits Cover © KOEN Vincent/OECD P5 - © KOEN Vincent/OECD P6 - © Mongta Studio P7 - © Thiti Sukapan P8 - © KOEN Vincent/OECD

こちらもご確認ください。 Websites: www.oecd.org/economy/ | oecdecoscope.blog/ Twitter: @OECDeconomy

LinkedIn: www.linkedin.com/in/oecd-economy-045877205/

YouTube: www.youtube.com/@oecdeco2550

© OECD 2024 The use of this work, whether digital or print, is governed by the Terms and Conditions to be found at http://www.oecd.org/termsandconditions.