波をとぶ船・大岩オスカール

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波をとぶ船 大岩オスカール


ひでとしは、太平洋にうかぶ小さな島に住む少年です。

ひでとしは、太平洋にうかぶ小さな島 に住む少年です。


他の子とちがうことが好きで、きょうだいがごはんを食べていても、 ひでとしはパンを食べていました。


学校で他の子が野球をしているときには、一人でサッカーをしていました。


ひでとしはいつも他の子とちがったことをしていました。 そんなわけで、友達はほとんどいませんでしたが、気にしませんでした。


ひでとしはおとなになって、うでのいい漁師になりました。 船が いちばんの友だちで、何年も長い時間を船の上ですごしました。



ある日、 島がゆれ始めました。



地震のあとには、津波が来るかもしれないと島の人たちは、 みんな高い丘の上に走ってにげました。


ひでとしは港においてある船が、波でこわれてしまうのをおそれていました。 ひでとしはいつも他の人とちがっていました。 そしてみんなと反対むきに船にむかって走っていきました。 船をたすけるためには海 にむかって船をすすめなければいけないと考えました。


数分後に大波が来ました。 全速力で船をはしらせ、いのりながら波にむかってすすみました。




きせきてきに船は波をのりこえました。 しかし、つぎつぎに波がやってきました。


やがてやっと海がしずかになりました。 たすかりました。



ひでとしは暗くなるまでまってから村にかえりました。 港、店、家、そして学校も、すべてのものがこわれていました。


村の船はみなこわれて、たすかったのはひでとしの船だけでした。


ひでとしは本土と島の間を毎日なんども往復して、 島の人々のために食べ物や必要なものをはこびました。



ひでとしは島で一番の人気ものになりました。 自分は自分であり、他の人とちがっていて良かったと、 彼は思いました。




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