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阪神大震災21年:世界に伝えられるよう、英語教科書に詳述 友人亡くした教授、企画 毎日新聞
阪神大震災21年 世界に伝えられるよう、英語教科書に詳述 友人亡くし た教授、企画 毎日新聞 2016年1月8日 大阪朝刊
新年度から使用される中学3年の英語教科書 に、阪神大震災から20年の歩みが掲載される ことになった。震災で友人を亡くした京都教育 大の泉恵美子教授(54)=英語教育=が企 画・監修した。震災を知らない学生が増え、記 憶の風化を懸念したという泉さんは「人の痛み を思いやる心を持ち、世界の人に震災のことを 語れるようになってほしい」との思いを込め た。【村瀬優子】 教育出版(東京都)の英語教科書「ONE WORLD(ワン ワールド)」で昨年、文部 科学省の検定に合格した。全143ページのう ち、リーディング教材として6ページを震災の 記述に充てた。同社によると、震災の詳しい記 阪神大震災の記述が掲載された英語教科書 を企画・監修した泉恵美子教授=神戸市中 央区で、村瀬優子撮影
述が英語教科書に載るのは珍しいという。 震災で泉さんの兵庫県芦屋市の実家は半壊。 母親は2階に閉じ込められ、1時間後に救出さ
れたが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で閉所恐怖症になった。飛行機や混雑した電 車には今も乗れないという。 実家近くには、クリスチャンの泉さんが通った「芦屋川教会」があり、牧師の息子で友人 だった小島謙さん(当時36歳)が幼子2人を残して亡くなった。他にも交流のあった信者 らが犠牲になった。 鎮魂と復興への願いを込めて1995年に始まった「神戸ルミナリエ」。光の中で笑顔の 家族連れの姿を見ると、小島さんたちのことを思って涙が出た。 長年、教育出版の英語教科書で企画や監修を担当。「ずっと震災を取り上げたいと思って いた」が、震災によるPTSDを抱えた生徒がショックを受けるのを懸念し、胸の奥にしま https://mainichi.jp/articles/20160108/ddn/041/040/009000c?mode=print
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阪神大震災21年:世界に伝えられるよう、英語教科書に詳述 友人亡くした教授、企画 毎日新聞
い込んでいた。 しかし、震災後生まれの学生が増え、ルミナ リエを単なる観光イベントだと思う若者も多く なった。「家族や友人を亡くし、悲しみを背負 って生きている人たちの思いを伝えたい」。2 011年に東日本大震災が起きたことも契機に なり、「人々がどう災害を乗り越えていくかを 伝えたい」と企画した。 タイトルは「My Hope for th
「神戸ルミナリエ」の記載がある英語教科書= 村瀬優子撮影
e Future」(将来への希望)。神戸に 住む中3の女子生徒、絵里が、祖母から聞いた震災の話をスピーチコンテストで発表すると いうストーリーだ。 ルミナリエの起源や、震災で犠牲になった少女にちなんだ「はるかのひまわり」、震災か ら生まれた歌「しあわせ運べるように」、神戸の中学生らが東日本大震災の被災地支援のた めのチャリティー・コンサートに参加したことなどを紹介。被災者らが復興への希望を胸に 助け合ったことにも触れ、「私は困難に立ち向かい、助けを求めている人に手を差し伸べら れる強い人になりたい」と結ばれている。 泉さんは「学校現場ではいじめや自殺などの問題が起きているが、命や周りの人たちを大 切にしてほしいというメッセージを込めた。中学3年は将来のことを考える時期。どう生き ていくかを考えるきっかけにもなればうれしい」と話している。
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