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18 自然冷媒動向とGL2020への思い 早稲田大学 基幹理工学部教務主任の齋 藤 潔氏に、日本・アジアの自然冷媒技術を 訊いた // 市場動向 // イベントレポート

自然冷媒の「知」を共有 「最新省エネ冷凍機器技術セミナーと相談会」開催

2019 年 11 月 27 日、一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会 環境・安全委員会主催の「最新省エネ冷凍機器技 術セミナーと相談会」が開催された。同会には協会関係者をはじめ、国内のメーカー各社、エンドユーザー といった 100 名ほどが集まり、自然冷媒機器の開発事情や導入実例を発表。今後の自然冷媒市場の活性化 のため、それぞれの知を共有する場となった。

文 : 佐藤 智朗、岡部 玲奈

独自戦略で進む

国内メーカーの技術開発

日本冷蔵倉庫協会 環境・安全委員長の松田 浩氏 は、開会の挨拶にて昨今の地球温暖化問題の現状 に触れ、社会インフラの一翼を担う業界の責任 について言及。 2020 年をもって生産終了となる R22 をはじめ、フロン類からの脱却、自然冷媒 への移行が最重要の課題であることを改めて訴え た。松田氏は続けて、「その志を同じくして、本 日お集まりいただきました皆様に、改めてお礼申 し上げます」と、感謝の意を伝えた。

一番手となった冷媒動向セッションでは、自然冷 媒技術を提供する各種メーカーが将来的な需要も 加味した、それぞれの技術開発動向、および自社 製品の特長について発表。パナソニック株式会社 アプライアンス社、日本熱源システム株式会社、 長谷川鉄工株式会社、三菱電機株式会社、三菱重 工冷熱株式会社の計 5 社が登壇した。

パナソニック株式会社アプライアンス社は、コー ルドチェーン事業部の島田 賀久氏が登壇。排熱 利用に伴う付加価値付与、そして食品工場にも対 応できるような、大容量化システムの開発。それ に合わせた遠隔監視などの、効率的な機器運用に も力を入れている現状を説明した。日本熱源シス

テム株式会社は、 CO 2 営業部の片岡 昌氏が登壇 し、同社の CO 2 単独冷凍機「スーパーグリーン」 について、新たにラインナップとして加わった 102kW の冷凍能力を持つ F3 タイプも紹介され た。同シリーズは全国的に納入実績を着々と伸ば し、 2019 年 6 月時点で 164 台に達している。猛 暑に対する散水システムなどの対策により、空冷 式の同ユニットは夏場でも十分な省エネ効率を実 現した。長谷川鉄工株式会社は、事業本部営業部 の佐伯 善弘氏が、自社内の自然冷媒および HFO による、低 GWP 冷凍機の展開事例や、省エネ効 率をさらに加速させる 2 つのアプリケーション、 「DEMS」と「Yuricargo」に言及した。 倉庫全体が冷媒動向を注視すべき

市場動向セッションでは、日本冷蔵倉庫業界の 技術部長 田村 裕氏が、独自の試算を元にした国 内の冷蔵倉庫業界における自然冷媒動向を発表。 2018 年度に入り、自然冷媒の使用率が 30% を突 破。 2014 年、政府による補助金事業が始まった のを契機に、徐々に自然冷媒使用率は増えている ものの、現在のペースが続いた場合、 R22 の使用 率が 0% になるのは 2035 年になるという見通し を提示した。日本でもフロン排出抑制法の改正や、 生産量低下によって、今後 HFC をはじめとした フロン類の確保は難しくなる。メーカーはもちろ ん、エンドユーザーとなる倉庫業界全体でも、冷

三菱重工冷熱株式会社からは、エンジニアリング 事業本部の小篠 正慶氏が、同社の CO 2 コンデン シングユニット「C-Puzzle」を紹介。 F 級、 C 級 どちらも 1 台でまかなえる柔軟性の高さや、メ

ンテナンスの労力を極力抑えることのできるスク ロータリーシステムの優位性について解説した。 三菱電機株式会社は、冷機システム製作所 営業部 の平尾 泰良氏が登壇。機械の更新や二重投資の負 担を軽減するために、同社が考える低 GWP 冷媒 の選択の方向性を紹介した。 媒動向をつぶさに観察し、正しい選択をする必要 があることを田村氏は強調した。

また、同会では本誌を発行する shecco Japan 株 式会社からも、本誌編集長の岡部 玲奈が登壇。オ ンライン、オフラインを通じて行なっている社全 体の自然冷媒の啓蒙活動を紹介し、 IEC(国際電気 標準会議)による炭化水素の規制緩和や、ヨーロッ パの F ガス規制や F ガス税によるフロンの価格高 騰、日本の大容量システムの需要などに触れた。 イベントレポート // 39

エンドユーザーパネルディスカッション

安全性の全てに好影響

エンドユーザーパネルでは、協和冷蔵株式会社、 株式会社フリゴ、浜松委托倉庫株式会社らエンド ユーザーが、それぞれ自社における自然冷媒機器 の導入事例を発表した。

協和冷蔵は、本社広島物流センターの森近 彰氏 が登壇。本社物流センターは、合計 14,770t の 収容能力を持つ。そのうち、昭和 56 年 2 月に竣 工した F 級 5,226t について、株式会社前川製作 所のアンモニア /CO 2 冷凍機「NewTon」へ切り 替えを実施した。また平成 24 年に完成した広島 流通加工センターについても、 F 級にて前川製作 所の「NewTon」を採用した。さらには平成 29 年に増設した同センターの C 級倉庫についても、 「NewTon」を設置している。既設・新設両方で積

極的に自然冷媒機器を採用した結果、流通加工セン ターの年間消費電力量が、設備 t あたりで 85kW ~ 88kW と、非常に優れた省エネ性を発揮している。

フリゴは、同社の会長で日本冷蔵倉庫協会の副会 長を務める西願 廣行氏が登壇。これまで同社では、 和歌山第一物流センターの設備更新、北港物流セ ンターの新設、和歌山第二物流センターの設備更 新の 3 事例で、環境省の補助事業を活用し自然冷 媒機器を導入した。なお、機器は長谷川鉄工のア ンモニア直膨とアンモニア /CO 2 を採用している。 CO 2 削減効果は、補助金申請時には 280.8CO 2 t と 想定していたが、 2018 年度実績では 430.7CO 2 t と、大幅な改善を実現した。この他に、アンモ ニア保有量は全体で 88.8%(2,100kg → 235kg) 削減、月間使用電力量も、メーカーによる運転最 適化の結果、 26.7% 削減(2019 年 10 月と 2018 年 10 月で対比)を実現するなど、自然冷媒機器 導入が環境配慮・経営改善で大きく貢献した。

最後に登壇した浜松委托倉庫の事例紹介をしたの は、不動産部次長の須山 貴司氏。同社は 1995 年 より R22 冷媒を採用した冷凍機を使用しており、

屋上にクーリングタワーを設置し、水冷却を用い

ていた。その老朽化に伴う設備更新に対して、日 本熱源システムの CO 2 冷凍機「スーパーグリーン」 の F2 タイプを 2 台採用した。 8 月単月での削減 率では、 2018 年は R22 冷凍機と比較して、前年 比 11.1%、 2019 年は前年比 17.4% と大幅な省エ

ネ効果を得られている。年間を通じても、フロン 機と比較して約 30% の削減が見込めると、須山 氏は説明する。水冷式から空冷式へ移行したこと で、水道料金の削減にも貢献。 2019 年 10 月の 記録的豪雨では 2 日間にわたり停電に見舞われた が、安全弁が作動したことで冷媒の漏洩は少量で あった。期せずして、機器の安全性を証明する結 果にもなったという。

冷蔵倉庫業界は事業活動を続けるにあたり、冷凍 設備への大型投資を避けて通ることができない。だ からこそ、事業者の垣根を越えた協会が主導して、 自然冷媒に関する知識・ノウハウを共有する場を設 けることには、大きな意味があるだろう。数々の事 例や製品ライナップを目の当たりにして、今後さ らに自然冷媒機器導入が加速することを願ってや まない。また、今回の発表では、複数の登壇者か ら開発・導入の際、本誌が提供する情報が大きく 役立ったという声を頂戴した。今後も彼らのような 声が増え続けるよう、自然冷媒に対して後押しとな るべき啓蒙活動を継続していきたい。 TS,RO

日本冷蔵倉庫協会 技術部長 田村 裕氏

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