四 文 化 広 場 日常と死の空間研究
メキシコでは 「死」 を自分とは異なるモノとして捉え、 親しみを込 めて笑いの対象として認識する。 このメキシコ特有の死生観は、 古代マヤ時代の、 儀式と生活が場を共有する都市構成からの 影響も少なくはない。 アステカ文明の都市跡、 スペイン植民地時代のカトリック教会、 近代の高層住宅群が併存する、 メキシコシティ北側のトラテロル コを対象とする。 ここでは侵略と支配が繰り返され、 多くの犠牲 者を生み、 歴史の継承と死者への追悼が必要とされている。 生と死が隣り合うマヤ時代の都市構成 ・ 建築形式を分析し、 日 常 ・ 歴史 ・ 死を孕む建築を提案する。
メキシコの死の隠喩と死生観
「死が人間を連れてゆく (llevarselo la muerte)」
「神に魂を返す (entregar el alma a Dios)」
「歯を剥き出す (pelar los dientes)
「倒れる/落ちる (caer)」
「脚を曲げる (doblar los remos)」
「くちばしを打ちつける (hincar el pico)」
メキシコにおける死の隠喩の豊富さは、 文学作品、 ことわざや民衆の コリード、 そして日常言語の中の 「死」 を表わすさまざまな言い回しの 中に見出すことができる。 「死ぬ」 を表わす慣用句も豊富で、 「死ぬ」 を意味する慣用句でもっとも一般的なものが、 「死が人間を連れてゆく (llevarselo lamuerte)」 というものである。 「死が人間を連れていく」 と いう表現は、 「死」 は自分自身でない異質なもの、 つまり 「死は他者 である」という隠喩が成り立つ。 また、100 近くもある死の呼称は、骸骨、 女性、 死神、 時間などのさまざまな事象に例えられてきた。 「死」 が 多数の愛称や蔑称を有していることに、「死と親しい」 「死を笑う」 といっ たメキシコ的死への態度を見いだすことができる。 メキシコで古くから 「死」 は他者的で、かつ親しみ嘲笑う対象としての認識が広がっている。
メキシコ 死者の日
毎年 11 月 1 日 2 日に祝祭される 「死者の日」 はメキシコ土 着の死者追悼儀礼と豊穣祭、 そしてカトリックの万聖節、 万 霊節が融合したものと考えられている。 この祭りは大人数で集 まり、 飲み食いし大騒ぎすることで死者を迎えることが特徴で ある。 これはメキシコの伝統的な死生観を表している。 しかし、 1985 年のメキシコ地震によって多くの犠牲者が生まれたこと を機会に、 「死」 は尊み悲しむものであるという認識が広がり、 現在、 死者の日はこの二面性を持つ祭事となっている。
出典 : Diego Rivera, Granger Collection, (1924), “Mural Rivera Día de los Muertos NFeast de los Día de los Muertos de Diego Rivera en el Ministerio de Educación”
対象敷地
敷地はメキシコシティの北に位置するトラテロルコの三文化広場。 アステカ時代の神 殿都市跡、 スペイン植民地時代のカトリック教会、 近代社会の高層住宅群が並存 する土地である。 これまでの歴史を上塗りするかのように、 新たな都市が建設され 続け、 現在は日常の生活と歴史的な遺跡跡が同じ空間に存在する。 これまでに、 侵略と支配が繰り返され多くの犠牲者が生じた。 そのため歴史を継承し、 犠牲者 を追悼する空間が必要とされている。
出典 : Una Vide Moderna, La Plaza de las Tres Culturas y Cuidad Habitacional Nonoalco -Tlatelolco(https://unavidamoderna.tumblr.com/post/74762748218/la-plaza-de-las-tres-culturas-y-cuidad)
支配と戦いの歴史
世紀 -14
中心とした生活を行っていた。
1910-近代社会
世 7紀 テオティワカン族が居住し、 狩猟採集を
一般住宅の不足や不規則な居住地の増 加といった問題を解決することを目的と し、 1958 年から建築家のマリオ ・ パニに よって都市型複合施設街の計画が進めら れた。 ハウジングユニットは、 労働階級ご とに 3 つのセクションに分割し、 市内で最 も重要な 3 つの道路軸に囲まれている。
に都市を建設する。 儀式のための生贄や 捕虜の虐殺が日常的に行われていた。
トラテロルコ事件 1968
1337-アステカ文明
トラテロルカス族がメキシコの北にある小島
スペイン侵略軍との戦いに破れ、 トラテ 殺された。 6 世紀、 アステカの神殿の 上にサンティアゴ神殿が建てられた。 サ ンティアゴ神殿は、 西洋文化を導入し、 それを先住民の文化に押し付けることで、 ヒスパニック以前の都市を再編成した。
メキシコ地震 1985-
1521スペイン侵略
ロルコでは約 40,000 人もの先住民が虐
メキシコオリンピックが開催される直前に、 学生運動が激化し、 メキシコシティ内の いたるところでデモ運動が多発していた。 トラテロルコの三文化広場で集会が行わ れていたところに、 政府の鎮圧隊が突入 し、 約 200 人ものデモ隊を虐殺し、 その 中には無関係の一般人も含まれていた。
メキシコ地震の際、 政府が劣悪な方法で 建設したことが原因で、 高層住宅 2 つが 倒壊し、 住人約 500 人が死亡した。 他 にも 8 棟の建物が取り壊され、 4 棟の最 上階が撤去された。 地震後、 建物は修 復されたものの住戸の価格は下落し、 低 所得者が流れ込んでくることとなった。
ホームレスの人たちが住んでいたりと、 ト
が住んでいた。 1846 年の米墨戦争を
ラテロルコの景観は悪化の一途をたどって
機に 20 世紀半ばまで、サンティアゴ・デ ・ トラテロルコの教会と修道院は閉鎖され、 修道院は軍の刑務所、 教会は軍の倉 庫として使用され、 南塔を破壊して刑務 所と倉庫のための水槽を設置された。
2001-現代社会
1810独立戦争
Tlatelolco 地域には最も惨めな下層階級
いる。 地下鉄トラテロルコ駅の出口には、 露店商人や物乞いが占めている。 公共 機能の不足などが原因となり、 住民間の コミュニティも希薄になっており、 現代生 活に適応した改変が必要となっている。
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敷地周辺図
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1. テンプヨマヨール’1337年-
5. 三文化広場
9. 財務省
2. サンティアゴトルテロルコ教会’1521年-
6. 計画敷地
10. 地区庁舎
3. トルテロルコ団地’1957年-
7. ラ・ペラ庭園
11. ショッピングセンター
4. メキシコ国立自治大学’1964年-
8. 外務省
近代の高層住宅 1960 年、 低所得者の住居を一掃し、 約 12,000 戸を持つ 102 の高層住宅が建設さ れた。 幾何学的な立面を持ち、 均質な住居 空間が形成された。 現在、 公共施設の不 足などにより治安の悪化が問題とされている。
植民地時代のカトリック教会 スペインによって侵略された際、 信仰によっ て支配するために、 アステカ時代の神殿が破 壊され、 その石材を用いて建設された。 19 世紀末より 1944 年まで刑務所や倉庫として 利用されていた。
アステカ時代の神殿跡 アステカ文明の二大都市として栄え、 大規模 な神殿が建設されていた。 神殿以外に球戯 場、 学校、 図書館、 神官の住居などによっ て中心の広場が形成されていた。
マヤ文明の都市分析
歴 史 的 に見 ると、 マヤ文 明 は
3つの時 代 から成 り立 っている。
紀元前 年 頃 から 「前 古 典 期 」 (「形 成 期 」)、 紀 元 後 1500 年 から 900 年 まで続 いた 「古 典 期 」、 そして 900 年 から 300 世 紀 初 頭 のスペイン人 の到 着 までの 「後 古 典 期 」 であ る。 16 マヤ文 明 の都 市 は幾 つかの規 則 に基 づいて計 画 されており、 神 殿 、 宮 殿 、 ピラミッドな どの建 築 物 で構 成 される広 場 を 中 心 とし、 周 辺 に市 民 の住 居 が点 在 す る。 石 造 の神 殿 建 築 は長 い 時 間 を かけ 地 形 に沿 って増 改 築 さ れ ていることで、 不 規 則 な 配 置 も見 られる。 これらの都 市 から建 築 物 の配 置 計 画 を参 照 とす ることで、 生 と死 が隣 り合 う建 築 の提 案 を行 う。
マヤ文明の都市分析
UXMAL:主な建造物の方位は北北西であり、 天文学 的に重要な配置である。 ウクスマルの公共建築は、 古 代メキシコの他の地域と同様に、 内部空間がほとんど 存在しない建造物で囲まれた大きな広場で構成され、 15
住民が定期的な活動や儀式のために集まる。 「魔術師 のピラミッド」 は、 底面の大きさが 70×50m、 高さが 約 27m あり、 正面は西向きで、 45 度の角度で置か
14
れた仮面の束に挟まれた階段は、 内部 4x4m の 2 つ
13
の部屋からなる神殿へと続いている。 この都市の建築の特徴のひとつは、 細長い構造で、 四角形に配置されたベイがモニュメンタル ・ アーチを介 2
1
してアクセスすることである。
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ウクスマルの尼僧四角錐は、 宇宙の縮図として様々な 儀式に使われた。
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Map of Uxmal: 1. Pyramid of the Magician. 2. Nunnery Quadrangle. 3. Ball Court. 4. House of the Turtles. 5. Governor's Palace. 6. Great Pyramid. 7. South Temple. 8. House of Pigeons. 9. House of the Old Woman. 10. West Group. 11. Cemetery Group. 12. Colomns Group. 13. Terrace of the Monuments. 14. North West Group. 15. North Group.
出典 : Universidad Nacional Autónoma de México (UNAM) Instituto de Investigaciones Filológicas (2010), “MAYAS GUÍA DE ARQUITECTURA Y PAISAJE THE MAYA: AN ARCHITECTURAL AND LANDSCAPE GUIDE” , p132 を基に筆者作成
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Map of the Main Plaza of Topoxté: 1,Building A. 2,Building B. 3,Building C.
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Map of Yaxchilan: 1,The Main Plaza. 2,Hieroglyphic Stairway1. 3,Ball Court. 4,Structure1. 5,Structure3 6,Structure20. 7,Structure21. 8,Structure22. 9,Structures 23 and 24. 10,Central Acropolis. 11,Structure33. 12,South Acropolis. 13,Structure40. 14,Structure41. 15,West Acropolis. 16,Temple44. 17,Temple42. 18,South-East Group.
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Map of the Central Group at Dos Pilas: 1,Central Plaza. 2,Structure L5-49. 3,Structure L5-1.
Map of Comalcalco: 1,North Plaza. 2,Temple I. 3,Temple II. 4,Temple III. 5,Temple IIIa.
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Map of the Group I at Pomoná: 1-13. Buildings 1 to 13.
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Map of Piedras Negras: 1,South Group. 2,Structure R-9. 3,Structure R-1. 4,Structures R-3 and R-4. 5,Structure
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Map of Tikal: 1,Great Plaza. 2,Central Acropolis. 3,North Acropolis. 4,East Plaza. 5,West Plaza. 6,Temple III.
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Map of Altun Ha: 1,Plaza A. 2,Temple A1. 3,Structure A2. 4,Structure A3. 5,Structure A4.
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Map of Hochob:
Map of Edzná: 1,Great Plaza. 2,Great Acropolis. 3,Temple of the Five Storeys. 4,Solar Platform. 5,North Temple. 6,North-West Temple. 7,Puuc Courtyard.
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Map of South Group at Balamkú: 1,Plaza A. 2,Plaza B. 3,Plaza C. 4,Plaza D. 12
NORTHERN CAMPECHE
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SOUTHERN CAMPECHE AND QUINTANA ROO
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Map of Santa Rosa Xtampak: 1,Palace. 2,Building with the Serpent Mouth Façade. 3,Red House. 4,House of the Stepped Frets. 5,Itzamna House.
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Map of Chunhuhub: 1,Structure I or
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Map of Becán: 1,Plaza A. 2,Structure I. 3,Structure IV. 4,Plaza B.
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Map of Chicanná: 1,Structure XX. 2,Structure XI. 3,Central Group.
NORTHERN YUCATÁN
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Map of Oxkintok: 1,South Plaza. 2,Satunsat. 3,South Group. 4,May Group. 5,Temple of the Devil. 6,Ch’ ich Palace. 7,Canul Group. 8,Dzib Group. 9,North Plaza. 10,North Group.
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Map of Labná: 1,Arch. 2,North Square. 3,South Square. 4,Mirador.
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NORTHERN YUCATÁN
Map of Hormiguero: 1,Structure I. 2,Structure II. 3,Structure III. 4,Structure V.
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Map of Dzibilchaltun: 1.Access and Museum. 2.Central Plaza. 3.Sacbé 2. 4.Sacbé 1. 5.Temple of the Seven Dolls.
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Map of Chichén Itzá: 1,Great North Platform. 2,Castillo. 3,Platform of Venus. 4,Tzompantli. 5,Great Ball Court. 6,Sacred Cenote. 7,Temple of the
Map of Sayil: 1,Palace. 2,Temple of the Hieroglyphic Lintel. 3,Mirador. 4,South Group.
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Map of Kabah: 1,Palace. 2,Teocalli. 3,Codz Pop. 4,Quadrangle. 5,Great
出典 : Universidad Nacional Autónoma de México (UNAM) Instituto de Investigaciones Filológicas (2010), “MAYAS GUÍA DE ARQUITECTURA Y PAISAJE THE MAYA: AN ARCHITECTURAL AND LANDSCAPE GUIDE” , p132,134,138,160,172,180 を基に筆者作成
都市配置と接続
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宮殿や神殿によって人場が形成されていたマヤの都 市では、 直交配置のみだけでなく、 異なる機能の建 築物同士は角度をつけて接続されることがある。
出典 : Universidad Nacional Autónoma de México (UNAM) Instituto de Investigaciones Filológicas (2010), “MAYAS GUÍA DE ARQUITECTURA Y PAISAJE THE MAYA: AN ARCHITECTURAL AND LANDSCAPE GUIDE” , p132,134,138,160,172,180 を基に筆者作成
マヤ文明の都市分析
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都市配置の規則性 マヤ都市の建築物は基本的に直交と平行の方向に計画されている ( 図 1.a,b,c)。 マヤの建築 物は出入口が一方向のものが多く、 装飾が施され、 そこからの視線が意識的に確保される ( 図 2.a, b)。 正面に階段があると軸性が強調され、 階段の終始が重要視されていることから、 正 面に台 ( 碑 ) が置かれる場合もある ( 図 3.a, b)。 複数の石碑を互いに参照して配置する ( 図 4)。 球戯場の中心線や、 3 点を通過する基準線が都市の軸を形成する ( 図 5.a,b)。 天文 観測所 (図 6a) から 3 つの球戯場の中心点を見ることができ、 2 つの球戯場は天文観測所 から同じ距離にある。 マヤ地域では日の出と日没の終わりの方向が重要視され ( 図 7.a)、 図 6b のように建築物が配置される。 十字架は天文マークとも呼ばれ、 配置計画の基準線として 用いられる ( 図 7.b)。 図 8.a,b,c,d は、建物のエッジを 1 点から見た場合と、2 つまたは 3 つのエッ ジが重なった場合、 建物の前面や正面に沿って見た場合の視覚的方向を示している。
1. 建物 to 建物
2. 放射状
都市配置の不規則性 マヤの都市には幾つかの共通点と規則が 存在し、 それらによって中心の神聖な広 場が形成されている。 しかし、 幾何学的 に綺麗な形状のものは少なく、 いずれも少 し崩れた形状をしている。 その理由として
3. 同心円上
5. 球戯場の利用 a
敷地の隆起や河川などによるものと、 上 記に挙げられる共通点が見られた。 本計 画では生と死が並存する空間をつくるため に、 神聖な広場の形成手法とその崩す方 について、 マヤの都市を参考とする。
4. 凹凸
b
出典 : Trillas, 5. A. de C. V. (1997), “Diccionario de Arquitectura Mesoamericana” , p15 を基に筆者作成
マヤ文明の建築形式
マヤ 都 市 の中 心 地 区 は、 儀 式 用 の台 座 、 ピラミッド、 神 殿、 宮 殿、 球 戯 場、 天 文 台、 祭 壇、 蒸 気 浴 場、 塔 な どの建 築 物 によって構 成 され ていた。 これ らの建 築 物 は主 に神 への信 仰 のために儀 式 を 行 う ための機 能 を 持 ち、 かつ象 徴 的 なものにす るために、 巨 大 性 、 中 心 性 、 装 飾 性 、 重 厚 性 などを持 ち合 わせていた。 また、 機 能 ごとに建 築 物 の形 や配 置 の特 徴 が存 在 す る。 これらの形 式 を基 に現 代 の機 能 へと適 応 す る。 この際 、 それらの日 常 性 や非 日 常 性 に着 目 し、 現 代 的 な解 釈 を行 う。
マヤ文明の建築形式 ピラミッド / Pirámides
Comalcalco Templo VII
Tikal. Templo I
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Uxmal. Pirámide del Adivino
Dzibilchaltún Templo de las Siete Muñecas
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Piedras Negras. Estructura K-5
Palenque. Templo de las Inscripciones
Chichén Itzá. El Castillo
千鳥足の基壇 (多くの場合は 9 個) を重ね合わせたもので、 マヤのピラミッドは真の幾何学の ものはない。 ピラミッドの頂上には神殿が配されていることが多く、 神殿を天空に近づける役目 を果たしている。 マヤ時代では増改築の際、 過去の建築物の上に追加する形で建設し、 新し い構築物の中に以前の構築物が残される。 中央の階段では生贄の儀式などが行われていた。
出典 : Universidad Nacional Autónoma de México (UNAM) Instituto de Investigaciones Filológicas (2010), p68-69 を基に筆者作成
マヤ文明の建築形式 神殿 / Templo
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Chichén Itzá. El Akabdzib
Uaxactún. Estructura L
Tikal. Estructura 5D-65
Uaxactún. Estructura XVIII
Piedras Negras. Estructura J-9
Palenque. Estructura C
四角形の平面を持ち、 垂直な壁に 1 つ、 3 つ、 または 5 つの入り口があり、 直接またはポルティ コを通って、 いくつかの部屋につながっている。 入り口は、 両側に 3 つずつある埋め込み式のリング にカーテンを結び付けて閉じられていた。 寺院には基本的に窓はないが、 神殿には長方形の形や 空気を意味する記号 IK を模した開口部が稀にある。 内部空間は、 ペテンの小さな聖域からパレン ケの大きな聖域まで様々であり、 神々のための儀式が行われていた。 ピラミッドの上にある装飾的な 外観を持つものは、 奥の部屋があり、 祭壇としての神社が配置されていた。
出典 : Universidad Nacional Autónoma de México (UNAM) Instituto de Investigaciones Filológicas (2010), p68-69 を基に筆者作成
マヤ文明の建築形式 宮殿 / Palacios
Comalcalco. Palacio
Kabak. Codz Pop
Uxmal. Palacio del Gobernador
単一またはグループで、 儀式広場内の台座に配置されている。 平らな壁 に装飾されたフリーズがある。 内部には多くの部屋があり、 支配階級の居 住空間となっていた。 壁や天井に石灰岩を使い、 台座には大量の積石を して、 床、 壁、 天井のすべての面をスタッコや塗料で仕上げ、 天井には 情報を記したレリーフを施すのが一般的だった。
出典 : Universidad Nacional Autónoma de México (UNAM) Instituto de Investigaciones Filológicas (2010), p68-69 を基に筆者作成
60m
マヤ文明の建築形式 球戯場 / Cancha
N 50m
マヤ文明では球技は宇宙を表現する行為として捉えられ、 都市の 中で球戯場は重要な役割りを担っていた。 球戯場は二つの向かい 合うスタンドから構成され、 平行する二つの建築物によって軸線が 生み出され、 都市の中に方向を付加するために配置されていた。
出典 : Rodrigo LiendoStuardo (2014), “CANCHAS DE JUEGO DE PELOTA EN LA REGIÓN DE PALENQUE, CHIAPAS: REPRESENTACIÓN Y POLÍTICA” , p147 を基に筆者作成
マヤ文明の建築形式 蒸気浴場 / Temascal
Dzibilchaltun 605-2F
Tikal 5E-22
Chiapa del Corzo 1J1a
Zacualpa 3C
Nakum 26
Joya de Ceren 9
Copan 10L-223-2b
Copan 10L-223-2b
Piedras Negras S19 Piedras Negras O4
Uaxactun AV R7-8
Quirigua 1B-3-1
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Quirigua 1B-2
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Piedras Negras P7
Piedras Negras N1
Chichen Itza 3E3
Chichen Itza 3E15
マヤ文明には共同蒸気風呂と家庭用蒸気風呂が存在し、 共同のも のは球技や儀式の前に体を清めることや、 治療にも用いられていた。 大きな蒸気風呂では前室、 蒸気室、 奥室のように分かれており、 前室では更衣や外気浴などが行われていた。
出典 : NURIA MATARREDONA DESANTES (2014), “LA ARQUITECTURA DEL BAÑO DE VAPOR EN LA CULTURA MAYA” , p29,32 を基に筆者作成
マヤ建築の構成要素
マヤ文 明 の建 築 物 の非 日 常 性 に着 目 す ると、 奇 妙 な 形 と外 観 の装 飾 性 に大 き な 原 因 があ ると考 えられ る。 ま ず 、 都 市 の中 心 地 区 を構 成 す る石 造 の建 築 物 の内 部 空 間 は、 そのほとんどがヴォー ルト天 井 によって形 成 さ れ ている。 しかし、 それ ら は西 洋 のヴォー ルトや アー チの よう に構 造 的 な 合 理 性 を 持 ったも のではな く、 当 時 の 空 間 のイメージから形 づくられている。 また、 装 飾 性 に ついては、 生 物 の顔 を モチー フにす るも のか、 幾 何 学 の 連 続 が用 いられていた。
マヤ建築の構成要素 基壇 / Tablero
El Tajin edif.B
Tazumal edif.C
Teotenango gr.1
Topoxte, edif.C
Calixtlahuaca, sub
Palenque, edif.XIV
Teotihuacan, conj. plaza W.Matacapan
Teotihuacan 1B
El Tajin edif.J
Ixtlan del Pdo altares
Misantla edif.A
Xochicalco edif.D
Chichan Itza, Caracol
Uaxactun E-VII sub
Tepepulco
Cholula, plaza SW
El Tajin Pir Nichos
Kaminaljuyu,e7
Tlalancaleca
Cholula, edif. Teotih
Cholula, Edif.3
Uaxactun E-VII sub
Chichan Itza, Guerreros
Chichen Itza Caracol
El Tajin edif.C
Kaminaljuyu, B4
Teotihuacan, Caracoles Empl
Huapalcalco. pir
Cholula, Patio Altares
Acanceh
Tenochititlan, Recinto sagrado
Chichen Itza Castillo
Teotihuacan Agric
Dzibilchaltun, 38
Teotihuacan, Quatzulcoal
Huapalcalco. plat inf
Cholula, Sub. Patio Altares
Copan edif.10BA
Chohula edif.N Gran Pir
Copan, edif.2OA
Xochicalco. Serp, Empl
Dzibilchaltun, 612
Teotihuacan, 4D-A sub
Tingambato
Cholula, Sub. Gran Pir
Chiapa de corzo, 1H
Tula. El Corral
Manzanilla, cancha
Cholula NO, Gran Pir
Tikal, edif.5D-42
Teotihuacan, Ciudadela
Teticpac
Cholula, edif.F
Tikal, 5D-23
Tula, edif.adosado
El Ixtepete
Teotenango, edif.2D
Tikal, 6E-144
Teotihuacan, S.Zacuala
Cholula, Sub Patio Altares
Teopanzolco
Chichen Itza, plat.Agullas
Tenochititlan, edif.H
Xochicalco, Templo estelas
Cholula, Patio Altares
Tula, edif.B
Chichen Itza plat. Venus
建築物の台座やコーニス部分に用いられる斜面と垂直面の組み合わせによる象徴的な段 差構造。 地域によって様々な特徴があり、 幾何学的な紋様が用いられるものも存在する。
出典 : Trillas, 5. A. de C. V. (1997), p192-193 を基に筆者作成
マヤ建築の構成要素 フリーズ / Junquillo
xcalumpococh
sayil
chacmultun
uxmal
50m
kiuic
xculoc
sacbey
xlapak
labna
uxmal
culuba
chunhuhub
Santa Rosa Xtampak
建築物の壁やフリーズ部分に半円形の円柱を持つもの。 通常は脇柱よりも薄く、 装飾的な意味 のみを持つ。 主に宮殿に用いられることが多く、 動物型の仮面と合わせて用いられる場合もある。
出典 : Paul Gendrop (1985), “Arquitectura y Arqueología. Metodologías en la cronología de Yucatán” , p76,79,80 を基に筆者作成
マヤ建築の構成要素 ヴォールト / Bóvedas
5m
Chichen Itza Monjas Annex
Chichen Itza
Tulum
Tulum
arco del Palacio del Gobernador de Uxmal Edificio X-VIII de Uaxactun
Las Monjas, Chichen Itza
Chichen Itza
Tulum
Templo de los Frescos, Tulum
Palenque
Templo del juego de pelota, Copan
Palacio del Gobernador, Uxmal
Edificio E-X de Uaxactun
Edificio A-V de Uaxactun
Edificio 1 de Tikal
Casa A, Palacio, Palenque
cripta secreta de Palenque
Uaxactun
Viejo Imperio
Nuevo Imperio
Arco de Labna
Nuevo Imperio
中心広場の石造建築物の内部空間の多くはヴォールトによって形成されている。 しかし、 それらの多く が構造的に非合理的で上下の石をモルタルで強引に接着し左右から積み上げていき、 頂点で蓋をする ことで建設された。 すなわち、左右の石造が構造的に分離されていることで、特徴的な空間となっている。
出典 : Laura Gilaberlt Sansalvador (2018), “La bóveda en la arquitectura maya” , p55-67 を基に筆者作成
マヤ建築の構成要素 柱 / Columna
Hormiguero
Xcalumkin
Culucbalom
Xpuhil
Puuc
Uxmal
Chuncatzin
Santa Rosa Xtampak
Chacbolay
Xcochkax
Kiuic
Channa
Xaxbil
マヤ建築の柱には立方体型と円柱型のものがあり、 円柱型のものはエンタシ スのように膨らみを持つ者が多く見られる。 柱の形態は、 独立柱・付柱・壁柱 ・ 脇柱などが存在し、 神聖な建物には柱頭や中段に彫刻が施され強調される。
出典 : Trillas, 5. A. de C. V. (1997), p57 を基に筆者作成
マヤ建築の構成要素 石積み
2m
MPC(early)
MPC(late)
LPC
Classic
先古典期の建築の特徴として、 石組みがあげられる。 最古の石造物は、 紀元前 900 年か ら 600 年のもので、 高さ 2m ほどの小さな粗石を積み重ねた垂直壁で構成されている。 先 古典期中期後半、 細かく切断された巨石をエプロン状に配置した。 後期先土器時代には、 ブロックの大きさが若干縮小されたが、 盛り土に固定され、 石の露出は最小限に抑えられた。
出典 : 14. Richard D Hansen (1998), “The Pre-Classic Antecedents of Classic Maya Architecture” , p97,99 を基に筆者作成
提案
11
1階平面図 1:250 1. 受付 2. ロビー 3. 展示室 4. 事務室 5. 資料庫 6. 階段室 7. 追悼室 8. 会議室 9. 倉庫 10. 水盤 11. 広場 20m
7
6
7
3 6 3
5
3 3
9
8
10 5 3
3 4 3
2 1
5 6
南北 断面図 1:250
4 3
10m
1. 受付 2.前廊下 3.水盤広場 4.追悼室 5.ホワイエ 6.列柱廊
1
2
接合部アイソメトリック図
会議室 / 展示室 / 階段室
広間 / 追悼室
居室 / 基壇 / 儀式室
ピラミッド
受付 / 展示室
階段室 / 追悼室 / 階段室
台座 / 球戯場
儀式室 / ピラミッド / 蒸気浴室
列柱廊 / 広間
階段室 / 展示室
列柱廊 / ピラミッド
蒸気浴室 / 球戯場
西側 Eje Central Lázaro Cárdenas 通りより
追悼広場
北側立面
南西より追悼広場をみる
南東よりエントランスをみる