風人よし
地域よし
防災よし
環境よし
土人よし
五方よしグリーンエコツーリズム滋賀 ∼琵琶湖と山を繋ぐみんなの港∼
澤竜一研究室 1113016 駒井健也 Ⅲ敷地選定手法 昔からある、地域性、失われた地域性を誰でもわかるように都市をイメージ化し、そこにパ タンを入れる。その土地らしさが失われた港を再構築する。
Ⅰ 敷地背景とコンセプト 滋賀県は琵琶湖を中心とした完結性の高い地理的・歴史的空間で、特に前近代において は長く、政治、経済の中心であった京都に近接し、農、林、漁業や水陸の交通・流通な どの社会的分業を高度に発展させたが現在は衰退している。小宇宙的な地形は自給自足 の循環型社会、滋賀は環境史を考える上で最適のフィールドといえる。その中で琵琶湖 総合開発によって埋め立てられた水運の拠点として栄えていた港に着目する。それらは 全てコンクリートにより埋め立てられ、地域らしさが失われた。失われた湖岸の生態系、 琶湖漁業の生業、人の命。それらを可視化し、誰にでもできる故郷開発地図を作成し、 地元をみんなで守る。そして観光業として連携させ、山と琵琶湖をゼロエミッションで 往復し、地元の資源で建設し、腐っては取り替えていくことで今までの建築にかかるコ ストを 0 円とする。そうした過程の中で地元の人との対話を生む。それを滋賀の各地で 展開させることで 30 年後には震災によりインフラが喪失した際にも機能する港が各地に うまれる。環境観光県滋賀として卒原発に繋が る港を生み、土人よし、風人よし、地域よし、 環境よし、防災よしの五方よしの社会をみんな で作り上げていく。
小宇宙モデル滋賀ダイアグラム 里山 1/2 里湖
琵琶湖総合開発
∼江戸時代
提案港 菱垣
船による
横のつながり
湖上交通の衰え。 が強くなる。
観光者が全てを経験する提案循環システム 宇宙環境(自然) 地球環境(自然) 山村社会 風人 地域住民 来訪者 (来訪者) 地下浸透 間伐
製材
2050 年
湖岸道路
JR
パス
高島 志賀 愛知川 堅田 野洲川 大津 草津川
既存 道路、JR 鉄道
変化後琵琶湖岸道路
びわ 長浜 米原
三国岳 武奈岳
音羽山
守山
ディストリクト
金糞岳 伊吹山
⑥
霊仙山 御池岳
比良山 近江八幡 中主 比叡山
芹川
(日頃通らない線)
自然 山道
マキノ
姉川
和邇川
エッジ
(日頃通る線)
木ノ本
百瀬川 安曇川
⑤ ④ ③ 御在所山 ② 雨乞岳 ①
金勝山
ランドマーク
⑨ ⑦⑧
⑩⑪ ⑫ ⑬
⑭
⑮
⑱ ⑰
⑯
ノード
(心の中でそこの中に入る) (中には入らず、見る) (結節点、用途の凝縮点)
河川 湖岸
水田
山頂
港
壁
集落
灯台
駅
埋め立て湖岸
ベッドタウン
高い建物
埋め立ての港(敷地)
Ⅳ敷地の港の歴史と滋賀の核としての舟 時代の港ごとによって地域らしさが変容した町 滋賀県 製 和舟 和舟 造 船 ・ 寄 700 年代 1100 港 船 の 変 平安、鎌倉時代 戦国、安土桃山時代 化
丸子舟(輸送船)
1600 江戸時代
遊覧船
1894 明治時代
漁船
漁船兼遊覧船
2000 昭和、平成時代 1972 年 琵琶湖総合開発事業
未来
人里
最盛期近江
2030 年
安定な状況
知内川
道路
伏流水の湧き出し
加工
出荷
工芸材
都市部に集中し始め、
農業
山、湖の管理人がいなくなり、
の生活も変わってくる。
漁村社会
来訪者 建設
産卵・育成 休息:・採
地域住民 産卵、育つ場
抽草植物
Ⅱ 5 方よしプログラム(滋賀県の問題)
水草
総林業家数(万人) 後継者問題解決 50 700 40 600 30 500 20 400 10 300 0 200 100 S30 35 40 45 0
渡り 水鳥 淡水魚
既存の観光の湖上
栄養塩吸収 動物・食物プランクトン
交通と、水際の港
運搬
建設。
50
55
堅田衆と呼ばれる 琵琶湖城郭 湖上勢力を支配していた。 ネットワーク。
引き揚げ
一方 土人よし・・・風人との協同仕事による観光収入、交流。 土人 漁獲量(t)
60
H1 5
自然の循環と既存の 利便性を組み合わせ
風人 観光客数(万人) 5000 4000 3000 2000 1000
0( 年) 10 15 20
四方 環境よし・・・現在森林には人の手入れが施されておらず、保証するべきとこ ろがある。全体森林面積 200000ha の 9% を間伐して自転車で流通森林面積 300 本 /ha の間伐必要面積を 70 年かけて建築し利用していく。地域毎の 1ha 当たり4本切り取る。 森林の整備から消費電気量の削減、湖岸生態系を多様化する。 五方 防災よし・・・自転車の所要時間が最も短い時間帯は約 5kmほど日常の自転車
観光はこの区間に観光スポットを設け、繋ぐ。非日常の震災時にインフラが壊れた際にも 湖上交通が機能するように港をゼロエネルギーで機能する暮らせる港を計画する。 60 50 40 30 20 10 0
徒歩
バス 自転 車
自動 車 舟 鉄道
0
5 観光区間 自転車の所要時間が 最も短い距離帯
10 敷地港区間
15
移動距離 (km)
琵琶湖の物資輸送を担い、 約 1360 船の物資運送
遊覧船 創始期明治 27 年 (1894 年)の利用港
漁業の発展と琵琶湖総合 開発による衰退
各時代で時代の水運が出てきて、地域性が際立っていたころ自転車での走行距離約180k mで短い距離10kmずつの18箇所を選定。 Ⅴ故郷開発地図作成による設計趣旨 土地利用、生業、流通経路、防災といった側面を可視化す ることにより、市民による計画、行政との合意形成におい て重要なツールとする。
た新しい社会
二方 風人よし・・・森林水産業体験と、港による釣りや非電化生活体験、既存の観光 スポットを巡り、一人一つずつツアーで家具を作り、港に置くことができる。自分達が建 築建設に携われる。 三方 地域よし・・・風の人が山から琵琶湖へと地域を行き来し、資源を集めてくるこ とで地元のごみ量が少なくなり、且、人とのつながりが生まれ、地域の活性化へ繋がる。 釣り場としての既存機能を漁業林業体験とからめ、地域のブランドをアピールする。滋賀 県の不法投棄量日本一 26.0 千 t 処理費用 35 円 /kgとすると 910 万円 / 年かかるものを資 源として活用し、処理費用削減を試みる。
主に自転車は 10km、それ以 上の場合は舟で移動するよう に配慮すると港が 18 ヶ所必要 となる。
主 要 港
自然は健全でなくなる。 山、湖では人が少ない。 なくなり、利用する人 2050 年 2030 年
地域環境(自然) 農村社会 地域住民
自然を管理する人が
一方・・・土人よし(土地利用変化の可視化) 都市を抽象化するため、リンチの『都市のイメージ』に基づいて 5 つの要素 に分類し、そこに環境の要素を加えるため、琵琶湖総合開発の前後の土地利 用を色分けする。 二方・・・風人よし(釣り場の可視化) 自然と付き合う人たちの話のヒアリングを通じて生業、 、グリーンツーリズム の可視化 三方・・・地域よし(観光ルートの可視化) 港のノードと山のランドマークを終着点に、既存の観光地、地域を0円でま わる。地元の人たちが対話する場を造る。
刺網 水草
刺網 水草
刺網 水草
四方・・・環境よし(流通、観光経路地域性の可視化) 自転車の観光を適応するため、5km ごとにグラデーションを変えて距離を 可視化。
五方・・・防災よし(観光経路、避難時距離可視化) 湖上交通を利用し、自転車の観光と適応するため、自転車 5km ごとの25 分毎に舟での距離を可視化。 Ⅶ港の重層的資源利用形態 公的利用 観光業と農林水産業と防災 地域資源共有 公有 共演 若者、観光者 オ | プ ン ・ ア ク セ ス 資 源
舟
地元の人 農林漁業者 琵琶湖汽船 琵琶湖汽船、漁船 災害、非常時 (観光時、防災時)
共用
ク ロ | 薪炭、植林、非電化装置、 ズ 漁業(建設時、船、水産 ド 移住時 宿泊時 ・ ア 畑、漁の道具 無料貸し出し ク セ ホテル、自転車 ス 畑、パーマ 資 宿泊部屋 カルチャー 源 私有 地帯 私的利用
Ⅵ 山と琵琶湖を繋ぐ四次元ゼロ循環プログラム
川の生態系連環にあわせたエコ 平面 循環テーマ ①縦の繋がりを0エミッションでつくる。 ツーリズム。 里山 人と自然の繋がり 自然、物、人 ①川の流れに沿った縦のパス移動 小学校、中学校 連環(ゼロエミッション運送) ②氾濫源のような岸辺、地域のを 観光名所生態系 巡る横のパス連環(自転車) 人里 駅 ③敷地の湖岸のエッジである川床 運搬 を覆う樹木との垂直の連環 ②横の繋がり ④時間変化、将来の他地域との繋 ③垂直の繋がり 建設敷地 がり(湖上交通)という4次元の ホテル 連環 里湖 観光船、漁港舟
Ⅷ五方よしプログラムによるコスト、エネルギー削減提案 作成した家具、小屋を各敷地 18 箇所で観光業として日常化させる。 , 一方・・・風人良しプログラム 多賀町 , 自然15,700 既存の観光客数から導く搬入可能最大資源量は必ず守る。人里 自然0 彦根
行祭事・ イベント , , 歴史・文化 710,800 1,354,900 , その他853,300
製材 加工
出荷
輸送
生産
1人 家具 12人 小屋
産卵、育つ場
建設
運搬
家具のスケール
キャンプ場、スポーツ施設、
引き揚げ
運搬
小さな小屋、器具のスケールのものができる。
自然の半数約 10,060,000 人の整備
寝るときは既存の空き家を利用し、人が集まり、話せる住まい。
10 年 (2025 年)
お金が必要としない地元の人と話せる住まい。
20 年 (2035 年)
伸びていき、拡張して大きな広場になる。
30 年 (2045 年) 腐ってきた木材は取り替えつつも拡張していく。 CO2 排出量 50%削減
Ⅶ提案自転車日帰りエコツーリズム 高取山ふれあい公園12.1km 8.8km ① ② ③④ 1098m
⑤
霊仙山
彦根港 17.1km ⑥ ⑦行き 12,1km ⑧ ⑨⑩ ⑪ 合計 29.2km 輸送費(トラックであれば 1700 円) 帰り 17.1km 自転車速度平均 15km/h として 2 時間かかる。 31km
開発ルール1.お金を使わず山まで行って港へ。地元資源だけで造形 里山素材 人里素材 里湖素材
河辺林
海浜性河川性植物 浮葉植物(希少) 氾濫植物 オオヨシキリ アサザ ネジレモ
外来種
Ⅶ設計手法と将来ヴィジョン ①今まで集めたパタンを全て観光者 に任せて建設する。5 つの港周辺のイメージか ら周辺の都市のイメージを踏襲しつつ、自分達 の必要に応じて増築。できた小屋から家具を付 随させていく。 ②1 年後バラバラになったものをシュミレーショ ンをかけて平面、断面検討を行い、整えていく。 結果として 18 地域それぞれの特徴がでてくる。 畑 50 ㎡分の肥料 松原漁業組合
カイツブリ
オオカナダモ アイガモ ガガブタ ヒロハノエビモ、オオササエビモ ブシュンサイ 開発ルール 3.最低限の資源で無駄を無くすため、車では運ばない オオバシ クロモ、センニンモ、コウガイモ ナガエツルノゲイトウ 運ばあ
前籠あり、荷台ありパタン 角材 6 本 板材 12 枚
前籠あり、荷台なしパタン 角材 6本 板材 12枚
観光自転車パタン 角材 0本 板材 8枚
里湖 50,000 6000 ㎥
二方・・・土人良し (地域住民) 12 人分で木材資材 48000 円宿1泊2000 円、農業漁業体験 2000 円として 観光客 1 ツアー 8000 円 4263 人 ÷22 人(組合員)×4000 円=76 万円ほ どの収入 三方・・・地域良しパタン(農山村社会) 周辺ホテルの焼却費用ゴミ量 200g×68 人(宿泊可能人数) /200=68 ㎡ / 日 生活費畑 四方・・・環境良し 1670 ㎡ ×1/10 の重さ 1 回 2t の水草を仮定 10 日取り替える。 含水率 90%なので 200×36.5=7300kg 7300kg×1356Wh/ 年 kg=9898GWh 7300kg×434L /kg=31682,l/ 年 megumi 3km/lを仮定すると、28L/ 日=84km分の走行が 0 円となる。 森林保全資金、ごみ処理資金を統合することで少量消費へと向かう。 五方・・・防災良し 非常時、日常時もそのときに備えて常に利用するゼロエネルギー港。 . 食 ソーラークッカー 生 太陽光発電 住 非電化冷蔵庫 調理釜 雨水利用 テント設営 野草植え 貯水池利用 五右衛門風呂 家畜飼育 チキントラクター コンポストトイレ
開発ルール2.地元の生態系を機械に頼らず保全する タブノキ
里山 15,700 人 1 年 7518 本 / 年
歴史・文化 都市型観光 1,599,900 買物・食等 7,000 キャンプ場等 462,100
滋賀県断面経年変化 現在の開発後の 循環 間伐
1,599900 人
釣り人
オウミマリン ヤンマー 一週間(地域良し) 一人(土人風人良し)
10 年(環境良し)
土を利用したコンポストトイレ
漁業も再生していく。
蜆の漁獲量が増えて、
宿泊施設
地域毎の風の誘導によるたまり場設計
30 年(防災良し) 漁業の復活、蜆の名産港、 水草発電によるバイオ港へ。
マウンテン、ロードバイクパタン 角材0本 板材 4枚
人里から里山へ site 10:00 南彦根駅に集合 地図配布
11:00 高取山へ樹木をいただき山との対話。
里山から里湖へ 12:00 木材を運ぶ
site 13:00 多賀大社
14:00 彦根駅、彦根城
15:00 到着
山を知る人との対話
⑧
⑦
⑩
⑨
⑧
敷地で建設
⑦
14:00 彦根港到着、各自部材建設
⑨
⑪
⑫
⑬
⑥
屋根 ×2人
梁、基礎 ×2人
地元を感じる
⑥
⑭
⑤
⑤
⑬
⑯ ⑮ ④ ② ①
1170
45 47180 180 180 180 180 180 180 180150
壁or机×7人
⑪
⑩
④
③
⑰
⑱
③
⑭
⑮
⑱
⑯
物資を港まで運ぶ。
455 455 角材30×30×1820 6 本 角材30×30×1820 6本 角材30×30×1820 6本 板材180×455mm 18枚 板材180×455mm 20枚 板材180×455mm 16枚 ②
11 人分の家具から一つに繋げる小屋作り 家具を作り対話を生む。
組み合わせて人の集まる場へ 立面図 ノコギリとビスのみで増改築可能な施工へ
①
⑰
農林漁業の 18 地域の港がものづくりを通じて農産漁業体験、観光、 交通、防災拠点として機能し、原発分のエネルギーを削減し、県の 財政改革提案となり、滋賀の自然と対話できる新しい夢舞台となる。
主要参考文献 1)クリストファー・アレグザンダー:パタンランゲージ:環境設計の手引、鹿島出版社(1984). 2)リンチ・ケヴィン(1976)、丹下健三、富田玲子(訳)『都市のイメージ』(東京:岩波書店) 3)Borden, Iain,2001,Skateboarding,Space and the City:Architecture and the Body, Oxford: Berg. (=2006, 齋藤雅子・中川美穂・矢部恒彦訳『ス ケートボーディング、空間、都市―身体と建築』新曜社。) 4)羽鳥達也 : 避難地図から街づくりのプラットフォームへ 「逃げ地図」の可能性、建築雑誌(2012) : 5)石上 文正(2003)「岡崎市のイメージ」こころとことば 2(2003) 6)木下勇、山下仁、藤本信義、三橋伸夫パタン・ランゲージによる農村地域活性化のための生活環境整備に関する研究、日本建築学会大 会学術講演 概集(北陸)1992 年 7)近藤隆二郎「市民調査から市民計画へ」 8)近藤隆二郎「コモンズとしての写し巡礼地」 9)横田樹広、那須守、小田原卓郎(2002):自然環境のパタン分析による敷地環境計画手法の研究ー自然環境の復元・創出に関する参加 型計画手法の研究その2− 10)ビル・モ リソン他著:小祝慶子他訳(1093),パーマカルチャー,農文協 11)橋本 雄太・小林 寛・山本 彰・上坂 克巳「自動車から自転車への利用転換可能性に関する基礎分析」