温故知新シリーズ 「スピーカ後編 ラインアレイスピーカあれこれ」
d&b の指向性制御へのこだわり Werner “Vier” Bayer, Product Manager, d&b audiotechnik GmbH Simon Johnston, Global Brand Advisor, d&b audiotechnik GmbH はじめに
指向性制御への d&b のこだわり
2018 年 4 月、d&b audiotechnik に よ る GSL シ ス テ ム
d&b audiotechnik は 1981 年からスピーカーシステム
の導入は、スピーカーシステムの指向性制御という意味に
を製造してきました。当初から同社の精神は、オーディエ
おいて、画期的な出来事となりました。オーディオテクノ
ンスの一人ひとりがリスニングゾーンのどの位置にいても
ロジー企業として d&b が世に送り出した SL-Series の最初
同様のサウンドを享受すべきであるという思想にこだわっ
のシステムとして、GSL システムは全帯域幅における指向
てきました。この公平性を重視した考え方は、同社の長年
性制御の新たな基準となるべきものと言えるでしょう。
のコミットメントである “Democracy for Listners ” に繋が
GSL システムにおいて非常に特徴的なことは「正確な指
ります。
向性制御が全帯域にわたって維持されている」ということ
この壮大なる目標は、スピーカーとアンプをはじめとす
です。これは注目すべき成果です。サウンドエンジニアで
るエレクトロニクス製品は、完璧に一体化されたものとし
あれば誰もが知っているように、周波数が低いほど、全方
て設計、構築され、妥協なき一貫性をもって稼働させる
向への分散傾向が強くなり、指向性制御を維持するという
べきであるという確信へと d&b エンジニアを導きました。
物理的課題がより大きくなります。より難しい挑戦である
この総合的な「システムアプローチ」を遵守しているから
ほど、より大きな結果がついてきます。より広い周波数帯
こそ、d&b ラウドスピーカーは d&b アンプによってのみ
域での制御が可能になれば、より良い結果をリスナーに届
駆動可能となっているのです。この「排他的」とも言うべ
けることができるのです。
き手法は、技術的に大きな優位性をもたらし、効率、性能
d&b にとって、GSL とそれに続く KSL で構成される SL-
の一貫性、及び扱いやすさを最大化するものなのです。
Series システムの全帯域における指向性制御は、30 年に
そのようなこだわりは、d&b が、スピーカーから出る
及ぶ継続した技術開発の集大成であります。蓄積された技
音の方向が実際にどの方向へ向かうのかに長年フォーカス
術と、新たな技術革新の組み合わせにより、d&b のエン
してきたこともまた意味しています。彼らは物理法則に
ジニア達は指向性制御への理解を深め、成熟させてきまし
則って、周囲へのエネルギーの拡散を避け、オーディエン
た。製品ラインナップが増えるごとに制御の対象となる周
スに音を向けることに注力してきました。
波数帯域を拡大させ、そこに立ちはだかるより大きな課題
それは簡単なことに聞こえるかもしれませんが、ご存じ
を乗り越え、今や SL-Series では指向性制御が難しい低周
のように周波数スペクトル上の波長毎のふるまいに違いが
波数帯域をも効果的にコントロールしています。
あることを考えると、それは容易ではありません。指向性 制御の有効性の改善は、長年にわたって少しずつ行われて きました。技術開発とその検証が繰り返され、時に組み合 わされ、より完全を目指してきた結果、全周波数帯域にお ける指向性制御という究極の目標に、かつてなく近づいて いるのです。 ここでの議論における「帯域幅」とは、スピーカーが指 向性制御可能な 10 オクターブのオーディオスペクトルの 部分を指します(すなわち、20Hz 〜 20,000Hz) 。 d&b の努力は、制御可能なスペクトルを広げることによって、
GSL ラインアレイ
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絶え間ない進歩を繰り返してきました。