ARCHITECTURE
PORTFOLIO Yamato Watanabe
grade/prise
設計計画Ⅰ 後期 「ぼけた境界」 ・参考作品 設計計画Ⅱ前期1 「斜路の家」 ・参考作品 バーティカルレビュー 中山英之 設計計画Ⅱ前期2 「筒の構成」 ・参考作品 バーティカルレビュー 中山英之 設計計画Ⅱ後期1 「池のあるまちの藁の駅舎」 ・参考作品 バーティカルレビュー 中尾 寛 設計計画Ⅱ後期2 「NAB」 ・参考作品 バーティカルレビュー 中尾 寛 設計計画Ⅲ前期 「架空の文脈」(「架空の空間」) ・参考作品 バーティカルレビュー 陶器二三雄 ・日月会建築賞 太陽賞(1等) ・東京建築士会展 出展 ・建築新人戦100選 設計計画Ⅲ後期1 「崖のある家」 ・参考作品 バーティカルレビュー ・スプリング賞 永山裕子 ・住宅課題賞 2017 藤村龍至賞 設計計画Ⅲ後期2 「機能と空間と環境因子の」 ・参考作品
profile
渡邉 和 Yamato Watanabe 武蔵野美術大学大学院 布施スタジオ
設計計画Ⅳ 「ある建築」 ・参考作品 卒業制作 「雪のある駅の雪のないとき」 ・卒業制作学校賞(優秀賞) ・JIA 卒業設計コンクール 2018 出展 ・武蔵野美術大学卒業制作展(優秀展) 出展
contents 雪のある駅の雪のないとき
架空の文脈 / 架空の空間
池のあるまちのわらの駅
崖のある家
ある建築
斜路の家
雪のある駅の雪がないとき
雪のある駅の雪がないとき 移り変わる環境の中で、使われ方を変える公共空間
site : Nigata Yuzawa year : 2017 winter plogram : Complex(station/ski resort/spa/community center) 卒業制作学校賞 卒業制作優秀賞
JIA 卒業設計コンクール 2018 出展
武蔵野美術大学卒業制作展、優秀展 出展
変化する環境から、変わらない日常を守る建築、まち。 冬のためだけにある駅の夏の使われかたを提案する。 移り変わる環境の中で、利用者の自由な使い方を許容する公共空間。
導入 / 受動的にならざるを得ない世界 01. 主体性のない世界 建築がもたらしたものは何か。 建築は宿命的にある種の制度を視覚化し、固定してしまう傾向にある。歴史を 見ても、その時代の社会は制度を固定化するものとして建築を利用してきた。 そんな中で、建築が、街が、都市が担保するある豊かさに、私たちは受動的に
計画敷地 / 変わらないことを守るまち 01. 変わる自然環境 敷地のある新潟県湯沢町は、新潟県の南、南魚沼郡のさらに南に位置する、山に囲まれた街である。 かつてより湯治場として賑わいをみせていたこの街は、都内から75分という立地もあり、周辺地
ならざるを得ない状況であるように感じる。
域の10倍以上の観光客を呼ぶ観光の街と成った。現在でも日本有数のスキーリゾートであり、冬
言い換えれば、どこか、主体性の認識を失うような、そういう感覚を覚える。
夏には連立する廃墟と化したリゾートマンションのみが残す。
には多くの人々が訪れる。しかしそれも冬のみであり、かつて東京都湯沢区とまで呼ばれたと面影は、
加えて豪雪で知られるこのまちは、冬、3mを越す積雪が記録される。圧倒的な自然環境は、街の風景、 くらしを大きく変える。人、自然と、季節によって大きく異なる環境にこのまちは晒される。
02. 許容する公共空間
私は建築に主体性を取り戻したい。 公共空間はもはや公共ではなくなった。できないこと、してはいけないことを 見つける方が容易い公共など、真の公共空間ではない。 建築は、何かを決定して行くのではなく、矛盾や不合理、多様な解釈を受け入 れるべきではないか。そもそも、芸術のような表現行為において、何かを決定 する必要はないはずだ。可能なる世界を暗示する展開力のみが価値を持つので ある。 利用者が主体性を持って、能動的に働きかけることを許容する建築を作りたい。
02. 変わらない日常を守るまち 過酷な環境の中でこのまちは、変わらない日常を担保しようと発達してきた。 道路には消雪用の水が流され、町中に消雪池が用意されている。住宅の一般系は地上界を RC 造、 2F 以降が木造である。これは積雪があっても日常を担保するものであり、地階はガレージや倉庫 として利用され、玄関は2F にある。
一般的な住宅。勾配が複雑にあり、地階は RC
駅も冬の観光客スケールで展開しており、夏には廃墟となる多くの建築が立ち並んでいる。 敷地である GALA 湯沢駅も、冬季にのみ電車が往来するにも関わらず、巨大なボリュームで街をみ
tsu
Joe
sen
an
ink
Sh
▼ South Uonuma
わたす丘の上に建っている。
消雪池
雪を積もらせない屋根
▼ house area
site layout S=1/2500
冬用にスケールアウトした建築
計画 / 変化する公共空間 01. 使い方の変わる駅 スキー場に隣接する GALA 湯沢駅は、冬季のみ利用されている。 街を見渡す丘の上にある巨大な夏の廃墟に、コミュニティセンターとしての機 能を付加した。 雪によって変化するテンポラリーな機能を地上界に配置し、パーマネントの機 能を雪の影響を受けない上部に配置した。
コミュニティーセンター
コミュニティーセンター
駅 / スキー場
駅 / スキー場
02. 構成 roof:collect snow floor2 :Permanently plogram
station/RC floor1:winter ploglam/RC
冬、雪が積もりスキー場が利用されるようになると、電車が往来するようになる。テラスはホームと利用されるようになり、公園的性格を持った
wall1:collect snow
大空間はで埋まる。 structure composition
公民館、図書館、レストラン、温泉をもつコミュニティーセンター。豊かな自然の中で、まちの人々に公園のように利用される。機能の変わる空間と形態を、能動的に利用する公共空間。
形態 / 雪を貯める駅 01. 雪が決める機能 言い換えると、この建築の機能は雪が定めることになる。雪の存在が駅という機能の証明であり、逆に言えば雪がないということは、 この公共建築におけるある部分の機能が消失したことを意味する。機能を持たない公共空間。それは公園のような、自由な使われ 方を許容する空間である。
02. 吹き溜まりをもつ駅
The wind descending from the mountain
この建築の使われ方は、雪が暗示す る。故に雪を貯める形態とした。 建築の中心に大きな吹き溜まりを作 ることで雪を貯める。 雪を運ぶ北からの風と、北東からの 山を降りて来る風に対して大きくボ リュームを配置。風の弱まるところ に雪がたまることを利用し、建築の 機能のメタファーとして、吹き溜ま りを作った。 diagram-1 wind collecting snow ■ Wind snowing
C
B
A
A. d.
e.
a.
f.
C.
c.
B.
b.
a.Garage(Snow removal/Track maintenance) b.Parking/Bus station c.Waiting room d.Ticket office/Ski resort office e.Station office f.Station g.Hall(small)
A.Ski course B.Snow Basin/Collect snow C.Fireplace
g.
3
5
10
20(m)
C
1
B
A
0
1F plan S=1/400
A. d.
e.
a.
f.
C.
c.
B.
b.
a.Garage(Snow removal/Track maintenance) b.Parking/Bus station c.Waiting room d.Ticket office/Ski resort office e.Station office f.Station g.Hale(small)
0
1
3
5
A.Ski course B.Snow Basin/Collect snow C.Fireplace
10
g.
20(m)
2F plan S=1/400
r. s. q.
t.
p. o.
0
1
3
5
u.
10
20(m)
3F plan S=1/400
v.
w.
x.
y.
v. Gondola station w. Gondola machine room x.Shower room y. Funnel/Pomp room z.Hot spring
z.
0
1
3
5
10
20(m)
4F plan S=1/400
p.
i. d.
c.
A ー A SECTION S=1/200
0
1
3
5
10(m)
A-A SECTION S=1/200
p.
e.
f.
C.
B ー B SECTION S=1/200
0
1
3
5
10(m)
B-B SECTION S=1/200
z.
x.
v.
p.
s.
k. e.
f.
n.
C-C SECTION S=1/200
0
1
3
5
10(m)
C-C SECTION S=1/200
D-D SECTION S=1/400 0
1
3
5
10
20(m)
D-D SECTION S=1/200
E-E SECTION S=1/400 0
1
3
5
10
20(m)
E-E SECTION S=1/200
架空の文脈
架空の文脈 空想のコンテクストをつくる、次の世代の美術館
site : Tokyo Kunitachi Yaho park year : 2016 summer plogram : contemporary art museum 日月会建築賞 太陽賞 (1 等 )
東京都建築士会展示 2016 新宿 Vertical review 2016 summer 建築新人戦 TOP100
あらゆる情報から漂白された世界。 都市のスケールとシークエンスが残った世界に、情報と立ち代わるのは芸術。 都市のスケールとシークエンスを展示空間に持ち込み、架空のコンテクストを生む、新たな世 代の美術館。
01. 生活の中に芸術を 市民生活の中に芸術を。 これは美術館に課せられた一つの使命ではないか。 リチャード・セラは傾いた弓形を自ら撤去した。 今の市民生活において、芸術の位置づけはどのような物だろうか。
敷地である東京都国立市、谷保第三公園は国立駅から徒歩で20分ほどの場所にある。 国立駅から南に延びる大学通り、それに対して東西の細い道路が伸び、四角いグリッ ド状の都市計画がなされている。 東京の郊外、国立市は衛星都市としての性格をもつ。多くの学校を擁し、都心への通 勤通学、及び通学者の流入のため巨大化した駅を出れば、すぐに閑静な住宅街が広がる。 大通り沿いには彫刻作品が並ぶ物の、植え込みに隠れた作品の前で足を止める人はほ とんどおらず、建て前ばかりが肥大化した都市の姿があった。 600m
人々と芸術、都市と芸術、それらを結ぶ役割を美術館は担うのではないか。
東京郊外、国立という都市
300m
市民から離れた芸術
しかしその空間の特異性は、芸術を、美術作品を日常から遠ざけたともいえる。 現にコンテンポラリーアートはホワイトキューブを前提としている物も多く、 そういった傾向は、サイトスペシフィックという動きに表れる。 しかし、作品に対して図となる白い壁、全体を明るくする柔らかな光、主張の 無いキャンバスとしての箱、ホワイトキューブが展示空間として非常に優れた 性質を持ち合わせているのもまた事実なのである。ホワイトキューブを超えた 展示空間とはどういった存在か。
1500m
ホワイトキューブは、その中立性故、展示空間として絶対的な地位を獲得した。
1200m
02. ホワイトキューブを超えた展示空間
900m
昼夜間人口 ( 人 )
main street
side street
elevation
station
0 600m 1200m 1800m
都市のリズムをもった美術館
都市の延長としての美術館 01. 異化された空間
01. 共通する都市の経験
都市の延長としての美術館を作る。 国立の東西南北のグリッドに対して敷地内に斜め45度の道路を持ち込む。グリッド状の都市の中で最短経路と して働くだけでなく、敷地を異化する作用をもつ。森を周囲を木々で囲い、漂白された都市への導入とする。周 辺と異化された敷地へ入り、50mの道を抜ける。木々で囲われた敷地内部からは周辺の建物は見えない。
02. 経験済みのシークエンス しかし、敷地内で経験するのは、都市的経験である。経験したことのある都市的スケールとシークエンスをもつ 異世界だ。 敷地内に持ち込んだ45度の道路の交錯点をこの世界の中心とし、都市的スケールの最大点とした。 あらゆるシークエンスにおいて、都市的スケールから住宅スケールまでを都市的シークエンスで経験するよう全 体を構成する。
google での都市の様相がものがたるように、都市のイメージは単一だ。 都市生活での経験は一般化できると考える。もちろん地理的、歴史的文脈から生成される特異性はあれど、多く の都市での体験は共通する物がある。そのひとつがスケールとシークエンスである。駅等の交通の拠点を中心に、 スケールは縮小していく。そのスケールに差はあれど、その比率は似通う。
02. 記憶の中の、どこかの文脈 経験したことのあるスケールとシークエンスは、ここではないどこかの文脈を作り出す。都市的な場所、住宅的 な場所、記憶の中の、どこかの文脈。
国立に延びる南北のグリッド
都市と異化する45度の導線
中心から都市的シークエンスを構成する
敷地内部に漂白したもう一つの都市をつくる
架空の文脈を誘起する美術館は、あの場所と、芸術の距離を近づける。
elevation
station
main street
side street
University
station Square
0
600m
1200m
1800m
16.
23.
24.
B
A
22. 12.
1.
2.
9.
3.
5.
11.
4.
A-A SECTION S=1/600
7. 6.
8.
9.
21.
25.
18.
10.
11. 15.
14. 8.
3.
B-B SECTION S=1/600
7. バックヤード 8. 展示室 A 9. 展示室 B 10. ホワイエ 11. ワークショップ室 A 12. 美術図書館
13. バックヤード 14. 水盤 15. 管理室 16. ワークショップ受付 17. ワークショップ控え室 18. 飲食エリア
19. ワークショップ室 B 20. バックヤード 21. テラス 22. レストラン 23. レストランキッチン 24. バックヤード
25. カフェ 26. カフェキッチン 27. バックヤード
A
1. 収蔵庫 2. 荷降、荷解室 3. 機械室 4. 学芸員室 5. トイレ 6. ミュージアムショップ
B
program
HORIZONTAL SECTION GL-2100 S=1/600
B
B
A
A 12.
12.
13.
14.
6.
19.
21.
15.
20. 17.
16.
22.
26. 25.
23. 27.
24.
B
A
A
B
18.
HORIZONTAL SECTION GL+2100 S=1/600
HORIZONTAL SECTION GL+5100 S=1/600 0
5
10
20
50(m)
シークエンス
a
b f
c
d g
e
h i
way
elevation section development s=1/1000
d
0 f
100m a b i
200m g h c e
300m
架空の空間
架空の空間 建築とひとの関係が生む「気付き」の空間実験
site : Undecided year : 2016 spring plogram : folly 日月会建築賞 太陽賞 (1 等 )
東京都建築士会展示 2016 新宿 Vertical review 2016 summer
繰り返される4つの同じスケールの部屋。 しかし部屋は次第にその輪郭を失っていく。 部屋が部屋でなくなったとき、空間が空間でなくなったとき、わたしたちはそこに何を 見るのか。 実空間の空間体験、及び空間認識のプロセスと、建築が与える影響を考える。
解体する空間とシークエンスが作るフォリー
空間とは何か。 常日頃私たちが存在している場すべて空間であるといえるが、それらを意識 する事は少ないだろう。人間の空間認知のプロセスとして、まず視覚で空間 を捉え、そこに帰納的推測に基づいて意味を付加し、実空間を時間の連続性 をもって体験する。人間がその生活において視覚に頼る割合は大きく、それ は空間認知においても同じ事である。 人間の視覚は輪郭で多くの物を判断しており、左図のルビンの壷はその特性 を活かしただまし絵である。また、アニッシュカプーアの 私が妊娠してい るとき は正面から対峙したときその輪郭は消失し、ある種の違和感を覚える。 視覚空間はあくまで2次元の存在であり、輪郭で物事を捉える視覚の作用を 理解すれば、建築等と言った内部性にのみ空間を実感するというのも理解が 出来る。
繰り返される部屋、解体される空間
この建築はスケールの等しい4つの部屋とそれらを繋ぐ通路から成る。ここ での空間体験による空間認識は建築が定義する。つまり体験者のアポステリ オリな空間認識に従うのだ。体験者は次第に解体されていく4つの部屋を経 験する。 解体され、輪郭すらも失った部屋は外部に溶け出し、木に囲われた外部空間 へと体験者を導く。 1つ目の部屋は導入となる。以降経験する3つの部屋の提示部であり、テー マとなる空間である。最も暗いこの部屋が自身が経験する体験の基準となる。 2つ目の部屋から現象が始まる。部屋は2つの面を消失するものの、そこに 残る輪郭から部屋としての存在を保つ。3つ目、4つ目と、輪郭すら消え去っ たその部屋は内部、外部ともつかない、空間そのものの存在を提示する。 想起された 建築 の内部空間は外部空間を誘起させる。 建築 の空間体験 を通して見える地と図の反転した世界と観察者を持つ事で、この建築は自身 を フォリー という存在へシフトさせる。 折り返し、再び最初の部屋を抜けたその先に、フォリーとしてのこの建築の
constitution diagram
姿を見るだろう。
NORTH ELEVATION S=1/100
EAST ELEVATION S=1/100
SOUTH ELEVATION S=1/100
WEST ELEVATION S=1/100
池のあるまちのわらの駅
池のあるまちのわらの駅
まちと共にある、歴史を紡ぐ藁の駅舎
site : Tokyo Inokashira park station year : 2015 fall plogram : station Vertical review 2015 winter
かつてはまちの中心だった井の頭池。まちのひとびとは今、かつての池とひととの関係 を再び築こうとしている。 池とまちとを再び繋ぎ、まちの過去と未来を繋ぐ、わらの駅舎。 まち全体の在り方を長期的に捉え、それに寄り添うように在る、本来有るべき駅の姿。
地域活性化と戦略拠点としての駅の在り方
駅の役割はなんだろうか。 駅はまちの入り口であり、まちの顔であり、まちの中心である。いつの時代でもそうであった。 明治以来そのまちの重要な施設であった駅は、自動車交通の発達とともにその地位が低下するようになっ た。高度経済成長時代にはその低密度利用に着目して商業施設などと複合し、いわゆる駅ビルをつくり、 まちの活性化の拠点となることを図った。それは駅前商店街の繁栄には寄与したが、駅から離れた中心 街の衰退に拍車をかける一因になったことも否めない。 右肩上がりの経済成長の中で、まち全体のビジョンが欠落した短絡的な開発計画であったからだといえ る。 ただそれは、駅の活用の仕方が誤ったのであって、駅がまちの戦略拠点として持つ可能性はまだまだ多 くのものがある。 まち全体の在り方を広い視野で捉え、それに寄り添うカタチで在る。 それが駅というものの本来の在り方ではないか。
池を中心とするまち - 井の頭公園駅 -
01. 希薄化した池との関係
対象となる井の頭公園駅は、京王井の頭線の吉祥寺からひとつめの駅だ。 井の頭公園が隣接するが、周辺には閑静な住宅街と6つの学校があり、利用者の大半はこの地域に住むひとか、 学生である。駅名ともなる井の頭公園は、神田川の水源となる井の頭池とその周辺から成る。武蔵野台地の東 端に位置し、地下水が滞留する事で昔から豊富な水源に恵まれたこの地では、古来から井の頭池を中心とした 人々の生活があった。
02. 池を中心としたまちの賑わいの再興 地域の人々は現在「武蔵野の豊かな緑と水辺を有する井の頭恩賜公園を舞台とし、地域とともにまちの賑 わいを創出する」をテーマに掲げ、様々な事業に取り組んでいる。失われつつある、かつての池の環境や、 ひとと池の関係を再構築し、井の頭公園を中心としてまちを活性化させていこうというものだ。 2006年には地域商店会や商工会が中心となって井の頭恩賜公園 100 年実行委員会が発足し、井の頭 アートマーケッツや井の頭100祭、野外フェスタ等様々な事業に取り組んでいる。
アシ等の水草は水中の悪性物質を分解、水質浄化に役立つ。 枯葉は水質悪化を促すためかいぼり等で回収。
sector1
sector2
sector3
sector4
er at w
c er at w
n tio ula irc
ion lat cu cir
地下水の不足は湧き水の枯渇に影響する。
木々から落ちる枯葉は水質の悪化に影響する。
雨水を浸透させられる土壌を増やす。
池に被る枝は伐採し、枯葉を減らす。
ブラックバス、ブルーギル等の外来魚を駆除。 めだか、なまず等本来の生態系を取り戻す。 また、リン等を分解する植物性プランクトンを増やす。
全体としての水量の増加は水質改善に繋がる。 神田川への流水増加へ。
まちと池の関係が生んだ遺産と、わらで作る駅舎 01. 池の環境改善とわら
02. わらのブロックを積んだ駅舎
現在の井の頭池において、水質改善に必要不可欠なのがヨシ等の水草である。
刈り取ったヨシは乾燥させ、ベイルと呼ばれるブロックに押し固める。押し
ヨシは水質に悪影響を与える窒素やリンを養分としながら成長し、小魚の隠
固めたベイルを積み重ねる事で壁を形成していく。
れ家ともなる。現在の井の頭池において最も重要な要素であるが、冬枯れに
作業の容易さから、刈り取りから運搬、乾燥、施工までも、地域に住む子供
よって枯れた葉は水を汚す要因ともなる。また、多量の冬枯れしたヨシは、
から大人、学生、駅員と、まち全体が一体となって行える。池の再生と駅の
消却すると多量の CO2 を排出し、環境への影響も懸念される。
生成の中で、ひとはかかわり合い、地域の中でのひとのつながりを再構築す る。
しかしながら言い換えれば、井の頭池の水質改善と比例しながら生成される ヨシのゴミは、いわば水質改善のプロセスであり、まちと池との関係が再興
また、このプロジェクトは勿論短期的な物ではない。ストローベイルは自然
される歴史のレガシーでもある。
に帰る循環型素材で、壁を何度も改修しなくてはならないし、井の頭池の環 境もすぐ良くなる訳ではない。井の頭池の環境を改善していく上で、ひとは
そのヨシを建材に、池の再生と共に駅舎を生成する。
ひととひと、ひとと池の関係を再構築し、そのプロセスを経て駅舎が完成し ていくのだ。
居場所を持つ駅
交通手段としての消費効率を追求し、人を居座ら せない駅は現在でも多く在る。しかし、このプロ ジェクトを経たまちの人々が集まるこの駅と駅前 空間は、井の頭公園とともに地域交流の場の中心 となる可能性を孕んでいる。この駅に人々が気軽 に居座れる居場所を設けることができたら、そこ は地域にすむ子供からお年寄り、中学生や高校生 等があつまり、様々な交流が行われる場になるに 違いない。 また、むしろ、この駅と駅前空間にはアクティビ ティを決定しない居場所をつくるだけで、現在取 り組まれる事業の延長としての様々なイベントや、 全く新しいアクティビティが行われる場所となり、 まち全体の在り方を示し、まちの活性化の中心と なる。
KIchizyo-ji station
Inokashira park
SITE
5k 1.
universitya college
1.
m 0k
0.
m 5k
m
senior high school
junior high school
elementary school
kindergarten/nursery school
場所性をつくる屋根と居場所を作る壁
01. 場所性を作る1枚屋根 動的な駅というプログラムに対し、静的な居場所をつくるため、まず屋根を使用し均質な敷地に対し場所性を作り出す。 敷地を覆う1枚の屋根は様々なレベルで展開し、開放的な場、そうでない場を作り出す。
01. 既存の駅舎配置。公園側にはベンチが配置されているものの、
02. 駅舎に必要なプログラムを最小面積に、おさえ構成する。敷
03. 各外部道路の延長として、改札口までのコンコースを作る。
木に隠れ陰湿な雰囲気。
地内に最大面積で居場所と成り得る場所を確保する。
動的な部分をきちんと確保し、動と静、二つの場所をつくる。
04. 公園の豊かな自然、駅前商店の活気、外部環境と関係を持つ
05. 大きな1枚の屋根をかける。高さを変化させることで動と静、
06. 柱を立てる。静的な部分に多くの柱を立て、動的な部分を
多様な場所をつくる。
二つの部分をグラデーショナルに分割し、また静的な部分の中
抜く。
コンコース以外の部分を敷地境界から内側に引き込む。
にも大きな開口や小さな場所等多様な場所性を作り出す。
構造を担保しながら、居場所の選択肢と成りうるよう配置する。
駅前広場らしいスペースは一部がコンコースとして使われるの み。
roof study
杉角柱 150
ストローベイル(葦藁ブロック) 間渡り竹 t=7 小舞竹 t=5 (20 30 間隔 ) 藁縄 2 土壁漆
仕上げ t=5 15
割栗石
02. 居場所を作る藁の壁
捨てコンクリート モルタル金ごて仕上げ
屋根が作る多様な場を居場所にしていくのが藁の壁である。 1つ積めば椅子、2つつめば机と姿を変えるストローベイルを利用し、木造の屋根と柱がつく る様々な空間の中に、まちの人々が自分たちで居場所を見つけ、ベイルを積んでいく。 アクティビティのための空間、くつろぐための空間、まちの人と交流する空間。居場所に付随 する様々な機能や、ストーリーを考えながら、これからの駅、これからのまちのストーリーを つくっていく。
constitution diagram
wall section S=1/30
PLAN S=1/300
0
2
5
10
20
50(m)
wall layout pattern
01. まちのレガシーとしての駅
KIchizyo-ji station
Inokashira park
ploject start
駅とともに生きるまち
お茶の水池
ボート池
現在井の頭池で刈り取れるヨシの量はわずかである。 池が環境を取り戻しながら、徐々に増える藁によって駅舎をつ くる。最初、駅としての機能をつくる最低限の壁だけつくる。 翌年にとれた藁で、居場所をつくる壁をつくる。池が環境を取 り戻す過程で、駅舎が立ち上がっていく。
弁天池
02. 駅とともに生きるまち また、この計画は短期的な物ではない。駅の完成で終わるプロ ジェクトではないのだ。 池は環境を取り戻したとしても、数年に一度、ヨシの刈り取り ヨシ育成可能面積 (※1)
生成藁量 (※2)
生成壁面積
お茶の水池
15,326 ㎡
1,532 ㎡
4.4t
83.6 ㎡
弁天池
9,877 ㎡
1,300 ㎡
3.7t
70.3 ㎡
ボート池
17.203 ㎡
0㎡
0t
0㎡
合計
42,406 ㎡
2,832 ㎡
8.1t
153.9 ㎡
※1. ヨシの育成可能な水深 0 500mm ほどの面積を池の水深から 10% と仮定し推定。 ※2. 琵琶湖における
やかいぼり等、メンテナンスを必要とする。また、駅舎の藁の 壁も、その性質上腐敗するため、取り壊して新しくたてる必要 がある。 まちが池との関係を取り戻した後も、駅舎はその関係を発信し 続ける。
藁面積と回収藁量から推定。2年∼3年で回収可能な目安。
注水植物であるヨシは、上記の算出より2∼3年で約 8.1t 刈り取られる。これはストローベイル 400 個分に値 する。ヨシの乾燥には井の頭公園敷地内や、近隣 1km にある 11 の学校等を使用する。
池があり、ひとがいる。ひとがいて、まちがある。そして、駅 があるのだ。
x years later
面積
future diagram
崖のある家
崖のある家 混沌とした都市の中で、心を守る最後の空間
site : Tokyo Seijo year : 2016 fall plogram : house+Climbing gym 住宅課題賞 2017 藤村龍至賞 Vertical review 2016 winter Spring Prize ( 永山裕子 )
混沌とした現在の都市の中で、心身を守る最後の砦である 住まい 。 コンクリートで囲まれたそれが内部に孕むのは空を切り取る 10m の岩壁。 岩壁が住宅内部に展開する異世界は住まい手の希望と成り得るか。
都市の中で暮らす
01. 住まいという建築
住まいとはなにか。 人類が住まいを手に入れたのは今から500万年前にさかのぼる。生態系の中で脆弱であった私たちの祖先は、 自身の身を守るために洞窟や岩陰を住まいとした。シェルターとしての洞窟が住まいのはじまりである。 やがて家は私たちを敵から、自然から、守るように発達し、より豊かな生活をおくるための、芸術へと進化していっ た。
02. こころを守る住まい 人口の大半が集中し、多様な価値観で
れる現在の都市。年間 3 万人を超える人々が生きる望みを捨ててしまう
という現実は、何でもなく見える私たちの日常的な身の周りに、絶えず人の心身を危うくする脅威が迫っている ことを物語っている。カタチは違えど、住まいが外部環境から身を守る最後の砦であるとするならば、それらの 脅威から私たちの心を守る建築とはどういう存在か。 それは俗世から切り離された、現来日本人が持つ庭園や茶室に通ずる禅の思考に繋がる存在か。または私たちそ れぞれのアルカディアに繋がる存在か。
東京都世田谷区ー成城
東京都世田谷区、成城。昼夜間人口の比率は 0.87 と、ベッドタウン型の都市を形成する。 敷地は東京都世田谷区成城4−27−7。成城は世田谷区のなかでも高級住宅地を形成している地域である。 前面道路を介して西側には野川、及び北見ふれあい公園が面する。西側は先数百メートル先まで建物が無い眺望 である。周辺は閑静な住宅街がひろがる。
住まい +α
住まいの中の外部
01. 職住一体の住まい 住宅内部に展開するジム空間は外部空間をつくる。外部の環境因子を積極的に受け入れるのは、住宅内部 本計画ではプロクライマーの夫と、同じくクライミングを趣味に持つ妻二人が暮らす住宅に、クライミン グジムを+αとして計画する。 二人にとって壁を登る事は共通で至高の楽しみであり、彼らにとって山は最もアルカディアに近い存在で ある。そんな「壁」で囲まれた空間を住宅内部に作り出す。
02. 生活に入り込む壁 「壁」は「職」となるジム空間を構成しながら、「住」空間にも表れる。 住空間にふと表れる壁は、常に住宅内部にこころのよりどころが存在することを示唆する。職の空間が彼 らの住まいの中心であるとともに、瞑想の場であり、アクティビティの場であり、こころを守る場なので ある。
に孕む世界が、施主夫婦にとっての希望であることを目的としている。つまり、彼らは本物を知っている。 世界の様相を知っている。そんな彼らに建て前の自然、みせかけの空間は必要ではないのだ。 外部に展開する川もまた本物だ。住宅内からは世界の背景として、借景のように姿を見せる。 「見立て」によってつくられる内部の世界は、施主の希望であり続ける。
HORIZONTAL SECTION GL+1800 S=1:100
HORIZONTAL SECTION GL+4500 S=1:100
HORIZONTAL SECTION GL+7200 S=1:100
構造・構法 鉄筋コンクリート造 シェルコンクリート構法 規模 階数 地上3階 軒高 9,400mm 最高高さ 10,000mm 敷地面積 180.54 ㎡ 建築面積 89.76 ㎡(建
率 49.72% 許容 50%)
延べ床面積 142.162 ㎡(容積率 78.74% 許容 80%) 店舗部分面積 45.15 ㎡(用途面積 / 延べ床面積 31.75% 許容 50%) 敷地条件 地域地区 第一種低層住宅地域 道路幅員 北 5m 駐車台数 2 台 外部仕上げ 屋根 / コンクリート打放し シート防水 外壁 / コンクリート打放し 外構 / モルタル金ごて仕上げ 内部仕上げ 天井 / コンクリート打放し 壁 / コンクリート打放し 床 / モルタル金ごて仕上げ ウォール /GRC 吹き付け仕上げ
A-A SECTION S=1:100
B-B SECTION S=1:100
WEST ELAVATION S=1:100
NORTH ELAVATION S=1:100
ある建築
ある建築
場所性から生まれた空間が作る建築
site : Tokyo Edogawabashi year : 2017 spring plogram : house/office/garally
機械が美しい時代は終わった。 近代の価値観に支配された都市の中で、わたしたちは建築に、都市に、支配されて生き ている。空間を使い、建築に暮らし、世界を生きるのは私たちだ。 建築はその世界の可能性を暗示する事に尽くすべきではないか。 場所性だけが作る、様相の建築。
建築は私たちが活動するための道具なのだろうか。 建 築 家 は 多 く の 場 合 、「 自 分 が 解 決 し た い と 思 う 課 題 を 極 度 に 限 定 し て 選 び 取 る 」 事 を し な が ら 、 壁を建て、概念のまとまりとしての空間を作る。 こ う い っ た 単 純 化 を 目 指 し た 合 理 化 は ミ ー ス・ フ ァ ン・ デ ル・ ロ ー エ の 逆 説 的 言 辞「 よ り 少 な い こ と は よ り 多 い こ と だ 」 を 拡 大 解 釈 し た も の で あ る 。 ポ ー ル・ ル ド ル フ は ミ ー ス の 言 葉 に 含 ま れ て い る意味をこう述べている。 「すべての課題を解決する事は出来ない。 ・・・・ 。 建 築 家 は 自 分 が 解 決 し た い と 思 う 課 題 を 極 度 に 限 定 し て 選 び 取 っ て い る 。例 え ば 、ミ ー ス は 多 く の 側 面 を 無 視 す る 事 で 素 晴 ら し い 建 築 を 作 っ て い る 。 もし彼がより多くの課題に手をつけていたとしたら、その建物はずっと力強さを欠いたものになっ て し ま う だ ろ う と 思 わ れ る 。」 ヴ ェ ン チ ュ ー リ は ポ ー ル の 言 葉 を 引 用 し た 上 で 、「 よ り 少 な い こ と は よ り 多 い こ と だ 、 と い う 数 条にあっては、多様性は嘆かわしいものとされ、あるものを表現するのに、他のものを排除してし ま う こ と が 正 当 化 さ れ る 。 そ し て 建 築 家 は 、「 自 分 が 解 決 し た い と 思 う 課 題 を 極 度 に 限 定 し て 選 び 取 る 」 こ と が 許 さ れ る の だ 。」 と 説 明 す る 。
私は建築が世界の姿に近い物であってほしいと思う。つまり、何が正しいかを主張するのではな く、不合理、矛盾を許容し、その建築が見せる姿に可能性がある事を理想とする。ある概念として の か た ま り が 、 あ る 質 量 を も っ て そ こ に 存 在 し 、 建 築 家 が 想 定 す る あ る 課 題 に 対 し て の「 回 答 」 を 示す事に私は意義を感じられないのだ。
原広司は、近代建築における機能主義の敗北について触れ、その理由についてこのように述べて いる。 「規定性をゆるめても、ひとたび機能に執着すれば、なんらかのかたちで人間生活を想定する過程 は欠かせない。 ・・・・ 。 つ ま り 、 な ん ら か の か た ち で 建 物 の 使 用 法 を 決 定 し て し ま う 。 よ り 具 体 的 に 言えば、建築家が人間とは、社会とはと問うた回答が、優れた建築家であればあるほど、露骨に表 現 さ れ る と い う 事 態 に な る 。」
も し 建 築 家 が 、「 世 界 全 体 を 自 分 な り に 見 る 」 こ と が 義 務 付 け ら れ て い る の だ と す る な ら ば 、 そ れこそ建築家は、自分が解決したいと思う課題を決定するのではなく、課題に対する回答の可能性 をいかにして含ませるかに腐心しなければならないのではないだろうか。
「 も は や ナ ラ テ ィ ブ の 時 代 で す か ら 、 誰 も が 架 空 の「 私 た ち 」 で は な く 、 実 在 す る「 私 」 の 物 語 を 生 き て い ま す 。 そ れ は 個 人 的 で 、 生 々 し く 、 時 に 醜 い も の で す 。 よ っ て 均 一 化 さ れ た「 ポ ッ プ 」 は 必 要なく、むしろいかにそれを無視し、多様性を許容できるかが
と な り ま す 。 次 世 代 は そ ん な「 カ
オ ス 」 の 中 に だ け 、 リ ア リ テ ィ を 見 つ け る こ と が で き る の で す 。」 と 、 な か の ひ と よ は 言 う 。 私 た ちはインターネットで世界中が繋がっていない世界を知らないのだ。 インターネットは過去の産物となった。サイエンスやテクノロジーに夢中になっていた大人達 が、合理性をベースに提唱する未来を、私たちはもはや退屈に感じている。世界はもっと可能性に 富んでいる。建築という行為は、機能性、合理性という、失われた共通の価値観をベースにそれら の可能性を排除していく行為なのだろうか。それよりも、非合理性、矛盾を許容した先にある可能 性の豊かさを求めるべきではないのだろうか。
建築は場所であるべきではないか。 近代の勝利者は非機能論者であった。機能に執着すれば、なんらかの形で人間生活を想定する過程 は欠かせない。即ちなんらかの形で使われ方を決定してしまう。建築家が優れていれば優れている ほどに、建築家が人間とは?と問うた答えが露骨に表現されるのだ。その点でミースの均質空間は 優れていたし、結果として世界を征服したのである。しかしながら、均質空間がただの空間に過ぎ ない事も私たちは知っている。場所性を切り離し、空間として存在するが故、自由が故の不自由を 今を生きる私たちは経験している。
建築は可能性を無限に残した空間として存在するのではなく、可能なる世界を暗示させる場所であ るべきではないか。機能を排除した建築家が座標を描き、機能に執着した建築家がそこに思い思い のグラフを描いたとするならば、私たちはそのグラフの多様な様相を暗示するべきではないだろう か。
設計者がそこでの行為や振る舞いを決定しない、場所である建築の設計を試みる。建築を設計する 際の余条件は大抵の場合場所を決定する要素、即ち場所性に影響を与える要素である。 本計画では、それら地理的、歴史的コンテクストや、周辺環境等のみに焦点を当て、あえて機能は 後から取り扱う事で場所としての建築を目指した。
斜路の家
斜路の家 1枚のスロープが隔て、繋ぐ家
site : Tokyo Kodairacity year : 2015 spring plogram : house Vertical review 2015 summer ( 中山英之 )
玉川上水はその自然の豊かさから、毎日沢山の人々が散歩道や通学路として利用している。そ んな上水を南側に面したこの土地は、豊かな自然を味わえる反面、隣接して誰でも利用できる 足湯、敷地北側にはカフェが位置し、多くの人々の目に触れていた。 施主は父、母、息子二人の4人家族で、家庭菜園に使えるスペースと、車1台の駐車場が求め られた。自然が好きな家族に、玉川上水を住宅とするような、1枚のスロープが繋ぎ、分ける、 スロープの住宅を計画した。
豊かな自然と閉鎖性
武蔵野台地の尾根筋に引かれた玉川上水に面する敷地は、都内で は希な緑に恵まれた敷地である。 半面、隣接するカフェや足湯を訪れる人々や、朝夕は通勤通学と 人々の往来は多い。二人の小さな子供を持つ夫婦に対し、最大の 特徴である豊かな自然への開放性と同時に、プライバシーを確保 する閉鎖性が求められた。
閉鎖する帯、解放する斜路
プライバシーを確保するため、敷地に塀を建てる。 しかしそれでは豊かな自然環境は上部のみにしか 望めず、敷地のポテンシャルを最大限発揮できな い。そこで塀をアイレベルまでシフトする。 宙を巡る帯状の壁は視線だけを遮断し、南側から 延びるスロープが引き込むが豊かな自然を住宅内 部に内包させる。 住宅を構成するエレメントはスロープによって隔 てられているが、同時にスロープによってひとつ にまとめられる。スロープの傾斜によって生まれ る
間がお互いの気配を感じさせる。
宙の帯とスロープが住宅内部にプライバシーを守
りながら自然を取り込み、空間を分け、空間を繋ぐ。 帯とスロープの住宅。
玉川上水を孕む家
スロープが引き込む外部空間は、玉川上水の豊か な自然その物である。プライベートな内部空間に までも展開する自然は四季折々姿を変えながら住 宅内に新たな風景をもたらす。
この住宅にとっては玉川上水そのものが庭であり、 家であるのだ。
A
▽TOP(SGL+5000) △2SL(SGL+4400)
▽2FL(SGL+2200) △1SL(SGL+1800) ▽SGL ▽1FL(SGL-1000)
A
B
HORIZONTAL SECTION GL+1500 S=1/250
HORIZONTAL SECTION GL+4500 S=1/250
A-A SECTION S=1/250
B-B SECTION S=1/250
B
bath room DETAIL SECTION S=1/20
X6
Y7
Y8 bath room DETAIL PLAN S=1/20