再定住事業後の住宅建設手法の検討 - カンボジア・プノンペン郊外 Samki271 実態調査 -
2007 年度 東京理科大学卒業論文 工学部第一部建築学科 4104002 秋山 友里 4104079 村本 研三 指導教官 大月敏雄准教授
目次
目次 1 章 はじめに
謝辞
001
1-1. カンボジア国概要
002
1-2. 研究の背景
005
1-3. 研究の目的
006
1-4. 既往研究
006
1-5. 研究の手法
007
1-5-1. 調査概要 1-5-2. 研究の流れ
2 章 再定住事業 011 2-1. プノンペン市における再定住事業
012
2-2. 再定住事業の事例
013
Kork Kleang 2 Community Akpivat Mean Cheay Community Toul Sambo Community Samaki 1, 2, 3, 4 Community ANLONG KNGAN Community Toul Rokakos Community Samaki 5 Community ANLONG KORNG Community LOR KAMBOR Community Samaki 6 Community KKKHRDA Community
3 章 研究対象地概要 021 3-1.
事業前居住地概要
022
3-2.
調査対象地概要
023
3-2-1. 居住者の特性
3-2-2. 居住環境
3-3. 関連支援団体
3-3-1. 国際機関・行政
3-3-2.NGO
026
4 章 再定住事業の経緯 029 4-1.
不法占拠からの住民の組織化
030
4-2.
土地の選定
030
4-3.
敷地計画
032
4-4. 区画割当て Cambodia 目次
033
5 章 事業後の住宅建設 035 5-1. 住宅建設に関する NGO
036
5-2. 住宅建設の経緯
037
5-2-1. Samaki271 住宅建設の概要
5-2-2. 住宅建設軒数の増減
5-3. UPDF 及び HFH の建設手法
5-3-1.UPDF の住宅建設手法
5-3-2.HFH の住宅建設手法
5-4. 住宅建設軒数増減の要因
040
043
6章 住宅の実態 045 6-1.
Samaki271 の住宅の現状
6-2. H 住宅の実態
046 047
6-2-1.H 住宅建設上の規定 6-2-2.H 住宅の実態
6-3. 賃貸住宅
051
6-4. 親類関係
053
7章 まとめ 057
資料編
Cambodia 目次
略称一覧
ACHR
Asian Coalition for Housing Rights
ACLEDA
Association of Cambodian Local Economic Development Agencies
ADB
Asian Development Bank
ANS
Action Nord Sud
CATDG
Cambodian Appropriate Technology Development Group
CBO
Community Based Organization
CSES
Cambodia Socio-Economic Survey
CVCD
Cambodian Volunteers for Community Development
EDC
Electricite du Cambodge
HI
Handicap International
IO
International Organization
I-PRSP
Interim Poverty Reduction Strategy Paper
JFPR
Japan Fund for Poverty Reduction
JICA
Japan International Cooperation Agency
MPP
Municipality of Phnom Penh
NGO
Non-Governmental Organization
ODA
Official Development Assistance
PPWSA
Phnom Penh Water Supply Authority
PUPR
Partnership for Urban Poor Reduction
SUPF
Solidarity for Urban Poor Federation
UNCHS
United Nations Centre for Human Settlements (UN-Habitat)
UNDP
United Nations Development Programme
UN-habitat
United Nations for Human Settlements
UNTAC
United Nations Transitional Authority in Cambodia
UPDF
Urban Poor Development Fund
URC
Urban Resource Centre
USG
Urban Sector Group
WB
World Bank
Cambodia 略称
謝辞
謝辞
はじめに、本論文を執筆するにあたり、大月先生、深見さんには大変お世話になりました。 研究を始め様々なご指摘、ご指導を頂きました。この場を借りて、心からお礼申し上げます。 現地調査においては、私達を暖かく迎え入れてくれた Samaki271 の住民の方々、セインさ んはじめ STT スタッフの方々、調査のお手伝いをして下さったボランティアの学生、HFH スタッ フの方々の協力により、無事調査を進めることができました。改めて、カンボジアでお世話に なった全ての方々に厚くお礼申し上げます。 ソチエトさんには、日頃から相談に乗って頂き、現地でも大変お世話になりました。 間瀬さんには、研究室での様々な指導始め、現地においても様々な助言も頂き、現地での建 設作業が忙しい中、私たちの調査も手伝っていただきました。本当に有難うございました。 梗概・ppt 発表では、貴重な時間を割き私たちをご指導くださった先輩方、特にいつも夜遅 くまで付き合っていただいた佐藤さんには大変お世話になりました。 最後になりましたが、共にに楽しい時、辛い時を過ごした 4 年生のみんな、本当に有難う。 そして、温かく見守って下さった大月研究室の先輩方には大変感謝しております。大月研究室 の仲間に出会えたことを本当に嬉しく思います。有難うごさいました。
Cambodia 謝辞
1 章 はじめに
1-1. カンボジア国概要 1-2. 研究の背景 1-3. 研究の目的 1-4. 既往研究 1-5. 研究の手法 1-5-1. 調査概要 1-5-2. 研究の流れ 1-5-3. 調査日程
Cambodia 1 章 はじめに
001
1-1. カンボジア国概要
(2007.07 現在 )
出典 ) 外務省 HP より著者が作成
Asia
日本 北緯 10-15 度 東経 102-108 度
カンボジア王国 図 1-1: カンボジア位置図 出典 ) 著者が作成
■国名 カンボジア王国 -Kingdom of Cambodia ■面積 18.1 万平方キロメートル(日本の約 2 分の 1 弱) ■人口 13.8 百万人 * ■首都 プノンペン ■民族 カンボジア人(クメール人)が 90% ■言語 カンボジア語(クメール語) ■宗教 仏教(一部少数民族はイスラム教、キリスト教) ■政体 立憲君主制 ■元首 ノロドム・シハモニ国王(2004 年 10 月即位) ■国会 二院制 ( 上院 / 国民議会 )
* 出典 ) 2005 年、IMF 資料 Cambodia 1 章 はじめに
002
■政党 人民党及びフンシンペック党による連立政権 ( 首相:フン・セン ) ■外交・国防 外交基本方針は中立・非同盟、近隣国をはじめとする各国との平和共存。国際社会からの援 助と投資の取り付け。 ■軍事力 * ①予算 - US$70 百万(2004 年 ) ②志願兵役制 ③総兵力 - 約 12.4 万人(削減中) ■経済 ** 主要産業 - 農林水産業 (GDP*** の 32.4%)工業 (GDP の 25.3% ) サービス業 (GDP の 37.0% ) GDP - 約 US$62.9 億 ( 一人当たりの GDP: US$454) 物価上昇率 - 5.8 % 主要貿易品目 - ①輸出 縫製品・肉・野菜・天然ゴム・ゴム製品 ②縫製用布・機械・車両・燃料 主要貿易相手国 - ①輸出 米・独・英・ベトナム・カナダ・日本 ②輸入 タイ・香港・中国・ベトナム・シンガポール・台湾 通貨 / 為替レート - riel (US$1= 約 4.092riel) 経済概況については、1997 年 7 月の武力衝突及びアジア経済危機の影響で外国投資や観光 収入が減少し、一時経済成長率が鈍化(98 年の経済成長率は 1.0%)したものの、その後は安 定した成長率を保っている (2004 年 :10%、2005 年 :13.4%、2006 年 10.4%)。2004 年 7 月に発 足した第 3 次連立政権も経済発展と産業育成を最重要政策目標と位置付けているが、海外直接 投資の誘致が今後の鍵と言える。
出典 ) 著者が 2007.09 撮影
. * 出典 ) 2003/2004 年版ミリタリー・バランス ** 出典 ) 2005 年、IMF 資料 *** 国内総生産。1 年間に国内で新たに生産された財・サービスの価値 の合計。 Cambodia 1 章 はじめに
003
■カンボジア略史
9 〜 13 世紀 現在のアンコール遺跡地方を拠点にインドシナ半島の大部分を支配 14 世紀以降 タイさらにベトナムの攻撃により衰微 1884 年
フランス保護領カンボジア王国
1953 年
ロン・ノル首相によるクーデターで、シハヌーク政権打倒
王制を廃しクメール共和国樹立
1975 年
KR が内戦勝利。民主カンボジア政権樹立。同政権下で大量の自国民虐殺
1979 年
ベトナム軍進攻で KR 敗走、親ベトナムのプノンペン政権擁立
以後プノンペン政権と民主カンボジア三派連合(KR に王党派・共和派が加勢) の内戦 ポルポト政権崩壊、ヘン・サムリン政権樹立。 1991 年
パリ和平協定(92 〜 93 年、我が国初の国連 PKO 実施)
1992 年 国連カンボジア暫定統治機構 (UNTAC) 発足 1993 年
国連管理下で選挙、王党派フンシンペック党勝利。新憲法で王制復活
ラナリットー第一首相(王党派), フン・セン第二首相(人民党:旧
プノンペン政権)の2人首相制連立政権
1997 年
首都プノンペンで両首相陣営武力衝突 第一首相失脚
1998 年
総選挙 第一次フン・セン首班連立政権
2003 年
総選挙 1 年後の 04 年 7 月、第二次フン・セン首班連立政権発足。
2004 年
Cambodia 1 章 はじめに
004
シアヌーク国王引退、シハモニ新国王即位。
出典 ) 著者が 2007.09 撮影
1-2. 研究の背景 カンボジアでは、1979 年にポルポト政権が崩壊し、1992 年の国連カンボジア暫定統治機構 (UNTAC) 発足以降、農村からプノンペン市内への人口流入が激化した *。流入した人々による 不法占拠地区数が増加し、1991 年から市当局による強制撤去が実施されたが、人々は市内に 居住地を再び形成し、根本的な問題の解決には至らなかった。その後、市当局は強制撤去での 失敗を受け、1998 年から 2002 年にかけて再定住事業 **( 以下、「 事業 」) を行なった。2007 年 9 月までに 41 の事業が実施され、事業後 *** の再定住地では住宅建設の段階へと移行して いる。
ポルポト政権 1975-1979
(万人) 200
UNTAC設立 1992
(万世帯) 20
人口流入 プノンペン市人口
強制撤去
150
15 不法占拠地区数
再定住事業
100
10
50
5
0
0 2005
2000
1995
1990
1985
1980
1975
1970
1965
1960
図 1-2: 再定住事業に至る経緯 出典 ) 著者が作成
*1976 年、ポルポト政権が民主カンボジア政府を樹立し、知識層の虐殺・農村への強制移住を行ったため、一時プノンペン市内は無人と化した。 ** 既存の不法占拠地区から地区単位で都市周縁部の新たな土地へ移住する開発手法。 *** 本研究では、再定住事業の事業後を、移住が可能な段階まで達した時点以降と定義する。 Cambodia 1 章 はじめに
005
1-3. 研究の目的 そ こ で 本 研 究 で は、2002 年 に 再 定 住 事 業 が 実 施 さ れ、 現 在 住 宅 建 設 が 行 わ れ て い る Samaki271 を研究対象地とし、当事業経緯を追うとともに、事業後の住宅建設及び住宅の実態 を把握し、再定住事業に適した住宅建設手法を検討する。また、住宅建設に関する今後の課題 を考察することを目的とする。
1-4. 既往研究 ■カンボジア・プノンペンにおける再定住事業に関する研究 福木聡、東京理科大学修士論文、2005 年 ■コンキアポ地区街区形成からみた住環境の変容過程 -カンボジア・プノンペンの居住地形成プロセス関す る研究 その1- 安部敦子 / 大月敏雄 / 北山哲 / 池谷啓介、日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 関東 )、 2001 年 9 月 ■コンキアポ地区の住環境改善における住民組織と NGO の役割 ―カンボジア・プノンペンの居住地形成プロ セスに関する研究 その2- 北山哲 / 大月敏雄 / 安武敦子 / 池谷啓介、日本建築学会大会学術講演梗概集 ( 関 東 )2001 年 9 月 ■参加型まちづくりの方法に関する研究 ―フィリピンの低所得者層に対する支援の実態を事例としてー 薬袋奈美子、日本建築学会計画系論文集第 501 号 75-182、1997 年 11 月 ■フィリピン都市貧困層の住宅政策策定への参加に関する研究 薬袋奈美子、日本建築学会大会学術講演梗概 集 ( 近畿 )、1996 年 9 月 ■フィリピンのコミュニティ抵当事業 ( CMP ) における住環境整備の成果の考察 薬袋奈美子、日本建築学会 大会学術講演梗概集 ( 九州 )、1998 年 9 月 ■インドネシア・ジョグジャカルタ市のロモ・マゴン・カンポンの居住環境改善経過に関する考察 平尾和洋 / 高尾克樹 / 瀬戸口健 / 長谷川豪 日本建築学会計画系論文集 第 574 号、105-112、2003 年 12 月
Cambodia 1 章 はじめに
006
1-5. 研究の手法 1-5-1. 調査概要 2007 年 8 月から 9 月にかけて、研究対象地にて現地調査を行った。現地において、ボランティ アの学生等の協力のもと実測調査及び聞き取り調査を行った。
■資料収集
・Study on the relocation of Urban Poor Communities in Phnom Penh、URC 発行、2002.04 ・URC Progress Project Report 10th、URC 発行
■対面式アンケート ・住民
28/40 軒
家族構成・職業・収入・事業前居住地について・移住時期・
住宅建設について・植栽管理について・Samaki271 の生活に対する 満足不満足・生活上の問題点 等
■聞き取り調査 ・住民委員会-コミュニティリーダー Phum Oun 氏・副リーダー Ra Sokhorn 氏 事業経緯・コミュニティ活動内容・居住者名簿・住宅建設について ・関連機関- STT ( Mr.Seng)
事業経緯・敷地計画・プノンペンの再定住事業 について
- HFH 住宅建設について ・住宅建設チーフ 住宅建設について ・住民- P1#1+3 の住民・P1#10+12 の住民・P5#1 の住民 親類関係・区画割当て時のくじ引きについて
■実測調査 ・各住宅実測調査 ・観察調査
27/40 軒 各住宅・住棟間隔・道路幅員 等
住宅使用材料・植栽の位置 等
Cambodia 1 章 はじめに
007
1-5-2. 研究の流れ まず、関連機関への聞き取り調査及び文献より事業の経緯を把握する。次に、住民への対面 式アンケート調査 (28/40 軒 ) 及び聞き取り調査より住宅建設の状況を把握し、実測調査 (27/40 軒 ) より住宅の実態を探る。そして、建設に関連している 2 つの NGO、UPDF(Urban Poor Development Fund) と HFH(Habitat For Humanity) の活動に着目する。それを軸に NGO によ る住宅建設の手法を考察し、事業後の住宅建設における今後の課題を検討する。
*2007年9月撮影
文献調査
関連機関への
住民への
聞き取り調査
対面式アンケート調査(28/40軒) 聞き取り調査
▲調査風景 *
再定住事業のプロセスを把握
▲調査風景 *
▲調査風景 *
住宅建設の状況を把握
実測調査 (27/40軒)
* ▲実測風景
住宅の実態を把握
2つのNGOの活動に着目し、事業後の住宅建設手法の考察を行う 図 1-5-2: 研究の流れ 出典 ) 著者が作成
▲聞き取り調査の様子 出典 ) 著者が 2007.09 撮影
Cambodia 1 章 はじめに
008
1-5-3. 調査日程 8 月 31 日 ( 金 ) カンボジア到着
9 月 1 日 ( 土 ) プノンペン観光
9 月 2 日 ( 日 ) 9:00-17:00
Golden Gate Hotel ミーティング。Mr.Seng、ソチエトとスケジュールの確認。
9 月 3 日 ( 月 ) 9:00 Mr.Seng の事務所(STT) に挨拶。建設プロジェクトの説明、今後のスケジュールの確認。 9 月 4 日 ( 火 ) 8:15 STT スタッフと Samki271 へ。 9:00 住民とのワークショップ。 9 月 5 日 ( 水 ) 9:30 Habitat For Humanity(HFH) のオフィス訪問。建設プロジェクトの説明、ミーティング。 14:00 Phum Andong、 HFH の協力による集会施設の建設現場視察。 9 月 6 日 ( 木 ) 9:00-17:00 Phum Andong、 HFH の建設手伝い。 9 月 7 日 ( 金 ) 9:00-1530 Phum Andong、 HFH の建設手伝い。 9 月 8 日 ( 土 ) 9:00-12:00 Golden Gate Hotel ミーティング、作業。
9 月 9 日 ( 日 ) 9:00-12:00 Golden Gate Hotel ミーティング、作業。 9 月 10 日 ( 月 ) 8:15 STT Mr.Seng と打ち合わせ。 プロット。
10:00 住民にプレゼン。12:00-17:00 住戸、樹木の
9 月 11 日 ( 火 ) 9:00-12:00 Golden Gate Hotel ミーティング。14:00 STT 調 査 内 容 を ボ
ランティアスタッフ に説明。お互いの今後のスケジュールの確認。 9 月 12 日 ( 水 ) 8:00 STT 対面式アンケートシートの説明。最終的なスケジュールの作成。 9:00- Golden Gate Hotel BOQ(建設工程ごとのコストの算出)の作成。 9 月 13 日 ( 木 ) 9:00-17:00 Samaki271 実測調査・対面式アンケート調査 (13 軒 ) 9 月 14 日 ( 金 ) 9:00-17:00 Samaki271 実測調査・対面式アンケート調査 (11 軒 ) 9 月 15 日 ( 土 ) 9:00-14:00 Samaki271 実測調査・対面式アンケート調査 (13 軒 ) 9 月 16 日 ( 日 ) 11:00-15:00 Samaki271 着工祝いのお祭りの準備 15:00-20:00 お祭り ( 儀式・宴会 ) 9 月 17 日 ( 月 ) 7:00-12:00 Samaki271 墨み出し、根切り。調査結果のデータ整理。 9 月 18 日 ( 火 ) 9:00-17:00 Samaki271 基礎のための穴掘り。 9 月 19 日 ( 水 ) 9:00-17:00 Samaki271 基礎のための穴掘り 。追加実測調査。 9 月 20 日 ( 木 ) 9:00-17:00 Samaki271
基礎のための穴掘り。スケジュール確認、コストの確認、材料費のレシー
トの整理。 実測調査・対面式アンケート調査 (6 軒 ) 9 月 21 日 ( 金 ) 9:00-17:00 基礎のための穴掘り、木の杭の打ち込み。住宅建設に関する聞き取り調査事項作成。 9 月 22 日 ( 土 ) 9:00-17:00 フーチングの鉄筋の加工。親戚・近隣関係について聞き取り調査 (2 軒 ) 9 月 23 日 ( 日 ) 9:00-17:00 フーチングの鉄筋の加工、木の杭の打ち込み。調査結果のデータ整理。 9 月 24 日 ( 月 ) 9:00 STT 敷地計画について Mr.Seng に聞き取り調査。
12:00-17:00 雨水の処理、割栗
石敷詰め。 Cambodia 1 章 はじめに
009
2 章 再定住事業
2-1. プノンペン市における再定住事業概要 2-2. 再定住事業の事例 Kork Kleang 2 Community Akpivat Mean Cheay Community Toul Sambo Community Samaki 1, 2, 3, 4 Community ANLONG KNGAN Community Toul Rokakos Community Samaki 5 Community ANLONG KORNG Community LOR KAMBOR Community Samaki 6 Community KKKHRDA Community Cambodia 2 章 再定住事業
011
2-1. プノンペン市における 再定住事業
出典 ) Study on the relocation of Urban Poor Communities in Phnom Penh,URC,2002.04 及び 「プノンペンにおける再定住事業に関する研究」福木聡、東京理科大学修士論文、2005
カンボジア・プノンペンでは、現在までに 41 の地域で再定住事業が実施されている。以下 では、1998 年から 2002 年までに実施された再定住事業のコミュニティの事例紹介をする。
■ Kork Kleang 2 Community ■ Akpivat Mean Cheay Communi-
6 5
ty
Lor Kambor
■ Toul Sambo Community
Anlong Kngan 5
■ Samaki 1, 2, 3, 4 Community 6
■ ANLONG KNGAN Community ■ Toul Rokakos Community
Kork Kleang 3 Kork Kleang 2
■ Samaki 5 Community
KKKHRDA Kork Kleang 1
■ ANLONG KORNG Community
Samaki 6
■ LOR KAMBOR Community
Samaki 5 Samaki 1,2,3,4 4
■ Samaki 6 Community
1
Akpiwat Mean Cheay
3
■ KKKHRDA Community 2
Tuol Rokakos
Anlong Korng Tuol Sambo 3
再定住事業実施地区 0
1
2
3
4
5Km
図 2-1. 再定住事業地位置図
Cambodia 2 章 再定住事業
012
2-2. 再定住事業の事例 出典 ) Study on the relocation of Urban Poor Communities in Phnom Penh,URC,2002.04 及び 「プノンペンにおける再定住事業に関する研究」福木聡、東京理科大学修士論文、2005
■ KORK
KLEANG 2 Community
Kork Kleang 2 コミュニティは旧 Tuol Kork 市場と Boeung Salang 排水路から Khan 当局よっ て強制撤去された 99 世帯を対象とした再定住地で、Kork Kleang 1 コミュニティの近くにある。 住民は 2000 年 8 月にこの地に移住した。 当初は、Khan 当局のみが実施していたプロジェクトで、Khan 当局は Tuol Kork からの移住 者に土地と補償金(US$600/ 世帯)を与え、土地を埋め立てや区画割りをした。事業が進行す るにつれてに、コミュニティは国内外の NGO に支援を要請した。ANS が共同のトイレを導入し、 SUPF と URC が Kork Kleang 1 と共同で上水供給を行い、住民選挙による新委員会を設立し支 援をした。UPDF は住宅ローンを提供し、UNCHS は個人用のトイレを提供した。 Kork Kleang 2 コミュニティは先に再定住をしている Kork Kleang 1 コミュニティの経験から、 事業プロセスの多くのことを学んだ。 最近は、個人用の便所や水道・電気の民間による供給を受けている。しかし、支払いが不規 則であるために、上水供給(Kork Kleang 1 と供給管は同一)は一時停止している。また、こ の地区は雨季には洪水の被害を受けており、排水システムや社会サービスが脆弱である。
Cambodia 2 章 再定住事業
013
■ AKPIVAT
MEAN CHEAY Community
1997 年 11 月、プノンペン市が Toul Svay Prey 地区 ( 中国大使館の近くの道路不法占拠コ ミュニティ)に対し、市当局が再定住のための土地を購入し、実施した事業である。この事業 は、前述の Kop Sreou 地区の事例から 7 年経ってから行われた事業であり、注目を集め、そ の後の再定住事業の先駆的モデル事業となった。計画当初は完全な公的セクター主導型の事業 であったが、様々な外部団体が介入した。SUPF はコミュニティ委員会の調整を現場で手助け し、UPDF は住宅ローンを提供し、URC と CATDG は住宅設計や建設過程での技術援助を提供し、 最終的には住民も巻き込んだ事業となった。 この再定住プロセスは、関係当局、コミュニティ、SUPF、地元・国際組織が密接に協力し て再定住方針を計画・調整したという点では、プノンペンにおいて初めての試みであった。他 の Khan やコミュニティからの代表者もこのプロセスを見学し学んだ。 再定住地区はプノンペン市内から南西 5km の位置で、全体の対象敷地の広さは 1ha である。 1 区画のプロットサイズは 45 ㎡で 129 区画(図 4-2)である。再定住地の造成および基盤整 備については UNCHS が行ったが、井戸とトイレに関してはオランダの NGO の SAWA の資金 支援で行った。地区内には 5 ヵ所の手動井戸ポンプ(30m の深井戸)が設置されている。再 定住地内の道路舗装および整備、生活雑排水および雨水のための排水溝、トイレの各施工につ いては UNCHS の支援によりコミュニティコントラクトで行われた。 Akpiwat Mean Cheay は基本的なインフラを敷設したが、排水路やポンプなどは十分に維持 管理されていない。また、当初計画されていた幼稚園や診療所、コミュニティセンターなどの 社会サービスは未だ整備されていない。ごみ収集も問題として残っている。近くの服飾工場で 働く約 300 人の多くの人々は部屋を賃貸している。 当コミュニティが当地区への再定住に同意した経緯には、市内にも近く、同地区の近隣に工 場があり就労の機会が得やすいという理由によるところが大きい。それは経済的に苦しいプノ ンペンの都市状況に深く関わっており、中心市街との距離というものが、ひとつの大きな要因 となっていると思われる。
Cambodia 2 章 再定住事業
014
■ TOUL
SAMBO Community
Toul Sambo Community は、中心市街地から約 25 キロメートルほど離れた Khan Dang Kor を再定住地とした事業である。プノンペン全域の不法占拠地から移住し、1999 年 9 月 18 日 に組織化された。 敷地レイアウトは UNCHS が行い、200 区画(一区画 144 ㎡)が計画された(図 4-3)。 UNCHS はさらにトイレ・排水路・道路建設の資金を援助し、コミュニティコントラクトによ りコミュニティメンバーが計画を実行した。小学校・幼稚園・市場も建設された。半数以上の 世帯が住宅デザインを URC の YP グループの支援を受け、UPDF の住宅ローンを受けた。 Toul Sambo community の再定住事業は市当局主導で行われ、1999 年 8 月から 2001 年に かけて段階的に再定住が行われた。第 1 段階は Bassac 周辺から 53 世帯が移住、第 2 段階は 市内の道路際を占拠していた 48 世帯が移住、第 3 段階はロシア大使館周辺から 43. 世帯が移住、 第 4 段階は Wat Phnom 周辺から 23 世帯が移住、最後の第 5 段階は市内の Pagota 周辺を占 拠していた 21 世帯が移住した。 2005 年現在は 215 世帯が居住しており、132 世帯がセービング活動に参加している。住民 は一日に 1,200riel を貯蓄している。 公共による水道供給はされておらず、再定住した 1999 年に JICA や UNCHS の支援で井戸が 10 基設置された。電気は民間セクターより購入しており、午後 5 時から午後 11 時の 6 時間だ け使用可能で、一日に 1,200riel を支払っている。トイレは全世帯が所有しており、2001 年に UNCHS の支援でコミュニティコントラクトにより設置された。ごみ収集サービスはなく、各 世帯単位で収集し焼却処分している。また、雇用創出のための農業用水地(90 m× 40 m× 5 m) を現在造成中で、これは農家の促進が目的であるが、現在コミュニティには農家は 4 世帯のみ である。そのため、農家促進のためのグループを組織中である。
Cambodia 2 章 再定住事業
015
■ SAMAKI
1 , 2 , 3 , 4 Community
敷地は都市部から 12 kmのところにあり、2001 年 5 月から 6 月にかけて事業が実施された。 ここの居住者は Sothearos Bld 沿いの「Building Grey」の前にある居住地の Bandos Vichea に 住んでいた 600 世帯であったが、その居住地が火事で焼き出されたため再定住した。人々は すぐに未開発の土地を購入した。多くの人々はすぐに、従前居住区の近くのロシア大使館横の Dey Krohom コミュニティと共に移住した。火事の犠牲となった世帯は住宅の建設資材を寄付 された。トイレの建設は段階的に行われた。しかし、雨季の間は周りの地域から水が流れ込み 敷地が洪水になった。区画を造成する余裕のないものは雨季に浸水した。また、寄付された資 材では洪水を避けられる高さに住宅を組み上げることができなかった。ゴミの問題や健康の問 題(特に下痢や頭痛)が住民によって挙げられた。 雨季の敷地内の居住環境は悪化し、そのため約 70%の人々が都市部に出戻ったと見積も られた。しかし、乾季になり水がひくと多くの人が帰ってきて、最近ではもとの居住者の約 75%が住んでいる。しかし多くの場合、稼ぎ頭は交通費の削減のために、約一週間はプノン ペン市内で生活する。 トイレや上水供給システムも整備されている。職業訓練センターも建設されたが、まだ稼動 してない。市場は建設中である。 コミュニティ委員会の運営上の問題があり、例えば、異なったリーダーや委員会があったり、 古くからいる人の何人かは異なった NGO や CBO によって組織されていたりするためである。
Cambodia 2 章 再定住事業
016
■ ANLONG
KNGAN Community
この敷地は都市部から 15km 離れた場所にあり、Ministry of Agricultur の農業実験ステーショ ンとして使用されていた場所であった。この地区は、2001 年 6 月、Samaki1,2,3 の落成式にお いて、市当局へ再定住用地として寄贈すると Hun Sen 首相が発表したことにより始まった再 定住事業である。 2001 年 11 月の終わりに、Bassac 地区と Chbar Ampeou 地区を 2 つの火事が発生し、3000 世帯以上の家屋が燃えた。NGO や国際機関は、被害を受けた人を支援するために再定住を遅 らせるよう市当局の説得を試みた。これはコミュニティの経済・社会・物理的崩壊を最小限に し、コミュニティ参加による計画調整や再定住のための準備期間のためであった。しかし、こ れらの提案にもかかわらず、火事の犠牲者の多くは、10 日以内に強制的にこの敷地に移住さ せられた。Anlong Kngan コミュニティは火事の犠牲者の住人だけを計画しており、一方で賃 貸者は Anlong Korng コミュニティへ移住した。 現在は Anlong Kngan に約 3500 世帯が居住しており、すでに 2600 ~ 2900 が区画割(図 4-4)されている図。市当局は敷地の 150ha の中から 60ha を、以前から所有権を主張してい た近隣の村人へ寄贈した。UNCHS の資金援助で仮設トイレ(10 世帯に 1 基)が現在建設中で ある。市場も建設中で、民間業者によって井戸の掘削や水の販売が行われている。住環境は依 然として不安定であるが、倉庫を改造した仮設学校がある。
Cambodia 2 章 再定住事業
017
■ TOUL
ROKAKOS Community
Toul Rokakos Community は都市部から 11 kmの場所に位置し、Bassac 堤防際から来た 2 つのコミュニティ(Tum Nup 2A, Kbal Tum Nup)を対象とした再定住事業であった。再定住 前にコミュニティ委員会、ANS , URC , CVCD , USG , UNCHS , UPDF , SAWAC、市当局で構成さ れるワーキンググループがつくられた。このワーキンググループは 2000 年 8 月から毎月会議 を行い、再定住の問題、特に活動計画や調整が行われたが、土地造成・鑿井・個人トイレの建 設などで事業が遅れた。11 月の初旬にコミュニティアクションプランニングワークショップ が 150 世帯が参加して開かれ、再定住の問題について議論された。 当初は水源として井戸を計画していたが、地区の地下に十分な水量と水質がないことがわ かった。この問題は未だ解決されておらず、住民の多くは近くの池や MPP のトラックで運ば れてくる水を使用している。雨季に建設された便所の多くは失敗に終わった。 地区では排水や道路システムと同様に上水供給が行われていない。小学校は敷地内に建設さ れたが、当初は計画されていた市場などその他の社会サービスは未だに未整備である。
■ SAMAKI
5 Community
プノンペン北西部での雨季の洪水対策のために、MOWRAM(Ministry of Water Resources and Meteorology)によって実施された Kob Sreou 堤防復興プロジェクト(ADB 基金)により 320 世帯が土地を失ったが、約 500 世帯に影響し、2001 年 7 月に 2 箇所の土地(1 つはもと の居住地から 1 km以内の 4ha の敷地で、もう 1 つは 2-3 km離れた 2ha の敷地)で再定住 が行われた。 市当局は各世帯につき US$300 の運営費で再定住の実施機関となった。敷地にはトイレ・水 供給・道路・電気が整備され、敷地にコミュニティセンターや診療所が計画された。
Cambodia 2 章 再定住事業
018
■ ANLONG
KORNG Community
この敷地は都市部から 8km 離れた場所にあり、Bassac の居住者を中心とした約 452 世帯 が対象の再定住事業である。これらの世帯は最貧困層の世帯であった。彼らの多くは夜に、 Bassac の火事後にトラックで連れてこられた。UNCHS の資金援助で仮設トイレ(10 世帯に 1 基)が建設された。CSI の支援で 6 基の井戸が掘削された。住民の 80-90%未だテントに暮ら している。敷地は氾濫源の中ほどにあり 2 m以上も水位が上がることで知られている。CSI に より洪水から守るための堤防が計画されている。
■ LOR
KAMBOR Community
この敷地は Kop Sreou 堤防の国道 5 号の近くあり、都市部から 9km 離れた場所である。 Road271 からの約 60 世帯が対象の再定住事業であったが、結局は 147 世帯の計画となった。 水と電気への接続は民間業者から供給を受け、国道 5 号へ直接接続する道路が建設された。 UNCHS が仮設の便所を建設した。Road271 の再定住事業を請け負った Monrethy Company によって土地が与えられた。公衆衛生上の問題や敷地が他の地域に比べ低いため雨季の洪水の 問題が未だに解決されていない。
Cambodia 2 章 再定住事業
019
■ SAMAKI
6 Community
この敷地は Samaki1,2,3,4 の近くにあり都市端部から 14km 離れた場所にある。Rd230 沿い の居住地から移住してきた 133 世帯によって 2001 年 11 月の終わりから移住した。30 基の仮 設便所が UNCHS の資金援助で建設された。人々は普段池の水を使用している。敷地は高い場 所にあり、雨季でも洪水の危険はない。コミュニティの住人は低質な水供給は大きな健康問題 を引き起こすと報告している。
■ KKKHRDA ( Khmer Kampuchea Krom Human Right and Development Association)
Kampuchea Krom(ベトナム南部)から移民してきた Khmer 人の人々や不法占拠居住区 などのコミュニティ(計 620 世帯)は土地を購入することを決定し、自らの再定住すること を決めた自発的な再定住事業である。土地はそれぞれのメンバーで購入した。敷地は Kork Kleang2 と隣接しており都市部から 5 km離れている。最近コミュニティと URC は敷地レイ アウトの設計を共同で行った。
Cambodia 2 章 再定住事業
020
3章
研究対象地概要
3-1.
事業前居住地概要
3-2.
調査対象地概要 3-2-1. 居住者の特性 3-2-2. 居住環境
3-3.
関連支援団体 3-3-1. 国際機関・行政 3-3-2.NGO 3-3-3. その他団体
Cambodia 3 章 研究対象地概要
021
3-1. 事業前居住地概要 St.271 は 1950 年代に洪水の堤防として建設されたが、政府は都市の成長を視野に入れた計 画をしていなかった。やがて地方から出稼ぎにやってきた労働者が 1979 年から St.271 沿いに 住居を構えるようになる。後にそれらの住民は、その土地の居住権を獲得したと推測できる。 ポル・ポト政権後の都市への人口流入に伴い都心部における交通網が混乱し、St.271 を幹線 道路として拡張する計画が浮上する。政府は住民と話合いをせずに、St.271 拡張工事を競売に かける。民間企業が US$3,000,000 で入札し、事業が着手される。
■名称 St.271 ■居住時期 1973-1993 年 ■ロケーション St.271( 全長 8km) に沿って広範の地域に不法占拠。 学校・病院・市場へのアクセスは良好。 ■インフラ敷設状況 電気供給 : 供給有り、EDC* と 350-650riel/kw で契約。 上水道供給 : 供給有り、PPWSA** と 350-950riel/m2 で契約。 ■コミュニティ組織 6
URC,SUPF,UNCHS,CPDF の協力により
5
2001 年 8 月に組織化。
5
SUPF の協力を得て、45 世帯がセービ
Samaki271
ング活動 *** に参加。 最初のコミュニティリーダー : Phum Oun 氏 ( 男性 )
ポンチェントン 国際空港
4
3
1
St.271 2
凡例
3
研究対象地 再定住事業地 国道 プノンペン市境 0 1 2
4
(km)
図 3-1: 事業前及び事業後居住地位置図
10
* Electricite du Cambodge の略称。プノンペン市の電気供給団体。 ** Phnom Penh Water Supply Authority の略称。プノンペン市の水道供給団体。 *** 住民によるインフラ整備費の補填を目的とした貯蓄活動。 Cambodia 3 章 研究対象地概要
022
出典 ) 著者が作成
3-2. 調査対象地概要 道路の拡張計画に伴い移住を迫られた St.271 沿いの不法占拠者グループは、その後二つの グループに分かれ、その1つのグループが自分たちでプノンペン中心部から約 7km 離れた土 地を選定、購入し、現在の Samaki271 ができた。 研究対象地である Samaki271 は、2002 年に再定住事業が実施されたコミュニティで、2007 年 9 月現在、50 世帯が暮らす地域である。
3-2-1. 居住者の特性
出典 ) Study on the relocation Of Urban Poor Communities in Phnom Penh ,URC 2002.4. 及び聞き取り調査より著者が作成
Samaki271
■名称 Samaki271* ■移住時期 2002 年 7 月 ■地区面積 6,346 ㎡。 ■区画数 88 区画 ■住宅軒数 40 軒 ( うち空き家 6 軒 ) ■世帯数
凡例 地区境界線 住戸 0
20
移住時
(m) 40
100
図 3-2-1: Samaki271 航空写真
88 世帯
2007 年 9 月現在 50 世帯
出典 ) Google Earth より著者が作成
男女の年代別人口
■人種 Khmer, Kampuchea Krom
35
30
■人口構成
全体 男性
25
女性
0- 5 歳 22 人 (12%)
6-11 歳
人口
20
12-17 歳
15
20 人 (11%) 20 人 (11%)
10
18-60 歳 110 人 (60.5%)
5
0 0-9
10-19
20-29
30-39
40-49
50-59 年代
60-69
70-79
80-89
60 歳以上
90-99
表 3-2-1: 人口構成
出典 ) 対面式アンケート調査より著者が作成
10 人 (5.5%) 計 182 人
* 福木修士論文中には、Kork Kleang 3 として紹介されている。また、FACTS & FIGHTERS 2006.12 には、Kraing Ankrang 271 と表記されている。 Cambodia 3 章 研究対象地概要
023
■コミュニティ組織 Community Leader (Facilitaterとして) Sub Leader (Facilitaterとしての他、 Saving,Credit,Finance 委員としても活動) Finance Committee
Sub Leader (Facilitaterとしての他、 Saving,Credit,Finance 委員としても活動) Land Environment Saving Credit Finance
Technical Committee 2001年から2006年までの Samaki271の組織構成
Labor Committee
Community Leader (Facilitaterとして)
Material Committee
Security
Education
2006年からの組織構成
* 個々の委員会の活動内容はコミュニティの状況によって変化するが、 基本的に委員として活動する人間は引退するまで変わらない。
■住民の従前居住地区
■住民の職業別人口
従前の居住地区
職業別人口
学生 子供 小売業 仕立屋 建設業
St.271
主婦
Kork Kleang
無職
プノンペン
定年 バイクタクシー その他
■交通手段
■勤労日数 勤労日数
通勤・通学手段
バイク
7日
自転車
6日
徒歩
5日
車
■世帯別総収入
事業前居住地の St.271 沿い出身者は、現在
世帯ごとの総収入 8
Samaki271 の住民の 35% 程にとどまり、それ
7
は、現在までに他人に土地や住宅を売り渡し自
6
らは他の土地へ引っ越した世帯や、住宅建設費
世帯数
5
が賄えず St.271 に未だ留まっている世帯があ
4 3
るとのことだった。
2
現在の Samaki271 の人口構成は、3 割強が
1
子供で、土地の選定時にも学校への近さが条件
0 0-9999 10000- 20000- 30000- 40000- 50000- 60000- 70000- 80000- 9000019999 29999 39999 49999 59999 69999 79999 89999 99999 収入(riel/日)
100 000-
の一つに含まれており、子供の教育に住民全体 で意識が高いようである。
Cambodia 3 章 研究対象地概要
024
3-2-2. 居住環境 ■ロケーション プノンペン市街中心部からの距離 7km 最寄の幹線道路からの距離 2-2.5km 学校までの距離
1km
病院までの距離
2km
市場までの距離
2km
■インフラ敷設状況 電気供給
供給有り
上水道供給
供給無し ( 現在は池から汲み上げた水を使用 )
下水・生活排水処理システム パイプを通して近くの河川に排水
6
* P1
1
3
14
2
4
16
15
6
8
10
12
13
12
11
10
9
5
7
9
11
8
7
P2
13
5
2
4
6
8
10
12
14
4
3
2
1
ゴミ収集システム 無し
7
5
20
18
18
1
3
P4 14
12
10
8
6
4
2
3
8
6
7
5
6
4
5
3
1
4
2
3
1
2
1
22
16
17
P3
9
11
10
8
9
7
P5
P6
5 10
20
30
40(m)
13
11
15
16
7
15
16
14
13
14
12
5
0
12
10
11
9
P7
図 3-2-2: Samaki271 の 配置図 出典 ) STT 所蔵資料より著者が作成
* 本研究では、各住宅の名称を、区画とその区画番号に沿って呼ぶこととする。例:P1#1 Cambodia 3 章 研究対象地概要
025
3-3. 関連支援団体 3-3-1. 国際機関・行政 MPP Municipality of Phnom Penh プノンペンの行政を司る機関。 スラム問題の担当部署も設置 されている。
UN-HABITAT (UNCHS) United Nations Centre for Human Settlements 都市化や居住に関する問題に 取 り 組 み、1996 年 か ら MPP 及び都市貧困層の支援を行っ ている。
3-3-2. NGO URC Urban Resource Centre 1997.04 に設立され、プノン ペン市内の貧困地区における インフラ整備や住宅建設の技 術支援を行っているローカル NGO*。
SUPF Solidarity for Urban Poor Federation 1995 年に設立された、プノン ペン市内の住民組織の連合体 である。
UPDF Urban Poor Development Fund 1998.03 に設立され、住民自身 が資金運用の力をつけ、コミュ ニティの発展に従事するよう、 貯蓄活動の実践を条件にクレ ジット給与を行っているロー カル NGO。 HFH Habitat for Humanity アメリカに本部をもつ非営利 の組織で、世界から貧困住居 とホームレス問題をなくす ために活動を続けている国 際 NGO である。HFH はカンボ ジ ア で、2003-2007.05 ま で に 247 軒の住宅を貧困層の人々 に供給している。
* 以下の 4 者のいずれかを満たす NGO。(1) 当該国における法律で、その法的地位を定められている団体。(2) 国際 NGO の現地事務所。(3) 明確な戦 略と目的をもった現地の社 会的、宗教的団体。(4) 現地の自助的協会や協同組合。 Cambodia 3 章 研究対象地概要
026
3-3-3. その他団体 STT Sahmakum Teang Tnaut スラム改善を目的とし、技術 教育や公衆衛生の安全性の調 査などを主に行っている団体。 以前 URC に勤めていた Mr.Se ng が設立した。
PPWSA Phnom Penh Water Supply Authority プノンペン市の水道供給団体。
EDC Electricite du Cambodge プノンペン市の電気供給団体。
Cambodia 3 章 研究対象地概要
027
4 章 再定住事業の経緯
4-1.
不法占拠からの住民の組織化
4-2.
土地の選定
4-3.
敷地計画
4-4.
区画割当て
Cambodia 4 章 再定住事業の経緯
029
年
1979~2000
2001
事業前
事業準備期間
市当局
5月
8月
事業実施 の通達
住民
St.271沿いに不法占拠 7つの居住者グループ
住民の組織化 セービング活動
2002
再定住事業 再定住地の選定・購入 11月 St.271拡張計画発表 再定住地の 提示
選定した 土地を許可
住民委員会 設立
再定住地を 自ら選定
関連機関
提示された土地を拒否 土地代 融資
支援
*
都市化や居住に関する様々な問題に 取り組む国連機関で、1996年より 市当局及び都市貧困層の支援を行っている。
SUPF
UPDF
12月
区画の配置計画 1月
インフラ整備 2月~7月 土地造成 (市当局が負担)
2案を選択 再定住地の 敷地計画 5つの案提示
最終案決定 ↓ 区画割当て
URC
道路・下水道 整備 (UNCHSが負担) UNCHS *
表 4: 再定住事業の経緯
出典 ) Study on the relocation of Urban Poor Communities in Phnom Penh,URC,2002.04 及び聞き取り調査より著者が作成
4-1.
不法占拠からの住民の組織化 出典 ) Study on the relocation of Urban Poor Communities in Phnom Penh,URC,2002.04 及び聞き取り調査より著者が作成
事業前の居住地であるプノンペン市街周縁部を走る St.271 沿いの地区では、1979 年から 7 つの居住者グループが不法占拠していた。2001 年 5 月に市当局による St.271 の道路拡張計画 が持ち上がり、同年 8 月に住民の組織化・セービング活動が開始された。 11 月に市当局によ り道路拡張計画が正式に発表された。 土地を完全に失った世帯、土地は残ったが住める状況にない世帯など計 88 世帯が深刻な被 害を受け、それら被害を受けた住民が団結し、政府に補償を求めた。住民は SUPF の支援によ り組織された住民委員会を設立し、市当局によって提示された複数の再定住候補地を視察した。
4-2. 土地の選定 出典 ) Study on the relocation of Urban Poor Communities in Phnom Penh,URC,2002.04 及び聞き取り調査より著者が作成
政府の提案した土地は Lan Kambor で、インフラ未整備、各種サービスはなく、敷地が他の 地域に比べ低く洪水の被害を受けやすく、都心から 20km も離れているという悪条件のもので あった。それに加えて US$18,000( サービス、インフラなどの開発費 ) の補償金を政府は提示 した。
Cambodia 4 章 再定住事業の経緯
030
住民は代替地と補償金と、長い間住んできた現在の土地の価値を比較し、代替地がそれに値 しないと判断し、提案を却下した。その後住民は自発的に通勤上楽な都心に近い土地を見つけ て、政府と企業に代替地として提案した。政府はその案を却下し、企業は住民の提案した土地 に再定住する場合いっさいの援助を行わないと明言した。話し合いは平行線をたどり、多くの 人々は、政府の政策が貧困層の底上げ政策と矛盾していることに憤りを感ずるようになる。 提案が却下された後、住民は様々な手法(ネットワーク作り、会議や首相官邸前でのデモ) を用いて、土地と財産の喪失やそれに伴う苦難に対する補償を得る権利を主張した。形に表れ る成果は挙げられなかったが、政府の対応が周辺の人々に認知され政府の評判が下がり始めた。 それが実を結び、政府は住民と話し合うことを決意する。住民側は他の都市の貧困層との関係 を強めながら、度重なる話し合いを優位に進めていった。それでも大きな進歩はみられなかっ た。 その後住民は今までの再定住事業とは異なる、自助努力による新たな戦略を見出した。住民 は外部団体に頼らずに問題を解決する方針をとることにした。住民たちは集まってどのような 選択肢があるか、代替地に何を求めるか、また代替地を獲得するために住民一人一人がどのよ うに貢献できるかを話し合った。 6 5
Lan Kambor
5
Samaki271
ポンチェントン 国際空港
4
3
St.271
▲移住計画当初の Samaki271
1
2
凡例
3
研究対象地 再定住事業地 国道 プノンペン市境
1
(km) 0 1 2
4
10
図 4-2: St.271 の 2 つの再定住地 出典 ) STT 所蔵資料より著者が作成
コミュニティは土地の購入資金のために各世帯がセービング活動を行うことを方針付ける。そ れがコミュニティメンバーの中で全員一致に達した後、人々はプノンペンへ出かけて土地の値 段を聞く等コミュニティの基準に沿う土地を探した。 最終的に全員一致で決まった土地は都心から 6km で、電気供給は既に整備されていて、そ の翌年には公共機関による水の供給が行われる予定だった。土地の値段は US$20,000 で、そ のうちセービング活動による貯蓄は US$12,000 だったので約 US$7000 足りなかった。住民は NGO や CBO 等の団体に不足額の捻出に協力を求めた。 政府は住民の活動に関心を払っていることを示すため、悪い評判を踏み消すためにも住民に US$7000 を提供すことに踏み切った。このようなプロセスを経て、271 コミュニティは再定 住地を獲得した。 Cambodia 4 章 再定住事業の経緯
031
4-3. 敷地計画
出典 ) STT への聞き取り調査より著者が作成
土地の値段は当時で US$25,774($4.5/ ㎡ ) で、周辺地域の地価と比較すると、Samaki271 の 土地は安価であった。出資の内訳は、市当局 $7,544、住民 $18,430(US$200/ 世帯 ) である。住 民は、当時この費用を UPDF から借り土地を購入した。 2001 年 12 月にはローカル NGO で ある URC により、区画の配置計画が開始され、URC から提案された 5 案のうち 2 案を住民が 選択し、最終案を練り上げた。市当局が最終案を容認し、専門家と住民による協議から区画の 配置計画が決定した。当計画では、5 × 10m の区画が 88 区画配置された。 ■区画 一区画 5m × 10m の区画をレイアウト ( 全 89 区画 )。Samaki271 中心部の 10m × 20m の敷地を計画当初からパブリッ クスペースとして計画していた。 ■アクセス 図 4-3-1: Samaki271 敷地計画
将来、周辺コミュニティと繋げられるよ う道をレイアウト。
出典 ) STT 所蔵資料
■隣棟間隔 (0.5m) ■オープンスペース フロントヤード (2m) : 住民が植栽を植えたり作業する場を確保。 ■バックヤード (0.5m) : 裏の家とバックヤードを共有し合う ことで、1m 分の作業の場を確保。 勝手口から互いの家を行き来できる。 Front yard
3.8 3.7 500 500
Back yard 7.3 1000
Front yard
4 5400 500
2000 15
15 2000
4 500 4 500 10000 66.9
図 4-3-2: オープンスペースの計画 出典 ) STT への聞き取り調査より著者が作成
Cambodia 4 章 再定住事業の経緯
032
15 2000
74 10000
7.3 1000
5000 37
5000 37
図 4-3-3: 隣棟間隔
出典 ) STT への聞き取り調 査より著者が作成
4-4. 区画割当て
出典 ) 聞き取り調査より著者が作成
区画割当てでは、事業前の居住地に形成された 7 つの住民グループの近隣 ・ 交友 ・ 血縁関係 を事業後の居住地でも反映するため、グルーピング手法 * が採用された。
■区画割当て方法 ① 7 つのグループリーダーによるくじ引きで、各グループに区画が振り分けられる (P1-P7)。 ②次に、各グループ内でくじ引きを行い、各世帯の区画が決定される。 ③区画内は基本的に事業前の居住地グループの顔見知りのメンバーなので、親戚同士で隣に なりたい等の要望にも、世帯同士の話し合いにより柔軟に区画が決定された。 ( この事例については、6-3. 親戚関係で述べることとする。)
このようにして、Samaki271 における再定住事業は、住民の組織化から始まり、住民委員会、
2
4
6
5
6
8
10
12
14
4
3
2
1
市当局、NGO、国際機関の相互協力により実現した。
P1
8
1
3
9
5
7
14
2
4
16
15
6
8
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P2
9
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22
20
18
18
1
3
P4 14
12
10
6
8
4
2
3
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6
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5
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3
1
4
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1
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1
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P3
10
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P6
5 10
20
30
40(m)
13
11 16
7
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15
16
14
13
14
12
5
0
12
10
11
9
P7
図 4-4: Samaki271 の区画割り 出典 ) STT 所蔵資料より著者が作成
* 近隣関係 ・ 交友関係 ・ 血縁関係を考慮に入れたコミュニティ内の小グループを単位とした計画策定方式を指して 「 グルーピング 」 とする。カンボ ジア・プノンペンにおける再定住事業に関する研究、福木聡、東京理科大学修士論文、2005 で紹介されている。 Cambodia 4 章 再定住事業の経緯
033
5 章 事業後の住宅建設
5-1. 住宅建設に関する NGO 5-2. 住宅建設の経緯 5-2-1. Samaki271 住宅建設の概要 5-2-2. 住宅建設軒数の増減
5-3. UPDF 及び HFH の建設手法 5-3-1.UPDF の住宅建設手法 5-3-2.HFH の住宅建設手法
5-4. 住宅建設軒数増減の要因 Cambodia 5 章 事業後の住宅建設
035
5-1. 住宅建設に関する NGO Samaki271 では、UPDF と HFH の2つの NGO が住宅建設に対する支援を行っている。 2003 年住宅建設開始時から 2005 年までの住宅建設は、主に UPDF の融資を受けて行われて おり、2005 年以降、Samaki271 に HFH が支援を開始した。 ■ Urban Poor Development Fund (UPDF)
出典 ) UPDF 資料より著者が作成
1998 年 3 月に設立されたローカル NGO である。住民自身が資金運用の力をつけ、コミ ニティの発展に従事するよう、貯蓄活動の実践を条件にクレジット給与を行っている。
■ Habitat For Humanity (HFH) 出典 ) HFH 資料より著者が作成
1976 年、ミラード、リンダ・フラー夫妻によって設立された世界から貧困住居とホームレ ス問題をなくすために活動を続けている 国際 NGO である。アメリカ・ジョージア州アメリ カスに本部をもち、現在世界各国で 1900 以上の支部が活動している。HFH はカンボジアで、 2003 年以降から 2007 年 5 月までに 247 軒の住宅を貧困層の人々に供給している。 ボランティアによる労働力・資金・物資の寄付により、ホームパートナーとともにシンプル かつ丈夫な住宅の建設及び修繕を行う。住宅は、ローンにより購入され、ホームパートナーは 毎月ローンを返済する。この月々の返済金が回転資金として、更なる住宅の建設資金源となる ことで、活動が成り立っている。
Cambodia 5 章 事業後の住宅建設
036
5-2. 住宅建設の経緯 5-2-1. Samaki271 住宅建設の概要 住宅の年度別着工・竣工・移住数
8 着工数 竣工数
7
移住
6
軒数
5
4
3
2
▲建設中の住宅
1
出典 ) 著者が 2007.09 撮影 0 2003
2004
2005
2006
2007
年度
図 5-2-1: 年度別住宅建設着工・竣工・移住数
出典 ) 対面式アンケート調査結果より著者
図 5-2-1 より、住宅建設の着工数・竣工数 * に移住数もほぼ一致して増減していることがわ かる。 移住後すぐに住宅が建設され始めたが、翌年 2004 年、引続いて 2005 年には、住宅建設軒 数は減少し移住数も減少している。しかし 2006 年以降は、再び住宅建設軒数が急増している。 以下、2003 年から 2007 年 9 月現在までの住宅建設の実態を把握し、その住宅建設手法を 探ることとする。
*Samaki271 の住宅建設の工期は、住宅一軒に対し約 1~2 ヵ月である。 ** 住宅が竣工した時点で、住宅建設軒数として数える。 Cambodia 5 章 事業後の住宅建設
037
5-2-2. 住宅建設軒数の増減 2007 年 9 月現在までに、自費又は UPDF の融資を受け建設された住宅を、以下 「U 住宅 」 とし、 2005 年以降、HFH の融資を受け建設された住宅を、以下 「H 住宅 」 とする。
0
5 10
20
30
40(m)
0
凡例
20
30
40(m)
U住宅
U住宅
建設済みのU住宅
建設済みのU住宅
H住宅
H住宅
建設済みのH住宅
建設済みのH住宅
② 2004 年
① 2003 年
主に UPDF の融資を受け住宅建設がなされる。 住宅建設軒数は激減し、建設された U 住宅は 2 軒。
主に UPDF の融資を受け住宅建設がなされる。 建設された U 住宅は 10 軒。
0
5 10
20
30
0
40(m)
5 10
20
30
40(m)
凡例
凡例 U住宅
U住宅
建設済みのU住宅
建設済みのU住宅
H住宅
H住宅 建設済みのH住宅
建設済みのH住宅
③ 2005 年
5 10
凡例
④ 2006 年
主に UPDF の融資を受け住宅建設がなされる。前年 主に HFH の融資を受け住宅建設がなされる。 住宅建設軒数は増加し、建設された H 住宅は 6 軒。 度に引き続き住宅建設軒数は伸びず、建設された U 住宅は 1 軒。 この年の終わり、HFH の融資が開始された。 Cambodia 5 章 事業後の住宅建設
038
⑤ 2007 年 主に HFH の融資を受け住宅建設がなされる。 前年度同様、住宅建設軒数は増加し、 その年に建設された H 住宅は 12 軒。
0
5 10
20
30
40(m)
凡例 U住宅 建設済みのU住宅 H住宅 建設済みのH住宅
図 5-2-2 ① - ⑤ : UPDF 及び HFH の融資による住宅建設
出典 ) 対面式アンケート調査結果より著者
2007 年 9 月現在までに、自費又は UPDF の融資を受け建設された U 住宅は 23 軒あり、また、 2005 年以降、HFH の融資を受け建設された H 住宅は 17 軒ある。 以上より、2005 年の HFH による融資開始を境に、伸び悩んでいた住宅建設軒数は増加し ていることがわかる。この住宅建設軒数の増減の要因には、Samaki271 の住宅建設に関する 2 つの NGO が深く関与していると考えられる。
60
15
UPDFの融資を 受けた住宅 自費で建設 された住宅 HFHの融資を 受けた住宅 移住人口
0
0
移住人口(人) 40 30 20 10
住宅着工数(軒) 5 10
50
凡例
2003
2004
2005
2006
2007
図 5-2-2’ : 融資別にみる住宅建設軒数の推移 出典 ) 対面式アンケート調査結果より著者
そこで、これより、UPDF 及び HFH の住宅建設手法の利害得失を把握し、住宅建設軒数増減 の要因を探ることとする。
Cambodia 5 章 事業後の住宅建設
039
5-3. UPDF 及び HFH の建設手法 5-3-1. UPDF の住宅建設手法 UPDF は、現金による融資 (US$500/ 世帯、年利 8%) を行っている。返済方法は、毎月 US$10 ずつ返済し、月の返済が滞ると翌月に US$1 を余分に支払わなければならない。融資 金の使用用途は自由であるが、住民は U 住宅一軒を建設するために約 $2,000 を要し、住民は US$1,500 を負担する必要がある。
▲ U 住宅事例 ( 左図 P1#14+16、右図 P6#1+3) 出典 ) 著者が 2007.09 撮影
融資額 建設費
$2,000
現金
$500 自己負担額
$1,500
建設までの流れ 委託
→ Samaki271 の住民
融資額 建設費
$1,000
建設業者
→
$1,000 $0
U住宅
建設までの流れ
建築材料 自己負担額
建設
→
Samaki271 の住民
建設
→
H住宅
HFHにより技術教育 を受けた住民
図 5-3: UPDF 及び HFH の融資内容の違いと建設の流れ 出典 ) 聞き取り調査より著者が作成
Cambodia 5 章 事業後の住宅建設
040
5-3-2. HFH の住宅建設手法 HFH は、住宅建設を目的としており、建築資材による融資 (US$1,000 相当の建設資材 / 世帯、 年利 2%) を行なっている。返済方法は、初期投資額として US$300 を支払い、残りの US$700 を US$25/ 月ずつ返済する。住民は、実質約 US$1,000 で住宅を建設できる。また、HFH では 住宅建設に対する技術的な支援も行っており、居住地内から選定した数名の住民に住宅建設の ノウハウを教え、その後居住地で H 住宅を建設する人材として育成している。雇用機会を創 出すると共に、他の建設業者に委託するよりも人件費を抑えることができ、より安価に住宅を 建設できるようになった。
■ HFH の建設の流れ ①申請 (HFH の融資を受けるための審査基準及び手続き ) Samaki271 の場合 (i) 審査基準 :Samaki 271 の居住者であれば誰でも融資を受けることが可能である。 (ii) 手続きの流れ : 約 50 日間で手続きが完了する。 ②資材の送付 希望世帯に US$1,000 相当の建設資材が送付され、その建設資材で H 住宅一軒を建設する。 ③労働の手配 HFH で住宅建設のノウハウを学んだ住民が、その後が Samaki271 にて住宅建設に従事する。その際、他のコミュ ニティに配属される場合もある。その後、さらに彼らが住民に住宅建設 のノウハウを教え、HFH は住民が 自力で建設作業を行えるよう促している。 技術者の収入は一軒あたり約 US$250 である。HFH の指導を受けた Samaki271 の住民は、彼ら自身の自宅も 建設し現在住んでいる。 ④建設工期 聞き取り調査より、HFH の融資を受けたほとんどの住戸が1カ月ほどで完成している。 HFH では、建設機材や仮設材を無料で貸し出している。 ⑤ HFH へのローン返済 1 軒あたり合計約 US$1000 返済する。 (i) 融資 US$1000 分の材料‐US$300 は初期投資費として住民が出資 , 残り US$700 +年利 2%をローンとして HFH が貸し出し、その返済期間は 5 年以内。 (ii) 返済額+年利 2%‐このうち US$260 は HFH の運営・回転資金として使われている。
▲ H 住宅事例 ( 左図 P2#13、右図 P2#13) 出典 ) 著者が 2007.09 撮影
Cambodia 5 章 事業後の住宅建設
041
▲住民による H 住宅建設の様子 出典 ) 著者が 2007.09 撮影
■ H 住宅の事例①:House No.P2 #7 (Samaki271 の住宅建設チーフの家 ) この住宅の家主は、HFH で技術指導を受け、現在 Samaki271 の住宅建設チーフとして働い ている。彼は既に技術を持ち合わせているため、誰も雇わずに自分の家族だけで住宅を完成さ せた。これは、住民による自力建設の唯一の事例である。 総建設費:US$1260 ( 初期投資額 US$300 + HFH へのローン返済額 US$960)
このように現在の Samaki271 では、住民全体としては未だ自力建設が出来るほどの技術レ ベルには達していないようだが、今後さらに HFH での技術教育を受けた住民が増えることで、 コミュニティの住宅建設技術の向上が期待される。 Cambodia 5 章 事業後の住宅建設
042
5-4. 住宅建設軒数増減の要因 以上より、UPDF 及び HFH の住宅建設手法の利害得失がわかった。 移住開始当初、住宅建設を実現できたのは一部の比較的裕福な世帯のみで、UPDF の融資金 のみでは建設費を賄えない世帯が多かった。このことが 2003 年から 2005 年までに住宅建設 軒数が減少した要因であると考えられる。 一方、H 住宅は U 住宅に比べ安価であり、表 5-4 の建設費分布からもその差は明らかである。 また、住民は初期投資額で住宅建設に着手することができ、UPDF の融資金のみでは住宅建設 ができなかった世帯も住宅建設が可能となった。このことが 2005 年以降、住民に HFH の融 資が指示され、住宅建設軒数の増加へ繋がった要因であると考えられる。 以上より、移住後に住宅が早急に必要となる再定住事業において、HFH の住宅建設手法は 適していると考えられる。
U住宅とH住宅の建設費
4.5 4 3.5
U住宅 H住宅
軒数
3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 10001999
20002999
30003999
4000- 50004999 5999 建設費(USドル)
60006999
70007999
80008999
表 5-4: Samaki271 の U 住宅及び H 住宅の建設費分布
出典 ) 対面式アンケート調査より 著者が作成
□UPDF メリット
デメリット
($2,000 )
・頭金が不要
・建設費が高価
・自由な住宅のデザインが可能
・ $500しか借りられない ⇒ 自己負担あり
($1,500)
□HFH デメリット デメリット
メリット
・建設費が安価
($1,000)
・住宅一軒分の建設資材 ⇒ 自己負担なし
・頭金が必要
($300)
・ HFH 規定の住宅
図 5-4: UPDF 及び HFH の住宅建設手法の利害得失 出典 ) 著者が作成
Cambodia 5 章 事業後の住宅建設
043
6 章 住宅の実態
6-1.
Samaki271 の住宅の現状
6-2.
H 住宅の実態 6-2-1.H 住宅建設上の規定 6-2-2.H 住宅の実態
6-3. 賃貸住宅 6-4. 親類関係
Cambodia 6 章 住宅の実態
045
6-1. Samaki271 の住宅の現状 現在、Samaki271 には、自費又は UPDF の融資を受けた U 住宅 (19 軒 /40 軒 ) と、HFH の融 資を受けた H 住宅 (21 軒 /40 軒 ) が混在している。また、区画割り当ての際、親類間で隣合う 区画を獲得し建設された 2 戸1型住宅なども確認された。さらに、住民間で住宅を賃貸してい る事例も見られた。 以下では、これらの事例を通して、Samaki271 の住宅の実態を探る。
植木鉢
食器
作業場 フロントヤード
食器
図 6-1: Samaki271 の住宅連続平面図 出典 ) 実測調査より著者が作成
Cambodia 6 章 住宅の実態
046
6-2. H 住宅の実態 6-2-1. H 住宅建設上の規定 H 住宅は、間取り・建具・使用材料等が建設年度別に規定されており、増改築などの設計の 変更は許されていない。ただし、HFH へのローンを完済すれば、デザインの変更は許される。 デザインの変更・増改築不可 完済
変更・増改築可
竣工
完済
HFHの住宅の2006年の型の事例
HFHの住宅の2007年の型の事例
5(m)
木材
無し
壁
無し
天井
無し
外構
コンクリート
外壁
無し
屋根
トタン
使用材料
母屋・垂木
RC
壁
レンガ
床
無し
壁
無し
天井
無し
ドア・窓 母屋・垂木
外部仕上げ
レンガ
柱・梁・スラブ 内部仕上げ
壁
外部仕上げ
木材
内部仕上げ
使用材料
ドア・窓
1m
5(m)
0
RC
2m 8m
2m
1m
柱・梁・スラブ 床
フロントヤード
7m
2m 7m
0
4m×8m=32㎡
4m
5m 2m
4m
平面
フロントヤード
立面 桁 (行面 )
4m×7m=28㎡
外構
スティール 木材 コンクリート
外壁
無し
屋根
トタン
① 2006 年の型 (7 軒 ) - RC 造、屋根は片流れ。間口 4 m×奥行き 7 mで、主な使用材料は RC( 躯体 )、レンガ ( 壁 )、 スティール ( 開口部 )、木材 ( 開口部、母屋、垂木 ) ② 2007 年の型 (5 軒 ) - RC 造、切妻屋根、間口 4 m×奥行き 8 mで主な使用材料は RC( 躯体 )、レンガ ( 壁 )、ス ティール ( 開口部 )、木材 ( 母屋、垂木 )
図 6-2-1: H 住宅の年度別規定
出典 ) 聞き取り及び実測調査より著者が作成
Cambodia 6 章 住宅の実態
047
凡例 H住宅-2006年の型
H住宅-2007年の型
UPDFとHFHの両方の 融資を受けた住宅
0
5 10
20
30
40(m)
図 6-2-1’ : H 住宅の建設年度別配置図 出典 ) 対面式アンケート調査より著者が作成
■ 2006 年度型 H 住宅 ( 6/21 軒 )
▲ H 住宅 2006 年度の型の事例 ( 左図 P6、中図 P2#14、右図 P6#15) 出典 ) 著者が 2007.09 撮影
■ 2007 年度型 H 住宅 ( 11/21 軒 )
▲ H 住宅 2007 年度の型の事例 ( 左図 P2#7、中図 P5#10、右図 P3#10) 出典 ) 著者が 2007.09 撮影 Cambodia 6 章 住宅の実態
048
8㎡
4m
4m
20㎡
28㎡
4㎡
7m
5m 7m
8m
・水周りが母屋に含まれる 8 ㎡
・バックスペースに水周りが集約 4 ㎡
・就寝行為に使用できるスペース 20 ㎡
・就寝行為に使用できるスペース 28 ㎡
2006 年度の型は、すべてのスペースが母屋の内に収まっており、H 住宅のバックヤード側 2m 分が水周りと勝手口で占めているため、寝食行為に使用できるスペースは 20 ㎡である。 勝手口はバックヤードに抜けるよう配置され、バックヤードは生活用水に使う雨水を溜めるた めの水瓶などが置いてあり、バックヤードが有効に使われている。 一方 2007 年度の型は、バックヤード側に1m 分の独立したスペースが作られており、これ は母屋の外に設置されていて、ここに水回りが集約されている。このことが 2006 年度の型と の大きな違いである。この水回りのスペースが、母屋外に独立したことにより、寝食行為に使 用できるスペースが広く確保できるようになる (28 ㎡ )。しかし、勝手口がバックヤードに抜 けずに側面に配置され、バックヤードへのアクセスが悪くなっている。また、H 住宅全体とし て後方に1m 拡大したため、結果的にバックヤードが狭くなり、バックヤードがうまく機能 していない H 住宅も見られた。
Cambodia 6 章 住宅の実態
049
6-2-2. H 住宅の実態 1階建て
2階建て HFHのスタッフが視察に 来る前に土を戻し隠蔽
拡張部分
①フーチング拡張をしている H 住宅の事例
②隣人同士で屋根を共有している H 住宅の事例 ③開口部を拡大し、庇 が取り付けられた H 住宅の事例 ( 左写真 )
④二戸一型の H 住宅 の事例 ( 右写真 )
図 6-2-2: HFH 規定の違反事例 出典 ) 聞き取り及び実測調査より著者が作成
住民が平屋の HFH 住宅を将来の増築に備えてフーチングを拡張するという事例や、2 戸 1 型の住宅の事例、コスト削減のため隣人同士で屋根を共有している事例等の HFH の基準に合 わない住民の住宅建設行為が見られた。これらの事例より、現在の HFH 住宅のプランが住民 の要求に即していないことが伺える。 将来的に Samaki271 の住民の生活が安定し、住民の住宅の設計に対する要求も多様化する と予想され、現在の HFH の規定に、新たな仕組みを導入することが必要であると考えられる。 Cambodia 6 章 住宅の実態
050
6-3. 賃貸住宅
凡例 P1 #1+3(貸主) P2 #13(借) P2 #14(借) コミュニティ外の家(貸主) P2 #11(借) P5 #1(貸主) P5 #3(借)
貸主のわからない 賃貸住宅
0
5 10
20
30
40(m)
図 6-3: Samaki271 の賃貸住宅 出典 ) 聞き取り調査より著者が作成
聞き取り調査より、Samaki271 には賃貸住宅が多く見られた (8/40 軒 )。 その賃貸住宅のうち、Samaki271 の住民が貸主で、住民間で賃貸の契約がなされている事例 が見られた。さらに、建設後の H 住宅は賃貸に出される傾向が見られ、それは住民が HFH へ のローン返済のための資金確保や家賃収入を目的として行っていることがわかった。 特に資金のない若夫婦などが将来住む H 住宅を賃貸に出し、その傍ら返済期間中は、自ら は親の家に同居またはプノンペン市内の安価な住宅に住み、返済が完了後に引っ越すという傾 向が見られた。 このように、H 住宅が資産としても運用されているという実態が明らかとなった。数年後、 HFH へのローンを完済した世帯が、Samaki271 に戻ってくる可能性もあると考えられる。
Cambodia 6 章 住宅の実態
051
5年以内
購入 ルール
完済
竣工
デザインの変更・増改築不可
変更・増改築可
住宅を賃貸して、賃貸料をローンの返済に充てる
完済したあと住む
図 6-3’ : H 住宅の賃貸の流れ
出典 ) 聞き取り調査より著者が作成
■賃貸住宅事例① : P2 #12 (H 住宅 ) の事例
House No.P2 #12(H 住宅 ) - 貸主はコミュニティ外の家 2004 コミュニティ外に貸主の住宅建設、着工。 2ヵ月後に竣工。 2006 P2 #12 (H 住宅 ) の住宅建設、着工。 1ヵ月後、竣工。 その後 P2#2 を賃貸に出す。
コミュニティ外に住む貸主への聞き取り調査を実施した。この事例の場合、貸主は自らの住 宅を持っていながら、さらに H 住宅を建設したことになる。HFH の支援は、住宅を建設する ことが難しい世帯への支援を基本としているが、この貸主の場合、次のようにして HFH の支 援を受け住宅建設することを可能にした。
この貸主は、妹の名義で HFH の融資を受け H 住宅を建設した。 その後、HFH へのローンの返済金が必要となり、建設された P2 #12 を賃貸住宅として他人に貸し出した。
賃貸料は US$30/ 月で、その内訳は、HFH へのローン返済に US$25/ 月、利益 US$5/ 月である。 現在、妹は貸主の家に住んでいる。
■賃貸住宅事例② : P2 #13・P2#14 ( 共に H 住宅 ) の事例 この事例については、次の章 6-4 親類関係事例①で述べる。
Cambodia 6 章 住宅の実態
052
▲コミュニティ外の貸主へ の聞き取り調査の様子 出典 ) 著者が 2007.09 撮影
6-4. 親類関係
凡例 P1 #1+3(母) P2 #1+3(娘) P2 #13+14(娘) P1 #10+12(親) P2 #5(息子、現在は土地のみ) P5 P5 P5 P5
#1(娘、以前は母も住んでいた) #3(娘) #5(姪) #2+4(息子)
P7 #1(母) P7 #3(息子) P7 #5(娘)
0
5 10
20
30
40(m)
図 6-4: Samaki271 の親類関係 出典 ) 聞き取り調査より著者が作成
区画割当てでは、事業前の居住地で形成された 7 つの住民グループの近隣 ・ 交友 ・ 血縁関係 を事業後の居住地でも反映するため、グルーピング手法が採用され、区画割当て方法は、各グ ループリーダーによるくじ引きで区画が決定された。 グループ内での区画の決定の際に、親戚同士で隣になりたい等の要望には、世帯同士の話し 合いにより決められた。 ここでは、その Samaki271 の親類関係に着目し、区画割当て以降の土地及び住宅の状況を把 握することとする。
Cambodia 6 章 住宅の実態
053
■親類関係事例① : Keov 家の事例
House No. P1 #1+3 ( 母・長女 ) P2 #1+3 ( 次女 ) ただし、現在はプノンペンに住んでいて不在。 現在、コミュニティの建設資材置場になっている。 P2 #13+14 ( 三女 ) 現在他人に賃貸しており、三女が結婚したら住む予定。 三女は現在、P1 #1+#3 に住んでいる。 聞き取り調査より、コミュニティ敷地内の区画には、場所により人気に差があることがわかっ た。くじ引き時に人気のあった区画は、P1 区画や P2 区画などの大通りに近い区画で、それは 店を開くのに有利であるという理由からだった。一方、くじ引き時に人気のなかった区画は、 P5 区画や P6 区画など、コミュニティ敷地内でも比較的奥まっている区画であった。 この Keov 家の三女もまた、将来 Samaki271 で店を開くことを希望しており、そのため Keov 家では、くじ引きで人気のない区画に当たる確率を低くするため、家族がひとつに固ま らず、あえてグループを変え散らばることで、大通りに近い区画を獲得する策に出た。
③Group単位で7つの 区画に振り分けられる
P1#1に決定
④Group内で各世帯 くじ引き
次女
P2#1に決定
P2に決定
St.271でのご近所さんでの親しいGroupeがSamaki271 のGroupeにもそのまま反映され構成されているので、 話し合いで敷地の交代も可能。
⑦2戸1の住宅をそれぞれ建設
8
6
4
2
7
5
3
1
3
10
P2
13
11
9
P1
12
11
14
13
16
15
18
17
現在、三女は母親の家P1#1+#3に住んでいるが、 将来三女が結婚をしたらP2#14に住み、店を開く予定。 現在、P2#13+#14の住宅を他人に貸し(賃貸料25US$/月)、HFHへ返済中(返済金25US$/月)。
5
⑨2006 P2#13+#14 HFHの融資を受け 住宅建設
12
1
2 14
10
次女 P2 #1+#3
⑧2001 P2#13+#14 母が土地を購入
6
⑥土地をそれぞれ いとこから購入
母・長女・三女 P1 #1+#3
隣のP2#3区画を いとこbがひく
7
次女
隣のP1#3区画を いとこaがひく
9
②Group Leaderが くじ引き
P1に決定
次女 Group
母・長女・三女
母・長女・三女
4
母・長女・三女 Group
⑤敷地が決まる
8
①家族が分かれる
図 6-4-1:Keov 家の区画割当ての流れ 出典 ) 聞き取り調査より著者が作成
Cambodia
6 章 住宅の実態
054
■親類関係事例② : Lem 家の事例
House No. P5 #1 ( 母・娘 a) くじびきで引き当てた土地。 家と土地は娘が母親から購入 (2003) 2001-2006.06 まで母親も同居していたが現在は不在。 P5 #2+4 ( 息子 ) P5 の Group Leader。Committee のメンバー。 くじびきで引き当てた土地。 P5 #3 ( 娘 b ) P5 #1 が賃貸している住宅。他人から購入した土地 (2003) P5 #5 ( 姪 ) 他人から購入した土地 (2006)
Lem 一家は、事業前に St.271 沿いに住んでおり、2003 年移住開始すぐに Samaki271 へやっ てきた世帯である。Lem 家は、親戚同士で隣り合って住むことを区画割当て当初から計画し ており、隣合う土地を他人から購入しそこに親戚が住む等して、徐々に敷地を広げていった。 現在は、食事などをシェアしたり、困ったときに親戚ならすぐに助け合えるという点で、親 戚同士で固まって住むことは望ましいとのことでだった。
P5に決定
④Group内で各世帯 くじ引き
息子 ⑥隣のP5#2の土地を P5#4に決定 他人から購入(2001)
⑩住宅を建設 ⑧土地を母親から 娘が購入(2001)
⑨隣のP5#3の土地を 娘bが購入(2001)
娘b P5#1
3
⑦住宅を建設
1
(2001)
(2001)
5
息子
P5に決定
(2001)
P5#1に決定
2
②Group Leaderが くじ引き
息子
母・娘a
母・娘a
母・娘a
P5#1
⑤敷地が決まる
4
母・娘a
③Group単位で7つの 区画に振り分けられる
6
①家族が同じグループ
8
9 11 13 15
(2006)
10
娘b、姪は他人からお金を借りて土地を購入。 将来、土地を増やす気はない。→お金がないため。
P5
12
(2001)
⑫姪 P5#2+#4
14
⑪さらに隣のP5#5の 土地を姪が購入 (2006)
16
P5#2+#4
7
(2001)
息子
図 6-4-2: Lem 家の区画割当ての流れ 出典 ) 聞き取り調査より著者が作成
Cambodia 6 章 住宅の実態
055
7 章 まとめ
Cambodia 7 章 まとめ
057
まとめ ■住宅建設手法について Samaki271 の住宅建設軒数増減の要因には、2 つの NGO の活動が深く関与していることが 明らかとなった。 UPDF の融資は、頭金は不要だが、融資額とは別に住民が自己負担をしなければならない点 で、UPDF の融資金のみでは建設費を賄えない世帯が移住当初は多かった。このことが、2003 年から 2005 年までに住宅建設軒数が減少した要因であると考えられる。 一方 HFH の融資では、技術教育システムにより H 住宅は U 住宅に比べ安価に建設でき、住 民は初期投資額のみ住宅建設に着工することができる。このことが 2005 年以降、住宅建設軒 数の増加へ繋がった要因であることがわかった。 このように、移住後に住宅が早急に必要となる再定住事業において、HFH の住宅建設手法 は適していると考えられる。
■今後の課題 H 住宅の建設の実態には、HFH の規定に合わない住民の住宅建設行為が見られた。 HFH は、さらに今後多様化すると予想される住民の要求に対して、 ①住民自身による住宅の型の変更は技術的に問題があるため、その際に必ず住民は HFH に技 術相談をする規約をつくり、相談窓口を設ける ②増改築等で余計に資金を必要とする世帯には、HFH が負担する など、より柔軟に住民の要求に対応できる新たな仕組みの導入が必要であると考えられる。
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