COMBINE 未確認生物 UMA展 報告書

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和名 カッパンダ(カッパンダ科) 英名 Kappanda 採集地

外務省非公表

採集環境

外務省非公表

採集日

外務省非公表

採集者

外務省非公表

備考

笹寿司を好んで食す


報告者:佐野 曉(さの・あきら) 京都市在住 36 歳

カッパンダ 人間たちの政治利用のために生み出された悲哀の生物 日中国交正常化 X 周年を迎えるにあたり、両国の友好の証を形に残そうと日本国外務省 内に一つのプロジェクトが立ち上がった。 「プロジェクトカッパンダ」、通称 PKP である。 京都の鴨川上流、志明院近くでオオサンショウウオと戯れていたところを極秘裏に捕獲され たカッパと、中国より貸与されている国内のパンダとの間に生み出された”カッパンダ”を日 中友好のシンボルとして、政府が主導する様々な記念イベントを盛り上げようというものだ。 カッパンダに関する情報は外務省によって厳しく統制されており、ごく一部の情報しか公表 されていないが、今後政府はカッパンダを外交の舞台でも有効活用していく予定であるとい う。 現在カッパンダは京都市下京区にある BAMIgallery で展示、飼育されており 6 月 19 日まで 無料で見ることができる。 プロジェクトの実現にあたっては一部の外務省官僚から中国共産党幹部に多額の裏金が 渡ったのではないかという疑惑が取り沙汰されており、明日にも野党は国会審議の場で追 求する構えだ。


和名

ワラベガエル (ヒキガエル科)

英名

Japanese childtoad

採集地

京都市右京区 嵐山 渡月橋

採集環境 台風通過後 ゴミの散乱した 渡月橋の上 採集日

2013 年 9 月 16 日

採集者

釜 匠

備考

頭胴長 15cm 全長約 30cm


報告者:釜匠(かま・たくみ) 京都市在住 32歳

童蛙(ワラベガエル) 2013 年 9 月に訪れた台風 18 号により京都桂川が増水し濁流が嵐山を襲った。 今にも渡月橋が飲み込まれようとしている様子をテレビで見てご存知の方も多いのではないだろうか。 その後水位が下がり濁流に飲み込まれていた渡月橋は無事その姿を現したが、橋の上には上流から流さ れてきた沢山の流木や瓦礫が残されたままだった。 当時、避難指示区域に住んでいた私は川の様子を見るために早朝の嵐山を訪れていた。そして渡月橋の上 で"それ"を見つけた。一見するとただのヒキガエルに見えたが、傍に寄るとすぐにその特異な姿に気付いた。 私は思わず"それ"を抱えて家へと走った。 私は"それ"を「童蛙(ワラベガエル)」と名付け飼育する事にした。 その後3年半にも及ぶ生体の飼育と現地調査の末、このカエルの生態が少しずつ明らかになってきた。 この種を発見した嵐山周辺を捜索したところ、生体の発見こそ叶わなかったものの本種が張り付いたと思わ れる特徴的な痕跡が保津川下りに使用される船の船体と嵐山を南下した松尾橋の橋脚から多数見つかっ た。 おそらくこの種は流れの緩やかな嵐山周辺で繁殖を行うため保津川下りの船に張り付いて亀岡から嵐山ま で南下してきていると思われる。 更に、近年桂川近辺では河原でのバーベキューによるゴミ問題が取り沙汰されており、実際に河原には多 数の食べ残しや包装のゴミが散乱している。 その量は凄まじくその影響で周辺にはカラスが大量に発生している。ゴミが多数放置される松尾橋の橋脚周 辺にも童蛙の痕跡が多数見られることから、童蛙もこの食べ残しを目当てに松尾橋まで南下するようになっ たと考えられる。 流れが緩やかで水量の豊富な嵐山と、食料が豊富な松尾橋周辺。特に後者の人為的な食料の増加が本種 に与えた影響は大きい。観光地間の移動による事故の増加、カラスに捕食されることによる個体数の激減と 本種を取り巻く環境は悪化の一途を辿っている。


和名:イナリモドキ 英名:Inari modoki 採集地:京都市伏見区 採集環境:ひとけの無い小さない祠 採集日:2017 年 5 月 3 日 採集者:酒屋の配達員男性 備考:やはり油揚げが好物


報告者:公庄直樹(ぐじょう・なおき) 京都市在住 35歳

イナリモドキ イナリモドキは稲荷神を祀っている古い祠や神社に稀に出没する。稲荷大神の神使である 白狐(俗に言うお稲荷様)像に擬態した野狐の亜種と推測されている。 現在まで目撃例はほとんど無かったが、古来よりお供え物等をくすねることによってひっそ りと生き長らえていたのではないか。伏見稲荷大社では玉鍵の信仰があるためか、京都の イナリモドキは鍵状の物や何らかの玉を咥えている場合が多い。 今回の個体は、伏見区のとある路地の小祠で確保された。 その経緯は、稲荷祭当日に酒を配達中の男性が小用のため軽トラックを路上に止め少し の間離れたところ、戻った時には何者かに車の鍵が抜き取られていた。 近辺を探し回った後に路地奥の小さな祠に行き着きそこある白狐像を見たが、なんと彼の 車の鍵を咥えていたという。 配達員が近づいて鍵を口から抜き取ろうとしたところ、突然その白狐像が逃げ出したため 咄嗟に捕まえてしまったそうだ。 イナリモドキが捕獲されたのは過去に例のない事である。 この土地には稲荷神社や祠が数多くあり、古くからイナリモドキを稲荷神と同様に守ってい た節がある。 「オイナリサマの鍵隠し、玉隠し」という口伝があり、何かの鍵やボール等が忽然と無くなる とイナリモドキの仕業だということで、その家には繁栄が訪れるので御礼に近くの稲荷社に 油揚げを供えたという。 しかし近年では地元住民の信仰心の低下に伴ってかつての習慣も無くなり、イナリモドキの 存在も忘れられつつある。


和名 千年鯉(コイ科) 英名 Millennial carp 採集地 京都市伏見区 濠川 採集環境 伏見港公園みなと橋付近を遊園 採集日 2017 年 4 月 22 日 採集者 伏見区在住男性(72 歳) 備考 全長1.2m、長い鰭、頭部に角状の突起、 全身白い鱗、口元に苔、推定 1000 歳


報告者:松本央(まつもと・ひさし) 京都市在住 34歳

伏見港の千年鯉 仕事の合間、何気なくネットを眺めていたら気になるニュースがあった。以下引用する。 2017 年 4 月京都市伏見区濠川にて推定年齢1000歳を超える鯉が捕獲された。 発見者は伏見区在住の男性72歳で、早朝伏見港公園付近を散歩中に川の中を見慣れぬ白い魚が泳いでいるのを 発見。川に近づきよく見てみると 1 メートルはあろうかという全身白い鱗に覆われ、長い鰭を持った鯉であった。 「いやぁ、あれは本間に見事なヒレナガゴイや思いましたわ。プラチナのように全身真っ白で、心なしか鯉の周囲の水 も黄金色に光り輝いて見えてねぇ、一目惚れですわ。」 男性は愛鯉家でもあり、自らの自宅の池で数多くの錦鯉を飼育している。自らのコレクションに加えようと、自宅に戻り 網を持って捕獲。池に放つ前に水合わせをするため別の水槽に鯉を入れると、ただの鯉ではない妙な特徴があること に気づく。 「よう見たら鉢(頭)に角みたいな突起があるし、口周りには髭みたいな緑色の苔も生えとる。けったいな個体やなぁと。 次第にこんな個体飼うてるのは他にはおらんと愛着が湧いてきましたけどね。」 と、男性はその時の様子を語ってくれた。その後、同じ愛鯉家の仲間にもその変わった鯉を見せようと仲間に連絡す る。男性の自宅訪れた仲間と鯉の居る水槽に戻るが、すでに鯉は水槽から姿を消していた。 「蓋するの忘れてたんですわ。ちょっとの間や思うて目離したすきに跳ねたんですやろなぁ。」 飼っている鯉が水槽、あるいは池から跳ねて外へ飛び出してしまことはよくある。しかし、たいていは池、水槽の付近 に鯉が落下しているはずなのだが、この時は様子が異なっていた。 「どこにも居らんのですわ。池も庭もよう探したやけどなぁ。」 鯉の入っていた水槽から池を超えて男性の家の外まで 5mはある。鯉がそんなに跳ねることはふつうあり得ない。ど のように男性の前から姿を消したのか全く見当がつかない。謎である。 しかし、謎はこれだけに収まらなかった。 この奇妙な鯉の残した置き土産がさらに謎を深めることとなる。跳ねた際にはがれたとみられる鱗が残されていたの だが、それを専門科に見せたところ驚くべきことが分かったのである。 木の年輪のように、鯉の鱗から年齢が分かることは詳しい人にはよく知られている事実である。その残された鱗を鑑 定した結果 1000 年近く生きていることが判明したのだ。 鯉の平均寿命は 20 年で、過去には 200 年近く生きた個体もいると言われている。しかし、ながら 1000 年という数字は 俄かに信じ難い。この鑑定結果が正しければ、男性の捕獲した奇妙な鯉は 1000 年もの間いったいどこに身を潜めて いたというのだろうか。 「あれは、水の神様、龍神様の使いやったんや、子供のころにひい爺さんがそないなこと言うとったん思い出しました わ。あれは人間が捕まえたらあかんもんやったんやろなぁ。」 鱗の鑑定結果を受けて男性は清々しい表情を浮かべていた。もしかしたら今もこの千年生きた鯉は京都の河川のど こかに身を潜めているかもしれない。(引用ここまで) ネットでこの情報を知り、なんとロマンがある話なのだと心動かされた私は、実際に奇妙な鯉を捕獲された男性に取 材を申し込んだ。今回、その証言を元に絵で再現してみることにしたのである。


和名 龍魚(コイ科?) 英名 Dragon-like cryptid fish 採集地 京都市北区 鴨川柊野ダム 採集環境 ダムの水流に逆らうように跳躍 採集日 2017 年 4 月 29 日 採集者 北区在住男性(50歳) 備考 全長1.5m、長い鰭、頭部に角状の突起、 全身薄緑の鱗、鋭い牙、たてがみ状の毛(苔?)


報告者:松本央(まつもと・ひさし)

京都市在住 34歳

京都上賀茂の怪魚 何気なく眺めていた地元のネットニュースに次のような記事が載っていた。(以下引用する) 京都市北区柊野ダムにて怪魚が目撃されたとの情報がはいった。その真偽を確かめるため現地へと足を運んだ。 最初に怪魚を発見したのは京都市北区在住の男性50歳男性で、今回この男性から発見当時の詳しい話を聞くこと ができた。男性によるとその日は休日で、朝八時ごろから休日の日課であるジョギングをしに鴨川へ訪れた。しばらく 川の上流へ向かって水面を眺めながら走り、柊野ダムに差し掛かったころ見慣れぬ光景を目にした。ダムから流れ落 ちる水流に逆らうように跳ね上がろうとする巨大な生き物を発見した。 「最初はそれが全く何なのか理解できませんでした。とても大きい生き物に見えたので、どこからか動物が脱走した のかと思いました。それにすごく激しく暴れているように見えましたので恐ろしくなって思わず通報してしまいました。」 と男性はその時の心境を語ってくれた。男性の通報により、駆けつけてきた警察官や騒ぎを聞き駆け付けた地元住民 数名による捕獲作戦が始まった。小一時間に及ぶ格闘の末、ようやく捕獲用の網に誘い込み捕獲、岸に引き上げるこ とに成功したのだが、その姿はあまりにも我々が知っている魚とはかけ離れた異形なものであった。捕獲に参加し、そ の生き物を目撃した人々の証言をまとめると、顔の雰囲気や鱗の形状は鯉に非常に似ている。全長は推定 1.5m。薄 い緑色の鱗に全身が覆われ、頭部には角状の突起が一対、口には鋭い牙があり、胸鰭と尾鰭が長く発達し、全身が 薄緑色の鱗に覆われている。さらに、この生き物を特徴づけるのは頭部にたてがみのような毛が生えていることだろう。 ごく稀に鯉の頭部に苔の生えた個体が存在していることは知られているが、それが毛なのか苔なのかは今回は確認 できなかった。 というのも、捕獲に成功したと誰もが油断した瞬間、その生き物は突如暴れだし、その鋭い牙で網を食い破り、水中へ と逃げてしまったのだ。再び捕まえようとしたが、その生き物は姿をくらましてしまった。しかしながら、あまり広いとは 言えない鴨川で、1.5mもある魚が姿を隠せる場所はそうない。徹底的に探しだそうと再び川へ入ったとした瞬間、空 に雷鳴がとどろき大雨が降りだした。雨量が多く川の増水の危険があるためこの日の捕獲は中止されたが、その日以 降も捕獲した、または目撃したとの情報はなく、その謎の生き物は鴨川のどこかに潜んでいると思われる。 しばらく現場周辺で取材を続けているとこの騒ぎの一部始終を目撃していた地元住民の女性 93 歳は興味深いことを 話してくれた。 「あれは龍の子や、滝を上って龍になる途中やったんですやろなぁ。」確かに、証言だけ聞くと登竜門の故事や龍のも つ身体的特徴に似ていると言えなくもないが、残念なことにその場にいた全員がその生き物の姿を動画や写真に収 めていなかったため、今となってはその姿を確認することはできない。ただ、龍はあくまで想像上の生き物であり実在 するとは考え難い。全く未知の新種か、外来種、突然変異と考えるのが自然だろう。 また、証言をくれた 90 代女性は最後に取材する我々にこう忠告した。 「龍いうたら水の神様やさかい、そんなもん捕まえようとしたらバチがあたりまっせ。」しかし、この 90 代女性の忠告も むなしく、京都市は近く夏の行楽シーズンにむけて、この生き物を特定危険生物に認定、本格的に駆除に乗り出す方 針であるという。(引用ここまで) 地元でこのような事件が起こっているとは思いもよらなかった。この事件はとても私の想像を掻き立てた。この未知な る生き物の姿を私もこの目で観てみたいとの思いから、今回この記事の証言をもとに、この謎の生き物の再現図を描 くことにした。


和名 錦蛟 (ニシキミズチ)【紅白】(カワノカミ科亜種) 英名 Japanese dragon carp 【KOUHAKU】 採集地 京都府京都市左京区 宝ヶ池 採集環境 錦鯉の群れの中 にわか雨の降る辰の刻 採集日 2017 年 4 月 23 日 採集者 岡部賢亮 備考 肺呼吸、水掻きが無いため遊泳能力は低い


報告者:岡部賢亮(おかべ・けんすけ) 大阪府在住 27歳

錦蛟(ニシキミズチ) 日宋貿易が盛んに行われていた時代「蛟(ミズチ)」という生物が中国から日本に輸入されてきた。 「蛟」は水を司る精霊の一種と考えられており、水生動物ではあるが水掻きが存在せず、遊泳能力 が非常に低いという特徴を持っている。 中国では蛇が龍になる過程の段階の一つと言われており、出世魚よろしく出世龍として縁起の良い 生き物であると信じられていた。 蛟を持つ者は出世すると言われ、蛟は時の権力者たちの間を転々とし、江戸時代以降その消息は つかめていない。噂では京都の宝ヶ池に放流されたとかなんとか。 時は流れて 2017 年、京都市左京区にある宝ヶ池にはこれでもかというほど錦鯉が生息している。近 くの売店では鯉のエサが 100 円で売られており、錦鯉たちは食べ物に困ることはないだろう。 鯉のエサを買い、いざエサをやろうと水辺に立つと、待ってましたと言わんばかりに錦鯉が口をあけ 食べる食べる。その群れの中に一匹どうやら様子のおかしい個体を見つけた。 体長は 60 センチほどで錦鯉と同じ模様があり一見すると錦鯉と見分けがつかない。しかし四本の 足が生えており、動きが非常にノロい。そのため、じっくりと観察することができた。 まず、エラがない。どうやら肺呼吸らしい。それに水掻きも無い。動きが鈍いのはこのためであろう。 姿かたちはなんというか龍っぽい。龍というよりは龍になる前段階の蛟(ミズチ)といったところか。し かし蛟は架空の生物であるし、わざわざ錦鯉の模様に擬態する必要があるのだろうか?というかこ れは新種の生物を発見してしまったのではないだろうか!いや、そんなはずはないだろう。 きっとよくわからないが専門機関的な方々がちゃんと調べているに違いない。 まぁでも見たことない生物だし、名前ぐらいはつけても良いのではないだろうか。錦鯉の群れの中に 擬態して生きており、龍になる前の蛟(ミズチ)のような姿かたちをしていることから私はこの生物を 「錦蛟(ニシキミズチ)」と名付けようと思う。というよりこれは専門機関的なにかに相談した方が良い のであろうか?

この生物の詳細をお知りの方がいましたら京都市下京区にある BAMI gallery までご一報ください ませ。


和名 ホポポオウム(オウム科) 英名 Hopopo 採取地 京都市下京区にある公園近くの静かな住宅街 採取環境 晴れの日の午前中 採取日 2017月 5月×日(月曜日) 採取者 太田夏紀 備考 体高30cm 、大きな嘴、土色の皮膚


報告者:太田夏紀(おおた・なつき) 大阪府在住 京都精華大学学生 24歳

ホポポオウム 【2017年 5月×日(月)天気:晴れ】 大型連休明けの月曜日、昨日まで賑わっていた町が静まりかえっていた。 そんな日に、なんとも不思議な出会いが あったので、この事について日記に書き留めておこうと思う。 大きな駅の近くにある公園の辺りをぼうっと歩いてい たら、鳩が群がって地面を突いていた。リュックに入っていたパンを取り出して、鳩に餌でもやろうと近寄ってみると、 その中に奇妙な生き物が1匹(羽?)混ざっていた。 まさかと思い、もう一度目をこらして見てみたのだが、やはり見た事のない容姿をしている。鳩よりも大きくて茶色い 身体をしているが、明らかにキジバトやカラスではなさそうだ。 すると、パンに気づいた奇妙な生き物は、私の方へよたよたと近寄ってきた。パンをちぎっていくつか地面に投げて やると、くちばしを使って器用にそれらを食べ始めた。 私は、奇妙な見た目に少し怖くなり、餌をあげ終わったらすぐ にその場を離れることにした。 しかし、奇妙な生き物は、短い足を一生懸命に動かしながら私の後ろを付いてくる。 鶏も餌をくれる人間の見分けがつくように、この生き物もそのくらいの知能はあるのだろうか。人通りのない道だった ので、しばらくそのまま歩いてみたが、妙に人懐っこく、私を攻撃する素振りはない。 観察しているうちに、なんだか この奇妙な生き物が気になってしまい、とりあえず家につれて帰る事にした。 【2017年 5月△日(水)天気:曇り】 正体は全くわからないままだが、呼び名が必要と思い、この生き物に名前をつけることした。 「ホポポポ...」と小さな声で鳴き、飛べないオウム(フクロウオウム)と少し似ている事から「ホポポオウム」と名付 けた。 動きは全てにおいて鈍臭く、羽も退化していて、どこか雛のような可愛らしさがある。雑食らしいが、頑丈なクチバシ を使って木の皮を剥いで虫を探して食べる事も好きなようだ。 鳥のような容姿をしているが、羽毛はなく、代わりに 茶色く固い皮膚のようなもので覆われている。少量の食事から栄養を十分に吸収できるらしく、活動している時間よ りも寝ている時間の方が長い。 【2017年 5月△○日(土)天気:雨】 しかし、人懐っこい上にこんなにも鈍い生き物が、自然に進化して産まれたとは到底思えない。ということは、人工的 に交配して作られた生き物か・・・? 【2017年 5月×□日(月)天気:晴れ】 晴れた日は近所に散歩に行くことにしているのだが、この頃はしきりに木の枝などを集めてきている。 巣でも作るのだろうか? もし、ホポポが雌ならば卵を産むかもしれない。万が一に備えて、家ではなく、段差のない安全な室内で飼う事にした。 床はコンクリートだが、特にストレスなどは無いようだ。 あまりにも一生懸命に集めているので、木の枝を見つけては、ホポポの近くに置いてあげるようにしている。 とりあえず、6月の中旬まではここで様子を見てみようと思う。 今後、どうなるのか楽しみである。


和名 ヤキモノモドキ (ヤキモノモドキ科) 英名 Clay man 採集地 京都府京都市東山区 五条坂 採集環境 建物の扉前 硬直中 採集日 2017年4月28日 採集者 遠藤 良太郎 備考 不定形、釉薬のような質感、焼き物に酷似


報告者:遠藤良太郎(えんどう・りょうたろう) 京都市在住 30歳

ヤキモノモドキ 「こんな悪趣味な茶碗、見たことないぞ…?」 ここは京都の五条坂。京焼きの発祥の地といわれ、現在でも陶芸家や陶器店が集まる「焼き物の町」として栄えてい る。8世紀頃に僧である行基が製陶したことから始まり、16世紀に清水焼きが誕生し、今に至るまで芸術文化の発 展に貢献した場所だ。しかし近年、そんな五条坂で奇妙な事件が相次いで発生したのだ。 2012年、五条坂にある窯元や工房で、陶芸に用いる原料(金属や灰などの粉)が大量に紛失、盗難される事件が 相次いで発生した。陶芸家 R 氏もその被害者の1人である。R 氏は、同業者による犯行ではないか、と考えた。と同 時に違和感を覚えた。実はそうした事件は過去にもなかったわけではないため、原料が保管してある棚に南京錠で 施錠をしていたのだ。しかし、その鍵は破壊されることなく、中身の原料だけが消えていた。そして違和感の原因はも う一つ、棚から、何かが這いずったような痕跡が残されていたのだ。これは一体…?結局犯人は捕まることなく、時 は過ぎていった。 2013年、R 氏は陶芸の活動に必要なため、再び原料を買い込んだ。原料は倉庫に保管した。そして以前よりも強固 な鍵を取り付けた。 2014年、真夜中、R 氏は忘れていた道具を取りに倉庫へ向かった。その日の月は、丸く、そして輝いていた。雲もな く綺麗な星空だった。真夜中の倉庫へ到着し、扉を開けた。倉庫は薄暗く、小さな窓から差し込む月の明かりが際立 っている。目的の道具を回収するため、灯りをつけようとしたそのとき、原料の保管場所付近でなにかが動いた。 R 氏は咄嗟に「原料泥棒だ!」と確信した。まずは灯りをつけなければ。恐怖と興奮がない交ぜになった気持ちを抑 えながら、手探りで電気のスイッチをつけた。なにかが動いた場所を確認するが、そこには何もいなかった。倉庫の 中を隅々まで、警戒心を切らすことなく慎重に探したが、なにもいなかった。 「なんだただの思い違いか」そう思ったとき、床に無造作に置かれていた茶碗に気付いた。 「こんな悪趣味な茶碗、見たことないぞ…?」 その茶碗の釉薬は多くの原料が混ざり合うような、複雑な質感と色だった。お世辞にも綺麗な茶碗とはいえないもの だが、R 氏は不思議な魅力を感じ、その茶碗を自宅に持ち帰った。 2017年、ある日、R 氏が倉庫で見つけた茶碗が紛失した。茶碗が置いてあった場所から、なにかが這いずったよう な痕跡が続いていた。その痕跡を辿っていく、部屋の中、廊下、玄関、そして外へ、その痕跡は離れの倉庫の方角へ 向かっていた。そして倉庫の近くまできた R 氏は、不可思議な物体を発見する。それはまるで焼き物の釉薬のような 質感を纏ったなにか。それは微動だにせずにいたが、あまりの不気味さに R 氏は警察に通報した。 この不可思議な物体の正体は、一言でいえば謎だった。解析した科学者は、焼き物に酷似しているが、焼き物では ない、そして物なのか生物なのか、生きているのか死んでいるのかすら現段階では分からない、と煮え切らないコメ ントを残している。 ひとつ確かなことは、この不可思議な物体が発見されてから、五条坂で相次いでいた原料盗難事件がぴたりとなくな ったことぐらいである。


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