collabo_007

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collabo*007 NAUT issue. 2004.10.01 take free

* 編集後記 NAUTさんとじっくりお話ししたのは、今回が初めてでした。「よく知らないけど、格好いいよね」 そんな興味本位な僕たちのオファーを快諾いただき、そして取材に長い時間を充ててくださいまし た。そして話せば話すほど、僕たちの予感は確信に変わり、このような格好いい誌面となったのです。 飯沼さん、まゆみさん、本当にありがとうございました。

collabo*007

NAUT issue. 2004.10.01

2P Collaboration(ツーピー・コラボレーション) 〒460-0011 名古屋市中区大須 3-24-21 #1413 M: collabo@2pc.jp W: www.2pc.jp/collabo/ Copywright 2P Collaboration. All rights reserved. collaboに掲載されているテキスト、写真の無断転載を禁じます。

NAUT issue.


15年も暮らしながら名古屋嫌いを公言する僕(格好悪いね) は、隙あらば神戸へ引越をと企んでいる。だけど、そんな僕の 足を引っ張っているのは素敵なショップや人との出会いだ。 今回、取材させていただいたNAUTもそんなショップのひ とつ。シンプルながらも存在感のある家具。そして格好いい ショップは名古屋らしくなくて、存在そのものが嬉しい。 ベーシックなデザインとリーズナブルなプライスは名古屋らし いという人もいるらしいけど、それはもしかしたらやっかみ なんじゃないかなと思う。 「こんなショップが名古屋にあるな

らしくないからうれしい。

んて!」みたいなね。 表面的なデザインだけでなく、企画から、製造、販売まで デザインされたNAUTの希少性はまぎれもなく全国区だろう し、そういうショップがこのあか抜けない街にあることは奇 蹟のようにも思う。 ショップの存在はもちろんだけど、オーナーの飯沼さん 夫妻が自分たちの歩幅で進んでいる姿は羨ましく、僕たち も見習わなければと思う。名古屋にも頑張ってる人がたく さんいるんだと思われるように。名古屋も意外に悪くない んじゃない?と思われるように。


15年も暮らしながら名古屋嫌いを公言する僕(格好悪いね) は、隙あらば神戸へ引越をと企んでいる。だけど、そんな僕の 足を引っ張っているのは素敵なショップや人との出会いだ。 今回、取材させていただいたNAUTもそんなショップのひ とつ。シンプルながらも存在感のある家具。そして格好いい ショップは名古屋らしくなくて、存在そのものが嬉しい。 ベーシックなデザインとリーズナブルなプライスは名古屋らし いという人もいるらしいけど、それはもしかしたらやっかみ なんじゃないかなと思う。 「こんなショップが名古屋にあるな

らしくないからうれしい。

んて!」みたいなね。 表面的なデザインだけでなく、企画から、製造、販売まで デザインされたNAUTの希少性はまぎれもなく全国区だろう し、そういうショップがこのあか抜けない街にあることは奇 蹟のようにも思う。 ショップの存在はもちろんだけど、オーナーの飯沼さん 夫妻が自分たちの歩幅で進んでいる姿は羨ましく、僕たち も見習わなければと思う。名古屋にも頑張ってる人がたく さんいるんだと思われるように。名古屋も意外に悪くない んじゃない?と思われるように。




シンプルな空間についての考察。

NAUTのショップは、入ると一瞬何のお店かよくわからな い。まるでコンセプチュアルなギャラリーのように、数点の 家具と厳選された雑貨が並んでいる。緊張するなぁと思う けれど、飯沼まゆみさんが朗らかに対応してくれるし、想像 以上にフレンドリーな雰囲気。ウェブではコンセプトについ て饒舌だし、メールでのコミュニケーションも抜群みたい。 イメージはミニマムに、コミュニケーションは最大限にとい うことなんだろう。 今回取材してみて思ったのは、NAUTの見せたいのは空 間なのかなということ。ウェブに書いてある「間」というこ とでもあると思う。空気がある感じ。今、わたしが住んで いるところは、物で埋め尽くされている。こどものオモチャ や、仕事の資料、生活のなかで知らず知らず増えていく雑 多な物、書類や、手紙や、本や、なにもかも。NAUTの家具で そんな物たちをシンプルな箱の中に閉じこめてしまいたい。 ああでも、箱の中身も整然としてるのが似合う。きっと。 飯沼さんが、デザインする過程でいろいろな物を削ぎ落と していくように、わたしの生活空間もシンプルにできたら 良いなとつくづく思うのだ。


シンプルな空間についての考察。

NAUTのショップは、入ると一瞬何のお店かよくわからな い。まるでコンセプチュアルなギャラリーのように、数点の 家具と厳選された雑貨が並んでいる。緊張するなぁと思う けれど、飯沼まゆみさんが朗らかに対応してくれるし、想像 以上にフレンドリーな雰囲気。ウェブではコンセプトについ て饒舌だし、メールでのコミュニケーションも抜群みたい。 イメージはミニマムに、コミュニケーションは最大限にとい うことなんだろう。 今回取材してみて思ったのは、NAUTの見せたいのは空 間なのかなということ。ウェブに書いてある「間」というこ とでもあると思う。空気がある感じ。今、わたしが住んで いるところは、物で埋め尽くされている。こどものオモチャ や、仕事の資料、生活のなかで知らず知らず増えていく雑 多な物、書類や、手紙や、本や、なにもかも。NAUTの家具で そんな物たちをシンプルな箱の中に閉じこめてしまいたい。 ああでも、箱の中身も整然としてるのが似合う。きっと。 飯沼さんが、デザインする過程でいろいろな物を削ぎ落と していくように、わたしの生活空間もシンプルにできたら 良いなとつくづく思うのだ。


I n t e r v i e w

名古屋市千種区本山にある小さなインテ

f o r

N A U T .

ええ、無垢材は長く使っていただくことで、

フルオーダーもできます。たとえば、先日ご注

リアショップ・NAUT。真っ白な壁と少し

その表情が変わっていきます。ときには傷がつ

文頂いたサイドドロワーは、高さを既存のテー

ピリッとした空気が印象的なショップで、

くことだってあるでしょうけど、それすら味わ

ブルに、引き出しの大きさを使われる書類に合

オーナーであり、デザイナーでもある

いになっていきます。まるで家人に寄り添うよ

わせて設計しました。

飯沼淳さんにお話をうかがいました。

うに一緒に時を刻むことができる。それこそ無

――デザイン的な要望も聞いていただけるの

垢材の魅力であり、ほかの素材では真似できな

ですか?

無というデザイン。 ――つくられているのは、シンプルでベーシッ クな家具が多いですね。 置かれた環境の中に、できるだけ調和しやすい 家具をつくりたいと思っているんです。"NAUT"

かまいませんよ。無理な注文ほどしていただ

普通という感覚。

幸せな仕事。

も、あまりに高額ならば買ってくれる人は限 られてしまいます。多くの人に受け入れられ

きたいですね。私も勉強になりますから。 ――そういうお話は、聞いていてうらやましい

るには素材や製造など現実的な問題をしっか

ぐらいなんですが、ご苦労とかないですか?

り考えなければいけません。いろんな考え方

好きでやっている仕事なので、苦労だと思っ

があると思いますが、私にとって優れた家具

――街の家具屋は丁寧なお仕事ぶりを具体的

た事はありません。扱っている雑貨もそうです

デザインとは、素材やデザインの稀少価値と

もちろんです。サイドドロワーのお客さまも

に表すキーワードだと思うのですが、街という

が、実際に自分たちが暮らしの中で使ってみて、

価格のバランスがいいものだと思います。

――シンプルなデザインは、素材の良さを活か

引き出しの取手のデザインを気にされていて、

決して大きくない地域に限定しては、お店は成

気に入ったものだけを扱っています。自分たち

――イメージだけでは良いデザインはできない

すためでもあると。

過度な装飾のあるものは避けたいというオーダ

り立ちにくいですよね。

の身の丈にあった方法でやっていこうと思って

のでしょうか?

いですから。

無垢材を使った家具はよく見かけますが、簡

ーでした。そこで指が入るような穴を空けては

ええ。物理的な街をターゲットにしては、難

素なものというと多くないと思います。当店で

どうですかと提案したり。最終的にはステンレ

しいと思います。ウェブがあるからこそ、成り

も「なんでもないデザインのものが欲しかった」

スのシンプルな取手になりましたが、ご納得いた

立っているのだと思います。

と言われたお客さまがいらっしゃいましたし。

だけるまでお話し合いをさせていただきました。

――でも顔の見えないネット経由のコミュニケ

内でやろうと。店を大きくしたり、ほかのショ

また複雑なデザイン・装飾は作業工程を複雑

――それだけ丁寧に対応していただくと、お値

ーションは、苦労も多いのではないですか?

ップへ卸すようになると、品質と価格のバラン

にしますから、どうしても価格も上がってい

段も高くなりそうですが。

くんですよ。

いえ。価格のご相談にも応じます。具体的

いるんです。 ――身の丈ですか。 店も小さいですから、自分たちのできる範囲

対面と同様に丁寧に対応しているつもりです。

スをキープすることが難しくなると思うんで

たとえば、ウエブからオーダーいただく場合、

す。そうなるとNAUTをやっている意味、デザ

――そのあたりもふまえた上でのシンプルなデ

な条件を提示いただければ、そこで収まるよ

ショッピングカートではなくて、オーダーフォ

インする意味がなくなるだろうし。

ザインなんですね。

うに努力します。たとえば、目に見えない内側

ームにしています。いきなりご注文をしていた

――自分のやりたいことをやってナンボだと。

の木材を合板にすれば、いくらお安くできま

だくのではなく、まずメールでご要望を頂いて、

たいというのが私たちのコンセプトです。単

すとか、素材・部品の選び直しなども行って、

お返事を書かせていただくところから始める。

ます。

一素材を用い、直線的なデザインにすること

極力お客さまのご要望にお応えできるように

顔が見えないからこそ、そんなプロセスを大事

――実はお話をうかがう前は、もっと気難しい

で端材を少なくしコストを下げる。同時に作

しています。

にしなければと思っています。

方かなと思っていたんです。

業工程を簡素化することで、生産効率を上げ

――そういうお仕事だと、儲からないんじゃな

――遠方のお客さまでも、細かくオーダーを聞

はNAUGHT(無)の意ですが、過度な装飾を

ます。さらにデザイン・設計・製造・販売を

いですか?

かれるのですね。

省いたミニマムなデザインが私たちの家具の

一体化することで、中間コストを削減してい

特徴ですね。

ます。

客さまに満足して頂くことが一番嬉しいです

――どうしてそのようなデザインになったので

――プロセスそのものもデザインされていると。

ええ。上質な家具をロープライスで提供し

クリエイティブはもちろん大事だと思います。 でも、それだけでは足りなくて、現実的な感覚 に基づいた地に足のついたデザインをするこ

ええ、無理はしない方がいいのかなと思い

そういう偏見ってありますよね(苦笑) 。ス テレオタイプ的なデザイナー像というか。私

とが、必要なんだと思います。だからこそ、家

も職業柄「ショールームみたいな格好いい部

族みんなで食事をする時間も大切にしたいし、

具をつくらせていただくこともありますよ。

屋に住んでいるでしょう」とか、いろいろ言

天気の良い日には、娘と公園へ行って遊ぶ父親

し、そこにやりがいを感じます。私たちが目

――わざわざNAUTさんでつくりたいとおっし

われます。

でもありたいと思う。ごくごく普通に暮らせ

格好良く言えばそうですね。でも、基本的に

指しているのは、街の家具屋なんです。たと

ゃるのですね。

――ははは。

ればと思うんですよ。私も家具も気負い無く自

デザインには色々な方向性があると思います

は、自分たちが欲しいものを自分たちが納得の

えば、 「こういう部屋に住んでいて、こういう

ウェブを見た瞬間に「きっと、ここなら私の

が、そのときの流行りのカルチャー感にとらわ

いく価格で提供したいと考えただけのことで

家具がこの寸法で欲しいんだけど」というオー

イメージを形にしてくれると思った」とメール

いたって普通だと思います。

れたり、素材感の無い安いだけのものは飽き

す。意図的にデザインしたのではなく、必然性

ダーを頂いて、 「では、こんなのはどうですか」

してくださるお客さまもいらっしゃって、嬉し

――普通だからこそ、優れたデザインができ

るのも早く、空間への順応性も高くありません。

がそうさせたのかもしれません。

とご提案して、レスポンスを頂いて。そんなお

く思ったこともあります。

ると?

客さんとのコラボレーションを通じて、家具を

――デザイナー冥利に尽きますね。

しょうか?

そこで様式などの装飾性を極力レス(=削除) してデザインすることで、どんな場所でも、ど

街の家具屋。

んな方にも末永く使っていただこうと思ったの です。 ――素材のほとんどは木ですね。

たしかに非生産的ですよね(苦笑) 。でも、お

つくっていければと思うのです。 ――この部分、オフレコにした方が良いです

――扱われているのは、定番商品だけですか? サイズ変更などのセミオーダーはもちろん、

セミオーダーはもちろん、フルオーダーの家

工夫はしていますけど、古い3DKですし(笑) 、

私のデザインが優れているかはわかりませ

そうですね。私たちのコンセプトに共感して

んけど(笑) 、デザインにはさまざまな領域が

いただいたお客さまと共同作業で家具をつくら

あります。家具デザインの場合、現実といか

か? 難しいオーダーとか、いっぱい来たら困

せていただくわけですから、本当に幸せなこと

にコミットするかは避けられない問題です。た

るでしょう(笑) 。

だと思います。

とえば、どんなに優れた椅子をデザインして

然にいられればと思います。

NAUT 〒464-0037 名古屋市千種区楠元町2-65-5 富士ビル1F Tel / Fax

052-752-0720

shop@naut.ne.jp www.naut.ne.jp am11:00 ∼ pm7:00 水・木曜日定休


I n t e r v i e w

名古屋市千種区本山にある小さなインテ

f o r

N A U T .

ええ、無垢材は長く使っていただくことで、

フルオーダーもできます。たとえば、先日ご注

リアショップ・NAUT。真っ白な壁と少し

その表情が変わっていきます。ときには傷がつ

文頂いたサイドドロワーは、高さを既存のテー

ピリッとした空気が印象的なショップで、

くことだってあるでしょうけど、それすら味わ

ブルに、引き出しの大きさを使われる書類に合

オーナーであり、デザイナーでもある

いになっていきます。まるで家人に寄り添うよ

わせて設計しました。

飯沼淳さんにお話をうかがいました。

うに一緒に時を刻むことができる。それこそ無

――デザイン的な要望も聞いていただけるの

垢材の魅力であり、ほかの素材では真似できな

ですか?

無というデザイン。 ――つくられているのは、シンプルでベーシッ クな家具が多いですね。 置かれた環境の中に、できるだけ調和しやすい 家具をつくりたいと思っているんです。"NAUT"

かまいませんよ。無理な注文ほどしていただ

普通という感覚。

幸せな仕事。

も、あまりに高額ならば買ってくれる人は限 られてしまいます。多くの人に受け入れられ

きたいですね。私も勉強になりますから。 ――そういうお話は、聞いていてうらやましい

るには素材や製造など現実的な問題をしっか

ぐらいなんですが、ご苦労とかないですか?

り考えなければいけません。いろんな考え方

好きでやっている仕事なので、苦労だと思っ

があると思いますが、私にとって優れた家具

――街の家具屋は丁寧なお仕事ぶりを具体的

た事はありません。扱っている雑貨もそうです

デザインとは、素材やデザインの稀少価値と

もちろんです。サイドドロワーのお客さまも

に表すキーワードだと思うのですが、街という

が、実際に自分たちが暮らしの中で使ってみて、

価格のバランスがいいものだと思います。

――シンプルなデザインは、素材の良さを活か

引き出しの取手のデザインを気にされていて、

決して大きくない地域に限定しては、お店は成

気に入ったものだけを扱っています。自分たち

――イメージだけでは良いデザインはできない

すためでもあると。

過度な装飾のあるものは避けたいというオーダ

り立ちにくいですよね。

の身の丈にあった方法でやっていこうと思って

のでしょうか?

いですから。

無垢材を使った家具はよく見かけますが、簡

ーでした。そこで指が入るような穴を空けては

ええ。物理的な街をターゲットにしては、難

素なものというと多くないと思います。当店で

どうですかと提案したり。最終的にはステンレ

しいと思います。ウェブがあるからこそ、成り

も「なんでもないデザインのものが欲しかった」

スのシンプルな取手になりましたが、ご納得いた

立っているのだと思います。

と言われたお客さまがいらっしゃいましたし。

だけるまでお話し合いをさせていただきました。

――でも顔の見えないネット経由のコミュニケ

内でやろうと。店を大きくしたり、ほかのショ

また複雑なデザイン・装飾は作業工程を複雑

――それだけ丁寧に対応していただくと、お値

ーションは、苦労も多いのではないですか?

ップへ卸すようになると、品質と価格のバラン

にしますから、どうしても価格も上がってい

段も高くなりそうですが。

くんですよ。

いえ。価格のご相談にも応じます。具体的

いるんです。 ――身の丈ですか。 店も小さいですから、自分たちのできる範囲

対面と同様に丁寧に対応しているつもりです。

スをキープすることが難しくなると思うんで

たとえば、ウエブからオーダーいただく場合、

す。そうなるとNAUTをやっている意味、デザ

――そのあたりもふまえた上でのシンプルなデ

な条件を提示いただければ、そこで収まるよ

ショッピングカートではなくて、オーダーフォ

インする意味がなくなるだろうし。

ザインなんですね。

うに努力します。たとえば、目に見えない内側

ームにしています。いきなりご注文をしていた

――自分のやりたいことをやってナンボだと。

の木材を合板にすれば、いくらお安くできま

だくのではなく、まずメールでご要望を頂いて、

たいというのが私たちのコンセプトです。単

すとか、素材・部品の選び直しなども行って、

お返事を書かせていただくところから始める。

ます。

一素材を用い、直線的なデザインにすること

極力お客さまのご要望にお応えできるように

顔が見えないからこそ、そんなプロセスを大事

――実はお話をうかがう前は、もっと気難しい

で端材を少なくしコストを下げる。同時に作

しています。

にしなければと思っています。

方かなと思っていたんです。

業工程を簡素化することで、生産効率を上げ

――そういうお仕事だと、儲からないんじゃな

――遠方のお客さまでも、細かくオーダーを聞

はNAUGHT(無)の意ですが、過度な装飾を

ます。さらにデザイン・設計・製造・販売を

いですか?

かれるのですね。

省いたミニマムなデザインが私たちの家具の

一体化することで、中間コストを削減してい

特徴ですね。

ます。

客さまに満足して頂くことが一番嬉しいです

――どうしてそのようなデザインになったので

――プロセスそのものもデザインされていると。

ええ。上質な家具をロープライスで提供し

クリエイティブはもちろん大事だと思います。 でも、それだけでは足りなくて、現実的な感覚 に基づいた地に足のついたデザインをするこ

ええ、無理はしない方がいいのかなと思い

そういう偏見ってありますよね(苦笑) 。ス テレオタイプ的なデザイナー像というか。私

とが、必要なんだと思います。だからこそ、家

も職業柄「ショールームみたいな格好いい部

族みんなで食事をする時間も大切にしたいし、

具をつくらせていただくこともありますよ。

屋に住んでいるでしょう」とか、いろいろ言

天気の良い日には、娘と公園へ行って遊ぶ父親

し、そこにやりがいを感じます。私たちが目

――わざわざNAUTさんでつくりたいとおっし

われます。

でもありたいと思う。ごくごく普通に暮らせ

格好良く言えばそうですね。でも、基本的に

指しているのは、街の家具屋なんです。たと

ゃるのですね。

――ははは。

ればと思うんですよ。私も家具も気負い無く自

デザインには色々な方向性があると思います

は、自分たちが欲しいものを自分たちが納得の

えば、 「こういう部屋に住んでいて、こういう

ウェブを見た瞬間に「きっと、ここなら私の

が、そのときの流行りのカルチャー感にとらわ

いく価格で提供したいと考えただけのことで

家具がこの寸法で欲しいんだけど」というオー

イメージを形にしてくれると思った」とメール

いたって普通だと思います。

れたり、素材感の無い安いだけのものは飽き

す。意図的にデザインしたのではなく、必然性

ダーを頂いて、 「では、こんなのはどうですか」

してくださるお客さまもいらっしゃって、嬉し

――普通だからこそ、優れたデザインができ

るのも早く、空間への順応性も高くありません。

がそうさせたのかもしれません。

とご提案して、レスポンスを頂いて。そんなお

く思ったこともあります。

ると?

客さんとのコラボレーションを通じて、家具を

――デザイナー冥利に尽きますね。

しょうか?

そこで様式などの装飾性を極力レス(=削除) してデザインすることで、どんな場所でも、ど

街の家具屋。

んな方にも末永く使っていただこうと思ったの です。 ――素材のほとんどは木ですね。

たしかに非生産的ですよね(苦笑) 。でも、お

つくっていければと思うのです。 ――この部分、オフレコにした方が良いです

――扱われているのは、定番商品だけですか? サイズ変更などのセミオーダーはもちろん、

セミオーダーはもちろん、フルオーダーの家

工夫はしていますけど、古い3DKですし(笑) 、

私のデザインが優れているかはわかりませ

そうですね。私たちのコンセプトに共感して

んけど(笑) 、デザインにはさまざまな領域が

いただいたお客さまと共同作業で家具をつくら

あります。家具デザインの場合、現実といか

か? 難しいオーダーとか、いっぱい来たら困

せていただくわけですから、本当に幸せなこと

にコミットするかは避けられない問題です。た

るでしょう(笑) 。

だと思います。

とえば、どんなに優れた椅子をデザインして

然にいられればと思います。

NAUT 〒464-0037 名古屋市千種区楠元町2-65-5 富士ビル1F Tel / Fax

052-752-0720

shop@naut.ne.jp www.naut.ne.jp am11:00 ∼ pm7:00 水・木曜日定休


collabo*007 NAUT issue. 2004.10.01 take free

* 編集後記 NAUTさんとじっくりお話ししたのは、今回が初めてでした。「よく知らないけど、格好いいよね」 そんな興味本位な僕たちのオファーを快諾いただき、そして取材に長い時間を充ててくださいまし た。そして話せば話すほど、僕たちの予感は確信に変わり、このような格好いい誌面となったのです。 飯沼さん、まゆみさん、本当にありがとうございました。

collabo*007

NAUT issue. 2004.10.01

2P Collaboration(ツーピー・コラボレーション) 〒460-0011 名古屋市中区大須 3-24-21 #1413 M: collabo@2pc.jp W: www.2pc.jp/collabo/ Copywright 2P Collaboration. All rights reserved. collaboに掲載されているテキスト、写真の無断転載を禁じます。

NAUT issue.


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