ISBN984-5-4513-9754-5 C0021¥9800E 定価:本体 9,800 円 + 税
4689205800052
1286965000141
Architectural Portfolio 2014-2020
Made by Hayashi Shunya
Osaka City University Hayashi Shunya
Osaka City University Architectural Desingn Lab.
Architectural Portfolio
2014-2020
Hayashi Shunya
Profile
Qualifications
Awards
建築甲子園
審査委員長特別賞
都工卒業設計
林
駿哉
/
Hayashi Shunya
学内最優秀
宅地建物取引士 2 級建築施工管理技士学科
建築新人戦 2019
100 選(一般投票 2 位)
五大学合同講評会
優秀賞
カラーコーディネーター 2 級
福岡デザインレビュー
57 選
福祉住環境コーディネーター 2 級
測量士補
計算技術検定 2 級 建築 CAD 検定 2 級 パソコン利用技術検定 2 級
大阪市立大学工学部建築学科
学部4年
Software
建築デザイン研究室 ( 宮本・倉方研究室 ) jwwCAD AutoCAD ARCHICAD Rhinoceros
Experiences
SketchUp LUMION
1
Illustrator
IAO 竹田設計
インターン 1weeks
Photoshop
竹中工務店設計部
アルバイト 3years
InDesign
遠藤克彦建築研究所
アルバイト 1year
2
History 1 週間スペイン研修
建築CAD検定 2 級 パソコン利用技術検定 2 級
測量士補
高2
competition
competition
高3
あすなろ夢建築 集会所
計算技術検定 2 級 IAO 竹田設計
第 1 課題 軽井沢の住宅
インターン
2 級建築
空き家の リノベーション
施工管理技士
卒業設計 隙間世界
福祉住環境コーディネーター 2 級
B1 竹中工務店設計部 アルバイト開始
competition
カラーコーディネーター 2 級
B3
基礎製図 シェアハウス
宅地建物取引士
第 1 課題 ラーニング コモンズ
第 2 課題 住宅
POLUS 学童施設
competition
B3
3
competition
第3課題
第 4 課題
図書館
美術館
遠藤克彦建築研究所 アルバイト開始
第 5 課題 小学校
第 6 課題 集合住宅への conversion
4
工業高校での学び
建築は芸術的分野の中で唯一、人の生命に直接的に関わるもの。また工学的分野で唯一、造形にこだわることができるもの。
-Encounter with architecture幼少期に地元の芸術系のアトリエでモノづくりの楽しさに触れ、最初は芸術的造形からの視点で建築に興味を持ち、建築を 学ぶために工業高校へ入学。 そこで人や周辺環境から合理的な形を生み出す工学的な建築というものを学び、 アートとは また違った側面を持った建築に触れることができた。 そこから 「造形」 と 「機能」 を持ち合わせた建築特有の性質に興味を持つ。
-About my design第一印象で意匠的にかっこいいと思えるデザインは素晴らしい。 しかし、 それが人を含め、 その周辺環境のために成るべくして 成ったという必然的なコンセプトから合理的、 機能的に生み出させれた造形ならば尚かっこいい。 つまり、 建築単体で考えずに そこに住む人の特性やその周辺環境の状況を分析し 「意味のある形」 かつ「意匠的にカッコいい形」 を目指して設計する。
工業高校は大学とは違い、現場で即戦力になる人材を育成するのを目的としているので、主に現場の実習がほとんど。製図はするが 設計は3年に2課題しかない。後は個人的にコンペに出して経験を積むしかない。就職時に有利な資格をいっぱい取るのは工業の特徴。
5
6
53-70
03 設計演習Ⅳ 美術館
【B3】
回生 ~朽ちゆくモノの中で~
Site:大阪市中央区アメリカ村御津公園(三角公園)
Contents
11-28
01 工業高校卒業設計 宿泊施設
【高3】
71-88
04 設計演習Ⅴ 小学校&幼稚園
【B3】
FLOW LINE SCHOOL
隙間世界
~ 3 つの動線が生み出す多様なコミュニティ~ 学内1位 学内1位 Site:京都府亀岡市
トロッコ亀岡付近 Site:大阪市西区
29-52
02 設計演習Ⅲ 図書館
【B3】
89-110
05 設計演習Ⅵ 集合住宅(conversion)
fall×produce×lead
~パラボラ移住物語~
2019 建築新人戦 100 選 ( 一般投票2位 ) 学内1位
Site:大阪市北区中之島 4-3
7
大阪中之島美術館横
【B3】
寄生住
~the extraordinary hole in the city~ 学内1位
西船場小学校&幼稚園&公園
五大学合同講評会優秀賞 福岡デザインレビュー 57 選 Site:長野県佐久市 臼田宇宙空間観測所
8
高校卒業設計
隙間世界
窓から覗く景色を見ると、 なぜか普通に見るより向こう側へ 行ってしまいたくなる。 窓だけでなく建物の隙間、 壁の隙間 から覗く景色もそうである。 隙間の奥の世界が美しく見える。
そこで京都嵐山から亀岡までのトロッコ乗車から伝統的な 川下りへ移る際の通り道としか使われない亀岡市、 その 春夏秋冬姿を変えるこの地域の自然、地域の良さをその 心理を使って再認識させるための宿泊施設を提案する。
9
10
-Site-
-Research-
最近では嵯峨野から自然を満喫しながらトロッ コで亀岡まで行き、嵯峨野まで保津川を下って 降りてくるというツアーをしている人が多い。
嵯峨野 トロッコ
亀岡
亀岡
この京都嵐山付近の亀岡市では自然が豊かで様々な文化があるのにも関わらず観光者は減少し、 住民も減少しつつある。そこで亀岡の伝統的な文化である嵯峨野から亀岡までのトロッコ乗車 と亀岡から嵯峨野までの保津川下りに着目し亀岡の良さを味わわせれる宿泊施設を提案する。
問題点 観光客はトロッコと川下りで自然を味わいたくて 来たのに亀岡に来た時にはすでに自然に慣れてし まい、当たり前の景色として認識してしまって いる。せっかくの景色なのにもったいない。また、 亀岡をトロッコから川下りまでのただの折り返し 地点としか見ていない。そこで川下りで嵯峨野へ 帰る前に一泊し亀岡の自然を再認識させることにした。
11
12
-Concept-
-Diagram-
①
②
③
ボリュームの中心から見 せたい景色の方向を抽出。
ボリュームの中心から見
割れ目からその景色が
中心をくりぬき高さや平行移動
せたい景色の方向を抽出。
見えるように分断する。
などの多少の変化を加える。
閉鎖的だからこそ、そこから見える景色を魅力的に感じる。 慣れてしまった自然から一度遠ざけるために施設全体をあえて閉鎖的にする。
④
⑤
⑥
窓やスキマを使って切り取られた景 色をそれと対比的な空間である室内 分断されたボリューム
斜辺に沿ってスライドさせると
中心から外部の景色に向かって天井や
をさらに分断していく。
形態に変化をつけれるとともに
壁をつたい放射状にスリットを入れる。
自然と隙間も生まれる
から覗くことでその景色を魅力的 に感じ、そっち側へ行きたくなる。 一日目のトロッコ体験の後、このよ うな空間を通して亀岡の自然を再確
これらの方法から閉鎖的な空間からスキマを通して外部を見るというシーンを多数生み出す。
13
認し、外への期待値をあげてから次 の日の川下りへの向かうことが出来る。
14
-Planning-
16000 6000
8000
8000
8000
4000
B→ スキマから覗く世界に引き寄せられる。 EV 男子便所 ↑A
事務室
8500
7000
会議室 倉庫
受付
警備室
事務室
女子便所
↑A”
6500
多目的便所
客室 男子便所
5000 5000
18500
レストラン グッズショップ 客室
客室
厨房
客室
10000
10000
女子便所
8500
レストラン
B”→ 7500
7500 15000
4500
4000
一階平面図 S=1:300 15
5000
8500
外の切り取りがスキマを通して建物内に引き込まれ、内部と繋げ ることができるので同じ空間を共有しているかのように感じる。
16
-Planning-
16000 6000
8000
8000
4000
8000
B→
7000
宴会場
展示室
↑A
8500
EV ↑A”
客室
客室
内側に開けた中庭では交流スペー スになるだけでなく、それぞれの 棟のスキマから見える景色によっ
6500
て、ソトへの興味を誘発させる。 カフェ
8500
大浴場
カフェ
5000
客室
客室
客室
10000
10000
脱衣所
大浴場 5000
18500
脱衣所
B”→ 7500
7500
5000
15000
二階平面図 S=1:300 17
18
事務室
受付
事務室
▼1FL ▼GL
5000 9500
グッズ ショップ
受付
▼GL
▼GL
19
▼1FL ▼GL
B-B”断面図 S=1:300
A-A”断面図 S=1:300
南立面図 S=1:300
4800
EV
500
便所
▼2FL
▼RFL
500
500
4000
宴会場
2500
客室
500 3200
9500
客室
4000
5000
▼RFL 展示室
東立面図 S=1:300
20
あとがき 工業の卒業設計ということで高校3年間の集大成。 といっても設計が始まったのは3年生から。最初が 住宅設計でその次が卒業設計、 あとは自分でコン ペに出して場数を踏もうとしていた。当時は図面を CADですることもあったがほとんどが手書き。 さら に、 工業高校ということで大学と違い面白いコンセ プトよりもどれだけ現実性があるのかという部分を 求められることが多く、 きれいに収まっていればコ ンセプトすら求められない感じ。 その中でも自分な りに形に理由をつけたくてコンセプトをよく考えていた。 21
22
fall produce
lead
~the extraordinary hole in the city~
中之島という大都市に図書館を設計する。 ビジネスマンなどの 都市の人たちは全てが管理された人工照明のもとで仕事を し、 くつろぎ、 そして、 本を読む。 このような完璧で全てが整った 都市的なものから1度切り離し、都市では存在を忘れ去ら れた自然光を使用し機能的に空間を生み出すことにした。
自然光がつなぐ空間では管理された都市の空間とは違い、 季節や日々、 そして時間ごとに雰囲気が少しずつ変動する。 人工照明にはない光の微妙な変化やその都度、 生み出される 雰囲気の違いの中で自分の気分や用途、性格から自分に 合った居場所を探し、自分独自の本との向き合い方を探す。
都市という日常から切り離された非日常を楽しみ、自分 に合った空 間 、その空 間を構 成 する光を選んでほしい。
23
24
-System-
光
① ②
Bright
①
③ ④
賑やかな空間
落ち着いた空間
① 自然光から空間を構成していくには光の濃淡を機能的に生み出す必要がある。
② ③
④ ④
④
①
天井から取り入れられた光は穴を通して下の階へ落ちる。
②
まっすぐ落ちた光はそのフロアで分散し、少し暗くなる。
③
②で分散された光はさらに穴を通して、下の階に落ちる。
④ その光がまた落ちた階で分散して、上階より少し暗くなる。 光というのはその明るさを用いて、賑やかな空間、落ち着いた空間など様々な空間を作り出すことができる。
Dark
このように下の階になるほど光が分散されて暗くなっていくと いう機能を使い、自然光の濃淡で空間を構成させることを試みた。
25
26
-Concept-
Sunny
Cloudy
先ほど述べた空間は常に一定の変化をするわけではない。自然光 の明るさによって自然と生み出される空間なので、たとえ同じ空間
例えば、明るくオープンな空間 には友達と話しながら本を読ん だりカフェのような雰囲気で本
でもそのときの季節、天候、時間によって明るさが大きく変動する。
賑やかな空間になる。
A
A
を読みたい人が集まる傾向にあり
逆に、薄暗くて閉鎖的な空間 では一人で落ち着いて本を読 みたい人や勉強など何かに集
落ち着いた空間になる。
中したい人が集まる傾向にあり
Sunny
Sunny
12:00
12:00
A その雰囲気に引き寄せられ同じ方向性を持った人が集まってくる。
つまり、その空間の雰囲気や方向性も常に変動することとなる。
B
Cloudy
Cloudy
12:00
12:00
A
B
Sunny
Sunny
17:00
17:00
A
明るさが日々変動するのに伴い、そこに集まる人たちも変わる。
B
このように、この図書館では光の明るさとそれに対する人の動きによって一つの雰囲気をもった空間が自然に 作られる。明るいところで読みたい人、静寂な空間で読みたい人など、人それぞれ本との向き合い方は全く違い、 そのような人たちが上記のような空間を選び、自分の居場所、または読む本に合った居場所見つけることができる。
27
このような自由の利かない空間の中から自分の居場所を探すことで、都市に管理された空間から切り離された非日常を体感させる。
28
-Diagram-
process ①
effect
穴を掘る
②
[volume]
穴の底から 2 種類のボリュームを積み上げる
③
それらのボリュームを重ね合わせる
壁で囲まれていることから閉鎖的
壁がなく外の光が差し込むオー
各ボリュームの連なりは独立していて交わっていないが人は行き来で
なボリュームとなっている。閉鎖
プンなボリューム。同じく開放
きるので閉鎖的なボリュームから開放的なボリュームへ、または
的な空間を好む人がその中で明
的な空間を好む人がその中で
その逆も、自分のその時の気分に合わして空間を選ぶことができる。
るさの程度を選ぶことができる。
光の明るさを選ぶことができる。
壁で周囲の光が遮られ、下へ行く
オープンで外部の光も混ざるの
だけのグラデーションを楽しむだけでなく、グラデーションの程度が違う
ほど激しいグラデーションとなる。
で優しいグラデーションとなる。
連なりとの光の変化も楽しむことができ、自分の居場所の選択肢も広がる。
[gradation] この 2 種類の異なる光のグラデーションを平行移動することで下に行く
29
30
directorʼs room office
W.C.
terrace
waiting area bookshelf
South elevation
road side
S = 1 : 500
museum side 0
10
20
10 15 20 25 30
40
5
30(m)
S = 1 : 500
N
A”
A
S = 1 : 1000 0
glass
cafe
5
50
60
70
80
90 (m)
browsing area
Layout and 1F plan
S = 1 : 1000
kids area lecture area
roof terrace
A”
A”
terrace
A
A
discussion area
2F plan 31
S = 1 : 1000
3F plan
S = 1 : 1000 32
east entrance
A
A”
newspaper corner
closed library
B1F plan
S = 1 : 1000 N
S = 1 : 1000 0
5
10 15 20 25 30
40
50
60
70
80
90 (m)
exhibition gallery
underground terrace
theater room
A
A”
A
A”
A
A”
IT room
rest area 33
B4F plan
S = 1 : 1000
B3F plan
S = 1 : 1000
B2F plan
warehouse
S = 1 : 1000 34
lightning square ▽RFL ▽3FL
concentration space
▽2FL ▽1FL ▽GL
roof terrace
4000
discussion area
4000 4000 1750
▽A
A”
A
▽A”
newspaper corner
▽B1FL 2250 ▽B2FL
terrace
waiting area
IT room
4000 4000
▽B3FL 4000 ▽B4FL 4000 ▽B5FL 500 1000
B5F plan 35
S = 1 : 1000
concentration space
lightning square
A-A” Cross section
S = 1 : 500 36
-Verification自然光のみで光を繋げるためには、ただ穴を空けるだけでなく十分な対策が必要である。
①
④ 一段一段スラブで光を遮るだけでなく、なかには一番上から直接繋げたり、いくつかのボリュームを貫通させたりして光の量を調節する。
glass light
light スラブに穴をあけるだけでなくガラスの筒を通すことでガラ
地上から直接光を補充し、暗くなりすぎた部屋を明るくする。
スの内側を反射しながら光が落ちていく。そうすることで下
そうすることで、その下へと繋がるボリュームも明るくなる。
へ到達するまでの光の減少をなるべく抑えることができる。
光が届きにくいところにはスラブを貫通させてガラスの筒を 配置することで光が遮られることはなく、一段飛ばしでその 明るさのまま下に落ちる。その結果、光が届きやすくなる。
②
-Zoningガラスを四角形にすると偏りのある反射が起こるが円形の筒 にすることで効率的で偏りのない綺麗な光の広がりを実現させる。
Bright Kids area Discussion area Lecture area Cafe
③
Browsing area IT room Exhibition gallery
が、建物の機能上用途を固定しなければいけない空間がある。
光が広がる内部の空間では反射率の高い白い仕上げを用いる。 Theater room Rest area
Dark
37
その時の光の明るさによって空間の雰囲気は変動していく そのような空間をゾーニングするときに、下に行けば行くほど 暗くなり落ち着いた空間になるということから各部屋の配置 をそれぞれの用途に合わせた明るさになるように配置する。
38
1
2
① ②
③
この図書館の最上階にある屋上テラスでは 子どもたちなどが存分にはしゃげる、かつピク
⑤ ④
ニック気分を味わえる場所となっている。その 雰囲気は地下フロアとは対極のフロアとなる。
⑥ 3
最上階から一番大きな穴を 通して、地下一階まで光を通 す。ここから地下へと繋げる ための光を十分に取り入れる。
4
⑦ ⑨
⑩
⑧
一階のカフェではテラスと合体させるなど
⑪
西側の道路に向けてオープンに配置する。 地下部分とは違い、まずは都市の象徴である
⑫
カフェを置き、日常的な部分から誘導する。
⑬
正面玄関はカーテンウォールを 多用し中之島の道路に開くような ファサードにすることで人が 近寄りやすいようになっている。 39
40
5
地下の大空間へと光を落とす穴。通り道
7
9
として敷地を利用するときにも地下の大 空間を覗くことができ、都市から切り離 された別空間の存在を軽く認識させる。
半地下にあるので GL からのズレで出来たス リットから光が差し込む。スリットからの柔ら
6
かい光は朝日のようになり新聞をあたかも早朝
上の階の光がそのまま落ちて分散される。
に読んでいるかの雰囲気を味わうことができる。
ガラスの筒の付近は周囲に比べると少し明 るい場所となっている。どのフロアでも、ほ とんどが一つ上の階の光が落ちてくるので明 るすぎることはなく落ち着いた照らし方となる。
8
10
東側に後に 2021 年開館予定の 大阪中之島美術館ができる。そ の美術館の鑑賞者がそのまま図
1FL と B1FL の間に GL が来るようにレベルを操作することで、
書館に流れてくることを見越し
その狭間の空間が生まれる。室内では地上と地下の境界はは
最下層に近づいていくと少しの環境の変化で大きく雰
て、美術館の雰囲気から抵抗な
っきりさせていないが、この狭間の空間から外を見ると地上、
囲気が変動する。日、時間によってはほぼ光が届か
く入れるように落ち着いた雰
地下の区切りがはっきりと認識させられる。逆に GL の位置
ないところもあり、自分に合った場所を探さなくては
囲気の B1F のエントランス
から見ると、半階下がったところで、たたずむ人を見てまだ
いけない。このように、現在の都市では考えられない
へのアプローチとなっている。
地下が続くのではないかと、それ以上のことを予測させる。
非日常的な場所で出会った本との記憶は深いものとなる。
41
42
11
12
東側と違って西側では地下の外部空間の一番下へ 降りることができるようになっている。この広場 では完全に日常世界とはかけ離れた雰囲気を味わ うことができる。しかし、そこに差し込み照らして いる光は地上部分から直接落としてきているので地 上部分(都市)と光を通して繋がり、かつ、切り離 したからこそ自然光をより感じる空間となっている。
地下空間の外部、下に行くほど少しずつ暗くなってくる 順路の中で一旦外に出て休憩することもできる。外に
13
出て下を見ると壁のないオープンな空間が下階に連な っていくのを認識し、下の空間への興味をそそられる。 また、地下外部空間の東側は一番下を歩くことはできなく なっていて上から見たときに下に人が見えることはないの で何か神秘的な洞窟のような雰囲気を味わうことができる。
図書館には必須の「集中できる場所」を設計した。 周囲を暗くして視野を遮り、目的物だけを見やすく することで集中力がアップするという映画館効果と いうものを採用し最下階という暗い部分に地上から 直接明るい光を落とすという自然の力で実現させた。 43
44
あとがき 大学 2 年後期から設計が始まり三つ目の設計課題。 光の明るさを扱うことから光のスタディをかなり したのを覚えている。正直、 「それ 1 番下まで光届 くの?」と聞かれるとはっきり届くとは言えないが それなりに自分で考え、スタディを重ねた経験は 今後の設計にも影響してきたと考えている。また、 自分にとって新しい領域にある CG へ興味が湧き、 この時期から CG ソフトを学ぶことに時間を使って パソコンで設計やシート作りをすることに切り替えた。 45
46
回生 ~朽ちゆくモノの中で~
この美術館は一人のアーティストの作品を展示するだけでなく その考えやメッセージをそのまま体感出来るようになっている。
人は朽ちていくモノの中で死にゆくモノの中で何を感じるのか。 普段私たちは生死についてなど、 なにも考えずに当たり前の ように生きているが実際に 「死」 というものを身近に感じると、 おそらく今までのようにはいかないであろう。そして、心に 何かしらの変 化が 起き、この美 術 館に入る前と入る後で は「生」 というものの捉え方が変わるのではないのだろうか。
47
48
-Site-
大阪市中央区アメリカ村御津公園(三角公園) Artist 七搦綾乃
彫刻家
SITE
子供の彫刻から朽ちていく自然の生き物の彫刻にテーマが変化して今では人間の死をテーマに彫刻をしている。
Artistʼ s message 生き物が朽ちていく姿に「美しさ」を感じる。私たちは普段「生」について深く考えることはないが「生」が終わりかけて 死に向かって行くと実感したときに初めて「生きていた時間」が見えてきて、今までの日常が「生」として強く認識させら れる。そこで、このアーティストが表現している「生」というモノを強く感じることが出来る体感型の美術館を提案する。
49
周辺図 S=1:800
N
敷地であるアメリカ村には個性的な人が集まり、多様な表現で溢れかえっている。 死とは無縁の関係のこの場所だが、生と死はいつも隣り合わせで突然現れるもの。 どの町よりも活気溢れるアメ村だからこそ「生」を再認識するための場所として選んだ。
50
1
2
3
4
鑑賞者の動線を円を描いて
その動線に沿って展示空間
中心に進むにつれて展示
展示空間の上下の空いたス
中心に向かうように設定。
となるボリュームを配置。
空間を徐々に壊していく。
ペースに事務室、トイレな
「生」を強く感じるようにするためには
死
「死」を徐々に実感していく必要がある。 中心に向かって進めば進むほど段階的に 「死」を実感できるような順路を提案する。
どのボリュームを配置。
51
52
倉庫
倉庫
第八 展示室
第五 展示室
事務室
休憩所
事務室
最終 展示室
レクチャー室
↓A”
↓A
機械室
便所 受付
第七 展示室
↓A”
休憩室 ↓A
第六 展示室
展望台
第四 展示室
便所
第一 展示室 第二 展示室
一階平面図
二階平面図
S=1:200
第三 展示室
S=1:200
廊下
便所
レクチャー室
第六 展示室
3400
▽RFL 展望台
機械室
第七 展示室
最終 展示室
第一 展示室
S=1:200
受付
▽1FL ▽GL
西側立面図
S=1:200
N
A-A” 断面図
便所
300 4000
▽2FL
0 53
2
4
6
8
10
12
14
16 (m) 54
-Concept-
A
B
C
D
中心に向かって進んでいくにつれて徐々に建物が朽ちていき、RC造の死を連想させる鉄筋がむき出しになっていく。
B
A
C
B
C
D
D
また、年々アーティストの朽ちる表現が露骨になってきているので作品を進む順路に沿って年代順
A
に並べていくと進むにつれて美術館だけでなく、作品自体も徐々に朽ちていくようになっている。 一階の受付から左図の A の展示室を 通り、そこから二階に上がり BC 含 めた5個の展示室を通り、もう一度 一階に向かい D を通って中央の展示 室まで到達する。計 9 個の展示室を 進み、美術館の中央まで堪能したあ と、受付の方へ帰っていくという順路。
55
これらより、まるで建物内の時間が急速に流れているかのように建物が朽ちていき、その中で朽 ちていく作品を見ながら進んでいくので自分までも徐々に死に向かっているような感覚を味わう。
56
休憩所
第一展示室
受付
第二展示室
57
58
第三展示室
第四展示室
59
第五展示室
第六展示室
60
階段
第八展示室
さらに順路を突き進むと壁はほとんど朽ち果て、
1 階へと繋がる階段。1 階の暗い雰囲気を
中から出てくる鉄筋によって空間が構成され始める。
感じることができ、足が重くなっていく。
第七展示室
最終展示室
ここまで来ると、壁よりも鉄筋の割合 が過半数を占めるようになってくる。 61
最終地点の中心部になると壁はすべて朽ち果て、鉄筋が重なり、 光や視線が遮られ、ますます死を意識せずにはいられなくなる。
62
そこで、重なり合った鉄筋をフレ ームのようにしてアメ村の活気溢 れる「生」を捉えることができる。 さっきまで当たり前のようにそ っち側にいたのに、まるでさっき とは全く違う美しい世界に見え、 朽ちていく恐怖を実感したから こそ生きていた時間を強く感じ 「生」を再認識することができる。 これがアーティストの伝えたい ことであり、この美術館を出た 後のあなたは同じ景色でも違う 日常を感じることになであろう。
63
64
あとがき この課題はなかなかしっくりこないことが多くて 毎週のエスキースごとに何度も案を1から考え直 した。実はこの作品も中間講評の時のもので最 終講評とは全く別の案。 エスキースごとに深くほ りさげていく本来の設計と違い、 案を変えてばか りいると1つの案が浅くなって突っ込みどころが 多くなっていく。 この作品も新築を人間の手で朽 ちさせるという点や、 そう簡単に人間の感情は思 い通りにならないという点でよく突っ込まれた。 65
66
FLOW LINE SCHOOL ~ 3 つの動線が生み出す多様なコミュニティ~
中之島という大都市に図書館を設計する。 現在の学校では同じ年齢で同じ内容の授業を同じ場所 ビジネスマンなどの で学び、 都市の人たちは全てが管理された人工照明のも 子供たちの多様性や主体性を閉じ込めて とで仕事をし、 しまってるのではと考えられる。 くつろぎ、 そして、 本を読む。 このよ さ うな完璧で全てが整った都市 らに、地域から学校 が隔離されていることによ 的なものから1度切り離し、 り子供たちの交流 都市では存在を忘れ去られた自然 ・行動が クラス内部あるいは学校内部で完結してし 光を使用し機能的に空間を生み出すことにした。 まっている。
自然光がつなぐ空間では管理された都市の空間とは違い、 これらに対し,今回提案するのは子供たちがまるで町を 季節や日々、 そして時間ごとに雰囲気が少しずつ変動する。 歩き回る感覚で自由に学び、 外部と常に触れ合うことが 人工照明にはない光の微妙な変化やその都度、 生み出される できる。 どこででも地域の人々と交流でき、 多様性溢れる 雰囲気の違いの中で自分の気分や用途、性格から自分に 刺激的な 「まちなかコミュニティスクール」 を提案する。 合った居場所を探し、自分独自の本との向き合い方を探す。
都市という日常から切り離された非日常を楽しみ、自分に 合った空間、 その空間を構成する光を選んでほしい。
67
68
-Site-
小学校
人が歩くところには必ず「道」が存在 する。その誰もが移動するために使う
SITE
「道」を使用し、流動的にアクティ
幼稚園
ビティが生まれるように組み立てる。 さらに、その道を小学校領域、幼稚園 領域、地域領域の 3 つの属性に分け、
地域
それぞれの動線を操作して「まちなか コミュニティスクール」を設計する。
敷地となるのは大阪市立西船場小学校と幼稚園、その南側に隣接する公園である。 小学校は周囲に対して閉鎖的で地域とのかかわりは一切ない。公園やその間の道 にもただ人が通り過ぎるだけでビジネス街であるにも関わらず活気を失っている。
69
70
-Diagram-
小学生は小学生だけの道を通り、幼稚園児 は幼稚園児だけの道、地域は地域だけの道 を通る。しかし、左図のようにお互いが同 じ空間を共有できるので学校では味わうこ 空間を共有
とのないコミュニティが生まれる。しかし、 3つの動線は交わることはないので安全性 は確保され、学校と地域の秩序は保たれる。 子どもたちは学校という固い縛りから開放 され安全が確保された上でまるで街を冒険
コアを建てる
71
3種類の「道」を巻き
するかのように自由に行き来すことができ、
つけ交わらせていく。
交流しながら主体的に学ぶことができる。
72
-Roof Planning-
屋根
Roof Planning
小学校の道
道だけでは屋根も壁もできず内部空間が作れないので建築にならない。そこで道の 流動的なイメージにあわせて流れる雲のように形を展開させながら屋根をかける。
幼稚園の道
Road Planning
屋根 壁
外部
地域の道
半外部 内部 コア
Core Planning 屋根が壁になり最後は内部を作るボリュームにまで連続的に変化する。また、外部、内部、 半外部という空間ができることで、例えば、コアが柱となり屋根を支える半外部では人々 を引き寄せるエントランス的な存在になったりだとか、道という空間に多様性を生むこと
建具等
73
ができる。これにより道という非建築的なものから実際に空間を構成する建築へと変化する。
74
-Core Planning-
断面
エレベーター 平面 職員室 CR
CR
子供の動線 CR
職員室 CR
CR
職員室
EV
CR 職員室 CR
先生の動線 CR CR 子供の動線
先生の動線
先生はコアを通る縦の動線を使いそれぞれの教室に最短で移動できる。
子どもたちは道の上に自由にイスを置いて学ぶ。先生は中心の職員室から教
先生と子どもたちの動線を分けることにより子どもたちは先生の管理
室の黒板の横に直接出ることができ、授業がすぐにできるようになっている。
から外れ、自分たちで考え行動するという主体性を生むことができる。
75
76
B”
B”
店舗
CR
多目的エリア
店舗 職員室
便所倉庫
職員室 CR
CR
吹抜け
図書館 大エントランスホール
治療室
フィットネスジム
レクチャー室
職員室
待合室
便所倉庫
ビリヤード 図工室
家庭科室
吹抜け
ロッカーエリア
CR 職員室 CR
浴室 警備室 便所
小学校の体育館 老人ホーム
A
便所 倉庫 A”
機械室
職員室
職員室 A
A”
シアタールーム
職員室
体育倉庫
CR 木の広場
グラウンド 職員室
調理室
吹抜け
食堂 自習室 N
集会場
B”
77
一階平面図 S=1:700
B”
二階平面図 S=1:700
0
5
10
15
20
25
30(m)
78
B”
B”
CR 職員室 CR
職員室
CR
職員室 展望台
実験室
便所
コンピューター室
視聴覚室
PCルーム
職員室
卓球室
多目的室
発表室
職員室
便所
CR 職員室
職員室
CR
CR
A
カフェ
会議室 A”
A
A”
CR 職員室
職員室
CR
CR
職員室
倉庫
CR
屋上庭園 N
カフェ
カフェ
B”
79
三階平面図 S=1:700
B”
四階平面図 S=1:700
0
5
10
15
20
25
30(m)
80
4000
4000 4500
職員室
4500
4500
職員室
4500
職員室
職員室
職員室
CR
4500
職員室
4500
レストラン 会議室
浴室
▼GL
4000
農園倉庫
4500
職員室
S=1:300
CR
職員室
職員室
12000
4500
CR
4500
▼GL
A-A”断面図
職員室
職員室
CR 職員室
職員室
老人ホーム
▼GL+600
B-B”断面図
81
S=1:300
82
Road Planning
①木の広場 ②屋上農園、小学校の調理室 ③集会所、小学校の自習室
④カフェ、幼稚園遊戯室 ⑤図書館 ⑥体育館観覧席 ⑦特別教室密集エリア ①木の広場
⑧教室
オープンで商業的なエントランスとは対象的に自然を感じる空間となっている。 みんなで同じ木を囲み、同じことを感じることで空間の共有を意識させる。
⑨職員室
②屋上農園、小学校の調理室 幼児、児童共に農家の人といっしょにみんなで協力 して作物を育て、農業を学ぶ。ここで出来た作物は、 すぐ下の調理室で子どもたちが調理することも出来る。
⑩老人ホーム、学童施設 ⑪運動場 ⑫小学校の体育館
③集会所、小学校の自習室
83
④カフェ、幼稚園遊戯室
地域の集会場と小学校が重なり合う場。ここでは道が連続的
カフェ、幼稚園の遊戯室、小学校の体育館が空間を重ね合
に机へと変化していき、その机を挟んで勉強を教えてもらっ
わせお互いに見て見られ、存在を意識し合うことが出来る。
たり集会所で行われる催し鑑賞などさまざまな交流が生まれる。 84
⑤図書館 この図書館では道がどんどん家具スケールまで落ちていき机になります。 その机によって空間をわけ、かつ、机を挟んで対面に座るので多様なコ
⑥体育館観覧席
ミュニティが生まれる。また、幼稚園児、小学生などは視線の位置が違
老人ホームの玄関付近から体育館を眺められる。
うので、床の高さを変えコミュニティがうまれやすいようにしている。
立っている人の目線 座っている人の目線
目線の高さを合わせることで話をしたり、勉強を教 えたりコミュニケーションが比較的取りやすくなる。
小学校の道
幼稚園の道
地域の道
老人ホーム
小学校の体育館 体育館観覧席
⑤図書館 85
詳細断面図
S=1:70
⑧体育館観覧席の詳細断面図
S=1:100 86
⑩老人ホーム、学童施設 普段は老人ホームだが放課後は学童施設と
⑪運動場
しても使える。高齢者と子どもが交流でき
地域にオープンな運動場。地域の人も近くまでいって座り込みことができ、子どもの活動を
地域全体で子どもたちを育てることが出来る。
見守ることも出来る。また、学校が休みの日にはイベントなどの行事に利用することも可能。
⑦特別教室密集エリア 特別教室で行われる授業は音楽室、実験室など興味性が高いものが多いので、 小学校、幼稚園、地域のそれぞれの特別教室を一つに密集させ、内部に開ける ようにすることでお互いに何をしているかが見て分かり、好奇心を沸かせさせる。
87
⑫小学校の体育館
⑧ 教室
⑨職員室 コアに配置された職員室。縦方向に移動して
道という流れの中で主体的に授業を受けることが出来る。
各教室へ最短距離で到達することが出来る。
部で重なり合い雨は当たらないようになっている。
外の空気を味わえる外部の体育館。道や屋根が上
88
あとがき この作品は美術館の時とは違い、最初から最後 まで 「道」 という一つの案を貫き通した。 中間講評 ではコンセプト模型としては面白いが建築になっ ていないという指摘を受け、建築にするための スタディをかなり重ねたのを覚えている。 また、面 白いコンセプトを忠実に落とし込んで少しずつ 建築になっていくことの楽しさを実感できた。 89
90
寄生住 ~パラボラ移住物語~
hole
世の中が便利になり、人々が一見幸せに過ごしている ような現在。そこの豊かさに疑問を持った人々がいた。
確かに東京は快適かもしれない。それでも足りない 何かは何なのだろうか?彼らはその疑問を追い、東京 を飛び出した。箱根を超え、彼らがたどり着いたのは 長野の山奥。そこには超先端組織である JAXA に 捨てられ今や使われなくなった巨大構築物があった。
彼らはその巨大構築物の機能、特徴を十分に活かし、 まるでそのモノが作り出す養分を吸い取るかのように 「寄生」し、 今までにない新たな暮らし方を実現させた。
91
92
-Story-
1
2
3
4
人 間 は 元 々 、 そ の 地 形 や天候に逆らわず、自然
しかし、現在東京を中心とする都市では地形を
そこで不満を持った者たちが元からあるものを
の形に寄り添って建物を建て、集落を築いてきた。
掘り起こし、もとからあるものを全て壊して新し
彼らはその不動の構築物を目の当たりにし、現在、
壊すのではなくて、寄り添い共に生きる日本古
いものを一から造るようになってしまった。全て
廃墟問題にひとつである巨大構築物を一つの地形
来の住み方を蘇らせるために東京を飛び出した。
を人間によって整えられた世界は快適なのかも
として捉え、集落を創ることを決意した。地形に
そこから新たな場所を探していると今や使われて
しれないが、どこか息苦しいような感じがする。
寄り添って生きてきた古来のように、人間が残した
いない直径64mの巨大パラボラアンテナに遭遇。
負の遺産に寄り添う。そして現代のように全て人間 の力で成そうとするのではなく元からあるものの形 状、機能から更なる豊かさを生み出すことを試みた。
93
94
-Site-
パラボラアンテナの原理
臼田宇宙空間観測所
電波 電波
電波
電波
電波
焦点
研究棟
展示棟
パラボラアンテナ
パラボラアンテナ
宇宙から受け取った電波が
敷地:「臼田宇宙空間観測所」
円盤のどこに落ちても全て
直径:64m(日本最大)
焦点である副反射鏡に集ま
最高高さ:70m
配置図
95
1:700
機能:人工衛星からの電波を受信
り、最後はまっすぐ受信機 受信機
まで落ちるようになっている。
96
-Upper
既存 新築
Planning- パラボラを使った勾配の利用
副反射鏡
1
住戸
反射板
Upper Planning
4.7°以下の領域(人が容易に歩ける角度 ) 90°
立体トラス
EV ホール
コンヴァージョンをする前にパラボラの反射
熱を落とす管
板の角度を固定しなければならない。その 際、パラボラ全体の角度を変化させていき、
20°
ガラス
住戸
Lower Planning 既存のパラボラを軸にして住戸を
既存
含めた新築を絡めていく。上部で
4.7°の領域(人が容易に歩ける角度 ) が
は上部ならではの計画、下部では
一番広くなるときの反射板の角度を調べた。
下部ならではの計画とそれぞれの 特徴や機能を活かして上部と下部
29.58°
最大領域
その領域が最大になるときの角度が 29.58。
に分けて合理的な計画を提案する。
97
98
2
本棚
ボルダリング
29.58°で固定した場合の角度分布図
80°
階段
寄りかかる
70°
70°
滑る
干す
70° 40°
46°
25°
50° 机、イス
イスに座る
座る
40° 15°
18°
30°
25° 10° 5°
8°
4.7°
スロープ
寝る
1/12
スケボー
それぞれの角度から住宅としてできることを抽出し設計に取り入れた。
5°
99
4.7°
3°
100
3
4
住戸
表
住戸の二面性
70°
居住者専用 コモンスペース 廊下
共用のコモンスペ
外部の廊下へ
ースへ向けた玄関
向けた玄関
55°
40° 共用廊下
EV 5°
30° 10°
住戸 1
住戸 2
55°
70°
10°
40°
5°
30°
裏
中央の EV ホールから放射状に裏のトラスへと廊下が広がりそれぞれの住戸へ アプローチできる。住戸でパラボラを貫通させ、1 つの住戸に内と外の二面性
101
を設けた。外側の玄関からは共用の廊下へアプローチでき、内側の玄関から
1 つの住戸内では限られた範囲の角度しか体験
は住民限定の共用の中庭であるコモンスペースへ繋がり、内に開いた小さな町
できないが 1 つの住戸を分割して裏で繋ぐことで
というイメージで住民同士の安全なコミュニティが生まれやすくなっている。
一世帯でさまざまな角度を味わえるようになる。
102
-Lower
Planning- パラボラを使った自然エネルギーの利用
光
熱 熱
熱
熱
熱
光
熱
光
光
光
焦点
焦点
パラボラの特性を活かし下へと熱を
ミラー
光
落とす。ここは寒い地域で下から上
ミラー
に上がる熱を住戸を通って全体へと 循環させるためにつながりのあるデザ インとした。温めた空気を夜まで持続 させ、夜でも自然の力で暖かくできる。 住戸
熱
住戸合計 1570 ㎡を暖めるために必
パラボラの影になりやすい下の空間
住戸
を照らすために熱同様パラボラの機
要なエネルギーの量を求め、そのエ
蓄熱
103
能を利用し光を下部へ落とす。太陽
ネルギーの量を太陽光から集めるため
熱の対流
にパラボラアンテナの反射板に設置す る必要なミラーの面積 12 ㎡を求めた。
の明るい光が差し込む中心を囲むよ
光
うにして居住空間、廊下などを配置。
104
1
2
3
4
光を落とす管
既存建物
板ガラス
住戸
すりガラス
パラボラの機能を使い宇宙からの電
光を囲むようにして住戸を配置
下で暖められた空気を無駄なく循
熱で暖めるためのエネルギーを
波を落とすための筒を再利用し太陽
する。また、下から上に移動す
環させるために板を貼り、螺旋状
取り込むとその光の明るさは膨
の光、熱を下へ落とす。筒の一部を
る空気がより循環しやすいよ
に空気が上へと移動するようにした。
大になってしまうので、まぶし
ガラスにし周囲を照らすようにした。
うに連続的なデザインとした。
い光が直接住戸へ入ってこない ように板を磨りガラスにした。
105
106
レール ガラス 住戸
EV
GL+20000 の平面では既存構造体を削
管 既存構造体 GL+20000 平面図
GL+600000
るようにしてガラスが差し込まれており、
エントランス
その内部に住戸を連続的に配置する。
1:1000
副反射鏡 EV ホール 穴 EV EV
GL+45000
裏トラス 公園
机
住戸
GL+45000 の平面では中央のエレベー ターホールから裏のトラスへと放射状 に廊下が広がり、裏のトラス内とパラ
ミラー
ボラの円盤上の広場の二面性が表れる。 回廊 GL+45000 平面図 EV ホール
GL+20000
1:1000
住戸
図書館
住戸
GL+60000 の平面では住戸がパラボラ自 体に差し込まれ住戸内でも表と裏の二面 ▽GL
性を設けている。パラボラの表の広場で はその勾配を活かした計画となっている。
A-A”断面図
1:500 N GL+60000 平面図
107
1:1000
0
6
12
18
24
30
36
42
48(m)
108
① ② ③ ④ ① 住戸、斜面の部分を各家庭で工夫して使う。
⑤
③ 20°の斜面。寝転がってのんびり景色を眺める。
⑥ ⑦ ⑧ ⑨
20°の斜面。寝転がってのんびり景色を見る。
⑩ ⑪
109
② 図書館では 70°という急勾配を壁として使い、
④ 子供たちが遊ぶための公園。
子供たちが登ったり座ったりできる本棚を提案。
25°の勾配は滑り台となる。
110
⑧ 裏のトラスの休憩所。コミュニティーの場となる。
⑤ トラス側の住戸。住戸内にトラスが共存する。
⑨ 勾配を利用して、床と机が連続的につながる。
⑥ EV ホール、ここから放射状に回廊が広がる。 111
⑦ エレベーターホールから裏トラスへとつながる道。
⑩ 4.7°以下の緩やかな勾配では無理なく歩けることができる。
⑪ それぞれの住戸につながる裏トラスの廊下 112
あとがき このコンヴァージョン課題は既存構造物を集合住宅に 変えるというもので、既存構造物については宇宙が好き なので宇宙関連のパラボラアンテナを選んだ。JAXAに 問い合わせても見学や、図面を手に入れることができず にネットの情報で調査することにした。 だから住宅の提 案よりもパラボラアンテナの円盤の角度の分析や既存 建物の再現などの方にかなり時間をかけてしまい、 もう 113
少し住宅の方でもっと掘り下げた提案をしたかったと思う。 114
Architectural Portfolio 2014-2020 2020 年 9 月 1 日
初版1刷発行
者
林
駿
哉
発行者
林
駿
哉
発行所
大阪市立大学工学部 建築デザイン研究室
著
大阪市住吉区杉本3丁目 3-138 郵便番号
558-8585
電話番号
06-6605-2011
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