バ イ オ マ テ リ ア ル に よ る 修 繕 の た め の デ ザ イ ン
Design for Mending with io B s l a i r e t a m Emma Huffman
バ イ オ マ テ リ ア ル に よ る 修 繕 の た め の デ ザ イ ン
Design for Mending with Bio materials Emma Huffman
Design for Mending with Biomaterial
絵本「くつをなおす きんじやときのここびと」
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Designs for Mending with Biomaterials
研究プロセス
Phase 1 文献調査 フィールドワーク 背景・動機 テーマ 修繕 類似モデル調査 バイオマテリアル 先行事例調査 文献調査 実験・1 アイディア発想 実験・2 フィールドリサーチ
Phase 1 | 背景・動機
移行期のためのデザインの必要性
気候危機は人類にとって喫緊の課題である。近代化、そして、急激なグローバリ ゼーションを経て、地球に多大な環境負荷のかけてきたファッション産業は、昨今、 その在り方を改め、持続可能な製品・サービスの開発と実行に本腰を入れており、 特に、循環型モデルに向けた動向が目立っている。具体的には、2021 年には複 数の大手企業がキノコの菌糸体を用いた皮革の代替となるようなテキスタイル製の 靴や鞄を発表したり、単一素材で作られた靴の循環型サブスクリプションのサービ スがはじまっているつまり、ファッション産業が循環型デザインに移行しようとして いることは明快である。 しかし、一般に循環型の製品が普及するまでまだ時間がかかる上に、まだ使える 既存のプロダクトを全て捨て、新しく循環型の製品に買い直すことは合理的とは言 えない。そのため、様々な理由から捨てられてしまう直線型デザインの衣類や靴を 廃棄せずに、なるべく長く使い続けるためのデザイン、循環型社会への移行期の ためのデザインが必要だと考える。
分類 現在 ▲ 移行期のためのデザインを示す概念図
バイオマテリアル
移行期
履き続ける
長く使い続けるためのデザイン ー リペア
サーキュラー・エコノミーを啓蒙・促進する慈善団体 Ellen MacArthur Foundation は、製品や素材を長く使うため方法に、シェア、維持・寿命伸長、リユー ス・再分配、改修・再製造、リサイクルをあげており、順を追うごとに、エネルギー 消費が大きいとしている。 (Butterfly Diagram, Ellen MacArthur Foundation) つまり、シェアしたり、維持・寿命伸長=修繕やメンテナンスをして長く同じ製品 を使うことがより望ましい。本研究では、移行期のデザインの具体的な実践として 「修繕」に着目した。 現存のリペアに関するサービスには、ユーザーが製品を自ら持ち込む地域の修理・ 修繕屋、自身で治すための修繕キット、市民が壊れた製品を持ち寄り、知識を共 有して、共に修繕するリペアカフェなどなどがある。また、修理に関しての昨今の 動向として、 「修理する権利」が現在欧州を中心に訴えられている。これは特に電 子機器を対象にした運動であり、企業がユーザーには修理できない製品を生産し ているため、ユーザーは高額な費用で生産者に修理してもらうか、製品を捨てる かの2つの選択しかない。修理して使い続けることは市民によるアクティビズムの なのである。
*1
*2
循環型製品の購入 近未来
循環型経済普及以降
*1 Sneature, Emilie Burfeind, *2 Ready-to-be-remade, Addidas
履き続ける 未来
Phase 1 | 背景・動機
ファッション産業の動向 ー バイオマテリアル
持続可能性に向けての昨今のファッション産業の動向としてバイオマテリアルへの 注目、開発、利用が挙げられる。バイオマテリアルは自然由来の素材を含んだ全 ての素材を総称している。2021 年、特にファッション業界が注目したバイオマテ リアルは菌糸体レザーやキノコレザーと呼ばれる、キノコの菌糸体が絡まり合って できた皮革のようなテキスタイルである。このように生物そのものによって形成・生 成され、巨視的に見た時に素材となるものは Bioassembled Material* と呼ばれ、 菌糸体の他に、生物の細胞(牛皮)や微生物由来の素材がそれに当たる。生物由 来であるため、新たに加工を施さない限り、高い生分解性を担保できる。 バイオマテリアルの文脈で特筆すべきもう一つの点に、バイオテクノロジー、バイ オファブリケーションが研究の場から市民に広がっているという点が挙げられる。 デジタル・ファブリケーションにより、ものづくりが再度市民権を得たが、バイオ・ファ ブリケーションが市民によって可能になれば素材そのものを人々が各々作れること が期待できる。さらに、バイオマテリアルは地産地消の可能性をもつことも重要な ポイントだ。
*Fashion for good, "UNDERSTANDING“BIO” MATERIALINNOVATIONS:a primer for the fashion industry", p6
Phase 1 | テーマ
修繕 × バイオマテリアル ー 新しい領域の可能性
現在、ファッション産業におけるバイオマテリアルの応用先は環境負荷の低い新 製品を作ることに止まっている。本研究では、ファッションの文脈におけるバイオ マテリアルのさらなる可能性として、リペアやリメイクに用いられるのではないか、 と考えた。すでに、 「菌継ぎ」と称し、割れた陶磁器を微生物を用いて修繕する 可能性の探索が始まっている。陶磁器のように何かの拍子に割れて、使えなくなる 製品とは異なり、衣類や靴はその素材や使用方法から、日々、すり減っていくとい う特徴がある。そこで、日常的に服や靴を育て、メンテナンス(Take-care)して いく、という点において、DIY 可能なバイオ素材を用いた修繕に絞ることにした。
修繕
ファッション産 業
本研究が探求する領域
バイオマテリアル 修繕
現状のファッション産業の 課題解決のアプローチ
ファッション産 業 バイオマテリアル
Phase 1 | テーマ | 修繕 | 歴史
修理の歴史
12 歳の少女が ダーニングを練習 した布 / オランダ (1735)
▲
▶ボロと呼ばれる
修繕や防寒のた めに藍染した布 を繰り返し継ぎ足 した着物 / 日本 (1850-1900)
▼ 物資が欠如する第二次世界大戦中に イギリス政府が市民向けに出版した修 理や節約方法についてまとめたパンフ レット (1943)
▼ 修理する権利のためのデモ活動を行 う人々 / ブリュッセル (2018)
左上:https://www.cooperhewitt.org/2016/09/17/darning-sampler/, 右上 :https://collections.vam.ac.uk/item/ O1308272/robe/、下: https://therestartproject.org/news/first-ever-protest/
Phase 1 | テーマ | 修繕 | 類似モデル調査
修繕サービス・類似モデル調査
バイオマテリアルを用いた修繕の在り方を考えるため、修繕にまつわるサービスの 類似モデルの調査を行った。すぐに思い浮かぶのは街や高架下の修理屋さんだろ う。修理するスキルや知識、時間ががないのでプロに頼む(C)ということは身に 覚えがあるだろう。昨今、そのスキルや知識を共有して自身で修理しよう!という 動きも見られる(A)。また、自分で修繕したい人に向けて、修理用の道具やキット、 素材の販売も見られる (B) し、これらを融合したサービスもあった。 次のページ以降の事例紹介では、下図の A,B,C のタグづけをしているので参考に して欲しい。
A: コミュニティで修理の知識やスキルを共有する
C: プロに直してもらう
▲
修理サービスの種類
B: 修繕用ツールを使って直す
Phase 1 | テーマ | 修繕 | 現状 | 類似モデル調査
コミュニティで修理の知識やスキルを共有する
Repair Cafe (A+C)- 修理に詳しいボランティアと一緒に地 域の人々が自身が持ち込んだ製品を直す定期的に行われるイ ベント。2008 年にオランダで始まり、ヨーロッパや北米、ア ジアに広まっている。
Fixing Fashion (A)- Precious Plastic Project で有名なオ ランダ人デザイナー Dave Hakkens がはじめた服のリメイク やリペアを共有するオンラインコミュニティ。
上:https://repaircafe.org/, 下:https://fixing.fashion/
ifixit (A+B+C)- 電子製品の修理サービス、特殊な修理用 工具やキットの販売、そして、修理のためのノウハウやオン ライン・コミュニティを提供するアメリカの会社。
Instructables (A)- 2005 年に MIT Media Lab の学生たち がはじめたあらゆるコトやモノのやり方や作り方を説明し共 有するプラットフォーム。直し方を説明する Repair のカテゴ リーの掲載事例も豊富だ。
上: https://jp.ifixit.com/, 下: https://www.instructables.com/howto/repair/
Phase 1 | テーマ | 修繕 | 類似モデル調査
修繕用ツールを使って直す
remarable (B)- アイロンで服の穴や染 み布地に接着できる金色のパッチ / オランダ /Droog
sugru (A+B)- 当時 RCA の学生だった Jane Ní Dhulchaointigh が発明した成 形可能な修繕のための接着剤。Sugru を用いた修繕方法の共有するプラット フォームもある。
Shoegoo(A+(B)) - アメリカ発の靴修 理のため接着剤。アッパーと底の接着 や振り減った底に塗り足したりと用途は 様々。日本公式サイトには 101 の使用 例がまとめてある。 ユーザーが使用例 をブログにあげて自然発生的にコミュ ニティができている。
上:https://www.droog.com/product/remarkable/ (現在取り下げられている), 中:https://sugru.com/projects-inspiration/fix-repair/how-to-fix-a-broken-charger/, 下: http://eclecticproducts.com/pub/media/catalog/product/cache/ c687aa7517cf01e65c009f6943c2b1e9/s/g/sgll-app1_dressshoe6x6.jpg
プロに直してもらう
靴の修理屋さん。個人経営のお店と写 真のように全国展開するチェーン店もあ る。 (C)
ユーザーが持ち込んだ布製品の裾上げ やリメイクなどを行うサービス。 (C)
修理が必要な靴を郵送で回収し、拠 点で直してからユーザーに郵送で返す サービス。修繕が必要な箇所に応じて 値段が設定されており、ユーザーは希 望のメニューを注文時に選ぶ。 (C)
上:https://www.kutsusenka.com/shop/detail/KAWARAMACHI/, 中:https://www.magicmachine-rs.com/shop/index. jsp?bf=1&fmt=6&shopid=655, 下: https://www.cobblersdirect.com/
Phase 1 | テーマ | 修繕 | 類似モデル調査・その他
類似モデル調査・修繕にまつわる事例
大きな意味で修繕といえる リメイクや、設計段階からそもそも修理しやすいように、 そして、自己修復できるようにしておくことも試みられていたり、リサーチを通して 見つけた、その他の事例も紹介する。
リメイクして価値を高める
Recrafted - Patagonia は修理・リユー スができないと判断した自社の古着を 再構築して新たな衣類として販売。
進化する古着屋森 - 買い付けた古着を 店内にある工房でリメイクして販売して いる。
Remuji - 無印良品の衣類製品を回収 し、藍染してもう一度販売するサービ ス。
上:https://wornwear.patagonia.com/shop/recrafted, 中:https://mori.market/, 下: https://ryohin-keikaku.jp/ news/2021_0812.html
Phase 1 | テーマ | 修繕 | 類似モデル調査・その他
自己修復する
自己修復するコンクリート。小さな割れ 目であれば、コンクリート中のバクテリ アが澱粉と酸素、水に反応して生成す る炭酸カルシウムで自然に埋まる。
自己修復するガラス。破断面を互いに 押し付けているとそれらが融合する性 質が発見された素材。
自己修復する宇宙の建造物のコンセプ ト。菌糸体を用いることを検討している。
上:https://www.instituteofmaking.org.uk/materials-library/material/self-healing-concrete, 中: https://www.t.u-tokyo. ac.jp/shared/press/data/setnws_201712151126279241637212_338950.pdf, 下: https://scitechdaily.com/self-replicating-self-repairing-homes-on-the-moon-and-mars-made-of-fungi/
修理できるように設計する
Fairphone - 修繕やハードウェアのアッ プデートを可能にするモジュール式のス マートフォン。
x packgab - 修繕を前提としてモジュー ルシステムでデザインされた鞄。
IKEA は規格パーツをリストアップし、 ユーザー自身が自社プロダクトを修繕 できるように 修理できるシステムをとっ ている
上:https://www.fairphone.com, 中: https://www.packbags.nl/buildyourownbag, 下: https://www.ikea.com/gb/en/ customer-service/returns-claims/spareparts/
Phase 1 | テーマ | バイオマテリアル
先行事例調査
修繕と同様に、バイオマテリアルを用いた修繕に適切な素材をきめるために先行 事例調査を行った。
Design: Angela Hoitink in collaboration with Karin Vlug (c) Jeroen Dietz
Phase 1 | テーマ | バイオマテリアル | 先行事例調査
キノコレザー
Mylea x Doublet - インドネシアのス タートアップ企業 MYCL が開発した菌 糸体レザー 「Mylea」用いたキノコレザージャケッ ト。東京のファッションブランド 「DOUBLET」が 2022 年春夏コレクションで 発表。
Mylo x Adidas -カリフォルニアのスター トアップ企業 Bolt Thread が開発した 菌糸体レザー「Mylo」を用いたスニー カー。Adidas が 1965 年から生産して いる革製スニーカー Stan Smith の牛 皮部分の代替素材にキノコレザーが使 用されている。
Mylo x Stella McCartney - イギリスの ファッションブランド Stella McCartney は「Mylo」を用いたセットアップを 2021 年に発表。
上:https://www.wwdjapan.com/articles/1238454, 中: https://news.adidas.com/originals/stan-smith-mylo--recreating-an-icon-made-with-underground-roots-of-mushrooms/s/3403a796-7db3-429c-8a3b-6378c2f962b0, 下: https:// www.stellamccartney.com/mc/fr/stellas-world/the-worlds-first-mylo-garments-created-from-vegan-mushroomleather.htmll
Mylo x LuluLemon - カナダのヨガウェ アブランド LuluLemon は「Mylo」を 用いてヨガマットを 2021 年に発表。
Sylvania x Hermes - エルメスは MycoWorks が開発した菌糸体レザー「シ ルバニア」を用いた鞄を 2021 年に発表。
上:https://www.mylo-unleather.com/stories/mylo-meditation-and-yoga-collection-by-lululemon/, 下: https://www. dezeen.com/2021/03/18/hermes-mycelium-leather-victoria-bag-mycoworks/
Phase 1 | テーマ | バイオマテリアル | 先行事例調査
キノコブロック
カリフォルニアのスタートアップ ecovative が開発した菌糸体のフォーム素材 Forager ™
ecovative が開発した菌糸体ブロック。 緩衝材として用いられている
Dutch Design Week では Myco composite はパビリオンの壁面として用い られた
上:https://ecovative.com/foam, 中: https://mushroompackaging.com, 下: https://ddw.nl/en/press/press-archive/410/new-ways-of-building-showcased-at-dutch-design-week
微生物・バクテリア
構造となる” 縦糸” に微生物の生成す るセルロースの膜が張ることで靴のアッ パーを生成するコンセプトのプロジェク ト「Microbial Weaving 」。 イギリスのバイオマテリアル・デザイン スタジオ Modern Synthesis が発表
遺伝子組み換えをしたイースト菌が生成 したコラーゲンをさらに発酵して作られ る革のような素材 Zoa。米国 Modern Meadow が開発
微生物発酵プロセスによって作られる タンパク質素材ブリュード・プロテイン TM を用いた糸から作られたジャケット 「Moon Parka 」。山形のスパイバーが 素材を開発、米国の North Face がデ ザインを担当
上:https://modern-synthesis.com/microbial-weaving/, 中: https://www.modernmeadow.com/, 下: https://spiber.inc/ tnfsp/mp/
Phase 1 | テスクトップリサーチ+アイディア発想
人が服を手放す理由をバイオマテリアルで解決する方法を ブレインストームする
服を捨てる理由(問題)に対して、バイオマテリアルでその問題を解決するアイディ アを出した。具体的に「 人が服を廃棄する理由」(Laitara et al, 2015) に対して、 手放さずに済むようなバイオマテリアルの使い方を考えた。
人が服を手放す理由 ("Grouping and division of clothing disposal reasons" (Laitara et al, 2015) を筆者翻訳・編集 )
服が変化した
趣味趣向に伴う理由
穴が開く (13) シミができた (4) 見た目がボロボロ (3) 色褪せ・変色 (2) 擦り切れる (1) ボタンが取れた (1) ジッパ破損 (1) 色移り (1) 黄ばみ (1) 汗染み (1) 毛玉(ピリング)(1) 変形 (1) 縮み (1) 伸縮性を失った (1) 汗臭い (1)
デザインや形状が好みでない (4) 色が好みでない (2) スタイルが合わない (1) この種の服を着ない (1) 模様が好みでない (1)
状況的理由 似た服を複数持っている (6)
サイズが合わない 小さすぎる (21) 大きすぎる (3) その他フィットしない(胸・肩・丈等 )(7) 機能的不足 素材がよくない (1) 心地悪い (1) 実用的でない (1) しわしわ (1)
Phase 1 | アイディア発想
人が服を手放す理由をバイオマテリアルで解決する方法を ブレインストームする
Phase 1 | 実験 2
バクテリア・セルロースと布地の相性を調べる SCOBY の培養と相性の良い素材や布の構造を調査するために素材や構造の異な る8種の布ををコンブチャ(培養液)に浸して培養した。
実験期間: 2021-04-15 ー 2021-05-15
材料: [ 布サンプル ] 綿・平織 絹・平織 羊毛・平織 麻・平織 ポリエステル・スポーツジャージ ポリエステル・タフタ ナイロン・ちりめん ナイロン・タフタ [ 培養液 ] 水 1.75L ほうじ茶 20g (0.25L の熱湯で抽出) 砂糖 200g りんご酢 100g SCOBY 2袋
秤 ティーポットなどお茶を抽出するための 耐熱容器 手順: 1: 布地の準備 それぞれ長さ 300mm、幅 40mm サイ ズのサンプルを2本ずつ、合計14本準 備した。 一本につき、それぞれ擦り切れ加工 (A) と切れ目加工 (B) を施した。 (A) 擦り切れ加工:40 番手の紙やすり でダメージ加工を施した (B) 十字に切り目を入れた その後、熱湯をかけて煮沸消毒した。
2: 培養準備 コンタミネーションを防ぐためにゴム手 [ その他 ] 袋をした手をこまめにアルコール消毒 発泡スチレンシート (スチボ・食品トレイ) し、マスクを着用した。 250mmx30mm 3: 培養液の準備 消耗品: ティーポット内で熱湯でほうじ茶を抽出 ラップ した後、バットに移して、砂糖を少しず 食器用洗剤 つ溶かしながら入れる。砂糖が溶けた 機材: らお酢も入れる。 容器(A4 サイズのバットを使用) 30°C 以下まで冷やしてから(高温 ケトル で SCOBY を殺してしまうことを防ぐ) スプーン SCOBY を入れる。
Phase 1 | 実験 2 | バクテリア・セルロースと布地の相性を調べる 4: 実験準備 30mm 幅のスチレンシートを準備し、 液体表面に等間隔に配置した。バクテ リアセルロース膜は液体表面に生成す るので、布の加工部分を液体表面当た りに浮かせる必要があったからだ。加 工部 (A) と (B) が液体表面に触れるよ うにスチレンシートに対して垂直に配置 して、端をクリップでバットに留めた。 ラップをかけて、虫の侵入などを防ぐ ため輪ゴムで縁を留めた。 培養: 室温で 30 日間静置した。 収穫: 表面に生成した BCM と布を収穫し、 水道水と食器用洗剤で優しく洗った。 結果: 布サンプルは7種とも液体と触れていた 面に BCM が生成しており、部分 (A) と (B) を覆うように膜ができていた。布サ ンプルと布サンプルの間にも地続きに BCM は生成したので、サンプル同士が 間の BCM によって繋がっている箇所も あった。以下、素材別まとめ。 [ 綿・平織、絹・平織、 ポリエステル・スポーツジャージ ] サンプルが液体に浸かっている部分か ら中空に切り替わる部分が BCM と完 全に接合している。また、この部分は コンブチャの色が液体面から中空部分 に向かってグラデーションのように薄く なっていく。 その他の部分は、布と BCM の2枚が 重なっているが指で剥がそうとすると 剥がれる。
[ 麻・平織、羊毛・平織 ] サンプルが液体に浸かっている部分か ら中空に切り替わる部分が BCM と完 全に接合している。また、この部分は コンブチャの色がグラデーションのよう に、液体面から中空部分に向かって薄 くなっていく。 その他の部分は、布と BCM の2枚が 重なっているが完全に分離している。 [ ポリエステル・メッシュ ] 培養液に浸かっていた部分は、メッシュ を内包するように BCM が生成し、一 体となった。 考察: 培養液を吸い上げている端の部分はう まく一体化しているようだ。乾燥により 培養が留まり、厚くならないからだろう か。 また、布の表面に BCN がつかないの は表面の荒さが関係しているかもしれ ない。麻と羊毛のサンプルは他と比べ ると明らかにゴワゴワしていて、水を弾 くので関係していそう。
収穫・乾燥後 | バクテリアセルロースの膜は水分を多く含むので乾燥するとコンマ数ミリのフィルムのようだ
Phase 1 | 実験 2
菌糸体は成長して布の穴を塞ぐことができるか 菌糸体が成長しながら穴を塞ぐというアイディアの検証と、菌糸体と素材や組織が 異なる既存の布6種との相性の確認を兼ねた実験を行う。
実験期間: 2021-04-19 ー 2021-05-06
材料 [ 布サンプル ] 綿・平織 絹・平織 羊毛・平織 麻・平織 ナイロン・タフタ ポリエステル・スポーツジャージ [ 培養液 ] MYG 培地 [ その他 ] 菌床(万年茸) 手順: 1:布サンプルの準備 ] 6種類の 80mm*80mm サイズのサン プルを2枚ずつ、合計 12 枚準備した。 2枚のサンプルのうち、1枚には 40 番 手の紙やすりでダメージ加工を、1枚 には十字に切れ目を入れた。 2:MYG 培地の準備 付録参照 3:培養の準備 コンタミネーションを防ぐため、クリー ンベンチ内で作業を行った。
レゴブロックで枠を作り菌床を擦り切 れいっぱいに入れた。菌床を平たく均 一にするためである。 その上に布を等間隔に配置した。枠の サイズが足りず、布の端が重なってし まった。 修繕が必要な部分(切れ目や紙やすり で加工した部分)に、MYG 培地をス プレー 6-8 プッシュふりかけた。 それぞれ、プラスチックの袋で包み、 テープで留めた。 培養: 温度 29°C、湿度 70% に設定した恒 温恒湿機内で培養した。 結果と考察: 化繊:菌糸体は化繊の布地を貫通して 成長し、切れ目やダメージ部分を覆っ て新しい膜を作った。修繕するの布の 丈夫な部分を足場にしながら針を使っ て刺繍糸で織りのような新しい面を作 るダーニングのようだ。 自然素材:羊毛以外、劣化が激しい。 菌糸体はやはり分解者なのだと感動し た。修繕ではなく、ダメージ加工をして くれた。
Phase 1 | 実験 2 | 菌糸体は成長して布の穴を塞ぐことができるか | 結果 ポリエステル Polyester
ナイロン Nylon
Phase 1 | 実験 2 | 菌糸体は成長して布の穴を塞ぐことができるか | 結果 絹 Silk
羊毛 Wool
Phase 1 | 実験 2 | 菌糸体は成長して布の穴を塞ぐことができるか | 結果 綿 Cotton
麻 Hemp
Phase 1 | フィールドリサーチ
京都に自生するキノコを探す 2021-07-10 @ 宝ヶ池公園
Phase 2 デスクトップリサーチ アイディア発想 実験・3 新しい靴底のスタイリング 培養型設計 培養 収穫
デスクトップリサーチ シナリオプロトタイピング シナリオ完成 絵本制作 絵本完成
Phase 2 | アイディア発想 | バイオマテリアルを用いた靴の修理方法
アイディア・スケッチ 擦り切れたソールの修理 素材:菌糸体
Phase 2 | アイディア発想 | バイオマテリアルを用いた靴の修理方法
アイディア・スケッチ 破れたアッパーの修理 素材:菌糸体
Phase 2 | アイディア発想 | バイオマテリアルを用いた靴の修理方法
アイディア・スケッチ つぶれたミッドソールの修理 素材:菌糸体
擦り切れたソールの修理 素材:バクテリア・セルロース
Phase 2 | アイディア発想 | バイオマテリアルを用いた靴の修理方法
アイディア・スケッチ 破れたアッパーの修理 素材:バクテリア・セルロース
Phase 2 |新しい靴底のスタイリング
フォトコラージュ
Phase 2 |新しい靴底のスタイリング
CADによる検討
Phase 2 | 絵本製作 | ストーリーボードによる物語の検討
ストーリーボードによるシナリオの検討 物語が伝わるか確認するためにストーリーボードを作成し、ゼミのメンバーや家族 からフィードバックをもらった。テンポ感、具体性、物語の構成についてコメントは 場面数を大幅にカットするなどして最終成果物には反映した。 1. のぶさんは自転車に 乗って山に行きます。
2. 山に入って、旬のキノ コを探します。夏は万 年茸を見つけられたら ラッキーです。たくさん は要りません。一つで 十分です。のぶさんは 万年茸を一つだけ、取 ります。
3. 家に戻って、のぶさ んはキッチンにむかい ます。寒天と砂糖を煮 て、ガラスのシャーレ に注ぎます。少し冷や すと、ゼリーのように固 まります。
4. さっき、山から貰って きた万年茸を綺麗な包 丁で半分に切って、中 から小さな断片を切り とって、シャーレに置い て行きます
5. のこれで準備はオッ ケー。お風呂場に置い て、数日培養します。
6. のぶさんはまた自転 車に乗って、近くのお 米屋さんに行きました。 「ああ、のぶさん!いつ ものね!」そう言って店 主さんが渡してくれたの は大きな袋に入った米 糠です。「いつもありが とう!」のぶさんは、自 転車に大きな米糠をく くりつけて帰りました。
Phase 2 | 絵本製作 | ストーリーボードによる物語の検討
7.「トントン!こんにち は!」誰かが訪ねてきま した。森を守るモリモ リさんです。森の木々た ちの面倒を見ています。 木々がたくさん生えて 窮屈にならないように、 木を切り倒すこともあり ます。木を切った時に 出る、木のクズを持っ てきてくれました。「あ りがとう!」 8. のぶさんはこれから キノコのベッドを作りま す。お米屋さんからも らった米糠と木のくず をよく混ぜて、ガラス の瓶に詰めていきます。 真ん中に親指で穴を作 ります。後で、キノコの タネを入れるためです。
9. 蓋をゆるく閉めて圧 力釜でぐつぐつぐつ!
10. 取り出してよく冷め たら、親指で作った穴 にキノコのタネを入れて 蓋を閉めてお風呂場に 持っていきます。風呂 場はいつもちょっとジメ ジメしているのでキノコ にとって心地よい場所 です。菌糸体が瓶全体 に成長するまで3週間 ほど気長に待ちます。 11.「こんにちは!靴の 修理お願いしたいので すが。」 「こんにちは。どうした の?」
12.「大事な靴の底が擦 り切れてしまって。 」 「そ れなら、私とキノコで 一緒に直してあげる!」
Phase 2 | 絵本製作 | ストーリーボードによる物語の検討
13. そう、のぶさんはキ ノコと一緒にものを治す 「菌治屋さん」なのです。 中でも靴を治すことの 専門家です。
14. ハンナから受け取っ た靴を元に、型を作り ます。「キノコのように 可愛いソールにしてあげ ましょう。」
15. のぶさんのデザイ ンを 3D プリンターに 頼んで作ってもらいま す。今日はあったかい から調子がいいみたい です。少し気分屋のプ リンターなので、冬の 寒い日にはじっくり面倒 をみて、やる気を出して もらわないといけない ことだってあるのです。
16. のぶさんはやること はまだまだあります。次 は受け取った靴をよく 洗って、お日さまによく 乾かしてもらいます。
17. 翌朝、型が出来上 がりました!
18. さぁ、ようやく新し いソールをキノコに作っ てもらうための準備に 取り掛かります。型とパ フェを食べる時の長ー いスプーン、消毒用アル コールのスプレー、菌 床、そして、ビールを 準備します。
Phase 2 | 絵本製作 | ストーリーボードによる物語の検討
19. 道具は全部よく消 毒して、清潔な箱の中 に入れましょう。他の 菌が上から降ってくるこ とを防ぐためです。型 を組み立てて、靴を入 れます。
20. 菌床をスプーンで掻 き出します。まずは靴 の両サイドを丁寧に詰 めて。
21. そして、淵まで擦り 切れいっぱいに菌床を 入れて、ならします。
22. 最後に栄養となる ビールをたっぷりかけ てあげましょう。
23. 袋に入れて、クリッ プで留めればあとは、 菌糸体が好きな暗いと ころに置いてあげます。 あとは菌糸体の様子を 見ながら待ちます。
24. 毎日少しづつ菌糸体 は成長して、、、
Phase 2 | 絵本製作 | ストーリーボードによる物語の検討
25. 3日目にはなんと 真っ白に!でも、中も菌 糸体が伸びて覆い尽く すまで、まだまだじっく り待ちましょう。
26. 2週間が経ちまし た。菌糸体も十分成長 したようです。
27. 型から靴を外しま す。菌糸体が木のクズ を分解しながら、成長 して、新しいソールを 作ってくれました。
28. 外したあとは水分を たっぷり含んでいるの で、スポンジみたいに ふわふわ!また、お日 様に乾かしてもらって、 軽く、固くします。
29. ハンナにキノコが体 をはって直してくれた靴 を渡します。
Phase 2 | 絵本製作 | ストーリーボードによる物語の検討
30. れから、キノコ修 繕キットも渡します。 「こ れはハンナの靴にぴっ たりなソールの型。こ れは菌糸体が暮らす菌 床。
31. これは、ハンナの 手や道具を綺麗にする 消毒用アルコール。靴 を包む袋とクリップも 入っているよ。よく洗っ て、何度でも使ってね。 それと、ダニが嫌いな ひのきオイルの小瓶を 一つ入れておいたわ。 菌床が大好きなダニが やってきてハンナを噛ん でしまってはいけない からね。 32. あとは、菌と一緒 に暮らす心得と、菌治 の方法を書いた説明書 も入っているよ。」
33.「これからは菌と協 力して靴を直しながら と仲良く一緒に暮らして ね。」
Appendix コラボレーション キャラクターデザイン 物語
付録 | コラボレーション | キャラクターデザイン
のぶさん
instagram @natrinanatty
Natrina Gholston
instagram @natrinanatty
付録 | コラボレーション |Stories inspired by the project
モーニングルーティン Mia Huffman
朝6時、Beach boysの”Wouldn’t it be nice”が静寂をさえ切る。 イントロのハープのような音(実は12弦のマンドギターの音だ が)の一音目で私は目を覚ます。隣で寝ている妻は、歌詞に入る 直前のドンというドラムの音で、いつも目を覚ます。妻は、 「大好きな曲だから」と言ってこの曲をアラーム音にした。 3年前ソファで私は読書をし、彼女は爪を切っていた時にこの曲 がラジオで流れてきた。静かに聴いていたのだが、歌詞が簡単 なWe could be married and happyのところだけ、なぜか口ずさん でしまい、彼女は「本当に?」と喜んで私に抱きついた。そして、 爪の短い左手とまだ爪の長い右手で私の顔を挟み、私の額に口 づけをした。 いくら美しい思い出を投影できる曲でも、アラーム音になってしま えばそれは嫌いな音でしかない。私にとってアラーム音とは、そう いうものだ。彼女は起きてすぐは自分がどこにいるのか忘れてい る。ぼんやりと辺りを見回して、思い出したかのように、ぬるくな った携帯電話に手を伸ばし、アラームを止めた。そそくさと冷蔵 庫の方へ足を擦って歩き、ひまわりの花びらを浮かべた水の瓶 を取り出した。彼女は私の携帯電話を取り出し、代わりに彼女 の携帯電話は冷蔵庫にしまった。ベッドから起き始めた私に電 話を手渡し、黄色に濁った水を飲み干した。私の方が早く目を 覚ますのに、彼女の方が動き出すのが早い。彼女はお気に入り のシャツに忘れず水と養分をやり、日の当たるところに置いた。 すでに着替え始めた妻はこちらを見ずに「あなたのワンピース、 今日借りていい?」と朝の掠れ声で聴く。 「え、自分のないの?」 私もそれを着ようと思っていた。 「いや、しばらくは休ませてあげ ないとダメだから」そうだった、昨日妻はキッチンの壁から生え
ていた枝に引っ掛けてしまったと言っていた。服に穴が開いてし まうと、再生するまで少し時間がかかるものだ。枝もそろそろ短く 切らないとな。 私の役割は朝ごはんを用意することだ。ベランダに行き、鶏の卵 を拝借。この鶏はうるさいので、防音室で暮らしている。隣の牛 の乳も拝借。乳搾りをしながら、 「よしよし、いい子だね。この後 お散歩タイムだよ。」牛は興奮してモウと唸った。散歩という言 葉をもう覚えたらしい。ベランダから、振り向いて中を覗くと、妻 は電子レンジから櫛を取り出し、黒い窓に反射する顔を確認し ながら身支度をしている。櫛をしまうと、今度は香水を取り出し、 シュッシュッと髪に香りをまとう。すると、蝶たちが頭に集まり、彼 女の髪飾りとなる。 窓を開けて、部屋に戻ると妻は木のボールにコーヒーを注いでい るところだった。 「今日も綺麗だね」と言って、頭の上の蝶に手を 触れる。まだほのかに温かい牛乳を小さなバケツから注いだ。 玄関を出た後、靴を履き、エレベーターのボタンを押す。ギッギ ッギッと箱が上がってきて、私が乗り込んだあと、またギッギッ ギッと箱が下がった。エレベーターから出ると、ロープを見慣れ ない青年が握っていて、その隣にエレベーターおじさんの村田さ んがいた。 「あ、おはようございます」声をかけると「すまんね、 新入りで」村田さんは青年の頭に手を置き、前に押してお辞儀 させた。 「いえいえ、ちゃんと1階に来れましたから、大丈夫です よ」私も軽く会釈した。さあ、今日もお仕事頑張ろう。私は線路 を歩き始めた。おくぷ
Design for Mending with Biomaterial
バイオマテリアルによる修繕のデザイン 発行日: 2021 年 2 月 17 日 編著・本文デザイン ハフマン恵真 指導教員: 水野大二郎 先生 岡田栄造 先生 津田和俊 先生 協力: 井上智博 緒方胤浩 Danika van Kaathoven Natrina Gholston 畠中美緒 ハフマン美亜 増谷一成 宮本瑞基 宝ヶ池で出会った親切なキノコおじさん 発行所: 岡田水野出版 紙: 岡田ゼミに受け継がれる残り紙たち フォント: 游ゴシック Pr6N 見出しゴ MB1 Std
筑紫オールド明朝 ProR Akkurat Light ©︎2022 Emma Huffman