ゲンロン0
か ん こ うきゃく
てつがく
観光客の哲学
Genron 0 A Philosophy of the Tourist
発行日
近刊紹介
2017(平成29)年4月1日 第1刷発行
ゲンロン5
著者・編集人
東浩紀(編)
あずま ひろ
東浩紀
2017年5月刊行予定
発行人
幽霊的身体 鈴木忠志/大澤真幸/平田オリザ 佐々木敦/ 屋法水/鴻英良 木ノ下裕一/福嶋亮大/渡邉大輔 フレドリック・ジェイムソン 記号 覆
?
舞台 現在、 想像力 表象 関係 「幽霊」 鍵 問 直 、 演劇批評
発行所
株式会社ゲンロン 141-0031
現代社会
身体
東浩紀
新
東京都品川区西五反田1-16-6 イルモンドビル2F TEL: 03-6417-9230 FA X : 03-6417-9231 info@genron.co.jp http://genron.co.jp/
。
F・
人 語 冷戦思想座談会
特別掲載。
& 加藤賢策(LABOR ATORIES) 印刷 株式会社シナノパブリッシングプレス
ゲンロン6
編集
東浩紀(編) 2017年8月刊行予定
乗松亨平監修 貝澤哉/畠山宗明/松下隆志 ドゥーギン/マグーン/カリーニン ウラジーミル・ソローキンほか
資本主義 宗教回帰 冷戦後 30年 、
翻訳・年表・座談会
編集協力 峰尾俊彦 DTP
現代思想。 ・
駆 抜
徳久倫康
北岡誠吾(LABOR ATORIES)
問
共産主義崩壊後
小川智史
富久田朋子
ロシア現代思想
革命100周年
上田洋子 神野鷹彦
徹底分析。
本邦初訳、初紹介満載
特別号。
定価
裏表紙
本書
無断複写(
表示
落丁本・乱丁本
。 ) 著作権法
取 替
©2017 Genron Co., Ltd. Printed in Japan ISBN 978-4-907188-20-7 C0010
例外 。
除 、禁
。
A Philosophy of the Tourist Hiroki Azuma
Part 1 A Philosophy of the Tourist Chapter One: Tourism This study considers the tourist as a philosophical subject. Simultaneously, and rather counterintuitively, it also attempts to overcome the limitations of conventional philosophy by focusing on the difficulty of philosophizing the same tourist. Tourism is a phenomenon of modernity. The father of modern tourism is Thomas Cook, with John Urry and Jonas Larsen locating its characteristics in its popular appeal. This mode of tourism is also linked to the question of cultural enlightenment. However, there has been little philosophical inquiry into what gave rise to tourism in the modern age or the meaning behind its continuation into the present. The critique of tourism by Daniel J. Boorstin from the1960s where he dismissed it as nothing more than a boring pseudo-event still has significant influence in academia today. I aim to initiate discussion on the topic and discuss the cultural meaning of tourism. In the process, I hope readers experience three secondary philosophical discoveries. The first is a presentation of a framework useful for considering globalism in new terms. Researchers in the humanities tend to criticize globalism in generally vague terms, which, I argue, is lazy thinking. The second is a presentation of a framework from which to consider humans and society in terms of non-need (chance or contingency) rather than need (necessity). Tourism is an act of non-need. The origins of tourism are closely tied to the rise of early consumer and popular society within the middle class, the symbols of which were the Parisian passage of the 19th century and the 1851 Great Exhibition of London. I philosophize the importance of the chance gaze of consumers. The third is an attempt to establish a new intellectual discourse located just beyond the border between the serious and the frivolous, or the public and the private. I believe that deconstructing the boundary between these two concepts is necessary when considering the problem of not only tourism, but, for example, the increasing instances of terrorism in the contemporary world.
E02
English Abstracts
Genron 0 A Philosophy of the Tourist Hiroki Azuma
English Abstracts Written by Hiroki Azuma Translated by Christopher Lowy
Part 1 A Philosophy of the Tourist E02
J013
Chapter One: Tourism
E03
J043
Supplement: Secondary Derivative Works
E03
J0 61
Chapter Two: Politics and its Other
E05
J115
Chapter Three: Stratified World
E06
J153
Chapter Four: Toward a Postal Multitude
Part 2 A Philosophy of the Family: Introduction E08
J203
Chapter Five: Family
E08
J227
Chapter Six: The Uncanny
E09
J259
Chapter Seven: Dostoevsky’s Final Subject
* Exx refers to pages of abstracts in English language, while Jxx refers to the original texts in Japanese.
Hiroki Azuma Born in 1971, head of Genron. His works include Otaku: Japan’s Database Animals (University of Minnesota Press) and General Will 2.0 (Vertical) in English.
配信日は毎月第 2 金曜日!
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株式会社ゲンロン 友の会受付係
tel: 03-6417-9230 fax: 03-6417-9231 mail: info@genron.co.jp ゲンロン 0
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参考文献
・
、
・
『観光
浅田彰『構造 力─記号論 超 ・
〔増補改訂版〕』加太宏邦訳、法政大学出版局、2014年
』、勁草書房、1983年
『人間 条件』志水速雄訳、 ・
学芸文庫、1994年
『
全集』第8巻、藤本隆志訳、大修館書店、1976年 主義
上野千鶴子『家父長制 資本制─ 『
他五
大澤真幸『
地平』、岩波現代文庫、2009年
』植田祐次訳、岩波文庫、2005年
由来』、講談社、2007年 ─18世紀
岡田温司『 開沼博『
福島学』、 ・
『
・
観光学』、有斐閣
・ =
亀山郁夫『
問題』生松敬三訳、
文学』上・下、NHK
兄弟」続編 空想
書房、1974年
、2004年
』、光文社新書、2007年
─
柄谷行人『
、2001年
、2015年 ・
父殺
─『「
旅』、岩波新書、2010年
・
岡本伸之編『観光学入門─
』、岩波現代文庫、2010年
─『世界史 構造』、岩波書店、2010年 ・
『実践理性批判』波多野精一・宮本和吉訳、篠田英雄改訳、岩波文庫、1979年
─『永遠平和 ・ ・
『
『
』黒丸尚訳、 宇宙主義─ 不死
「
・
』宇都宮芳明訳、岩波文庫、1985年
・ ・
文庫SF、1986年
生政治」(上田洋子訳 )、 『
』鶴岡雄二訳、
2 慰霊 空間』、
、2016年
、1992年
読解入門─「精神現象学」 読 』上妻精・今野雅方訳、国文社、1987年
『
齋藤純一『公共性』、岩波書店、2000年 ・J・ ・ ・
『
正義
『
限界』菊池理夫訳、勁草書房、2009年
崇高 対象』鈴木晶訳、河出文庫、2015年
『政治的
概念』田中浩・原田武雄訳、未來社、1970年
─『政治神学』田中浩・原田武雄訳、未來社、1971年 ─『独裁─ 近代主権論
起源
階級闘争
』田中浩・原田武雄訳、未來社、1991年
『欲望 現象学─文学 虚偽 真実』古田幸男訳、法政大学出版局、1971年
・ ─『 ・
─二重性 『実践
─『 ─『 ・ 鈴木健『
単一性 』鈴木晶訳、法政大学出版局、1983年
倫理[新版]』山内友三郎・塚崎智監訳、昭和堂、1999年 倫理学』山内友三郎・樫則章監訳、昭和堂、2005年
救
命─世界 貧困 終
『SF 変容─ 社会
文学
今
』児玉聡・石川涼子訳、勁草書房、2014年
詩学 歴史』大橋洋一訳、国文社、1991年
敵─PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論』、勁草書房、2013年
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259
227
203
153
115
061
043
013
002-003
バ ン コ ク 、 二 〇 一 三 年 九 月
長 崎 県 池 島 、 二 〇 一 四 年 三 月
香 港 、 二 〇 一 五 年 三 月
長 崎 市 、 二 〇 一 四 年 三 月
香 港 、 二 〇 一 五 年 三 月
調 布 市 / 狛 江 市 、 二 〇 一 四 年 八 月
大 阪 市 西 成 区 、 二 〇 一 三 年 四 月
北 九 州 市 八 幡 西 区 、 二 〇 一 四 年 一 〇 月
山 口 県 周 南 工 業 地 域 、 二 〇 一 二 年 一 二 月
写 真 | 大 山 顕
ゲンロン 0
302
秘 密 警 察 の 監 視 下 に あ っ た 。 そ の 状 況 は 、 国 民 作 家 と し て 大 衆 の 支 持 を 集 め 、 エ ッ セ イ で 愛
261
そ の よ う な 経 歴 を も つ ド ス ト エ フ ス キ ー の 行 動 は 、 作 家 と し て 成 功 し た あ と も 長 い あ い だ
を 与 え ら れ シ ベ リ ア に 送 ら れ た 。
計 画 に は ほ と ん ど 関 与 し て い な か っ た と 言 わ れ る が 、 い ち ど は 死 刑 判 決 ま で 受 け 、 の ち 恩 赦
︵ ペ ト ラ シ ェ フ ス キ ー 事 件 ︶
に 連 座 し 逮 捕 さ れ て い る 。 彼 自 身 は 、 会 合 に 顔 を 出 し て い た だ け で
し て 華 々 し い デ ビ ュ ー を 飾 る が 、 そ の 三 年 後 に 、 体 制 転 覆 を 企 て た と 言 わ れ る 共 同 謀 議 事 件
ド ス ト エ フ ス キ ー は 、 一 八 四 六 年 に ﹃ 貧 し き 人 々 ﹄ で 文 壇 に 現 れ た 。 二 〇 代 の 若 い 作 家 と
テ ロ リ ス ト ﹂ だ っ た と 言 え る か ら で あ る 。
第 7 章 ドストエフスキーの最後の主体
こ の 作 風 は 作 家 の 人 生 と 関 係 し て い る 。 と い う の も 、 そ も そ も ド ス ト エ フ ス キ ー 自 身 が ﹁ 元
さ れ て い る 作 品 で あ る 。 ド ス ト エ フ ス キ ー は 死 ぬ ま で テ ロ リ ス ト を 描 き 続 け た 。
も ま た 、 も し 続 編 が 書 か れ て い た と し た ら そ こ で は 主 人 公 が テ ロ リ ス ト に な っ て い た と 推 測
ド ス ト エ フ ス キ ー の 最 後 の 長 編 、 一 八 七 九 年 か ら 八 〇 年 に か け て の ﹃ カ ラ マ ー ゾ フ の 兄 弟 ﹄
も も た な い ホ ー ム グ ロ ウ ン ・ テ ロ リ ス ト の 心 理 に か ぎ り な く 近 い 。 の ち に 紹 介 す る よ う に 、
壊 し た い と 願 っ て い る 。 そ の 描 写 は 、 現 代 の ア メ リ カ や ヨ ー ロ ッ パ の 、 組 織 も イ デ オ ロ ギ ー
あ る 。 彼 ら は と に か く 、 不 条 理 な 怒 り を 世 界 に ぶ つ け 、 安 穏 と 平 和 に 生 き る 人 々 の 生 活 を 破
年 の ﹃ 罪 と 罰 ﹄ は 、 老 婆 殺 害 を 正 当 化 す る た め 、 高 尚 な 理 論 を 延 々 と 展 開 す る 若 者 の 物 語 で
し た 男 性 ︵ い ま で い う 負 け 組 の 男 ︶
の 屈 折 し た 呪 詛 を 鬱 々 と 書 き 連 ね た 小 説 で あ る 。 一 八 六 六
リ ス ト の 心 性 に 近 い と こ ろ で 書 か れ て い る 。 一 八 六 四 年 の ﹃ 地 下 室 の 手 記 ﹄ は 、 人 生 に 失 敗
ド ス ト エ フ ス キ ー の 文 学 は 、 直 接 に テ ロ を 主 題 に し て い な い と き に お い て も 、 多 く が テ ロ
に 起 き た 現 実 の 事 件 ︵ ネ チ ャ ー エ フ 事 件 ︶
に 着 想 を 得 て い る こ と が 知 ら れ て い る 。
ン を 中 心 と し た 若 い テ ロ リ ス ト た ち の 逡 巡 と 内 部 抗 争 を 描 い て い る 。 こ の 長 編 は 、 執 筆 直 前
ン は 、 文 学 史 の な か で も っ と も 有 名 な テ ロ リ ス ト か も し れ な い 。 ﹃ 悪 霊 ﹄ は 、 ス タ ヴ ロ ー ギ
一 八 七 一 年 か ら 七 二 年 に か け て の ﹃ 悪 霊 ﹄ が 挙 げ ら れ る 。 主 人 公 の ニ コ ラ イ ・ ス タ ヴ ロ ー ギ
ド ス ト エ フ ス キ ー の 文 学 と テ ロ の 関 係 は 深 い 。 テ ロ を 主 題 に し た 作 品 と し て は 、 ま ず は
て い た 小 説 家 だ っ た 。
代 に お い て ひ と が テ ロ リ ス ト に な ら な い た め に は ど う す れ ば よ い か 、 そ の こ と ば か り を 考 え
は ま さ に テ ロ リ ス ト を 扱 っ て い る 。 ド ス ト エ フ ス キ ー は 、 信 仰 が 失 わ れ 、 正 義 が 失 わ れ た 時
う に 、 観 光 客 の 時 代 と は テ ロ リ ス ト の 時 代 で も あ る 。 そ し て ド ス ト エ フ ス キ ー の 小 説 の 多 く
な ぜ ド ス ト エ フ ス キ ー な の か 。 そ れ は い ま が テ ロ の 時 代 だ か ら で あ る 。 第 一 章 で 記 し た よ
1
て い る 。 そ の よ う な 限 界 を 理 解 し た う え で 、 読 み 進 め ら れ た い 。
が 駆 け 足 で 、 多 く の 穴 を 抱 え て い る 。 ま た 同 時 に 、 本 来 な ら 掘 り 下 げ る べ き 論 点 が 放 置 さ れ
本 稿 は 未 完 と い う よ り も 荒 削 り で あ る 。 議 論 は い ち お う の 結 論 に 達 し て い る 。 し か し 論 述
と に 気 が つ く だ ろ う 。
者 は 、 こ の 一 五 〇 年 前 の 小 説 家 が 歩 ん だ 思 考 が 、 驚 く ほ ど 本 書 の 状 況 認 識 と 呼 応 し て い る こ
︵ 郵 便 的 マ ル チ チ ュ ー ド ︶
の 主 体 に 別 の 角 度 か ら の ア プ ロ ー チ を 試 み る 。 読 み 進 め る な か で 、 読
キ ー の 小 説 を ﹁ 弁 証 法 的 ﹂ に 、 す な わ ち あ る 種 の 思 想 の 自 己 展 開 と し て 読 む こ と で 、 観 光 客
ゲンロン 0
こ の 章 に 収 め た 原 稿 は 、 ド ス ト エ フ ス キ ー に 関 す る も の で あ る 。 こ こ で は 、 ド ス ト エ フ ス
260
第 7 章 ─
ド ス ト エ フ ス キ ー の 最 後 の 主 体
259
第 7 章 ドストエフスキーの最後の主体
あ 学 た マ す る 的 生 ル る 。 で ま チ 、 ﹁ ロ れ チ 否 た ュ マ 定 ン あ ー 神 主 と ド 学 義 の が 的 的 拡 な ﹂ な 大 ぜ な 、 の 生 連 ほ 論 ま 帯 と 理 れ の ん に る 原 ど も の 理 信 無 か に 仰 理 、 依 と が そ 存 言 あ の す っ っ メ る た カ て 。 ニ も も そ ズ の よ れ ム だ い ゆ が と も え う 考 の 、 ま え に ネ く ら 堕 グ 説 れ す リ 明 て る た さ い 危 ち れ た 険 の て 。 を 運 い ひ 抱 動 な と え 論 か こ て は っ と い じ た で た つ し 言 の に 、 え で 文 ま ば 、
155
る 反 作 用 だ と 考 え ら れ て い た 。 そ し て 第 二 に 、 多 様 な 生 を 多 様 な ま ま 共 通 点 な く し て 連 結
た こ と で あ る 。 マ ル チ チ ュ ー ド は 、 第 一 に 、 帝 国 の 内 部 で 、 帝 国 自 身 の 原 理 か ら 生 み だ さ れ
第 4 章 郵便的マルチチュードへ
た だ し 、 そ こ で 忘 れ て は な ら な い の が 、 マ ル チ チ ュ ー ド に は ふ た つ の 致 命 的 な 弱 点 が あ っ
構 想 さ れ て い る 。
な ん ら か の か た ち で 継 承 す る べ き だ と 思 わ れ る 。 本 書 の 観 光 客 論 は 、 そ の よ う な 視 座 の も と
自 己 満 足 に 閉 じ こ も ら ず
│ 広 く 公 衆 に 訴 え た い と 願 う の で あ れ ば 、 ぼ く た ち は そ の 概 念 を
こ れ か ら も な ん ら か の 運 動 が 必 要 だ と 考 え る の で あ れ ば 、 そ し て そ の 必 要 性 を
│ 参 加 者 の
す る と き に 使 う こ と が で き る 、 哲 学 に 残 さ れ た ほ と ん ど 唯 一 の 概 念 で あ る 。 そ れ ゆ え 、 も し
マ ル チ チ ュ ー ド は 、 共 産 主 義 の 凋 落 の あ と 、 反 体 制 の 運 動 の 可 能 性 に 対 し て 肯 定 的 に 言 及
る 。 そ れ は ネ グ リ と ハ ー ト が 提 案 し た マ ル チ チ ュ ー ド の 概 念 に 近 い 。
体 制 の あ い だ を 往 復 し 、 私 的 な 生 の 実 感 を 私 的 な ま ま 公 的 な 政 治 に つ な げ る 存 在 の 名 称 で あ
観 光 客 と は な に か 。 こ こ ま で 述 べ て き た と お り 、 そ れ は ま ず は 、 帝 国 の 体 制 と 国 民 国 家 の
道 で あ る 。
個 人 か ら 国 民 へ 、 そ し て 世 界 市 民 へ と い う 弁 証 法 的 上 昇 と は 別 の し か た で 。 そ れ が 観 光 客 の
は こ の 本 で 、 も う い ち ど 世 界 市 民 へ の 道 を 開 き た い と 考 え て い る 。 た だ し 、 ヘ ー ゲ ル 以 来 の 、
ぼ く は そ の よ う な 世 界 に 生 き た く な い 。 だ か ら こ の 本 を 記 し て い る 。 言 い 換 え れ ば 、 ぼ く
へ の 道 が 閉 ざ さ れ た 世 界 と い う こ と だ 。
グ ロ ー バ リ ズ ム の 層 と ナ シ ョ ナ リ ズ ム の 層 が 共 存 す る 世 界 と は 、 つ ま り は 普 遍 的 な 世 界 市 民
そ の ど ち ら か し か 選 択 肢 が な い 時 代 に 足 を 踏 み 入 れ つ つ あ る 。 帝 国 の 体 制 と 国 民 国 家 の 体 制 、
と し て 生 き る か 、 仲 間 は い て 誇 り も あ る が 結 局 は 国 家 に 仕 え る 国 民 ︵ 人 間 ︶
と し て 生 き る か 、
界 市 民 へ と い う 普 遍 主 義 の プ ロ グ ラ ム を 奪 わ れ た ま ま 、 自 由 だ が 孤 独 な 誇 り な き 個 人 ︵ 動 物 ︶
だ っ た と 言 う こ と が で き る 。 い ず れ に せ よ 、 ぼ く た ち は い ま 、 個 人 か ら 国 民 へ 、 そ し て 世
英 語 圏 で リ ベ ラ リ ズ ム が コ ミ ュ ニ タ リ ア ニ ズ ム と リ バ タ リ ア ニ ズ ム に 分 解 し た の も ま た 予 兆
想 的 に は そ の 予 兆 は あ っ た 。 ポ ス ト モ ダ ニ ズ ム と 呼 ば れ る 理 性 批 判 の 隆 盛 が そ の ひ と つ だ し 、 一 部 第 一 第 一 章 第 七 節 ︶ 。
彼 は ぼ ﹃ く 実 た 践 ち 理 は 性 い 批 ま 判 、 ﹄ ま で さ 、 に ﹁ そ 君 の の 普 意 遍 志 主 の 義 格 の 律 プ が ロ 、 グ い ラ つ ム で が [ も 崩 ★ 1 同 れ ] 時 。 落 に ち 普 る 遍 時 的 代 立 に 法 生 の き 原 て 理 い と し る 。 て 思 妥 岩 波 文 庫 、 一 九 七 九 年 、 七 二 頁
践 理 性 批 判 ﹄ 波 多 野 精 一 ほ か ︵ 訳 第 、
当 す る よ う に 行 為 せ よ ﹂ と い う 有 名 な 命 法 を 書 き 記 し た
と 同 じ よ う に 、 あ ら ゆ る 人 間 を 尊 重 し な け れ ば な ら な い 。 そ の 倫 理 の 起 源 は カ ン ト に 遡 る 。
る 尊 厳 が 尊 重 さ れ る べ き だ と い う 寛 容 の プ ロ グ ラ ム で あ る 。 ぼ く た ち は 、 自 分 を 尊 重 す る の
あ る 。 あ ら ゆ る 人 間 に あ ら ゆ る 権 利 が 等 し く 認 め ら れ る べ き で あ り 、 あ ら ゆ る 人 間 の あ ら ゆ
ぼ く た ち が い ま ﹁ リ ベ ラ リ ズ ム ﹂ と 呼 ん で い る も の 、 そ れ は 要 は 普 遍 主 義 の プ ロ グ ラ ム で
1
★ 1 イ マ ヌ エ ル ・ カ ン ト ﹃ 実
ゲンロン 0
154
第 4 章 ─
郵 便 的 マ ル チ チ ュ ー ド へ
153
第 4 章 郵便的マルチチュードへ
り 抽 象 的 な 議 論 を 行 う 哲 学 書 で あ る 。 デ リ ダ が ﹁ 郵 便 ﹂ と 言 っ た か ら と い っ て 郵 便 局 や 切 手
017
本 書 は あ く ま で も 哲 学 書 で あ る 。 そ れ も 、 こ れ か ら さ き 読 み 進 め れ ば わ か る よ う に 、 か な
も 行 わ な い 。
第 1 章 観光
は あ ま り 関 係 を も た な い 。 観 光 業 の 実 態 の 紹 介 は ま っ た く 行 わ な い し 、 観 光 客 の 心 理 の 分 析
し た が っ て 、 ﹁ 観 光 客 の 哲 学 ﹂ を タ イ ト ル に 掲 げ て い る も の の 、 本 書 は 現 実 の 観 光 産 業 と
あ く ま で も 哲 学 的 な 記 述 、 言 い 換 え れ ば ﹁ 概 念 ﹂ に つ い て の 記 述 に と ど ま っ て い る 。
観 光 客 に 対 し て フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 行 っ て い る わ け で も な い 。 本 書 の 観 光 に つ い て の 記 述 は 、
べ る よ う に 、 自 分 が 経 営 す る 会 社 で 年 に 一 回 、 ウ ク ラ イ ナ の チ ェ ル ノ ブ イ リ へ の ツ ア ー を 実 施 し て は い る ︶
。
族 と 観 光 旅 行 に 出 か け て い る ︶
、 観 光 学 者 で は な い 。 ま た 観 光 業 の 実 践 者 で も な い
誤 解 を 避 け る た め に ひ と つ 注 意 を 記 し て お き た い 。 ぼ く は 観 光 客 で は あ る が
だ し の ち 述
い 休 暇 は 家
観 光 客 か ら 始 ま る 新 し い ︵ 他 者 の ︶
哲 学 を 構 想 す る 。 こ れ が 本 書 の 目 的 で あ る ︵ ︵ 。 た 長
口 か ら ふ た た び 引 き ず り こ み た い と 考 え て い る の だ 。
問 い か け を 入 り 口 に し て 、 ﹁ 他 者 を 大 事 に し ろ ﹂ と い う リ ベ ラ ル の 命 法 の な か に 、 い わ ば 裏
だ と 叫 び 続 け て い る 人 々 に 、 で も あ な た た ち も 観 光 は 好 き で し ょ う と 問 い か け 、 そ し て そ の
は こ こ で 、 他 者 と つ き あ う の は 疲 れ た 、 仲 間 だ け で い い 、 他 者 を 大 事 に し ろ な ん て う ん ざ り
し て そ れ は ぼ く な り の 戦 略 で も あ る 。 他 者 の か わ り に 観 光 客 と い う 言 葉 を 使 う こ と で 、 ぼ く
し か し 、 そ れ で も 、 ぼ く が 考 え 続 け て い る の は 、 結 局 の と こ ろ 他 者 の 問 題 な の で あ る 。 そ
組 み こ ま れ 、 少 な か ら ぬ 読 者 を 失 っ て し ま う 。
に 塗 れ て い る か ら だ 。 他 者 と 声 に 出 し た 瞬 間 に 、 本 書 の 議 論 は 特 定 の イ デ オ ロ ギ ー の な か に
ぼ く は こ こ か ら さ き 、 ほ と ん ど ﹁ 他 者 ﹂ と い う 言 葉 を 使 わ な い 。 こ の 言 葉 は あ ま り に も 手 垢
し た が っ て ぼ く は 本 書 で は 、 他 者 論 で は な く 、 あ え て ﹁ 観 光 客 ﹂ 論 を 展 開 し た い と 考 え る 。
ラ ル の 主 張 は 、 も は や だ れ に も 届 か な い 。
れ 著 ス す る 書 ト る 。 に ︶ の つ で が い あ ロ て る ー は 。 テ の ロ ィ ち ー ︵ プ 第 テ ラ 四 ィ グ 章 の マ で こ テ 触 の ィ
る 。 ま ず は 自 分 と 自 分 の 国 の こ と を 考 え た い と 訴 え 始 め て い る 。 他 者 こ そ 大 事 だ と い う リ ベ 面 に よ っ て 使 い 分 け よ う と 主 張
ん て 深 め て も 意 味 が な い の で 局
と 思 う 。 二 〇 一 七 年 の い ま 、 人 々 は 世 界 中 で ﹁ 他 者 と つ き あ う の は 疲 れ た ﹂ と 叫 び 始 め て い で あ り 、 そ も そ も 他 者 の 定 義 な
る の が デ リ ダ ︵ ポ ス ト モ ダ ニ ス ト ︶
﹁ ア メ リ カ 第 一 ﹂ を 掲 げ る ド ナ ル ド ・ ト ラ ン プ が 大 統 領 に な り 、 世 界 中 で テ ロ が 相 次 ぎ 、 日
本 で は ヘ イ ト ス ピ ー チ が 吹 き 荒 れ る 、 そ の よ う な 時 代 に 書 か れ た こ と は 覚 え て お い て ほ し い な い 存 在 の こ と な の だ と 主 張 す
り 、 他 者 と は む し ろ わ か り あ え
ハ ー バ ー マ ス ︵ 近 代 主 義 者 ︶
で あ
二 〇 一 七 年 に か け て の 時 期 に 、 す な わ ち 、 イ ギ リ ス が E U か ら の 離 脱 を 決 定 し 、 ア メ リ カ で で わ か り あ え る と 主 張 す る の が
ぱ に 要 約 す れ ば 、 他 者 と は 理 性
て は あ ま り 語 ら な い 。 け れ ど も 、 も し 可 能 で あ れ ば 、 読 者 に は 、 本 書 が 、 二 〇 一 六 年 か ら 者 ﹂ 観 の 差 異 を き わ め て お お ざ っ
法 に 、 だ れ も が 耳 を 貸 さ な く な り 始 め て い る 。 ぼ く は 本 書 で は 、 具 体 的 な 政 治 状 況 に つ い も さ し つ か え な い 。 三 者 の ﹁ 他
ス と デ リ ダ の 対 立 と 置 き 換 え て
け れ ど も い ま 、 そ の 状 況 は 急 速 に 変 わ り つ つ あ る 。 ﹁ 他 者 を 大 事 に し ろ ﹂ と い う 単 純 な 命 の 対 立 だ が 、 そ れ は ハ ー バ ー マ
お も に ハ ー バ ー マ ス と フ ー コ ー
る か ぎ り で の ︶
基 本 原 理 だ っ た の で あ る 。
り 考 え て い て は だ め だ
│ そ れ が 、 つ い 最 近 ま で の 、 人 類 社 会 の ︵ 少 な く と も 公 的 な 場 で 語 ら れ
ロ ー テ ィ が 話 題 に し て い る の は
店 、 二 〇 〇 〇 年 を 参 照 。 同 書 で
連 帯 ﹄ 齋 藤 純 一 ほ か 訳 、 岩 波 書
な 死 者 を 生 み だ し た 人 類 が た ど り つ い た 、 最 低 限 の 共 通 の 倫 理 だ っ た 。 自 分 の 国 の こ と ば か ロ ー テ ィ ﹃ 偶 然 性 ・ ア イ ロ ニ ー ・
試 み に つ い て は 、 リ チ ャ ー ド ・
る 。 そ れ は お そ ら く は 、 二 〇 世 紀 の 前 半 、 ナ シ ョ ナ リ ズ ム の 高 揚 の 果 て に 相 次 ぐ 大 戦 で 膨 大 学 の 批 判 を 超 克 す る ロ ー テ ィ の
を 尊 重 す る べ き だ と い う 点 で は 、 あ る て い ど 影 響 力 の あ る 思 想 家 は み な 一 致 し て い た と 言 え ハ ー バ ー マ ス に よ る フ ラ ン ス 哲
を 参 照 。 原 書 出 版 は 一 九 八 五 年 。
た り も し た
う の 他 者 を 見 え な く す る と ア メ リ カ 人 の リ チ ャ ー ド ・ ロ ー テ ィ が 言 っ て み た り と 、 議 論 が あ っ
[ ★ 2 ]
。 し か し そ れ で も 、 ぼ く た ち は み な 他 者 を 尊 重 す る べ き だ 、 共 同 体 の 外 部 訳 、 岩 波 書 店 、 一 九 九 九 年 所 収
デ ィ ス ク ル ス Ⅰ ﹄ 三 島 憲 一 ほ か
性 哲 学 の 凌 駕 ﹂ 、 ﹃ 近 代 の 哲 学 的
ド イ ツ 人 の ユ ル ゲ ン ・ ハ ー バ ー マ ス が 言 っ て み た り 、 あ る い は そ の よ う な 論 争 こ そ が ほ ん と ハ ー バ マ ス ﹁ 時 間 化 さ れ た 根 源
ダ 批 判 に つ い て は 、 ユ ル ゲ ン ・
ゲンロン 0
え か た に も い ろ い ろ 差 異 が あ り 、 フ ラ ン ス 人 の デ リ ダ が 考 え る 他 者 の 概 念 は 抽 象 的 す ぎ る と ★ 2 ハ ー バ ー マ ス に よ る デ リ
016
事 に し ろ ﹂ と 訴 え 続 け て き た と い う こ と で あ る 。 む ろ ん 、 細 か く 見 れ ば 、 そ の ﹁ 他 者 ﹂ の 捉
015
ベ ラ ル 知 識 人 ﹂ に は ひ と つ の 共 通 の 特 徴 が あ る 。 そ れ は み な 、 手 を 替 え 品 を 替 え ﹁ 他 者 を 大
に 挙 が っ て い る ひ と も 挙 が っ て い な い ひ と も 含 め 、 こ の 七 〇 年 ほ ど の 、 人 文 系 の い わ ゆ る ﹁ リ
第 1 章 観光
ぼ く た ち は こ れ か ら 本 書 で 、 さ ま ざ ま な 哲 学 者 や 思 想 家 の 名 前 に 出 会 う こ と に な る 。 そ こ
を 理 論 的 に 基 礎 づ け る べ く 書 か れ た 本 で あ る 。
異 な る 。 そ し て 本 書 は 、 ま さ に そ の ニ ュ ア ン ス の 差 異 が い ま 重 要 だ と 考 え 、 そ の 差 異 の 意 味
者 が 大 事 だ ﹂ と 主 張 す る の と ﹁ 観 光 客 が 大 事 だ ﹂ と 主 張 す る の と で は 、 ニ ュ ア ン ス は 大 き く
書 が は じ め て で あ る 。 観 光 客 論 と 他 者 論 は 、 本 質 は 同 じ か も し れ な い 。 し か し そ れ で も 、 ﹁ 他
ま う こ と だ っ た か ら で あ る 。 そ の よ う な 試 み は 、 ぼ く の 知 る か ぎ り 、 ﹃ 弱 い つ な が り ﹄ と 本
語 ら れ て い た 概 念 を 、 ﹁ 観 光 ﹂ と い う じ つ に 商 業 的 で 即 物 的 で 世 俗 的 な 言 葉 に 結 び つ け て し
や ﹁ 遊 牧 民 ﹂ と い っ た 、 左 翼 的 で 文 学 的 で 政 治 的 で 、 そ し て ど こ か ロ マ ン テ ィ ッ ク な 言 葉 で
ル の ほ う に あ る 。 と い う の も 、 ぼ く が そ こ で 企 て た こ と は 、 ひ と こ と で 言 え ば 、 い ま ま で ﹁ 他 者 ﹂
い ず れ に せ よ 、 ﹃ 弱 い つ な が り ﹄ の 観 光 客 論 の 本 質 は 、 あ る て い ど そ の 非 本 質 的 な ス タ イ
時 代 に 研 究 し て い た フ ラ ン ス の 哲 学 者 、 ジ ャ ッ ク ・ デ リ ダ の 主 張 だ っ た 。
の あ い だ の そ の 決 定 不 可 能 性 こ そ 哲 学 の ﹁ 本 質 ﹂ だ と も 言 え る 。 そ れ は ま さ に 、 ぼ く が 大 学
だ と い う こ の ね じ れ た 関 係 は 、 じ つ は 哲 学 で は む か し か ら 問 題 と さ れ て い て 、 本 質 と 非 本 質
る の か も し れ な い 。 さ っ そ く 脱 線 し て 付 け 加 え れ ば 、 本 質 こ そ が 非 本 質 で 非 本 質 こ そ が 本 質
新 し く な い テ ー マ を 新 し い ス タ イ ル で 語 っ た と こ ろ 、 つ ま り は 本 質 で は な い 意 匠 の ほ う に あ
な い の が 哲 学 と い う も の で あ る 。 む し ろ 、 哲 学 書 と し て の ﹃ 弱 い つ な が り ﹄ の 本 質 は 、 そ の
と は い え 、 本 質 が ど う こ う と 言 い だ し た ら 、 古 代 ギ リ シ ア 以 来 、 新 し い も の な ど い っ さ い
そ も そ も そ れ 以 前 に 、 ぼ く が 強 い 影 響 を 受 け た 批 評 家 の 柄 谷 行 人 が 、 似 た よ う な こ と を 言 っ
て 作 ら れ て い る 。
男 の 有 名 な ﹁ 中 心
じ た は ず で あ る 。 実 周 際 縁 、 ﹂ ﹃ 図 弱 式 い を つ は な じ が め り 、 ﹄ 思 で 想 は 史 触 や れ 批 て 評 い 史 な の い さ が ま 、 ざ ぼ ま く な の 議 観 論 光 か 客 ら 論 示 は 唆 、 を 山 受 口 け 昌
−
る 者 て 。 い ﹃ ﹂ が る 弱 必 。 い あ つ 要 な る な の 時 が だ 期 り と の ﹄ 彼 は 説 き は 、 続 、 そ け ﹁ の て 共 点 同 で い 体 は た ﹂ 。 本 ぼ は 質 く 閉 的 じ に の 議 て 新 論 い し は る い 、 か も ら の 柄 谷 だ で の め は そ だ な の 、 ﹁ い 外 。 議 論 部 を ﹂ 更 か 新 ら す や る っ も て の く で る も ﹁ あ 他
け れ ど も 、 思 想 や 批 評 を 少 し で も か じ っ た 読 者 で あ れ ば 、 そ ん な 話 は あ り ふ れ て い る と 感
際 、 出 版 社 は そ の よ う に 広 告 を 打 っ て も い た 。
在 様 式 と い う 言 い か た に 、 人 生 論 や 自 己 啓 発 と し て 解 釈 で き る 余 地 が あ っ た た め だ ろ う 。 実
こ の 議 論 は 予 想 外 の 反 響 を 呼 ん だ 。 観 光 客 と い う ﹁ ウ チ ﹂ で も ﹁ ソ ト ﹂ で も な い 第 三 の 存
切 だ と い う 主 張 で あ る 。
的 に は 特 定 の 共 同 体 に 属 し つ つ 、 と き お り 別 の 共 同 体 も 訪 れ る ﹁ 観 光 客 ﹂ 的 な あ り か た が 大
の 共 同 体 に の み 属 す る ﹁ 村 人 ﹂ で も な く 、 ど の 共 同 体 に も 属 さ な い ﹁ 旅 人 ﹂ で も な く 、 基 本
村 人 、 旅 人 、 観 光 客 と い う 三 分 法 を 提 案 し て い る 。 人 間 が 豊 か に 生 き て い く た め に は 、 特 定 幻 冬 舎 、 二 〇 一 四 年 。
ぼ く は 二 〇 一 四 年 に ﹃ 弱 い つ な が り ﹄ と い う 小 さ な 本 を 刊 行 し た
1
[ ★ 1 ]
。 そ こ で は ぼ く は 、 ★ 1 東 浩 紀 ﹃ 弱 い つ な が り ﹄ 、
ゲンロン 0
014
第 1 章 ─
観 光
013
第 1 章 観光
第 1 部
─
観 光 客 の 哲 学
011
はじめに
ン ロ ン ﹄ の 創 刊 に あ た り 、 特 別 に ぼ く ひ と り の 語 り 下 ろ し の 準 備 号 を 刊 行 す る こ と に し た 。
007
て し ま っ て い た の で 、 同 じ 価 値 の 書 籍 か 雑 誌 を 送 り 届 け る 必 要 が あ っ た 。 そ こ で ぼ く は 、 ﹃ ゲ
と こ ろ が 、 同 書 の 刊 行 は さ ま ざ ま な 事 情 で 不 可 能 に な っ た 。 と は い え 、 す で に 会 費 は 集 め
はじめに
な か っ た 。
複 数 の 執 筆 者 に よ る ム ッ ク と し て 企 画 さ れ て い て 、 こ の よ う な 単 著 に な る と は 考 え ら れ て い
年 に 刊 行 さ れ 、 弊 社 友 の 会 の 会 員 ︵ 第 四 期 ︶
の み な さ ん に 届 け ら れ る は ず だ っ た 。 そ の 時 点 で は 、
本 書 の 成 立 の 経 緯 は 複 雑 で あ る 。 本 書 は も と も と ﹃ 思 想 地 図 β ﹄ の 5 号 と し て 、 二 〇 一 三
こ と の 自 由 を 感 じ て い る 。
ば な い と 思 っ て い た 。 そ の 迷 い が 消 え た 。 本 書 の 執 筆 を 終 え 、 ぼ く は い ま 、 か つ て な く 書 く
と 、 批 評 家 で あ る こ と に 負 い 目 を 感 じ て い た 。 批 評 な ん て 書 い て も だ れ も 得 を し な い し 、 喜
評 ﹂ の ス タ イ ル を 、 素 直 に な ん の 屈 託 も な く 肯 定 す る 心 持 ち に な っ た 。 ぼ く は い ま ま で ず っ
ぼ く は 本 書 を 書 き 進 め る な か で 、 こ の 二 〇 年 近 い 長 い 年 月 の な か で は じ め て 、 自 分 の ﹁ 批
き る か も し れ な い 。
こ と が で き る は ず で あ る 。 ﹃ ク ォ ン タ ム ・ フ ァ ミ リ ー ズ ﹄ の 続 編 と し て す ら 、 読 む こ と が で
の 続 編 と し て も 、 ﹃ 一 般 意 志 2 ・ 0 ﹄ の 続 編 と し て も 、 ﹃ 弱 い つ な が り ﹄ の 続 編 と し て も 読 む
構 成 さ れ て い る 。 本 書 は 、 ﹃ 存 在 論 的 、 郵 便 的 ﹄ の 続 編 と し て も 、 ﹃ 動 物 化 す る ポ ス ト モ ダ ン ﹄
の 状 況 を 変 え る た め に も 書 か れ た 。 だ か ら 本 書 は い ま ま で の 仕 事 を た が い に 接 続 す る よ う に
事 を 行 っ て き た 。 そ れ ゆ え 、 受 容 も 多 様 で 、 不 毛 な 誤 解 に 曝 さ れ る こ と も あ っ た 。 本 書 は そ
ぼ く は こ の 四 半 世 紀 、 哲 学 や 社 会 分 析 か ら サ ブ カ ル 評 論 や 小 説 執 筆 ま で 、 多 岐 に わ た る 仕
ま れ て い る 。
必 要 と さ れ る 哲 学 は ど の よ う な も の か を 考 え て き た 。 本 書 に は そ の 現 時 点 で の 結 論 が 書 き こ
た 。 と り わ け 、 二 一 世 紀 の こ の ネ ッ ト と テ ロ と ヘ イ ト に 覆 わ れ た 世 界 に お い て 、 ほ ん と う に
ン に つ い て の 評 論 だ っ た 。 そ れ 以 来 、 四 半 世 紀 に わ た り 、 ぼ く は さ ま ざ ま な こ と を 考 え て き
一 九 九 三 年 に 出 版 さ れ た 。 そ れ は 、 ソ 連 の 反 体 制 作 家 、 ア レ ク サ ン ド ル ・ ソ ル ジ ェ ニ ー ツ ィ
本 書 は 哲 学 書 で あ る 。 ぼ く は 批 評 家 だ が 、 哲 学 に つ い て 考 え て い る 。 ぼ く の 最 初 の 文 章 は
起 こ し た 。
く は 、 こ の 書 物 の 最 初 か ら 最 後 ま で 、 広 告 や 編 集 後 記 を 除 き す べ て の 文 章 を 自 分 自 身 で 書 き
え る か は 、 流 通 上 の 形 式 の 問 題 で あ り 、 あ ま り 本 質 的 な こ と で は な い 。 と に も か く に も 、 ぼ
か ら 一 七 年 に か け て の 冬 に 書 き 下 ろ し た 哲 学 書 で も あ る 。 本 書 を 雑 誌 と 捉 え る か 単 行 本 と 捉
想 地 図 β ﹄ の 三 年 半 の 空 白 を 挟 ん で の 終 刊 号 ︵ 5 号 ︶
で あ り 、 ま た ぼ く 東 浩 紀 が 二 〇 一 六 年
時 期 遅 れ の 創 刊 準 備 号 ︵ 0 号 ︶
で あ り 、 同 じ く ゲ ン ロ ン が 二 〇 一 一 年 一 月 に 創 刊 し た ム ッ ク ﹃ 思
本 書 あ る い は 本 誌 は 、 弊 社 ゲ ン ロ ン が 二 〇 一 五 年 一 二 月 に 創 刊 し た 批 評 誌 ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ の
は じ め に
ゲンロン 0
006
259
227
203
201
写 真 ─ 大 山 顕
303
表 紙 ・ 扉 イ メ ー ジ ─ 梅 沢 和 木
313
︶
English Abstracts
LABORATORIES
︵
E01
ア ー ト デ ィ レ ク シ ョ ン & デ ザ イ ン ─ 加 藤 賢 策
編 集 後 記 ・ 支 援 者 一 覧
参 考 文 献
第 7 章
第 6 章
第 5 章
第 2 部
ド ス ト エ フ ス キ ー の 最 後 の 主 体
不 気 味 な も の
家 族
家 族 の 哲 学 ︵ 序 論 ︶
政 治 と そ の 外 部
第 1 部
二 次 創 作
観 光
観 光 客 の 哲 学
0 は じ め に
観 光 客 の 哲 学 目 次
2017 Apr il
二 層 構 造
付 論
第 1 章
006
郵 便 的 マ ル チ チ ュ ー ド へ
011
061
第 2 章
013
115
第 3 章
043
153
第 4 章
東 浩 紀 著
観 光 客 の 哲 学
003
はじめに
ゲンロン 0
002
0 2 017 Apr il
001
はじめに
genron triannua l Edited by Hiroki Azuma
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