『ゲンロン5 幽霊的身体』

Page 1


Genron 5 Ghostly Body English Translations and Abstracts Full Text E02

J0 0 6

E05

J014

Hiroki Azuma

Criticism, or Seeing Ghosts Translated by Ross Henderson

Hiroki Azuma

Three Days Devoted to Becoming a Ghost Translated by John Person

Abstracts

Translated by Michael Chan and John Person Proofreading assisted by Kako Kishimoto

Ghostly Body Toga Seminar

E 07

J020

Jo Kanamori + Masachi Osawa + Atsushi Sasaki + Kazuki Umezawa + Hiroki Azuma

From the Symbolic to the Tactile

E08

J042

Tadashi Suzuki

E09

J0 60

Masachi Osawa + Atsushi Sasaki + Hiroki Azuma

E10

J086

Norimizu Ameya + Atsushi Sasaki

E11

J108

E12

J130

E13

J147

E14

J160

Humans Think from their Feet The Origin of Theater and the Birth of Ghosts Theater in Nippon

Theater is “Half and Half” Hidenaga Otori

Empty Bodies, Dead Bodies, and the “Outside”: Towards an Ideal of 21st Century Dance

Yuichi Kinoshita

Ghosts of Kabuki Ryota Fukushima

Demon, Sublime, Body:

Akinari Ueda and the 18th Century Paradigm Daisuke Watanabe

Ghosts that Possess the “Face”: Visual Culture and the Ghostly

E15

J223

Yohei Kurose

On Other Surfaces│4│

Criticism of Two Theories of Japanese Culture

E16

J240

Kenro Hayamizu

On Independent States│4│

Fake News and Subversion of the State: Genealogy of the Republic of Hokkaido

E17

Contributors and Translators

* Exx refers to pages of translations or abstracts in English language, while Jxx refers to the original texts in Japanese.


ゲンロン5

ゆうれいてきしんたい

幽霊的身体

Genron 5 Ghostly Body

発行日

次号予告

ゲンロン6

2017(平成29)年6月8日

第1刷発行

2017(平成29)年6月16日

第2刷発行

東浩紀(編)

編集人

2017年9月刊行予定

東浩紀

あずま ひろ

ロシア現代思想I

発行人

乗松亨平監修

東浩紀

貝澤哉/松下隆志 ドゥーギン/マグーン/ラリュエル

発行所

ゲンロンSF新人賞受賞作

株式会社ゲンロン 141-0031

ゲンロン7

東京都品川区西五反田1-16-6

東浩紀(編)

TEL: 03-6417-9230 FA X : 03-6417-9231

2018年1月刊行予定

info@genron.co.jp http://genron.co.jp/

イルモンドビル2F

ロシア現代思想II

& 加藤賢策(LABOR ATORIES)

乗松亨平監修 畠山宗明/平松潤奈/八木君人 エトキント/カリーニン

印刷

革命100周年 問

編集

株式会社シナノパブリッシングプレス

共産主義崩壊後

上田洋子   小川智史

現代思想。

神野鷹彦   徳久倫康

再評価

富久田朋子

隆盛 DTP

資本主義 宗教回帰 問

翻訳・年表・座談会

北岡誠吾(LABOR ATORIES)

徹底分析。

充実 2号連続特集。

定価

裏表紙

本書

無断複写(

表示

落丁本・乱丁本

。 ) 著作権法

取 替

©2017 Genron Co., Ltd. Printed in Japan ISBN 978-4-907188-21-4

例外 。

除 、禁


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https://genron-tomonokai.com/ お問い合わせ

株式会社ゲンロン 友の会受付係

tel: 03-6417-9230 fax: 03-6417-9231 mail: info@genron.co.jp ゲンロン 5

302


寄稿者一覧 Noism

は や み ず ・ け ん ろ う

新 聞 出 版 ︶ 、 共 著 に ﹃ 野 田 秀 樹 赤 鬼 の 挑 戦 ﹄ ︵ 青 土 社 ︶ な ど 。

か な も り ・ じ ょ う

乗 松 亨 平 |

ノ フ / ジ ョ ナ サ ン ・ フ ラ ッ ト リ ー / ピ ー タ ー ・ フ ィ ッ

ス カ ヤ / オ レ グ ・ ア ロ ン ソ ン / ア ン ド レ イ ・ パ ラ モ

ン / ウ ラ ジ ー ミ ル ・ ミ ロ ノ フ / エ レ ー ナ ・ ペ ト ロ フ

ヴ ァ レ リ ー ・ ポ ド ロ ガ / フ レ ド リ ッ ク ・ ジ ェ イ ム ソ

の り ま つ ・ き ょ う へ い

朝 日 ︵ 幻 冬 舎 新 書 ︶ 、 ﹃ 文 部 省 の 研 究 ﹄ ︵ 文 春 新 書 ︶ な ど 。

八 四 年 生 。 文 筆 家 、 近 現 代 史 研 究 者 。 著 書 に ﹃ 大 本 営 発 表 ﹄

辻 田 真 佐 憲 |

ロ ン 0 観 光 客 の 哲 学 ﹄ な ど 。

意 志 2 ・ 0 ﹄ ︵ 講 談 社 ︶ 、 ﹃ 弱 い つ な が り ﹄ ︵ 幻 冬 舎 ︶ 、 ﹃ ゲ ン

七 一 年 生 。 思 想 家 、 作 家 。 ゲ ン ロ ン 代 表 。 著 書 に ﹃ 一 般

り ま し て 。 ﹄ な ど 。

つ じ た ・ ま さ の り

東 浩 紀 | あ ず ま ・ ひ ろ き

大 澤 真 幸 |

業 。 C A S H I お よ び カ オ ス * ラ ウ ン ジ に 所 属 。

お お さ わ ・ ま さ ち

出 作 品 に ﹃ 非 実 在 少 女 の る て ち ゃ ん ﹄ 、 ﹃ ツ レ が ウ ヨ に な

八 三 年 生 。 劇 作 家 、 演 出 家 。 劇 団 ﹁ 笑 の 内 閣 ﹂ 主 宰 。 演

八 五 年 生 。 美 術 家 。 武 蔵 野 美 術 大 学 造 形 学 部 映 像 学 科 卒

高 間 響 | た か ま ・ ひ び き

な 訳 七 上 ど 書 四 田 。 に 年 洋 ク 生 子 ル 。 ジ ロ | ジ シ う ャ ア え ノ 文 だ フ 学 ・ ス 者 よ キ 、 う イ 博 こ ﹃ 士 瞳 ︵ 孔 文 の 学 中 ︶ 。 ﹄ ︵ ゲ 共 ン 訳 ロ 、 松 ン 籟 所 社 属 ︶ 。

︵ 東 邦 出 版 ︶ 監 修 者 。

梅 沢 和 木 | う め ざ わ ・ か ず き

士 ︵ 情 報 学 ︶ 。 ﹃

産 業 遺 産 の 光 と 影 ﹄

︵ 岩 波 新 書 ︶ な ど 。

六 八 年 生 。 観 光 学 者 。 追 手 門 学 院 大 学 経 営 学 部 教 授 。 博

立 書 房 ︶ 、 ﹃ 劇 的 言 語 ﹄ ︵ 共 著 、 朝 日 文 庫 ︶ 、 ﹃ 演 劇 と は 何 か ﹄

よ り 富 山 県 利 賀 村 を 拠 点 に 活 動 。 著 書 に ﹃ 内 角 の 和 ﹄ ︵ 而

三 九 年 生 。 演 出 家 。 六 六 年 に 劇 団 S C O T 創 立 。 七 六 年

鈴 木 忠 志 |

ジ の 進 行 形 ﹄ ︵ 人 文 書 院 ︶ な ど 。

学 部 助 教 、 日 本 大 学 藝 術 学 部 非 常 勤 講 師 。 著 書 に ﹃ イ メ ー

八 二 年 生 。 映 画 史 研 究 者 、 批 評 家 。 跡 見 学 園 女 子 大 学 文

す ず き ・ た だ し

大 輔 | わ た な べ ・ だ い す け

︵ 青 土 社 、 ﹁ 前 田 塁 ﹂ 名 義 ︶ な ど 。

井 出 明 | い で ・ あ き ら

ン ロ ン 佐 々 木 敦 批 評 再 生 塾 ﹂ 主 任 講 師 。 著 書 に ﹃ ニ ッ

ポ ン の 思 想 ﹄ ︵ 講 談 社 現 代 新 書 ︶ な ど 。

︶ が あ る 。

大 学 文 学 学 術 院 准 教 授 。 著 書 に ﹃ 紙 の 本 が 亡 び る と き ? ﹄

七 一 年 生 。 文 芸 批 評 家 、 ﹃ 早 稲 田 文 学 ﹄ 編 集 委 員 、 早 稲 田

六 四 年 生 。 批 評 家 、 音 楽 レ ー ベ ル H E A D Z 主 宰 。 ﹁ ゲ

佐 々 木 敦 |

︵ タ イ フ ー ン ・ ブ ッ ク ス ・ ジ ャ パ ン ︶ 、 ﹃ パ ン ダ ﹄ ﹄ ︵ ︵ 東 京 外

国 語 大 学 出 版 会 ︶ な ど 。 英 訳 に ﹃

市 川 真 人 | い ち か わ ・ ま こ と

社 会 の 情 念 ﹄ ︵ N H K 出 版 ︶ 。

さ さ き ・ あ つ し

な ど 活 動 領 域 は 多 岐 に わ た る 。 邦 訳 に ﹃ 鏡 の 中 を 数 え る ﹄

七 三 年 生 。 作 家 、 グ ラ フ ィ ッ ク ア ー テ ィ ス ト 、 映 画 監 督

力 を ﹄ な ど の 韓 国 語 版 翻 訳 を 手 掛 け る 。

い つ な が り ﹄ 、 佐 々 木 中 ﹃ 夜 戦 と 永 遠 ﹄ ﹃ こ の 熾 烈 な る 無

七 四 年 生 。 韓 国 語 翻 訳 者 。 東 浩 紀 ﹃ 一 般 意 志 2 ・ 0 ﹄ ﹃ 弱

安 天 |

ト ・ グ ル ー プ ﹁ カ オ ス * ラ ウ ン ジ ﹂ 代 表 。 著 書 に ﹃ 情 報

術 大 学 大 学 院 美 術 研 究 科 博 士 後 期 課 程 修 了 。 ア ー テ ィ ス

八 三 年 生 。 美 術 家 、 美 術 批 評 家 、 キ ュ レ ー タ ー 。 東 京 藝

黒 瀬 陽 平 |

章 ﹄ ︵ 明 石 書 店 ︶ な ど 。

大 学 大 学 院 博 士 後 期 課 程 。 共 著 に ﹃ タ イ を 知 る た め の 72

八 六 年 生 。 タ イ 文 学 研 究 者 、 タ イ 語 翻 訳 者 。 東 京 外 国 語

プ ラ ー プ ダ ー ・ ユ ン |

あ ん ・ ち ょ ん

く ろ せ ・ よ う へ い

暮 ら せ る か ? ﹄ ︵ 文 春 文 庫 P L U S ︶ な ど 。

で 六 第 一 五 年 八 生 回 。 岸 演 田 出 國 家 士 、 戯 劇 曲 作 賞 家 受 、 現 賞 代 。 美 著 術 書 家 に 。 ﹃ ﹃ キ ブ ミ ル はケ ー 珍ダ シ ー 獣モ ノ と ト ﹄

そ の 他 、 外 部 で の 講 演 や 執 筆 な ど 活 動 は 多 岐 に わ た る 。

近 作 に ﹃ 三 人 吉 三 ﹄ ﹃ 東 海 道 四 谷 怪 談

福 冨 渉 | ふ く と み ・ し ょ う

ゲンロン 5

通 し 上 演

̶

七 五 年 生 。 東 京 大 学 大 学 院 総 合 文 化 研 究 科 准 教 授 。 専 門

お お と り ・ ひ で な が

五 八 年 生 。 社 会 学 者 。 近 著 に ﹃ ︿ 世 界 史 ﹀ の 哲 学 ︵ ﹄ 講 談 社 ︶ 、

ปราบดา หยุ่น

は ロ シ ア 文 学 ・ 思 想 。 著 書 に ﹃ リ ア リ ズ ム の 条 件 ︵ ﹄ 水 声 社 ︶ 、

﹃ 自 由 と い う 牢 獄 ﹄ ︵ 岩 波 書 店 ︶ な ど 。

鴻 英 良 |

Tilted

﹃ ロ シ ア あ る い は 対 立 の 亡 霊 ﹄ ︵ 講 談 社 選 書 メ チ エ ︶ 。

四 八 年 生 。 演 劇 批 評 家 。 著 書 に ﹃ 二 十 世 紀 劇 場 ﹄ ︵

The Sad Part Was

※ テ 特 ィ 別 ン 掲 グ 載 ﹁ ユ ー ト ピ ア と 弁 証 法 ﹂ の 話 者 の 略 歴 に つ

金 森 穣 |

Axis

い て は 、 一 八 三 頁 を ご 参 照 く だ さ い 。

速 水 健 朗 |

芸 術 監 督 。 一 七

七 四 年 生 。 演 出 振 付 家 、 舞 踊 家 。 り ゅ ー と ぴ あ 新 潟 市 民

̶

七 三 年 生 。 ラ イ タ ー 。 近 著 に ﹃ 東 京 β ﹄ ︵ 筑 摩 書 房 ︶ 、 ﹃ 東

芸 術 文 化 会 館 舞 踊 部 門 芸 術 監 督 、

Noism

京 ど こ に 住 む ? ﹄ ︵ 朝 日 新 書 ︶ な ど 。

歳 で 渡 欧 、 M ・ ベ ジ ャ ー ル 等 に 師 事 。 一 〇 年 間 欧 州 の 舞

DARK tourism JAPAN

を 立 ち 上 げ る 。

踊 団 で 活 躍 後 帰 国 。 〇 四 年 、 日 本 初 の 劇 場 専 属 舞 踊 団

﹄ な ど 。

興 文 化 論 ﹄ ﹃ 厄 介 な 遺 産 ﹄ ︵ 青 土 社 ︶ な ど 。

屋 法 水 | あ め や ・ の り み ず

八 五 年 生 。 ﹁ 木 ノ 下 歌 舞 伎 ﹂ 主 宰 。 監 修 と 補 綴 を 担 当 す る 。

木 ノ 下 裕 一 |

八 一 年 生 。 文 芸 評 論 家 、 立 教 大 学 文 学 部 准 教 授 。 著 書 に ﹃ 復

福 嶋 亮 大 |

き の し た ・ ゆ う い ち

ふ く し ま ・ り ょ う た

298


シ ョ ン を 大 別 す る な ら 、 ﹁ 構 築 ﹂ と ﹁ 生 成 ﹂ の 弁 証 法 と 、 ﹁ 寛 容

容 史 ﹂ と し て 記 述 さ れ て き た 。 そ れ ら ﹁ 受 容 史 論 ﹂ の バ リ エ ー

し て お り 、 と き お り 外 来 思 想 に よ っ て 覆 い 隠 さ れ る こ と は あ っ

史 に は 常 に ﹁ 原 型 ﹂ 、 ﹁ 古 層 ﹂ 、 ﹁ 執 拗 低 音 ﹂ の よ う な も の が 存 在

思 想 的 弾 圧 に 抵 抗 す る よ う に 書 い た 、 戦 時 体 制 へ の 本 質 的 な 批

時 大 学 に 勤 め て い た 丸 山 が 、 特 別 高 等 警 察 か ら 受 け た 屈 辱 的 な

戦 の 最 中 に 執 筆 さ れ た 儒 教 思 想 研 究 で あ る と 同 時 に 、 そ れ は 当

を 明 確 に 打 ち 出 し た ﹃ 日 本 政 治 思 想 史 研 究 ﹄ は 、 第 二 次 世 界 大

223

山 が ﹁ 本 質 顕 現 論 ﹂ と い う 言 葉 で 表 現 し た よ う に 、 日 本 の 思 想

構 想 は 、 後 に 丸 山 自 身 に よ っ て 拡 張 さ れ て ゆ く こ と に な る 。 丸

判 で あ っ た 。 し か し 、 ﹁ 作 為 ﹂ と ﹁ 自 然 ﹂ に よ る 日 本 思 想 史 の

他の平面論 第 4 回

い わ ゆ る ﹁ 日 本 文 化 論 ﹂ は い つ も 、 文 化 的 外 圧 に 対 す る ﹁ 受 文 化 論 や 芸 術 論 で は な か っ た 。 ﹁ 作 為 ﹂ と ﹁ 自 然 ﹂ と い う 図 式

黒 瀬 陽 平

1

も と も と 、 丸 山 は 政 治 思 想 史 に つ い て 述 べ て い た の で あ っ て 、

せ る ﹁ 自 然 ﹂ の 原 理 が 常 に 優 越 し て い る と 批 判 的 に 指 摘 し た 。

で 発 展 的 な ﹁ 作 為 ﹂ の 原 理 よ り も 、 ﹁ お の ず か ら な る ﹂ に ま か

他 の 平 面 論

論 考

─ ─

Criticism of Two Theories of Japanese Culture

性 の 神 話 ﹂ の ふ た つ に 分 類 さ れ る だ ろ う 。

4

﹁ 構 築 ﹂ と ﹁ 生 成 ﹂ の 弁 証 法 に お い て 、 外 か ら や っ て く る 文 化

On Other Surfaces

治 枠 の 的 思 組 で 外 想 み あ 圧 ︵ を る は 国 セ と ﹁ 学 ッ さ 構 ︶ ト れ 築 を し る ﹂ 分 た 。 的 析 の よ な す は く 文 る 丸 知 化 な 山 ら で か 眞 れ あ で 男 て り ﹁ で い 、 作 あ る 日 為 る 通 本 ﹂ 。 り 文 と 丸 、 化 ﹁ 山 こ は 自じ は の ﹁ 然ね ん 、 よ 生 ﹂ 江 う 成 と 戸 な ﹂ い 期 思 的 う の 考 な 対 政 の も

Yohei Kurose

立 す る 概 念 を 取 り 出 し 、 日 本 思 想 の ﹁ 古 層 ﹂ に お い て 、 構 築 的

第 4 回

ふ た つ の ﹁ 日 本 文 化 論 ﹂ 批 判

黒瀬陽平


﹂ と い う 文 言 が 明 記 さ れ て

﹂ と ﹁ 神 ﹂ と い う 言 葉 を 結 合 さ せ

書 ﹃ エ チ カ ﹄ に お い て 、 ス ピ ノ ザ は ﹁ 神 ﹂ と ﹁ 自 然 ﹂ を 等 価 な

﹁ 汎 神 論

﹂ は 、 ギ リ シ ャ 語 か ら き た 言 葉 だ 。 ﹁ 万 物 ﹂

葉 そ の も の よ り も 、 ス ピ ノ ザ の 議 論 の ほ う が 助 け に な る 。 哲 学

1

蛍 に つ い て の ま や か し ︵ 承 前 ︶

あ る い は 、 時 間 の レ ン ズ の 中 の ス ピ ノ ザ と

黒 魔 術 の 島

フ ・ ス ピ ノ ザ

よ り も 賞 賛 を 受 け る 人 物 と 言 え ば 、 オ ラ ン ダ の 哲 学 者 、 バ ー ル ー

プ ラ ー プ ダ ー ・ ユ ン

─ 福 冨 渉

ตืน่ บนเตียงอืน่ │ 2 │

も の と し て 扱 っ て い る 。 そ し て 、 そ こ に は ﹁ 神 あ る い は 自 然

あ る い は ﹁ す べ て

新 し い 目 の 旅 立 ち

随 筆

第 2 回

โช ฟุกโุ ตมิ

い る 。 こ の 文 言 は 汎 神 論 の 核 心 だ 。 宗 教 の 宥 和 と 信 仰 の 多 様 性

て 、 ﹁ 万 物 は 神 で あ る ﹂ と い う 意 味 を も た せ て い る 。 あ る い は

に 慣 れ 親 し ん だ 現 代 社 会 に お い て は 、 と て も 静 謐

︵ 多 様 な 視 点 か ら 自 然 に 言 及 す る ﹁ 地 球 環 境 保 護 ﹂ の 流 行 な ど は ま さ

前 後 を 入 れ 替 え て 、 ﹁ 神 は 万 物 で あ る ﹂ と し て も 間 違 い で は な

pantheism

に そ う だ が ︶

い 。 こ の 言 葉 が 初 め て 登 場 し た の は 、 英 国 の 数 学 者 ジ ョ セ フ ・

theos

に 、 あ る い は 美 し い ほ ど に 聞 こ え る 言 葉 か も し れ な い 。 け れ ど

ラ フ ソ ン が 一 六 九 七 年 に 発 表 し た 学 術 的 著 作 だ っ た 。 そ の 後 、

pan

一 七 〇 五 年 に 、 ア イ ル ラ ン ド の 哲 学 者 ジ ョ ン ・ ト ー ラ ン ド の 記

God or Nature / Deus sive Natura

し た 宗 教 批 判 の 書 に も 現 れ る 。 だ が 、 汎 神 論 に 言 及 す る 際 に 、

﹁ 汎 と 神 は 論 い ﹂ え と 汎 い 神 う 論 言 の 葉 本 は 質 使 を わ 理 れ 解 て す い る な た い め 。 に は 、 汎 神 論 と い う 言

︵ 一 六 三 二 一 六 七 七 ︶

だ ろ う 。 彼 の 著 作 に お い て 、

ほ と ん ど 自 動 的 に そ の 姿 が 浮 か び 、 こ の 思 想 の 先 駆 者 と し て 誰

ゲンロン 5

210


フ レ ド リ ッ ク ・ ジ ェ イ ム ソ ン

そ う し ま し ょ う 。

に が 起 こ っ た の か 、 考 え て み ま せ ん か 。

ヴ ァ レ リ ー ・ ポ ド ロ ガ

能 性 が 議 論 さ れ て い る 。

ふ た つ の マ ル ク ス 主 義

ド ゥ ブ ロ ヴ ニ ク の 会 合 [ ★ 1 ]

以 降 に な ま せ ん 。

181

も わ れ わ れ が 議 論 の 対 象 と す る テ ー マ に 含 め て よ い の か も し れ

た の が 、 と つ ぜ ん 亡 霊 に な っ て し ま っ た 。 も し か す る と 、 こ れ

が 提 起 さ れ て い ま す 。 マ ル ク ス は は じ め 、 わ れ わ れ と と も に あ っ

ク ス が い か に 亡 霊 に な っ た の か と い う 、 た い へ ん 興 味 深 い 問 題

本 で す 。 こ の 本 で は ﹃ マ ル ク ス の 亡 霊 た ち ﹄ と の 関 連 で 、 マ ル

ユートピアと弁証法

リ ダ の 応 答 に 目 を 通 し ま し た 。 ﹃ マ ル ク ス と 息 子 た ち ﹄ と い う

を あ ら た め て 意 味 づ け る と と も に 、 ポ ス ト 冷 戦 時 代 の 思 想 の 可

ジ ェ イ ム ソ ン と ポ ド ロ ガ が 中 心 と な り 、 一 九 九 〇 年 の す れ 違 い

ト ピ ア と 弁 証 法 ﹂ で は 、 ド ゥ ブ ロ ヴ ニ ク の 会 議 の 参 加 者 で あ る

認 識 が な い こ と が あ き ら か に な り 、 交 流 は 失 敗 に 終 わ る 。 ﹁ ユ ー

か し 、 西 側 と 東 側 で は 議 論 の 基 盤 と な り う る 思 想 や 状 況 の 共 通

イ 討 も し ム 今 す の た ソ 日 る が が ン の こ あ 、 ︺ 座 と り も

を 含 む マ ル ク ス 主 義 者 の 見 解 に 対 す る ジ ャ ッ ク ・ デ

談 会 の ま え に 、 わ た し は ち ょ う ど 、 フ レ ッ ド ︹ ジ ェ

が で き る で し ょ う 。

ま す 。 こ れ ら は 基 本 的 な 問 題 で す か ら 、 あ わ せ て 検

っ と 理 論 的 な 問 題 と し て 、 歴 史 の 集 団 的 主 体 と い う

た 東 西 の 知 的 交 流 を 実 現 す る こ と が 目 論 ま れ た も の だ っ た 。 し   も う ひ と つ 、 先 日 の 会 議 [ ★ 2 ]

で も 若 干 話 題 に の ぼ っ て い ま

ク 、 ボ リ ス ・ グ ロ イ ス ら が 参 加 し 、 ペ レ ス ト ロ イ カ で 可 能 に な っ

イ ム ソ ン の ほ か 、 メ ラ ブ ・ マ マ ル ダ シ ヴ ィ リ 、 ス ラ ヴ ォ イ ・ ジ ジ ェ

レ リ ー ・ ポ ド ロ ガ が 中 心 と な っ て 企 画 さ れ 、 フ レ ド リ ッ ク ・ ジ ェ

リ カ の 研 究 者 ス ー ザ ン ・ バ ッ ク モ ー ス と ロ シ ア の 思 想 家 ヴ ァ

れ た 二 週 間 の セ ミ ナ ー を 振 り 返 る も の で あ る 。 そ ち ら は 、 ア メ

力 を 持 ち え た の か 。

哲 学 、 さ ら に は 世 界 の 左 翼 陣 営 の 前 線 に 対 し て ど れ ほ ど の 影 響

べ き な の か 。 そ う し た 変 化 は マ ル ク ス 主 義 陣 営 そ れ 自 体 や 批 判

ア で 起 き た 一 連 の で き ご と の あ と に 、 わ れ わ れ は な に を 目 指 す

テ ー マ は い か に 議 論 し う る で し ょ う か 。 ア メ リ カ 合 衆 国 や ロ シ

ゴ ス ラ ヴ ィ ア ︵ 現 在 の ク ロ ア チ ア ︶

の ド ゥ ブ ロ ヴ ニ ク 大 学 で 行 わ   ふ た つ め は マ ル ク ス 主 義 と 関 係 し て い ま す 。 こ ん に ち 、 こ の

会 の 記 録 の 翻 訳 で あ る 。 こ の 座 談 会 は 、 一 九 九 〇 年 に 当 時 の ユ ー

で 二 〇 〇 六 年 に 行 わ れ た ア メ リ カ と ロ シ ア の 知 識 人 に よ る 座 談

印 象 を 比 較 す る こ と で す 。

ひ と つ め は あ の と き の 会 合 や 、 あ の と き 起 き た こ と に つ い て 、

こ こ に 掲 載 す る の は 、 モ ス ク ワ 郊 外 の 別 荘 地 ペ レ ジ ェ ル キ ノ ポ ド ロ ガ

手 は じ め に 検 討 す べ き 問 題 が い く つ か あ り ま す ね 。


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а 議 討 同 共

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載 掲 別 特

П

ガ ロ ン ド а ソ ポ ог ム ・ ор イ ー д ェ н リ По ジ со フ レ й ・ и ノ ァ ри ク йм ロ ヴ ле ッ е ж а ヤ ミ в Д リ В ・ но カ ド ик ス ル レ р ро フ ミ и フ ред ロ ー рМ Ф ト ая ジ и ペ ск ラ им ン ・ ов ウ лад ソ ナ тр В フ ン ー е П ノ ロ レ а モ ア он エ лен ー ・ нс ラ в Е リ グ ро パ но ト レ А ・ о ッ イ ам オ ег л ラ レ Пар グ 子   О и フ ド ン 洋 да л т ・ ン ей ィ 田 Уэ р 平 ン лэ 上 ко テ ア нд 亨 ацу サ нФ ッ 訳 Йо А 松 м ィ ナ а т 乗 ри フ г ョ на 原 題 Но о ・ ин ジ = ж 解 хэй ー тт ★ =訳 Д ё タ Фи К ☆ ー р ピ ите

л

と ア ピ 法 ト 証 ー 弁 ユ


し て く る 非 に 着 目 し て 、 お お ま か に 検 討 し て み た い 。

も っ と も 原 理 的 な も の で あ り 続 け て い る 。 た と え ば 、 現 勢 態 と

な ど と 呼 ば れ る 状 況 が い た る と こ ろ で 生 じ つ つ あ る い ま も な お 、

生 成 / 受 容 す る わ た し た ち 観 客 ・ ユ ー ザ の 帯 び る 社 会 性 の 変 容

ン の な か の イ メ ー ジ と 、 そ れ ら の 歴 史 性 、 そ し て ス ク リ ー ン を

画 や 映 像 コ ン テ ン ツ を 中 心 に 扱 い な が ら 、 さ ま ざ ま な ス ク リ ー

的 な 変 容

│﹁ ポ ス ト メ デ ィ ウ ム 的 ﹂ な い し ﹁ ポ ス ト シ ネ マ 的 ﹂

本 論 で は 、 以 上 の ﹁ 幽 霊 ﹂ を め ぐ る 問 題 系 に つ い て 、 現 代 映

ク へ ﹂ と い う 標 語 に 象 徴 さ れ る よ う な 、 映 像 メ デ ィ ウ ム の 大 域 映 像 文 化 の 諸 相 を た ど る 作 業 を 継 続 し て い る 。

こ の 問 い は 、 ﹁ ア ナ ロ グ フ ィ ル ム か ら デ ィ ジ タ ル ネ ッ ト ワ ー お い て 、 こ の よ う な ﹁ デ ィ ジ タ ル 化 / ネ ッ ト ワ ー ク 化 ﹂ 以 降 の

﹂ と い か に つ き あ っ て き た か 。

ン β ﹄ で 連 載 中 の 映 画 評 ﹁ ポ ス ト ・ シ ネ マ ・ ク リ テ ィ ー ク ﹂ に

論 考

映 画 を は じ め 、 写 真 や 動 画 な ど 数 多 の 映 像 文 化 は 、 ﹁ 幽 霊 な り 大 き く 移 り 変 わ っ て い る だ ろ う 。 筆 者 は 、 現 在 、 ﹃ ゲ ン ロ

0 | ﹁ 幽 霊 ﹂ と い う 隠 喩

化 し き っ た 現 状 で は 当 然 の こ と な が ら

│ か つ て と 比 較 し て か

の 内 実 は

│ 映 像 の ﹁ デ ィ ジ タ ル 化 / ネ ッ ト ワ ー ク 化 ﹂ が 常 態

大 輔 Daisuke Watanabe

re-venir

そ の よ う な ﹁ 幽 霊 的 な も の ﹂ の 存 在 論 は 、 か ね て

潜 勢 態 の あ わ い を 幽 か に た ゆ た う 存 在 、 あ る い は す で に / い ま

複 製 映 像 の そ れ と 絶 え ず 類 比 的 に 語 ら れ て き た 。 と は い え 、 そ

Ghosts that Prossess the “Face”: Visual Culture and the Ghostly

だ 現 前 は し て い な い が 、 執 拗 に 再 来 = 回 帰

spectre, revenant

在 の 存 在

﹁ 顔 ﹂ に 憑 く 幽 霊 た ち

特 集

幽 霊 的 身 体

│ 映 像 文 化 と 幽 霊 的 な も の

ゲンロン 5

160


も 、 何 を も っ て 日 本 文 学 の モ ダ ニ テ ィ / モ ダ ニ ズ ム と 見 な す か

147

︵ 夏 目 漱 石 ︶

と ﹁ ポ ス ト モ ダ ン 的 ﹂ な 作 家   と は い え 、 そ れ は 口 で 言 う ほ ど 簡 単 な 作 業 で は な い 。 そ も そ

釈 す る こ と 。 特 に 、 い か な る タ イ プ の 観 客 を 生 成 し た か に よ っ

小 説 の 主 要 な 構 造 を ﹁ 演 技 者 と 観 客 の 組 み 合 わ せ ﹂ と し て 再 解

は リ ヴ ィ ジ ョ ニ ズ ム で あ る 。 ② 観 客 の 系 譜 の 抽 出 。 日 本 の 近 代

て 、 ﹁ 近 代 ﹂ の 出 発 点 を 明 治 か ら 近 世 へ と 前 倒 し す る こ と 。 要

を 生 み 出 し た 東 ア ジ ア の ﹁ 近 世 ﹂ の モ ダ ニ テ ィ の 再 評 価 に よ っ

文 学 史 の 部 分 的 改 訂 。 演 劇 的 な 小 説

想 現 実 の な か で リ ブ ー ト す る こ と ﹂ で あ る に は 違 い な い の だ 。

に し て も 、 結 局 や ろ う と し た の は ﹁ 近 代 を 文 学

の 時 代 ﹂ だ と い う ア レ ク シ エ ー ヴ ィ チ の 診 断 は 正 し い 。 私 の 本

な り つ つ あ る よ う に 見 え る 。 今 は ﹁ セ カ ン ド ハ ン ド

文 化 的 表 象 と し て 現 れ て く る だ ろ う 。 近 代 は つ い に ﹁ 神 話 ﹂ に

例 と す る

︵ 史 ︶

と い う 仮

悪霊・崇高・身体

︵ 中 古 品 ︶

︵ ﹃ 水 滸 伝 ﹄ か ら 馬 琴 ま で ︶

│ は 人 工 知 能 の 発 達 を 背 景 に し て 、 今 後 さ ま ざ ま な

論 考

土 社 私 ︶ は

と い う 本 を 上 梓 し た 。 そ の 狙 い は 大 き く 言 っ て 二 つ 。 ①

昨 年 ﹃ 厄 介 な 遺 産

名 を 連 ね る 米 国 の T V ド ラ マ ﹃ ウ エ ス ト ワ ー ル ド ﹄ を 最 近 の 事

福 嶋 亮 大

1

| 観 客 と 悪 霊

R yota Fukushima

の 分 岐 が 生 じ た と い う の が 私 の 見 立 て で あ る 。

て 、 ﹁ 近 代 的 ﹂ な 作 家

日 本 近 代 文 学 と 演 劇 的 想 像 力 ﹄ ︵ 青

J ・ J ・ エ イ ブ ラ ム ズ と ジ ョ ナ サ ン ・ ノ ー ラ ン が 制 作 に

世 界 的 に 危 殆 に 瀕 す る 一 方 で 、 西 洋 近 代 の テ ー マ パ ー ク 的 再 現

状 況 と も そ れ な り に 関 係 す る も の だ 。 近 代 社 会 の パ ラ ダ イ ム が

自 己 解 説 し て お け ば 、 こ の 種 の リ ヴ ィ ジ ョ ニ ズ ム は 今 の 文 化

Demon, Sublime, Body: Akinari Ueda and the 18th Century Paradigm

︵ 谷 崎 潤 一 郎 ︶

悪 霊 ・ 崇 高 ・ 身 体

特 集

幽 霊 的 身 体

│ 上 田 秋 成 と 一 八 世 紀 の パ ラ ダ イ ム

福嶋亮大


こ と な ど 、 言 う ま で も な く 到 底 で き な い わ け で 、 せ い ぜ い 、 粗

お い て 燦 然 と 輝 く 巨 星 た ち が 生 前 発 表 さ れ た ﹁ 幽 霊 論 ﹂ に 迫 る

勝 先 生 や 服 部 幸 雄 先 生 な ど 、 死 し て も な お 歌 舞 伎 研 究 の 分 野 に

が ら 原 稿 用 紙 の 枡 目 を 埋 め て い っ た と こ ろ で 、 か つ て の 郡 司 正

語 り 尽 く さ れ た 感 も 強 い 。 私 の ご と き 者 が い く ら 脂 汗 を 流 し な

の だ 。 同 時 に 、 こ の テ ー マ は 、 偉 大 な 先 達 た ち に よ っ て す で に

組 み 合 わ せ で あ る だ け に 、 〝 書 き よ う 〟 は ゴ マ ン と あ る は ず な

し た 。 ﹁ 歌 舞 伎 ﹂ と ﹁ 幽 霊 ﹂ と い う ワ ー ド は 極 め て 相 性 の い い

の 、 さ て 、 い ざ 書 き 始 め て み る と 、 そ の 難 し さ に 改 め て 愕 然 と

こ う 見 ず に ﹁ 面 白 そ う だ ! ﹂ と 二 つ 返 事 で お 引 き 受 け し た も の

︿ 歌 舞 伎 ﹀ と ︿ 幽 霊 的 身 体 ﹀ と い う 壮 大 な テ ー マ を 頂 戴 し 、 向

の 長 文 ダ メ 出 し メ ー ル が 届 く ら し い で す よ ⋮ ⋮ ﹂ と 、 嘘 か 真 か 、

か ら で 、 ﹁ く だ ら な い 原 稿 を 提 出 す る と 、 東 浩 紀 さ ん か ら 直 々

ゴ マ ゴ し て い る と 、 電 話 が 鳴 っ た 。 ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ フ ァ ン の 友 人

に 睨 み を 利 か し て い る 。 身 が す く ん で 、 ま す ま す い け な い 。 マ

か れ た 分 厚 い ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ バ ッ ク ナ ン バ ー が 看 守 か 何 か の よ う

手 は 現 代 思 想 を 牽 引 し 続 け る ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ な の だ 。 机 の 上 に 置

お い て 、 そ う い っ た 〝 逃 げ の 戦 法 〟 が 通 用 す る は ず が な い 。 相

幽 霊 に 祟 ら れ そ う で 、 そ れ も い け な い 。 だ い い ち 、 こ の 誌 面 に

風 に ま と め 、 お 茶 を 濁 す の は ど う か ⋮ ⋮ 今 度 は 戸 板 康 二 先 生 の

つ わ る 挿 話 を 拾 い 集 め ら れ る だ け 集 め て 、 ﹁ ち ょ っ と い い 話 ﹂

ろ う ︶

な か オ ツ な も の か も し れ な い が ⋮ ⋮ 霊 界 の 先 生 方 も そ う 暇 で は な い だ

に 立 た れ て 、 叱 責 さ れ る や も し れ ぬ

。 な ら ば 、 古 今 の 芸 談 本 な ど か ら 、 ︿ 歌 舞 伎 と 幽 霊 ﹀ に ま

木 ノ 下 裕 一

論 考

Ghosts of Kabuki

悪 な 劣 化 コ ピ ー 版 を こ し ら え 上 げ る の が 関 の 山 で あ る 。 こ れ で

Yuichi K inoshita

は 、 冥 府 の 先 生 方 も 浮 か ば れ ま い 。 も し か す る と 夜 な 夜 な 枕 元

幽 霊 と し て の 歌 舞 伎

特 集

幽 霊 的 身 体

︵ こ の 究 極 の 個 人 授 業 も な か

ゲンロン 5

130


を 持 っ て い た の で は な い か と 私 は 疑 い は じ め て い る 。 こ れ ら の

︵ 一 九 一 〇 年 生 ︶

、 あ る い は ﹃ ラ ・ は ま っ た く 同 じ で あ っ た と は 言 え な い ま で も 、 共 通 の 自 己 認 識

の は 、 ﹁ 自 同 律 の 不 快 ﹂ と い う 言 葉 を 残 し た 日 本 戦 後 文 学 の 巨

し て い る 、 こ れ こ そ が 二 〇 世 紀 の 基 本 理 念 で あ る と 考 え て い た

論 考

嘔 吐 、 こ の よ う な 感 覚 が い ま も 世 界 の 根 源 的 な と こ ろ に 存 在

鴻 英 良

バ ロ メ ー タ ー と な る

│ 。 ﹂ ︵

ト と こ ル 同 の ︵ 年 よ 一 代 う 九 の な 〇 フ 感 五 年 ラ 覚 生 ン を ︶ ス ど ら の の で 哲 よ あ 学 う っ 者 に た ・ 表 。 文 学 明 者 す る の か ジ に ャ よ ン っ ・ て ポ 、 ー こ ル ・ の サ 三 ル 人

﹃ 革 命 の 意 味 ﹄ ︶

│ 埴 谷 雄 高 [ ★ 1 ]

い 憤 懣 に つ つ ま れ な が ら 、 こ う 記 せ ざ る を 得 ま せ ん で し た 。 ﹁ 党 の 自 己 否 定 の テ ム ポ こ そ 革 命 完 成 の

こ と に な つ た 悲 劇 の ひ と に ほ か な り ま せ ん 。 そ し て 、 古 い 世 代 で あ る 私 は 、 暗 い 悲 哀 感 と 名 状 し が た

よ つ て 阻 止 し て し ま つ た 自 己 矛 盾 に 対 す る ﹁ 見 せ し め ﹂ の た め 、 赤 い 広 場 の 前 に 無 残 に ﹁ 曝 さ れ る ﹂

私 に と つ て の レ ー ニ ン は 、 彼 の 希 求 す る ﹁ 国 家 の 死 滅 ﹂ を ﹁ 彼 自 ら ﹂ が 強 化 し た ﹁ 党 ﹂ そ の も の に

Empty Bodies, Dead Bodies, and the “Outside”: Towards an Ideal of 21st Century Dance

︵ 一 九 〇 六 年 生 ︶

匠 、 ﹃ 死 霊 ﹄ を 書 い た 埴 谷 雄 高

Hidenaga Otori

ア ル ヘ ン チ ー ナ 頌 ﹄ を 踊 っ た 舞 踏 家 の 大 野 一 雄

虚 体 、 死 体 、 そ し て ︿ 外 ﹀ へ

特 集

幽 霊 的 身 体

│ 二 一 世 紀 の ダ ン ス の 理 念 に 向 け て

ゲンロン 5

108


け て み た い と 思 っ て い ま す 。

ら か と た で も は め は が 、 て 、 ﹁ ほ そ 演 と 屋 も 劇 ん さ そ ﹂ ど ん も な そ に ﹁ の う こ 演 だ 見 の 劇 、 え 原 ﹂ と な 理 と 発 い 的 は 言 か か い し も つ っ て し ア た い れ ク い ま な チ な す い ュ ん 。 も ア な の ル の も な か 含 問 。 め い 今 て を 日 な ぶ は に つ あ も

す 。 実 際 、 屋 さ ん ご 自 身 が 何 度 と な く 、 自 分 の や っ て い る こ

屋 さ ん で す が 、 そ の 表 現 を 貫 い て い る の は ﹁ 演 劇 ﹂ だ と 思 い ま

﹃ 注 長 ブ 目 ル を く 豊 ー 集 シ め か な ー 、 ト 二 、 そ ﹄ 〇 し が 一 て 岸 四 魅 田 年 惑 國 に 的 士 は に 戯 い 錯 曲 わ 綜 賞 き し を の た 受 高 キ 賞 校 ャ し 生 リ て た ア い ち を ま と お す 作 持 。 っ た ち 作 の 品

し た 。 新 し い 演 劇 の か た ち を 世 に 問 い 続 け る 屋 さ ん の 作 品 は

で 行 わ れ た 平 田 オ リ ザ さ ん の 戯 曲 ﹃ 転 校 生 ﹄ の 上 演 で の こ と で

て く る の は 二 〇 〇 七 年 、 S P A C の 宮 城 聰 さ ん の プ ロ デ ュ ー ス

ト シ ョ ッ プ ﹁ 動 物 堂 ﹂ の 運 営 な ど を 経 て 、 屋 さ ん が 演 劇 に 戻 っ

精 子 ︾ な ど 、 非 常 に 過 激 な 作 品 を 作 っ て い ま す 。 そ の 後 、 ペ ッ

観 客 と の あ い だ で 人 工 授 精 を 募 る ︽ パ ブ リ ッ ク ザ ー メ ン / 公 衆

術 研 究 所 を 中 心 に 、 希 望 者 に 精 子 を 提 供 し て も ら っ て 展 示 し 、

屋 さ ん は 活 動 の 場 を 現 代 美 術 に 移 す 。 そ し て 、 レ ン ト ゲ ン 藝

ペ ク タ ク ル な 作 品 を 発 表 し ま す 。 劇 団 が 二 年 で 解 散 し た あ と 、

ン ギ ニ ョ ル ﹂ を 立 ち 上 げ 、 オ ブ ジ ェ と 身 体 、 血 糊 を 駆 使 し た ス

況 劇 場 に 参 加 し た 一 七 歳 の と き で す 。 そ の 後 、 劇 団 ﹁ 東 京 グ ラ

図 1 『ブルーシート』、2013 年。いわき総合高校校庭での初演より  写真提供= 屋法水

087

演劇とは「半々」である

屋法水+佐々木敦


屋 さ ん は 一 九 六 一 年 生 ま れ 、 演 劇 を 始 め た の は 唐 十 郎 の 状

群 雄 割 拠 の 状 態 で し の ぎ を 削 っ て い る か に 見 え ま す 。 ﹁ ニ ッ ポ

二 〇 一 〇 年 代 ま で 、 長 い 年 月 の あ い だ に 登 場 し た 演 劇 人 た ち が

現 在 、 日 本 の 演 劇 シ ー ン で は 、 七 〇 年 代 か ら

お 話 を う か が い ま す 。

井 秀 人 さ ん を お 迎 え し ま し た 。 三 回 目 の 今 日 は

目 は チ ェ ル フ ィ ッ チ ュ の 岡 田 利 規 さ ん 、 二 回 目 は ハ イ バ イ の 岩

毎 回 キ ー パ ー ソ ン を お 迎 え し て お 話 を う か が っ て い ま す 。 一 回

屋 法 水 さ ん に

対 談

屋 法 水 + 佐 々 木 敦 と 捉 え る 、 屋 の ユ ニ ー ク な 思 想 が 議 論 さ れ て い る 。

も の と は や や 異 な り 、 パ フ ォ ー マ ン ス 的 傾 向 が 強 い 。 こ の 対 談 で は 、 人 間 の あ ら ゆ る 活 動 を ﹁ 演 劇 ﹂

た が る 領 域 横 断 的 な 活 動 を し て き た 作 家 で あ る 。 そ の 演 劇 は ﹁ 演 劇 ﹂ と い う 言 葉 で 一 般 に 想 像 さ れ る

を 舞 台 に 、 佐 々 木 が ホ ス ト と な っ て 先 鋭 的 な 演 劇 人 に 行 う 連 続 イ ン タ ビ ュ ー 屋 で は あ 現 る 代 ︵ 美 ↓ 術 詳 と 細 演 一 劇 〇 に 六 ま 頁 ︶ 。 屋 が ゲ ス ト の こ の 回 で は 、 ﹁ 演 劇 と は な に か ﹂ が 議 論 の 中 心 と な っ た 。

﹁ ニ ッ ポ ン の 演 劇 ﹂ よ り 、 屋 法 水 と 佐 々 木 敦 の 対 談 を 再 録 す る 。 同 シ リ ー ズ は 、 ゲ ン ロ ン カ フ ェ

Theater is “Half and Half”

佐 々 木 敦

ン の 演 劇 ﹂ シ リ ー ズ で は 、 ニ ッ ポ ン の 演 劇 の 独 自 性 は ど こ に あ

Norimizu Ameya + Atsushi Sasaki

る の か 、 そ の 可 能 性 と そ れ が 抱 え る 問 題 は い か な る も の な の か 、

演 劇 と は ﹁ 半 々 ﹂ で あ る

特 集

─ 幽 霊 的 身 体

ニッポン の

演劇

ゲンロン 5

086


演劇の起源と幽霊の条件 利賀山房舞台上より。奥から順に佐々木敦、大澤真幸、東浩紀 075

大澤真幸+佐々木敦+東浩紀


ゲンロン 5

074


中 年 の 女 性 の 声 が 聞 こ え て き ま す 。 声 は ふ

に は 画 面 が 羽 毛 だ ら け に な り ま す 。 そ こ に

よ う に な り ま す 。 羽 は だ ん だ ん 増 え 、 最 後

と 、 画 面 に 白 い 羽 が 散 っ て い る の が 見 え る

本 的 に 人 間 は 出 て き ま せ ん 。 し ば ら く す る

ひ と も い る 。 信 じ て い る

も い る し 、 信 じ て い な い

在 で す 。 信 じ て い る ひ と

い る と い う 、 矛 盾 し た 存

の に い な い 、 い な い の に

部 屋 を 映 す 、 そ う い う 趣 向 の 作 品 で す 。 基   幽 霊 と い う の は 、 い る

︵ 二 〇 〇 七 年 ︶

誰 も い な い 部 屋 を 映 し 、 ま た べ つ の 無 人 の

か か っ て い る そ の ホ テ ル の な か に 入 っ て 、

た 。 ︽ エ メ ラ ル ド ︾ は 、 な か ば 廃 屋 に な り

経 営 破 綻 し て 営 業 停 止 状 態 に 陥 っ て い ま し

在 は 営 業 を 再 開 し て い ま す が 、 撮 影 当 時 は

ド は バ ン コ ク に 実 在 す る 高 級 ホ テ ル で 、 現

タ レ ー シ ョ ン 型 の 映 像 作 品 で す 。 エ メ ラ ル

と い う 、 一 〇 分 ほ ど の イ ン ス

現 を 描 い て い る わ け で す 。

よ う な 演 出 で 、 幽 霊 の 出

要 は ﹃ ブ ン ミ ﹄ と 同 じ

ス が あ る こ と に 気 づ く 。

の 映 像 に 戻 る シ ー ク エ ン

中 空 に 浮 か び 、 ま た 無 人

ン ス と 、 男 ふ た り の 顔 が

と 浮 か び 上 が る シ ー ク エ

も う ひ と つ 例 を 挙 げ ま す 。 ︽ エ メ ラ ル ド ︾ 上 に 女 性 の 顔 が ゆ っ く り

な 特 徴 で す 。

ら り と 描 か れ て い く の が 、 彼 の 作 品 の 大 き

い 。 こ う い う ふ う に 、 超 自 然 的 な 現 象 が さ

て 恐 怖 と い う 感 情 を 示 す こ と が ほ と ん ど な

チ ャ ッ ポ ン の 登 場 人 物 た ち は 、 幽 霊 に 対 し

は り す ぐ に 慣 れ て 談 笑 が 始 ま り ま す 。 ア ピ

ほ か の 登 場 人 物 は 一 瞬 驚 く の だ け れ ど 、 や

ミ の 息 子 が 猿 の 姿 で 現 れ る 場 面 も あ り ま す 。

い る と 、 無 人 の ベ ッ ド の

が 、 画 面 を 注 意 深 く 見 て

の 思 い 出 話 が 続 く の で す

て き ま す 。 そ の ま ま 三 人

と 、 男 ふ た り の 声 が 返 っ

い る の ? ﹂ と 呼 び か け る

い ま す 。 女 性 が ﹁ そ こ に

た り の 甥 の 名 前 を 呼 ん で

図 1 アピチャッポン・ウィーラセタクン監督『ブンミおじさんの森』、2010 年 ©Kick the Machine Films

061

演劇の起源と幽霊の条件

大澤真幸+佐々木敦+東浩紀


佐 々 木 敦

冒 頭 に 、 ブ ン ミ お じ さ ん と そ の 妻 の 妹 、 若

画 祭 で は パ ル ム ド ー ル も 取 り ま し た 。 そ の

映 画 の 途 中 で は 、 行 方 不 明 に な っ た ブ ン

ち ゃ っ た ﹂ と い う く ら い の 感 じ で す 。 ま た 、

ら 質 問 を お 受 け し ま す 。 ま ず は 佐 々 木 さ ん 、

議 を し 、 最 後 に 講 師 や 参 加 者 の み な さ ん か

れ ぞ れ が 短 い 講 演 を 行 い ま す 。 そ の の ち 討

的 身 体 ﹂ を テ ー マ に 、 ぼ く を 含 め 、 三 人 そ

ウ ム を 行 い た い と 思 い ま す 。 ま ず は ﹁ 幽 霊

木 敦 さ ん と と も に 、 総 括 を 兼 ね た シ ン ポ ジ

迎 え ま し た 。 最 後 に 、 大 澤 真 幸 さ ん 、 佐 々

東 浩 紀

三 日 間 の 利 賀 セ ミ ナ ー も 終 わ り を

年 し な 舞 た ポ つ な 的 参 ﹁ ︶ ょ も 台 ア い ン い っ な 照 幽

は 、 彼 の 代 表 作 で あ り 、 カ ン ヌ 国 際 映

う の に し 。 ﹃ が て ブ 出 い ン て ま ミ き す お ま が じ す 、 さ 。 ど ん 具 れ の 体 を 森 的 見 に て ﹄ ︵ 二 見 も 〇 て 幽 一 み 霊 〇 ま 的

ピ チ ャ ッ ポ ン の 作 品 は 現 代 の タ イ を

と 思 い ま す 。

て き た 。 そ の 経 緯 を 踏 ま え て 、 幽 霊 に

も の の 重 な り が 、 ひ と つ の 通 奏 低 音 に

さ れ て き ま し た 。 幽 霊 的 な も の と 演 劇

霊 ﹂ は 重 要 な キ ー ワ ー ド と し て 何 度 も

る こ と は 理 解 し て い て 、 ﹁

霊 = 奥 さ ん の 側 も 、 自 分 が す で に 死 ん で い

場 人 物 た ち は 慌 て る わ け で も な く 、 理 由 を

れ い 椅 設 ま て 子 定 す い が で [ る あ す 図 1 。 る 。 ] そ の 家 。 こ で の つ に す な ま ふ が か り っ 、 に 幽 と 三 は 霊 、 人 テ で ブ だ ー す ン か ブ 。 ミ ら ル し の ふ と か 妻 た 五 し が つ つ 登 現 空 の

ん は 、 か な り ま え に 亡 く な っ て い る と い う

笑 し て い る 場 面 が あ り ま す 。 ブ ン ミ の 奥 さ

い 親 戚 の 男 性 が 、 三 人 で 食 事 を し な が ら 談

ち ょ っ と 出 て き

現 象 を 受 け 入 れ 、 話 が 続 い て い き ま す 。 幽

突 き 止 め よ う と す る で も な く 、 自 然 に そ の

・ ウ ィ ー ラ セ タ ク ン を 題 材 に お 話 し し

て 、 ま ず は タ イ の 映 像 作 家 ア ピ チ ャ ッ

大 澤 真 幸 + 佐 々 木 敦 + 東 浩 紀

共 同 討 議 2

The Origin of Theater and the Birth of Ghosts

こ の セ ミ ナ ー は ﹁ 幽 霊 的 身 体 を

お 願 い い た し ま す 。

ア ピ チ ャ ッ ポ ン の 幽 霊

Masachi Osawa + Atsushi Sasaki + Hiroki Azuma

表 現 す る ﹂ を テ ー マ と し 、 プ ロ グ ラ ム で も

演 劇 の 起 源 と 幽 霊 の 条 件

特 集

─ 幽 霊 的 身 体

利賀セミナー

3日目 2016/9/12

ゲンロン 5

060


間 の 人 間 た る 由 縁 と 深 く 結 び つ い て い る と 言 え る 。 鈴 木 さ ん は

点 に あ る と い う こ と を 考 え て も 、 歩 く と い う 条 件 は や は り 、 人

こ の よ う に ﹁ う ま く 歩 け な い も の ﹂ た ち が ギ リ シ ア 悲 劇 の 原

な い 一 家 な の で す 。

ひ と ﹂ と い う 意 味 で す 。 つ ま り オ イ デ ィ プ ス 家 は 、 う ま く 歩 け

ラ イ オ ス の 名 は ﹁ 不 器 用 ﹂ 、 祖 父 ラ ブ ダ コ ス は ﹁ 足 を 引 き ず る

れ る 。 で す か ら 跛は 行こ う し て い る ん で す 。 ま た 、 オ イ デ ィ プ ス の 父

さ れ る は ず で し た が 命 を 助 け ら れ 、 代 わ り に 両 足 を ピ ン で 刺 さ

を 殺 す と い う 予 言 を 受 け 、 荒 野 に 捨 て ら れ ま す 。 ほ ん と う は 殺

と い う 意 味 で も あ る 。 オ イ デ ィ プ ス は 生 ま れ た と き 、 い つ か 父

は ﹁ ひ と ﹂ で す 。 し か も オ イ デ ィ プ ス と い う 名 前 は ﹁ 、 腫 れ た 足 ﹂

は 二 本 足 、 夜 は 三 本 足 に な る の は な に か ﹂ と い う も の で 、 答 え

プ ス が 解 く ス フ ィ ン ク ス の 謎 が あ る 。 そ れ は ﹁ 朝 は 四 本 足 、 昼

間 的 に 歩 く ﹂ と い う 問 題 と 深 く 関 わ っ て い ま す 。 ま ず 、 オ イ デ ィ

な か で も も っ と も よ く 知 ら れ て い る オ イ デ ィ プ ス の 物 語 は ﹁ 、 人

ト ラ は 母 を 殺 し 、 オ イ デ ィ プ ス は 父 を 殺 し た 。 ギ リ シ ア 悲 劇 の

エ レ ク ト ラ と 対 の 存 在 で あ る オ イ デ ィ プ ス の こ と で す 。 エ レ ク

ま を に す も す 徹 よ 。 う 。 底 く ヒ 的 わ ト ひ に か が と 追 っ 直 つ 究 て 立 付 す い 二 け る ま 足 加 の せ 歩 え が ん 行 て 鈴 。 を お 木 し 始 き さ か め た ん し た い の 、 理 の 演 こ 由 は 劇 の は 、 ギ だ 、 、 リ と ヒ 生 シ 、 ト 物 ア ぼ の 学 悲 く ヒ 的 劇 は ト に に 思 た も っ る い お て 由 ま い い 縁 だ て

図 1 鈴木忠志演出『エレクトラ』(初演は1995年)稽古風景 写真提供=劇団SCOT

043

人間は足から考える

鈴木忠志


ヒ ト の 系 列 を 隔 て る 解 剖 学 的 な 特 徴 は 、 直 立 二 足 歩 行 を し て い

物 が 出 て き て 、 そ れ が 人 間 に な っ て い く 。 四 つ 足 だ っ た 動 物 が 、

い る け れ ど も 、 チ ン パ ン ジ ー と は 異 な り 直 立 二 足 歩 行 を す る 動

る と い う こ と で す 。 七 〇 〇 万 年 ほ ど ま え 、 チ ン パ ン ジ ー に 似 て

人 間 的 に 歩 く

鈴 木 さ ん は ス ズ キ ・ メ ソ ッ ド と い う 身 体 訓 練 法 を 考   ヒ ト の ヒ ト た る 定 義 、 つ ま り チ ン パ ン ジ ー や ゴ リ ラ の 系 列 と

直 立 歩 行 を し て い る の と 同 じ 状 態 に な る 。

ち 方 は こ ん な だ っ た ろ う な と 思 わ せ る 。 そ れ が の ち に 、 ヒ ト が

姿 勢 は ゴ リ ラ の よ う で 、 ア ウ ス ト ラ ロ ピ テ ク ス や 初 期 人 類 の 立

お う か が い し た い と 思 い ま す 。 よ ろ し く お 願 い い た し ま す 。

﹁ 幽 霊 的 な 身 体 ﹂ を ひ と つ の 軸 に し て 、 大 澤 真 幸 さ ん と と も に

だ ん だ ん 立 ち 上 が っ て い く の で す 。 最 初 に 立 ち 上 が っ た と き の

彼 女 は 野 獣 の よ う な 四 つ 足 で 、 獣 の よ う に 悶 え 苦 し む 。 そ れ が

す る ﹂ で す 。 鈴 木 忠 志 さ ん の 演 劇 に お け る 身 体 の 問 題 に つ い て 、 は 、 舞 台 に 現 れ る と き 非 常 に 苦 悩 し て い ま す 。 こ の 場 面 で は 、

東 浩 紀

こ の 利 賀 セ ミ ナ ー の 全 体 テ ー マ は ﹁ 幽 霊 的 身 体 を 表 現 シ ン プ ル な 事 実 と 繊 細 に む き 合 っ て い る 。 主 人 公 の エ レ ク ト ラ

鈴 木 忠 志

聞 き 手

─ 大 澤 真 幸 + 東 浩 紀

イ ン タ ビ ュ ー

Humans Think from their Feet

自 然 に 反 し て ま っ す ぐ 立 っ て 歩 く と い う 技 術 を 習 得 し た わ け で

大 澤 真 幸

人 間 は 足 か ら 考 え る

特 集

─ 幽 霊 的 身 体

Masachi Osawa + Hiroki Azuma

案 さ れ 、 そ れ を 軸 に 演 劇 を 作 っ て い る わ け で す が 、 そ こ で は

Tadashi Suzuki

ま ま 人 し し セ 間 た た ミ が [ 。 ナ 立 図 1 ぼ ー っ ] く の 。 は プ て こ こ ロ 歩 の の グ く 作 芝 ラ こ 品 居 ム と は を で が 、 何 ﹃ き 人 度 エ わ 間 も レ め が 見 ク て 立 て ト 繊 っ い ラ 細 て る ﹄ に 歩 の の 扱 く に 舞 わ と 、 台 れ い や 稽 て う は 古 い も り を ま っ 感 拝 す と 動 見 。 も し し

利賀セミナー

2日目 2016/9/11

ゲンロン 5

042


問 題 。 共 産 党 宣 言 の 有 名 な 冒 頭 の 一 文 に 、

三 つ 目 は 政 治 や イ デ オ ロ ギ ー に 関 す る

た つ 目 の 論 点 で す 。

台 と い う 場 を 、 慰 霊 や 記 憶 の 保 持 の 可 能 性

い 空 間 と し て 存 在 し て い た 。 で は い ま 、 舞

テ ィ が 凝 縮 さ れ た 、 現 前 で も 非 現 前 で も な

と 、 舞 台 は 元 来 、 そ の よ う な 多 層 の リ ア リ

実 を 対 置 さ せ ま し た が 、 古 代 に 目 を む け る

で も あ る 。 ぼ く は い ま 現 前 の 舞 台 と 仮 想 現

い て 考 え る こ と は 、 そ う し た 状 況 に 対 す る

に 幽 霊 の 季 節 で も あ り ま す 。 い ま 幽 霊 に つ

の 季 節 に さ し か か り ま し た が 、 そ れ は 同 時

す が 、 今 回 の テ ー マ 設 定 に あ た り 、 そ の よ

向 に む か う の か 。 い さ さ か 抽 象 的 に な り ま

も む し ろ ﹁ 悪 魔 払 い ﹂ を し て 幽 霊 を 消 す 方

よ り 増 殖 さ せ る ほ う に む か う の か 、 そ れ と

の 演 劇 は い ま 、 民 主 主 義 と い う 名 の 幽 霊 を

劇 は 本 来 と て も 政 治 的 な 芸 術 で す 。 で は そ

新 た な 視 点 の 提 供 に も つ な が っ て い る 。 演

れ る 無 数 の キ ャ ラ ク タ ー た ち を 非 常 に 愛 し

で 、 イ ン タ ー ネ ッ ト を 通 し て 創 作 ・ 消 費 さ

の も 、 ぼ く は 日 本 の ア ニ メ や ゲ ー ム が 好 き

題 と い う こ と に な る か と 思 い ま す 。 と い う

の 中 心 と な る の は 仮 想 現 実 に 宿 る 幽 霊 の 問

れ た い く つ か の 論 点 で 言 う と 、 ぼ く の 発 表

梅 沢 和 木

021

記号から触覚へ

梅 沢 で す 。 い ま 東 さ ん が 挙 げ ら

梅 沢 和 木

プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 1

も 能 そ の も の が 死 者 の 声 を 聞 く た め の 演 劇   震 災 以 降 、 ぼ く た ち の 生 き る 時 代 は 政 治

は と き に 亡 霊 や 怨 霊 も 演 じ ま す が 、 そ も そ

置 き 換 え れ ば ﹁ ワ キ ﹂ に あ た り ま す 。 ワ キ

心 を 代 弁 す る 役 割 を 果 た す コ ロ ス は 、 能 に

も の と な っ て い る 。 ギ リ シ ア 劇 で 主 人 公 の

レ ク ト ラ ﹄ を 日 本 の 能 に 寄 せ て 再 解 釈 す る

鈴 木 忠 志 さ ん の 演 出 は 、 ギ リ シ ア 悲 劇 の ﹃ エ

し ま し た 。 ま さ に 圧 倒 的 な 舞 台 で し た が 、

う に 見 え ま し た 。

主 義 と い う 名 の 幽 霊 に 振 り 回 さ れ て い る よ

ど も ぼ く に は 、 彼 ら の 行 動 は 、 む し ろ 民 主

性 を 取 り 戻 し た も の の よ う に 見 え る 。 け れ

と ダ ン ス に よ っ て 政 治 の 場 に 具 体 的 な 身 体

さ れ て い た 。 彼 ら の 運 動 は い っ け ん 、 音 楽

昨 年 か ら 今 年 に か け て 、

よ ろ し く お 願 い い た し ま す 。

議 と し た い と 思 い ま す 。 で は 、 梅 沢 さ ん 、

佐 々 木 敦 さ ん に 加 わ っ て い た だ き 、 自 由 討

き ま す 。 そ の あ と 後 半 で は 、 大 澤 真 幸 さ ん 、

を も と に プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を し て い た だ

★ 1 ]

の 通 し 稽 古 を 拝 見

に 来 る ま え 、 み な さ ん と と も に 劇 団 S C O

く い 幽 霊 の よ う な 面 が あ り ま す 。 た が と 注 え 目 ば

ロ ギ ー や 理 念 に は 、 た し か に 正 体 が 掴 み に

義 は 当 初 、 幽 霊 と 名 指 さ れ て い た 。 イ デ オ

て こ ら れ た お ふ た り に 、 そ れ ぞ れ の 活 動

さ ん 、 美 術 家 と 舞 踊 家 と い う ま っ た く ち が

つ 、 ま ず 前 半 で は 、 梅 沢 和 木 さ ん と 金 森 穣

T ﹃ エ レ ク ト ラ ﹄ [

SEALDs

と 接 続 す る こ と は 可 能 か ど う か 。 こ れ が ふ

う 立 場 か ら 幽 霊 と 表 現 の 関 係 に つ い て 考 え

ふ た つ 目 は 死 者 の 追 悼 の 問 題 。 こ の 会 場

の か 。 こ れ が ひ と つ 目 の 問 い で す 。

主 義 と い う 幽 霊 が ﹂ と あ り ま す が 、 共 産 主   以 上 の よ う な さ ま ざ ま な 論 点 を 踏 ま え つ

ン ル で あ る 演 劇 は 、 ど の よ う に 応 答 で き る ﹁ ヨ ー ロ ッ パ を 幽 霊 が 徘 徊 し て い る 。 共 産 う な こ と も 考 え ま し た 。

梅沢和木+大澤真幸+金森穣+佐々木敦+東浩紀


の 身 体 を 使 い 、 現 実 の 舞 台 で 行 う 芸 術 ジ ャ

ん 。 そ の よ う な 状 況 に 対 し て 、 ﹁ い ま こ こ ﹂

で は 、 幽 霊 を い か に 論 じ る べ き か 。 具 体 霊 探 し の ゲ ー ム と 言 っ て い い か も し れ ま せ

ま ご ま め 東 今 す 説 え ま 浩 日 。 明 に す 紀 か し 、 。 ら 、 セ 司 利 三 問 ミ 会 賀 日 題 ナ を セ 間 提 ー 務 ミ に 起 全 め ナ わ 体 る ー に の 東 初 た つ り 企 で 日 な 画 す の 開 げ 催 意 。 共 た 図 議 同 す い を 論 討 る と 簡 に 議 本 思 単 入 を セ い に る 始 ミ

ひ と つ で す 。 デ リ ダ の 哲 学 で は 、 幽 霊 は 現

思 想 家 、 ジ ャ ッ ク ・ デ リ ダ の 主 要 な 概 念 の

は 、 フ ラ ン ス の

ナ ー は ﹁ 幽 霊 的 身 体 を 表 現 す る ﹂ と 題 さ れ

考 え て い ま す 。

を 捉 え う る の か と い う 問 い へ 接 続 し た い と

舞 踊 と い っ た 身 体 表 現 が い か に 社 会 の 諸 相

の 高 度 情 報 化 が 進 む 現 代 に お い て 、 演 劇 や

こ の セ ミ ナ ー で は 、 そ の 概 念 を さ ら に 、 こ

幽 霊 の 問 題 を 扱 っ た も の で も あ り ま し た 。

テ ー マ と し て き ま し た が 、 そ れ ら は ま さ に

霊 や ダ ー ク ツ ー リ ズ ム 、 死 者 の 追 悼 な ど を

て い る ﹃ ポ ケ モ ン G O ﹄ な ど は 、 ま さ に 幽

現 実 よ り 優 位 に な っ て い ま す 。 い ま 流 行 っ

あ る い は 仮 想 的 な も の に 対 す る 想 像 力 が 、

に 置 い て い ま す 。 そ こ で は 、 記 号 的 な も の 、

張 現 実 ︶

ニ ケ ー シ ョ ン や 、 V R

の 記 号 人 格

身 体 も 侵 食 し て い ま す 。 イ ン タ ー ネ ッ ト 上

と い っ た 新 た な 技 術 の 台 頭 を 念 頭

︵ キ ャ ラ ク タ ー ︶

︵ 仮 想 現 を 実 介 ︶ し

、 た A R コ ︵ ミ 拡 ュ

ぼ く は 批 評 誌 ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ で 、 か ね て 慰 会 は 記 号 に 覆 い 尽 く さ れ て い ま す 。 そ れ は

在 の 存 在 、 そ れ が 幽 霊 で す 。

ひ と つ 目 は 仮 想 現 実 の 問 題 で す 。 現 代 社

果 と し て 現 実 に も 影 響 を 与 え て し ま う 非 実

梅 沢 和 木 + 大 澤 真 幸 + 金 森 穣 + 佐 々 木 敦 + 東 浩 紀

共 同 討 議 1

From the Symbolic to the Tactile

的 な 展 開 は パ ネ ラ ー の み な さ ん に 委 ね た い

す る も の ﹂ と い う 含

て い ま す 。 幽 霊

前 と 非 現 前 の あ い だ に あ る も の で あ る と と

Kazuki Umezawa + Masachi Osawa + Jo Kanamori + Atsushi Sasaki + Hiroki Azuma

で す が 、 ぼ く か ら も 三 つ ほ ど 論 点 を 挙 げ て

も に 、 ﹁ 回 帰

revenant

み も 持 っ て い ま す 。 現 実 に は 存 在 し な い は

revenir

ず な の に 、 頭 か ら 離 れ ず 執 拗 に 回 帰 し 、 結

記 号 か ら 触 覚 へ

特 集

─ 幽 霊 的 身 体

お き ま す 。

利賀セミナー

1日目 2016/9/10

ゲンロン 5

020


日 か ら 一 二 日 に か け 、 二 泊 三 日 で

015

ミ ナ ー は 二 〇 一 六 年 の 九 月 一 〇

緯 で 企 画 さ れ た も の で あ る 。 セ

ロ ン 利 賀 セ ミ ナ ー は 、 以 上 の 経

る が か た イ そ は る 界 も 鈴 た カ 寺 る こ 。 目 れ い ベ の じ 。 に っ 木 図 リ 山 。 こ 指 る と ン 逆 め 二 通 た は 書 フ 修 磯 に す 、 考 ト を 説 て 〇 じ 。 東 館 ォ 司 崎 一 も そ え い に 利 一 る し 京 ︵ ル が 新 部 の の た ち 魅 賀 五 ト か を 現 ニ 演 設 の で 逆 。 ど 了 村 年 ン し 捨 劇 ア 記 大 じ 計 も 説 閉 こ さ を の ネ そ て 団 事 の 録 ル あ は じ の れ 訪 夏 学 た の が 山 山 務 を っ ま 所 ら 舞 劇 、 れ た た る 地 ゲ た 、 穿 奥 奥 ︶ 収 台 場 か ゲ こ で ン ぼ 演 た に に が が が が め 寄 と 劇 実 ロ ら ン れ は 引 あ た あ あ で ロ で 施 ン く 祭 て 、 き る 贈 ゲ は る り ン い 世 こ あ ン 開 し の し で 、 。 。 、

幽霊になるための三日間

東浩紀


利賀 セミナー 2016

富 山 県 ●

利 賀 村 は 演 劇 の 聖 地 と さ れ

一 九 七 六 年 の こ と だ 。

団 S C O T が 移 り 住 ん だ の は 、

な 寒 村 に 鈴 木 忠 志 と 彼 率 い る 劇

は 豪 雪 に 閉 ざ さ れ る 。 こ の 小 さ

︵ 二 〇 〇 四 年 よ り 南 砺 市 の 一 部 ︶

山 に 。 ほ 富 ど 山 近 市 い か ら 山 車 あ で い 二 に 、 時 ︵ 間 二 は 利 。 〇 一 開 賀 冬 〇 け 村 年 ︶

て い る 。 人 口 わ ず か 六 〇 〇

造 り で 知 ら れ る 白 川 郷 や 五 箇

富 山 県 と 岐 阜 県 の 県 境 、 合 掌

東 浩 紀

三な幽 日る霊 間たに め の ゲンロン 5

014


特集

幽霊的身体 Ghostly Body

013

批評とは幽霊を見ることである

東浩紀



か り 語 っ て き た 。

007

さ て 、 ぼ く は 前 号 の ﹃ ゲ ン ロ ン 4 ﹄ ま で 、 こ の 巻 頭 言 で は 、 哲 学 や 批 評 の 存 在 意 義 に つ い て ば

ヒ ン ト を も ら え る の で は な い か と 思 う 。 お 楽 し み い た だ き た い 。

こ に な い も の の 召 喚 が い か に 多 様 な 方 法 で 試 み ら れ て い る の か 、 読 者 は そ れ ら の 論 考 か ら 多 く の

の 最 前 線 で 、 い か に 幽 霊 の 主 題 が 繰 り 返 し ︵ 幽 霊 的 に ? ︶

現 れ て い る の か 、 そ し て そ こ で 、 い ま こ

福 嶋 亮 大 に よ る 文 学 か ら の 幽 霊 論 、 渡 㞡 大 輔 に よ る 映 画 か ら の 幽 霊 論 を 加 え た 。 現 代 日 本 の 表 現

批評とは幽霊を見ることである

佐 々 木 敦 に よ る 対 談 、 鴻 英 良 に よ る 舞 踊 か ら の 幽 霊 論 、 木 ノ 下 裕 一 に よ る 歌 舞 伎 か ら の 幽 霊 論 、

な 議 論 を 繰 り 広 げ た 。 今 号 で は そ こ に さ ら に 、 や は り 同 じ よ う に 非 現 前 を 主 題 と し た 屋 法 水 と

ナ ー で は 、 演 出 家 、 舞 踊 家 、 美 術 家 、 社 会 学 者 、 批 評 家 ら が 集 ま り 、 幽 霊 と 身 体 を テ ー マ に 活 発

間 の 芸 術 村 で 行 わ れ た 、 三 日 間 の セ ミ ナ ー の 記 録 で あ る 。 詳 し く は 別 の 記 事 に 記 し た が 、 同 セ ミ

特 集 の 中 心 を な す の は 、 二 〇 一 六 年 の 秋 に 、 鈴 木 忠 志 が 四 〇 年 の 歳 月 を か け て つ く り あ げ た 山

画 論 ま で を 参 照 し 、 多 角 的 に 考 え て み よ う と 企 て た 。

以 上 の 認 識 の も と 、 ぼ く は 今 号 で は 、 現 代 社 会 の 幽 霊 に つ い て 、 哲 学 か ら 文 学 論 や 演 劇 論 、 映

き て い る 。 メ デ ィ ア の 時 代 と は 幽 霊 の 時 代 の こ と な の だ 。

あ り 、 そ の 身 体 は 入 力 に 応 じ て 計 算 さ れ た も の に す ぎ な い 。 ぼ く た ち は 幽 霊 に 囲 ま れ た 時 代 に 生

キ ャ ラ ク タ ー に い た っ て は 、 そ も そ も 写 像 と し て も 実 在 し な い 。 キ ャ ラ ク タ ー の 実 体 は デ ー タ で

に 実 在 す る の は 、 俳 優 の 身 体 の 写 像 、 つ ま り 現 前 の 痕 跡 で し か な い 。 そ し て イ ン タ ー フ ェ イ ス の

え に 現 前 し 実 在 し た 。 対 し て 、 映 画 俳 優 は ス ク リ ー ン の う え に も 実 在 し な い 。 ス ク リ ー ン の う え

東浩紀


と 言 う こ と は で き る 。 と は い え 、 そ こ に は 見 逃 せ な い 差 異 も 生 ま れ て い る 。 舞 台 俳 優 は 舞 台 の う

ゲ ー ム や コ ン ピ ュ ー タ の イ ン タ ー フ ェ イ ス で 生 成 さ れ る キ ャ ラ ク タ ー も 、 み な 同 じ よ う に 幽 霊 だ

て い る 。 舞 台 俳 優 が 幽 霊 で あ る の と 同 じ よ う に 、 映 画 の ス ク リ ー ン に 映 し 出 さ れ た 俳 優 も 、 ま た

言 た え だ る し 。 、 そ の 幽 霊 の 濃 度 は 、 物 語 を 担 う メ デ ィ ア が 技 術 的 に 複 雑 に な る に つ れ 、 確 実 に 高 ま っ

に は 生 ま れ な い 。 し た が っ て 、 こ の 点 で は そ も そ も あ ら ゆ る 文 化 は 幽 霊 な し に は 成 立 し な い と も

な し が 物 い そ 演 ら 語 。 れ 劇 同 は の 時 と 、 身 に は い 体 見 一 ま は え 般 こ 、 な に こ こ い 、 に の も い な 点 の ま い で で こ も ま も こ の さ あ に を に る な 召 幽 、 い 換 霊 そ も す 的 の の る で よ を た あ う 召 換 め る な で 。 両 す あ 俳 義 る る 優 性 語 。 は を り 俳 い 指 の 優 ま す こ が こ 言 と 演 こ 葉 で じ に と あ る あ し る 役 る て 。 柄 舞 用 あ は 台 い ら い で ら ゆ ま 演 れ る こ 技 て 文 こ を い 化 に す る は は る 。 物 実 。 語 在 し な し か し

的 で あ り な が ら 同 時 に 非 現 前 的 で も あ る 、 す な わ ち 、 い ま こ こ で 目 の ま え に 見 え る も の で あ り な

批 評 と は 幽 霊 を 見 る こ と で あ る

﹃ ゲ ン ロ ン 5 ﹄ を お 送 り す る 。 今 号 の 特 集 は ﹁ 幽 霊 的 身 体 ﹂ で あ る 。 幽 霊 的 と は こ こ で は 、 現 前

東 浩 紀

ゲンロン 5

006


─ 速 水 健 朗

: :

他 の 平 面 論   第 4 回

ふ た つ の ﹁ 日 本 文 化 論 ﹂ 批 判

─ 黒 瀬 陽 平 Yohei Kurose

︶ ─ 井 出 明

新 し い 目 ─の ─旅 立 ち   第 2 回

プ ラ ー プ ダ ー ・ ユ ン Prabda Yoon

満 州 と い う プ リ ズ ム ︵

2

辻 安 田 天 真 佐 憲

第 12 回

フ ェ イ ク ニ ュ ー ス と 国 家 転 覆 、 北 海 道 共 和 国 の 系 譜

Wake Up New

─ ─

210

# 6

第 4 回

Criticism of Two Theories of Japanese Culture

福 # 冨 20 渉

独 立 国 家 論

4

Kenro Hayamizu

表 紙 ・ 扉 イ メ ー ジ ─ 梅 沢 和 木

上 田 洋 子

Fake News and Subversion of the State: Genealogy of the Republic of Hokkaido

海 猫 沢 め ろ ん ﹁ デ ィ ス ク ロ ニ ア の 鳩 時 計 ﹂ は 今 号 は 休 載 で す 。

﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ 既 刊 紹 介

─ 真

A kira Ide

LABORATORIES

300

English Translations and Abstracts

ア ー ト デ ィ レ ク シ ョ ン & デ ザ イ ン ─ 加 藤 賢 策

# 7

# 3

ダ ー ク ツ ー リ ズ ム 入 門   ─

The Prism of Manchuria

E01

﹃ ゲ ン   ロ ン β ﹄ 既 刊 紹 介

タ イ 現 代 文 学 ノ ー ト

On Other Surfaces

299

賭 軍 韓 博 歌 国 は で 夢 世 現 界 代 未 を 思 想 來 ど は # う 行 18 変 き ─ え て 市 た い 川 か た

4

298

寄 稿 者 一 覧

ロ シ ア 語 で 旅 す る 世 界

On Independent States

303

編 集 後 記 ・ 支 援 者 一 覧

Introduction to Dark Tourism 12

223

240

252

268

274

280

284

289

コ ラ ム

─ 福 冨 渉


102

086

080

コ ラ ム

対   説

コ ラ ム

虚 体 、 死 体 、 そ し て ︿ 外 ﹀ へ

ニ ッ ポ ン の 演 劇 と は

Theater is “Half and Half” Theater in Nippon Post-“Post-chelfitsch”

─ 高 間 響

Ghosts of Kabuki

Yuichi K inoshita

Demon, Sublime, Body: Akinari Ueda and the 18th Century Paradigm

Ghosts that Possess the “Face”: Visual Culture and the Ghostly

Utopia and Dialectics

Hibiki Takama

Norimizu A meya + Atsushi Sasaki

Daisuke Watanabe

R yota Fukushima

Empty Bodies, Dead Bodies, and the “Outside”: Towards an Ideal of 21st Century Dance

Hidenaga Otori

Atsushi Sasaki

屋 法 水 + 佐 々 木 敦

映 像 文 化 と 幽 霊 的 な も の ─ 渡

─ 乗 松 亨 平 解 題

Valer y Podoroga + Fredric Jameson + V ladimir Mironov + Helen Petrovsk y + Oleg A ronson + A ndrei Paramonov + Jonathan Flatley + Peter Fit ting

147

─ 木 ノ 下 裕 一

上 田 秋 成 と 一 八 世 紀 の パ ラ ダ イ ム ─ 福 嶋 亮 大 ─ 上 田 洋 子

160

180

二 一 世 紀 の ダ ン ス の 理 念 に 向 け て ─ 鴻 英 良

上 田 洋 子

幽 霊 と し て の 歌 舞 伎 悪 霊 ・ 崇 高 ・ 身 体 ﹁ 顔 ﹂ に 憑 く 幽 霊 た ち

ユ ー ト ピ ア と 弁 証 法 ジ ョ ナ サ ン ・ フ ラ ッ ト リ ー + ピ ー タ ー ・ フ ィ ッ テ ィ ン グ

ウ ラ ジ ー ミ ル ・ ミ ロ ノ フ + エ レ ー ナ ・ ペ ト ロ フ ス カ ヤ + オ レ グ ・ ア ロ ン ソ ン + ア ン ド レ イ ・ パ ラ モ ノ フ +

ヴ ァ レ リ ー ・ ポ ド ロ ガ + フ レ ド リ ッ ク ・ ジ ェ イ ム ソ ン

大 輔

﹁ チ ェ ル フ ィ ッ チ ュ 以 後 ﹂ 以 後 の ニ ッ ポ ン の 演 劇 ─

─ 佐 々 木 敦

演 ニッポ 劇 ンの演 と劇 は 半 々 で あ る

Playwrights Workshop as Consensus Formation Training

106 解   考

130

108

劇 作 ワ ー ク シ ョ ッ プ と い う 名 の 合 意 形 成 訓 練

特 別 掲 載 共 同 討 議


042

020

014 導

目 次

Criticism, or Seeing Ghosts

─ 東 浩 紀

From the Symbolic to the Tactile

Three Days Devoted to Becoming a Ghost

幽 霊 に な る た め の 三 日 間

2017 June

Hiroki A zuma

Hiroki A zuma

Tadashi Suzuki

Kazuki Umezawa + Masachi Osawa + Jo Kanamori + Atsushi Sasaki + Hiroki A zuma

Humans Think from their Feet

鈴 木 忠 志

006

060

共 同 討 議 1

Ghostly Body

─ 東 浩 紀

5 批 評 と は 幽 霊 を 見 る こ と で あ る

幽 霊 的 身 体

イ ン タ ビ ュ ー

利 賀 セ ミ ナ ー

記 号 か ら 触 覚 へ 梅 沢 和 木 + 大 澤 真 幸 + 金 森 穣 + 佐 々 木 敦 + 東 浩 紀

人 間 は 足 か ら 考 え る

The Origin of Theater and the Birth of Ghosts

演 劇 の 起 源 と 幽 霊 の 条 件 Masachi Osawa + Atsushi Sasaki + Hiroki A zuma

大 澤 真 幸 + 佐 々 木 敦 + 東 浩 紀

─ 大 澤 真 幸 + 東 浩 紀 聞 き 手

特 集 入

共 同 討 議 2

Masachi Osawa + Hiroki A zuma

東 浩 紀



genron triannua l Edited by Hiroki Azuma

5 Norimizu Ameya Chun An Oleg Aronson Hiroki Azuma Peter Fitting Jonathan Flatley Ryota Fukushima Sho Fukutomi Kenro Hayamizu Makoto Ichikawa Akira Ide Fredric Jameson Jo Kanamori Yuichi Kinoshita Yohei Kurose Vladimir Mironov Kyohei Norimatsu Masachi Osawa Hidenaga Otori Andrei Paramonov Helen Petrovsky Valery Podoroga Atsushi Sasaki Tadashi Suzuki Hibiki Takama Masanori Tsujita Yoko Ueda Kazuki Umezawa Daisuke Watanabe Prabda Yoon




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