Genron 7 Russian Contemporary Thought II English Translations and Abstracts Full Text E02
J032
Hiroki Azuma
The Revival of Distance
Translated by Christopher Lowy
Abstracts
Translated by Michael Chan and John Person
E06
Junna Hiramatsu + Takashi Matsushita + Kyohei Norimatsu + Naoto Yagi + Yoko Ueda
Proofreading assisted by Kako Kishimoto
Russian Contemporary Thought II J044
Remaking History: The Soviet Union as Cultural Foundation E 07
J092
E08
J134
Naoto Yagi
The Struggle of Post-Soviet Leftist Art: Politicizing Art, Activating the Public Muneaki Hatakeyama
Eisenstein: Motion, Image, and Animation Rebooting Philosophy Masaya Chiba + Koichiro Kokubun + Hiroki Azuma
E09
J0 0 6
E10
J222
Dai Sato + Sayawaka + Hiroki Azuma
E11
J244
Ken Yamashita
E12
J282
Connection, Disconnection, Misdelivery Is there a Future in/for Cyberpunk?: Games, Virtual Reality, Theme Parks
The Invisible Borders of the Image: An Introduction to a Theory of a New Japanese Landscape
Yohei Kurose
On Other Surfaces│6│ The Outside Eye Gazes
E13
J29 6
Kenro Hayamizu
On Independent States│6│
The Emperor System, Haruki Murakami, and Endlessly Manifesting Pseudo-States
E14
J329
Novel
Melon Uminekozawa
The Pigeon Clock of Dischronia│Afternoon VI│ E15
−
Contributors and Translators
* Exx refers to pages of translations or abstracts in English language, while Jxx refers to the original texts in Japanese.
ゲンロン7 ロシア現代思想 II げんだい し そう
Genron 7 Russian Contemporary Thought II
発行日
次号予告
2017(平成29)年12月15日 第1刷発行
ゲンロン8
編集人 あずま ひろ
東浩紀(編)
東浩紀
2018年4月刊行予定
発行人
ゲーム(仮) 橋野桂/イバイ・アメストイ
東浩紀
井上明人/吉田寛
発行所
さやわか/黒瀬陽平
株式会社ゲンロン
今井晋 ほか
141-0031
許煜/プラープダー・ユン
東京都品川区西五反田1-16-6
速水健朗/海猫沢めろん
イルモンドビル2F TEL: 03-6417-9230 FA X : 03-6417-9231
「失
info@genron.co.jp http://genron.co.jp/
25年」 起
?
1990年代以降 批評
変遷
史 、 化
日本社会 新
閉塞 同時 語 論。
最先端 日本
& 加藤賢策(LABOR ATORIES) 印刷 株式会社シナノパブリッシングプレス 編集
限界 可能性 聞 。
上田洋子 徳久倫康 富久田朋子 山本和幸
集、年表付 。
DTP 北岡誠吾(LABOR ATORIES)
定価
裏表紙
本書
無断複写(
表示
落丁本・乱丁本
。 ) 著作権法
取 替
©2017 Genron Co., Ltd. Printed in Japan ISBN 978-4-907188-24-5
例外 。
除 、禁
。
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始 第友ゲ 動 8 のン ロ 期会ン
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寄稿者一覧
ル セ ン タ ー 特 任 講 師 。 著 書 に ﹃ タ イ 文 学 覚 書 ﹄ ︵ 風 響 社 、 近 刊 ︶ な ど 。
ふ く と み ・ し ょ う
梅表 沢紙 和 木 | う め ざ わ ・ か ず き
波 書 店 ︶ 。
シ ア 世 界 4 ﹄ ︵ 東 京 大 学 出 版 会 ︶ ﹃ 、 ロ シ ア 革 命 と ソ 連 の 世 紀 4 ﹄ ︵ 岩
︵ ゲ ン ロ ン 、 第 七 一 回 毎 日 出 版 文 化 賞 ︶ な ど 。
七 五 年 生 。 金 沢 大 学 准 教 授 。 専 門 は ロ シ ア 文 学 。 共 著 に ﹃ ユ ー ラ
︵ 講 談 社 ︶ 、 ﹃ 弱 い つ な が り ﹄ ︵ 幻 冬 舎 ︶ 、 ﹃ ゲ ン ロ ン 0 観 光 客 の 哲 学 ﹄
平 松 潤 奈 | ひ ら ま つ ・ じ ゅ ん な
七 一 年 生 。 思 想 家 、 作 家 。 ゲ ン ロ ン 代 表 。 著 書 に ﹃ 一 般 意 志 2 ・ 0 ﹄
東 浩 紀 | あ ず ま ・ ひ ろ き
博 士 ︵ 学 術 ︶ 。 高 崎 経 済 大 学 経 済 学 部 准 教 授 。 著 書 に ﹃ ス ピ ノ ザ
に 住 む ? ﹄ ︵ 朝 日 新 書 ︶ な ど 。
孔 の 中 ﹄ ︵ 共 訳 、 松 籟 社 ︶ な ど 。
七 四 年 生 。 哲 学 者 。 東 京 大 学 大 学 院 総 合 文 化 研 究 科 博 士 課 程 修 了 。 七 三 年 生 。 ラ イ タ ー 。 近 著 に ﹃ 東 京 β ﹄ ︵ 筑 摩 書 房 ︶ 、 ﹃ 東 京 ど こ
舞 伎 と 革 命 ロ シ ア ﹄ ︵ 森 話 社 ︶ 、 訳 書 に ク ル ジ ジ ャ ノ フ ス キ イ ﹃ 瞳
國 分 功 一 郎 | こ く ぶ ん ・ こ う い ち ろ う
速 水 健 朗 | は や み ず ・ け ん ろ う
七 四 年 生 。 ロ シ ア 文 学 者 、 博 士 ︵ 文 学 ︶ 。 ゲ ン ロ ン 副 代 表 。 編 著 に ﹃ 歌
オ ス * ラ ウ ン ジ ﹂ 代 表 。 著 書 に ﹃ 情 報 社 会 の 情 念 ﹄ ︵ N H K 出 版 ︶ 。 大 学 出 版 会 ︶ な ど 。
上 田 洋 子 | う え だ ・ よ う こ
学 院 美 術 研 究 科 博 士 後 期 課 程 修 了 。 ア ー テ ィ ス ト ・ グ ル ー プ ﹁ カ
八 三 年 生 。 美 術 家 、 美 術 批 評 家 、 キ ュ レ ー タ ー 。 東 京 藝 術 大 学 大
黒 瀬 陽 平 |
ベ ラ ル ア ー ツ 学 部 准 教 授 、 ﹃ 非 常 備 蓄 ﹄ 誌 編 集 長 。
七 五 年 生 。 文 化 史 家 、 文 芸 批 評 家 。 サ ン ク ト ペ テ ル ブ ル ク 大 学 リ
る い は 対 立 の 亡 霊 ﹄ ︵ 講 談 社 選 書 メ チ エ ︶ 。
文 学 ・ 思 想 。 著 書 に ﹃ リ ア リ ズ ム の 条 件 ﹄ ︵ 水 声 社 ︶ 、 ﹃ ロ シ ア あ
く ろ せ ・ よ う へ い
論 、 エ イ ゼ ン シ ュ テ イ ン 研 究 。 共 著 に ﹃ デ ジ タ ル の 際 ﹄ ︵ 聖 学 院
七 四 年 生 。 聖 学 院 大 学 人 文 学 部 助 教 。 専 門 は 映 画 理 論 、 表 象 文 化
畠 山 宗 明 |
ず れ も 未 邦 訳 ︶ な ど 。
書 に ﹃ ロ シ ア ・ ユ ー ラ シ ア 主 義 ﹄ ﹃ 中 央 ア ジ ア の グ ロ ー バ ル 化 ﹄ ︵ い
係 大 学 院 ヨ ー ロ ッ パ ・ ロ シ ア ・ ユ ー ラ シ ア 研 究 所 、 特 任 教 授 。 著
は た け や ま ・ む ね あ き
七 二 年 生 。 歴 史 家 。 ジ ョ ー ジ ・ ワ シ ン ト ン 大 学 エ リ オ ッ ト 国 際 関
マ ル レ ー ヌ ・ ラ リ ュ エ ル |
イ リ ヤ ・ カ リ ー ニ ン |
な ス は 五 ど ﹄ フ 五 。 ﹃ ィ 年 鞭 レ 生 身 ン 。 教 ツ ロ 徒 ェ シ ﹄ ﹃ の ア 国 欧 文 内 州 化 植 大 史 民 学 家 地 院 。 化 教 ケ 授 ン ﹄ ﹃ 。 ブ 歪 著 リ ん 書 ッ だ に ジ 喪 ﹃ 大 ﹄ ︵ 不 学 い 可 教 ず 能 授 れ な を も も 経 未 の て 邦 の 、 訳 エ 現 ロ 在 ︶
七 五 年 生 。 東 京 大 学 大 学 院 総 合 文 化 研 究 科 准 教 授 。 専 門 は ロ シ ア
乗 松 亨 平 |
ル ド ・ プ レ ミ ア 。
作 目 の 長 編 映 画 ﹃ 現 れ た 男 ﹄ が 、 第 三 〇 回 東 京 国 際 映 画 祭 で ワ ー
一 月 号 ︶ な ど 。
の り ま つ ・ き ょ う へ い
と の 絶 滅 に 向 か っ て
│ レ イ ・ ブ ラ シ エ 論 ﹂ ︵ ﹃ 現 代 思 想 ﹄ 一 六 年
ク ス ・ ジ ャ パ ン ︶ 、 ﹃ パ ン ダ ﹄ ︵ 東 京 外 国 語 大 学 出 版 会 ︶ な ど 。 二
領 域 は 多 岐 に わ た る 。 邦 訳 に ﹃ 鏡 の 中 を 数 え る ﹄ ︵ タ イ フ ー ン ・ ブ ッ
七 三 年 生 。 作 家 、 グ ラ フ ィ ッ ク ア ー テ ィ ス ト 、 映 画 監 督 な ど 活 動
る メ タ ・ ポ レ ミ ッ ク ス ﹂ ︵ ﹃ ユ リ イ カ ﹄ 一 二 年 一 〇 月 号 ︶ 、 ﹁ 聴 く こ
ア レ ク サ ン ド ル ・ エ ト キ ン ト |
九 一 年 生 。 批 評 家 。 主 な 寄 稿 に ﹁ ﹃ ポ ス ト ・ ケ ー ジ 主 義 ﹄ を め ぐ
プ ラ ー プ ダ ー ・ ユ ン |
ปราบดา หยุ่น
CASHI
八 五 年 生 。 美 術 家 。 武 蔵 野 美 術 大 学 造 形 学 部 映 像 学 科 卒 業 。
福 冨 渉 |
さ と う ・ だ い
の 方 法 ﹄ ︵ み す ず 書 房 ︶ 、 ﹃ 暇 と 退 屈 の 倫 理 学 ﹄ ︵ 太 田 出 版 ︶ 、 ﹃ 中 動
Marlène Laruelle
お よ び カ オ ス * ラ ウ ン ジ に 所 属 。
八 六 年 生 。 タ イ 文 学 研 究 者 、 タ イ 語 翻 訳 者 。 鹿 児 島 大 学 グ ロ ー バ
態 の 世 界 ﹄ ︵ 医 学 書 院 ︶ な ど 。
談 社 現 代 新 書 ︶ な ど 。
Александр Эткинд
﹄ 、
佐 藤 大 |
六 九 年 生 。 脚 本 家 。 ス ト ー リ ー ラ イ ダ ー ズ 株 式 会 社 代 表 取 締 役 。 脚
Илья Калинин
本 代 表 作 と し て 、 T V ア ニ メ ﹃ 攻 殻 機 動 隊 STAND ALONE COMPLEX
﹃ 交 響 詩 篇 エ ウ レ カ セ ブ ン ﹄ 、 ﹃ ス ペ ー ス ☆ ダ ン デ ィ ﹄ な ど 。
仲 山 ひ ふ み | な か や ま ・ ひ ふ み
﹃ ヱ ク リ ヲ ﹄ 編 集 部 員 。
八 九 年 生 。 ︿ ゲ ン ロ ン 佐 々 木 敦 批 評 再 生 塾 ﹀ 第 二 期 総 代 。 批 評 誌
第 三 九 回 野 間 文 芸 新 人 賞 候 補 ︶ 、 ﹃ 明 日 、 機 械 が ヒ ト に な る ﹄ ︵ 講
デ ビ ュ ー 。 近 著 に ﹃ キ ッ ズ フ ァ イ ヤ ー ・ ド ッ ト コ ム ﹄ ︵
冬 舎 新 書 ︶ 、 ﹃ 文 部 省 の 研 究 ﹄ ︵ 文 春 新 書 ︶ な ど 。
八 四 年 生 。 文 筆 家 、 近 現 代 史 研 究 者 。 著 書 に ﹃ 大 本 営 発 表 ﹄ ︵ 幻
山 下 研 | や ま し た ・ け ん
七 五 年 生 。 文 筆 業 。 ﹃ 左 巻 キ 式 ラ ス ト リ ゾ ー ト ﹄ ︵ 星 海 社 講 文 談 庫 ︶ 社 で 、
海 猫 沢 め ろ ん | う み ね こ ざ わ ・ め ろ ん
辻 田 真 佐 憲 | つ じ た ・ ま さ の り
ク ス ト 分 析 入 門 ﹄ ︵ ひ つ じ 書 房 ︶ な ど 。
文 化 。 共 著 に ﹃ 再 考 ロ シ ア ・ フ ォ ル マ リ ズ ム ﹄ ︵ せ り か 書 房 ︶ 、 ﹃ テ
田 塁 ﹂ 名 義 ︶ な ど 。
後 で ﹄ ︵ 共 訳 、 人 文 書 院 ︶ な ど 。
強 の 哲 学 ﹄ ︵ 文 藝 春 秋 ︶ 、 訳 書 に カ ン タ ン ・ メ イ ヤ ス ー ﹃ 有 限 性 の
七 七 年 生 。 早 稲 田 大 学 文 学 学 術 院 専 任 講 師 。 専 門 は ロ シ ア 文 学 ・
八 木 君 人 | や ぎ ・ な お と
学 学 術 院 准 教 授 。 著 書 に ﹃ 紙 の 本 が 亡 び る と き ? ﹄ ︵ 青 土 社 、 ﹁ 前
七 一 年 生 。 文 芸 批 評 家 、 ﹃ 早 稲 田 文 学 ﹄ 編 集 委 員 、 早 稲 田 大 学 文
市 川 真 人 |
科 准 教 授 。 著 書 に ﹃ 動 き す ぎ て は い け な い ﹄ ︵ 河 出 書 房 新 社 ︶ 、 ﹃ 勉
七 八 年 生 。 哲 学 者 、 批 評 家 。 立 命 館 大 学 大 学 院 先 端 総 合 学 術 研 究
千 葉 雅 也 |
脂 ﹄ ︵ 共 訳 ︶ 、 ﹃ テ ル リ ア ﹄ ︵ い ず れ も 河 出 書 房 新 社 ︶ な ど 。
八 四 年 生 。 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員 。 訳 書 に ソ ロ ー キ ン ﹃ 青 い
い ち か わ ・ ま こ と
ち ば ・ ま さ や
松 下 隆 志 | ま つ し た ・ た か し
り ﹄ 、 佐 々 木 中 ﹃ 夜 戦 と 永 遠 ﹄ ﹃ こ の 熾 烈 な る 無 力 を ﹄ な ど の 韓 国
七 四 年 生 。 韓 国 語 翻 訳 者 。 東 浩 紀 ﹃ 一 般 意 志 2 ・ 0 ﹄ ﹃ 弱 い つ な が
安 天 |
て の ド ラ ゴ ン ク エ ス ト ﹄ ︵ コ ア 新 書 ︶ な ど 。
年 代 文 化 論 ﹄ ﹃ 文 学 の 読 み 方 ﹄ ︵ い ず れ も 星 海 社 新 書 ︶ 、 ﹃ 文 学 と し
七 四 年 生 。 ラ イ タ ー 、 物 語 評 論 家 。 著 書 に ﹃ 僕 た ち の ゲ ー ム 史 ﹃ ﹄ 一 〇
さ や わ か
問 い ﹄ ︵ い ず れ も 未 邦 訳 ︶ な ど 。
﹃ デ ジ タ ル オ ブ ジ ェ ク ト の 存 在 に つ い て ﹄ ﹃ 中 国 に お け る 技 術 へ の
八 五 年 生 。 ロ イ フ ァ ナ 大 学 リ ュ ー ネ ブ ル ク で 教 鞭 を と る 。 著 書 に
許 煜 |
語 版 翻 訳 を 手 掛 け る 。
ゲンロン 7
あ ん ・ ち ょ ん
안 천
ほ い ・ ゆ く 战 簖
350
は 、 ﹁ ひ ど い こ と に な っ て い る ﹂ と
︵ 彼 は 警 視 総 監 に 任 命 さ れ て い た た め 、 追 い 出
次 の 王 様 の 座 を 奪 い 合 っ て ケ ン カ を 始 め た の だ 。 王 の 座 を 追 わ
ア ド バ イ ス す る 。 ﹁ じ ゃ 日 本 を 離 れ て 独 立 国 を 作 る ん だ ね ﹂ 。
い ら だ ち を 覚 え る 。 そ ん な Q 太 郎 た ち に 、 イ ン テ リ の ハ カ セ が
説 教 さ れ る 正 ち ゃ ん 。 彼 ら は 自 分 の 自 由 を し ば る 法 律 の 存 在 に
校 に 通 い た く な い が 法 律 で 定 め ら れ た 義 務 教 育 な の だ と 父 親 に
い が 勃 発 。 ク ー デ タ ー に 参 加 し た 正 ち ゃ ん 、 キ ザ オ 、 ハ カ セ も 、
Q 太 郎 は 追 い 出 さ れ た 。 だ が そ の 後 、 権 力 の 座 を め ぐ る 跡 目 争
﹁ そ れ 、 暴 君 を た お せ ﹂ の か け 声 で ク ー デ タ ー が 起 き 、 独 裁 者
か な か っ た 王 様 は 、 す ぐ に 国 民 か ら 刃 を 向 け ら れ る こ と に な る 。
赤 信 号 を 横 断 し て お ま わ り さ ん に 叱 ら れ て し ま う Q 太 郎 、 学 Q 太 郎 に と っ て の 自 由 は 、 他 人 に と っ て の 不 自 由 。 そ れ に 気 付
試 み る ﹁ オ バ Q 王 国 ﹂ と い う エ ピ ソ ー ド が あ る
﹃ オ バ ケ の Q 太 郎 ﹄ に は 、 Q 太 郎 た ち が 日 本 か [ ら ★ 1 の ] 分 。 離 独 立 を に 居 住 し 、 キ ザ オ が 木 の 実 を 見 つ け れ ば 、 す か さ ず 横 ど り す る 。
将 の ゴ ジ ラ が 自 分 で 家 を 建 て れ ば 、 王 様 の Q 太 郎 が そ こ に 勝 手
速 水 健 朗
オ バ Q 王 国 の ジ レ ン マ
だ が 、 す ぐ に ほ こ ろ び が 見 え て く る 。 王 国 の 国 民 で あ る ガ キ 大
べ て 叶 え る と い う 究 極 の リ バ タ リ ア ニ ズ ム 国 家 で あ る 。
遊 ん で く ら す の が オ バ Q 王 国 の 憲 法 だ ﹂ 。
─ ─
The Emperor System, Haruki Murakami, and Endlessly Manifesting Pseudo-States
れ た Q 太 郎 と ゴ ジ ラ
Q ち ゃ ん は 無 人 島 を 見 つ け て 仲 間 た ち を 移 住 さ せ 、 オ バ Q 王
6
さ れ る 側 に 回 っ て し ま っ た ︶
On Independent States
国 を つ く り 、 独 立 宣 言 を 行 う 。 国 王 に 就 任 し た 直 後 の 演 説 は
Kenro Hayamizu
こ う い う も の だ 。 ﹁ 寝 た い と き に 寝 て 、 食 べ た い と き に 食 べ て 、
独 立 国 家 論
論 考
第 6 回
天 皇 制 、 村 上 春 樹 、 い く ど も 立 ち 現 れ る 疑 似 国 家
各 人 の 望 む 自 由 は す
ゲンロン 7
296
ヤ ー だ っ た が 、 い ま の と こ ろ 、 良 い 意 味 で も 悪 い 意 味 で も 多 く
ン ス タ ー 彫 刻 プ ロ ジ ェ ク ト ﹂ が 同 時 に 開 催 さ れ る ス ペ シ ャ ル イ
う テ ー マ も 忘 れ る べ き で は な い 。 周 知 の よ う に 、 シ ム ジ ッ ク が
イ ツ が 、 ア テ ネ と と も に 現 代 美 術 の 祭 典 を 開 催 す る こ と の 意 義
E U の 中 核 国 で あ る と 同 時 に ギ リ シ ャ の 最 大 の 債 権 国 で あ る ド
シ ョ ナ リ ズ ム 、 そ し て 難 民 問 題 と い う 喫 緊 の 課 題 に 対 し て 、
は 大 き い 。 も ち ろ ん 、 ﹁ 民 主 主 義 の 起 源 と し て の ア テ ネ ﹂ と い
レ ﹂ 、 五 年 に 一 度 の ﹁ ド ク メ ン タ ﹂ 、 そ し て 一 〇 年 に 一 度 の ﹁ ミ ュ
に よ る E U 崩 壊 の 危 機 や 台 頭 す る ポ ピ ュ リ ズ ム と ナ
二 〇 一 七 年 は 、 二 年 に 一 度 の ﹁ ヴ ェ ネ ツ ィ ア ・ ビ エ ン ナ ー 代 美 術 館 の 館 長 で あ る カ テ リ ナ ・ コ ス キ ナ が 手 が け て い る 。
黒 瀬 陽 平
1
ク シ ョ ン 作 品 で あ り 、 そ の キ ュ レ ー シ ョ ン も 、 ギ リ シ ャ 国 立 現
展 示 さ れ た 作 品 の 九 割 以 上 が 、 ギ リ シ ャ 国 立 現 代 美 術 館 の コ レ
他 の 平 面 論
論 考
─ ─
The Outside Eye Gazes
ド ク メ ン タ の 芸 術 監 督 に 就 任 し た 二 〇 一 三 年 以 降 も ギ リ シ ャ と
の 批 評 が 書 か れ 、 議 論 の 対 象 と な っ て い る の は ﹁ ド ク メ ン タ 14 ﹂
6
ド イ ツ の 関 係 は 悪 化 し 続 け て お り 、 債 務 問 題 に 関 し て は 完 全 に
だ 今 ろ 回 う 、 。 芸 術 監 督 に 就 任 し た ポ ー ラ ン ド 生 ま れ の キ ュ レ ー タ ー 、
On Other Surfaces
﹂ で あ り 、 展 覧 会 は カ ッ セ ル と ア テ ネ の 二 都
Yohei Kurose
ア ダ ム ・ シ ム ジ ッ ク が 掲 げ た テ ー マ は ﹁
Brexit
﹁ 強 者 ﹂ と ﹁ 弱 者 ﹂ の 構 図 に な っ て し ま っ て い る 。 そ の 両 国 が 、
︵ ア テ ネ か ら 学 ぶ ︶
Learning from Athens
市 で 開 催 さ れ る と い う 異 例 の 構 成 で あ っ た 。 そ れ だ け で は な い 。
第 6 回
外 側 の 眼 が 見 る
従 来 の メ イ ン 会 場 で あ る カ ッ セ ル の フ リ デ リ チ ア ヌ ム 美 術 館 に
ゲンロン 7
282
呼 ば れ る 音 楽 ジ ャ ン ル を 世 界 的 な 流 行 に 導 い た バ ン ド 、 ニ ル
揮 官 と す る 湾 岸 戦 争 。 二 つ 目 は ﹁ オ ル タ ナ テ ィ ヴ ・ ロ ッ ク ﹂ と
団 の 正 体 が 、 た っ た 一 人 の 男 だ っ た と い う 真 実 が 明 ら か に さ れ
F B I が ほ と ん ど 二 〇 年 も の あ い だ 捜 索 し て き た テ ロ リ ス ト 集
捜 査 員 に グ ル ー プ に よ る 犯 行 だ と 見 せ か け る た め の も の だ っ た 。
﹁ サ イ ン ﹂ を 残 し て い た 。 こ れ は ﹁ フ リ ー ダ ム ・ ク ラ ブ ﹂ の 略 で 、
初 期 の 犯 行 で は 、 カ ジ ン ス キ ー は 爆 弾 の 上 に ﹁ F C ﹂ と い う
る も の が 三 つ あ る 。 一 つ 目 は 、 ジ ョ ー ジ ・ ブ ッ シ ュ ︵ 父 ︶
を 指 売 店 経 営 者 、 広 告 会 社 重 役 、 木 材 業 界 の ロ ビ イ ス ト だ っ た 。
起 こ っ た 事 件 の な か で 、 他 の ど れ よ り も は っ き り と 記 憶 し て い た 。 彼 の 爆 弾 に よ っ て 命 を 奪 わ れ た 三 人 は 、 コ ン ピ ュ ー タ ー 販
ぼ く が ア メ リ カ で 学 ん で い た 一 九 八 六 年 か ら 九 七 年 に か け て コ ン ピ ュ ー タ ー 関 係 者 、 あ る い は そ う い っ た 知 識 を も つ 者 だ っ
2
そ し て 心 騒 ぐ 孤 独
魔 女 ソ ロ ー 魔
プ ラ ー プ ダ ー ・ ユ ン
︵ 術 承 師 前 ︶ テ
ロ リ ス ト
訳
─ 福 冨 渉
ตืน่ บนเตียงอืน่ │ 4 │
ヴ ァ ー ナ の ヴ ォ ー カ ル で あ り 、 そ の 作 曲 の ほ と ん ど を 手 掛 け た
新 し い 目 の 旅 立 ち
随 筆
第 4 回
โช ฟุกโุ ตมิ
﹂ と い う 仇 名 で 広 く 知 ら れ て い
カ ー ト ・ コ バ ー ン の 自 殺 。 三 つ 目 は 、 F B I と メ デ ィ ア に よ っ
た と き 、 ア メ リ カ 国 民 は 驚 愕 し た 。
て ﹁ ユ ナ ボ マ ー Unabomber
た 、 テ ッ ド ・ カ ジ ン ス キ ー の 逮 捕 だ 。 こ の 秘 密 め い た 犯 罪 者 は 、
標 的 と 犠 牲 者 の 大 部 分 は 、 大 学 教 員 と 学 生 、 航 空 会 社 、 そ し て
負 一 テ 傷 九 ッ 者 七 ド と 八 ︵ 三 年 本 人 か 名 の ら の 死 九 セ 者 五 オ ド を 年 ア 出 の か し あ ら た い 省 罪 だ 略 に に さ 問 自 れ わ 作 た れ の も て 爆 の ︶ い 弾 ・ た に カ 。 よ ジ っ ン て ス 二 キ 三 ー 人 の の
ゲンロン 7
266
わ た し た ち は 、 こ の 風 景 を 知 ら な い 。 原 発 や 核 廃 棄 施 設 を
原 子 力 発 電 所 を と ら え て い く 。
辺 に ひ し め く 放 射 性 廃 棄 物 貯 蔵 庫 や 海 水 浴 場 の す ぐ そ ば に 立 つ
に い 多 だ 変 う く が 容 。 の ﹃ し 震 街 て 災 が い の 取 る 以 り 。 前 残 / さ 以 れ 後 、 で 避 、 難 人 者 ﹄ が 々 の わ の 数 た 原 は 発 今 し た へ も ち の 八 の ま 万 目 な 人 に ざ を 未 し 下 知 は ら 決 な の 定 い 風 的 と 景
で あ ふ れ た 砂 浜 が 画 面 に 映 し 出 さ れ る と 、 や が て ド ロ ー ン は 岸
影 し た ヴ ィ デ オ ・ ア ー ト だ 。 波 の う ち よ せ る 海 岸 線 や 海 水 浴 客
は 、 ド ロ ー ン や ワ イ ヤ ー カ ム に よ っ て い く つ か の ﹁ 風 景 ﹂ を 撮
出 し た 。 被 害 は 想 定 外 の 規 模 だ っ た 。 い ま だ 帰 還 困 難 区 域 に は
一 一 、 原 三 子 号 力 機 発 は 電 炉メ ル 所 心ト の 溶ダ ウ 一 融ン ∼ に 五 よ 号 る 機 水 は 素 全 爆 交 発 流 で 電 放 源 射 を 性 津 物 波 質 に を よ 一 っ 帯 て に 喪 放 失 、
論 考
ユ ェ ン ・ グ ァ ン ミ ン に よ る ﹃
山 下 研
1
︵ ﹄ 二 〇 一 四 年 ︶
わ た し た ち は リ ア ル に 想 像 す る こ と が で き る だ ろ う か 。 福 島 第
者 一 万 五 八 九 四 人 ・ 行 方 不 明 者 二 五 四 六 人 [ ★ 1 ]
と い う 数 字 を 、
メ ー ト ル を 超 え る 津 波 を 誘 発 し 、 東 北 沿 岸 部 を 呑 み 込 ん だ 。 死
し て い る 。 宮 城 県 三 陸 沖 を 震 源 と し た そ の 大 地 震 は ゆ う に 一 六
The Invisible Borders of the Image: An Introduction to a Theory of a New Japanese Landscape
と し て 映 っ た の は 、 も う 一 つ 根 源 的 な 理 由 が あ る 。 そ れ は 空 中
Landscape of energy
を 一 切 の 揺 動 も な く 浮 遊 す る ド ロ ー ン 映 像 自 体 が 、 つ い 数 年 前
グ ロ テ ス ク に 映 し 出 す そ の ま な ざ し を 、 か つ て こ の 国 に 住 む
Ken Yamashita
﹄ 制 作 の 動 機 と
多 く の 人 々 は 持 た な か っ た 。 グ ァ ン ミ ン は 、 二 〇 一 一 年 に 発
Landscape of energy
Landscape of energy
生 し た 東 日 本 大 震 災 を ﹃
イ メ ー ジ の 不 可 視 な 境 界
批 評 再 生 塾 第 2 期 最 優 秀 賞 受 賞 論 文
│ 日 本 新 風 景 論 序 説
ゲンロン 7
244
は 重 要 な 役 割 を 果 た
﹃ ゴ ー ス ト ・ イ ン ・ ザ ・ シ ェ ル ﹄ ︶
だ と 思 い ま
今 年 そ ︵ の 二 失 〇 敗 一 を 七 年 象 ︶ 徴 、 す ス る カ 作 ー 品 レ が ッ 、 ト ル ・ パ ヨ ー ハ ト ン ・ ソ サ ン ン 主 ダ 演 ー で ス 実 が 写 監 化 督 さ し 、
今 日 は 、 そ の よ う な 二 〇 一 七 年 に お け る サ イ バ ー パ ン ク 的 な じ な い 。
よ う に 思 い ま す 。
式 化 し て し ま っ て い る 。 い ま そ の ま ま や っ て も リ ア リ テ ィ を 感
︵ 一 九 八 二 年 ︶
で 視 覚 化 し た 風 景 か ら は か な り 離 れ た 現 実 が あ る
︵ 一 九 八 四 年 ︶
で 描 き 、 リ ド リ ー ・ ス コ ッ ト が ﹃ ブ レ ー ド ラ ン ナ ー ﹄
り 込 ん で い る 一 方 、 ウ ィ リ ア ム ・ ギ ブ ス ン が ﹃ ニ ュ ー ロ マ ン サ ー ﹄
以 上 が 経 過 し 、 い ま や S F と 見 ま ご う ば か り の 技 術 が 日 常 に 入
守 監 督 ﹃
サ イ バ ー パ ン ク 的 な 表 現 そ の も の が 、 じ つ は 一 九 九 五 年 の 押 井
佐 藤 さ ん か ら 参 考 作 品 の リ ス ト を い た だ い た の で す が
さ や わ か
攻 殻 機 動 隊 ﹄ の 時 点 で 様
ま ず ぼ く か ら 口 火 を 切 ら せ て い た だ き ま す [ 。 ★ 今 1 回 ] 、 、
す る 光 景 を 描 く 、 新 し い S F ジ ャ ン ル で し た 。 そ れ か ら 三 〇 年
な ネ ッ ト ワ ー ク = サ イ バ ー ス ペ ー ス と 退 廃 的 な 未 来 都 市 が 交 差
﹃ ブ レ ー ド ラ ン ナ ー ﹄ の ね じ れ
東 浩 紀
一 九 八 〇 年 代 に 誕 生 し た ﹁ サ イ バ ー パ ン ク ﹂ は 、 巨 大
鼎 談
佐 藤 大 + さ や わ か + 東 浩 紀
Is there a Future in/for Cyberpunk?: Games, Virtual Reality, Theme Parks
︵ 電 脳 ︶
れ た ﹃ 攻 殻 機 動 隊 ﹄ ︵
想 像 力 の 可 能 性 と 限 界 に つ い て 、 数 多 く の S F ア ニ メ を 送 り 出
GHOST IN THE SHELL /
す 。 あ の 作 品 で は も は や サ イ バ ー
し て い る 脚 本 家 の 佐 藤 大 さ ん 、 批 評 家 の さ や わ か さ ん の お ふ た
Dai Sato + Sayawaka + Hiroki A zuma
り と 議 論 し た い と 思 い ま す 。
サ イ バ ー パ ン ク に 未 来 は あ る か
小 特 集
─ 哲 学 の 再 起 動
│ ゲ ー ム 、 V R 、 テ ー マ パ ー ク
ゲンロン 7
222
だ で 好 意 的 に 迎 え 入 れ ら れ た
ウ
為ェ イ
2 ]
。
[ ★ 2 ]
│ そ の 種 の 受 容 は 、 最 も
。 ハ イ デ ガ ー の 近 代 技 術 批 判 は 、 エ ハ イ デ ガ ー に よ る こ の 技 術 批 判 は 、 東 洋 の 思 想 家 た ち の あ い
い し は ﹁ ス ト ッ ク ﹂ の 身 分 に 、 つ ま り 測 定 さ れ 、 計 算 さ れ 、 搾
る と 見 な さ れ て い る の で あ る 。
の 真 理 の 問 い を 思 考 す る こ と
│
て の で い で 、 一 る は マ 九 ま ル 五 っ テ 三 す た ィ 年 な く ン に わ な ・ 行 ち く ハ わ 、 、 イ れ す む デ た べ し ガ 有 て ろ ー 名 の 集 は な 存 立 、 講 在 ︵ 近 演 代 者 技 ﹁ を 術 技 ﹁ ︶ の 術 用 へ 象 で 本 の あ 質 ﹂ ︵ る は 問 の 技 い だ 術 ﹂ と 的 の ︶ 述 な な な べ も か
│
必 然 的 な 帰 結 で あ り 、 ま た 思 考 す る こ と の 新 し い 形 式
の テ ク ス ト に お い て 、 ︹ 集 立 と し て の ︺
を 要 技 求 術 す は る 、 、 西 一 洋 つ 形 の 而 命 上 運 で 存 学 あ 在 の
│
技 術 へ 、 と い う 転 換 を つ ぶ さ に 描 き だ し て い る 。 そ し て こ れ ら
許 煜
ホ イ ユ ク
訳 ・ 解 題
─ 仲 山 ひ ふ み
︵
︹ 近 代 ︺
中 国 に お け る 技 術 へ の 問 い
小 特 集
─ 哲 学 の 再 起 動
︱ ︱ 宇 宙 技 芸 試 Ộ 論 Ộ
︶
と し て の テ ク ネ ー か ら 、 集 立 と し て の
集 中 掲 載
1
目 に つ き や す い と こ ろ で は 京 都 学 派 の 教 義 の う ち に 認 め ら れ る
そ こ で は ハ イ デ ガ ー の
[ ★ 1 ] [ ☆ 1 ]
取 さ れ う る 何 か に 還 元 し て し ま う よ う な 、 人 間 と 世 界 と の 関 係
The Question Concerning Technology in China: An Essay in Cosmotechnics Introduction
が 、 道 家 に よ る 技 術 的 ゲ ラ 合 放ッ 理 セ ン 性 下ハ イ ト 批 が 判 古 の 典 う 的 ち な に 道 も 家 見 に 出 お さ け れ る る [ 無ウ ー ☆
、 通 常 は 一 九 三 〇 年 ご ろ に 起 き た と
の 変 容 で あ る
Hifumi Nakayama
ル ン ス ト ・ ユ ン ガ ー や オ ズ ヴ ァ ル ト ・ シ ュ ペ ン グ ラ ー ら 、 当 時
Yuk Hui
の ド イ ツ の 著 述 家 た ち に よ っ て す で に 問 い 尋 ね ら れ て い た 、 技
Hervorbringen
の 概 念 と 同 一 視 さ れ て い る 。 こ の よ う な 好 意 的 受 容 は い く つ か
術 的 な 力 と い う も の に 関 す る あ る 新 し い 意 識 を 開 い た 。 そ の 思
Ge-stell
の 理 由 で 理 解 可 能 で あ る 。 ま ず 第 一 に 、 近 代 技 術 の 力 と 危 険 と
想 に お け る ﹁ 転 回 ﹂ ︵
Bestand
以 降 に ハ イ デ ガ ー が 書 い た も の 、 特 に こ の ﹁ 技 術 へ の
さ れ る ︶
die Kehre
問 い ﹂ と い う テ ク ス ト は 、 ポ イ エ ー シ ス な い し は 生 み 出 す こ と
★ = 原 ☆ = 訳 ︹
序 論 ︵ 1 ︶
︺ = 訳 者 補 足
ゲンロン 7
206
小特集
哲学の再起動 Rebooting Philosophy
空 間 は 、 天 上 の 王 国 で は な く 、 遠 い 海 の 彼 方 か 、 あ る い は 海 底
論 考
イ リ ヤ ・ カ リ ー ニ ン
水 底 に ユ ー ト ピ ア を 求 め て
像 ア 力 探 の 索 基 の 本 も 的 っ な と ト も 場ピ カ 重 が 要 示 な さ 方 れ 向 た 性 。 と オ 、 ル 他 タ な ナ る テ 王 ィ 国 ヴ を な 夢 社 見 会 る 秩 詩 序 的 の 想
く 、 そ れ が 水 没 し た と い う 点 に あ る 。 こ れ に よ っ て 、 ユ ー ト ピ
│ ア レ ク サ ン ド ル ・ ベ リ ャ ー エ フ ﹃ 水 中 農 民 ﹄ ︵ 一 九 三 〇 年 ︶
な ら す ん だ 。 す て き な 眺 め じ ゃ な い か い ? ハ イ ド ロ ポ リ ス
│ そ れ は ま だ ほ ん の 幕 開 け に す ぎ な い 。
中 電 信 や 水 中 電 話 、 そ し て 水 中 公 園 に は こ ど も の た め に 芝 生 が あ っ て [ ⋮ ⋮ ]
犬 の か わ り に 魚 を 飼 い
い 浮 か べ て ご ら ん 。 水 中 自 動 車 に 水 中 自 転 車 、 水 中 路 面 電 車 に 水 中 列 車 、 風 変 わ り な 水 中 飛 行 船 、 水
な っ た ら 、 水 中 に 定 住 す る 人 々 が 現 れ る か も し れ な い 。 [ ⋮ ⋮ ]
電 気 の 光 が 照 ら し だ す 水 中 都 市 を 思
水 中 都 市 が あ っ た ら ど う だ ろ う ? [ ⋮ ⋮ ]
何 世 紀 も す ぎ て 、 地 球 の 住 人 が あ ま り に ふ え て 陸 地 が 狭 く
訳
─ 平 松 潤 奈
Ихтиомеланхология, или Погружение в прошлое
プ ラ ト ン の ア ト ラ ン テ ィ ス 神 話 が 後 世 に 残 し た メ ッ セ ー ジ の
Д зюнна Хирамацу
に あ る と さ れ た の だ 。 ロ シ ア の 宗 教 セ ク ト が 夢 見 る 伝 説 の 国
Илья Ка линин
核 心 は 、 遠 い 昔 に か つ て な く 偉 大 な 文 明 が 存 在 し た こ と で は な
魚 類 メ ラ ン コ リ ー 学 、 あ る い は 過 去 へ の 沈 潜
特 集
─ ロ シ ア 現 代 思 想 Ⅱ 記 憶 と 政 治
★ = 原 ☆ = 訳 ︹ ︺ = 訳 者 補 足
ゲンロン 7
184
で 銃 殺 さ れ た の で あ る 。 こ の 地 を 一 九 九 七 年 に 発 見 し た の は 、 サ
逮 捕 さ れ た 。 こ の マ ト ヴ ェ ー エ フ は 老 齢 と な る ま で 生 き な が ら
何 千 人 も 銃 殺 し た あ げ く 、 当 の N K V D に よ っ て 一 九 三 九 年 に
よ っ て 一 九 三 七 年 に カ レ リ ア 地 方 に 派 遣 さ れ 、 サ ン ダ ル モ フ で
た 。 彼 は N K V D
159
☆ 1 ]
︹ 内 務 人 民 委 員 部 。 ソ 連 の 秘 密 警 察 の 一 つ ︺
に
ら な い が 生 き て 移 送 さ れ 、 こ の 地 で 自 ら の 墓 穴 を 掘 り 、 そ の 場
キ ー 収 容 所 か ら こ こ に 運 ば れ て き た 人 々 で あ っ た 。 理 由 は わ か
た 者 の う ち 一 〇 〇 〇 人 以 上 は 、 何 百 マ イ ル も 離 れ た ソ ロ ヴ ェ ツ
こ の 発 見 は 、 マ ト ヴ ェ ー エ フ 大 尉 の 証 言 に 基 づ く も の だ っ
ハードとソフト
遺 物 の エ ネ ル ギ ー
エ リ ー ト や 学 術 エ リ ー ト の 割 合 が 並 は ず れ て 高 か っ た 。 殺 さ れ
犠 牲 者 は 、 六 〇 の 民 族 と 九 つ の 宗 教 に 属 す る 男 女 で あ り 、 政 治
一 九 三 七 年 と 三 八 年 に 約 九 〇 〇 〇 人 が 射 殺 さ れ た 松 林 で あ る 。
前 を と っ て サ ン ダ ル モ フ と 呼 ば れ る よ う に な っ た そ の 土 地 は 、
の 近 く で 巨 大 な 大 量 遺 体 埋 葬 地 を 発 見 し た 。 最 寄 り の 村 の 名
養 で あ る け れ ど も 。
︵ 一 九 六 五
門 的 素 養 が あ る わ け で は な か っ た 。 た だ し ヨ フ ェ に は 政 治 犯
リ ー ・ ド ミ ト リ エ フ で あ る 。 彼 ら は 三 人 と も 歴 史 家 と し て の 専
六 八 年 ︶
と な っ た 経 験 が あ り 、 そ れ 自 体 、 立 派 な 素
一 九 九 七 年 、 在 野 の 研 究 者 た ち が 、 ロ シ ア 北 西 端 の 白 海 運 河 都 。 サ ン ダ ル モ フ は こ の 共 和 国 内 に 位 置 す る ︺
の 熱 心 な 活 動 家 ユ ー
論 考
ア レ ク サ ン ド ル ・ エ ト キ ン ト
ハ ー ド と ソ フ ト
特 集
─ ロ シ ア 現 代 思 想 Ⅱ 記 憶 と 政 治
訳
─ 平 松 潤 奈 Junna Hiramatsu
ン ク ト ペ テ ル ブ ル ク の 人 権 団 体 ﹁ メ モ リ ア ル ・ ソ サ エ テ ィ ﹂ [
A lexander Etkind
︹ ロ シ ア 北 西 部 の カ レ リ ア 共 和 国 首
の リ ー ダ ー 、 ヴ ェ ニ ア ミ ン ・ ヨ フ ェ と イ リ ー ナ ・ フ リ ー ゲ 、 そ
The Hard and the Soft
れ に 地 元 ペ ト ロ ザ ヴ ォ ー ツ ク
★ = 原 ☆ = 訳 ︹ ︺ = 訳 者 補 足
アレクサンドル・エトキント
ト の テ ロ ル の 記 憶 の 地 層 を 掘 り お こ す 同 書
碑 な ど の 文 化 ジ ャ ン ル を 横 断 し 、 ソ ヴ ィ エ
な せ よ う 。 文 学 、 思 想 、 絵 画 、 映 画 、 記 念
テ ン に 阻 ま れ て い た 西 欧 と ソ 連 の 文 化 ・ 思
欧 の 思 想 史 を 反 照 す る 。 読 者 は 、 鉄 の カ ー
の 知 が た ど っ た 苛 酷 な 経 験 か ら 、 二 〇 世 紀 西
て い る の で 、 ま と め て 解 題 を 付 し た い 。
い た 。 両 論 考 と も ソ ヴ ィ エ ト の 記 憶 を 扱 っ
本 邦 訳 の た め に 論 考 を 一 部 改 稿 し て い た だ
年 過 リ ち [ 去 ー の ★ 物 2 へ ニ ] の ン 語 所 沈 ﹁ ﹄ [ 収 潜 魚 ★ 1 ︶ ﹂ ︵ 類 で ﹃ メ ] 所 あ 非 ラ 収 る 常 備 ン ︶ 。 蓄 コ 、 カ ﹄ リ そ リ 八 ー し ー 九 学 て ニ 号 、 イ ン 、 二 あ リ 氏 〇 る ヤ に 一 い ・ は 三 は カ
は 、 そ う し た 論 争 が 生 ん だ 最 良 の 成 果 と み
わ さ れ て い る 。 エ ト キ ン ト の ﹃ 歪 ん だ 喪 ﹄
ス ペ ク ト ル に お い て 多 様 な 記 憶 論 が た た か
評 論 か ら 文 学 の 分 析 ま で 、 さ ま ざ ま な 政 治
と っ て 先 鋭 さ を き わ め る 領 域 で あ り 、 時 事
か か え る ポ ス ト ・ ソ ヴ ィ エ ト ・ ロ シ ア に
ま っ た 記 憶 の テ ー マ は 、 ト ラ ウ マ 的 過 去 を
異 議 申 し 立 て を 大 胆 に 行 い 、 ソ 連 と ロ シ ア
し て 、 ポ ス ト ・ ソ ヴ ィ エ ト 的 受 容 、 読 み か え 、
だ し の 生 ﹂ と い っ た 西 欧 の 理 論 的 達 成 に 対
デ フ リ ロ ダ イ の ト ﹁ の ﹁ 憑オ ン 喪 在ト ロ の 論ジ ー 作 ﹂ 、 業 ア ﹂ 、 ガ ノ ン ラ ベ の ン ﹁ の 記 ﹁ 憶 剥 の き 場 ﹂ 、
り 根 源 的 な 企 図 で あ る 。 そ の 作 業 の な か で 、
面 的 に 見 直 す こ と 、 こ れ が エ ト キ ン ト の よ
文 化 史 家 エ ト キ ン ト の 略 歴 に つ い て は
冷 戦 末 期 以 来 、 ヨ ー ロ ッ パ で 関 心 の 高 ロ ル に よ っ て 深 く 規 定 さ れ た も の と し て 全
│ 埋 葬 が 終 わ ら な い 地 の 死 に き れ な い 者 た
要 論 点 を 記 す 。
ン や リ ハ チ ョ フ を そ の 精 髄 と す る
エ ト キ ン ト ﹁ ハ ー ド と ソ フ ト ﹂ ︵ ﹃ 歪 ん だ 喪
の 全 体 を 簡 単 に 紹 介 す る と と も に 、 そ の 主
こ こ に 訳 出 し た の は 、 ア レ ク サ ン ド ル ・ ド と ソ フ ト ﹂ が 収 め ら れ た 著 作 ﹃ 歪 ん だ 喪 ﹄
の 対 象 は し か し 、 狭 義 の 記 憶 に と ど バ ま を フ ら テ チ な
│
い 。 二 〇 世 紀 ロ シ ア の 知 の 歴 史
導 入
平 松 潤 奈
Is Tourism Possible in Russia?: The Future of Unfinished Mourning and Memorial Resources
﹃ ゲ ン ロ ン 6 ﹄ 折 り 込 み の ﹁ ロ シ ア 現 代 思
Junna Hiramatsu
想 重 要 人 物 一 〇 人 ﹂ に ゆ ず り 、 ま ず ﹁ ハ ー
ロ シ ア で 観 光 は 可 能 か
特 集
─ ロ シ ア 現 代 思 想 Ⅱ 記 憶 と 政 治
│ 未 完 の 喪 と 記 憶 資 源 の ゆ く え
│
ゲンロン 7
154
基 本 問 題 で も な か っ た 。 私 は 性 格 的 に 言 っ て 、 い つ も 集 団 的 ・
る 。 私 の 作 品 に お い て は 人 間 の 描 写 は 決 し て 中 心 課 題 で も
が 作 り 出 す の は 、 イ デ オ ロ ギ ー 的 な メ ッ セ ー ジ と い う よ り は 、
国 に ふ さ わ し い メ デ ィ ア だ と 考 え 、 モ ン タ ー ジ ュ を 通 じ て 社 会
ジ ュ 理 論 ﹂ で 知 ら れ て い る 。 彼 ら は 、 映 画 を ソ 連 と い う 新 し い
フ な ど 同 時 代 の ソ 連 の 映 画 作 家 た ち は 、 一 般 的 に は ﹁ モ ン タ ー
を 作 り 上 げ る こ と を 目 指 し た 。 し か し 、 そ う し た モ ン タ ー ジ ュ
的 ・ イ デ オ ロ ギ ー 的 な メ ッ セ ー ジ ︵ あ る い は 純 粋 に 形 式 的 な 作 品 ︶
私 は 最 も ﹁ 非 人 間 的 ﹂ な 芸 術 家 の ひ と り と 考 え ら れ て い あ る 。 エ イ ゼ ン シ ュ テ イ ン や ジ ガ ・ ヴ ェ ル ト フ や レ フ ・ ク レ シ ョ
る と す れ ば 、 そ れ は 何 よ り も そ の ﹁ ダ イ ナ ミ ズ ム ﹂ に お い て で
エ イ ゼ ン シ ュ テ イ ン や ソ 連 の 映 画 が 映 画 史 に 名 を と ど め て い
論 考
ロ シ ア の 映 画 作 家 セ ル ゲ イ ・ エ イ ゼ ン シ ュ テ イ ン は 、 あ る と の も の が 常 に 自 ら の 主 題 で あ り 、 か つ 方 法 論 で あ る と 述 べ て い る 。
運 動 の イ メ ー ジ
の も の 。 エ イ ゼ ン シ ュ テ イ ン は ド ラ マ で も 形 式 で も な く 、 運 動 そ
﹁ 誰 が 動 作 す る か 、 誰 が 行 動 す る か ﹂ で は な く 、 ﹁ 動 作 や 行 動 ﹂ そ
畠 山 宗 明
Eisenstein: Motion, Image, and Animation
社 会 的 ・ 劇 的 な 運 動 の 一 大 賛 美 者 で あ っ た 。 私 の 創 造 的 関
Muneaki Hatakeyama
に た 心 。 。 は [ ★ 誰 、 1 が い ] 動 つ 作 も す 何 る が か 運 、 動 誰 が す 行 る 動 か す よ る り か も よ 、 り 運 も 動 、 に 動 鋭 作 く や 集 行 中 動 し
き 次 の よ う に 言 っ て い る 。
エ イ ゼ ン シ ュ テ イ ン
特 集
─ ロ シ ア 現 代 思 想 Ⅱ
│ 運 動 と イ メ ー ジ 、 そ し て ア ニ メ ー シ ョ ン
ゲンロン 7
134
府 が ど う 対 応 す る か 、 と い っ た 厄 介 な 問 題 が も ち あ が っ て い る 。
な い 。 こ こ か ら 、 た と え ば ﹁ 近 隣 諸 外 国 ﹂ ︹
ヴ ィ エ ト 連 邦 社 会 主 義 共 和 国 R S F S R ︶
の 継 承 者 だ が 、 領 土 的 に は
シ ア 周 辺 の 国 々 を 指 す ︺
に 住 む ロ シ ア 系 マ イ ノ リ テ ィ に ロ シ ア 政
旧 ソ 連 か ら 独 立 し た ロ
の 継 承 者 で あ る に す ぎ
︹ ソ 連 時 代 の ︺
ロ シ ア 連 邦 ︵ ロ シ ア ・ ソ
は 避 け つ つ 、 ︹ 民 族 自 決 的 な ︺
民 族 共 産 主 義 に 対 し て は 警 戒 す る 、 の ば か り で は な い 。 今 日 の ロ シ ア は 、 法 的 に は ソ ヴ ィ エ ト 連 邦
ソ ヴ ィ エ ト 体 制 は 、 ロ シ ア に よ る 他 民 族 支 配 を 制 度 化 す る こ と
の 自 治 拡 大 を 拒 ん で い る と し て 非 難 し た 。 二 〇 世 紀 に 入 る と 、
た 。 彼 ら は 、 ロ シ ア 政 府 が 専 制 を 敷 き 、 支 配 下 に 置 い た 諸 民 族
界 の 主 要 関 心 事 で あ り 、 リ ベ ラ ル 勢 力 の 拘 泥 す る 話 題 で も あ っ
ツ ァ ー リ の 帝 国 の イ メ ー ジ は 、 一 九 世 紀 を 通 じ て ヨ ー ロ ッ パ 政
パ ラ ダ イ ム を と お し て 分 析 さ れ て き た 。 ﹁ 諸 民 族 の 牢 獄 ﹂ と い う
に な っ た 、 と い う 感 情 が 渦 巻 い て い る の だ 。 問 題 は 情 動 的 な も
シ ア は と つ ぜ ん 不 本 意 に も 一 九 九 一 年 の 各 国 の 独 立 宣 言 の 犠 牲
性 を 自 然 な も の と み な し 、 そ れ を 誇 る 気 持 ち と あ い ま っ て 、 ロ
逆 説 に 満 ち た 言 説 領 域 を 占 め て い る 。 ロ シ ア 国 家 の 歴 史 的 連 続
的 研 究 も 登 場 し た
ヨ ー ロ ッ パ と ソ ヴ ィ エ ト の 脱 植 民 地 化 過 程 の 比 較 と い っ た 革 新
[ ★ 2 ]
。 他 方 ロ シ ア で は 、 帝 国 と い う 主 題 は
ヨ ー ロ ッ パ の 歴 史 学 に お い て 、 ロ シ ア は し ば し ば 帝 国 と い う プ ス ブ ル ク 帝 国 、 そ し て オ ス マ ン 帝 国 と の あ い だ の 比 較 研 究 や 、
訳
─ 平 松 潤 奈
解 題
─ 上 田 洋 子
★ = 原 ☆ = 訳 ︹
マ ル レ ー ヌ ・ ラ リ ュ エ ル
論 考
Space as a Destiny: Legitimizing the Russian Empire through Geography and Cosmos
と い う 曖 昧 な 政 策 を と る こ と で 、 ソ ヴ ィ エ ト 構 成 体 の 帝 国 性 と
Yoko Ueda
い う 問 題 を 惹 起 し つ づ け た 。 ソ ヴ ィ エ ト 社 会 主 義 共 和 国 連 邦 の
Marlène Laruelle
消 滅 以 来 、 新 た に 独 立 し た 諸 国 家 で は 論 争 が 巻 き 起 こ り 、 す ぐ
Junna Hiramatsu
た さ [ ま ★ 1 、 ] か 。 つ 欧 て 米 の の 植 歴 民 史 地 学 権 に 力 お た い る て ロ は シ 、 ア こ の の あ ﹁ ら 最 ゆ 後 る の 悪 帝 が 国 糾 ﹂ 弾 と さ ハ れ
運 命 と し て の 空 間
特 集
─ ロ シ ア 現 代 思 想 Ⅱ
│ 地 理 と 宇 宙 を と お し た ロ シ ア 帝 国 の 正 当 化
︺ = 訳 者 補 足
ゲンロン 7
112
︵ ﹁ ロ シ ア 社 会 主 義 運 動 ﹂ の
に 設 立 さ れ た ﹁ 前 進 ﹂ 、 ペ レ ス ト ロ イ カ 期 か ら 続 く ﹁ 社 会 主 義
が プ レ ゼ ン ス を 放 っ た し 、 新 し い 政 治 団 体 と し て は 二 〇 〇 五 年
動 で は 、 ﹁ 左 翼 戦 線 ﹂ の セ ル ゲ イ ・ ウ ダ リ ツ ォ フ
ル ジ ー と い う よ り も 、 ソ 連 解 体 に よ っ て も た ら さ れ た グ ロ ー バ
が な い 。 彼 ら 若 い 世 代 を 駆 り 立 て る の は 、 ソ 連 時 代 へ の ノ ス タ
ギ ー で あ っ た マ ル ク ス 主 義 的 な レ ト リ ッ ク に 対 し て ア レ ル ギ ー
︶
を 契 機 に ロ シ ア で 起 こ っ た 大 規 模 な 反 政 府 ・ 反 プ ー チ ン 抗 議 運
本 号 掲 載 の 座 談 会 で も 触 れ て い る 二 〇 一 一 年 末 の 下 院 選 挙 不 正
る い わ ば ポ ス ト ・ ソ ヴ ィ エ ト 的 左 翼 運 動 は 存 在 す る 。 た と え ば 、
な 若 い 層 だ 。 若 い 世 代 で あ る が 故 に 、 ソ 連 時 代 の 公 式 イ デ オ ロ
教 育 水 準 や 文 化 度 の 点 で は 、 む し ろ ﹁ 中 間 ﹂ を 越 え て い る よ う
そ れ は 、 生 活 レ ベ ル や 消 費 生 活 で は ﹁ 中 間 ﹂ に 達 し な い も の の 、
翼 運 動 を 支 持 す る 若 い 世 代 は 、 ﹁ 貧 し い 中 間 層 ﹂ だ と い う
︵ 一 九 七 七
[ ★ 1 ]
。
に 思 春 期 を 過 ご し た 七 〇 年 代 半 ば 生 ま れ 以 降 と し よ う
﹁ 社 会 主 義 ﹂ や ﹁ 革 命 ﹂ を 掲 げ る ﹁ 若 い 世 代 ﹂
家 ア レ ク セ イ ・ ツ ヴ ェ ト コ フ の 見 立 て に よ れ ば 、 こ う し た 左
期 党 首 に 推 す 声 も あ る 。 し か し 、 一 九 七 五 年 生 ま れ の 若 き 批 評
論 考
八 木 君 人
1 | ポ ス ト ・ ソ ヴ ィ エ ト 時 代 の 左 翼 運 動
│
ソ 連 解 に 体 よ 時
│
連 邦 共 産 党 ﹂ に は 、 党 の 若 返 り を 図 る た め に ウ ダ リ ツ ォ フ を 次
く も な い 。 実 際 、 ソ 連 時 代 の 共 産 党 の 流 れ を 汲 む 政 党 ﹁ ロ シ ア
こ う し た 動 き は 、 一 見 、 ソ 連 時 代 へ の ノ ス タ ル ジ ー に み え な
The Struggle of Post-Soviet Leftist Art: Politicizing Art, Activating the Public
ル 資 本 主 義 経 済 へ の 反 発 と い え よ う
的 抵 抗 ﹂ 、 両 者 が 統 合 し て 二 〇 一 一 年 三 月 に 誕 生 し た ﹁ ロ シ ア
Naoto Yagi
社 会 主 義 運 動 ﹂ な ど が 挙 げ ら れ る だ ろ う 。
│ポ ス 芸 術 を 政 治 化 し 、 パ ブ リ ッ ク を 起 動 す る
ト ・ ソ ヴ ィ エ ト 的 左 翼 芸 術 の 闘 争
ゲンロン 7
特 集
─ ロ シ ア 現 代 思 想 Ⅱ
092
監 修 者 の 乗 松 亨 平 さ ん に お 話 し い た だ い た
ぼ く の 論 考 で も 述 べ た よ う に 、 椹 木 野 衣 の
る と 思 い ま す 。 し か し 、 前 号 の 共 同 討 議 や
﹁ な ぜ い ま ロ シ ア な の ? ﹂ と い う 疑 問 が あ
み で し か 考 え ら れ な く な っ て し ま う 。 そ う
な り の 、 ﹁ よ い 場 所 ﹂ と の 対 立 と い う 枠 組
と し て 考 え て し ま う と 、 ア メ リ カ な り 西 欧
り 交 ぜ 議 論 を 行 っ て い き ま す 。 ま ず 、 特 集
文 学 ・ 芸 術 ま で 、 さ ま ざ ま な ト ピ ッ ク を 織
の よ う に 参 考 に な る の か 、 政 治 ・ 経 済 か ら
ロ シ ア の 思 想 が 日 本 の わ れ わ れ に と っ て ど
ま し た 。 ロ シ ア の 思 想 と は な に か 、 そ し て
ア の 専 門 家 の み な さ ん に お 集 ま り い た だ き
な り ま し た が 、 読 者 の 方 々 か ら し て み る と 、
代 思 想 の 特 集 が 二 号 続 け て 組 ま れ る こ と に
乗 松 亨 平
題 提 起 を お 願 い で き ま す か 。
を ご 寄 稿 い た だ き ま し た 。 論 考 の 紹 介 と 問
報 告 と な る 論 考 ﹁ 敗 者 の
の ひ と つ で す 。 ﹁ 悪 い 場 所 ﹂ を 日 本 特 殊 論
そ の よ う な 、 あ ち こ ち に あ る ﹁ 悪 い 場 所 ﹂
今 回 、 ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ で ロ シ ア 現 て 語 っ て い ま し た [ ★ 1 ]
。 ロ シ ア も ま さ に
の 異 な る 場 所 と つ な い で い く こ と ﹂ に つ い
る の で は な く 、 む し ろ 問 題 を 共 有 す る 複 数
︵ ポ ス ト ︶
モ ダ ン ﹂ で 、 ﹁ 日 本 と い う ﹃ 悪 い 場 所 ﹄ を 特 権 化 す
ロ シ ア 現 代 思 想 を 特 集 し ま す 。 今 号 は ロ シ 乗 松 さ ん に は 前 号 に 、 特 集 全 体 の 基 調 が 、 韓 国 も ﹁ 悪 い 場 所 ﹂ で あ る と し た う え
﹁ 敗 者 ﹂ と し て の ロ シ ア と 日 本
上 田 洋 子
﹃ ゲ ン ロ ン 7 ﹄ で は 前 号 に 続 き 、 思 い ま す 。
集 ﹁ 脱 戦 後 日 本 美 術 ﹂ で は 、 黒 瀬 陽 平 さ ん
巻 く 諸 状 況 を 浮 か び 上 が ら せ て い き た い と
を う か が う こ と で 、 ロ シ ア 現 代 思 想 を 取 り
君 人 さ ん に デ モ の 視 点 か ら そ れ ぞ れ ご 意 見
接 に つ な が っ て い る 。 ﹃ ゲ ン ロ ン 3 ﹄ の 特
て 、 本 特 集 は こ れ ま で の ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ と 密
提 示 し た ﹁ 悪 い 場 所 ﹂ と い う 問 題 系 に お い
乗 松 亨 平 + 平 松 潤 奈 + 松 下 隆 志 + 八 木 君 人 + 上 田 洋 子
共 同 討 議
Remaking History: The Soviet Union as Cultural Foundation
あ と 、 松 下 隆 志 さ ん に 文 学 の 視 点 か ら 、 平
Kyohei Norimatsu + Junna Hiramatsu + Takashi Matsushita + Naoto Yagi + Yoko Ueda
松 潤 奈 さ ん に 記 憶 と 政 治 の 視 点 か ら 、 八 木
歴 史 を つ く り な お す
特 集
─ ロ シ ア 現 代 思 想 Ⅱ
│ 文 化 的 基 盤 と し て の ソ 連
ゲンロン 7
044
る 。 ま た 、 今 号 の 中 心 を な す 政 治 的 記 憶 の 問 題 に 、 大 き な 影 を 投 げ か け て い る の も ﹁ 近 代 の 超 克 ﹂ と そ
み て と る 。 プ リ レ ー ピ ン と 現 代 ロ シ ア 文 学 の 状 況 に つ い て は 、 今 号 の 共 同 討 議 で も 詳 し く 再 論 さ れ て い
時 代 の 英 雄 ﹂ も 、 対 抗 の 原 理 を い わ ば 純 化 し て 体 現 す る と こ ろ に 、 現 代 作 家 プ リ レ ー ピ ン の 人 気 の 源 を
況 を 政 治 傾 向 別 に 紹 介 し た 。 松 下 隆 志 の 論 考 ﹁ ザ ハ ー ル ・ プ リ レ ー ピ ン 、 あ る い は ポ ス ト ・ ト ゥ ル ー ス
モ ダ ン ﹂ で は 、 西 欧 近 代 へ の 対 抗 と 敗 北 に い か な る 態 度 を と る か と い う 観 点 か ら 、 現 代 ロ シ ア の 思 想 状
ズ ム に 焦 点 を あ て た 。 そ こ で 一 貫 し て 問 題 に さ れ た の は ﹁ 、 近 代 の 超 克 ﹂ で あ る 。 拙 論 ﹁ 敗 者 の ︵ ポ ス ト ︶
一 九 世 紀 以 来 の ロ シ ア 思 想 の 流 れ を 振 り か え っ た う え で 、 現 代 ロ シ ア の 政 治 哲 学 、 と り わ け ナ シ ョ ナ リ
前 号 で は 、 冒 頭 の 貝 澤 哉 、 畠 山 宗 明 、 東 浩 紀 、 乗 松 亨 平 に よ る 共 同 討 議 ﹁ ロ シ ア 思 想 を 再 導 入 す る ﹂ で 、
文 化 編 ﹂ と い う べ き 内 容 で あ る 。 こ こ で は 前 号 を 簡 単 に お さ ら い し 、 今 号 と の つ な が り を 素 描 し て お く 。
特 集 ﹁ ロ シ ア 現 代 思 想 ﹂ の 第 二 弾 を お 送 り す る 。 前 号 が ﹁ 思 想 編 ﹂ だ っ た と す れ ば 、 今 号 は ﹁ 社 会 ・
導 入
乗特 集 松監 修 亨 平
Towards an Encounter with the Parallel Others
前 号 に 訳 出 さ れ た ア レ ク サ ン ド ル ・ ド ゥ ー ギ ン の 論 文 ﹁ 第 四 の 政 治 理 論 の 構 築 に む け て ﹂ の 言 葉 を 借
の 挫 折 で あ る 。 敗 北 の 傷 が い ま だ 生 々 し い が ゆ え に 、 ロ シ ア は 過 去 を 葬 る こ と が で き な い 。
Kyohei Norimatsu
り れ ば 、 ﹁ 近 代 の 超 克 ﹂ と は す な わ ち 、 ﹁ 第 一 の 政 治 理 論 ﹂ た る 個 人 主 義 ・ 資 本 主 義 の 超 克 で あ る 。 共 同
並 行 的 他 者 と の 出 会 い の た め に
ゲンロン 7
特 集
─ ロ シ ア 現 代 思 想 Ⅱ
040
特集
ロシア現代思想Ⅱ Russian Contemporary Thought II
の だ と 、 そ う 感 じ て い る 。
033
ぎ り 、 す な わ ち ぼ く が 批 評 家 で あ る か ぎ り 、 続 い て い く 、 続 い て い か ざ る を え な い 存 在 に な っ た
を 降 り る と き も 来 る の か も し れ な い 。 し か し そ れ で も 、 こ の ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ は 、 弊 社 が 存 続 す る か
距離の回復
い な い 。 デ ザ イ ン は 変 わ る か も し れ な い 。 刊 行 頻 度 も 変 わ る か も し れ な い 。 い つ か は ぼ く が 編 集
い っ た ん 締 め る が 、 そ の あ と は 第 二 期 の ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ が 続 く 。 第 二 期 の 詳 細 は ま だ な に も 決 め て
て い る 。 そ れ ゆ え 、 ぼ く は 本 誌 に つ い て 、 九 号 で は 終 刊 さ せ な い こ と を 決 め た 。 第 一 期 は 九 号 で
の 抵 抗 の 場 所 を で き る だ け 長 く 維 持 し て い く 、 あ ら た な 責 務 を 与 え る も の で あ る よ う に 感 じ ら れ
そ れ ら の 成 功 は い ま 、 ぼ く を ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ か ら 解 き 放 つ の で は な く 、 逆 に 、 こ の ポ ピ ュ リ ズ ム へ
と な り 、 大 き な 賞 を い た だ い た こ と も ま た 予 想 外 だ っ た 。
こ と は 、 望 外 の 喜 び で あ る 。 創 刊 準 備 号 に あ た る ﹃ ゲ ン ロ ン 0 観 光 客 の 哲 学 ﹄ が ベ ス ト セ ラ ー
し た が っ て 、 本 誌 が こ の 二 年 、 ま が り な り に も 好 評 を も っ て 迎 え ら れ 、 出 版 を 継 続 し て こ れ た
治 ﹂ ﹁ 現 実 ﹂ の 定 義 そ の も の に 起 因 し て い る の で 、 覆 す の は 容 易 で は な い 。
な 発 言 も 手 の 込 ん だ 現 実 逃 避 か シ ニ シ ズ ム に し か 見 え な い だ ろ う 。 そ の 誤 解 は 広 く 共 有 さ れ た ﹁ 政
の は 、 そ れ だ け が 政 治 と 現 実 の す べ て で は な い と い う こ と だ 。 し か し い ま の 日 本 で は 、 こ の よ う
支 持 政 党 を 明 ら か に し た り 運 動 に 参 加 し た り す べ き で な い と い う 意 味 で は な い 。 ぼ く が 言 い た い
と に な る と い う 、 そ の 思 い 込 み そ の も の を 疑 い 、 乗 り 越 え る こ と を 目 指 し て い る 。 こ れ は 決 し て 、
参 加 し な い 。 本 誌 は む し ろ 、 そ の よ う な 距 離 の な い 反 応 だ け が ﹁ 政 治 ﹂ ﹁ 現 実 ﹂ に 向 き 合 っ た こ
か ら 距 離 を 取 る 。 だ か ら 政 治 的 な 態 度 を 明 確 に し な い 。 支 持 政 党 も 明 ら か に し な い し 、 運 動 に も
東浩紀
と は い え 、 そ の よ う な 立 場 は 理 解 さ れ に く い 。 本 誌 は ポ ピ ュ リ ズ ム に 抗 う た め 、 ﹁ い ま こ こ ﹂
論 む 雑 誌 で あ る 。
な く な る 。 ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ は 、 そ の よ う な 時 代 精 神 に 抗 い 、 ふ た た び 距 離 の 価 値 を 取 り 戻 そ う と 目
に し か 、 そ し て ﹁ い ま こ こ ﹂ の 問 題 に 反 応 し ﹁ 立 ち あ が る ﹂ こ と に し か 、 正 義 の 根 拠 を 見 い だ せ
の も の が 悪 と 見 な さ れ る 。 政 治 家 も 大 学 人 も ジ ャ ー ナ リ ス ト も 、 ﹁ 当 事 者 ﹂ に ﹁ 寄 り 添 う ﹂ こ と
質 は ﹁ 近 さ ﹂ に あ る 。 ポ ピ ュ リ ズ ム が 卓 越 し た 時 代 に お い て は 、 対 象 と 距 離 を 取 る こ と 、 そ れ そ
批 評 の 喪 失 は 日 本 だ け の 問 題 で は な い 。 現 代 は ポ ピ ュ リ ズ ム の 時 代 で あ る 。 ポ ピ ュ リ ズ ム の 本
る 人 文 知 固 有 の 視 点 、 そ れ こ そ を 批 評 と 呼 ん で い る 。 い ま の 日 本 は 、 そ の よ う な 視 点 を 失 っ て い る 。
の を 複 雑 な ま ま 、 よ り 俯 瞰 的 か つ 理 論 的 に 、 と き に ﹁ 無 責 任 ﹂ か つ ﹁ 残 酷 ﹂ な 距 離 を も っ て 接 す
批 判 を 意 味 し な い 。 目 の ま え の 対 立 関 係 に 巻 き 込 ま れ 、 現 実 を 単 純 化 す る の で は な く 、 複 雑 な も
﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ は 、 批 評 の 価 値 を 甦 ら せ る こ と を 目 的 に 創 刊 さ れ た 。 こ こ で ﹁ 批 評 ﹂ と は 、 単 な る
そ の 最 後 の 年 に 入 る こ と に な る 。
距 離 の 回 復
﹃ ゲ ン ロ ン 7 ﹄ を お 送 り す る 。 本 誌 は 九 号 ま で 、 三 年 間 の 刊 行 を 予 定 し て 創 刊 さ れ た 。 今 号 か ら
東 浩 紀
ゲンロン 7
032
﹃ 動 き す ぎ て は い け な い ﹄ 第 六 章 6
シ ス テ ム ﹂ と し て 理 解 し 、 他 方 で 國 分 さ ん は ﹁ ば ら ば ら で 断 片
さ ん に 言 及 し て い て 、 ぼ く は ド ゥ ル ー ズ 的 深 層 を ﹁ 郵 便 = 誤 配
に 触 れ て い る 。 そ こ で は ぼ く と 國 分
2 で 、 ド ゥ ル ー ズ の ﹃ 意
言 及 し た め ず ら し い 箇 所 か ら 始 め た い と 思 い ま す 。 千 葉 さ ん は
屈 の 倫 理 学 ﹄ の 増 補
の 主 張 は 、 ﹃ 暇 と 退
え る 。 國 分 さ ん の そ
ん と 異 な る よ う に 見
い る 。 そ こ は 千 葉 さ
味 の 論 理 学 ﹄ ︵ 一 九 六 九 年 ︶
千葉雅也『勉強の哲学』 文藝春秋、2017年
007
接続、切断、誤配
議 論 の き っ か け と し て 、 千 葉 さ ん が 國 分 さ ん と ぼ く に 同 時 に る の だ と も 主 張 し て
い の 意 味 を 考 え て み た い 。
か ら 主 体 を 必 要 と す
し て 、 自 身 の ﹁ 切 断 ﹂ の 読 解 を 位 置 づ け て い ま す ね 。 そ の ち が
ズ ﹂ と 名 付 け 、 そ れ が 包 含 す る ﹁ ホ ー リ ズ ム ﹂ に 対 す る 批 判 と
﹃ 動 き す ぎ て は い け な い ﹄ で 、 そ の よ う な 読 解 を ﹁ 接 続 的 ド ゥ ル ー
間 接 話 法 ﹂ の 話 と し て 論 じ ら れ て い ま し た 。 他 方 、 千 葉 さ ん は
さ れ て い ま す が 、 ﹃ ド ゥ ル ー ズ の 哲 学 原 理 ﹄ で も す で に ﹁ 自 由
こ の 問 題 は ﹃ 中 動 態 の 世 界 ﹄ で ﹁ 中 動 態 ﹂ と し て 主 題 的 に 展 開
態 に い か に 身 を 開 く か 、 と い う 問 題 意 識 を 一 貫 し て 持 っ て い る 。
に 重 点 を 置 く 。 自 分 と 他 者 の ど ち ら が 主 体 な の か わ か ら な い 状
﹁ 切 断 ﹂ に 重 点 を 置 く か 、 と い う ち が い で す 。 國 分 さ ん は ﹁ 接 続 ﹂
に 耐 え ら れ な い 、 だ
さ ん は 、 人 間 は そ れ
け れ ど 、 同 時 に 國 分
葉 さ ん と 同 じ な の だ
し て い て 、 そ こ は 千
か け ら ﹂ と し て 理 解
國 分 さ ん は た し か に ﹁ 深 層 ﹂ を ﹁ ば ら ば ら で 断 片 的 な 出 来 事 の
が は っ き り 表 れ て い る の で は な い か と 思 い ま す 。 と い う の も 、
さ ん と 國 分 さ ん 、 そ し て ぼ く の あ い だ の ﹁ 深 層 ﹂ の 理 解 の 差 異
國分功一郎『中動態の世界』 医学書院、2017年
そ れ は ひ と こ と で 言 え ば 、 他 者 と の ﹁ 接 続 ﹂ に 重 点 を 置 く か 千 葉 さ ん は 明 示 し て い な い の で す が 、 こ こ に は じ つ は 、 千 葉
想 は 本 質 的 に は か な り ち が う の で は な い か と 感 じ ま し た 。
き す ぎ て は い け な い ﹄ ︵ 二 〇 一 三 年 ︶
を 読 み 返 し て 、 ふ た り の 思
分 さ ん の ﹃ ド ゥ ル ー ズ の 哲 学 原 理 ︵ ﹄ 二 〇 一 三 年 ︶
と 千 葉 さ ん の ﹃ 動
飛 ﹃ 来 共 し 不 て 可 す 能 れ 性 違 ﹄ の う 荒 ば 地 か で り あ の る 、コ 。 媒ミ ュ そ ニ ケ こ 介ー ト は す 、 ﹃ る 無 ︽ 数 存 の 在 小 = さ 出 な 来 ﹄ [ 事 他 ★ ︾ 者 1 が 性 ] 。 成 が 、 立 し て い な い 、 無 関 係 の 荒 地 な の で あ る ﹂ と 記 し て い る
語 ら れ る こ と が 多 い と 思 い ま す 。 け れ ど も 、 今 回 あ ら た め て 國
研 究 者 で す 。 年 齢 も 近 く プ ラ イ ベ ー ト で も 友 人 な の で 、 並 べ て
ま す 。 そ し て そ れ に 対 し て 、 千 葉 さ ん は ﹁ 深 層 と は 、 剥 き 出 し の
的 な 出 来 事 の か け ら ﹂ の 散 乱 状 態 と 理 解 し た の だ と 要 約 し て い
國分功一郎+千葉雅也+東浩紀
い で す 。 言 語 重 視 の 態 度 が 共 通 し て い る と い う の は ほ ん と う に
國 分 功 一 郎
千 葉 さ ん の ぼ く の 本 へ の コ メ ン ト 、 と て も う れ し
東
國 分 さ ん と 千 葉 さ ん は 同 じ 東 大 の 駒 場 出 身 で 、 ド ゥ ル ー ズ
接 続 か 切 断 か
問 題 で す 。
状 態 が 問 題 に な っ て い る 。 そ れ は ぼ く も ぼ く な り に 考 え て き た
そ し て 最 終 的 に は 、 責 任 を 主 体 に は っ き り 帰 せ ら れ な い よ う な
る 國 分 さ ん の 試 み は 、 言 語 重 視 の 態 度 に お い て 共 通 し て い ま す 。
い て い て 、 中 動 態 が 存 在 し た と き の 思 考 へ と 考 古 学 的 に 遡 行 す
に な っ て い る と 思 い ま す 。
る の は 難 し い ん だ け れ ど も 、 そ れ が 非 常 に う ま く 表 現 さ れ た 本
も し ろ い と 思 う 。 そ う い う 千 葉 さ ん の ス タ ン ス を 言 葉 で 表 現 す
た 変 な こ と を 考 え て い る ︵ 笑 ︶
。 ぼ く は そ の 考 え 方 が じ つ に お
思 考 は 言 語 に よ っ て 規 定 さ れ て い る 面 が 大 き い と い う 前 提 で 書
ね 。 こ の 本 は 言 語 に つ い て の 本 で す が 、 ぼ く は ﹃ 勉 強 の 哲 学 ﹄ を 、
込 ま れ て し ま う 。 そ う 設 計 さ れ て い る 。 ミ ス テ リ の よ う で し た
そ う な ん で す が 、 國 分 さ ん 自 身 が 抱 く 問 い に 読 者 が 自 然 と 巻 き
ん ど ん ペ ー ジ を め く ら せ る 力 が あ る 本 だ と 思 い ま し た 。 い つ も
Evernote
そ う で す ね 。 言 語 の 地 位 の 低 下 に つ い て 、 千 葉 さ ん と ぼ く は い
ろ 教 師 な し で ど う や っ て 勉 強 に 他 者 を 導 入 で き る か 、 た と え ば
千 葉 さ ん は 教 師 と い う 他 者 を 無 視 し て い る わ け で は な い 。 む し
に 対 し 、 ぼ く は ど う し て も 教 師 の 役 割 を 言 い た く な る 。 た だ 、
た と え ば 、 千 葉 さ ん の 本 は 基 本 的 に 独 学 を 推 奨 し て い る 。 そ れ
を 半 他 者 と し て 使 え な い だ ろ う か 、 と か 、 そ う い っ
千 葉 雅 也
﹃ 中 動 態 の 世 界 ﹄ は ま さ に 國 分 さ ん ら し い 本 で 、 ど 知 り ま し た 。 で も 、 た ん に ち が う と い う わ け で も な い ん で す ね 。
読 ま れ た か を う か が え ま す か 。
哲 学 ﹄ を 読 ん で 千 葉 さ ん と 自 分 の 考 え 方 の ち が い を い ろ い ろ と
ま ず は 、 國 分 さ ん と 千 葉 さ ん が 、 お た が い の 著 書 を ど の よ う に す ね 。 今 日 の 議 論 と も 重 な っ て く る と 思 う ん で す が 、 ﹃ 勉 強 の
︵ 二 〇 一 七 年 九 月 末 現 在 ︶
は 小 林 秀 雄 賞 を 受 賞 さ れ 、 千 葉 さ ん の ﹃ 勉 強 の 哲 学 ﹄ は 五 万 部
さ に そ の 中 心 に い ら っ し ゃ い ま す 。 國 分 さ ん の ﹃ 中 動 態 の 世 界 ﹄
二 〇 一 七 年 は 人 文 書 ブ ー ム と 言 わ れ て い ま す が 、 お ふ た り は ま
﹁ 哲 学 の 再 起 動 ﹂ を テ ー マ に 議 論 を し て い け れ ば と 思 い ま す 。
今 日 は 國 分 功 一 郎 さ ん と 千 葉 雅 也 さ ん を お 招 き し 、
ち ら も 多 く の 読 者 に 恵 ま れ て 、 そ れ は ほ ん と う に あ り が た い で
の 意 味 で は 、 じ つ は 二 冊 と も 反 時 代 的 だ と 思 い ま す 。 で も 、 ど
も し れ ま せ ん 。 べ つ に カ ッ コ つ け る わ け で は な い ん で す が 、 そ
い 、 そ う い う 気 持 ち を ぼ く ら は ス ト レ ー ト に 表 現 し て い る の か
の な か だ か ら こ そ 、 言 語 に つ い て 徹 底 的 に 論 じ な け れ ば な ら な
ろ い ろ な か た ち で 話 を し て き た と 思 う ん だ け ど 、 そ う い う 傾 向
を 超 え る ベ ス ト セ ラ ー に な っ て い ま す
。
ゲンロン 7
東 浩 紀
006
─
接続、 切断、 誤配 Connection,
Disconnection,
Misdelivery
005
Koichiro Kokubun
Hiroki Azuma
哲 学 の 再 起 動
M a sa y a C h i b a
東 千 國 浩 葉 分 紀 雅 功 也 一 郎
小 特 集
鼎 談
244
山 下 研
4
6
T he Outside Eye Gazes
6
Prabda Yoon
Yohei Kurose
Ken Yamashita
訳
Melon Uminekozawa
The Emperor System, Haruki Murakami, and Endlessly Manifesting Pseudo-States
Kenro Hayamizu
The Invisible Borders of the Image: An Introduction to a Theory of a New Japanese Landscape
Wake Up New
:
266
On Other Surfaces
On Independent States
:
282
296
306 310
─
317
Afternoon VI
E01
352
海 猫 沢 め ろ ん
English Translations and Abstracts
The Pigeon Clock of Dischronia
350
︶
355
︵
─
# 22
午 後 の 部 Ⅵ ─
﹃ ゲ ン ロ ン β ﹄ 既 刊 紹 介
ア ー ト デ ィ レ ク シ ョ ン & デ ザ イ ン
351
─ 福 冨 渉 ─
辻 田 真 佐 憲 安 天
# 8
真 人 渉
寄 稿 者 一 覧
考
321
─
日 本 新 風 景 論 序 説 ─ 黒 瀬 陽 平
プ ラ ー プ ダ ー ・ ユ ン
─
─
─
─
編 集 後 記 ・ 支 援 者 一 覧
論 筆
329
│
─
第 4 回
外 側 の 眼 が 見 る
天 皇 制 、 村 上 春 樹 、 い く ど も 立 ち 現 れ る 疑 似 国 家
﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ 既 刊 紹 介 加 藤 賢 策
第 6 回 ─
第 6 回 ─
─ 速 水 健 朗
LABORATORIES
─
梅 沢 和 木
上 田 洋 子 ﹁ ロ シ ア 語 で 旅 す る 世 界 ﹂ は 今 号 は 休 載 で す 。
表 紙 ・ 扉 イ メ ー ジ
イ批 メ評 再 ー生 ジ塾 の第 2 不期 可最 優 視秀 賞 な受 境賞 論 界文 新 し い 目 ─ の ─ 旅 立 ち 他 の 平 面 論
随 考 作
独 立 国 家 論 賭 タ 軍 博 イ 歌 現 は 夢 代 文 世 学 界 未 ノ を 来 ー ど # ト う 19 # 変 ─ 5 え 市 ─ た 川 福 か 冨 韓 国 で 現 代 思 想 は 生 き て い た
デ ィ ス ク ロ ニ ア の 鳩 時 計
論 コ ラ ム 創
Marlène Laruelle
Rebooting Philosophy
The Question Concerning Technology in China: An Essay in Cosmotechnics Yuk Hui
八 木 君 人
Muneaki Hatakeyama
Space as a Destiny: Legitimizing the Russian Empire through Geography and Cosmos
Eisenstein: Motion, Image, and Animation
Junna Hiramatsu
訳
Is there a Future in/for Cyberpunk?: Games, Virtual Reality, Theme Parks Dai Sato + Sayawaka + Hiroki A zuma
Ilya Kalinin
Is Tourism Possible in Russia?: The Future of Unfinished Mourning and Memorial Resources A lexander Etkind
Ichthyomelanchology, or Diving into the Soviet Past
─ 平 松 潤 奈
宇 宙 技 芸 試 論
The Hard and the Soft
─ イ リ ヤ ・ カ リ ー ニ ン
134
─
芸 術 を 政 治 化 し 、 パ ブ リ ッ ク を 起 動 す る
│
184
206
222
│
地 理 と 宇 宙 を と お し た ロ シ ア 帝 国 の 正 当 化 ゲ ー ム 、 V R 、 テ ー マ パ ー ク
訳
│
運 動 と イ 訳 メ ─ ー 平 ジ 松 、 そ 潤 し 奈 て 解 題 ア ─ ニ 上 メ 田 ー 洋 シ 子 ョ ン ─ 畠 山 宗 明
│
─ ア レ ク サ ン ド ル ・ エ ト キ ン ト
│
─ 平 松 潤 奈
マ ル レ ー ヌ ・ ラ リ ュ エ ル
エ イ ゼ ン シ ュ テ イ ン 記 憶 と 政 治
哲 学 の 再 起 動
運 命 と し て の 空 間
The Struggle of Post-Soviet Leftist Art: Politicizing Art, Activating the Public
ロ シ ア で 観 光 は 可 能 か
│
未 完 の 喪 と 記 憶 資 源 の ゆ く え ─ 平 松 潤 奈
092
154
ハ ー ド と ソ フ ト
魚 類 メ ラ ン コ リ ー 学 、 あ る い は 過 去 へ の 沈 潜 ポ ス ト ソ 連 思 想 史 関 連 年 表
中 国 に お け る 技 術 へ の 問 い
112
159
考 ホ イ ユ ク
Introduction
1
Ộ
論 入
サ 許 イ 煜 バ ー パ ン 訳 ク ・解 に ─題 未 仲 来 山 ひ は ふ あ み る か
Ộ
導 考
佐 藤 大 + さ や わ か + 東 浩 紀
序 論 ︵ 1 ︶
論 録
小 特 集 談
ポ ス ト ・ ソ ヴ ィ エ ト 的 左 翼 芸 術 の 闘 争
付 集 中 掲 載 鼎
Naoto Yagi
006
040
032
目 次
Rebooting Philosophy
7 Connection, Disconnection, Misdelivery
シ ア
Hiroki A zuma
Koichiro Kokubun + Masaya Chiba + Hiroki A zuma
The Revival of Distance
ロ
2017 December
Russian Contemporary Thought II
Towards an Encounter with the Parallel Others
Kyohei Norimatsu
Remaking History: The Soviet Union as Cultural Foundation Kyohei Norimatsu + Junna Hiramatsu + Takashi Matsushita + Naoto Yagi + Yoko Ueda
乗 松 亨 平 + 平 松 潤 奈 + 松 下 隆 志 + 八 木 君 人 + 上 田 洋 子
044
─ 乗 松 亨 平
文 化 的 基 盤 と し て の ソ 連
─ 乗 松 亨 平
監 修
哲 学 の 再 起 動
並 行 的 他 者 と の 出 会 い の た め に
歴 史 を つ く り な お す
│
談 入
導
現 代 思 想 Ⅱ
小 特 集 共 同 討 議
─ 東 浩 紀
鼎
特 集
接 続 、 切 断 、 誤 配 國 分 功 一 郎 + 千 葉 雅 也 + 東 浩 紀
距 離 の 回 復
Kyohei Norimatsu
東 浩 紀
編
genron triannua l Edited by Hiroki Azuma
7 Chun An Hiroki Azuma Masaya Chiba Alexander Etkind Sho Fukutomi Muneaki Hatakeyama Kenro Hayamizu Junna Hiramatsu Yuk Hui Makoto Ichikawa Ilya Kalinin Koichiro Kokubun Yohei Kurose Marlène Laruelle Takashi Matsushita Hifumi Nakayama Kyohei Norimatsu Dai Sato Sayawaka Masanori Tsujita Yoko Ueda Kazuki Umezawa Melon Uminekozawa Naoto Yagi Ken Yamashita Prabda Yoon