『ゲンロン8.5』

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寄稿者一覧

弓 指 寛 治 |

ン ド 心 の 哲 学 ﹄ ︵

に し じ ま ・ だ い す け

田 出 版 ︶

、 ﹃ 文 体 の 吉 科 川 吉 と 川 学 共 と ﹄ ︵

ゆ み さ し ・ か ん じ

西 島 大 介 |

史 学 者 プ ラ ト ン ﹄ ︵

の 共 訳 、 朝 日 出 版 な 社 ど ︶ 訳 、 朝 日 出 版 社 ︶

﹃ 脳 が わ か れ ば 心 が わ か る か ﹄ ︵

大 山 顕 | お お や ま ・ け ん

ア ー ト ダ イ バ ー 、

﹃ ア イ ド ル に な り た い ! ﹄ ︵

+ 七 山 f 一 本 ︶ 年

+ 生 ﹄ ︵ 。 幻 文 戯 筆 書 家 房 ・ ︶ ゲ 、 ﹃ ー ﹁ ム 百 作 学 家 連 。 環 著 ﹂ 書 を に 読 ﹃ む 文 ﹄ ︵ 学 三 問 省 題

新 潮 社 ︶ 吉 ほ 川 か 浩 。 満 翻 と の 訳 共 、 。 ﹃ に 著 マ ﹃ 、 ︵ イ 先 太 堂 ︶ F

貴 光 | や ま も と ・ た か み つ

ち く ま プ リ マ ー 新 書 ︶

な ど 。

▼ 表 紙

ク ル ジ ジ ャ ノ フ ス キ イ ﹃ 瞳 孔 の 中 ﹄ ︵

表 。 編 著 に ﹃ 歌 舞 伎 と 革 命 ロ シ ア ﹄ ︵

七 四 年 生 。 ロ シ ア 文 学 者 、 博 士

︵ 文 学 ︶ 森 。 話 社 ゲ ︶ ン

共 訳 、 松 籟 社 、 ロ ︶ 訳 ン

な 書 副 ど に 代 。

上 田 洋 子 | う え だ ・ よ う こ

な ど 。 作 品 。 集 に ﹃ ラ ム か ら マ ト ン ﹄ ︵ 二 〇 一 五 年 ︶

ン ロ ン 0 観 な 光 ど 客 。 の 哲 学 ﹄ ︵ 文 化 賞 受 賞 ︶

ゲ ン ロ ン 、 第 七 一 回 毎 日 出 版

般 意 志 2 ・ 0 ﹄ ︵ 講 談 社 ︶

、 ﹃ 弱 い つ な が り ﹄ ︵ 幻 冬 舎 ︶

、 ﹃ ゲ

ン ガ リ キ ッ ズ 、 ﹃ ﹄ ︵ ア J ナ I ー C キ C ー 出 ・ 版 イ 局 ︶ ン 、 ・ ﹃ ザ オ ・ シ J ャ P レ ﹄ ︵ 泥 新 棒 潮 ﹄ ︵

せ よ 乙 女 ! パ ー プ ル ー ム 大 学 と 梅 津 庸 一 の 構 想 画 ﹂

六 〇 年 生 。 作 家 / ア イ ド ル 評 論 家 。 著 者 に ﹃ 東 京 社 マ ト ︶ 、 ガ ジ ン ハ ウ ス ︶

七 一 年 生 。 思 想 家 、 作 家 。 ゲ ン ロ ン 代 表 。 主 著 に ﹃ 一

東 浩 紀 ─ あ ず ま ・ ひ ろ き

プ ル ー ム 予 備 校 ﹂ 運 営 。 展 覧 会 に ﹁ 未 遂 の 花 粉 ﹂ 、 ﹁ 恋

八 二 年 生 。 美 術 家 、 パ ー プ ル ー ム 主 宰 。 私 塾 ﹁ パ ー

中 森 明 夫 |

梅 津 庸 一 | う め つ ・ よ う い ち

ー シ ッ ク イ ン カ ム 論 ﹄

藤 元 章 と の 共 著 、 P H P 光 出 文 版 社 局 ︶

新 、 書 ﹃ A な I ど 時 。 代 の 新 ・ ベ

に オ 六 ﹃ 九 年 生 。 ゲ ー ム 心 の ク の C リ 軋 E エ む O イ と を タ ー き 務 。 ﹄ め ゲ 、 ﹃ る ー 。 手 ム 掛 開 け 発 た ス 作 タ 品 ジ

﹄ な ど が あ る 。

な か も り ・ あ き お

藝 博 化 駒 井 春 士 検 澤 上 秋 討 大 智 ︶ 経 会 学

声 代 画 著 社 論 監 作 ︶ ﹄ 督 に な ︵ 、 ﹃ ど 河 北 イ 多 出 野 メ 数 書 房 武 ー 。 新 。 ジ 社 ﹄ ︵ の ︶ フ 進 、 ﹃ ィ 行 リ ル 形 メ ム ﹄ ︵ イ ア 人 ク ー 文 ト 映 書 画 社 ︶ 院 の 、 ︶

﹃ 1 9 9 0 水 年

創 造 力 ﹄ ︵

、 共 著 に ﹃ 映

学 文 学 部 専 任 講 師 、 日 本 大 学 芸 術 学 部 非 常 勤 講 師 。

八 二 年 生 。 映 画 史 研 究 者 ・ 批 評 家 。 跡 見 学 園 女 子 大

当 時 は 九 歳 で 、 母 と と も に プ リ ピ ャ チ に 住 ん で い た 。

済 議 経 学 構 済 。 成 学 著 員 部 書 、 准 に A 教 ﹃ I 授 人 社 、 工 会 総 知 論 務 能 研 省 と 究 A 経 会 I 済 共 ネ の 同 ッ 未 発 ト 来 起 ワ ﹄ ︵ 人 ー 齊 文 。 ク

洋 |

デ ヴ ィ ッ ド ・ ケ イ ジ |

共 編 著 に ﹃ ﹁ 統 治 ﹂ を 創 造 す る ﹄ ︵

、 ﹃ 人 工 知 能 は 資 本 主 義 を 終 焉 さ せ る か ﹄ ︵

渡 大 輔 | わ た な べ ・ だ い す け

メ デ ィ ア 社 会 の な ︿ ど ジ 。 ャ ー ナ リ ズ ム ﹀ ﹄ ︵ 電 機 大 学 出 版 局 ︶

い の う え ・ と も ひ ろ

春 秋 社 遠 ︶ 、 藤 薫 共 編 著 、 に 東 ﹃ 京 間

の か ﹄ 、 翻 訳 に ﹃ J ・ デ ィ ラ と ︽ ド ー ナ ツ ︾ の ﹃ ビ ー ト 革 命 ﹄ ﹄ 。 。 ビ ー ト メ イ ク 最 新 作 は

評 再 生 塾 ﹀ 初 代 総 代 。 共 著 に ﹃ ラ ッ プ は 何 を 映 し て い る

テ ィ ビ ズ ム と は 何 か ﹄ ︵ ソ フ ト バ ン ク ク リ エ イ テ ィ ブ ︶

、 七 五 年 生 。 批 評 家 / ビ ー ト メ イ カ ー / M C 。 ︿ ゲ ン ロ ン 批

講 師 。 専 攻 は 情 報 社 会 学 、 社 会 哲 学 。 著 書 に ﹃ ハ ク

公 式 ガ イ ド の 資 格 を 持 つ 。 チ ェ ル ノ ブ イ リ 原 発 事 故 八 四 年 生 。 拓 殖 大 学 非 常 勤 講 師 。 学 習 院 大 学 非 常 勤

吉 田 雅 史 | よ し だ ・ ま さ し

ゲンロン 8.5

主 宰 。 写 真 家 、 ジ ャ ー ナ リ ス ト 、 映 像 作 家 。 ゾ ー ン

七 六 年 生 。 国 際 N G O ﹁ プ リ ピ ャ チ ・ ド ッ ト ・ コ ム ﹂

塚 越 健 司 |

ア レ ク サ ン ド ル ・ シ ロ タ |

ОлександрСирота

、 ﹃ デ ィ エ ン ビ エ ン フ ー

七 四 年 生 。 ︿ ゲ ン ロ ン ひ ら め き ☆ マ ン ガ 教 室 ﹀ ひ ら

、 ﹃ シ ョ ッ ピ な ン ど グ 。 モ ー ル か ら 考 え る ﹄ ︵

見 フ 産 七 究 ァ 業 二 ー 株 年 ﹄ ︵ 共 と 式 生 に し 会 。 東 て 社 フ 京 独 ︵ ォ 書 立 現 ト 籍 。 グ ︶ 主 ラ 、 な ﹃ フ ジ 著 ァ ャ 書 ︶ ー ン に 勤 / ク ﹃ 務 ラ シ 工 を イ ョ 場 経 タ ン 萌 て ー え ﹄ ︵ ﹄ フ 。 メ ﹃ ォ 松 デ 団 ト 下 ィ 地 グ 電 ア の ラ 器

Fake? n MA$A$HI ForMula

双 葉 社 ︶ 講 な 談 ど 社 。 ︶

め き ☆ プ ロ デ ュ ー サ ー 。 代 表 作 に ﹃ す べ て が ち ょ っ

八 六 年 生 。 芸 術 家 。 二 〇 一 六 年 に 母 の 自 死 を モ チ ー

く す の き ・ ま さ の り

フ ァ ク ト リ ー ︶

David Cage

と ず つ 優 し い 世 界 ﹄ ︵

フ に 描 い た ︽ 挽 歌 ︾ で ゲ ン ロ ン カ オ ス * ラ ウ ン ジ

浩 紀 と の 共 著 、 幻 冬 舎 新 書 ︶

)

﹄ ︵

新 芸 術 校 第 一 期 金 賞 受 賞 。 二 〇 一 八 年 に ︽ O の 慰 霊 ︾

楠 正 憲 |

(

TRUE END

Michael Chan John Person

▼ 翻 訳 協 力

ブ ロ

七 七 年 生 。 イ ン タ ー ネ ッ ト 総 合 研 究 所 、 マ イ ク ロ ソ

BEYOND: Two

、 ﹃ 脳 が わ 、 ﹃ か 理 れ

よ し か わ ・ ひ ろ み つ

で 第 二 一 回 岡 本 太 郎 現 代 芸 術 賞 の 岡 本 敏 子 賞 を 受 賞 。

株 式 会 社 ﹂ C T O 。

フ ト 、 ヤ フ ー を 経 て 、 二 〇 一 七 年 一 〇 月 よ り ﹁

Quantic Dream HEAVY RAIN Souls

河 出 書 房 新 社 ︶

吉 川 浩 満 |

ッ ク チ ェ ー ン と 分 散 台 帳 技 術 に 係 る 専 門 委 員 会 国 内

)

貴 光 と の 共 著 、 太 田 出 版 ︶

七 二 年 生 。 文 筆 家 。 著 書 に ﹃ 人 間 の 解 剖 は サ ル の 解

く ろ せ ・ よ う へ い

委 員 会 委 員 長 、 内 閣 官 房 情 報 化 統 括 責 任 者 補 佐 官 。

(

剖 の た め の 鍵 で あ 山 る 本 ﹄ ︵

黒 瀬 陽 平 ─

Panasonic

ば 心 が わ か る か ﹄ ︵

八 三 年 生 。 美 術 家 、 美 術 批 評 家 、 キ ュ レ ー タ ー 。 東

Japan ISO/TC307

京 藝 術 大 学 大 学 院 美 術 研 究 科 博 士 後 期 課 程 修 了 。 ア

Digital Design

ー テ ィ ス ト ・ グ ル ー プ ﹁ カ オ ス * ラ ウ ン ジ ﹂ 代 表 。

著 書 に ﹃ 情 報 社 会 の 情 念 ﹄ ︵

つ か ご し ・ け ん じ

N H K 出 版 ︶

の 哲 学 ﹄ ︵

プ ラ ト ン 山 ﹄ ︵

不 尽 な 進 化 本 山 ﹄ ︵ と の 共 訳 、 朝 日 出 版 社 ︶

本 と の 共 訳 、 朝 日 出 版 社 な ︶

ど 、 ﹃ 。 マ イ ン ド 心

朝 日 出 版 社 ︶

ほ か 。 翻 訳 に ﹃ 先 史 学 者

124


こ と が で き る 。 ヒ ッ プ ホ ッ プ の 文 脈 に お い

は 単 に グ ル ー プ と い う 言 葉 で も 言 い 換 え る

ホ ー ミ ー 、 ク リ ッ ク 、 ス ク ワ ッ ド 、 あ る い

体 型 、 風 景 型 と 呼 べ る タ イ プ の 作 品 の 系 譜

つ い て だ 。 そ の 存 在 と は 、 一 体 何 の こ と か 。

で も な い 、 そ の あ わ い に 立 ち 上 が る 存 在 に

存 在 す る 。 こ の ﹁ ク ル ー ﹂ と は 、 ポ ッ セ 、

他 方 に ラ ッ パ ー と 同 じ 目 線 の ﹁ ク ル ー ﹂ が

ア ル に 対 す る 考 え 方 が 表 れ て い た 。

M V の あ り 方 に は 、 こ の ジ ャ ン ル 独 自 の リ

V を 検 証 し て 明 ら か に な っ た こ と だ っ た 。

ぐ 装 置 だ 。 そ れ が 、 前 回 ヒ ッ プ ホ ッ プ の M

こ こ で 取 り 上 げ る の は 、 風 景 で も な い 、 身 体

M V に 映 り 込 ん で い る も の に 目 を 向 け る 。

重 要 な 作 業 で あ る 。 そ こ で 今 回 も 引 き 続 き

ャ ン ル の 特 異 性 を 掘 り 起 こ す 上 で も 非 常 に

ィ ア に 映 り 込 む も の を 精 査 す る こ と は 、 ジ

ァ ン と し て の ﹁ オ ー デ ィ エ ン ス ﹂ が い て 、

う 。 一 方 に ラ ッ パ ー に 対 す る リ ス ナ ー や フ

の 人 々 は 、 大 き く ふ た つ に 分 類 で き る だ ろ

ビ ー ト メ イ カ ー 、 D J を 取 り 巻 く 人 々 。 こ

衆 ﹂ の 特 殊 性 と は 何 だ ろ う か 。 ラ ッ パ ー や

ア メ リ カ と 日 本 の M V に は 、 そ れ ぞ れ 身

アンビ バレント・ヒップ ホップ 第 14 回

を 利 か せ る 文 化 に と っ て 、 M V と い う メ デ   ヒ ッ プ ホ ッ プ と い う 文 化 に お け る ﹁ 群

吉 田 雅 史

ラ ッ パ ー の 唇 と は 、 リ ア ル と 虚 構 を つ な

身 体 、 風 景 か ら 群 衆 へ

ヒ ッ プ ホ ッ プ と い う 視 覚 的 イ メ ー ジ が 幅 せ る か に 心 血 を 注 い で き た

い て 議 論 し た 。

そ し て そ れ に 対 置 さ れ る 風 景 の あ り 方 に つ は 、 い か に し て 言 葉 や 音 楽 で ﹁ 群 衆 =

﹂ の 心 を 動 か し 、 ま [ た ★ 身 1 ] 体 。 的 に 踊 ら

─ ─

The Obscure Crowd vs. Rap Heroes

111

そ れ は ﹁ 群 衆 ﹂ で あ る 。 エ リ ッ ク ・ B ﹂ &

Move The Crowd

て は 、 こ れ ら は ア ー テ ィ ス ト 活 動 を 共 に す

が 存 在 し 、 各 々 の 類 型 の 発 展 を 支 え る 独 特

14

ラ キ ム の ク ラ シ ッ ク ﹁

の 背 景 を 持 っ て い た 。 僕 た ち は リ ッ プ シ ン

Ambivalent Hip-Hop

が 示 し て い る よ う に 、 ラ ッ パ ー や D J た ち

ク と い う 、 ヒ ッ プ ホ ッ プ の リ ア ル お よ び M

Masashi Yoshida

V の 虚 構 性 を 考 察 す る 上 で 欠 か せ な い 装 置

crowd

を 中 心 に 据 え な が ら 、 そ の 拡 張 で あ る 身 体 、

無ア 名 のン 群ビ 衆バ vs. レ ラン ット プ・ ヒヒ ーッ ロ ープ

ホ ッ プ   第 14 回

吉田雅史


吉 川 浩 満

知 の グ ラ ン ド ツ ア ー

し て い る 。

山 だ は 吉 果 本 。 じ   川 て   へ め こ 、 ソ の の 邦 ー 旅 本 訳 ト ﹄ は さ イ で 、 れ と す 宇 て い 。 宙 広 え や く ば 世 読 ﹃ 界 ま 素 に れ 数 つ て の い い 音 て る 楽 人 名 ﹄ 手 を 類

マ ー カ ス ・ デ ュ ・ ソ ー ト イ が 書 い た ﹃ 知 の

山 あ 本 る   ら よ し く い ぞ じ 訊 ゃ い な て い く で れ す ま か し 。 た 。 数 学 者 の

ら な い 。 そ う い う 意 味 で の 果 て を テ ー マ に

ま で は 分 か っ て い て 、 こ こ か ら 先 は 誰 も 知

ら 一 か ら 六 の い ず れ か の 目 が 出 る 。 こ ん な

山 だ 吉 れ れ 山 も そ る 果 吉 川 る ど   本 う こ と て   本 よ   川   一 も 、 ね 。 、 ﹁ へ そ 。 今 の い こ ソ 冊 ま 回 う 旅 い の ー と た 、 は ﹄ 邦 本 ト も 面 六 サ を 題 も イ 関 白 面 イ 思 だ つ さ 係 い 体 コ い よ か ん す 。 の ロ 出 ね み の る こ サ の す 。 が 本 。 れ イ 話 は 。 セ う は コ か 今 原 リ ま い ロ ら 回 ﹂ タ ー く つ な は 取 な イ ヌ て も ら じ り ん ト の 引 そ 振 ま 上 だ ル ﹃ き う っ る 込 だ げ よ を 夜 る ね 見 の た ん ま け 。

今 年 は 山 本 く ん が お 気 に 入 り の 本 が

─ ︵

︶ ─

﹃ 知 っ て る つ も り

﹃ 知 の 果 て へ の 旅 ﹄

無 知 の 科 学 ﹄

人 文 的 、 あ ま り に 人 文 的   第 20 回 ︵ 最 終 回 ︶

What we cannot know

簡 単 な こ と な ん だ け れ ど 、 人 類 は サ イ コ ロ

が 知 っ て い る こ と の 果 て と い う か な 、 こ こ

サ イ コ ロ か ら は じ ま る

Takamitsu Yamamoto + Hiromitsu Yoshikawa

い し ん 。 後 ー い ね た 。 だ マ う 思 さ 。 よ そ か に わ え て ら し け ば 、 う し 風 よ で 遠 と な た 呂 う 、 く う 本 ら 敷 。 終 へ と を 、 ﹁ わ 来 う を 取 知 り た 最 広 り を も 終 げ 上 ﹂ 飾 の 回 て げ そ る だ で 大 よ の に 。 す き う も 。 ふ な か の 。 を 話 さ

山 本 貴 光 + 吉 川 浩 満

Humanistic, All Too Humanistic 20 Final Marcus du Sautoy, What We Cannot Know Steven Sloman and Philip Fernbach, The Knowledge Illusion: Why We Never Think Alone

山 テ 吉 が 山 わ 吉 山 本 ー   本 し   川 本 川 い     貴 マ い い 光 い に う ね 最 テ と

ゲンロン 8.5

104


こ の 二 〇 余 年 、 チ ェ ル ノ ブ イ リ の こ と を

設 け て い る 。 な か で も 原 発 衛 星 都 市 ・ プ リ

理 作 業 員 ら 、 現 地 の 人 々 の 話 を 聞 く 機 会 を

物 館 を め ぐ る だ け で な く 、 元 住 民 や 事 故 処

や 事 故 を 記 憶 す る 場 所 、 そ し て キ エ フ の 博

こ こ で は 初 日 の 対 話 を 紹 介 し た い 。

さ ら に 一 時 間 近 く の 対 話 が 続 い た の だ が 、

ゾ ー ン の そ ば の シ ロ タ さ ん の お 宅 を 訪 ね 、

尽 き る こ と が な か っ た 。 実 際 は こ の 翌 日 も

況 に つ い て 率 直 に 語 っ て く だ さ り 、 質 問 は

う プ ロ ジ ェ ク ト を 主 宰 し て い ま す 。

い ま は ﹁ プ リ ピ ャ チ ・ ド ッ ト ・ コ ム ﹂ と い

ピ ャ チ か ら 避 難 し た の は 九 歳 の と き で し た 。

ブ イ リ 原 子 力 発 電 所 の 事 故 が 起 こ っ て プ リ

ぼ く は 元 プ リ ピ ャ チ 住 民 で す 。 チ ェ ル ノ

ツ ア ー で は チ ェ ル ノ ブ イ リ 原 子 力 発 電 所

を 連 れ て 行 く こ う し た ツ ア ー を 行 っ て き た 。

ム ・ ガ イ ド ﹄ 刊 行 以 来 、 実 際 に 現 地 に 観 光 客

年 の ﹃ チ ェ ル ノ ブ イ リ ・ ダ ー ク ツ ー リ ズ

ル ノ ブ イ リ の 観 光 地 化 に と も な う 複 雑 な 状

質 問 に 答 え て い た だ い た 。 シ ロ タ 氏 は チ ェ

の ホ テ ル で 彼 と 会 い 、 ツ ア ー 参 加 者 か ら の

ノ ブ イ リ ・ ゾ ー ン

た プ リ ピ ャ チ の 街 を 見 学 し た あ と 、 チ ェ ル

ち は 。 ア レ ク サ ン ド ル ・ シ ロ タ で す 。

ア レ ク サ ン ド ル ・ シ ロ タ

て お 読 み い た だ け る と 嬉 し い ︵ 。 上 田 洋 子 ︶

き れ ば 二 〇 一 三 年 の イ ン タ ビ ュ ー と あ わ せ

み な さ ん こ ん に

︹ 立 入 制 限 区 域 の こ と ︺

観 光 ツ ア ー で あ る 。 ゲ ン ロ ン で は 二 〇 一 三   今 回 の ツ ア ー で は 、 シ ロ タ 氏 が 住 ん で い 変 わ っ た の か 、 あ る い は 変 わ ら な い の か 。 で

エ イ チ ・ ア イ ・ エ ス 主 催 に よ る 一 般 向 け の

リ ツ ア ー を 開 催 し た 。 こ れ は ゲ ン ロ ン 企 画 、

し て い る 人 物 だ 。

て し ま っ た 故 郷 を 記 憶 に 残 す た め の 活 動 を

コ ム ﹂ を 主 宰 し 、 原 発 事 故 後 に 廃 墟 に な っ

行 っ て い る 。 あ れ か ら 五 年 の あ い だ に 、 チ ェ

ツ ー リ ズ ム ・ ガ イ ド ﹄ で も イ ン タ ビ ュ ー を

ル ノ ブ イ リ の 状 況 や シ ロ タ 氏 の 心 境 は ど う

二 〇 一 八 年 六 月 、 五 回 目 の チ ェ ル ノ ブ イ

ア レ ク サ ン ド ル ・ シ ロ タ

通 訳 ・ 翻 訳

─ 上 田 洋 子 Йоко Уеда

シ ロ タ 氏 に は ﹃ チ ェ ル ノ ブ イ リ ・ ダ ー ク

ピ ャ チ 元 住 民 の ア レ ク サ ン ド ル ・ シ ロ タ 氏

ЧистанеЧорнобильтуристичнимоб' ктом?

に は 毎 回 か な ら ず お 会 い し て い る 。 シ ロ タ

Олександр Сирота

氏 は 現 在 、 N G O ﹁ プ リ ピ ャ チ ・ ド ッ ト ・

︹   ︺ = 訳 者 補 足

ゲンロン 8.5

チ ェ ル ノ ブ イ リ は 観 光 地 化 を 進 め る べ き か

│ 観 光 客 に よ る イ ン タ ビ ュ ー

092


弓指寛治(左)と中森明夫(右) 撮影=編集部

ら い あ と 、 岡 田 さ ん の   母 の 死 以 来 、 ぼ く は ず っ と 母 の こ と を 考

だ か ら そ の 一 ヶ 月 く し て い ま し た 。

う に な り ま し た 。

か も し れ な い と 思 う よ

に か ア プ ロ ー チ で き る

う ひ と な ら 、 自 分 も な

そ し て 、 彼 女 が そ う い

の で と て も 驚 き ま し た 。

ま っ た く 知 ら な か っ た

美 術 と 関 係 が あ る な ど

し い 。 そ こ は コ ミ ュ ニ テ ィ の 場 と し て 機 能

る 。 年 に 一 回 そ こ で だ け 会 う ひ と も い る ら

と た ち が 亡 く な っ た 岡 田 さ ん の 話 を し て い

あ と か ら 彼 女 を 知 っ た 世 代 も い た 。 そ の ひ

る フ ァ ン の 方 だ け で な く 、 ぼ く ら の よ う な 、

の こ と で し た 。 す る と 、 そ こ に は 当 時 を 知

に 行 っ て み た ん で す 。 一 昨 年

命 日 の 四 月 八 日 に 、 東 京 ・ 四 谷 の 自 殺 現 場

︵ 二 〇 一 六 年 ︶

れ て い た 。 岡 田 さ ん が

女 の 直 筆 の 転 写 で 書 か

⋮ ⋮ ﹂ と い う 碑 文 が 彼

ャ ン バ ス に 描 き た い

の 山 々 を / ま っ 白 な キ

た か っ た 私 ﹂ 、 ﹁ ス イ ス

ど う し て も 画 家 に な り

墓 碑 に は 、 ﹁ 幼 い 頃 /

し た も の で す

ト 作 品 が そ の [ 墓 図 碑 1 を ] 。 模

柳 本 悠 花 さ ん の フ ェ ル

の 展 示 の 冒 頭 に 置 い た 、

を 目 に し ま し た 。 今 回

図1 柳本悠花《ずぅっと…アイドル》。岡田の墓碑を模している  撮影=水津拓海(rhythmsift)

ゲンロン 8.5

074


慰 霊 と コ ミ ュ ニ テ ィ

ぼ く の 母 は 三 年 ほ ど ま え に 交 通

実 際 に お 墓 に 行 っ て み て 、 は じ め て 墓 碑

073

さ ん が 、 な ぜ い ま 岡 田 有 希 子 さ ん を 描 い た

い っ た 。 そ れ が 悪 い 意 味 で 社 会 現 象 に な り 、

の 少 年 少 女 が つ ぎ つ ぎ に 投 身 自 殺 を 図 っ て

飛 び 降 り た 。 そ し て そ れ を き っ か け に 当 時

た 。 彼 女 は 一 九 八 六 年 四 月 八 日 に ビ ル か ら

あ る 本 で 岡 田 有 希 子 さ ん の こ と を 知 り ま し

と い う 感 じ で 気 軽 に 行 け る と こ ろ で し た 。

み が あ っ た ん で す 。 ち ょ っ と 行 っ て み よ う

い た の で 、 彼 女 の お 墓 が あ る 場 所 に は 馴 染

で 、 大 学 入 学 か ら 一 〇 年 間 名 古 屋 に 住 ん で

う と 考 え ま し た 。 ぼ く は 三 重 県 伊 勢 市 出 身

ま ず は 、 彼 女 を 知 ら な い 世 代 で あ る 弓 指   そ こ か ら 自 殺 に つ い て 調 べ る よ う に な り 、 愛 知 県 愛 西 市 に あ る 岡 田 さ ん の お 墓 に 行 こ

ひとが「 神 」になったとき

反 響 を 呼 ん で い ま す 。

東 浩 紀

。 今 回 の 弓

さ ん に 、 弓 指 寛 治 さ ん の ﹁ 四 月 の 人 魚 ﹂ 展

た 。 そ れ が 結 局 母 を 亡 く し て し ま っ た 。 そ

し く 知 ら な い ま ま 、 母 の 看 病 を し て い ま し

し ま し た 。 当 時 、 ぼ く は う つ 病 に つ い て 詳

事 故 に 遭 い 、 そ の あ と う つ 病 に な っ て 自 殺

ン が 書 い た と 思 し き 不 気 味 な 記 事 が す ぐ に

て み た ら 、 亡 く な ら れ た 際 の 写 真 や 、 フ ァ

ん の こ と を 調 べ は じ め た 。 ネ ッ ト で 検 索 し

う 内 容 で し た 。 そ れ で 気 に な っ て 、 岡 田 さ

ポ ー ツ の 各 紙 に 取 り 上 げ ら れ る な ど 多 く の

し た も の で 、 朝 日 新 聞 、 東 京 新 聞 、 東 京 ス

ア イ ド ル O こ と 岡 田 有 希 子 さ ん を テ ー マ に

指 さ ん の 展 示 は 、 一 九 八 六 年 に 自 殺 を し た

と を 知 り た い と 思 っ た の は そ の た め で す 。

ぜ ひ と が 自 分 を 殺 し て し ま う の か と い う こ

﹁ 自 殺 ﹂ と い う 現 象 が な ぜ 起 き る の か 、 な

の シ ョ ッ ク は と て も 大 き な も の で し た 。

が し た 。 そ こ で 、 も う 少 し 近 づ く た め に 、

ど う も ま だ 彼 女 に つ い て わ か っ て い な い 気

出 て き ま し た 。

さ ら に 本 を 読 ん だ り し て み た の で す が 、

に 来 場 い た だ い て い ま す [ ★ 1 ]

本 日 は ア イ ド ル 評 論 家 の 中 森 明 夫

中 森 明 夫 + 弓 指 寛 治 + 東 浩 紀 ︵ 司 会 ︶ Akio Nakamori + Kanji Yumisashi + Hiroki Azuma

自 殺 と い う も の が 広 ま っ て し ま っ た 、 と い

の か を 教 え て く だ さ い 。

When Humans Became Gods: On Idol O and the Problem of Commemoration

弓 指 寛 治

ひ と が ﹁ 神 ﹂ に な っ た と き ︱ ︱ ア イ ド ル O と 慰 霊 を め ぐ っ て

中森明夫+弓指寛治+東浩紀


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ち が 二 〇 一 二 年 に 発 表 し た ﹃ K a r a ﹄ と

ケ イ し 人 意 ジ た 間 味

本 作 の 脚 本 の 出 発 点 は 、 わ た し た

の で し ょ う か 。

で は な く 、 ア ン ド ロ イ ド を 主 人 公 に

に つ い て 質 問 さ せ て く だ さ い 。 な ぜ

︱ つ ぎ に 、 ア ン ド ロ イ ド を 登 場 さ せ た

デヴィッド・ケイジ

065

実 存 主 義 的ゲームにむけて

ア ン ド ロ イ ド か ら 人 間 を 見 る

て ど う 思 う の か 、 と 。

で す 。 あ な た た ち は こ の よ う な 経 験 に つ い

の コ ミ ュ ニ テ ィ に 投 げ か け て い る 質 問 な の

う よ り も 、 そ れ こ そ 本 作 が ゲ ー ム ユ ー ザ ー

品 も 受 け 入 れ ら れ る と 信 じ て い ま す 。 と い

で す 。 わ た し た ち は 、 い ま や そ の よ う な 作

し た 。 隔 離 や 抑 圧 や 市 民 権 な ど を 扱 う 作 品

作 品 を つ く っ て よ い の で は な い か と 考 え ま

は こ の 作 品 で 、 思 考 を 刺 激 す る 経 験 、 そ し

ケ イ つ と メ 働 ジ い 思 ッ 者

た し た ち は 、 そ ろ そ ろ 、 深 刻 な 問 題 を 扱 う 生 産 ラ イ ン で 組 み 立 て ら れ る と い う も の で

て は 、 ど う お 考 え で し ょ う か 。

い ま す 。 そ の よ う な 受 け 取 り か た に

セ ー ジ と 受 け 取 ら れ る 可 能 性 が あ る

の 反 乱 を 描 く と い う 物 語 は 、 政 治 的

が 多 い の で は な い で し ょ う か 。 け れ ど も わ

に 囚 わ れ ず 、 別 の な に か を 夢 見 て い る も の

る 物 語 を つ く り た い 。 世 の ゲ ー ム は 、 現 実

ま す 。 今 日 の 世 界 と 共 鳴 し 、 現 実 と 関 連 す

て 意 義 深 い 経 験 を 生 み 出 し た い と 考 え て い

い う ア ン ド ロ イ ド が 、 視 聴 者 の 目 の 前 で 、

わ た し は 短 い 脚 本 を 書 き ま し た 。 カ ー ラ と

し た 、 い わ ば テ ク ニ カ ル デ モ で す 。 そ こ で

で さ ま ざ ま な 表 情 を テ ス ト す る た め に 作 成

い う 短 い 動 画 作 品 に あ り ま す

興 味 深 い 質 問 で す ね 。 わ た し た ち

[ ★ 2 ]

。 3 D

デヴィッド・ケイジ


機 会 を 設 け て く れ ま し た 。

ン メ ン ト の か た が 、 こ の イ ン タ ビ ュ ー の

た ソ ニ ー ・ イ ン タ ラ ク テ ィ ブ エ ン タ テ イ

係 を 論 じ ま し た 。 そ れ を 興 味 深 い と 思 っ

サ イ バ ー パ ン ク の 歴 史 や 現 代 社 会 と の 関

わ た し は こ の よ う な 話 が 好 き で す 。 三 つ め

収 め 、 苦 し み 、 復 活 す る キ ャ ラ ク タ ー で す ね 。

れ は ま る で 人 間 の 物 語 の よ う で す 。 成 功 を

っ た 。 そ し て い ま は 再 建 を 試 み て い る 。 そ

て 巨 人 で し た が 、 そ の あ と 困 難 な 時 代 に 入

語 に 興 味 を も ち ま し た 。 デ ト ロ イ ト は か つ

ま し た 。 第 二 に わ た し は 、 デ ト ロ イ ト の 物

な け れ ば な ら な い と す れ ば 、 こ こ だ と 考 え

ア ン ド ロ イ ド 産 業 が 世 界 の ど こ か に 定 着 し

市 で あ り 、 た く さ ん の 巨 大 な 空 倉 庫 が あ る 。

で す 。 デ ト ロ イ ト は 自 動 車 産 業 で 栄 え た 都

ま す 。 第 一 の 理 由 は き わ め て 現 実 的 な も の

デ ヴ ィ ッ ド ・ ケ イ ジ

を 舞 台 に 選 ん だ の で 理 す 由 か は 。 い く つ か あ り

て 質 問 さ せ て く だ さ い 。 な ぜ デ ト ロ イ ト

う 印 象 で す が 、 そ こ で ア ン ド ロ イ ド = 労

て い な い 、 保 守 の 労 働 者 が 多 い 土 地 と い

か っ た と も 言 わ れ ま す 。 経 済 的 に 恵 ま れ

年 の 大 統 領 選 で は ト ラ ン プ の 支 持 者 が 多

本 車 不 買 運 動 も あ り ま し た し 、 二 〇 一 六

ば れ る 工 業 地 帯 の 中 心 で す 。 過 去 に は 日

品 に と っ て 完 璧 な 場 所 だ と 考 え ま し た 。

以 上 の よ う な 理 由 で 、 デ ト ロ イ ト は こ の 作

ン グ の 死 か ら ち ょ う ど 五 〇 年 に あ た り ま す 。

キ ン グ が そ こ に い ま し た

の 行 進 ﹂ が あ り 、 マ ー テ ィ ン ・ ル ー サ ー ・

に 関 わ る こ と で す 。 一 九 六 三 年 に ﹁ 自 由 へ

の 理 由 は 歴 史 で す 。 デ ト ロ イ ト で は 多 く の

の P V を 取 り 上 げ 、 ﹄

[ ★ 1 ]

。 今 年 は キ

前 号 の ﹃ ゲ ン ロ ン 7 ﹄ で PlayStation®4

Detroit: Become Human

デ ト ロ イ ト は ﹁ ラ ス ト ベ ル ト ﹂ と 呼

用 ソ フ ト ﹃

り が と う ご ざ い ま す 。 ぼ く は 哲 学 者 で 、

重 要 な こ と が 起 こ り ま し た 。 と く に 市 民 権

本 日 は お 時 間 を と っ て い た だ き 、 あ

デ ヴ ィ ッ ド ・ ケ イ ジ

聞 き 手

─ 東 浩 紀

実 存 主 義 的 ゲ ー ム に む け て

︱﹃

Detroit: Become Human

﹃ デ ト ロ イ ト ﹄ の デ ィ レ ク タ ー 兼 シ ナ リ

Hiroki Azuma

オ ラ イ タ ー を 務 め ら れ た デ ヴ ィ ッ ド ・ ケ

David Cage

﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ と い う 雑 誌 の 発 行 者 で す 。

イ ジ さ ん に 、 い ろ い ろ と お 伺 い し た い と

Towards an Existentialist Game: The Question of Detroit: Become Human

︵ 以 下 ﹃ デ ト ロ イ ト ﹄ ︶

思 い ま す 。 ま ず は こ の 作 品 の 舞 台 に つ い

﹄ の 問 い

ゲンロン 8.5

064


業 革 命 、 さ ら に シ ン ギ ュ ラ リ テ ィ 以 降 を 射

る こ と が で き る の か 。 古 代 ギ リ シ ャ か ら 産

す る の か 。 そ し て そ の と き 、 日 本 は 生 き 残

既 存 の 政 治 経 済 の 担 い 手 を ど の よ う に 変 革

や 人 工 知 能 と い っ た 新 た な テ ク ノ ロ ジ ー は 、

あ る 経 済 学 者 井 上 智 洋 氏 が 登 壇 。 仮 想 通 貨

憲 氏 と ﹃ 人 工 知 能 と 経 済 の 未 来 ﹄ の 著 者 で

ブ ロ ッ ク チ ェ ー ン 技 術 の 専 門 家 で あ る 楠 正

た 。 情 報 社 会 学 者 の 塚 越 健 司 氏 を 司 会 に 、

う 、 い ま も っ と も ホ ッ ト な ふ た つ の 話 題 を

塚 越 健 司

え る の か ? ﹂ と 題 さ れ た イ ベ ン ト が 行 わ れ

﹁ 仮 想 通 貨 と 人 工 知 能

︱ 技 術 は 経 済 を 変

二 〇 一 八 年 三 月 九 日 、 ゲ ン ロ ン カ フ ェ で

奪 わ れ る と い う 議 論 も あ り ま す 。 ブ ロ ッ ク

り 、 汎 用 A I が 開 発 さ れ れ ば 人 間 の 労 働 が

他 方 人 工 知 能 は 近 年 急 速 な 発 展 を 遂 げ て お

な リ ス ク と 可 能 性 が あ る か は 未 知 数 で す 。

ま だ 対 応 し き れ て お ら ず 、 そ こ に ど の よ う

か る よ う に 、 わ れ わ れ は こ の 新 し い 技 術 に

れ ま せ ん で し た 。 そ の 後 の 顛 末 を 見 て も わ

速 度 で 高 騰 す る 投 資 対 象 は い ま ま で 考 え ら

出 事 件 は 記 憶 に 新 し い で す が 、 こ の よ う な

扱 い ま す 。 先 日 の コ イ ン チ ェ ッ ク に よ る 流

そ の ブ ロ ッ ク と ブ ロ ッ ク と の 間 は 特 殊 な 条

ロ ッ ク ﹂ と い う か た ち に ま と め ら れ ま す 。

記 録 さ れ て い て 、 そ れ が 一 〇 分 お き に ﹁ ブ

か 、 ど う い う 取 り 引 き が あ っ た か が す べ て

組 み の 台 帳 で す 。 だ れ が い く ら 持 っ て い る

で は な く 、 基 本 的 に は 全 世 界 で 持 ち 合 う 仕

も の に 価 値 が あ る よ う に 見 え ま す が 、 そ う

す 。 ビ ッ ト ﹁ コ イ ン ﹂ と い う と デ ー タ そ の

な に か と い う 話 を 簡 単 に さ せ て い た だ き ま

楠 こ で る わ チ 正 か あ の れ ェ 憲 ら る か わ ー

ま ず 、 そ も そ も ビ ッ ト コ イ ン と は

議 論 を し た い と 思 い ま す 。

仮 想 通 貨 の ハ ク テ ィ ビ ズ ム

今 日 は 仮 想 通 貨 と 人 工 知 能 と い

楠 さ ん か ら 発 表 を し て い た だ き 、 そ

。 ま ず は ブ ロ ッ ク チ ェ ー ン の 専 門 家

れ の 経 済 活 動 は ど の よ う な 変 化 を 被

井 上 智 洋 + 楠 正 憲 + 塚 越 健 司 Tomohiro Inoue + Masanori Kusunoki + Kenji Tsukagoshi

程 に 含 ん だ 白 熱 の 議 論 を 、 活 字 化 し て お 届

Virtual Currency and Artificial Intelligence: Will Technology Change Economy?

け す る 。 ︵ 編 集 部 ︶

仮 想 通 貨 と 人 工 知 能

︱ 技 術 は 経 済 を 変 え る の か ?

ン や A I と い っ た 新 し い 技 術 に よ り 、

ゲンロン 8.5

048


が 、 震 災 特 集 の ﹃ 思 想 地 図 β 2 ﹄ か ら ﹃ 福

こ で 運 営 の 方 針 を 変 え 、 世 に 送 り 出 し た の

二 〇 一 一 年 か ら 二 〇 一 三 年 に か け て の 二 年

申 告 な の で 信 用 な ら な い か も し れ な い が 、

そ の 考 え が 変 わ っ た の は 、 二 〇 一 一 年 春 、

え て い た よ う に 思 う 。

く ま で も 時 限 つ き の プ ロ ジ ェ ク ト と し て 捉

い 出 せ な い が 、 ぼ く は 当 初 、 こ の 会 社 を あ

か と い え ば 、 否 だ 。 当 時 の 思 い は 正 確 に 思

ゲ ン ロ ン が こ れ ほ ど 長 く 続 く と 考 え て い た

味 ﹂ が あ る の で は な い か と 思 い 始 め た 。 そ

っ て い る と い う 事 実 に は 、 な ん ら か の ﹁ 意

を 集 め ひ と を 動 か す こ と の で き る 組 織 を も

い 人 間 が 、 こ の タ イ ミ ン グ で 具 体 的 に 資 金

学 者 、 つ ま り 抽 象 的 な こ と し か 思 考 で き な

う な 無 理 を 主 張 す る 気 が な く な っ た 。 自 己

わ か っ て い た 。 二 〇 一 一 年 以 降 は 、 そ の よ

理 な 主 張 で あ る こ と は ぼ く 自 身 だ れ よ り も

と 言 い 張 っ て も い た 。 け れ ど も 、 そ れ が 無

触 れ よ う と は し て い た 。 現 実 に 触 れ て い る

は こ の 四 月 で 創 業 八 周 年 を 迎 え た 。 八 年 前 、   け れ ど も 震 災 に 出 会 い 、 ぼ く の よ う な 哲 ろ ん 、 そ れ ま で の ぼ く も ぼ く な り に 現 実 に

許 し い た だ き た い 。

と り た て て 告 知 し な か っ た が 、 ゲ ン ロ ン れ て な い よ う に 感 じ て い た か ら で あ る 。

言 葉 が 現 実 と 直 接 に 触 れ る 経 験 を し た 。 む

の 役 割 な ん て 、 も は や そ れ ぐ ら い し か 残 さ   だ か ら ぼ く は 、 そ の と き は じ め て 自 分 の

に ﹂ は 休 載 と し て 、 か わ り の エ ッ セ イ で お

訳 な い が 今 回 も ま た ﹁ 観 光 客 の 哲 学 の 余 白

な か な か 落 ち 着 い た 時 間 が と れ な い 。 申 し

て い た 。 ゼ ロ 年 代 の 日 本 で は 、 思 想 や 言 論

な 組 織 で 、 ま た ぼ く 自 身 そ れ で い い と 思 っ

に 好 き な こ と を す る た め の サ ー ク ル の よ う

の ゲ ン ロ ン は 、 大 人 が 集 ま っ て 好 き な と き

象 的 で 記 号 的 な 世 界 ば か り 扱 っ て き た 。

四 半 世 紀 に な る 。 け れ ど も ぼ く は ず っ と 抽

年 度 は じ め は さ ま ざ ま な 業 務 が 集 中 し 、

東 浩 紀

Genron’s Future: On its Eighth Anniversary

Hiroki Azuma

﹃ 思 想 地 図 β 1 ﹄ を 出 版 し た 直 後 に 起 き た

東 日 本 大 震 災 が き っ か け で あ る 。 そ れ ま で

ゲ ン ロ ン の 未 来

︱ 創 業 八 周 年 に 寄 せ て

る 島 ぼ 。 第 く 一 の 原 デ 発 ビ 観 ュ 光 ー 地 は 化 早 計 い 画 。 ﹄ 批 ま 評 で 家 の に 四 な 冊 っ で て あ

ゲンロン 8.5

042


も あ る か も し れ な い 。 し か し 、 わ た し は 美

草 に 、 読 者 は 多 少 の 鬱 陶 し さ を 感 じ る こ と

い さ さ か 傲 慢 と も 受 け 取 ら れ か ね な い 言 い

の 美 術 家 が 見 た 展 覧 会 の 感 想 文 に し て は 、

評 と い う 形 で 論 じ て い こ う と 思 う 。 ひ と り

こ の 連 載 で は 、 主 に 美 術 展 を 取 り 上 げ 、 展

評 家 で は な く 美 術 家

る 美 術 家 の 逡 巡 が 込 め ら れ て い る 。

ト 中 端 ﹂ で を [ ★ 美 め 2 術 ぐ ] 、 な と っ る り て [ 語 わ ﹂ が け ★ 1 指 ﹁ ] し 現 に 示 代 は す 美 、 領 術 そ 域 / ん に 現 な 対 代 状 峙 ア 況 す ー の

れ て い く 。 本 連 載 の タ イ ト ル ﹁ 尖 端 か ら 末

と し て 観 客 に 消 費 さ れ て は 急 速 に 忘 れ 去 ら

い る い ま 、 そ の ほ と ん ど が さ さ や か な 興 行

常 に と て つ も な い 数 の 展 覧 会 が 開 催 さ れ て

ま み れ 過 ぎ て い る と 言 え る か も し れ な い 。

見 て も ら う 展 覧 会 と い う 形 式 自 体 も 手 垢 に

つ つ あ る 。 そ も そ も 展 示 し た 作 品 を 観 客 に

ャ ッ ジ し て も ら う と い う モ デ ル も 形 骸 化 し

強 く 働 い て い る 。 さ ら に 作 家 が 批 評 家 に ジ

業 の 中 で の 既 得 権 益 に 根 ざ し た 力 学 の 方 が

災 害 で あ る 。

る の か も し れ な い 。

か に 喋 ら さ れ て い る 作 家 の セ リ フ と も 読 め

展 評 で も あ り つ つ 、 創 作 行 為 で も あ り 、 誰

り も す る だ ろ う 。 そ う 考 え る と こ の 連 載 は

足 り 得 る 場 合 も あ る し 、 制 作 が 批 評 だ っ た

る 。 ア ウ ト プ ッ ト さ れ な い 思 考 だ け が 作 品

い る し 、 他 者 に よ っ て 再 設 定 さ れ た り も す

れ の ポ ジ シ ョ ン を 入 れ か え な が ら 存 在 し て

だ ろ う 。 制 作 、 批 評 、 生 活 、 思 考 は そ れ ぞ

い た か ら 批 評 と 一 概 に 言 う こ と は で き な い

カ オ ス ラ ウ ン ジ 新 芸 術 祭 2 0 1 7 市 街 劇 ﹁ 百 五 〇 年 の 孤 独 ﹂

展 評

尖 端 か ら 末 端 を め ぐ っ て   第 1 回

Urban Drama

黒 瀬 キ ュ レ ー シ ョ ン も ま た

Chaos*Lounge New Art Festival 2017: 150 Years of Solitude

さ て 、 今 回 取 り 上 げ る 展 覧 会 は 芸 術 家 集

で あ る 。

1

︵ ア ー テ ィ ス ト ︶

は じ め に

最 初 に 断 っ て お く が 、 わ た し は 美 術 の 批

*

も の を 造 形 し た か ら 制 作 、 テ キ ス ト を 書

梅 津 庸 一

評 的 な 価 値 判 断 を 行 使 し て み た い と い う わ

Exhibition Review: From Top to End

術 評 論 家 の 口 ま ね を し て 、 い わ ゆ る 美 術 批

け で は な い 。 今 日 、 美 術 の 世 界 で は 批 評 の

Yoichi Umetsu

原 理 よ り も マ ー ケ ッ ト の 原 理 や 美 術 教 育 産

ゲンロン 8.5

036


で き る 、 と い う 点 に あ る 。 つ ま り 3 D リ プ

ラ を 置 く こ と が 可 能 に な り 、 拡 大 、 縮 小 、

に よ っ て 、 あ ら ゆ る 位 置 に 、 時 間 に 、 カ メ

ば 、 そ の 情 報 を 事 後 的 に 組 み 合 わ せ る こ と

031

﹄ は 、 同 年 一 二 月 、 ﹁ 3 D リ プ レ

れ も 年 る 多 三 [ く 月 ★ 1 の に ] ユ リ オ ー リ ン ザ ー ラ ー ス イ が さ ン 遊 れ 、 ゲ ん 現 ー で 在 ム い 、

最 後 ま で 、 あ ら ゆ る 視 点 か ら 見 直 す こ と が

は 、 プ レ イ ヤ ー が 参 加 し た 試 合 を 最 初 か ら

る 。 P U B G の 3 D リ プ レ イ の 最 大 の 特 徴

意 味 を 、 根 底 か ら 揺 さ ぶ る も の だ か ら で あ

け る ﹁ カ メ ラ ﹂ や ﹁ 視 点 ﹂ と い っ た 言 葉 の

3 D リ プ レ イ の 技 術 が 、 私 た ち の 視 覚 に お

の 間 に 生 ま れ る 情 報 を す べ て 保 存 し て お け

て 保 存 す る 技 術 こ そ が 本 体 な の だ 。 一 試 合

ゲ ー ム 内 で 起 こ る こ と す べ て を デ ー タ と し

て 記 録 す る 技 術 で は な い 。 そ う で は な く 、

メ ラ を 置 き 、 複 数 視 点 の 映 像 を ビ デ オ と し

を 可 能 に す る が 、 ゲ ー ム 内 に た く さ ん の カ

な ぜ こ の 機 能 が 画 期 的 な の か 。 そ れ は 、

画 期 的 な 技 術 の 話 か ら は じ め よ

あ る オ ン ラ イ ン ゲ ー ム に 最 近 実

し て 再 生 で き る 機 能 で あ る 。

合 の す べ て を 、 キ ャ プ チ ャ さ れ た ビ デ オ と

黒 瀬 陽 平

光 学 的 視 覚 か ら 情 報 的 視 覚 へ

プ レ イ は 、 プ レ イ ヤ ー が 死 ん だ 後 、 そ の 試

ン グ ゲ ー ム で あ る 。 今 回 導 入 さ れ た 3 D リ ︵

ト ル ロ イ ヤ ル 形 式 の サ バ イ バ ル シ ュ ー テ ィ

あ ま 視 あ ー 3 る で 点 る ム 。 見 を い 中 D   リ 渡 自 は に プ し 在 す 存 レ 、 に べ 在 イ 時 操 て す は 間 作 の る 、 を し 視 ど 自 操 、 点 で の 由 る ゲ あ 視 自 こ ー り 点 在 と ム う と な が の る も 視 で 空 ︶ 関 点 き 間 超 係 の る を 越 が 移 の 隅 的 な 動 で 々 な い

「ポスト」モダニズムの ハードコア 第 23 回

─ 23

レ イ は 、 自 分 の 視 点 や 他 の プ レ イ ヤ ー の 視

︵ ﹃ る 世 う 装 P と 界 二 。 さ 今 U れ 回 B 言 で 〇 た は G 最 一 わ ︶ 七 、 、

Yohei Kurose

点 を リ プ レ イ す る も の で は な く 、 実 際 の ゲ

P U B G と は 、 ひ と つ の フ ィ ー ル ド 上 に

イ 機 能 ﹂ を 導 入 し た 。

PLAYERUNKNOWN S BATTLEGROUNDS

最 大 百 人 の プ レ イ ヤ ー が オ ン ラ イ ン で マ ッ

The Hardcore of Postmodernism: On the Poor Surfaces

チ ン グ さ れ 、 最 後 の 一 人 に な る ま で 闘 う バ

﹁ ポ ス ト ﹂ モ ダ ニ ズ ム の ハ ー ド ・ コ ア

︱﹁ 貧 し い 平 面 ﹂ の ゆ く え

第 23 回

黒瀬陽平


象 = ス ク リ ー ン 的 な 画 面 と は 異 な る 、 ﹁ イ

待 の 新 人 だ 。 本 作 は 今 後 も 二 月 の 第 六 八 回

な ど 、 す で に そ の 才 能 が 注 目 さ れ て き た 期

お り 、 海 辺 に ほ ど 近 い 港 町 の 路 地 に 建 つ 一

語 の お も な 舞 台 と な る の は 、 そ の 題 名 の と

﹃ わ た し た ち の 家 ﹄ の い っ ぷ う 変 わ っ た 物

ベ ル リ ン 国 際 映 画 [ 祭 ★ 1 フ ] ォ 。 ー ラ ム 部 門 へ の 出

よ う に 思 え て く る 。 本 作 を 観 て い る 観 客 は 、

し だ い に 透 子 の 行 動 に は ど こ か 秘 密 が あ る

む 家 に 住 ま わ せ て も ら う こ と に な る 。 だ が 、

た 憶 る 浮 透 が 自 か 子 消 分 ぶ ︵ 失 に フ 藤 し 気 ェ 原 て づ リ 芽 い く ー 生 た 。 の ︶ 彼 な 客 と 女 ぜ 室 名 は か に 乗 、 自 ひ る デ 分 と 若 ッ に り い キ か で 女 で ん 乗 性 出 す っ が 会 る て 住 っ 記 い

021

品 が 決 定 し て い る

實 重 彥 が 批 評 的 に 見 い だ し た よ う な 、 表

た ち の 時 代 の 画 面 に は 、 か つ て 二 〇 世 紀 に

= ﹁ 深 さ ﹂ の 変 質 に つ い て 述 べ た 。 わ た し

か ら そ の 作 品 が P F F で 連 続 入 選 を 果 た す

五 歳 だ が 、 武 蔵 野 美 術 大 学 映 像 学 科 在 学 中

ー 作 と な る 清 原 は 、 一 九 九 二 年 生 ま れ の 二

の 修 了 制 作 作 品 で あ る 。 本 作 が 劇 場 デ ビ ュ

術 大 学 大 学 院 映 像 研 究 科 映 画 専 攻 第 一 一 期

1 7 グ ラ ン プ リ を 受 賞 し た 、 清 原 の 東 京 藝

ム ・ フ ェ ス テ ィ バ ル で P F F ア ワ ー ド 2 0

﹃ わ た し た ち の 家 ﹄ は 、 昨 年 の ぴ あ フ ィ ル

さ ら 高 な し 史 ︵ い ︵ 大 こ 古 沢 と 屋 ま を 利 り 知 雄 を り ︶ ︶ 、 と は 心 い 目 中 う 覚 穏 若 め や い る か 恋 と で 人 夜 は が の な で 海 い き に 。 た

こ の 家 に 暮 ら し て い る 。 だ が 最 近 、 母 親 に

来 、 母 親 の 桐 子

は 、 ク リ ス マ ス の 直 前 に 父 親 が 失 踪 し て 以

日 を 迎 え つ つ あ る 中 学 生 の セ リ

軒 の 二 階 建 て 古 民 家 で あ る 。 一 四 歳 の 誕 生

ポスト・シネマ・クリティーク 第 23 回

ふ た つ の 物 語

前 回 、 今 日 の ポ ス ト シ ネ マ に お け る 画 面

︵ 安 野 由 記 子 ︶

と ふ た り で

ひ と つ の ﹁ 家 ﹂ で 重 な る

︵ 河 西 和 香 ︶

大 輔

─ ─

The House of Plasmatic Spirits: Yui Kiyohara’s Our House

ン タ ー フ ェ イ ス / タ ッ チ パ ネ ル 的 ﹂ と で も

23

形 容 し う る よ う な 新 た な 性 質 の 画 面 = ﹁ 深

Post Cinema Critique

家 そ さ ﹄ ﹂ ︵ の 二 問 が 〇 題 現 一 を れ 七 清 つ 年 原 つ ︶ あ を 惟 る 監 お よ も 督 う の な に 素 ﹃ 思 わ 材 え に た る 、 し 。 あ た 今 ら ち 回 た の も 、

Daisuke Watanabe

め て 考 え て み た い 。

ポ ス ト ・ シ ネ マ ・ ク ︱リ テ 清 ィ 原 惟 ー 監 ク   督

原 形 質 的 な 幽 霊 た ち の 家

﹃ わ 第 た 23 し 回 た ち の 家 ﹄

大輔


っ て い る 。 ま ず 、 タ ッ チ パ ネ ル は 接 触

し た い タ ッ に チ 関 パ わ ネ っ ル て の い 特 る 徴 。 は つ す ぎ べ に て 、 出 タ ︵ そ ッ 触 ろ

な ら な い よ う に 見 え る 。 双 方 と も に 同 じ 矩

か な り 異 な る も の な の だ が ︶

映 像 出 力 装 置

画 や テ レ ビ や コ ン ピ ュ ー タ に 共 通 す る あ の

き を 踏 む よ り も 、 そ の よ う な ﹁ 粗 っ ぽ い ﹂

そ の 二 回 は 議 論 が ぐ っ と 前 進 し た 印 象 が あ

と で は な か っ た が 、 結 果 と し て 振 り 返 る に 、

と れ ず 駆 け 足 の 原 稿 と な っ た 。 意 図 し た こ

の こ 2 の つ 簡 の 潔 機 な 能 [ 定 を ★ 義 1 融 の ] 合 な 。 し か た に デ 、 バ 本 イ 論 ス で ﹂ 問 だ 題 と に 定

行 え る 装 置 の こ と ﹂ で あ り 、 ﹁ 表 示 と 入 力

触 れ る こ と に よ り 、 コ ン ピ ュ ー タ の 操 作 が

映 像 機 器 の ウ ェ ブ サ イ ト で は ﹁ 画 面 に 直 接

的 に ﹁ ス ク リ ー ン ﹂ と 総 称 さ れ て き た 、 映

タ ッ チ ス ク リ ー ン と 呼 ば れ て い る 。 実 際 、

し て い る 。 タ ッ チ パ ネ ル は じ つ は 英 語 で は

と は ま っ た く 異 な る も の で あ る こ と を 意 味

る 。 ど う や ら こ の 話 題 は 、 て い ね い な 手 続 義 さ れ て い る

る こ と の で き る ス ク リ ー ン ﹂ で あ り 、 歴 史

日 常 の 感 覚 と し て は 、 タ ッ チ パ ネ ル は ﹁ 触

第 六 回 と 第 七 回 は 、 執 筆 の 時 間 が あ ま り

し た 。 今 回 は そ の 続 き を 記 し た い 。

タ ッ チ パ ネ ル と は な に か 。 そ れ は 、 あ る 質 が 、 い ま ま で の い わ ゆ る ﹁ ス ク リ ー ン ﹂

言 語 化 で き る の で は な い か 。 前 々 回 そ う 記

を モ デ ル と し た 世 界 観 を 導 入 す る と う ま く

本 質 の 確 認 か ら 始 め よ う 。

進 め る こ と と す る 。 ま ず は タ ッ チ パ ネ ル の

こ の み っ つ の 特 徴 は 、 タ ッ チ パ ネ ル の 本

を 備 え て い る と い う わ け だ 。

の で は な い か 、 そ し て そ れ は タ ッ チ パ ネ ル

ポ ス ト モ ダ ン に も 新 し い ﹁ 深 さ ﹂ が あ る

東 浩 紀

触 視 的 平 面 の 誕 生

─ ─

と い う わ け で 今 回 も ﹁ 粗 っ ぽ く ﹂ 議 論 を

The Birth of the Tactile-Visual Plane

れ る こ と ︶

︵ 技 術 的 に は そ れ ら の あ い だ も

ス タ イ ル で 進 め る ほ う が よ さ そ う だ 。 哲 学

9

チ パ ネ ル は 情 報 機 器 に 対 し て 能 動 的 に 働 き

の 進 化 形 に ほ か

や メ デ ィ ア 論 と 接 続 し 、 ア カ デ ミ ズ ム 向 け

On the Margins of a Philosophy of the Tourist

の 厳 密 さ を 整 え る の は 、 も っ と 議 論 を 固 め

Hiroki Azuma

て か ら で も 遅 く は な い だ ろ う 。

ッ チ パ ネ ル は 出 力

か け る

入 力 の 二 面 性

。 最 後 に 、 タ

観 光 客 の 哲 学 の 余 白 に   第 9 回

︵ 機 器 の 操 ︵ 作 表 が 示 行 ︶ え と る ︶

ゲンロン 8.5

016


る か は 文 化 や 習 慣 に よ っ て 異 な る 、 と い う

結 論 か ら 言 う と 、 顔 写 真 が 指 し 示 す も の の

流 れ て い る 今 日 の 状 況 が も た ら す 変 化 だ 。

に な り 、 S N S 上 に そ う し た 写 真 が 大 量 に

か し い わ け で は な い 。 老 舗 眼 鏡 店 ﹁ 東 京 メ

が 仲 間 入 り し た わ け で あ る 。 外 す の が 恥 ず

は 妻 だ け だ 。 そ こ に ア メ リ カ の 入 国 審 査 官

。 人 を 特 定 す る と き 、 ど こ に 注 目 す

は 重 要 な 識 別 ポ イ ン ト に な り ま す ﹂ と あ る

査 等 に お い て 本 人 確 認 を 行 う 際 に 、 瞳 の 色

省 の ホ ー ム ペ ー ジ に も ﹁ 渡 航 先 の 出 入 国 審

い 理 由 は 、 瞳 が 重 要 だ か ら だ そ う だ 。 外 務

の は 、 ス マ ホ で 自 撮 り す る こ と が 当 た り 前

ら に 対 し て こ こ で さ さ や か に 付 け 加 え た い

そ の 多 く が 事 実 上 顔 論 で あ る 。 ぼ く が そ れ

[ ★ 1 ]

顔 に つ い て 論 じ た 著 作 は 多 い 。 写 真 論 も

鏡 を か け て い る 。 ぼ く の 裸 眼 の 顔 を 見 る の   出 入 国 審 査 で 眼 鏡 を 外 さ な け れ ば な ら な 今 回 は こ の 話 を し よ う 。

と 眠 る と き 、 セ ッ ク ス の と き 以 外 は 必 ず 眼

を か け て 過 ご し て い る 。 お 風 呂 に 入 る と き

る よ う に な っ て 三 〇 年 。 一 日 の 大 半 は 眼 鏡

と 言 わ れ る こ と だ 。 近 視 の た め 眼 鏡 を か け

が あ る 。 顔 写 真 の 撮 影 時 に ﹁ 眼 鏡 を 外 せ ﹂

が あ っ た 。 あ れ に は 驚 い た 。

ま ま お 風 呂 に 入 る 人 が 集 ま る コ ミ ュ ニ テ ィ

そ う だ 。 あ と 、 昔

て 視 力 測 定 器 を ア メ リ カ か ら 輸 入 し た 店 だ

の だ 。 ち な み に 東 京 メ ガ ネ は 、 日 本 で 初 め

ろ 審 査 に 向 い て い な い の で は な い か と 思 う

と い う こ と 自 体 が 不 思 議 で は な い か 、 と 。

見 て 思 っ た 。 そ も そ も 顔 写 真 が 証 明 に な る

れ 、 よ う や く 返 さ れ た 自 分 の パ ス ポ ー ト を

セ リ フ が よ く 出 て く る 。

者 の 人 物 説 明 で ﹁ 眼 は ブ ル ー ﹂ な ど と い う

に は 眼 鏡 を か け た

裸 眼 の 顔 を 撮 ら れ た う え に 指 紋 も 採 取 さ

ア メ リ カ の 入 国 審 査 で 不 思 議 に 思 う こ と

大 山 顕

証 明 / 写 真

─ ─

ID/Photo

の は 興 味 深 い 。 そ う い え ば ア メ リ カ の サ ス

ガ ネ ﹂ が 昔 、 テ レ ビ C M で う た っ て い た キ

8

ペ ン ス ド ラ マ を 見 て い る と 、 被 害 者 や 容 疑

ャ ッ チ フ レ ー ズ ﹁ メ ガ ネ は 顔 の 一 部 で す ﹂

On Smartphone Photography

の 通 り 、 ぼ く の 顔 を 認 識 す る た め に 眼 鏡 は

Ken Ohyama

欠 か せ な い 。 パ ス ポ ー ト の 写 真 も も ち ろ ん

mixi

眼 鏡 を か け て い る 。 だ か ら 裸 眼 の 顔 は む し

ゲンロン 8.5

ス マ ホ の 写 真 論   第 8 回

010


8.5 2 018 S ept em b e r


ぼ く と し て は じ つ は も う ふ た つ 、 ﹃ ゲ ン ロ ン β 28 ﹄ ﹃ ゲ ン ロ ン β 29 ﹄ に 連 続 で 掲 載 さ れ た 千 葉 雅 也

29 ﹄ が 配 信 さ れ る 予 定 な の だ が 、 そ れ は 編 集 終 了 後 の 刊 行 に な る の で 対 象 と す る こ と が で き な い 。

ロ ン β ﹄ に 漏 れ が 生 ま れ て し ま う 。 今 号 に お い て も 、 第 八 期 の 会 期 内 に は も う 一 号 ﹃ ゲ ン ロ ン β

こ の 更 新 特 典 の シ リ ー ズ は 、 会 期 の 隙 間 に 出 る の で 、 ど う し て も 目 次 の 選 抜 対 象 と な る ﹃ ゲ ン

ン β ﹄ の 内 容 が 概 観 で き る 、 手 頃 な 一 冊 に な っ て い る と 思 う 。

の 原 稿 で あ る 。 連 載 の 主 要 回 に 加 え て 、 話 題 と な っ た イ ン タ ビ ュ ー や 座 談 会 を 選 ん だ 。 ﹃ ゲ ン ロ

行 の ﹃ ゲ ン ロ ン β 28 ﹄ ま で 、 第 八 期 会 期 の 一 年 間 に 刊 行 さ れ た 一 一 号 か ら よ り す ぐ っ た 、 一 二 編

今 号 に 収 録 さ れ て い る の は 、 二 〇 一 七 年 一 〇 月 刊 行 の ﹃ ゲ ン ロ ン β 18 ﹄ か ら 二 〇 一 八 年 八 月 刊

の 更 新 を 済 ま せ た か た に 、 第 九 期 の 開 始 と と も に 送 付 さ れ て い る 。 書 店 販 売 は し な い 。

友 の 会 会 員 の た め に 作 ら れ た ﹃ ゲ ン ロ ン ﹄ の 特 別 増 刊 号 で あ る 。 友 の 会 第 八 期 の 会 員 で 第 九 期 へ

﹃ ゲ ン ロ ン 3 ・ 5 ﹄ と ﹃ ゲ ン ロ ン 6 ・ 5 ﹄ を 手 に 入 れ た か た は ご 存 じ の よ う に 、 本 書 は ゲ ン ロ ン

は じ め に

﹃ ゲ ン ロ ン 8 ・ 5 ﹄ を お 送 り す る 。

東 浩 紀

ゲンロン 8.5

004


Yoko Ueda

山 本 貴 光 + 吉 川 浩 満

124

Takamitsu Yamamoto + Hiromitsu Yoshikawa

最 終 回 ︶

Masashi Yoshida

LABORATORIES ︵

Ambivalent Hip-Hop 14 The Obscure Crowd vs. Rap Heroes

120

第 14 回

Humanistic, All Too Humanistic 20 Final Marcus du Sautoy, What We Cannot Know Steven Sloman and Philip Fernbach, The Knowledge Illusion: Why We Never Think Alone ︵

寄 稿 者 一 覧 ア ー ト デ ィ レ ク シ ョ ン & デ ザ イ ン ─ 加 藤 賢 策

︵ 二 〇 一 八 年 七 月 ︶

第 八 期 各 号 目 次 一 覧

092

第 20 回 ︵

Tourists Ask: Should Chernobyl Become a Tourist Destination?

Alexander Sirota

︵ 二 〇 一 八 年 六 月 ︶

︵ 二 〇 一 八 年 七 月 ︶

観 光 客 に よ る イ ン タ ビ ュ ー

表 紙 ・ 扉 イ メ ー ジ ─ 西 島 大 介

﹃ ﹃

104

111

チ ゲン ェ ロン ルβ ノ 26﹄ ブ イ リ は 観 光 地 通 訳 化 ・ 翻 訳 を ─ 上 進 田 洋 め 子 る べ き か │ ア レ ク サ ン ド ル ・ シ ロ タ

人 ゲン ロ 文 ンβ 的 27﹄ │ 、 あ 無 ま 知 の り 科 学 に ﹄ 人 ─ 文 的

﹃ 知 の 果 て へ の 旅 ﹄ ﹃ 知 っ て る つ も り

ア ゲン ン ロン ビ 27β バ﹄ レ ン ト ─ ・ ─ ─ヒ 吉ッ 田プ 雅 史ホ ッ プ 無 名 の 群 衆 vs. ラ ッ プ ヒ ー ロ ー


Genron’s Future: On its Eighth Anniversary

23

Urban Drama

Hiroki Azuma

│ 東 浩 紀

Tomohiro Inoue + Masanori Kusunoki + Kenji Tsukagoshi

技 術 は 経 済 を 変 え る の か ? Detroit: Become Human Hiroki Azuma

Towards an Existentialist Game: The Question of Detroit: Become Human

David Cage

︵ 二 〇 一 八 年 五 月 ︶

︵ 二 〇 一 八 年 五 月 ︶

When Humans Became Gods: On Idol O and the Problem of Commemoration

第 23 回

﹄ の 問 い Akio Nakamori + Kanji Yumisashi + Hiroki Azuma

ア イ ド ル O と 慰 霊 を め ぐ っ て

︵ 二 〇 一 八 年 六 月 ︶

031

The Hardcore of Postmodernism: On the Poor Surfaces

042

Exhibition Review: From Top to End 1 Chaos*Lounge New Art Festival 2017: 150 Years of Solitude

048

創 業 八 周 年 に 寄 せ て

Yoichi Umetsu

貧 し い 平 面 ﹂ の ゆ く え

第 1

︵ 二 〇 一 八 年 二 月 ︶

︵ 二 〇 一 八 年 三 月 ︶

︵ 二 〇 一 八 年 四 月 ︶

︵ 二 〇 一 八 年 四 月 ︶

Virtual Currency and Artificial Intelligence: Will Technology Change Economy? ﹃ ﹃

064

073

梅 回 津 庸 一

ゲ ゲン ン ロン ロ 24β ン﹄ の 未 来 │

036

﹁ ﹃ゲ ポ ンロ ス ンβ ト 22﹄ ﹂ モ ダ ニ ズ ム の ハ ー ド ・ コ ア ─ │ ﹁ 展 ゲン ロ 評 ンβ │ 23﹄ 尖 端 か ら 末 端 を め ぐ っ て

カ オ ス * ラ ウ ン ジ 新 芸 術 祭 2 0 1 7 市 街 劇 ﹁ 百 五 〇 年 の 孤 独 ﹂ ﹃

仮 ゲン ロ 想 ンβ 通 24﹄ 貨 と 人 工 知 能 │

井 上 智 洋 + 楠 正 憲 + 塚 越 健 司

実 ゲン ロ 存 ンβ 主 25﹄ 義 的 ゲ ー ム 聞 き に 手 ─ む 東 浩 け 紀 て │﹃

デ ヴ ィ ッ ド ・ ケ イ ジ

ひ ゲン と ロンβ が 25 ﹁﹄ 神 ﹂ に な +﹃ 司 っ ゲ 会 た ン ロ ︶ と ンβ き 26﹄ │ 中 森 明 夫 + 弓 指 寛 治 + 東 浩 紀 ︵

黒 瀬 陽 平

Yohei Kurose


.

016

010

Hiroki Azuma

021

目 次

Ken Ohyama

On Smartphone Photography ID/Photo

8

Hiroki Azuma

9

渡 Post Cinema Critique 23 The House of Plasmatic Spirits: Yui Kiyohara’s Our House

た ち 第 の 23 家 回 ﹄

︵ 二 〇 一 八 年 一 月 ︶

On the Margins of a Philosophy of the Tourist The Birth of the Tactile-Visual Plane

第 9 回

第 8 回

︵ 二 〇 一 七 年 一 一 月 ︶

︵ 二 〇 一 八 年 一 月 ︶

証 明 / 写 真

触 視 的 平 面 の 誕 生

004

8 5 ス ゲン マ ロン ホ 19β ─の ﹄ 大写 山 顕真 論

東 浩 紀

観 ゲン ロ 光 ンβ 客 21﹄ の ─哲 東 浩学 紀 の 余 白 に

は じ め に

ポ ゲン ス ロン ト 21β ・﹄ シ ネ マ ─ ・ ─ │ク 清 原リ 惟テ 監 督ィ ﹃ わー たク し

原 形 質 的 な 幽 霊 た ち の 家

大 輔

Daisuke Watanabe

東 浩 紀


genron triannua l Edited by Hiroki Azuma

8.5 Hiroki Azuma David Cage Tomohiro Inoue Yohei Kurose Masanori Kusunoki Akio Nakamori Ken Ohyama Alexander Sirota Kenji Tsukagoshi Yoko Ueda Yoichi Umetsu Daisuke Watanabe Takamitsu Yamamoto Masashi Yoshida Hiromitsu Yoshikawa Kanji Yumisashi




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