Architecture Portfolio Kazuki Naoi
TAKAYAMA,GIFU
- Dialogue and design
-
私にとってデザインとは人と対話するための手段です。 デザインは自分の感情表現の現れであり、 自分と他者が存在する時、デザインを介して自分の気持ちを共有することができます。 共有し、誰かに共感して貰えた時初めて自分のデザインの価値を感じます。 私は人と対話するためにデザインをします。
Kazuki Naoi Architecture portfolio
Profile
Skills 2D Drawing
JWCAD
2019-2021
Vectorworks 3D Renderling
Vectorworks
Twinmotion Adobe
Photoshop Illustrator Lightroom
Works
Qualification 普通自動車第一種免許
直井
和希 / Kazuki Naoi
情報技術検定
3級
計算技術検定
3級
トレース検定
3級
Contact
profile
2000.03.06
岐阜県高山市生まれ
2015.04
岐阜県立高山工業高等学校建築インテリア科
入学
2018.03
岐阜県立高山工業高等学校建築インテリア科
卒業
2018.04
大同大学工学部建築学科建築専攻
入学
2022.03
大同大学工学部建築学科建築専攻
卒業
2022.04
大同大学大学院工学研究科建築学専攻
入学
2024.03
大同大学大学院工学研究科建築学専攻
卒業見込
2022.03
株式会社コンパス|淺野翼建築設計室
2022.07
澤秀俊設計環境 sawadee
インターンシップ参加
2022.09
吉村真基建築計画事務所|MYAO
インターンシップ参加
E mail :
da18055@stumail.daido-it.ac.jp
mobile :
080-8258-4686
Hobby
オープンデスク参加
Playing Sports 02
Feeling the nature
Looking at art
2019-2021
Art gallery
『たまりと壁』
Childcare center
p4 - 9
p34 - 39
優秀作品
Elementary school
『学びの杜』 p10 - 17
Main street
『想いを紡ぐ兵器工場』 p40 -47
優秀作品
Apartment+Workplace
『Advertising Architecture Lab』 p18 - 27
Housing
『ヨシアシハジブンデ』
Furniture
『Project EN
-縁-
p48 - 55
Poster/Postcard
』
『ケンチクノカタチ / 築き』 p56 - 59
Works
p28 - 33
profile
『あのね、今日はね ...!!』
2019-2021
Kazuki Naoi Architecture portfolio
Works
02
Kazuki Naoi Architecture portfolio
たまりと壁 2019-2021
p4 - 9 たまりと壁
Art gallery
Art gallery 04
2019-08
建築設計Ⅱ 「都市公園の中の個人美術館」 敷地:愛知県中区栄 2
白川公園内 (現駐車場)
構造:鉄筋コンクリート造を主体
挟土 秀平
concept 挟土秀平の作り出す土壁には必ず自然現象が存在する。自然現 象が作品に手を加えることにより、自然と一体し美しくなる。そ の土壁が包み込む空間は気配が静かで安堵感が神経を和ませてく れる。 土壁は風によって乾き、雨に洗われて自然のなかで風化して移 りゆく。すなわち、素材が自然に動き、時とともに生まれ変わる。
本課題では、名古屋市中区にある白川公園内に、既存の名古屋市美 術館とは、ある特定のアーティストの作品を展示するための美術館を 表す。名古屋市美術館があるアーティストの作品のコレクションを所 有するものと仮定し、それらを展示するための施設の提案を行う。 白川公園は名古屋の中心部に位置し、周辺には賑わいのある栄・大 レの会場でもあり、同じく会場となってる長者町エリアとも隣接して いる。以上の情報を踏まえると、単に単体の建築物として機能するの
たまりと共に、人の居場所となる「壁」を形成する。この壁は 道の誘導であり、ベンチであり、テーブルといったような人の行 為を誘発させる壁である。 「たまりと壁」の空間を日常の居場所として提案する。
たまりと壁
須エリアが広がっている。また、名古屋市美術館はあいちトリエンナー
安堵感を生み出す壁を取り巻くように「たまり」を形成する。 時が経ち、壁は自然と一体した物となる。たまりは人々の居場所 を創り、街に溶け込んでいく。
術館の分館として新たに「個人美術館」を設計する。ここでの個人美
2019-2021
規模:延べ床面積 1000 ㎡程度
Artist - 左官
Kazuki Naoi Architecture portfolio
課題概要
みならず、周辺地域とのつながりも考慮した都市に開かれた新たな美 術館であることが望ましい。
SITE 1/2500
Art gallery 05
Kazuki Naoi Architecture portfolio
01「たまり」という考え方 『white cube』
『たまり』
2019-2021
近代以降の美術館にみられる『white cube』と呼ばれる空間。
ここでは、挟土秀平の土壁を展示する自然の空間のことを『たまり』と呼ぶ。
凹凸が排除され、全体に光が満たされる。
人々が自然と集まり、自然の光で満たされる。
作品が、一つの完結した作品だと見なされ、外部とは完全に切り離される。
壁は自然の干渉を受けることでより美しくなり、『たまり』は外部と一体化する。
art
「外的たまり」
art(土壁)
cube
たまりと壁
white cube からの離脱
+ art
+
「内的たまり」
「構造的たまり」
02「たまり」の構成要素と建築化 「外的たまり」
Art gallery 06
人々は日光が充分に当たり、自然に近い場所を好む。 たまりの要素を細かくし、敷地全体に分布させる。
「内的たまり」
内部空間では密集した装置がある場所や縁側のような少人数で休 む場所がたまりとなる。内部空間に緊張と開放を与える。
「構造的たまり」
雁行配置や建物の凹みは興味や入りたいという行動を誘発させる 力を持つのではないだろうか。 建物に強弱をつけ見え隠れする場を設け、興味を誘う
Kazuki Naoi Architecture portfolio
03 内観パース
2019-2021
01
挟土秀平の「壁」は全て自然から発生し、溶け込むように創られる。 この「壁」のように自然から発生し、自然の流れで配置計画、ラン
02
03
04
たまりと壁
04 ランドスケープ 05
既存の木に合わせ、たまり場と
木陰となる範囲に、たまり場を
中心に広場を設け、たまり場を
入り口から誘導する壁 ( ベンチ)
たまり場から 1m 以上の間隔を
入り口を明確にする
作る行為を誘発させる場を落と
中心まで拡大する
を設ける
開け、ボリュームを置く
ドスケープで美術館を構成することで敷地全体が自然と一体化した
し込む
空間となる。
05 Sense of values - 価値観
approach
small wall
子供と大人では価値観が大きく違う。高さの低い壁があったとき共通して大人と子
供が思うことは障害物か道の誘導と考えるだろう。
共通しないものとして、大人はベンチと感じ子供は遊具として使うことも考えられる。 は空間を仕切る壁として体感する。このように高さの変化させた壁を連続させていく ことで居場所を作りながら美術館へ誘導する。
bench ベンチ table テーブル Athletic 遊具 guide 誘導
300mm~450mm
750mm~100mm
たまり
たまり
wall art art 作品
2,000mm~
art gallery gallery 展示室
たまり
2,300mm~5,000mm
Art gallery
もう少し高さの上がった壁があったとき大人はテーブルや物を置く台に感じ、子供
middle wall
bench ベンチ Athletic 遊具 guide 誘導
07
Kazuki Naoi Architecture portfolio
室名
2019-2021 5000
3000 6000
2.
展示室 01
3.
展示空間 01
4.
展示空間 02
5.
展示室 02
6.
展示空間 03
7.
展示室 03
8.
展示空間 04
9.
展示空間 05
11. 体験教室 12. カフェ
12
2
3
エントランス
10. 展示空間 06 8500
4000
たまりと壁
1
1.
4
4500
29500
33500
8000
11
5
5000
3000
6
9
7000
4000
6000
Art gallery
12200
7
33200
08
10000
8
10000
10
平面図 1/200
Kazuki Naoi Architecture portfolio
FL
1/200
B ー Bʼ 断面図
1/200
北側立面図
1/200
A ー Aʼ 断面図
2019-2021
GL
7
7 7
FL
たまりと壁
GL
GL
7
Art gallery
GL
西側立面図
1/200
09
Kazuki Naoi Architecture portfolio
2019-2021
p10 - 17 学びの杜
Elementary School
Elementary School 10
2020-09
建築設計Ⅲ 「光と風の建築ー小学校」 敷地:愛知県名古屋市中区栄 2
白川公園内 (現駐車場)
構造:自由
本課題では、名古屋市中区にある栄小学校の敷地に複合施設を兼ね 人数教育」「多目的スペースでの合同学習」「チームティーチング」「地
地域が発展していく中で縮小され続けた境内の『要素』 や『構成』を現代の小学校が継承する。子供たちは神聖な 空間で学び、自分たちの領域を作りながら生活する大人は 地域という組織を作りながら子供達を見守る。大人と子供 たちにとって学校は地域の財産となる。
備えた「小学校」を設計する。現在の小学校教育は、 「英語教育の充実」 「少
小学生にとって学校は神聖な場所であり、最も身近なコ ミュニティの場である。 本敷地は、名古屋城築城以前より洲崎神社の境内として 地元の人々に親しまれてきた歴史ある場所である。 境内では、子供たちが遊びまわり地域住民が子供を見守 る関係が構築されている。
2019-2021
規模:延べ床面積 1000 ㎡程度
concept
Kazuki Naoi Architecture portfolio
洲崎神社
課題概要
域開放」「複合建築化」「ICT 教育」など、従来の学習集団=クラスと いう画一化された学校では対応できない状況が生まれてきている。こ 校が求められるようになってきた。また、学校づくりとは街づくりで もある。地域にとって学校は、子どもや家族、地域住民の交流の場と しても重要な施設である。
学びの杜
のような教育の変化を踏まえ、多様な学習・教育形態に対応できる学
このような学校の現状を踏まえて、学校と学校以外の小さな施設(例 えば〇〇カフェ、〇〇ショップ、〇〇教室、〇〇オフィス、釣り堀や、診 療所、地域図書館、など)を組み合わせた「学校 ×〇〇」となるよう な複合施設を提案する。小さな施設は、栄小学校の立地を十分考えて、 この場所にふさわしい施設を提案することが求められる。
SITE 1/2500
Elementary School 11
Kazuki Naoi Architecture portfolio
01 子供の居場所 大人の居場所
子供の居場所
複合施設(子供の仲見世の提案)
2019-2021
SITE
栄の子供の居場所は、白川公園に納められ子供にとっ
+a
子供の居場所を拡大
複合施設として子供の仲見世を提案する。
ての日常の空間は少ない。名古屋市では各地で再開発
子供にとっての神聖な領域として認識させるために
事業が進み、久屋大通公園さらに子供の居場所も縮小
学びの杜
対象敷地を仲ノ町公園まで拡大する。
している。
栄という繁華街で発展してきた街に子供の商店街を
都市が発展し、神社が縮小したように子供の居場所
作り、ここに教育的要素を持たせることで地域と学校
も縮小し始めている。
を近づける。
02 複合施設『子供の仲見世』 子供の仲見世 文化継承
茶道・昔の遊び
地域交流
バザー・cafe
環境教室
リサイクル 自然 Elementary School
自然観察・動物
仲見世は第二の学校の役割を果たし、学校で教えきれない部分を子供の 居場所として開放することで、地域のよりどころとなり、子供ののふる まいや遊びの中で学ぶことを試みる。
12
Kazuki Naoi Architecture portfolio
03 仲見世のプログラム 1
2
2019-2021
7
1
3
2
茶道
茶道:礼儀・文化・人間関係 7
6
4
昔の遊び:文化・人間関係・工夫
物を大切にする感情を発達させる。 公園に入れ込むことで地域の人が価値の共有
様々な人と関われる環境を文化を守りながら作
をして、人々の出会いを引き起こすことを目的
り出す。
とする。
6
リサイクル
リサイクル:環境・循環・通貨
バザー:子守り・世間話
仲見世にバザーを取り入れる。子供の興味や
街の人の休憩の場であり、子供と高齢者など
5
昔の遊び
バザー:循環・物の大切さ・出会い
日本文化が衰退する中、仲見世のプログラム として茶道を取り入れる。
cafe
バザー
カフェは子供の営みを見守りながら大人同士
学びの杜
4 5
3
で世間話をするのに絶好の場所である。 世間話は子供の状況を把握するのに必須で、 親同士の関係を築くことを願う。
7
動物
動物:飼育・愛着・見守り
自然観察
自然観察:愛着・時の経過・スケール
資源ゴミを回収する施設を仲見世のプログラ
動物小屋を仲見世に入れる。小学生が成長を
ここには初めグリッドだけを設置する。子供
こでは昔の遊びを教えてもらい、遊びの中で文
ムに反映させる。回収した資源ゴミと子供の仲
サポートする中で愛着がわき、動物と共に心も
は通貨を使い植物を買い、ここに植える。成長
化継承と関係を作る。昔のあそびは難しく、何
見世だけの通貨と交換する。お金の仕組みを組
成長する。通貨で餌を買い、お金の使い方と飼
の目安となるグリッドによって時間の経過と植
度も挑戦する力を養うことができる。
み込んで環境問題と同時に循環を学ぶ。
育方法を考える機会を設ける。
物の成長を観察しやすくしている。自然教室な どにも利用する。
Elementary School
昔の遊びができる交流スペースを設ける。こ
13
Kazuki Naoi Architecture portfolio
神社は神聖な領域を作るために作法によって配置計画が行われ、それは同時にヒューマンスケールを計算した空間構成を生み出す。 神社での作法を小学校の動作に変換し、小学校に配置計画と空間構成を落とし込むことで子供の居場所や子供にとって日常の空間 (神聖な領域)を生み出す。
2019-2021
04 神社のシークエンスと小学校のシークエンス 01
04
03
02
05
06
参道
第二の鳥居
手水舎
鐘を鳴らす
参拝
栄一丁目へ入る
通学路
小学校の敷地へ入る
生徒玄関
教室周辺
社務所
舞殿
広場
御神木
玉垣
流造
職員室
体育館
運動場
イチョウの木
花壇
煙突効果
学びの杜
第一の鳥居
05 用途・機能・構造の要素変換
教室
Elementary School 14
Kazuki Naoi Architecture portfolio
Bʼ
体育館倉庫
プール
ステージ
体育館
中庭
2019-2021
02
更衣室
学童保育
低学年トイレ
1年生 2年生
会議室
Aʼ
特別支援教室 06
自然観察4
放送室 校長室
職員室
05
3 年生
02
学びの杜
A
給食準備室
更衣室 03
オープンライブラリー 4 年生
生徒玄関
保健室 5 年生 家庭科室
04
6 年生
高学年トイレ
準備室 準備室
自然観察3
理科室
準備室
自然観察 1
運動場
音楽室 自然観察2
図工室
準備室
PC 室
02
B
0m 1m
5m 2m
20m 10m
平面図 1/300
Elementary School
N
15
Kazuki Naoi Architecture portfolio
2019-2021
学びの杜
10m 2m
20m 5m 0m 1m
Elementary School
屋根伏図 1/300 16
N
9000
5000
4200
3800
000
B ー Bʼ 断面図
1/300
6390
5970
5770
6210
9620
学びの杜
6240
1/300
2019-2021
3710
Kazuki Naoi Architecture portfolio
A ー Aʼ 断面図
0m 1m
5m 2m
10m
5m 2m
20m 10m
北側立面図
1/300
西側立面図
1/300
Elementary School
0m 1m
20m
17
Kazuki Naoi Architecture portfolio
ヨシアシハジブンデ 2019-2021
p28 - 33 ヨシアシハジブンデ
Housing
Housing 28
2020-09
ハーフェレ学生コンペ「世界のどこかにたつ家」
ヴェネツィア - ムラーノ島
敷地:日本以外のどこか 規模:自由
concept ヴェネツィアは潟につくられた海上都市。敷地があるム
構造:自由
ラーノ島は教会やガラスで名高い古い歴史を持ち、多くの 観光客が訪れる。敷地は運河沿いの幅広い通路に面す。 側にあるベンチは人々が運河を眺められる憩いの場と
まうことができるなら、その場所にはこんな家を建ててみたい!」
なっている。しかし、敷地自体は使用用途がなく草地となっ
それはきっと建築家になれば誰もが一度は夢見ることだろう。
ているため、 元ある風景を壊さず有効活用できる住宅を
建築や設計とは、敷地が指定されていることが大前提であるが、
考える。
その敷地を選んだ後に、そこに自分の建てたい家をデザインす る。そんな思考アプローチは面白い。 もし自分自身で場所を選べたときに、そこで自分がどんなアイ てくる。 敷地が変わることによって出来る建物の可能性も変わる。 未来は国境があいまいになっていくだろう。 そして国外への移住者もこれから増えていくだろう。 そこで今回の課題における敷地設定の必須条件は、まずそこが
人間がつくりあげた「人工美」へと繋げられると考える。 また、一般住宅における庭(Private)をパブリックスペー スの延長と捉え、対象敷地の一部を地元住民が利用できる 場として転用する。自分で育てつくる楽しさを地元住民と 共有し、住み良いまちづくりへと繋げていく。
ヨシアシハジブンデ
デアの家を生み出すことができるのか、考えるだけでワクワクし
私たちは住宅をヴェネツィアの自然環境を活かしながら
この課題は、まずは敷地を日本以外の世界の何処かから選ぶ。
2019-2021
「もし自分自身で世界のどこかの敷地を選んで、そこに人が住
Kazuki Naoi Architecture portfolio
課題概要
日本以外の何処かであること。 その場所を地図上にプロットし、緯度や経度、標高、敷地図面 などの詳細も出来るだけ明示すること。 その敷地を選んだ理由、そして建築のコンテクストをどのよう に読んでいくのかが重要となる。
1/500
Housing
SITE
11,100
0
15,350
10,570
12,42
対象敷地
29
Kazuki Naoi Architecture portfolio
01 ヴェネツィア
2019-2021
水辺のアクティビティ
高潮災害
ヨシアシハジブンデ
もともとベネチアでは、10 月から 12 月にかけ て低気圧の影響で雨がふりやすい。これに強い南 風と満潮が重なることで大きな高潮がおき、街に 被害をもたらす。 多い時には、大小の高潮が年 80 回以上も街を 襲う。一方で地下水の汲み上げによる地盤沈下も 起きており、被害を深刻化させている。
02 ヴェネツィアの自然分布 左の図はヴェネツィアの自然の分 布を示したものである。 ヴェネツィアでは建築物の密度が 高く、自然の確保が困難であること から自宅の窓辺、バルコニー、庭で 自然を確保することが一般的である。 街を囲むラグーナと呼ばれる潟で はフラミンゴやハマシギ、アジサシ など様々な動物が繁殖している。 Housing 30
潟が多いヴェネツィアで高潮災害 利用し自然の確保を行う。
Kazuki Naoi Architecture portfolio
03 建築する物語 (形態ダイアグラム)
2019-2021
4.干潟の設置
3.いなかけの骨組み
2.道(カッレ) の舗装
SITE
Lagoon
ヨシアシハジブンデ
8.完成 1.初期設定
6.ピロティの設置
5.ボリュームの立ち上げ
7.通路の設置
04 葦の循環とブリコラージュ 刈る
「育てる建築」×「ポジティブな共
乾燥
干潟
葦を育てる
葦を育てる環境をつくる。干潟をつく
以前に利用し劣化した葦を肥料として
り葦がない部分では誰でも休憩場所と
活用し、葦を育てる。葦の背丈により
して利用できる。葦の中でただのんび
見える景色が変わり成長とともに住宅
りと時間を過ごすことのできる空間と
をとりまく環境を楽しむことができ
意匠利用
存」ヴェネツィアならではの湿地 ( 潟 ) に生茂る葦を活用する。潟を 作り、葦を育て、収穫し、乾燥さ せ利用し、また土にかえす。この 循環を生活で楽しみ、時には風景 と寄り添い、環境を地域住民と共 有する。その過程が住人と地域住 民のコミュニティが広がるきっか けとなったり、憩いの場となって いる場所を壊さず、形を変えて残
葦を立てかけ乾燥させる場を誰もが使
と集まってすることで、交流の場とな
える道とすることで、風と柔らかい光
り葦の新しい活用方法などを見つける
がはいる心地の良い空間ができる。ま
場となる。
た、葦の匂いや懐かしい雰囲気を味わ うことができる。
乾燥した葦は意匠材料として利用す る。また、曲線状に並べることで敷地 にゆるやかな境界をつくり、住宅全体 としての一体感をうむ。
なる。
Housing
し、存続させていきたいと考える。
刈る作業を知人や興味を持った人など
31
Kazuki Naoi Architecture portfolio 2019-2021 運河沿いの道(カッレ)から南東を見る
道(カッレ)を見る
北側の透廊から西側を見る
住宅内部見る
通常時
運河の通る広い通路側に、大きな開口を設
高潮時
けることで、ベネツィアの自然を視覚的に
ヨシアシハジブンデ
楽しむことのできる空間になる。
隣家
1500
5390
Border Line
10230
2815
2025
個人の庭
隣家
隣家
9976
6540
隣家
Private 個人の庭
6580
Private
Public
Private
00
15
0 150
2970
3390
12248
みんなの庭
2655
個人の庭
0
882
0
529
1 階平面 1/200
Housing 32
隣家
狭い通路に面した水回りは通路を通る人 の目を気にせず、プライバシーの守られ た空間でシャワールームを利用できる。
2階平面 1/200
隣家
ベットルームは程よい幅の通路に面すため、 隣の建物からの圧迫感がなく光を取り込むこ ともできる。だが、大通りよりは人通りが少 なく落ち着いた空間となる。
屋上平面 1/200
隣家
Kazuki Naoi Architecture portfolio 2019-2021
敷地南通路からみる
透廊から中庭を見る
北側通路から運河を見る
透廊から見る北側を見る
ヨシアシハジブンデ
最高高さ
1985 515
3FL
Wind
脱衣所
2FL
3800
200
200
3500
寝室
2500
道(カッレ) GL 0
1000
8700
リビング
2200
200 315
1985
Light
200
4800
300
13451
4786
200
2965
200
1/100
Housing
断面図
33
Kazuki Naoi Architecture portfolio
あのね、今日はね ...!! 2019-2021
p34 - 39 あのね、今日はね ...!!
Child Center
Childcare Center 34
2021-06
未来こども園 U30 アイデアコンペ「余白」 敷地:4 面道路、公共施設、田、川、公園に囲まれた場所 規模:自由
concept
構造:自由
るといわれています。 それは建築においても言えるはずです。 設計においてはもちろん機能性も重要ですが、” 豊かさ”
”
を考えた時に必要となってくるのは「余白」の考え方
ではないでしょうか。こどもは遊びの天才と言われています。 「余 白はそんなこどもたちを生き生きとさせる可能性を秘めていま す。こどもたちが自ら遊んでくれるような「余白」のあるこども う場所それがこども園(保育園)です。誰もが過ごしたあの場所 で、私たちは多くを学び、感じ、最初の社会を体験しました。遊 びの中から子どもたちは人との関わりを学び自我を目覚めさせ、 ルールを知り成長していきます。近年、女性の就業率上昇から保 育園に対するニーズは多様化しています。今後、益々進化を続け
P. ブリューゲル『子供の遊戯』, 1560, ウィーン美術史美術館蔵
あのね、今日はね ...!!
園を提案して下さい。子どもたちが最初に家族以外の人とふれあ
楽しさ”
や
「対話」というふるまいは対人に限らず場との 対話、モノとの対話など様々な「対話」がある。 この振る舞いはそこにある可能性を導き出す。 この建築は子供たちの可能性のきっかけをたく さん生み出す役割を担う。子供たちの豊な感性 を養うために、対話によってたくさんのものと 触れあい、を生み出してあげることが必要であ る。
2019-2021
心に「余白」を持たせることは、結果的に物事を円滑に進めさせ
Kazuki Naoi Architecture portfolio
課題概要
ていくいくこども園(保育園)。こども園(保育園)の可能性は 無限大です。第 5 回 U30 部門のテーマは『「余白」のあるこども園』 こどもたちが自ら遊んでくれるような、豊かな「余白」の空間を テーマに今考えられる、未来を目指したこども園を考えてみませ んか?
対象敷地
1/500
Child Center 35
Kazuki Naoi Architecture portfolio
01 Background
03 建築と対話
2019-2021
今日、あらゆるものの自動化が進み生活が快適になり続けている。しか し、現在の子供たちは公園の規則化、遊び方の変化、両親の共働きなど の要因により、様々なものと対話する機会が失われている。更には運動 能力の低下も問題視されていて、親世代より体格は大きくなっているが 運動能力が低下しているというデータもある。今後も更に若者の身体的・ 精神的能力の低下が予想される。
50m 走
住区基幹公園−平日
(人)
8.8 9.0
8.9
9.0
34.0 9.2
あのね、今日はね ...!!
年
年
街区公園
年
年
近隣公園
年
年
年
年
年
10.0
地区公園
引用:国土交通省平成 26 年度 都市公園利用実態調査
30
26.7 20.5
20
9.5
11 歳男子
11 歳女子
昭和 60 年度
令和元年度
10
16.4
11 歳男子
11 歳女子
引用:文部科学省 体力・運動能力調査
10 の作法の相関 食
向かい合うというのは、必ずしも人同士の間の みに生じるわけではないと認識している。ここ まで 10 の対話とその<例>を挙げたが、これら の対話が複合的に重なり、最終的にはさまざま な形で子供たちが建築全体と対話することにな る。
大人
遊び
子供
こども園で生活する子供たちは、数年かけてこ の建築と向き合い、新たな可能性を見つけるこ とになる。この新たな可能性は、私たちが想像 しえなかった使い方や遊び方を誘発し、11、12、 13…と新たな対話をしていくことになるだろう。
素材
自分
生物
植物 音
目線
02 対話『心の余白』による豊さ:10 の作法 子供と対話
Child Center 36
ソフトボール投げ 40 (m)
8.5 (秒)
対話:直接に向かい合って互いに話をすること
<例> こどもしか入れない空間。子供同 士の会話を誘発し、社会性を育む。 壁は、子供を見守れる高さとし、 尺モジュールで配置する。
大人と対話
<例> 子供のスケールに寄り添った高低 差を設ける。子供が自由に遊べる 状況のなかで大人と同じレベルに 居る状況として積極的に高低差を
目線で対話
<例> 壁に窓のような穴を設ける。かく れんぼや、みえがくれする動作を 見ることで子供の興味や言葉以外 のコミュニケーションを生み出す。
植物と対話
<例> 植物をこども園内に取りこむ。植 物に囲まれた状況では自然光によ り満たされ、子供は植物を常に感 じ生活する。植物とともに成長を 感じる。
素材と対話
<例> 空間の変わり目、壁の素材を変化 させる。見た目だけではなく触感 を刺激し興味を促す。空間認識の 手段としてもテクスチャを利用す る。
Kazuki Naoi Architecture portfolio
03 断面図
1/200
2019-2021
sound
wind
遊びで対話
<例> 柱と柱を繋ぎ、大きなテーブルを 作る。柱の間隔をまたぎ、空間を 仕切りながら食事の際には子供同 士一つのテーブルを囲って対話を する。
生き物と対話
<例> 軒とデッキを周囲に設けることで 生き物の溜まり場を作る。周辺環 境から自然が豊かであることから、 軒先空間とデッキによって生き物 と子供の対話を生み出す。
音で対話
<例> 周囲の音を取り入れる塔を設け る。川の音、公園の音、蛙の鳴き 声、車の音を聞き耳で対話する。 同時に風の抜け道としても機能す る。
自分と対話
<例> 柱と壁を 455mm のハーフ間隔で 配置し子供しか入れないスキマを 作る。4 歳から入れない子が増え、 自分の成長を感じる。空間の仕切 りとして有効な寸法である。
Child Center
<例> 柱と柱の支持をするための部材を 設ける。一見障害物であるが、子 供につかまったり、しゃがんだり する動作を促す。空間の仕切りの 役割も担う。
食と対話
5m
10m
あのね、今日はね ...!!
0m 2m 1m
37
Kazuki Naoi Architecture portfolio
周辺環境を取り込む 軒先
2019-2021
roof
多目的室 ーチ
アプロ
コミュニティセンター
たまり
教諭休憩室
空間の読み替え 10 manners
チ
4 歳児 ア
プ
ロ
ー
あのね、今日はね ...!!
window
アプ ロ
ーチ
たまり
スロープ
トイレ・沐浴室
5 歳児
wall
たまり
遊戯室 空間の読み替え
3 歳児 column 2 歳児
Child Center
トイレ・沐浴室
調理室
floor
38
空間の読み替え 職員室・園長室
職員・乳児トイレ
乳児室
ほふく室
デッキ
多目的室
0m 2m 1m
5m
Kazuki Naoi Architecture portfolio 2019-2021
あのね、今日はね ...!! Child Center 39
Kazuki Naoi Architecture portfolio
想いを紡ぐ兵器工場 2019-2021
p40 - 47 想いを紡ぐ兵器工場
Main Street
Main Street 40
2021-06
ミライプロジェクト『目抜き通り―そして、そこにたつ建物』 敷地:自由 規模:自由 構造:自由
街において目抜き通りは人々の日々の活動の中心となり、我々が その街で生活していくうえでなくてはならない通りです。
中央通り」をイメージする人も多いでしょう。パリでは「シャン ゼリゼ通り」、マンハッタンでは「ブロードウェイ」など、海外 人々の生活の中心という視点に立てば、ヴェネツィアの「カナル・ グランデ」も目抜き通りと捉えられます。 私たちも丸の内において、約 130 年の年月をかけまちづくりを 行ってきました。 その中で、もともとは裏通りであった「丸の内仲通り」が人々の
想いを紡ぐ兵器工場
ではダイナミックで劇場的な目抜き通りも存在します。
日本で「目抜き通り」といえば、とある歌にもあるように「銀座
2019-2021
多くの街には、その街の中心となる「目抜き通り」が存在します。
Kazuki Naoi Architecture portfolio
課題概要
活動の中心となるように、通りと一つひとつの建物の関係につい て考えてきました。 その一つひとつが歴史となり、今では丸の内を代表する目抜き通 りとなりました。 では、みなさんの街における「目抜き通り」はこれからどのよう になってゆくでしょうか。 みなさんの過ごす街の歴史や文化、地域の特性を紐解き、『目抜 き通りと、そこにたつ建物』について考えてみてください。 通りと一つひとつの建物の関係を考えることで、すでにある目抜 き通りをもっと魅力的にすることも、新たな目抜き通りを生み出 すこともできるはずです。 みなさんの提案もまた歴史の一部となり、その街を形作ってゆき ます。
建築設計のみならず、アーバンデザイン・ストラクチャー・環境・ 様々な視点に立ち、提案してください。みなさんの自由な発想、 提案をお待ちしております。
Main Street
インフラエンジニアリング・デジタルテクノロジー・アートなど
41
Kazuki Naoi Architecture portfolio
01
敷地
1-1 敷地
市田町 1/5000
1-2 海軍工廠とは
200 m
三蔵子町
2019-2021
佐土町
美幸町一丁目
美幸町二丁目
小桜町
桜木通四丁目
諏訪西町二丁目
桜ヶ丘町 桜木通三丁目
諏訪西町一丁目 末広通二丁目 若鳩町
代田町二丁目
緑町
想いを紡ぐ兵器工場
諏訪三丁目 末広通一丁目 金屋元町二丁目 中央通五丁目
開運通一丁目
愛知県豊川市豊川海軍工廠跡地
た。東海地区では勿論、 当時は東洋随一の規模とされた豊川海軍工廠は、海軍の航空
敷地は愛知県豊川市穂ノ原町
機や艦船などが装備する機銃とその弾丸の主力生産工場として、昭和14(1939)年に
ここはかつて豊川海軍工廠の土地があった場所であった。当時はここを目抜き通
開庁した巨大兵器工場で、 日中戦争から太平洋戦争、終戦に向かった日本の戦前の昭
りとして機能していた。
和史を如実に示す存在。
1-3 現在
Main Street 42
豊川海軍工廠とは、愛知県豊川市にあった日本海軍の工廠。機銃、弾丸の製造を行っ
1-4 忘れられていく兵器工場
第2次世界対戦で日本はアメリカに敗れ、条約により豊川海軍工廠は解体を余
現在、豊川海軍工廠跡地は工場地帯となり場所として戦争の悲惨さを伝える物が
儀なくされた。その後、自衛隊や日本車両などがこの土地を買取り、多くの工
何もなくなってしまったが、経験として語りつぐ人たちがいる。それは語り部と
場が建ち戦争遺構としての姿はなくなり、この土地は工場地帯と化してしまっ
して当時、被災者として空襲を経験した人たちである。しかし、年齢も 80 代か
た。豊川海軍工廠平和公園が建設されたが当時の名残りは無く悲惨な状態で戦
ら 90 代であり多くの方が引退し、現在は数えれるほどしかいなく後継者不足で、
争の悲惨さが伝えることのできない土地である。
ますます戦争の悲惨さを伝えるものが失われている。
Kazuki Naoi Architecture portfolio
02
海軍工廠跡地を目抜き通り化 市田町
1/5000
200 m
三蔵子町
2-1 目抜き通りの提案 市田町 200 m
1/5000
美幸町一丁目
佐土町
1/5000
住宅 小桜町
諏訪西町一丁目
緑町 諏訪三丁目
諏訪三丁目 末広通一丁目
桜ヶ丘町
桜ヶ丘町 桜木通三丁目
桜木通三丁目
諏訪西町一丁目
末広通二丁目
末広通二丁目
若鳩町
若鳩町
代田町二丁目 緑町
緑町 諏訪三丁目
末広通一丁目
桜木通四丁目
諏訪西町二丁目
開運通一丁目
行政 小桜町
代田町二丁目
金屋元町二丁目
小桜町
桜木通四丁目
諏訪西町二丁目
金屋元町二丁目
末広通一丁目 金屋元町二丁目
開運通一丁目
中央通五丁目
中央通五丁目
開運通一丁目
桜木通三丁目
末広通二丁目
若鳩町
代田町二丁目
目抜き通りを計画することによりバラバラとなってしまった多くの要素をつなげることでこの場所としての利用者の増加を狙い、利用者が増えることによって現在、利用者の低下が著しく無意味と化して 緑町
諏訪三丁目
末広通一丁目
いる豊川海軍工廠平和公園の利用者が増え、工場地帯となり遺構としての姿がなくなり戦争の悲惨さを知らない人たちが過去について触れるきっかけを作ることができるのでは無いだろうか。 金屋元町二丁目
開運通一丁目
中央通五丁目
2-3 犠牲者が眠る山
2-2 当時と変わらない区画
市田町
市田町 1/5000
想いを紡ぐ兵器工場
桜ヶ丘町
目抜き通りとして計画するのは、海軍工廠時に目抜き通りであった図1の赤い線の通りである。現在は日本車両の建物(図2を参照) がこの道を塞いでいるため道としての機能が失われている。 もう一度 諏訪西町一丁目
桜木通三丁目 末広通二丁目 若鳩町
中央通五丁目
美幸町一丁目
美幸町二丁目
桜木通四丁目
諏訪西町二丁目
桜ヶ丘町 諏訪西町一丁目
佐土町
美幸町一丁目
美幸町二丁目
美幸町一丁目
小桜町
桜木通四丁目
代田町二丁目
三蔵子町
佐土町
美幸町二丁目
諏訪西町二丁目
200 m
三蔵子町
商業
住宅
佐土町
美幸町二丁目
市田町
200 m
三蔵子町
2019-2021
田んぼ
市田町 1/5000
1/5000
200 m
200 m
三蔵子町
三蔵子町
佐土町
佐土町
美幸町一丁目
美幸町二丁目
美幸町一丁目
美幸町二丁目
小桜町
小桜町 桜木通四丁目
諏訪西町二丁目
桜木通四丁目
諏訪西町二丁目
桜ヶ丘町
桜ヶ丘町
末広通二丁目
桜木通三丁目
諏訪西町一丁目
桜木通三丁目
諏訪西町一丁目
末広通二丁目 若鳩町
代田町二丁目
若鳩町
代田町二丁目
緑町
緑町
諏訪三丁目 末広通一丁目
諏訪三丁目
金屋元町二丁目
末広通一丁目 金屋元町二丁目 中央通五丁目
中央通五丁目
開運通一丁目
開運通一丁目
提案場所である目抜き通りの先に豊川海軍工廠平和公園と赤塚山がある。赤塚山は目
その中に建ち道を防ぐ日本車両の建物に対し、 弔いの空間と語りの空間を設けてあげる
抜き通りから赤塚山は一直線状にあり、 当時、空襲に遭い多くの犠牲者を出した豊川海
ことで市民のための余白空間を作る。 この土地に市民が介入することで、工業地帯とし
軍工廠、 そこに働く従業員たちが空襲の際に、 この山を目指しながら当時の人々はこの道
ての機能しか無い跡地が当時のように豊川の中心として変わっていくのでは無いだろう
を色々な想いを持ちながらこの山に逃げ込んだ。 そして亡くなられた犠牲者はこの山に埋
か。 それこそ被災者たちが望む海軍工廠なのでは。
葬された。
Main Street
海軍工廠時から変わらない区画その周りは堀があり工業地帯だけが取り残されている。
43
Kazuki Naoi Architecture portfolio
03
設計詳細
3-1 語りと弔い
3-2 段階的ダイアグラム
2019-2021
語りと弔いをキーワードとして道と建物の設計をする。 語りとは、豊川海軍工廠の跡地で起きた戦争の悲劇を今を生きる人々に伝え
ること。 弔いとは、過去を知り当時の人たちの記憶や記録など想いを汲み、犠牲者や これからを生きる人たちに向けて想いを伝えること。
想いを紡ぐ兵器工場
これらを用いて、道と建物の設計を行い豊川海軍工廠跡地にあった目抜き通 りを復活することで、戦争跡地に対してどのような語りと弔いができるのか 計画し、道と建物の一直線上にある犠牲者が眠る赤塚山に向けて慰霊碑要素 のあるシンボルとして、この豊川海軍工廠跡地を変貌させることを提案する。
目抜き通りに対して提案する建物を段階的に変化させることで市民の場を 作る。第1段階で道を塞ぐ仮設建物を取り払い、道としての機能を取り戻し、 第 2 段階で既存の倉庫の躯体だけを残し、多様なゾーニングの確保、第3 段階で壁と屋根をつけ第段階で開口を開け光を確保する。
3-4 空間構成
3-1 語りと弔いの道 市田町 1/5000
200 m
▲赤塚山方向 三蔵子町
▲
豊川海軍工廠平和公園
▼光を取り入れる屋根
佐土町
美幸町一丁目
美幸町二丁目
提案建物
▲
提案場所
平和公園
屋根に開口を設けることで過去を表す影と希望の光を提案
小桜町
桜木通四丁目
諏訪西町二丁目
桜ヶ丘町
▲
桜木通三丁目
諏訪西町一丁目 末広通二丁目 若鳩町
代田町二丁目
緑町 諏訪三丁目 末広通一丁目 金屋元町二丁目 中央通五丁目
開運通一丁目
現在
▶
▶
過去
▼語りと弔いの石碑 語りと弔いの石碑を作ることで慰霊碑的シンボルの提案
赤い矢印方向に歩くと行政、商業などから海軍工廠跡地へ向かうので現在から 過去に向かう。先に語りの空間で学び、平和公園に行って当時の記録について Main Street 44
学ぶ、青い矢印方向は平和公園から行政や商業に向かうので過去から未来に向 かう。平和公園で学んだ後に弔いの空間に想いを書く。このように向かう方向 で役割が変わる。
▼元々の倉庫の躯体 既存の躯体を使うことで工業地帯から変化を伝える計画。
Kazuki Naoi Architecture portfolio
04
内部構成
2019-2021
▼語りの空間
・語りの空間 てしまい、その過去が消えてしまっているこの土地に今を生き の空間は第2次世界対戦によって豊川海軍工廠がどうなったか を学ぶ場所を作る。内部に配置された石碑には当時の写真で あったり、犠牲者や経験者のメッセージを刻む。工場地帯にお いて、市民が介入できる学びの場を提案することにより工場と
想いを紡ぐ兵器工場
る人々に対して戦争の悲惨さを語りかける空間を提案する。こ
第2次世界対戦によって空襲の被害に遭い多くの犠牲者を出し
しての機能していないこの海軍工廠跡地を戦争遺構としての機 能が戻って来るのでは無いのか、そして学ぶことで犠牲者に対 して慰霊のシンボルとなることを計画する。
▼弔いの空間
・弔いの空間 第2次世界対戦によって空襲の被害に遭い多くの犠牲者を出し てしまい、その過去が消えてしまっているこの土地を学んだ上 で今を生きる人々が戦争の悲惨さをどう感じ、当時を生きてい た人々たちに向けてメッセージを残す場を提案する。語り部が 少なくなってる現状に対し、今を生きる人々が語りつぐことに るのではないだろうか。空間に配置された石碑に手紙を貼るこ とで当時を生きた人々やこれからを生きる人々たちに向けて今 を生きる人々が弔いとしてこの場所を残し、この場所が慰霊の
Main Street
よってこの場所で起こった出来事をこの場所を残すことができ
シンボルとしてこれからも弔いつづけることを計画する。 45
2019-2021
想いを紡ぐ兵器工場
07
断面図:1/500
Kazuki Naoi Architecture portfolio
Main Street
46
弔いの空間 語りの空間
06 05
Kazuki Naoi Architecture portfolio 2019-2021
想いを紡ぐ兵器工場
弔い、語る。平和を後世へ紡ぐために。
Main Street 47
Kazuki Naoi Architecture portfolio
PROJECT EN 2019-2021
p48 - 55 PROJECT EN
Furniture
Furniture 48
2021-06
Kazuki Naoi Architecture portfolio 2019-2021
中 島
杉 江
直 井
将 吾
彰 人
和 希
Daido University
Daido University
Nina Funahashi Lab.
Nina Funahashi Lab.
Nina Funahashi Lab.
Architecture Minor
Interior Design Minor
Interior Design Minor
Management/Project
Flyer Design/Logo
Research/Director/
Plan/Subject Design/PR/
Design/Subject Design/PR/
Subject Design/PR/
Model
Model
Model
角 出
横 谷
葉 南
辰 也 HIDA TAkAYAMA
Interior Design Minor
Furniture Maker
Photograph
Processing
Furniture
Daido University
PROJECT EN Instagram
PROJECT EN
Daido University
Kazuki Naoi Ayato Sugie Shogo Nakajima 49
Kazuki Naoi Architecture portfolio
00
Project Story
2019-2021
Ⅰ
Ⅳ
FUNA Lab.
TAKAYAMA
PROJECT EN
地元、飛騨高山の高校時代の家具職人である友人と、ものづくりに対しての想 いが共感し合ったことをきっかけに家具制作を行うこととなった。
Ⅱ
Photographer
model
Yone Lab.
Muto Lab. I
Mr.O
Mr.I
Equipment
Material
作品撮影のカメラマン、モデルに後輩を巻き込み、機材協力で米澤研究室の友人、資材協力に武藤研 究室の友人を巻き込んだ。ここで交流する中でそれぞれ新たな関係ができた。
NAGOYA
Ⅴ
更に大同大学船橋研究室の友人である杉江・中島が想いに共感し、家具制作に加わった。
Ⅲ
TAKAYAMA Furniture
全く関係のなかった人同士がデザインの想いを通して関係性(縁)を持ったことでデザインには何か と何かを繋ぎ合わせる力があると確信し、この制作活動をプロジェクト化した。何かの縁を作るプロ ジェクトを『Project EN』と名付け、制作の裏テーマとして「人を巻き込む」「関係を作る」ことを目 標に掲げた。
50
NAGOYA
このプロジェクトでは、私が地元の友人と共感し合い、家具制作を計画したように、制作を通して新しい 関係ができるのではないかという仮説のもとちゃぶ台を制作した。ものづくりを試みる者たちがデザイン による対話によって関係を作り、その関係がどんどん膨れ上がっていくという成果を出した。 私たちはデザインの力と物作りの可能性を改めて体感し、人と人、空間と空間、何かと何かを繋ぐことを 続けていくため『Project EN』というプロジェクトをチーム名とし、デザインを担当した 3 人によって活 動を続けていく。
Kazuki Naoi Architecture portfolio 2019-2021
PROJECT EN
Ayato Sugie : Flier Design / LOGO Design
ちゃぶ台
02
Flier Design / LOGO Design
01
key word
「インテリア × アーキテクチャー」 「何かと何かを結ぶ縁」 「場所を特定しない」
ちゃぶだい︻ちゃぶ台︼
ちゃぶだい︻ちゃぶ台︼
四脚の座卓
Furniture
場所を取らないよう形態変化 上下関係を定めない
し、現在におけるちゃぶ台は何なのか再定義することで新たに団欒を生み出すこと ができるのではないかという実験的試行である
団欒を象徴するシンボル
これは、かつて象徴として各家庭に一台あった日本の家族の象徴の可能性を再発見 なくなりつつある︒
い家族団欒の象徴の需要が
なったことで場所を取らな
として認識されるように
の住宅が増 る︒現在 LDK え食事の場所がダイニング
てきたローテーブルであ
族団欒の象徴として使われ
ちゃぶ台は︑昭和初期の家
上げられる
団欒を象徴するシンボルとして取り
係が感じられず︑昭和初期の家族の
のが多い︒上座︑下座などの上下関
形をしており︑折り畳みができるも
卓である︒一般的に方形あるいは円
日本で用いられる四本脚の食事用座
ちゃぶ台︑チャブ台︵ちゃぶだい︶は︑
定義を抽象化し新たな定義をつける
51
Kazuki Naoi Architecture portfolio
03
Design
Research:ローテーブルマトリクス表
「インテリア × アーキテクチャー 01 - 資材」
2019-2021
建築学科 3 人のデザインということから建築で使われる資材を用いて制作できないか試みる。
資材調査の結果、建築現場で使われる杉の足場板が乾燥、加工、寸法の面から最適であると判断し 天板に足場板を転用させる。脚には家具制作によって出た端材を利用する。
PROJECT EN
「インテリア × アーキテクチャー 02 - 空間を結びつける」 足場板という外の要素を内に持ち込むことが可能となり、外が内に侵入する。ちゃぶ台が外に侵入 することができれば領域のバグが発生し場所を定めないものとなる。 ちゃぶ台(インテリア)
内
足場板(アーキテクチャー)
外
無関係だった存在が関係を持つ
場所を特定しないちゃぶ台
マテリアル
ちゃぶ台は4本の脚で垂直に接合しているため、座る人の位置と人数を決定してしまう。従来のちゃ
家具制作では木材の性質と効果を見極めることは欠かせない作業である。
ぶ台のディテールを見直し、位置と人数の制限を緩和させる。
座る場所が確定 タモ:【Tamo】
ホワイトアッシュ:【Ash】
ウォールナット:【Walnut】
強靭で衝撃に強いことはもちろん、すぐ
性質はタモに似ている。木目が粗く白っ
適度な堅さと粘りがあり、乾燥後の温度
れた弾力性をも持ち合わせている
ぽい
や湿度による狂いが少ない
テーパー加工はシルエットラインを綺麗にし、軽く見せる効果をもたらす。更に天板にテーパー加
杉:【Cedar】(足場板新材)
杉:【Cedar】(足場板古材)
工を施すと薄い板のように見える。足に角度をつけることで一度に両足が見えなくなり、場所を確
材がやわらかく加工がしやすい。経年変
新材に比べて充分に乾燥している。傷や
定させない効果を持つ
化が楽しめる
曲がりがある
天板のテーパー加工
Furniture 52
脚に角度をつける
脚のテーパー加工 脚の取り外し、付け替え可能の加工
Kazuki Naoi Architecture portfolio 2019-2021
PROJECT EN
内外を行き来できるよう付け替え可能の脚
Furniture 53
Kazuki Naoi Architecture portfolio
03
Production
2019-2021
天板の工程 Ⅰ. 木取り
Ⅰ. 木取り
Ⅱ. 幅接着
Ⅱ. 丸テーパーに削る
Ⅲ. 反り止めの溝加工
Ⅲ. 斜めカット
鬼目ナット ( 天板と脚を接合するための金具 ) 用 PROJECT EN Furniture 54
脚の工程
Ⅳ. ハンガーボルドと鬼目ナットの入る穴あけ
Ⅴ. あけと取り付け
Ⅴ. ハンガーボルドと鬼目の取り付け
Ⅵ. 天板角の 45 度面取り
Ⅵ. 脚したのアール面取り
Ⅶ. 磨き仕上げ、塗装
Ⅶ. 磨き仕上げ Ⅷ. 塗装
Kazuki Naoi Architecture portfolio
Photograph
04
2019-2021
PROJECT EN
Furniture 55
Kazuki Naoi Architecture portfolio
X4DESIGN POSTER 2019-2021
p 56- 59 X4DESIGN POSTER
Poster/Postcard
Poster/Postcard 56
2021-06
Kazuki Naoi Architecture portfolio 2019-2021
X4DESIGN POSTER
X4Design は大同大学の優秀作品展及び、卒業研究展の運営を行う団体です。
X4DESIGN 運営を行う中で、先輩後輩の繋がりや教授との関係を築くことができ X4 の交流以外でも設 計課題のエスキスや、授業の課題を聞きに行くなど良好な関係を作ることができます。 また、学外と接触する貴重な体験を設けて頂き、全員のスケジュール管理や総括によってコ ミュニケーション能力を鍛えました。この活動の中で学外と交流する一つのツールとしてデ ザインしたポスターとポストカードを紹介します。
Poster/Postcard 57
Kazuki Naoi Architecture portfolio
01 優秀作品展 『ケンチクノカタチ』 ポスター / ポストカード
2019-2021
ケ ン チ ク ノ カ タ チ
X4DESIGN POSTER
2020年度 優秀作品展 開催期間:2020年10月3日 (土)〜2020年10月9日 (金) 開催時間:10:30〜18:00(10/4(日)オープンキャンパスの み9:00〜18:00) 開催場所:大同大学滝春校舎 B棟 第一講義棟 展示室 ローソン
さらにこれらに加えて、教員が日々研究室で行って いる教育研究内容についてもパネルにて展示してい
大同大学滝春キャンパス
DAIDO
UNIVERSITY
〒457-0819 名古屋市南区滝春町 10-3 https://www.daido-it.ac.jp
A棟 B棟
大 同 町 駅
建 築 専 攻 ・ イ ン テ リ ア デ ザ イ ン 専 攻
ケンチクノカタチ
2020 年度
大同大学工学部建築学科建築専攻 / インテリアデザイン専攻優秀作品展 ローソン
大同大学滝春キャンパス
A棟 B棟
大同町駅
Poster/Postcard
この展示では、大同大学工学部建築学科 ( 建築専攻 ・インテリアデザイン専攻 ) の学生の設計課題のう ち、特に優れたものを紹介しています。作品からは、 社会に対して、学生が様々な未来像を提案している 様子を垣間見ることができます。
員の熱意が身近に感じていただける本展をこの機会 にぜひご高覧ください。担当 米澤隆
58
大 同 優 大 秀 学 作 品 工 展 学 部 建 築 学 科
この展示では、大同大学工 学部建築学科 ( 建築専攻 / イ ンテリアデザイン専攻 ) の学 生の設計課題のうち、特に優 れたものを紹介しています。 作品からは、社会に対して 学生が様々な未来像を提案し ている様子を垣間見ることが できます。
さらにこれらに加えて、教員 が日々研究室で行っている教 育研究内容についてもパネル にて展示しています。真摯に 学業に取り組む学生とこれを 支える教員の熱意が身近に感 じていただける本展をこの機 会にぜひご高覧ください。 担当
米澤隆
DAIDO
UNIVERSITY 〒457-0819
名古屋市南区滝春町 10-3 https://www.daido-it.ac.jp
地下鉄東山線 7番出口
名城線「矢場町駅」6番出口 徒歩5分
栄
6番出口
東山線「栄駅」7番出口 徒歩7分 ナディアパーク
矢場町
矢場町
ご来場の際は感染症対策を行いお越しください。マスクの着用と消毒のご協力をお願いします。
Poster/Postcard
10:00~20:00
X4DESIGN POSTER
開催時間
大 同 大 学 卒 業 研 究 展
2 0 2 0 年 度 大 同 大 学 工 学 部 建 築 学 科 建 築 専 攻 ・ イ ン テ リ ア デ ザ イ ン 専 攻
2019-2021
DAIDO
UNIVERSITY
Kazuki Naoi Architecture portfolio
02 2020 年度大同大学卒業研究展 『築き』 ポスター / ポストカード
59
接線に仕草を記し︑
01 Background 社会的に成熟期を迎えた日本において、従来のスクラップアン ドビルドから脱却し、既存ストックの活用を図ることが極めて
重要視されるようになった。特に人口減少が著しい我が国では、 数多くのオーバーストック、デットストックが存在し、既存建 築物を如何に持続可能なものとして再生していくかは大きな課 題である。また、大規模な都市開発や建築行為に限界があるこ とはすでに明らかになっており、持続可能な社会を実現する上 でも、既存建築物の再生は避けられない課題となっている。
04 SITE
住宅ストックと世帯数の推移 (世帯・世帯数)
観音町
戸 / 世帯 1.20
7000 6000
1.15
5000
1.10
4000 1.05
12
3000 1.00
2000
0
02
0.95
1000
1948
1958
1963
1968
1973
1978
1983
1988
1993
1998
2003
2008
2013
2018
11
17 05
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0.90
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出典:総務省「住宅・土地統計調査」
04 15
02 再生の手法
01
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08
持続可能性
南区道徳エリア
Edit
前述の課題に対し、コンバージョンやリノベーションといった
計画地である名古屋市南区観音町は、昭和初期
手法は既に浸透しつつあり、物理的な転用は機能し始めている。
に遊郭をはじめとした娯楽街として計画された
一方で、建築のライフサイクルと人間のライフサイクルが一致
が、その後中止となり区画だけが残され現在に
するケースが多く、改修の対象が単独の建築となる傾向が強い
至る。1930 年代は遊園地やスケート場が存在し、
ため、転用自体が非常に自己完結的であると言える。また、こ れまで、人の心は主観的で定性化できないとして積極的に言及
Edit
されてこなかったが、行動心理学や認知心理学が明らかにして
Edit
古屋港の埋立てが進行するに従って工業地帯が
Edit
拡大し、道徳地区は周囲を運河に囲まれた土地
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いるように、人間は感情があって行動し、行動があって感情や
Edit
認知が生まれる。そこで私は、人々の振る舞いをも包含した持
となった。地域の中に取リ残された住宅地であ
07
ると言える。
続可能な再生の手法を提示する。
03 建築の転用
街の人々が集う賑わいのある場であったが、名
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建築とふるまいの転用
改修の過程において、その更新時には必ずブランクが生じる。 これにより建築と人間のライフサイクルが中断され、転用やふ るまいの「文脈」が失われてしまう。つまり建築の物理的転用 と人々のライフスタイルが連動していないと言えるのではない か。現在、既存ストックの活用方法が多く提案されているが、 建築を転用すると同時に人々のふるまい自体が持続可能となる 建築こそが次の時代を担う更新論になると考える。
転用の可能性 この絵画の魅力は、闘技場から軍事施設、そして集合住
Life cycle
宅へと用途変更を繰り返しながら、既存の形態に呼応し ていくところにある。そこには、既存建物の価値が、都
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市の資源として継続的に見出されていく豊かな時間の流 れがある。竣工後の社会の変容を多様に受け入れ、時間 の移り変わりとともに新たな価値が実装されるインク ルーシブな建築のあり方が示されているのである。
update
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06 Research
07 SITE 観音町
History
̶住民間で徐々に編集する町̶
福澤桃介 「道徳」の地名の由来は、尾張徳川家の政策であった「道義をもって徳を施す」が由来と伝えられている。 大正 14 年には徳川家より名古屋桟橋倉庫株式会社 ( 福沢桃介設立 ) に土地が払い下げられ、区画整理 するとともに文化娯楽施設を誘致した。昭和 2 年には「マキノ撮影所」がつくられ、「実録忠臣蔵」の 撮影が行なわれた。「道徳」の街の中には、昭和初期にもかかわらず、乗馬倶楽部、遊園地、テニス場、 温泉施設「泉楽園」、遊郭街、カフェー、玉突き ( ビリヤード ) 場、洋食堂、観音山、プール、スケートリンク、 近くには名古屋教育水族館 ( 竜宮城 ) などが建設され、当時は名古屋有数の一大繁華街だった。 ▲計画対象エリア内の長屋部分。隣地を跨ぐよ うにして増改築が繰り返され、「所有の意識」 自体が共有されたような独特の風景を有する。
観音町
観音公園
焼夷弾でほとんどの住宅が焼けたた
め、建物もあまりない。南陽通の西
側の貯水場には多くの木材(復興資
残され現在に至る。特徴的な区画の中で住民達が試行錯誤し、編集し続けてきた独自の風景を見出すことができる。人々の活動
は食糧難のため、畑になっている。
さを併せ持つ。
材)がある。道徳公園のグラウンド
◀戦後直後の道徳学区の航空写真
昭和 5 年 (1931) 頃、プールとスケートリンクが併設さ れた人口の山が完成。レジャー施設として賑わい、頂上
に観音像が置かれたことで観音山と呼ばれ、これがきっ かけで、周辺地域は観音町と呼ばれるようになった。そ
の後製氷業者に貸し出され製氷施設となった。所有者で
あった名古屋桟橋倉庫が 1964 年に解散。観音山は解体
され住宅地になり、跡地は「観音公園」として残っている。
計画地である名古屋市南区観音町は、昭和初期に遊郭をはじめとした娯楽街として計画されたが、その後中止となり区画だけが
戦後の復興は早く、人口も増加して
道徳は住宅で埋まっている。道徳の
商店街もどんどん増え、繁盛していっ た。。貯木場は段々埋め立てられ、マ
を通じて少しずつ編集されてきたこの場所は、生活に寄り添い変化する柔軟さと、継続的に利用されてきたことによるしたたか
08 METHOD 転用の手法
̶ささやかな編集作業̶
転用の手法として、「ささやかな編集作業」と名付けた操作を施していく。ささやかな編集作業を同時発生的に介入させ、それらを 繰り返し錯綜させることで、建築のライフサイクルに徐々にタイムラグが発生していく。施された編集作業を発端に、新たな人の 活動とつながりが生まれ、そこにまた新たな編集作業が付加されていく。その結果、人々のふるまいの連鎖により建築が形づくられ、 人々の生活が息づいた都市が形成されていく。
ンションが徐々に建てられていった。 ◀戦後の道徳学区の航空写真
Survey
ささやかな編集作業の錯綜は、もう一つの効果をもたらす。建築単体で改修・転用を実行するのではなく、建築の「部分」に前述 住民間の話し合いの中で増築 されたボリューム。敷地境界 線を越境する操作が行われて いる。
道路に私物を置くことなどに 寛容であり、人々のふるまい が建築の外部にまで現れる。
斜め軸の道路が交差する地点 にあるガレージ。ここは近隣 住民が井戸端会議や通り抜け 道として共有されている。
コンクリートブロック造の構 造が現れる。観音町一体では この構造が珍しくなく、至る 所に見られる。
の方法を用いることで、隣接する住人や建築物との多様な関係性を生じさせる仕掛けを施すのである。様々な連関の中で改修・転 用を繰り返すことによって、常に連動し合い、様々な人々が「使い続ける」ことのできる持続可能な建築群となる。長い時間軸の中で、 人々のふるまいが連鎖しはじめるのである。
4year
人々の工作的なふるまいが現 れる。住民間で DIY 的に工作 行為が日常的に起きている。
さまざまな道路の軸が重なる。 一方通行が多く、車両を制御 しつつ歩行者の動線が確保さ れている。
地域密着な店や趣味の集いの 場がある。昔から姿形を少し ずつ変えながら地域を支えて いる。
観音山商店街。住宅地と混在 し、古くからの店舗が残る。 現在ではシャッター街化が進 んでいる。
2year
2year10year 5year 15year
3year
6year
1year
09 既存平面図 1F
1/500
冷蔵庫
庫 蔵 冷
10 既存平面図 2F
1/500
11 ささやかな編集作業リスト
置換的編集
解体的編集
既存建築を解体することで偶発
空間構成要素を何かに見立てたり
や用途が発生するような改修の
によって読み替えが可能となる改
下になったり、露出した柱が新
たな共有スペースを生んだり、一
見られる。
ケースが見られる。
的に生まれた空間に、別の機能
置き換えたりすることで、利用者
方法。残余スペースが共用の廊
修の方法。双方から伸びた軒が新
たな境界を生むなどのケースが
部の外壁を塀に見立てたりする
12 編集後平面図 1F
1/500
住宅R 住宅S
アパートB
マンション
住宅T
住宅Q
繁殖的編集
仮設的編集
住人たちの意志により施された
改修時の不足部分を一時的に担保
を合法的に街区に展開させる改
がらも機能や用途が定着して恒久
デッキ、屋根などが周辺に飛び
が故に、昨日まではあった道が今
に寄生するなどのケースが見ら
ケースも見られる。
建築的操作を読み取り、それら
する改修の方法。仮設的でありな
修の方法。既存建築の構造体や
的な空間になったり、仮設である
火したり、他者の所有する建築
朝は無くなっているというような
酒屋
既存建築物に付加されることに より、機能拡張を行う改修の方 化に伴い、あくまで合法的に空 間が拡張される。隣棟と直接的 につながったり、領域変化をも
たらすようなケースが見られる。
住宅F
法。様々なモジュールの空間が重 なり合うことで、合理的かつ創造 的な編集を行うことが可能とな
住宅J 住宅A
住宅M 住宅N
る。
住宅K
副次的に生まれた部材や解体した
改修の方法。外壁そのものが境界
定する要素に変化を生じさせる改
より、建築形態や用途、近隣関係
ず、地域へと展開していくことに
られる。
ることが可能となる。
源としての新たな境界を生み出す
部材を再利用することで空間を規
壁の意味合いを帯びていくことに
修の方法。単体の建築にとどまら
に変化が生じるようなケースが見
より、新たな街並み形成に寄与す
ささやかな編集作業をつなぎ合わせることに よって、人々のふるまいの連鎖を生み出す改 修の方法。点的な改修ではなく街区全体の改 修を行うことで、地域資源としての建築の在 り方を目指したものである。
料理教室
住宅D
休憩所
住宅L
アーケード
住宅E
シェアハウス 冷蔵庫
空き家F(元飲食店)
再生的編集
カフェ
住宅C
ワーキングスペース
強化をはかり、その結果としてそ
制度や権利などを超えて、地域資
逐次的編集
パン屋
老朽化した建築物の構造の補強、 こに付加価値を見出す改修の方
弁当屋
書店 住宅G
補強的編集
庫 蔵 冷
政治的編集
アパートA
段 階 設 仮
法。ライフスタイルや住人の変
住宅H 美容室
れる。
付加的編集
寿司屋
レストラン
住宅I
住宅W
鉄道模型
薬局
自転車屋
住宅O
スーパー事務所兼倉庫
スーパー
住宅P たばこ屋兼アパート
13 ささやかな編集作業年表
14 編集後平面図 2F
Edit time line 美容室
・娘夫婦がクリーニング店開業→パン屋の敷地まで展開 ・機能の重ね合わせ→ 本屋と美容室の待合室が融合
空き家A
・書店 ・アーケードが生成
空き家B
・本屋とパン屋ガ接続 ・アーケードが閉鎖
・アーケードが延長
・パン屋が開店
事務所
住宅S
3Fまで続く鉄塔が建つ ・アーケードが増殖
・商店街の補強により敷地境界を越境
3Fに学習塾が建つ
・解体により中庭が開放→ ピロティ化し街の通路へ
空き家D ・オーナーの高齢化により 居酒屋の閉店
住宅A
アパートB
展望台の生成
・居酒屋のキッチン→ 共有ダイニングへ
・中庭を共有
・高齢者同士のシェアハウスとなる
元居酒屋と住居を接続 ・商店街の補強により鉄筋フレームの躯体が敷地境界を越境 書斎を増築
鉄道模型 休憩所
住宅T
・住居と模型倶楽部が分離
住宅Q
住宅X ・料理教室2Fに託児所を生成
元豆腐屋
・豆腐屋を居抜き→ 料理教室を開業
酒屋
・スーパーが弁当屋さんを開業
空き家E
・弁当屋を拡張
・仮設渡り廊下を設置
・空き家Eを解体→ 休憩所の生成
アパートA
・弁当屋を拡張
・住宅の補強が敷地境界を跨ぐ→ 共通庭が生成
住宅E
寿司屋
レストラン
・生花店が繁殖
・一部壁解体→庭を生成
・老朽化→ 住居一部を解体
・壁を解体しベランダを生成
住宅D
住宅I
薬局
住宅H
アパートA
・住宅Eを補強
住宅F
美容室
・住宅Eを拡張→ 工房と緩やかに接続
住宅G
・ガレージを工房として利用
・ガレージを一部解体
・工房の柱が繁殖→ ガレージ同士で緩やかに接続
住宅I 自転車屋
・仮設階段を設置 ・ブロック塀を解体→ 緩やかに庭を接続
・レンタル自転車屋へ変更→ 一部解体し外へ開放
空き家F(元飲食店) ・元飲食店を居抜き
パン屋
カフェ
料理教室
住宅A
住宅M
・工務店一部を解体→ 通路を生成
住宅N
・工務店が開業
住宅M
住宅K 空き家F(元飲食店)
住宅N ・ブロック塀一部解体 広場が生成
スーパー事務所兼倉庫
・スーパーの倉庫1Fを売り場へ ・スーパーの倉庫2Fを売り場へ
スーパー 住宅O
住宅L
アーケード
住宅E
シェアハウス
鉄道模型
薬局
自転車屋
住宅P
住宅O
たばこ屋兼アパート ・倉庫を解体
・酒屋を増築→ 倉庫を増築
・酒屋を増築→ レストランを開業
・息子夫婦が後を注ぐ→ 住居を増築
住宅Q
・寿司屋が閉業
・寿司屋を居抜き食堂が開業 ・老朽化により一部キッチン、ダイニングを解体 ・キッチン、ダイニングを増設
住宅S
・展望台が繁殖
住宅T
・一部2Fを解体→ ベランダを生成
アパートB マンション
住宅W
スーパー事務所兼倉庫
スーパー
住宅P たばこ屋兼アパート
住宅R 寿司屋
休憩所
・庭を共有
酒屋
住宅D
ワーキングスペース
・飲食店2Fが自転車屋ベランダに増築
住宅J ・住宅一部解体→ 広場からの通路が生成
住宅L
住宅G
・2Fを一部解体 2Fにベランダを生成
住宅C
・スーパーの店舗が繁殖
・建物後部にも入り口を設置
住宅K
・屋上を接続
弁当屋
書店
段 階 設 仮
住宅J
住宅F
・住宅Hのガレージまで工房が延長
豪邸
住宅W
・スーパーが生花店を展開
・ピロティを洗濯物干し場へ
住宅C
住宅U
マンション
シェアハウス
・建ぺい率12%削減→不動産広告に掲載
居酒屋
住宅R
パン屋2Fと集会所2Fが接続
集会所と接続
・老朽化により一部解体→ 中庭を生成
・パン屋と集会所が接続
・事務所閉業→集会所兼ワークスペース
空き家C
住宅H
1/500
・1F一部ベランダを接続→ オフィスが入る
・ブロック塀を解体→ 共有庭が生成
・駐車場から仮設階段を生成→ 公のバルコニーが生成 ・1F一部が解体接続
15 空間パース 編集後平面図
Ⅰ
1/1000
住宅R
Ⅳ
Ⅶ
住宅U
住宅S
アパートB
マンション
Ⅹ 住宅T
住宅Q
住宅W
酒屋 寿司屋
レストラン
Ⅴ
Ⅷ 住宅I
住宅H
アパートA 美容室
住宅F
Ⅶ
弁当屋
書店Ⅱ 住宅G
Ⅲ パン屋
Ⅳ
Ⅵ
花屋
カフェ
料理教室
住宅C
▲商店街の中庭部分
▲元空き家から街の通路へ
住宅D
休憩所
▲花屋と駐車場を分ける掃き出し窓
ワーキングスペース
住宅A
Ⅸ
住宅N
アーケード Ⅰ
階段 仮設
住宅J 住宅M
住宅E
シェアハウス 冷蔵庫
住宅K 空き家F(元飲食店)
鉄道模型
薬局
Ⅱ
Ⅴ
Ⅷ
庫 冷蔵
住宅L
自転車屋
住宅O
スーパー事務所兼倉庫
スーパー
住宅P たばこ屋兼アパート
▲敷地境界を共有通路へ
▲オフィス、パン屋、書店、美容室が接続
Ⅲ
Ⅸ
Ⅵ
▲オフィス、パン屋、書店、美容室が接続
▲建築をつなぎ、託児所
▲ガレージから工房へ
Ⅹ
▲住宅一部を解体し、共有の通路
▲屋根が繁殖し、空中回廊
16 Section
1/500
17 Elevation
1/500
18 模型写真