Selected Works 2021-2022

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あの日からの建築私

―ANOHIKARANO KENCHIKUSHI―

SELECTED WORCS March, 2023 Architecture and Building Engineering Program Univ. of the Ryukyus . 2021 - 2022


萜䞁本・乱䞁本はお取替えいたしたす。 本曞の無断転写、転茉は著䜜暩法䞊での䟋倖をのぞき、犁じられおいたす。


「状態」の建築 | Architecture of “States” ある叀い民家を蚪れたずき、光、颚、音、匂い、人間の掻動の 総䜓ずしか蚀い衚せない空間に胞を打たれた。 その叀民家に足を螏み入れるず、私自身これたでなんの脈絡も ないその空間の芁玠のひず぀になれた気がした。空間の偎から 蚱容されたず思える瞬間だった。私は、そのずきの様子を「状態 の建築」ず名付けた。 あの日から、できうるならばそのような建築を蚭蚈できないだろう かず考えるようになった。 本䜜品集は、これたで蚭蚈した建築の䞭でも冒頭に蚘した「状 態」が立ち珟れおいるものを遞んでいる。かなうならば、建築 の圢匏性や様匏それ自䜓ずしおではなく、その堎所でしか感じ るこずができない光や颚、人間の掻動を含めた総䜓のような ものを、過去から珟圚そしお未来ぞず玡ぐ「状態」ずしお、人々 の蚘憶のなかに生き続ける建築を蚭蚈したい。 2022.12.01 我劂叀 和暹 Kazuki Ganeko's Selected Works 2020-2022

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目次 | Contents

Ⅰ ・ Diploma Project , 2022

Ⅱ ・ Competition , 2021-2022

Ⅲ ・ Public buildings , 2021-2022

Ⅳ ・ Houses, etc., 2021-2022

Through The Symphonic Composition of

Architectural Design Competition

Studio assignment 3rd grade

Independent production work

・Home & Office Style「やちむんの家」

・Pavilion「圢態に感情が宿るずき」

・Urban Housing「矀青 House」

・Childcare Center「亀差園」

・Elementary School「葛藀する建築」

・Conversion「郜垂のオリオン」

CHAPTER Ⅰ

CHAPTER Ⅱ

CHAPTER Ⅲ

CHAPTER Ⅳ

Kandinsky's Work ・「響きのアン゜ロゞヌ」

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Ⅱ・Competition, 2021-2022

CHAPTER Ⅱ

Architectural Design Competition 所 圚 地  沖瞄県 読谷村 甚途地域 第 2 皮䜏居地域 䞻芁甚途 䜏宅 å…Œ アトリ゚倫婊、子䟛 2 人 階

数 地䞊 1 階

敷地面積 328.4 ㎡99.3 坪 建築面積 130.4 ㎡40 坪 容 積 率 40%蚱容 200% 建ぺい率 40蚱容 60 最高高さ 4.1 m 構

造 朚構造

駐車台数 普

通

自転車

自動車 1 台 耇数台

制䜜期間2 週間

Home & Office Style, 2021.08

「やちむんの家」 䞭庭が぀なぐ職ず䜏 朚の家蚭蚈グランプリ 2021 提出䜜品

䌊瀌智 賞・遞


蚈画敷地呚蟺図 å…Œ 配眮図

蚈画敷地 : 沖瞄県読谷村 那芇空枯より玄 30km 北䞊した堎所にある蚈

敷地に察する「職䜏䞀䜓」の䜏たいをテヌマに

画敷地は、陶芞の里やちむんの里ずしお人々

掲げた。庭づくりが趣味のサラリヌマンの倫ず、

に芪したれ、共同登窯を䞭心ずしお読谷村内に

陶芞家の劻の生掻を想像し、豊かな生掻が送れ

倚くの陶工たちが集たっおいる。たた、䜏宅が

る䜏宅の蚭蚈を目指した。

立ち䞊ぶ蚈画敷地呚蟺においお、蚈画敷地は䞉 角圢䞊の䜙剰スペヌスずしお近代の郜垂蚈画か ら取り残されおいるように思えた。 そのような状況を螏たえお、䞉角圢䞊の蚈画

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建築が朚々に溶け蟌むように調和するむメヌゞ


ゟヌニング蚈画に぀いお

家族構成

間口の広い蚈画敷地に察し、䞭庭を敷地の䞭

父歳

よく笑う。真面目な性栌。

心ずしお据え、囲むように各郚屋を配眮した。 ここでは䞭庭が䜏たいず職堎を぀なげる共通の

母6 歳

コモンスペヌスずしお機胜しながら、䞡者の空

パワフル。頑固モノでお茶目。

間を緩やかに区切る圹割を果たしおいる。たた、

息子5 歳

぀の壁を蚭けるこずで瞊方向に察する空間に

笑顔は父芪ゆずり。面倒芋が良い。

連続性が生たれ、䜏たいず職堎に新たな関係性 が構築されるこずを意図しおいる。 Kazuki Ganeko's Selected Works 2020-2022

飌いネコのミヌス

おずなしいが逌が少ないず怒る。

嚘2 歳

母芪に負けず頑固モノ。

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A-A’ 断面図

平面・断面蚈画に぀いお 呚蟺環境に察しおなるべく建物の高さを䜎く

び空間認識の操䜜を行い、䜏たいず職堎を緩や

抑えたかったこずから平屋の蚈画が念頭に眮か

かに繋げる工倫をおこなった。リズムある屋根

れた。䜏たいず職堎が付かず離れずの関係性を

高さを利甚した窓の配眮からは、時間垯によっ

持ち、光や颚を取り蟌む方法ずしお䞭庭を䞭心

お異なる光や颚を取り蟌み、時には倚様な陰圱

に据えた職䜏䞀䜓の䜏たいを考えた。たた、屋

が生たれるこずで宀内はさたざたな芁玠で圩ら

根高さにリズムを䞎えるこずで各郚屋の空間ず

れる。

機胜が察の関係性になるように思われた。 䜏たいず職堎のピラルキヌを無くし、フラッ トか぀曖昧な関係性が立ち珟れたように思う。 屋根高さのリズムに合わせるように諞宀の床 レベル、窓高さの倉化に抑揚を぀けお芖線およ 1F 平面図 å…Œ 倖構蚈画図

初期の断面むメヌゞスケッチ

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CHAPTER Ⅱ Home & Office Style「やちむんの家」

北東立面図

䜏たいず職をたちにひらく この堎所でしか感じるこずができない歎史や

職䜏䞀䜓の䜏たいのあり方は、郜垂が急速に

文化、空気のようなものがあるなら、それらを

発展する近代以前はありふれた颚景の䞀郚ずし

どのように玡ぎ、呚蟺環境ず共存するこずがで

お地域に䜇んでいた。しかし、機胜䞻矩が台頭

きるだろうか。

し埐々に専甚䜏宅が䞻流になった珟代の郜垂に

情緒ある屋根の圢態は呚蟺の街䞊みに倉化を

おいお、「やちむんの家」は昔からそこにある

䞎え、䞭庭を介しお様々な芁玠を䜏たいに取り

ような、しかしノスタルゞックに垰するこずな

蟌む。怍栜蚈画では、宀内の窓から芋える景色

くこれからの䜏たいの圚り方を暡玢しおいる。

ずの関係性から暹皮を遞定した。庭先で育぀四 季を感じるこずができる朚々や花々は道行く誰 かの安らぎずなり、ひいおはたち党䜓ぞず波及 しおいくこずを期埅したい。

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初期の立面むメヌゞスケッチ


建築が朚々に溶け蟌むように調和する

Kazuki Ganeko's Selected Works 2020-2022

初期のむメヌゞスケッチ

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CHAPTER Ⅱ Home & Office Style「やちむんの家」

「やちむんの家」で暮らす家族にずっお、豊かな生掻が送れる䜏宅であるこずを期埅する

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Childcare Center, 2022.07

「亀差園」マチずヒトを぀なげる亀差点のあるこども園 第 6 回 未来こども園建築デザむンコンペ U30 郹門 提出䜜品 䞻芁甚途 認定こども園 階

数 地䞊 1 階

敷地面積 4,000 ㎡ 建築面積 130.4 ㎡ 容 積 率 40% 建ぺい率 40 最高高さ 4.2 m 構

造 朚構造

駐車台数 普

通

自動車 10 台

倧

型

トラック 1 台

自転車

耇数台

制䜜期間2 週間 共同蚭蚈者九州倧孊倧孊院 叀賀䞇優子

優秀賞


亀差点がも぀機胜 耇数本の道路が亀差するこずで圢成さ れる亀差点は、様々な堎所からやっおき た人が集たる地点ずなる。その堎所では、 人や物が亀わり、かねおより亀易が発達 しおきた。こども園の拠点ずなる亀差点 は、様々な方向から来る人を亀わらせ、 繋いでいく機胜をもっおいる。

呚蟺ずの関係性 このこども園は、畑・䜏宅・高霢者斜 蚭に囲たれた堎所に䜍眮しおいる。こど も・芪・高霢者・蟲家ず様々な䞖代の人々 が暮らす街であり、地域党䜓でこどもの 成長を芋守るこずができる堎所である。

䞖代を超えた亀流が生たれる 栞家族化により枛少しおいる倚䞖代間 亀流を行いやすい䜍眮関係にある。倚䞖 代の人々が同じ堎で過ごし亀流するこず は、生掻を豊かにし、こどもの成長を刺 激するだろう。

1F 平面図 å…Œ 倖構蚈画図


亀差点の建築化 こども園ずしお必芁な機胜でありながら、呚蟺地域の人々も利甚が可胜な斜蚭を䜵蚭 し、亀差点での亀流を生み出すこども園を蚈画する。

こども・高霢者・地域䜏民それぞ

ボリュヌムの間を瞫うようにしお、

道に沿っお内郚ず倖郚の境界を敎

れの利甚空間を、3 ぀のボリュヌム

道で繋ぎ亀差点を圢成

理し壁を立ち䞊げる

で敷地内に配眮

諞宀配眮蚈画 こども・高霢者・地域䜏民の動線が亀差する建物の䞭心にたちかどテラスを蚭け、地 域党䜓が亀流する堎ずする。より䞊䜍の発達段階にある 5 歳児の保育宀を、高霢者ずの 亀流をより図りやすい北偎に配眮し、職員ゟヌンに向かっお 0 歳児保育宀たでを順に配 眮した。保育宀同士は家具で間仕切り、異幎霢のこども同士での亀流も行いやすくする。

Kazuki Ganeko's Selected Works 2020-2022

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CHAPTER Ⅱ Childcare Center「亀差園」

A-A' 断面パヌス

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地域ず亀わりマチず共に成長する ある䞀日のこども園の様子を描いおいる。巊右の

モノ・コト・ヒトが぀ながる。毎日登園す

屋根の高さを倉えるこずで蚭眮したハむサむド

るこどもだち、テラスで食事をずる地域䜏民、

ラむトず、建物倖呚に䞊ぶ開口によっお宀内に

䌁画宀でサヌクル掻動を楜しむ高霢者、こども

光ず颚を取り蟌む断面蚈画ずした。

に䜜物の育お方を教える蟲家など、呚蟺のすべ

たた、建物倖郚方向に曲線状の䌞びやかに

おの人々を亀差点のあるこども園が繋ぎ、こど

連なる軒䞋空間が、各利甚者の憩いの堎ずなる。

もたちは地域ず亀わりマチず共に成長する。

ちびっこ広堎ぞず䌞びる軒の高さは、こどもの 身䜓スケヌルに合わせお䜎く蚈画しおいる。こ こでは保育宀、たちかどテラス、䌁画宀が倧屋 根の䞋でシヌク゚ンスに繋がっおいる。 亀差園は、亀差点があるこずによっお様々な

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こども園に様々な方向からくる人々の振る舞 いを蚱容するため、おおらかな倧屋根ずそれ を支える構造䜓によっお実珟する。

こどもの身䜓スケヌルに合わせお、軒先を 䜎く蚭蚈した。それを可胜ずするために軒 先の梁せいを終端 60mm ずし、氎平カット

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断面詳现図

を行っおいる。

アむ゜メパヌス


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CHAPTER Ⅱ Childcare Center「亀差園」

職員宀偎デッキから広堎党䜓を芋枡す

マチずヒトを぀なげる亀差点のあるこども園 亀差点は、さたざたな方向からくる人を亀らわせ ぀なげる働きを持぀。 こどもたちをマチのヒトを぀ないだり、小さな生 き物ず぀ないだりず、亀差点があるこずによっお 生たれる機胜や動線がさたざたな環境ずこどもた ちを぀なぐ。 ぀ながりが生たれるこずで次第に「共生」しおい くこずの倧切さを知る。

沢山の人が利甚するたちかどテラスず遊戯宀

亀差点からはじたるこども園の蚭蚈によっお、新 しい環境が生たれるこずを期埅する。

家具で仕切られ広堎ずも䞀䜓感の取れる保育宀

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ちびっこロヌドでこどもの䜜品を芋る


Ⅲ・ Public buildings, 2021-2022

CHAPTER Ⅲ

Studio second half assignment 3nd grade 所 圚 地  沖瞄県 宜野湟垂普倩間基地跡地 甚途地域 商業地域想定 䞻芁甚途 パビリオン博物通 å…Œ 祝祭広堎 階

数 地䞊 6 階 地䞋 1 階

敷地面積 3,850 ㎡ 建築面積 2,350 ㎡ 建ぺい率 61蚱容 80 最高高さ 35 m 構

造 鉄筋コンクリヌト造 侀郹 鉄骚造、朚構造

制䜜期間2 ヵ月

FUTENMA EXPO’2030, pavilion, 2022.01

「圢態に感情が宿るずき」

沖瞄の光にのせお平和を䌝えるパビリオン


CHAPTER Ⅲ Pavilion「圢態に感情が宿るずき」

圢態に感情が宿るずき 建物の内郚から掟生した空間や空間䜓隓が、建築の圢 態や倖郚空間ず重なったずきに立ち珟れる建築の様盞ず はなにか。そしお、建物に蚪れた人々に察する身䜓を通 した経隓、あるいは感情に蚎えるこずのできる建築の圢 態ずはなにかを暡玢した。 揺さぶられた感情はやがお人々の蚘憶を圢づくり、そ の蚘憶を人々は共有し、思いを銳せるのではないだろう か。本提案では、建築の圢態様盞に人々の感情がフィヌ ドバックされたずき、本提案は建築ずしおなり埗るず考

倖呚に匵り巡らされた鉄補のフェンスである。どちらも 倖的芁因に察する構えずしお蚭けられるが、䜏人の心理

建築圢態のむメヌゞ 建築を構想し始めたずき、沖瞄の土着の芞胜である「琉 球舞螊」の所䜜を建物の圢態ずしおむメヌゞした。力匷 さずしなやかさを兌ね備えた琉球舞螊の所䜜が、沖瞄の 歎史を衚しおいるように思えたからだ。

的な実情はたるで意味が異なる。 本提案では、沖瞄の䞀颚景ずしおの䞡者が持぀意味・ 芁玠を乗り越えるべく、新しい栌子の蚭蚈を行った。具 䜓的には、GL に近づくに぀れお栌子の開口率はヒュヌ マンスケヌルに、䞊階に行くに぀れお郜垂スケヌルに倉 化するよう操䜜した。そのため、内郚から倖の景色を望

2 ぀の栌子

む際、䞊階に行くほど開口郚の領域は広がる。

えた。圢態ずいう蚀葉には「人の蚘憶のかたち」ず「建

珟圚、私たち沖瞄の生掻を取り巻く 2 ぀の栌子がある。

境界ずしおの分断、あるいは遮るものずしおの 2 ぀の

築のかたち」の二぀の意味が蟌められおいる。その䞡者

ひず぀は沖瞄の䌝統䜏宅にみられる「竹垣チニブ」ず、

栌子は、ここでは繋げるものぞず圹割が倉化しおいる。

に感情を宿した建築が、普倩間飛行堎跡地ずいう堎所で

もうひず぀は戊埌沖瞄の颚景の䞀぀ずなった米軍基地の

琉球舞螊「二童敵蚎にどうおきうち」䞃目付ちの堎面

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人々の前に立ち珟れたらどんなに良いだろうず考えた。

断面のファヌストスケッチ

侊 䌝統䜏宅のチニブ竹垣 、䞋 米軍基地フェンス


Elevation drawing

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2Floor plan

5Floor plan

平面蚈画に぀いお

B1 plan

建物平面の倖壁は、敷地境界線から 5 セットバックす るず同時に、祝祭広堎に向かっお曲線を描く蚈画ずした。盎 線の倖壁だずボリュヌムが必芁以䞊に倧きく芋えたからであ る。たた曲線を描くこずによっお、建物の倖芳にしなやかさ があらわれ、蚪れる人々をゆるやかに招き入れるサむンずし お機胜する。

◀ 1Floor plan

3Floor plan

6Floor plan

4Floor plan

Roof plan

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CHAPTER Ⅲ Pavilion「圢態に感情が宿るずき」

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CHAPTER Ⅲ Pavilion「圢態に感情が宿るずき」

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▲ Sectional configuration

普倩間囜際博芧䌚「FUTENMA expo' 2030」

ファヌストスケッチ ◀ Site plan

本提案は、普倩間基地跡地を蚈画敷地ずしお

あるが、倚くの垂民はどのように感じおいるだ

2030 幎に開催される予定の普倩間囜際博芧䌚

ろうか。人類史を振り返るず、倚くの人が同じ

「FUTENMA expo' 2030」に際しお、メむン䌚

出来事や経隓によっお蚘憶や歎史を共有するず

堎ずなる祝祭広堎ず琉球パビリオンを蚭蚈する

き、建築は郜垂のなかのモニュメントに近づく

ずいうものである。

こずがわかる。

普倩間飛行堎は 96 幎に党面返還合意された。

本提案は、博芧䌚のメむン䌚堎ずしお、開幕

珟圚、跡地利甚蚈画の䜜成が進められおいるが、

埌は普倩間の䞭心斜蚭ずしおモニュメントずな

取り巻く状況は倉わらず、跡地利甚蚈画に぀い

るような建築をめざした。圢態に感情が宿るず

おの議論が積極的に亀わされおいるずは蚀い難

き、未来の沖瞄の䞀颚景ずしお、この先の遠い

い。郜垂再生事業は政治家や地暩者、官僚、土

未来たで人々に愛される建築になるこずを願っ

地賌入者、建蚭蚈画者にずっおは圓事者意識は

おいる。

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CHAPTER Ⅲ Pavilion「圢態に感情が宿るずき」

沖瞄の未来に思いを銳せる堎所 地䞋 1 階の広堎には、祝祭広堎に蚭けた氎盀の氎が湟曲した倖壁 を぀たい流れおくる。倪陜の軌道に沿い、正午に差し掛かる頃に入 射しおくる光が氎盀を反射しお空間を照らす。ここでは、光だけが 空間の茪郭をあらわにする。建物を蚪れた人々がさたざたな思いを 銳せる堎ずしお、普遍ずもいうべき倪陜の運動ずずもにあろうずし た。人々が遠い未来に思いを銳せお、遥か圌方の過去を振り返るず き、建築物が人々の感情に寄り添いずもに歩もうずする堎が必芁で あるず考えた。

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First basement floor plan


Elementary School, 2021.11

「葛藀する建築」二面性を持぀空間で育む小孊校生掻 第 29 回 琉球倧孊合同蚭蚈発衚䌚 遞出䜜品 所 圚 地  沖瞄県 那芇垂倩久 1 䞁目 甚途地域 第 1 皮䞭高局䜏居専甚地域 䞻芁甚途 小孊校 階

数 地䞊 2 階

敷地面積 18,902 ㎡ 建築面積 6,750 ㎡ 容 積 率 55%蚱容 150% 建ぺい率 35蚱容 60 最高高さ 12 m 構

造 鉄筋コンクリヌト造 侀郹 鉄骚造、朚構造

駐車台数 普

通

制䜜期間2 ヵ月

自動車 5 台

第1䜍


CHAPTER Ⅲ Elementary School「葛藀する建築」

初めお鉛筆を握った日の指先ず筆圧の葛藀

喧嘩をした埌の心身における葛藀

垭替えで初察面の子ずの粟神における葛藀

葛藀するこず 「葛藀」ずは自分ず他者察象ずの盞互関係によっお成り立぀蚀葉であり、瀟䌚性や将来性を育んでいく行為である。 たた、葛藀するこずは自分や他者ず向き合った軌跡の蚌ではないかだろうか。 そこで、「葛藀」するこずは自分ず他者察象ずの距離感を図る行為であるず考えた。子どもたちが自分の心身 のスケヌルを知るきっかけの溢れる小孊校建築を提案する。

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蚈画敷地呚蟺図 å…Œ 配眮図


倖構蚈画および配眮蚈画に぀いお 蚈画敷地の北偎には䜎局䜏宅街が広がっおお り、南偎の亀通量の倚い倧通り沿いに商業斜蚭 が立ち䞊んでる。たた、蚈画敷地に隣接しお倧 きい原っぱを有する公園が敎備されおおり、そ の緩衝郚分の䞊朚道には、生埒たちが登䞋校す る颚景が芋られた。それら特色のある芁玠を反 映させるために、公園ずの繋がりを意識した配 眮蚈画、および街路暹・花道を匕き蟌む蚈画ず し、特色ある 4 方向からアクセスできるアプ ロヌチ蚈画ずしおいる。


二面性を持぀空間の平面ダむアグラム

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二面性を持぀空間の断面ダむアグラム


Kazuki Ganeko's Selected Works 2020-2022

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1F 平面図 å…Œ 倖構蚈画図


二面性を持぀空間で育む小孊校生掻 小孊校は、人生経隓の積み重ねの初期過皋に䜍眮す

る行為であるず考え、それらを「建築的スケヌルを䞻

るため、日々の生掻に葛藀が溢れおいる。それら行為

軞ずした二面性を持぀空間」をキヌワヌドずしお挙げ

を掻かせる、たたは生み出すような孊校建築の圚り方

た。ゟヌニング蚈画を行う段階で、建築の柱・壁・屋

を暡玢する䞭で、合理性や機胜性を優先した建築ずは

根などの芁玠を分類し、二面性を持぀空間の平面ダむ

違った堎所や空間を蚭蚈した。ここで 6 幎間を過ごす

ダグラムず、断面ダむアグラムをもずにそれぞれの堎

生埒たちにずっおより良いアクティビティが生たれる

における生埒たちのアクティビティを想像しながら平

孊校建築を提案する。

面・断面蚈画に反映させた。

「葛藀」ずいう抜象的な蚀葉を建築に萜ずし蟌む際

平面蚈画では、1・2 幎生の生埒に芪子で䞊朚道を

に、「葛藀」ずは自分ず他者察象ずの距離感を図

登䞋校しお欲しいずいう思いから、公園の近くに配眮 した。3・4 幎生は䜎局䜏宅地ず近接させるこずで安 心感が埗られるのではないかず考えた。5・6 幎生は 次第に瀟䌚に関心を持぀こずから、人通りの倚い商業 斜蚭に近接しおいる。 断面蚈画では、蚈画敷地の呚蟺建物の最高高さに合 わせお、建築物の屋根高さや、屋根募配を決定しおい る。それらは二面性をも぀空間ずのすり合わせを行い ながら内郚空間の芁玠ずしお掻かされおいる。

2F 平面図

1

䜓育通

8

廊䞋

2

玄関

9

階段螊り堎

3

ピロティ

10

職員宀

4

玄関 2

11

職員曎衣宀

5

特別支揎教宀

12

家庭科宀

6

お手掗い

13

屋䞊

7

幎生教宀

北偎立面図

A-A' 断面図


CHAPTER Ⅲ Elementary School「葛藀する建築」

成長する君ぞ、成長した君ぞおくる建築 建築の空間によっお心情に倉化が起こる。 心情の倉化によっお生埒のアクティビティに倉 化が生たれる。 「建築」ず「葛藀」の盞互䜜甚ず関係性による 小孊校の蚭蚈を行った。 葛藀する建築。それは成長する君ぞ、成長した 君ぞおくる建築の提案である。

建物䞭倮のボむドから空を芋䞊げる少幎

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Ⅳ・ House, etc., 2021-2022

CHAPTER Ⅳ

Independent production work 所 圚 地  沖瞄県 那芇垂䞊之屋 1 䞁目 甚途地域 第䞀皮䞭高局䜏居専甚地域 䞻芁甚途 専甚䜏宅倫婊、子䟛 2 人 階

▪ Second floor plan ▪ Plan 1 Entrance lobby 玄関 2 Kitchen 台所 3 Dining area 食卓 4 Living area 居間 5 Terrace 庭 6 W.C. 䟿所 7 Bathroom 济宀

8 Washroom 掗面所 9 Servuce yard 掗濯干し堎 10 Stairs 階段 11 Master bedroom 䞻寝宀 12 Study 曞斎 13 Bedroom 寝宀 1 14 Bedroom 寝宀 2

数 地䞊 2 階

敷地面積 180.67 ㎡ 建築面積 76.50 ㎡ 延床面積 103.50 ㎡ 容 積 率57 %蚱容 200% 建ぺい率 42 蚱容 60 最高高さ 6.0 m 構

造 鉄筋コンクリヌト壁匏構造

駐車台数 普

通

自動車 2 台

制䜜期間2 週間

▪ First floor plam

Urban Housing, 2021.03

「矀青 HOUSE」 ▪ Axonometric projection


CHAPTER Ⅳ | Urban Housing「矀青 House」

01 郜垂から䜏宅、そしお身䜓ぞ 身䜓が䜏宅を介しお郜垂ず繋がる空間を考え る。ここでは次第に倉化する「空間スケヌル」ず「芁 玠の重なり」を䜏宅に挿入した。

蚈画敷地は囜道 58 号線に近接しおおり、蚈 画敷地呚蟺にはさたざたな゚リアにアクセスで きる。日䞭は 58 号線の亀通量が激しく呚蟺に は高局マンションが立ち䞊んでいるため、䜏宅 プランではプラむバシヌ空間の質が重芁である こずが分かった。たた、58 号線沿いから䜏宅 街に進むに぀れビルディングタむプのスケヌル が埐々に小さくなっおおり、斜めの線が圢成さ れおいるこずに気が付いた。このグラデヌショ ンによるスケヌルの倉化を䜏宅のプランに組み 蟌むこずを怜蚎した。

fig01 郜垂スケヌルの倉化

02 沖瞄の䌝統䜏宅にみられる空間の耇局性 沖瞄の䌝統䜏宅にみられる空間の耇局性を再 解釈し、空間のレむダずしおさたざたな芁玠が 重なる䜏宅の蚭蚈を詊みた。

fig02 䌝統䜏宅の断面構成

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fig03 本蚭蚈の断面構成

fig04 䌝統䜏宅の平面構成


03 芁玠の重なりを郜垂を介しお発芋する 沖瞄の街䞊みを「チャンプルヌ文化」ずひずくく りで衚珟するのは少しだけ匷匕に感じた。 沖瞄では「混ざり合うチャンプルヌ」ず衚珟す るこずが倚々あるが、 「混ざり合う」ずは、個々 の個性がある調和に向かっお折衷的な抜象化のあ り方探っおいるように思う。 䞀方で沖瞄の文化は混ざり合うずいうよりは、 個々の個性が極めお匷く䞻匵しあい、その緊匵関 係が独特の文化を圢成しおきたのではないか。 䟋えば、沖瞄の䌝統的螊りの゚むサヌにみられる 䞉線ず倪錓の音色はそれぞれにぶ぀かり「重なり」 あい、その緊匵関係の䞭に矎しさがある。 そのような芁玠の「重なり」は、食文化、衣服、 蚀語、建築ずさたざたなずころで発芋するこずが できる。 目の前にひろがる雑然ずした街䞊みの衚象には衚 れない「重なり」の郚分に着目しお蚭蚈を進めた。

▪ Site plan


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▪ Composition diagram

▪ First floor plam


Conversion, 2022.03

「郜垂のオリオン」 公共的䜙癜をも぀レストランの提案 第回 琉球倧孊けんちくクラブ レビュヌ䌚 提出䜜品

ビルド賞レむアりト賞

所 圚 地  沖瞄県 那芇垂安里 甚途地域 商業地域 珟 甹 途  私立予備校 提案甚途レストラン、広堎 階

数 地䞊 1 階、半地䞋

敷地面積 869.220 ㎡ 建築面積 415.500 ㎡ 容 積 率 47%蚱容 200% 建ぺい率 47蚱容 60 最高高さ 3.2 m 構

造 鉄筋コンクリヌト壁匏構造 鉄骚造

駐車台数 搬入甚 トラック 1 台 制䜜期間2 週間

沖瞄の冬、南の方角に向かっお倜空を芋䞊げるずオリオン座が芋える。い぀もオリオン座を芋 るたびに「星座っおいいな」ず感じおいた。星座は隣り合う星ずの関係性によっお構築されお いる。ひず぀星がなくなったりするず、その関係性は厩壊する。 郜垂に存圚する建物が䞀぀の機胜で完結せずに、様々なネット―ワヌクを介すこずによっお構 築する、目的を持たずずも蚪れるこずのできる建築の圚り方を考える。 北偎立面図


CHAPTER Ⅳ | Conversion「郜垂のオリオン」

蚈画敷地 : 沖瞄県那芇垂安里

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蚈画敷地は、那芇垂の囜際通りから暪にそれ

道路の河川の向こう偎の倧通り沿いでは、日々

お小道に入り車が䞀台通るぐらいの狭い路地の

人々の埀来が激しいこずが分かった。しかし、

脇にある。敷地に向かっお䞋方には河川が流れ

珟行しおいる郜垂機胜は目的や意味が先だっお

おおり、䞊方にはモノレヌルが通りビルが立ち

存圚しおおり、郜垂には意味の持たない䜙癜の

䞊んでいる。

ような堎所が必芁であるず考えた。そこで本蚭

呚蟺には商業斜蚭、県立図曞通、囜際通りな

蚈では目的を持たずずも蚪れたくなる「䜙癜の

ど郜垂機胜が充実しおいる。たた、ビゞネス街

ある空間」を郜垂の安らぎの堎ずしお蚭蚈する

や飲食店、芳光産業が盛んな地域であり、前面

こずを目暙ずした。


蚈画敷地呚蟺図

コンバヌゞョン―枛築による新たな空間の創出 既存建物は、鉄骚造トタン匵りの平屋圢匏で、 甚途は䞭高生向けの孊習塟である。本蚭蚈では、 既存建物に察しおある䞀定のボリュヌムを取り 出すこずで空隙空間が生たれ、それにより新た な空間が創出できるず考えた。たた、前面道路 に察しお可胜な限り空隙空間を開くこずで、日 光・颚・郜垂の音、通り沿いを歩く人々を蚱容 する暹朚のようなおおらかな建築を目指した。

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CHAPTER Ⅳ | Conversion「郜垂のオリオン」

郜垂のオリオン―星座のような関係性 蚈画敷地呚蟺を歩いおいるずき、建築家ルむ スカヌンによる郜垂に぀いおの論考を思い出し た。「郜垂ずは、少幎が朝早くから出かけお倕 方に垰宅するころには将来の倢が決たっおいる 堎所を指す意蚳」 。 沖瞄の郜垂に぀いお想いを巡らせる。果たし おルむスカヌンの蚀うような郜垂に出向く少 幎・少女が倢や垌望を蚗すこずのできる郜垂に なっおいるだろうか。建物が䞀぀の機胜に完結 せずに、目的を持たずずも立ち寄れる䜙癜を、 少幎の倢や垌望を受け止める䜙癜を郜垂に挿入 するこずを詊みた。 平面蚈画では既存建築の倖圢をそのたたに、 屋内空間にはレストラン、半屋倖空間には半円 䞊の䜙癜を蚭けお「シアタヌ広堎」ず名付けた。 それらを、建物䞭倮にある倧きなテヌブルが぀ なぐ。たた、シアタヌ広堎で倧道芞や孊生サヌ クル等がパフォヌマンスを行う際にはレストラ ン内郚も芳客垭になり、建築内倖の物理的な境 界線を越えお、堎の雰囲気に䞀䜓感が生たれる こずを意図しおいる。シアタヌ広堎のためのレ ストランであり、レストランのためのシアタヌ 広堎ずいうような関係性を目指した。シアタヌ 広堎は、レストランで食事をする目的以倖の行 為を受けずめ、さたざたなアクティビティに぀ ながる期埅を蟌めおいる。

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倖構蚈画図 å…Œ 1F 平面図


暹朚のような居堎所を創る 暹朚には䜙癜がある。具䜓的には枝葉の隙間に「空隙」が存圚する。 この空隙からなる空間はさたざたな行為を誘発し蚱容するおおらかさ がある。ずきには鳥が矜を䌑め、颚が通り抜け、枝葉の隙間から朚挏 れ日が萜ちお人々や動物に安らぎの堎を提䟛しおいる。 本蚭蚈においおもそんな堎を぀くりたいず考えた。既存建物を枛築 的に蚭蚈するこずにより䜙癜の堎を創出し、人々や自然環境に察しお さたざたな行為を誘発し受け止めるこずのできる空間を目指した。

A-A’ 断面図

Kazuki Ganeko's Selected Works 2020-2022

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あずがき | Postscript

山登りず建築蚭蚈 Mountain climbing and Architectural Design 小さい頃から山に登るのが奜きだ。自らの五感ず身䜓感芚を研ぎ柄たせ、 倧地の匷床を確かめながら登っおいく。おっぺんたで登り呚囲を芋枡すず 景色は䞀倉しおいる。芋えおいる䞖界が倉わり、たるで鳥にでもなったか のように、地䞊に芋える街䞊みや田畑の颚景、倪平掋の向こう偎にひろが る氎平線を眺めたり、なによりも党身に颚を纏うかのような䜓隓が出来る。 ある日、建築を蚭蚈するこずは山登りず䌌おいるず思った。自らの感性ず 創造力を研ぎ柄たせ、その土地の歎史や颚土、呚蟺環境などのさたざたな 芁玠に応答しながら進んでいく。ある地点たで進むず芋える景色が䞀倉す るのだ。私が蚭蚈した建物が人々や環境を繋ぎ、ひいおは地球を圢づくる 芁玠のひず぀ずなったずき、これ以䞊の喜びはないだろう。 そういうわけで、今日も私は山を登る。

我劂叀 和暹  kazuki ganeko 2020.04 - Architecture and Building Engineering Program , Univ. of the Ryukyus 2022.04 - Kinjo lab . architectural design

フォントデザむン

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あの日からの建築私 ―ANOHIKARANO KENCHIKUSHI― 2023 幎 3 月 10 日

初版発行

線集・執筆 我劂叀 和暹 所属 琉球倧孊工孊郚工孊科 建築孊コヌス 発行元 ○○䌚瀟 ○○出版 〒○○○ - ○○○○ 沖瞄県○○垂○○ 原皿レむアりト䜜成゜フト InDesign 図面䜜成゜フト Auto CAD, Jw cad, illustrator 3D モデリング゜フト Sketchup パヌス䜜成゜フト Lumion, Photoshop, Lightroom 衚玙デザむン Urban Housing「矀青 House」1F 平面図 裏衚玙デザむン 沖瞄県那芇垂銖里金城町地区 呚蟺図 印刷・補本 ○○䌚瀟 ○○出版 〒○○○ - ○○○○ 沖瞄県○○垂○○ 萜䞁本・乱䞁本はお取替えいたしたす。 本曞の無断転写、転茉は著䜜暩法䞊での䟋倖をのぞき、犁じられおいたす。

ISBN ○○○ - ○ - ○○○○○ - ○○○ - ○ Printed in Japan ©Kazuki Ganeko


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0000000000000 定䟡本䜓 0,000 + 皎 ISBN ○○○ - ○ - ○○○○○ - ○○○ - ○ C0000 ï¿¥0000E


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