エストニア共 産 主 義 犯 罪 博 物 館 国 際コンペティション
The Red Terror Museum [RED EROSION] DESIGN COMPETITION 2018 : International Museum of the Crimes of Communism Patarei Prison, Tallinn, Estonia 2018.03
Endo Shuhei Architect Institute Kobe University Endo Laboratory 遠藤秀平建築研究所 神戸大学遠藤研究室
04 はじめに
ABOUT THE PROJECT
06 パタレイの歴史
HISTORY OF PATAREI PRISON
18 コンペティション提案
PROPOSAL OF THE COMPETITION
23 インテリアデザイン・コンセプト CONCEPT OF INTERIOR DESIGN
24 マスタープラン・デザイン MASTERPLAN DESIGN
30 ミュージアム MUSEUM
39 展示空間 動線計画
PATH OF MUSEUM EXHIBITHION
40 研究センター・レクチャーセンター RESEARCH + LECTURE CENTORE
43 ミュージアムと研究センターの目的とビジョン
THE AIM & VISION OF MUSEUM AND RESEARCH CENTORE
44 ミュージアムの展示と戦略
THE STRATEGY OF MUSEUM EXHIBITION
46 全体計画としての戦略
THE STRATEGY OF THE MASTERPLAN
48 現地訪問 SITE VISIT
60 エピローグ EPILOGUE
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はじめに
ABOUT THE PROJECT
プロジェクトの概要 バルト三国の最北の国、エストニアの首都タリンの中心部に程近 い、バルト海を臨む海岸に立つパタレイ旧刑務所。2002年に刑務所 としての役割を終えたが、かつては強制収容所として利用され、多く のエストニア人やユダヤ人の命が奪われた。そのような歴史背景か らエストニアの占領時代の悲劇の象徴となっており、重厚でありな がら廃墟のごとく朽ちた建物は年々開発の進むタリン港湾部の地区 のなかで独特な存在となっている。 周辺の沿岸部では現在再開発が進んでおり、パタレイ旧刑務所も また、新たな利用のあり方が議論されている。 2018年3月、国際コンペティションが実施された。 コンペでは、パ タレイ旧刑務所の建物の一部と周囲に国際共産主義犯罪博物館 (International Museum of the Crimes of Communism)と題される ミュージアムと研究センター、教育センターなどをデザインすること が求められた。審査は匿名で行われ、エストニア国内や北欧、 ヨーロ ッパの設計事務所らの案を抑え、幸運にも遥か遠くの日本から応募 した案が1位を頂く最高の結果となった。 2018年5月末日、 コンペを実施したエストニア歴史研究所に招か れ、日本からエストニア・タリンのパタレイ旧刑務所を訪問した。提 案のプレゼンテーションや意見交換を行い、過去の記憶を守り語り 継ぐための博物館の実現に向け日々奮闘する彼らの熱意に触れた。
The Patarei Old Prison, standing on the coast that faces the Baltic Sea, close to the northernmost country of the Baltic States, the center area of Estonia's capital Tallinn. Before finishing the role as a prison in 2002, it was once used as a concentration camp, depriving many Estonians and Jews of their lives. In this historical context, the building which symbolizes the tragedy of Estonia, heavy and decadent as ruins, has become a unique presence in the rapidly developing region year by year.
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With the redevelopment of the surrounding coastal area, new ways of using the Patarei Old Prison began to be on debate. . In March 2018, the international competition was held. In the competition, part of the Patarei Old Prison and a museum entitled “International Museum of the
Crime of Communism”, a research centre, and an educational centre in the surrounding area was requested to be designed. The jurie’s examination was carried out anonymously, plans of design offices from Estonia and Northern Europe were suppressed, and luckily, proposal from distant Japan got the first prize. On the last day of May 2018, we were invited by the Estonian Institute of Historical Memory who carried out the competition to visite the Patarei Old Prison of Estonia Tallinn from Japan. We did presentation and exchanged our opinions, deeply touched by their enthusiasm of struggling every day to realize the museum by protecting and inheriting the old memories.
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パタレイの歴史
HISTORY OF PATAREI PRISON 海軍要塞から刑務所へ エストニアの首都タリンの中心部からほど近い、バルト海を臨む海岸に、デザインコ
ンペティションの敷地となったパタレイ旧刑務所は建つ。建物の外側の煉瓦は長い年月 の経過を語り、鉄格子がはめられた窓や建物を囲む鉄線が建物の辿ってきた歴史を伝 えている。 パタレイの歴史は、現在のエストニアを含むバルト地方がロシア帝国(1721-1917 年)の統治下であった1827年に、ロシア皇帝ニコライ1世がタリン海軍港の強化のた め海軍要塞として建設を開始したことにより始まる。厚さ1.8mの外壁を持つ、長さ約 250m、3階建ての弧状建物(gorge)と長さ約124mの2つの放射状の建物から成る。
1864年、 ロシア帝国の海軍要塞としての武装化が解除され、通常の兵舎として再建 された。外壁の銃器を撃つためのループホール(日本の城でいう 「狭間」)などは1869年 までには生活用の窓へと置き換えられた。1881年には2,134人の兵士が生活をしてい たとされている。エストニア独立戦争(1918-1920年)の際には野営病院としても使用さ れ、エストニアが独立した1920年からは法務省の管轄下となり、パタレイ刑務所(タリン 中央刑務所)としてその役割を変えながら使用され続けた。
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占領支配の運命を辿った半世紀 1940年6月、 ソ連軍がエストニアに侵攻し、パタレイはソ連の内務人 民委員部(NKVD)*1の管理下となる。エストニア人指導者や政治家、将校 ら約8,000人が逮捕され、そのうち2,000人がエストニア国内で処刑さ れた。処刑を免れた人々も大部分はロシアの収容所へと移送され、死亡 したとされる。やがて1941年6月にナチス・ドイツによるソ連侵攻が開 始したと同時期に、約1万人のエストニア市民が逮捕されシベリアなど の厳しい土地へと追放、鉄道工事などに動員され、多くの人々が犠牲と なった。 さらには、3万2千人のエストニア男性がソ連軍として動員され、 ロシア移送によってうち約4割が飢えや寒さ、過酷な労働環境によって 死亡したと記録されている。パタレイ刑務所でも囚人の急増により、 ロシ ア移送が追いつかず収容能力を超えたことで、囚人の処刑も行われた。 1941年8月、ナチス・ドイツはタリンを占領し、パタレイはNKVDに代 わりナチス・ドイツの親衛隊保安部(SD)*2の管理下となる。最初数ヶ月間 に再び多くの逮捕者がパタレイに収容され、既存の建物に加えて一時的 な強制収容所も建設された。1941年の冬から1942年の春にかけて、多 くの囚人と国内外から連行されたユダヤ人の処刑が行われた。 ドイツ軍 の戦況が悪化すると、 ドイツ軍として戦線に動員された囚人もいた。 1944年9月、 ソ連がタリンを再占領し、パタレイは再びNKVDの統治 下となる。1945年3月にはパタレイで最多収容人数となる3,620人の 囚人が収容されていたとされる。パタレイは、1940年のソ連の侵攻から 1991年にエストニアが再びソ連から独立を回復するまでの約50年続 いたソ連とナチスによる占領支配の象徴となった。
*1 : ソ連のスターリン政権下で主に秘密警察として 「反革命分子」 とみなした人物の逮捕、尋問、処刑やス パイの摘発などを行っていた。 *2 : ナチス・ドイツの親衛隊(SS)内部におかれた情報部。1936年には秘密国家警察(ゲシュタポ)と一体 化され、第2次世界大戦中は占領地のユダヤ人、抵抗運動者、捕虜などに対する最も残忍な取締り機関と なった。
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悲劇の象徴から自由と平和の象徴へ 2005年、パタレイは刑務所としての役目を終えた。1997年にエストニアの国定文化財に指定されたパタレイの建築物は 国所有の不動産であるが、一部を民間に売却し、新たな利用の形を見出すことが国内で議論されている。2017年8月23日に タリンで開催された独ソ不可侵条約締結の記念行事において、8ヶ国の代表が共産主義犯罪研究のための国際機関を設立 する共同宣言を採択したことを機に、刑務所建築の一部5,000平方メートルを、エストニアにおける共産主義犯罪をテーマと するミュージアムと国際研究センターを設立する基本方針が構想された。 共産主義国家による占領支配という悲劇の半世紀を強いられたエストニアにとって、パタレイ旧刑務所はまさに悲劇と支 配の象徴である。ナチスの政治的な思想戦略、 プロパガンダによって正しい歴史を失いかけたエストニアにとって、過去の真 実の歴史を守り後世へと伝えてゆくことは非常に重要な意味を持つ。そうした歴史的な背景を理解し、 これからのエストニア とパタレイに求められるミュージアムと研究センターの姿を示すことがこのデザインコンペティションでは求められた。
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― 共産主義犯罪博物館 (Museum of the Crimes of Communism) という問への答えとは何か ? 人々の生活を支えることを目指したシステムであった共産主義が、徐々に暴走を始めやが て人々の自由や命を奪う、恐ろしく強大な力へと成長してしまった。人々が立つ地面が徐々 にめくり上がり、人々を飲み込んでいく内観デザインのコンセプトを着想した。 ソ連のレーニングラードとドイツのベルリンを結ぶ 1 本の軸をパタレイに通す。エストニ アを長く翻弄し続けた歴史の軸が床面を切り刻み、めくり上げ、空間を覆い始める。徐々に 部屋を覆い隠していく白のプレートは、歴史を政治的に塗り替えようとするドイツ・ナチス のプロパガンタ政策の象徴であり、来訪者は展示空間の動線を進むことでそれを追体験する。 白く無機質な空間への変化は共産主義によって作り出された均質的な社会の状況を表し、白 のレイヤーの隙間から姿をのぞかせる赤のレイヤーは、その状況を創り出した主体、つまり 国家や指導者、さらに言えばヒトラーやスターリン、レーニン自身なのである。
- What is the answer to the question of the Museum of the Crimes of Communism?
赤の侵食 RED EROSION 遠藤秀平建築研究所 神戸大学遠藤研究室
Endo Shuhei Architect Institute Kobe University Endo Laboratory 18
Communism, which was a system that originally designed to support the lives of people, grew slowly into a runaway, eventually depriving people of freedom and lives, and got a terrible and mighty power. We conceived the concept of an interior design that the the ground on which people stand, gradually turns up and swallows them. We drew one axis connecting Leningrad(Soviet) and Berlin(German) through Patarei. This axis represents the history that continues tormenting Estonia and its people. It cuts open the ground, growing thicker as turning up to the chamber and eventually covers up the wall and ceilings. The increasing white plates that cover up the room is an indication of the distorted history that Nazi made through its propaganda. Visitors will experience this dramatically change going through the exhibition. On the other hand, white and lifeless spaces represent the time of homogeneous society created by the communist regime; the red layer that seen through the slit of the white layer represent the dictators and his regime that created the terror, for instance, Hitler and Stalin.
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パタレイ模型(縮尺1/500) 模型制作 : 神戸大学遠藤研究室
Model (Scale 1/500) made by Kobe University Endo Laboratory 21
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インテリアデザイン・コンセプト CONCEPT OF INTERIOR DESIGN
暴走する共産主義の状況を追う空間変化 来場者はパタレイの既存のフロアに敷かれた、赤いスリットの刻まれたホワイトスラブの上を歩き歴史を 辿ってゆく。 ホワイトスラブは共産主義の誕生から現在までの歴史を辿る展示空間とリンクして変化する。始めは密で
Exhibition Interior Design
あったスリットは粗く単調になる。 ホワイトスラブの面積が広がっていくに連れて、床が立ち上がって壁や天 井へと変化し、 オリジナルのパタレイの姿を覆い隠してゆく。 それはまさに共産主義によって均質化させられ
来場者はオリジナルのパタレイの床の上に敷かれた、赤いスリットの入ったホワイト スラブの上を歩いて歴史を辿っていきます。 ホワイトスラブは共産主義の誕生から現在までの歴史を辿る展示空間とリンクして変 化していきます。始めは密であった目地は粗く単調になり、ホワイトスラブの面積が 広がっていくに連れて、その目地に沿って床が立ち上がって壁や天井へと変化し、オ リジナルのパタレイの姿を覆い隠していきます。それはまさに共産主義によって均質 化させられてゆく社会そのものを示唆しています。
てゆく社会そのものを示唆する。
Redslits means Communism itself.
Redslits tähendab kommunismi ise.
White plate means the situation that Communism created.
Visitors will go through the history timeline led by the white plates with red slits, which placed on the original Patarei's floors. The density of white plate changes with history: from the birth of Communism to the present. In the beginning, all the plates are dense and tight. They gradually grow apart, become coarse and monotonous. Some convert into walls or ceilings as the communism power grow, covering the original surface of the Patarei. This change suggests the idea how a society homogenized communism. Visitors will by follow history by walking on the white slab with a red slit laid on the
original Patalei's floor. The white slab changes in conjunction with the exhibition space which traces the history from the birth of Communism to the present. At first the dense joints became coarse and monotonous, and as the area of the white slab grew, the floor stood up along the joint and changed to a wall or ceiling, covering the original Patrayy I will continue. That suggests the very society itself that is being homogenized by communism.
M11-Holodomole
M03-History of Estonia
M17-The victim of the Holocaust
M36-Meditation room
Filling rate : 15%
Filling rate : 25%
Filling rate : 45%
Filling rate : 100%
Pitch of grid
Pitch of grid
Pitch of grid
Pitch of grid
Valge plaat tähendab kommunismi tekkinud olukorda. 23
outdoor spaces of different nature divided finely, and in the city of Tallinn It plays a role of linking strong non-routine programs such as flowing everyday life and the Topography of Terror Communist Crime Museum to graduation.
Smolny Convention, which was the LIVELY center of the Soviet Union, emphasize the history of communism in Estonia.
The portio boundary atmosphe difference the axis u
a. Atmosfäär
b. Kok
Patarei osad (tara, näpunäited, piir jne) on teljel lõigatud, erinevad suhted patarei erineva Organic ja teljega, mis on atmosfääriga nendega ühendatud pidevalt.
Et näha, oli igapä Atmosfä rõhutata kaugem igapäev
Gestapo,SS and Reich Security Main Office
DESIGN CODE
マスタープラン・デザイン
Smolny Convent Leningrad Central of Soviet Government
MASTERPLAN DESIGN
パタレイを貫く共産主義の軸
Masterplan Design
Kommunismi telg / Axis of Communism
Kommunismi telg, mis ühendab Gestapo, mis oli natside ja Smolnõi konvent, kes oli Nõukogude Liidu keskus, rõhutavad kommunismi ajalugu Eestis.
ロシアのレニングラードとドイツのベルリンを結ぶ軸がパタレイを貫く。博物館や パタレイを通り、ロシアの Lenin grad とベルリンを結ぶ軸が、敷地に点在する博物館 研究センターなどのプログラムは、 その軸によって分節された性格の異なる屋外空 や研究センターなどのプログラムや、それによって細やかに分節された性格の異なる 屋外空間を結びつけ、且つ、タリンの街に流れる日常生活と共産主義犯罪博物館とい 間を結びつけ、 タリン市街の日常と国際共産主義犯罪博物館という非日常性の強 う非日常の強いプログラムをグラデーショナルにつなぐ役割を果たしています。 いプログラムをグラデーショナルにつなぐ。
CALM
The axis of communism that unites the Gestapo, which was the Nazi and the Smolny Convention, which was the LIVELY center of the Soviet Union, emphasize the history of communism in Estonia.
Passing through Patalei, the axis connecting Russian Lenin grad and Berlin is linked with programs suchthe as axis museums andLeningrad, researchRussian centersand dotted the site, Passing through Patalei, connecting Berlin on is linked withand pro- thereby outdoor of different nature divided finely, andand in the cityoutdoor of Tallinn It plays grams suchspaces as museums and research centre dotted on the site, thereby spaces of a Topography of Terror role of linking strong non-routine programs such as flowing everyday life and Gestapo,SS and different nature divided finely. Moreover it plays a role of linking strong non-routine programsthe Reich Security Main Office Communist Crime Museum to graduation.
DESIGN CODE
a. Atmosfäär
b. Kokku - Diskreetne To Maritime Museum
c. Raja
Patarei osad (tara, näpunäited, piir jne) on teljel lõigatud, erinevad suhted patarei erineva atmosfääriga Organic ja teljega, mis on nendega ühendatud pidevalt.
Et näha, et totalitaarne ühiskond oli igapäevaselt kaugel, Atmosfääris, et geomeetriat Red Terror Museum rõhutatakse muuseumist Reseachon Center kaugemale, teisel pool igapäevane õhkkond.
Telg toim eraldatu rajatiste linki piirk
共産主義の軸
屋外空間のデザイン
Axis of Communism ソ連の中心とナチスのゲシュタポを結ぶ共産主 義の軸は、エストニアの共産主義の歴史を強調 している。
CALM
The axis of communism that unites the Gestapo, which was the Nazi and the Smolny Convention, which was the center of the Soviet Union, emphasize the history of communism in Estonia.
Design of Atomosphere a. Atmosfäär
軸はパタレイの一部 ( 屋外の塀やバルト海に臨 / Atomosphere TOTAL む先端、境界など ) を貫くことで、場所ごとに 異なる性格の空間をうみだし、またそれらの空 Patarei osad (tara, näpunäited, 間を結びつける。 piir jne) on teljel lõigatud, erinevad suhted patarei erineva TheOrganic portions of patarei (fence, tips, boundary,etc) cut in Geometric atmosfääriga ja teljega, mis on the axis, various atmospheres are made due to the difnendega ferenceühendatud in relation withpidevalt. patarei, and the axis united them
continuously. DISCRETE
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LIVELY
CALM
The axis of communism that unites the LIVELY was the Nazi and the Gestapo, which Smolny Convention, which was the center of the Soviet Union, emphasize the history of communism in Estonia.
Topography of Terror Gestapo,SS and Reich Security Main Office
/ Total - Discrete
/ Axis of Communism
Kommunismi telg, mis ühendab Gestapo, mis oli natside ja Smolnõi konvent, kes oli Nõukogude Liidu keskus, rõhutavad kommunismi ajalugu Eestis.
The portions of patarei (fence, tips, boundary,etc) cut in the axis, various atmospheres are made due to the difference in relation with patarei, and
Geometric
To show t from ever geometry museum, atmosphe
/ Atomosphere
Kommunismi telg
TOTAL
The portions of patarei (fence, tips, DISCRETEcut in the axis, various boundary,etc) atmospheres are made due to the difference in relation with patarei, and the axis united them continuously.
such as flowing everyday life and the Communist Crime Museum to graduation in the city of Tallinn. Smolny Convent Leningrad Central of Soviet Government
/ Total -
/ Atomosphere
TOTAL
Geometric
The portions of patarei (fence, tips, boundary,etc) DISCRETEcut in the axis, various atmospheres are made due to the difference in relation with patarei, and the axis united them continuously.
To show that totalitarian society was far Lecture Center from everyday, Atmosphere that geometry is emphasized beyond the museum, the other side has a daily From City Center atmosphere.
対称性のグラデーション b. Kokku - Diskreetne Total - DiscreteTo Maritime Museum / Total - Discrete
c. Rajatiste Connectionühendamine of Facilities
全体主義社会が日常とかけ離れていることを示 Et näha, et totalitaarne ühiskond すために、市街地側では有機的なデザイン、ロ oli igapäevaselt kaugel, シアへ向かう海岸側では無機的なデザインを、 Atmosfääris, et geomeetriat Red Terror Museum rõhutatakse muuseumist 雰囲気のグラデーションによって対称性をつく kaugemale, teisel pool り出している。 Reseach on Center igapäevane õhkkond. To show that totalitarian society was far from everyday,
pairing the brokenet linkkorrigeerida of the facilities connection in the Telg toimib selleks, area. seisukorda, parandada eraldatud rajatiste ühendatud katkestatud linki piirkonnas.
Atmosphere that geometry is emphasized beyond the
To show that totalitarian society was far museum, theAtmosphere other side hasthat a daily atmosphere. from everyday, Lecture Center geometry is emphasized beyond the museum, the other side has a daily atmosphere. From City Center
施設間の接続
/ Connection of Facilities 軸は、敷地内に点在する各施設を結びつける。
The Axis serve to correct the disjointed condition, re-
The Axis serve to correct the disjointed condition, repairing the broken link of the facilities connection in the area.
/ Conne
The Axis s condition the facilit
ons of patarei (fence, tips, y,etc) cut in the axis, various eres are made due to the e in relation with patarei, and united them continuously.
kku - Diskreetne Discrete
01. エントランス
, et totalitaarne ühiskond äevaselt kaugel, ääris, et geomeetriat akse muuseumist male, on teisel pool vane õhkkond.
02. プラザ 03. ミュージアム入り口 04. キオスク + チケット 05. クローク 06. 管理オフィス
Public Route
07. 中庭 / 企画展示
that totalitarian society was far ryday, Atmosphere that y is emphasized beyond the , the other side has a daily ere.
08. 桟橋 09. 屋外展示
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10. ヤード 1 d.View of Russian Direction
c.View from Courtyard
11. 遊歩道(海洋博物館エリアへ) 12. 遊歩道(市街地エリアへ) 13. ビューポイント 14. レクチャーセンター
atiste ühendamine
ection of Facilities
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15. 研究センター
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16. ヤード 2
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mib selleks, et korrigeerida f.View from Research Center Deck ud seisukorda, parandada ühendatud katkestatud konnas.
17. 連絡通路
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serve to correct the disjointed n, repairing the broken link of ties connection in the area.
6 16 15
Lecture Center Route 17
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Researcher Route
Tourist Route e.View of German Direction
a.View from Approach Entrance
b.View of the Plaza
01. Site Entrance 02. Plaza 03. Museum Entrance 04. Kiosk+Ticket 05. Cloakroom 06. Office 07. Courtyard / Feature Exposition 08. Pier 09. Outdoor Exhibition 10. Calm Yard 11. Esplanade 12. Subentrance 13. View Point 14. Lecture Centre 15. Research Centre 16. Lively Yard 17. Passageway 25
パタレイを貫く共産主義の軸 過去の共産主義の歴史の真実を守り、次の世代へと伝えていくこ とを理念として、博物館と研究センターを含めた全体を、 ロシアのレ ニングラード、 ドイツのベルリンとエストニアを結ぶ強い軸によって 貫くランドスケープをデザインした。 来訪者は敷地に入ると初めに軸にのり、 ロシアの方角にある博物 館へとアプローチする。博物館を巡ると再び軸にのり、 ドイツの方角 へと向かう。そこではさらなる情報や知識を研究センターで得ること ができる。 ランドスケープと建築のデザインは、 このプロジェクトの理 念を体現している。 さらに、海岸線に沿ったランドケープは、エストニア海洋博物館と パタレイ・ミュージアムをつなぐアプローチとしても機能し、 タリンの 新たな魅力的な湾岸エリアの発展に寄与する。
the Estonian Maritime Museum
Our entire design is based on the idea of protecting, conveying and exchanging the knowledge and truth of history in the Communism days to our next generation. Hence the entire project including museums and research center is strongly related to the historical axis of landscape: connecting Leningrad, Estonia and Berlin. As visitors enter the premises they stand on the axis, approaching to the museum which in the same direction of Russia. After stopover at the museum, they will reach to the other end of the axis again, which heads towards to Berlin. This leads them to lecture center, where they can get further information and knowledge about the past. The design of landscape and architectures embodies the philosophy of this project. Furthermore, the landscape along the coastline functions as a strong bond to connect the Estonian Maritime Museum and the Red Terror Museum together, creating a new attractive area of Tallinn. 26
the Red Terror Museum
Lecture Centre Research Centre
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ミュージアム(1F) MUSEUM(1ST FLOOR)
01. Entrance / Foyer 02. Kiosk+Ticket 03. Cloakroom 04. Office 05. Strage 06. M38 - Gorge Temporary exhibition 07. M39 - Fleche Temporary exhibition
B'
C'
A'
B
A
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C
01. エントランス / ホワイエ 02. キオスク + チケット 03. クローク 04. 管理オフィス 05. ストレージ 06. M38- 本館 企画展示 07. M39- 別館 企画展示
in fleche 01. エントランス /Entrance 人々は軸を通って建物へと入る。パッサージュ空間であり、建物を貫く軸は 来館者、非来館者にかかわらず体験できるだけでなく、海岸エリアや海洋 博物館へのアクセス性に貢献する。
Visitors enter the building through the axis. It is a passage space, letting visitors to experience the axis that penetrates the building regardless of visitors or non-visitors, contribute to accessibility to waterfront area and the maritime museum.
section C-C'
gorge view from fleche 02. キオスク+チケット /Kiosk+Ticket 来館者はパッサージュからキオスクやチケットセンターに入る。 ミュージア ムの来館者でない人も気軽にショップでの買い物を楽しめる。
From the passage visitors enter the kiosks and the ticket shop. People who are not museum visitors can also feel free shopping at the shop.
the Red Terror Museum
section B-B'
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08-10. コートヤード /Courtyard 囚人の運動場であった中庭では企画展示やワークショップのイベントが 行われる。展示を見終えた来館者が、 カフェで休憩をしたり、 ライブラリー でさらなる情報に触れることができる。
At the courtyard, which was a prisoner’s playground, will change to a space where special exhibitions and workshop events will be held. In the cafe, visitors can take a break or in the library they can see the research and materials about communism.
32 landscape
section A-A'
courtyard
ミュージアム(2F) MUSEUM(2ND FLOOR)
D'
F'
E'
D
F
E
01. M07- 共産主義について
10. M16- 第 2 次世界大戦の終焉
16. M22- インスタレーション ( 犠牲者
02. M08- ソビエト連邦の誕生
11. M17- ホロコーストの犠牲者
の写真 )
03. M09- 第 2 次世界大戦の始まり
12. M18- ソビエト連邦の拡大
17. M23- 別館の建築の歴史
04. M10- ナチスドイツの台頭
( 各地での小スターリンの登場 )
18. M24- 個人の生涯の展示 1
05. M11- ホロドモール
13. M19- 各地の動乱
19. M25- 個人の生涯の展示 2
06. M12- 独ソ不可侵条約
( ハンガリー、チェコ、ポーランドなど )
20. M26- かつての独房の再現 1
07. M13- ホロコースト
14. M20- 第二次世界大戦以降の共産
21. M27- 個人の生涯の展示 3
08. M14- 強制収容所
主義
22. M28- かつての独房の再現 2
09. M15- カティンの森事件
15. M21- 現状の独房
01. M07 - About Communism 02. M08 - The birth of the Soviet Union 03. M09 - The beginning of W W II 04. M10 - The birth of the Nazis Germany 05. M11 - Holodomole 06. M12 - Molotov-Ribbentrop Pact 07. M13 - Holocaust 08. M14 - Concentration camp 09. M15 - The mass murder at Katyn 10. M16 - The end of W W II
11. M17 - The victim of the Holocaust 12. M18 - Expanding the Soviet Union (Small Stalin appearing in various places) 13. M19 - The reform movement (etc, Hungary, Czech, Poland...) 14. M20 - Impact of Communism after WW2 15. M21 - ornamental sells 16. M22 - installation (mamy photographs of victims) 17. M23 - The display of the history of flèche
18. M24 - The display of the stories of individuals (Jüri Jaakson, Jaak Reichmann, Maksim Unt) 19. M25 - The display of the stories of individuals (Eduard alfred kubbo) 20. M26 - Reproduction of a cell (where Eduard alfred kubbo was imprisoned in) 21. M27 - The display of the stories of individuals (Captain Paul Laamann) 22. M28 - Reproduction of a cell (where Captain Paul Laamann was imprisoned in)
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landscape
in 11. ホロコーストの犠牲者 (M17)/The victim of the Holocaust ポーランドのマイダネクやアウシュビッツの強制収容所に現在展示され ているような、収容者、犠牲者の遺品を見せる展示を行う。高く積まれた 遺品の山がホロコーストによって奪われた人々の命の多さを伝える。
This area exhibits showing relics of inmates and victims, as currently exhibited in the concentration camps of Polish Maidanek and Auschwitz. A mountain of high stacked relics tells the lives of people who have been robbed by the Holocaust. 34
section E-E'
ホロコースト犠牲者の靴
(U.S. Holocaust Memorial Museum, Washington, D.C.) 一足一足が、犠牲者の歩んだ悲劇を伝える。
landscape
05. ホロドモール (M11)/Holodomole 恐ろしいホロドモールの記録を写真によって展示する。 フロアから立ちあが る壁面と赤い光が戦争と社会主義が進行し人々の命を脅かし始めているこ とを意味する。
This area exhibits the photographs of terrible holodomole’s records. The wall rising from the floor and red light means communism are progressing and threatening the lives of people.
in fleche section D-D'
courtyard 20. 独房の再現 (M26)/Reproduction of a cell 新館(fleche)の中では一部の独房を再現し、来館者は収容所での生活を知 ることができる。 また、パタレイで犠牲となった一部の囚人の人生を紹介す る。
landscape
In fleche, some solitary cells are reproduced, and visitors can know the life in Patarei. It will introduce the lifetime of some prisoners who were sacrificed in Patarei.
fleche
section F-F'
gorge view from fleche
in fleche 35
ミュージアム(3F) MUSEUM(3RD FLOOR)
G'
H'
G I' H I
01. M01- 現状のパタレイの保存・展示
10. M31- 多数の犠牲者の歴史
02. M02- エストニアの歴史
11. スタッフルーム
03. M03- パタレイの建築の歴史
12. M33- ソビエト連邦の崩壊
04. M04- パタレイの海軍要塞における歴史 (1827-1919)
13. M34- ホロコーストの調査の展示
05. M05- パタレイの収容所における歴史 (1920-2002)
14. M35- 今も残る共産主義
06. M06- パタレイのミュージアムにおける歴史 (2002-)
15. M36- 瞑想空間
08. M29- 展望所 ( パタレイの姿をみつめる )
16. M37- 現状のパタレイの保存・展示
09. M30- フォト・スポット ( 独房内部に入ることができる )
17. 休憩所
36
01. M01- Exhibition of original room 02. M02- History of Estonia 03. M03- History of Patarei 04. M04- History of Patarei fortress (1827-1919) 05. M05- History of Patarei prison (1920-2002) 06. M06- History of Patarei museum (2002-) 08. M29- Observatory (visitors can see the appearance of Patarei) 09. M30- Photo spot
(visitors can go inside the cell) 10. M31- The introduction of other countless individuals 11. Staff room 12. M33- Exhibition of collapse of the Soviet Union 13. M34- Research results of the Holocaust 14. M35- Communism that remains today 15. M36- Meditation room 16. M37-Exhibition of original room 17. Rest space
03. パタレイの歴史 (M03)/History of Patarei ヨーロッパと世界の激変のなかで、海軍の要塞として始まり、刑務 所、強制収容所と様々な使われ方に変わっていったパタレイの建物 自身の歴史を紹介する。パタレイはエストニアでも最も貴重な古い 建物の一つであり、非常に重要な価値を持つ。
The exhibition shows the Patarei’s history, which began as a naval fortress, changed to prisons, concentration camps and various ways of use in the drastic changes in Europe and the world. Patarei is one of the most valuable old buildings in Estonia.
section G-G'
landscape
landscape 15. 瞑想空間 (M36)/Meditation room ミュージアムの展示動線のクライマックスであり、部屋の殆どの部分 が白いプレートに囲まれている。数十分おきに白いキューブ全体に
inは体験する。 fleche
映像がマッピングされ、社会主義が人々を飲み込む恐怖を、来館者
It is the climax of the exhibition of the museum, and the white plate covers most of the room. Visitors will experience the fear that Communism will swallow people as images are mapped to white cube every few tens of minutes.
in fleche
08. 展望所 (M29)/Observatory 15. 瞑想空間 (M36)/Meditation room
08. 展望所 (M29)/Observatory
別館から、海に向かって建つ本館の姿をみる。地上での人々の賑わ いは、エストニアが平和を願い、平和へと向かうメッセージを来館者 に発信する。
section H-H'
sectionn I-I'
From the fleche, people watch the gorge built towards the sea. People are bustling on the ground, it gives visitors a message that Estonia is going to peace and wishing for peace. 37
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Path of Museum Exhibition
a Fo
メイン
展示空間 動線計画 PATH OF MUSEUM EXHIBITION a. 共産主義犯罪の歴史を追う 主な展覧会である本館の展示は3階から始まる。 来館者はフロアをおりながら歴史を追っていく。エストニアの歴史から始 まり、犠牲者の苦しみや悲しみを伝える展示が続く。白色のプレートは、徐々に共産主義の抑圧に覆われたかのように来館 者に覆い被さっていく。
: Näituste püsimise tee
ソビエ リンク
Path of Permanently exhibition
3
: Ajutise näituse tee
Path of Temporary exhibition
aaaa aaaa aaaa aaaa aaaa
: Erinäituse teekond
a
Path of Special exhibition
M03-History of Estonia
M36-Meditation room
b. 個人の生涯を追う
b Fo
gorg います かつて
本館の2階から接続している2階から4階の別館では、パタレイに関係する人たちのいくつかに焦点を当て、彼らの生涯を 展示する。来館者に元の独房の外観を体験させる再現空間を作り出す。
c. ワークショップ&ミュージアムカフェ 囚人の運動場だった中庭は、特別展やワークショップのイベントが開催されるスペースに変わる。 カフェでは、展示を終え た来館者が休憩をとることができる。 ライブラリーでは、各トピックの研究や資料を観ることができ、共産主義に関する更に 詳しい情報や知識に触れることができる。
d. 特別展 別館1階とそれに隣接する外部スペースは、別のチケットが必要な特別展示エリアである。 ベルリンやコペンハーゲンなど
2
M11-Holodomole
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b
2.5
世界中の共産主義犯罪を扱う博物館との共同展示や、視覚的な展示やVRなどを使った魅力的なコンテンツの展示を行う。
c W
かつて やワー のトピ
M17-The victim of the Holocaust
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a. Follow the history of Communist crime The exhibition of gorge which is the main exhibition starts from the 3rd floor. Visitors follow the history as they get off the floor. The exhibition starts with the history of Estonia, followed by exhibitions that convey the sufferings and pain of the victims. A white plate covers visitors as if they gradually become covered by communism repression.
b. Follow the lifetime of individuals
c
At the 2nd - 4th floors of fleche which are connected from the 2nd floor of gorge, we focus on some of the individuals related to Patarei and display about their lifetime. We are creating a reproduction space that makes visitors to experience the appearance of former solitary cell.
Leningradi vaade
d Sp
/ View of Leningrad
c. Workshop & Museum cafe
The courtyard, which was a prisoner's playground, will change to a space where special exhibitions and workshop events will be held. In the cafe, visitors who finished exhibits can take a break or in the library they can see the research and materials on each topics and get further informations and knowledges about communism.
d. Special Exhibition
1st floor of fleche and the external space adjacent to it are the special exhibition areas that requires another admission ticket. By collaborating with museums dealing with Communist crimes all over the world such as Berlin and Copenhagen, and exhibit attractive contents using visual exhibitions and VR etc.
1
fleche ていま ルリン ど、魅 aaaa aaaa aaaa aaaa
Uurimiskeskus / Research Centre
d Sisenemine / entry
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研究センター・レクチャーセンター RESEARCH + LECTURE CENTRE
L'
1
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in fleche 6
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courtyard
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5
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kiosk
gorge view from fleche
la
the Red Terror Museum
40 entry
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landscape
in fleche
section K-K' 研究センター /Research Centre
gorge view from fleche courtyard
andscape
01. 研究室 02. 受付
軸線と芝生のオープンスペース /The Axis and lawn space
レクチャー・センター /Lecture Centre
03. ストレージ 04. 書庫 05. コモン・テラス 06. キッズ・スペース 07. オフィス 08. マルチメディアルーム 09. キッチン&カフェ 10. レクチャー・ルーム
section L-L'
in fleche
section J-J'
11. オーディトリアム / ライブラリー
01. Laboratory 02. Acceptance 03. Strage 04. Library 05. Common terrace 06. Kids play space 07. Office 08. Multimedia room 09. Kitchen + Cafe 10. Lecture room 11. Auditorium / Library 41
the Red Terror Museum
軸の終端に立ち、人々は遠く離れたソビエト連邦をみる。 At the end of the axis, people see the Soviet Union far away. 42
ミュージアムと研究センターの目的とビジョン THE AIMS & VISION OF MUSEUM AND RESEARCH CENTRE
1. このミュージアムの第一の目的は、過去の共産主義による1億人以上の犠牲者を讃え、記念する ことである。徐々に共産主義が進行していくエストニアの過去の歴史を辿ることによって、人々は 抑圧的な体制と、何百人もの無実の民間人に対する人権侵害を理解する。 2.
研究センターは歴史を守り、次の世代へと伝えていく。過去のプロパガンダ政策は事実を政治
的に書き換えた。信頼される国際機関として、研究センターは真実を守り伝えていく。 3. 研究センターは、世界に対して情報発信のプラットフォームとなる。中東欧の歴史の世界的な認 識を高めること、そして人権、民主主義、 自由の価値を強化し促進することが期待される。世界の研 究者や専門家が、 アイデアや情報交換の場として利用するほか、歴史を伝えていくイベントや会議 などを開催することで世界をつなぐコミュニティを構築する。
1. The first aim of this museum is to honour and memorialize the over 100 million victims of communism in the past. By tracing the history of Estonia's gradual progressive communism, visitors understand repressive regimes and human rights violations against millions of innocent civilians. 2. The research center protects its history and tells it to the next generation. The past propaganda politically distorted the facts. The research centre will protect and convey the truth of history as a trusted international institution. 3. The research centre will be a platform for the exchanging information to the world. It is expected to raise global awareness of Central and Eastern European history, strengthen and promote the values of human rights, democracy and freedom. In addition to becoming a venue for exchanging ideas and information for researchers and experts in the world, it will build a community connecting the world by holding events and conferences that protect and convey history.
情報交換
1. 共産主義の犠牲者を追悼する。
2. 正しい歴史を守り、未来へと伝える。
3. アイデアや情報を発信、交換する プラットフォームとなる。
1. Memorialize the victims of communism.
2. Protect and convey the history.
3. A platform for exchanging of ideas and informations.
メモライズ
Protect
事例(広島原爆ドーム+ピースセンター) 日本の広島、原爆ドームとピースセンターを紹介する。1945年、アメリカ軍によっ て広島に世界で初めて原子爆弾が投下された。広島は熱と爆風によって一瞬のうち に死の街へと生まれ変わり15万もの人々の命が奪われた。 「原爆ドーム」 と名付けら れた建物は、爆発中心部で唯一形を残した建物であり、現在まで戦争や核兵器の惨 禍を示すシンボルとして保存され、1996年にはユネスコの世界遺産に登録された。 広島平和記念式典 Hiroshima Peace Memorial Ceremony
広島ピースセンター (1955) Hiroshima Peace Memorial Museum
原爆死没者慰霊碑 Memorial Monument for the victims
原爆ドーム Atomic Bomb Dome
1955年に、 ドームの近くに広島ピースセンターが世界的な建築家である日本の丹 下健三氏によってデザインされ建てられた。日本の多くの学校では、 このセンターで の学習プログラムをカリキュラムに取り入れており、子どもたちは平和教育を受ける。
Short introduction of Horoshima city, Atomic Bomb Dome and Hiroshima Peace Memorial Museum. In 1945 U.S. Air Force dropped the first atomic bomb over the Japanese city of Horoshima. The entire town was destroyed by heat and blast instantly, about 150 thousands of people were killed. Inscribed to UNESCO in 1996, Atomic Bomb Dome is the only building that remains in center of the explosion. It is the symbol to remind people calamities caused by the wars and nuclear weapons. Close to the dome, world famous Japanese architect Kenzo Tange designed and built Hiroshima Peace Memorial Museum in 1955. Many schools in Japan will take their students and visit this museum as part of the curriculum of learning war and peace. This
peace memorial museum serves an important role to pass on the history and memory of victims of U.S atomic bombing, that Japan is the only country that has received atomic bomb attack. Every year the museum will held the memorial ceremony, spreading the message of peace, and gain a high recognition from the world. Hiroshima Peace Memorial Museum carries the sad history of the past, protecting the truth, mourning for the victims, sending the message to the world. Despite the different history background, it will be great reference of designing The Red Terror Museum of Patarei Prison.
このセンターは、原子爆弾の被害を受けた唯一の国として、原子爆弾に関する被害の 歴史を守り伝えていく役割を担っている。 また毎年、原子爆弾が投下された日には追 悼式典を開催することで、世界に対して歴史を伝え認知を高めるシンボルとなってい る。 悲しい歴史を持つ「負の遺産」 として犠牲者を追悼する、歴史を守り伝えていく、世 界に対しての情報発信のシンボルとなる、 という点でパタレイ 「レッドミュージアム」の ビジョンが参照することのできる事例である。
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ミュージアムの展示の戦略
THE STRATEGY OF MUSEUM EXHIBITION 1. 常設展示と企画展示 常設展示と時期に応じて展示内容を変える企画展示のエリアを設 ける。来館者はチケットを購入することで常設展示と企画展示を鑑 賞することができるが、一部の企画展示はチケット無しで無料入場
できる。世界各国に存在するユダヤ博物館やホロコースト記念館と の協力関係を構築し、 コレクションの共有や共催の企画展示を行う。
2. 戦争や共産主義に弾圧を受けた芸術 企画展示では、時として、共産主義、 ソ連やナチスによって弾圧を受 けた芸術家の作品を展示する。ナチス・ドイツは多くのユダヤ系芸 術家の芸術を退廃芸術として扱い、弾圧した。エストニアやその周 辺諸国での戦争や共産主義から弾圧を受けた芸術にスポットを当 てる。
Permanent exhibitions and feature exhibitions
There are permanent exhibition area and feature exhibition area that focus on different themes each season. Visitors will have to pay for both permanent and feature exhibitions, but also there will be a free entrée for some of the feature exhibitions. By forge a strong connection with Jewish Museums and Holocaust Memorials all over the world, the feature exhibition could be a collaboration or cosponsored by several institutes.
Art suppressed by War and Terror in Communism Era
Some of the feature exhibitions will be displaying the work from artists that been suppressed by the Communist regimes, Soviet government or the Nazi. Nazi had treated Jewish artist’s work as degenerate art and abandoned many of them. The focal point of the feature exhibitions will be the art work that was once devalued and buried during the war time. 44
3. 日常から社会主義の過去へと没入体験できる展示シークエンス
4. 保存すべき遺構に展示動線を導く事例
展示動線を構成するのはオフ・ホワイトの鋼板とその下から滲み出
(The Cisterns, Copenhagen, Denmark)
る赤色のLEDライトの光である。鋼板は政治によって自由が奪われ
地下の古い貯水槽をFrederiksberg
均質化する、社会主義が創り出した状況を、そして赤色の光はその
して利用している。金属のグレーチング板と照らし出す照明が明快
状況を創り出した国家やその指導者を意味する。時系列の展示を進
な展示動線を描く。保存すべき古いテクスチャーと現代の無機質な
むにつれ、展示内容に社会主義の色が強まり、床を覆う鋼板が面積
金属素材の対比関係が、来館者の土木構造物に対する畏敬の念を
を増大し次第に壁や天井までも覆うようになる。社会主義が過去を
増長させる。
Museumの展示空間の一部と
塗り替え、 自由を奪っていく変化を、来館者に体験させる。
An experiencing sequence of display: From daily life to the past of the Red Terror
Red colored LED lights emerge from the off-white steel plates will show visitors the route of exhibitions. The steel plates imply an uniformalized socialistic society with no freedom. The red light is the metaphor of the dictator and his country. As the era goes back, more and more communism red terror contents will be revealed in the display: back then how communist regime falsified history, deprived freedom from people. To enhance visitors’ experience and sensation, more percentage of ceilings, walls and floors will be covers in steel plates at the meantime.
Reference of exhibition route to preserved sites (The Cisterns, Copenhagen, Denmark) The underground old water storage tank is used as part of the display in Frederiksberg Museum (Copenhagen, Denmark). The designated lightings brighten the certain part of grating plate, creates a clear route of the exhibition. The comparison of old-time rough surface and cold metallic materials develops reverence in visitors’ heart towards the building and the history.
The Cisterns Copenhagen, Denmark
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全体計画としての戦略
THE STRATEGY OF THE MASTERPLAN ミュージアムのエントランス、ホワイエ ミュージアムのエントランス、ホワイエ空間を通り道とし、賑わい豊 かな海岸や、敷地北西部にある海洋博物館エリアへと抜けることが できる。 ミュージアムを観に訪れた人でない人も気軽にキオスクやミ ュージアムショップに立ち寄ることができる。
Entrance and Foyer of the Museum A passage will be put between the entrance/foyer of the red terror museum that along the shore and the Maritime Museum on the northwest part of the site. People with or without visiting purpose can both easily access to Kiosk and the museum shop.
Entrance and Foyer of the Museum
Kiosk and Ticket of the Museum
コートヤード
Courtyard Courtyard will be used for café and other open-air activities. It is suitable to hold temporary open-door exhibitions, workshops, and even works as openair theater.
コートヤード空間は、通常時カフェテラスなどオープンスペースとし て開放される。 ときには屋外展示やワークショップ、野外映画上映会 など一時的なイベントにも柔軟に対応できる。
Courtyard 46
Workshop Event
Plan
Plan
研究センター 既存の弓形の建物に対し、内側に拡張する形で新たな屋内空間を 作る。既存の建物部には研究センターの各室が配置され、 ガラス屋 根に覆われた増築部分のオープンな作業エリア、 ミーティングスペー スがそれらを接続する。 これは新しい研究センターの世界への透明
Research centre As a consistency of existing arc-shaped building, the research centre will extend the inner arc as its interior space. Office area of research centre is located in the existing building. An open studio and meeting space will be placed in the extension which covered by roof top made of glass. It shows transparency and transmission spirits of the new research centre to the world.
性、発信性の象徴である。
Open Studio
Plan
屋外空間
Outdoor space The axis of outdoor space is emphasized by the material differences: grass and soil. The differences of the ground level gradually separate the openair lawn and main approach. It eventually leads to the entrance through a rhythmical landscape change from everyday life to the awaiting unexpected.
芝生とグラウンドのマテリアルによって、軸線を強調する。更にグラウ ンドレベルの操作によって芝生のオープンスペースと軸線のアプロ ーチが徐々に分離しながらエントランスへと向かうことで、日常から 非日常への突入を一層ドラマチックなものとする。
Lively Yard
rf. Helsinki Music Centre(Helsinki, Finland)
rf. Laban Dance Centre(London, UK) 47
現地訪問 VISIT PATAREI
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コンペからパタレイ訪問、 プロジェクトを通して 2018年5月末、エストニアのタリンへと渡り、パタレイ旧刑務所(以下、パタレイ)を訪問する機 会を得た。人生で最も驚愕した事件と言っても過言ではない4月中旬の吉報から、1ヶ月と少し が過ぎていた。 5月28日、エストニアのタリンに入った。 これまでにフィンランドはじめ北欧諸国には留学や旅 行で訪れたことがあったが、エストニアを訪れるのはこれが最初であった。ヘルシンキのヴァン ター空港で小さなプロペラ機に乗り換え、すぐ25分ほどで海に面したタリンの街並みが見えて きた。既に現地時刻の夕方6時を過ぎていたが、遂にコンペの舞台となった街へと着いたことへ の興奮はロングフライトの疲れを吹き飛ばした。初夏の高緯度地域の日の長さにも後押され、荷 物をホテルに置くやいなや、すぐにパタレイへと向かった。 パタレイは市街地の中心から歩いて20分ほどのところにあった。周辺沿岸部は飲食店や人で 賑わうビーチが広がっていたが、やがて一際強い存在感を放つ建物が見えてきた。 フェンスの 外から旧刑務所の敷地の中を覗くといたる所に激しく傷んだ箇所や不気味な絵の落書きが見 られる。夕焼けに照らされたこの厚く重く、風化した建築は、怖さを強く感じさせた。 しかし対照的 に、海に面したパタレイの前の開放されたエリアでは、家族や友人同士で楽しそうに散歩やジョ ギングする姿、海で遊ぶ若者の姿が見られた。エストニアの悲劇の象徴となったパタレイではあ るが、自由と豊かな生活を獲得した現在のエストニアの姿を同時にうかがい知ることのできる 印象的な光景であった。 At the end of May 2018, we went to Tallinn in Estonia and got the opportunity to visit the Patarei Old Prison (hereinafter referred to as Patarei). Since we heard the good news in mid-April, which was the most astounding thing in our life, it had been over a month. On May 28th, we entered Tallinn in Estonia. Although we had visited Finland and other Scandinavian countries for studying and travelling so far, that was the first time for us to visit Estonia. We switched to a small propeller aircraft at Vantaa Airport in Helsinki, and saw the streets of Tallinn facing the sea in about 25 minutes. It was already past 6 o'clock in the local time, but the excitement of reaching the town, which was the stage of the competition, blew away the fatigue of long flight. Thanks to the long daytime in the high latitudes of early summer, I headed for Patarei as soon as leaving my luggage in the hotel. Patarei was about 20 minutes from the center of the city by walking. Close to the surrounding coastal area, with an open beach crowded with people and restaurants, the building which had eventually been a strong presence came into view. When looking inside the place which was once a prison from outside the fence, we saw serious destruction and eerie graffiti everywhere. This thick, heavy, weathered architecture illuminated by the sunset made us feel fear strongly, contrary to which, We saw families and friends enjoying their time jogging with each other, and there were also young people swimming in the sea in the open area in front of it. We could know that though the tragedy of Estonia was symbolized by the building, the scenery that Estonian people were living their life in freedom and taking abundant activities every day was the most impressive thing at the same time.
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翌々日の5月30日、タリン市内のエストニア歴史研究所を訪れ た。遥々日本からやってきた我々を、彼らは手厚い歓迎で迎え入れ て下さった。提案のプレゼンテーションを行ったほか、歴史を守り 語り継ぐための彼らの取り組みやミュージアム実現に向け日々奮 闘する彼らの情熱に触れた。同時にエストニアの大手新聞社の取 材も行われ、国内におけるパタレイやミュージアムの計画への注 目度の高さもうかがわれた。
その後、パタレイへ と案内して頂いた。パ タレイ内部は、数年前 まで一部はガイドツア エストニア歴史研究所にて。 (左から、研究所のサンドラ氏、遠藤秀平、塚越仁貴)
ーによって見学するこ とができたそうである
が、現在は建築物の損傷が著しいことなどもあり、再整備に向けて 非公開となっている。敷地内へと入り、厳重に施錠された扉を開 け、中庭から建築内部へと入った。その瞬間、まず最初に感じたの が空気のひんやりとした冷たさである。そして暗い。2002年まで刑 務所として使われていたときのまま、壊れた扉や家具、汚い便所が そのままの姿で残っている。窓や天井、壁も朽ち果て、まさに廃墟 である。シーツの着いたベッドや重厚な鉄格子で閉じられた窓か らは、刑務所、そして強制収容所時代の囚人の悲しみや絶望の叫 び声が聞こえてくるようであった。やがて扉を幾つか入った、光が 全く入らない狭い空間へと案内された。壁を懐中電灯で照らすと、 無数の指の形をした血の痕が見られる。 「 銃殺房」である(p.59右 上写真)。処刑される者は、シャワーを浴びる、などと言われて連れ てこられたという。内部の見学を終え、外へと出たときには歴史が より強く、重いものとなっていた。 50
On the third day, May 30, we visited the Estonian Institute of Historical Memory in Tallinn City. They warmly welcomed us as we came from distant Japan. In addition to presenting the proposal, we were deeply touched by their enthusiasm of preserving the history and struggling every day to realize the museum. At the same time, we were also interviewed by major newspaper company in Estonia, asked about the concern for Patarei and the plan of the museum in our country. After that, they took us to Patarei. It seemed that part of the interior of Patarei could be observed by a guided tour until a few years ago, but it was now closed for reconstruction due to the obvious damage to the building. We got into the place, opening the door which was strictly locked, and entered from the courtyard to the interior of the building. The first thing we felt at that moment was the coolness of the air. And then, dark. As what it looked like when used as a prison until 2002, broken doors, furniture and dirty toilet there still stayed in their original form. All the windows, ceilings, and walls were decayed, causing the place to be a mess of ruins.We seemed to hear the cries of grief and despair of the prisoners in both the prison era and concentration camp era from the beds with sheets on them and windows closed by heavy iron grids. Eventually we entered several doors, introduced to a narrow space without any light. So we illuminated the wall with our flashlight and found countless hand-shaped blood marks. It was the “shooting room”. It was said that those who would be executed were told to take a shower and brought to this place. When we finished our trip inside and went outside, we sensed more about the strong and heavy history.
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今回、奇蹟というべきか強運というべきか、信じられないよう な光栄な賞を頂き、 このプロジェクトを通して様々な経験を積 むことができたこと、エストニア歴史研究所の皆様をはじめ、 国や業界を超えて多くの人々と関わることができる機会を得た ことは、学生の立場として非常に幸運であった。遠い国のプロ ジェクトとは言え、ひとつの建築が地域や文化を越え、時を超 え、歴史をつなぎ人々をつなぐ、ひとつのゴールを目指す、 「建 築」のもつ大きな可能性を確信することができた。 そして何より、修士課程修了直前の貴重な時間をかけてコン ペの最初の段階から共に情熱を注いでくれた谷大蔵君、そし てコンペからその後も共に歩んでくれた後輩の松田星斗君と 山本修大君、ほか翻訳や模型製作に協力してくれた神戸 大 学 遠藤研究室の仲間に感謝したい。 神戸大学大学院 遠藤研究室 修士2年 塚越 仁貴
We are so grateful to get the incredible big prize this time, whether it should be called a miracle or a fortune. As students, it is lucky for us to accumulate a variety of experiences, gain opportunities to reach out to different people from other countries and industries, like everyone in the Estonian History Research Institute. Even though it is a project from a distant country, we are deeply convinced of the great potential of “architecture” that it can transcend regional and cultural boundaries, connect history and people, and aim for one goal. And, above all, I would like to offer my special thanks to someone : Daizo Tani spent his important days before completing his master’s degree and paid passion together from the first of this competition; Seito Matsuda and Nobuhiro Yamamoto worked on this project together from the first through to the present day; And my colleague of Kobe University Endo laboratory cooperated in translating and model making. Masaki Tsukagoshi Endo laboratory, Kobe University Graduate School
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エピローグ EPILOGUE
歴史上の混乱を体現するパタレイ刑務所に対して、この建築の空間レイアウト、歴史 的外観、内部仕上げなどの変更を行わず、共産主義が人々の心を侵食してきた歴史と、 徐々に共産主義が暴走し大きな力を持ち人々の自由や生命を奪う恐ろしい力へと膨張す る変化、これらをビジターが生きた環境として体験する事が最大の課題と考えた。 ビジターが展示動線を進むにつれて、床を構成する白いパネルが、壁となり、天井と なってビジターを飲み込み、徐々に共産主義が暴走して大きな力を持ち、人々の自由や 生命を奪う恐ろしい力へと膨張する変化を空間深度として追体験する。内部の白いパネ ルは共産主義が作り出した均質に漂白された社会の状況として設定しており、そのパネ ルのスリットの下から滲み出る赤い光は、その状況を作り出した主体、つまり国家や政 府そしてヒトラーやレーニンを象徴する。 サンクトペテルブルグ(レニングラード)とベルリンを結ぶ直線は、エストニアの歴 史がソ連とナチス・ドイツによる共産主義による暴力の波のなかで続いてきた関係を示 す。パタレイに貫かれたこの軸は、このミュージアムが忘れてはいけない歴史を未来に 伝え続ける使命を担っていることを象徴し、国境を越えて発信する重要な環境軸であ る。 来館者が展示動線を進むにつれて、次第に白い床が立ち上がり、壁、天井となってビ ジターを飲み込んでいく、グラデーションとして徐々に変化する空間を設定している。 ビジターはこの空間の深度変化により、徐々に共産主義が暴走して大きな力を持ち、 人々の自由や生命を奪う恐ろしい力へと膨張する変化を追体験する。我々は徐々に変化 する社会体制や環境変化に無防備である、そして多くの人々はこの苦しい経験を記憶し
Contrary to the Patarei Old Prison embodying historical turmoil, without changing the space layout, historical appearance, internal finishing etc. of this architecture, the history that Communism eroded people's mind, and the change that Communism gradually developed out of control, turning into a huge force which deprived people of their lives and freedom, should be experienced as the environment where visitors live in, which I think would be the biggest challenge. As visitors move along the exhibition route, the white panels which constitute the floor become walls and ceilings, making visitors feel swallowed and review the change that Communism gradually developed out of control, turning into a huge force which deprived people of their lives and freedom from the aspect of space depth. The internal white panels are set to present the situation of homogeneously bleached society created by Communism, and the red light shining through the slits of the panels are the symbol of the country, government, Hitler and Lenin who created Communism. The straight line connecting St. Petersburg (Leningrad) and Berlin shows the continuous relationship between the Estonian history and the wave of violence by Communism of Nazi Germany and the Soviet Union. And this axis set throughout Patarei is an important environmental axis which represents the responsibility of the museum to continuously convey the history that should be remembered to the future and other countries. As going along the exhibition route, visitors can see the white floors rising up gradually converted into walls and ceilings, feeling swallowed by the space changing as gradation. And they can also review the change by the difference of space depth that Communism developed out of control little by little, turning into a huge force depriving people of their lives and freedom. We are defenseless when facing the gradually-changing social system and environmental change, and many of us remember this painful experience for a long time. However, I think it should be the mission of International Museum of the Crimes of Communism to force people not to forget about the history by reviewing the environment. Shuhei Endo Architect, Endo Shuhei Architect Institute | Professor, Kobe University エストニア共産主義犯罪博物館 国際コンペティション
The Red Terror Museum [RED EROSION] DESIGN COMPETITION 2018 : International Museum of the Crimes of Communism Estonian Institute of Historical Memory / Eesti Mälu Instituut 2018 http://mnemosyne.ee
ているが、この環境を追体験することで忘却させないことがこのエストニア共産主義犯
2018年11月1日発行
罪博物館の使命であると考えた。
遠藤秀平建築研究所 神戸大学遠藤秀平研究室 プロジェクト担当: 塚越 仁貴 谷 大蔵 松田 星斗 山本 修大 翻訳: 李 清揚 王 憶伊
建築家 / 神戸大学大学院教授 遠藤秀平 60
http://www.endolab-kobe.com/ 写真: Estonian Institute of Historical Memory 提供 (p.03-17, 53下) 塚越 仁貴 (p.48-59)
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エストニア共産主義犯罪博物館 国際コンペティション
The Red Terror Museum [RED EROSION] Endo Shuhei Architect Institute Kobe University Endo Laboratory 遠藤秀平建築研究所 神戸大学遠藤研究室