LiferaryNagasaki design story 長崎の未来をつくるデザインストーリー Nagasaki City Library x FUJITSU Design
Liferary Nagasaki とは... Liferary Nagasaki は、開館から5年を迎えた長崎市立図書館が、 これからの地域社会に求められるICT環境をデザインする富士通 デザイン株式会社と一緒に実施した、10年後の図書館を考える デザインプロジェクト(Liferary Design Project)から生まれた 「コミュニティビジョン」です。
長崎にデザインという未来へのヒントがやってきた design story 1 まずは、現状を把握しよう 人の生活とICT環境の変化、これからの図書館は? 長崎市立図書館のこれまでとこれからは?
design story 2 自分たちの姿を客観的に捉えてみよう 世界各地の地域図書館を比較しながら考えてみよう 長崎はどんな街?
一人の市民として考えてみる
見えてきた本当の自分たちの課題
design story 3 自分たちの未来へのストーリーを描こう 未来に進むためのビジョンをデザインしよう 目指すLiferaryを具体化するサービスをデザインしよう
design story 4 さあ、自分たちからはじめよう 実際にやってみよう 経験者のつぶやき
design story 5 新しい経験から見えてきた景色 経験から見えてきたこれまでとこれから
さあ、今から始めましょう
長崎にデザインという 未来へのヒントがやってきた 県内唯一の美術館として誕生した長崎県美術館が、広く新しい試 みを長崎に取り入れるために国内外の様々な事例を研究していた 時、人の創造性をキーワードにオリジナルデザインメソッドを開 発していた富士通デザインと出会いました。 2010年、子どもたちを対象に長崎で初めての共同主催によるデザ インワークショップが行われ、参加者は、デザインという新しい アプローチが何かこれまでとは違うものの見方を提示してくれる ように感じ、期待し始めました。
一方、長崎を訪れたデザイナーは、地方都市が抱える課題に対してデザインを通じて もっとできることがあるのではないかと考え始めました。 そして、2012年、長崎市立図書館を拠点にしたこのデザインプロジェクトが始動しました。
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「 まずは、現状を把握しよう」
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FUJITSU Design
人の生活とICT環境の変化、これからの図書館は? 新しい図書館の役割
これまでの図書館の役割
知識•情報の収集
知識•情報の活用
様々なジャンルの
多様な学び方、
書籍 (資料) の提供
情報活用のサポート
書籍の選定や管理を行う
情報の使い方を提案する
ICT
どこからでも知識や情報に アクセスできる メディア社会では?
情報化に伴う図書館の役割のシフト
長崎の未来に本当に図書館は必要? 長崎市立図書館は、PFI方式によりICTシステムを富士通が担う民営化図書館と して誕生しました。インターネットを使うと、誰でもどこからでも知識や情報 にアクセスできるメディア社会は、人々の生活スタイルを変え、学校や図書館 の使い方にも急速な変化をもたらしています。 しかし、図書館は単に情報化を進めるのではなく、その地域の生活に根付いた 市民のための所でなければなりません。ここ長崎における図書館はどうあるべ きか。ICT環境をデザインする富士通デザインのデザイナー達が、長崎の地域に 求められる図書館のあり方について投げかけるところからはじまりました。
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Nagasaki City Library
長崎市立図書館のこれまで、そしてこれから 2008年、官公庁やオフィスの集まる市の中心部に開館した長崎市立図書館は、市民の知識・情報拠 点として新しい流れを生みだしました。そして、立ち上げから5年、期待されたサービスを提供し ながら運営が安定してきた図書館は、次なる10年について考え始めました。 デザイナーからの投げかけをきっかけに一つ一つ対話しながら、漠然としか捉えていなかったこれ までの自分たちの姿、そしてこれからの10年について客観的に意識しはじめるようになりました。
〜5年
これから
客観的な図書館像
目指す図書館像
確実性•安定性 施設立ち上げと運営の安定化 民営化図書館のニーズに応える
+
独自性•革新性 市民と共に成長し続ける 図書館が少し先を見せる
これからの10年に向けた長崎市立図書館の方向性
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「自分たちの姿を客観的に捉えてみよう」
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世界各地の地域図書館を比較しながら考えてみよう 世界中の都市と図書館の関係を見てみると、実に様々な特性があることに気 づきます。図書館という公共施設は、市民が生活の中で自分のために利用 し、ある時間を過ごす場であるため、一つの形態に収束することなく、地域 の状況や人々の生活に合わせたローカルな特性(アイデンティティ)を持っ ています。 図書館の利用者である市民は、何のために、どのように図書館にある知識や 情報を活用しているのか。各国の図書館を比較しながら、地域が抱える課題 に対して、図書館がどのように市民の生活と結びついているのか、地域の文 脈を読み解きながら、これからの図書館のイメージを広げていきました。
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すべての市民が毎日通いたくなる場 人々をつなぐ地域のリビングルーム
多様な文化や生活の質を高める場
市民の知的交流を育む場
文化の森
地域のセカンドオフィス
市民の知的交流を育む場
世界の地域図書館にみられる特性
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長崎はどんな街?
1 人の市民として考えてみる
長崎に住む人たちは、何のために、どのように図書館を活用していきたいのか。まずは、自分たちが一市民として感 じていることを客観的に整理していきました。自分たちが長崎での生活をどう感じているのか「幸福度ミックス」と いうデザインメソッドを使ったワークショップを行い、4つの切り口から探っていきました。
social relationship
ワークライフバランスは? 子育てと仕事の両立は可能? 家庭や仕事以外で 過ごす場所は?
quality of life
地域との関わり
ライフスタイル
長崎への愛着は? 参加している地域活動は? 地域で仕事をする価値は?
長崎での生活には どのくらい 満足している? 長崎の資源は上手く 生活に活かされている? 日常での環境意識は?
sustainability 環境への意識
産業や開発と環境の
life long learning 生きるための学び
長崎で学んだ子ども達の誇りは? 長崎市民の職業観は? やりたいことや 学んだことを活かせる場は?
バランスは?
「幸福度ミックス」の4つの切り口
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見えてきた本当の自分たちの課題 長崎の生活について語り始めると、皆口を揃えて「長崎は住みやすい街、良い街」と言い始めました。歴史的、環 境的に恵まれた”ほど良い”生活は、長崎市民の「そこそこ満足」という幸福感をつくっていることがわかりまし た。しかし、現状を見ると、産業や雇用の縮小、高齢化と人口減少が進む典型的な地方都市の課題を抱えているこ とが見えてきます。さらに地域の施設や様々な取り組みは点在したまま、大きな流れや新しい動きにつながってい ない現状があります。長崎市民の多くを求めない控えめさは、過去に依存し進化できず「緩やかな衰退」を加速さ せる要因をつくっている事実も浮かび上がってきました。 このままでは衰退の一途をたどるばかり。この地域の課題に向き合い、現状を変えていくために、市民として成長 していかなければいけない自分たちの姿に気づきました。
“going down slowly... starting softly “ 緩やかな衰退から、穏やかな成長へ
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「 自分たちの未来へのストーリーを描こう」
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未来に進むためのビジョンをデザインしよう ライフスタイルから 図書館にできること
見えてきた課題 緩やかな衰退から 穏やかな成長へ
あるものを受け入れ なかなか進化できない
知識や情報を かけ合わせ活用する
i ビジョン
Liferary 家でも学校でも仕事でもない 新しいつながりが生まれる場 見えてきたビジョン
図書館は、市民1人ひとりが関わり、興味や考えを広げたり深めていける場所。さらに、家 や学校・職場ではない第三の場として、点在した地域の人やリソースがつなぐことができれ ば、新しい対話や交換の場と機会を生み出す拠点となります。図書館での活動は、個人の情報
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収集の枠を超え、様々な発想や知識をつなぎ広がっていく。長崎の未来を自分たちだけでつ くっていくことはできないけれど、図書館を拠点に、未来への可能性を広げていく、そんな 新しい図書館の方向性がみえてきました。
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“Liferary” 家や学校・仕事での関係を超えて 新しいつながりが生まれる 第三の場 Lib-rary (本のある場) から Life-rary (新しい生活の生まれる場) へ
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目指すLiferaryを具体化するサービスをデザインしよう 見えてきたLiferaryのビジョンを基点に、デザインシートを使いながらそのビジョンを具体化するLiferaryのコンセプト、 またそのコンセプトを実現するためのサービスイメージへと、順を追って具体的なサービスを描いていきました。
Vision & Identity
Concept
Project
目指すLiferaryの姿
Liferaryのコンセプト
実現したいテーマ
知らないことを知る
unique
経験や表現の幅を広げられる 学びの場や機会
multiple 新しいコミュニティに
Liferary
参加する
家でも学校でも仕事でもなく 第3のつながりを広げていける場や機会
新しい生活が 生まれる場
interactive
Liferaryのサービス
alternative
デザインシート
コミュニケーション
考えや思いを 人と交換したり広げていける活動
未知のテーマに出会う
まだ出会ったことのない 新しい発想や知恵を経験する場と機会
Service Image
Value
実現したいプロジェクトのイメージ
長崎に生まれる意味や価値
Learning skill Workshop / 子どもたちと街に出て疑問を解決するさるくWorkshop Intelligence society for All / シニア向け ICTを使った表現や情報発信Workshop Nagasaki Intelligence / 新しい長崎ライフスタイル発見Workshop : 食, 経済, 印刷... Intelligence keywords today / キーワードから探す新しい世界 : 今日のニュース
人の成長をつくる 情報を知るにとどまらず 人や地域のリソースが かけ合わさって さらに広がり深まっていく
Dialogue @ Liferary / 新しいライフスタイルをみつけるWorkshop : 自分, 長崎... Take Action @ Liferary / 次への一歩を踏み出すためのWorkshop : 起業, 表現... Exchange @ Liferary / 新しいつながりや交換をつくるNetCommunity
市民に求められる
Open-ended Library / 長崎公民館図書室ーアジア図書館 Network Program
新しい生活が生まれる場として 長崎市民にますます必要とされる 存在になっていく
Communication Design / Liferaryからの新しいコミュニケーション : Video, パンフ.. Touch Staff !!/ スタッフの個性を育てコミュニケーションを広げる活動 Talkful Liferary / Book Talkからはじまるコミュニケーション : 企業,学校,福祉施設.. Liferary Concierge / コンシェルジュとつくるプロジェクト : 専属(予約制) , 仕事体験...
長崎の未来につながる Media Literacy Workshop-global / 世界をテーマにしたMedia Literacy Workshop Media Literacy Workshop-glocal / 地域をテーマにしたMedia Literacy Workshop Communication Workshop / プレゼンテーションスキルを学ぶWorkshop
5-10年後の長崎への 期待につながり 元気な長崎をつくっていく
Community Cafe / 長崎の未来を考えるカフェ : 県庁移転, 斜面ライフ, 夜景, 世界遺産...
pick up >> Liferaryモデルサービス
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pick up >> Liferaryモデルサービス
Intelligence society for All コミュニケーションの可能性を広げよう
あなたは長崎の未来にどんなストーリーを伝えますか? PCの使い方を学びながら、未来に伝えたい長崎のストーリーをPCを使っ て表現し、色々な人に伝えていく体験ができるワークショップを企画
Exchange @ Liferary 新しい図書館で生まれる出会い
あなたは、長崎のどんな未来をつくっていますか? 長崎で行っている新しい活動や考えを知り、交換していくためのWEB コミュニケーション
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Communication Design 新しい図書館のイメージづくり
Liferaryってどんな場所? Liferaryがどんなふうに使える場所なのか、多くの人に知ってもらい 活用したいと思ってもらえるように、ビジョンやプロジェクトを紹介
Media Literacy Workshop メディアを使った新しい学びの体験
長崎にいる水族館のペンギンは幸せ? 正解のない問いに対して、図書館にある資料やインターネットを 使いながら、様々な情報を掛け合わせ、自分なりの解決策を考え ていくワークショップを企画、実施
>> モデルプログラムとして開発•実施へ
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「 さあ、自分たちからはじめよう」
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実際にやってみよう 図書館で新しいインテリジェンスの経験は生まれる? Liferaryのモデルプログラムの開発と実施
プログラムの概要 メディアリテラシーワークショップ 目的: メディアを使った新しい学びの体験 テーマ:長崎にいる水族館のペンギンは幸せ? ペンギンから考える これからの人と地球環境 日時: 2013年2月8日, 15日, 25日(全3回 各2時間) 場所: 長崎市立図書館 新興善メモリアルホール 概要: 水族館のペンギンを通じて、生き物と私たちの未来について考えていきました。決まった正解のない問題に 対して、図書館にある資料やインターネットを使いながら、 様々なメディア情報を読み解き、自分なりの 解決策を考え、考えを実現していくためのアイデアを人に伝えるワークショップを行いました。
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project member & partners ワークショップ企画・実施
子どもたちのアイデア発信・対話先
長崎ペンギン水族館
長崎市役所 長崎ペンギン水族館
ワークショップ 精道三川台小学校5年生 小値賀町役場
精道三川台小学校
ファシリテーター 長崎市立図書館
長崎市立図書館
富士通 長崎支社
富士通デザイン 東京本社 富士通デザイン株式会社
Liferary-Nagasakiのモデルプロジェクトとして、長崎らしさを特に意識しました。 テーマに関しては、地域のリソースである”長崎にいる水族館のペンギン”を切り口に、また、被験者を”長崎の 未来を担う子どもたち”に設定して、新しい学びのワークショッププログラムを考え始めました。 開発•実施においては、図書館を拠点に4つの機関がつながり、実施方法について様々な対話を重ねながら新し いプロジェクトを実現しました。さらに、ワークショップの最終段階においては、テーマに関連のある5つの 機関の参加協力を得て、子どもたちの考えを第3者である大人に直接発信し対話する機会を設けました。
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ワークショップの枠組み このワークショッププログラムは「自ら考え創り出していく力を育てる」富士通デザ インのオリジナルデザインメソッドをベースに組み立てられました。 図書館の司書がファシリテーターとなって、子ども達と対話を重ねながら、子どもた ちの知の探究をサポートしてきます。 タブレットなどを使った検索によって得られた情報に加え、図書館にあるさまざまな 情報を組み合わせながら、メディアから得られる情報を読み解き、そこから子どもた ち自身が大切にしたい思いを発見し、それを実現するアイデアを人に伝えるまで、全 3回のプログラムを通じて行われました。
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学びのプロセス
複数の情報から 自分の解釈をつくる
ISSUE
思いから解決策を創り出す VISION 思考を組み立てる
人に伝え 意見を交換する(共有)
COMMUNI-‐ CATION
学びのアセスメント 社会に求められる力(スキル)との 連動性をもったプログラム
21世紀を生き抜くために 求められるスキル
* Media Literacy とは 情報化が進む今日の社会では、 適切にメディアを活用
ーTools & Media Literacy* 道具や情報を適切に活用できる
していく力がますます必要とされています。Media Literacyとは、多様なメディアからの情報を批判的に
ーInteract & Communication
捉え、複合的な文脈の中で判断した上で、自らの考え
チームで考え解決できる
をもって実行や発信を行うためのスキルです。 ーAction & Responsibility 自ら行動し責任を持てる more info >> http://www.oecd.org/pisa/ http://www.eavi.eu
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経験者のつぶやき 見えない教室、自由な学び 精道三川台小学校の経験 精道三川台小学校
決まった正解がない
教頭
坂井 睦 / 担任
馬場 豊
普段の授業では良いか悪いかを探してしまう 子どもたちには、メディアを使ったことより、 普段とは 違う脳の使い方をしたことが印象に残っていたのが意外だった 正解の無い問いに対して、思考を自由に広げていくことに、始めはすごく戸惑いがあったと思う
「自由」の中で自分がどういうふうに考えてやったら良いのかということに挑戦した 一度体験したらもっと進みたいと思う
調べたり、考えただけで終わらず
今までの学びと違う自分がやりたいことをやる学び
その先を考えて人に伝えたり
やってみたいを継続していく
人がどう思っているのか知ることは初めての体験
今後の社会を担うのは子どもたち まずは子どもたちに門戸を開き 子どもたちと一緒に自分たちも成長していきたい 図書館が公共の場としてネットワークや環境を 提供してくれたら可能性が広がり変わっていくと思う 結論が出ないと言葉にして発言できない子ども 一人で行き詰まってしまっても チームで対話を進めていく経験が足りない
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精道三川台小学校5年生のみんな
外国の勉強と比べて 僕たちは自分たちであまりやろうとしないから もっと自分たちでやろうと思った
タブレットは良いと思うけど、
変な風に使ったらまた大変になりそう
新しい勉強の仕方がすごく楽しかった いつもの勉強とは違った脳の使い方をした 学校に比べて縛られる感覚がなかった
遊んでいる感覚で勉強できた 算数や国語と違って、決まった正解がなかった
自分で 調べていくのが楽しかった
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水族館が伝えたかったこと
長崎ペンギン水族館から 長崎ペンギン水族館 館長 楠田 幸雄 / 飼育展示課
なぜ水族館はあるの? 種の保存を進め生態系を維持していこう、 その役割を担っているのが動物園や水族館なんです。
田崎 智
プロジェクトについて 改めて自分たちの仕事の大切さを考える ことができた。このような機会が広がれば、 多くの人に自然環境への理解なども深まっていきます。 これからも、活動が広がっていくのを楽しみにしています。
ペンギンも 全世界の人間と共存できると 夢見ていると思う 子どもたちへのメッセージ 何を伝えているの? 水族館は、自然の豊かさを知ってもらうために、 生き物の息づかいなどを伝えていますよ。
これまでは人類が自分たちのこと だけを考えて発展してきましたが、 これからは地球全体のことを考えていかなければ
生物多様性とは、色々な生き物がいるだけではなく、
ならないと思うので、次の世代を担っていく子どもたちに
一匹一匹が他の生き物と関わり合いながら生きている
とても期待しています。
ということ。自分たち水族館だけで生き物を守ってい
今回はペンギンが入り口でしたが、これからは
くことができないから、みんなにも自然の大切さを 知ってもらい、その役割を担ってもらいたいと 思っています。
他の生き物のこと、地球環境のことを考えてもらえれば嬉しいです。
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「 新しい経験から見えてきた景色」
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経験から見えてきたこれまでとこれから Liferary
市民と共に成長し続けていく図書館として
私は、最初にこのお話を聴いた日、ものすごく頭が疲れました。普段考えていたようで考えていなかったことに気 づき、それから、館内でスタッフと話す時も、「この仕事は何のためにやっているのか」「先につながっているの か」など体系立てて考える良いきっかけになり、最近ではそれが当たり前に流れていくようになったと思います。 他の図書館の方々と話していても、課題や未来に向けて漠然とした話が多く、誰かがやれば良いのにというスタン スだったが、このプロジェクトを通じて、当たり前として受け止めていたことを疑い、思いだけではなく、10年後 のために具体的に何をやるのかなど、考えられるようになりました。 今後の図書館は、今のままではその必要性において衰退の一途をた どると思っていますが、この長崎市では、いかに市民の身近にあ り、市民の課題解決、市民のために何が出来るのかを考え、市民と 一緒に成長し続けていける図書館を目指したいと思っています。 そのために、待っているだけではなく、こんなことも出来る、あん なことも出来ると、可能性を示していく必要があるのではないかと 考えていますが、課題として、必要な情報を必要な人に届けられな い、どうしたら良いのか、自分たちがやっていることが利用者の ニーズに合っていないのではないかと、日々葛藤しています。
長崎市立図書館 下田 富美子
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10年後を考え、図書館で今始められること 図書館は位置づけとして何でも出来る立場にありますが、人員、予算の面でも限界があるので、あくまでも「間に入る」こ とを必要としている人と専門家を結びつけるなど、自分たちのサービスをインテリジェンスとしてどのように考えるかが重 要であると考えます。そのような認識を持ってサービスを行っているか、ただ求められたからコーディネートしたか、では 結果が違ってくると思います。 今後、図書館サービスが産業振興などへの貢献、産業や雇用などにつながっていくことが課題だと考えていますが、具体的 には地域において点で活動している人たちや活動を図書館がつないでいくことなど、出来ることがあるのではないかと考え ています。 長崎では、意識の中に、誰かがやってくれないか、行政がやってくれないかという意識があり、私たちも勝手に限界の線を 引いていたところがありました。「図書館なのに何故それをやるのか」と言われないようにしてきた傾向にあった気がしま すが、これからはその限界を自主的に超えていかなければならない。心の壁を壊していく必要があると考えています。
図書館を拠点に人が成長していく 今回のプロジェクトを通じて、スタッフの意識をどのように変えていくか 活性化していくかを考えていましたが、この経験を広げていきながら、自 分たちで枠を決めず、自分の名前で仕事ができる図書館員として進んで いってほしいと思います。お互いの強みを活かし、連携しながら、学び成 長していく仕組みをつくれれば良いと考えています。
市民が学び、街が元気になる このプロジェクトはもちろん続けていきたいと考えてい ますが、子どもたちだけではなく、高齢者やその他誰に でも提供できるサービスにつなげていきたいと思いま す。メディアを使って、ただ珍しいものを触って学ぶだ けではなく、自ら考える、責任を持って発信するなどの 訓練につながっていけば、学びを通じて街を元気にして いくことにつながるのではないかと思っています。
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富士通デザイン株式会社 ソフトウェア&サービス ソリューションデザイン事業部 部長
石塚 昭彦
イノベーションデザインについて
長崎の経験から
当初、長崎について、不思議な地域という印象をもちました。外国とのやりとりの中で、歴史的に 色々な文化が入ってきて、開放的だとイメージしていたのですが、土地の中でクローズしている気が して意外でした。また、長崎市立図書館は施設としては新しいですが、いわゆる地方の図書館として はスタンダードな印象を受けました。富士通としても、事務的な設備•システムを納めた上で、必要な メンテナンスを担当するという従来型のICT基礎環境サポートというモデルで関わっていましたが、今 回のプロジェクトを通じて、今後の関わり方に色々な可能性を感じました。全国の同様の施設におい ても、これからやれること、やるべきことがたくさんあるのではないかと考えるようになりました。
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コミュニティの課題にアプローチする共創のデザイン 今回の経験から、コミュニティの課題は、企業が抱えている課題とは根本的に異なることがわかりました。これま で、社会やコミュニティのイノベーションに関して、我々はなかなか手が付けられなかったし、なおざりにしてきた 部分がありましたが、今回コミュニティの課題にアプローチするためのきっかけをつかめたような気がしています。 また、今日の社会の変化に対して、人の成長、組織の成長が追いつかないでいるという現状があります。これは変化 のスピードが速いせいもありますが、本来学ぶべきものにたいして人間が新しい知識を吸収しきれないでいるのでは ないかと思っています。このようにビジネスを取り巻く環境が変わってきて、特に我々のようなインハウスのデザイ ナーは、環境の変化に対して自分たちのポテンシャルをどのように発揮していくかを考える必要があり、まず、率先 してデザイナーが変わらなければいけないと思っています。 このような状況に対して、我々は新しいサービスに対応した新しいデザインの役割を見出だし、必要とされるスキル を習得し、過去のデザインスキルを置き換える方法を考えてきました。コミュニティの課題に対しては「共創」とい うキーワードで色々な分野の人たちとワークショップを行っています。未だ見えていない課題に対して、お互いに知 らないところから、フラットな立場で一緒につくっていく(共創)デザインメソッドを研究してきました。
図書館から広がるコミュニティのイノベーション 地域の活性化、今回のような図書館の施設のイノベーション は 、 あ く ま で も 手 段 で あ り 、 ゴール は 地 域 再 生 、 コ ミ ュニ ティのイノベーションが我々の目指しているところです。 図書館から派生し、学校、水族館へ。水族館のコミュニケー ションが変わる、小学校の授業が変わる、そして、地域全体 が変わっていくこと、そのために人が変わることが重要だと 考えています。 我々企業が行うデザインのサービスとして、お客さんの思い か ら ビ ジョ ン を つ く り あ げ る こ と は 確 立 さ れつ つ あ り ま す が、ここから実際に富士通が提供するICTのサービスとして、 どのようにビジネスにつながり展開していくための道筋はこ れから考えていかなければいけないところです。
人が変わる、社会が変わる そして、ビジネスが変わる.....
the Future is now さあ、今からはじめましょう このプロジェクトは 図書館から生まれた Liferary Nagasaki の小さな第一歩です。 対象やテーマを変えれば 同じようにワークショップを実施できます。 みなさんは誰とどんな知恵をかけ合わせ、 どんなことをやっていますか? また、これから何をやっていきたいですか? どんな風に考えますか? ここには答えははありません、考えるのは私たち一人ひとりです。
長崎のペンギンは夢を見ていますか? 長崎の子どもたちは夢を見ていますか?
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LiferaryNagasaki design story Nagasaki City Library Nagasaki Penguin Aquarium Seido Mikawadai Primary School
FUJITSU Nagasaki Branch
FUJITSU Design Ltd.
MetaDesign Co.