2024年度 農学部 教員紹介

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A griculture is life

「食」を考え、「農」を学ぶことは、

「いのち」を支えることである

最新の科学技術を駆使した新しい「知」の発見

卒業研究を実施する研究室

● 植物線虫学研究室 ● 生命データ科学研究室 ● 化学生態学研究室  ● 微生物科学研究室 ● 植物遺伝学研究室 ● 植物ゲノム工学研究室

● 情報生物学研究室 ● 環境生理学研究室

● 多細胞動態研究室

学 位

進路例

農業関連企業・農業関連団体/

化学メーカー・医薬品メーカー/

食品・飲料メーカー/公務員/技術職 / 教員(中学・高校理科、高校農業)等 学位:学士(農学)

生命科学 科

基礎科学と応用科 地域 農耕 地球 「生命のしくみ」を学ぶ

食べ物の生産から流通までを理解した 管理栄養士の育成

卒業研究を実施する研究室

● 給食経営管理学研究室 ● 運動栄養学研究室 ● 健康行動科学研究室  ● 栄養教育学研究室 ● 小児保健栄養学研究室 ● データ数理研究室

● 応用微生物学研究室 ● 公衆栄養学研究室

● 食品素材利用学研究室 ● 食品化学研究室

● 病態栄養学研究室 ● 臨床栄養学研究室

● 食品生理学研究室 ● 応用生化学研究室

学 位

学位:学士(農学)

進路例

管理栄養士(公務員・病院・学校・保健所・福祉施設等)/

化学メーカー・医薬品メーカー/食品・飲料メーカー/

技術職 / 教員(栄養教諭)等

「栄養と健康のしくみ」を学ぶ

食品栄養学 科

自然科学と社会科 食の循環に着眼

1

環境に配慮した作物の栽培の理論と技術

学の相互補完教育 社 会 地 環 境 「農作物生産のしくみ」を学 ぶ

卒業研究を実施する研究室 ● 植物育種学研究室 ● 果樹園芸学研究室 ● 応用昆虫学研究室 ● 作物学研究室 ● 野菜園芸学研究室 ● 植物病理学研究室 ● 植物栄養学研究室 ● 花卉園芸学研究室 ● 応用線虫学研究室 ● 土壌学研究室 ● 収穫後生理学研究室 ● 雑草学研究室 “いのち” を支える根幹は「食」であり、今、その「食」の安定生産に地球規模で警鐘がならされています。気候変動が著しく、 最近では感染症の広がりも懸念されるなかで、持続的に「食」を生産・供給する方策を示すことが私たちには期待されています。 また、健康管理に「食」の機能は不可欠であり、その「食」を供給する農耕地の維持には、地域社会の理解が必要です。農学 部では、「食」の生産から消費に至る複雑な過程をそれぞれの専門分野で深く学び、さらに、それらを統合して食と農に関わ る多様な課題を解決できる人材を育みます。

進路例 農業関連企業・農業関連団体/ 化学メーカー・医薬品メーカ / 食品・飲料メーカー/公務員/技術職 / 教員(中学・高校理科、高校農業)等 学位:学士(農学) 学 位

理系と文系、両方あっておもしろい

卒業研究を実施する研究室 ● 食農ビジネス研究室 ● 日本の食文化研究室 ● 食文化・地域文化研究室 ● 農企業経営情報会計学研究室 ● フードビジネス研究室 ● 地域農業・環境経済学研究室 ● 食料・農業・環境経済学研究室 ● 食・農資源経済学研究室 ● 地域マネジメント・資源保全研究室 ● フードシステム学研究室

● 環境史・環境社会学研究室 「地域社会と経済のしくみ」を学ぶ

農業関連企業・農業関連団体/ 食品・飲料メーカー/スーパー・流通/ 商社/金融機関/公務員/教員(高校農業)等 学位:学士(農学)

進路例

学 位
食料農業 システム 学 科
農学科
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学の文理融合教育 した実践教育

生命科学科

Department of Life Sciences

「食」の基本となる農作物の生命のしくみを学ぶ。

本学科では、農業の基礎となる農作物の生育や変異の仕組み、すなわち、植物の生理現象や変異と進化、その 生育における外的要因の影響を総合的に理解するために、植物生理学や遺伝学をはじめとする、植物を中心とし た生命科学領域を学びます。また、実験・実習を通じて実際の植物の生理や遺伝現象の観察を行います。さらに、

講義と実験・実習で身につけた知識と技術を活用して、自ら学び研究する演習や卒業研究を行います。

研究分野マッピング

新しい品種を開発する

) 微生物の 機能解析と応用

永野 惇 教授 (情報生物学研究室) 野外における 遺伝子発現予測

小野木 章雄 (生命データ科学研究室) データに基づく 作物育種

農場 作物 細胞 染色体・オルガネラ DNA

植物の温度・ 光環境応答

准教授 (多細胞動態研究室) 視覚でとらえる 植物の免疫

作物の不思議を探る

(化学生態学研究室) 植物と昆虫の 相互作用

倫理科目担当:打本 弘祐 准教授

英語科目担当:垣口 由香 准教授 (真宗学研究室) (英文学研究室)

3

生命科学科

AQ.

.

学びのポイントは?

生命現象を科学的に理解できる。

植物や微生物、動物の生理や遺伝の原理を学ぶことができる。

最先端の科学技術を知ることができる。

新しい品種の開発について学ぶことができる。

CURRICULUM

農学科

緑:必修・履修必修科目 ※2024年度入学生(参考)

教養教育科目( 仏教の思想・英語・教養科目 )

農学概論

食と農の倫理

食の循環実習Ⅰ 食の循環実習Ⅱ

研究手法を学ぶ実習科目

●基礎化学実習

●基礎生物学実習

●生命科学実習A

●生命科学実習B

<食品科学・社会科学の基礎を学ぶ科目> 食の文化論、食と嗜好の科学、食品の安全と法律、身体のしくみと栄養、調理のサイエンス アジア アフリカの食料と農業、日本の歴史と農業、会社と農家のしくみ、事例に学ぶ食品マーケティング など 農業全般を知る科目

● 飢饉・救荒論

● 森林生態学

● 農業環境工学

● 身近な植物

専門性を高めるための講義科目

● 植物生理 生化学Ⅰ

● 遺伝学Ⅰ

● 虫と農業

● 作物学Ⅰ

● 畜産学概論

● 土壌学Ⅰ

● 雑草学Ⅰ

食品栄養学科

● 水産学概論

● 農業気象学

● 微生物学Ⅰ

● 植物病理学Ⅰ

● 昆虫学Ⅰ

基本的な生物学の科目 生物学と農学をつなげる科目

● 植物育種学

現場を知るための実習科目

● 農学部特別実習A B C

職業を意識する科目

● 大学の学びとキャリア

● 農学部特別講義

● 入門ゼミ

● 分子生物学

● 植物資源学Ⅰ

● 収穫後生理学

● 花き野菜園芸学Ⅰ

● 線虫学Ⅰ

● 農学部キャリア実習

● 海外農業体験実習A B A・B

● ゲノム情報学Ⅰ

● 分子育種学Ⅰ

● 農薬学

● 植物栄養学Ⅰ

● 生物統計学

● 果樹園芸学Ⅰ

● 微生物学Ⅱ

● 植物-微生物相互作用学

● 植物生理・生化学Ⅱ

● 遺伝学Ⅱ

食料農業システム学科

● 昆虫学Ⅱ

● ゲノム情報学Ⅱ

● 分子育種学Ⅱ

● ゲノム工学

● キャリア形成論

研究手法を学ぶ演習科目

● 基礎演習Ⅰ

※資格取得を目指す学生を対象に、TOEIC L&R IPテストの受験料をサポートしています。

● 基礎演習Ⅱ

● 総合演習Ⅰ

● 総合演習Ⅱ

● 総合演習Ⅲ

1 年生 2 年生 3 年生 4 年生 1セメスター 2セメスター 3セメスター 4セメスター 5セメスター 6セメスター 7セメスター 8セメスター
4

アサミズ エリカ

浅水 恵理香

教授

博士(生命科学)

■研究室名称

植物線虫学研究室

■学歴

筑波大・院・生物科学

■専門

植物保護科学

遺伝育種科学

寄生性線虫が植物をだますメカニズム

ネコブセンチュウは宿主となる植物の根に寄生し、コブを形成 して定着し、そこで産卵して一生を終えます。木本、草本を問わず あらゆる植物に感染でき、熱帯から寒帯まで広く分布することか ら、世界的に農作物に甚大な被害を与えています。農業の現場で 線虫を安全に制御する方法の確立が必要ですが、そのためには 線虫がどのように宿主植物の防御応答を抑え、感染に成功して いるのか、そのメカニズムを知ることが重要です。

ネコブセンチュウは植物をだます遺伝子セットをもっている  私たちは、国内各地の圃場で単離されたサツマイモネコブセ ンチュウ系統を多数維持しています。ネコブセンチュウの維持は とても手間がかかるため、貴重な研究資料といえます。これら系 統間のゲノム配列と、サツマイモ品種に対する感染能力の違い を関連付けて解析することにより、寄生に関連するいわば「植物 をだます遺伝子セット」を発見しました。

植物寄生性線虫が減る土壌をデザインする

シオジリ カオリ

塩尻 かおり

教授 博士(農学)

■研究室名称 化学生態学研究室

■学歴 京都大・院・農学

■専門 生態・環境、植物保護学、昆 虫科学

■その他 日本農学進歩賞、日本応用 動物昆虫学会奨励賞、日本 生態学会宮地賞、守田科学 奨励賞、京都大学ちばな賞

作物が生育する土壌中には細菌、真菌、線虫など様々な生物 が生息しています。この土壌生態系のバランスは、植物寄生性線 虫の密度に影響しうるものです。私たちは、作物の連作により変 化する土壌環境のデータを集め、植物寄生性線虫の土壌中密度 に影響を与える条件を探索しています。

多数のネコブ(根瘤)ができたトマト感染根 サツマイモ根に侵入するネコブセンチュウ

【可能な共同研究分野】土壌中の線虫DNA検出、線虫系統同定用DNAマーカーの作出など

植物と昆虫の匂いコミュニケーション

植物は動けない、声が出せない代わりに、匂いを巧みに操って 身を守ります。その一つに、植物は虫に食べられると、その虫をた べる天敵を呼び寄せて、その虫を撃退します。どのようにして、植 物は天敵を呼び寄せるのでしょう?それは、虫に食べられたとき に匂いを放出するのです。これは、天敵にとってもその匂いを手 掛かりにすることで、餌や寄主となる虫を容易に見つけることが できるのです。つまり、植物と天敵昆虫とが、匂いでコミュニケー ションしているのです。

植物同士のコミュニケーション

実は植物同士も匂いでコミュニケーションすることができま す。虫に食べられた植物が出す匂いを健全な植物が受容すると、 虫に対する防衛反応が引きおこります。そして虫からの被害を受 けにくくなります。つまり、植物たちはお互い、匂いによってコミュ ニケーションをとっているのです。

匂いをつかった害虫防除

植物が出す匂いを利用すれば、害虫の天敵を誘引したり、匂い で作物の害虫に対する抵抗性を高めたりすることができるでしょ う。私は、このような植物の匂いをつかって、農薬をできるだけ使 わない農業や、発展途上国で収穫量を増やす技術を開発するこ とができると考えています。

【可能な共同研究分野】作物の免疫力をたかめる技術開発など 植物と昆虫の匂いコミュニケーション

アオムシコマユバチ(寄生蜂)がモンシロチョウの幼虫に寄 生しているシーン。アオムシコマユバチは植物が虫に食べら れたときに出す匂いに誘引されてやってきます。

隣の植物からでた匂いを受容して、防衛を開始しはじめます。

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小さな生物の力を食品や有用物質の製造に役立てる

シマ ジュン

島 純

教授

博士(農学)

■研究室名称

微生物科学研究室

■学歴

東北大・院・農学

■専門

応用微生物学

また、生態系の中では、微生物は分解者に位置づけられま す。食品廃棄物等に含まれる有機物を分解するプロセスで も、微生物の力を有効に利用することで、化成品やバイオ燃 料などの有用物質を生産することができると考えています。

このような研究は、地球温暖化等の環境問題の解決に役立 ちします。このように、私は、微生物の力を上手に引き出して、 発酵食品製造の効率化と食品廃棄物等の利用の両面から、 人間や環境の役立つ研究をしたいと考えています。このよう な研究を介して、食の循環をより健全していくことが研究の 目標です。

【可能な共同研究分野】発酵食品の製造、食品廃棄物の有効利用など  微生物は肉眼では見えない微少な生物です。病原菌や食 中毒菌のように、わたしたちの健康に害を及ぼす微生物もい ますが、わたしたちの生活を支えてくれる微生物もいます。パ ン、ヨーグルト、お酒、味噌・醤油等は、微生物の力を活用して 製造される発酵食品です。わが国は発酵大国とも呼ばれるよ うに、伝統的に高度な発酵技術を育ててきました。これらの 発酵技術を研究して、発酵食品をより美味しくし、健康にも良 いものにしていきたいと思います。そのために、京滋地域に住 み着いている微生物を多数収集して、その能力を明らかにし ていきます。

トキ セイイチ

土岐 精一

教授

農学博士

■研究室名称

植物ゲノム工学研究室

■学歴

東北大・院・農学

■専門

植物ゲノム工学

■その他

日本植物細胞分子生物学会 学術賞受賞

パン作りを支えるパン酵母

デザイン通りの品種改良を目指して

食品栄養学科 食料農業システム学科

【可能な共同研究分野】新品種の開発、植物細胞を用いた物質生産など  今後世界人口が86億人に達し、また急速な地球温暖化によって作物の病虫害も増えることが予測されて います。したがって多収で高温耐性、病虫害にも強い作物を迅速に育成する必要があります。この点有用な 形質(形態や性質)を決めている遺伝子と変異部位が同定あるいは推察可能な場合は、狙って変異を導入で きれば、育種の効率とスピードは大幅にアップすると考えられます。これを可能にする技術がゲノム編集で す。今後比較ゲノム解析や、オミクス情報をAI等も駆使して解析することにより、有用形質を支配する遺伝子 の同定や設計も可能になると期待され、ゲノム編集を駆使した育種は盛んになると思われます。

当研究室では、植物におけるゲノムの修復や維持機構の理解に基づき、新規のゲノム編集技術の開発を行 うと共に、技術を活用して有用形質を付与した農作物の育成を行います。また、個々の遺伝子を改良するだ けでなく、ゲノム全体の遺伝子の構成を設計通りに改変することを目的に、減数分裂期の組換え部位を制 御する研究を行います。

生命科学科
農学科
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野外における生物の振る舞いを理解し、予測し、制御する

ナガノ アツシ

永野 惇

教授

博士(理学)

■研究室名称

情報生物学研究室

■学歴

京都大・院・理学

■専門

植物分子生物学、情報生物 学

■その他

著書:「Photobook 植物細 胞の知られざる世界」「ゲノ ムが拓く生態 学」など。平成 26年 科学技術分野の文部 科学大臣表彰 若手科学者 賞 受賞

生物が実際に生きている農地や自然生息地などの 実環境では、環境が非常に複雑に変動します。このよ うに複雑に変動する環境下での生物の応答は、その取 り扱いにくさからこれまで分子生物学では扱われてき ませんでした。しかしながら、生物の真の姿を知り、応 用するためには、実環境下での振る舞いの理解が不可 欠です。そこで我々は主に植物を材料に、実環境で何 が起こっているのかを理解し、予測し、制御することを 目指しています。そのために、独自に多検体化した網羅 的計測手法(主としてゲノミクス、トランスクリプトミク ス)、先端的の情報科学的手法、気象データとの統合 解析、3Dプリンタのようなパーソナルファブリケーショ ンなど、様々な技術を駆使して取り組んでいます。

もうひとつのテーマとして、驚異的なまでに多様な生 物の姿の解明に、我々の技術を役立てることがありま す。例えば、独自に開発したウイルスの網羅的検出手法を用いて、野生植物内の植物ウイルスの探索を行っ ています。これまでに、農作物に深刻な被害を与えるウイルスが、野生植物では病気を起こさず植物と共存 していることなどを明らかにしました。また、農作物はもちろん、野生植物や魚類、昆虫、真菌類(キノコ・カ ビ)にいたるまで、様々な分野の100人以上の専門家との共同研究を通じて、この脅威の多様性の解明に取 り組んでいます。

フルモト ツヨシ

古本 強

教授 博士(農学)

■研究室名称 環境生理学研究室

■学歴 京都大・院・農学

■専門 植物分子、生理科学

絶えず変化する太陽光に応答して光合成活性を調節する仕組み 【可能な共同研究分野】農作物などのゲノム解析、遺伝子発現解析、これらに関連するデータ解析など

光合成は高校生物の教科書には必ず記載されるほどよく理解 された研究分野です。一方で、わかっているつもりになっている だけで実は全く分かっていないこともあります。たとえば、光合 成には、「光」・「水」・「二酸化炭素」が必要ですが、これらはいつ も潤沢にあるわけではありません。雨が降らなければ、水不足に なり、乾燥しすぎれば気孔を閉じるので二酸化炭素不足になり ます。太陽光は、雲などの影響でランダムに変動します。こうした 環境変動に対して、植物は「耐える」能力(適応する能力)を発達 させています。

私は、これらの環境変動のなかでも、雲の影響について研究し ています。とくに、光の要求性が異なるC3植物とC4植物(右上 図)の光合成の特徴を比較しながら、実験を進めています。C4光合成は、高校 の生物では「発展」で触れる程度でしょうが、ひどい被害を出す世界の雑草ベ スト10のうちのトップ8つまでがこのC4光合成を行うなど、農業上問題になる 性質です。C4植物では、弱い光から強い光に変化すると、60秒以内に光量に応 じた光合成活性を示します。この「わずか60秒の間に適切に代謝を調節するメ カニズム」について、ほとんどわかっていません。この急に変わる光量に対して 植物がどのように応答しようとしているのかを調べるなかで、スイッチのように 働く新しいタンパク質をみつけました。このタンパク質が壊れていると、適切な 活性にまで活性を上昇させられないことがわかりました(右下図)。

今は、このスイッチタンパク質の作動する機構を調べています。

【可能な共同研究分野】タンパク質相互作用、代謝調節、光合成活性測定など

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ウチモト コウユウ

打本 弘祐

准教授

文学修士、社会学博士

■研究室名称

真宗学研究室

■学歴

龍谷大学・院・文学、

桃山学院大学・院・社会学

■専門

仏教学(親鸞思想)、 社会学

■その他

浄土真宗本願寺派布教使、

認定臨床宗教師、スピリチュ アルケア師(指導)

滋賀県「死生懇話会」委員

オノギ アキオ

小野木 章雄

准教授

農学博士

■研究室名称

病院や施設で活動する宗教者の実像

生命データ科学研究室

■学歴

東京大・院・農学

■専門

遺伝育種科学、統計科学

■その他

農林水産省民間部門農林

水産研究開発功績者、農林

水産技術会議会長賞民間

企業部門受賞

【可能な共同研究分野】医療や高齢者施設における宗教者の役割、スタッフのケアなど  私は“病院や高齢者施設で僧侶として働いてきた”という日本で は珍しい経歴を持っていますが、多くの方に「えっ!そんな仕事があ るの?」と驚かれます。実は欧米では僧侶は勿論、牧師などの宗教 者が、病院・高齢者施設・刑務所・議会・軍隊、最近は世界的な食肉 会社でも働いています。彼らはチャプレンと呼ばれ、布教を目的と せず、患者やその家族およびスタッフの「こころのケア」を担当して います。私の研究の一つは、米国における浄土真宗僧侶のチャプレ ンの歴史に光を当てることです。

もう一つは国内の病院で活動する宗教者の研究です。日本では 1990年代後半からホスピス・緩和ケアを中心に、患者のQuality of Life向上のため、チーム医療の一員として宗教者の参加が求められ ています。東日本大震災以降、東北大学や龍谷大学などが臨床宗 教師(日本版チャプレン)の養成を開始。認定を受けた宗教者が医 療・福祉施設で活躍するようになりました。このような病院におけ る宗教者の活動を調査した成果を『宗教者は病院で何をしている のか―非信者へのケアの諸相』(編著)として刊行しています。今後 も、病院を中心に老病死に苦しむ患者とその家族、時にはスタッフ や遺族も支える宗教者像を様々な角度から解明し、社会に発信し ていきたいと考えています。

高齢者施設内で読経を行う僧侶

生命科学科

データから知恵を引き出す

【可能な共同研究分野】育種・農業を中心とした生命データ解析など  農業は様々な要因が複雑に関連し合うシステムであり、その 理解は容易ではありません。作物や家畜など生命そのものが複 雑なシステムである上に、それらが管理や飼養方法、さらに土壌 や気象などの環境要因と作用し合うからです。この複雑なシス テムを理解するための第一歩は対象を観察し記録することであ り、今日まで膨大な記録、つまりデータが得られています。また 昨今は観測機器も高性能化し、得られるデータも詳細かつ多量 になっています。このような膨大なデータから農業や生命に関す る知恵を引き出すためには、データを数学的・統計学的に解析 する手法が必須であり、そのような技術を扱う科学分野、データ 科学が農業においても非常に重要となっています。このような 課題意識のもと、これまでゲノムと気象データからイネの開花を 予測する数学的モデルや、肉牛の発育データから発育の遺伝的 パターンを抽出するモデルの開発など、データから知恵を引き 出すための研究を行ってきました。今後はより大規模かつ多様 なデータ解析に取り組み、農業の効率化や生命現象の解明に役 立てていきたいと思っています。

食品栄養学科

数学的モデルの例:肉牛の発育パターンを解析するための 4層からなる階層的ベイズモデル

データ解析のアイデアをプログラミングにより具現化する: 数学的モデルを実装したC++ソースコード

農学科
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カキグチ ユカ

垣口

由香

准教授

博士(文学)

■研究室名称

英文学研究室

■学歴

大阪大・院・文学

■専門

英米・英語圏文学

アングロ・アイリッシュの「場所」

アングロ・アイリッシュとは?

アングロ・アイリッシュとはアイルランドに移住したイギリス 系移民の子孫のことを言います。彼らはアイルランドにおいて少 数派であるにもかかわらず、長年にわたって政治的・経済的に優 位な特権階級でした。また、信仰するキリスト教の教派も生粋の アイリッシュとは異なり、この違いがたびたび大きな衝突を引き 起こしました。そのため、アングロ・アイリッシュのアイデンティ ティ形成は複雑で困難なものとなり、彼らはどこか根無し草的 で、常に行/生き場のない感覚を持っています。そんなアングロ・ アイリッシュを代表する20世紀の作家、サミュエル・ベケットと エリザベス・ボウエンの「場所」について研究しています。

20世紀という時代

どこにも行/生き場のない感覚、場所に上手く適合できない 感覚は、20世紀の時代感覚でもありました。過去に例を見ない 科学技術の発展により世界は小さくなり、人の場所との関わり方 は大きく変わります。また、20世紀は戦争の時代でもあり、二度 の世界大戦は西欧世界が築き上げてきた文明への信頼を打ち 砕き、人間の生きている場所を粉々に破壊しました。文字通り、 人は行/生き場をなくしたのです。「場所」の意味を問い直すこと で、20世紀、さらにはその結果としての現在とはどういう時代な のかを考えています。

ダブリン東部の丘から望む風景

ベツヤク シゲユキ

別役 重之

准教授 Doktor der Naturwissenschaften (Dr. rer. nat.)

■研究室名称 多細胞動態研究室

■学歴 Universität zu Köln, Mathematisch-Naturwissenschaftliche Fakultät(ドイ ツ)

■専門 植物保護科学、植物分子・ 生理科学、植物免疫学、微 生物生態学

■その他 2020年度PCP論文賞

視覚でとらえる植物の免疫

植物も動物と同じように病原体に感染して病気になったり、免疫で 防いだりします。農作物でもある植物の免疫のしくみを理解すること はとても重要です。そんな植物免疫に関して世界中で研究が行われ、 免疫に必要なパーツ(遺伝子や化合物)のカタログが出来つつありま す。しかし、それらパーツが感染組織のどこで機能しているのかはほと んど解っていませんでした。

細胞応答の「視える化」 パーツが組織のどこで必要かを知る一番簡単な方法は目で“ 視る” ことです。免疫が起きている様子を可視化することで、病原体に感染 した植物組織の各細胞が役割分担をしていることが解ってきました。 まるで虫刺されの炎症のように、感染の中心では強い免疫、その外側 では弱い免疫、というように、各細胞が同心円状に違う応答をしてい るのです。このような“パターン”を作る源は一体何なのか?その仕組み を知 ることで植物の免疫の全貌を明らかにしようとしています。 植物と微生物の相互作用を丸ごと視る

植物細胞だけでなく、微生物も集団で植物に感染します。微生 物の方も細胞ごとに役割分担していて、そんな微生物の感染の仕 組みも“視る”ことで理解しようとしています。病気を防ぐだけでな く、植物の役に立つ微生物の利用に繋げることも目指しています。

【可能な共同研究分野】植物免疫の可視化・定量、植物ー微生物相互作用の可視化による理解など 植物だって病気になるし、免疫もある

強い免疫が起きた細胞の核を緑色で、葉の葉緑体を紫色で 可視化した葉。黒く抜けている部分が細菌感染により自殺し た植物細胞の跡で、その周囲の数細胞のみでリング状に強 い免疫が起きている様子がわかる。

植物表面に付着した病原細菌(緑色)。紫は葉緑体を示す。

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タケナカ ショウタロウ

竹中 祥太朗

講師

博士(農学)

■研究室名称

植物遺伝学研究室

■学歴

京都大・院・農学

■専門

遺伝育種科学

変わりものコムギを品種改良に利用する

本龍谷大学農学部のある滋賀県でもコムギ畑を見かけます が、そこで栽培されているコムギは全て近代品種です。近代品種 とは、20世紀後半以降の育種(品種改良)によって作り出された品 種のことです。世界中で栽培されている大部分のコムギも近代品 種です。近代品種は多収で病気にも強いですが、限られた共通の 祖先品種の交配に由来することが多く、遺伝的な多様性が低い です。一方、近代品種ができる前から栽培されていた品種を在来 品種と呼びます。在来品種は多様なコムギの中から、各栽培地の 気候・風土・文化に適合するものが長い歴史の中で選ばれて成立 しました。そのため、在来品種は遺伝的に多様性で、近代品種に はない形質を持った変わりものがたくさんあります(右上図の多 様なコムギの穂を見てください)。各栽培地に適応して進化してき た在来品種の多くは、近代品種の普及に従い急速に失われてい ます。私はコムギの遺伝的な多様性を評価し、遺伝資源としての 利用について研究しています。在来品種はたんなる変わりもので はなく、重要な遺伝資源なのです。現在、地球環境の変化にとも なう干害・塩害・湿害などで耕作不良地域が増大しています。私 は様々な遺伝資源から近代品種がもっていない遺伝子を導入す ることで、厳しい環境下でも栽培可能なコムギの育成に取り組ん でいきたいと考えています。

【可能な共同研究分野】植物の品種改良など

生命科学科

多様な形態のコムギの穂(このコムギはパンコムギではなく パスタの原料になる4倍体コムギのもの、右から3本目の穂 は野生コムギの穂) コムギを栽培中の温室。全ての穂に袋をかぶせ他の系統の 花粉がかからないようにしている。

食品栄養学科

食料農業システム学科

農学科
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農学科

Department of Agricultural Sciencses

「食」の基本となる、農作物を育てる技術を学ぶ。

本学科では、「食の安全・安心」を支える農作物の生産、すなわち品種育成や作物多様性、土壌などの栽培環境 の保全、農薬や科学肥料などが環境に与える影響などを実証的かつ総合的に理解するために、育種学や作物学 をはじめとする、農業に直結する自然科学領域を中心に学びます。また、実験・実習を通じて実際の植物の育成や 栽培を行います。さらに、講義と実験・実習で身につけた知識と技術を活用して、自ら学び研究する演習や卒業研 究を行います。

研究分野マッピング

ウェンダコーン S.K. 講師

(収穫後生理学研究室) 果実の香気と品質向上

滝澤 理仁 准教授 (野菜園芸学研究室) 単為結果の謎に迫る

分子・細胞

収量や品質を上げる

平山 喜彦 講師 (植物病理学研究室) 植物保護・防除技術

神戸 敏成 教授 (花卉園芸学研究室)

組織培養技術による品種改良

三柴 啓一郎 教授 (植物育種学研究室) バイオテクノロジーによる育種

岩堀 英晶 教授 (応用線虫学研究室) 植物保護・ 線虫対策

柴 卓也 准教授 (応用昆虫学研究室) 植物保護学

尾形 凡生 教授 (果樹園芸学研究室) 果樹作物の 生産効率

三浦 励一 准教授 (雑草学研究室) 雑草と農業活動

玉井 鉄宗 准教授 (植物栄養学研究室) 植物栄養学と仏教

環境に優しい農業

森泉 美穂子 教授 (土壌学研究室) 土壌成分・分析と改良

農場

大門 弘幸 教授 (作物学研究室) 持続的作付体系

教職課程担当:多賀 優 教授 英語科目担当:吉村 征洋 准教授

(理科教育学・地質学研究室) (英文学・英語教育)

作物
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生命科学科

学びのポイントは?

科学に基づく実践的な農業技術を学ぶことができる。

農作物が最大限に生産力を発揮できる環境をつくることができる。

持続可能な農業を支えるバランス感覚を養うことができる。

農業、環境、健康などの広い視野で農学を学ぶことができる。

CURRICULUM

教養教育科目(

農学概論 食と農の倫理

農学科

緑:必修・履修必修科目 ※2024年度入学生(参考)

仏教の思想・英語・教養科目 )

食の循環実習Ⅰ 食の循環実習Ⅱ

専門性を高めるための講義科目

作物栽培と利用に関する科目

● 作物学Ⅰ

● 植物生理・生化学Ⅰ

● 花き野菜園芸学Ⅰ

● 発酵醸造学Ⅰ

● 収穫後生理学

病害虫・雑草防除に関する科目

● 虫と農業

● 線虫学Ⅰ

● 植物病理学Ⅰ

品種改良に関する科目

● 植物育種学

● 遺伝学Ⅰ

農業全般を知る科目 ● 飢饉・救荒論 ● 森林生態学

● 農業環境工学 ● 身近な植物

農業関連諸科学の基礎を学ぶ科目

● 植物資源学Ⅰ

● 土壌学Ⅰ

● 植物栄養学Ⅰ

● 果樹園芸学Ⅰ

● 農薬学

● 雑草学Ⅰ

● 分子育種学Ⅰ

● 生物統計学

● 畜産学概論

● 植物栄養学Ⅱ

● 果樹園芸学Ⅱ

● 雑草学Ⅱ

● 植物病理学Ⅱ

● 分子育種学Ⅱ

● 植物資源学Ⅱ

● 作物学Ⅱ

● 土壌学Ⅱ

● 花き野菜園芸学Ⅱ

● 応用昆虫学

● 線虫学Ⅱ

● 水産学概論

● 農業気象学

食の文化論、食と嗜好の科学、食品の安全と法律、身体のしくみと栄養、調理のサイエンス アジア・アフリカの食料と農業、日本の歴史と農業、会社と農家のしくみ、事例に学ぶ食品マーケティング など

研究手法を学ぶ実習科目

● 基礎化学実習

● 基礎生物学実習

● 入門ゼミ

職業を意識する科目

● 大学の学びとキャリア

現場を知るための実習科目

● 農学部特別実習A B C

● 農学部特別講義

食品栄養学科

食料農業システム学科

● 農場実習

●農学専門実験

研究方法を学ぶ演習科目

● 基礎演習Ⅰ

● キャリア形成論

● 基礎演習Ⅱ ● 総合演習Ⅰ ● 総合演習Ⅱ ● 総合演習Ⅲ

● ● 海外農業体験実習A B

農学部キャリア実習 A B

※資格取得を目指す学生を対象に、土壌医検定や農業技術検定、TOEIC L&R IPテストの受験料をサポートしています。 ※指定科目を修得し、卒業後、日本緑化センターの認定を受けることで、樹木医補の資格を取得することができます。

Q . A .
1 年生 2 年生 3 年生 4 年生 1セメスター 2セメスター 3セメスター 4セメスター 5セメスター 6セメスター 7セメスター 8セメスター
12
線虫とは? -農業との関わりと生き物としての面白さ

イワホリ ヒデアキ

岩堀 英晶

教授

博士(農学)

■研究室名称

応用線虫学研究室

■学歴

京都大・院・農学

■専門

植物保護科学、生物多様性・ 分類

一方で、線虫はきわめて多様で、地球上の様々な環境に適応し て生きています。実は私たちにとても身近な生き物で、その多く は人間に害をもたらさない存在です。その形態や寄生や生残戦 略、土壌環境における役わりについて学びます。また、人間にとっ て有用な線虫や、モデル生物としての線虫について学びます。

線虫はとても小さい生き物ですが、そんな小さな体に神経や消 化管や生殖腺、そしてはるか祖先から受け継がれてきたDNAが 収められています。線虫の種類ごとにその生きざまは異なり、知 れば知るほど興味が尽きません。小さな線虫の体には大きな不 思議とロマンがいっぱい詰まっているのです。

【可能な共同研究分野】線虫抵抗性育種作物や線虫増殖抑制素材の選抜など  農業において線虫は一般に悪者(有害線虫)として知られ、多 くの作物を加害し、栄養分を横取りすることによって減収させた り枯らしたりするなど、様々な被害を及ぼします。私は土壌中の 有害線虫、特に植物寄生性線虫による被害や加害様態、および 防除法を中心に研究しています。どのような種類の線虫がどの 作物を加害するのか、そしてその防除対策にはどんな方法があ るのかを調査しています。近年はウリ科やナス科野菜の線虫抵 抗性素材の探索、また、日本の植物防疫上注意すべき国内未発 生有害線虫の簡易検出・同定技術法の研究、およびこれらの データベースの構築を行っています。

オガタ ツネオ

尾形 凡生

教授 博士(農学)

■研究室名称 果樹園芸学研究室

■学歴 京都大・院・農学

■専門 果樹園芸学

線虫(体長は0.4mmほど)

線虫の被害を受けたニンジン

植物生理に基づく果樹の栽培技術開発

試行錯誤の科学である実践的技術開発のおもしろさだと思い ます。

【可能な共同研究分野】果樹の栽培に関わること全般など  種子のない果物は、食べやすいですから消費者に好まれます。 私の研究テーマのひとつは、種なし果実をいかにして成らせるか です。これは言うほど簡単なことではなくて、果実を無種子にす ること自体は容易にできますが(簡単です。花に袋を掛けて受粉 させなければよい。)、母樹が果実中に種子が入っていないことに 気づくと、育てても養水分の無駄ですから、幼果のうちにそうい う果実を切り捨ててしまうのです。こういうのを生理落果と言い ます。母樹に種子が入っていないことに気づかせない、あるいは、 種子はちゃんと育っていますよと母樹をだまして生理落果させな い。こうしたことを可能にする方法が見つかれば、種なし果実が 手に入ります。自然界で発生した変異によって無核果実を成らせ る果樹もそこそこあるので、無種子なのに生理落果が起きないメ カニズムを調べて応用をはかったりもします。写真は、種子の多 い柑橘であるブンタンでの無核化に成功したときのものです。弱 いX線でダメージを与えた花粉を受粉すると、種子が退化して種 なしになります。但し、母樹が途中で種子がいないことに気づくら しく、果実の太りが悪くなるのです。まだまだ乗り越えるべき壁は 多い。次こそは!

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ゴウド トシナリ

神戸 敏成

教授

博士(農学)

■研究室名称

花卉園芸学研究室

■学歴

千葉大・院・園芸学

■専門

園芸科学、植物資源学

■その他

日本植物園協会植物多様性

保全委員会副委員長。平成 30年度日本植物園協会木村 賞受賞。

貴重な植物を守り、花で私たちの生活を豊かにする!

中学生の頃、学校へ行く道の脇の畑に当時は珍しかった赤い 花が咲くヒマワリを見つけました。種を蒔いてみると発芽したヒ マワリの胚軸の色には黄緑色のものと赤褐色のものがあること に気づきました。やがて胚軸が黄緑色のヒマワリには黄色い花が 咲き、胚軸が赤褐色のひまわりには赤い花が咲きました。これが、 私が植物の研究の道に進むことになったきっかけです。

美しい花や花の香りは私たちに憩いの空間を与え、生活を豊か にしてくれます。花卉園芸学研究室では、植物組織培養技術など を利用して貴重な植物の増殖・保存や主に観賞用植物を対象とし て新しい植物を作り出す研究を行なっています。その一つがセン ノウというナデシコ科の植物です。中国から600年以上前に渡っ てきたと考えられている植物で、日本に現存するセンノウは全て 三倍体という染色体が二対から三対に増えている特殊な植物で あることを明らかにしました。この三倍体センノウの起源の解明 と育種への利用に関する研究に長年取り組んでいます。ほかにも 国の天然記念物に指定されている「荒川のカンヒザク」や絶滅の 危機に瀕しているラン科植物の増殖・保存、ユリ、チューリップ、ク リスマスローズなどの花卉園芸植物の新品種育成にも取り組ん でいます。

盛夏に鮮やかな花が咲く三倍体センノウ

絶滅危惧植物サルメンエビネの種子発芽

【可能な共同研究分野】植物組織培養技術を用いた新品種の育成・増殖など

ダイモン ヒロユキ

大門 弘幸

教授

農学博士

■研究室名称 作物学研究室

■学歴

大阪府立大・院・農学

■専門 作物生産科学

■その他

第51回日本作物学会賞 第52回根研究学会学術功労 賞

マメ科作物を利用して環境に優しい農業にアプローチする

【可能な共同研究分野】環境調和型作物生産技術の開発など  地球温暖化、干ばつ、洪水、塩類集積など様々な環境ストレス の増大により、今、世界では食糧の安定供給が厳しい状況になっ ています。私たちはそれに対して何ができるでしょうか。私は環境 への負荷を抑えて、化石エネルギーの投入量を少なくした持続的 な作物生産体系の確立を目指し、その基盤となる様々な植物の 特性を明らかにし、それを実際の農業に利用するといった視点で 研究に取り組んでいます。例えば、アズキやラッカセイといったマ メ科植物と根粒菌の共生窒素固定の研究もその一つです。熱 帯、亜熱帯地域の粗放的な農業におけるマメ科作物の栽培は、こ れらの地域における農業生産の根幹をなし、一方、日本をはじめ とする集約的な農業においても、省資源、環境保全の側面から、 マメ科作物の効率的な導入を検討する必要があります。そのた めに、レンゲやクローバのような肥料となる「緑肥」作物の研究 や、穀類とマメ類をともに栽培する「混作」や「輪作」の研究など を進めています。農作物は1個体で育っているのではなく、必ず集 団として育っていますから、実際の畑での作物のパフォーマンス を個体群としても評価しなければなりません。一方で、個体群の 特性を詳らかにするためには、その元となる個体や器官や組織や 細胞のこともより詳しく知らなければなりません。つねにフィール ドと実験室の両方で植物の特性を解析しています。

食品栄養学科

食料農業システム学科

生命科学科 農学科
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子供の理科や自然についての理解の変化

タガ マサル

多賀 優

教授

博士(学校教育学)

■研究室名称

理科教育学・地質学研究室

■学歴

兵庫教育大・院・学校教育学

■専門

教科教育学、理科教育学、岩 石・鉱物・鉱床学

ウランガラス製のレンズの写真 ウランガラス製レンズに光を通した写真 【可能な共同研究分野】理科の授業法の開発、教材の開発など  初等・中等教育における理科の授業における生徒の科学的概念の獲 得や変化について興味があり、研究を行っています。まず一つ目は、理科 の授業に伴う児童生徒の理解の変化の研究です。これは学校での理科 の授業を行ったときの科学的概念の変容を明らかにするもので、様々な 理科の授業などでコンセプトマップ法等を用いて概念の変容を調べ、生 徒の科学的な理解の深まり方を明らかにしています。二つ目ですが、コン セプトマップ等をツールとして用いた指導法の研究も行っています。例え ば、理解の進んだ生徒のコンセプトマップをツールとして用いた授業で、 実験群と統制群に分けて検証すると、生徒の理解を進めるために有効な ツールであることがわかります。このような描いた人が心理的に身近であ ると、より効果的であることを利用したツールを開発しました。また、理科 の授業での誤概念をなくすためにコンセプトマップを用いた授業方法の 開発を行うなど、コンセプトマップを ツールとして活用する授業法を研究して います。これ以外に理科の授業用の 様々な教材開発も行っており、例えば現 在は、紫色レーザー光励起の蛍光を用い て、ウランガラス製のレンズ内外を通る 光の道筋を蛍光だけで示す教材を作っ ています。

ミシバ ケイイチロウ

三柴 啓一郎

教授 博士(農学)

■研究室名称 植物育種学研究室

■学歴 千葉大・院・園芸学

■専門 遺伝育種科学、応用分子細 胞生物学、園芸科学

バイオテクノロジーを品種開発に役立てる

生物の持つ性質を、私たちの生活に役立てる技術を「バイオテ クノロジー」と呼んでいますが、この言葉が生まれる前のはるか昔 から人類は身の回りの生物を利用し、改良してきました。20世紀 半ばより生物に対する理解が飛躍的に進み、一般的な「バイオテ クノロジー」のイメージに近い、遺伝子組換えなどの様々な技術 が開発されました。私は、遺伝子組換えやゲノム編集、組織培養な どのバイオテクノロジーを活用して、植物が持つ、私たちの生活に 役立つ可能性のある働きについての研究を行っています。そして、 得られた研究成果を応用することにより、新しい働きを持つ品種 の開発につなげることを目指しています。

様々な植物で遺伝子組換えやゲノム編集技術を活用する  シロイヌナズナやタバコなどの実験植物では、比較的容易に遺 伝子組換えやゲノム編集植物を作り出すことが出来ますが、多く の植物種では今でも技術的に難しく、組織培養技術が必要にな ります。私はこれまでにラベンダーやコチョウラン、シンビジウ ム、リンドウ、レタス、ナスなどの様々な園芸植物で遺伝子組換え 技術の開発を行ってきた経験を生かして、遺伝子組換えや組織 培養が困難な植物種での技術開発を行っています。

【可能な共同研究分野】遺伝子組換え植物やゲノム編集植物の開発、フローサイトメトリーによる植物の核DNA量測定など 昔からあるバイオテクノロジー

サトウキビ培養細胞からの植物体再分化

アントシアニン色素を蓄積する遺伝子組換えタバコ

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モリイズミ ミホコ

森泉 美穂子

教授

博士(理学)

■研究室名称

土壌学研究室

■学歴

北海道大・院・理学

■専門

土壌学・地球科学

「地力」とは何だろうか?

土壌分析と地力の解明

日本では古来より堆肥・下肥を土に投入し、「地力」を育み作物 を栽培してきました。では、「地力」とは何でしょうか?作物は土壌 から主として無機態の窒素を吸収し成長します。その窒素は、化 学肥料に含まれている無機態窒素だけではなく、土壌に含まれ ている有機物や堆肥から徐々に分解生成する無機態窒素にも由 来しています。この土壌から供給される窒素を「地力窒素」と言い ます。土壌を分析して、地力窒素の発現量を知り、肥料や堆肥の 投入量を調整することは、作物栽培に大変重要です。一方、「どの ような物質が地力窒素なのか?」という問いに対しては、未だに 明確な答えが得られていません。土壌有機物の解明は、安定した 作物生産を支えるためにとても大切です。

肥料を科学的に理解しよう

肥料の持つ有効性を科学的に理解し、栽培に役立てる方法を 考えることも重要です。例えば、稲はケイ素(Si)を必要とする作物 ですが、ケイ素を籾殻などに溜め込む性質があります。そのため、 お米を収穫後、籾殻などを水田に返すことで、翌年以降の稲の成 長を助けることができますが、籾殻をそのまま稲に与えるよりも 焼いた籾殻を与えた方が稲のケイ素吸収が促進され、収量を増 加させることができます。

【可能な共同研究分野】土壌診断、肥料の評価など

シバ タクヤ

柴 卓也

准教授

博士(農学)

■研究室名称 応用昆虫学研究室

■学歴

宇都宮大・院・農学

■専門

植物保護学

■その他

2011年度日本草地学会研究 奨励賞

生命科学科

堆肥の土壌埋設試験 (白い遮根シートの中に堆肥が入っている)

アモルファスSiと有機物が含まれる 400℃加熱籾殻が最も肥料的価値が高い

焼成籾殻灰の色(加熱温度)

農作物を加害する害虫にどう対応するか?

食品栄養学科

食料農業システム学科

【可能な共同研究分野】水稲病害虫の発生時期や発生リスクの予測技術開発など  作物や野菜、果樹を栽培する場合、病害虫対策は避けては通れません。病害虫対策は、農薬の使用、被害 がでにくい品種の利用、天敵の利用、圃場管理など様々な方法を組み合わせて行いますが、そのためには、 防除対象の生理・生態・行動、生活環、被害の発生様式などを正しく理解することが重要です。例えば、イネ 縞葉枯病は、小型の昆虫であるヒメトビウンカが媒介するウイルスが原因となる、水稲にとって深刻な病害 です。そのためヒメトビウンカの防除はもちろん重要ですが、この病害の蔓延はヒメトビウンカや病原ウイル スの有無だけでなく、周辺環境や土地の利用状況、農作物の栽培体系、気象などが時計の歯車のように複 雑に噛み合って起こっています。この仕組みを詳細に解明していくと、蔓延の要因となる歯車の一つを少し 変化させるだけでも被害を大幅に軽減できることに気が付きます。私は、カメムシ類などの害虫やイネ縞葉 枯病のような昆虫媒介性の病害を対象に、野外調査と室内実験、データサイエンスの手法を組み合わせ、そ のリスク予測や防除技術を包括的に研究しています。こうした研究を通じて、病害虫防除の新たな戦略を見 いだし、未来の農業における病害虫対策の方向性を変える可能性を追求し、持続可能な農業の発展に一役 買えればと考えています。

農学科
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タキサワ リヒト

滝澤 理仁

准教授

博士(農学)

■研究室名称 野菜園芸学研究室

■学歴

京都大・院・農学

■専門

生物系、農学、生産環境農 学、園芸科学

受粉しなくても果実を形成する単為結果の謎に迫る

果実の着果と肥大は受粉と受精により誘導されます。そのた め、温室内で安定的に果実を生産するためには、受粉効率を高め るために訪花昆虫を利用したり、人の手で果実の肥大を促進す る植物ホルモンを処理したりする必要があります。しかしいずれ も、コストや労力が必要となり、生産者にとって大きな負担となり ます。このような着果処理にかかるコストや労力を削減する方法 として、単為結果性の利用が挙げられます。単為結果性は受粉・ 受精無しに果実が着果・肥大する性質で、野菜ではキュウリ、ナス そしてトマトで単為結果性品種が開発され、着果処理の効率化を 進めるための有用なツールとして注目されています。

トマトは果実研究におけるモデル植物であり、最も単為結果性 に関する研究が進んでいる植物です。しかし、それでもその誘導 機構には未解明な部分が多く、その全容は明らかとなっていませ ん。また、単為結果性遺伝子の導入は果実品質に悪影響を与える ことがあり、それがトマトの単為結果性品種の普及を妨げていま す。私はトマトの単為結果性遺伝子の同定やそのメカニズムの解 明により、不良形質を伴わない単為結果性トマトの育成に取り組 んでいきたいと考えています。

単為結果性トマト品種の栽培風景

単為結果果実の初期肥大

【可能な共同研究分野】野菜の品種育成など

持続可能な農業の実現を目指して

タマイ テッシュウ

玉井 鉄宗

准教授 博士(農学)

■研究室名称 植物栄養学研究室

■学歴 神戸大・院・自然科学 ■専門 土壌・植物栄養学

■その他 浄土真宗本願寺派教師(光 遍寺住職)

【可能な共同研究分野】植物培養液、農業資材の商品開発など  「農は国の本なり」。これは大谷光瑞(1876-1948)の言葉 です。国民を養う農業こそが国にとって最も重要であるとい う意味です。日本の食料自給率が38%(令和3年度カロリー ベース)であり、かつ、化学肥料自給率が実質0%であること を考えると、この言葉は未来への警鐘と言えるでしょう。私 は、古来の知恵や先進技術を現代農業に応用し、持続可能 な農業を実現することを目的に研究を行っています。これは 同時に、「農を国の本」にすることにもつながります。

古来の知恵の応用に関しては、「姉川クラゲ」や「水草堆 肥」など忘れ去られた地域資源を復活させる研究、「立体農 法」や「条抜き溝切り栽培」などの古い農法を再評価する研 究を行っています。また、先進技術の応用に関しては、「遺伝 子解析」や「リモートセンシング」、「プラズマを利用した窒 素固定」など、積極的に最新の技術を農業に取り入れること に取り組んでいます。農学の枠に留まらず、他分野の研究者 や企業、行政とも協働して研究を進めています。

姉川クラゲ(イシクラゲ)

プラズマ処理水の窒素肥料として効果 左:窒素を含まない培養液 右:プラズマ処理水を用いた培養液

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ミウラ レイイチ

三浦 励一

准教授

博士(農学)

■研究室名称

雑草学研究室

■学歴

京都大・院・農学

■専門

植物保護科学、生態・環境、

農業技術史、文化人類学・ 民俗学

ヨシムラ マサヒロ

吉村 征洋

准教授

博士(文学)

■研究室名称

英文学・英語教育研究室

■学歴

関西大・院・文学

■専門

ヨ ロッパ文学、外国語教育

雑草と農業の多様な関わり

生命科学科

【可能な共同研究分野】日本および海外における雑草(種子を含む)の同定など  「雑草」というと何かアカデミックでない言葉のようなイメージがあるかもしれませんが、ここでいう雑草と は田畑などに生えて農業生産の妨げとなるさまざまな植物をさす、れっきとした学術用語です(「日本雑草学 会」という学会もあります!)。農業とは作物の成長を助ける行為ですが、それは裏からみれば、作物以外の 植物(=雑草)を取り除く行為でもあります。もし草取りをまったくしなかったら・・・いや、それはちょっと違 います。草取りの手をわずかでもゆるめたら・・・田畑がどうなってしまうか、少しでも農業の経験のある者な らば思い知らされているでしょう。手作業での草取りや除草剤の使用といった直接的な手段のほかにも、農 法(ファーミングシステム)の中では、雑草の勢力を弱めるさまざまな工夫がこらされているものです。そう いった視点から、農業技術を理解したい。そのためには、作物と雑草の双方の性質を生態学的・遺伝学的に 調べるばかりでなく、地域固有の農法を観察するためにアジア・アフリカの奥地にも出かけるし、現地の植 物図鑑も、古文や漢文で書かれた古い書物も読みあさります。私にとっての農学は、理系も文系もない、総合 格闘技です。

牛に除草具をひかせる、インドの伝統的な除草作業 イネの苗と、イネに擬態した雑草(タイヌビエ)を混ぜてみました。3本ずつですが、わかりますか?

変形したシェイクスピア作品と協同学習について

食品栄養学科

形を変えたシェイクスピア作品

シェイクスピアは舞台で上演するための劇作品を数多く執筆 しました。はじめは16世紀イングランドの劇場で作品が上演さ れていましたが、およそ450年以上経った今でも、イギリスをは じめ世界中の劇場(もちろん日本でも)で上演されています。

シェイクスピア作品は舞台で上演されるだけにとどまりません。

映画、ドラマ、絵本、漫画など、劇作品から様々な媒体へと形を 変えて、21世紀においても、その輝きを失うことなく私たちを魅 了しています。劇作品から変容しても、なぜシェイクスピア作品 の魅力は色褪せないのかについて研究しています。

協同学習とは?

私にはもう一つ研究していることがあります。それは英語教 育研究です。その中でも特に関心があるのが協同学習です。ペ ア・グループワークを取り入れた学習者主体の授業が近年増加 していますが、現実的には学習者全員が授業において、主体的 でアクティブにペア・グループワークを行えるわけではありませ ん。学習者の中には、ペアやグループでの活動が嫌いな人・苦手 な人(逆に好きな人・得意な人)もいるはずです。こうした学習 者の多様性を踏まえながら、授業でペア・グループワークを効 果的に実施するにはどうすれば良いのかを研究しています。

食料農業システム学科

【可能な共同研究分野】シェイクスピアのアダプテーション、協同学習

アトランタにあるシェイクスピア劇場 ダブリンにあるトリニティ・カレッジ図書館
農学科
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ウェンダコーン S.K.

Wendakoon S.K.

講師

博士(学術)

■研究室名称

収穫後生理学研究室

■学歴

大阪府立大・院・農学生命科

■専門

収穫後生理学

青果物の香気生成機構と品質向上

園芸作物である野菜・果物は収穫後も生きています。青果物(野菜・果物)の生き物としての生理的特性 を考え、収穫後、貯蔵・流通における品質(香気生成、抗酸化機構、褐変など)向上に関する研究を行ってい ます。主に、果実の香気生成に関する研究を行っています。野菜の主な香りは、アルデヒドや硫黄化合物な どですが果物の香りの多くはエステルという香気成分です。エステルは細胞内で酸とアルコールを基質と しアルコールアシルトランスフェラーゼ(AAT)という酵素によって触媒されて生成されます。今までは、低 酸素におけるバナナ果実のエステル生成について研究し、酸素の低い状態では、エステルの酸残基の供 給が阻害されること、短期間の低酸素下ではAATが影響を受けないことを明らかにしてきました。現在は、 青果物によって香気生成が阻害されている場合もあり、その原因を調べています。また、野菜の栽培管理 と収穫後の品質変動についても研究を行っています。このように、収穫した野菜・果物の品質向上を目的と した研究を進めています。

【可能な共同研究分野】果実の香気生成機構の解明、青果物の品質向上技術など

ヒラヤマ ヨシヒコ

平山 喜彦

講師 博士(応用生命科学) ■研究室名称 植物病理学研究室

■学歴 大阪府立大・院・農学 ■専門 植物病理学、植物保護科学

■その他 技術士(農学)、植物医師

植物の病気を防いで農業生産に貢献する

【可能な共同研究分野】病原菌の検出技術、防除技術の開発など  私たち人間と同じように植物も病気になります。ウイルス、細 菌、糸状菌などの伝染性の病気によって世界の農作物の1割以上 が減収していると言われています。人口増加による食糧不足が 懸念される中、その膨大な損失をいかに抑えるかがとても重要 になります。私は、農業生産上で問題となる病気を対象に、その 原因となる病原菌が農作物にどのように被害を与えているかを 解明し、その病気を制御するための防除技術の開発に取り組ん でいます。例えば、イチゴの苗を枯らす炭疽(たんそ)病菌は、潜 伏感染して被害を拡大させます。そこで炭疽病菌を早期に検出 する遺伝子検査技術の開発や、感染拡大の要因解明のために伝 染源の調査を行っています。その他イチゴやトマトで発生する殺 菌剤耐性菌のモニタリング調査、キク病害の温湯消毒技術の開 発などです。つまり私たちが病院へ行き、治療を受け、健康でい られるのと同じように、農作物を病気から守り農業生産に貢献 することを目的としています。近年は、地球温暖化などの異常気 象や輸入農産物の増加よって病気の種類や発生様相が変化し、 また環境への影響に配慮した持続的な農業を可能にする技術 が強く求められています。そのような時代の変化にも対応して植 物病理研究から生産現場を支えていきたいと考えています。

雑草から分離されるイチゴ炭疽病菌のコロニー 耐性菌が問題となっているイチゴ灰色かび病

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食品栄養学科

Department of Food Science and Human Nutrition

「食」の栄養と人の健康を学ぶ。

生命科学科

本学科では、人の健康を支える上で必要不可欠な「食と栄養」について学びます。また、人々の健全な食生活を サポートする管理栄養士の養成課程でもあることから、基礎栄養学をはじめ、生理学、生化学、食品化学などの専 門基礎科目、さらに、応用栄養学、栄養教育論、臨床栄養学、公衆栄養学、給食経営管理論などの実践的専門科目 を学びます。実験科目を通じて食と栄養の仕組みや食品加工の実際を観察・体験し、学内外での実習を通じて食 に携わる人材としての資質を形成します。最終学年ではそれまでに身につけた知識と技術を活用して、自ら学び研 究する演習や卒業研究を行います。

研究分野マッピング

桝田 哲哉 教授 (食品化学研究室) 嗜好成分構造

生活の質を上げる

石原 健吾 教授 (運動栄養学研究室)

運動・動物モデル・ヒト

農学科

鈴木 太朗 講師 (データ数理研究室) データ栄養学

山﨑 正幸 教授 (応用生化学研究室) タンパク質の構造・UFB水

田邊 公一 教授 (応用微生物学研究室) 微生物・酵母

宮本 賢一 教授 (病態栄養学研究室) 老化と栄養

山崎 英恵 教授 (食品生理学研究室) 気分・嗜好

西澤 果穂 講師 (食品素材利用学研究室) 食品素材

上田 由喜子 教授 (健康行動科学研究室) 行動変容

食品栄養学科

分子 細胞 食 ヒト

岡﨑 史子 准教授 (栄養教育学研究室) アレルギー食育

病気の予防・治療へ

朝見 祐也 教授 (給食経営管理学研究室) 給食・美味特性

中村 富予 教授 (公衆栄養学研究室)

食料農業システム学科

生活習慣病 ガン予防

矢野 真友美 講師 (臨床栄養学研究室) 栄養評価

楠 隆 教授 (小児保健栄養学研究室) 小児保健・アレルギー

20

Q .

A.学びのポイントは?

「農」を理解した管理栄養士をめざすことができる。

「食」の栄養と人の健康に関する正しい知識・技術を修得することができる。

地域社会、福祉・医療現場での実践をとおして学びを体験する。

地元の料理人と協力し、地域の食や伝統的な味わいについて学ぶことができる。

CURRICULUM

教養教育科目( 仏教の思想・英語・教養科目 )

有機化学

農学概論

食と農の倫理

分析化学

食の循環実習Ⅰ

食の循環実習Ⅱ

<「食」を生み出す「農」について学ぶ科目> 食と嗜好の科学、虫と農業、花と果物の科学、分子からみた生命、事例に学ぶ食品マーケティング など

管理栄養士に 必要な

専門基礎科目

「社会および環境と健康」を学ぶ科目

● 健康管理概論

「からだの科学」を学ぶ科目

● 生化学

● 解剖生理学

● 分子栄養学

「食べ物と健康」を学ぶ科目

● 調理学

● 調理学実習Ⅰ

● 食品化学

● 調理学実習Ⅱ

● 公衆衛生学Ⅰ

● 栄養疫学

● 臨床医学概論

● 解剖生理学実験

● 食品学

● 食品学実験Ⅰ

● 食品学実験Ⅱ

● 公衆衛生学Ⅱ

● 生化学実験

● 臨床病態学

● 栄養生理学実験

「食の安全」を学ぶ科目

● 微生物学

● 微生物学実験

管理栄養士としての土台づくりのための科目

● 食品衛生学

● 食品衛生学実験

● 基礎栄養学

● 基礎栄養学実習

● 応用栄養学

管理栄養士の仕事の実践を学ぶ科目

● 給食経営管理論Ⅰ

● 栄養教育論Ⅰ

● 臨床栄養学Ⅰ

● 給食経営管理論Ⅱ

● 給食経営管理実習Ⅰ

● 応用栄養学実習

● ライフステージ栄養学

● 運動生理学

● 栄養教育論Ⅱ

● 栄養教育論実習

● 臨床栄養学Ⅱ

● 臨床栄養学実習Ⅰ

● 公衆栄養学

● 給食経営管理実習Ⅱ

● 管理栄養士基礎演習

● 食品機能・加工論

● 食品加工学実習

職業を意識する科目

● 大学の学びとキャリア

現場を知るための実習科目

● 農学部特別実習A B C

● 農学部特別講義

● 入門ゼミ

● キャリア形成論

● 農学部キャリア実習 A・B

● 海外農業体験実習A B

● スポーツ栄養学

● 栄養評価論

● 栄養カウンセリング論

● 臨床栄養実践論

● 臨床栄養学Ⅲ ● 臨床栄養学実習Ⅱ ● 公衆栄養学実習 ● 公衆栄養活動論 ● 臨床栄養管理学 研究手法を学ぶ演習科目

● 臨地実習指導 ● 給食経営管理実習(校外)

● 臨地実習Ⅰ (給食経営管理論)

管理栄養士の働く現場で学ぶ科目 ● 管理栄養士 総合演習 ● 特別臨地実習Ⅰ (給食経営管理論)

● 臨地実習Ⅱ (公衆栄養学)

● 臨地実習Ⅲ (臨床栄養学)

栄養教諭の仕事・実践を学ぶ科目

● 学校栄養指導論

● 学校栄養実践論

● 総合演習Ⅰ

● 栄養教育実習指導Ⅰ

● 栄養教育実習指導Ⅱ

● 総合演習Ⅱ

● 科学英語

● 特別臨地実習Ⅱ (公衆栄養学)

● 特別臨地実習Ⅲ (臨床栄養学)

● 総合演習Ⅲ

緑:必修・履修必修科目 ※2024年度入学生(参考) ※資格取得を目指す学生を対象に、TOEIC L&R IPテストの受験料をサポートしています。
1 年生 2 年生 3 年生 4 年生 1セメスター 2セメスター 3セメスター 4セメスター 5セメスター 6セメスター 7セメスター 8セメスター
21

アサミ ユウヤ

朝見 祐也

教授

博士(栄養学)

■研究室名称

給食経営管理学研究室

■学歴

神戸学院大・院・栄養学

■専門

給食経営管理論、調理科学

■その他 管理栄養士、日本給食経営

管理学会理事・総務部長

給食施設の美味で安全・安心な食事提供のために

イシハラ ケンゴ

石原 健吾

教授

・給食施設における新しい生産(調理)システムの開発の試み  (人手不足でも対応できる給食施設の生産(調理)システムの開発) ・美味な食事提供を可能とするクックチルシステムの開発

(美味な食事提供を可能とするために、クックチルシステムの欠点を  検討する研究)

・ATPふき取り検査法を用いた給食施設・設備の清掃法・洗浄法の開発  (簡便な衛生検査法であるATPふき取り検査法を活用した給食施設・  設備の清掃法・洗浄法の開発)

・給食施設の「簡便な加熱温度管理手法」の開発の試み  (給食施設で簡単に活用できる新たな「食品の加熱温度管理のマニュ  アル」の作成の試み)

・穀類伝統食品の美味特性の解析

【可能な共同研究分野】給食施設における生産管理・衛生管理・栄養管理、種々の食品の美味特性の物性論的解析など  給食施設で提供される食事は、『適切な栄養管理』が行われていて、 『衛生面で安全・安心』で、さらに『おいしい』という高い品質が求められる と思います。またその食事は、『高い生産性』も求められます。喫食者の求 める高品質な食事の提供の実現のためにはどうすればいいのかという点 に焦点を当てて研究を行っています。具体的には次のようなテーマで研 究を行ってきています。

ATPふき取り検査で使用する測定器 (キッコーマンバイオケミファ製)

(蕎麦や黍などの穀類伝統食品の美味特性の物性論的(テクスチャー  特性・破断特性など)な解析)

食品の食感を測定する物性測定器(山電製)

博士(農学)

■研究室名称

運動栄養学研究室

■学歴

京都大・院・農学

■専門

応用健康科学

■その他

日本栄養・食糧学会奨励賞、

日本体力医学会東海支部地

方会研究奨励賞

「ゆりかごから墓場まで」のスポーツ栄養学

食品栄養学科

「スポーツ栄養学」を一般人の健康増進、競技者のパフォーマンス向上という両面から研究しています。

① 自転車やトレイルランニング(山岳マラソン)などエンデュランス系のスポーツは、大量のエネルギーを消 費するため、栄養素の必要性が増加します。しかし多くの場合、長時間運動中の栄養素の摂取量は、消費量 に満たないことを明らかにしてきました。

1)必要量に満たない補給は、競技中にエネルギー切れを起こすリスクがあります。24時間を超えるような競 技中の連続血糖値変化を測定し、どのようなタイミングで低血糖が起きているのか明らかにし、その予防法 について研究しています。

2)競技中にストレスなく摂取できる補給飲量、 補給食として、新規な化学構造をもつデキストリ ンや、流動性の高い固形物の有用性について研 究しています。

3)運動時の食欲の増進/低下に興味を持ってい ます。また、これまでに見出した食欲増進作用を もつ食品成分を応用して、競技中の食欲低下や 食べ過ぎ防止に利用することを研究しています。

②中強度の全身運動には、心肺機能向上や適度 な筋力の増加など、有酸素運動と無酸素運動の 両方の健康増進効果があります。時間のない中 で、健康増進やトレーニングを効率よく行うため の運動方法について研究しています。

【可能な共同研究分野】スポーツ栄養学、運動生理学、健康科学、栄養学など

生命科学科
農学科
食料農業システム学科
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ウエダ ユキコ

上田 由喜子

教授

栄養学

■研究室名称

健康行動科学研究室

■学歴

徳島大・院・栄養学

■専門

生活科学、健康・スポーツ科

■その他

管理栄養士

クスノキ タカシ

楠 隆

教授 医学博士

■研究室名称 小児保健栄養学研究室

■学歴

京都大・院・医学

■専門

小児科学、アレルギー、疫 学・予防医学

■その他 医師(日本小児科学会専門 医・指導医、日本アレルギー 学会認定専門医・指導医) 日本小児アレルギー学会理 事・代議員、日本小児保健協 会代議員、日本アレルギー 学会功労会員

錯覚とからくりによって健康になれるでしょうか?

高血圧は脳卒中や心臓病につながりやすく、高血圧の予防や治療 には減塩が必要です。ですが、ただ食塩の量を減らすだけの減塩で は、おいしさの低減につながってしまいます。どのようにしたら、おい しさを損なわず減塩できるのでしょうか?この舌の上にある未来細 胞は数十個の味細胞(細長い細胞)と基底細胞(味細胞の下にある 細胞)から構成されています。なお、GABAは神経伝達物質であり、食 塩→クロライドイオン→GABAの関与というスキームが成り立ちま す。もし、食品成分によりGABAが合成されるなら味神経を刺激し塩 味を強める(あるいは塩味のような錯覚を起こす)可能性が考えられ ています。料理に応用することでおいしい減塩食品が期待できます。

強制することなく健康的な行動へと促すからくり

人は必ずしも合理的な選択・行動を行うものではなく、直感的な 判断や決定に基づいて行動すると考えられています。ナッジ (Nudge)とは、誘惑に耐えるあるいは選択の禁止ではなく、より良 い判断や行動を促す仕掛け作りのことです。健康的な行動をそれ となく促し、無意識のうちに健康的な行動を選択できる環境を作っ たり、意図的に健康的な行動を促すことも可能です。錯覚や仕掛け による人の行動の研究は、暮らしているだけで健康になる環境づく りへと繋がるでしょう。

食を通じて次世代を担う子どもの健全な発育を目指す 【可能な共同研究分野】おいしさを保つ減塩食品の開発、行動変容を可能にする食環境、除脂肪体重改善プログラムの開発、食育の学習研究など おいしさを損なわない減塩食品

今、日本では乳幼児から高齢者まで国民の2~3人に1人が何らかのアレルギー疾患を有しているとされ、大き な社会問題となっています。アレルギー疾患は新生児から乳児期早期にかけての湿疹、食物アレルギーに始ま り、その後年齢とともに気管支喘息、アレルギー性鼻・結膜炎、花粉症などの症状が順に起こってくるとされて おり(いわゆるアレルギーマーチ)、その進展を食い止めるためには小児期早期からの予防的介入の必要性が 強調されています。

アレルギー疾患の予防や適切な管理のためには、必要最小限の除去食指導や栄養管理、アレルギー予防の ための食事指導など食習慣への介入が重要です。また、アレルギー児の日常生活をトータルに管理するために は、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師など多職種によるチーム医療が重要です。そのためには、健全な食生活 をサポートする管理栄養士の育成が重要です。本研究室では、特に私の専門であるアレルギー疾患に対して 「食と栄養」を通じて適切な管理や予防を目指した研究と人材の養成に努めていきたいと考えています。また、 大規模な一般小児集団を対象とした横断的、縦断的な疫学研究を通じて、アレルギーだけではなく様々な生 活習慣病の予防戦略を構築し、次世代を担う子どもたちの健全な発育・発達に貢献したいと考えています。

小中学生の水泳クラブ活動歴と鼻炎・花粉症有症率の関連

近江八幡市の小中学生4000人以上のデータをもとに、水泳クラブの活動歴と鼻炎、花粉症 の有症率の関連を検討。水泳活動歴が長いほど、有症率が高くなる有意の傾向性を示した。 Kawabata A et al. Pediatr Int 2024 (in press)

【可能な共同研究分野】小児の疫学調査、食物アレルギー、食育など

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酵母を用いた膜タンパク質の研究

微生物は敵か味方か

微生物は、乳酸発酵やアルコール発酵など、人の暮らしに役立つ一方 で、食中毒や感染症など、人間に危害を及ぼす側面も持ちます。私たち が安全で豊かな食生活を送るためには、微生物の性質を十分に理解し てうまく付き合っていくことが必要です。私は、特殊な環境中での微生 物の振る舞いに興味を持ち、以下のような研究をしています。

タナベ コウイチ

田邊 公一

教授

博士(農学)

■研究室名称 応用微生物学研究室

■学歴 京都大・院・農学

■専門

細菌学(含真菌学)

■その他 平成23年 真菌症フォーラム

第12回学術集会奨励賞 受

賞。平成23年 第60回日本感

染症学会東日本地方会奨励

賞 受賞。平成25年 日本医真

菌学会奨励賞 受賞。

耐性菌が出現する仕組み

微生物を殺す薬(抗菌薬)は、感染症の治療のために用いられます が、突然変異によって薬が効かなくなった耐性菌が出現することがあり ます。これまでの研究で、最終的な強い耐性菌が出現するまでに少しだ け薬が効きにくい、いわば「お試し版」のような菌が出現することがわ かってきました。現在、「お試し版」と「最終版」の突然変異の場所を詳 細に解析しています。微生物は、段階的に性質を変化させながら、環境 変化に適応しているのかもしれません。

ぬか床の絶妙さ

ぬか漬けのぬか床には複数種類の微生物が含まれており、人間が手 で定期的にかき混ぜるだけで有用な微生物の数が一定に保たれていま す。混ぜない、野菜を漬けない、ヘラで混ぜるなど、まずは色々と条件を 変えてみて微生物数がどのように変化するのかを調べています。

【可能な共同研究分野】酵母を使った医薬品開発、漬物の商品開発など

ナカムラ トミヨ

中村

富予

教授

博士(保健学)

■研究室名称

公衆栄養学研究室

■学歴

大阪大・院・保健学

■専門

食生活学

■その他

管理栄養士

生命科学科

生活習慣病・癌を予防する食生活

食品栄養学科

私は、ずっと大腸がんを予防する食事と運動について研究して きました。便秘は大腸がんの重要な原因であるとされていました が、最近、これを否定する研究がありました。では、便秘をそのま まにしておいたほうがよいかというとそうではありません。便秘 を放っておくとお腹の不快感だけでなく、様々な症状を引き起こ します。また、高齢者の方では、食欲不振から低栄養をきたしま す。たかが便秘、されど便秘です。

野菜は種類により効能はさまざまです。私は今、便通をよくす るには、野菜をどのような組み合わせでとれば効果があるのか を研究しています。また、野菜の健康への効果を数値で示したい と考えています。龍谷大学農学部が立地する、滋賀県にはおいし い近江野菜があります。近江野菜を使ったおいしくて体に良いレ シピ開発にも取り組みたいと考えています。

【可能な共同研究分野】生活習慣病・癌を予防する食生活など  便秘なので、食物繊維の多いものをいっぱい食べたけれど も、かえって便秘がひどくなった! という経験はありませんか? 食物繊維は、大きく「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2 つに分けられます。これらのとり方により、便通も変わってきま す。しかし、どの野菜、どの組み合わせでとると便秘に効果があ るのかについて、詳しく調べた研究はありません。

野菜類を1日 350g以上食べましょう!

食料農業システム学科

農学科
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マスダ テツヤ

桝田 哲哉

教授

博士(農学)

■研究室名称

食品化学研究室

■学歴

京都大・院・農学

■専門

食品科学、構造生物化学

■その他

日本食品科学工学会・奨励

賞、第一種放射線取扱主任 者

構造(形)から味の本質に迫る

① 食品の味や匂いを構成する呈味物質や嗜好成分に着目し、その受容機構の解明や、味や匂いの相互作用の解明を 食品化学、細胞生物学、構造生物学、計算科学の手法を用いて解析しています。タンパク質は一般的に味がしま せんが、例外的に強い甘味を呈する「甘味タンパク質」があります。このタンパク質性甘味料を更に甘くする取り組 みや、より多くの食品に活用するために、加熱処理に対して安定化させる手法を確立するための研究を行っていま す。また、食品の不快な味や匂いを低減させる新規な食品素材として改良を進め、応用利用を目指しています。 ② 食品の品質や化学変化に伴う呈味性変化を調べるために、官能評価に代替できる培養細胞を用いた評価方法の 構築をはじめ、食品穀物資源の特性を精査して、物性の制御や加工プロセスを工夫することで、特有の優れた食 感や嗜好性を具備した新規な食品素材を見出す研究を行っています。

【可能な共同研究分野】食品の呈味性評価・相互作用解析、食品タンパク質の常温構造解析など 食品タンパク質や多糖類などの生物素材の食品化学的研究を行っています。

生理的な条件下でどのようにタンパク質が機能するかについて、タンパク質の動きを捉える手法を用いて、構造と 呈味発現の機能相関解析、産業利用に関わる食品酵素類の解析など、食品化学分野をはじめ創薬分野での展開 を視野に入れ研究を進めています。

ミヤモト ケンイチ

宮本 賢一

教授 保健学博士

■研究室名称 病態栄養学研究室

■学歴 徳島大・院・栄養学

■専門 病態栄養学、腎臓内科学、基 礎栄養学

■その他 管理栄養士

老化を遅延させる食事

以下のような研究を実施しています。

1)ミネラル摂取と老化

ミネラルの中でも、特に、リン酸(以下リン)と老化の 関係が知られている。リンの重要な代謝系の発見に より、リン摂取過剰による老化促進がミネラル代謝 異常により生じる事が報告されています。リンやビタ ミンDの制限は、老化モデル動物の表現を回復させ ます。食品添加物含まれるリン化合物などの老化促 進や予防因子に関して研究を行なっています。

2)老化と腎臓病

【可能な共同研究分野】慢性腎臓病治療の食品開発など  高齢化に突入した我が国において老化を遅らせる ことにより健康寿命を延ばすことが求められていま す。特に、平均寿命と健康寿命の差を縮めることは、 個人の生活の質や低下を防ぐ観点からも重要であり ます。老化のメカニズムや健康寿命を左右する食事 組成など、「老化と栄養素」の関係を知ることの重要 性が注目されています。

腎臓は、大量のエネルギーを消費する臓器であり、その機能低下は慢性腎臓病(CKD)を引き起こします。慢 性腎臓病患者 (CKD) は人体の老化を加速させ、CKDの進行に伴い、老化の表現型が明らかになります。 CKDにおける栄養管理を中心に、腎臓老化を遅らせる研究を実施しています。

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ヤマザキ ハナエ

山崎 英恵

教授

博士(農学)

■研究室名称

食品生理学研究室

■学歴

京都大・院・農学

■専門

食品科学、栄養化学

■その他 管理栄養士

ヤマサキ マサユキ

山﨑 正幸

教授

博士(農学)

■研究室名称

応用生化学研究室

■学歴

京都大・院・農学

■専門

応用生化学、構造生物学

■その他

甲種危険物取扱者

食品や飲料で気分は変わる

自律神経は交感神経と副交感神経がバランスを取り合いながら身体の恒常性を保つ働きを担っていま す。また、人の精神状態や心理状態とも密接に関係しており、自律神経と気分の状態は相互に作用すると考 えられています。例えば、精神的ストレスを感じると交感神経の活動が活発になったり、逆にリラックスした 状態では副交感神経の活動が優位になります。

生命科学科

ところで、食品や飲料の中には、コーヒーやお茶など、自律神経の活動に影響をおよぼすものがあること がわかっています。気分転換によく飲まれる飲料です。他にも、ガムやチョコレート、清涼飲料水、大人はビー ルやワインなどのアルコールを飲んだりして気分を変えることもあります。しかしながら、実感としてはわ かっていても、それぞれの飲料や食品が実際に人の気分状態をどう変化させ、その時、自律神経の活動がど のように変化するのかについて同時に検証した研究はまだ多くありません。気分は短い時間にころころと変 化するので捉えるのがなかなか難しい のです。

私の研究では、気分状態と自律神経 の活動を同時に評価する方法によって、 飲料や食品の気分転換効果を客観的・ 主観的に評価することができるようにし ました。その方法で、ノンアルコール飲料 や、和食に使われているダシ、清涼飲料 水など、さまざまな飲料・食品の効果が わかってきています。

NIRS測定写真

【可能な共同研究分野】食品による気分状態変化の測定など

料理によって異なる気分状態

ウルトラファインバブルの性質と、その利用が卵タンパク質へ与える効果

食品栄養学科

農学科

そして近年出会ったのが、そのタンパク質の「かたち」を変えるポテンシャルを持つ、直径が約100ナノメート ルの気泡を含むウルトラファインバブル(UFB)水です。まず、UFBは直接観察することが極めて難しいため、そ の性質がまだまだ明確に定義されておらず、検討する必要があります。一方で、世の中では、その利用効果とし て、洗浄効果、植物の成長促進などが、注目されています。我々が実施した実験からは、卵タンパク質の「かたち」 を変えそうな知見が得られてきています。タンパク質の「かたち」を変えるということは、卵料理である茶碗蒸 し・メレンゲが未知の物性を持つかもしれない、卵のアレルギー性が変わるかもしれないということです。

そのほか、「サプリン」の研究、「食欲」に関する研究も、みなさまのご協力のおかげで始めることができました。

二酸化炭素が水に溶け込んだ炭酸水(Wilkinson●)はpH が低いが、二酸化炭素をバブルに封入した(NSLC CO2●) は、 実験水(ELIX●) とpHが変わらない ウルトラファインバブルの不思議 バブル水の製造方法

食料農業システム学科

nanoGALF IDEC株式会社 加圧化の飽和溶液の 急減圧による気泡の析出

NSLC 株式会社超微細科学研究所 高速液旋回流による気泡の粉砕 【可能な共同研究分野】卵に関する研究、ウルトラファインバブル、食の機能性・嗜好性  皆さんは、卵を毎日のように食べていますよね?そうです。卵は我々にとって、とても大切なタンパク質源です。  私は、学生時代からこれまでずうっと、卵のタンパク質であるオボアルブミンの研究、そしてそれによく似た 形をしていて、病気に関わるアンチトリプシンというタンパク質の研究を行ってきました。それは、タンパク質の 「かたち」について考えるというものです。タンパク質の「かたち」は、病気や食物アレルギーの原因となります。

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~ココロとカラダに響く食~

オカザキ フミコ

岡﨑 史子

准教授

博士(家政学)

■研究室名称

栄養教育学研究室

■学歴

京都女子大・院・家政学

■専門

食生活学、食品免疫学

■その他

管理栄養士、健康運動指導 士

管理栄養士の立場から食物アレルギーを攻略する

スズキ タロウ

鈴木 太朗

講師

修士(学術) 博士(食農科学)

■研究室名称 データ数理研究室

■学歴

東京大・院・総文

龍谷大・院・農学

■専門

生命・健康・情報

①生の果物・野菜は食べられないが、加熱していれば食べられる人が多い

→加熱に弱いタンパク質が原因なら前者、加熱に強いタンパク質が原因なら後者?

②複数の果物・野菜で症状がでる人が多い

→植物に共通して存在するタンパク質が原因となっているため、いろいろな果物・野菜で症状がでる? ③花粉症を合併している人が多い

→花粉中のタンパク質と共通したタンパク質が果物・野菜にも存在するため、花粉症から食物アレルギー につながっている?

私は管理栄養士の視点から、食 物アレルギーについての基礎的な 研究結果を、患者さんやその家族 にとって安全・安心でおいしい食卓 につなげたいと考えています。現 代病の1つである食物アレルギー とうまく付き合っていく術を見つけ ることが目標です。

【可能な共同研究分野】アレルゲン解析、モノクローナル抗体作製、ライフステージに応じた食育など  誰もが「食物アレルギー」を知っていますが、その発症メカニズムはいまだに謎だらけです。私は、近年増 加傾向にある果物・野菜アレルギーの研究を行っています。これまで食物アレルギーは、「卵アレルギー」「桃 アレルギー」のように食品レベルで考えられてきましたが、実際にアレルギーを引き起こしているのは食品中 のタンパク質です。そこで、アレルゲンをタンパク質レベルで解析していくと、まだ研究途上ではありますが、 果物・野菜アレルギーの特徴が少しずつ見えてきました。

食農・健康科学 × データサイエンス

【可能な共同研究分野】食農科学・医学・栄養疫学に関連するデータ解析、技術開発  人間を含めた生命、動植物にとって毎日の食事や栄養は生 きていく上で欠かせないものです。人類は狩猟社会(Society 1.0)から、360回ほど太陽が昇ると自然が循環する周期があ ることに気づき、科学を発展させて、農業革命により農業社会 (Society 2.0)を実現させました。今日では未来社会Society 5.0が提唱され、人工知能AI、機械学習、DX、データサイエンス などの用語にふれる機会も増えてきました。現代では毎日の 食事と栄養状態、心拍、血圧、血中酸素飽和度、血糖値などの 生体データをスマートフォンなどの機器で計測できるようにも なり、健康・栄養管理の高度化が進んでいます。また、1人1人 は体質が違うなど、遺伝的な特性をもっています。これはDNA という塩基配列ATGCの4文字からなる30億程の文字列の並 び方の違いによるもので、この遺伝子と生活習慣が関係する などいわれており、特に食習慣との関係について着目し、将来 の病気の予防に役立てる研究を進めています。個人のゲノム 解析やmRNAワクチンなどゲノム関連技術が生活に直接、影 響をおよぼす時代となりましたが、この大量の個人および集 団のビッグデータを含め「食」と「農」の科学に関連するデータ を解析し、次世代コンピュータの応用研究など、新たな技術 開発によって、「SDGs持続可能な社会」の実現に貢献できるよ うに考えています。

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ニシザワ カホ

西澤 果穂

講師

博士(食物栄養学)

■研究室名称

食品素材利用学研究室

■学歴

武庫川女子大・院・食物栄養

■専門

食品科学

■その他

管理栄養士

新たな食素材を発掘する

ヤノ マユミ

矢野 真友美

講師

博士(栄養学)

■研究室名称

臨床栄養学研究室

■学歴

徳島大・院・栄養学

■専門

臨床栄養学

■その他

管理栄養士(日本糖尿病療

養指導士)

臨床検査技師

新規食素材を健康の維持・増進に役立てる  植物性食品は不足しがちな食物繊維、ビタミン、ミネラルを豊富に含みます。

動物性食品の摂取量が増加している現代において、植物性食品を摂取すること の重要性が見直されています。植物性食品の新たな利用方法を見出すことは、植 物性食品の利用の幅を広げ、摂取量を増加させることに繋がると期待できます。

また、新規食素材における栄養成分を含む機能性を明らかにすることで、人々の 健康の維持・増進に役立てたいと考えています。

これまでに、ナタマメの加工方法および加工特性について検 討し、筋肉量の維持・増進に有用なロイシンを豊富に含むタンパ ク質と、嚥下困難者用の食事への利用が期待できるゲル化物 質が抽出されることを明らかにしています。

【可能な共同研究分野】植物性食素材の実用化に向けた研究など 食の選択肢を増やすことで食生活を豊かに  植物性食品の多くは、加工食品への利用がほとんどありません。その一因とし て、加工方法や加工特性を明らかにする研究報告が乏しく、利用方法が不明で あることが挙げられます。そこで私は、利用の少ない雑豆に着目し、その豆に適し た加工方法、加工による特性について検討することで、新規食素材を発掘しよう と研究に取り組んでいます。新たな食素材を見つけることは、私たちの食生活に おいて、食の選択肢を増やすことに繋がると期待しています。

予防と治療を支える栄養管理を目指して

管理栄養士は、医療の専門職として疾病の予 防および治療に貢献することが期待されていま す。国内外の研究によれば、適切な栄養管理は、 患者の栄養状態の改善、免疫機能の改善、合併症 の予防、傷病の回復に寄与することが分かってき ました。しかし、栄養管理に関する科学的な根拠 は十分とは言えない状況です。そこで私は、以下 のような研究を行っています。

食品栄養学科

1)栄養評価の手法 適切な栄養管理を行うには、適切な栄養評価が 必要なため、病院、診療所、在宅を問わず広く適応できる栄養評価法について調べています。これまでに、栄養 不良の患者を対象とした研究において、簡単な体成分分析を用いた体液評価が電解質異常の評価として有用 である可能性を明らかにしました。

食料農業システム学科

2)糖尿病・うつ病の予防と管理

糖尿病とうつ病は併存しやすく、その患者数は日本だけでなく世界的に増加しています。これらの疾患の予防 および治療には栄養管理が重要です。これまでに、糖尿病予備群を対象とした研究において、食後血糖値の上 昇を抑制する食事は抑うつ症状の改善に有用である可能性を明らかにしました。

今後、栄養管理に関して新しい視点から研究を進めるとともに、医療の専門職として貢献できる管理栄養士 の養成に努めていきたいと考えています。

【可能な共同研究分野】地元の食材を活かした病態別メニューの開発など

生命科学科 農学科
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食料農業システム学科

Department of Agri - Food System

「食」と「農」を支える地域と経済の仕組みを学ぶ。

本学科では、「食」と「農」に関わる自然科学的な知識と「農」の実態に関する確かな認識を前提としつつ、「食」と 「農」に関わる国内外の社会問題・経済問題に取り組む能力を養うことを目的としています。そのために、農業技術や 食に関わる自然科学的な基礎知識を取得するための講義・実習を一定程度受講した上で、経済学、経営学、会計学、 社会学といった社会科学関連の科目を中心に学びます。また、調査実習等を通じて、農業や食産業の実態把握に努 めます。さらに、講義と実習で得た知識と知見を活用して、自ら学び研究する演習や卒業研究を行います。

研究分野マッピング

経済

中川 雅嗣 教授 (食・農資源経済学研究室) 食料供給システムの構築

竹歳 一紀 教授 (食料・農業・環境経済学研究室) 持続可能な経済発展

嶋田 大作 准教授 (地域農業・環境経済学研究室) 多面的機能と 持続可能な発展

山口 道利 准教授 (フードシステム学研究室) 食のリスクと経済

落合 雪野 教授 (食文化・地域文化研究室) 食文化、地域文化

社会・文化

中川 千草 准教授 (地域マネジメント・ 資源保全研究室) 地域づくり、環境保全

金子 あき子 講師 (フードビジネス研究室) マーケティング、販売戦略

香川 文庸 教授 (農企業経営情報会計学研究室) 経営管理、情報分析

淡路 和則 教授 (食農ビジネス研究室) 技術と経営・環境

渡邊 洋之 准教授 (環境史・環境社会学研究室) 環境史、野生生物

尾崎 智子 講師 (日本の食文化研究室) 日本の食文化

中田 裕子 准教授 (東洋史学・遊牧文化研究室) 遊牧民の歴史、東西交渉

経営 歴史

キャリア教育担当:佐藤 龍子 教授 (高等教育政策・キャリア教育研究室)
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学びのポイントは?

「食」や「農」の社会問題・経済問題を理解できる。

「食」や「農」のビジネスから農村文化まで、多様な問題を学べる。

グローバルな視点を身につけることができる。

社会調査・データ分析能力とコミュニケーションスキルが修得できる。

CURRICULUM

教養教育科目( 仏教の思想・英語・教養科目 )

農学概論 食と農の倫理

食の循環実習Ⅰ 食の循環実習Ⅱ

SDGsと食料農業 システム概論

研究手法を学ぶ演習科目

● 基礎演習

● 総合演習Ⅰ

<自然科学の基礎を学ぶ科目> 食と嗜好の科学 食品の安全と法律 身体のしくみと栄養 調理のサイエンス 暮らしの中の食品学 植物病理学Ⅰ、花と果物の科学、昆虫学Ⅰ、微生物学Ⅰ、分子からみた生命 など

各地の農業と農業の歴史を学ぶ科目

● 日本・京滋の食料と農業 ● 日本の歴史と農業 ● 世界の歴史と農業

学科教育の基礎となる科目

● くらしと経済

● 会社と農家のしくみ

● ミクロ経済学

● 事例に学ぶ食品マーケティング

職業を意識する科目

● 大学の学びとキャリア

現場を知るための実習科目

● 農学部特別実習A・B・C

● 農学部特別講義

● 入門ゼミ

● 欧米の食料と農業 ● 科学史・農学史入門 ● アジア・アフリカの食料と農業 ● 食の文化論

● 食料・農業経済学

● 統計処理実習

● 基礎統計学

専門性を高めるための講義科目

ビジネス・経営に関わる科目

● 基礎会計学

● 基礎経営学

● 農業組織団体論

● 農企業経営論

● アグリフードビジネス論

● フードビジネスマーケティング論

● 総合演習Ⅱ ● 総合演習Ⅲ ● 総合演習Ⅳ

食品栄養学科

● フードビジネスファイナンス論

ビジネス・経営と経済の双方に関わる科目

● 食料流通システム論

国内外の経済に関わる科目 ● 農業政策論 ● マクロ経済学

地域社会と文化に関わる科目

● 基礎社会学

● 農村社会学

● 食と農の安全安心論

● 環境経済学 ● 国際食料需給論

● 地域マネジメント論

● 比較地域文化論

● ソーシャルキャピタル論

● 比較食文化論

学科専門科目全体と関わりのある科目

● 農業法律学

● キャリア形成論

● 食料農業システム実習A~F

● 農学部キャリア実習 A・B

● 海外農業体験実習A B

● 地域農業経済論 ● 国際農村発展論 ● 国際協力論 ● 熱帯農業論

● 食料環境社会学 ● 現代社会と食

Q . A .
緑:必修・履修必修科目 ※2024年度入学生(参考) 生命科学科 農学科
食料農業システム学科 ※資格取得を目指す学生を対象に、TOEIC L&R IPテストの受験料をサポートしています。
1 年生 2 年生 3 年生 4 年生 1セメスター 2セメスター 3セメスター 4セメスター 5セメスター 6セメスター 7セメスター 8セメスター
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アワジ カズノリ

淡路 和則

教授

博士(農学)

■研究室名称

食農ビジネス研究室

■学歴

北海道大・院・農学

■専門

経営・社会農学

食品残さを飼料利用する仕組みの構築

わが国は、食料の多くを海外に依存する一方で大量の食料を廃棄 しています。食品廃棄は、飢餓と飽食、環境、資源、エネルギーなど多 方面にわたる深刻な問題につながります。食料の生産から流通、加 工、販売、消費に至る過程の各段階で様々な形で廃棄物が出ていま す。なぜ食料の廃棄は起きるのでしょうか?現場をみながら、経営経 済、法制度、社会関係、心理など多角的に分析のメスを入れています。 廃棄される食料を活かす

食料の廃棄問題には、まず廃棄物の発生を抑制することが第一で すが、発生が避けられないものについては、利活用することが求めら れます。その方法はいろいろありますが、わが国では飼料の自給率が 低いので、飼料化を優先的に進めたいところです。簡単にいえば、ひと が食べなかった部分を家畜が食べることになります。残りもの、余り ものの利用ですが、研究の積み重ねで、何をどのように飼料化して利 用したら良質の畜産物ができるかが次第にわかってきました。捨てら れるものから高級食材を生み出すマジックのような本当の話です。  こうした食の残さを生産に活用して食品を提供するといった資源 の循環は、技術だけでは成立しません。関係者が協力し合って共益 関係を築くことが必要です。そのための社会科学的研究に取り組ん でいます。

【可能な共同研究分野】農作業受委託のシステム化、食品リサイクル、バイオマス利用など 食料廃棄の要因を探る

廃棄された食品

食品残さの飼料化工場

オチアイ ユキノ

落合 雪野

教授 博士(農学)

■研究室名称 食文化・地域文化研究室

■学歴 京都大・院・農学

■専門 民族植物学、東南アジア研 究

■その他 編著書『ものとくらしの植物 誌』『ラオス農山村地域研 究』などを出版。平成25年度 松下幸之助花と万博記念奨 励賞 受賞

「食べもの」と「着るもの」をめぐる人と植物のかかわり

もうひとつは、糸や布、染料など「着るもの」に関する 植物利用です。最近では環境汚染や大量廃棄社会への 批判から、アパレル産業や衣服消費のあり方が見直され ています。また、きものなどの伝統工芸の現場では、植物 由来の原材料や道具類を持続的に確保するための取り 組みが広がっています。このような流れのもと、滋賀県 草津地方特産の染料植物アオバナや、ラオス北部でロー カルな布作りに用いられる繊維植物に着目して研究をお こない、農業が染織文化に果たす役割や植物素材の文 化的価値の再評価に取り組んでいます。

【可能な共同研究分野】食文化や染織文化の地域における継承のための取り組み、文化資源としての活用など  「人は植物をどのように利用してきたのか」をテーマに 研究を進めています。その利用のあり方のひとつが「食 べもの」です。世界各地の人びとは地域の生態系から食 べられる植物を選び出し、また耕地で作物を栽培して、 これを加工調理し、毎日の食を形づくってきました。そこ には、地域の生態環境や歴史、社会のしくみ、そして食に 関する価値観が反映されています。東南アジアや日本各 地でフィールドワークをおこない、植物を食べものたら しめる在地の知恵や技術、さらにはその変容について記 録し、地域の食文化の特性を生物多様性や文化多様性 と関連づけながら分析しています。

31

カガワ ブンヨウ

香川 文庸

教授

博士(農学)

■研究室名称 農企業経営情報会計学研究 室

■学歴

京都大・院・農学

■専門 経営・経済農学

■その他

「食・農・環境の新時代」、「農 業経営発展の会計学」ほか著 書、論文多数。平成16年 日本 農業経済学会奨励賞。平成 25年 地域農林経済学会特別 賞受賞。

日本の農業は今後、だれがどのように担うべきなのでしょうか?

農業の担い手が存立・発展するための条件  農業の担い手が農業を継続的に営むためには、 事業計画や経営計画をきっちりと立て、経営計算 や経営分析によって自らの経営を管理する必要が あります。また、農業の担い手を側面からサポー ト・支援するための制度や政策も必要です。そうし た経営戦略・経営管理手法の開発や制度・政策の あり方に関する研究にも取り組んでいます。

【可能な共同研究分野】地域農業の維持・活性化方策、農業構造の展望、農家・農企業・生産組織の経営管理と情報開示のあり方など これからの社会に求められる農業の担い手像  昔から農産物を作っているのは世帯・家族を土台とした農 家が中心でした。しかし、最近では農業を営む会社が増えて きており、これまで農業に関わりのなかった企業の中にも農 業をはじめるもので出てきています。また、複数の農家が共 同で組織を立ち上げる動きも活発化しています。それでは、 今後の農業は誰がどのように担うべきなのでしょうか?  農産物を効率的かつ大量・安価に作ることは、今も昔も 大切なことですが、最近では環境や社会の持続可能性にも 配慮した農産物生産が求められています。そうした時代に おける農業の望ましい担い手像とはどのようなものである のかを研究しています。

サトウ リュウコ

佐藤 龍子

教授

修士(総合政策科学)

■研究室名称

高等教育政策・キャリア教 育研究室

■学歴

同志社大・院・総合政策科学

■専門

高等教育政策、キャリア教 育、大学教育

大学生活を大切にし、将来を切り拓く

食品栄養学科

就活も対面だけでなく、Zoomやmeeなどのオンラインを使った 説明会が多くなりました。農業分野もIT化がすすんでいます。産業 構造や雇用が変化してきています。日本には馴染みの薄いジョブ型 (職務の内容やスキルを明確にした)採用もはじまりつつあります。

これは新卒にとってメリットでしょうか?デメリットでしょうか?一緒 に考えてみましょう。

一方で、地域や環境、コミュニティを大切にした生き方や社会貢 献と仕事を結び付けた「社会起業家」などが増えたり、シェアリング エコノミー(モノ、サービス、場所などを多くの人と共有・交換して利 用する仕組み)も増えたりしています。テレワーク(在宅勤務)や短 時間勤務、副業など働き方が多様になってきています。

【可能な共同研究分野】高等教育政策、大学教育、キャリア形成、大学評価、FDに関する研究など  急激に変貌する現代社会、たとえばAI(人工知能)やChat (チャット)GPTという言葉を聞いたことがあると思います。Chat GPTはいつできたでしょうか?使ったことのある方もいるかもしれ ませんね。まだ2年もたっていませんが、毎日のように新聞やネット 等で取り上げられています。便利ですが、使い方には留意点が多数 あります。各国で法的な規制なども議論されています。

しかし、時代がどんなに変化しても、変わらずに大切なものがあります。基礎基本の学びです。学び方を身 に付け、継続して学んでいけば、時代がどのように変わろうとも大丈夫です。キャリアとは就職でなく、広義の 意味で「生き方」です。日々の学びや生活すべてがキャリアにつながっているといっても過言ではありません。 大学教育の「学び」を大切に、学生のみなさんとキャリアを考えていきたいと思っています。

生命科学科 農学科
食料農業システム学科
32

タケトシ カズキ

竹歳 一紀

教授

Ph.D. i n Agricultural & Resource Economics (農 業・資源経済学博士)

■研究室名称 食料・農業・環境経済学研 究室

■学歴 カリフォルニア大学バーク レー校(米国)・院・農業・資 源経済学

■専門

農業経済学、経済発展論、環 境政策論

農山村の持続可能な発展をどう図るか

ナカガワ マサツグ

中川 雅嗣

教授 博士(経済学)

■研究室名称

また、中国の経済発展と環境問題に関する研究も、ほぼ 30年前から行っています。中国では、農村に立地する工場に よる水や大気の汚染問題が深刻化しているほか、貧困農村 地域では、収入を増やそうと無理な耕作や放牧を行い、これ が森林破壊や砂漠化の原因になっています。農村の持続可 能な発展は中国でも大きな課題となっています。

経済の発展とグローバル化は人々の生活にメリットをもた らす一方で、経済条件の劣った国や地域にそのデメリットが 集まりがちであり、それは日本や中国でも見られるように、食 料・農業・環境といったところに問題を発生させます。国や地 域(農山村)の持続可能な発展をミクロの視点から分析する ことは、食料・農業・環境問題についてグローバルな視点から 分析することにつながっていくと考えています。

【可能な共同研究分野】再生可能エネルギーの利活用、農山村の経済活性化など  「経済的条件に劣った地域が、環境を保全しつつ持続的に 発展するには、どうすればよいのか」ということを大きなテー マとして研究してきました。日本では、農山村での高齢化・過 疎化が進み、地域経済の停滞、耕作放棄地の増加、山林の荒 廃といった問題が深刻化しています。農村ツーリズムの振興 や自然エネルギーの活用などの取組みや施策により、農山村 の環境保全と活性化をどのように図っていくかが、私の研究 テーマの一つです。

食・農資源経済学研究室

■学歴 神戸大・院・経済学

■専門

経営・経済農学、経済政策

貴州農村

安全・安心な食料供給と生産性の向上

食料は、我々が生きていくためには欠かすことのできないものです。

その食料ですが日本の食料自給率は、先進諸国と比べて最低水準 (38%:令和3年度)にあります。将来、さまざまな社会や環境の変化、 災害・インシデントなどがあっても安心して生活できるように対策を 講じる必要があります。そのための「食」と「農」の現状をしっかりと把 握し、とるべき政策を研究しています。経済学的にいうと、需要面では 日本型食生活を進めるため主食である米を中心として、畜産物や果実 などバランスよく加わった健康的な食生活への改善見直しあり、供給 面では限られた農地の生産性を向上させる研究を進めています。 限られた農地で農業生産性を上げる

人口減少傾向が進む中で、日本農業の維持・成長するため生産性 向上が重要と考えています。農業においても技術進歩や規模の経済 性により、総合的な生産性を表す全要素生産性の向上が不可欠とな ります。これまで、労働と農業機械の代替を促進する技術進歩を考慮 して農業全体と稲作・麦類・大豆ほか多くの農産物の全要素生産性を 定量化し、その変化に対する(1)技術進歩の計測、(2)技術効率(経営効 率)の分析、(3)経営規模の拡大による規模の経済、(4)生産性の伝播速 度を定量的に示してきました。近年は、高い生産性と環境を両立させ たスマート技術に注目しています。

【可能な共同研究分野】地域農業の経済発展、経営効率性、計量分析、データサイエンス 食料自給率の向上

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農業・農村の多面的機能と地域の持続可能な発展

シマダ ダイサク

嶋田 大作

准教授

博士(経済学)

■研究室名称

地域農業・環境経済学研究 室

■学歴

京都大・院・経済学

■専門

環境経済・政策学、地域農 業経済学、自然資源管理、コ モンズ研究

■その他

環境経済・政策学会奨励賞 (2015年)

他方、農業や農村の現状は、必ずしも明るいものばかりではあ りません。過疎・高齢化、耕作放棄、安価な輸入農産物、コメ離れ など、健全な農業生産を脅かしかねない事態が進行しています。

このような事態に対処しつつ、農業と農村の多面的機能を維持・ 再生し、地域の持続可能な発展をどのようにして実現していくの か、都市と農村の関係はどうあるべきかといった問題に取り組む ことは、緊急の課題となっています。さらには、これまで農業や農 業者コミュニティによって守られてきた多面的機能について、今 後もそれを維持・再生していくための費用は、誰がどのように負担 するのか。こうした問題についての制度デザインが求められてい ます。

本研究室では、経済学の理論や手法を基盤に、国内外での フィールドワークを行い、様々な先進事例の分析を通じて、地域 農業の課題に取り組みます。

ナカガワ チグサ

中川 千草

准教授

博士(社会学)

■研究室名称

地域マネジメント・資源保

全研究室

■学歴

関西学院大・院・社会学

■専門

環境社会学、資源管理、地

域研究

生命科学科

【可能な共同研究分野】環境保全型農業、自然資源を活用した地域活性化、アグリツーリズム・エコツーリズム、コモンズなど  農業とその基盤である農村は、健全な農業生産を通じて、国土 の保全や水源の涵養、生物多様性の保全、良好な景観の形成、文 化の伝承、環境教育やレクリエーションの場の提供など、様々な 機能を有しています。これら農業の多面的機能の便益は、都市住 民を含む国民全体が享受しています。このため農業の多面的機 能は、都市部を含む社会全体の持続可能な発展にとって、重要な 意味を持っています。

福岡県うきは市の棚田

阿蘇の野草地で放牧される赤牛

資源を守り、地域社会をつくっていくために

【可能な共同研究分野】環境保全、資源管理、地域マネジメントなど  日常生活で当たり前のように耳にする「自然を守る」ということについ て、具体的に考えたことはありますか?西アフリカのギニアでは、マング ローブを薪として利用した塩づくりが盛んです。この塩づくりは貴重な現 金収入の手段であり、生活のために欠かせない仕事として、世代を超えて つづけられてきました。しかし、マングローブは、生態系(自然環境)保全に おいて重要な役割を果たすということが学術的に解明され、それ以降、マ ングローブの伐採を禁止すべきという考えが広く聞かれるようになりまし た。その後、主に欧米の環境保護団体によって、この考え方がギニアの塩 づくりの現場にも持ち込まれると、中には、従来の方法を批判し変更を強 く求めるような事態がしばしば見られるようになりました。さて、この状況 は、どのように、誰の視点から解決すればよいでしょうか。その答えはやは り「現場」にあります。特に、「現場に生きる人びとの声を聞くこと」、これが もっとも大切だと考えます。わたしはこれまで、日本や世界各地の農山漁 村を訪れ、現地に暮らす人びとが重ねてきた経験について聞き取り調査を 行なってきました。語られる内容は、わたしたちが想像もしていなかったよ うな、その土地ならではの知恵や工夫に富むものが多く、多くの学びがあ ります。ときには、辛くどうしようもない状況、利害関係や個人的な感情と いった生々しさが噴出する場面に出会ったり、土地に根ざした生き方と、あ らたに持ち込まれる価値観や情報がぶつかり合い、さてどうしたものか、と 現地の人びとと頭を抱えたりすることもあります。授業やゼミ活動では、こ うした現場の声、現場からの学びをみなさんに伝えたいと思っています。

食品栄養学科

食料農業システム学科

農学科
34

ナカタ ユウコ

中田 裕子

准教授

修士(文学)

■研究室名称

東洋史学/遊牧文化研究室

■学歴

龍谷大・院・文学

■専門

アジア史

シルクロード商人と遊牧民の交易

私は、中国におけるシルクロード交易について研究して います。特に興味があるのは、遊牧民とオアシス商人が当 時の交易にどのような影響をあたえたかということです。 用いる史料は、龍谷大学に所蔵されている中央アジアで発 見された出土文書や中国各地に現存している石刻史料な どです。また、モンゴル高原に残された遺跡なども訪れ、 実際に彼らが通過したとされる交易路をたどり、その実態 を解明しようと考えています。

ここで皆さんは、なぜ遊牧民が交易をしていたのだろう と疑問に思うかもしれません。現在の遊牧民は、家畜とと もに草原を移動する遊牧生活をしているイメージが強いか らです。しかし、彼らは古代より馬に乗ることに優れ、強い 武力を有していました。シルクロード商人のボディーガード をしながら、交易活動を行っていたのです。また、彼ら自身 も遊牧民が育てた強い馬を絹と交換するという交易も行 いました。当時、軍隊にとって強い馬が必要だったからです。

私は本学の農学部において、学生の皆さんには専門的 なことだけでなく、様々な分野の学問を学んでもらい、よ り広い視野を持ってもらいたいと思っています。私が担当 する歴史という分野もその一つです。ぜひ一緒に学びま しょう。

【可能な共同研究分野】中国における歴史教育など

ヤマグチ ミチトシ

山口 道利

准教授 博士(農学) ■研究室名称 フードシステム学研究室

■学歴 京都大・院・農学

■専門 経営・経済農学、獣医経済疫 学

■その他

地域農林経済学会個別報 告優秀賞(2010年)、同学会 誌賞(2012年)、同学会賞 (2015年)、日本農業経済学 会ポスター賞(2013年)

フードシステムの理解が新たな価値を生み出す

私の研究の出発点は、2004年に国内の養鶏場で発生した鳥インフルエンザでした。家畜疾病が広がる 要因には、ウイルスや宿主、自然環境だけでなく、人の行動や、それをとりまく経済的環境も含まれます (新型コロナウイルスともよく似ていますね)。私は、鮮度や経済性を追求してきた鶏卵流通のあり方が、一

方で疾病拡大にも大きな影響を与えていたのではないかと考え、スムーズな事故処理と付加価値の高い 流通とを両立させるような取り組みの調査を続けてきました。そうした調査を進めるうえで痛感したのが、 フードシステムを構成する各主体の行動論理を理解することの重要性です。

最近は、家畜疾病や食品リスクにとどまらず、フードシステムにお いて新たな価値を生み出そうとする各種の取り組み(未利用資源の 利用やブランド化など)にも興味の幅を広げて研究・教育を進めて います。消費者はその商品のどういうところに価値をおいているの か、それを提供しようとする側にはどんな論理があるのか、それを 両立させるデザインはどのようなものかというのが私の関心です。 私の研究が発展すれば、例えば食品リスクへの対応として何が社会 的に取り組むべき課題で、何が企業みずから差別化の手段として取 り組むべき部分であるかが明らかになると考えています。そしてそれ らがうまく補完しあって、信頼されるフードシステムが形成されるこ とが望ましいと私は考えています。

【可能な共同研究分野】食品リスクの経済評価とそのマネジメントなど

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ワタナベ ヒロユキ

渡邊 洋之

准教授

博士(農学)

■研究室名称

環境史・環境社会学研究室

■学歴

京都大・院・農学

■専門

環境史、環境社会学

生き物と人間の過去とこれから

イヌやネコは家族のように扱う。一方ウシもブタも食用とする。このような、それぞれの生物種と「日本人」 との今日の関係は、あたりまえのものとされています。しかし、現時点におけるこの関係を、当然視し固定的 に考えてよいものなのでしょうか。

生命科学科

例えば、捕鯨をめぐる報道などでは、「日本人は欧米の人々と違い古くからクジラを食べてきた」と、しばし ば言われています。しかし実際には、日本では20世紀半ばごろまで、クジラを捕らない・食べない地域があっ たどころか、捕鯨に反対して暴動を起こしたケースもありました。

また現在の日本では、農業や生態系そして人間に直接被害が及ぶということで、マングースやブルーギル など外から持ち込まれた生き物は、駆除するのが基本であり、よってそれらは大変嫌われていると思われま す。しかしこの事例でも実際のところ、1980年代ごろまで、上記の2種もそうなのですが、害虫・害獣駆除や 養殖などに有用と考えられた生き物は、外国から積極的に日本へ導入されていました。

さて今日、生き物と人間の関係には、乱獲だけでなく様々な問題が生じています。そして、現時点における 関係を当然視し「正しい」と考えることは、これらの問題の要因であるこの関係の変化を、見えにくくしまいが ちです。私が行っているの

は、このような、生き物と 人間の関係の歴史的変化 をあきらかにして、様々な 問題の解決のヒントを提 供していくことなのです。

【可能な共同研究分野】捕鯨問題や移入種問題などの野生生物問題に対する自然科学的研究を補うべく、それら問題 についての人文・社会科学的知見の提供など

オザキ トモコ

尾崎 智子

講師

博士(文学)

■研究室名称

日本の食文化研究室

■学歴 東京大・院・日本史

■専門 日本史、協同組合論、文化 財・博物館学、ジェンダー

■その他 学芸員

日本人の生活は100年間でどう変わってきたか

食品栄養学科

農学科

皆さんは、どんな生活をしたいですか? 倹約せざるを得ない、健康的であり たい、とにかく手間を省きたいなど、多くの制約や希望があるでしょう。各々 が持つ制約や希望にそって「生活は意識的に変えられる」という認識を広め、 変える方法を大々的に宣伝したのは100年前の日本政府でした。私は、政府が 始めた生活改善運動を通じて、食生活や衣生活がどう変化したのかを研究し ています。

食生活では、特に牛乳飲用と胚芽米食に注目してきました。政府が理想の 暮らし方を説いても、言われただけでは国民は納得しないと思いませんか? ただでさえ乳製品は「バタくさい」と嫌われていたし、白米を食べる人の中で 胚芽米を好んで食べる人も当時はいなかった。ですが、1920年代の日本人には タンパク質が足りず、毎食白米だけを食べていてはビタミンB1がとれません。 そのため牛乳を飲むようすすめ、胚芽米講習会を開いて、人々の健康を向上さ せようとしたのが協同組合でした。

食料農業システム学科

今もインターネットをみると様々な暮らし方があります。使うところには思 いきりお金を使う、お金持ちでもあまり物欲がない、「丁寧」な暮らしをする、 新しい家電を積極的に取り入れる…。今あげた様々な生活思想の萌芽は、既 に100年前に見られます。1920~60年代における生活の変化から現在の生活 を考察し、将来の生活を見通す。この点をこれからも極めていきます。

『消費と経済』より、『消費と経済』は 国民の生活改善運動意識を高める ために文部省が行った展覧会図録

36

カネコ アキコ

金子 あき子

講師

博士(経済学)

■研究室名称 フードビジネス研究室

■学歴

桃山学院大・院・経済学

■専門

経営・経済農学

世界の市場で日本の食をいかに売るのか

日本は少子高齢化による人口減少のため、国内の食品市場は 縮小傾向にあります。日本の多くの食品企業は、この窮地を脱す るために海外に進出し、現地で食品を生産して現地の人々に販売 しています。私は、このように海外に進出した日本の食品企業を 研究しています。特に、中国・香港・台湾をはじめとする中華圏に はたくさんの日本企業が進出しており、私はそこで働く駐在員を 対象にヒヤリング調査をすることにより、日本の食品企業が海外 で食品を生産・販売する仕組みについて研究してきました。  これらの食品企業が大切にしているのは、進出した国の経済や 法律を把握すること、その国の食文化や慣習を理解し、現地の ニーズに適した商品を開発すること、そして、それを求める購買層 に着実に販売することです。そのため従業員の方々は、どのよう な商品を開発して流通・販売すればいいのか、障壁となることは 何かなど、海外の市場ならではの問題を一つずつ解決し、試行錯 誤を続けています。

このように、海外で食品を生産・販売することについて考えるこ とは異文化の視点について学ぶことでもあります。国際化のすす む日本社会で食について考えるとき、異文化の視点はますます重 要になっており、皆さんにとっても大いに役立つものです。このよ うなことを講義などを通して伝えていきたいと考えています。

日系企業が経営する中国の牧場 広州のスーパーで販売されているカップ麺

【可能な共同研究分野】海外市場に向けて輸出される日本の農畜産物に関する諸問題など

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ラボラトリー専門助手

辻 村 真衣 ツジムラ マイ

修士(バイオサイエンス)

■学歴

奈良先端科学技術大・院・バイオ サイエンス

■専門

遺伝学・ゲノム解析

ヨシヤマ ヨウコ

吉山 洋子

博士(理学)

■学歴 京都大・院・理学 ■専門 微生物生態学

農場専門技術助手

吉良 徹 キラ トオル

修士(工学)

■学歴 山梨大・院・工学 ■専門 農場管理、野菜園芸、栽培技術指導

ナカタ ミヅキ

中田 聖月

学士(人間科学)

■学歴

神戸女子学院大・人間環境学 ■専門

細胞工学

管理栄養士養成課程助手

イノウエ カンタ

井上 幹太

学士(運動栄養学) ■学歴 仙台大・体育学 ■専門

給食経営管理論 調理学

マツシタ ミヨ

松下 実代

修士(食農科学) ■学歴 龍谷大・院・食農科学 ■専門 食品科学・調理学 ■その他 管理栄養士、栄養教諭

ワタナベ キョウスケ

渡部 恭輔

修士(体育学) ■学歴

筑波大・院・体育学 ■専門 応用健康科学 ■その他 管理栄養士

妹尾 拓司

修士(生命システム科学) ■学歴 県立広島大・院・総合学術 ■専門 栽培学

島 大輔

修士(食農科学) ■学歴 龍谷大・院・食農科学 ■専門 応用健康科学 ■その他 管理栄養士

三上 葵

ヤマモト リョウヘイ

山本 涼平

博士(生命システム科学)

■学歴

県立広島大・院・総合学術 ■専門 農芸化学(生物有機化学・食品化学)

吉村 大輔 ヨシムラ ダイスケ

博士(食農科学) ■学歴 龍谷大・院・食農科学 ■専門 作物生産科学 ■その他 土壌医

ミカミ アオイ 学士(健康栄養学) ■学歴 東北女子大・家政学 ■専門 ライフサイエンス、スポーツ科学、 栄養学、健康科学 ■その他 管理栄養士、栄養教諭

フカオ ナオ

深尾 奈央

学士(人間文化学) ■学歴

滋賀県立大・人間文化学 ■専門 臨床栄養学、小児科学 ■その他 管理栄養士

ヤマグチ サヤカ

山口 さや香

学士(栄養学) ■学歴 神戸学院大・栄養学 ■その他 管理栄養士

セオ タクジ
シマ
ダイスケ
38

アサミ ユウヤ

朝見 祐也 教授

アサミズ エリカ

浅水 恵理香 教授

アワジ カズノリ

淡路 和則 教授

イシハラ ケンゴ

石原 健吾 教授

イノウエ

イワホリ ヒデアキ

岩堀 英晶 教授

ウエダ ユキコ

上田 由喜子 教授

ウェンダコーン S.K.

Wendakoon S.K. 講師

ウチモト コウユウ

打本 弘祐 准教授

オカザキ フミコ

岡﨑 史子 准教授

智子 講師 オザキ トモコ

オチアイ ユキノ

落合 雪野 教授

オノギ アキオ

給食経営管理論、調理科学 給食施設における栄養管理、生産管理 および衛生管理に関する研究 給食、生産管理、衛生管理、美味特性、物性 食品栄養 学科

生命科学科 22

植物保護科学 遺伝育種科学

植物寄生性線虫の生存戦略 線虫ゲノム、植物-線虫相互作用、 土壌微生物-線虫相互作用

食料農業 システム学科 05

食品栄養 学科

食品栄養 学科

経営・社会農学 農業の組織化と担い手の育成 農作業受委託、バイオマス利用、 農業職業教育

応用健康科学 「ゆりかごから墓場まで」のスポーツ栄養学 エネルギー代謝、持久運動、糖質、脂質、 自転車

給食経営管理論

調理学

31

22

クックチルシステムにおける美味特性

有害線虫の生理生態と防除法の研究 線虫、検出同定、植物保護、抵抗性育種、防除 農学科

植物保護科学、 生物多様性・分類

生活科学、健康・スポーツ科学

食物選択と健康に関する研究 健康行動、学習方法、アスリート、GABA、 食環境 食品栄養 学科

収穫後生理学

果実の香気生成機構に関する研究 青果物、香り、エステル、トマト、 エステル生成酵素 農学科

生命科学科

仏教学(親鸞思想)、社会学

宗教者の社会実践に関する研究 臨床宗教師、医療と宗教、ビハーラ スピリチュアルケア、親鸞

果樹、生産の効率化、生理活性物質、 植物ホルモン、接ぎ木 農学科

食料農業 システム学科

日本史、協同組合論、 文化財・博物館学、ジェンダー

果樹作物の生産の効率化や果実品質向上に 関する研究

食の歴史および「伝統の創造」を探求する 生活改善運動、牛乳、玄米菜食主義、 胚芽米、郷土料理

食生活学、食品免疫学 果物・野菜アレルゲンの解析 食物アレルギー、モノクローナル抗体、食育 食品栄養 学科 31

食料農業 システム学科

民族植物学、東南アジア研究 植物利用の文化、生物多様性と文化多様性 有用植物、生態資源、食文化、農耕文化、 染織文化、東南アジア

遺伝育種科学、統計科学 データから育種や農業生産を効率化するための 統計学・機械学習的手法に関する研究

08 小野木 章雄 准教授

香川 文庸 教授

カガワ ブンヨウ 経営・経済農学 望ましい農業の担い手像と それを支える仕組みの解明 農業構造、担い手、農業生産組織、 経営管理、情報開示

垣口 由香 准教授

遺伝、育種、統計、機械学習、情報 生命科学科 32

食料農業 システム学科

カキグチ ユカ 英米・英語圏文学 アングロ・アイリッシュの「場所」 アングロ・アイリッシュ、場所、戦争、 20世紀 生命科学科

経営・経済農学

日系食品企業の海外販売に関する研究 海外市場、国際化、食品、日系企業、販売戦略 食料農業 システム学科

クスノキ タカシ 小児科学、アレルギー、 疫学・予防医学

楠 隆 教授

ゴウド トシナリ

神戸 敏成 教授

佐藤 龍子 教授 サトウ リュウコ

塩尻 かおり 教授

シバ タクヤ

柴 卓也 准教授

シマ ダイスケ

島 大輔 助手

シマダ ダイサク

嶋田 大作 准教授

農場管理、野菜園芸、 栽培技術指導 農学科 23

食を通じた小児の健全な発育へ向けての研究 食物アレルギー、疫学、予防医学、食育、小児 食品栄養 学科

園芸科学、植物資源学

三倍体植物の育種利用に関する研究 組織培養、倍数性、センノウ、サクラ、育種、 保全 農学科

食料農業 システム学科

生命科学科

高等教育政策、キャリア教育、 大学教育

シオジリ カオリ 生態・環境、植物保護学、 昆虫科学

学生の自主性をはぐくむ 大学教育とキャリア教育 大学、初年次教育、インターンシップ、 高等教育政策

植物の誘導反応に関する研究 匂い、植物免疫、害虫制御、相互作用、 コミュニケーション

14

32

竹歳 一紀 教授

害虫の生態解明と管理技術の開発 作物保護、害虫管理、昆虫生態、被害解析 農学科

植物保護学

応用微生物学

学科

小さな生物の力を食品や 有用物質の製造に役立てる

微生物、発酵、酵母、乳酸菌、環境ストレス 生命科学科

環境経済・政策学、地域農業経済学、 自然資源管理、コモンズ研究

農業・農村の多面的機能と地域の 持続可能な発展

農業、農村、環境、持続可能な発展、コモンズ 食料農業 システム学科

食品栄養 学科

生命・健康・情報 生命・医学・栄養疫学に関する データ数理解析手法の研究

公衆衛生学、栄養疫学、GWAS、 データサイエンス

作物生産科学 農作物の作付体系に関する研究 根系発育、水田転換畑、窒素循環、 マメ科作物、輪作 農学科

教科教育学、理科教育学、 岩石・鉱物・鉱床学 理科の授業と科学的概念 科学的概念、授業法、理科、地学、概念地図法 農学科

生物系、農学、生産環境農学、 園芸科学 単為結果性に関する研究 単為結果、種子、環境、トマト、カボチャ 農学科

タケトシ カズキ 農業経済学、経済発展論、 環境政策論

経済発展と食料・農業・環境問題 経済発展、環境問題、農村経済、中国、 グローバル化 食料農業 システム学科

タケナカ ショウタロウ 遺伝育種科学 植物遺伝資源の評価および 育種利用に関する研究 コムギ、環境ストレス、遺伝資源、育種、 アントシアニン 生命科学科

10 竹中 祥太朗 講師

タナベ コウイチ

田邊 公一 教授

細菌学(含真菌学) 酵母を用いた膜タンパク質の研究 酵母、真菌、微生物、薬剤耐性、 トランスポーター 食品栄養 学科

タマイ テッシュウ 土壌・植物栄養学 オオムギ幼植物の新規乾燥耐性機構の解明 水耕栽培、オオムギ、乾燥、カリウム、根  農学科

玉井 鉄宗 准教授

村 真衣 助手

土岐 精一 教授

24

専門分野 学科 研究テーマ キーワード 掲載頁 農学部教員一覧
13
23
19
08
27
09
37
金子 あき子 講師 カネコ アキコ
38 吉良
徹 助手 キラ トオル
05
38
34
応用健康科学 食品栄養
38 妹尾 拓司 助手 セオ タクジ 栽培学 農学科 15 多賀
マサル
14 大門
ヒロユキ
17 滝澤
准教授 タキサワ リヒト
33
優 教授 タガ
弘幸 教授 ダイモン
理仁
17
38
マイ 遺伝学、ゲノム解析 生命科学科 27 鈴木
スズキ タロウ
ツジムラ
太朗 講師
36
尾崎
06
トキ セイイチ 植物ゲノム工学 精密ゲノム編集技術の開発 植物ゲノム編集、植物ゲノム工学、
13 尾形 凡生 教授 オガタ ツネオ 果樹園芸学
植物分子育種、デザイン育種、突然変異 生命科学科
06 島 純 教授
ジュン
シマ
38
井上 幹太 助手
カンタ
16
39

中川 千草 准教授

ナカガワ チグサ 環境社会学、資源管理、 地域研究 資源管理と地域づくりに関する社会学的研究 知の流通、地域資源、地域づくり、環境保全 食料農業 システム学科

ナカガワ マサツグ 経営・経済農学、経済政策

中川 雅嗣 教授

ナカタ ミヅキ

中田 聖月 助手

中田 裕子 准教授

ナガノ アツシ

永野 惇 教授

トミヨ

富予 教授

ニシザワ カホ

西澤 果穂 講師

ヒラヤマ

平山 喜彦 講師

フルモト

古本 強 教授

哲哉 教授

食料需要等の変化に対応した生産と 農業経営の安定化

ミシバ

三柴 啓一郎 教授

ミヤモト ケンイチ

賢一 教授

矢野 真友美 講師 ヤノ

山口 さや香 助手

環境科学、理科教育学 生命科学科

食料供給システムの構築 食料農業 システム学科 38

アジア史 中央アジアにおけるシルクロード交易 中央アジア、シルクロード、オアシス都市、 遊牧民、シルクロード、商人 食料農業 システム学科 07

生命科学科

食品栄養 学科

植物分子生物学、 情報生物学

食生活学

食品科学

野外における生物の遺伝子発現解析と それを利用した予測・制御 トランスクリプトーム、ゲノム、統計、気象、 データマイニング

生活習慣病・癌を予防する食生活 生活習慣病、癌予防、食生活の評価、 ヘルスプロモーション、栄養疫学

雑豆からの新規食素材の抽出および 物理化学的特性の検討

植物病理学、植物保護科学 農作物の病害診断と防除技術の実用化研究 病原菌、診断、防除、発生生態 農学科

食品素材、植物性食品、雑豆、ナタマメ 食品栄養 学科 19

学科

植物分子、生理科学 C4植物の光合成代謝調節に関する研究 雑草制御、タンパク質活性測定、顕微鏡観察、 環境応答 生命科学科

植物保護科学、植物分子・生理科学 植物免疫学、微生物生態学

食品栄養 学科

食品科学、構造生物化学

植物ー微生物相互作用の時空間的解析 植物免疫、細胞間相互作用、組織間相互作用、 イメージング、植物関連細菌

呈味物質、嗜好成分の構造と機能相関に 関する研究

嗜好成分(味、匂い)、構造機能解析、 相互作用解析、酵素、嗜好成分評価

雑草と農業の多様な関わり 雑草、在来品種、農法、農書 農学科

植物保護科学、生態・環境、農業 技術史、文化人類学・民俗学

遺伝育種科学、 応用分子細胞生物学、園芸科学

長期安定発現を目的とした DNAメチル化抵抗性プロモーターの開発

遺伝子組換え、ゲノム編集、DNAメチル化、 小胞体ストレス応答、フローサイトメトリー 農学科

15

ミネラル代謝と老化に関する研究 病態栄養学、腎臓内科学、食生活学、 病態医科学、応用健康科学 食品栄養 学科

食品栄養 学科

ヤマグチ サヤカ 食品栄養 学科

病態栄養学、腎臓内科学 基礎栄養学

ミホコ 土壌学、地球科学 土壌有機態窒素の実体解明 地力、土壌有機態窒素、土壌、火山噴出物 農学科 38

臨床栄養学 栄養管理に関する研究

栄養評価、栄養管理、臨床栄養

ヤマグチ ミチトシ

ヤマサキ マサユキ

山﨑 正幸 教授

ヤマザキ ハナエ

山崎 英恵 教授

山本

吉村 征洋 准教授

洋子

ワタナベ

食品安全問題へのフードシステム論的接近 フードシステム、食品安全、食品流通、 獣医経済疫学 食料農業 システム学科

食品栄養 学科

経営・経済農学、 獣医経済疫学

35 山口 道利 准教授

応用生化学、構造生物学 ウルトラファインバブルの性質と、 その利用が卵タンパク質へ与える効果

食品科学、栄養化学

タンパク質の構造、ウルトラファインバブル、 卵料理、食物アレルギー

自律神経活動、気分状態、おいしさ、嗜好、 日本料理 食品栄養 学科

農学科

抗ストレス・抗疲労に有効な 日本食デザインのための基盤構築

ヨーロッパ文学、外国語教育 シェイクスピア作品のアダプテーションに 関する研究

応用健康科学 食品栄養 学科

食料農業 システム学科

シェイクスピア作品、映画、アダプテーション、 オリジナル、規範からの飛躍

26

専門分野
研究テーマ キーワード 掲載頁 34
学科
33
35
ユウコ
ナカタ
24 中村
ナカムラ
07
ツヨシ
38 深尾
フカオ ナオ 食品栄養
38 松下 実代 助手 マツシタ ミヨ 食品栄養 学科 38 三上 葵 助手 ミカミ アオイ 食品栄養 学科 09 別役
准教授 ベツヤク シゲユキ
奈央 助手
重之
18 三浦
ミウラ レイイチ
生命科学科
励一 准教授
25 宮本
16
モリイズミ
森泉 美穂子 教授
38
涼平 助手 ヤマモト リョウヘイ 農芸化学 (生物有機化学、食品化学) 農学科 38
ダイスケ
38 吉山
助手 ヨシヤマ ヨウコ 微生物生態学 生命科学科 36 渡邊 洋之 准教授
ヒロユキ 環境史、環境社会学 野生生物をめぐる環境問題に関する
野生生物、環境問題、歴史、社会学
38
吉村 大輔 助手 ヨシムラ
作物生産科学 農学科
ワタナベ
歴史社会学的研究
渡部 恭輔 助手
キョウスケ
26
28
ヨシヒコ
25 桝田
マスダ テツヤ
ケイイチロウ
28
マユミ
18
マサヒロ
ヨシムラ
40

関連研究センター

食と農の総合研究所

本研究所は、食と農に関する農学を中心とした複合的・学際的・国際的な研究を推進すると共に、地域社会との連携をも視野に入れた研究を推 進し、これらの分野における学術の向上に寄与するとともに研究成果の社会還元を図ることを目指します。

食と農の総合研究所の研究体制

食と農の総合研究所

食の嗜好 研究センター 研究プロジェクト (共同研究)(個人研究)

受託研究 (共同研究)

食の嗜好研究センター

本研究所の目的達成のため、 次のとおり事業展開いたします。

1. 農学及びその関連領域に関する研究・調査 2. 紀要及び叢書の刊行 3. 国内外の大学及び研究機関との研究交流 4. 研究会、公開講座、講演会等の開催 5. 地場産業の育成等地域に対する技術協力及び技術指導 6. 公共機関、民間団体、その他学外からの依頼による研究・ 調査に関する事業

7. その他研究所の目的を遂行するために必要な事業

食と農に関する農学を中心とした複合的・学際的・国際的な研究を推進する目的で2015年4月農学部開設と同時に「食と農の総合研究所」を大 学付置機関として設置しています。当該研究所の付属センターとして「食の嗜好研究センター」を開設し、食の嗜好性に関する研究を行うことを目 的として、本格的に研究活動を開始しました。

研究体制

センター長:

山崎 英恵(龍谷大学農学部教授)

兼任研究員:

石原 健吾(龍谷大学農学部教授)

山﨑 正幸(龍谷大学農学部教授)

朝見 祐也(龍谷大学農学部教授)

野口 聡子(龍谷大学短期大学部教授)

松下 実代(龍谷大学農学部助手)

日本料理研究班 研究概要

コンセプト

「おいしくなくっちゃ!」をコンセプトとし、食の嗜好性に関する研究をおこないます。

センター内には日本料理研究班と食品開発における食嗜好研究班を設置し、活動しています。

食品開発における食嗜好研究班 研究概要  日本料理班では、日本料理の発展に資する実験研究 ならびに種々の啓蒙活動をおこなっていきます。

食の嗜好研究センター日本料理班では、日本料理に おけるおいしさや嗜好に関する研究を、大学研究者と 京都の料理人を中心に展開していきます。食の嗜好研 究センターの厨房や、大学の実験室を使い、料理人と 研究者が、料理を構成する様々な事象をテーマに、それ らを科学的な視点でもって考え、実験やディスカッ ションをおこない、おいしい日本料理創成のための基 盤を構築していくことが大きな目的です。

実は、こうした大学研究者と料理人との取り組みは、 既に2009年より京都で開始されており、本班に所属す る研究者や料理人のほとんどは、日本料理ラボラト リー研究会(2014年度まで京都大学に本拠)として活 動を行ってきています。日本料理ラボラトリー研究会 に所属する科学的な素養を身につけた料理人が、今 後、食の嗜好研究センター日本料理班の客員研究員と して更なる研究活動を展開することで、おいしさやヒト の嗜好に絡めた次代の日本料理のあり方についての提 案を示していくことが期待できます。

協力団体、関連機関として、日本料理ラボラトリー、 日本料理アカデミー、京料理の料亭、一般社団法人  日本香辛料研究会事務局を想定しています。

おいしさの客観的な評価は食に関わる様々な分野で切望されていますが、具体的な手法は確立 されていません。本センターでは、幾つかの食品、食材に関して、おいしさの座標軸を作り上げ、おい しさの客観的な評価を達成します。

想定される食品としては

・日本食の味わいの根幹をなすカツオ昆布出汁について、各海域の昆布、各漁港・生産地の鰹節を 選別し系統的に組み合わせ、最もおいしいと評価できるものを確立します。これには和食料理人 の感性を最大限に活用します。また、共同研究によって香料メーカーの研究所、食品開発メーカー などの分析技術を活用します。

美味しいと評価されただしについて、その味覚成分・匂い成分を徹底して分析し、おいしさに寄与 する要素を重回帰分析等で抽出し、おいしさの要素とそれによるだしのスコア化(分析値からおい しさを評価できる系)を確立し、今後、グローバル化が進む日本食に関して、日本の基本的な出汁 のおいしさの座標軸を確立します。この研究はすでに開始されています。

・同様の方法を用いて、特定の食品に対するおいしさのゴールデンスタンダード(最上のおいしさ) を決定し、おいしさを客観的に評価できる系を作ります。具体的な食品や農作物・水産物について は協力いただける食品生産者やメーカーとの共同研究によって遂行します。カレールーなどの食 品やブランドの野菜類などが候補に挙がっています。本研究センターでは、専門のメーカーや生産 者との共同研究プロジェクトを複数同時に遂行します。共同研究者には客員研究員として参加を していただきます。

・客観的評価法に至るまでの主観的判定をサポートする目的で、脳近赤外吸収計測による唾液腺血 流量の測定、おいしさの要素分解と統合による評価法、を利用します。

このような手法によって、多くの食材や食品、農業生産物におけるおいしさの評価体系が構築さ れることが期待され、世界でも初めてのおいしさを客観的に評価できる『見える化」できる研究セン ターとして、食の最大の付加価値であるおいしさを付与できる、社会の要請に応えることのできる 研究組織に発展させたいと考えています。

41

アクセスマップ

京都・滋賀3つのキャンパスは関西一円から好アクセス。

京都・滋賀の3拠点にあるキャンパスは、大阪・奈良・神戸からも抜群のアクセス環境が魅力です。

自宅からの通学にはもちろん、キャンパス近くのひとり暮らしにも便利。

関西一円の主要スポットへの好アクセスがキャンパスライフをさらに充実させます。

42

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