ECDIS

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ECDIS の 基


IMO決議とは何か? ECDISとは何か? 「公式」ECDISの見分けかた 主要ECDISメーカー

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IMOが船舶への搭載を義務付ける海図とは? ENCとは何か? ENCのデータ形式 ENCのディスプレイ表示 SENCとは何か? SENCの頒布方法 ENCのスケールレンジ ENCの命名ルール ENCの更新方法

17 電子海図および船舶への搭載に関する要件

6 8 10 14

5 ECDISの搭載義務化

目次


ペーパーレスでの航海は可能になるか?

ポート・ステート・コントロール要件および旗国要件 ポート・ステート・コントロールとは? 旗国が課する要件とは? 適切なバックアップシステムとは?

ECDISのトレーニングにまつわる要件とは? ECDISで推奨されているトレーニングは? ECDISトレーニングが受けられる場所は?

ECDISをフル活用するとはどういうことか? ECDISにはほかに、 どのようなデータソースや技術を組み込めるのか? ECDISに接続可能な航海用センサーとは? ECDISで利用可能な情報やデータベースとは?

103 用語・略語解説

93 Jeppesen Marineについて

80 84 86 88

77 ECDIS ― 海図表示装置以上の存在

70 72 74

67 トレーニング

44 46 50 62 64

43 ECDIS搭載義務の施行について



ECDIS の搭載義務化


IMO決議とは 何か?


SOLAS 条約第 V 章第 19.2 規則の改正では、国際航海を行う船舶に対し、下記のスケジュー ルで ECDIS 搭載を義務付けています。 III ECDIS搭載義務化スケジュール 船種

サイズ

新造船

既存船

旅客船

500 GT 以上

2012 年 7 月 1 日 2014 年 7 月 1 日以降の最初の検査まで

タンカー

3,000 GT 以上

2012 年 7 月 1 日 2015 年 7 月 1 日以降の最初の検査まで

50,000 GT 以上

2013 年 7 月 1 日 2016 年 7 月 1 日以降の最初の検査まで

タンカー以外の 貨物船

20,000 GT 以上(新造船) 2013 年 7 月 1 日 2017 年 7 月 1 日以降の最初の検査まで 20,000 ∼ 50,000 GT(既存船) 10,000 GT 以上(新造船) 2013 年 7 月 1 日 2018 年 7 月 1 日以降の最初の検査まで 10,000 ∼ 20,000 GT(既存船) 3,000 ∼ 10,000 GT

2014 年 7 月 1 日

ECDIS の搭載義務化 /// IMO 決議とは何か?

2009 年 5 月 26 日から 6 月 5 日まで開催された第 86 回会合で、IMO 海上安全委員会は ECDIS 搭載を義務付ける新たな規則を採択しました。

10,000 GT 未満の既存船については、 改正による適用義務の対象外

補足:上記実施期日より 2 年以内に永久的に非稼動となる船舶については、搭載義務の適用を免除することがで きます。

紙海図ならびに航海用刊行物(水路誌等)に代わる ECDIS の使用が認められたことを受けて、 既存の第 V 章第 19 規則第 2.1.4 項にも改正が加えられています。 ただし同規則では、国際航海に従事しない船舶や、永久的に非稼動となるため搭載義務の 適用対象外となっている船舶、また国際航海に従事しているが適用対象となる総トン数を下回 る貨物船などいくつかの事例については、紙海図および刊行物のみ使用することが適切である と明記されています。

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ECDISとは

何か?


表示することができ、陸地や海図に記載された物標、航海支援施設と、目に見えない危険 要因を関連づけながら、常に船位を特定し、自動で判断支援を行います。 使用する航海用電子海図(ENC)に、全世界測位システム(GPS)やレーダー、測深儀、 自動船舶識別装置(AIS)といったセンサー類から得た情報を統合して、船位を表示します。 また、水路誌など航海に関わる情報も表示します。 ECDIS については、IMO-ECDIS 性能基準(IMO 決議 MSC.232 (82))で次のように定義さ れています。

ECDIS の搭載義務化 /// ECDIS とは何か?

電子海図表示情報システム(ECDIS)とは、IMO 規則に準拠し、紙海図に代わる使用を 認められている、コンピュータベースの航海システムです。多彩なリアルタイム情報を統合

電子海図表示情報システム(ECDIS) とは、1974年に締結されたSOLAS条約第V章 第19規則および第V章第27規則で求められている、最新維持された海図に適合 するものとして容認されることができる、十分なバックアップ措置を備えた航海 情報システムで、 システムENC(SENC)から選別された情報と、各種航海センサー からの位置情報などを併せて表示することにより、 また、必要に応じその他の航 海関連情報を表示することにより、航海計画とルート監視において航海者を支援 するものをいう。

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「公式」

ECDISの

見分けかた


国際電気標準会議(IEC)が策定した型式認定テストは、IMO の ECDIS 性能基準にもとづき、 IHO 基準 S-52 および S-57、S-63 を適用したものです。性能基準では、以下を始めとする様々 な詳細事項が定められています。

• ECDIS は標準表示を常に、単一の操作で表示できること。 • 操船者による安全深度の選択が可能であること。ECDIS は各点の深度を表示する際、 常に安全深度と同等またはそれに満たない深度を強調表示すること。 • ENC とその更新事項は、その情報内容の質を損なうことなく表示されること。 • ENC の内容は、変更不可能なものであること。 • ECDIS は、ENC 更新データの反映に先立ち、確認のために簡単な手入力での更新を 行えるものであること。ディスプレイ上では ENC およびその公式アップデートと、手入 力情報との識別が可能であり、かつ表示の読み易さを損なわないものであること。

ECDIS の搭載義務化 /// 「公式」ECDIS の見分けかた

ECDIS が法的に IMO 規則に適合するには、通常は認められた関係機関、もしくは旗国に より指定された海事検定機関などが実施している、型式認定を受ける必要があります。

• SENC は常に「ノースアップ」表示が可能であること。これに加え、他の方位での表 示も行えるものであることは認められる。この場合、海図情報表示が不安定になるこ とを避けるため、段階的に十分に大きな海図に変更できること。

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• 航路監視用海図の有効表示域は、270 mm 四方以上であること。 • 選択した航路以外に、一つ以上の代替の航路計画を立てることを可能とすること。 選択した航路は、代替航路とは明確に識別できるものであること。

詳細な一覧については、IMO サイト(http://www.imo.org)内の MSC 決議 232(82)を ご確認ください。

他の航法装置と同じく、ECDIS の IMO 基準への準拠はメーカーの自己申告ベースで行わ れています。ヨーロッパ諸国の政府は、EU の船舶機器指令(Maritime Equipment Directive) に準拠していることを示す「舵輪マーク(wheel mark) 」をもって、ECDIS 型式認定取得の 証明とすることに合意しています。北米にはこうした施設、組織、または旗国による具体的 な要件は存在しません。 一部の海洋国では、国内の海上安全局または海運局内にも型式認定プログラムを設けて います。


IMO は、一部の ECDIS で確認された表示異常の報告について懸念を表明し、IMO MSC Circular 1391 を発行しました。MSC Circular 1391 では航海者に対し、ECDIS の性能に関し て予期せぬ問題が生じた場合は関係当局への報告を推奨しています。IMO により最近合意 された重要な新しい海図機能、たとえば特別敏感海域(Particularly Sensitive Sea Areas)や 群島航路帯(Archipelagic Sea Lanes)などの表示には、IHO が策定した最新版の表示基準 が ECDIS に採用されていることが必須であるため、古い ECDIS の中にはそれらを表示でき ないものがあると考えられます。このほか、一部の機器の特定の操作モードで、ECDIS アラー ムや表示が一部、動作しないケースもあります。 調査をさらに進め、より多くの情報を収集するため、ECDIS の海図および表示基準に責任 を負う政府間組織である IHO は、ECDIS の運用チェックを実施できる簡単なチェック用デー タセットを作成しました。 このチェックで発見された異常は、ECDIS のアップグレードの必要性を航海者に注意喚起 するとともに、ECDIS の各種製品が海図情報の表示や処理をどのように行っているかの特定

ECDIS の搭載義務化 /// 「公式」ECDIS の見分けかた

IHO チェック用データセット

に役立てられます。チェックによるフィードバック内容は、必要な是正措置を講じられるよう、 IMO および各国の水路当局、ECDIS メーカーなどへの報告に使用します。 チェック実施に必要な ENC データは、ENC プロバイダー、または IHO ウェブサイトから 船舶へ提供されます。

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ウェブサイト http://www.maritech.cn http://www.danelec.dk http://www.dmu-maritech.com http://www.emlx.co.kr http://www.furuno.co.jp http://www.gemrad.com http://www.hhee.com.cn/enindex.asp http://www.headwaytech.com http://www.imtech.com http://www.jrc.co.jp http://www.kelvinhughes.com http://www.km.kongsberg.com http://www.mapps.l-3com.com

メーカー Dalian LandSea Danelec Marine DMU China e-MLX 古野電気

GEM Haihua Electronics Enterprise Corporation Headway Marine Technology Imtech 日本無線

Kelvin Hughes Kongsberg Maritime L-3 Navigation

主要 ECDIS メーカー


表に記載の情報は随時変更される場合があるため、最新情報については www.c-map.no/ecdisecs をご確認ください。

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http://www.navmarine.ru http://www.osl.com http://www.pcmaritime.co.uk http://www.raytheon-anschuetz.com http://www.rutter.ca http://www.sam-electronics.de http://www.samsungbaha.com http://www.microplot.co.uk http://www.sodena.net http://www.sperry-marine.com http://www.stxengine.co.kr http://www.telko.no http://www.tokyo-keiki.co.jp http://www.totemplus.com http://www.trancomm.com.cn http://www.tresco.be

NavMarine OSI Nav systems PC-Maritime Raytheon Anschütz Rutter Technologies SAM Electronics Samsung Sea Information Systems Sodena Sperry Marine STX Engine Co., Ltd. Telko AS 東京計器

Totem Plus Trancomm Technologies Tresco Engineering

ECDIS の搭載義務化 /// 主要 ECDIS メーカー

http://www.simrad-yachting.com

http://www.maris.no

Navico

Maris



電子海図および船舶への 搭載に関する要件


IMOが船舶への 搭載を義務付ける 海図とは?


えている場合、当該の搭載要件を電子的手段だけで満たすことを容認しています。 海図および航海用刊行物の搭載要件を満たすには、次の 2 つの方法があります。 − 公式かつ最新維持された紙海図を搭載する、または − 型式認定取得済みの ECDIS を搭載する(最新維持された航海用電子海図(ENC)を 使用し、適切なバックアップ措置により補完)

海図搭載に関する要件については、SOLAS 条約第 V 章で規定されています。この件に関 連する規則は、次の 3 つです(詳細は次ページに掲載しています) 。 − 第 2 規則:海図や航海用刊行物(通常は「公式海図、公式刊行物」と呼ばれる) に関する定義。 − 第 19 規則:船種ごとに、搭載すべき機器に関する規定。 − 第 27 規則:海図や航海用刊行物を最新維持する必要性に関する規定。

電子海図および船舶への搭載に関する要件 /// IMO が船舶への搭載を義務付ける海図とは?

すべての船舶に対する航海環境の安全支援を行うため、IMO では船舶への海図搭載を義 務付けています。2002 年 7 月に発効した SOLAS 規則改正版では、適切なバックアップを備

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第 2 規則

第 19 規則

2.2 海図または航海用刊行物とは、政府当

2.1 すべての船舶はその大きさに係らず、

局または権限を有する水路機関、その他関

次のものを備えなければならない。

(IMO SOLAS V/2)

連政府機関により、あるいはその権限の下 で公式に刊行され、かつ、海上航海に関す る要件を満たすよう作成された、特定目的 のための地図または図書、もしくは当該地 図または図書を作成する基となるよう特別 に編集されたデータベースである。

(IMO SOLAS V/19)

2.1.4 本船の目的とする航海の航路を計画し て表示し、航海を通して船位を記入し、監 視を行うための海図および航海用刊行物。 電子海図表示情報システム(ECDIS) は、 当項の海図搭載要件を満たすものと見なす ことができる。 2.1.5 第 2.1.4 項で求められている機能の一 部もしくはすべてを電子的手段により実現す る場合は、第 2.1.4 項の機能要件を満たす バックアップの備え付け *。 * 前項 2.1.4 および 27 規則の要件に十分適合す る紙海図は、ECDIS のバックアップとして使用する ことができる。ECDIS のその他のバックアップも受 け入れ可能である(IMO 決議 MSC.232(82) 付属 書 6 を参照のこと)。


(IMO SOLAS V/27) 海図および航海用刊行物(水路誌、灯 台表、水路通報、潮汐表、その他予定され た航海に必要な航海用刊行物など)は、適 切かつ最新のものであること。

電子海図および船舶への搭載に関する要件 /// IMO が船舶への搭載を義務付ける海図とは?

第 27 規則

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ENCとは 何か?


で海図情報が収納されています。 水路部など各国の水路当局が作製、認可を行っている ENC は、IHO 仕様基準に準拠した ベクトル海図です。ECDIS 内部で使用する際は、海図全体もしくはユーザーが選択した海図 データを組み合わせて表示させることができます。ENC は、海図に記載された情報と船の位 置や動きを照合して、目前の危機を警告するような設定が可能なシステムで使用した場合に、 「高度な」威力を発揮します。 ENC は、現行紙海図や、水路当局が保有する資料をもとに作製された、地理関連付けオ ブジェクトのデータベースから編集されたベクトル海図です。ECDIS で ENC を使用する場合、 ユーザーが選択した海図図載事項をユーザーが選択した縮尺でシームレスに表示させること ができます。ENC から生成される海図画像は、該当する紙海図をそのまま再現したもので はありません。表示の仕方を変えているのは、見やすさと状況認識を向上させる意図がある ほか、安全性に悪影響を及ぼすことなくオーバーレイ表示を機能させるためであり、またコ ンピュータ画面のサイズや解像度による制約に対応させるためでもあります。ENC はデータ ファイルです。つまり、ECDIS の独自機能により、ENC の内容を継続的にモニターし、本船 の位置と動きにともなう目前の危機に対し、警告を発することができるわけです。

電子海図および船舶への搭載に関する要件 /// ENC とは何か?

航海用電子海図(ENC)とは、ECDIS で使用する公式海図データを含むファイルです。 ENC には、それぞれに固有の属性をもつ点・線・区域で表現される地理オブジェクトの形

IMO による航海用電子海図(ENC)についての定義: ENC とは、ECDIS とともに使用するため、政府公認の水路当局の権限のもとで刊行され、内容や構成、 フォーマットについて標準化されたデータベースをいう。ENC は、安全な航海のために有用なすべて の海図情報を含むもので、紙海図の図載情報に加え、安全な航海に必要と考えられる補足的情報を 含むことがある。

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ENCの

データ形式


当局間におけるデジタル水路データの交換をはじめ、デジタルデータやデジタル製品のメー カー、航海者、その他データ利用者へ頒布する際の基準について記載されています。すべ ての ENC で、「世界測地系 1984(WGS 84) 」が採用されています。 このほか、IHO では航海用電子海図(ENC)データの暗号化と保護に関する基準を策定 しています。同基準は S-63 と呼ばれ、水路当局やサプライヤー、エンドユーザーにとって 有益な仕組みを提供しています。S-63 は IHO の管理下にあり、RENC(地域 ENC 調整センター。 IC-ENC および Primar Stavanger)が提供するサービスとして、S-63 に準拠した暗号化を利 用できます。 海運業界では今後数年のうちに、IHO が策定した新基準 S-100 の採用を開始する予定 で、現在 S-57 基準で提供されている海洋および水路情報交換のさらなる円滑化を図ります。 S-100 では、より柔軟で充実したデータの枠組みを設けることによって、S-57 の水路データ 転送基準の機能が拡張されます。ECDIS メーカー各社は、要件に従い、データが利用可能 になったときに各々のシステムに S-100 を採用、実装することになります。

電子海図および船舶への搭載に関する要件 /// ENC のデータ形式

IHO 刊行物 S-57「デジタル水路データについての IHO 転送基準」は、様々な機関から 刊行される ENC を世界的に統一するための土台を提供するものです。同書には、各国水路

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ENCの

ディスプレイ 表示


ント「プレゼンテーション・ライブラリ」に収録されています。 ENC に含まれる地理的座標参照オブジェクトと、プレゼンテーション・ライブラリに収録 された適当な記号化ルールは、それらを表示するときにのみ、ECDIS 内で相互にリンクされ ます。ECDIS で表示される画像は、選択した海域や表示縮尺、また航海者が事前に設定し た環境照明その他の運用条件などに応じて異なります。 ENC のプレゼンテーション・ライブラリの定義は、IHO 刊行物 S-52 Appendix 2「ECDIS 表 示色彩・記号仕様基準」の Annex A に記載され、すべての ECDIS に対して適用が義務付け られています。 ECDIS のプレゼンテーション・ライブラリでは可能な限り、紙海図を踏襲しています。た だし、研究や実用初期段階での実績から、ECDIS の表示をユーザーがうまく読み取れるよう にするには、紙海図よりも表示に柔軟性を持たせる必要があることが分かっています。この ため、プレゼンテーション・ライブラリにはオプションとして、紙海図にはない表示方法も収 録されています。

電子海図および船舶への搭載に関する要件 /// ENC のディスプレイ表示

ENC には地理的実在物の抄録記述が含まれていますが、その表示ルールについては定め られていません。ENC データの表示ルールはすべて、別の ECDIS 用ソフトウェアコンポーネ

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船橋内の明るさは、ディスプレイに表示される情報が見えにくくなる太陽光のもとでは最 も明るくなり、航海者の夜間視認に影響をおよぼさないよう、ディスプレイからの光の放出 を極力抑える必要がある夜間には最も暗くなるといった具合に、幅広く変化します。 S-52 の表示色彩・記号仕様は、通常の昼間における要件よりもはるかに困難な、夜間に 関する要件を満たすことを想定して策定されています。紙海図を見るには反射光を使います が、ECDIS のディスプレイでは放射光が使われていることから、ECDIS では夜間視認の妨げ とならないよう、紙海図の白い背景を黒い背景に切り替えて、海図を反転表示できる必要が あります。 このため、3 つの配色パターンが用意されています。 − 昼間(白い背景) − 薄明(黒い背景) − 夜間(黒い背景)


夜間

電子海図および船舶への搭載に関する要件 /// ENC のディスプレイ表示

昼間

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SENCとは 何か?


ただし、SENCフォーマットは ECDIS メーカーによって異なる場合があります。ENC のフォー マットは統一されているのに対し、SENC フォーマットの仕様は各メーカーが独自に選択し ます。 SENC の特性については IMO-ECDIS 性能基準第 3.3 項で定義されています。海図の更新は、 電子的に受領したものであれ手動で行ったものであれ、SENC に直接反映されます。

IMO による SENC についての定義(IMO-ECDIS 性能基準に記載): 3.3 システム ENC(SENC)とは、ECDIS メーカー固有の内部フォーマットに変換されたデータベー スである。変換の際、ENC データおよびそのアップデートから情報は欠落しない。ディスプレイ表示、 その他の航海機能のため、ECDIS が実際にアクセスしているのがこのデータベースであり、最新維 持された紙海図と同等の内容を有する。SENC はまた、航海者が追加した情報や、他の情報源から の情報を含ませることができる。

/// SENC とは何か?

用に最適化されたシステム ENC(SENC)と呼ばれる内部フォーマットに変換します。

電子海図および船舶への搭載に関する要件

ECDIS は、ENC の内容を直接画面に表示させるわけではありません。ENC データを迅速 に表示するため、個々の ENC を S-57 に準拠した ENC フォーマットから、海図イメージ表示

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SENCの

頒布方法


換し、エンドユーザーに頒布することを認めています。 ECDIS では、表示された SENC データが ENC からのものであるか、あるいは非公式資料 に基づくものであるかを、データに埋め込まれたエージェンシー・コード(データ作製者に 割り当てられた 2 文字の固有コード)を使って判定することができます。ECDIS はこのコー ドを使って航海者に対し、非公式資料による SENC データを使用している場合は、最新維 持された公式の紙海図で航海しなければならない旨を伝える機能を備えています。このとき ECDIS は ECDIS 画面上に、次のような警告を表示します。 《No Official Data -Refer to paper chart》 第 16 回国際水路会議(2002 年 4 月 14 ∼ 19 日モナコ開催)において、IHO 加盟国は ECDIS のための「SENC 頒布オプション」(同会議第 17.e 決議)に合意し、基本となる IHO S-57 フォーマットに加え、各社固有の SENC フォーマットでの ENC データの頒布を容認しま した。これに応じて S-52 の第 3.3 項が改正され、IHO 技術決議 A3.11 が新たに作成されて います。

/// SENC の頒布方法

ストリビュータに対し、ECDIS 内で ENC 変換を行うかわりに、あらかじめ ENC を SENC に変

電子海図および船舶への搭載に関する要件

SENC の頒布は、公式 ENC データの標準的な頒布・使用に代わる方法です。この方法は IHO の全世界航海用電子海図データベース(WEND)システムから生まれ、海図データのディ

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ENCの

スケールレンジ


下の表は、航海目的バンドごとに一般的なスケールレンジの概要をまとめたものです。

III スケールレンジに合わせた航海目的の割り当て 航海目的

スケールレンジ

概観 (Overview)

1:1 499 999 未満

一般航海 (General)

1:350 000 – 1:1 499 999

沿岸航海 (Coastal)

1:90 000 – 1:349 999

アプローチ (Approach)

1:22 000 – 1:89 999

入港 (Harbour)

1:4 000 – 1:21 999

接岸停泊 (Berthing)

1:4 000

/// ENC のスケールレンジ

至っていません。

電子海図および船舶への搭載に関する要件

ENC の作成および設計は、様々なスケールレンジ(航海目的バンド)を想定して行われ ますが、どの航海目的バンドにどの縮尺を採用するかについては、いまだ国際的な合意に

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ENC 上へのレーダー・オーバーレイ表示を容易にするため、各国水路当局では ENC の 編集スケールを、次の表で示した標準レーダーレンジのスケールに一致させるよう推奨して います。

III レーダーレンジ/標準スケール 航海目的

スケールレンジ

200 NM

1:3 000 000

96 NM

1:1 500 000

48 NM

1:700 000

24 NM

1:350 000

12 NM

1:180 000

6 NM

1:90 000

3 NM

1:45 000

1.5 NM

1:22 000

0.75 NM

1:12 000

0.5 NM

1:8 000

0.25 NM

1:4 000

航海目的バンドが同じ ENC はオーバーラップが可能ですが、表示される情報をオーバーラッ プさせることはできません。航海目的バンドが異なる ENC であれば、表示範囲と情報の両方 をオーバーラップさせることが可能です。


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電子海図および船舶への搭載に関する要件

/// ENC のスケールレンジ


ENCの

命名ルール


/// ENC の命名ルール IHO 基準 S-62 に記載されています。3 文字目(1 から 6 までの数字)は、航海目的バンド を示します。残りの 5 文字は、各 ENC に固有の識別符号を示す英数字です。

電子海図および船舶への搭載に関する要件

ENC はそれぞれ、8 文字の「名前」によって識別されます。最初の 2 文字は作製国、 たとえば「FR」はフランスを、 「GB」はイギリスを示しています。全作製国コードの一覧表は、

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ENCの

更新方法


/// ENC の更新方法 て行われます。 更新情報は、当該サービス提供者と本船搭載の通信設備の能力に応じて、以下を始めと する様々な手段で本船に届けられます。 • DVD などのデータ頒布メディア • 衛星通信(SATCOM)による E メールへの添付書類 • 衛星通信(SATCOM)と追加通信機器を介した同報通信として • GSM や 3G、WiFi その他、インターネット経由のダウンロード

電子海図および船舶への搭載に関する要件

ENC の定期的な更新情報の作製・頒布は、ENC の初回作製・頒布と同様の方法で行うこ とになっています。更新は通常、当該水域の水路通報により周知される海図改補に合わせ

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ECDIS 搭載義務の 施行について


ポート・ステート・ コントロール要件 および旗国要件


政府や国際的もしくは国内の管理機関が担当することになります。政府が IMO に加盟した時 点で、条約に定められた規則が国内の法規制とみなされ、当該国の国旗を掲げる船舶や同 国の港湾に寄港する船舶に対して適用されます。これは、通常は各国の海事監督官庁(ア メリカ合衆国沿岸警備隊など)の支援のもとで行われる、旗国および寄港国による監査を通 じて徹底されます。 ある国家が自国の旗を掲げる船舶に課している要件(旗国要件)と、自国に寄港する船 舶に課している要件(ポート・ステート・コントロール要件)は同じであることが普通です。 しかしその一方で、同じ IMO 条約から由来していながら、国ごとに、あるいは政府ごとに課 される要件が異なるケースも珍しくありません。 船主はもちろん、本船の旗国当局の規則や規制について熟知していなくてはなりません。 寄港国当局による地域間協力(欧州および北大西洋 27カ国の海事当局によるパリMoU など) のもとで、各地域の港湾に寄港する船舶の船主に向けたガイドラインが提供されています。

ECDIS 搭載義務の施行について /// ポート・ステート・コントロール要件および旗国要件

IMO では今後、商船船舶への ECDIS の搭載義務化を着実に進める旨の決議案を採択し ていますが、IMO にはこれを強制する権限がありません。決議案の施行については、各国

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ポート・ステート・ コントロールとは?


アジア極東地域におけるポート・ステート・コントロール機能を担って連携する「アジア 太平洋地域における PSC の協力体制に関する覚書(東京 MoU) 」地域では 2008 年末、航 海の安全をめざして検査強化キャンペーンを展開しました。強化期間中に特に目立った不備 は、適切な海図および航海用刊行物の不足に関するものでした(全体の 57.39%) 。 PSC 検査はいずれもIMO の SOLAS 条約で定められた要件に従って行われてはいるものの、 同条約の解釈の違いによって国ごとあるいは地域ごとに異なるガイドラインが作られるとい う事態が生じています。PSC 検査官は、全船舶に携行されている旗国当局の声明書を参照し、 そこに記載された要件にもとづいて船舶の監督を行います。 PSC 検査官の持つ専門知識はさまざまですが、多くは航海に関わる経歴を持ち、ECDIS システムに関してはより経験豊かな人材が着実に増えることが予想されます。ですから、こう いったシステムに関する習熟度や、システム管理についての厳格さは年々高まっていくと見 てよいでしょう。

ポート・ステート・コントロールとは?

務付けについては、IMO の SOLAS 条約が国際規則とされています。

ECDIS 搭載義務の施行について ///

ポート・ステート・コントロール(PSC)では、当該国の港湾に寄港するあらゆる商用船舶が、 国内法および国際規則に従って運航されているかどうか、確認を行います。ECDIS 搭載の義

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当局が、ECDIS 画面に表示されるデータを検査して、公式 ENC であるかどうか、最 近更新されているか、最新の水路通報が反映されているかどうかを確認することが あります。

4)最新維持された ENC が船舶に搭載されているか

当局では、船橋スタッフが ECDIS のトレーニングを受けた旨を証明するものを検査 します。トレーニングは通常、IMO モデルコースの要目を含む一般コース(5 日間 のプログラム)と、個別の ECDIS に特化した「ボタンやスイッチの操作」にまで習 熟するためのコースから構成されます。寄港国が当直船員に対し、技能(ENC 表示、 船位の入力、方位線の入力など)の実演を要求する場合があります。

3)船長および当直船員は、ECDIS の汎用的、および個別システム対応の習熟訓練が為 されている旨を示す、適切な文書を提示できるか

当局は ECDIS システムを重要な船橋装備と見なしているため、艦橋スタッフが容易 に参照できる説明書の有無を確認します。説明書は、装置の故障や停電といった事 態についても記載され、当直船員にすばやく的確な情報を提供できるようでなくて はなりません。

2)ECDIS システムの使用手順を記載した説明書が、船舶に搭載されているか

当局は、ECDIS システムが基準に準拠していることを確認するため、これを証明す る文書の提示を求める場合と、ECDIS システム自体に準拠していることを示す表示 があるかどうかを検査する場合があります。船舶に当該の文書の所有を徹底させる ことに関する責任は、旗国が負います。

1)当該船舶の航海システムが、IMO-ECDIS 性能基準に準拠したものであることを示す 文書を所有しているか

パリ MoU(ヨーロッパ地域が対象)の検査対象項目リストには、PSC 担当当局がチェッ クする項目について次のように記載されています。


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ECDIS 搭載義務の施行について ///

ポート・ステート・コントロールとは?

当局は、適切な紙海図を搭載しているか、針路が書き込まれているか、定期的に 船位を記録しているかを確認します。

9)ECDIS システムを RCDS モード(ラスター海図表示システム)で使用する場合、船 舶が最新維持された紙海図を有しているか

当局は、船舶のバックアップ措置が、旗国の指定要件に従うものであるか、指定仕 様に一致しているか、使用準備が整っているかを検査します。デュアル ECDIS を採 用している船舶の場合、バックアップ ECDIS は独立した電源に接続する必要があり ます。バックアップ ECDIS がバックアップとして有効であることを確認するため、電源、 センサーがどのように接続されているかを PSC 検査官が検査する場合があります。

8)ECDIS が機能不全に陥った場合、残りの航海を安全に行うことができるよう、承認さ れたバックアップ措置を船舶に搭載しているか

当局は ECDIS の表示を見て、船舶がしかるべき位置にあるか、正しい方位を向いて いるか、また、船舶が ECDIS 上で正しい位置に表示され、進路に合っているかどう かを確認します。

7)センサーのデータと ECDIS に表示される内容が呼応しているか

ECDIS の搭載如何にかかわらず、いずれの航海者にとってもお馴染みの要件で、旗 国の指定要件によって決まっています。

6)船舶が、各国で搭載を義務付けている、適切な航海用刊行物を有しているか

当局が、適切な縮尺で航路全体を表示できるかどうかを確認することで、航海計画 を検査することがあります。

5)残りの航海部分を網羅した正しい航海目的バンドが船舶に搭載されているか


旗国が課する 要件とは?


ます。 • ENC を使用した ECDIS を、船舶の主要な航海手段として認めるか • 十分なバックアップ措置とは何で構成されるか

旗国による ECDIS 要件に関する有益な資料を、RENC(地域 ENC 調整センター)である、 IC-ENC(国際 ENC センター)と Primar が 2007 年にまとめたものを、次ページ以降に再録 しました。 この情報は、不明点を明らかにするための参照用資料としてまとめられたもので、各国も しくは国際的な法規制に代わる、もしくはこれらに改正を加えるものではありません。船主 は常に、各国の管理当局と旗国から最新情報を取得する必要があります。

ECDIS 搭載義務の施行について /// 旗国が課する要件とは?

ECDIS の搭載義務化について、旗国当局が課している要件は残念ながら、各国政府間で 統一されているわけではありません。政府による要件は、おもに次の 2 つの点で異なってい

訳者注:本文にもあるように、次ページ以降にある各国の状況は RENC が 2007 年の段階で取りまとめたものです。 必ずしも最新の状況を示しているわけではないことをご了承のうえ、参考情報としてご利用ください。最新情報に ついては関係当局より必ず取得されますようお願い申し上げます。

51


Y Y* Y Y Y* Y Y* N Y Y*

ドイツ ギリシャ 日本 韓国 リベリア リトアニア マルタ マーシャル諸島

Y

エストニア

フランス

Y

デンマーク

フィンランド

Y

キプロス

1, 3

Y

Y

カナダ

N

Y

ブルガリア

チリ

N

ブラジル

コロンビア

1, 3

Y

バルバドス

3

1, 3*

N/A

1, 3

1, 3

1, 3

1, 3

1, 3*

3*

1, 3

1, 3

1, 3*

1, 3

N/A

1, 2, 3

N/A

1, 3

1, 3

Y

1, 2, 3

Y

バハマ

認められている バックアップ措置

オーストラリア

旗国

航海の主たる 手段として、ENC および ECDIS を 認めているか

Y

N

N

N

N

N*

Y

Y

Y

N

Y*

N

N

N

N

Y

Y

N

N/K

Y

Y

ECDIS を RCDS で 使用する場合、 RNC の使用を 認めているか

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

N

SOLAS 海図備え付け 要件の順守にあたり、 ECDIS で非公式海図 データの使用を 認めているか


ECDIS 搭載義務の施行について /// 旗国が課する要件とは?

N

N N N

N/A

1, 2*, 3 Y* イギリス

アメリカ合衆国

Y*

N

N 1, 3 Y

Y

N

ウクライナ

Y

Y* 1, 3

N/A

Y

N スイス

Y スペイン

スウェーデン

N

N Y

N

N

1, 3

N

N

ポルトガル

N/A

N

N 1, 3 Y

N

パナマ

ポーランド

N/A

N

N Y

Y

N/A

1, 3*

N ニュージーランド

ノルウェー

N

N N N/A N モーリシャス

オランダ

一覧表の各欄について: アスタリスク記号(*)は、参照すべき重要あるいは有用な情 報が次項に記載されていることを示す。 プラス記号(+)は、旗国のウェブサイトから詳細を入手した ことを示す。 Y =「はい」 、N =「いいえ」 、N/A =該当なし、N/K =不明 第 1 欄: 旗国の国名:当該旗国が直接、もしくは IMO 経由で関係文書 を発行している場合、 次頁カッコ内に参照文書を記載している。 第 2 欄: 航海の主たる手段として、ENC および ECDIS を認めているか 「Y(はい) 」は、当該旗国が登録船舶すべてに対して、 MSC.232(82)の規定にもとづき、十分なバックアップ措置を 備えた上で ENC を使用する場合、ECDIS で ENC の使用を主た る航海手段として認めていることを示す。アスタリスク記号 (*)は、船舶ごと個別に許可されていることを示す。詳細は 次ページ以降の各国の項を参照。 第 3 欄: 担当当局が認めているバックアップ措置 1 – 独立した電源を有する第 2 の ECDIS 装置で、ENC を使用 する 2 – 独立した電源を有する第 2 の ECDIS 装置で、公式航海用 ラスター海図(公式 RNC)を使用する 3 – 運行区域を十分にカバーする紙海図を使用する 4 – 上記を除く、次ページ以降の各国の項に記載の方法 第 4 欄: ECDIS での RNC 使用(RCDS モード)を認めているか 「Y(はい) 」は、航海に適当な縮尺の ENC が刊行されていな い区域において、かつ最新維持された一連の紙海図で補完し ている場合に、旗国が ECDIS(RCDS モード)での RNC 使用 を主たる航海手段として認めていることを示す。 第 5 欄: ECDIS で非公式海図データの使用を容認しているか 「N(いいえ) 」は、私的(非公式)海図データが海図搭載要 件を満たすものとは認められず、ECDIS で使用する場合は、航 海に必要な全ての公式紙海図を搭載して主たる航海手段として 使用しなければならないことを示す。

53


オーストラリア

ECDIS の容認 オーストラリア海上保安庁(AMSA)の Marine Notice 15-2010 を参照。 ECDIS のバックアップ措置 1. 完全に独立した 2 台目の ECDIS。または、 2. 完全に独立し、IMO-ECDIS 性能基準 MSC.232(82) 付属書 6 の要件を満たした ECS。または、 3. 予定している航海について最新の水路通報まで改補した、完全な一連の紙海図。 RCDS の容認 ENC が刊行されていない区域については、公式 RNC も使用可。ただし、RCDS モードで運用する場合、 船舶への「適切な一連」の紙海図の搭載要件を満たすよう留意すること。 AMSA では IHO に対し、オーストラリア水域の「適切な一連」の紙海図として最低限必要な紙海図のリ ストを提出。 オーストラリア籍船は、特定の状況下において「適切な一連」の紙海図搭載要件を免除される場合も。 詳細は、AMSA Marine Notice 15-2010 を参照。 IMO または旗国通告 Marine Notice 15-2010(海事通報 2010 年第 15 号) www.amsa.gov.au/shipping_safety/marine_notices/2010/ ウェブサイト www.amsa.gov.au

バハマ

IMO または旗国通告 BMA Information Bulletin 第 51 号 2003 年 7 月 ウェブサイト www.bahamasmaritime.com

バルバドス

IMO または旗国通告 Information Bulletin 64(情報便覧第 64 号)− 電子海図および航海用刊行物 SLS14/Circ200 www.imo.org/includes/blastDataOnly.asp/data_id%3D7855/200.pdf ウェブサイト www.barbadosmaritime.com/index3.html


ECDIS の容認 ECDIS の容認、トレーニング、RCDS モードでの使用など、国家による規制要件についての詳細は、カ ナダ船舶海運法(Canada Shipping Act)にもとづいて定められた 1995 年カナダ海図・水路諸規則、 および船舶乗組員規則 section 40 に記載。 IMO または旗国通告 カナダ船舶法: www.tc.gc.ca/eng/acts-regulations/acts-2001c26.htm

キプロス

IMO または旗国通告 http://www.mcw.gov.cy/mcw/dms/dms.nsf/All/E761FF8E2B127E05C225751B002F0789/$file/262006(06.12.2006).pdf ウェブサイト www.shipping.gov.cy

デンマーク

ECDIS のバックアップ措置 デンマーク当局では、第 2 の ECDIS 装置に代えて、関係国際基準に従い型式認定取得済みの ECDIS の 運用(ENC 使用)に対する電子的バックアップ措置を容認。(IMO 決議 MSC.64(67)、付属書 5 を参照) IMO または旗国通告 SLS14/Circ180 www.imo.org/includes/blastDataOnly.asp/data_id%3D5399/180.pdf ウェブサイト www.dma.dk/

ECDIS 搭載義務の施行について /// 旗国が課する要件とは?

カナダ

エストニア

RCDS の容認 エストニア管轄水域外では、ECDIS での RNC 使用が認められる。エストニア管轄水域内では、ENC の み容認されている。エストニアの全海域は ENC でカバーされているため、RNC は必要ない。 ウェブサイト www.vta.ee/atp/?lang=en

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フィンランド

IMO または旗国通告 規則 1414/30/2004 − 船舶航海システムおよび機器(Bulletin No. 8 23.6.2004)に記載。 http://portal.fma.fi/portal/page/portal/fma_fi_en/informationservices/legislation/fma_bulletin/ EN_2004_06_23_NR8.pdf その他事項 トレーニング:船員が ECDIS を搭載しない船から ECDIS を搭載する船に乗り換える場合、また当該船員 が ECDIS のトレーニングを受けていない場合、その船主は同船員の乗船就業に先がけ、ECDIS に関す る IMO モデルコースに参加することを要求しなければならない。 ウェブサイト www.fma.fi

フランス

ECDIS の容認 すべての船舶について適用。海事局で認定。 ECDIS のバックアップ措置 現時点で、フランス政府は紙海図のみを ECDIS のバックアップとして認めている。バックアップ用紙海図 の記載要件については、近く規定される予定。 RCDS の容認 すべての船舶について適用。海事局で認定。 IMO または旗国通告 Règlement annexé à l arrêté du 23/11/1987, division 221(1987年11月23日付行政命令による規則付属書 第221項) ウェブサイト www.developpement-durable.gouv.fr/-Mer-et-littoral,2045-.html


ECDIS のバックアップ措置 ドイツ海事水路庁(BSH)では、バックアップ要件に適合するものとして「チャートレーダー」を容認。 IMO または旗国通告 ECDIS および RCDS の認可、ならびに非公式海図の扱いをめぐる詳細については、各年の BSH 水路通 報第 1 号に記載。 SLS.14/Circ.190 www.imo.org/includes/blastDataOnly.asp/data_id%3D5557/190.pdf ウェブサイト www.bsh.de

日本

ECDIS の容認 ECDIS の使用は、船舶ごとに個別に承認。 RCDS の容認 日本の水域における RNC は刊行されていない。したがって日本水域では、ECDIS の RCDS モードによる 航海はできない。 ウェブサイト www1.kaiho.mlit.go.jp

リベリア

ECDIS の容認 各船ごとに個別認定を行い、合格船舶に対して証明書が発行される。 IMO または旗国通告 船舶運行者に対する指針は、リベリア海事当局通達 1-2005 で提示。 ウェブサイト www.liscr.com

ECDIS 搭載義務の施行について /// 旗国が課する要件とは?

ドイツ

マルタ

ECDIS のバックアップ措置 ECDIS 運航時(ENC 使用)の、型式認定取得済みの電子的バックアップ措置も容認。 IMO または旗国通告 IMO circular SLS.14/Circ.254 www.imo.org/includes/blastDataOnly.asp/data_id%3D13957/254.pdf

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マーシャル諸島

ECDIS の容認 日常的に、刊行されている ENC データを使用して ECDIS モードで運航している船舶であっても、何らか の理由で ECDIS 使用が不可能になった場合に備えて、適切な一連の紙海図をバックアップとして保持す るよう指示。特定の港への入港にあたっては、従来どおり最新維持された紙海図の使用を義務付けてい る。船主に対しては、実務上および法令上の危険性を考慮して、これまで通りすべての船舶に最新維持 された紙海図を搭載することを強く推奨。 RCDS の容認 RCDS モードは ECDIS の機能すべてに対応していないなど、多くの技術的制約が存在しているため、最 新維持された適切な一連の紙海図との併用が義務付けられている。 IMO または旗国通告 Marine Guidance note 7-41-1 www.register-iri.com/forms/upload/MG-7-41-1.doc ウェブサイト www.register-iri.com/

オランダ

ECDIS の容認 書面による要求があれば、紙海図なしでの航海許可についての確認状が、書面またはファックスで当該 船舶に送付される。安全証明書には本船は SLS.14/Circ.191 に準拠する ECDIS を搭載している旨が追記 され、同証明書に添付される。 ECDIS のバックアップ措置 公式 ENC が刊行されていない水域に限り、公式 RNC をバックアップとして使用することを容認。 RCDS の容認 あらゆる船舶に対し、ENC が刊行されていない水域での RCDS 使用が認められている。適切な一連の 紙海図に関する指針としては、紙海図の搭載は義務付けられていない。書面による要求があれば、紙海 図なしでの航海許可についての確認は、書面またはファックスで当該船舶に送付される。安全証明書に は本船が SSLS.14/Circ.191 に準拠する ECDIS を搭載している旨が追記され、同証明書に添付される。 IMO または旗国通告 SLS.14/Circ.191 www.imo.org/includes/blastDataOnly.asp/data_id%3D6145/191.pdf オランダ船主協会宛の 2001 年 10 月 4 日付の書状 DS-20665/01/SKA。 ウェブサイト www.ivw.nl


IMO または旗国通告 ECDIS の使用に関しては MNZ Maritime Rule(ニュージーランド海運規則)25 に記載。 ウェブサイト www.maritimenz.govt.nz

ノルウェー

ECDIS のバックアップ措置 ノルウェー海事庁では、適切なバックアップ措置としてチャートレーダーも容認。 その他事項 トレーニング:ノルウェー海事庁(NMD)規則 2003-05-09No.687 は、2005 年 1 月 1 日に発効。 ARPA、ECDIS、AIS またはその他同様の機器を搭載する船舶の航海士は、これら機器の使用方法および 制約事項について、完全なトレーニングを受けることが義務付けられる。 ウェブサイト www.sjofartsdir.no

パナマ *

* パナマ海事局、商船回状 MMC-218(Panama Maritime Authority, Merchant Marine Circular MMC-218) ECDIS の容認 船舶は、当該海図搭載要件を部分的または全面的に満たすために ECDIS を使用してもよい。ただし、 ECDIS では全世界の ENC カバレッジはまだ実現していないことを念頭に置き、以下の条件を満たすもの とする。 ECDIS のバックアップ措置 1. ENC でカバーされていない水域では、適切な一連のバックアップ用紙海図を船舶に搭載し使用できる ようにしておくこと。 2. 第 2 の ECDIS など、他のバックアップ措置を使用してもよい。 搭載要件 SOLAS 74 の第 V 章第 19.2.10 規則が適用される船舶は、同規則に詳述されている搭載要件に適合しな ければならない。また、十分な計画を立て、適用される最初の検査までに十分な余裕を持って、これら の新たな規制要件に適合できるようにしておくこと。

ECDIS 搭載義務の施行について /// 旗国が課する要件とは?

ニュージーランド

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トレーニング要件 ECDIS 搭載が義務化されている船舶に乗船し航海当直を担当する船員は全員、最低でも、IMO 標準モ デルコースをベースにした一般的な ECDIS 運用者向け認定トレーニングを受講しなければならない。 ウェブサイト www.segumar.com

スペイン

IMO または旗国通告 SLS.14/Circ.283 www.imo.org/includes/blastDataOnly.asp/data_id%3D18185/283.pdf FOM/2472/2006 ウェブサイト www.fomento.es/MFOM/LANG_EN/DIRECCIONES_GENERALES/MARINA_MERCANTE/

スウェーデン

RCDS の容認 ENC が刊行されていない水域では、適切な紙海図と併用での RCDS モードの使用を容認。 IMO または旗国通告 IMO circular SLS.14/Circ.198 ウェブサイト www.sjofartsverket.se

ウクライナ

ECDIS の容認 すべての船舶に対して容認 ―ウクライナ 船舶登録法、Kyiv, 2003:「Regulations on the Sea Vessels Equipping」を参照。

イギリス

ECDIS の容認 船舶ごとに許可が与えられ、同等性についての書簡が発行される。 ECDIS のバックアップ措置 ENC が刊行されていない水域に限り、また、危険評価に基づき確認された適切な一連の紙海図を併用 した場合にのみ、表の第 3 欄にある選択肢 2 が認められる。


アメリカ合衆国

ECDIS の容認 米国内規則では、ECDIS はいまだ認められていない。ただし、米国沿岸警備隊の航海・船舶検査回状 (NAVIC)02 03 では、米国水域を航行する外国船に対し、主たる航海手段として ECDIS を搭載・使用 することについて、SOLAS 条約で定めた海図搭載要件にかなうものとして、暫定的に認めている。この NAVIC 02-03 は、米国航海規則が米国船籍船舶も含め正式に改正されるまでの暫定的な指針と見なさ れている。 ECDIS のバックアップ措置 NAVIC 02-03 では、外国船舶が第二の ECDIS を使用する場合、航海区域に関する適切な一連の紙海図 と併用して ECDIS を RCDS モードで使用する場合、および紙海図を唯一のバックアップ措置として使用 する場合、SOLAS 条約第 V 章に記載されたバックアップとして認めている。 ウェブサイト www.uscg.mil/

ECDIS 搭載義務の施行について /// 旗国が課する要件とは?

RCDS の容認 Marine Guidance Note 285 にあるリスクアセスメントに従い、船舶ごとに個別容認。 IMO または旗国通告 MCA 特殊刊行物「航海の安全 ― SOLAS 第 V 章」2002 年改正版、付属書「電子海図」。 Marine Guidance Note(MGN)285 ― 電子海図 ― ラスター海図表示システム(RCDS)モードで ECDIS を使用する際のリスクアセスメントの活用。2005 年 2 月。 その他事項 トレーニング:英国における同等性に関する書簡の発行の一部として、MCA は、電子海図ユーザーの トレーニング(総合的かつ特定の型式について)および習熟についての取り決めを満たす必要がある。 ウェブサイト www.mcga.gov.uk

61


適切な バックアップ システムとは?


当なことです。このため、安全な商用航海について責任を負う管轄当局は、「その場合はど うするか?」という点に、特に注意を払ってきました。 国によっては最新維持された一連の承認済み紙海図だけを、適切なバックアップ措置と 認めており、あるいは、独立した電源を有している場合に限り、船舶で ENC を使用した第 二の ECDIS をバックアップとして使用することを認めている国もあります。このほか、独立し た電源を有する、RNC あるいはラスター海図を使用した第二の ECDIS をバックアップとして 認めている国もあります。また IMO のバックアップ規則に準拠していれば、ENC データを使 用する ECDIS 以外の電子海図システム(ECS と呼ばれる)をバックアップとして認めている 旗国もあります。さらには、チャートレーダーの使用をバックアップとして認める旗国もある でしょう。 この問題については実際、各国がそれぞれ独自の態度をとっているため、唯一決定的な 答えと言えるのは、先にあげた一覧表(一般的指針)を参照しつつ、旗国当局(個別の指針) に確認することでしょう。ENC がカバーする領域の拡大、ECDIS の利用数増加、航海技術の 商業的側面といった要因は、これら指針の趨勢に大きく影響をおよぼすことになるでしょう。 何通りかのバックアップ措置が可能となっているようなケースでは、既存のシステム、新 たな措置の生涯コスト、トレーニングや安全・運用上の検討事項をもとに、運航管理者が

ECDIS 搭載義務の施行について /// 適切なバックアップシステムとは?

この問題は、SOLAS 条約締結国のなかでも国によって最も解釈が異なる箇所となっていま す。メインとなる第一の ECDIS 航海システムの不具合発生を懸念することは、現実的かつ妥

各システムの相対的長所を秤にかける必要に迫られる局面も訪れるでしょう。

63


ペーパーレスでの 航海は 可能になるか?


船主は以下の条件を満たさない限り、自分の保有船舶に対し、意図した航海全体を網羅 する最新維持された一連の紙海図を搭載するよう徹底させなくてはなりません。 • 型式認定取得済みの ECDIS を主たる航海手段として使用している、および • 旗国が、主たる航海手段としての ECDIS 使用を認めている、および • 船主が、意図した航海に関する最新維持された ENC 一式を保有している、および • 船主が、独立した電源を有する型式認定取得済みの ECDIS を、航海手段のバックアッ プ措置として使用している、および • 旗国が、独立した電源を有する型式認定取得済みの ECDIS を、航海手段のバックアッ プ措置として使用することを認めている、および • 船主が、主要 ECDIS システムとバックアップ用 ECDIS システムの両方に、適切な ENC をインストールしている、および • 船主が、ECDIS のトレーニング、その他に関する適切な文書の保有を含め、上記以外 の要件すべてを確実に満たしていることを保証している これら条件をすべてクリアしていれば、船主は最新維持された紙海図なしでも航海できる はずです。それでもなお、ECDIS のメインあるいはバックアップとしての使用を認めていな い国に寄港した場合、罰則や拘留を科されるリスクがあることもまた、肝に銘じておくべき でしょう。さらに、安全航海を行うために必要な配慮や注意を欠くようなことがあってもなり

ECDIS 搭載義務の施行について /// ペーパーレスでの航海は可能になるか?

紙海図を取得・更新するために航海士が費やす時間と労力を考えるにつけ、船会社の多 くが以下に挙げる質問に「はい」と答えられる日を待ち望んでいると言ってよいでしょう。

ません。

65



トレーニング



ほとんどは、安全性を高める上で ECDIS が有益かつ有効であることについては異論がないで しょう。しかしまた、他の船舶との間隔が狭い場所で、航海士が十分なトレーニングを受け ないままに ECDIS を使って運航する可能性があることについて、不安も感じていると考えら れます。

トレーニング ///

ECDIS の義務化に伴い最も懸念されていたのは、実は、適切なトレーニングを受けてい ない当直船員と船長が ECDIS を使って航海することでした。一方で船橋にいる運行管理者の

2008 年、英国海難調査局は同年初頭に発生した事故(CFL Performer 号)の原因が、 ECDIS のトレーニング不足であったことを明らかにしました。事故当時、船橋チームのうち の 1 チームは一般総合的なトレーニングに加え、本船に搭載された型式特定機器に関する トレーニングも受けていたのですが、その日の当直は残念ながら別の船橋チームでした。 船長は ECDIS その他の形態の電子航海システムを使った経験がなく、トレーニングも受 けていませんでした。士官のうち誰一人として、安全等深線や安全深度、潮間帯や潮下帯 の重大性に気づかず、本船前方に航路監視情報(watch vector)を設定する方法も、また、 そうすることの意味さえ理解していなかったのです。 ECDIS のトレーニング・コースでは、 こうした基本事項も漏れなく学びます。同事故が「ECDIS の航海支援による座礁」だったということで不安も生まれましたが、ほとんどの場合 ECDIS に非はありません。実際のところ同事故は、「ECDIS のトレーニング不足が起こした座礁」で した。 ECDIS の登場以来、 各国海事局は ECDIS トレーニングの問題に取り組んできました。 ECDIS の汎用的なトレーニング、加えて船舶に搭載された個別システム対応のトレーニング と、要件は増え続けています。原則として今後はすべての海上技術訓練校で、シミュレーター を使った ECDIS トレーニングが行われることになるでしょう。このほか ECDIS メーカーのほと んどが、装置の使用方法に関するトレーニングを提供するか、自社装置による ECDIS のトレー ニングが受けられる学校のリストを公表しています。

69


ECDISの

トレーニングに まつわる 要件とは?


1. ECDIS を「海図」として使用する場合、そのユーザーは従来、紙海図を使用する作 業について十分な技能を有することを明確に示さなければならないように、ECDIS の使用に関しても同様な知識と技能を有することを明確に示さなければならない。 2. ECDIS のトレーニングは、紙海図使用法のトレーニングと同様に「義務付けられる」 べきものである。 国際安全管理コード(ISM Code)には ECDIS のトレーニングについて厳密な規定があり、 船主または運航管理者には乗務員がそれぞれの職務を熟知するよう徹底させる責務がある としています。ECDIS を船舶の主たる航海手段としている場合は、ECDIS への熟達度につい てもこの規定が適用されます。そのため事故発生の際、ECDIS のトレーニング実態が責任 問題や保険に影響することもありえます。

ECDIS のトレーニングにまつわる要件とは?

IMO の船員の訓練および資格証明、ならびに当直の基準に関する国際条約(STCW 95) では、電子海図と紙海図を同等のものと定義し、ECDIS のトレーニングを義務付けていま す。STCW 95 表 A-I I-1 には、「ECDIS システムは 海図 という用語の下に含まれているも のと考えられる」と明記されています。これを受けて RENC(地域 ENC 調整センター)では、 ECDIS に関する指針を次のように結んでいます。

トレーニング ///

ECDIS が主たる航海手段である場合については、2 つの主要海事規則によって ECDIS に 関するトレーニングが義務付けられています。ただし、主たる航海手段を紙海図としている 限りは、トレーニングは任意となります(ECDIS を搭載していない船舶の場合は言うまでも ありません) 。

さらに、各国当局が自国の船舶や自国の港湾に寄港する船舶に対して ECDIS のトレーニ ングを義務付けることもあるでしょう。パリ MoU 地域のポート・ステート・コントロール検 査官は、「運航管理者が、ECDIS の汎用的および個別システム対応の訓練を受けたことを証 明できる、適切な文書を提出できるか」を見極めるよう勧告を受けています。 どの乗務員に ECDIS トレーニングを義務付けるかについては、各旗国の判断に委ねられ ています。ただし、通常は船長、当直船員、航海計画立案者のほか、ECDIS を使用する船 橋職員が、トレーニング・コースを終了していなければならないとされています。

71


ECDISで

推奨されている トレーニングは?


に頼ることは多々あることから、ECDIS の使用に習熟しておく必要があるでしょう。 船員の訓練および当直の基準(STW)に関する IMO 委員会では、IMO の標準的な「ECDIS の実際の運用に関するモデル・トレーニング・コース」(モデルコース 1.27)を承認してい ます。このモデルコースは、受講者が ECDIS 認定を受けるための必要最小限の要件となる 演題や技術から構成されています。ECDIS トレーニング・コースは通常、自身の権限をもっ て ECDIS 認定を与えている旗国の要件にもとづいて作成されます。政府公認のコースの場 合は通常、IMO モデルコースの要件を満たしている必要があります。 こうした規則がありながら、ECDIS のトレーニング・コースの内容にはかなりのばらつき が見られます。たとえば、名目上は同じ内容でも、5 日かかるものもあれば、たった 2 日で 完了するものもあります。ただし、政府公認の ECDIS トレーニングプログラムのほとんどは、 まる 5 日間を要します。型式ごとの ECDIS トレーニング・コースには、さらに 1 ∼ 3 日かか ります。 船長および一等航海士のほか、船橋で当直を担当する職員は最低限、ECDIS トレーニン

ECDIS で推奨されているトレーニングは?

れています。船舶の主たる航海手段が紙海図であるとしても、運航管理者が ECDIS の表示

トレーニング ///

ECDIS 搭載船舶の監督を担当する当直船員はすべて、ECDIS に関する汎用的なトレーニ ングに加え、本船に搭載した個別システムに習熟するためのトレーニングを受けることとさ

グの一般的なコースと特定の型式のコースを受講し、毎年再受講する必要があります。また、 搭載する ECDIS を変更するたびに、その型式のトレーニングを受講すべきでしょう。 ECDIS の標準化議論が進めば、いずれは型式ごとの ECDIS トレーニングはなくなることが 予想されますが、今のところ見通しは立っておらず、型式ごとのトレーニングの必要性は依 然として残されています。

73


ECDIS トレーニングが 受けられる 場所は?


連絡先

オーストラリア デンマーク

フルノ INS トレーニングセンター (INSTC)、 コペンハーゲン

furunodeepsea.com/instc/

フィンランド

Satakunta University of Applied Sciences Kymenlaakso University of Applied Sciences Yrkeshögskolan Novias utbildningsutbud Høgskolan Åland

www.samk.fi www.kyamk.fi www.novia.fi www.ha.ax

フランス

École Navale Écoles Nationales de la Marine Marchande (マルセイユ、ナント、ルアーブル)

www.ecole-navale.fr www.hydro-marseille.com www.hydro-lehavre.fr www.hydro-nantes.org

Hochschule Wismar Hochschule Bremen Fachhochschule Oldenburg – Ostfriesland/Wilhelmshaven Fortbildungszentrum Hafen

www.sf.hs-wismar.de www.hs-bremen.de www.fh-wilhelmshaven.de www.fzh.de

インド

Anglo-Eastern Maritime Training Centre, Mumbai

www.maritimetraining.in

ノルウェー

Ålesund University College Kongsberg Maritime, Kongsberg

www.hials.no www.km.kongsberg.com

ポルトガル

Escola Náutica Infante D. Henrique

www.enautica.pt www.mpa.gov.sg

シンガポール

Integrated Simulation Centre, Maritime and Port Authority of Singapore, Singapore Kongsberg Maritime Pte. Ltd. Training Centre, Singapore, Singapore

ドイツ

www.km.kongsberg.com

南アフリカ

South African Maritime Training Academy

www.samtra.co.za

スウェーデン

Kalmar and Gothenburg Maritime Agencies

www.hik.se

イギリス

Warsash Maritime Centre South Tyneside Blackpool and Fylde Glasgow Nautical College Lairdside Maritime Centre

www.warsashacademy.co.uk www.stc.ac.uk/marine www.blackpool.ac.uk www.gcns.ac.uk www.ljmu.ac.uk

アメリカ合衆国

MITAGS

mitags-pmi.org

ECDIS トレーニングが受けられる場所は?

所在地 Australian Maritime College Pivot Marine Royal Australian Navy

トレーニング ///

旗国

IMO モデルコース 1.27 準拠の ECDISトレーニング・コース。表はすべてを網羅したものではありません。

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ECDIS ― 海図表示装置 以上の存在


ECDIS による航海に詳しい評論家や専門家は、船主も船員も等しく、ECDIS 搭載義務化が およぼす影響を完全に把握すべきであると勧告しています。英国航海学会の技術部長を始 め各所から、紙海図ベースの航海から ECDIS を使用した航海への移行には危険がともなう おそれもあるため、注意と準備を怠らないよう次のように呼びかける声もあがっています。 《ECDIS は紙海図とはまったく異なるものであって、紙海図から電子海図への移行によ り、特にこれまで電子海図を扱った経験のない業界は難題に直面することになる。船員は、 ECDIS が単なる紙海図のデジタル版ではなく、それ以上のものであることを肝に銘じておく べきだろう。船橋での主要な船橋業務の手順が多大な影響を受けることから、ECDIS を使い ながら座礁するようなケースを避けたいのであれば、慎重な分析と判断が求められる。伝 統的な航海技術がすたれないように努め、航海士が自信を持って、ただし過信することなく ECDIS を使えるようになることが重要である。さもなくば、船橋の当直船員が表示される内 容を鵜呑みにしてしまう危険性がますます高まるだろう》 その一方で、従来の紙海図による航海に比べ、ECDIS によって可能になることが増えるに つれ、商用航海の安全性は大いに向上し、船橋内の監督状況もいっそう改善されていくこと でしょう。電子海図の作製者らは、新たに次のようなシナリオを思い描いています。 《電子海図は、海上航行と安全性において革命的な進化をもたらしている。電子海図シス テムでは船位を電子海図上に継続的に表示させることができるため、その他の航海の安全 性と効率性を改善する上で有効なリアルタイム情報を入手できるメリットは、さらに高まるだ ろう》 専門家によるこれら 2 つの意見はいずれも、航海にまつわる業務は ECDIS によって今後 も変化を余儀なくされるものの、伝統的な海上航行の基礎を形づくっている根幹技術と能力 が失われ、損なわれることがあってはならないという点で一致しています。 ECDIS が航海を大きく変容させる潜在力はきわめて大きいため、IMO では変化と、そ の方向性を示す意味を込めて「e-Navigation」と呼ばれる新しい概念を採り入れました。


報の収集、統合、表示を行う電子的手段」と定義されています。 英国運輸省が発表した方針書には、e-Navigation がユーザーの目にどう映るかについて の詳細な記述があります。 《衛星から送信される位置信号を用い、フェールセーフな補助的位置信号(ロラン C など) あるいは船舶搭載装置(慣性航法装置など)に裏打ちされ、船舶上ならびに複製したもの を陸上で分かりやすく包括的な統合フォーマット(ECDIS)で表示し、海岸基地をベースにし た監視・介入機能を備えている》 同方針書ではまた、こうしたシステムの主要構成要素を次のように説明しています。 • 正確かつ包括的で、最新維持された航海用電子海図(ENC)を共通フォーマットにし

ECDIS ― 海図表示装置以上の存在 ///

e-Navigation は「停泊地から停泊地までの航海ならびにそれに関連する業務、海上におけ る安全・保安、海上環境の保護を促進することを目的とした、船上および陸上からの海事情

たもので、船舶の航路全体を網羅したもの。 • 「フェールセーフ」な性能(GPS、Galileo、差分トランスミッタ、ロラン C や、あらか じめ航行装置に組み込まれていた受信機など、複数の装置による冗長性)を実現した、 正確かつ信頼性の高い電子的位置信号 • 航路、方位、操舵上の設定値、 その他の状況を示す各種項目 (水文データ、船舶識別デー タ、乗客の詳細、貨物の種類、セキュリティ状況など)に関する情報を電子的フォーマッ トにしたもの • 船位および航海に関する情報の、船上から陸上、陸上から船上、ならびに船舶間で の伝達 • 船上および陸上で、上記の情報を分かりやすく表示する統合ディスプレイ • 船上および陸上での危機的状況(衝突、座礁など)における、情報の優先順位決定 機能および警報機能

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ECDISを

フル活用するとは どういうことか?


新作業が可能になり、海図情報が古くなってしまうケースを削減。 2. 操船情報の集約:ECDIS 登場以前、船員は膨大な情報源を確認して情報を取りまと めなくてはなりませんでした。状況の完全に近い全体像は、船長の頭の中にしか存 在しなかったのです。ECDIS は、状況の可視化作業の向上を支援します。 3. 船位のリアルタイム表示:船位、船首方位、航路、航行速度を自動的・継続的に ECDIS 上に表示させることが可能に。 4. 操舵室の中心的役割:ECDIS が様々な技術と情報源を 1 つにまとめることで、欲し い情報を集めるために航海士が船橋内を歩きまわる必要がなくなります。 5. 状況に連動した表示:情報をふるいにかけ、運航管理者が必要とする情報だけを表 示して、余計な情報を確認する手間を省きます。モニター類と情報は、照明条件や 海象、指定したシナリオに沿ったものになります。 6. レーダーの重畳表示:ECDIS 内部で電子海図とレーダーを組み合わせることで、座 礁回避や衝突回避に関する情報を 1 つの装置に集約します。 7. 航路の自動監視:計画した航路で、水深や障害物、航路から逸脱する危険がないか どうかの検証を可能にします。 8. 自動航路制御:実際に、船舶が所定の旋回半径で針路変更を行った後、事前に計 画された航路を航海することが可能に。

ECDIS をフル活用するとはどういうことか?

1. 海図の自動更新:ECDIS によって電子海図の自動更新が可能に。迅速かつ確実な更

ECDIS ― 海図表示装置以上の存在 ///

ECDIS のフル活用とはどういうことかを伝えるには、ECDIS の義務化がもたらすであろうメ リットを挙げるのが一番でしょう。

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9. 人為的ミスの削減:本船が所定の設定値から外れそうになった場合や、センサーが 解釈の曖昧な信号を発した場合に、警告を発して航海士に通知。 10. 特殊操作の補助:乗員の船外落下、投錨、入渠など特殊な操作が必要な場面にお いて、船長の指示に応じ、ECDIS であらかじめプログラミングした運航指針の採用 が可能に。 ECDIS 普 及 へ の 障 壁 に つ いてまとめ た 2005 年 の 報 告 書( 「The Hailwood Report ― Barriers to the adoption of ECDS(ヘイルウッド・レポート ― ECDIS 普及への障壁) 」 )によれば、 船会社は ECDIS が以上のようなレベルで実用化されることを期待しています。 ここには、ECDIS の導入によって船員の効率性を高めたいという、船会社の要望がはっき りと見えてきます。「当直」時には、航海情報すべてを 1 つの情報源にまとめることで効率 性を高めます。「非直」時には、手間のかかる海図の更新作業と航路計画にかかる時間を 短縮し、効率性向上を実現します。MAIB(英国海難調査局)報告書は、当直員の疲労が海 難事故の主な原因の 1 つとなっていると指摘しています。ECDIS によって当直、非直の双方 の効率性を高めることができれば、システムは安全面に直接貢献できるでしょう。 同報告書には、安全性と効率性両方の向上を計るためにも、水路関係者が一丸となって ECDIS の普及推進に努めるべきであるとも記されています。実際に、ECDIS を取り入れた新 しい業務手順によって、多くの船会社でウェザールーティング機能の向上から航海の最適化、 そして他の船舶搭載システムとの統合性向上に至るまで、航海の基幹となる作業の管理がこ れまで以上に向上しています。


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ECDIS ― 海図表示装置以上の存在 ///

ECDIS をフル活用するとはどういうことか?


ECDISには ほかに、 どのような データソースや 技術を 組み込めるのか?


まで、おおむね 2 つのグループに分けられます。ECDIS メーカーは、主力製品に新たな機 能を組み込むことで、高い競争力を持つ製品を生み出そうと常に努力しています。そして、 程度の差こそあれ各社とも、他社に対して ECDIS 互換技術提供のチャンスを与えています。 ECDIS への統合が可能な技術は 2 つに分けられるとは言っても、そこに明確な違いがあるわ けではなく、単に有用性や複雑性、価値の度合いに差があるにすぎません。 ECDIS には通常、船位(GPS) 、針路(ジャイロもしくは磁気コンパス) 、対地速力(スピー 、風速、方向などを探知する基本的なセンサー類や計 ドログ) 、水深(エコーサウンダー) 器類が組み込まれています。このほか ECDIS には、 デジタルレーダーおよびアナログレーダー の入力信号や AIS(自動船舶識別装置)信号受信装置を備えているものも珍しくありません。 船舶の自動操船制御装置(オートパイロット)に ECDIS を接続するケースもよく見られます。

ECDIS ― 海図表示装置以上の存在 /// ECDIS にはほかに、どのようなデータソースや技術を組み込めるのか?

ECDIS システムへの統合が可能な技術は、ECDIS 操作の根幹をなすものから、どちらかと 言えば任意かつ補完的な位置づけにあり、機能を追加し付加価値を高める性格の強いもの

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ECDISに

接続可能な 航海用 センサーとは?


ダー性能、障害物の移動、逸脱探知、エラー検出、相互チェック、エラー削減、負荷削減、 システムの冗長化を始めとするメリットがあります。 ECDIS と AIS を統合すれば、「目視やレーダーで確認しなくとも船舶運航の検出、監視、 制御が可能になり、その結果、離れた場所からでも衝突回避措置に関する判断ができる」 というメリットも生まれるでしょう。 実際、今では商用船舶への ECDIS 導入が、統合ブリッジシステムの導入と同じ意味に解 されるケースも珍しくなく、ECDIS が航海と運航を実行する一連の活動の中心と位置づけら 「The Hailwood Report」 )では、船 れるようになっています。本項で先に引用した報告書( 会社のほぼ 5 分の 1 が、ECDIS ではなく統合ブリッジシステムを導入するための投資を真剣 に検討していると伝えています。統合システムを導入すれば、当然 ECDIS も付いてくるだろう、 というわけです。 船舶の ECDIS に接続されることの多いハードウェアにはこのほか、NAVTEX(その他 GMDSS システム関連機器)や、航海データ記録装置(VDR)などがあります。

ECDIS ― 海図表示装置以上の存在 /// ECDIS に接続可能な航海用センサーとは?

ECDIS にレーダー入力機能を組み込む目的は、航海状況をよりよく把握することにありま す。ECDIS にレーダーを重畳表示させることで、衝突回避や船位の監視、障害物の識別、レー

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ECDISで

利用可能な情報や データベースとは?


ECDIS 上で使用する情報製品の開発・販売に力を注いでいます。製品は、気象情報から海 賊情報さらには船体加速情報、その他の船主・運航者にとって有用と考えられる情報まで、 多岐にわたります。 気象・海象データは、ECDIS に当然搭載すべきものの筆頭に挙げられます。波高、風速 予想、潮汐および海流に関する情報をすべて数学的にモデリングして、本船の航路における 状況を時間の経過とともに予測します。こうして作成された予測結果は、船橋に設置された ECDIS で表示させることができるほか、航海士の計画立案にも大いに役立つことでしょう。こ のほか ECDIS での使用を目指して開発が進められているものには、極地域の安全航行に役 立つと期待される、氷原状況データがあります。 船舶動静情報も ECDIS 表示に組み込むことができるため、船橋の運航管理者、さらには 船団の運航管理者が船舶の移動に関する計画を策定して、通航量の多い海峡や港湾におけ る隘路を回避する上で役立ちます。商業面(補給)および公的面(監査)の両方に関する 港湾情報も、ECDIS に表示させる航海情報として価値あるオプションとなるでしょう。海賊活 動に関する最新情報をもとに、航行すべき場所と避けるべき場所(およびタイミング)を航 海士が把握して襲撃リスクを最小限に抑えることで、セキュリティ向上も期待できます。

ECDIS ― 海図表示装置以上の存在 /// ECDIS で利用可能な情報やデータベースとは?

ECDIS によって船橋の運航管理者には、安全性と効率性の向上につながる、付加価値の ある情報を新たに追加、編集できる可能性が、ほぼ無限に提供されます。多くの企業が、

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一部の企業ではこれら基本的な情報に加え、気象・海象に関する情報源と船舶からのデー タを組み合わせて、操船や、出発地から目的地までの最適航路、航路上の様々な条件に自 船がどの程度耐えられるかについて、質の高いフィードバック情報の提供に取り組んでいま す。こうしたシステムは、一般的な「最適化」の枠組みに入るものであり、新しいテクノロジー を採り入れることで、航海士が可能な限り最善の航路を見つけられるよう支援します。 内陸水路でも、ECDIS の情報を利用するチャンスが生まれています。主要水路における 底質の変化に関する迅速な情報提供と、バージ船やタグボートの航行に関するデータベース があれば、ECDIS を利用する淡水域の航海士にも役立つことでしょう。


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ECDIS ― 海図表示装置以上の存在 /// ECDIS で利用可能な情報やデータベースとは?



Jeppesen Marine について 電子海図の基準作りから e-Navigationソリューションまで ECDIS が登場して ENC の作製がスタートしてから数十年 が過ぎ、一貫性を持った基準が一通り出揃いました。メー カーやサプライヤーが、新たな製品やソリューションの開 発・販売を幅広く展開できる土台は整っています。ECDIS という共通プラットフォームの上で新たな価値を生み出す ことが可能になったことで、デジタル航海システムは新た な次元を迎えたと言えるでしょう。


Jeppesen Marine ― e-Navigationを現実のものに C-MAP Norway は、ECDIS 普及につながる海図データ提供を目指して 1993 年に創設され ました。ささやかな門出を経て、同社は今では e-Nnavigation 用サービスとデータのサプラ イヤーとして市場を牽引するまでに成長。現在は、非公式ベクトル海図および ENC の頒布・ 更新、正確な気象データ、航海最適化サービス、ダイナミックライセンス供与などにおいて、 市場を牽引するソリューションを提供しています。2006 年の Jeppesen Marine(Boeing グルー プ傘下、本社はアメリカ合衆国コロラド州)による C-MAP Norway 買収以降、同社の海運 業をサポートしたいという意欲は、親会社と航空機製造産業との関係と同じ水準にまで駆け 上がりました。Jeppesen Marine では今日、e-Navigation サービスおよびデータの最も魅力 的なパートナー、またサプライヤーとして、より効率的かつ安全な船舶運航の実現を目ざし ています。


Jeppesen Marine では、2 つの極めて重要な点で世界各国の水路部と連携しています。 第一に、Jeppesen Marine では水路部が航海データを公式 ENC データベースに変換するた めのソフトウェアを提供しています。第二に、Jeppesen Marine は各国の水路部から、ENC デー

Jeppesen Marine について

各国水路部との連携

タを付加価値の高い製品にするためのライセンスを取得しています。 Jeppesen Marine では 2 種類の海図データを販売しています。1 つは、当社が作製した非 公式のベクトル海図「C-MAP Professional+」 。もう 1 つは、世界各国の水路部が作製した公 式 ENC です。IMO による ECDIS 義務化要件を満たしているのは、このうち後者の公式 ENC だけですが、非公式の C-MAP Professional+ も、ENC が提供されていない水域における高 品質の航海データ供給源として重要な役割を果たしています。 Jeppesen Marine は、水路関係者との間に築いた緊密な連携関係を維持しています。水 路部から提供されるデータを世界の商業海運業界に供給する民間の主要サプライヤーとし て、Jeppesen Marine は市場において極めて重要な役割を担っています。

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製品およびサービス ENC サービス Jeppesen 海賊情報アップデート 気象情報 ウェザールーティング プロフェッショナルサービス

Jeppesen T&P 通知サービス 最適化ソリューション

Jeppesen 海事サービス フリート動静管理システム ダイナミックライセンス 各種更新サービス

C-MAP アップデートサービス CD/DVD C-MAP アップデートサービスオンライン C-MAP アップデートサービスオンライン +


Jeppesen Marine は、各国の水路部が刊行している公式 ENC に加え、ノルウェーとイギリ スの地域 ENC 調整センターが頒布する ENC データの公認ディストリビュータです。

Jeppesen 海賊情報アップデート 海賊情報アップデートサービスは、世界中の海賊に関する様々な公的機関が発表する最 新データを統合して提供するサービスで、危険性の高い区域の特定、回避に役立ちます。

Jeppesen Marine について

ENC サービス

このサービスでは、海賊情報と詳細な海図や気象情報、熱帯性低気圧情報とを一元化し て扱うことが可能なため、リスク緩和戦略の策定に便利で、航海の安全性を確保できます。

気象情報 Jeppesen Marine では常に、プロのユーザー向けに提供している気象情報サービスの向上 を図っています。 それが電子海図と重要な気象情報とを組み合わせた新しい機能を生み出し、WeatherNav というソリューションの一部を形作っています。 航海士が航行計画または洋上作業の計画を策定する際には、WeatherNav の各種機能を 利用して、海図上の詳細な航海関連情報と品質の高い気象データをあわせて吟味することが できます。 ご紹介した WeatherNav の各種機能については、各 ECDIS システムへの搭載が順次進め られています。

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ウェザールーティング Jeppesen Marine では、Vessel and Voyage Optimization Solutions (VVOS、船舶航海最適 化サービス ) という名称を冠して幅広いサービスを提供しています。システムは、船舶に搭 載した航路計画ツールと高度な耐航支援システムで構成されています。 VVOS ソフトウェアは船舶に合わせてカスタマイズされているため、様々な海況における 船舶の耐候性や速度維持能力を正確に予測できます。VVOS の耐航支援モジュールは、船 首方位や速度の変更によって船体の横揺れやピッチ、加速、船首底部への衝撃、甲板にか かる波の状況、重要なフレームにかかる曲げモーメントやせん断力が受ける影響を表示して、 航海士の荒天による損傷回避を支援します。さらに、航路最適化アルゴリズムが燃料コスト を最低限に抑えます。

プロフェッショナルサービス Jeppesen の海事専門サービスは、ベテラン船員や造船技師、船舶機関士、ビジネスアナ リストといった経験豊富なチームで構成され、運用効率上の問題点の発見を手助けし、それ らに対処するソリューションを提供します。多方面の専門性を持つチームは、新造船や展開 計画をはじめ、航海計画、リアルタイムの航海性能の最適化、さらに航海後の分析に至るま で、様々な業務をサポートします。

Jeppesen T&P 通知サービス Jeppesen は、世界各国の水路当局が発行する一時関係および予告通報(T&P)を提供 することで安全航行を支援しています。T&P は ECDIS/ECS 海図データ上に重畳表示され、 Jeppesen オンラインアップデートサービスから E メールまたはインターネット経由で毎日更 新されます。


洗練された流体力学モデルと計算方法、および最高の精度を誇る海洋予測を使用した VVOS ガイドシステムは、船体運動を抑制し荒天による損傷を最小限に抑えるため、速度や 船首方位の変更を提案します。 現在市場に流通している従来型のウェザールーティングサービスやプログラムとは異なり、 VVOS には船体運動やエンジン、そしてプロペラの特性に関する詳細なモデルも含まれてい ます。この「バーチャルな」船舶が風や波および海流の予測に基づき、実際のエンジン出 力とプロペラ回転数、そして「セーフ オペレーションエンベロープ」で指定された船体運動

Jeppesen Marine について

最適化ソリューション

の限界値を超えない範囲で、実航海速度を正確に割り出します。 VVOS では、パラメトリック横揺れをはじめとする極端な動作や加速などをリアルタイムで 監視、記録、警告するシステムを搭載しています。航行中、システムは船体応答とエンジン 状態も監視し、安全航行限度を超えた場合は警告を発します。

Jeppesen 海事サービス 紙ベースのデータの利用や保管に関して航海者を支援するツールは数多くありますが、紙 データと電子データを統合し、安全かつ効率的な航行のための決定を支援できるツールは ほとんどありません。 Jeppesen Nautical Service(JNS)は、通常の PC にインストール可能で、航海者の業務の 簡素化や、航海情報の管理と維持に要する時間の短縮を実現するツールを提供し、安全航 行に必要な航海情報を統合し整合性を図ります。 初期段階の JNS は航海計画と電子海図のライセンスや更新情報を搭載 ECDIS へ簡単にエ クスポートできます。

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フリート動静管理システム Jeppesen Fleet Manager は、陸上の船舶管理者がフリートの動静や運行状況を詳しく把握 できる、Web ベースの船舶管理総合サービスです。ユーザーの設定に応じた分析データを 作成し、資産管理効率の向上や戦略的な意思決定の改善を図ることができます。プログラム は使いやすく、必要時に重要な情報を提供してくれます。Fleet Manager は、現在進行中の 航海、過去の航海の監視いずれにおいても、フリートの能力をフルに発揮させるための各 種ツールを搭載しています。

ダイナミックライセンス 「ダイナミックライセンス」とは、C-MAP SENC フォーマットの海図を世界中の船舶で使用・ 最新維持していただくための、使いやすくコスト効率に優れたライセンス提供方式です。 ダイナミックライセンスでは、船員による発注作業の簡易化、自動処理化により、即時の ENC ライセンス利用を可能にしました。C-MAP オンラインアップデートサービスの使用状況 も自動で報告されるため、海図サプライヤーに事前に注文しなくとも、海図や更新データ、 ライセンスをすべて揃え、いつでも利用可能な状態を保つことができます。あらかじめ予算 と限度額を指定して、「使った分だけ支払う」コスト管理システムを実現しています。

各種更新サービス C-MAP アップデートサービスでは、最新の気象情報と航海関連データをどこからでも入 手いただけます。対応する通信環境をお持ちのユーザーに向けて、C-MAP の更新サーバか ら最新のチャートデータを毎営業日お届けしています。最新の気象予報は、1 日に数回のご 提供です。水路通報のほか、新規チャートと、改訂チャートも網羅しています。


C-MAP アップデートサービス CD/DVD CD-ROM(CM-93/2、Professional)または DVD(Professional+、ENC)による、毎月、年 6 回、 または年 3 回の更新データ頒布に対応しています。このサービスには、水路通報、新規チャー ト、改定チャートが含まれています。

C-MAP アップデートサービスオンライン インターネット経由で各国水路部発行の水路通報を入手することができます。このサービ スには、新規チャート、改訂チャートは含まれません。このため、最新の海図を入手するた めに、CD-ROM または DVD による定期的な更新をお勧めします。CM-93/2 シリーズは同サー

Jeppesen /// Marine について ECDIS の搭載義務化 ECDIS とは何か?

チャートサービスのユーザーには、ニーズや使用機器の仕様、通信容量に合わせて、右 記の複数オプションから船上のデータベースの最新維持方法をお選びいただけます。

ビスの対象外です。

C-MAP アップデートサービスオンライン + 水路通報に最新のチャートを加えた、完全なデータベース更新情報を提供するプレミアム オプションです。サービスには高品質ブロードバンド回線が必要になります。同サービスは、 C-MAP Professional、C-MAP Professional+、C-MAP ENC に対応しています。

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用語・略語解説


AIS(Automatic Identification System):自動船舶識別装置。船舶および船舶交通管理 システム(VTS)で使用されている、短距離の沿岸追跡システム。コンピュータを用いて近 隣を航行する船舶や VTS 基地とのデータ交換を行い、船舶の識別と位置特定を行います。

ARPA(Automatic Radar Plotting Aid):自動レーダー・プロッティング装置。レーダー確 認を行い、レーダーディスプレイ上に航跡を表示させる仕組みで、追尾中の物標の動きの捕 捉や速度および最接近点の計算が可能なシステム。

COG(Course Over Ground):対地針路。GPS システムが船舶搭載の海図システムと関連 付けて計算した、船舶の船首方位。

DCDB(Data Center for Digital Bathymetry):デジタル水深データセンター。アメリカ合 衆国コロラド州ボウルダーにある米国地球物理データセンターが運営する DCDB は、IHO 加 盟国向けデジタル水路データサービスの中心となっています。

DGPS(Differential Global Positioning System):ディファレンシャル GPS。地上に固定さ れた基準局のネットワークを使用して、衛星システムが示した位置と実際の位置との差分を 発信し、GPS の精度を向上させるシステム。

DNC(Digital Nautical Charts):デジタル海図。ベクトルベースのデジタル製品。航海 士に最新維持された世界中のデータベースをシームレスに表示するよう設計されています。 DNC は、米国国防総省に属する国家地球空間情報局により刊行されています。


とを目的としたデータ処理システム。

EBL(Electronic Bearing Line):電子カーソル。レーダーの機能で、監視側の船舶の方位

用語・略語解説

DSCC(Data Supply Chain Certification):データサプライチェーン認証。データソースか らエンドユーザーの画面でデータを表示するまでに、損失なしでのデータ伝達を保証するこ

に対する物標の相対方位特定に使われます。

EC(Electronic Chart) :電子海図。データおよびソフトウェア、海図情報の表示が可能なハー ドウェアシステムを表す用語。

ENC(Electronic Navigational Chart):航海用電子海図。ECDIS 装置で使用するために作 成され、政府公認水路部の権限で刊行された電子海図。

FIG(International Federation of Surveyors):国際測量者連盟。あらゆる分野とその応 用において、測量の進歩のために国際的な協力を支援することを目的とした、国際的な非政 府組織。

GAGAN(GPS and GEO Augmented Navigation System) :GPS および GEO 補強ナビゲー ションシステム。

GEBCO(General Bathymetric Chart of the Oceans):大洋水深総図委員会。さまざま な水深データセットや、データ製品の開発に携わる専門家による国際グループ。

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GLL(Geographic position) :地理的位置。GPS やロラン C その他の衛星受信装置から、 レー ダーや ECDIS など別の装置への位置伝達に使われます。

GLONASS(Global Navigation Satellite System) :全地球的衛星航法システム。宇宙をベー スにした無線による測位、航法、時間伝達システム。ロシア連邦政府が運用。

GNSS(Global Navigation Satellite System):全地球的衛星航法システム。無線による全 世界規模での位置、時間、速度測定システム。宇宙と地上、ユーザーセグメントから構成され、 GPS や GLONASS、EGNOS、COMPASS、IRNSS などがあります。

GPS(Global Positioning System):全地球測位システム。アメリカ合衆国で作られた全地 球的衛星航法システム。位置、航法、時間といったサービスを全世界のユーザーに継続的 に提供しています。

HDT(Heading-True):船首方位。ジャイロコンパスから、レーダーや ECDIS など他の装置 への船首方位情報送信に使われます。

IALA (International Association of Marine Aids to Navigation and Lighthouse Authorities):国際航路標識協会。非営利、非政府の国際技術協会。航路標識を世界全域 の航海主管庁や製造業者、コンサルタントに提供して、知識の共有を推進しています。

IAPH(International Association of Ports and Harbors):国際港湾協会。世界 90 か国 にある 230 の港を代表として地球規模で交流を行っている IAPH は、非営利、非政府の団体 です。本部は日本の東京にあります。


システム。航海士は、システム設定の選択や出力情報の解釈、制御操作に対する船舶の応 答を監視して、システムを制御します。

用語・略語解説

IBS(Integrated Bridge System):統合ブリッジシステム。船舶中に設置したセンサー類か らの入力結果を集め、船橋の運航管理者のために船位や制御情報を電子的に表示する船舶

ICA(International Cartographic Association) :国際地図学協会。地図学や、地図の構想、 作製、頒布、研究に関する原則について世界的権威となっている団体です。

IFHS(International Federation of Hydrographic Societies):国際水路協会連盟。国お よび地域の水路協会による団体。水路学の発展と、水路関係者間の知識交換を推進してい ます。

IHO(International Hydrographic Organisation):国際水路機関。80 か国以上の水路 機関を代表する政府間組織。国家間での水路関連活動の調整役を果たしています。

IMSO(International Mobile Satellite Organization):国際移動通信衛星機構。インマ ルサット社の衛星により提供される、特定の公共衛星による安全およびセキュリティ通信サー ビスを監督する政府間組織。

IOC(Intergovernmental Oceanographic Commission):ユネスコ政府間海洋学委員会。 海洋研究や各種サービス、監視システム、危険緩和、能力開発の調整を通じて、海洋およ び沿岸地域の監督向上をめざすユネスコ委員会。

QZSS(Quasi-Zenith Satellite System):準天頂衛星システム。日本国内における GPS の 精度向上をめざす、日本の地域衛星システム。

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RENC(Regional ENC Coordination Centre):地域 ENC 調整センター。IHO によって設立 され、当該地域の ENC の検証およびエンドユーザーへの頒布を行っています。世界の主な 領域を RENC が代表することになっていますが、現時点ではノルウェー(Primar)とイギリス (IC-ENC)があるのみです。

RNC(Raster Nautical Chart):航海用ラスター海図。IHO 仕様に準拠したラスター海図。 紙海図の画像をデジタルスキャンして地理的位置参照を行い作製されたもの。

S-52:IHO 刊行物 S-52。IMO-ECDIS 性能基準と合わせて制作された IHO 刊行物。ENC の 製作や更新、ECDIS での表示に関する仕様と手引きを記載。

S-57:IHO 刊行物 S-57。「IHO デジタル水路データ転送基準」を収録。S-57 の第 3.1 版で は主に、論理データモデル、データ構造、オブジェクトカタログ、ENC 製品仕様、ENC 用オ ブジェクトカタログの使用について記載されています。

S-63:IHO 刊行物 S-63。ENC の情報保護のために IHO が推奨している基準です。IHO のデー タ保護スキームの正しい運用を徹底するにあたって必ず従うべきとされる、セキュリティ概念 と運用手順を定義しています。

S-100:IHO による水路データの新しい基準。最新の GIS(地理情報システム)規格である ISO TC211 にもとづき、ECDIS(ENC) 以外にも適用できる基準を提供することを目的としてい ます。いずれは S-100 にもとづくENC 製品仕様(名称:S-101)が作成され、S-57 の代わり となる予定です。


SENC:システム ENC。メーカー独自の ECDIS フォーマットに変換された ENC データベース。 ASCII 形式の ENC をバイナリ形式の SENC へ変換して頒布される場合もあります。効率的で エラーのない電子海図の提供方法です。

用語・略語解説

SBAS(Satellite Based Augmentation System):静止衛星型衛星航法補強システム。

SOG(Speed Over Ground):対地速度。搭載された海図に照らし合わせて GPS システム が出した、船舶速度の近似値。

TCS(Track Control System):航跡制御システム。オートパイロット装置と接続することで、 ECDIS 内の TCS によって船舶の GPS 位置情報が計画した航跡をたどるよう制御します。

TTM(Tracked Target Status):追尾物標ステータス。追尾物標情報を ARPA から ECDIS に 送る際に使います。

VDR(Voyage Data Recorder) :航海データ記録装置。全船舶に対応するよう設計されたデー タ記録システム。IMO SOLAS 条約への準拠が義務付けられています。船舶に搭載された各 種センサーからデータを収集します。収集した情報は外付けの保護記憶装置に保存されます。

VRM(Variable Range Marker):可変距離環。レーダーの機能。画面に表示される追尾 物標との相対距離測定に使われます。

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VTS(Vessel Traffic Services):船舶交通サービス。港湾当局が構築した海上交通監視シス テム。航空機における航空交通管制と同様、レーダーや CCTV、VHF 無線電話、AIS を使用 して船舶を追尾します。

WAAS(Wide Area Augmentation System):広域補強システム。米国領域内で運用され ている SBAS システム。

WEND(Worldwide Electronic Navigational Chart Data Base) :全世界航海用電子海図 データベース(ウエンド) 。一連の WEND 原則にもとづいて IHO が提唱しているコンセプト。 特に、SOLAS 条約による海図搭載要件および IMO-ECDIS 性能基準に準拠した統合サービス を通じて、世界全体で一定レベルの高品質、最新維持された公式 ENC の提供を保証するべ く策定されました。


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用語・略語解説


発行者:Jeppesen Marine ©2011 第 2 版発行:2011 年 編集責任:Jeppesen Marine、Say PR & Communications 当刊行物は海事関係者の参考資料として編纂したものです。 文中の誤訳・脱漏について、発行者は何ら責任を負うものではありません。 詳しくは、Bjornar.Bang@jeppesen.com までお問い合わせください。


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