2019/1/16 12:00 神⼾新聞NEXT
天皇陛下が詠んだ「はるかのひまわり」 種を⼿渡し14年、思い遺族に 鎮魂と復興のヒマワリが再び、被災者の⼼を温かい光で包んだ。16⽇に皇居で開か れた「歌会始の儀」で、天皇陛下は阪神・淡路⼤震災からの復興の象徴「はるかのひま わり」への思いを詠まれた。14年前、1⼈の少⼥が意を決して皇后さまに⼿渡したヒ マワリの種。両陛下は御所の庭にまき、花から種を取って毎年育てられたという。退位 を控え、最後の出席となる⾒通しの歌会始で被災者に⼼を寄せられた。 「贈られしひまはりの種は⽣え揃ひ葉を広げゆく初夏の光に」 被災地に⼤輪を咲かせた「はる かのひまわり」=2009年7 ⽉、神⼾市東灘区⻄岡本2
神⼾市灘区の⼩⻄眞希⼦さん(59)は、陛下の歌に胸が熱くなった。 「種を⼿渡してから14年もたつのに、歌に詠んでくださるなんて」 あの⽇、⾃宅で眠っていた⻑⼥の希ちゃん=当時(5)=を、倒れたピアノと崩れた 家のはりが直撃した。病院に運ばれたが、意識を取り戻すことはなかった。 眞希⼦さんは2005年1⽉17⽇、神⼾であった震災10年の追悼式典に出席され た両陛下と、遺族を代表して懇談した。被災状況を説明すると、「おつらかったです ね」と⾔葉を掛けられたという。 その時、当時⼩学5年⽣だった次⼥理菜さん(25)がヒマワリの種を差し出した。 震災で亡くなった神⼾市東灘区の加藤はるかさん=当時(11)=の⾃宅跡に咲いたヒ
阪神・淡路⼤震災で被災した市 ⺠らを慰問される天皇、皇后両 陛下=1995年1⽉31⽇、⻄宮市河原 町、市⽴中央体育館
マワリの“⼦孫”。予定外の出来事だったが、皇后さまは「ありがとう。⼤切に育てます ね」と受け取り、そばにいた天皇陛下に「いただいたんですよ」と種を⾒せられた。 同年夏、宮内庁の侍従から⾃宅に電話があった。「ヒマワリが咲いております」。理 菜さんに伝えるよう両陛下が望まれたと聞き、驚いた。眞希⼦さんは「数多く接した被 災者の⼀⼈なのに、気配りと⼼遣いが本当にうれしかった」と振り返る。 「笑み交はしやがて涙のわきいづる復興なりし街を⾏きつつ」。皇后さまも翌06年 の歌会始で、被災地への深い⼼情を詠まれた。神⼾・三宮の東遊園地には歌碑が建⽴さ れ、被災者を勇気づけている。 眞希⼦さんは「震災を忘れられるのは被災者にはつらいこと。でも両陛下が⼼から思
震災復興住宅で住⺠に声をかけ られる天皇・皇后両陛下=20 01年4⽉23⽇、神⼾市中央区脇浜海岸 通3、県営脇の浜⾼層住宅
ってくださることが伝わりました」と⽬を細めた。(⾦ 旻⾰) 【はるかのひまわり】阪神・淡路⼤震災から半年後、神⼾市東灘区で亡くなった⼩学6 年加藤はるかさんの⾃宅跡でヒマワリが咲いているのを⾒つけた地域の住⺠らが、各地 で種をまく活動を始めた。歌や絵本などを通じて広く知られ、復興の象徴として新潟県 中越地震や東⽇本⼤震災など国内外の被災地にも贈られた。