『アルプスの少女ハイジ』とユングフラウ地方
世界的に有名なアイガー・メンヒ・ユングフラウを眼前にのぞむクライネ・シャイ デックからヨーロッパ最高地点の鉄道駅ユングフラウヨッホまで結ぶ「ユング フラウ鉄道」。
1912年8月1日に開通してからの約100年間に、2300万人を超える 世界各国のお客様を乗せて走り続けてきたアルプスを代表する登山鉄道です。
アルプス唯一の世界遺産にも認定されている名峰群を抱くこのユングフラウ 地方は、日本のアニメで初めて海外ロケをしてつくられた名作『アルプスの少女 ハイジ』のモデルとなった地域です。海外旅行がまだ一般的ではなかった時代で したが「本物のスイスを肌で感じ、世界に通じるアニメを制作したい」という強い 思いで、1973年の夏にスイスロケを敢行。「ただスイスの風景を書くだけなら写 真でも十分だが、スイスの空気、人々のちょっとした仕草などを、知識ではなく肌 で感じ取って欲しかった」と高橋プロデューサーが語るように、実際にスイスロケ で見たもの、聞いたもの、感じたものすべてが作品に反映されています。
スイスロケの計画をたてた時は、原作の舞台といわれるマイエンフェルトを訪ね ることが目的で、ユングフラウ地方へ足をのばす予定はありませんでした。しかし マイエンフェルトは、真のアルプスの地域ではないので「本物のアルプス地方を 見ておいたほうがよいだろう」と、一行はユングフラウ地方へ向かったそうです。
アイガー直下のクライネ・シャイデックに宿をとり、この鉄道に乗ってユングフラ ウヨッホに向かいました。白く輝く雪山、雄大な氷河、しぶきをたてて岩壁を滑り 落ちる滝、美しい山上湖、一面に広がる花畑、森の木々、流れる小川など、アニメ の中で描き出されていた憧れのアルプスの情景は、今も変わることなくユング フラウ地方に息づいています。
ハイ ジ の 愛 し た ア ル プス の 世 界
Welcome to Heidi World
ZUIYO C
雄大な山々、緑の牧草地、のどかに響くベルの音。スイスで約 130 年前に発表された少女ハイディ(ハイジ)の 物語は世界各国で翻訳 され、愛されてきました。日本では名作アニメ「アルプスの少女ハイジ」として紹介され、 今でも広く親しまれています。アニメの中で描かれてきたアルプスの風景や素朴な山の暮らし、自然を愛する 人々の心は時が経っても変わることなく、今もスイスに息づいています。そんな“ハイジのふるさと”を訪ねて みませんか。季節を肌で感じながら星空を眺めたり、草原を走ったり…。大人も子供もハイジのようにアル プスの大自然を存分に楽しみましょう。そして、それぞれの心に残るアルプスの思い出を見つけだしてください。
発行:スイス政府観光局 Swi t z e r la nd To ur s m
発行日:2017年7月(初版:
ト ○ c ZUIYO 編集・文:牧野祐子(スイス政府観光局)Yuk
Publisher : Switzerland
Interlaken Tour smus, Masayo Oshio Minako Kaneko, VICTORIA-JUNGFRAU COLLECTION, SMP/PSL, SBI, Schwe zer scher Nat ona park, Schweizer Jaeger/Josef Gri fe C
Schreckhorn
Jungfraujoch( 3454m
Jungfrau(4158m) ▲ジルバーホルン
Silberhorn (3695m)
Eismeer (3160m)
Schwarzhorn(2928m)
Eigerwand (2865m)
Eigergletscher( 2320m )
Schreckfeld (1955m)
First( (2167m ) グロッセ・シャイデック
Grosse Scheidegg(1962m) プフィングシュテック
Pfingstegg(1387m)
Bort (1564m)
Bachsee/Bachalpsee (2265m)
Grindelwald( 1027m
Brandegg (1332m)
Kl.Scheidegg( 2061m )
Alpiglen (1616m)
Grindelwald-Grund ( 943m)
Holenstein(1624m)
Schwendi( 920m
Faulhorn(2681m)
Männlichen(2230m)
Wengernalp( 1874m )
Allmend( 1509m )
Stechelberg(875m)
Wengen( 1275m )
Wengwald( 1182m )
Bussalp(1792m)
Burglauenen (896m)
Lütschental (714m)
Schynige Platte (1987m)
Breitlauenen (1542m)
Lauterbrunnen( 797m )
Allmendhubel(1907m)
Mürren( 1639m )
Winteregg( 1588m )
Grütschalp( 1481m )
Isenfluh(1090m)
Zweilütschinen( 652m )
Sulwald(1526m)
Wilderswil( 584m
Heimwehfluh(662m)
Brienz(566m)
Interlaken Ost( 567m )
Interlaken West(570m)
Harder Kulm( 1301m
“ハイディ” アニメ『アルプスの少女ハイジ』は、スイス人作家 ヨハンナ・シュピーリが書いた物語を原作につく ら れました。スイスのさまざまな土地を舞台に 多くの作品を残した彼女の代表作となったハイ ディ(ハイジ)Heidiの物語は、約50ケ国語に翻訳 され、世界中の子供たちに愛されています。作品 が発表されてから 130 年以上の年月が経った 今でも、この物語に彼女が託したメッセージは 色褪せることなく語り継がれているのです。
のどかな田園風景が広がるチューリヒ郊外の ヒルツェル村で、外科医師の父と牧師の娘で詩 人でもあった母のもと、1827年に生まれたヨハン ナ・シュピーリ Johanna Spyri 。兄の友人で法律 家 のヨハン・ベルンハルト・シュピーリ氏と結婚 し、チューリヒでの生活を始めたヨハンナは、多 忙 を極める夫と慣れない都会ぐらしに、次第 に孤独 感を抱いていきます。そんな折に文才を められた彼女は、物語を書き始めることとなり、 1871年には J.S.という匿名で処女作品を発表。 以後いくつか作品を執筆していきます。
都会での生活に疲れていたヨハンナは、夏の休暇 を学生時代の友人が暮らすイエニンス村で過ご すことにしました。隣接するマイエンフェルトや ウンターロッフェルスなどを散歩しながら、山で 暮らす少 女“ハイディ(ハイジ)”の物語を着 1880年に『Heidis Lehr- und Wanderjahre ディの修業時代と遍歴時代)』を匿名で出版し、 続く翌年に出した続編『Heidi kann brauchen,was es gelernt hat(ハイディは習ったことを使うことが できる)』を本名で出版。作家ヨハンナ・シュピーリ の名が、一躍、世に知られるところとなったのです。
その後、1884年に最愛の息子と夫を続けて亡く すという不幸がありましたが、その悲しみを 乗り越えて、1901 年 74 歳 でこの世を去るまで、 子供のための物語を書き続けました。
これまでに発刊されているさまざまなハイジの絵本
シュピーリはハイジの物語のほかにも数多く の児童書を書いた
作家ヨハンナ・シュピーリの肖像
1900 年代に発刊されたハイジ本の数々
ハイジの愛したアルプスの世界 山の絶景 世界に名だたる名峰や、宝石のように美しい湖、雄大な氷河、山の裂け目から流れ落ちる迫力の 滝や清らかな小川、四季折々に表情をかえる森、可憐な花々。 アニメの中には、制作スタッフが“夢 の世界”を表現したという、ハイジの愛したアルプスの魅力が存分に描きこまれています。そして、 スイスアルプスでは、今でも大自然がつくりだす感動的な絶景の数々と出会うことができるのです。
アルプスの山々 国土の 6 割をアルプス山脈が占める山国スイス。その中心部に位置するユングフラウ地方は、アイガー、メンヒ、ユングフ ラウという三名山をはじめ、アルプスを代表する 4000m 級の名峰がそろっています。アルプス山脈の中で唯一の世界遺産 「スイスアルプス・ユングフラウ=アレッチ Swiss Alps Jungfrau-Aletsch 」として登録されました。目の前に山々が広がる 迫力の眺望をお楽しみください。山上の展望ポイントへは、登山鉄道やケーブルカー、ロープウェイが結びます。鍛えられた 登山家でなくても、誰もが気軽に大自然を体験できるのも大きな魅力です。
雄大な氷河
総面積約 3000k ㎡、約 1800 カ所の氷河を有するスイス。アルプスの山々に残された数千万年前に遡る壮大な地球の 記憶を留める神秘的の世界です。ユングフラウ地方では、山上の展望台からや、ハイキングをしながら、美しく雄大な 氷河を楽しむことができます。
Aletschgletscher
Oberer Grindelwaldgletscher
メッテンベルグの南西斜面とヴェッターホルン の北東斜面の間に流れる氷河。ボルト、シュレ ックフェルトからは、ちょうど真正面にあたる 位置で氷河を見ることができます。フィルスト 周辺のハイキングとあわせて氷河の眺望を 楽しんでみましょう。
POINT ヨーロッパ最大・最長の氷河(約 23km )で、周辺の山々とあわせて世界 自然遺産に登録されています。総称してアレッチ氷河と呼んでいますが、 実際はメンヒから続くエーヴィッヒシュネーフェルトとユングフラウ からのびるユングフラウフィルン、アレッチホルンの北側に広がるアレ ッチフィルンという3つの氷河が合流してグロッサー・アレッチグレッ チャーにつながっています。ユングフラウヨッホからはアレッチ氷河の 眺望を楽しんだり、氷河の上を歩いたり、氷河内部につくられた洞窟 「アイスパレス」で氷河の世界を体感することができます。
Unterer Grindelwaldgletscher ■
Fieschergletscher
約2時間のハイキングでたどりつくベーレック から氷河の眺望を楽しむことができます。さら
に登山道を上ると、氷河のそばに山小屋「シュ レックホルン・ヒュッテ」もあります。
フィーシャーホルンの南側に広がる同名の 氷河とはちがい、こちらは山の北側にあり グリンデルワルト下氷河と合流していく
展望窓からまさに氷の海のように連なる 迫力の氷河を見ることができます。 フィーシャーホルンとシュレックホルンとの 間に流れる氷河。プフィングシュテックから
フィルスト近郊
アルプスの夕暮れ 「もえるわ、もえるわ、山がみんなもえてるわ。あっちの 雲も雪も何もかも火の中よ」「こんどはバラ色よ。バラが いっぱい」とはじめてみたアルプスの夕焼けに大興奮の ハイジ。アニメの中でも心に残る印象的なシーンです。
とくに山に残雪が残る春や新雪が山頂に積もった秋は、 雪山が白いスクリーンのように光を反射して、ハイジが表現したように、赤やピンク、オレンジ、黄色などさまざまな色へ刻々と 変化していきます。まさに大自然がつくり出す壮大な光のスペクタクル。そんな夕暮れの感動的な瞬間はアルプスならではの 贅沢な時間です。ドイツ語では、美しく空が赤く染まっていく夕焼けのことを「アーベントロート(夜の赤)Abendrot」といいます。 そして、太陽が沈んだ後、雪や岩、氷などに光が乱反射することにより、まわりは闇に包まれた中、山頂だけが赤々と燃えるよう に色づく現象のことを「アルペングリューエン Alpenglühen」と特別に表現しています。
※独語のグリューエンとは、炎が出て燃えるブレネン brennenとは違い、炎を出さずに炭や鉄などが赤々と焼け続けることを示す単語です。
アルプスのご来光 アルプスの夕暮れとともに、美しいご来光も感動的な体験です。漆黒の闇夜から山の稜線を縁取りながら、青、紫、ピンク、オレ ンジ、黄金色など色を変えて一面を照らしていく朝日。澄み切ったアルプスの空気がさらに研ぎすまされる神々しい時間です。
アルプスの夕暮れやご来光は普通、苦労して登山した者だけが許されてきた特別な風景ですが、標高 2000 ~ 3000m の山上 でも立派なホテルやペンション、山小屋があるスイスなら、誰でも宿泊することで気軽に体験することができます。心に残る 感動的な絶景をお楽しみください。
■ ベルヴュー・デザルプ Bellevue des Alpes
■ ベルグホテル・シーニゲプラッテ Berghotel Schynige Platte
■ ベルグハウス・ボルト Berghaus Bort
作家ドーデが代表作『アルプスのタルタラン』を書いた宿 を前身として、1893 年のヴェンゲルンアルプ鉄道の開通 を記念してオープン。1920 年代に欧米各国から富裕層が 訪れるようになり改修。バスタブ完備の部屋や食堂、ラウ ンジ、バー、グランド・ピアノがおかれたバンケットルーム など、当時の山岳ホテルとしては異例の豪華さでした。 現在では、内装や家具、壁に飾られた絵画など随所に当時 の雰囲気を残しつつ、快適なホテルに改修されています。
▶OPEN: 夏期(6月中旬~9月中旬)、冬期(12月中旬 ~4月中旬) www.scheidegg-hotels.ch
山上につくられた食堂を前身として、シーニゲプラッテ 鉄道が開通した翌年の 1894 年にオープンした伝統 の ホテル・レストラン。約 120 年前に世界中の旅行客を魅了 した、ホテル前の展望テラスから望むベルナーアルプス の眺望は今も変わることがありません。人気のレストラン ですが、ホテルとして宿泊することも可能。部屋数は少ない ですが、ノスタルジックな雰囲気を留めています。 ▶OPEN:5月末~10月末 hotel.schynigeplatte@jungfrau.ch フィルストへのぼる途中駅のボルト。グリンデルワルト 上氷河を正面に望む絶景が魅力の山小屋レストランが、 2010年に客室とレストランの内装を全面改修。約140年前 に建てられた木造農家の外観はそのままに、スタイリッ シュな3ツ星ホテルに生まれ変わりました。150チャンネル 楽しめる最新の薄型テレビを全室に完備。無料で無線 ランが使えるサービスもあります。
■ ベルグガストハウス・フィルスト Berggasthaus First
▶OPEN:5月下旬~10月下旬、12月中旬~3月末 www.berghaus-bort.ch
ロープウェイ駅と連結したフィルストの展望レストランに は宿泊施設もあります。4 14 人用のドミトリータイプの 部屋が中心で小グループや家族におすすめ。山の夕暮れ や朝焼けの瞬間は感動的です。早朝、バッハアルプゼーへ のハイキングが楽しめます。
▶OPEN:5月下旬~10月中旬 www.berggasthausfirst.ch
山の絶景
アルプスの山上湖 スイスアルプスには、小さな山上湖が無数に点在します。鏡のような湖水に雄大な山々の姿を映しとる情景は、感動的な美 しさ。アニメでも、山上で見つけた宝物のような場所として描かれています。ユングフラウ地方には“アルプスの宝石”とも いわれる有名な山上湖があります。そのほか、湖ではないですが、貯水湖や小さな水たまりのような池でも、周りの山々が 映り込むスポットがいくつかあります。
フィルスト周辺
■ バッハアルプゼー Bachalpsee/Bachsee
ヴェッターホルンやシュレックホルン、フィン スターアールホルンの山々や氷河を湖面に映 し出す "ミラーレイク(鏡の湖) "として有名な 山上湖。フィルストから歩いて約 50 分の人気 ハイキングコースです。
山の絶景
アルプスの滝 アルプスの山々から雪や氷がとけて流れ出す清らかな水。落差のある険しい岩をつたって落ちる美しい滝は、スイスを代 表する絶景のひとつです。さまざまな滝見の旅が楽しめるでしょう。アニメの中でも、アルプスの岩を流れ落ちる迫力の滝 や、森の中でみつけた滝などが登場しています。
POINT
■ アントゼーヴェン Antseewen / Antseeuwen
グロッセ・シャイデックからシュテプフィ Stepfi 方面へ下り、ラウフビュールまで歩く ハイキングの途中にあたるスポット。湿地にな っており、小さな沼のような湖が点在しています。
■ ファルボーデンゼー Fallbodensee
クライネ・シャイデック駅とアイガーグレッチ ャー駅の間。スキーリフトがあるファルボーデン につくられた貯水湖。アイガーの真下に位置 するため、山が映り込む美しい情景が楽しめます。
アルピグレン近郊(アイガートレイル)
トリュンメルバッハ滝
フィルスト近郊
POINT ■ シュタウプバッハ滝 Staubbachfall ■ トリュンメルバッハ滝 Trümmelbachfälle
OPEN : 4月初旬~9月初旬 ラウターブルンネン駅からすぐの ところにある岩壁の上から流れ落 ちる高さ約300mの名瀑。塵(ちり) を意味するシュタウプという名前 のように、細かい霧のような水しぶ きがたっています。かつてゲーテも 絵画のように美しいこの滝に感動 し、後にシューベルトの歌曲になっ た詩『 水の上の精霊の歌 Gesang der Geister über den Wassern』を 書きました。後にイギリスの詩人 ワーズワースもこの滝の想い出を 美しい詩節に残しています。
アルプスの氷河群からとけだす約 2 万トンの水が、険しい岩の洞窟 内を10層となり流れ落ちていく滝。 見学には入園料が必要ですが、 1912年から岩山の内部に設置され たエレベーターで、上部の滝まで 簡単にいくことができます。行き はエレベーターで上り、帰りは階 段で下りながら、滝を順番に見て いくコースがおすすめ。ラウター ブルンネンからシュテッヘルベルク またはミューレンへ向かうバスル ートの途中にあるので、シルトホ ルン観光と組み合わせてもよいで しょう。冬期閉鎖。
山の沢や小川
ライン川、ローヌ川、ドナウ川というヨーロッパを代表する大河の源流となるスイスアルプスの雪解け水は、山中を小さな 沢や小川となり流れていきます。透明度が高い美しい清流もアルプス地方の代表的な絶景のひとつです。
アルプスの森と木々 国土の約 3 割を森林が占めるスイスでは、多 くの美しい森を訪ねることができます。標高 約 1300mくらいまでの地域に生育するブナ やオーク(樫)などの広葉樹や、約1900mまで の高さにみられるモミやトウヒ、カラマツ、マツ などの針葉樹林。全国的にみると針葉樹林と 広葉樹林が6:4の割合で分布しており、秋には赤や黄色、オレンジなど色とりどりの美しさをみせてくれます。ユングフラウ 地方には、広葉樹から針葉樹まで、すべての木々が生育しています。
アルプスにかか る 虹
雨が降った後、山に大きくかかる虹や、流れ落ちる滝に光が反射してみえる虹。アルプスの大自然の中にいると、そんな 感動の風景に出会うこともあります。
霧や雲海
アルプスの谷 山での急な放射冷却によって霧が発生することも、アルプスではよくある自然現象。早朝などに霧でかすんだ山や谷は幻想 的です。霧が一面に広がると、山頂からは雲海のようになります。これを独語では「ネーベルメーア(霧の海)Nebelmeer」といいます。
山々を抱くユングフラウ地方には数多くの谷があります。なかでも、アニメのオープニングシーンを思わせるラウターブル ンネン谷は氷河の浸食で形成された印象的なU字谷です。
山 の お 花 畑 可憐な花々の美しい風景で知られるスイス。家々の窓辺を飾るあざやかな花、道ばたに咲く野の花、絨毯のように草原に咲き 誇る花々、標高の高い山の岩地や湿地帯、牧草地に次々と咲いていく小さな高山植物の花など。ハイジのアニメにも、アルプスの 魅力を全面に伝える山のお花畑のシーンはもちろん、ほとんどのシーンの背景のかたすみに、かわいい花々が登場しているのです。
麓の村に咲く野花
標高およそ 500m から 1000m 。アルプスの山上にまだ雪が残る頃、山麓にはかわいい花々が咲き始めます。ユングフラウ 地方では、インターラーケン(約 )やラウターブルンネン(約800m)、グリンデルワルト(約1000m)あたりの麓の村で、 4 月下旬から 5 月中旬頃に、さまざまな野の花や黄色の西洋タンポポ、リンゴの白い花々などが咲いていきます。
窓辺を飾るゼラニウムの花
スイスでは美しい花々を窓に飾った家をよく見かけます。とくにあざやかな色合いと手入れのしやすさ、長持ちすることで 人気のゼラニウムの花は最も代表的なもの。アニメの中でも村の民家の窓にゼラニウムが飾られています。アニメで登場 しているような赤い花が最も一般的ですが、ほかにも白、ピンク、黄色など、さまざまな色の種類があり、5 月頃から 10 月頃 まで鉢やプランターに植えられたゼラニウムが窓辺に置かれています。
アルプに広がる花畑 山のお花畑
標高およそ 1200m から 1800m 。アルプ(アルム)と呼ばれる山の放牧地に、雪がとけて草が生えてくる 5 月頃、タンポポや キンポウゲ、キンバイソウなどの黄色の花々や色とりどりの花々が群生します。まだ美しい残雪を残すアルプスの山々を バックに花々が絨毯のように咲き広がる情景は、まさにメルヘンの世界。牛たちが放牧される場所なので、堆肥の恩恵もあり、 大きな西洋タンポポがあざやかに咲きます。6 月になり草がのびてくると、冬用の干し草にするために花も一緒に刈って しまうので春の限られた期間のお楽しみです。※ハイキングコースはP43・44
高地に咲く山の花々 標高およそ 1800m から 2500m 。山の中腹に広がる放牧地(アルプ)の草が刈り取られていく6 月中旬、さらに上の高地 (山上)に雪どけの季節が訪れます。標高の低いところでも咲いてきた花たちが 1ヶ月ほど遅れて咲き始めるほか、高地 に しか咲かない種類の花々もあります。険しい崖や岩地、山の斜面などに咲く丈が低く小さくて可愛らしい花が多いのが特徴。 開花時期は花の種類や標高、陽当たりの具合などにもよって異なりますが、1 ~ 2 週間ごとに、咲く場所や花の種類が変化 していきます。※ハイキングコースはP46~49
山のお花畑
山の花いろいろ
★アニメの中には実際のアルプスに咲く花々が描かれています。世界共通となる学名を記載していますが、花について詳しい情報は スイス政府観光局発行のパンフレット「スイス花の旅」をご参照ください。公式ホームページwww.myswiss.jp からPDF版がダウンロードできます。
山に咲く白い花々
アニメの中によく登場しているマーガレットの花。もともと耐寒性のある 花で、さまざまな環境に適応してきた花なので、低地から高地まで幅広く 生育しています。種類も多くありますが、高地に咲くマーガレットは主に 「ベルク・マルゲリッテ Berg-Margerite 」。花がより小さいヒナギク「ゲン ゼブリュムヘン Gänseblümchen」やカモミールも各地で見かけます。
Gentiana verna
Silene Vulgaris Primula farinosa Myosotis alpestris
Androsace chamaejasme
Androsace chamaejasme
Primula hirsuta Saxifraga oppositifolia Convallaria majalis
Soldanella minima Soldanella minima Soldanella pusilla
Soldanella alpina
Lamium maculatum Bellis perennis Dianthus sylvestris Dianthus carthusianorum
Ranunculus repens Potentilla aurea Trollius europaeus Plantago media
山のお花畑
ユングフラウ 地 方 の 花風景
険しい岩壁、美しい水が流れる沢や滝、氷河や名峰、森林やアルプ(山の牧草地)など、雄大な大自然が描き出す感動的な風景は、 数多くの種類の花々が咲く生育環境でもあります。スイスで咲く約600種類の花のすべてが見られるユングフラウ地方は、スイス を代表する高山植物の宝庫として知られています。アルプス各地で良く見られるポピュラーな花と希少な種類の花々が同時に 咲くという、他の地域にはない特徴があり、古くから多くの植物学者たちが注目してきた地域でもあります。花の種類や咲く 場所の環境、標高によって開花期は異なりますが、山を覆っていた雪がとけると同時に多くの花々が咲き始めます。登山鉄道や ロープウェイに乗って、多彩な花々を気軽に楽しんでみましょう。沿線には花の名所がそろっています。
※花の見頃としては過去数年の平均でおすすめの時期を紹介していますが、実際はその年の気象条件などによっても異なる場合があります。例年より開花が早い場合はより 標高の高いところ、遅い場合は標高の低いところが見頃となりますので、現場で調整してください。
ユングフラウ鉄道 A
クライネ・シャイデック ←→ アイガーグレッチャー アイガー山中を貫くトンネルでヨーロッパ最高地点の駅ユングフラウヨッホ駅まで結ぶので、花が楽しめるのは、クライネ・ シャイデックからアイガーグレッチャー駅までの区間。6 月中旬から 8 月上旬まで色とりどりの高山植物 の花々が咲いています。
ヴェンゲルンアルプ鉄道 Wengernalpbahn/WAB B ラウターブルンネン ←→ クライネ・シャイデック ユングフラウ鉄道の起点となるクライネ・シャイデックまで結ぶ登山鉄道。ラウターブルンネンからの路線は、ヴェングヴァルト、ヴェ ンゲン、アルメントまでは5月中旬から6月中旬、ヴェンゲルンアルプ、クライネ・シャイデック周辺は6月中旬から7月下旬が見頃です。
Wengernalpbahn/WAB
グリンデルワルト ←→
グリンデルワルトからの路線は、麓のグルントからブランデックまでリンゴの花も咲く4 月下旬から 6 月上旬、さらに上の 月中旬頃に野の花が咲き誇り、アルピグレンからクライネ・シャイデック周辺では、7月上旬 花々が咲いていきます。
Schynige Platte Bahn/SPB
ヴィルダースヴィル ←→ シーニゲプラッテ アイガー、メンヒ、ユングフラウの三名山を正面に望むシーニゲプラッテへと結ぶ登山鉄道。沿線は標高に応じて異なる花が 咲いていきますが、とくに中間駅のブライトラウエネン駅周辺は 5月中旬から7月下旬まで、さまざまな野花が咲き誇るお花畑 です。森林限界をこえた山頂には「シーニゲプラッテ高山植物園」があります。
フィルストバーン Firstbahn/FB E
気軽にアルプスの雄大な風景を満喫できるフィルストへ結ぶロープウェイ。5月中旬~6月上旬、途中駅のボルト周辺に黄色の 花絨毯が広がります。
6 月上旬からは山頂駅のフィルストから美しい山上湖バッハアルプゼーやヴァルトシュピッツへのハイ キングコースがおすすめ。数多くの高山植物が咲いています。
Mürrenbahn/BLM F
ミューレンバーン ラウターブルンネン ←→ ミューレン 2006年末に新設された最新の大型ロープウェイで、ラウターブルンネンからグリュッチアルプまで。1891年に開業した歴史を 感じさせるレトロでかわいい登山鉄道でグリュッチアルプからミューレンまで結びます。ミューレン周辺には多彩な花々が楽し める人気ハイキングコースがそろっています。
高山植物と昆虫たち
激しい温度変化や乾燥、厳しい風や日差しなどアルプスの厳しい環境を生き抜くため、さまざまな進化をとげてきた高山植物の花々。赤や 青、紫、黄色などあざやかな花の色は、強い紫外線に対する抗酸化力を持つとともに、夏の限られた短い時間で効率よく受粉を成功させるた めに欠かせない蝶や蜂などの昆虫たちをひきつけるために役立っています。アニメの中にも描かれているように、とくにユングフラウ地方 では美しい花々のまわりを舞う、かわいい蝶たちに出会うでしょう。
山の動物
独語
ヤギ ツィーゲ Ziege
アニメではメインで登場しているヤギですが、現在のスイスでは牧畜の中心は牛になっているため、以前ほどヤギの群れを 見かけることは少なくなりました。ハイジの原作が生まれた 130 年前には全国で約 42 万頭いたヤギも現在では約 7 万頭に 減少。今でも、ユングフラウ地方の農家は牛とともにヤギも飼っていることが多く、アルプでよく放牧されています。
ハイジの愛したアルプスの世界 山の暮らし ハイジやペーター、おんじが厳しくも美しい大自然とともに生きる。アニメの中には、そんな 素朴な山国の暮らしが丁寧に描かれています。原作が生まれてから約130年の時を経て、一般 的な生活スタイルは大きく変わりましたが、村の情景や古い民家 、山あいを走る鉄道、 アルプ スの牧童や農家の伝統や風習は、今も変わることなく、大切に受け継がれているのです。
独語
牛 クー
山の上に広がる牧草地(アルプ)での牛の放牧は、今やスイスを代表する風景の一つです。地域によって特徴がありますが、 アニメにも登場しているスイスブラウン種はジンメンタール種と並んでポピュラーな牛。アルプの多いユングフラウ地方で は、あちこちでのどかに草を食む牛たちをあちこちで見かけます。
独語
犬 フント Hund
ペットとして最も親しまれている犬はスイス各地でよく見かけます。とくにユングフラウ地方は、スイスの山岳犬として 有名なバーニーズ・マウンテン・ドッグ(独名:ベルナー・セネンフント)の出身地でもあり、多くの牧羊犬たちがアルプで牧童 たちのパートナーとして牛や羊、ヤギたちと一緒に走っています。アニメの「ヨーゼフ」は、イタリアとスイス国境にあるグラ ン・サン・ベルナール峠のホスピスで多くの旅人を救ってきたセント・バーナード犬で、バーニーズ・マウンテン・ドッグと同じ 犬を祖先にもつ山岳犬ですが、アルプでは通常見かけません。よくぬいぐるみなどがつくられる人気の犬なので、クライネ・ シャイデックなど人気の観光地では有料の記念撮影用 に飼っています。
小さな山の村々 ハイジやペーターが通う学校のある村をアニメの中ではデルフリ村と呼んでいますが、「デルフリ Dörfli 」とは、ドイツ語で村を 意味する「ドルフDorf」の変化形で“小さな村”を意味する単語なので、そういう名前の村は実在しません。しかしスイス各地の 山岳地方には、同じような雰囲気のかわいい村(デルフリ)が点在しています。ユングフラウ地方のハプケルン、ウンターゼーン、 ヴィルダースヴィル、ラウターブルンネン、ヴェンゲン、ミューレン、グリンデルワルトなどは、昔ながらの情景が残る山村 です。
店の看板
スイスでよく見かける老舗の商店や宿などの趣向をこらした看板。そもそもは、中世の時代、巡礼者たちに宿を提供してい たホスピスと呼ばれる修道院や教会が、旅人たちにわかるように聖人のシンボルを軒先にさげたことから始まったといわ れています。次第にちょっとしたブームとなり、宿屋に鍵、パン屋にパンのマークなど、店の特徴をあらわすものや、店の屋 号をあらわすようなシンボルなど、凝った看板がつくられるようになりました。
山村の家・部屋 山岳地方の農家や民家は木造が多く、素朴な木の椅子や机など、室内もあたたかな木のぬくもりにあふれています。今でも、 伝統の山岳ホテルやレストランなどに、昔の雰囲気が残されています。
POINT 村の泉
アルプスの清らかな水があふれるスイス。中世の街角にも、小さな山村にも、どこにでも泉(独語:ブルンネンBrunnen)があり ます。ほとんどが問題なく飲むことができる水です。
ストーブ 多くの場合、メインのリビングルームと、ダイニングキッチンにあたる台所・食事部屋は、隣あわせにつくられており、料理を つくるかまどの火がそのまま、反対側の部屋にある居間のストーブに熱を送り、部屋を暖めるという仕組み。冬が長く寒い雪 国ならではの知恵です。普通の農家では石造りやタイル張りの簡素なものですが、資産家の家や領主の城などのお屋敷では、 ハイジのアニメで冬の家にする廃墟にあったように、美しい装飾がほどこされた陶器のストーブが使われていました。
馬車
ヨーロッパで古くから
活躍してきた交通手段
が馬車です。アニメの中 でも、クララやおばあ さまたちが移動する際
に馬車に乗ってきます。19 世紀から山岳観光地として発 展していたインターラーケンでは、村の大通りを多くの 馬車が行き交っていました。そんな伝統を受け継ぎ、今で も観光用の馬車が村内を走っています。
高級ホテル
素朴な山村が点在する
アルプスは各国の富裕 層が集まるリゾートで もあります。アニメでも ラガッツの高級ホテル
でクララのおばあさまがお茶を飲んでいます。かつて”アル プスのパリ”と呼ばれたインターラーケンの 老舗ホテル 『ヴィクトリア・ユングフラウ・グランドホテル &スパ』のテ ラスに良く似ています。100年前の貴婦人のように名物の アフタヌーンティーを楽しんでみてはいかがでしょう。
アルプの山小屋 アニメの中で、夏の間、ハイジたちが暮らす山小屋があるところを「アルム」と呼んでいますが「アルム Alm 」とは、山の放牧地を 意味するドイツ語です。スイスドイツ語では「アルプ Alp 」といいます。”アルプス”の語源はかつては高い山を意味していた、こ の”アルプ”の複数形だといわれています。夏の間、標高1300m ~2500m あたりに広がる山の草原(アルプ)にのぼっていき、牛 やヤギたちを放牧する移動牧畜のスタイルは、山とともに暮らしてきたアルプス地方の伝統です。アルプスの大自然の中、のど かに牛が草を食む姿は、大切に守られてきたスイスを代表する風景です。アルプには、牧童たちが寝泊まりする簡素な山小屋 や搾乳したばかりのミルクでチーズをつくるチーズ小屋が点在しています。
Scheidegg
山の水飲み場 アニメの中で、おんじが木をくりぬいてつくっていた水飲み場は、アルプスで今も良くみかけるものです。牛などの動物たちが のどを潤すこともありますが、現在ではハイキングやサイクリングの途中にうれしい給水ポイントとして重宝されています。特別 な看板(バツ印など)がなければ、ほとんど飲料水として問 題 のないきれいな水。冷たくておいしい“アルプスの天然水”です。
山の仕事①:チーズづくり
夏の間、牧童たちは牛たちをアルプと呼ぶ山の上の牧草地に放牧し、高地に育つ柔らかな草を食べさせます。そして絞り たてのミルクを使って、小さな山小屋でベルグケーゼ(山のチーズ)をつくっていきます。アニメの中でもよく登場している ように、山上でのメインの仕事です。おんじが麓でパンや生活用品を購入する時にも、山のチーズを持っていくように、 アルプスで暮らす牧童たちの貴重な収入源でもあります。
昔からチーズは冬を越す貴重な食料で、半年から数年間の長期間保存がきく硬質か半硬質タイプ。紀元前にはすでに アルプスを越えてイタリアに輸出されていた記録があるほど歴史も古く、古代ローマでは「カゼウス・アルピヌス(アルプス のチーズ)」と呼ばれ、高級品として珍重されていたそうです。スイス全土で数百種類のチーズをつくっていますが、現在でも
山の仕事②:薪割り・木工 チーズづくり、料理、暖房などに使う薪づくりはアルプスの暮らしに欠かせない仕事です。よくおんじも薪割りにはげんで いました。今でも山岳地方の農家の家々には、せっせとつくった薪がびっちりとしまってあります。
薪として使うだけでなく、家具や食器、置物など、さまざまなものを森の木でつくってきました。アニメの中でも、よくおんじ がもくもくと木工の作業をしています。器用にハイジのいすやソリ、木彫りの動物などをつくってくれました。現在でも、山岳 地方を中心に木彫り・木工の伝統は受け継がれており、村のおみやげ店など購入することができます。
山の仕事③:草刈り
初夏から秋にかけて、アルプでは草刈りにはげむ農民の作業風景 をよく目にします。冬の間、牛たちの食料となる干し草を、 せっせとつくっているのです。機械で一気に広い土地を刈ることもありますが、起伏の激しいアルプの土地などでは、昔 な がらの大きなカマを手にして、草を刈っています。アニメの中でもよくおんじがこの作業をしています。スイスロケ中に 制 作チームが草刈りをするおじいさんや少年に出会い、そのシーンを取り入れたそうです。
昔ながらの製法を受け継ぐ山のチーズは人気があり、山岳地方のレストランやホテルの朝食などで味わうことができます。 すべてのアルプにチーズ小屋があるわけではなく、放牧して搾乳したミルクをチーズ小屋に売ったり、あるいは各々に ミルクを持ち寄り、共同のチーズ小屋でまとめてチーズをつくり、秋になると分配するという伝統があります( P52 )
わらで眠ろう 農家体験 ハイジといえば、干し草(わら)でつくったベッド。草の香りに包まれて眠りにつきたい!とあこがれた人も多いでしょう。スイスでは、全国の 約130軒の農家で宿泊体験 ができる、その名も『 シュラフ・イム・シュトロー(わらで眠る)Schlaf im Stro h 』というネットワークがあります。 普通の農家に滞在するので、最低限の語学力は必要。寝袋も持参です。 www.schlaf-im-stroh.ch
アルプスの 鉄 道 原作の物語が書かれた約 130 年前は、スイス全土に鉄道網が広がっていった時代でした。山岳観光の発展とともに、ユング フラウ地方を中心とするアルプスの
観光地にも驚異の技術で鉄道路線が敷設され、現在のスイスを代表する山岳鉄道が 続々誕生していきました。アニメでも、フランクフルトとの行き帰りでハイジが鉄道に乗って旅しています。
フランクフルトから 夢 にみたアルプスへと戻ってくるハイジ。車窓にかわいい教会や山村、美しい湖、そして雄大なアルプスの 山々がみえてくると思わず 歓喜の涙があふれてきます。鉄道や船に 乗って、次々と変わっていく絶景を楽しむことは スイス 旅行の醍 醐味です。ユングフラウ地方では麓の村となるインターラーケンからベルナーオーバーラント鉄道、ヴェンゲルン アルプ 鉄道、ユングフラウ鉄道と乗り継ぎ、標高3454mのヨーロッパ最高地点となるユングフラウヨッホ駅までのぼることがで きます。だんだん標高があがっていくにつれ、アルプスの眺望が車窓に迫ってきます。
蒸気機関車の旅
スイスに英国人を中心としてヨーロッパ各国から観光客が訪れた 19 世 紀。その頃に活躍していた蒸気機関車は今も健在です。約 120 年前に開 通した伝統の路線で、往時の面影をそのまま残すシーニゲプラッテ鉄 道では、6月~9月に歴史的な蒸気機関車の特別運行をしています。
アニメには登場していませんが、アルプスの魅力あふれるユングフラウ地方では、自転車での旅もおすすめ。素朴な山村や のどかな谷、花畑、滝や美しい川など、じっくり風景を楽しんでみてはいかがでしょう。サイクリング天国といわれるスイスでは、 各地に標識が設置されており、自転車を鉄道やケーブルにのせて運んだり、駅やスポーツショップで自転車が気軽にレン タルできたりするサービスもあり、サイクリングを楽しむベースが整備されています。上級者ならマウンテンバイクで山上を 走るダイナミックなコースも良いでしょう。グリンデルワルトやラウターブルンネンなど、麓の村を走る簡単コースもあります。
Grindelwald
Kleine Scheidegg
ラウターブルンネン Lauterbrunnen
ハイジの愛したアルプスの世界 のごちそう アルプスでの食事は決して豪華なものではなく、チーズやパン、ミルク、スープ、干し肉など、基本的に素朴で質素なものです。 しかし、ハイジのアニメに登場してくる食べものは、とてもおいしそうに見えてくるから不思議。山のチーズを溶かして食 べるシーンはとくに印象的です。アルプスの澄んだ空気や周囲の美しい自然、それこそが何よりの贅沢なのかもしれません。
干し肉(ドライビーフ) トロッケンフライシュ Trockenfleisch
スパイスを配合した調味液に漬けこんだ牛肉の塊を乾燥させてつくる干し肉。もともとは山小屋の軒下や屋根裏など風通 しのよいところに吊るしておく山岳地方の保存食のひとつ。薄くスライスしたものを、そのまま手でつまんで食べるか、バター を塗ったパンの上にのせて食べるのが定番スタイル。朝食にも登場してきますが、ワインやビールのつまみにも最適です。
独語
チーズ ケーゼ Käse
ハイジがよく食べていたチーズのせパン「ケーゼシュニッテ」はアルプス地方の代表的な食事のひとつで、スライスしたパンに とけたチーズをのせるのが基本形ですがバリエーションもいろいろ。主に山のレストランで食べることができます。大きなチ ーズの溶けた部分をナイフでそぎ落として、ジャガイモにからめて食べる「ラクレット」もとろとろチーズが味わえる定番料理。
ケーゼシュニッテ Käseschnitte
※山のチーズについては P34 参照
ヴァレー州が発祥ですが、スイス各地のレストランで食べることができます。そのほか、2~3種類のチーズを白ワインで溶か し、細長いフォークの先に刺したパンにからめて食べるおなじみのチーズ・フォンデュもあります。
ラクレット Raclette
チーズ・フォンデュ Käsefondue
ソーセージ ヴルスト Wurst アニメの中ではドイツからのおみやげとして登場しますが、スイスにも地域ごとに特徴のある多彩なソーセージがつくられてい ます。シンプルに焼いたものや玉ねぎソースをかけたもの、スープにのせたものなど、ソーセージを使った料理もいろいろあります。
パン ブロート Brot ヨーロッパ最古のパンが発掘されたスイスでのパンづくりの歴史は古く、各地に地域の風土を反映した個性的なパンがあり ます。アニメではハイジが白パンをおばあさんへのおみやげに持ち帰ったエピソードが有名。当時のヨーロッパでは、噛みごた えのある黒パンに比べ、柔らかい白パンは上流社会の人が食べるパンだったようですが、最近ではビタミンや食物繊維の 豊富 な黒パンも好まれています。スイス滞在中はホテルの朝食ビュッフェなどで、さまざまなパンを味わってみることができます。 アニメには登場してませんが、ジャガイモの細切りをフライパンで炒め、パンケーキのような形にして表面をこんがりと焼いた「レシュティRösti 」や、ゆでたジャ ガイモとマカロニ(パスタ)をチーズであえ、カリカリにあげたタマネギをトッピングした「アルペン・マカロニ Älplermagronen」なども山岳地方の代表的な料理 です。山のレストランで食べることができます。シンプルですが、店ごとにレシピやトッピングなどのバリエーションが多く、個性的な味をお楽しみいただけます。 山岳レストランの定番メニュー
しぼりたてミルク ミルヒ Milch アニメでペーターはヤギから直接飲んでいますが、ヤギの 乳はクセがあることが多いので牛乳の方がおすすめ。
山岳地方では、農家の軒先やアルプに近いレストランや ショップで、絞りたて 牛 乳を販売 していることがあります。
新鮮で濃厚な牛乳を使ってつくられるヨーグルトもおすすめ。
山のレストラン ▶ユングフラウ地方では、ほとんどの登山鉄道やロープウェイの駅に山岳レストランがあります。ハイキングの途中休憩に最適です。
レストラン・クライネ・シャイデック
Restaurant Bahnhof Kleine Scheidegg
OPEN:通年 www.bahnhof-scheidegg.ch
レストラン・アイガーグレッチャー
Restaurant Eigergletscher OPEN:通年 www.gletscherrestaurant.ch
レストラン・アルプシュトゥーブリ Restaurant Alpstübli (Hotel Jungfrau Wengernalp)
OPEN:6 月中旬~ 9 月下旬 www.wengernalp.ch
レストラン・アルメント Restaurant Allmend
OPEN:7 月~ 10 月下旬、12 月初旬~ 4 月上旬 ※6月は週末のみ営業 www. allmend-wengen .ch
ヴェンゲルンアルプ鉄道 C ベルグハウス・アルピグレン
Berghaus Alpiglen
OPEN:5 月末~ 10 月中旬、12 月初旬~ 4 月初旬 www.alpiglen.ch
ベルグガストハウス・メンリッヒェン Berggasthaus Männlichen
OPEN:5 月末~ 10 月下旬、12 月初旬~ 4 月上旬 www.berghaus-maennlichen.ch
レストラン・ブランデック Restaurant Brandegg
OPEN:5 月末~ 10 月中旬、12 月初旬~ 4 月初旬 www.brandegg.ch
ベルグレストラン・シーニゲプラッテ
Bergrestaurant Schynige Platte
OPEN:5 月末~ 10 月末 www.jungfrau.ch
ベルグガストハウス・フィルスト Berggasthaus First
OPEN:4 月末~ 10 月末、12 月初旬~ 3 月末 www.jungfrau.ch
ベルグレストラン・シュレックフェルト Bergrestaurant Schreckfeld
OPEN:5 月末~ 10 月中旬、12 月初旬~ 4 月初旬 www.schreckfeld.ch
ベルグハウス・ボルト Berghaus Bort
OPEN:5月中旬~10月下旬、12月中旬~4月中旬 www.bort.swiss
ベルグガストハウス・ヴァルドシュピッツ
Berggasthaus Waldspitz
OPEN:5 月末~ 10 月中旬 www.berggasthaus-waldspitz.ch
ミューレンバーン F
レストラン・ヴィンターレック Restaurant Winteregg
OPEN:5月末~10月中旬、12月中旬~4月上旬 www.jungfrau.ch
ハーダーバーン H
レストラン・ハーダー・クルム Restaurant harderkulm
OPEN:4月中旬~11月下旬 www.jungfrau.ch
Bergrestaurant Bussalp OPEN:5月下旬~10月下旬、12月中旬~4月初旬
パンとチーズとミルクなどの素朴なものでも「今まで食べたどんな ごちそうより美味しいわ」というクララに、おんじが「山の空気の せいだ。山の空気が何でも美味しくしてくれるんだ」と一言。まさに アルプスの澄んだ空気は何よりのスパイスです。ユングフラウ地方に ある山岳レストランでも屋外のテラス席が人気。天気のよい日には、 ぜひ外のテーブルで絶景とともに食事を楽しんでみましょう。
Bergrestaurant Ällfluh OPEN 6月~ 10月
ハイジの愛したアルプスの世界 山の四季 ハイジのアニメの中には、アルム(アルプ)で暮らす夏、麓の村で暮らす冬を中心に、雪どけと ともに山へのぼる春、山を下りて冬の準備をする秋など、四季折々の美しい情景が描かれて います。スイスアルプスを代表するユングフラウ地方の四季折々の風景とあわせて、季節ごと の魅力を体感できるハイキングやソリのおすすめコースをご紹介します。
色とりどりの花咲き誇る草
牧のぼり 春の伝統行事
ボルト → グリンデルワルト Bort (1564 m ) - Grindelwald (1034 m )
Bort (1564 m ) - Unterer Lauchbühl/loichbiel (1558 m - Grindelwald (1034 m ) 2 :
ボルト駅から山岳ホテル・レストラン裏手の丘へ上ると、一面に咲き広がる花々の奥に、美しいグリンデルワルト上氷河が見え てきます。さらに上ると分岐点があるので右手の斜面を下っていきましょう。山小屋が点在する丘にトロールブルーメなどの 花々が黄色の絨毯のように咲き、奥にはまだ雪が残るアイガーやシュレックホルンが見えています。雪解け水が流れる沢 や 小さな森を抜けながら続く道を下りていくと、グリンデルワルトからグロッセ・シャイデックへと結ぶバスの走る道へ。そのまま 道沿いに下っていくと、色とりどりの野の花が咲き誇るイシュボーデンへ。さらに下るとグリンデルワルト上氷河へ上る階段が ある「ホテル・ヴェッターホルンHotel Wetterhorn 」へ到着。ここからグリンデルワルト駅までバスで戻ることもできます。 山上にまだ雪が残る頃、標高600~1000mのインターラーケン、ヴィルダースヴィル、ラウターブルンネン、グリンデルワルトな ど山麓の村におだやかな風がふきぬけ、林檎や桜、桃など果樹園の可愛い花々や野の花が咲き始めると、待ちにまった春の到 来です。やがて山の牧草地(アルプ)の雪もとけ始め、タンポポやキンポウゲなどが絨毯のように一面に咲き誇り、クロッカス、 リンドウ、サクラソウなど早咲きの高山植物も顔を出してきます。若葉が芽吹く木々や草のフレッシュな新緑、雪どけの水があ ふれる小川や滝、残雪がキラめく白い山、色とりどりの花々。春はあざやかな色彩と生命の息吹に満ちています。
5 月末から 6 月初め、山上の放牧地“アルプ Alp ”に草が生えてくる と、牧童たちは牛やヤギを連れて山を上っていきます。山に暮らす 牧童たちの仕事初め、山開きとなる特別な日として、牛たちに飾り をつけたり、牧童たちも伝統的な民俗衣装を身につけて祝う風習が あり、「牧のぼり(独語:アルプアウフツークAlpaufzug )」といわれて います。山へ上るタイミングは、毎年、アルプの雪どけや草の頃合い をみて、天気のよい週末などを選び農家ごとに決めるため、秋の「牧 くだり」とは違い時期は不定。春から初夏にかけて山岳地域でよく 見かける春の風物詩です。
フィルストにまだ雪が残っている頃、山の中腹にあたるボルト周辺は西洋タンポポやトロールブルーメ(キンバイソウ)などの 花々が咲き誇っています。まだ残雪が残り白い峰が美しいヴェッターホルン、シュレックホルン、グリンデルワルト上氷河の眺望 を楽しみながら、ボルト駅横の山岳ホテル・レストラン前の道を下っていきましょう。黄色の花絨毯が広がるアルプ(放牧地) に素朴な山小屋が点在する情景は、まさにメルヘンの世界。トロッティバイクやマウンテンバイクのコースと合流しているので、 道幅は広く鋪装されており、まさにお散歩感覚のコース。そのまま、のんびり下っていくとグリンデルワルトの村内に到着。
ボルト → ウンテラー・ラウフビュール → グリンデルワルト B C
Allmend (1509 m - Wengen WAB (1275 m )
短くてお散歩感覚で歩けるコース。ヴェンゲルンアルプ鉄道のアルメント駅の下に続く道からスタート。牛たちが放牧されているアルプ (草原)では、5月中旬頃からはタンポポなどを中心とした黄色の花畑が見られます。鉄道路線沿いの斜面や奥の草原には、さまざまな野 の花が一面咲き誇っています。そんな周りの花風景を楽しみながら、鋪装された広い道路を歩いていくとヴェンゲンの村へ到着します。
→ グリンデルワルト・グルント Brandegg (1333 m - Grindelwald-Grund ( 943 m )
雪どけが比較的はやく春から歩けるコース。ヴェンゲルンアルプ鉄道のブランデック駅横のレストラン前を通り、横長に広がるアイ ガーの岩壁を眺めながら下っていくコース。歩いていくと、正面にヴェッターホルンと麓の村がみえてきます。5月には、周辺の牧草 地に一面黄色のタンポポが咲き広がり、白い花が咲いたリンゴの木々が点在する、春のおすすめ絶景が楽しめます。そのあたりでは、 6月中旬から下旬にかけて花々が刈り取られてしまいますが、かわりにブランデックに近いほうの草原に野の花々が咲き誇ります。
雪解け
山上にも春が訪れ雪がとけると同時に早咲きの高山植物の花々が咲き始めます。 アルプスのスノーベル”ともいわれる「アルペン・ソルダネッレ」、アニメでハイジが みつける西洋雪割草「メール・プリメル」、「フリューリングス・エンツィアン(春リン ドウ)」「フリューリングス・クーシェレ(春アネモネ)」など名前に春がつく花々 など。雪の下から顔を出す「フリューリング・クロクス(春クロッカス)」も代表的 な花。山の斜面に広がる群生に出会えたら感動です。
陽光がまぶしく降り注ぎ、アルプスが活気づくシーズン。牧童たちは山上に滞在して、アルプ(山の牧草地)での放牧スタート。 山々をバックに牛や羊、ヤギたちがのんびりと草を食む姿はアルプスの夏を代表する風景です。アルプスからうまれた透明度 の高い清流や湖での水遊びや野外でのバーベキューも夏の風物詩。そのほか、山上湖や滝、高山植物を訪ねるハイキング、氷 河トレッキングなどを楽しむことができます。標高2000~3000mのアルプスの山上で、雄大な大自然を舞台に多彩なアクティ ビティにチャレンジしてみましょう。
夏の伝統行事
アルプス祭り
スイスの山々で夏に開催されるアルプス祭り。伝統の「シュタインシ ュトーセン Steinstossen(石投げ)」や「シュヴィンゲン Schwingen (スイス相撲)」「ファーネンシュヴィンゲン(旗投げ / 旗し) Fahnenschwingen 」などの伝統競技がおこなわれます。もともとは、 夏にアルプの山小屋で過ごす牧童たちが、仕事の合間に楽しんでい た娯楽だったもの。そのほか同じくアルプスの牧童の暮らしから生 まれた伝統音楽のヨーデルやアルプホルンの演奏や民族衣装でフォ ークダンスで盛り上がります。6 月末から 8 月にかけて民族音楽やダ ンスの祭りがメンリッヒェンで開催されるほか、7 月末にはグロッ セ・シャイデックでスイス相撲とアルプス祭りが開催されます。
A クライネ・シャイデック → ファルボーデン → アイガーグレッチャー
Kleine Scheidegg ( 2061 m ) - Eigergletscher ( 2320 m )
3
クライネ・シャイデック → ヴェンゲルンアルプ Kleine Scheidegg ( 2061 m ) - Wengernalp (1874 m )
①のコースと同じく雪どけと同時にさまざまな高山植物が咲き誇ります。クライネ・シャイデック駅下からユングフラウへ向か ってのびる道をスタート。左にユングフラウ鉄道と三名山、右にはヴェンゲルンアルプ鉄道を見ながら歩いていくと、アイガー グレッチャー方面への上り道との分岐点。右側の下り道をしばらく進み、牛が放牧されているアルプへ。高台に山岳ホテル・レ ストランが見えてきたら、ヴェンゲルンアルプ駅に到着。
★ヴェンゲルンアルプ鉄道の下に路線と並行して続く広い道を歩いていく約50分の簡単ルートもあります。
アイガーグレッチャー
→ アルピグレン Eigergletscher ( 2320 m ) - Alpiglen (1616 m )
ユングフラウ鉄道を右下に見ながら丘を上っていくと、アイガーを水面に映す「ファルボーデンゼー」に到着。路線下のトンネルを通 り、岩がちの山道をがんばってのぼると、迫力のアイガー氷河と奥に鉄道駅がみえてきます。早咲きの花々が6月末から7月中旬の雪 どけと同時に咲き誇る高山植物の宝庫。美しい山々の眺望も魅力のコースです。体力に自信のない方は下りルートがおすすめです。
1 ワイルドな岩肌が迫るアイガー北壁直下を歩くコース。アイガーグレッチャー駅前からスタート。雪のため閉鎖されている時は 案内板に表示がでます。最初は岩場やガレ地に作られた細い道を一列に進みます。山から流れ落ちる美しい沢や滝を見なが ら広くなった道を歩いていくと、のどかな牧草地へ。左に曲がり、下り道をいくとアルピグレンに到着。
4
ヴェンゲルンアルプ → アルメント Wengernalp (1874 m - Allmend (1509 m )
駅を出て路線下をくぐり沿線を歩く道からスタート。6
月下旬から7月上旬、雪どけしたばかりの頃がとくにおすすめ。白い雪が輝くユングフラ ウとジルバーホルンの迫力ある眺望と花々の絶景が楽しめます。湿地に咲く花もみられます。森に入りしばらく下っていくとアルメントに到着。
★ヴェンゲルンアルプ駅から沿線の上に並行している道を歩いていくルートもあります。
Männlichen - Kleine Scheidegg
有名な展望ポイントで眺望を楽しんだ後、広く歩きやすい道をスタート。いつも多くのハイカーで賑わっています。目の前に 迫るアイガーなどアルプスの眺望を見ながら、チューゲン、ラウバーホルンの山肌にそって進みます。標 高2000m を超える 高所ですが、高低差のほとんどない平坦な道なので、お散歩感覚で歩ける簡単コースです。
ユングフラウ鉄道
フィルスト → バッハアルプゼー
First ( 2167m ) - Bachalpsee/Bachsee ( 2265m )
フィルスト駅裏手の丘から眺望を楽しんだ後、ゆるやかな坂道を上っていきましょう。途中、何度かアップダウンはありますが、 広く整備された歩きやすい道です。しばらく歩くと美しい山上湖バッハアルプゼーに到着。湖の周りでのんびり休んだら、 来た道を戻りましょう。湿地に咲く花や岩地に咲く花など多彩な花々が楽しめるルートです。
バッハアルプゼーからは、さまざまなハイキングコースと組み合わせることができます。山道を歩き慣れた健脚の方なら、 ブスアルプまでファウルホルン経由の約4時間コース②やヒレレニ経由の約3時間コース③がありますが、初級・中級の方なら ヴァルトシュピッツ経由でボルトまで歩く約 2 時間 30 分のコース④がおすすめ。花々の説明パネルが整備されている観光局 主催の花のガイドツアーのコースでもあります。ヴァルトシュピッツからはバスを利用することも可能。
フィルスト
→ グロッセ・シャイデック First ( 2167m ) - Grosse Scheidegg (1962m )
フィルスト駅から山沿いを歩くほぼ一本道のコース。高低差 があまりないので簡単なハイキング。フィンスターアールホル ン、シュレックホルン、ヴェッターホルンなどの山々や氷河を 眺めながら、清らかな水が流れる沢を渡り、高山植物の花々 が咲く道をのんびりと歩いていくとグロッセ・シャイデックに 到着。グリンデルワルトまでバスで戻りましょう。
グロッセ・シャイデック → シュテプフィ
→ ウンテラー・ラウフビュール Grosse Scheidegg (1962m) - Stepfi (1809m) - Untere Lauchbühl (1558 m)
グロッセ・シャイデックからチーズ貯蔵小屋へ下る道へ。ブル ーベリーやアルペンローゼなど灌木の茂みを抜けると、山々 が水面に映る山上湖「アントゼーヴェン」へ。シュテプフィの 山小屋を通り、ベルゲル川の流れる道から山沿いの細い道を しばらく進むと分岐点です。南側の道から森に入り、下ってい くとバス停のあるウンテラー・ラウフビュールに到着。
シーニゲプラッテ → ダウベ → シーニゲプラッテ Schynige Platte (1987m ) - Daube/Tuba ( 2076m ) - Schynige Platte
山岳ホテル・レストラン裏の丘へ上り、切り立った岩壁が迫る山道を歩いていきます。大きな岩が印象的なダウベ(トゥーバ)からは三名山 の眺望と反対側の谷底にはトゥーン湖とブリエンツ湖を見渡すことができます。なだらかな下り道をオーバーベルグホルン山麓まで進む と分岐点があるので右側の道へ。高山植物園内のルートに合流して駅に到着。さまざまな花々とアルプスの眺望が楽しめるコースです。
シーニゲプラッテ → ブライトラウエネン Schynige Platte (1987m ) - Breitlauenen (1542m )
山岳ホテル・レストラン裏の展望ポイントからスタート。斜面に咲く高山植物の花々を見ながら下り道を歩いていくと、眼下に シーニゲプラッテ鉄道の線路が見えてきます。鉄道路線と合流した線路を渡り山小屋のあるアルプへ。右手に鉄道を見ながら 草原をしばらく歩き、林道コースに入ります。ずっと下り道をいき、森を抜けると駅に到着。
Autumn 黄金色にきらめくアルプ ス〔
牧くだりとチーズ祭り
スイス各地が色づく美しい秋は、さまざまな実りの喜びにあふれる季節でもあります。湖畔の村ではワイン祭りが開催されますが、アルプス 地方は、山のチーズつくりを終えた牧童たちが伝統衣装を着て、牛たちに花飾りをつけ山を下ってくる「牧くだり(アルプアプツーク Alpabzug )」の行事と「チーズ分配の祭り(ケーゼタイレット Käseteilet/Chästeilet )」です。夏の間、アルプでつくってきたチーズを山のよう
ヴェンゲルンアルプ鉄道 C
ヴェンゲルンアルプ鉄道 B
ヴェンゲン → メンヒブリック → ヴェングヴァルト
Wengen (1275m - Mönchblick (1186m - Wengwald (1182m )
山上が雪化粧する 10
に積んで並べ、自分の牛の乳量に応じて分配していく伝統的な山の収穫祭です。トゥーン湖の北、ベアテンベルクとシグリスヴィルの間にの びるユスティス谷の祭りは有名。ユングフラウ地方では、9 月中旬にグロッセ・シャイデック、9 月末にヴェンゲン、10 月初めにヴィンターレッ クで開催されます。地元の人たちが集まり、ヨーデルの歌声やスイスオルガンの調べなどが響き渡り、にぎやかに盛り上がります。
月頃、ヴェンゲン周辺の木々は黄色、オレンジ、赤などさまざまな色に染まります。駅前の通りを抜けて、 高台にある村の教会をめざし、教会横の広い道を歩いていきましょう。すぐに斜面に山小屋や民家が点在するのどかなアルプ 花々が咲き誇る春もおすすめですが、とくに秋色の情景が美しいルートです。
ラウターブルンネン駅に下る道、ヴェングヴァルト駅に向かう道との分岐点がありますが、少し奥のメンヒブリック(独語でメ ンヒの眺め)という展望ポイントに足をのばしてみましょう。奥に広がるメンヒ、ユングフラウ、ブライトホルンと、アニメのオ ープニングでみた谷にも似たラウターブルンネン谷の絶景が楽しめます。ヴェングヴァルト駅※はすぐ近くですが、ラウターブ ルンネンへ下るハイキングを組み合わせることもできます。※リクエストがないと通過する駅なので、駅にあるボタンを押してください。 爽やかな空気の中、麓の村も山も色づく季節です。樹木の種類が多いユングフラウ地方では各地で美しい黄葉、紅葉が見られ るでしょう。とくに初雪をかぶった白い名峰とオレンジや黄色に染まる木々は、スイスを代表する秋風景。秋ならではの絶景 を楽しみながらのハイキングがおすすめ。また山で夏につくった新チーズや栗のデザート、キノコ、ジビエ(狩猟肉)の料理な ど地元レストランに登場する、旬の味覚も楽しみのひとつです。
アルメント → ヴェンゲン
Allmend (1509m ) - Wengen WAB (1275m
★ルート情報はP46を参照
Kleine Scheidegg ( 2061m ) - Wengernalp(1874m ) 3
クライネ・シャイデック → ヴェンゲルンアルプ
→ ヴァルドシュピッツ → ブスアルプ
Bort (1564m ) - Waldspitz (1903m ) - Bussalp (1792m )
Winter 冴えわたる白銀の世
Bort (1564m ) - Grindelwald (1034m
澄みきった青空に太陽が輝き、雪がきらめく白銀の世界。1年で最も美しく雪化粧した山々が迫る絶景は感動的です。スノー パラダイスとして有名なユングフラウ地方では、スキーやスノーボード、ウィンターハイキング、そり、クロスカントリー、スノー シューなど楽しみ方もいろいろ。スキーヤーは優雅に滑降し、ハイカーは雄大な山や静かな森の散策を満喫しています。思い っきり遊んだ後は、最新設備のスパでリラックスしたり、暖炉の前で語り合ったりと、冬の魅力は尽きません。雪が積もった美 しい村もロマンティックです。
カウベルパレード アニメの中で冬のある日、ペーターの家に遊びにいったハイジが、 かくれんぼの最中に納屋でみつけるカウベルは、アルプスのシンボル として祭りにも登場します。とくに冬の悪魔を追い払うため、鈴や 大きなカウベルや楽隊が大きな音を鳴らしながら行進するカーニ バルがスイス各地でおこなわれます。インターラーケンでは、カーニ バルとは別に、1月2日にハーダーマン(ハーダー山の岩壁にみえる人) のマスクをつけて、カウベル隊とともに町をパレードする「ハーダー・ ポスチェッテ Harder Potschete 」という伝統の祭りがあります。
そり遊び
アニメの中では、冬の交通手段でもあり、冬の代表的な遊びとして描かれていた雪そり。実用的な役割はなくなったものの、 遊びとしては今も人気のアクティビティ。現在、スイス全土で約 150 箇所をこえるスノーリゾートでそりのコースが整備されて いますが、とくにユングフラウ地方には名コースがそろっています。登山鉄道やロープウェイで山上へあがったら、後は風 を きって一気に滑降!大人も子供も、スピード感と目の前に展開する絶景を楽しんでいます。素朴なそりの操作は、体重移動だけ で曲がり、地面に着いた足で速度を調節する、というシンプルにして奥が深いもの。普通のそりは地面に体が近い分、かなりの 体感速度を感じるでしょう。レンタルして旅行者でも気軽にそりにチャレンジできます。 ※グリンデルワルト駅、ユングフラウ地方にある13カ所のレンタルステーション「インタースポーツ・レント・ネットワーク Intersport Rent Network」 でレンタルすることができます。 www.rentnetwork.ch
おすすめそりコース Bussalp - Grindelwald
ファウルホルン山頂からブスアルプ、グリンデルワルトまでの約 15km のそりコースは、世界最長のそりコースとして知られて います。ただ、フィルストからバッハアルプゼーを経由してファウルホルンまで、かなりきつい約 3 時間のウィンターハイキング をしないといけないので、そのコースの途中となるブスアルプからグリンデルワルトの8kmコースがおすすめです。ブスアルプ まではボルトから緩やかな上りハイキングでいくか、グリンデルワルトバスでアクセスできます。
グリンデルワルトからクライネ・シャイデックまで結ぶヴェンゲルンアルプ鉄道の路線に沿ってつくられた約2kmのそりコース。 アイガーの真下を走るため<アイガーラン>と呼ばれています。麓のグリンデルワルト駅やグリンデルワルト・グルント駅で そりがレンタルでき、鉄道で楽々アクセスでき、気軽に楽しめる人気のコースです。
グリンデルワルト限定。自転車そり「ヴェロゲメル」を体験! 冬の交通手段に困っていた大工ビュールマンさんが自転車型のそりを発明し、1911 年 4 月 1 日に特許申請。自転車を意味する<ヴェロ>とそ りを意味する地元の方言<ゲメル>から「ヴェロゲメル」と呼ばれ、雪国の生活にあっという間に定着しました。グリンデルワルトでは今でも 冬の足として活躍しているほか、世界大会も開催されています。
普通のそりはスイスの各地でみられますが、自転車タイプのそり「ヴェロゲメル」を体験できるのは、ここグリンデルワルトだけ。コースはそり と同じ。そりと同様にレンタルもできます。意外と操縦が難しいそりと違って、安定感があり、ハンドルでの方向コントロールがしやすく簡単で す。雪上を自転車で駆け抜ける要領で、心地よいスリルとスピード、風をきって滑降する爽快感が味わえます。
アルピグレン → ブランデック Alpiglen - Brandegg
アルプスを抜けて天空へ向かう
夢の登山鉄
道「ユングフラウ鉄 道 」の 誕生 ユングフラウ鉄道の工事開始
"天空へ向かう夢の鉄道"といわれたユングフラウ鉄道の誕生 はまさに奇跡的な出来事でした。名峰ユングフラウへ結ぶ 登山鉄道は、多くの事業家や鉄道技師たちが何度となく 夢みてきましたが、長い間、実現不可能だといわれてきたもの。 かつて、エッフェル塔の技師ケクランやスイスの有名鉄道技 師ロッハーなど数々の精鋭がこの鉄道計画を試みたものの、 実現しませんでした。
1903年 そんな中、すでに他の鉄道事業で名をあげていたアドルフ・ グイヤー・ツェラーの画期的な設計プランが夢物語と思われていた鉄道を現実のものへと導いたのです。始まりは、娘とハイキ ングを楽しんでいたツェラーがひらめき書き留めた1枚のスケッチ。山 麓 のラウターブルンネン谷から結ぶ、従来の案とちがい、 すでに開通していたヴェンゲルンアルプ鉄道の終点クライネ・シャイデックからアイガー山中にトンネルを通して山頂へと結ぶ 画期的な案でした。さらに工事にかかる莫大な費用問題は、ツェラー自身の私財をかなり投入することや、開通した区間ごとに 営業を開始しながら資金を得ることでまかなうことにして、ついに、1896年、ユングフラウ鉄道の敷設工事がスタートしました。 1896 年
ユングフラウ鉄道アイガーグレッチャー駅開業 着工から2年後となる 1898 年には、クライネ・シャイデック駅から約 2 キロ(高低差約 260m )の標高 2320m にアイガーグレッ チャー 駅が完成。最初の区間の往復運転でユングフラウ鉄道は営業を始めました。アイガー氷河(アイガーグレッチャー)の 前につくられた駅には、眼前に迫るアイガー氷河や雄大な山々の眺望を目当てに多くの観光客が訪れ、駅や売店 はスーツや ドレスを着た紳士や貴婦人たちで賑わっていました。
ユングフラウ鉄道アイガーヴァント駅開業 アイガーグレッチャー駅開業の翌年には、今はなきロートシュトック駅まで開通。ここからはアイガー山中にトンネルを通すと いう前例のない難工事でしたが、1903 年にアイガーヴァント駅が完成。アイガー山中につくられたトンネル内の駅で、観光客 が眺望を楽しめるように岩に開けられた展望窓から、グリンデルワルトの谷やクライネ・シャイデックなど、アイガー北壁直下 の絶景が楽しめることで人気を博しました。
1905 ユングフラウ鉄道アイスメーア駅開業 アイガーヴァント駅の開業から2年後、おなじくアイガー山中につくられたトンネル内の駅が完成しました。 "アイスメーア(氷 の海) "という名前の通り、岩をくりぬいて設置された展望窓 からは 、シュレックホルンや海のように広がるフィーシュ氷河 、 グリンデルワルト下氷河の眺望を楽しむことができます。ユングフラウヨッホまでの最終区間が開通する1912年までは、標高 3160mにあるこの駅がユングフラウ鉄道の終点だったので、洞窟のような駅構内にレストランもありました(今は閉鎖)。ベル グリ小屋やメンヒスヨッホ小屋、ミッテルレギ小屋の山小屋に近いため、多くの登山家たちがここからメンヒ、アイガー、ユン グフラウなどの山頂をめざし、出発していきました。
1912年
年 ユングフラウ鉄道ユングフラウヨッホ駅開業
高所のため用意した火薬の威力も発揮できず、標高をあげるごとにトンネル工事は難航。約 3.5 キロとなる最後の区間には 7 年を要しました。そして 1912 年、ついに標高 3454m のユングフラウヨッホまでの路線が完成。スイス建国記念日である 8 月 1 日に 、クライネ・シャイデックからユングフラウヨッホまで約 9 キロのルートが全線開通しました。