美術館

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Minimalium

Apr.2013 - Jun.2013 Okazaki, Kyoto Museum

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Steve Reich という作曲家がいる. ミニマルミュージックの巨匠であり, 位相の差によって生まれる音の可能性を探求し続けている. 彼の音楽は,耳を傾けているうちに場も時も忘れさせる. 波のように繰り返される音と,自然と移ろいでいく音. これらの音を追いかけているうちに,自分の居場所を見失ってしまう. 彼の作曲手法をこの建築に落とし込み,この現象を再現させることを考えた. 空間の情報をトレースし,ミニマルに変化させていくことで展示空間をつくりだす. 次つぎにあらわれる壁,起伏を繰り返す床,高くなる天井. これらの要素が空間にからみ,人は方向も居場所も見失う. 方向とはすなわち時間である.流れである. その時間さえも,林立する壁と作品の中に溶けて消えていくだろう. そのとき,人は真に芸術と出会う. 空間も時間をも超越した次元が浮かび上がってくる.

Steve Reich

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Piano Phase

Music for 18 Musicians


site plan 1/3000

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5

5

10

5

17

18 17 8

12

13

19

14

12

2

12

6

5

15 12 16 12

1 3

20

エントランスホール

2

カフェ

3

ライブラリー

4

ミュージアムショップ

5

展示空間

6

チケットカウンター

7

インフォメーションセンター

8

スタッフルーム

9

応接室

10

会議室

11

長期収蔵庫

12

収蔵庫

13

搬入・職員用エレベーター

14

荷解き室

15

撮影室

16

修理工作室

17

W.C.

18

職員用 W.C.

19

キッチン

20

書庫

21

機械室

5

12

7

1

21 12

4 9

17 12 11

5

18

13 17

14 5

5

GL + 7000 plan 1/800 42


5

20

20

17 13

16

8

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6

11

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10 1

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3

10 5

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4

7

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9 13 17

10

13

10 11

11

20

20

5

GL + 3000 plan 1/1200

B1 floor plan 1/1200

1

エントランスホール

6

チケットカウンター

11

搬入・職員用エレベーター

16

W.C.

2

カフェ

7

インフォメーションセンター

12

荷解き室

17

職員用 W.C.

3

ライブラリー

8

スタッフルーム

13

搬入車両室

18

書庫

4

ミュージアムショップ

9

応接室

14

撮影室

19

機械室

5

展示空間

10

収蔵庫

15

修理工作室

20

職員用地下駐車場 43


A - A section 1/400

A

south elevation 1/400

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A


B - B section 1/400 B

B

west elevation 1/400

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壁によって空間を馬蹄形に区切り ,

展示室は巨大な一室空間となっており ,

展示室 , バックヤードなどの機能を

ライヒの作曲手法を基にしたダイアグラムによって

大まかにわける .

壁が配置されている .

スタッフルーム , 収蔵庫 ,W.C. などのバックヤードが入る空間 . 展示室のダイアグラムを継承しながらも プログラムが機能するように室を置いていく .

カフェ , ライブラリー , ショップなどの空間 . ルーフからのびる垂れ壁が 展示室の空間構成を暗示する .


エントランスは中心に配置され ,

展示室およびバックヤードの床 .

4つの空間にルーフをかける .

隆起した床の下をもぐって

大きなスパンで起伏を繰り返し ,

壁の位置に合わせて開口を設け ,

内部へとアクセスする .

空間の高さをミニマルに変化させる .

光を室内へと取り入れる .

地下には職員用駐車場 , 搬入車両室 , 搬入・職員用エレベーターが設けられている .

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展示空間は一枚の壁からはじまる . この壁は展示空間全体に何度もトレースされ , 全体に響き渡る基音となる .

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先へと進むと , 一枚目の壁がトレースされた壁と さらに新たな壁があらわれる . これらの壁と壁からなる角度が和音となる .

さらに壁が増えていく . 空間には壁があふれ , 壁には void となる部分と volume として残る部分があらわれる . この void と volume の関係がリズムとなる .


壁が増えていくにつれて volume は短くなっていき , 混沌と均質の空間が生まれる . 音も様ざまに砕かれて , 煩雑とした音色となる .

ピークを過ぎると今度は壁が減っていく . volume も次第に長くなり , 音と音は再び調和を奏でるようになる .

一枚ずつ壁は消えていき , またもとの一枚の壁へと戻る . 音楽には基音だけが残り , 新たなはじまりへとループする .

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Minimalium 52


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