食楽道楽 考えて拵える
美味しく食べる 感謝して楽しむ
初めに 幼い日の日曜日、我が家の台所には父が立っていました。 高度成長期、事業家として世界中を走り回っていた父は、見た物、食べた物、感じた物、そ して、それらの価値観を、日曜日に我が家の食卓で試します。 父が料理している間、私たち家族は「また何か始めた」と装いつつ、興味津々で、出来上が るのを待ちました。食事が食卓に並んだ後は、 父の講釈を聞きながら、 家族で食卓を囲むのです。 日ごろの母の料理には、おふくろの味を感じ、父の料理には、驚きと旨さを感じるのでした。 私たちが美味しそうに食べると父の顔が和(やわ)らぎ、家の中が和(なご)む。そこには、 和の国の、家庭料理の本質があったように思います。 あれから数十年、日本の社会も様変わりし、それに伴い家庭も核家族化、共働き、少子化と その形態が変わってきました。 最近、家族揃って食事をしましたか? お母さんの手料理、食べていますか? 街には外食産業が軒を連ね、スーパーやコンビニに行けば総菜からご飯まで豊富な品揃えが あり、家庭では「チン」するだけで美味しい食事がいつでも味わえます。 一見便利な世の中になった様な気がしますが、果たしてこれでいいのか?と考えてしまいま す。 物が無い戦後の時代に、先人は、一生懸命物づくりをやってきました。 その必死の苦労で、小さな小国が世界第二位の経済大国まで成長でき、私たちの暮らしは物 が溢れるほど、豊かな社会で過ごす事ができています。 私たちは先人に感謝し、私たちがしてもらった事と同様に、未来の子孫にできる事を、一旦 立ち止まって考える時にきているのかもしれません。 一瞬にして焼け野原になってしまった祖国に立った先人は、何を願って懸命に働いたので しょうか?それがもし、私たちの豊かな社会を実現する為に、付加価値を高めた物造りに励み、 豊かになったとしたら、現在の私たちの暮らしや考え方は、恥ずかしいと考えなければいけな い点が数多くあるように感じます。 日本酒のように戦後直後は米が足りず、一時的に三倍醸造のような手法を選択したのかもし れませんが、今は、物が溢れ豊かな社会が実現しています。 「日本人として大切なものを守る」 という先達たちの目的が失われ、「個人の利益を優先する為」にお金儲けの為のコストダウン や偽物が横行しています。結果的に、本物のお酒、発酵調味料が失われつつあります。 先達の思いを継承できなかったどころか、裏切り行為にあたる気がしてなりません。 そのような思いで、八年前、第一線を退いた父が、現在の日本の文化のあり方に警鐘を鳴ら すため飲食店を開きました。また本来の日本酒でありながら、時代に合うように全く発想を変 えた濃縮純米酒の開発も始めました。私もその志に共感して、飲食店の経営に関わっていくう ちに、日本人の食について真剣に考えるようになりました。 戦前の記憶があり、私たちが知らない時代背景や本質を知っている父親から、無理難題な課 題を与えられ、和食ってなんだろう? 日本食って何? 日本料理って???と悩む日々でし た。 和食について一品一品の料理の名前は挙げられても、定義を説明できる人はいません。 そこであらゆる資料を調べる毎日でした。その結果、私にもある程度の食に対する史観が芽
生えてきたのです。それは私たちが普段食べている食事、食材にこだわらず、味付け・調理法 が日本で独自に発達したものは和食と呼んでもいいのではないでしょうか。そして、本物の和 食というのは、素材の味を大切にし、それを最大限に引き出す調理法を用いて作られるもので す。食材の味を楽しむこと、鍋料理や筑前煮にしても、素材一つ一つの味がわかること。それ は世界で唯一の料理法であると確信したのです。 父は言います。「食は文化」だと。 本物の和食とは、昔の素材を手に入れて、昔の料理を再現するだけでは、本質を求める事に ならないと私は考えます。先人の教えを学び、子供たちの将来に、日本人として食する和食を 継承し、創り出していかなければなりません。 コンピューターのマウスを包丁に持ち替えて四年。首を突っ込んでみた飲食業の世界は、拘 束時間は長いし、重労働でもあり、ましてや頭を使います。しかし手を抜かずに一生懸命やれ ばやる程、お客様は喜んでいただけます。生業としては大変な職種では有りますが、 「日本人 として大切なものを伝えたい」その一心で頑張ってきました。 本来なら、小僧の私が、まだ偉そうに語るべき立場ではありませんが、自分の信念を確認す るため、また幸いにも周りの人の薦めもあり、一度思考を整理して文章にしてもいいかと、ペ ンを取りました。料理は食べるのも、造るのも得意ですが、モノを書くということは正直なと ころ苦手分野ですが、膳の料理にはこんな思いがあったんだ。そんな思いの一部を酌んでいた だき、お食事の際驚きと美味しさを感じていただければ幸いです。 過ぎ去りし日の日曜日の様に、私は皆様の食卓にご一緒できない。 (笑) 一品一品の講釈もできないので、この場を借りてほんのさわりを語らせてもらう。 『これ、すごく旨いんだ!』
伊豆・下田産 金目鯛の煮付け定食
目次 CONTENTS 初めに…………………………………………………………………………… 2 第一章 今や和食の危機……………………………………………………… 5 第二章 ところで和食って何?……………………………………………… 8 第三章 料理とは…………………………………………………………… 15 第四章 親父の講釈、賞翫(しょうがん)するということ…………… 22 第五章 膳の料理…………………………………………………………… 27 第六章 思いを実現する為の膳の仕組み………………………………… 32 第七章 家庭でもしていただきたいこと………………………………… 34
第一章 今や和食の危機 今や和食の危機と言われています。さて、どんな点が問題なのか?ちょっと面白い視点で検 証してみましょう。 視点1 八百萬の神を有する日本国 私たち日本人は、単一民族で和をもって尊しとし、日本 人同士なら言わなくても分かりあえ、仲間から除外される、 村八分を恐れて、道徳心のある、安全な共同体(国家)を 築き、平和を保ってきました。 八百萬の神として宗教的にも寛大で、儒教の教えを守っ てきた、凛とした日本人が、一神教(ユダヤ教、キリスト 教、イスラム教などの他の神々の存在を認めない)の国々 の人々と広く接するようになり、文化の違いや、価値観の違いに戸惑い、信頼社会を築いてき たところに、契約社会の慣習を取り入れたことによる矛盾に対応しきれず、大量に入ってくる 情報や物資にどのように立ち向かっていかなければならないのか、大げさでなく有史以来、初 めて国の崩壊という危機的状況にいま立たされているところです。 視点2 文明開化以上の大きな変革 現代のグローバル化の特徴は、経 済面のみならず社会や文化面でも国 境を越えたつながりが緊密になって いるということです。グローバルス タンダードと称し自由主義経済を行 いやすいようにすべてを共通化して しまうことは、国として経済的な利 益を生むのかもしれませんが、反面 多大な損失を被ることになりはしな いでしょうか。経済が発展し、物が 大量にあふれ、食べることに困らな い世の中が永遠に続けば問題は無い のでしょうが、たかが経済です。効率的な社会をつくるのであれば、全世界全て英語にし、宗 教も法律も同じもので統一すればよいのです。しかし、各国や民族またそれぞれの地方には歴 史が育んだ文化や伝統や、自然の恵みによって生まれた趣きがあります。心の安らぎや癒しを 感じることが出来る社会は、効率性だけで出来た社会とは比べ物にならない価値の高いもので す。 戦後 60 年間日本は非軍事的な方法で国際社会の安定と福祉とに貢献しようと努力し、今日 の国際的な地位を築き、各国との接触を深めてきましたが、それまで育んできた情緒ある国家 の許容できる範囲以上になじみの無いモラルや道徳が輸入されています。それは明治の文明開 化以上に大きな波に呑みこまれようとしていることなのです。 通常の人間からは想像もできない様な凶悪犯罪や耐震偽装問題、金にまかせた企業買収など
日本人が最も恥ずべき卑怯な行為ばかりです。高速道路の渋滞を無視して路肩を平然とつっぱ しってく車のドライバーは若年層とは限らないのです。一神教の人々は、宗教的な規範を多く の人達が共有しており、規範に背けば社会的な批判は免れず、重い罰が課せられます。つまり 超越的な神の存在がいつでもどこでも見守っており、隠し事が出来ません。しかし日本人には そうした唯一絶対の神がいません。基本的にルール、道徳は人間関係の中で作られるのが特徴 です。みんなに迷惑がかからないように、身内で恥をかかないように、いつも世間を見渡し同 調してきたのです。村八分は協調できずに秩序に従わなかった人を、村人たちから絶縁状態に おかれたことですが、それでも葬式と火事の際の消火という十分の二は普通の人と同じ扱いで あったそうです。それだけ地域社会に依存し地域社会が、生活共同体であったことがうかがえ ます。生活共同体の中には自由は制限されます。それを嫌って地域社会が崩壊し、はき違えた 自分本位な自由が身勝手を助長してゆくのです。日本の信頼社会と個人主義の契約社会とでは 両立はしないと考えます。 グローバル化の流れはますます加速してゆくでしょう。市場原理主義は、少数の勝ち組と 大多数の負け組にはっきり分かれて構成されます。生き残る為に金儲けをしなければならない、 犯罪さえ起こさなければ何をしてもよいという風潮は、殺伐とした社会を暫く続けてしまいま す。ですから、抜本的な改善は不可能と思います。しかし本当に身近な社会・文化・教育を腐 敗させているものの進行を食い止め、健全な国の再生を願うのみです。 その中で食を通じて日本とはどんな国なのかが少しでも理解でき、今後リアルタイムにいろ いろな情報が飛び交う、グローバル社会において日本国、および日本人がいかに主体的に自己 主張し社会貢献出来るか、先進国病を克服し、どのような国を再構築していかなければならな いのかを考える必要があるのではないかというのが基本的な理念です。 視点3 どこかおかしい現代日本 文明が発達すれば古い文化は滅び新しい文化が生まれます。経済の発展が鈍ると古来の文化 が見直されてきます。これは古今東西問わず繰り返されてきたようです。 「世の中は無常だから、変化していくのは当然」と言われていますが、それでは、済まない 事態になっているような気がしてなりません。なぜなら最近戦前の記憶が残っていらっしゃる 方々(昭和零年生まれの人々)が、昔は良かったと年齢を重ねたゆえのノスタルジーではない のかと疑心暗鬼になりつつも、どこかおかしい現代日本に「警世」とか「憂国」とかという気 持でメッセージを送っているのではなく、本気で『嘆いている』ようなのです。 私は父親やその年代の方々の話をお聞きすると、私たちに見えていない本質を突かれており、 大きな恐怖感に襲われます。果たして日本はこのままで良いのでしょうか? 視点4 「切れやすい子」を作る食生活 核家族化が進行し、共働きが増加しています。それにより家庭では、料理を作らない、食べ ないことに起因して、切れやすい子供たちが増加していると言われています。現代の食生活の 価値観が日本人を変えつつある事、人とは付き合わないおよび他人の事は知らないという共同 体からの離脱が、世界稀に見る貧相な社会を作りあげてしまいました。今までに無い卑怯な犯 罪が増え、 法を犯さなければ何をしてもよいという風潮、 それが病める近代日本の象徴なのです。 スーパーに行けば漬物も、芋の煮っころがしも売っていますが、流通品は、あいまいな規格 や文化伝承をも無視して十把一からげにした法の規制によって、似て非なる物となっています。
例えば、長野県人であれば売っている野沢菜は、おばあ ちゃんの作ってくれた野沢菜とは違うということはみん な知っています。「作ってくれた」と過去形にしたのは、 野沢菜を漬けた事のある主婦が何人いるのでしょうか? 各世代で調査したら面白い結果になると思われます。多 分二十年〜三十年で人間国宝級の技になってしまうので はないでしょうか。 視点5 日本古来の発酵調味料の危機とは
野沢菜漬け
漬け物に限らず、すべての加工食材がこのような傾向にあります。味噌、醤油、 味醂、酢、日本酒、焼酎、納豆、干物、鰹節等々特に発酵食品に関して多くの誤解が日本食文 化を壊しています。日本の食文化の特筆すべき特徴は発酵の食文化です。現在の企業的な発想 では、 「熟成発酵は手間ひまがかかる」と言うことは「金がかかる」 「値段が高い」事になります。 資本主義社会では売るが為に、『新鮮な発酵』なる馬鹿げた広告で売り上げを伸ばし、速醸発 酵で量産体制をとっています。あらかじめ培養しておいた酵母菌や乳酸菌を加えて、三十℃前 後の温度で二から三ヶ月で発酵を止めたものを真空にして加熱処理をし、菌をすべて殺さなけ れば流通にのらないのが現状なのです。 このように伝統食品と呼ばれていた多くの食品が、機械化や量産化に伴い、さまざまな改良 が行われ、昔と同じ名称で呼ばれ、見かけは似ていても、中身はまったく別のものというもの が少なくないのです。 これはメーカーのみの責任ではなく、国のあり方にも多分に問題があるのです。 このままでは、和食の基本の発酵 調味料が無くなってしまうかもしれ ません。 世界中に浸透しつつ、日本では減 少している和食 これらが日本食、和食の危機なの です。 「日本食文化を世界へ」世界の 和食人口倍増なるニュースが流れ ました。世界的に和食や日本文化 が高い評価を受けています。しかし、 その国に暮らす一般庶民の食生活と 文化はいかがでしょうか?私たちは 昔ながらの醤油蔵 その高い評価を受けている価値の本質を正しく認識し、さらに誇りを持っ ているでしょうか?諸外国から日本文化を高く評価されてから逆輸入となったら、情けなくて 悲しくなります。それにはまず、日本国内にまず日本食を復権させる必要があるのではないで しょうか。米の生産量および消費量、魚の漁獲量および消費量、発酵調味料の生産量および消 費量、日本酒の生産量および消費量、全てが年々減少しています。 これらが日本食、和食の危機なのです。
第二章 ところで和食って何? 『和食、日本料理ってなんですか?』と聞かれて、皆さんはなんと返答しますか?寿司、て んぷら、すき焼き、しゃぶしゃぶ、会席料理、もしくは懐石料理。それとも魚の塩焼きや肉じゃ が、おでん、きんぴら、おから、切り干し等々でしょうか? どれも和食ですが、あまりに種類が多くて総じて説明するのは困難です。日本人が何を好ん で食べてきたか、そしてこれから何を食べてゆくべきなのかを端的にまとめる事ができないも のでしょうか? これから、様々な観点で見ていってみましょう。
食の形成 ●栗・胡桃・いなご・ざざむし・かいこ、 、 、 日本人は地理的環境において、自然の幸に恵まれた幸せな豊かな国に生まれました。日本 列島は南北に長く、大陸に沿う形の島国で、温帯地域の非常に良い気候の中にあり、四方は海 に囲まれて暖流と寒流がそれぞれ存在し、海の幸の豊富な場所です。春夏秋冬がはっきりして、 規則正しく巡り、それぞれの季節には山菜が採れ、山の幸 も多くあります。 大昔は自然の中にあるものを食べていたそうです。縄文 時代の先祖は、40 種以上の炭水化物源を採っていました。 種子では、クリ・どんぐり・トチの実・クルミ・シイの実・ カヤの実等々。根茎類ではカタクリ・ヤマノイモ・ムカ ゴ・ユリの根・葛。雑穀類ではヒエ・アワなどがあります。 いまでも食べられている物が実に多い事に驚きます。生の でんぷんを消化出来ない人間は、加熱する事により、でんぷんを吸収しエネルギーとして生き てきました。タンパク質源は魚介類では魚・蛸・烏賊・貝等々。ほ乳類や鳥、は虫類の肉では、 いのしし・うさぎ・野鳥・へび・かえるなど、また昆虫類では、バッタ・いなご・はちのこ・ ざざむし・かいこなどです。昆虫類はいまでも山国長野の名産品です。季節によって出てくる ものが違いますから、おいしい時期というものを日本人はよく知っていました。このように日 本の食文化の独自性は、既に縄文時代に形成され始めていたことになります。 ●「旬」を味わうのは日本人だけ 昔の日本人は食材をおいしくして食べるとい うことを、全くしませんでした。そのような考 えがなかったのです。なぜなら、日本人は季節 によって変化していく、自然のものをよく知っ ていたので、食べ物がおいしくなる時期を、見 て感じて、肌で分かるのです。『旬』という言 葉を、よく使いますが「食材が一番美味しいと
き」という意味だけではなく「収穫が一番多く、人々によく行き渡り(現代 千曲川の鮎釣り では安いという意を含みます)、かつ栄養価が高い時期」を指し示すものです。
驚きですが、これを表す言葉は外国 にはほとんどないそうです。 例えば、六月になるとアユが解 禁になりますが、まだ脂が乗ってい ないため塩焼きにして、丁度その 頃生えてきた蓼で作った蓼酢で食 べます。こういったことは、その 季節の出合いをよく理解していな いと思いつかないことです。そして、 アユに脂が乗って一番おいしい時期 鮎の友釣 に入ります、これはもう「旬」です。そのときは、お魚の田楽にしておなかの中に 味噌を詰めて焼く、またはフライにするなど工夫をして、季節のものをおいしく食べます。秋 になり、落ちアユになってくると、おなかの中に卵がいっぱい詰まってきます。そうすると今 度は、もう来年まで食べられないからと名残を惜しんで食べに行きます。このように日本人は、 『はしり』 『旬』『名残』と一つのものを三回にわたって味わいます。日本人ほど、ひとつの食 材をよく味わう民族はありません。 鰹について言うと、一月頃は鹿児島の枕崎沖あたりに いて、まだ脂がのっていません。この時期に食べても美 味しくないため鰹節「薩摩節(薩摩型本節) 」にします。 プランクトンや小魚が黒潮にのって運ばれるのを追いか けてくる二月〜三月は、土佐沖まで北上しますが、まだ 脂はのっていませんので、ここでも「土佐節」鰹節に加 工されます。四月には焼津沖まできますが、ここが鰹節 「焼津節(改良型本節) 」の北限です。これ以降は脂がのっ てきて鰹節にはなりません。駿河湾あたりのエサの豊富 な地域でたくさん食べた鰹は、五月から六月頃「目に青 葉山ほととぎす初鰹」の季節に入り旬を迎えます。 「女 房を質に入れても初鰹」なる川柳も 江戸時代に江戸で 特に珍重された初鰹(はつがつお)を、大金を使ってで も買うのが粋(いき)といわれた喩です。初夏の頃、市 場に出回り始めた『はしり』の鰹は、それを過ぎると値 段は100分の1にも下がったといわれています。 鰹の一本釣 松茸、鱧など高価な物は、特に付加価値を付けるため に、お品書きや料理の説明に、産地 と『はしり』『旬』『名残』のような時期を伝える事、 昔も今も同じです。 ●おいしい「水」と共に発達した日本食 日本は良質の水に恵まれた事により、独自の食文 化が形成されました。中央部に高い山があり、短い 距離で海まで到達する川が流れています。ヨーロッ パの 3 倍以上の降水量があり、海に流れる水、地下
水として蓄えられる水、また湧き出して川に流れ込む水といたって豊富な水によって、水の食 文化が発達してきました。欧米の主食であるパンは焼いて水分を飛ばすのに対して、日本の主 食のご飯は水で米を炊いて一緒に食します。煮物やみそ汁、お吸い物は、水が良くなければ美 味しくありません。お茶や日本酒も、鉄分の極めて少ない水だからこそ生まれた日本独自のも のです。
日本人の食の感性 ●五感で味わう日本人 五感で物を食すのは日本人だけだそうです。日本 食とは視覚(目)、臭覚(鼻)、聴覚(耳) 、味覚(口) 、 触覚(手、唇、歯)五感すべてに強く訴える食文化 であると言えます。 視覚 目では料理の色や形、器や盛りつけの美しさなど を感じ取ります。これら見た目の美しさは、中国料 理、フランス料理、イタリア料理でも持ち合わせて います。しかし日本料理には、そこに日本文化特有 の「減法の美」が、反映されます。国語学者の大野晋氏によると、平安時代「うつくし」とい う言葉は、 「清潔、無垢」を指していました。後の「きれい」という言葉も「清潔」という意 味です。清潔さというのは、洗浄される事によって生まれます。洗わずして清められるものは なく、精錬されずに純粋なものは生まれません。洗練された精神を持つ者は意味のない装飾を 嫌い、無駄を省き、繁華よりも簡素を、多きよりも少なきを、過剰よりも欠乏を選びます。そ の先には素朴さ、無為の境地があります。日本文化では素朴の美、自然の美、不調和の美、頽 廃の美が崇拝されています。例えば龍安寺の石庭、利休の茶室、俳句、盆栽、懐石料理の向附 などがあげられます。現代においては、複雑な機能を省いて再生のみにしたウォークマンもそ うかも知れません。 日本料理における目は形、 色、 空間(調和)をはかるものであり、 非常に重要な要素となります。 臭覚 鼻では匂いを感じますが、風邪をひいて、鼻が利かないと旨 さが十分には感じられません。日本人はゆずや木の芽(山椒の 葉)、松茸の匂い、醤油の香り、鰹節の匂いを感じます。欧米人 の香辛料は臭みを消す為の 役割で、肉の臭みを胡椒や生姜、ニンニクで消し去ります。 臭みを消して美味しさを楽しむ欧米人と、香りを楽し む日本人の違いがユニークです。また日本人は自然な香り 以上の強い匂いはあまり好感を覚えません。現代のファミ リーレストランのメニューの多くが、臭みを消す手法が取 られている事が、少し気になります。 聴覚 耳で感じる音は、蕎麦をたべるときの粋な音、鍋がグツ
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グツと煮える音、鉄板で肉が焼けてジュウジュウと立てる音、せんべいをかじった音など、耳 で旨さを感じる音は限りなくあります。また食べる時の会話の音は、一人で無言で食べる時よ りも料理を美味しくさせます。 味覚 日本人が口で感じる味には、 『辛、酸、苦、甘、鹹(かん) 』の五味がありますが、この他に『旨 味』という要素が加わります。この旨味を出すのに、日本では古くから料理に昆布だしが使わ れてきました。昆布に含まれる成分においしさの元があるのだと、経験から知られていました。 そしてその旨味成分であるグルタミン酸を昆布から取り出す事に日本人が成功したのです。 旨味に敏感であった日本人の特徴を表している事例だと思います。 触覚 料理を手で感じることも多くあります。ご飯を食べるとき左手で茶碗を、右手で箸を持ちま すが、これでおいしさに対する心構えができます。椀から伝わる温かさや重さ、箸でとった時 に手に伝わる感触は大きな要素です。昔は、季節に応じて厚みや形状の違う夏茶碗、冬茶碗と 器を変えて楽しんだそうです。逆におにぎりや寿司などは、よりおいしく感じるので、箸を使 わずに、手で直接味わう人が多いのでしょう。また触覚という点では、唇、歯、咽にも大きな 要素があります。器を直接口にするのが日本人の食事です。唇との関係で味を判断する事が無 意識にあるのではないでしょうか。スープを音を立てずに飲むには、スプーンを口に含まなけ ればいけませんが、金属=刀に対する畏怖の念からか、金属を口に入れる事が日本人は苦手で す。スープなら金属のスプーンより漆器で飲んだ方が旨いのです。ですから当店ではスプーン をお出しする場合は、ボーンチャイナもしくは木製のものにしています。 又、活きのいい白身魚の刺身のコリコリ感、納豆・なめこ・ジュンサイ・おくらなどのヌ メヌメした感じや、固い梅漬けやたくあんのカリカリ感を楽しみ、またうどんなどそのまま呑 み込むものの咽越しと、その味が口から咽にかけて、スッと消えてしまうような切れ味などの、 食感も口の触覚のひとつに入れておきたいものです。喰い道楽としてはどれも大きな要素です。 温度 また五感の中には入っていませんが温度の感覚も重要な要素です。ご飯やみそ汁、料理の温 度は美味くも不味くもしますし、お酒の温度などは味を変化させて楽しませてくれます。 気温や室温も大きく影響します。 ●発酵の食文化 前にも述べましたが、「日本食は発酵の食文化」であるということを少し解説したいと思い ます。 菌 納豆は納豆菌、漬物は乳酸菌、米酢は酢酸菌、味噌・醤油は酵母と 乳酸菌と麹菌、焼酎と酒は酵母と麹菌・・・と微生物による発酵食品を 挙げていくと、これらを食したことの無い日本人はいないのではないで しょうか。イカの塩辛、酒盗、くさや、魚醤の類、ふぐの卵巣の糠漬け、 ・ ・ ・ と特に魚の発酵食品は多岐にわたります。 食品を発酵させると、さまざまな効果が得られます。 一つめは、保存性がよくなること。一定以上に増えた微生物が、他の 菌(腐敗菌など)の繁殖を抑えます。 二つめは、菌が繁殖する時に臭いを放つ有機酸や匂いの物質がつくら れ、香ばしい香りが生まれることです。発酵食品は、食欲を増進させます。
上田地大根
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また、食品のたんぱく質が分解発酵すると、かつお節、昆布 などが持つものと同じ、アミノ酸や核酸系のうまみが生成され、 素材をより一層美味しくします。 三つめの効果としては、食品の栄養価を大きくアップさせま す。ぬか漬けは、米ぬかに多くのミネラル、ビタミンを含んで おり、これらを栄養にして繁殖した、乳酸菌や酵母が、ぬかの ミネラルなどと一緒に漬け込んだ野菜に移り、生野菜にはない 栄養が加わります。 発酵食品による体へ効能 ○老化現象を防ぐ 味噌は、発酵・熟成の過程で抗酸化作用が高まるために、 「活性酸素」を 地大根の酒粕漬け 除去するのに役立ちます。また、味噌や納豆に含まれる「イソフラボン」は、 女性ホルモンを刺激し、更年期障害を防いで若く美しい肌を保つのに効果的です。 ○血糖値、コレステロール値を下げる 味噌は、熟成してくると糖とアミノ酸が反応して、色が褐色になっていきます。この時でき る「メラノイジン」は血液中の悪玉コレステロール値や、血糖値を下げる働きがあり、高血圧 や肥満を防ぐといわれています。 ○血液をサラサラにする 納豆には、血栓を溶かす作用を持つ「ナットウキナーゼ」や、血液の凝固を防ぐ酵素を、活 性化させる「ウロキナーゼ」が含まれており、血液をサラサラにする効果があります。 ○疲れをとる 肉体労働や激しい運動をすると、疲労のもとになる乳酸が発生し、筋肉が痛くなったりだる くなったりします。酢の酸味の主成分である「酢酸」や「クエン酸」は、そんな乳酸の分解を 促す作用があり、早く疲労を回復させます。等々調べてゆけばきりがありません。 鰹節 代表的な魚の発酵食品である鰹節一つとっても大変な知 恵の固まりといえます。 鰹節の製造工程はいろいろありますが、ここではカビ付 けに絞って説明致します。一番カビとして最初に発生する ものは、色が青いこと から青カビといわれて います。その後、二番・ 三番・四番カビとつけ ていくに従って、青色 から赤茶色に変化しま す。そのあいだに裸節 は徐々に固くなってゆ きます。カビ付けの効 用については、判然と しない点もありますが、 一般的には以下の点を 言われています。 節の内部の水分量を 15%程度まで落とす作業がこのカ
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ビ付けです。カビ自体が、節の内部から水分を吸上げるの で、単に干すだけと比べて、早く均一に水分を減少させます。 また、カビの状態を見ることにより、節の乾燥度の目安と なります。 魚といえば魚臭さが問題になりますが、鰹節に は魚臭さがあまりありません。カビが鰹の脂肪分を分解して、 脂肪が酸化して出る魚臭を抑えると同時に、アクを減らして、 脂肪分解物から風味が生じます。 鰹節のうま味はイノシン 酸が主体ですが、アミノ酸も重要なうま味成分です。鰹の タンパク質を分解して、アミノ酸を生み出し、また鰹節特有の香りを生み出しているのもカツ オブシカビです。 カビは鰹の中性脂肪 を分解する酵素を分泌するため、だしを 取った時に、汁に脂が浮かず、濁らずに 透明になります。 カビ自身が生産する 抗酸化物質により、節表面の酸化を防止 するのです。なんと見事な調和なので しょうか。カビを使い、魚臭さを無くし、 風味と香りと旨味を引き出しているので す。しかも洗練された清らかさを保つ知 恵の固まりという事でしょうか。 寿司 寿司ももともとは発酵食品でした。古
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くからある 「 熟鮨(なれずし)」 はご飯の上に魚の切り身 をのせて長期に発酵させたもので、独特の強い臭いのする 鮨です。現在我が国では滋賀県の 「 鮒鮨 」・「 鮎鮨 」 や和 歌山県に嗜好品として僅かに残っています。ご飯は放置し ておくと酸えてきますが、これは米のでんぷんが乳酸菌に よって糖化され、さらに乳酸発酵するからです。こうして 酸性になると腐敗菌の増殖が抑えられ、ご飯の上にのった 魚や肉は腐敗することなく、次第に分解され、強い臭いを 放つようになり、ご飯の形も崩れてゆきます。 鮒鮨 江戸時代初期には、ご飯に麹を混ぜて発酵させる飯鮨が 出てきます。金沢の 「 かぶら鮨 」・北海道の 「 鮭鮨 」 などがあり ます。江戸時代後期には、ご飯に酒を入れて魚とともに保存して おくと酢酸発酵によって酸っぱくなるのを利用した鮨がでてきま す。鹿児島の 「 酒鮨 」 がそうです。 そして酒の代わりに、はじめから酢とご飯を混ぜておいて、そ れに魚をのせて即座に鮨をつくってしまう 「 早鮨 」 が生まれまし た。醤油が日常の調味料となり、刺身の味を楽しむ時代となっており、漁業の発達で魚種も豊 富になっていたので、気の短い江戸っ子大衆はこれに飛び つきました。従来の熟鮨は時間がかかるのと、臭いで次第 に大衆の嗜好に合わなくなり衰退の道を辿ったようです。 くさやの干物 ムロアジで作るくさやの干物は、伊豆諸島で生産され ており、サメの頭や魚の内蔵などを海水に入れて発酵さ せたくさや液を使いま す。この液は先祖代々、 必要に応じて新しい材 料を仕込みながら継ぎ 足しで使われてきました。くさやの干物を食べて食中毒を
早鮨
起こしたという話を聞いたことがありません。くさや液は 茶褐色の粘り気のある液体で魚醤に近い風味を持っており、 酢酸、プロピオンなどいくつかの有機酸を含んでいて、食 中毒を起こす毒素やアレルギー症状を起こすヒスタミンな どは存在しないことが分かっています。くさや液の中の無 数の細菌群にはヒスタミンなどを生産する腐敗細菌も存在しますが、ヒスタミンを分
解して無毒にしてしまう細菌も存在するそうです。うじも育たないので、蝿さえも卵を産まな いそうです。 ●料理が発達しなかった日本 日本人は、おいしいものを探して食べる民族ですから、その料理の発達というのは非常 に遅れて、室町以前にはほとんど料理らしい料理というのはありませんでした。日本料理とい うのは、「 食品に加える技術は最小限にとどめ、なるべく自然に近い状態で食べるべき 」 とい う考えを持っています。西欧や中国の「そのままでは食べられないものを技術を加えることに
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よって食べられるものに変化させること」 「自然には存在しない味を創造すること」を料理の 概念とするならば、日本は世界中で最も料理が遅れた国です。同じ島国であるイギリスも、日 本と比較的近い地理的事情で自然の幸に恵まれ ていて料理が未発達なため、大陸のフランスか らは世界一まずい料理といまだに言われていま す。料理の発達した国の人々から見ると素材そ のものを食べる事は野蛮であると映るようです。 「薬用」だった乳製品 弥生時代以降は大陸からの文明が、加工・調 理を要さなかったそれまでの日本の食に、大き な影響を与えていきます。米食は弥生時代以前 からおこなわれていましたし、煮物、焼き物、蒸し物は古くからありましたが、揚げ物は飛鳥 時代ごろに大陸から入ってきたと考えられています。奈良時代から平安時代にかけて、中国と の交流が盛んとなり、仏教の伝来もあって、七世紀の天武天皇の時代に、朝廷が肉食禁止令を 発布しましたが、庶民の間ではあまり気兼ねなく食べられていたようです。乳製品も入ってき ましたが、天皇や公家から地方の豪族の間で薬用として珍重されたそうですが、庶民には手が 届かず廃れてゆきました。また熟鮨(なれずし)が大陸から伝来し、後のにぎり寿司になって ゆきます。唐揚げや唐煮、唐菓子などの料理も登場します。当時は調味料も塩、酢、酒、醤(塩 辛)程度しか無く、多くの人々は、芋や大根を茹でて塩等で食べていました。室町時代に醤油 が登場するようになってから、ようやく料理らしい料理が出てきます。 戦国時代には、陣所で手軽に食べられる弁当に、おむすびの原形となる、椀飯(おうばん) というものがでてきます。南蛮船により南蛮料理や南蛮菓子が伝わりますが、その中でカステ ラはヨーロッパの菓子類としては珍しく、乳製品を用いない事から日本に定着するようになり ました。そして江戸時代、特に幕末の文化・文政のころに 庶民の料理が発達してきました。にぎり寿司や蕎麦の専門 店ができるのもこのころです。また、江戸で武家の接待の ため、お留守居茶屋ができ、会席料理も発達します。明治 時代になると西洋料理が入ってきて、牛鍋などが登場しま す。日本の代表的な料理と思われている刺身は、 長い間 「魚 を生で食べる」という習慣が無かったので、沿岸部以外に 広まったのは、氷の普及のはじまった明治の末期からのこ とです。一般的に普及したのは、電気冷蔵庫が開発された、 戦後になります。長野の山の中で刺身が食べられたのは、 まだ私の記憶にもある二十数年前です。天ぷらも登場しま すが、食用油が、精製の面で未発達で量が不足していたため、貴重なものでしたから、揚げも のが日常的に食べられることはありませんでした。 このように日本の食は長い時間をかけて形成されてきていますが、現在我々が和食としてイ メージする料理のほとんどは近代になって創られ庶民の多くが支持し広く普及していったもの です。
第三章 料理とは ●決死の覚悟だった料理人。命がけの待遇食
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料理が発達する要素を大きく分けると、下記の3つに集約されると思います。 一. 地味肥沃な平野と多くの河川や海に恵まれる地理的条件 二. 多種多様な民族の侵入と交流の歴史 三. 強大な中央集権の政治体制がとれた権力者の存在 この条件を満たせたのはやはり世界三大料理とよばれる料理の有る国、フランス、中国、ト ルコとなるのでしょう。料理とは人(他人)を遇する(待遇)食の事です。特に異文化の民を 接待する場合、出席者全員が食べられる料理でないと料理人は死を覚悟しなければなりません でした。しかし、日本は自然に恵まれ、隣接する国も無く、占領されることも無かったので、 料理はほとんど発達しませんでした。ただ国内で唯一料理的要素があるのは沖縄料理で、それ は島津藩(鹿児島)・台湾・中国を接待するために料理として発達してきましたが、三大料理 と比較するのは難しいでしょう。 お百姓さんより多い医師の人数 日本は戦争に負けたことにより、はじめて食文化の侵略を受けているのではないでしょう
か。救援の為の小麦粉の提供は、戦後の学校給食で、日本の主食の米をアメリカ産の小麦に変 えようとする策略があったのではないかとも言われています。その為に米の消費量は年々減少 し、それに伴うおかずも変化し、魚の消費量も減少、調味料も変化をきたしています。1960 年以前はご飯と言えば食事のことで、米飯中心の一汁一菜 が庶民の食でした。ご飯がパンになり、みそ汁が牛乳にな り、魚がハンバーグに変化していったのです。食糧自給率 は 40% から年々下がっており、主な先進国の中でも最低水 準です。近年、米の出荷高より、スナック菓子の出荷高が 上回り、逆転しました。又、あるデータによると 1996 年 には医師国家試験に合格した人数よりも、各学校を卒業し て専業農家へ農業就労した人のほうが少ないそうです。医 療以前に食べなければ生きてゆけないのではないでしょう か。食べるということは『生きる』ことの根源です。生き ることを大切だと思うのであれば、食べることも大切であ ると考えなければなりません。「医食同源」という言葉があ りますが食べることで病気にならない丈夫な体をつくると いうことです。
●ご馳走とは 基本になる料理の原点は、『土産土法(どさんどほう) 』というものの考え方です。その土地 で採れた産物をその土地の調理法でつくったものが一番おいしいということです。これは『身 土不二(しんどふじ):身体(身)と環境(土)とは不可分(不二)である』という考え方か ら出てきています。自分と同じ気候風土で育った食べ物が自分の体によく合うと言うことで す。ところが、おいしいものは国境を越えてどんどん入ってきます。同時に、いろんな料理も 入ってきてしまいます。本来はその土地で採れた産物で、その土地の料理をつくって食べる のが理想なのですが、交通の便がよくなり、人口が増えると、その土地で採れた産物だけで は間に合わなくなってきます。人もそれぞれ流動します。おいしいものを食べたいと言うと、 北海道から「サケを持ってこい」とか、九州から「からすみを持ってこい」とか言って、あ ちこち駆けずり回って料理するようになります。ご馳走という漢字は走り回るという意味で
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す。ですから長野県の山の中でマグロのお刺身を食べる というのは、本当においしいご馳走ということになります。 現在の料理というのはそのご馳走の領域と、土産土法の料 理とが入り混じっています。 地産地消の考えには大いに賛同しますが、流通・情報 がここまで発達した現在、生産者側、消費者側にもそれぞ れ食物の価格や品質、また環境に対しての意識が必要です し、馳走と土産土法のバランス感覚も必要なのではないで しょうか。
●陰陽五行説と日本料理 日本料理の約束事は、優れた料理人が中国から伝来した陰陽五行説という中国の哲学思想に 基づいて料理の理論を構築しました。よく耳にする風水という学問の基本になっているのが陰 陽五行です。陰と陽というのは、女と男とか、角と丸とか対立した二つのものをいいます。陰 と陽の気が合わさって初めて、森羅万象すべてのものがバランスよく保たれているという考え です。五行とは、日、月、火、水、木、金、土という、七つの中の五行です。陽は太陽 ( 日 )、 陰は月です。これを除いて火、水、木、金、土、この五つが世界中の元素になっているという 教えです。 洋包丁は鉈(なた) 料理でいう陰陽五行説の、陰陽の基になっているのは包丁です。和包丁を握ったときに片刃 ですから左側は平らです。右側は斜めに切れていて角張っています(洋包丁は両方とも同じ) 。 左側の平らな方を陰、右側の方が陽と決められています。そのため、リンゴやダイコンを筒切 りにしてくるくると剥いていくと、丸いものが全部包丁の右側が当たります。左側が当たって いるところは四角く、角張っています。四角いもの角張ったものは陰、丸いものは陽となりま す。そのように決めた場合、例えば柵取りをしたお刺身は、 左の方から削(そ)いでいくと(削 ぎづくり) 、これは陰のお刺身になります。右の方から斜めに切っていきますと、右側が当たっ た方が上を向きます。そして斜めに置きますと、これは陽のお刺身となります。 器にもある陰陽 器についても、四角い器は陰、丸い器は陽、というように日本料理ではみんなそう決めてあ ります。そして陰の器に陽のものを盛ると美しいのです。例えばフグは庖丁の左の方で切って 薄づくりにし、それを丸い器にキクの花のように並べます。陰のお刺身を陽の器に並べるから
あのようにきれいなのです。「陰のお刺 身を陽に盛りましょう」というのは日本料理の基本です。この ように、陰陽がきちんとバランスを取っているわけです。
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「辛い」は味じゃなく「痛い」という感覚 行の方は、五味、五色、五法といいます。 五味というのは甘い・からい・苦い・酸っぱい・しょっぱい の五つです。しかし味は四味といって、本来は立つという字の 下に十を書いた「辛い」というのはありません。これは味では なく刺激物で、痛いと感じるものとして扱うのです。ですから 今は、料理の栄養学でも、からいを除いて、甘い・苦い・酸っ ぱい・しょっぱいの、四味を原則としています。 日本料理のテクニック 五法は、生で食べる、焼いて食べる、蒸して食べる、揚げて 食べる、煮て食べる、この五つしかないということです。きち んとまとまって完成された日本料理というのは、この五つのテ クニックを上手に使っています。 信号色の料理の盛りつけ 五色というのは、赤・黄・青(緑)・白・黒です。信号の色と白と黒です。これを、有彩色 と無彩色といいますが、栄養学の上でも非常に意味があるのです。日本料理は、この五つの色 を上手に使ってきれいな料理をつくりなさいと教わります。赤色と黄色は食欲を増進させる色 ですが、多く使いすぎると料理全体の品位 を落とします。黒色は、全体の色調を引き しめる効果があります。白色は、そのもの 自体は冷たい感じがしますが、雑然とした 色調の盛りつけに使うと清潔感が出て、暑 い時期には涼しさを演出するのにも最適で す。青色(緑色)は、炊き合わせに添える 木の芽や、刺身に添える大葉などで、すが すがしさを与えたり、配色にアクセントを つけるのに多用されます。 「青味」という言 葉がよく使われますが、この色を上手に用 いると料理が上品に見え、いかにもおいし そうな雰囲気がでます。 こ の よ う に、 五 味、 五 色、 五 法、 陰 陽、 それから自然界にあるものをなるべく自然 の状態で食べたいという考え方で出来上 がっているのが日本料理なのです。
● 和食と日本料理 和包丁でしか作れない、刺身の権 文化として日本料理をみてみると、包丁 を使って切ることは、他の国には無い大き な要素でもあります。洋包丁や中華包丁な ど世界中の包丁は両刃ですが、片刃の包丁 は日本だけです。片刃の包丁は片面だけを
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研いで刃を出していますから、刃先の 角度は鋭角で切れ味は鋭く繊細なので す。これに対して両刃の包丁は刃が 両面の為、食材を切るというよりも 割り込んでいって割く感じです。感 覚で言うとカッターの刃で、指先を 切ったときに血も出ずに深く皮膚が裂 けます。それが片刃でものを切った 感じです。両刃は極端な言い方をす れ ば、 鉈( お の ) で 薪( ま き ) を 割 るかんじでせっかくの旨味のある水 分( 肉 汁 ) が こ ぼ れ で て し ま い、 切 れるということとはほど遠いことに なってしまいます。切り方もおのず と 異 な り、 両 刃 の 庖 丁 は 親 指、 人 差 し指、中指でしっかり握り手首のス ナップを効かせて切ります。中華料理 の職人を見ればよくわかります。片 刃 の 包 丁 は、 小 指、 薬 指 を 包 み 込 ん でしっかり握り、手首を固定して蒸 気機関車のまねをするかんじで肩から肘、包丁の先ま で連動して円を描くようにして食材にあたる部分は直 線運動で素早く切ります。片方にしか刃がありませんから、 まっすぐ切るのは技術が必要です。大根の権を作るの に、うすくくるくるとながく剥いてゆく桂剥きがあります。 これなどは包丁がしっかり研げていないとできません。 刺身や 刺身の権は、 鋭角でシャープなエッジが見えることでおいしさ を感じます。大根の権などはキラキラっと輝いて見えます。 刺身は表面がつやつやしています。 切ることによって味も変わりま す。イカは表面に繊維のような薄皮が四枚もありますから、 細かい包丁目を勢い良く素早くいれます。甘く柔らかさがあるけれども、しっかりとした食感 のあるいかの刺身ができあがります。切ることにより食感も味も変わります。単一のお刺身例 えば鯵刺しなどは三種類ほど切り方を変えて提供するようにしています。おもしろいことにそ れぞれで味が異なります。
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旨さを追求する考え方の違い 日本料理はいわば技術といえます。おいしいものを探求 してきた日本人が、その素材のもつ旨味やおいしさを引き 出すために、蒸してみたり、煮てみたり、鱗(うろこ)をとっ て皮をひいて刺身にしたりというのは技術です。絶対に素 材の持つ味を超えてはいけません。しかしフランス料理も、 中華料理も、トルコ料理も、素材を足してゆき、複合素材 のソースをつくって素材以上のおいしさを追求していきま す。これは料理です。ジャガイモにバターをつけて食べるとおいしくなりますが、塩をふって 食べた方がジャガイモ本来の味がして、ジャガイモのもつおいしさが引き立ちます。 日本料理は、素材そのものがもつ旨味を最大限に引き出すために、包丁を使い、お湯を使い、 油を使います。素材を別のおいしいものに変えるために味を加えていく他国の料理とは『旨さ を追求する考え方』が根本的に違うのです。 高級食となった日本料理 日本人として食してき た『和食を料理にしたもの は技術』です。匠の技が野 蛮な国の食べ物を、世界三 大料理に肩を並べるほどの 料理に仕立て上げたのです。 それが日本料理です。しか しその技を習得する為に何 年もつらい修行をし、一握 りの熟達者が人間的にも一 人前になり店を任されたり、 独立して店を持ちます。当 然何人かの弟子もつきます。 その為にいまや日本料理は高級な料理となり、庶民には食べられ 出刃・鱗とり・骨抜き 2 種 ない料理となってしまいました。 恐るべし日本の技術、冷凍食品 反面現代の技術が、家庭での料理人はおろかプロの職人まで必要の無いほど発達しています。 温度調節の微妙なコントロール制御が、冷凍技術から加熱調理技術までカバーし、メカニカル なコントロールが切ったり、巻いたり、包んだりの技術を完成させました。流通の進歩、およ びインフラの発達もあげられます。私が飲食業に関ってみて驚いたことは、とにかくありとあ らゆるものが出来合いで冷凍になっていたことです。原材料(水産、 農産、 畜産物)はもちろん、 小鉢、オードブル、八寸、前菜、重詰め、椀種、刺身・お造り、揚げ物、焼き物、蒸し物、煮物、 酢の物、香の物、デザート、と洋食はもちろん和食に至るまで、温めて器に盛るだけで、アル バイトの高校生がいれば会席料理ができてしまいます。極端な言い方をすれば、料理人が、ま な板も庖丁も要らない時代になっています。料理の世界も二極分化が進んでおります。確かに 競争の激しい外食産業にあって、生ものを扱い、世界一の人件費で、家賃を払って、儲けを出 すのは至難の業です。だからといって日本人でありながら、本物の日本料理を食べるにはまま ならず、冷凍チンした骨なし焼き魚定食をおいしいと食べ続ける事ができるのでしょうか。本 来求めてきた” おいしさ” が二の次となり、利益、利潤が優先された結果なのでしょう。
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世界の健康食「和食」 一方世界では健康食としての日本食に注目しています。日本料理の調理法や素材の加工法を 自国の料理に生かせないかとフランスやスペインの料理人は一生懸命に日本料理を学んでいま す。先達が培ってきた文化の本質的なことを理解し、現代社会における文明の利器を利用して、 これからの日本人が日本人として食してゆくものを追求することが、決して餌ではなく、喰い 物でもない美味しい食べ物として提供できるのではないでしょうか。
春野菜の焚いたん
お造り
千曲の落ち鮎の 西京味噌幽庵焼き
九条葱の胡麻味噌がけ
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第四章 親父の講釈、賞翫(しょうがん)するということ 食を楽しむという道楽 私は、最近になり「食い道楽」であることに、 躊躇うことが無くなりつつあります。以前は、 「道 楽」という言葉に、あまり良いイメージを持たなかったのですが、ある本に、出会ってから素 直に受け入れる事ができました。 そこには、食べることが文句なく好きで、それに没頭出来て、それを楽しむことができる。 理性的に料理を研究する一面はあっても、それよりなにより、食べることに情熱をもち、自分 の中で「うまい」、「まずい」の選り好みを日常的に繰り返す生活態度が重要で、それが、食い 道楽の定義ではないかと言うことが書かれていました。つまり能力より姿勢が重要ということ なのでしょうか。 さらに共感したのは、 「食い道楽人」は、食 い気が旺盛でなければならず、食べている最中 から、次は何を食べようとか、あしたの昼はど こで食べようとか、これを作ろう、こうアレン ジしてみようと具体的に考えられるくらいでな いと駄目で、腹が空いてるときだけ考える人は 食い道楽にはなれないと断言されていた点です。 その定義なら私は外れていないのです。た だの食意地が張ったおやじに、道楽という道が あったのだ。という事に気がつきました。 私たちの目的は、ただ一方的に美味しいものを提供して、お金をいただくという事業とは違 い、顧客との信頼関係と言う交流が重要だと考えていますので、食べ手の技術についても、少 し述べさせていただくことになります。 商売となると難しい点は多々ありますが、喰い物を食わせている今の大半の飲食関連業種、 またそれを知らずにどんどん洗脳されていってしまう消費者に少しでも(旨いの本質)と(や さしさ)が通じればとの思いです。
間違いだらけの食の価値観 昔 は、 庶 民 の 食 べ 物 で あ っ た 寿 司、 天 ぷ ら、 う な ぎ が い つ の 間 に か 現 代 は、 高 価 な 接待料理になってしまいました。父が曰く戦前の東京で江戸前寿司を食べる時は「寿司 たべられますか?」と聞いてから、出かけたそうです。あたるからだそうです。行儀が 悪いのですが、つっかけで出かけて、 座敷に上がらずにつまんで帰るのだ そうです。その気軽さの復権が回転 寿しなのかもしれません。あのシス テムは、現代日本の英知です。少人 数の職人で多くのお客を入れ、ネタ の善し悪しをお客が確認することが できます。又、逃げてゆく獲物を捕 らえられる興奮を促す為に、絶妙の
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スピードコントロールが計算されています。それは、狩猟民族の欧米人にさえ受けたわけです。 アメリカの謀略か恩恵か判りませんが、自由主義が行渡り、階級がなくなり、万人平等にチャ ンスが訪れる社会になりました。またバブル崩壊以後、一見さんお断りだった場所にも、お金 さえ払えば誰でも入れるようになりました。 その結果、現代は、牛丼、回転寿しも割烹も高級フレンチも食べ物の価値観は一緒と考える 人が多くなってきました。それは、食べ物を喰い物として捉えてるからかもしれません。また 提供する側も喰い物として提供しているのではないでしょうか。
人として 時代が流れ、どのような社会になろうとも、場を弁(わきま)えること、マナーを守ること、 人としてやってはいけないことはやらないということが、しっかりできないといけないと感じ ます。それは、箸の使い方でも食の作法としては、32 則もあるそうですが、驚くことにかな り多くの人が箸を正確に持てません。茶碗を片手に持って肘をついてご飯を食べたり、食べ物 が口にあるうちにしゃべったり、皿を灰皿にしたり、子供が泣こうが喚こうが飛び回ろうが知 らん顔・・・目を覆いたくなることが多々あります。酒に関しても武家流で酒道が確立したそ うです。その要点は三つありまして、飲み過ぎて酔っぱらってはいけない、常に姿勢を正して 飲め、人に酒を強要してはならないという自我の酒です。現代においては、どれも当てはまり ません。外での食事からしてそうですから家庭に至っては想像がつきません。 華道、茶道、書道などほとんどの行為に道を追求してきた日本人に人としての道が失しなっ たかのようです。
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「賞翫(しょうがん)」とは
料理に付随する文化的な背景、食空間と生活文化のあらゆるものを総括したものを含めて料 理を味わう。これが料理を賞翫(しょうがん) 『味のよさを楽しむこと。賞味すること。 「旬の 味覚を—する」』するという言葉で表されてきました。 それは、食べ手側の技量と磨かれた精神の事です。私がこの仕事に携わる前は食い道楽を追 求した食べ手側でしたので、この賞翫という考え方は非常に興味深く感銘を受けた価値観でし た。 この考え方は、時代の変化により混在、変化する日本料理の中でも、残し続けたい不変の精 神だと考えます。 しかし、現代は考え方も失われつつ、言葉自体もあまり聞いた事がありません。
優れた食べ手に作られる料理人 私の父と同年齢で尊敬する、料理研究家 阿部孤柳先生が書かれています。 料理が美味しい、美味しくないということは、個人的な嗜好の問題で、個人差があり、普遍 性のあるものではありません。つまり料理は美味しいことが第一の条件として必要であります が、味覚の発達段階で非常に差が大きく、また、民族的な食習慣の差や、地域による食習慣の 差なども大きく影響します。料理は喰い物でありますが、喰い物は必ずしも料理ではありませ ん。料理をたかが喰い物であるととらえる次元の人には、日本料理の本質を理解して、これを 賞翫することはできません。料理を食べて、美味しい、不味いという賞味をするのも結構です が、料理をよく理解して賞翫できるようになること、これは大変な教養です。こうした優れた 食べ手があって、はじめて優れた料理人が育ちます。そして、料理を提供する食空間とサービ スをする側の教養と豊かな感性があって、完璧なお料理を賞翫していただくことができるので す。宣伝に操られて、ただ単に旨いものを喰いあさる姿勢の中には、日本料理を本当に理解し て賞翫する資質はないのです。 つまり、求められなければ、本物は生まれないと言うことでしょうか。逆に言うと、本物を 提供するようにと、倫理観で訴えたり、法で規制するより、食べ手側が、偽物を拒める事がで きるのなら、自然に偽物は消滅してしまうということにもなります。
膳で文化を楽しめる定番メニュー ここで膳にて文化を楽しめる定番メニューをご紹介いたします。 長崎の卓袱料理 江戸時代の長崎が料理に関して現在の日本の縮図になったのでは ないかと考えられます。その昔、隠元和尚等によってもたらされた 普茶料理の配膳型式に、元亀二年(1592)の長崎開港以来、ポルト ガル人、オランダ人、唐人等の多くの人々が 大きな影響を与え、長 崎町民の間で作り出された和・唐・蘭のミックスした献立が、その まま盛りつけられ、長崎独特の料理を生み出しました。それが卓袱 料理の始まりだとされています。一卓一卓に大皿で数人分の料理を
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盛る卓袱型式(朱塗りの円形テーブルを卓袱(しっぽく )と呼んでいます)は、ひとりひと りに膳が出されるのが常識であった当時の人々にとっては、物珍しく、簡単で合理的なため、 その後町人たちが多い長崎で大いに受け、今もなお長崎ならではの味として親しまれています。 卓袱料理の発展は、新しもの好きの長崎人気質に加え、当時においても食材が豊かなことがあ げられます。卓袱料理を日本料理、長崎を日本と置き換えればわかりやすいと思います。多分 いろいろな料理が作られたと想像しますが、今日まで 400 年残ったものが日本人が好むもの なのではないでしょうか。 日中蘭合作料理の「皿うどん」 膳では、長野でありながら蕎麦で はなく皿うどんを出しています。鎖 国令が解かれた江戸時代後期、それ まで唐人屋敷に閉じこめられていた 中国人たちは市中へ出て、庶民相手 に中国一品料理の小さな店を出すよ うになりました。皿うどんは、そん な異国の味と伝統的な日本料理に、 新鮮で豊富な海の幸に恵まれた長崎 が出会って発展した、いわば日本と 中国の合作料理です。このような形 のものが作り出せて残せないかとの願いをこめてメニューに載せた一品です。 完全な和食の地位を確立した「とんかつ」 庶 民 派 小 津 安 二 郎 監 督 の『 秋 刀魚の味』のとんかつ屋のシーン に出てくるとんかつは、監督が足 繁く通った上野広小路の蓬莱屋さ んから取り寄せたものだそうです。 父も子供の頃から慣れ親しんだ味 です。とんかつもポークカツレッ
皿うどん
トから変化を遂げてから、100 年 が経ち完全な和食になりました。 創業当時から変わらぬ味を守る老 舗の、高温と低温で二度揚げされ たひれかつは、表面の薄い衣がカ リッサクッと香ばしく、中身は柔 らかくジューシーです。少しでも安定した味で近づければと日々 膳の特選極太ヒレカツ定食 精進です。
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特選極太ヒレカツの作り方
箸の持ち方
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第五章 膳の料理 ●和食・日本食と日本料理の違い 日本人が食べてきた食事を和食・日本食とすると、職人の技術によって確立したものが、日 本料理です。そのため日本料理と「日本人が食べてきた食事」とは必ずしも一貫していません。 日本料理は素材に余り手を加えず、素材そのものの味を引き立たせるような創意工夫、技術に よって調理されています。これは素 材の外見や生の風味が失われるぐら い複雑に調理したフランス料理や中 華料理と比較すると明白です。日本 料理は料理そのものより、自然や季 節を意識し、採集、雰囲気など、食 を巡った総合的な工夫が調理者の側 から一元的になされることが多く見 受けられます。 喰い物と食べ物とは何が違うので しょうか? ただ単に空腹を満たす為の料理や食材を喰い物と捉えています。私は、食べ物を 膳外観 喰い物として捉える価値観に問題があると感じ、前述の賞翫という学びを肝に銘じ て精進してゆきます。器や料理を見て、そのものの価値が本当にわかるような、 「目利き」が できる人間になれるよう努力をおしまないつもりです。そして膳で提供する食事は、和食・日 本食と日本料理の中間の位置づけの食べ物を確立したいと目指しています。
●合成調味料の味が本来の旨味を勘違いさせている 既製品のものを食べていると舌を悪くします。旨味調味料は言うにおよばず、マヨネーズ、 かければおいしいとされるドレッシングや中華の元、焼き肉のタレ等々複合調味料は今や何で もありです。まず腐りません。いろいろなものが入ってるはずなのにいつも均一な味です。す べていろいろな混ぜ物をして化学的に調整しています。素材の味で食べているのではなく、調 味料の味で食べているのです。今の風潮としては、噛まなくてとろける様な食感で、素材本来 の味を忘れて、濃厚な油脂と調味料のみの料理をおいしいと思っている。またそれをグルメと 囃し立てています。これは明らかに間違いです。料理を知らないので、基準となるものさしを もたない子供たちがほとんどです。20 歳前後の女性に急に定番の料理の名前をあげて作らせ るテレビ番組がありますが、上手い下手というよりそのもの自体および料理を知らないのです。 家庭の味の伝承は重要な課題です。 膳では、調味料の味でなく、素材の味を大切にしています。試行錯誤の連続ですが、この味 覚を家庭でも楽しんでいただけるように、ホームページでレシピを公開していますので、是非 試してみて下さい。お店の料理はヒントやきっかけになればいいのです。より美味しい料理を 作ってみて下さい。できればそれをまた聞かせてもらえれば幸いです。
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●いま取り組んでいること 日本人が長い間食べてきた食事であっても、それが日本に独特でなければ和食とは呼びませ ん。例えば牛丼や肉じゃがは、味付けに醤油や出汁、みりんなどを用いるため、和食の範疇で す。すき焼きやしゃぶしゃぶなどの肉料理も日本独特であるからりっぱな和食です。牛肉を食 べる習慣は明治維新以来であり、「味百年」と百年以上根付いたものは和食と考えます。情報 化時代でめまぐるしく変わる現在においては 50 年である程度取捨選択が行われ、変化をとげ て、日本国内に広く行渡り、多くの日本人が食していると考えられます。日本人は何でも取り 入れてしまう雑食性があげられます。海に囲まれた国である日本は、文化・文明は海の向こう からやって来るといった楽天性を持っている。そこにはヒステリックな狂騒はあっても侵略さ れることの本当の恐怖や身にしみた悲痛さは実感として伴なっていません。日本人は様々な文 化・文明を取り入れてきましたが、すべて日本に合ったものに仕立て上げてしまう天才的な能 力を持つ民族です。食材にこだわらず、味付け・調理法が日本で発達したものを日本食と呼ぶ のが一般的でしょう。 膳では試行錯誤の連続です。メニューにしても和食なのか和風なのか日本料理なのかお客様 には判断がつかないかもしれませんし、変わった店と捉えられるかもしれません。 それは、前述しました和食・日本食と日本料理の中間の料理を、作り手独自の価値観で提供 させていただいているからです。 世界中の食材・調味料が手に入り、国内の有名飲食店はもちろん海外のレストランも訪れて 料理を食べ、テレビのグルメ番組も見ている日本人が、これが今の和食なんだと納得していた だけるような料理、家で作ってみて子供からおじいちゃんおばあちゃんまで食卓を囲んで満足 する様な料理が一品でも形づくることができないかとスタッフ全員が知恵を絞っています。 料理とは何かという根本にたって、知恵と技術と情報を駆使して時代に合う料理に進化させ 創り上げなければならないと思っています。 和風料理って? ステーキやサラダのドレッシングに大根おろし、山葵や醤油、ポン酢を使ったり、スパゲッ ティーに明太子、納豆、しそなどを使う場合もあります。このような料理は、和食とは言いま せんが、和風ステーキ、和風スパゲティーなどと呼ばれます。 他にも、判断がつき難いがアレンジを加えることによって和風として提供しているものもあ ります。 ◎サラダうどんやカレーうどんのように明らかに折衷であるために判断が難しいもの、 ◎ラーメン、餃子のように海外起源であるが日本の独 特の料理になっているもの、 ◎豚肉の生姜焼きとポークジンジャーのように、素材 や料理法からはどちらとも判断がつけがたい上に、 和食、洋食の両方の扱いを受けているようなもの ◎洋食 - 欧米などの料理が日本独自の進化をしたもの。 カレーライスーインド料理のカレーがイギリス経由で 日本に来たものが日本独自の進化をした。 天使のエビフライ定食 ◎フライもの(トンカツ、コロッケ、海老フライ・・・) ◎ハヤシライス、ハッシュドビーフまたはビーフストロガノフとご 飯との組合せが更に変化したもの。
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◎オムライス、チキンライス 、ケチャップで味をつけたスパゲッティの料理。 ◎焼き肉 日本で焼肉と呼ばれる料理は在日朝鮮人が日本で生み出したものという説があ り、韓国では日式焼肉と表記されることがある。
●こころがけていること 料亭・割烹、定食屋、街の洋食屋、居酒屋と家庭の卓袱台すべてを今やっています。お客様 は何が好みで、どのような料理が残ってゆくのかは判りません。今まで述べてきたことを理解 し、技術を習得し、なおかつ一生懸命作ること、愛情をもって作ること。安心して食べてもら えること。食べる人のことを常に考え、健康状態や栄養のバランス、単なる夕飯なのか、いい ことがあったお祝いの食事か、みんなで酒を飲みたいのか、接待なのか、法事なのか、両家の 初顔合わせなのか・・・やさしい気持ちは人に対し ても素材に対しても道具に対しても持ち合せなけれ ばおいしい料理は作れません。 心を動かす料理 料理というのは感動がなければだめだと思ってい ます。前菜でも、前もって盛り付けてあったものは、 きれいではあるけれど、「わぁ、おいしそう」とい う感じがしません。それは料理が生きていないから です。私たちは、料理に代金をいただいていますが、 それ以上に、この事業で果たしたい目的があります。 ですからお客様に料理をお出ししたときに心が動く ものでないといけないと思っています。それは味で あれば最高ですが、盛りつけでもいい、食材の組み 合わせでもいい、量でもいい、価格でもいい、サー ビスでもいい、それらの驚きに伴う美しさを追求し たいのです。 出しゃばらない料理 料理の作り手がむやみに奇を衒(てら)ったり、
卵とろメンチとかき揚げメンチ
全面に出ようと先走ると、素材本来の味が損なわれてしまい ます。そうして作られた料理には品がありません。思いやりの無さは、味にも見た目にも表れ てきます。 ご予約で東京や大阪などから来られて利用されるお客様には、蕗味噌であったり、アカ シヤのてんぷらだったり、野沢菜の油炒めご飯であったり故郷・田舎を感じられるものを ちょこっとお出しします。地元のお客様にはこの辺で は手に入らない素材、団扇海老やまながつおを調理したり、 京野菜を使ってみたりします。共に意表をついた演出です。 また釜揚げのしらすに青首の地大根のおろしを添えてみ
やまのいもの天ぷら粒蕎麦
ます。地物の新蕎麦の粒蕎麦に真鱈白子の天ぷらをのせて みます。これらはシンプルですが実に旨い。蕎麦は打てば いいのですが、神様と呼ばれる様な職人さんには敵わな いので、なるべく上質な地物のむき蕎麦を仕入れて茹で てそのままお出しします。
29
寒い日には最初にお出しする料理 は椀物で、くず粉を入れとろみを効 かせて体が温まるようなものをお出 ししたりしてみます。常連のお客様 で好みをおっしゃっていただく方は 別として、今自分だったらこの立場 でどうしてもらえると嬉しいかなと 考えて料理をお出しできるよう心掛 けています。ご予約でメニューが決 まっていたとしてもちょっとしたア レンジで満足度はぜんぜん違ってき ます。 たまには出しゃばったことも し て み ま す。 常 連 さ ん で ど う 見 ても喰わず嫌いの素材を料理法 を変えてお出ししてみたりしま す。 先 日 も、 自 家 製 の い く ら の 醤油漬けは本当に美味しいので 是非食べていただきたかったの で、ご飯にのせてお出ししたら箸 も付けずに残ってきてしまいまし た。次に「いくらご飯ですがいかが でしょうか?」と聞くようにしたら、 自家製いくらを食べてもいないの に、要らないとおっしゃる方が実に 多いのです。今までのいくらに、愛想がつきているのか、 たまたま満腹だっ 自家製いくらの たからなのかと色々悩みましたが、ご飯にのせずに、別の小皿で聞かず 醤油漬けの作り方 にお出ししたらほとんどの方が残さずに食べていただけました。 いくらとご飯を分けたことにより、誰かが恐る恐るつまんでみて、 「あら、おいしいから食 べてみて」と内輪のなかで薦め合う のです。お客さまは選択できるとい う顧客満足を得たからなのでしょう か。おしつけのでしゃばりは、作り 手が中心で、配慮あるでしゃばりは、 顧客中心という思いやりなのかなと 思います。 満足していただける料理 顧客満足度を高くしないと い け ま せ ん。 料 理 が お い し く て、 サ ー ビ ス が 良 く て 雰 囲 気 が よく、金額も妥当であるということ、 いさきの木の芽味噌と などバランスがとれていないといけません。 お店も商売ですから、経営を考えなければいけません。おいしい素 鰆の柚味噌焼き定食
30
材を入れて、料理を作っても、来ていただかないことにはお店は成り立ちません。このお店は 満足できるといって何度も足を運んで下さるお客様がたくさんいることが一番です。 技術を磨いたり料理を創ることは、料理人個々の努力です。魚を三枚におろすとか、刺し身 を造る。桂剥きをする。ということはお客様に満足してもらえる料理を作る手段であって目標 ではありません。今は昔と違いインターネットもあり、料理に関する本はそれこそ山のように あります。最終目的はお客様に満足していただくことですから、それをするためにどうしたら よいか、常に考えながら、何段階にも分けて課題を設定することだと考えます。 まずキャベツを切ってみる。和包丁が切れるということはどういうことか考えながら切って みる。 切れるという感覚が分かるまで分かろうとしながら切る。 もう少し細く切れるように切っ てみる。皿に盛りつけてみる。もっとフワッと柔らかそうな盛りつけになるように切ってみる。 もっと早く切れるように切ってみる。技術を習得してゆくことが楽しいと感じられるペースで 次々と自身に課題を与え続けることです。
膳のめざす位置づけ
31
第六章 思いを実現する為の膳の仕組み メニューありきから、食材ありきへの逆転の発想 お客さまの前に料理が並んだ時に「驚かしたい」という思いがあるものですから、それを実 現する為に店では多種多様な工夫をするよう常に心掛けています。 こ の 料 理 が こ の 値 段? と 驚 か す 為 に は、 規 定 概 念 を壊し新しいモデルができないかと日々励んでいま す。考えてみれば当たり前のことなのですが、原材料 は、工業製品と違って日夜変動する相場です。それを 一定の原価率で当てはめる事に無理が生じるのです。もし、 仕入を一定額でおさめるのであれば、大量に出回っている 冷凍食品を仕入れなければなりません。資本力のある大手 フランチャイズは先物でレートを決めて大量に材料を仕入
れ加工に回せますが、そういったところと価格面においても競争で コッペ(えいひれ)の 竜田揚げ醲献がけ きません。お客様の入りも水ものでデータを取ってみましたが皆目 分かりません。天気や曜日、近くの催し物等参考にはなりますが確実性は全くありません。 「客 が客を呼ぶ」とは良く言ったもので、駐車場の車が多いとそれに誘われるように車が入ってき ます。また一つのメニューが出るとつづけてオーダーが入ります。多分隣の人の料理をみて自 分も同じものと思うのかもしれません。つまり何がどれだけ出るかはその日その日によって大 きな波があるのです。ですから膳では、定番メニューが少ないのです。メニューありきの考 え方から食材ありきの考え方に変えてみたのです。農産物直売所(フレッシュ小牧、JA 川西、 中之条) ・スーパーにも毎日出掛けます。ツルヤさんの商品管理にはいつも勉強させてもらっ ています。生鮮品はその日その日勝負ですから、鮮度落ちのものは価格を下げてでも早く売っ てしまわなければなりません。インターネットでも常に掘り出し物がないかチェックを入れて います。旬のもの、珍しいもの、自分で食べてみたいもの、マスコミで話題のもの、とにかく 欲しいものは購入します。それからメニュー作りです。そして仕入れた材料は絶対余らせない。 無駄にすることがないように常に注意を払い料理を考えることです。これには結構労力のいる ことです。そこでメニューの中の一品目が一食分しかなくてもメニューに載せることにしまし た。またスーパーさんの例に習って価格を変動制にしました。それには、毎日百種類ほどのメ ニューを作り出すシステムが必要です。この五年間で作ってきた三千種類程のメニューがデー タベース化されており、独自な料理はレシピも入っています。データの中から今日仕入れた材 料に合う料理が何種類か表示され選ぶことが出来ます。また日々新しいメニューは追加されて いきます。今日のメニューが決定されるとレジへのデータ送信とインターネットへのメニュー の配信、それと同時にお品書きがプリントアウトされます。仕入れと売り上げおよびポスレジ ですので、どの商品がどれだけいつ売れたか確認できます。またご予約のお料理も全て残って います。ご予約いただいた方の名前でしか残りませんがお食事がだぶらないように注意をは らっています。これら独自のシステムを作ってみました。コンピューターにできることはやら せようとの考えです。
32
契約関係より信頼関係 お 客 さ ま は 外 食 を す る と き に、 「今日はとん か つ が 食 べ た い 」「 寒 い か ら 鍋 に し よ う 」 な ど と 店 を 選 択 し ま す。 大 抵 の 飲 食 店 で は、 商 品 の 写 真を掲載したメニューを用意し、どの店でもどんな時でも、 同じ盛り付けで、同じ味が楽しめます。写真と実物に量 などの違いがある事は最近少なくなってきました。確か に、知らない土地へ行ったときなど安心して食べられます。 お客さまとの契約を見事に果たしているのだろうと思いま 京都・城陽の す。 うすいえんどうの茶碗蒸し しかし、膳では、メニューは毎日ネット配信し、携帯電話 からも見ることが出来ますが、定番メニューがないのですから、 何が食べられるかお店にいくまでわかりません。しかも、メニューは文字だけですから、料理 が運ばれてくるまで分からないといったほうが正しいかもしれません。そのような店に来てい ただくにはどうしたらよいか。そこで私たちが一番重要にしているのが、お客さまとの信頼関 係です。つまり、膳にいけば、満足できる。そう思って下さるお客さまをひとりでも多く増や していく。それが、私たちの積み重ねです。 先日の日曜日のランチに、年配のご夫婦が十数組も来店していただきました。接待でなく、 ご自分のお金で伴侶の方と食す時間を膳でと選択して頂いたのです。 これは私たちのやって来たことが間違いではないと確信が出来たと共に、非常に嬉しく思え た日でした。
33
第七章 家庭でもしていただきたいこと 和食・日本食というのは、特に 自然の味を楽しむ、季節を喜んで味 わっていくもので、そこに素材その ものの味を引き立たせるような創意 工夫、技術によって調理されている ものが日本料理です。どちらにして もそれらを失うとただの喰い物に なってしまいます。お店では納豆も、 『まぜまぜ納豆』というメニュー で、食感のある漬物を細かく刻んで、 納豆と混ぜ、味付けをして、片口椀 に移し芥子を添えます。そのままプ ラスチック容器では出しません。家庭でも同じではないでしょうか。コンビニ弁当やスーパー の刺身を皿も出さずにそのまま食卓に並べてはいませんか。子供がコンビニの前で車座になっ て地べたに座って、食べてはいませんか。家族と食事をしていますか。テレビを見ながら食事 をしていませんか。自分でも耳の痛い事ばかりです。 ◎お店で仕入れている素材は、判る範囲で極力毎日紹介しています。 電彩写誌 http://shinshu.fm/MHz/11.15/ ◎作った料理もレシピ入りで紹介しています。 膳の料理日誌 http://d.hatena.ne.jp/zenyoshi/ ◎使っている調味料も紹介しています。 膳の調味料 http://blog.goo.ne.jp/zenyoshi_001/ 上記に今やっている事全てを書き込んでいこうと思っていま すので、少しでも興味を持って頂いた方は、ぜひ一度御覧くだ さい。レシピも調味料も載せてあります。お取り寄せもできます。 レシピはあくまでも目安ですのでいろいろ挑戦してみてくださ い。ぜひ料理をしてください。料理をするという事は手も使い ますが、頭も使います。味覚も発達させます。人間しか料理を しません。料理は人間だけができる人間らしい作業です。これをやめてしまうと人間をやめた のと同じくらいな重みがあります。上手、下手を抜きにして自分の口にあったものを作って食 べるということは必要な事です。 せっかくこんないい国に生まれ育ったのですからもっと楽しまなくては損ではないでしょう か。喰い物ではなく食事を楽しむことができれば一日に三回も楽しい時間が持てるのです。料 理も作ってみましょう。特に子供たちはパックに入った切り身の魚しか知らないのでは悲しす ぎます。ハンバーガーやラーメンや回転寿しは、どこの店がおいしいという会話しかできない のでは情けないと思います。もう一度家庭の味を伝承する努力が必要です。たまには贅沢して 本物の調味料も使ってみましょう。さもないと入手困難どころかほんとに無くなってしまいま す。みりん風味のみりん、流動発酵で作られたパック入り料理酒、出汁入り味噌、カツオ風味
34
のだしを全て否定してしまうわけにはいきませんが、素材 の鮮度や料理の仕方によって使い分ける。そのような偏る ことのないバランス感覚が、これからの時代とても重要な 要素である様な気が致します。 誤解していただきたくないのは、すべて昔のものが良 かったという様な懐古主義的なことではなく、本質を失 わずに今現在を生きている日本人がこれから先の文化を 創っていかなければならないということです。これから暫 くの間いろいろなものが崩壊してゆく世の中が続くでしょう。医療制度も年金も、基本的な人 間関係も、古い価値観は一斉に崩壊してゆきます。崩壊 後に新しいビジョンのもとで新たに構築していかなけれ ばなりません。時代時代に適応してゆくことが文化を創 り伝統を守るということにつながります。時代の流れを 無視して、頑なに同じやり方を守るのが伝統だと思って いると方向を見失います。時代に取り残された伝統は滅 びます。日本家屋や和装などは残しておきたい、次の世 代に繋いでゆきたい伝統文化ですが、もう少し時代に適 応した形がとれないものでしょうか。 藤原正彦著「国家の品格」のなかで、大正末期から 昭和の初めにかけて駐日フランス大使を務めた詩人ポー ル・クローデルは、大東亜戦争の帰趨のはっきりした昭 和十八年に、パリでこう言いました。 「日本人は貧しい。 しかし高貴だ。世界でただ一つ、どうしても生き残って 欲しい民族をあげるとしたら、それは日本人だ」 日本人一人一人が美しい情緒と形を身につけ、品格ある国家を保つことは、日本人として生 まれた真の意味であり、人類への責務と思うのです。と書いています。 食についていろいろ文献を読み、考えてくると、文明が進みすぎ考えることをしなくなると、 みすぼらしい文化になっていってしまうということ、そんな国だけにはしたくないと思います。 参考文献 敬称略 日本料理千夜一夜物語 阿部孤柳 人間はこんなものを食べてきた 小泉武夫 外交も食にあり 北村 汎 国家の品格 藤原 正彦
35
36
37
38
39
40
小さじ 1 塩
少々 淡口
濃口
甘塩 醤 油
だし醤油
うどんつゆ みりん
小さじ 1 酒
0.5
吸い地
200 cc 水
25 cc 0.5
炊き込み御飯
おひたし地B
おひたし地A
おでん 冷製ごまだれ うどんつゆ 温製うどんつゆ
冷製うどんつゆ
天つゆ(本式)
天つゆ
基本出汁
出汁
1 1 1 1
1 1.5 1 1
1 1
小さじ 1/2 1 0.5 1 1
1000 cc 5 8 20 7 7 7 6 8 8
砂糖
1合
ほうれん草等葉物
和泉屋の練り胡麻を合わせる
本式
追いがつお さっぱり形
合わせてひと煮立ちさせる
41
野菜を煮る
筍・里芋を煮 る
大根を煮る
牛蒡を煮る
茄子を煮るB
茄子を煮るA
2
2 水
8 出汁
塩
淡口
濃口
甘塩 醤 油
だし醤油
うどんつゆ みりん
酒
砂糖
煮干だし小
煮干だし小
煮干だし小
ルリ煮 煮干だし小
煮干だし小
42
1 2 1 1 1
1 1 1
0.5 1
8 15 10 〜 12 8
烏賊・貝
魚卵
白魚の卵とじ
淡口
濃口
甘塩 醤 油
だし醤油
0.5 うどんつゆ
みりん
酒
2
穴子
塩
2
揚げおろし煮
水
2
3
2
2
3 1
あっさり煮 (あいなめ) いわし
かれい
キンキ・めば る
出汁
1 1 1 1
5
0.5 1 1
1 1 1
1 1 1 1 1
2 4 3 4 2 4
0.5 1
6 10
5 4 6 2
魚を煮る
砂糖
0.5
湯通しした大根の粗み じん切りを加える
梅干を加えて煮る
ごぼう、椎茸、ねぎ
6 水 ( 5+酒1)ごぼ う、椎茸、ねぎを加え て煮る
43
塩
淡口
濃口
甘塩 醤 油
だし醤油
うどんつゆ みりん
酒
0.5
砂糖
始めに出汁 と 砂糖大1で煮詰める
鴨の治部煮など
150 cc
厚揚げ
2 水
1
生麩・生湯葉
鶏肉の煮物
雑煮碗
出汁
44
2
2
1 2
1 1
1 1
0.5
0.5 1
4 9〜 10 8 4 30
お揚げ煮 (きつね)
その他
1
1
出汁
淡口
濃口
甘塩 醤 油
2 だし醤油
1
きんぴら
青もののつけ 地
煮びたし
ひたし地
べっこうあん
銀あん
香り焼きのた れ
1 塩
13
うどんつゆ 酢
3
0.5 みりん
酒
1
13
小1
0.5
0.5
小 1/2
1
2 1
0.5 1
1 1 1
1対1対1の つ け 地 照り焼きのた れ
小 1/4
7 8 200cc 3
当座煮 あん 魚たれ
砂糖
1.5
ひと煮立ちさせ、追い 鰹
ひと煮立ちさせ、追い 鰹
追い鰹して漉した後、 かた
同量の水で溶いた片栗 粉小1
木の芽、大葉、ゆずな どを刻んで混ぜる
ひと煮立ち
45
合わせ酢
黄身酢
マリネ(白身 魚 )
甘酢(みょう が )
南蛮酢
1 淡口
濃口
甘塩 醤 油
だし醤油
うどんつゆ 酢
みりん
酒
みょうがの甘酢
卵黄1 湯煎にかけな がらよく混ぜ、固まっ てきたら冷やす
ごま油1
砂糖
全部合わせてひと煮立 ちさせ、追い鰹をして 冷ます
全部合わせてひと煮立 ちさせ、追い鰹をして 冷ます
昆布だし小1(米一升)
香酢(こうず)昆布だ し小1(米一升)
すりごま4
大4
大4
0.5
2
100 g 100g
ごま酢
黒酢寿司酢
塩
1
1 2
寿司酢
土佐酢
三杯酢
二杯酢
加減酢
出汁
46
大3 1
25cc 150cc 400cc 3 2 180cc ( 黒酢) 3
180cc 3 3 1
3 1 2
小2 25g 30 g
200cc 7 3 7
くるみ、アーモンド、カシューナッツ、オイルたまねぎ、パセリ。 グレープシードオイル、クレージーソルト、だし醤油、塩、胡椒
うどんつゆ
1
少々
少々
180 cc
1 みりん
1080 cc 酢
酒
カルパッチョのソース
100
だし醤油
砂糖
練りごま ひと煮立ち させ、追い鰹。冷まし てごまをまぜる。
かつおぶし g 昆布 ㎝
たまり ㏄ 、梅肉 g ひと煮立ちさせて片栗 粉
きゅうりのおろしたも のに合わせる。
70
豆腐 g ・砂糖大1・淡口小1 ごまの白和えの場合はすりごま g を足す。
甘塩
少々
白和え
濃口
橙酢
昆布だし7:葛1:練りごま1〜
少々 淡口
720 cc 醤 油
200 cc
1 1
ごまだれ
塩
12
ごまだれ酢
ポン酢
みどり酢
かに酢
梅肉だれ
出汁
30
少々
1.5
15
少々
1 35cc 15cc
1.5
150
200 cc
4〜5 4〜5 50cc 200 cc
ごま豆腐
合わせ酢
47
肉団子
和風ステーキのたれ
うなぎのたれ
鍬焼きのたれ
焼鳥のたれ
1
天つゆ
1
8
鶏スー プ5
6
塩
6
天丼つゆ
深川丼
角煮丼
親子丼
出汁
10
淡口 濃口
1
5
(100cc)
1
0.5
2
1
甘塩
醤 油
たまり
120cc 200cc 200cc
50cc
たまり たまり たまり たまり
だし醤油
醤油 80cc
醤油 1
醤油 20cc
100cc 200cc 200cc
20cc
100cc 200cc 200cc
30cc
うどんつゆ
醤油 醤油 150cc 200cc
酢 みりん
2
5
(100cc)
4
3
酒 砂糖
0.25
1
(20 g)
1.5
0.5
大1
1/4
1/2
1/2
ケチャップ1、とうち 醤
200 130
おろしたまねぎ 個、 おろしにんにく小 個、りんご 個
280
氷砂糖 g 、うなぎの 中骨 g
氷砂糖 g
ざらめ g 、水飴 g 、 ビール ㏄
八角2個
50120
50
48
4
0.2
少々
40 g
16 g
120cc
少々
70cc
300cc
塩 淡口 濃口
1000 cc
500 cc
55cc
海老の艶煮
25 g
6
はりはり豚しゃぶ
4000 cc
1600 cc
いくらの醤油漬け
4000 cc
2000 cc
佃煮
野菜鍋
寄せ鍋
水炊き
鴨すき
すき焼き 割り下
鮟鱇鍋
出汁
水 3000 cc
3000 cc
冷製中華そば
鍋
15
1
1
4
1
大1
甘塩
醤 油
たまり 醤油大 1
だし醤油
鮭節 6
うどんつゆ 酢
1
みりん
80cc
1000 cc
酒
300 cc
700 cc
少々
240 cc
90 cc
1
600 cc
砂糖
250 g
1
2
3
三温糖 2 水飴 1.5
4
80 cc
200cc
20g しょうが汁大1
ごま油少々
昆布 g
昆布
出汁1対割り下1で使 用
あんこう ㎏ 目安
3.5
20
2
49
カツ煮のたれ
生姜焼きのたれ
出汁
10
濃口醤油
6
濃口醤油
3
みりん
3
砂糖
2
砂糖
3
酒
6
おろししょうが
1
豚ネギにんにくのたれ 甘塩醤油
1(360cc)
みりん
1(360cc)
ケチャップ
米酢
1(360cc)
玉ねぎ(炒める)
カー君のラー油
0.5(180cc)
ケチャップ
(唐辛子・山椒)
パセリ
ニンニク
大さじ 5
リーペリンソース
長ねぎ
2本
タバスコ
砂糖
大さじ 3
クレージーソルト 胡椒
コチジャンたれ コチジャン
60cc
牛丼 No2
2 人前
酒
60cc
薄切り牛肉
200g
甘塩醤油
60cc
砂糖
大さじ 5
タマネギ
水飴
150g
薄切り牛肉
100g ( だしを作る用 )
醤油
50ml
鶏の唐揚げ
( 安物のしゃしゃぶ肉 ) 半個
甘めの白ワイン
180ml
甘塩醤油
大さじ 2
カラメル
大さじ 1 杯
酢
小さじ 1
砂糖
大さじ 1 杯
砂糖
小さじ 1
赤ワイン
大さじ 1 杯
酒
大さじ 2
日本酒
大さじ 1 杯
ニンニク
少々
塩
少々 ( 小さじ 1 杯 ?)
上記を混ぜ合わせよくもむ
コショウ
少々 ( 小さじ 1 杯 ?)
卵に潜らせ片栗粉をつけ揚げる
ショウガ
少々 ( 小さじ 1 杯 ?)
にんにく
半個
出汁の素
少々 ( 粉を小さじ 1 杯 )
タルタルソース 玉ねぎ
200g(塩揉み)
マヨネーズ
300g
一夜干し
つぼ漬け
50g
いしる
2
ピクルス
2本
よしる
2
レモン汁
大さじ 2
ナンプラー
1
ゆで卵
3個
塩
少々
クリームコロッケ
胡椒
少々
ベシャメルソース
牛丼 No1
バター
100g
薄力粉
100g
甘塩醤油
100cc
牛乳
500g
みりん
100cc
卵黄
1個
白ワイン
300cc
生クリーム
30cc
砂糖
大さじ 4
えび、ほたて、たまねぎ マッシュルーム
辛子なす(丸なす 10 個) 米酢
100cc
砂糖
400g
和辛子
50g
50
定食用サラダドレッシング
オイル漬け玉ねぎの作り方
(大)10 個
オイル漬け玉ねぎ
500g
玉ねぎすりおろし
甘塩醤油
500cc
サラダ油
米酢
600cc
混ぜ合わせて、一日以上冷蔵庫で
ごま油
50cc
寝かす。
上白糖
150g
椎茸だし
大さじ 3
チヂミソース
鰹だし
大さじ 1
濃口醤油
大さじ 5
米酢
大さじ 3
砂糖
小さじ 2
オレンジとにんじんのバジル風味サラダ
800cc
オレンジ
2個
白ねぎ(みじん)
大さじ 4
にんじん
1本
ニンニク
小さじ 2
豆板醤
少々
バジルの葉
4枚
白ごま
少々
レモン汁
大さじ 3
蜂蜜
大さじ 2
グレープシード
大さじ 3
塩
少々
胡椒
少々
ロースカツ
中濃ソース 4 ウスター 2
カットトマト 4 水飴 150g
ソース
180cc レードル
70cc レードル
ヒレカツ
ウスターソース 1.8l
リーペリンソース 150g
ソース
スーパーブレンドウスター 2 本
だし醤油 170cc 2 杯
ソース串カツ丼
中濃ソース + ごまソース
カットトマト 水飴 玉葱
クリーミーソース 出汁醤油+マヨネーズ ゴマだれソース
和泉屋練りゴマペースト、出汁醤油、出汁
わさびヨーグルトソース
無糖プレーン 100g、わさび 30g、塩、胡椒
わさびマヨネーズ
マヨネーズ 30g、わさび 10g
シーザーサラダドレッシング ゴルゴンゾーラ 100g、カマンベール 100g、とろけるチーズ 50g、 アンチョビ 15g、生クリーム 100g、ニンニク少々 豆腐ソース
絹ごし豆腐 1 丁、サラダ油 140cc、酢 30cc、塩 10g
スパイシーソース 青葱ソース
サラダ油 60cc、塩 5g、ワケギ 1 束
白葱ソース
ピーナッツ油 120cc、塩 8g、長ネギみじん切り 2 本
香菜草ソース にんにくソース
サラダ油 200cc, 塩 3g、長ネギみじん切り 1 本、香草みじん切り 30g、しょうがみじん切り 10g ニンニク醤油(甘塩醤油に丸ごとニンニクを漬け込んだもの)30cc、ラー油 20cc
バーニャカウダーソース
グレープシードオイル 500cc、ニンニク(ボイル)100g、アンチョビ 36g
醤油ソース ガーリック醤油ソース
サラダ油 100cc、甘塩醤油 50cc、ニンニクみじん切り 10g、レモン汁 1/2
ステーキ丼のたれ
甘塩醤油 100cc、酒大さじ 1、砂糖小さじ 1、みりん小さじ 1、ニンニク小さじ 1、タバスコ少々
バルサミコヴィネガーソース バルサミコ酢 50cc、甘塩醤油 10cc バルサミコソース 梅ドレッシング
バルサミコ酢大さじ 3、オリーブオイル大さじ 2、たまり醤油小さじ 1/2、エシャロットみじん 切り 梅肉 40g、出汁 50cc、米酢大さじ 2、薄口醤油小さじ 2、みりん大さじ 1、グレープシード大 さじ 4
51
茶碗蒸の具
味噌汁
8L
4L
京にんじん
かつおだし
大さじ 6
大さじ 3
銀杏
煮干しだし
大さじ 6
大さじ 2
海老芋
八丁味噌
80g
30g
しめじ
麹味噌新潟丸久
400g
200g
ウズラの卵
麹味噌原商店
450g
250g
竹の子
麹味噌を入れる前に八丁味噌を溶く
わかめ 百合根
フローズンヨーグルト
海老
ブルガリアヨーグルト無糖
1 パック
ほたて
植物性生クリーム
200ml
ゆず
果糖
200g
三杯酢ジュレがけ
西京漬け用西京味噌
出汁
800cc
西京味噌
300g
米酢
100cc
酒
100cc
みりん
100cc
濃口醤油
100cc
西京味噌幽庵漬け
アガー
25g
西京味噌
300g
酒 1: みりん 1:濃口 1
100cc
三杯酢 水
800cc
みりん
200cc
とろろ汁
米酢
400cc
丹波やまのいも
1kg
濃口醤油
300
出汁
5 杯(180cc)
砂糖
50cc
だし醤油
1 杯(70cc)
花かつお
50g
軽く一煮立ちして 2 〜3日おく
ポン酢 酒(煮切り)
1440cc
だいだい酢
720cc
濃口醤油
720cc
花かつお
50g
昆布
30g
軽く一煮立ちして 2 〜3日おく
52
合わせ醤油 土佐醤油
濃口醤油 2l に、みりん 100cc、酒 200cc を入れ、鰹節 80g、昆布 20g を加え火にかけ、一割ほど煮詰めて、 こす。
レモン醤油
レモン醤油は、土佐醤油にレモンのしぼり汁を約一割ほど加える。用途によって、出汁で少々割ったり、 土佐醤油の代わりに薄口醤油を使用する。
生姜醤油
土佐醤油に約一割の生姜の絞り汁を入れますが、素焼きの魚などに添える場合は、これに 4 割ほどの出汁 を加えて薄める。
このわた醤油
生のこのわたを酒で洗い、適当に刃たたきした後、 このわた 2、 濃口醤油 8 の割合であわせますが。好みによっ て、卵黄を加えてもよし。
木の芽醤油
木の芽を刃たたきにして、醤油に浮かせますが、昆布〆した白身の魚の小猪口に使用する場合は、薄口醤 油に煮切り酒を割、この中に木の芽の刃たたきしたものを加えますといっそ風味が増す。
酒盗醤油
酒盗をよく刃たたきし、煮切り酒と濃口醤油を加えて用います。
黄身醤油
黄身を器に取り、よく混ぜた後、徐々に薄口醤油を加えて延ばし、用途によって、煮切り酒または出汁を少々 加える。
雲丹醤油
生雲丹を裏ごししてよくすり、少量の黄身を加え、薄口醤油にて延ばしますが、用途によって、煮切り酒、 出汁などで薄めて使用します。
南部醤油
みがきゴマのいったものをよくすりつぶし、この中へ濃口醤油を徐々に入れてすりあわせて用います。好 みによって黄身を加えるのもよく、用途によって、煮切り酒、出汁などで薄めて使用します。
梅肉醤油
梅肉 1 に煮切り酒 1 濃口、又は薄口醤油をよく混ぜ合わせ裏ごしして用います。
味 噌 種類
米 味 噌
麦 味 噌
豆 味 噌
材料
米麹、大豆、塩
麦麹、大豆、塩
大豆の麹、大豆、塩
代表的な味噌
西京味噌(白味噌)、江戸味噌、信 いわゆる田舎味噌。色が黒くて辛 岡崎八丁味噌(赤味噌)たまり味 州味噌、仙台味噌 い。九州中心 噌
代表的な料理
西京漬け(西京味噌)、ワケギのぬ さつま汁、タイのアラ汁 た(信州味噌)
田楽(八丁味噌
合わせ味噌 玉味噌
白味噌 60g、卵黄 1 個、酒大さじ 2、みりん大さじ 2、砂糖小さじ 1、弱火にかけ、練り上げる。
ピーナツ味噌
ピーナツを油で炒めます。 ピーナツに油が回ったら、 味噌と砂糖を加えて 全体に絡めます。 さましたらでき あがりです。
木の芽味噌
白味噌 100g に、酒大さじ 6、みりん大さじ 2、砂糖小さじ 2、卵黄 1 個、弱火で 10 分練る。木の芽多め を加える。
ゆず味噌
ゆずの皮をすりおろしす。(1 個分)小鍋に白味噌 90g、 酒大さじ 3、みりん大さじ 3、砂糖小さじ 2、卵黄 1 個 、 木べらで混ぜながら中火で練ります 。
練り味噌
白味噌ノ100g 砂糖ノ大1〜1.5 みりんノ大1 だしノ大1〔全て合わせて弱火で煮る〕ふろふき大根、 味噌おでんなど
胡麻味噌
練り味噌 白胡麻ノ大1.5〜2野菜の和え物など
田楽味噌
八丁味噌 60g、卵黄 1 個、酒大さじ 4、みりん大さじ 2、砂糖 20g 弱火でよく練る。
鶏味噌
白味噌 60g、卵黄 1 個、酒大さじ 6、みりん大さじ 3、砂糖小さじ 2、湯引き鶏ひき肉 90g 弱火にかけ、 練り上げる。
リンゴ味噌
おろしリンゴ 100g、白味噌 150g、八丁味噌 50g、酒 50cc、卵黄 2 個、砂糖大さじ 2 弱火にかけ練り上げる。
コチジャン酢味噌 コチジャン 25g、米味噌(甘口)15g、白味噌 70g、砂糖小さじ 1、ポン酢大さじ 2、酒大さじ 1、レモン 汁大さじ 1
53
蓼酢
蓼の葉をよくあて、ご飯を加えてさらによくあて、出汁 600cc、塩 20 g、酢 400cc、みりん 15cc を合わ せて漉す
白酢
水切り豆腐 800 g、当りごま 500 gをよくあて、塩 10 g、酢 55cc、砂糖 150 gを合わせて裏ごしする。
辛子酢
柔らかいおかゆを炊き、裏ごしして、この汁に辛子を溶き、甘味の少ない合わせ酢で伸ばす。 (たこ、いか、 えび、なまこ、セロリ、うど 、 アスパラに合う
松前酢
酢を煮立てて、三割ほど煮詰めて,火をごく弱火にして、昆布を加え、とろみが出るまで焚き昆布を引き上げ、 煮切り酒、醤油を加える。あわび、いか、なまこ
万年酢
酢を煮立てた後、ごく弱火にして、かつおを加え、長時間焚き、半分ほどに詰めたあと好みの調味料で合 わせ酢にする。
柿酢
柿の硬いものは、皮をむいておろし、柔らかいものは裏ごしして、二杯酢で伸ばし、おろしわさび、もみ のりなどを加えても良。
山葵酢
おろし山葵または、らん引きわさびを好みの酢に加える。らん引きわさびは、わさびの葉などを細かく刻み、 徳利などに詰め、熱湯をそそいで、詮をして、冷ましてから、2 〜 3 日冷蔵庫に置いたものの汁を使用。
林檎酢
灰汁の少ないりんごを選び、皮をむいて種をとり、塩少々を加えた明礬水に三十分くらい漬け、水気をよ く切り、りんごと同量の酢の中へおろし金でおろし込み、淡口醤油を加えて、出汁で好みの濃度に伸ばす。 小柱、海老、はぜ、キスの糸引きの和え物
蜜柑酢
橘酢、温州酢ともよび、みかんなどの皮を剥き、実をほぐし、これに色のよいにんじんをすりおろし、熱 湯をかけて絞り、以上を土佐酢、三杯酢で和える。
にんにく酢
酢を四割ほど煮詰めて冷まし、その中へにんにくの皮をむきおろしこむ。これを器に入れ密封して半年ほ ど寝かしてから好みの調味料を加えて使用する。
うに酢
塩うにのあく抜きをしたもの七、半熟の卵黄三をよく練り合わせ、これに甘酢を少々加え好みの味にする。
海鼠腸酢
このわたは適当に刃たたきし、土佐酢または甘酢で伸ばして使用。
酒盗酢
酒盗を適当に刃たたきし、土佐酢または甘酢で伸ばして使用。
紅葉酢
京にんじんの皮をむいておろし、ざるの上に布を広げ、その上におろしにんじんを一面に広げ、上より布 をかぶせて熱湯を注ぎ、後、水をかけて冷まし、水気をよく絞り、これにおかゆの裏ごししたものを合わ せて合わせ酢で伸ばす。
みぞれ酢
大根又は蕪をすりおろし、水でよく洗って水気をよく絞り、合わせ酢で伸ばします。蕪は熱湯をかけた後、 水で洗う。
ごま酢
みがきゴマの煎ったものをよくすりつぶして、少量の白味噌を加え、三杯酢と甘酢でやや甘味の味にする。
吉野酢
土佐酢又は三杯酢などに葛を引きますが、煮立ったところにいれず、いったん火から下ろしてから、適量 の溶き葛を加え、再び火にかけてよく練り透明にし、あまり固めない。
3g
4g
5g
6g
3g
レモン
片栗粉
5.5 g
卵
ケチャップ
5g
マヨネーズ
5g
塩
ソース
5g
小麦粉
牛乳海水
4g
醤油
水酢酒
54
油
食品名 小さじ 5cc
約 50 g 約 100g
1合
4合
5.435 合
1升
1寸
0.180 l
0.720 l
1l
1.8 l
3.03 cm