collabo*006
GOTO Eichi issue 2003.12.01
take free
手のひらの温かさ。
純粋で濃密な時間を経て。
ゴトウさんの作品を見た人は、かなりの確率で、作者を 女性だと思いこむ傾向がある。ユニークでセンスある服装 のデザインや、繊細な肌の着彩、そして穏やかな表情を見 れば、無理もない。本人には申し訳ないけど「え? この 人が…」と呆気にとられる人も少なくない(今回、撮影さ せていただいたcholonの石原さんたちのリアクションもそ んな感じだった) 。 しかし、外見とのギャップとは裏腹に、彼の柔らかな話 し方や言葉の中に見える高いビジョン、そして貪欲な制作 意欲は、作品が見せる表情とピタリと重なる。穏やかな表 情の奥、眼の奥に見える明確な意志(のようなもの)は、 彼のそれをしっかり受け継いでいる。 スケッチを起こし、手のひらで温めながら作るその作風 は、純粋にアナログだ。コピペもアンドゥもできないから、 きっと効率もよくないだろう。でも、そんな濃密な制作過 程があるからこそ、作品に気持ちがこもり、彼のエッセン スが染みこんでいくのだと思う。
純粋で濃密な時間を経て。
ゴトウさんの作品を見た人は、かなりの確率で、作者を 女性だと思いこむ傾向がある。ユニークでセンスある服装 のデザインや、繊細な肌の着彩、そして穏やかな表情を見 れば、無理もない。本人には申し訳ないけど「え? この 人が…」と呆気にとられる人も少なくない(今回、撮影さ せていただいたcholonの石原さんたちのリアクションもそ んな感じだった) 。 しかし、外見とのギャップとは裏腹に、彼の柔らかな話 し方や言葉の中に見える高いビジョン、そして貪欲な制作 意欲は、作品が見せる表情とピタリと重なる。穏やかな表 情の奥、眼の奥に見える明確な意志(のようなもの)は、 彼のそれをしっかり受け継いでいる。 スケッチを起こし、手のひらで温めながら作るその作風 は、純粋にアナログだ。コピペもアンドゥもできないから、 きっと効率もよくないだろう。でも、そんな濃密な制作過 程があるからこそ、作品に気持ちがこもり、彼のエッセン スが染みこんでいくのだと思う。
ゴトウさんと知り合ってから、かれこれ7年ほどになる。 その間音楽について、あれこれメールのやりとりをしていた。 偶然、同じライブに行っていたこともあって、好きなアーテ ィストやバンドなどのよもやま話を、共感しながら読んだり 書いたりして。ゴトウさんオススメのCDを買いに行ったこ ともある。たまに音楽を離れて、最近見た映画や、プレステ やサッカーの話をしたり、シゴトの話をしてみたり。 作品を初めて見せていただいたのは、2年前の冬。12月の ある晴れた日に、知立のカフェ・ペタルへ個展を見に行った。
音楽が流れている。
温かなカフェの雰囲気と、クリスマスをモチーフとした作品 の数々がとても似合っていて、わたしはその世界観にすっか り魅了されてしまった。 ゴトウさんの作品はマチエールが美しい。すべすべした肌。 丁寧に描かれた髪。華奢なボディにフィットした洋服のしわ。 あくまでもイラストレーションとして、バランス良く作られ たかたち。よくある「今にも動き出しそうな人形」ではない。 風景にとけ込んだ作品を見ていると、まるで映画のワンシー ンみたいに音楽が流れている。それはわたしとゴトウさんと の関係性を超えて、彼女たち一人ひとりのスタイルを感じる から。くっきりと聞こえてくるのだ。
ゴトウさんと知り合ってから、かれこれ7年ほどになる。 その間音楽について、あれこれメールのやりとりをしていた。 偶然、同じライブに行っていたこともあって、好きなアーテ ィストやバンドなどのよもやま話を、共感しながら読んだり 書いたりして。ゴトウさんオススメのCDを買いに行ったこ ともある。たまに音楽を離れて、最近見た映画や、プレステ やサッカーの話をしたり、シゴトの話をしてみたり。 作品を初めて見せていただいたのは、2年前の冬。12月の ある晴れた日に、知立のカフェ・ペタルへ個展を見に行った。
音楽が流れている。
温かなカフェの雰囲気と、クリスマスをモチーフとした作品 の数々がとても似合っていて、わたしはその世界観にすっか り魅了されてしまった。 ゴトウさんの作品はマチエールが美しい。すべすべした肌。 丁寧に描かれた髪。華奢なボディにフィットした洋服のしわ。 あくまでもイラストレーションとして、バランス良く作られ たかたち。よくある「今にも動き出しそうな人形」ではない。 風景にとけ込んだ作品を見ていると、まるで映画のワンシー ンみたいに音楽が流れている。それはわたしとゴトウさんと の関係性を超えて、彼女たち一人ひとりのスタイルを感じる から。くっきりと聞こえてくるのだ。
G O T O
E i c h i
I n t e r v i e w .
遅いスタート。
下手だという認識。
――イラストとか、デザインに興味を持った
――今のカタチのイラストをつくるようにな
のは、いつぐらいですか?
って、どれくらいですか?
えーっと、結構、遅いですよ。工業高校を
8年ぐらいです。でも、まだまだ自信はな
卒業して、とある工場に就職。でも1年ぐら
いですね。
いで辞めて、写真製版の会社に転職したとき
――謙遜?
かな。いろんなデザインとか、イラストを間
いえ。マジで…。他のイラストレーターの
近に見て、いいなぁって。そこからお金を貯
作品や、海洋堂のフィギュアを見たりすると
めて、デザイン学校の夜間部に通いました。
凹んだりしますから。それに頭に浮かんだイ
――昼間働いて、夜は学校なんて、しんどいじ
メージを実際のカタチにできているのは、半
ゃないですか。
分ぐらい。カラダの造形がうまくできなかっ
たしかに、しんどいこともあったけど、好き
たり、色づけがうまくできなかったり。最後
なことができるわけだから、ま、いっかって。
までつくったけど、気に入らなくて、壊して
――学生生活は楽しかったですか?
しまうことだってあります。
基本、楽しかった。でも、デザイナーには
――そうなんだ。
向いていないなぁと。センスのいい人って言う
今でも、褒められると逃げ出したくなるん
か、なんでも上手にできる人っているじゃない
です。 「ここ、カワイイですね」なんて言われ
ですか。僕のクラスにもそういう人がいて、自
て、「あー、そこは見ないでください」とか。
分の実力を思い知らされたというか。デザイン
なんでこんなに自信がないのかなって、自分
学校を卒業してから、先生の紹介でデザイン事
でも思うぐらい(笑)。頭の中のイメージを
務所に就職しましたけど、1年でクビになりま
100%表現できる技術があれば、っていつも思
したし…。デザイナーは、向き・不向きがある
うんだけど、なかなか。
んですよ。僕は部屋の片づけもできないし、厳 密でもない。今でも「押入も整理できない」 って妻に呆れられたりするし。
ポピュラリティという翼。 ――今後なんですけど。 アバウトな話ですけど、良いものをつくり
シンプルだけど、大事なこと。 ――でも、諦めないんですよね。 まぁ諦めが悪いというか(笑)。絵を描く こと、絵を仕事にすることへの憧れは、なか なか消えなかったですね。ちょっとやそっと じゃなれないってわかっていたから、焦りも しなかったし。それが逆に良かったのかな。 デザイン学校を卒業するとき、懇意にしても らった先生に「グループ展をやれ。それを 10年続けろ」って言われたんです。そのと きは10年なんて途方もない時間に思えたけ ど、とにかく描き続けて、つくり続けてきた。 シンプルだけど、継続は力なりなんですよ。
たいと思っています。音楽でも映画でも良い ものにふれると、自分もガンバローみたいに なるじゃないですか。そういうポジティブさ を産み出すような作品をつくれたらって。そ の大前提として、ポップ(普遍的)でありたい と思うんです。自分や仲間内だけで喜んでい ちゃダメ。わかる人だけわかればいいなんて ことを言う人もいるけど、それって負けだと 思うんです。人が100人いれば、100人が良い ねって言ってもらえた方が絶対にいい。こど もが見ても、おじいちゃんおばあちゃんが見 ても、 「いいね」って言ってもらえるものがつ くれたらって思います。
そして、ダメだと思ったら、そこで終わり。 続けていくことで、いろいろな人との出会い もあって、作品へのレスポンスをもらって嬉 しくて、辞められなくなっていくんです。
ゴトウエイチ 1970年生まれ。石粉粘土を使った立体イラストレー ションを中心に製作。 http://www5e.biglobe.ne.jp/~Hhp/
G O T O
E i c h i
I n t e r v i e w .
遅いスタート。
下手だという認識。
――イラストとか、デザインに興味を持った
――今のカタチのイラストをつくるようにな
のは、いつぐらいですか?
って、どれくらいですか?
えーっと、結構、遅いですよ。工業高校を
8年ぐらいです。でも、まだまだ自信はな
卒業して、とある工場に就職。でも1年ぐら
いですね。
いで辞めて、写真製版の会社に転職したとき
――謙遜?
かな。いろんなデザインとか、イラストを間
いえ。マジで…。他のイラストレーターの
近に見て、いいなぁって。そこからお金を貯
作品や、海洋堂のフィギュアを見たりすると
めて、デザイン学校の夜間部に通いました。
凹んだりしますから。それに頭に浮かんだイ
――昼間働いて、夜は学校なんて、しんどいじ
メージを実際のカタチにできているのは、半
ゃないですか。
分ぐらい。カラダの造形がうまくできなかっ
たしかに、しんどいこともあったけど、好き
たり、色づけがうまくできなかったり。最後
なことができるわけだから、ま、いっかって。
までつくったけど、気に入らなくて、壊して
――学生生活は楽しかったですか?
しまうことだってあります。
基本、楽しかった。でも、デザイナーには
――そうなんだ。
向いていないなぁと。センスのいい人って言う
今でも、褒められると逃げ出したくなるん
か、なんでも上手にできる人っているじゃない
です。 「ここ、カワイイですね」なんて言われ
ですか。僕のクラスにもそういう人がいて、自
て、「あー、そこは見ないでください」とか。
分の実力を思い知らされたというか。デザイン
なんでこんなに自信がないのかなって、自分
学校を卒業してから、先生の紹介でデザイン事
でも思うぐらい(笑)。頭の中のイメージを
務所に就職しましたけど、1年でクビになりま
100%表現できる技術があれば、っていつも思
したし…。デザイナーは、向き・不向きがある
うんだけど、なかなか。
んですよ。僕は部屋の片づけもできないし、厳 密でもない。今でも「押入も整理できない」 って妻に呆れられたりするし。
ポピュラリティという翼。 ――今後なんですけど。 アバウトな話ですけど、良いものをつくり
シンプルだけど、大事なこと。 ――でも、諦めないんですよね。 まぁ諦めが悪いというか(笑)。絵を描く こと、絵を仕事にすることへの憧れは、なか なか消えなかったですね。ちょっとやそっと じゃなれないってわかっていたから、焦りも しなかったし。それが逆に良かったのかな。 デザイン学校を卒業するとき、懇意にしても らった先生に「グループ展をやれ。それを 10年続けろ」って言われたんです。そのと きは10年なんて途方もない時間に思えたけ ど、とにかく描き続けて、つくり続けてきた。 シンプルだけど、継続は力なりなんですよ。
たいと思っています。音楽でも映画でも良い ものにふれると、自分もガンバローみたいに なるじゃないですか。そういうポジティブさ を産み出すような作品をつくれたらって。そ の大前提として、ポップ(普遍的)でありたい と思うんです。自分や仲間内だけで喜んでい ちゃダメ。わかる人だけわかればいいなんて ことを言う人もいるけど、それって負けだと 思うんです。人が100人いれば、100人が良い ねって言ってもらえた方が絶対にいい。こど もが見ても、おじいちゃんおばあちゃんが見 ても、 「いいね」って言ってもらえるものがつ くれたらって思います。
そして、ダメだと思ったら、そこで終わり。 続けていくことで、いろいろな人との出会い もあって、作品へのレスポンスをもらって嬉 しくて、辞められなくなっていくんです。
ゴトウエイチ 1970年生まれ。石粉粘土を使った立体イラストレー ションを中心に製作。 http://www5e.biglobe.ne.jp/~Hhp/
cholon
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〒464-0819 名古屋市千種区四谷通 1-12 ZAZ 2F 052-789-0018 * Open 11:00-20:00 * Close 3rd tue cholon NAGOYAPARCO 〒460-0008 名古屋市中区栄 3-29-1 PARCO 西館 B1F 052-264-8682 * Open 10:00-21:00
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* 編集後記 今回のcollaboの撮影は、名古屋市千種区のcholonで行いました。ありがとうございました。
collabo*006
GOTO Eichi issue 2003.12.01
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