ほし い 未 来 を つくる 言 葉
VOL 06
はじめ に
もし、世界から言葉がなくなったら…世界はかなり違った場所になっていた かもしれません。 聖書も、コーランも、『吾輩は猫である』も、ヒトラーの演説も、世界人権 宣言も、ヘイトスピーチも、宣戦布告も、愛の告白も、言葉です。言葉には、 たくさんの人をつなげ、生きる希望を与える力も、たくさんの人を分断し、 死に追いやる力もある、と思います。 だからこそ、greenz.jp では言葉を通じて、人生の美しさや希望を共有し、人々 を つな げ た いと 思って活 動してきました。そん な 思い を共 有 する 読 者、 greenz people、greenz エディター、ライター、コアメンバーが力を合わせ てつくったのが、この本なのです。 あなたにとって、言葉を好きになるきっかけになればうれしいです。 green Books あらため、People's Books 編集長 鈴木菜央
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CONTENTS
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はじめ に
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ほしい 未 来 をつくる言 葉
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兼 松 真 紀 さん からのメッセ ージ
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高 野 誠 鮮 さん からのメッセ ージ
42
小 倉 ヒラクさん からのメッセ ージ
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読 者の選んだ言 葉
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「 F O R 座 R E S T 」からのメッセ ージ
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「ウェル 洋 光 台 」からのメッセ ージ
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鈴 木 菜 央 × Y O S H 対 談「グリーンズ の 言 葉 の 可 能 性 」
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ほしい 未来 を つ くる
言 葉
g r e e n z . j p の 過 去 1 0 年 分 の 記 事 の 中 から、 みんな が 選んだ
ほしい 未 来をつくる言 葉 を集 めました。
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01
成 功するまで失 敗し続ければいい 高野誠鮮 さん
Article
成功するまで失敗し続ければいい。ローマ法王 に米を食べさせた男・高野誠鮮さんインタビュー [STORY OF MY DOTS]
ht tp: //greenz.jp/2014/04/28/jousenn _takano/ 選んだ人: 湯谷一生(greenz people) Profile
選んだ理由:
高野誠 鮮(たか の・じょうせん)立 正 大学 客員教 授、日蓮 宗本 證山妙 法 寺第
失 敗を積み重ねていくと自分への勇気になると感じた言 葉。自分を 信じて失
咋市役 所職員を兼務し、限界集落の移住促進や農家の所得向上に取り組む。
来に近 づけると思いました。まだまだ自分 の夢にはほど遠いですが、まずは
はくい
41世住職、石川県羽咋市教育委員会文化財室長。実家の寺を継いで僧侶と羽
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敗を振り返って反省して次へ活 かすことが大 切で、そこから自分 のほしい 未 失 敗こそ自分の強みだと思えるようにしたいです。
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No_
03
わけもなく惹かれる人の近くに行って、 一 秒でも長い時間を その傍らで過ごすといいと思います。 西村佳哲 さん
Article
悩 んだら、 わ け も なく惹 か れ る 人 の 近くに 行ってみる。西村佳哲さんが
自分の仕事
つくるまで [STORY OF MY DOTS]
を
ht tp: //greenz.jp/2014/04/03/nishimura _yoshiaki/ 選んだ人: 小野裕之(greenz.jp プロデューサー) Profile
選んだ理由:
西 村佳 哲(にしむら・よしあき)リビングワールド代 表、プランニング・ディ
世界 は 課 題よりもたくさん の 解 決 策にあふ れている 。 ただ 、 それを自分 や 、
京都工芸 繊 維 大学 非常勤講 師。
稚 拙 な言 い方 だけれど 、 同じ 場 所 にいる 、 体 験 を共 有 するのが 、 良い 選 択
レクター、働き方研 究家。つくる・書く・教える、三種 類の仕事。多摩美術大学、
あるいは同じ社 会に属するみんなで 選 びとれるかが問 題になる。そのとき、 をする一 番 の 近 道だと思う。そんなことに悩んで いたとき、良いキッカケを いただきました。
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No_
04
自分は今日お昼に何を食べたいのか? そういうささいな事でも自問自答してみる。 そして実行する。 どんな状況でも「実感する」ってことと 「今なにをしたいのか?」を自分で見つめること。 そこから始めてみたら良いのかな、 って思います。 紀里谷和明 さん
Article
途中で諦めたとしても、あなたの価 値は何一つ として変わらない。紀 里谷和明さんに聞く、自 分を生きるということ
ht tp: //greenz.jp/2015/11/13/kiriya _ kazuaki/ 選んだ人: 水野淳美(greenz ジュニアライター)
Profile
選んだ理由:
紀 里谷和明(きりや・かずあき)映画監 督。15歳の時に単身渡 米し、20 代で
カ メ ラ マ ンと し て 活 躍 。 P V 監 督 を 経 て 独 学 で 映 画 監 督 の 道 へ 進 み 、
『C A SSHERN』『GOEMON』などの 作品を手がける。
今まで 、 自分 の 好 きなこと・ やりたいことを やってきたつもりでした が 、 最
近あることがきっかけで、実 際 は、自分自身をどこかで、ずっとごまかし続
けてきたので はないかと気付 かされました。手 探りで 進 んで いく中で 迷った 時、紀 里谷さん のこの問いかけのように、いつでもゼロの自分に戻れる言 葉 を心に持っておきたい、そう思います。
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No_
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ジャンプをするときには衝動が必要なので、 ちょっと昔の自分が考えたことよりも、 今感じていることを大切にしています。 西村佳哲 さん
Article
悩 んだら、 わ け も なく惹 か れ る 人 の 近くに 行ってみる。西村佳哲さんが
自分の仕事
つくるまで [STORY OF MY DOTS]
を
ht tp: //greenz.jp/2014/04/03/nishimura _yoshiaki/ 選んだ人: 菊野陽子(greenz people) Profile
選んだ理由:
西 村佳 哲(にしむら・よしあき)リビングワールド代 表、プランニング・ディ
私はこれまで、人 生で ジャンプ で きる人は、リスクを負う勇気を持った、自
京都工芸 繊 維 大学 非常勤講 師。
人 生のジャンプに必 要なのは「衝動」であり、そのために「今感じていること」
レクター、働き方研 究家。つくる・書く・教える、三種 類の仕事。多摩美術大学、
分を 信じられる 特別な人 だと思っていました。しかしこの言 葉を読 んで、
が大 切だと知り、勇気をもらいました。これは特別な人じゃなくても、今すぐ、 誰でもできること。ズキッときました。
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No_
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今 後はサバイバルする、 生き延びるっていうことが 僕たちの人生のテーマに なっていきます。
Article
キーワードは
豪族 2.0 ! これからは一旗あげ
るために地方へ行く。発酵デザイナー・小倉ヒラ 小倉ヒラクさん
クさんが考える、今とこれからの日本のカタチ
ht tp://greenz.jp/2015/08/06/ogurahiraku _gozoku2- 0/ 選んだ人: 平川友紀(greenz エディター/シニアライター)
Profile
選んだ理由:
小倉ヒラク(おぐら・ひらく)目に見えない発 酵 菌の 働きをデザインを通して
グッド ニ ュース だ け で メディア が 成 り 立 つ 、 そ れ を 証 明 して み せ た の が
2 014 年に肩書きを 普 通のデザイナーから発 酵デザイナーに変 更 。東 京 農 業
ンズの世界と現 実世界とのギャップに、もやもやすることが正直ありました。
見えるようにする、日本で唯一の 発酵デザイナー 。菌が好きになりすぎて、 大学・醸 造学科の研究生でもある。
gre enz .jpだと思っています。でも最 近の日本は不安なことだらけで、グリー そんなときに聞いたのがこの言 葉。悠 長なことは言っていられない時 代 なの
だと、納得して理 解した途 端、未 来への絶 望がすーっと消えていったのです。
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言 葉 の 主 か ら の メッセ ー ジ
2015 年、僕は生まれ故郷の東京から、山梨の山の上に引っ越しました。廃屋を イチから直して住処をつくり、菌を育てるという生活をするようになると、まさ に「サバイブするのは楽しい」ということを実感します。ちなみに 1 年かけてリ フォームが終わったので、来年は家の設備をデザインし直したいと思っていま す。目指すは「3 ヶ月、籠城戦できる家」!(←ほんとに豪族っぽいな) 記事の反響で嬉しかったのが、日本各地の醸造家(発酵に関わる生産者)から
小倉ヒラクさん
の「ワタシも豪族 2.0 になります!」というメッセージ。発酵やものづくりに携 わる人たちが、これからの日本の宝物になると思っています。みんな、頑張ってね。
今後 はサバイバ ルする、生き延びるっていうことが 僕 たちの 人生のテーマになっていきます。 (P58)
「ものを発酵させる」というとても手間がかかることを、なぜ僕たちはやり続け てきたのか。その手間というのは、容易に経済指標に変換することができませ ん。「経済が崩壊し、小さな土地に取り残されてもなお生き延びるための知恵」 として、発酵技術は各地で継承されてきました。 大きな社会の仕組みが壊れていってもなお、僕たちはサバイブしていかなけれ ばいけない。で、せっかくなら楽しくサバイブしたいよね、という心持ちがあっ ての、この言葉だったのでした。
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ほしい未 来は、つくろう グリーンズ
選んだ人: 戸谷浩隆(greenz people)
選んだ理由: ・「ほしい!」と意 思を持って望むこと
・「変える」のではなくいっそ「つくる」こと
この二つとも 、 とても革 新 的 で 大 切 なことだと思います 。 g r e e n z . j pで は 、 さまざまな人の ほしい未 来
が、そして、 変えるのではなく、ほしい未 来
から出発しているひとたち が紹介されていますね。
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「 ウェル 洋 光 台 」か ら の メッセ ー ジ
シェアハウスでの生活のどこに豊かさや安心を感じているのか、 シェアの正体 を探ったときに見つけた概念です。パーマカルチャーの原則のひとつに「余剰 物の共有」があるのですが、物だけでなく人の力や思いといったものも共有で きる余剰物だと気づいたのです。 シェアというと一般的には一つのピザを切り分けるようなイメージですが、ウェ ル洋光台では食べたい人で美味しいピザを作りあっています。もらったものを 倍返ししたくなる心理がプラスに働くと、思いもよらない連鎖が生まれるのかも し れません ね。自分 が 得意 なことで持ち寄ったり場 を 満 たしたりすることに フォーカスしていけば、誰もが主人公で、他の誰に遠慮することなくより豊かに なれるシェアが実現するのだと思います。この感覚がどんどん当たり前になって いくことを心から願っています。( ウェル洋光台住人・さっちんより ) 持続可能でない過剰消費、子育てや老後における孤立や阻害、他人に自分の時 間やお金を使う余力が削がれている現状、グローバル化による関係性の分断…。
このひとつの場所を満たしていく、エネルギーを注いでいくこ とがシェアなんです。そこから溢れてくるものがあって、自分 に必 要なものは返ってくる。シェアはカットすることではなく
これらの、解決するには大きく見える問題も、暮らしを起 点に考えていけば、 一人ひとりが自分の周りで ほしい未来 をすぐに育て始めることができます。 7、8 年前、持ち寄る暮らしが生む豊かな未 来を、当時の仲間たちと会社帰り や週末に集まって、何度も夜 通し語りました。そのことが、今のウェル洋光台 での暮らしにつながっています。
て、持ち寄るってこと。 (P76)
未来はだれにもはっきり見えませんよね。でも、心に手を当てて ほしい未来 を想像し願うことは、きっとあなたの人生を開いていくことでしょう。あなたの 仲間たちに、greenz people たちに、想いを口にしてみてください。人が集ま り語り合うことで、勇気と希望と志が育っていきますように。
Article
みんなで持ち寄って、暮らす。アーバンパーマカルチャー 最 前線、 ギフト
で成り立つシェアハウス「ウェル洋光台」
ht tp: //greenz.jp/2015/11/17/well _yokodai/
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(ウェル洋光台オーナー代行・戸谷浩隆より) Profile ウェル洋光 台(うぇるようこうだい)横 浜市 磯 子区にあるシェアハウス。パーマカルチャーの理 念を 取り入れ、住 人同士が日々 贈り合い の中で暮らす 未 来の暮らしの実 験 場 。
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【フレームを外してくれた言葉、今では当たり前になった言葉】
鈴木 菜 央 × Y O S H 対 談
「グリーンズの言葉の可能 性」
YOSH (壁に貼られた言葉を見ながら)これ選ぶのさ、すごく大変だったよね。 仲間の言葉から厳選するって難しい! 菜央 そうだよね。ここに出てきた言葉はどれも素晴らしいんだけど、こうやっ て全部を見渡してみて思ったのは、 「まだまだ他にもいっぱいあるよなぁ」って。 今回、関係者からの推薦と読者からの推薦と、それぞれで厳選したのはとても 面白い試みなんだけど…すごくぜいたくというか、もったいない気もしてる(笑) YOSH 僕はグリーンズ編集学校で、僕にとっての いい記事 を 10 本くらい 挙げて「必ず読んできてね」って課題を出すことがあるんだけど、ここにある 記事は、それとは全然違ったラインナップになっていて。当たり前なんだけど「刺 さるポイントは人それぞれなんだよな」ってあらためて気づけた。いい意味で予 想を裏切られて、嬉しかったな。 菜央 自分が直接かかわった記事も何本か選ばれてると思うけど、その中で印 象的なものはある?
初代編集長として greenz.jp の創成期(2006 年 7 月∼)を支え、2014 年 10 月より再び編集長に復帰した鈴木菜央。そして、2 代目編集長を 2015 年 11 月に卒業し、新たな道へと歩み出すことを決めた YOSH。 10 年間の記事から寄せられた「ほしい未来をつくる言葉」を前に、今、 ふたりは何を感じているのでしょうか。 グリーンズの 言 葉 の、これ までと現 在 地、そしてこれ からに つ いて、 大いに語り尽くした 2 時間の対 談を凝 縮してお届けします。
YOSH 高 野 誠 鮮さん(P8、P40)、西 村佳 哲 さん(P12、P16)、紀 里谷 和 明 さん(P14、P72)は「STORY OF MY DOTS」という企 画に登場していただい たんだけど、まさに 言葉が主役の連載 って感じだった。いくつもの困難を乗 り越えてきた人たちの言葉は、やっぱり力強いよなあ。 菜央 あの連載はよかったね、どの記事もよく読まれてた。
(構成・文/西山武志)
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ほし い 未 来 を つくる言 葉 Pe ople’ s B o ok s vo l . 6
発 行日
2016 年 2 月 10 日
発 行
特 定 非 営 利 活 動 法 人グリーンズ
編集長
鈴木菜央
編集製作
池田美 砂 子
ライター ・ 校 閲
西山武 志
編集協力
スズキコウタ
編 集インターン
伊 藤 優 汰 (ぽろ)、 水 野 淳 美 (あっちゃん)
デ ザイン
K T C N graphix
イラストレーション
深川 優
印 刷
藤原印刷株式会社
Special Thanks 取材先の皆さん、greenz p eople の皆さん、greenz ライターの皆さん greenz.jp 読者の皆さん、この本を手に取ってくださった皆さん
お問い合わせ 先 特定非営利活動法人グリーンズ greenz people(グリーンズ会員)事務局 東京都渋谷区神宮前 2-19-5 アズマビル 1 階 http://greenz.jp