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1 誰

道を備えし者

もが待ち焦がれた・・・・・・ 彼の出現を。預言されし救 世 主、 神 の 一 人 子 の 来 た

る時を。

んが 用 意する人 生を歩 み た い 思う ておるなら、今の生き方、考えを変 える決意として、洗礼を受けなされ。 水から上がった時から道を改めるな ら、己の犯した過ち、しがらみから 自由となる・・・!!!」 5  洗礼者ヨハネが伝えるメッセージ は瞬く間に広まった——

この 最 高 な 知らせを 耳 にする日を。 「き、聞いたか! 預言者が現れたら その者の名をイエス。 しいぞ!」 「俺も聞いたぞっ! たしかヨハネとい この最高な知らせの始まりは、2  預 う名の男だよな!」 言者イザヤがむかしむかーしに記し 「そう、あそこの荒地にいるらしい! た預言からとなる・・・ 何でも、各地方から人がぞくぞく集 まってるって話しだ!」 「よく聞け。私はこの男の前に使者 を送る。 その使者が道を整える・・・!」——【聖 書:マラキ書より引用】 3「   荒地で叫ぶ声がする・・・ “神のお通りだ、道を整えろ・・・! 神 の た め に 道 をまっすぐ にするの だ・・・!!!”」 ——【聖書:イザヤ 書より引用】 4 この使者とは、とある荒地で人々 を水に浸からせ、洗礼を授けていた 人物のことである。通称、洗礼者ヨ ハネ——【洗礼とは、水の中に全身 を浸す行為。今までの的外れな生活 をやめ、神に従い始める決心を表す ものだ】

これを聞いたエルサレムやユダヤ中 の人が、洗礼者ヨハネを見に次から 次へと集まって来た。 洗礼者ヨハネ は、なりふり構わず真理をドンと語っ た。 多くの人が次々に自分の犯した過ち を告白し、洗礼者ヨハネによってヨ ルダン川の水に浸たしてもらい、洗 礼を受けた。預言どおり、救世主・ イエス の 道 が 整えられていった の だった。 6  ところで、 洗 礼 者ヨハ ネ は 普 通

の人とはちょっと違ってい た。い や、 ちょっとどころではない。彼はらくだ の毛皮から作った服に革の帯を締め、 それを着こなしていた——【実はこ れ、伝説の預言者であるエリヤと同 じ格好なのだ】 ——「神さんはの、人の犯した過ち を許したいと思うてくれとる・・・。 そんな原始人みたいな格好をしてい た 洗 礼 者ヨハネの 食 事はというと、 もし、神さんに許してもらい、神さ


いなごとハチミツのみ・・・。 7  変 わり者に見える反面、彼は威厳をま とい、肝が座っていた。人は彼が来 たるべき預言者だと言い、偉大な者 として敬っていた。 そんな洗礼者ヨハネが人々へこう宣 言した—— 「あっしの次に来る方は、あっしみた いな預言者よりも遥かに勝る。 あっ しには、その方の靴ひもをほどく価 値すらない・・・ 8 あっしは、水によっ て洗礼を授けておるが、その方は神 の魂によって授けられる・・・!!!」 ヨハネほど偉大な人を見たことがな い群衆は、驚いたと同時に胸が躍っ た——  神の一人子の洗礼  9 ちょうどそのころ、洗礼者ヨハネ

の 手で水 に 浸 からせてもらうた め、 イエスはガリラヤ地方にある故郷ナ ザレの 町 からヨルダン川 に 出 向 い た—— 10 ざぶんッ・・・イエスが水から上

がった瞬間。 カッ!

最高の宝物だ・・・!!!」 そ の 声 はどこからともなく響 き わ たった。 それは、神様の喜びの声 であった——  悪魔の挑戦  12 神の魂と交わったイエスは、1人 になるために荒地に出て行く必要が あった—— 13 ワォ———ン・・・

時に獣の鳴き声も聞こえるこの場所 は、悪魔の誘惑がクモの巣のように 張り巡らされていた。待ち受けてい たのは 40 日間にも及ぶつらい、つ らい試練であった。 この乗り越えるべき試練に耐えるイ エスを守り続けていた者たちがいた。 神より派遣されし、天使たちだ——  イエスが動く  14  力 強く試 練を乗り越えたイエス

は、ガリラヤ地方をかわきりに、誰 もが待ちこがれていた最高な知らせ を伝え始めた!それはちょうど、洗礼 者ヨハネが投獄された後のことだっ た・・・

空が引き裂かれたように明るくなり、 15  ——「 時 は 満ちた、 最 高 な 知ら せだ! 敵の支配下と化したこの世へ、 神の魂が自分の上に舞い降りてくる 神の王国軍が侵入した!! 心を入れ のがイエスの目には見えた。 替え、神の軍に加わるのだ・・・!!!」 それは、パタパタと、まるでハトのよ うに・・・ 11「   !」—— 「この男こそ、私が愛する息子・・・


仲間を集めるイエス  16 イエスがガリラヤ湖のほとりを歩 いていると、漁師であるシモンと弟 のアンドレを見つけた——【シモンは 後に岩のペテロで知られる】

いよっ!

人乗っていた。 「ヤコブ、ヨハネ! 行くぞッ! 俺につ いて来い・・・!!!」 イエ ス はまるで 親 友 を 呼 ぶように、 2人を呼んだ。

「オヤジィ! 仕事中にワリィ! 俺たち、 パシャーン・・・ 彼らは、舟から網 何が何でも彼について行くぜ!!」 を湖に投げ入れて漁をしているよう だ ——【 当 時 は、 魚 を 獲 る た め に、 2人は父を残して行くことにためら 網の縁に丸く小さな重りをつけた網 いを感じながらも、ワックワクしなが を使用するのが一般的だった】 ら船を降りたのだった。 ——【この時代、学のある師につい 17「   シモン! アンドレ! 俺について て行くことは、非常に名誉あること 来い! おまえたちを人を獲る漁師に、 とされていた】 俺がする・・・!」 18(え、今俺らに言ったのか・   ・・?) シモンとアンドレは見合った。

悪魔の追放

21  イエスと仲 間 たちは 次にカペナ ウム の 町 に 向 かった。 休 日 に なる 「いよーし!」 と、イエスは集会所に行って教え始 めた——【ユダヤ人の休日は、宗教 2人はさっと網を置いて、イエスの 的な義務として働くことができない 後を追った——【人を獲る漁師とは、 日でもあった】 神を知らない者へ最高な知らせを伝 22  人は、イエスの教えに仰天した! え、神に導く働きをする者のことを モーセ法学者や、そこらの教師とは 指した】 違い、絶大な権威を持って話したか らだ。イエスが話し始めると人は引 19  ——そのままガリラヤ湖のほとり き込まれ、 釘 付けになった。 23  そ を歩いていると、次はゼベダイの息 んな ある時、 悪 魔 に 取り憑 か れ た 子、ヤコブとヨハネを見つけた。彼 男が集会所にやってきたかと思うと、 らは舟に乗り込み、漁に使う網の準 突然叫びだすではないか! 備をしているようだ。 20「   おーし、てめぇら今日もぎょうさ

ん獲るどー!」 「へいっ! おかしら!」 父ゼベダイに雇われた漁師も舟に数

24「   ナ ゛ ァ ザ レ ノ イェ ズ ゥ ダ ト・・・!? ナ゛ッナゼココニイル? ワレワレ ヲ 滅ボス気カ、アァ? 俺ハ 知ッテルゾォ!! ハァハァ・・・オマ エ ハ 神ノ聖者ダァ〰〰!」


25「   黙れ、失せろ」

イエスは悪魔をギロっとにらみつけ た。

リさせた。しばらくすると状況が 読 めたのか、イエスに感謝して、仲間 たちをもてなし始めたのだった——

32  その日、多くの人は日が沈むの を待ち、悪魔に取り憑かれた人や病 人をここぞとばかりにイエスのもと 26  悪魔は男の体をブルブル震わせ、 へ連れて来た——【当時、日の沈み 叫び 声を上げて出て行った。 27  そ が一日の変わり目だった。また、致 れを見た人たちは恐怖のあまり心臓 命傷以外の治療は仕事としてみなさ が止まりそうだった。 れたため、休日の終わりを待たざる を得なかった】 「い ゛ッ、いったい、何が 起きてん 33 町の住人たちがこぞって押しかけ だ?! こんなの、見たことも、聞い たこともないぞ・・・! あの方の言 るので、家の周りはちょっとしたお祭 葉にはとてつもない権威がある・・・ り騒ぎだ。 悪魔さえも従うなんて・・・!!!」

「ウ、ヴア゛ァ〰〰〰〰!!!」

28 こうして、イエスの評判はガリラ ヤ地 方 に 爆 発 的 に 広まった の だっ た——

シモン義理の母の高熱  29 イエスと仲間たちは、シモンとア ンドレ兄弟の家に行くため、集会所 を後にした。もちろんヤコブとヨハ ネ兄弟も一緒だ—— 30 ゔッはぁはぁ・・・

家に入ると、シモンの義理の母が高 熱でうなされていた。 31 イエスは彼 女の手を取るとスッと立たせた。 「!」 ( あ、 あ れ・・・?) 気 付けば、 病 気が治っているではないか! シモンの母親は、驚いて目をパチク

34  イエスは人知を超えた力で次々 に病人を治し、取り憑かれた人たち を悪魔から解放した。その際、悪魔 が喋ろうとすると、イエスはバシッと 黙らせた——【イエスの正体を把握 する悪魔がその正体を明かせば、た ちまちローマの反乱を求める大きな 騒ぎがおきかねなかったからだ。当 時のイスラエルは、ローマの配下に あったため、預言されし救世主が来 れば、きっとローマ軍を打ち負かし てくれるだろうと信じてい た。その ため、救世主らしき人が現れる度に、 ユダヤ人は反乱を起こそうと躍起に なっていた。 暴動など起こしたくな いイエスは、そうならないようにと 非常に注意をはらっていた】

止まらないイエス  35  翌朝、一人っきりで祈るためにイ エスは家を出た。外はまだ暗くて涼


しい。

スは、帰ったあとの処置に気をつけ るよう、強く忠告した。

36  ——イエスがいなくなってからだ 44「 いぶ時間がたったが、一向に戻って   いいか、このことはだれにも話 こない。何の音沙汰もなかったので、 してはいけない。これから自分の体 シモンは仲間を連れてイエスを探し を祭司に見せに行き、モーセ法のと に出た—— おり、神へ捧げものをするんだ。そ うすりゃ あ、 完 全 に 治った ことが、 37「   ・・・・・・い、いたぞー!」 誰の目にもはっきり分かる!」 「こぉ—んなとこにいたんスかッ!み んな探してたんスよー!」 皮膚病が治った男は、感謝して別れ 38「   ・・・今から近くにある他の町 のあいさつをした。 や村へ行って、最高な知らせを伝え 45  ——「 み ん な ー! き、 聞 い てく るぞ。そのために来たんだ」 れーィ! ナザレのイエス様が、絶対 イエ ス の 目 は 燃 えてい るようだっ に治らないはずだったこの俺の病を た—— 治してくれたんだ!!」 男は忠告されたにも関わらず、町中 39 それから、ガリラヤ地方の集会所 の人にイエスが行った素晴らしい働 をくまなく巡り、最高な知らせを伝 きを言いふらしてしまった。 え、悪魔に取り憑かれた人たちを解 放してあげたのだった—— こうして、イエスの評判はますます広 まった。 ——すると、イエスをローマに反乱す  重い皮膚病の男  る王に祀りあげ、大きな騒ぎとなっ 40 ドスッ!——ある時、重い皮膚病侵 た。そのため、町の中に入れなくなっ された男がイエスの前に来て、ひざ てしまう始末。イエスは、ひとけの まづいた。 ない場所で騒ぎが収まるのを待つこ とにした—— 「お願いです!どうか私の体を元通り だが、そんな期待をよそに、さまざ に! 先生のお気持ちひとつで治るの まな町や村から、人がぞくぞく集っ ですから・・・!!!」 てくるのだった—— 41 イエスは、心打たれた・・・。

「もちろんじゃないか! さあ、よくな れ!」 42  イエスが 彼に触れると、皮膚病 はスーっと治っていった—— 43  イエ


2 数

あまりの人だかりで、入り口に近寄 ることすらできない・・・。  屋根を掘る友人

日後のことであった。ガリ ラヤ地方を回ってきたイエ スがカペナウムの町へ戻っ て来ると・・・

——「戻って来たらしぃぞ・・・!!」 「ほんとか!!」 「あんたー、いえっつぁんが戻って来 たってよぉ—!」 その噂は電光石火のごとく町中へ広 まった。 2 イエスの話を聞こうと人がドドドっ と集まってくる。そこでイエスは、あ る家に入って教え始めると・・・そ の家はあっと言う間に人であふれか えった。外もズラーッと人だかり。

「ち、 ちくしょう・・・ こ ー なった ら!」—— よーいしょ!よし、そぉっとだ。 何を思い立ったのか、彼らは屋根に 登り始めた・・・。やっとの思いで 屋根に登ると、他人の天井をはぎ始 めるではないか! 「お、おい上を見てみろッ!」 中 に い た 人 たちは、イエスの 頭 上 を見た。ガサガサしているかと思え ば、男たちが屋根をせっせとはいで いる・・・。

「な、なんてことしてんだ!!」 「マヒして動けない友達がいるんで 3 ——「はぁはぁ・ ・・あ、あそこだッ!」 す!!」 「しっかりしろ!もうすぐでよくなれっ 「先生! 今から下ろしますんで、どう ぞッ!」 か治してやってくださいッ!!」 そこへ、息を切らしてやって来たの は4人の男たちであった。いや、彼 らが担いでいる男を入れると 5 人に なる。担がれている男は、体がマヒ しており、動けなかったのであった。 4「   すいません! 動けない友達がいる んです、通してくださいッ!!」 「頼む! 通してくれッ!!!」 「・・・・・・ ク、 クソォ! こ ん な

に人がいちゃあ、どうやっても入れ ねぇ」 「絶対に治してやっからな・・・!」

すると、マヒした友人を布団に載せ たまま、ひもを使って、そっとイエス の元へ吊り下ろした。 5 イエスは屋根の上にいる4人組が “イエスに見せれば治る” と強く信 じたからこそ、とった行動だと心の 中でうなずくイエス。そして横たわっ ている身体のマヒした男を見た。

「 息 子よ、 あ な た の 過ち は 許 さ れ た・・・!」


6  ——そこに数人いたモーセ法学者 は思った・・・ 7(な   !なんてバチ当 たりな・・・! 過ちを許せるのは神だけだぞ・・・) 8「   なんだ?」 イエスはその思いを察した。 9「   目には見えないし、言うのは簡

単だなんて思ってるのか?なら、俺 がこの動けない男に立ってふとんを たたみ、歩けと言って、なーにもか も起きたらどうだ? 10  それを目にし て俺に過ちを許す権利がないなんて 言えやしない・・・!」

ゴロツキとつく食卓  13 イエスが向かうところは、人、人、

人! この日、イエスはガリラヤ湖に 向かう途中、いつものように人が集 まって来たので、神についてさまざ まなことを教えた—— 14  その後、イエスは、再び湖のほ とりを歩いていた。すると、アルパ ヨの息子であるレビを見つけた。レ ビは机を並べ、イスに座って商売を している。税金の取り立てだ。

——「俺について来い!」

イエスは動けず、寝転がっている男 を見た。

バタッ・・・取税人のレビは何もか も置いたまま即座にイエスの後につ いて行った!

11「   さあ、立って布団を手に家に帰 るんだ!」

15 ——その日の午後。イエスは仲間

12 すると男がバッとすぐに立ち上が るではないか! あごが外れそうになっている人たち の前で、さっきまでマヒしていた男 が布団を持ってささっと出て行った。

・・・・・・ウ、ウォォォ・・・! バ、バンザーイ!バンザーイ!!バン ザーーイ!!! そこにいた人たちは驚愕して、神を 讃え始めた。 「 こ、 こ ん な こ とっ て あ ん の か よ・・・!!!」

たちと一緒にレビの家にいた。レビ のほかにも多くの税金取りや、名の ある悪人たちがイエスについていく 決断をし、食事を共にしていたのだ。 16  イエスが そんな人たちと一緒に 食 事 をしてい るという噂 が 広 まり、 パリサイ一派のモーセ法学者たちが やって来た。 「きみ、なぜ彼はこのようなゴロツキ たちと食卓を共にしているんだね?」 17  ——イエスの 一 味に 尋 ね た 声は、 イエスの耳にまで届いた。

「 い い か、 医 者 は 病 人 の た め に い る。 健 康 な 人 に は 必 要 ない。 同じ く、 俺 は 正しい 人 の た めでは なく、 過ちを犯した人たちを招くために来


た・・・!!!」

しいワインは、新しい革袋に入れる のが、お決まりじゃあないですか!」

イエスが直々モーセ法学者の問いに 答えた。  交わらない古きと新  18「   ヨハネの仲間も、パリサイ一派 も断食しておりますが、あなたの弟 子はなぜ、断食を行っていないので すか?」

ヨルダン川で洗礼を授けていた洗礼 者ヨハネの仲間たちと、パリサイ一 派には、断食をして熱心に神を求め る習慣があった。 その た め、 パリサイ一 派 は 疑 問 に 思ったのだ。 19  イエスは、3つの例えを用いて 説明した。 「例えるなら、花婿を祝う結婚式に 招待された客が断食をすることなど ない。 20  花 婿と共にいるというの に、 断 食をする必 要 は ない。 だ が、 花婿が彼らのもとから離れる時が来 る・・・!その時になれば、彼らも 断食をする。 21  古着のつぎあてに、新しい布を

使う人はいない。そんなことをした ら、つぎあてた新しい布が縮んで古 着が破れてしまう! 22 また、新しいワインを古い革袋に

入れる人もいない。そんなことをし たら、古い革袋は新しいワインの発 酵に耐え切れずに破れ、革袋と一緒 にワインまでダメになってしまう。新

休日を制す王  23  ある休日のことであった。イエス が仲間たちと麦畑の中を歩いている と、仲間の中に麦の穂を採って食べ ていた者たちがいた。 24 コラッ!

そ れ が パ リサ イ 一 派 の 目 に 入 っ た・・・ 「イエス先生、あなたのお弟子さん ですが、麦の穂を摘んでおりますぞ。 本日は、休日であることはご存知で しょう?立派なルール違反でござい ませんか!」 25「   聖書を読んでいるなら知ってい

るだろうが、ダビ デとそ の 仲 間 た ちが、 食 べ 物 が なくなり、 お 腹 が 減ったとき、何をしたか覚えている か? 26 アビヤタルが大祭司だったこ ろ、ダビデは神殿に行き、神に捧げ られているパンを食べた・・・。 モーセ法だと、捧げものを食べるこ とができるのは祭司だけだったにも 関わらずだ。さらにダビデは、捧げ ものであるパンを仲間たちにも分け 与えたじゃあないか・・・! 27  休 日 は、 人 を 助 け る た め に 創 ら れ た も の で あ って、 人 が 休 日 の た め に 創 ら れ た わ け じゃ あ な い・・・ 28 よって、休日さえも主た るこの人の管轄内だ・・・!!」


3 ま

休日に治す

た別の日のこと。イエスが集 会 所 に 行くと、 手 に 障 害を 抱えた 男が い た。 2  その 場 にいた何人かのパリサイ一派は、イ エスをじっと見ていた。(その方の手 を治してごらんなさい。知りません よ・・・) この日は働くことがモーセ法で禁じ られている休日にもかかわらず、イ エスが男の手を治すのではないかと 目を光らせていたのだ。

しない。 5 イエスはパリサイ一派の頑固さに、 じわじわと怒りが 込み上げてくると 同時に、そんな彼らを心から残念に 思った。イエスは、手に障害を抱え た男を見て、笑みを浮かべる。 「さあ、手を伸ばして!」 「ッ!」 手を伸 ばした 途 端 に 彼 の 手が 治っ た・・・! これは、男もウヒョーッと大喜び! 6 ・・・・・・一方、それを見たパ リサイ一派は、恐い顔つきで出て行っ た。

——【休日と呼ばれた休日に働けば、 当時、パリサイ一派はヘロデ党—— 神の民であるイスラエル人の同胞か 【サドカイ派 】と敵 対してい た。に ら追放するというのがモーセ法には もかかわらず、それがウソだったか あった。命にかかわらない病気やケ のように仲良くイエス殺害計画を練 ガの手当は仕事だとして禁じていた。 り始めた・・・! もしその法に触れるとなると、刑務 イエスを危険とみなした2つの派閥 所行きまたは、39 回のムチ打ちの にとって、双方の敵対心は二の次に 刑に科される可能性があった】 なったのだ。 3 ——さあ、ここへ! 「はい!」

小舟から教える

7 イエスが一味とともに湖へ向かっ ていると、ガリラヤから大勢の人が つ い て来 た。 ガリラヤ に 留 まらず、 イエスの評判を聞いたユダヤ、 8  エ ルサレム、イドマヤ、また、ヨルダ ン川の対岸やツロ、シドン周辺の地 4「   みなさん、休日にすべきは善か、 域から、人がどんどん集まる。 9  あ それとも悪ですか? はたまた命を救 まりの多さに、イエスは仲間に小舟 うべきか、それとも滅ぼすべきです を準備させ、岸から少し距離をとっ か?」 た。人が押し寄せて来ないようにす ・・・誰もが黙りこんで、答えようと る必要があるほど人がひしめきあっ

イエスは、そこにいた全員が見える 場所へ手に障害を抱えた男を呼ぶと、 彼は言われるとおり、イエスの元に 来た・・・


てい たからだ。 10  イエスが 多くの 病人たちを治していたので、山ほど 病人たちがわれ先にと押し迫って来 る・・・!! 「イエスさまー! 私も治して下さー い!」 「た、助けて下さい、イエスさまー!」 「こっちです! こっちもお願いしまァ す!」 11  中には、悪魔に取り憑かれた人

たちもいた・・・ 「ア゛ァァァ、カ、神ノ子ダァァ!」 悪魔たちはイエスを見ると、その場 に倒れ込んでは叫ぶ。 12 しかし、イエスは自分の正体を明 かさないようにと悪魔に厳しく命じ た。すると、悪魔は口を貝のように 固く閉じるのだった。  選ばれし十二使徒  13  イエスは、 丘をのぼった。 来 た い人は丘の上で待ち合せようと仲間 へと伝えてあったからだ。仲間たち が現れると、 14 イエスはその中から 12 人を選び、使徒と名付けた。イ エスは十二使徒を側近として側に置 き、共に生活をした。

イエスは使徒たちを中心に最高な知 らせを広 めたかった。 15  また、 悪 魔 を 追 い 出 す権 威まで 授 けようと 思っていたのだ! 16  イエ ス に 選 ば れ た 十 二 使 徒 は、

岩を意 味する“ ペテロ” と呼 ば れ

たシモン、 17  ゼベダイの息子で“雷 の子”と呼ばれた兄ヤコブと弟ヨハ ネ、 18  アンデレ、ピリポ、バルトロ マイ、マタイ、トマスと続いて、ア ルパヨの息子ヤコブ、タダイ、熱心 党のシモンだ。 19 おっと忘れちゃい けないのは、イスカリオテ出身のユ ダ。 後にイエスを敵の手にわたす 男である・・・。  悪魔のちから?神のちから?  20 イエスが家に帰ると、たーくさん

の人が再び押し寄せて来た。その数 はイエスと一味たちが食事をとろう にもとれないほど・・・。 21 ——そのころ、 “イエスの気が狂っ

た”といううわさを聞いて、イエス を連れ戻すためにイエスの家族が向 かって来ていた・・・・・・ 22 それもこれも、エルサレムから来

たモーセ法学者が次のように言いふ らしていたからだ—— 「あのイエスが悪魔を追い払える理 由をズバリ答えましょう! 悪魔たちの かしらに取り憑かれているのですよ。 みなさん考えてもみてください・・・ 家来の悪魔が言うことを聞くなんて あたり前ではないですかぁ!!!」 23 ——「みんな!」

イエスはそこにいたみんなを呼び集 めた。 「 悪 魔 が 悪 魔 を 追 い 出 せ ると思う か? 24  内 戦をしている国 は 崩 壊す


る。 25 もめごとが絶えない家族もし かり・・・。 26  悪 魔 の かしらであ る悪魔王も同じく、仮に内輪で争っ ているならそのうち悪魔の一味は崩 壊する。 27  ならこの噂は見当違い もいいところだ。誰が悪魔最強であ る悪魔王の陣地へ入り、ヤツのもの を奪い去れる?そりゃあ悪魔王を大 きく上回る者だ。 屋敷の主を縛り上げ、主の財産を好 きなだけ奪い去る強者のように、俺 は悪魔を追い払う前に必ず悪魔王を 縛り上げる・・・!!!

を送り込んだ。 32 家の中では、たく さんの人がイエスを取り囲んで座っ ている。 「イエスさん、お話中にすいやせん! お母さんや弟さんに妹たちが、お見 えでっせ!」 33「

俺 の 母、 兄 弟 と は 誰 の こ と だ・・・?」 そこにいた仲間たちは「?」となった。 34 イエスは、周りに座っている仲間

たちを見わたした。 28

人 が 犯 す 全 て の 過 ち は、 神 の 冒 涜 さ え も 含 め、 確 か に 許 さ れ る。 29  だがな、神の魂が成す、素 晴らしい 働きを 冒 涜するとな れ ば、 話 が 違う。 そ の 人 が 許さ れること は 永 遠 に な い だろう。 その 過ちか らくる罪 悪 感 は 永 遠 に 消えやしな い・・・!!!」 30 イエスの持つ神の魂をモーセ法

学者たちが悪魔だと非難し、言いふ らしていることからの忠告だった。  イエスの家族  31 一方、イエスの母マリアと弟や妹

たちはというと、イエスを呼びに来 たのはいいものの、あまりの人だか りで家の中に入れずにいた。

「ここにいるみんなが そうじゃない か! 35 ・・・

俺 の 母、 兄 弟 姉 妹 と は、 神 が 望 むとおりに 生 きる人 のこと だッ!」

4

種まき農夫

て、イエスはというと、今日 も湖のほとりで教えはじめて い た。もちろん、そこには 大きな人だかり——

「押すなぁ!」 ——「 私 は イエ ス の 母 な の ですが、 「もっと詰めてぇな!」 呼び出して来てもらえないですか?」 「 あ れま!イエスさん の お 母さんで ——あまりの人の多さにイエスはそ らっしゃいますか!少々お待ちをッ!」 こにあった小舟に乗り込んだ。 イエスの家族はこのようにして数人 ( ふぅ・・・これで落ち着いて話せ


なぞかけ

る・・・)

10 湖での話しも終わり、群衆と別れ 小 舟 の 上で腰を 下ろしたイエスは、 ると、十二使徒と他の仲間たちがイ みんなに教えはじめた。群衆は、湖 エスのもとに集まって、尋ねた。イ のほとりで興味津々。 エスがしたなぞかけについてだ。 2 イエスは、神について多くの例え

話をした。今日はどんな話を聞ける のかと、集まって来ていた人たちは ワクワクしている。 3「   よし聞くんだ! あるところにいた

農夫が、作物の種をまくために出か けた時の話だ! 4  彼が種をまくと、いくつかの種が 道ばたに落ちた。するとどうだ! そ こに 鳥 たち が ひょい とやって来 て、 落ちていた種をあっという間に食べ 尽くしてしまった! 5  ある種は、土が足りない岩でゴツ ゴツしている地へ落ちた。土が浅く て、すぐに芽を出したは良いが、 6 日 が上るとひからびてしまった! 根を深 く張れなかったからだ。 7  ある種は、いばらが生い茂る草む らに 落ちた。しばらくすると、 周り のいばらがすくすく成長した。それ は、せっかく育ち始めたいい芽の成 長を遅らせ、終いには、実を結ぶこ とができなかった。 8 だが、よい地に落ちた種はどうだ!

グングン成長して、穂をつけた! あ る種は 30 倍、ある種は 60 倍、そ してある種は 100 倍もの実を結ん だ!! 9 聞く耳があるなら、よく聞くんだ!」

11「   おまえたち以外には、なぞかけ

の心を言わずして神の真理を教えて いる理由か? 隠された真理を知る 特権が今はまだ、おまえたちにしか ないからだ」 仲間たちの目は輝いた。 12「   聖 書 のイザ ヤ 書 に あるとおり

だ・・・ “彼らは目を凝らして見ようとするが、 見えない。 何度も聞こうとはするが、理解がで きない。 もし理解すれば、必ず私のもとにか えってくる。 さすれ ば、 私 は 喜 んで彼らを 許 そ う”」 なぞかけ、その心は? 13 目が点になっている仲間を見てイ エスは、察した。 「・・・もしかしておまえたち! この 物語の意味が分からないのか・・・? おいおい、なら他にした話だってさっ ぱりってことじゃあないか! 14 あのな、 “種まき農夫” のなぞか けで述べた農夫は、神の真理を種ま きのように広める人のことだ。 15  いいか、たまに道ばたにこぼれ


る種が ある。 これは神の真理を聞 いても、すぐに悪魔が やってくると、 いとも簡単に植えられた真理を奪わ れ、忘れてしまう人のことだ。 16  ある人は、岩でゴツゴツしている

け! 24  俺から聞いたことをしっかり 飲み込むんだ。神はおまえが今、ど れほどの 理 解が あるか に 合 わ せて、 どれだけ与えるかを定める。だが実 際、必要以上に与えてくれるのが神 だ!

地へ落ちてしまった種のように、神 25  ある程度の理解さえあれば、更 の教えを聞いて、すぐに、しかも喜 んで受 け 入 れ はするん だ が、 17  彼 にもらえるが、分からず屋は、少な らの心に深く根付かせようとしない。 い手持ちさえ失う」 こんな人は長続きしない。受け入れ た真理が 理由で自分の身になにか  種の成長  問題が起こると、軽々としっぽを巻く。 26「   神 の 王 国 は 畑 に 種を植える男 のようだ。 27  なぜ、どのようにして 18  ある人たちは、いばらが生い茂 成長したかなどさっぱりな農夫をよ る草むらに落ちた種のように、神の そに、 種 は 昼 も夜 も成 長する。 農 真理を聞いたとしても、 19  他のこと 夫が寝ていようが、起きていようが で頭がいっぱいになる。将来への不 だ。 28  畑は、人の助けが なくても 安や金銭欲、また、その他に対する 穂を実らせる。種は苗になって、穂 欲求不満。これらによって真理を吸 をつけ、穂の中には多くの実がなる。 収するのが遅れ、人生で良い成果を 29  穂が 実をつけたとき、人はその 見いだせなくなる。 実を刈り取る。これぞ、収穫の時だ!」 20

そ の 他 は、 よ い 地 に まか れ た 種のようになる! 神の真理を聞くと、  からし種  しっかり飲み込む。その人は、目を 30 イエスは続けた。 見張るように成長し、良い実をどん どん結ぶ! ある人は 30 倍、ある人 は 60 倍、ある人は 100 倍だ!!!」 「 神 の 王 国 は 何 に 例 え ら れ る か・・・。どう説明すればみんなに 理解してもらえる・・・」  なぞかけの心は世界へ  21「   ランプに火を灯し、器やベッド

の下に隠したりする人がいるか? ま ずないな! 周りを照らすためのもん だからだ。 22 同じように隠されたものは、明ら

かになり、すべての秘密事が明かさ れる! 23  聞こえるなら、しっかり聞

31 と言って少しすると、にやっと笑っ

た。 「 神 の 王 国 は、 か らし 種 のようだ なぁ! 植えられる種の中でもからし 種は、どの種よりも小さい。 32 でも、 植えたらどうなる・・・? 庭のどん な植木よりも、大きな木へと成長す


る!鳥たちが木陰に巣を作れるほど 太い枝木を生やす!」 33 イエスは他にも多くのなぞかけを

使って、みんなが理解できるだけの ことを教えた。 34 集まる人には、決 まってなぞかけをしたが、その心ま では教えなかった。しかし、イエス の一味だけになると、その心を打ち 明けたのだった。  嵐と睡眠  35 その日の夜だった。

「行くぞッ! 次は湖の向こう岸だ!」 イエスが仲間たちにこう言うと、 36 仲間たちは集まっていた群衆を残

し、舟に乗り込んだ。 「お、来たか!」 イエ ス は すでに 舟 の 後ろに 座って 待っていた。辺りには他にもいくつ かの舟が並んでいる。 「うし、出航だッ!」 37 ——しばらくしてからのことだ。

ビュ————・・・・・・ 「風が強くなってきたな・・・」 「あぁ、これは荒れるぞ・・・」 風はみるみるうちに強くなり、波が 高くなった・・・。 ——ブオ———ザッブゥ——ン!! ザバ

ザバザバッ——!!! 湖がひどく荒れ狂いだした! 「ウ、ウワァ〰! 沈没するぞぉ〰〰〰 〰!!!」 波が勢いよく舟を叩きつける。あっ という間に舟は水びたしになり、沈 みかけた。 38 この非常事態の中、イエスはとい うと・・・ん?ね、寝ている???し かも、頭をまくらにうずめて鼻ちょう ちんをふくらませて熟睡中。 (・・・こ、こんな時に!!!) 慌てふためきながらイエスを起こす 仲間たち。 「 イ、 イ エ ズ ——ッ! な に 寝 て ん だッ!!!俺たちがどうなってもいいの か? このままじゃあみんな死んじま いまずッ!!!」 39 イエスはスッと立ち上がると、舟

の外を見た・・・ 「黙って静まれ」 す、すると・・・イエスの言葉に反 応して突然嵐が止んだ!!! 40 イエスはすかさず、仲間たちの方 を振り返った。

「おまえたちは、なにを恐れてやが る? まだ信じないのか?」 ・・・・・・仲間たちの頭は真っ白で、 少しの間ぼーと立ちすくんでいた。


ていたのだった。 41「   こ、この方は・・・い゛、いっ

でぇ 何 者 な ん だ・・・?服 従 して い るぞッ・・・ か、 風 や 水 までが よぉ・・・!!!」 仲間たちは、恐ろしさのあまり互い に問うたのであった。

5

墓地に住むローマ軍団

エスと仲間たちは湖をわた り、ゲラサ人の住む地に向 かった——

・・・ガララ、ガ チンッ・・・ガラ ラ、ガチン・・・ガララ、ゴキィィィ ン・・・・・・ 「・・・ヴゥオォォォォ!!!」 2 イエスが船を降りると、悪魔に取 り憑かれた男が墓場であるほら穴か ら出てきた。 3  なんと、取り憑かれ た男は墓場を住みかにしていたのだ。 鉄の鎖を持ってしても、凶暴な彼を 止めることができない。

5「   ギィャア゛ァァァ・・・」

ガリ、ガリガリ・・・ 男は昼も夜も、ほら穴の近くや山の 上で叫び声をあげ、自分の体を石で 傷つけていたのである。 6 ——取り憑かれた男は遠くからイエ スたちの気配に気付いた。ドドドドッ と勢いよくイエスたちのそばへ駆け て行くと・・・ヒッ!と目を見開きイ エスの前にひざまずいた! 7- 8「   ナ、 ナ ゼ ア ナ タ ガ コ コ ニ・・・???」

「おい・・・この男から去れ、消え ろッ!」 イエスは繰り返し言った。 「 恐レ入リマス!モ、 最 モ 偉 大ナ神、 イエスゥゥゥ!イッ一体、ワダシヲ ド ウナザ ル オツモリ デスガァァァ?! ドーカ、ドーカ、ワダシヲ ヒィドイ目 ニ遭ワセナイト、神ノ名ニヨッテ オ 誓イクダザィ——!!!」

4 というのも、過去に大の男たちが

集まり、協力して手や足を鉄ででき た鎖でつなぎ、固く縛って、どうに か助けようとした。だが、悪魔はそ の鎖をいとも簡単に引きちぎるでは ないか! それから何度も挑戦し、縛 りつけたものの、取り憑かれた男は ことごとく鎖を壊してしまった。もう 誰も彼を止めることができず、野放 しとなった男は、町の悩みの種となっ

9「   ・・・名を名乗れ」

「申シ遅レマシタ・・・ 大勢デ コイ ツニ 取リ憑イテ オリマス ユエ、ロー マ軍団ト申ジマズゥ! 10 ドーカ、オ、 オ願イジマスゥ、コゴニ イィサァセェ テェ——!」 ——【 ロ ー マ 軍 で は、 1 レ ギ オン =6000 人の軍隊を指して用いられ


ていた】 ローマ軍団は、自分たちをこの地方 から追放しないでほしいと、土下座 し、ひたいを土にこすりつけるよう にして、しきりに頼む。

14(ンな、うわぁぁぁぁぁ・・・)ブ   タを飼育していた男たちは、血相を 変えて全員一斉にその場から逃げ出 した・・・・・・町につくと、慌て ながらも、町の住民に何が起きたか を必死に伝える。

11「   !」 その 時、 近くの 丘ではブタ

の群れが草を食べていた。 12  それに気づいた、ローマ軍団は 一瞬、目を細め、しめたとばかりに ニヤッとした。 「ア゛ッ!セメテ、アソコニイル ブタ ノ群レニ、取リ憑カセテ下サイマゼェ 〰〰!」 13 イエスはそれを許した。

ズォォォ—・・・ドヒュ—ン!!! 凄まじい数の悪魔が一斉に男から出 て行くと、ブタの群れに次々と入っ ていった。 「ッ!!!ブ、ブヒィィィ———」 ドォゴゴゴゴゴ・・・・・・ ザ バァン、 ザ バ、 ザ バ バ バ バ バ ー ン・・・・・・ およそ 2000 匹にもなるブタの群れ は、気が狂ったように鳴き叫びなが ら丘を駆け下り、なだれのように湖 へ突っ込んでいく・・・・・辺りの 人たちは、ただ呆然と立ちつくして いた。 ——しばらく経ち、何もなかったかの ような静けさが戻った。2000 匹も のブタが湖に沈んだのだ・・・

—— 住人たちはその光景を見にイエ スのもとにぞろぞろ集まって来た。 15「   お、おまえは・・・!!!」 「キャ——! 墓に住みついてたケモノ よォ・・・!!!」 「え、うそでしょ、 な に が 起きてん の・・・?」

取り憑かれていた男が、服を着て普 通に座っているではないか。町の住 人は、正気である彼の姿を見て、ゾッ とした・・・ 16  そのあと、一部始終を見た人た ちは事の次第を町の住人に説明した。 17 すると、町の住人たちが恐る恐る イエスのところに集まってきた。

「こ、この町から出てってくれ・・・!!」 町の住人たちはイエスを疫病神であ るかのように追い払った・・・。 18 —— 住人の申し出を承認したイエ スは、舟に乗って出発の準備をして いた。

「イエス様! ぜひ、お供させてくださ いッ・・・!」 ローマ軍団から解放された男がイエ


スに願い出てきた。 19「   いいや、家に帰って、家族や友

人たちにあなたの主がしてくれたあ りとあらゆることを知らせてあげる んだ!」 20「   は、はい!!」

男は、イエスの言葉を胸に立ち去っ た。 ——この男は、後にその地方にある 10 の 都 市 で、 主 が 自 分 の た め に、 どれほどよくしてくれたかを熱く、そ して大胆に伝えるのだった。そして、 彼の話を聞いた人たちは、誰もがひ どく驚いたのであった。  長血の女  21 イエスたちは小舟に乗り、湖の向 こう岸へ渡った。舟を降りると大勢 の人がイエスたちの周りに集まって 来た。彼らはイエスがやってくる事 を一足先に嗅ぎ付けて来たのだ。 22「   !」

その中からある人が慌ててイエスの 足元にひざまづいた・・・ 彼はヤイロという集会所の管理人で あった。 23「   私の幼い 娘が 死にそうです!ど、

どうか 私と一 緒 に 来て、 娘 の 上 に 手を置いてやってはくれませんかっ。 そうしたら、 娘 は 死 なず に すみま すッ・・・!」 ヤイロは一生のお願いと言わんばか

りに頼みこむ。 24 イエスは、もちろ んのことヤイロの家に向かった。そ して、群衆もイエスの周りに押し迫 るようにして、どしどしついて来る。 25 ——その群衆の中には、生理が止 まらず、出血し続ける病気でかれこ れ 12 年間苦しんでいた女がいた。 26(辛いよ、苦しいよぉ・・・)

彼女は病気を治すため、多くの医者 に診てもらった。ワラをも掴む気持 ちで、できることは何でもした。結 局彼女は医者に全財産をはたいて破 産するほどだった。 それだけしても なお、ただ悪化していく病状・・・。 27  光を失いかけたところへ、希望 が舞い降りてきた。そう、彼女はイ エスの噂を聞いたのだ。最後の賭け だと、群衆の中をがむしゃらにかけ 進んだ。やっとの思いでイエスの背 後まで辿りつくと、

(えーぃっ!)彼女はイエスの上着の すそに 手を伸ばした。 28  イエスの 服に触れることさえできれば病は治 る!との思いからだった。 29(え・・・・・・   !!!)

彼女の手がイエスの上着にやっとの 思いで触れた!すると出血が瞬時に して止まったのを感じた。 30 ——「!」

「誰だ!今俺の服に触ったのは!」


女が触れたと同時にさっと振り返っ たイエス。自分から力が流れでたの を感じたのだ。 31「   いやいや!先生、これだけの人

数がひしめきあっているのに誰がっ て・・・はは・・・ねぇ」

先 生をわずらわ せる必 要 は ない か と・・・」 あ、あ゛、あ゛・・・・・・ その瞬間、ヤイロの頭は真っ白。 36「   おいヤイロッ、恐れんな!ただ信 じろ!!!」

多くの 人 がイエスに 触 れている中 で、 冗 談 にしか 聞こえな い 仲 間 た それは、イエスの声だった。 ハッと ち。 32 しかし、それでもまわりを見 我にかえったヤイロ。 渡すイエス。 33(い   ゛ッアタイのこ とだ・・・)病を治してもらった女は、 「ゔ、う・・・ぐすッ・・・ハイ!!!」 一瞬凍りついた。そして、恐る恐る 進み出てイエスの足元にひれ伏した。 37  ——イエスはヤイロと岩のペテロ、 雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネ以外の 「わ、私です!じ、実は・・・・・・」 仲間はついて来ないように言い、ヤ イロの家を訪れた。 女が声を震わせ、自分の身に起こっ 38 ・ たことをかいつまんで話すと、イエ ・・うわぁーんっ。ひっくひっく・・・ スはニコッと笑った。 うぇーん・・・ずずっ、グゾぉぉぉ・・・ 34「   あ な た が 治った の は、 あ な た 鳴き声は家の外まで聞こえてくる・・・ がそうなると信じたからだ!安心して。 家に入ると大勢の身内が、悲嘆に暮 もう苦しむ必要はない」 れ、ひどいありさまだった。そこに いる人が大声で泣き叫んでいるのを 目にしたイエス。  少女のお眠り

35 イエスが完治された女と話してい

る最中だった・・・ 「ヤイロさーん!!!」

39「   おいおいみんな、なにをそんな に泣いてんだ。この子は眠っている だけで、死んではいないぞ!」 40「   !」

ヤイロの召使いたちを見るやいなや、 そこにいた家族や親戚などの視線は ヤイロの顔が青ざめた。 一気にイエスへ集まった。 「ど、どうした!」 「ざ、残念ながらお嬢さんが先ほど 息をひきとられました・・・もう・・・

「ケッ!こいつぁばかか!」 「とんだおとぼけ野郎を連れてきち まったなヤイロ!」


「空気を読め!あほんだらぁ!」 ヤイロ の 身 内 はイエスを ば か にし、 笑い飛ばした。気にもとめないイエ スは、彼らに家から出るように伝えた。

6 イ

地元ナザレに帰る

エスは、 一 味と地 元ナザレ へ帰ってきた。 2 さっそくイ 「頼む、みんな、今は彼の言うとお エスが休日に集会所で教え りにしてくれないか・・・」 ていた時のことだ。昔からイエスの ことを知っている地元民は、互いに ヤイロも同じように身内へと促した。 言った—— イエスは少女の両親と3人の仲間だ けを連 れ、 少 女が 寝ている部 屋 に 「お、おい・・・アイツどこでこんな 入った。 知恵をつけたんだ・・・?」 そこにはまだ 12 才のかわいい少女 「あーんなキセキ、どこで拾えば起 が 横 た わっている。 41  両 親と3 人 こせるようになんだ・・・?」 の仲間が見守る中、イエスは少女の 3「   どぉゆうこっちゃ!!あいつぁ、あ 手を取った。 れだろ!マリアんとこのせがれだろ? こんなとこで教えてっけどよぉ、元々 「お嬢ちゃん、さあ起きて・・・」 は大工じゃあねぇか ・・・!」 「俺もよく知ってっぞ !兄弟はヤコブ 42 ガタンッ! とヨセ、それにユダとシモンだぜ? 妹たちだってこの町に住んでっしな 「い゛—ッ!!!」 ぁ・・・」 少女がいきなり起き上がったと思っ たら、歩き始めるではないか!両親 と3人の仲間は言葉を失った。 43  ——イエスは両親にこのことを決 して他言しないようにと忠告すると、 少女に何か食べ物を与えるようにと 加えた。

イエスの知恵ある教えを目の当たり にした地元の人たちは、自らの目と 耳を疑った。しかし、彼らには結局、 ナザレ出身の元・大工以上の男とし てはイエスを見ることができなかっ た。 4 ——はぁ・・・とイエスはため息を ついた。 「人から讃えられるほど偉大な預言 者でさえ、受けいれられない唯一の 場所がある・・・故郷、そして身内 だ」 5 ナザレでは、数人の病人に手を置


いて治した以上のキセキを行うこと が出来なかった・・・。 6 地元民の あまりの疑い深さに、むしろイエス の方が驚かされたのであった。  派遣されし十二使徒  そん なことが あった もの の、 そ の 地 方 に あった 他 の 町 や 村を訪 れて は、町の住人に熱く教え続けるイエ ス。 7 ある日、十二使徒を呼び集め ると、2人1組のチームに分け始め た。 ——「受けとれ・・・」 「!」 十二使徒は、イエスからスーっ と力が入ってきたのを感じた。力が みなぎる・・・!悪魔を追い払う力 が与えられたのだ!

イエスがこのように順序を説明する と、仲間は大きくうなずいた。イエ スは、使徒たちを励まし、力づけて 送り出したのだった—— 12  使 徒 たち は 他 の 町 や 村 へ 行 き、

出会う人に話しかけては、心を入れ 替え、生き方を変えるようにと愛を 持って教えていった・・・13 また、次々 に 悪 魔 たちを一 掃し、 病 人 に はオ リーブオイルを塗り、病も治していっ たのだった——【当時、オリーブオ イルは薬として用いられていた。ま たこの行為は、イエスと一味に、神 の魂を通して与えられた治癒の力を 象徴した】  怯えるヘロデ王

14 たちまちイエスは国中で有名にな り、そのうわさがヘロデ王の耳にま ていくんじゃ な い。 食 料、 か ば ん、 で届くほどであった。 お 金 もだ。まあ 長 旅 に なるだろう から、 杖ぐらい は い い が。 9  サン ——「あの洗礼者ヨハネに違いない! ダルも履いていいぞ!だが着替えは ヨハネが死からよみがえったんじゃ なしだ。 10  町に着き、誰かが 宿と なければ、そんなキセキは行えはせ して家に迎え入れてくれるなら、そ んじゃろう!」 15「 の 町 を 出るまでは そ の 家 にとどま   いーや、彼こそが預言されてき る。 11  もし、その町の住民が 誰も た新しい預言者エリヤだろう!」 受け入れてくれず、おまえたちの話 「・・・まるで、はるか 昔にいた預 に 耳を傾けない 場 合は、その 町を 言者たちのようじゃな」 さっさと去るんだ。そして彼らへの 警告として、足のちりを完全に払い 憶測が 飛び交う中、16 ヨハネの首 落とせ・・・!」 をはねたヘロデ王の顔は真っ青! 8「   いいか、旅のお供には何も持っ

イエスは使徒たちを送りだす前に以 上の忠告をした——【足のちりを払 い落とす行為は、“話すことはもう何 もない”という警告だった】

——「あ、あの、ヨ、ヨ、ヨハネが、 復活したなんて・・・・・ヒィ〰〰 〰〰!!!」 バチ当たりなことをしたと知ってい


たヘロデ王は、これを機にビクビク して生きていくのだった。  洗礼者ヨハネの死にざま  17 洗礼者ヨハネは、次のようにして

帰らぬ者となっていた—— ヘロデ王の妻・ヘロデヤは、もとも とヘロデ王の兄弟であるピリポと結 婚していた。しかし、ヘロデ王はそ んな のお 構 い なしに ヘロデヤを横 取りし、自分の妻にしてしまったの だ・・・このことについて黙ってい られない洗礼者ヨハネは、ヘロデ王 が一番の権力者であることに物怖じ せず、ドンと物申した。これが、ヘ ロデヤの 逆 鱗に 触 れ た の だ。 ヘロ デ王は、ヘロデヤの機嫌をとるため、 ヨハネを牢に入れるよう、兵士に命 じた。18  洗礼者ヨハネは声を大に してこう訴えた—— 「王よ、恐れ入りやすが、あっしも神 の使いですんではっきり申し上げさ せてもらいやす・・・兄弟の妻と結 婚することですが、こいつぁ断じて許 されやせんぞ・・・!!!」 これがヘロデヤの耳に触った。王家、 そして自分への侮辱にしか聞こえな かった の だ。 19  ひどく恥をか い た ヘロデヤは、洗礼者ヨハネに対する 殺意でいっぱいになった。夫である ヘロデ王にヨハネを殺すよう、何度 も持ちかけたが、どうにも説得がで きずにい た。20  ヘロデ王自 身、ヨ ハネを逮捕したものの、彼が神に仕 える正しい人であることを身にしみ て知っていた。 (このような、 聖 人を殺しでもした

ら・・・バ、バチが当たる・・・!) そう恐れていたヘロデ王は、嫁のヘ ロデヤの思いとは裏腹に、洗礼者ヨ ハネの身に問題が起こらないよう注 意して保護していたのだ!それどころ か、洗礼者ヨハネと時間を過ごすの が日課になっていた。そう、ヨハネ の話を聞くのがヘロデ王のひとつの 楽しみとなっていたのだ。その話に ヘロデ王は色々考えされた・・・ヘ ロデ王が毎度将来を見直させられる ほどだった。 21  そんな日々も束の間、ヘロデヤ に絶好の機会が訪れた。それは、ヘ ロデ王の誕生日のことであった。ヘ ロデ王は、自身の誕生日を祝うため に、 政 府 の 高 官 や 軍 の 司 令 官、ま た、ガリラヤ地方の権力者など、位 の 高い 者を招いて宴 会を催した の だ。 22  そこには、ヘロデヤの娘も 招 か れ、 招 待 客 たちの 前で踊りを 披露して見せた。彼女の踊りは、ヘ ロデ王を含み、招待客をとりこにし た・・・。この上なく喜んだヘロデ 王は、勢いあまって少女にとんでも ない誓いをした。

——「ワァッハッハッ!いーやいやこ れ は た まげ た!こ れ ほど 世 の 目 を 潤した者はおらんぞぃ! 褒美として、 おまえの欲しいものは、何でもやろ う! 23  もーなーんでもッ!! 何ならこ の国の半分をやってもええぞぉ!」 24 てへっ!返答を求められた少女は、

母親であるヘロデヤのところへ行っ た。


「お母様!何にいたしましょう?」 ヘロデ ヤが 待ちに 待った 瞬 間であ る!ヘロデヤは不気味な笑みを浮か べた—— 「洗礼者ヨハネの首をお願いするの! い い、 今 すぐ に 持ってこさ せるの、 わかった?!」 「え・・・は、はい、お母様」 25  少女はすぐに王のもとに戻った。

会衆も、少女が何を言うのか期待し ている様子だ。 「洗礼者ヨハネの首をください・・・ 今、彼の首を大皿にのせて持って来 てください・・・!」 「・・・」 すると宴会の場はガヤガヤと騒ぎは じめた。

が大皿に載せられ、少女の前に運ば れてくると、少女は母に渡した。母 は嫌な笑みを浮かべていた。 29  ——この事件は、すぐさまヨハネ

の仲間たちにも知らされた。一味は 大いに悲しんだ・・・・・・。それ から、ヨハネの遺体を引き取りに行 き、埋葬したのであった・・・。  5000 人の食卓  30 しばらくしてからであった。イエ スが送り出した使徒たちが、どこか たくましくなって戻ってきた。 それ ぞれがしてきたことや、起きた事を 互 い に 語り、 久 々の 再 会を 楽しん だ。 31  そんな彼らの周りには、い つものように人がぞくぞく押し寄せ る。こんなことではゆっくり食事をす ることもない。

「場所を移すぞ!」

26 思ってもみなかった願い出に、ヘ

仲間たちはうなづいた。 ロデ 王 も戸 惑 い、 額 からは 汗 がし たたり落ちる。かと言って、少女と 32  ——イエスと仲間たちは湖に泊め の約束を破ってしまえば、招待客た ちの前で王としての面目を保てない。 ていた舟に乗り込み、ひとけが少な い場所へ向かおうとした。 33 しかし、 ヘロデ王は心から後悔した。 それを見ていた人たちは、どのあた りへ行くのかを先読みし、先回りし 27「   んぬぅ・・・んな、なにをグズ た。 34 イエスが舟から降りてみると、 グズしている!彼女の言うとおりヨハ ネの首を切り落として、ここに持って (い゛ッ!) ごんか!」

す で に 人 が わ ん さ か 集 まって い 命令を受けた兵士は、牢獄に行った。 る・・・。

——ボトッ・・・・・・・ 洗礼者ヨハネの首をスパッと切り落 とした。 28  無 残にも、ヨハネの 首

(これほど飢えているというのに、誰 も見てあげないなんて・・・まるで 羊飼いのいない羊じゃないか・・・)


放っておくことなどできないイエスは ゆっくりすることを二の次にして、彼 らに多くの事を教えたのだった。 35 ——

薄暗くなるほど時間が経過し たころだった。イエスの元に仲間た ちが物言いたそうに寄ってきた。 「先生、ちょっといいかな?」 「どうした?」 「もう日も暮れてきたが、見るから にここら辺には誰も住んでなさそう だ。 36  今なら、近くの農家や町に 行って、食べ物を確保する時間もあ るしどうだ?そろそろ解散するという のは・・・」 37「   そうか。ならそう言わず、自分 が食べさせてあげたらどうだ!」

「ちょ、ちょっとご冗談を!こんだけの 人に食べさせるパンを買う手持ちな んてどこにあんだ!それだけのパン を買おうなら、俺たち全員で1カ月 働いてやっとだぞ!!」 38「   今、いくつのパンがある?ちょっ と見てきな!」

「え、おぅ・・・」——

が手分けして、せっせとグループ分 けをした。みんなを呼び集める大き な声と、移動のざわつきで辺りが慌 ただしくなった。ひとつのグループ、 およそ 50 人から 100 人にして分け られた。 41  イエスは5つのパンと2匹の魚 が入ったかごを持つと、天を見上げ、 与えられた食料を神に感謝した。す ると、持っているパンをちぎっては、 仲間たちの手に配った。

(この数の食糧を配ってどうすってん だいイエスは・・・ってあ、あ、あ、 あでぇ〰〰〰〰!!!) 配ったパンや魚が増え続けるではな いか! (すんげぇぇぇ!!!) キセキを目の当たりにしたことで一 味の心は踊った!ノリノリの仲間たち は、そのパンをグループに配ってま わった。同じようにして、2匹の魚も、 すべての人に分け与えられたのだっ た。 42  ——「あー無理!もー食べらんな い!」

仲間は手持ちの食料を数えに行った。 (えーと、1、2・・・) 誰もが満腹になった! 43  みんなが食 べ終わり、残り物のパンと魚を集め ——「イエス、パン5つと魚2匹し て み た。・・・ じゅ、12 の か ご が かないが・・・」 一杯に! 44 その場には、男だけでも 5000 人以上いるというのにだ!!! 39「   ならみんなをグループに分けて、 芝の上に座らせてくれ!」 40 そう決めると、イエスの仲間たち


水の上を歩く幽霊?  45 それからイエスは、先に舟に乗っ て湖の向こう側にあるベツサイダの 町に行くようにと一味に指示した。

1 人 残ったイエスは、 周りに い た 人 たちに も家 に 帰るようにと言 い 聞かせ、 46  みんなにさよならをする と、1人で祈るため、山に登って行っ た—— 47  その夜、イエスの一味を乗せた

なんでもないかのように乗り込んだ。 すると風がピタッと止んだ・・・・・・・ (あ゛、あ゛・・・・・・)空いた 口が ふさがらない。 52  パンを配っ た時のキセキに続き、たった今起き た出来事を目の当たりにした一味は、 なお、イエスが何者なのか理解に苦 しんでいた。  ゲネサレ平原の住民

53 イエスと仲間たちは、湖を渡った 舟が湖の半ばにさしかかったころだ。 先にあるゲネサレ平原のあたりに舟 イエスは、まだ 1 人 陸 に 残ってい を泊めた。 54 もちろん、ここでもイ た—— エスは有名人。 55  イエスたちが 舟 から降りると—— 48(ふむ・・・)イエスは岸から遠   く離れた舟を見つけた。仲間たちが 「!」 逆風の中で必死に舟を漕いでいるの が見える。時間にすると午前3時か そこらにいる人たちはイエスだと気 ら6時ごろに事件は起きた—— 付き、急いで地域住民たちに知らせ 始めたのだ。 イエスが 湖 の 上をすいすい 歩 き、舟を通り過ぎようとしていたの 「 お ォ ー ィ! 噂 の イ エ ス が 来 た だ・・・・・・! ぞぉー!!」 「えっ?」 49「   お、おい・・・」 「は!」 「ん?」 「うそぉ!」 「ヒ、ヒィェ〰〰〰〰〰〰〰〰!!!」 「ほ、本当かい?」

目ん玉が飛び出るほど驚いたイエス の 一 味 は、 湖 の 上 に 幽 霊が いると 思った。 50「   おいおい、ビビんなって!俺だ よ、俺!」 51 イエスは舟に手をつけると

よぃっと!

うわさは秒速で広まった。住民はイ エスを見つけては、病人たちを布団 に乗せてせっせと運んで来る。 56 イ エスが町や村を訪れると、決まって 住民たちが病人をつれて市場に集ま り、服の端っこでもいいから触れさ せてほしいと、イエスに頼み込んだ。 そして、触れた全員が治されたので あった。


7

8 あなたたちは神に従う以上に、人 によって作られた伝統を大事にして しまっている。 9 伝 統をしっかり守 ろうとするの に、 神 の 掟 は 拒 絶 す  神の掟と人間のしきたり  る。 10  モ ー セ は、“ あ な た の 父 と 母を敬いなさい”と言い、“自分の る日、パリサイ一派と宗教 父と母を悪く言う者は殺されなけれ の専門家たちが、エルサレ ば ならな い ” とまで言った。 11 に ムからはるばるイエスのも も 関 わらず だ!あ な た が た は 神 へ 2 とへやって来ると、    イエスの一味が、 の供え物をしっかりと捧げれば、父 ユダヤ人のしきたりを守らずに食事 と母を助けなくてもいいと教えてい をしているのを見た。 る。 12 その 供え物を用い れば、 両 3 ——パリサイ一派を含め、ユダヤ人 親を助けることができるというのに には、ある決まった手順で手を洗う だ!! などしてから食事をするのが常識で あった。先祖代々受けつがれており、 13 神の教え以上にしきたりを守るべ 幼い頃から“使用した物をある順序 きだと考え、周りの者さえも巻き込 で洗わなければ、汚れてしまう” な む。これだけじゃあない。似たよう どと教わり、ほとんどのユダヤ人は なことを数え上げたらきりがない」 非常に大切にしていたのだ。 4 また、 市場から戻ると食事の前には必ず体 ——【聖書:イザヤ書、申命記、出 を洗い、キレイであっても容器や水 エジプト記より引用】 差し、鍋を洗うといったしきたりも 守っていた。 図星をつかれたパリサイ一派と宗教 5 ——「あなたの弟子は、手を洗わ の専門家たちは、ばつが悪そうに顔 をしかめた—— ずに食事をしておりますが・・・? 常

識ですよ」 14 するとイエスは、もう一度自分の もとに人を呼び寄せた。 パリサイ一派と宗教の専門家たちは、 イエスに詰め寄った。 「いいか、俺が今から言う事をしっか 6「あなたが り聞いて悟れ!1  5 人は口にするもの   たが 伝統を重んじてい によってではなく、内側から出るも るのは、自分を良くみせたいがため のによって汚れる!1  6 聞く耳が ある ではないか!預言者イザヤが書き記 なら、よく聞くんだ !」 した 通りだ。“口では 私を敬う彼ら

だが、心は私から遠く離れたところ にある。 7 彼らは私を拝んでいるが、 全く無意味。彼らの教えは人の手に よって作られた掟にすぎないからだ” と。

17 そうしてイエスは その 場 を 去り、

一味と共に家に入った。 ——「あのさ先生、さっき言ってたこ


とって・・・どういう意味?」

あった。

イエスの仲間は、先ほど聞いた言葉 を理解していなかったのだ。

27「そーれはよくない   !子どものパン を取り上げて犬に与えるなんて。犬 よりも最初に子どもたちが食べるべ 18「まだ分かんないのか?神は、人   きでしょう!」 28「先生、おっしゃる通りです が口にするものを理由に、人間を拒   !です 否することはないってことぐらいおま が、食卓の下にいる犬にも子どもた えたちなら分かるだろう!1  9 食べた ちの食べこぼしたパンくずを食べる ものは、心ではなく腹を通って出て 権利はあります・・・!」 いく。 20  心 から出る考え、また は、 29「   あ あ、 そ の 通 り だ!さ あ さ あ、 行動によって人は汚れ、そうじが必 早く娘さんのもとへ! もう悪魔は出 要になる。 21 悪い考え、性的な問題、 て行きましたよ!」 2 盗み、殺人、   2 結婚した異性以外と のセックス、欲張り、人を傷つける ——【 外 国 人 だからといって、イエ こと、嘘、勝手気まま、ねたみ、侮辱、 スが彼女にそっけない応答をとった 高慢、愚かな生き方というのは、全 のにはわけがあった。イエスの仲間 て心の内から始まる。 23 これらの過 には外国人を差別する者もいたため、 ちにより、人は汚され、神に背を向 その過ちを正すため、一度は大げさ けられる・・・。だから不可欠にな に拒否し、その愚かさをみせてやっ るのがそうじだ・・・!」 たのだ】

おこぼれを食べる犬  24 それから、イエスはツロ地方に向 かった。自分がいることを町の人々 に知られたくなかったので、こっそり ある家に入ったが、気付かれるまで そう時間はかからなかった。 25 この 噂はある悪魔に取り憑かれてしまっ た娘を持つ母の耳にも入った。イエ スの居場所をつきとめた彼女は飛ん で行って、イエスの足元にひれ伏し た。 26「む、娘をどうか・・・助けてく

ださい!」 彼女はユダヤ人ではなく、シリアに あるフェニキア地方出身の外国人で

30 ——母親が急いで家に帰って娘へ かけよると、そこには、気持ちよさ そうに 眠っている娘 の 姿が・・・! 母は「はぁ」とため息をつくと、体 の力がストンと落ちた。

エパタ  31 イエスはツロ地方を去り、シドン からデカポリス地方を通ってガリラヤ 湖に戻った。  32「た、頼んます・・・   !」

そんなとき、耳が聞こえず、はっき りと喋れない男が、身内などに連れ られてやって来た。 身内は彼の上に手を置いて治してほ


3 しいと頼むと、   3 イエスは耳の聞こ えない男をつれて2人きりになりに 行った。イエスは、彼の耳に指を入 れると、指にペッとつばを付けた。 はい、べー・・・

そ し て、 そ の 指 を 男 の 舌 に 乗 せ た・・・。 34 イエスは天を見上げ、大きく息を 吐いて言い放った。 「エパタ!」 35 キィ――ンッ

男は一瞬にして耳が聞こえるように なったかと思うと、はっきり喋ること までできるではないか!3  6 イエスは この出来事を他人に話さないように と彼の身内を含めて忠告したが、注 意すればするほど、彼らはこの話を 広めた・・・

こにいた人たちの弁当の底がついて いたのだった。そこでイエスは、一 味を呼び寄せた。  2「可哀想だと思わないか。みんな   もうかれこれ3日間ついてきている た め に 食 べ もん が な い。 3 お 腹 を 空か せ たまま帰すわけに は い か な い。 遠くから来た人たちもいる、途 中で倒れちゃあいかないからな・・・」  4「そ、そうは言っても   ! 町からはだ いぶ離れたし、こーんなにたくさん 人がいるのにどっから食料を調達す るつもりで!」  5「パンはいくつある?」

「え・・・?ッとー。7つしかないけ ど・・・」  6 ——それを聞いたイエスは群衆に

座るように伝えた。  37 ——「あの方はやる事なす事、と

んでもなく素晴らしいんだッ! 耳の聞 こえない人が 聞こえるようになって、 はっきりしゃべれなかった人がはっき り話せるようになったんだぜ!!!」 驚きと興奮のあまり、口を閉じるこ とができなかったのだ。

すると、イエスは7つのパンを手に 取り神 に 感 謝 をささげ た。 そして、 パンをちぎり、ほらっと仲間たちに わたした。一味は指示されたとおり、 群衆にパンを配り始めた。  7 他にも小さな魚を数匹持っていた

ので、イエスはもう一度神に感謝す ると、仲間たちに手わたし、群衆へ 配ってもらった。

8 あ

満腹 4000 人

8 こうして全員、満腹になるまで食

べ、辺りは笑顔でいっぱい!イエスの る日、イエスの周りにたく 一味が食べ残りを拾い集めると、7 さ ん の 人 が 集 まってい た。 つのかごがいっぱいになるほど残っ しかし、問題があった。そ ている!


9 そこには軽く 4000 人以上いると いうのにだ・・・。こうして、心配 なく群衆を帰らせることができた。  10  ——  い よっと!・・・よっこらっ しょ!・・・うし、出発進行!!!

それから、仲間たちと一緒に舟に乗 り込み、ダルマヌタ地方に向かって 出発した。   求められるしるし   11「あなたが本当に神の力を持って

航した。  あ!ッちゃ ー・・・・・・ イエ ス の 仲間たちは、肝心なパンを積み忘れ ていた・・・。1つだけパンを持っ ている人はいたが、食料はこれだけ となってしまった。  15 ——「パリサイ一派のイースト菌

や、ヘロデ党のイースト菌は危ない から気をつけんだぞ!」  イエスは仲間に忠告した。

いるのであれば、そのしるしとして、 16・   ・・・・・? となる仲間たち。  キセキを起こし、証明してみせなさ い」 「たぶんあれだ、俺たちがパンを忘 れたからだ・・・」  ある時、イエスが本当に神の使者な 「い゛ッ違いねぇ・・・」  のかを知りたいパリサイ一派が突拍 子もないことを吹っかけにイエスの 一味は、イエスの言ったことについ もとへやって来た。  て話し合い始めた。  12「はぁ~・・・」

イエスはあきれて、深いため息をつ いた。

17「なぁなぁおまえたち   !」

イエスは仲間の話していることに気 付いた。

「なぜ、しるしを求める?はっきり言 うが、あなたたちを説得するための 「なんでパンが ないことを気にして キセキなんて起こりはしない・・・!」  んだ? まだ見ることも理解もできな いのか?おまえたちの頭は停止でも した か? 18 目 は あっても 見 えな い 13 そう言って、そそくさとイエスは その場を去った。それから舟に乗り、 の か?そ れ は 聞こえもしな い 耳 な の か? 前 に パンが 足りな かったと 湖の反対側へ向かったのだった。  き、 俺 が 何をした か 覚えてな い の か? 19 5 つ の パンを 5000 人 に 分  仲間の誤解   け与え、おまえたちが拾った残りも 14 さぁ次だっ!  んで、いくつのかごがいっぱいになっ 一同は、気持ちを切り替えて舟を出 た?」


25 イエスは、もう一度彼の目に手を

「12 のかごがいっぱいに・・・」  20「4000

人に7つのパンを配った

置いた。  ——カッ!

時は?」  「7つ・・・」  21「俺のしたことを覚えていてなお、

理解できないのか?」   ベツサイダの盲人に2度目の手  22「お願いしますッ   !どうか、彼に触

れてやってください!こいつの目を治 してやってください!!」  イエスと一味がベツサイダの町に着 くと、数人の人が盲目の男を連れて 来て、イエスに頼み込んだ。  23 イエスは了 解すると、 男 の 手を

「 み、 見 える、 見 える ぞぉ 〰 〰 〰 〰!!!」  盲人の目は、かっ開いてはっきり見 えるようになった!  26「帰る途中、街へは寄らないよう   に!」

変な騒ぎが起きることを心配したイ エスは、家に帰らせる前に忠告して おいた。   イエスのうわさ  27 イエスと一味は、ピリポ・カイザ リヤの町々へ向かっていた。

取って村の外まで連れて出た——  ペッ!  イエスは盲目である男の目につばを 吐きか けると、 その 上 に 手を 置 い た・・・。  「見えるか?」  24 盲目の男は顔を上げ、見えない

はずの目で見ようと目をパチクリし た。  「えぇ・・・あ、は、はい!ひ、人? 何 人か見えますが・・・まるで、木が 歩き回ってるようだ・・・」

——「人は、俺のことを誰だと言っ ている?」   28「洗礼者ヨハネだと思ってる人た   ちがいましたよ!」

「預言者エリヤだとか、預言者の一 人だって言う人たちもいるよなぁ」  29「そうか、おまえたちはどうなん

だ?」   「あなたこそが神に選ばれし王、救 世主だ!!!」  真っ先にペテロが答えた。


30「ああそうだ。だが、俺が何者か   は、ここだけの話だ・・・!」

「誰でも俺について来たいなら、自 己中な考えを捨てなければならない。 俺の後に続けば、わたされる十字架 を進んで背負わなければならない。

イエスの後に続く者

35 誰でも自分の人生を自分で救おう ものなら、それを失う。だが俺のた み を 通らな け れ ば ならな い・・・。 め、また、最高な知らせを告げるた ユダヤ教 の 指 導 者、 祭 司 長、モー めに人生を捧げる者は、人生をモノ セ法学者たちは、俺を認めない。そ にする。  して俺は彼らに殺される必要があり、 その3日目に蘇る・・・!!!」  36  た とえ、 世 界 を 手 に い れ よう 31「この人、イエスは、多くの苦し

イエスは歩きながらこれから起こる 預言を仲間へ伝えた。  32 イエスは、仲間に何1つ隠さな かった。

ちょっと、ちょっとイエス—— すると岩のペテロが、イエスを横に 連れて仲間から少し離れた・・・  いけないよ・・・  ——ペテロはイエスの預言を正そう とした。 33 するとイエスは、仲間た ちの方を向いた。  「失せろ、サタン!神の思いはそっち のけで、人間の欲に漬け込みやがっ て・・・!」   これは岩のペテロを使用した悪魔に 放った言葉だった。  34 ——するとイエスは一味と群衆を

呼び集めた。

と、 自 分 自 身を 失えば 元 も子 もな い。3  7 どれだけお金を積もうが、失っ た命を取り戻すことはできないから だ・・・!  38 おまえたちは、 神に不 忠 実で過 ちだらけな世の中にいる。だがいい か、そんな中でもこの俺と俺の教え を恥と思うことがないように。もし 仮に恥だと思うようなことがあれば、 この人、すなわち俺が父さんの栄光 をおび、天使の軍政を従えて戻る時、 俺はその人を恥る・・・!!!」

9 イ

エスは 群 衆を見 渡し、こう 続けた。 「この 中 に は、 神 の 王 国 の 圧倒的な力を死ぬ前に拝める者がい る・・・!!!」  伝説の預言者エリヤ・モーセ現る  2 6日後のことであった——


イエスは十二使徒のうち、岩のペテ ロと雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネの3 人を連れて高い山に登った。山頂に は、彼ら以外だれもいない。

7 ——ぐおぉぉぉ・・・

すると、雲が現れ、彼らを雲がおおっ た。また、その中から声が聞こえて きた。

・・・ドヒュンッ! 「ゔわぁぁぁ—っ!!!」

「・・・これは俺の愛する子だ。い い か、 カ レ の 言 う こ と に 従 う の だ・・・・・・!!!」

使 徒 たちの 目 の 前で一 瞬 にしてイ エスが変身したではないか! 3  服は 光り輝くほど純白で眩しい。それは 人の手で作ることのできない白さで あった・・・

ふとわ れ に 返って辺りを 見 回 すと、 元通り、彼らとイエスしかいなくなっ ていた。

4 トコトコ・・・・・・ 「!」

9  その 後、イエスと3 人 の 使 徒 が、

8  ヒュ ~・・・・・・ 使 徒 た ち が、

一緒に山を降りている時のこと—— 突然、2人の男が現れたかと思うと イエスと親しそうに話し始める・・・ 誰だ?と使徒たちは目をこらすと・・・ な、なんとそれは、あーの伝説の預 言者エリヤとモーセではないか!!! 5「   イ、イエスゥ〰〰っ!光栄ですっ! ほんと光栄ですっ!なんと言うか、こ、 この場に居合わせることができるな んて・・・ そ、 そうだ!み なさまが 神を讃えるためのテントを3つ、わ れわれに作らせて下さい!ひ、ひと つはイエスの名誉、それとモーセ様 とエリヤ様の名誉のた、た、た、た めに!!!」 ——【紀元前、神殿が建てられる前 のユダヤ人は、テントの中に神を礼 拝する場所を設けていたのだ】

「いいか、この人が死から蘇るその ときまで、ここで見たことは心に閉 まっておけ・・・!」 10  使徒3人はこのイエスの忠告を

守り、山で見たことを他言すること はなかった。しかし、“死から蘇る” という言葉の意味が理解できず、な んのこっちゃと話し合い、煮詰まっ たあげく、イエスに尋ねることにし た。 11  ——「なぁイエス、なんで宗教家

たちは、“まず最初に、預言者エリ ヤが 来 なけ れ ば ならない ” なんて 言ってんだ?」 12「   あぁ、確かにまずエリヤが来て

6  岩のペテロは勢い余って口走った

全てを備えるが、なぜ聖書には、 “こ が、自分でも何を言っているのかさっ の 人 は 大きな 苦 痛をとおり、 人 に ぱり。彼を含む使徒の3人は恐れの さげすまれる”と記されていると思 あまり、瞬きもせずに硬直していた。 う? 13  だ が 実 際、 エリヤはすでに


来た。いまだにエリヤが来ることを 楽しみに待ち望んでいる彼らこそが、 知らず知らずエリヤをひどい目に遭 わせた張本人だ。聖書で起きると記 されたとおりにな・・・!」  取り憑かれた少年  14  山を降りたイエスと岩 の ペテロ、

雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネが 一味 のもとへ戻ると、大勢の人たちが一 味を中心に集っていた・・・何やら モーセ法学者と仲間たちが議論して いるようだ。 15 ——「おっ!イエスだー!」 「イエスが帰ってきたぞー!」

仲間はイエスを見るなり走り寄って、 歓迎した。 16「   何を議論してんだ?」 17 イエスが聞くと、ある男が進み出 てきた。

「先生!息子が 悪魔に侵され、話す ことができないんです・・・イエス 先生ならと思い、見てもらいに来た んです!! 18  憎い悪魔は、息子が口 から泡を吹くほどにドンッと地面に 投げ倒し、歯ぎしりをして硬直させ やがるんです・・・ぐすッ・・・先 生がいないって言うんで、先生のお 弟子さんに悪魔を追い払うよう、お 願いしたんですが、無理だったよう で・・・先生、どうかっ!」 19「   なぜ信じない・・・?

いつまで 俺が一緒じゃなきゃいけない。あな

た方のためにいつまで我慢すればい いんだ・・・!その子をここに」 20  ——

数人がかりで取り憑か れた 少年を連れてきた。ところが悪魔は、 イエスを見るなり少年をさらに苦し め始める! ぐ わぁぁぁ〰 〰っ・・・ブクブクブ ク・・・・・・ 少年は地面に倒れて転げ回り、口か ら泡を吹い た。 21  それを見たイエ スは哀れんだ表情を浮かべた。 「いつからですか?」 「もぉ幼いときからです・・・ 22  こ の悪魔が息子を殺そうと、炎や湖の 中に身を投げ込むもんで、息子は何 度死にかけたか。お、お願いします! もし救えるなら、うちの子を救ってく ださいッ!!」 23「   なぜ もしと言う?・・・ 信じる 者に不可能はない」 24「   し、信じますとも!どうか、不届 き者である私がもっと信じられるよう に、助けてください!!!」 25 イエスはわんさか野次馬が集まっ てきたのを見てから、悪魔をギロッ とにらんだ。

「おい、耳と口をふさぐ悪魔よ。少 年から出ろ。そして2度と戻ってくん じゃねぇ」 26「   ウギャァァァァ〰〰・・・・・」 悪魔は叫び声をあげながら、少年を 地面にもう一度投げ倒して出ていっ た。少年は白目を向いてピクりとも


最も偉大な者

しない・・・ 「し、死んじまったァァァ——!!」

33 イエスと一味はカペナウムの町に

向かった。

恐ろしくなった群衆はキャーキャー騒 ぎ始めた。 27  イエスは平然と少年 の手を取り、立ち上がらせた。

——「道中、何について議論してた んだ?」

28 騒ぎが一段落すると、イエスは仲

ある家に着くと、イエスが一味に問 いただした。

間たちと一緒に家に帰った。 ——「先 生・・・どうして俺 たちに はあの悪魔を追い出すことができな かったんだい・・・?」 一味だけになってから仲間たちは尋 ねた。 29「   あの種の悪魔は、祈らなければ

追い出せない」  イエスの死にざま  30 イエスと一味は、人に見つからな いよう、密かにその町を出発し、ガ リラヤ地方を通って旅を続けた。 31 イエスは一味にのみ伝えたいこと があったため、他に誰もいない所に 来た——

「こ の 人 は 人 の 手 に 渡り、 殺 さ れ る・・・。そして、3日目に蘇る・・・!!!」 32「   ・・・?」

一味にはなんのことかさっぱりだっ たが、恐ろしくて誰もつっこむ気に なれなかった。

34(い゛ッ・・・気づいてたのか   !)

仲間たちは、たちまちとぼけて、な んのことか知らんぷりっ。自分たち の中で誰が一番偉いのかを論じ合っ ていたなんて、とてもじゃないがイ エスには言えない・・・。 35 イエスは腰掛けると、十二使徒を 集めた。 「一番になりたいか?誰でも一番に なりたいなら、自分のことは後回し で人に仕えなければならない・・・」 36  イエスは幼い子どもを一味の前 に立たせ、その子を両手で抱えた。 37「   このように、幼い子どもを俺の

子かのように受け入れる人は、俺を 受け入れた。誰でも俺を受け入れる 人は、俺を遣わした神をも受け入れ たことになる!!!」 敵対しなければ味方  38「   先生!先生の名前を勝手に使っ て悪魔を追い出している人がいたん だ!だがもう大丈夫だ! 仲間じゃな かったから、俺たちで止めといたか


んなっ!」 39「   おいおい、止めるなよ! 俺の名 によって、大きなことを成し遂げる 人が、俺のことを悪く言うことはな い だろ? 40  俺 たちに 敵 対しない 人 は俺たちの味方だ! 41 いいか、おま えたちが俺の仲間だからというだけ で、水を一杯でも飲ませてくれる人 は必ず報われる」

誘惑を絶つ警告  42「   俺を信じるうぶな人を間違った

道へ陥れる人は、首に大きな石臼を 巻かれて、海に沈められる方が、ま だましだ・・・ 43 もし片方の手が過 ちを犯すなら、その手を切り捨てれ ばいい。両手を持って地獄に行くよ り、片手を失って天国に行く方が断 然いいからだ!地獄では燃えつきる ことがない炎で燃やされ続ける・・・ 44 - 45 もし片方の足が過ちを犯すな ら、その足を切り捨ててしまえ。両 足を持ったまま地獄に投げ込まれる よりは、片足を失って永遠の命を得 る方が 間違いなくましだ! 46 - 47  も し片方の目が過ちを犯すなら、その 目をえぐりだせ。両目を維持したま ま地獄に投げ込まれるよりは、片目 を失ってでも神の王国へ行く方がい い。 48 地獄では、人を食い尽くすう じ虫と炎とが絶えることがない!

おまえたちは塩気を失わないように 注意すんだ!そして、互いに平和を 持って暮らすように、いいな!」

10 カ

離婚の権利

ペナウムの町を出発したイ エスは、ユダヤ地方に向かっ てい た。ヨルダン川を渡っ たところで・・・

「おっ!イエスだー!!」 再び多くの人たちが集まって来たの で、イエスは教え始めた。 2 するとそこへ、パリサイ一派がやっ て来た。 「イエス先生に質問です! 夫は妻と離 婚する権利を、はたして持っている のでしょうか?」 (さあ答えてみなさい・・・)笑顔 の 裏 腹 にイエスを 罠 に 陥 れ たくて 突っかかった。 3「   モーセは、何て言った?」 4「   夫が 離 婚 状を書くならば、 妻と

の離婚を許すとありますが」 ——【聖書:申命記より引用】 5「   ああ、妻を愛し続けないことで、

49  全ての人は火のような試練で塩

神の教えに背くあなたたちのために、 漬けされて塩気を増す・・・! 50 い モーセが記した掟だ! 6 ・・・真にあるべき姿はではない。 い塩も、塩気をなくせば、だいなし だ。味付けの役にたたない。いいか、 神がこの世界を創ったとき、人を男


と女とに造った。 7  男は父親と母親 を離れ、自分の妻と結ばれる。 8 こ うして、夫と妻はひとつになる! 9  神 がひとつに結び合わせたんだ、誰も 引き離してはならない!」

せ・・・子どもたちは、まるで神の 国民だからだ。 15  いいか、子ども が物事を鵜吞みするように、神の王 国を受け入れなければ、入国できや しない・・・!」

——【聖書:創世記より引用】

16  そう言うと、イエスは子どもたち を抱きかかえ、彼らの上に手を置い て祝福したのであった。

うっ・・・パリサイ一派は、イエス の言葉に何も言えなくなってしまっ た。 10  そ の 後、 家 に 帰って か ら の こ と——

「イエス、さっきの離婚についてだけ ど・・・・・・」 一味は、再確認した。 11「   事 実、 妻と離 婚して他 の 女と

結婚すれば、不倫を犯したことにな る。 12 妻もしかり、夫と離婚し、他 の男と結婚すれば、不倫同然だ」  子どもの祝福

裕福な男  17  イエスが その 場から立ち去ろう とすると、ある男が駆け寄って来て、 イエスの前にひざまづいた。

「聖い教師よ、私が永遠の命を得る ためには、どうすればよいのでしょ うか?」 18「   なぜ俺を“聖い者” 呼ばわりす る? 神のみが聖なる方だ。 19  それ に、“殺さない、結婚した人以外と セックスをしない、盗まない、うそ をつかない、だまさない、父と母を 敬う”という神の掟ぐらい知ってい るだろう?」

13  ある時、どこからともなく子ども

連れの人たちが集まって来た。 ——「しっし、だめだめぇー! 先生は 忙しいのッ!」 イエスに手を置いてもらって、自分 の子どもの幸せを祈ってもらおうと したが、イエス一派から数人、それ を止めようとした。 14 ——それにイエスが気づいた。

「 止 め る なッ!!! 子 ど も た ち を 通

20「   もちろ ん です、 先 生! 幼 い こ ろから、ぜんっぶ守り続けておりま すッ!!」 男は、自信気だ。 21  イエスは 心 から彼 のことを思っ

た。 「ああ、惜しいが1つやり残してい る・・・。俺のあとについて来い!だが、 その前に自分の全財産を売り払って 貧しい人たちに与えるんだ。そうす


れば、天にあなたの富が築かれる!」 岩のペテロが突然声を上げた。 22「   え・・・・・・!」

はつらつとしていた男の表情がとっ さに曇った・・・・・・ この男、相当な金持ちなのだ。結局、 お金だけは諦められないと男は帰っ て行った。めそめそしながら立ち去 るその背中はなんと小さいことか。 23  イエスは、仲間たちの方へ振り かえった。

「 裕 福 な 者 が 神 の 王 国 に 入るの は、 至難の業だ・・・」 24「   えッ?」

このイエスの言葉に、仲間は驚いた。 「若者のみんな、富に信頼をよせる 者が神の王国に入るのは厳しい。  25  富に信頼をよせる者が神の王国 に入るよりか、らくだが針の穴を通 る方がまだ簡単だ・・・」 26「   そ、それなら一体誰が救わるっ て言うんだよ・・・」

仲間たちは、こう互いに言って一様 にとまどいはじめた。 27「   人間に不可能でも、神にはでき る。神に不可能という概念ない!」 イエスは、 仲 間 たちの 疑 問を 断ち 切った。 28「   俺たちは全てを置いて、あなた についてきたッ!」

29「   約束する! 誰でも最高な知らせ である俺 の た め、自 宅 や 兄 弟 姉 妹、 父と母に子ども、財産までも差し置 いた者は、 30  その 100 倍の報酬を 受けとることになる。

この世で悪くされ、悪く言われよう が、 家 や 兄 弟 姉 妹、 母、 子、 財 産 は倍になって戻って来る! それだけ じゃない。後に行く世界では永遠の 命さえ報酬として与えられる!! 31 その時には、この世で最もいばっ

た者が最も低くされ、最もへりくだっ た者が最も高くされる!!!」  死に場所へ  32  イエスは、仲間と群衆の先頭に

立って、エルサレムの町に向かい始 めた。仲間たちは、後ろでこれから 何が起こるのかと考えていた。その また後ろの群衆は、これから起こり うることを恐れつつもついて来てい る。 ——イエスは十二使徒を呼び集めた。 歩きながら彼らにのみ、エルサレム で起こることを伝えたかったのだ。 33「   俺たちは、これからエルサレム へ 行くが、まずこの 人 は、 祭 司 や モーセ法学者たちの手に渡る。彼ら は、“この人が死ななければならな い”と言って、俺を外国人に引き渡 す。 34  その外国人たちは、この人 をバカにし、つばを吐きかける。そ して、ムチで打ち・・・殺す。だが、


3日目にこの人は復活するッ!!!」  苦しみの杯  35「   先生・・・お、お願いがあるの ですが・・・」

ゼベダイの子である雷兄弟 兄ヤコ ブ・弟ヨハネが、イエスのところに やって来た。

36「   ん、どした?」 37「   あなたが王として王座に君臨す る時、その栄誉を俺たちにも分かち 合ってもらえないでしょうかッ!! 1 人 は、あなたの右の座に、もう1人は 左の座に座らせて下さい!」

他の使徒たちは2人にキレた。 42 そ の状況を知ったイエスは、みんなを 呼び集めた。 「外国人たちには権力者がいるよな。 知ってのとおり、権力者は自分の力 を見せつけるのが大好きだ。そして その権力者に仕える指導者たちは自 分たちの権力を振りかざすのがたま らなく好きだ。 43 いいか、おまえた ちは、そうであっちゃいけない! 上に立ちたいなら、喜んで彼らに仕 えなければならない。 44 1番にな りたいなら、召使いように彼らに仕 えなければならない。 45  この人は、 人に仕えてもらうためではなく、仕え るために地球に来た。 それは、自 らの命と引き換えに、人間が救われ るためだ・・・!!!」

38「   おまえたち・・・自分でも何を言っ ているか 分 かってな い み た い だ な。  盲目のバルテマイ  俺が飲まなければならない苦しみの 46 その後、イエスと一味はエリコの 杯を味わえるか? 俺が通らなければ ならない洗礼という名の試練を受け 町にやって来た。イエスの周りには、 られるか?」 たくさんの人がついて来ていたので、 あっという間に町は人であふれ返っ 39「   も、もちろんッ!!」 てしまった!

「ああ、確かにおまえたちは、俺と 同じ苦しみの杯を飲み、同じ洗礼を 受ける。 40 だとしてもだ。隣の座に 座る人を決めるのは俺ではなく、神 だ。神に選ば れた者がその座に座 る・・・!」

イエスたちがエリコの町を出たとき、 道端にバルテマイという名の盲目の 男が座っていた。彼は、いつもその 場所で物乞いをしていたのだ。 47 ——(ん?

何だか今日は、やたら 騒がしいな・・・)

41  ——2 人がしたお 願 い に つ いて、

他 10 人の使徒の耳まではいった・・・。 目の見えないバルテマイだが、周り にいた人たちの話し声から“ナザレ 「俺らを出し抜こうってのかッ・・・!!」 のイエス” が自分のいる道を通るこ


とが分かった。 ——「イエスさまぁー! ダビデ の 子 よぉ!どうか私を助けて下さい!!」

52「   行けッ!あなたが信じたからこそ、 目は完治した!」

——ハッ! バルテマイは目をパチクリさせた。

突然、バルテマイは大声で叫んだ。 「み、見えるぅ――!!!」 48「   うるさいよ、お前!」

「お前やかましいな、おい!黙ってろ」 「んダ〰 ビデの子、イ〰エスさまぁ 〰 〰!!ど〰 か 私を 助 けて下ざぁ〰 い!!!」 そこにいた多くの人が、突然叫び始 めた盲目の男を黙らせようとした。

彼は大喜びで町の外までイエスにつ いていったのであった。

11 イ

王の帰還

エスと一味はエルサレムまで だ が バ ル テ マイは、 黙るどころか、 あと少しというところであっ さらに大声で叫ぶ! た。オリーブ 山 の 近くに あ るベテパゲとベタニアの町に到着し、 イエスは2人の仲間を呼んだ。 49 ピタッ・・・ イエスは、その場に立ち止まった。 「こっちへ来るよう、彼に伝えてくれ るか!」 「うっす!」 「よかったなー!さあ立ちな! イエス が呼んでんぞ!!」 50  バルテマイは軽快に立ちあがり、

上着をバサッとその場に置いてから イエスまで案内してもらった。 51「   どうしてほしいんだい?」

「先生!もう一度・・・もう一度、見 えるようになりた゛い゛ッ!!」

2「   これからあの町へ行ってくれ。そ

こには、まだ誰も乗ったことのない 若 い ロ バ が いる。 その 綱をほどき、 俺のところに連れてくるんだ。 3“   な ぜロバを連れて行くんですか?” と 聞いてくる人がいれば、“主人が入 用で、すぐに戻す”と答えるといい」 4  ——おっ!2人は町に入ると、通り

に面した家の戸口に若いロバがつな がれているのが見えた。彼らはよし よしと綱をほどいていると、 5  その場 に立っていた人たちが不思議そうに 見ていた。 「あんちゃんたち、ロバの綱をほど いてどうすんだい?」


6「   い や、主人が 入り用でね。すぐ にお戻ししますんで!」

2人はイエスに言われたとおりに答 えると、不思議なことにその人たち は納得しているようだった。 7  —— 2人はイエスのもとにロバを

連れて来た。バサッと次々に仲間た ちが上着を脱ぎ始め、イエスが乗る ロバの背に上着をかけると、イエス はその上にどしっと座った。 8  イエ スを迎えるために、大勢の人が道の 上に上着を敷き始めた。中には、小 枝を切ってイエスの通り道の上に敷 く人たちもいた。 9  ある人はイエス の前を歩き、ある人は後ろについて 歩いた。 バンザーイ!神に栄光あれェ—! 我が君の名によって来られる方に幸 あれェ—! ——【聖書:詩篇の預言】 10  我らの父、ダビデの王国に幸あ れェ—! 今こそ、その王国が建ちあがる! 天の神に栄光あれェ—!えい、そら、 わっしょい!! みんなはイエスを王として崇め、讃 えた! 11 こうして、イエスはエルサレムに 入ったのである。 ——それから、イエスは神殿の境内 に入り、辺りを見渡したが、既に日 も暮れていたので、十二使徒と一晩 休むため、ベタニアに向かった。

呪われたイチジクの木  12 翌日、イエスと一味はベタニアを

発った。ぐぅぅぅ・・・イエスは お 腹の虫が鳴るほどおなかが減ってい た。 13 イエスが遠くを見ると

——「お!」

これはこれは遠くに葉が茂るイチジ クの木が見える。イエスは実がなっ ているかどうかを確かめに、その木 に近寄った。しかし、実が生る季節 ではなかったので、あるのは葉っぱ のみ。 ヒュ~・・・ 14「   人は、もう二度とお前の実を口 にすることはない・・・」

イエ ス が イチジクの 木 に 向 かって 言ったことは、仲間たちにまで聞こえ た。  神殿内の商売  15 イエスと一味がエルサレムに着く と、彼らは神殿の境内に入った。

——「!!!」 神殿の境内で商売をしている人たち を見て、イエスの目が変わった。 ドンッ! 何やってんだ、コラ゛ァァァ— —っ!! イエスは 両 替 人 たちの 机 や、 ハト を売っていた商売人たちのイスを勢


いよくひっくり返した。 16 イエスは 神殿の周辺で物を売ることを許さな かった。

だったその木が、根元から枯れ、変 わり果てていたのだ。 21「   せ、先生ッ!見てくれ!あんたの

17「   聖書に“私の神殿は全ての国々

言ったとおりになってるよッ!!」

の祈りの家と呼ば れる。” と書いて あるにもかかわらず、なんだこの有 様はッ!おまえたちは神殿を泥棒の 巣にしてしまったんだぞ!!!」

これを見た仲間たちの中でも、特に ペテロが強く反応した。

「ひぃーすみません・・・!!」 イエスは、追い出した人たちや関係 者たちを強く叱った。 ——【聖書:イザヤ書、エレミヤ書 より引用】 18 あ、あやつめ、許しませんぞぉ・ ・・ イエスがここで行ったことを耳にし た祭司とモーセ法学者たちは、イエ スを逮捕して、殺すための策略を練 り始めた。ただ、懸念していること があった。

22「   神を信じるんだ。 23  おまえた ちがこの山に向かって、“海に入れ” と命じ、そうなると信じて疑わない なら、神がそのとおりにする。 24 ま た己の願いを神に祈り求め、それが 既に与えられたと確信するなら、そ の 通りに な る・・・! 25  だ が、 も し誰 か を 許 せず に いるならば、 願 う前にまず、その人を許すんだ。そ うすれ ば、 天 に い るおまえの 父 さ ん も、 あ な た の 過ちを 許してくれ る・・・!」 26

神?それとも人の権威?

27 イエスと一味は、再びエルサレム に行った。イエスは神殿の周辺を歩 イエスの教えに影響された人たちだ。 いていると祭司やモーセ法学者、年 今やイエスは、町中、いや、各地方 配のユダヤ人権力者たちがイエスの 中の人たちから慕われ、多大な支持 もとに血相を変えてやって来た。 を得ていた。イエスを殺したとなれ ば、 大勢の人の反感を買い、 己 の 28「   い゛ったい、あなたは誰の権限 支持を失い兼ねない・・・ 19 その夜、 によって、このような事をされてい イエスは仲間を連れ、町を後にした。 るのですか、えェ?誰がその権限を 与えたのか、言ってごらんなさいッ!」  確信の祈り  20 翌朝、イエスと一味が歩いている

と・・・ おぉ!昨日、イエスが呪ったイチジク の木が見えた。だが、様子が明らか に変だ。つい昨日まで元気いっぱい

29「   ・・・その前に、聞きたいこと があります。それに答えることがで きれば、私も誰の権限によってこれ らの事をしているか答えます。 30 さ

て、洗礼者ヨハネが人に洗礼を授け


ていた時、彼の権限は神から来たの でしょうか、それとも人から来たの でしょうか?」

出た。

2  やがて、収穫の時期が来ると、ぶ どう園の主は自分の分け前を取りに、 31  ユダヤ人の権力者たちはイエス 雇われ農夫たちのところへ使用人を の質問についてヒソヒソ相談し始め 遣 わした。 3  雇 わ れ 農 夫 は、 到 着 た。 した使用人に分け前を与えて敬うべ きところだが、使用人を袋叩きにし、 「もし“ヨハネの洗礼は神から来た 何も持たせずに送り返した。 4  そこ ものです” だなんて答えてみなさい、 で主は別の使用人を遣わしたが、結 やつはきっと“でわなぜ、ヨハネを 果は変わらず、農夫たちは使用人の 信じなかったのですか?” なんてほ 顔をぶん殴って、侮辱した。 ざくに違いない・・・。 32 くっ、し 5  それでもこらえた主は、また別の かし、ヨハネの洗礼が人の権威によ るものだなんて、言いたくても言え 使用人を遣わしたが、今度はその使 ませんね・・・・・・」 用人が殺されてしまった! 主は農夫 たちのもとへ、何度も何度も使用人 大多数の人が 洗礼者ヨハネは神に たちを遣わしたが、彼らはことごと 召された預言者だと信じていたのを く袋叩きにしたり、殺したり残忍極 知っていたお偉いさん方は、民衆を まりないことを続けた・・・ 敵にまわすことを恐れていたのだ。 6  こうなったら・・・!と主 は 最 終 33「   ゴホッ、ゴホン。えぇ、我々は 手段をとることにした。それは、最 存じておりませぬ」 愛 の 一 人 息 子 を 送り出すことだっ 「そうですか!では、私も答えるまい!」 た・・・。

12

遣わされた一人息子

エ ス は な ぞ か け を 用 い て、 ユ ダ ヤ 人 指 導 者 を は じ め、 そこにいる群衆に教え始めた。 ——「ある人が ぶどう園を造り、ビ ジネスを始めた。まず、園の周りに 垣根を造り、ワインを作るための穴 を掘り、その上に見張り用のやぐら を建てた。彼は、何人かの農夫を雇 い、そのぶどう園を任せてから旅に

(非情な農夫たちもわが息子になら 敬 意を払ってくれるはず だ・・・) との考えからだ。 7 と、こ、ろ、が! 雇われ農夫たちはとんでもないこと をたくらみ始めた。 “こいつぁ、驚いた。主さんのガキ じゃあねぇか! いいこと思いついた! この ぶどう園 は い つ か、 跡 取りの こいつのものになる。ならいっその 事、こいつを殺しちまえばいいじゃ あねぇか。そうすりゃあ、このぶど う園は俺たちのもんよ!! ガ ハハハ ハ――”


8  農夫たちは彼を捕えて殺害し、そ

14「   先生、あなたは正直な方であら

の遺体をぶどう園の外に放り捨てて しまった の だ! 9  この 後、 主 はどう すると思う・・・? さすがの主でさ えも堪忍袋の緒は切れ、ぶどう園に すっ飛んで農夫たちを殺し、他の人 を雇うだろう。 10  これ は、 聖 書 に 書かれている通りだ!

れることを存じ上げております。あ なた様は他人の顔色をうかがうこと なく、真っ直ぐに神の道を教えてお られます。先生、一つお尋ねします が・・・ローマ皇帝に税金を納める ことは正しいことで? それとも拒む べきでしょうか?」

“大工が捨てた石は、最も重要ない しずえに。 11 これぞ神業! 神よりなされしこの 偉業、 われわれ人間には信じ難し素晴らし さ”」

使者たちはイエスを目の前にすると さっそく食って掛かった。

——【聖書:イザヤ書、エレミヤ書 より引用】

15「   なぜ私をはめようとする・・・? ここに銀貨を持って来なさい」

イエスはひっかけ問題だと察したた め、あきれたそぶりだ。 16 チャリンッ

12(ッ   !あ

や つ も し や・・・ ん ぬ゛ぅぅぅ・・・)ユダヤ人権力者 たちの顔が真っ赤になった。この例 え話の悪い農夫は自分たちを指して いるのだと気付いたからだ。 それからどうやったらイエスを逮捕 できるか、 必 死 に 良 い 口 実 は ない かと探っていたが、途端に民衆の反 感を買うことを恐れ、イエスの逮捕 を諦 めることにした。・・・その 場 を立ち去る背中はなんと小さいこと か・・・。  納付の義務  13 その後、深く根に持ったユダヤ人

権力者たちは、イエスを陥れるため に、パリサイ一派やヘロデ党から数 人、使者を送り出した。

彼らが銀貨をイエスに手渡した。 「この銀貨に描かれているのは誰の 肖像だ?また、刻まれている名は誰 だ?」 「カエサル様ですが・・・」 17「   なら、カエサルの物はカエサル に返し、神の物は神に返すんだ」

イエスの答えは、使者の想像を逸し ていた。 あまりの立派な答えに驚き を隠せず、それ以上は何も言う事が できなくなってしまった・・・  生きた者の神  18  次に挑戦しに来たのは、死人が

生き返ることはないと強く信じてい


るサドカイ一派だ。

の神であったではなく、神であると 書いてある。 27  神は生きている者 19「   先生、モーセは掟の中で、もし の神であり、死んだ者の神ではない。 夫が子どもを残さずに死んだ場合は、 あなたたちの考えは全くもって的外 兄の家系を絶やさないため、夫の弟 れだ」 が兄の妻と結婚しなければならない と定めています。 イエスはあきれた様子だ。 20  仮に7人の兄弟がいたとしましょ う。兄が亡くなったため、次男が結 婚しましたが、子どもを残さずに次 男も亡くなりました。

——【 聖 書: 出 エ ジ プト 記 より引 用】

21 そこで、三男がその妻と結婚しま したが、三男も子どもを残すことな く亡くなりました。同じことが四男に も起こり、 22 7 人の兄弟全員がその 女性と結婚しましたが、誰ひとり彼 女との子どもを残すことなく、亡くな りました。そして、ついには彼女も 亡くなりました。 23 7人全員が彼女 と結婚したわけですが、蘇ってから 天国に行くとき、彼女は結局、誰の 妻になるのでしょうか?」

28「   質問してもよろしいですかな?」 「なんでしょう?」

——【聖書: 申命記より引用】 24「   なんのために、そんなお門違い なことを考えているんだ?まずひと つ、あなたたちは読んでいる聖書を 理解できていない。ふたつ、神の力 がどう働くかをもまるで分かっちゃい ない。 25  人が 死から復 活するとき、 結婚という概念はまず存在しません。 天に住む天使たちのようになるから だ。 26  あなたたちは聖書を読んだ ことがないのですか? モーセの書に は、神が燃える柴の中からモーセに 語った言葉が記されている。私はア ブラハムの神、イサクの神、ヤコブ

最も重要な掟

あるモーセ法学者がサドカイ一派や パリサイ一派に挑戦されたとき、彼 らを上回る鋭い返答と対応をしたイ エスを見て、ある質問をイエスに問 いたくなったのだ。 「神の掟の中で最も重要なのは、ど の掟ですか・・・?」 29「   ・・・イスラエ ル 人 の 同 士 た ちよ、よく聞くんだッ!最も重要な掟 を・・・われらの王、神は唯一無二 だ。 30  心、魂、思い、ちからを尽 くして神を愛すこと。 31  次に周りの 人間を自身同様に愛すること。以上 の2つが最も重要な掟だ!」

——【聖書: 申命記、 レビ記より引用】 32「   大 変 素 晴らしい お 答えです先

生!おっしゃるとおり、 神 は 唯 一 無 二・・・! 33  情 熱、 知 性、 全 身 全 霊で神を愛し、自 分 同 等 に 人を愛 すること。これらのことは、どんな


捧げものをどれだけ捧げたとしても、 た—— まったくとるに足りないほど重要な 掟です!」 「モーセ法学者や宗教家たちに気を つ けるん だ。 彼らは 人 から敬 意を 34  この賢明な応答を聞いて、イエ もってあいさつされるのが大好きだ スはニコッとした。 から、 身 分 の 高 い 服 装を好んで着 ては、人通りの多い場所をうろうろ 「あと少しだ。あなたは、神の王国 する。 39  また、 彼らは 集 会 所でも、 のすぐ近くにいる!」 パーティー会場でも上座に座りたが る。 40 しかし、 裏では 夫に 先 立 た ——これ以降、イエスと知恵比べしよ れ た 貧しい 女 たちの 家を だまし取 うとする人はいなくなったのだった。 る・・・。表では長々と祈って、自 分がいかに信仰深い 者なのかを平 然と見せびらかしている。残念なが  救世主はダビデの子か  らそんな八方美人は神によって厳し 35 あるとき、神殿の境内でイエスが く罰せられるのがオチだ」 こんなことを教えていた——  額を上回る価値

「 な ぜ モ ー セ 法 学 者 たち は、 救 世 主はダビデの子だと教えるのだろう か? 36 神の魂は、ダビデを通して次 のように言った。

41 イエスは神殿の献金箱の反対側 に腰掛け、人が献金を入れる様子を 眺めていた。

“我が神は我が君に言われた。 さあ私の右に座り、あなたの足元に 敵を伏せさせよう”

ジャリリリリン・・・多くの金持ちた ちが来て、大金を入れていた。 42 そ こへ、1人の貧しい未亡人が来た。

——【聖書:詩篇より引用】

チャリン、チャリン

37  ダビデ自身が 救世主のことを我 が君と呼んでいるにも関わらず、ど うして救世主がダビデの子になりえ る?」

1円にも満たない小さな銅貨を2枚 入れた音がした。

ありとあらゆる人がイエスの教えに 夢中になり、心を躍らせた。

イエスは自分の仲間たちを呼んだ。

宗教家の正体  38 さらに、イエスは教えをこう続け

43「   見ろッ!」

「あの女性は小さな銅貨を2枚も捧 げた。分かるか、彼女はどの金持ち よりも多く捧げた。 44 あの金持ちた ちは、自分にとっちゃどうってことな


い金額をありあまるふところから捧 げたが、彼女は生きていくために必 要な生活費すべてを捧げたんだ!」

13 エ

終末の前兆

スが神殿から出て行こうと しているときのことだった。

「うっわー!先生、あれ見ってくださ い!あのおおっきな、いしぃ〰〰!こ りゃあ立派な建物だッ!」

イエスの一味は、建物が並んでいる のを見かけ、目をキラキラ輝かせた。 2「   ああそうだな!みんなもこの立派

な建物をよく見てくれ! こいつぁい つか全壊すんだ。1つ残らず今のよ うに他の石と重なることがないほど、 あとかたもなくだ・・・!!!」 先を見越したその表情で神殿を見つ めるイエスだった。 3  ——それから、イエスは岩のペテ

ロ、雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネ、そ してアンデレの、使徒4人を連れて オリーブ山に行った。山の頂上に着 くと、みんなで腰掛けた。そこから の眺めは素晴らしく、神殿がよく見 える。 4「   イエスさん、さっきの話だが、い つそんなことが起きんだ? なんか前 兆とかってあるのか・・・?」

仲間がそう聞くと、イエスの目が鋭 くなった・・・ 5「誰からも騙されないように注意し   ろ・・・! 6 俺の名を語るヤカラが多 く現れる。“私こそが救世主!!”など と言って偽り、人を惑わす・・・。 7  あっちで戦争があったことを耳に し、こっちでも戦争が始まることを聞 く。だが恐れる必要はない。これら は終末の前に必ず起こることだ。 8  民 族 は 民 族 同 士で対 立し、 国 は

国同士で対立する。食糧は底をつき、 人は飢えに苦しんだり、あらゆる場 所で地震が起きたりもするが、陣痛 のように、それはほんの始まりでし かない・・・!! 9  気をつけろよぉ、俺の仲間だって

理由で捕まえ、訴えようとする人た ちがわんさか出てくるからな。集会 所で打たれ、叩かれては、王や政治 家たちの前に立たされ、俺のことを 証言することになる。 10 おまえたち は、終末の前に最高な知らせを全世 界へと伝えなければならない! 11 逮捕され、連行されたとき、どう

弁明しようかなどと心配する必要は ない。神の魂がおまえを通じて語る からだ! 神が教えてくれるままに語 ればいい。 12

兄 弟 が 兄 弟 と、 父 は わ が 子 と、 子どもたちは両親と敵対し、死に追 いやってしまう・・・。 13 俺の仲間 だからって、憎まれることもあるが、 最後まで忠実な者は救われる・・・!!


14  預 言 者ダニエル の 言ったとおり、

崩壊をもたらす者たちが本来居るべ きでない場所に居るのを見たら、す ぐ逃げろ! <読者に告ぐ、これが 誰を指しているか、分かっているこ とを前提で記す>——【聖書:ダニ エル書 引用 福音書の筆者マルコ は、読者にこの破壊をもたらす者が ローマ軍であり、彼らがエルサレム を破壊するということを伝えようとし ている。しかし、それを一般に公開 すれば、身が危うくなるため伏せた のだ】 そ の とき、 ユ ダ ヤ に い る 人 は 山 へ。 15  何が あっても足を止 めては い けない。 屋 上 に いる人 は、 家 に 荷物を取りに入らないように。 16 畑 にいる人は上着を取りに戻らないよ うに。 17  その日、妊婦や赤ん坊を 持つ母にとっては、特につらい時期 になる・・・。 18  また、それが 冬 に起こらないように祈るんだ! 19  神 が世界を創造してから起こる、最も 悲惨な時期になるからだ!! 20 ・・・ だが、神が選んだ人たちのため、神 はこの過酷な時を短縮することにし た。でないと全滅する・・・!!! 21“   救世主がいるぞ!” だとか、“彼

が そうだ!” な ん て 叫 び 始 め る 人 が、 次 々 出 てき は する が シカトし ろ。 22  えせ預言者やえせ救世主が 来て、うそを信じさせるために衝撃 的な業を行って、神に選ばれた人た ちをだまそうとする。 23 そのための 警告だッ!! だれもだまされないこと を願う・・・」 ——【この業は悪魔 の力によって成される】

終焉の季節  24「   これらの 困 難 に 続 いて、 預 言

者イザヤが言うとおり“太陽は暗く なり、 月は 輝きを失う。 25  星 たち は天から落ち、天空の権威は揺り動 く!”」 ——【聖書:イザヤより引用。その 時代、 ファラオを神としてたたえ、 ファ ラオ の 死 後、 星 に なって天 で 輝 き、 天空の神の一人に数えられると信じ る者 が 大 勢 い た。また、 世 界を治 める権威を与えてくれるのも、天空 の星々だと信じている文化的背景が あったため、このように例えた】 26「   人は目の当たりにする・・・こ

の人が雲に乗り、神の栄光と権威を まとって来るのを! 27 この人は地上 の至る所に天使を遣わし、神に選ば れし人たちを呼び集める!! 28  イチジクの 木から学 ぶんだ。そ

の 枝 が 緑 色 に なり、 柔らかくなる と、 新しい 葉 を 茂らせる。 人 は そ れを見て夏が近づいていることを知 る。 29  同じように、 こ れらの こと 全てが起こったら、ついにそのとき が来たと察するんだ! 30  保証しよう。 今この時代に生きている人たちの中 には、これらの事を全て体験する者 がいる・・・! 31 やがて、この世界は、 天と地の全てが滅びる。だが、俺の 言葉だけは永遠に残る・・・!!! 32 そ の日がいつなのか、この人や天使も 含め、知るものはいない。知るのは、 父さんのみ。 33  だからこそ、いつも万全の準備


をしていることだ・・・! それがい つになるか、おまえたちに知るすべ はない。 34  まるで、召使いに自分 の家を任せて旅に出る主人のような もんだ。 主人は召使いたちに、そ れ ぞ れ 仕 事 を 割りふって、 留 守 の 間、しっかり家を守るようにと命じ る。 35  主 人 が 昼 に 帰 る か、 真 夜 中になるか、ニワトリが鳴くころか、 朝日が昇ってくるころか、なんて分 かりはしない。だからこそ念を押す! 万全に備えろ。 36 いつも万全でいるなら、主人が早 く帰ってこようと、居眠りしてサボっ た 姿を見られることはない。 37  い い か、 俺 は 全ての 人 に 対して言っ ているんだ。しっかり準備万端でい ろ・・・!」

14

祭の前の企み

1 ——【イスラエルでは種なしパン祭 という祭りがあり、初日には過越の 祭典として、子羊を生け贄にする習 慣があった】この種なしパン祭が2 日後に迫ったころのことだ——

いることが彼らの悩みだった。  香油を注ぐ女  3 イエスはベタニアの村にあるシモ ンの家で食事をとっていた。このシ モンは以前、重い皮膚病にかかって いた男だ。 そこへ、ササッ・・・と、一味の女が入っ てきた。手には純粋なナルドで作ら れた、非常に高価な香油が入った石 こうのつぼを持って。彼女はイエス に接近すると、ポンッとつぼを開け、 敬意と感謝の意を持って、イエスの 頭にツーと香油を注いだ。 4「   お、 お い ッ!な ん て こ と を す る! 5  その香油は 300 デナリ以上の 値打ちがあるぞ!売れば、貧しい人 たちを助けることもできたというの に・・・!!くぁーもったいない」

イエス一味の数人は香油を注いだ女 の行為をとんでもない無駄遣いだと 言い、彼女への不満をべらべらと並 べた。 ——【1デナリは銀貨1枚で、1日 分の給料に値した。300 デナリは年 収に値する】

6「 祭司長とモーセ法学者たちは、人に   や めろッ。 俺 の た めにい いこと 見られることなくイエスを逮捕する をしてくれたっていうのに、なぜ彼 方法はないもんかと話し合っている。 女を責める? 7  貧しい人たちはいつ も近くにいる。彼らを助けることは 2「   ちっ、祭りの最中にイエスを捕ま いつだってできるが、俺はいつまで えることはできない。民衆の怒りを もみんなと一緒にいるわけじゃあな 買い、暴動が起きるだろう・・・」 い・・・。  8  彼 女 は 俺 の た め に 最 善をつくし、 大多数の人がイエスを敬い、慕って 俺の埋葬に備え、体に香油を注いで


くれた。 9  約束する、最高な知らせ が世界中に広まり、彼女がした事は 世界中に知らされる!彼女は、永遠 に忘れられるがない・・・!!!」 ——聖書:出エジプト記より引用】

「イエスさんのために過越の食事を 用 意した い ん だ が、 食 事 はどちら で?」 13  そこでイエスは2人の仲間を町 に遣わすことにしたが、その前にこ う言付けておいた——

イスカリオテのユダ

「町に行くと、水瓶を持っている男が おまえたちの所に来るから、彼の後 るイスカリオテのユダは、なぜか1 について行ってくれ。 14 水瓶持ちの 人祭司長たちのもとへ向かっている。 男が家に入ったら、 “お供する者たち 師匠であり、友人であるイエスを殺 と一緒に過越の食事をする部屋を見 すことにやっきになっている祭司長 せてほしいと先生から頼まれた”と、 のもとへだ・・・。 家の主人に伝えればいい。 15  主人 は俺たちのために用意された2階に 彼らとおち合うと、祭司長たちに混 ある広い部屋へ案内してくれる。そ ざって何やら話あっている。 こで、食事の準備を整えてくれ!」 10  おやおや、十二使徒の1人であ

「どうすれば、人に見られないところ であやつをとっ捕まえることができ る・・・?」

16 仲間たちが町に着くと、全てイエ スの言った通りに事が進み、2人は 笑みを浮かべて互いに見合った。こ うして、彼らはその家で過越の食事 の準備を整えた。 17 夕方になると、イエスは十二使徒 を連れ、その家に入った。美味しそ うな香りは微かではあるが、外まで 漂っていた・・・。

な、 な ん と!ユ ダ は、 祭 司 長 た ち に 協 力 し て、 イ エ ス を 連 行 す る 手 だ てを 企 ててい るで は な い か・・・!!! 11 祭司長たちは、イエ スと引き換えに希望の報酬額を支払 うとイスカリオテのユダに約束した。 それからのユダはイエスとともに行 18 食事の最中—— 動しながらも、頭の中は“イエスを 「今、共に食事をしているうちの1 引き渡す機会はないか” ばかりだっ 人が、俺を敵の手に引き渡す・・・!!」 た・・・。 19「   なッ!!!」

過越の食事  12 さて、種なしパン祭の初日である

過越を祝うため、子羊を生け贄とし て捧げる日がきた。 イエスの仲間が何やら聞きにきた。

イエスの言葉を聞いて、仲間たちに 衝撃が走った。イエスを裏切った自 分の姿を脳裏に浮かべ、死んでもそ んなことしてたまるか!と1人を残し て、みんなが思った。


「 俺 は 絶 対、 あ な た を 裏 切りませ ん!!」 おのおのが矢継ぎ早に言った。 20「   俺を裏切るのは、12

人のうち の1人。そう、俺と同じ器にパンを 浸している者がな・・・」 驚きを隠せない使徒たちの視線が一 斉に彼へいった。 21「   この 人 は 聖 書 に 記されている

通り、苦しむことになる。だが、こ の 人を 裏 切り、 敵 の 手 に 引き渡し て、死に追いやる者はなんと哀れな ことか。彼は生まれて来ない方がま しだった・・・」  最後の晩餐

26 それから、イエスと仲間たちは愉

快に歌を歌った・・・・・・!!! 翌日——オリーブ山に向け、出発し た。  死ぬ覚悟  27「   おまえたちはみな、俺を裏切る。

聖書にはこうある。 “私が羊飼いを殺すと、羊たちは逃 げ惑う。” 28  だが、俺は殺された後、死から よみがえり、ガリラヤに行く。いいか、 俺はそこでおまえたちを待つ・・・!」 29「   たとえ、他の誰が裏切ろうとも、 この俺は決してあなたを裏切りはし ないッ!!」

この言葉にペテロが強く反応した。

22  それから、 食 事を続けていると、 30「   ・・・残念だな、おまえは俺を イエスはパンを取った。神に感謝を 否定する。ニワトリが2回鳴く前に、 捧げ、そのパンを裂くと、仲間たち 3度俺を知らないと断言する」 に配った。 31「   お、俺がイエスを否定するって? んなの、とんでもない!俺はイエス のためなら死ぬ覚悟だってできてん !」 23  次 に、ワインの 入った 杯を取り、 だッ! 神に感謝を捧げると、同じように仲 他の仲間たちも続けざまに同じよう 間たちに配った。 なことを言うのだった・・・。

——「このパンは俺の体。さあ取っ て食べるんだ」

24「   このワインは、俺の血。神と人 が新しい契約を結ぶために流される 俺 の 血 だ。 25  言っておくが、 神 の 王国で新しくなったワインを飲むそ の日まで、俺がワインを口にするこ とはない」

独り祈るイエス  32 イエスと仲間たちはゲツセマネと いう場所に着いた。

——「祈ってくるから、ここに座って


てくれ」

兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネだけ、一 緒に来るようにと言った。

いるではないか。イエスに気づいた 彼らは、はッと起き、心臓が一瞬止 まったかのように感じ、あたふたす る。 41 イエスは3度目も、同じよう に祈りに行った。

——ゔッ・・・・・

——さぁ3度目の正直・・・

イエスは苦しみのあまりもだえ始め た。

イエ ス が 戻ってくると、 3 人 は く かー・・・と寝息をたてている。イ エスはあきらめのため息をついた。

33 しかし、イエスは岩のペテロ、雷

34「   俺は今、悲痛のあまり、心が張 り裂けそうだ・・・。目を覚まして、 「また寝ているのか・・・もういい、 ここで待っていてくれ」 この 人が 罪 深い 者 の 手に 渡される ときがきた。 42  立て、 時は 満ちた。 35 イエスは仲間が見聞きできないと 裏切り者のご登場だ・・・・・・」 ころまで離れ、その場にひれ伏すと、 祈り始めた。  口づけの挨拶  36「   はぁはぁ・・・アバ、あなたに できないことはない・・・。俺がこ の苦しみの杯を飲まなくても、すむ ようにしてほしい・・・が、俺じゃ あなく、アバの思いのままにしてく れ・・・・・・」 ——【アバ:アラ ビア語で父】 37 イエスが仲間たちのもとに戻ると

彼らはぐっすり眠っていた。 「おいシモン!なぜ寝ている・・・? 俺とともに1時間さえも、起きてら んないのか。 38 しっかりと目を覚ま して、誘惑に負けることがないよう に祈るんだ。おまえの魂が正しくあ りたくても、体は弱い」

43  イエスが 話し終 わらないうちに、

十二使徒の1人、イスカリオテのユ ダが、剣やこん棒を持った武装集団 を従えてやって来た。彼らは、祭司 長やモーセ法学者たちをはじめとし た、ユダヤ教の権力者たちに派遣さ れたのだ。 44  ——「い いか、 俺が 口づけの あ いさつをする人を捕まえるんだ。連 行する時は、逃げないように注意し ろよ・・・」

と、イスカリオテのユダは、あらか じめ武装集団にイエスを見分けるた めのサインを伝えていた。

39  ——イエスは、再び仲間たちから

45「   あ、先生!」

離れ、同じことを祈った。 40 イエス が仲間たちのもとにまた戻ってくる と、睡魔に負けた3人が仲良く寝て

ユダは笑顔でイエスに近づき、口づ けのあいさつをすると、不気味な笑


みを浮か べた。 46  すると、武装集 団が来て、イエスを取り押さえた。

ユダヤ教権力者の口実づくり

53 イエスを捕えた武装集団は、イエ スを大祭司のもとに連行した。そこ 47  にゃろォォォ・・・スパッ・・・。 には祭司長たちや年配のユダヤ人権 イエスの 近くに い た 仲 間 の 1 人 は、 力者たち、そしてモーセ法学者など 武装集団の隙を突き、剣を抜き盗る 宗教関係の首領が集結している。殺 と、武装した男に向かって振りかざ したくてたまらないイエスの顔を拝 した。 みに来たのだ。

「!」 ぼとッ・・・地面に落ちたのは武装 した男の耳だ。 48「   な ぜ 犯 罪 者 を 捕 まえる か の よ う に、 剣 や こ ん 棒 を 持 っ て 来 たッ? 49 私は逃げも隠れもせず、毎 日神殿の境内で教えていたじゃあな いか。なぜそのときに捕まえない? まぁいい、聖書に記されたことが完 全になされるために起きたことだか らな・・・!」 50 イエスが捕まると、仲間たち全員 が一目散にその場から逃げ出した。

「ゔ、ゔわぁぁぁ——!!」 「コラッ、待て!」 ザザ、ザザザザッ!ガサガサ・・・・・・ 「逃げられました・・・追いましょうか?」

「いや、よい」

54  ——そのころ、岩のペテロはとい うと・・・距離を保ちながら、イエ スの後をつけていた。そして大祭司 の庭に入り、焚き火で体を温めてい る看守たちにこっそり混ざった。 55  祭司長や最高議会の議員たちは、 イエ ス の 汚 点 をさっさと見 つ けて、 死刑にする気満々だった・・・。し かし、十分な証拠が全くもって見つ からない。 56 うその証言をするヤカ ラは大勢いたが、彼らの言うことは ばらばらで、 てんで一致しない。 57 す ると、そこにいた数人がザッと一斉 に立ち上がり、うその証言をべらべ ら並べた。 58「   私たちはこやつが、“私は人の

手で造られ たこの 神 殿を 壊し、 3 日目に人の手を一切借りることなく、 別の神殿を建てる”と言ったのを確 かに聞きました!」

彼らは、イエスの名前を伏せて言っ あ る 青 年 は、 亜 麻 布 の 服しか た。名前を言うことさえ、しゃくに 着ていなかったが捕まりそうになり、 さわるからだ。 武装集団に服を掴まれたため、 52 服 をさっと脱ぎ捨て、下着のまま逃げ 59 しかし、彼らの話もまたもや食い 出して行った。イエスの他に武装集 違う。 団 の 手に ある青 年 の 服 の みが 残っ 60「   彼らがお前にとって不利な証言 た・・・ 51


をしているぞ。これらの訴えに対し て、何か反論することはあるか?そ れとも彼らの言っていることは誠な のか?」 群衆の前に立った大祭司がイエスに 聞いた。。

イエスに向かって唾を吐きかけた。 ビシッ、ボコッ、ゴキ・・・・・ 「オラッてめぇが 本 当に 預 言 者なら、 誰が 殴ったか 当ててみやが れぃ!は はは——!!」 イエスに目隠しをして殴り始める・・・!

61「   ・・・・・・」

しかし、質問に答える気配が全くな いイエスに、大祭司は別の質問をし た。 「 お 前 は 創 造 主 の 子、救 世 主 な の か?」

——看 守 た ち は イエ ス を 連 れ 去り、 さらにこてんぱ んに 痛 め つ け た の だった。  二度鳴くニワトリ

62「   その通りです。みなさんはいず

66 そのころ、岩のペテロはと言うと、 まだ大祭司の庭の焚き火のそばで体 を温めていた。

れ、神の子が 全能なる神の右の座 に腰をすえている姿を見る。そして、 この人が雲に乗ってやって来る光景 をも目の当たりにする」——【聖書: ダニエル書より引用】

——そこに召使いの少女がやって来 ると、 67  火が反射し、ゆらゆらとだ いだい色に照らされたペテロの顔を 覗き込んだ。

63「   んなッ、何じゃと———!!!」

ビリビリビリィィィ——!大祭司は怒り 狂って、自分の服をひき裂いた・・・! 「え゛———ぃ!!!もう十分じゃ。これ 以上の証言はいらん! 64 我々は聞い た!今まさにこの耳で、こやつが 神 を侮辱するのを!みなの者、異論は あるかッ!!!」 「ありませんッ!!!」

「あ、ねぇ!ナザレのイエスと一緒に いた人ですよね?!」 68「   うおッ! な、なーにを意味の分 からないことをッ!俺は知らん!」 ペテロは彼女の言葉を否定した。慌 ててその 場を離 れ、 庭 の 出 口 へ 向 かっていると・・・コケッコッコ——! ニワトリが鳴いた。 69「   ね—ぇ!あの人、あの男の仲間 ですよー!」

少 女 は ペテロの 慌てる様 子を見て、 そこにいた人全員が、イエスの死刑 周りに立っている人たちに言った。 に同意した・・・。   にゃろ、違うつってんだろッ!!」 65  ペッ、ペッ! そのうちの何人かは、 70「


ペテロは振り返って再度、彼女の言 葉を打ち消した。すると、周りに立っ ていた人たちの目線が一斉にペテロ に行った。 「間違いない!発音からしてあの男同 様、ガリラヤ出身だ!!」

に立ち上がって拍手した。そうとな ると、待ってはいられない。さっそく ピラト総督のもとにイエスを連行し た。 「閣下、騒動を起こしておりますイエ スを只今連れてまいりました」 「うむ」

71「   ざ け ん な!

神 に 誓って 言うが、 イエスは、ピラト総督の前へと突き あんなやろう俺は知らん!!!」 出された。 ペテロは呪いをかけて誓った・・・。

2「   聞くところによるとだ が、 お 主、 ユダヤ人の王なのか?」

72 コッケコッコォォォ—・・・・・

「ええ、間違いではないです・・・!」 ハッ! ——ニワトリが 2回目の鳴き声を上 げたと同時にペテロは、“ニワトリが 二度鳴く前に、イエスを三度否定す る”とイエスが預言されたことを思 い出した。 「う、ゔわぁぁぁ〰〰〰〰〰〰!」 ペテロは、泣き崩れた・・・・・・

15 夜

総督を前にイエスは堂々な風貌。 3「   閣下!こやつはとんでもないこと をしでかしたんでございます!」 「そうです、ピラトさま!こいつはとん でもない悪党です!!」 「誠実で正しいお方であるピラトさ ま!どうか、こやつを!」

祭司長たちは、次々にイエスの有罪 を訴えた。あまりの数の訴えに 4 ピ ラト総督は驚きながらイエスを見た。  尋問

明けごろのことだった。

「この 者 の 処 分を 決 定す る・・・!!!」 祭司長やユダヤ人権力者たち、モー セ法学者、最高議会の議員たちは、 イエスの処刑の判決に対し、満足げ

「これだけ多くの者が訴えておるとい うのに、お主は黙っておくのか・・・?」 「・・・・・・」 5  弁解どころか、全く気にもしてな さそうな様子にピラト総督はなおさ ら驚いた。


ピラト総督の慈悲  6 さて、毎年過越の日には民衆が選 んだ 囚 人を1 人、 釈 放する慣 習が あった。 7  牢にはバラバという名の 囚人がいた。バラバは、一味ととも に殺人を犯した罪状で、投獄されて いる悪党である。 8 ——「閣下、いつもの・・・!」

ある民衆の者たちが今回はどの囚人 の解放をするのかとピラト総督のも とへやってきた。 9「   !」ピラト総督 はひらめいた様子で群衆を見た。 「・・・お前たちは、ユダヤ人の王 を釈放してほしいか?」 10 ピラトは察していた。イエスが連

行されたのは祭司長たちの嫉妬のみ が原因だと。 11 とんでもない!と慌 てたようすで祭司長たちは、イエス ではなく“悪党バラバの釈放を”と 言うように民衆を促した。 ——「・・・バ〰ラ〰バ!バ〰ラ〰バ!! バ〰ラ〰バ・・・・・・!!!」 12「   ・・・な、ならお主らは、この ユダヤ人の王だという男をどうして ほしいというのだ?」 13「   十字架で殺せぇ〰〰〰〰!!!」 14「   なにィ・・・?なぜ だ?こや つ

が一体何をしたと言うのだ?!」 「じゅ〰じ〰か!じゅ〰じ〰か!!じゅ 〰じ〰か!!!」 15(ぬ゛ぅ   ぅぅ・・気は進まんが、こ

れとばかりは手に負えぬ・・・) ピラト総督は野犬のように吠える人 たちを見て、彼らの要望どおりにし なければ、大きな暴動が起きる・・・ そう思った。役職上、暴動を起こさ せるわけにはいかない。なくなく悪 党バラバの釈放を承認した。そして、 イエスをムチで打ち、極悪人にのみ 与える刑である十字架での処分を兵 士に命じた。 16 ——「来い!」

ピラトの兵士たちは、イエスをピラト の官邸へ連行した。そして仲間の兵 士たちを全員、呼び集めると、 17 イ エスを王に見立てるため、無理やり ムラサキ色のガウンを着せ、鋭いと げが無数にあるイバラで編まれた冠 を頭にかぶせた。とげは皮膚をえぐ り、イエスの額からは血がしたたり 落ちる・・・・・・。 18  ——「おーこれは、これは! ユダ ヤの王殿ではございませんか!」 「コラッ、おまえたち!ユダヤ人の王 に敬礼せんか!」 「プ・・・ブワッハッハッハァ—!」

ドスッ ドシ、ゴキ・・・・・・・ 19  そして兵 士は、イエスの 頭を何

度も棒で殴り倒し、ペッと唾を吐き かけた・・・!!! 兵士らは、イエス の前にひざまづいて見せた。まるで、 王にひざまづくかのように皮肉った のだ—— 20 さんざんイエスを侮辱し、あざわ


らうと、ムラサキのガウンを脱がせ、 元々着ていたイエスの服を着せ直し た。イエスの顔はボコボコに腫れて いる・・・。兵士たちは、殴り飽き たところで、イエスを十字架で処刑 するため、官邸から連れ出した。  十字架につけられたユダヤ人の王  21 アレキサンドルとルファスの父親 である、シモンというクレネ人の男 が田舎から町に向かっていたときの こと——

ボロボロになっているイエスは、十 字架を背負って進むよう強要される が、苦戦していた・・・ ——「おい、そこのお前! こいつの 十字架を一緒に背負え!」 「え!で、でもこれから用が・・・」 「ええい、いいから手伝え!」 「ゔッ・・・」 クレネ人のシモンは、いきなり兵士 たちに手伝わされた。 22  兵士たち が向かわせるは、どくろの地。そこ は、極悪人が処せられる十字架があ る場所だ。 23  兵士らは道中、麻酔 の効果があると言われていた没薬を 混ぜたブドウ酒を差し出したが、イ エスは飲まなかった。 24  ——カンッ、カンッ、カンッ、 べ チャッ・・・・・・

兵士たちは、イエスの身体を釘で十 字架にはりつけた。辺りにイエスの 血が飛び散っている・・・。

——「おーし、サイコロで決めるぞ!」 「行くぞー。そーらよっ!」 「き、きたー!!もーらいっと!」 兵士らは、イエスが着ていた上質な 服を切り分け、誰がどの部分を貰う かをサイコロで決めた。 25  兵士た ちがイエスを十 字 架 に 架け た の は、 朝の9時ごろのことだ—— 26  イエスの頭上には、イエスの罪

状を記した看板・・・ユダヤ人の王 と記されている。 27  また、イエス の 両 側には、 犯 罪 者が 2 人。イエ スと同じように十字架にかかってい た。 28“   彼は犯罪者の1人として数 えられた”という聖書の言葉が現実 になった瞬間だった。 29  ——「あらら、クズがこーんなと こにっ!」

その場を通りがかった人はイエスに 近寄っては、侮辱してあざ笑う。 ——「そーこのごみクズさん!神殿壊 して、 3日で建て直すんですって? プッ! 30  神殿の心配する暇あったら、 ご自分を助けてみたらどーう?」 「そこに架かってるあなた、十字架 から降りてみ なさいっ!あ ーおっか し!」 31  そこにいた祭司長やモーセ法学

者たちは、お腹を抱えてイエスをあ ざ笑うと、こう言うのであった。 「彼は他人を救いはしたが、当の自 分は救えやしない!みっともないった らありゃしない!ククク」


32「   もし、仮にですよ。この方が救

世主で、イスラエルの王ならば、今 ここで十字架から降りて来ればよい ではないですか。さすれば、このわ れ わ れでさえそなたを信じますよ! プー」

て棒に結びつけた。そして、上にい るイエスへその棒を伸ばし、飲ませ ようとした。 「おい、止めろ! 預言者エリヤが救 いにくるかどうか、確かめてみよう じゃねぇか・・・!」

さらに、イエスの 両 脇 の 十 字 架 に はりつけられていた犯罪者たちまで、 37「   ぐ、 ゔ あ ゛ 〰 〰 〰 〰 〰 〰・・・・・・」 一緒になってイエスをあざ笑った。  救世主の死?真に神の子だった・・・  33  ブ オオオオオ・・・・・・ 正 午 に なると、 国 中 が 暗 や み に 包まれ た・・・。 3時ごろになってもなお、 暗闇のままだ—— 34「   エロイ!エロイ!ラマ、サバクタ

ニ〰〰!」 ・・・・・・イエスは残りわずかの 力をふりしぼって叫んだ。 ——【そ れは、聖書の詩篇 22 章の題名をア ラム語にしたものであり、“見 捨て た”と嘆いた訳ではなかった】 35 その声は、そこらに立っていた人 たちにまで届いた—— 「お、おい・・・こいつ今、エリヤ を呼んだぞ・・・!」

イエスは 大 声で叫んだ!かと思うと そのままぐったりしてしまった・・・。 息を引き取ったのだ・・・。 38 バ、バリバリバリィ———! !!

イエスが息をひきとると同時に神殿 の幕が上から下まで勢いよく真っ二 つに裂けた!!! 39「   ご、ご、ごの方は真に゛神の子

だった・・・・・・!!!」 十字架の正面に立っていた軍の将校 は、イエスの死に様を見て確信した。 40  ——イエスの仲間である女たちは、 一部始終を離れた所から見ていた。

その中にはマグダラのマリア、サロ メ、ヨセそして末っ子であったヤコ ブ の 母マリアなどが い た。 41  イエ ——【イエスが言った“エロイ” が、 スがガリラヤにいたとき、いつも面 遠くからは紀元前 850 年頃に存在 倒を見ていたのは彼女たちだ。また、 した有名な預言者“エリヤ” に聞こ その他にも、イエスと一緒にエルサ えたのだ】 レムに来た女たちがその場に大勢い た。 36 1人の男が 慌てて走り出したか と思うと、彼はスポンジを手に取り、 水を混ぜた酸味あるワインを吸わせ


救世主の埋葬  42  休日の前日のことである。太陽 が沈み始め、あたりが暗がかりはじ めた。 43 ——「閣下、 イエスが息を引き取っ

たと聞きました。ぜひ彼の遺体をこ の私に埋葬させていただきたく参り ました」

麻布を買い、遺体のあるどくろの地 へ向かった。 ——「うっ、なんて無惨に・・・」 「うわぁぁぁん!ひどすぎるよぉー」 「グスン・・・ 非 道よ、グスン、 非 道!!・・・グスン」

イエスを十字架から降ろし、その変 わり果てた姿に仲間たちは、感情を むき出しにした。その姿は誰だか分 アリマタヤ出身のヨセフという男が、 からないほどだったのだ・・・。そ 勇敢にもピラト総督に願い出た。 して、購入した布にイエスの遺体を そっと包んだ。 ——アリマタヤのヨセフは最高議会で も重役である議員の1人で、何より ——それから、山の側面を掘って造 も神の王国を待ち望んでいる男だっ られた立派な墓に、遺体を持って行 た。 き、そこへ安置させた。 44  ——「なんと!あやつはもう息を

引き取ったのか・・・?」 ピラト総督は、イエスがすでに息を 引き取ったことを聞いて驚いた。 「おい、すぐ将校に確認してこい」 「はっ!」 45  ——「閣 下、 将 校が 確か に 死 亡 を確認したとのことですッ!」

(そ、そうか・・・) ——「ヨセフさん、 確 認がとれまし たので、お望み通りになさってくだ さい」 「ありがとうございます。では」 46 ピラト総督から許可をもらったア

リマタヤのヨセフは即座に高価な亜

最 後 に、 墓 の 扉となる大きな 岩を ゴ ロゴ ロと転 がし、 入り口 を 塞 い だ。 47 このとき、マグダラのマリア とヨセの母マリアは、イエスの墓場 の位置を覚えた。

16 休

復活の伝令

日が終わったその晩、マグ ダラのマリア、サロメ、そ してヤコブ の 母 マリア は、 イエスの 遺 体に 塗るた めの 甘い 香 りのする香油を買いに行った。 2  週 の始めとなるこの日、朝日が昇ると 同時に女たちはすぐに墓へ向かって 行った。 3  その途中、女たちはふと 思った。


「 そう言えば墓の入口の大きな石ど うする?」 「確かにッ!私たちだけじゃ、あれ動 かすのは無理だね・・・」 「そうねー、誰か頼めそうな人いな いかなー」 4  そんな話をしながら歩いていると

墓が見えた・・・

遺体はここにあったんだ。 7  いい?今から、イエスの仲間たち

の所へ行って、何が起こったかを伝 えてくんだ! 特にペテロ! 彼にはよ く伝えておいて! イエスが以前から 言ってたとおり、イエスはガリラヤで 一味に会うのを待ってるから! ガリラ ヤに行ってイエスに会うように伝え てね!」

「???」 「なんだ、もう開いてんじゃない!」 「う、うん・・・でも誰だろう・・・?」 入 口を塞 いでい た 石でできた 大き な円状の扉は、すでにどけられてい る。 5  彼女たちは、とりあえず誰が いるのかを墓の中に入って確認する ことにした。

こう話している白 い 衣 を 着 た 男 は、 そう、天使であった! 8 ヒィー! 彼女たちは、天使とは知 るよしもなく、恐くてもうどうなって いるのかがさっぱり! 逃げ去るよう にして墓を出て行った。その後、彼 女たちはあまりの怖ろしさに、自分 たちが見たことを誰にも話せなかっ た・・・。

「もしもーし?」 「やあ☆」 「え・・・!」 「ぎゃぁぁぁ〰〰〰〰!!!」 白い衣を着た若い男が 墓の右側に 座っているではないか! 彼女らの心 臓は一瞬止まったかと思うほど驚い た。そして、恐怖に怯えた。 6「   ははッ!恐がらなくていいよッ! 十

字架にかけられたナザレのイエスを 探してるんでしょ? 彼ならここにはいない! 死から蘇っ たからね! 疑うなら、自分の目で確 か めてみ なよ! ほらッ ここ、ここ!

疑心暗鬼になる一味  9 イエスが死から蘇ったのは、週始

めの早朝であった。復活したイエス は、まず、過去に自分が7つの悪魔 を追い出した、マグダラのマリアの 前に姿を現した。 彼女の中に住む7つの悪魔をイエス に追い出してもらったのが彼女だ。 10 マリアは復活したイエスに会った

後、 仲 間 たちに その 事を伝えたが、 肝心の仲間たちは悲しみに暮れ、泣 きじゃくっていた。 11「   みんな!!!イエスが 死からよみ がえって復活したんだよ!死んだだ


けじゃない、蘇って今も生きてるの よッ!」

だが、信じない人は有罪と定められる。 17  信じた人が 救われた証か?俺の

マリアは必死になって仲間たちに伝 えたが、イエスに付き従ってきた仲 間ですら、マリアの言うことを信じな かった—— 12  それからのこと、イエスの 一 味

である2 人 が 田 舎 道を歩 いている と・・・

天国へ帰る王  19 イエスは一味にこれらのことを語 り終えると、天に引き上げられ、神 の右の座にこしをすえた。

「よう!」 「?・・・」 え゛ぇぇぇぇぇぇ!!! 2人の前に姿を現したのは紛れもな くイエス。でも、その姿は殺される 前とは少し違っている。 13 2人の仲 間たちは他の仲間たちのもとに行っ て、自分たちの身に起きたことを話 したが、またも、他の仲間たちはこ の証言を信じない——  最後の助言  14 それから後、11 人の使徒が集っ て食事をしているところだった。ス タッ・・・そこへ来たのはイエスだっ た!一味が断固として信じないことを 叱りにきたのだ。 15  ——「さあ行け!世界中のありと

あらゆる人へ最高な知らせを伝える のだ! 16

名 により人 から悪 魔 を 追 放し、 今 まで知らなかった言葉を話せるよう に なる! 18  蛇 を つ か もうが、 毒 を 飲 もうが 害を 受 けず、 病 ある人 の 上 に 手をかざ せ ば、 病 は 治るよの だ・・・!!!」

い い か、 最 高 な 知 ら せ を 信 じ、

水に浸かって洗礼を受けた人は、だ れでも救われる。

20 それからの一味はと言うと、世界

中に出て行って神の最高な知らせを 会う人会う人に伝えていった。 神は一味にキセキを起こす力を授け、 彼らの語ることが真実であることを 証明していったのだった。



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