141124 gospel sample c

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1 道を備えし者 神の一人子の洗礼(バプテスマ) 悪魔の挑戦 イエスが動く 悪魔の追放 高熱でうなされるシモン義理の母 止まらないイエス 重い皮膚病(ツァラト)の男 2 屋根を掘る友人 ゴロツキとつく食卓 交わらない古きと新(あらた) 休日(サバス)を制す王 3 休日(サバス)に治す 小舟から教える 選ばれし十二使徒 悪魔のちから?神のちから? だれがイエスの家族? 4 種まき農夫 なぞかけ なぞかけ、 その心は? なぞかけの心は世界へ 種の成長 からし種 嵐と睡眠 5 墓地に住むローマ軍団(レギオン) 長血の女 少女のお眠り 6 地元ナザレに帰る 派遣されし十二使徒 怯えるヘロデ王 洗礼者(バプティスト)ヨハネの死にざま 5000人の食卓

水の上を歩く幽霊? ゲネサレ平原の住民 7 神の掟と人間のしきたり おこぼれを食べる犬 エパタ 8 満腹4000人 求められるしるし(・・・) 見ても理解しない仲間 ベツサイダの盲人に2度目の手 イエスのうわさ イエスの後に続く者 9 伝説の預言者エリヤ・モーセ現る 取り憑かれた少年 イエスの死にざま 最も偉大な者 敵対しなければ味方 誘惑を絶つ警告 10 離婚の権利 子どもの祝福 裕福な男 死に場所へ 苦しみの杯(サカズキ) 盲目のバルテマイ 11 王の帰還 呪われたイチジクの木 泥棒の巣と化した神殿 確信の祈り 神?それとも人の権威?

12 遣わされた一人息子 納付の義務 生きた者の神 最も重要な掟 救世主(キリスト)はダビデの子か 宗教家の正体 額を上回る価値 13 終末の前兆 終焉の季節 14 祭の前の企み 香油を注ぐ女 イスカリオテのユダ 過越の食事 最後の晩餐 死ぬ覚悟 独り祈るイエス 口づけの挨拶 正当化を測るユダヤ指導者 二度鳴くニワトリ 15 裁判される救世主(キリスト) ピラト総督の慈悲 十字架にかかったユダヤ人の王 救世主(キリスト)の死?真(ま こと)に神の子だった・・・ 救世主(キリスト)の埋葬 16 復活の伝令 疑心暗鬼になる一味 最後の助言 天国へ帰る王


1 誰

道を備えし者

もが待ち焦がれた・・・・・・彼の出現を。預言されし救世主、神 の一人子の来たる時を。

この最高な知らせを耳にする日を。その者の名をイエス。 この最高な知らせの始まりは、2  預言者イザヤがむかしむかーしに記した預言 からとなる・・・

「よく聞け。私はこの男の前に使者を送る。 その使者が道を整える・・・!」——【聖書:マラキ書より引用】 3「   荒地で叫ぶ声がする・・・ “ 神 の お 通 りだ、 道 を 整 えろ・・・! 神 の た め に 道 を まっすぐ に する の だ・・・!!!”」——【聖書:イザヤ書より引用】

4 この使者とは、とある荒地で人々を水に浸からせ、洗礼を授けていた人物の ことである。通称、洗礼者ヨハネ——【洗礼とは、水の中に全身を浸す行為。 今までの的外れな生活をやめ、神に従い始める決心を表すものだ】

——「神さんはの、人の犯した過ちを許したいと思うてくれとる・・・。もし、 神さんに許してもらい、神さんが用意する人生を歩みたい思うておるなら、今 の生き方、考えを変える決意として、洗礼を受けなされ。水から上がった時か ら道を改めるなら、己の犯した過ち、しがらみから自由となる・・・!!!」 5

洗礼者ヨハネが伝えるメッセージは瞬く間に広まった——

「き、聞いたか! 預言者が現れたらしいぞ!」 「俺も聞いたぞっ! たしかヨハネという名の男だよな!」 「そう、あそこの荒地にいるらしい! 何でも、各地方から人がぞくぞく集まってるっ て話しだ!」 これを聞いたエルサレムやユダヤ中の人が、洗礼者ヨハネを見に次から次へと 集まって来た。 洗礼者ヨハネは、なりふり構わず真理をドンと語った。


ALIVE マルコ 5

多くの人が次々に自分の犯した過ちを告白し、洗礼者ヨハネによってヨルダン 川の水に浸たしてもらい、洗礼を受けた。預言どおり、救世主・イエスの道が 整えられていったのだった。 6 ところで、洗礼者ヨハネは普通の人とはちょっと違っていた。いや、ちょっとど ころではない。彼はらくだの毛皮から作った服に革の帯を締め、それを着こな していた——【実はこれ、伝説の預言者であるエリヤと同じ格好なのだ】 そんな原始人みたいな格好をしていた 洗礼者ヨハネの食事はというと、いなご とハチミツのみ・・・。 7 変わり者に見える反面、彼は威厳をまとい、肝が座っ ていた。人は彼が来たるべき預言者だと言い、偉大な者として敬っていた。

そんな洗礼者ヨハネが人々へこう宣言した—— 「あっしの次に来る方は、あっしみたいな預言者よりも遥かに勝る。 あっしには、 その方の靴ひもをほどく価値すらない・・・ 8 あっしは、水によって洗礼を授け ておるが、その方は神の魂によって授けられる・・・!!!」 ヨハネほど偉大な人を見たことがない群衆は、驚いたと同時に胸が躍った——  神の一人子の洗礼  9 ちょうどそのころ、洗礼者ヨハネの手で水に浸からせてもらうため、イエスは ガリラヤ地方にある故郷ナザレの町からヨルダン川に出向いた——

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ざぶんッ・・・イエスが水から上がった瞬間。

カッ! 空が引き裂かれたように明るくなり、神の魂が自分の上に舞い降りてくるのが イエスの目には見えた。 それは、パタパタと、まるでハトのように・・・ 11「   !」—— 「この男こそ、私が愛する息子・・・最高の宝物だ・・・!!!」 その声はどこからともなく響きわたった。 それは、神様の喜びの声であった——  悪魔の挑戦    神の魂と交わったイエスは、1人になるために荒地に出て行く必要があっ た—— 12


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ワォ———ン・・・

時に獣の鳴き声も聞こえるこの場所は、悪魔の誘惑がクモの巣のように張り巡 らされていた。待ち受けていたのは 40 日間にも及ぶつらい、つらい試練であっ た。 この乗り越えるべき試練に耐えるイエスを守り続けていた者たちがいた。神より 派遣されし、天使たちだ——  イエスが動く  14  力強く試練を乗り越えたイエスは、ガリラヤ地方をかわきりに、誰もが待ち こがれていた最高な知らせを伝え始めた!それはちょうど、洗礼者ヨハネが投獄 された後のことだった・・・

——「時は満ちた、最高な知らせだ! 敵の支配下と化したこの世へ、神の王 国軍が侵入した!! 心を入れ替え、神の軍に加わるのだ・・・!!!」 15

仲間を集めるイエス   イエスがガリラヤ湖のほとりを歩いていると、漁師であるシモンと弟のアンド レを見つけた——【シモンは後に岩のペテロで知られる】 16

いよっ! パシャーン・・・ 彼らは、舟から網を湖に投げ入れて漁をしているようだ——【当 時は、魚を獲るために、網の縁に丸く小さな重りをつけた網を使用するのが一 般的だった】 「   シモン! アンドレ! 俺について来い! おまえたちを人を獲る漁師に、俺がす る・・・!」 17

(え、今俺らに言ったのか・・・?)   シモンとアンドレは見合った。

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「いよーし!」 2人はさっと網を置いて、イエスの後を追った——【人を獲る漁師とは、神を知 らない者へ最高な知らせを伝え、神に導く働きをする者のことを指した】 19

——そのままガリラヤ湖のほとりを歩いていると、次はゼベダイの息子、ヤコ


ALIVE マルコ 7

ブとヨハネを見つけた。彼らは舟に乗り込み、漁に使う網の準備をしているよ うだ。 20「   おーし、てめぇら今日もぎょうさん獲るどー!」 「へいっ! おかしら!」

父ゼベダイに雇われた漁師も舟に数人乗っていた。 「ヤコブ、ヨハネ! 行くぞッ! 俺について来い・・・!!!」 イエスはまるで親友を呼ぶように、2人を呼んだ。 「オヤジィ! 仕事中にワリィ! 俺たち、何が何でも彼について行くぜ!!」 2人は父を残して行くことにためらいを感じながらも、ワックワクしながら船を 降りたのだった。 ——【この時代、学のある師について行くことは、非常に名誉あることとされて いた】  悪魔の追放  21 イエスと仲間たちは次にカペナウムの町に向かった。休日になると、イエス は集会所に行って教え始めた——【ユダヤ人の休日は、宗教的な義務として働 くことができない日でもあった】 22  人は、イエスの教えに仰天した! モーセ法学者や、そこらの教師とは違い、 絶大な権威を持って話したからだ。イエスが話し始めると人は引き込まれ、釘 付けになった。 23 そんなある時、悪魔に取り憑かれた男が集会所にやってきた かと思うと、突然叫びだすではないか!

24「   ナ゛ァザレ ノ イェズゥ ダト・・・!? ナ゛ッナゼココニイル? ワレワレ ヲ 滅 ボス気カ、アァ? 俺ハ知ッテルゾォ!! ハァハァ・・・オマエ ハ 神ノ聖者ダァ〰〰!」 25「   黙れ、失せろ」

イエスは悪魔をギロっとにらみつけた。 「ウ、ヴア゛ァ〰〰〰〰!!!」   悪魔は男の体をブルブル震わせ、叫び声を上げて出て行った。 27  それを見 た人たちは恐怖のあまり心臓が止まりそうだった。 「い゛ッ、いったい、何が起きてんだ?! こんなの、見たことも、聞いたことも 26


ないぞ・・・! あの方の言葉にはとてつもない権威がある・・・悪魔さえも従 うなんて・・・!!!」 28

こうして、イエスの評判はガリラヤ地方に爆発的に広まったのだった——  シモン義理の母の高熱

29 イエスと仲間たちは、シモンとアンドレ兄弟の家に行くため、集会所を後に した。もちろんヤコブとヨハネ兄弟も一緒だ——

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ゔッはぁはぁ・・・

家に入ると、シモンの義理の母が高熱でうなされていた。 31 イエスは彼女の手 を取るとスッと立たせた。 「!」 (あ、あれ・・・?)気付けば、病気が治っているではないか! シモンの母親は、驚いて目をパチクリさせた。しばらくすると状況が読めたのか、 イエスに感謝して、仲間たちをもてなし始めたのだった—— 32 その日、多くの人は日が沈むのを待ち、悪魔に取り憑かれた人や病人をここ ぞとばかりにイエスのもとへ連れて来た——【当時、日の沈みが一日の変わり 目だった。また、致命傷以外の治療は仕事としてみなされたため、休日の終わ りを待たざるを得なかった】

町の住人たちがこぞって押しかけるので、家の周りはちょっとしたお祭り騒ぎ だ。 33

34 イエスは人知を超えた力で次々に病人を治し、取り憑かれた人たちを悪魔か ら解放した。その際、悪魔が喋ろうとすると、イエスはバシッと黙らせた——【イ エスの正体を把握する悪魔がその正体を明かせば、たちまちローマの反乱を 求める大きな騒ぎがおきかねなかったからだ。当時のイスラエルは、ローマの 配下にあったため、預言されし救世主が来れば、きっとローマ軍を打ち負かし てくれるだろうと信じていた。そのため、救世主らしき人が現れる度に、ユダ ヤ人は反乱を起こそうと躍起になっていた。 暴動など起こしたくないイエスは、 そうならないようにと非常に注意をはらっていた】


ALIVE マルコ 9

止まらないイエス  35

翌朝、一人っきりで祈るためにイエスは家を出た。外はまだ暗くて涼しい。

——イエスがいなくなってからだいぶ時間がたったが、一向に戻ってこない。 何の音沙汰もなかったので、シモンは仲間を連れてイエスを探しに出た—— 36

37「   ・・・・・・い、いたぞー!」 「こぉ—んなとこにいたんスかッ!みんな探してたんスよー!」 38「   ・・・今から近くにある他の町や村へ行って、最高な知らせを伝えるぞ。 そのために来たんだ」

イエスの目は燃えているようだった——   それから、ガリラヤ地方の集会所をくまなく巡り、最高な知らせを伝え、悪 魔に取り憑かれた人たちを解放してあげたのだった—— 39

重い皮膚病の男  40

ドスッ!——ある時、重い皮膚病侵された男がイエスの前に来て、ひざまづいた。

「お願いです!どうか私の体を元通りに! 先生のお気持ちひとつで治るのですか ら・・・!!!」 41

イエスは、心打たれた・・・。

「もちろんじゃないか! さあ、よくなれ!」  イエスが彼に触れると、皮膚病はスーっと治っていった—— 43 イエスは、帰っ たあとの処置に気をつけるよう、強く忠告した。 42

44「   いいか、このことはだれにも話してはいけない。これから自分の体を祭司 に見せに行き、モーセ法のとおり、神へ捧げものをするんだ。そうすりゃあ、 完全に治ったことが、誰の目にもはっきり分かる!」

皮膚病が治った男は、感謝して別れのあいさつをした。 45 ——「みんなー! き、聞いてくれーィ ! ナザレのイエス様が、絶対に治らない はずだったこの俺の病を治してくれたんだ!!」 男は忠告されたにも関わらず、町中の人にイエスが行った素晴らしい働きを言 いふらしてしまった。


こうして、イエスの評判はますます広まった。 ——すると、イエスをローマに反乱する王に祀りあげ、大きな騒ぎとなった。そ のため、町の中に入れなくなってしまう始末。イエスは、ひとけのない場所で 騒ぎが収まるのを待つことにした—— だが、そんな期待をよそに、さまざまな町や村から、人がぞくぞく集ってくるの だった——

2 数

屋根を掘る友人

日後のことであった。ガリラヤ地方を回ってきたイエスがカペナウムの 町へ戻って来ると・・・

——「戻って来たらしぃぞ・・・!!」 「ほんとか!!」 「あんたー、いえっつぁんが戻って来たってよぉ—!」 その噂は電光石火のごとく町中へ広まった。 2 イエスの話を聞こうと人がドドドっと集まってくる。そこでイエスは、ある家に 入って教え始めると・・・その家はあっと言う間に人であふれかえった。外もズ ラーッと人だかり。 3 ——「はぁはぁ・・・あ、あそこだッ !」 「しっかりしろ!もうすぐでよくなれっぞッ!」

そこへ、息を切らしてやって来たのは4人の男たちであった。いや、彼らが担 いでいる男を入れると 5 人になる。担がれている男は、体がマヒしており、動 けなかったのであった。 4「   すいません! 動けない友達がいるんです、通してくださいッ!!」 「頼む! 通してくれッ!!!」 「・・・・・・ク、クソォ!こんなに人がいちゃあ、どうやっても入れねぇ」 「絶対に治してやっからな・・・!」

あまりの人だかりで、入り口に近寄ることすらできない・・・。 「ち、ちくしょう・・・こーなったら!」——


ALIVE マルコ 11

よーいしょ!よし、そぉっとだ。 何を思い立ったのか、彼らは屋根に登り始めた・・・。やっとの思いで屋根に 登ると、他人の天井をはぎ始めるではないか! 「お、おい上を見てみろッ!」 中にいた人たちは、イエスの頭上を見た。ガサガサしているかと思えば、男た ちが屋根をせっせとはいでいる・・・。 「な、なんてことしてんだ!!」 「マヒして動けない友達がいるんです!!」 「先生! 今から下ろしますんで、どうか治してやってくださいッ!!」 すると、マヒした友人を布団に載せたまま、ひもを使って、そっとイエスの元へ 吊り下ろした。 5 イエスは屋根の上にいる4人組が“イエスに見せれば治る”と強く信じたか らこそ、とった行動だと心の中でうなずくイエス。そして横たわっている身体の マヒした男を見た。

「息子よ、あなたの過ちは許された・・・!」 6 ——そこに数人いたモーセ法学者は思った・・・ 7(な   !なんてバチ当たりな・・・!過ちを許せるのは神だけだぞ・・・) 「   なんだ?」 イエスはその思いを察した。 8

「   目には見えないし、言うのは簡単だなんて思ってるのか?なら、俺がこの動 けない男に立ってふとんをたたみ、歩けと言って、なーにもかも起きたらどう だ? 10 それを目にして俺に過ちを許す権利がないなんて言えやしない・・・!」 9

イエスは動けず、寝転がっている男を見た。 11「   さあ、立って布団を手に家に帰るんだ!」  すると男がバッとすぐに立ち上がるではないか! あごが外れそうになっている人たちの前で、さっきまでマヒしていた男が布団を 持ってささっと出て行った。 12


・・・・・・ウ、ウォォォ・・・! バ、バンザーイ!バンザーイ!!バンザーーイ!!! そこにいた人たちは驚愕して、神を讃え始めた。 「こ、こんなことってあんのかよ・・・!!!」  ゴロツキとつく食卓   イエスが向かうところは、人、人、人! この日、イエスはガリラヤ湖に向かう 途中、いつものように人が集まって来たので、神についてさまざまなことを教え た—— 13

14 その後、イエスは、再び湖のほとりを歩いていた。すると、アルパヨの息子 であるレビを見つけた。レビは机を並べ、イスに座って商売をしている。税金 の取り立てだ。

——「俺について来い!」 バタッ・・・取税人のレビは何もかも置いたまま即座にイエスの後について行っ た! 15  ——その日の午後。イエスは仲間たちと一緒にレビの家にいた。レビのほか にも多くの税金取りや、名のある悪人たちがイエスについていく決断をし、食 事を共にしていたのだ。 16 イエスがそんな人たちと一緒に食事をしているという噂が広まり、パリサイ一 派のモーセ法学者たちがやって来た。

「きみ、なぜ彼はこのようなゴロツキたちと食卓を共にしているんだね?」 17 ——イエスの一味に尋ねた声は、イエスの耳にまで届いた。 「いいか、医者は病人のためにいる。健康な人には必要ない。同じく、俺は正 しい人のためではなく、過ちを犯した人たちを招くために来た・・・!!!」 イエスが直々モーセ法学者の問いに答えた。

交わらない古きと新  「   ヨハネの仲間も、パリサイ一派も断食しておりますが、あなたの弟子はなぜ、

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断食を行っていないのですか?」


ALIVE マルコ 13

ヨルダン川で洗礼を授けていた洗礼者ヨハネの仲間たちと、パリサイ一派には、 断食をして熱心に神を求める習慣があった。 そのため、パリサイ一派は疑問に思ったのだ。 19 イエスは、3つの例えを用いて説明した。 「 例えるなら、 花 婿を 祝う結 婚 式 に 招 待され た 客 が 断 食をすることなどな い。 20 花婿と共にいるというのに、断食をする必要はない。だが、花婿が彼ら のもとから離れる時が来る・・・!その時になれば、彼らも断食をする。   古着のつぎあてに、新しい布を使う人はいない。そんなことをしたら、つぎ あてた新しい布が縮んで古着が破れてしまう! 21

また、新しいワインを古い革袋に入れる人もいない。そんなことをしたら、 古い革袋は新しいワインの発酵に耐え切れずに破れ、革袋と一緒にワインまで ダメになってしまう。新しいワインは、新しい革袋に入れるのが、お決まりじゃ あないですか!」 22

休日を制す王    ある休日のことであった。イエスが仲間たちと麦畑の中を歩いていると、仲 間の中に麦の穂を採って食べていた者たちがいた。 23

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コラッ!

それがパリサイ一派の目に入った・・・ 「イエス先生、あなたのお弟子さんですが、麦の穂を摘んでおりますぞ。本日は、 休日であることはご存知でしょう?立派なルール違反でございませんか!」 「   聖書を読んでいるなら知っているだろうが、ダビデとその仲間たちが、食べ 物がなくなり、お腹が減ったとき、何をしたか覚えているか? 26 アビヤタルが大 祭司だったころ、ダビデは神殿に行き、神に捧げられているパンを食べた・・・。 25

モーセ法だと、捧げものを食べることができるのは祭司だけだったにも関わら ずだ。さらにダビデは、捧げものであるパンを仲間たちにも分け与えたじゃあ ないか・・・! 27 休日は、人を助けるために創られたものであって、人が休日のために創られ たわけじゃあない・・・ 28 よって、休日さえも主たるこの人の管轄内だ・・・!!」


3 ま

休日に治す

た別の日のこと。イエスが集会所に行くと、手に障害を抱えた男がい た。 2 その場にいた何人かのパリサイ一派は、イエスをじっと見ていた。 (その方の手を治してごらんなさい。知りませんよ・・・)

この日は働くことがモーセ法で禁じられている休日にもかかわらず、イエスが男 の手を治すのではないかと目を光らせていたのだ。 ——【休日と呼ばれた休日に働けば、神の民であるイスラエル人の同胞から追 放するというのがモーセ法にはあった。命にかかわらない病気やケガの手当 は仕事だとして禁じていた。もしその法に触れるとなると、刑務所行きまたは、 39 回のムチ打ちの刑に科される可能性があった】 3 ——さあ、ここへ! 「はい!」

イエスは、そこにいた全員が見える場所へ手に障害を抱えた男を呼ぶと、彼は 言われるとおり、イエスの元に来た・・・ 「   みなさん、休日にすべきは善か、それとも悪ですか? はたまた命を救うべき か、それとも滅ぼすべきですか?」 ・・・誰もが黙りこんで、答えようとしない。 5 イエスはパリサイ一派の頑固さに、じわじわと怒りが込み上げてくると同時に、 そんな彼らを心から残念に思った。イエスは、手に障害を抱えた男を見て、笑 みを浮かべる。 「さあ、手を伸ばして!」 4

「ッ!」 手を伸ばした途端に彼の手が治った・・・! これは、男もウヒョーッと大喜び! 6 ・・・・・・一方、それを見たパリサイ一派は、恐い顔つきで出て行った。 当時、パリサイ一派はヘロデ党——【サドカイ派】と敵対していた。にもかかわ らず、それがウソだったかのように仲良くイエス殺害計画を練り始めた・・・!


ALIVE マルコ 15

イエスを危険とみなした2つの派閥にとって、双方の敵対心は二の次になった のだ。  小舟から教える   イエスが一味とともに湖へ向かっていると、ガリラヤから大勢の人がついて来 た。ガリラヤに留まらず、イエスの評判を聞いたユダヤ、 8 エルサレム、イドマ ヤ、また、ヨルダン川の対岸やツロ、シドン周辺の地域から、人がどんどん集 まる。 9 あまりの多さに、 イエスは仲間に小舟を準備させ、岸から少し距離をとっ た。人が押し寄せて来ないようにする必要があるほど人がひしめきあっていた からだ。 10 イエスが多くの病人たちを治していたので、山ほど病人たちがわれ 先にと押し迫って来る・・・!! 7

「イエスさまー! 私も治して下さーい!」 「た、助けて下さい、イエスさまー!」 「こっちです!こっちもお願いしまァす!」 11

中には、悪魔に取り憑かれた人たちもいた・・・

「ア゛ァァァ、カ、神ノ子ダァァ!」 悪魔たちはイエスを見ると、その場に倒れ込んでは叫ぶ。 12 しかし、イエスは自分の正体を明かさないようにと悪魔に厳しく命じた。する と、悪魔は口を貝のように固く閉じるのだった。  選ばれし十二使徒   イエスは、丘をのぼった。来たい人は丘の上で待ち合せようと仲間へと伝え てあったからだ。仲間たちが現れると、 14 イエスはその中から 12 人を選び、使 徒と名付けた。イエスは十二使徒を側近として側に置き、共に生活をした。 イエスは使徒たちを中心に最高な知らせを広めたかった。 15 また、悪魔を追い 出す権威まで授けようと思っていたのだ! 13

イエスに選ば れた十二使徒は、岩を意味する“ペテロ” と呼ば れたシモ ン、 17 ゼベダイの息子で“雷の子”と呼ばれた兄ヤコブと弟ヨハネ、 18 アンデレ、 ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマスと続いて、アルパヨの息子ヤコブ、タダイ、 熱心党のシモンだ。 19 おっと忘れちゃいけないのは、イスカリオテ出身のユダ。 後にイエスを敵の手にわたす男である・・・。 16


悪魔のちから?神のちから?  20 イエスが家に帰ると、たーくさんの人が再び押し寄せて来た。その数はイエ スと一味たちが食事をとろうにもとれないほど・・・。

——そのころ、“イエスの気が狂った”といううわさを聞いて、イエスを連れ 戻すためにイエスの家族が向かって来ていた・・・・・・ 21

22 それもこれも、エルサレムから来たモーセ法学者が次のように言いふらして いたからだ——

「あのイエスが悪魔を追い払える理由をズバリ答えましょう! 悪魔たちのかしら に取り憑かれているのですよ。みなさん考えてもみてください・・・家来の悪 魔が言うことを聞くなんてあたり前ではないですかぁ!!!」 23

——「みんな!」

イエスはそこにいたみんなを呼び集めた。 「悪魔が悪魔を追い出せると思うか? 24 内戦をしている国は崩壊する。 25 もめご とが絶えない家族もしかり・・・。 26  悪魔のかしらである悪魔王も同じく、仮 に内輪で争っているならそのうち悪魔の一味は崩壊する。 27 ならこの噂は見当 違いもいいところだ。誰が悪魔最強である悪魔王の陣地へ入り、ヤツのものを 奪い去れる?そりゃあ悪魔王を大きく上回る者だ。 屋敷の主を縛り上げ、主の財産を好きなだけ奪い去る強者のように、俺は悪魔 を追い払う前に必ず悪魔王を縛り上げる・・・!!!   人が犯す全ての過ちは、神の冒涜さえも含め、確かに許される。 29  だがな、 神の魂が成す、素晴らしい働きを冒涜するとなれば、話が違う。その人が許 されることは永遠にないだろう。その過ちからくる罪悪感は永遠に消えやしな い・・・!!!」 28

30 イエスの持つ神の魂をモーセ法学者たちが悪魔だと非難し、言いふらしてい ることからの忠告だった。

イエスの家族  31

一方、イエスの母マリアと弟や妹たちはというと、イエスを呼びに来たのは

いいものの、あまりの人だかりで家の中に入れずにいた。


ALIVE マルコ 17

——「私はイエスの母なのですが、呼び出して来てもらえないですか?」 「あれま!イエスさんのお母さんでらっしゃいますか!少々お待ちをッ!」 イエスの家族はこのようにして数人を送り込んだ。 32  家の中では、たくさんの 人がイエスを取り囲んで座っている。 「イエスさん、お話中にすいやせん! お母さんや弟さんに妹たちが、お見えでっ せ!」 「   俺の母、兄弟とは誰のことだ・・・?」

33

そこにいた仲間たちは「?」となった。 34

イエスは、周りに座っている仲間たちを見わたした。

「ここにいるみんながそうじゃないか! 35

・・・俺の母、兄弟姉妹とは、神が望むとおりに生きる人のことだッ!」

4

種まき農夫

て、イエスはというと、今日も湖のほとりで教えはじめていた。もちろん、 そこには大きな人だかり——

「押すなぁ!」 「もっと詰めてぇな!」 ——あまりの人の多さにイエスはそこにあった小舟に乗り込んだ。 (ふぅ・・・これで落ち着いて話せる・・・) 小舟の上で腰を下ろしたイエスは、みんなに教えはじめた。群衆は、湖のほと りで興味津々。 2 イエスは、神について多くの例え話をした。今日はどんな話を聞けるのかと、 集まって来ていた人たちはワクワクしている。 「   よし聞くんだ! あるところにいた農夫が、作物の種をまくために出かけた時

3


の話だ! 4 彼が種をまくと、いくつかの種が道ばたに落ちた。するとどうだ! そこに鳥た ちがひょいとやって来て、落ちていた種をあっという間に食べ尽くしてしまった! 5 ある種は、土が足りない岩でゴツゴツしている地へ落ちた。土が浅くて、すぐ に芽を出したは良いが、 6 日が上るとひからびてしまった! 根を深く張れなかっ たからだ。 7 ある種は、いばらが生い茂る草むらに落ちた。しばらくすると、周りのいばら がすくすく成長した。それは、せっかく育ち始めたいい芽の成長を遅らせ、終 いには、実を結ぶことができなかった。  だが、よい地に落ちた種はどうだ! グングン成長して、穂をつけた! ある種は 30 倍、ある種は 60 倍、そしてある種は 100 倍もの実を結んだ!! 9 聞く耳があるなら、よく聞くんだ!」 8

なぞかけ  10  湖での話しも終わり、群衆と別れると、十二使徒と他の仲間たちがイエスの もとに集まって、尋ねた。イエスがしたなぞかけについてだ。

「   おまえたち以外には、なぞかけの心を言わずして神の真理を教えている理 由か? 隠された真理を知る特権が今はまだ、おまえたちにしかないからだ」 11

仲間たちの目は輝いた。

「   聖書のイザヤ書にあるとおりだ・・・

12

“彼らは目を凝らして見ようとするが、見えない。 何度も聞こうとはするが、理解ができない。 もし理解すれば、必ず私のもとにかえってくる。 さすれば、私は喜んで彼らを許そう”」 なぞかけ、その心は? 13 目が点になっている仲間を見てイエスは、察した。 「・・・もしかしておまえたち!この物語の意味が分からないのか・・・? おいおい、 なら他にした話だってさっぱりってことじゃあないか! 14  あのな、 “種まき農夫” のなぞかけで述べた農夫は、神の真理を種まきのよ うに広める人のことだ。 15

いいか、たまに道ばたにこぼれる種がある。 これは神の真理を聞いても、


ALIVE マルコ 19

すぐに悪魔がやってくると、いとも簡単に植えられた真理を奪われ、忘れてしま う人のことだ。  ある人は、岩でゴツゴツしている地へ落ちてしまった種のように、神の教えを 聞いて、すぐに、しかも喜んで受け入れはするんだが、 17  彼らの心に深く根付 かせようとしない。こんな人は長続きしない。受け入れた真理が理由で自分の 身になにか問題が起こると、軽々としっぽを巻く。 16

18 ある人たちは、いばらが生い茂る草むらに落ちた種のように、神の真理を聞 いたとしても、 19 他のことで頭がいっぱいになる。将来への不安や金銭欲、また、 その他に対する欲求不満。これらによって真理を吸収するのが遅れ、人生で良 い成果を見いだせなくなる。

その他は、よい地にまかれた種のようになる! 神の真理を聞くと、しっかり飲 み込む。その人は、目を見張るように成長し、良い実をどんどん結ぶ! ある人 は 30 倍、ある人は 60 倍、ある人は 100 倍だ!!!」 20

なぞかけの心は世界へ  「   ランプに火を灯し、器やベッドの下に隠したりする人がいるか? まずないな! 周りを照らすためのもんだからだ。 21

22  同じように 隠され たものは、 明らか になり、すべての 秘 密 事が 明かされ る! 23  聞こえるなら、しっかり聞け! 24  俺から聞いたことをしっかり飲み込むん だ。神はおまえが今、どれほどの理解があるかに合わせて、どれだけ与えるか を定める。だが実際、必要以上に与えてくれるのが神だ!

25 ある程度の理解さえあれば、更にもらえるが、分からず屋は、少ない手持ち さえ失う」

種の成長  「   神の王国は畑に種を植える男のようだ。 27  なぜ、どのようにして成長した かなどさっぱりな農夫をよそに、種は昼も夜も成長する。農夫が寝ていようが、 起きていようがだ。 28 畑は、人の助けがなくても穂を実らせる。種は苗になって、 穂をつけ、穂の中には多くの実がなる。 29 穂が実をつけたとき、人はその実を刈り取る。これぞ、収穫の時だ!」 26


からし種  30

イエスは続けた。

「神の王国は何に例えられるか・・・。どう説明すればみんなに理解してもらえ る・・・」 31

と言って少しすると、にやっと笑った。

「神の王国は、からし種のようだなぁ! 植えられる種の中でもからし種は、ど の種よりも小さい。 32 でも、植えたらどうなる・・・? 庭のどんな植木よりも、 大きな木へと成長する!鳥たちが木陰に巣を作れるほど太い枝木を生やす!」  イエスは他にも多くのなぞかけを使って、みんなが理解できるだけのことを 教えた。 34 集まる人には、決まってなぞかけをしたが、その心までは教えなかっ た。しかし、イエスの一味だけになると、その心を打ち明けたのだった。 33

嵐と睡眠  35

その日の夜だった。

「行くぞッ! 次は湖の向こう岸だ!」 イエスが仲間たちにこう言うと、 36

仲間たちは集まっていた群衆を残し、舟に乗り込んだ。

「お、来たか!」 イエスはすでに舟の後ろに座って待っていた。辺りには他にもいくつかの舟が 並んでいる。 「うし、出航だッ!」 37 ——しばらくしてからのことだ。 ビュ————・・・・・・ 「風が強くなってきたな・・・」 「あぁ、これは荒れるぞ・・・」


ALIVE マルコ 21

風はみるみるうちに強くなり、波が高くなった・・・。 ——ブオ———ザッブゥ——ン!! ザバザバザバッ——!!! 湖がひどく荒れ狂いだした! 「ウ、ウワァ〰! 沈没するぞぉ〰〰〰〰!!!」 波が勢いよく舟を叩きつける。あっという間に舟は水びたしになり、沈みかけた。 38 この非常事態の中、イエスはというと・・・ん?ね、寝ている???しかも、 頭をまくらにうずめて鼻ちょうちんをふくらませて熟睡中。 (・・・こ、こんな時に!!!) 慌てふためきながらイエスを起こす仲間たち。 「イ、イエズ——ッ! なに寝てんだッ!!!俺たちがどうなってもいいのか? このま まじゃあみんな死んじまいまずッ!!!」 39

イエスはスッと立ち上がると、舟の外を見た・・・

「黙って静まれ」 す、すると・・・イエスの言葉に反応して突然嵐が止んだ!!! 40

イエスはすかさず、仲間たちの方を振り返った。

「おまえたちは、なにを恐れてやがる? まだ信じないのか?」 ・・・・・・仲間たちの頭は真っ白で、少しの間ぼーと立ちすくんでいた。 「   こ、この方は・・・い゛、いっでぇ何者なんだ・・・?服従しているぞッ・・・ か、風や水までがよぉ・・・!!!」 41

仲間たちは、恐ろしさのあまり互いに問うたのであった。


5

墓地に住むローマ軍団

エスと仲間たちは湖をわたり、ゲラサ人の住む地に向かった——

・・・ガララ、ガチンッ・・・ガララ、ガチン・・・ガララ、ゴキィィィ ン・・・・・・ 「・・・ヴゥオォォォォ!!!」  イエスが船を降りると、悪魔に取り憑かれた男が墓場であるほら穴から出てき た。 3 なんと、取り憑かれた男は墓場を住みかにしていたのだ。鉄の鎖を持っ てしても、凶暴な彼を止めることができない。 2

というのも、過去に大の男たちが集まり、協力して手や足を鉄でできた鎖で つなぎ、固く縛って、どうにか助けようとした。だが、悪魔はその鎖をいとも簡 単に引きちぎるではないか! それから何度も挑戦し、縛りつけたものの、取り 憑かれた男はことごとく鎖を壊してしまった。もう誰も彼を止めることができず、 野放しとなった男は、町の悩みの種となっていたのだった。 4

「   ギィャア゛ァァァ・・・」

5

ガリ、ガリガリ・・・ 男は昼も夜も、ほら穴の近くや山の上で叫び声をあげ、自分の体を石で傷つけ ていたのである。  ——取り憑かれた男は遠くからイエスたちの気配に気付いた。ドドドドッと勢い よくイエスたちのそばへ駆けて行くと・・・ヒッ!と目を見開きイエスの前にひ ざまずいた! 6

-「   ナ、ナゼ アナタガ ココニ・・・???」

7 8

「おい・・・この男から去れ、消えろッ!」 イエスは繰り返し言った。 「恐レ入リマス!モ、最モ偉大ナ神、イエスゥゥゥ!イッ一体、ワダシヲ ドウナザ ル オツモリ デスガァァァ?!ドーカ、ドーカ、ワダシヲ ヒィドイ目ニ遭ワセナイト、


ALIVE マルコ 23

神ノ名ニヨッテ オ誓イクダザィ——!!!」 「   ・・・名を名乗れ」

9

「申シ遅レマシタ・・・ 大勢デ コイツニ 取リ憑イテ オリマス ユエ、ローマ軍団 ト申ジマズゥ! 10 ドーカ、オ、オ願イジマスゥ、コゴニ イィサァセェテェ——!」 ——【ローマ軍では、1レギオン =6000 人の軍隊を指して用いられていた】 ローマ軍団は、自分たちをこの地方から追放しないでほしいと、土下座し、ひ たいを土にこすりつけるようにして、しきりに頼む。 「   !」その時、近くの丘ではブタの群れが草を食べていた。  それに気づいた、ローマ軍団は一瞬、目を細め、しめたとばかりにニヤッと した。 11 12

「ア゛ッ!セメテ、アソコニイル ブタノ群レニ、取リ憑カセテ下サイマゼェ〰〰!」 13

イエスはそれを許した。

ズォォォ—・・・ドヒュ—ン!!! 凄まじい数の悪魔が一斉に男から出て行くと、ブタの群れに次々と入っていった。 「ッ!!!ブ、ブヒィィィ———」 ドォゴゴゴゴゴ・・・・・・ ザバァン、ザバ、ザバババババーン・・・・・・ およそ 2000 匹にもなるブタの群れは、気が狂ったように鳴き叫びながら丘を 駆け下り、なだれのように湖へ突っ込んでいく・・・・・辺りの人たちは、た だ呆然と立ちつくしていた。 ——しばらく経ち、何もなかったかのような静けさが戻った。2000 匹ものブタ が湖に沈んだのだ・・・ (ンな、うわぁぁぁぁぁ・・・)ブタを飼育していた男たちは、血相を変えて   全員一斉にその場から逃げ出した・・・・・・町につくと、慌てながらも、町 の住民に何が起きたかを必死に伝える。 14

—— 住人たちはその光景を見にイエスのもとにぞろぞろ集まって来た。


15「   お、おまえは・・・!!!」 「キャ——! 墓に住みついてたケモノよォ・・・!!!」 「え、うそでしょ、なにが起きてんの・・・?」

取り憑かれていた男が、服を着て普通に座っているではないか。町の住人は、 正気である彼の姿を見て、ゾッとした・・・ 16 そのあと、一部始終を見た人たちは事の次第を町の住人に説明した。 17

すると、町の住人たちが恐る恐るイエスのところに集まってきた。

「こ、この町から出てってくれ・・・!!」 町の住人たちはイエスを疫病神であるかのように追い払った・・・。 18

—— 住人の申し出を承認したイエスは、舟に乗って出発の準備をしていた。

「イエス様! ぜひ、お供させてくださいッ・・・!」 ローマ軍団から解放された男がイエスに願い出てきた。 「   いいや、家に帰って、家族や友人たちにあなたの主がしてくれたありとあら ゆることを知らせてあげるんだ!」 19

「   は、はい!!」

20

男は、イエスの言葉を胸に立ち去った。 ——この男は、後にその地方にある 10 の都市で、主が自分のために、どれほ どよくしてくれたかを熱く、そして大胆に伝えるのだった。そして、彼の話を聞 いた人たちは、誰もがひどく驚いたのであった。  長血の女  21 イエスたちは小舟に乗り、湖の向こう岸へ渡った。舟を降りると大勢の人が イエスたちの周りに集まって来た。彼らはイエスがやってくる事を一足先に嗅ぎ 付けて来たのだ。 22「   !」

その中からある人が慌ててイエスの足元にひざまづいた・・・ 彼はヤイロという集会所の管理人であった。


ALIVE マルコ 25

23「   私の幼い娘が死にそうです!ど、どうか私と一緒に来て、娘の上に手を置い てやってはくれませんかっ。そうしたら、娘は死なずにすみますッ・・・!」

ヤイロは一生のお願いと言わんばかりに頼みこむ。 24 イエスは、もちろんのこ とヤイロの家に向かった。そして、群衆もイエスの周りに押し迫るようにして、 どしどしついて来る。   ——その群衆の中には、生理が止まらず、出血し続ける病気でかれこれ 12 年間苦しんでいた女がいた。 25

(辛いよ、苦しいよぉ・・・)

26

彼女は病気を治すため、多くの医者に診てもらった。ワラをも掴む気持ちで、 できることは何でもした。結局彼女は医者に全財産をはたいて破産するほどだっ た。 それだけしてもなお、ただ悪化していく病状・・・。 27  光を失いかけたところへ、希望が舞い降りてきた。そう、彼女はイエスの噂 を聞いたのだ。最後の賭けだと、群衆の中をがむしゃらにかけ進んだ。やっと の思いでイエスの背後まで辿りつくと、

(えーぃっ!)彼女はイエスの上着のすそに手を伸ばした。 28 イエスの服に触れ ることさえできれば病は治る!との思いからだった。 (え・・・・・・   !!!)

29

彼女の手がイエスの上着にやっとの思いで触れた!すると出血が瞬時にして止 まったのを感じた。

30

——「!」

「誰だ!今俺の服に触ったのは!」 女が触れたと同時にさっと振り返ったイエス。自分から力が流れでたのを感じ たのだ。 「   いやいや!先生、これだけの人数がひしめきあっているのに誰がって・・・ はは・・・ねぇ」 31

多くの人がイエスに触れている中で、冗談にしか聞こえない仲間たち。 32 しかし、 それでもまわりを見渡すイエス。 33(い゛ッアタイのことだ   ・・・)病を治してもらっ


た女は、一瞬凍りついた。そして、恐る恐る進み出てイエスの足元にひれ伏した。 「わ、私です!じ、実は・・・・・・」 女が声を震わせ、自分の身に起こったことをかいつまんで話すと、 イエスはニコッ と笑った。 34「   あなたが治ったのは、あなたがそうなると信じたからだ!安心して。もう苦 しむ必要はない」

少女のお眠り

35

イエスが完治された女と話している最中だった・・・

「ヤイロさーん!!!」 ヤイロの召使いたちを見るやいなや、ヤイロの顔が青ざめた。 「ど、どうした!」 「ざ、残念ながらお嬢さんが先ほど息をひきとられました・・・もう・・・先生 をわずらわせる必要はないかと・・・」 あ、あ゛、あ゛・・・・・・ その瞬間、ヤイロの頭は真っ白。 「   おいヤイロッ、恐れんな!ただ信じろ!!!」

36

それは、イエスの声だった。 ハッと我にかえったヤイロ。 「ゔ、う・・・ぐすッ・・・ハイ!!!」 37 ——イエスはヤイロと岩のペテロ、雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネ以外の仲間は ついて来ないように言い、ヤイロの家を訪れた。

38

・・・うわぁーんっ。ひっくひっく・・・うぇーん・・・ずずっ、グゾぉぉぉ・・・

鳴き声は家の外まで聞こえてくる・・・ 家に入ると大勢の身内が、悲嘆に暮れ、ひどいありさまだった。そこにいる人 が大声で泣き叫んでいるのを目にしたイエス。


ALIVE マルコ 27

「   おいおいみんな、なにをそんなに泣いてんだ。この子は眠っているだけで、 死んではいないぞ!」 39

「   !」

40

そこにいた家族や親戚などの視線は一気にイエスへ集まった。 「ケッ!こいつぁばかか!」 「とんだおとぼけ野郎を連れてきちまったなヤイロ!」 「空気を読め!あほんだらぁ!」 ヤイロの身内はイエスをばかにし、笑い飛ばした。気にもとめないイエスは、 彼らに家から出るように伝えた。 「頼む、みんな、今は彼の言うとおりにしてくれないか・・・」 ヤイロも同じように身内へと促した。イエスは少女の両親と3人の仲間だけを 連れ、少女が寝ている部屋に入った。 そこにはまだ 12 才のかわいい少女が横たわっている。 41 両親と3人の仲間が 見守る中、イエスは少女の手を取った。 「お嬢ちゃん、さあ起きて・・・」 42

ガタンッ!

「い゛—ッ!!!」 少女がいきなり起き上がったと思ったら、歩き始めるではないか!両親と3人の 仲間は言葉を失った。 43  ——イエスは両親にこのことを決して他言しないようにと忠告すると、少女に 何か食べ物を与えるようにと加えた。


6 イ

地元ナザレに帰る

エスは、一味と地元ナザレへ帰ってきた。 2 さっそくイエスが休日に集 会所で教えていた時のことだ。昔からイエスのことを知っている地元民 は、互いに言った——

「お、おい・・・アイツどこでこんな知恵をつけたんだ・・・?」 「あーんなキセキ、どこで拾えば起こせるようになんだ・・・?」 3「   どぉゆうこっちゃ!!あいつぁ、あれだろ!マリアんとこのせがれだろ?こんなと こで教えてっけどよぉ、元々は大工じゃあねぇか ・・・!」 「俺もよく知ってっぞ!兄弟はヤコブとヨセ、それにユダとシモンだぜ?妹たちだっ てこの町に住んでっしな ぁ・・・」 イエスの知恵ある教えを目の当たりにした地元の人たちは、自らの目と耳を疑っ た。しかし、彼らには結局、ナザレ出身の元・大工以上の男としてはイエスを 見ることができなかった。 4 ——はぁ・・・とイエスはため息をついた。 「人から讃えられるほど偉大な預言者でさえ、受けいれられない唯一の場所が ある・・・故郷、そして身内だ 」 5 ナザレでは、数人の病人に手を置いて治した以上のキセキを行うことが出来 なかった・・・。 6  地元民のあまりの疑い深さに、むしろイエスの方が驚かさ れたのであった。

派遣されし十二使徒  そんなことがあったものの、その地方にあった他の町や村を訪れては、町の住 人に熱く教え続けるイエス。 7 ある日、十二使徒を呼び集めると、2人1組のチー ムに分け始めた。 ——「受けとれ・・・」 「!」 十二使徒は、イエスからスーっと力が入ってきたのを感じた。力がみなぎ る・・・!悪魔を追い払う力が与えられたのだ! 「   いいか、旅のお供には何も持っていくんじゃない。食料、かばん、お金も だ。まあ長旅になるだろうから、杖ぐらいはいいが。 9 サンダルも履いていいぞ! 8


ALIVE マルコ 29

だが着替えはなしだ。 10  町に着き、誰かが宿として家に迎え入れてくれるなら、 その町を出るまではその家にとどまる。 11 もし、その町の住民が誰も受け入れ てくれず、おまえたちの話に耳を傾けない場合は、その町をさっさと去るんだ。 そして彼らへの警告として、足のちりを完全に払い落とせ・・・!」 イエスは使徒たちを送りだす前に以上の忠告をした——【足のちりを払い落とす 行為は、“話すことはもう何もない”という警告だった】 イエスがこのように順序を説明すると、仲間は大きくうなずいた。イエスは、使 徒たちを励まし、力づけて送り出したのだった—— 12 使徒たちは他の町や村へ行き、出会う人に話しかけては、心を入れ替え、生 き方を変えるようにと愛を持って教えていった・・・13 また、次々に悪魔たち を一掃し、病人にはオリーブオイルを塗り、病も治していったのだった——【当 時、オリーブオイルは薬として用いられていた。またこの行為は、イエスと一味 に、神の魂を通して与えられた治癒の力を象徴した】

怯えるヘロデ王  14  たちまちイエスは国中で有名になり、そのうわさがヘロデ王の耳にまで届く ほどであった。

——「あの洗礼者ヨハネに違いない!ヨハネが死からよみがえったんじゃなけれ ば、そんなキセキは行えはせんじゃろう!」 15「   いーや、彼こそが預言されてきた新しい預言者エリヤだろう!」 「・・・まるで、はるか昔にいた預言者たちのようじゃな」 憶測が飛び交う中、16 ヨハネの首をはねたヘロデ王の顔は真っ青! ——「あ、あの、ヨ、ヨ、ヨハネが、復活したなんて・・・・・ヒィ〰〰〰〰!!!」 バチ当たりなことをしたと知っていたヘロデ王は、これを機にビクビクして生き ていくのだった。  洗礼者ヨハネの死にざま   洗礼者ヨハネは、次のようにして帰らぬ者となっていた—— ヘロデ王の妻・ヘロデヤは、もともとヘロデ王の兄弟であるピリポと結婚して いた。しかし、ヘロデ王はそんなのお構いなしにヘロデヤを横取りし、自分の 妻にしてしまったのだ・・・このことについて黙っていられない洗礼者ヨハネ は、ヘロデ王が一番の権力者であることに物怖じせず、ドンと物申した。これが、 17


ヘロデヤの逆鱗に触れたのだ。ヘロデ王は、ヘロデヤの機嫌をとるため、ヨハ ネを牢に入れるよう、兵士に命じた。18  洗礼者ヨハネは声を大にしてこう訴え た—— 「王よ、恐れ入りやすが、あっしも神の使いですんではっきり申し上げさせても らいやす・・・兄弟の妻と結婚することですが、こいつぁ断じて許されやせん ぞ・・・!!!」 これがヘロデヤの耳に触った。王家、そして自分への侮辱にしか聞こえなかっ たのだ。 19 ひどく恥をかいたヘロデヤは、洗礼者ヨハネに対する殺意でいっぱ いになった。夫であるヘロデ王にヨハネを殺すよう、何度も持ちかけたが、ど うにも説得ができずにいた。20 ヘロデ王自身、ヨハネを逮捕したものの、彼が 神に仕える正しい人であることを身にしみて知っていた。 (このような、聖人を殺しでもしたら・・・バ、バチが当たる・・・!) そう恐れていたヘロデ王は、嫁のヘロデヤの思いとは裏腹に、洗礼者ヨハネ の身に問題が起こらないよう注意して保護していたのだ!それどころか、洗礼者 ヨハネと時間を過ごすのが日課になっていた。そう、ヨハネの話を聞くのがヘ ロデ王のひとつの楽しみとなっていたのだ。その話にヘロデ王は色々考えされ た・・・ヘロデ王が毎度将来を見直させられるほどだった。   そんな日々も束の間、ヘロデヤに絶好の機会が訪れた。それは、ヘロデ王 の誕生日のことであった。ヘロデ王は、自身の誕生日を祝うために、政府の高 官や軍の司令官、また、ガリラヤ地方の権力者など、位の高い者を招いて宴会 を催したのだ。 22 そこには、ヘロデヤの娘も招かれ、招待客たちの前で踊りを 披露して見せた。彼女の踊りは、ヘロデ王を含み、招待客をとりこにした・・・。 この上なく喜んだヘロデ王は、勢いあまって少女にとんでもない誓いをした。 21

——「ワァッハッハッ!いーやいやこれはたまげた!これほど世の目を潤した者は おらんぞぃ! 褒美として、おまえの欲しいものは、何でもやろう! 23 もーなーん でもッ!! 何ならこの国の半分をやってもええぞぉ!」 24 てへっ !返答を求められた少女は、母親であるヘロデヤのところへ行った。 「お母様!何にいたしましょう?」

ヘロデヤが待ちに待った瞬間である!ヘロデヤは不気味な笑みを浮かべた—— 「洗礼者ヨハネの首をお願いするの!いい、今すぐに持ってこさせるの、わかっ た?!」 「え・・・は、はい、お母様」


ALIVE マルコ 31

少女はすぐに王のもとに戻った。会衆も、少女が何を言うのか期待している 様子だ。 25

「洗礼者ヨハネの首をください・・・今、彼の首を大皿にのせて持って来てくだ さい・・・!」 「・・・」 すると宴会の場はガヤガヤと騒ぎはじめた。 26 思ってもみなかった願い出に、ヘロデ王も戸惑い、額からは汗がしたたり落 ちる。かと言って、少女との約束を破ってしまえば、招待客たちの前で王として の面目を保てない。ヘロデ王は心から後悔した。

27「   んぬぅ・・・んな、なにをグズグズしている!彼女の言うとおりヨハネの首 を切り落として、ここに持ってごんか!」

命令を受けた兵士は、牢獄に行った。 ——ボトッ・・・・・・・ 洗礼者ヨハネの首をスパッと切り落とした。 28  無残にも、ヨハネの首が大皿に 載せられ、少女の前に運ばれてくると、少女は母に渡した。母は嫌な笑みを浮 かべていた。   ——この事件は、すぐさまヨハネの仲間たちにも知らされた。一味は大いに 悲しんだ・・・・・・。それから、ヨハネの遺体を引き取りに行き、埋葬した のであった・・・。 29

5000 人の食卓  30 しばらくしてからであった。イエスが送り出した使徒たちが、どこかたくまし くなって戻ってきた。それぞれがしてきたことや、起きた事を互いに語り、久々 の再会を楽しんだ。 31 そんな彼らの周りには、いつものように人がぞくぞく押 し寄せる。こんなことではゆっくり食事をすることもない。

「場所を移すぞ!」 仲間たちはうなづいた。


——イエスと仲間たちは湖に泊めていた舟に乗り込み、ひとけが少ない場所 へ向かおうとした。 33 しかし、それを見ていた人たちは、どのあたりへ行くの かを先読みし、先回りした。 34 イエスが舟から降りてみると、(い゛ッ!) 32

すでに人がわんさか集まっている・・・。 (これほど飢えているというのに、誰も見てあげないなんて・・・まるで羊飼い のいない羊じゃないか・・・) 放っておくことなどできないイエスはゆっくりすることを二の次にして、彼らに多 くの事を教えたのだった。   —— 薄暗くなるほど時間が経過したころだった。イエスの元に仲間たちが物 言いたそうに寄ってきた。 35

「先生、ちょっといいかな?」 「どうした?」 「もう日も暮れてきたが、見るからにここら辺には誰も住んでなさそうだ。 36 今 なら、近くの農家や町に行って、食べ物を確保する時間もあるしどうだ?そろそ ろ解散するというのは・・・」 「   そうか。ならそう言わず、自分が食べさせてあげたらどうだ!」

37

「ちょ、ちょっとご冗談を!こんだけの人に食べさせるパンを買う手持ちなんてど こにあんだ!それだけのパンを買おうなら、俺たち全員で1カ月働いてやっとだ ぞ!!」 「   今、いくつのパンがある?ちょっと見てきな!」

38

「え、おぅ・・・」—— 仲間は手持ちの食料を数えに行った。(えーと、1、2・・・) ——「イエス、パン5つと魚2匹しかないが・・・」 「   ならみんなをグループに分けて、芝の上に座らせてくれ!」   そう決めると、イエスの仲間たちが手分けして、せっせとグループ分けをし た。みんなを呼び集める大きな声と、移動のざわつきで辺りが慌ただしくなった。 ひとつのグループ、およそ 50 人から 100 人にして分けられた。 41 イエスは5つのパンと2匹の魚が入ったかごを持つと、天を見上げ、与えら れた食料を神に感謝した。すると、持っているパンをちぎっては、仲間たちの 39 40


ALIVE マルコ 33

手に配った。 (この数の食糧を配ってどうすってんだいイエスは・・・ってあ、あ、あ、あでぇ 〰〰〰〰!!!) 配ったパンや魚が増え続けるではないか! (すんげぇぇぇ!!!) キセキを目の当たりにしたことで一味の心は踊った!ノリノリの仲間たちは、そ のパンをグループに配ってまわった。同じようにして、2匹の魚も、すべての人 に分け与えられたのだった。 42

——「あー無理!もー食べらんない!」

誰もが満腹になった! 43  みんなが食べ終わり、残り物のパンと魚を集めてみ た。・・・じゅ、12 のかごが一杯に! 44  その場には、男だけでも 5000 人以 上いるというのにだ!!!  水の上を歩く幽霊?  45 それからイエスは、先に舟に乗って湖の向こう側にあるベツサイダの町に行 くようにと一味に指示した。

1人残ったイエスは、周りにいた人たちにも家に帰るようにと言い聞かせ、 46 み んなにさよならをすると、1人で祈るため、山に登って行った—— 47 その夜、イエスの一味を乗せた舟が湖の半ばにさしかかったころだ。イエス は、まだ1人陸に残っていた——

(ふむ・・・)イエスは岸から遠く離れた舟を見つけた。仲間たちが逆風の   中で必死に舟を漕いでいるのが見える。時間にすると午前3時から6時ごろに 事件は起きた—— 48

イエスが湖の上をすいすい歩き、舟を通り過ぎようとしていたのだ・・・・・・! 49「   お、おい・・・」 「ん?」 「ヒ、ヒィェ〰〰〰〰〰〰〰〰!!!」


目ん玉が飛び出るほど驚いたイエスの一味は、湖の上に幽霊がいると思った。 「   おいおい、ビビんなって!俺だよ、俺!」

50

51

イエスは舟に手をつけると

よぃっと! なんでもないかのように乗り込んだ。 すると風がピタッと止んだ・・・・・・・ (あ゛、あ゛・・・・・・)空いた口がふさがらない。 52  パンを配った時のキ セキに続き、たった今起きた出来事を目の当たりにした一味は、なお、イエス が何者なのか理解に苦しんでいた。  ゲネサレ平原の住民   イエスと仲間たちは、湖を渡った先にあるゲネサレ平原のあたりに舟を泊め た。 54 もちろん、ここでもイエスは有名人。 55 イエスたちが舟から降りると—— 53

「!」 そこらにいる人たちはイエスだと気付き、急いで地域住民たちに知らせ始めた のだ。 「おォーィ! 噂のイエスが来たぞぉー!!」 「えっ?」 「は!」 「うそぉ!」 「ほ、本当かい?」 うわさは秒速で広まった。住民はイエスを見つけては、病人たちを布団に乗せ てせっせと運んで来る。 56 イエスが町や村を訪れると、決まって住民たちが病 人をつれて市場に集まり、服の端っこでもいいから触れさせてほしいと、イエス に頼み込んだ。そして、触れた全員が治されたのであった。


ALIVE マルコ 35

7

神の掟と人間のしきたり

る日、パリサイ一派と宗教の専門家たちが、エルサレムからはるばる 2 イエスのもとへやって来ると、    イエスの一味が、ユダヤ人のしきたり を守らずに食事をしているのを見た。 3 ——パリサイ一派を含め、ユダヤ人には、ある決まった手順で手を洗うなどし てから食事をするのが常識であった。先祖代々受けつがれており、幼い頃から “使用した物をある順序で洗わなければ、汚れてしまう” などと教わり、ほと んどのユダヤ人は非常に大切にしていたのだ。 4 また、市場から戻ると食事の 前には必ず体を洗い、キレイであっても容器や水差し、鍋を洗うといったしきた りも守っていた。 5

——「あなたの弟子は、手を洗わずに食事をしておりますが・・・? 常識ですよ」

パリサイ一派と宗教の専門家たちは、イエスに詰め寄った。 「あなたがたが伝統を重んじているのは、自分を良くみせたいがためではない   か!預言者イザヤが書き記した通りだ。“口では私を敬う彼らだが、心は私から 遠く離れたところにある。 7 彼らは私を拝んでいるが、全く無意味。彼らの教え は人の手によって作られた掟にすぎないからだ”と。 8 あなたたちは神に従う以上に、人によって作られた伝統を大事にしてしまって いる。 9 伝統をしっかり守ろうとするのに、神の掟は拒絶する。 10 モーセは、 “あ なたの父と母を敬いなさい”と言い、“自分の父と母を悪く言う者は殺されな ければならない”とまで言った。 11 にも関わらずだ!あなたがたは神への供え 物をしっかりと捧げれば、父と母を助けなくてもいいと教えている。 12 その供え 物を用いれば、両親を助けることができるというのにだ!! 6

神の教え以上にしきたりを守るべきだと考え、周りの者さえも巻き込む。こ れだけじゃあない。似たようなことを数え上げたらきりがない」 13

——【聖書:イザヤ書、申命記、出エジプト記より引用】 図星をつかれたパリサイ一派と宗教の専門家たちは、ばつが悪そうに顔をしか めた——

14

するとイエスは、もう一度自分のもとに人を呼び寄せた。


「いいか、俺が今から言う事をしっかり聞いて悟れ!1  5 人は口にするものによっ てではなく、内側から出るものによって汚れる!1  6 聞く耳があるなら、よく聞くん だ!」 17

そうしてイエスはその場を去り、一味と共に家に入った。

——「あのさ先生、さっき言ってたことって・・・どういう意味?」 イエスの仲間は、先ほど聞いた言葉を理解していなかったのだ。 18「まだ分かんないのか?神は、人が口にするものを理由に、人間を拒否する   ことはないってことぐらいおまえたちなら分かるだろう!1  9 食べたものは、心で はなく腹を通って出ていく。 20 心から出る考え、または、行動によって人は汚れ、 2 そうじが必要になる。 21 悪い考え、性的な問題、盗み、殺人、   2 結婚した異性 以外とのセックス、欲張り、人を傷つけること、嘘、勝手気まま、ねたみ、侮辱、 高慢、愚かな生き方というのは、全て心の内から始まる。 23 これらの過ちにより、 人は汚され、神に背を向けられる・・・。だから不可欠になるのがそうじだ・・・!」

おこぼれを食べる犬   それから、イエスはツロ地方に向かった。自分がいることを町の人々に知ら れたくなかったので、こっそりある家に入ったが、気付かれるまでそう時間はか からなかった。 25 この噂はある悪魔に取り憑かれてしまった娘を持つ母の耳に も入った。イエスの居場所をつきとめた彼女は飛んで行って、イエスの足元に ひれ伏した。 24

「む、娘をどうか・・・助けてください   !」

26

彼女はユダヤ人ではなく、シリアにあるフェニキア地方出身の外国人であった。 「そーれはよくない   !子どものパンを取り上げて犬に与えるなんて。犬よりも最 初に子どもたちが食べるべきでしょう!」 28「先生、おっしゃる通りです   !ですが、食卓の下にいる犬にも子どもたちの食 べこぼしたパンくずを食べる権利はあります・・・!」 29「ああ、その通りだ   !さあさあ、早く娘さんのもとへ! もう悪魔は出て行きまし たよ!」 27

——【外国人だからといって、イエスが彼女にそっけない応答をとったのにはわ けがあった。イエスの仲間には外国人を差別する者もいたため、その過ちを正 すため、一度は大げさに拒否し、その愚かさをみせてやったのだ】


ALIVE マルコ 37

30 ——母親が急いで家に帰って娘へかけよると、 そこには、気持ちよさそうに眠っ ている娘の姿が・・・!母は「はぁ」とため息をつくと、体の力がストンと落ちた。

エパタ   イエスはツロ地方を去り、シドンからデカポリス地方を通ってガリラヤ湖に戻っ た。  32「た、頼んます・・・   !」 31

そんなとき、耳が聞こえず、はっきりと喋れない男が、身内などに連れられてやっ て来た。 3 身内は彼の上に手を置いて治してほしいと頼むと、   3 イエスは耳の聞こえない男 をつれて2人きりになりに行った。イエスは、彼の耳に指を入れると、指にペッ とつばを付けた。 はい、べー・・・

そして、その指を男の舌に乗せた・・・。 34 イエスは天を見上げ、大きく息を吐いて言い放った。 「エパタ!」 35

キィ――ンッ

男は一瞬にして耳が聞こえるようになったかと思うと、はっきり喋ることまでで きるではないか!3  6 イエスはこの出来事を他人に話さないようにと彼の身内を含 めて忠告したが、注意すればするほど、彼らはこの話を広めた・・・ 37 ——「あの方はやる事なす事、とんでもなく素晴らしいんだッ ! 耳の聞こえな い人が聞こえるようになって、はっきりしゃべれなかった人がはっきり話せるよ うになったんだぜ!!!」

驚きと興奮のあまり、口を閉じることができなかったのだ。


8 あ

満腹 4000 人

る日、 イエスの周りにたくさんの人が集まっていた。しかし、問題があっ た。そこにいた人たちの弁当の底がついていたのだった。そこでイエ スは、一味を呼び寄せた。

「可哀想だと思わないか。みんなもうかれこれ3日間ついてきているために食   べもんがない。 3 お腹を空かせたまま帰すわけにはいかない。 遠くから来た人 たちもいる、途中で倒れちゃあいかないからな・・・」  2

4「そ、そうは言っても   ! 町からはだいぶ離れたし、こーんなにたくさん人がい るのにどっから食料を調達するつもりで!」

「パンはいくつある?」

5

「え・・・?ッとー。7つしかないけど・・・」  6

——それを聞いたイエスは群衆に座るように伝えた。

すると、イエスは7つのパンを手に取り神に感謝をささげた。そして、パンを ちぎり、ほらっと仲間たちにわたした。一味は指示されたとおり、群衆にパン を配り始めた。   他にも小さな魚を数匹持っていたので、イエスはもう一度神に感謝すると、仲 間たちに手わたし、群衆へ配ってもらった。  7

こうして全員、満腹になるまで食べ、辺りは笑顔でいっぱい!イエスの一味が 食べ残りを拾い集めると、7つのかごがいっぱいになるほど残っている!  9 そこには軽く 4000 人以上いるというのにだ・・・。こうして、心配なく群衆 を帰らせることができた。  8

10

—— いよっと!・・・よっこらっしょ!・・・うし、出発進行!!!

それから、仲間たちと一緒に舟に乗り込み、ダルマヌタ地方に向かって出発した。   求められるしるし   「あなたが本当に神の力を持っているのであれば、そのしるしとして、キセキ

11


ALIVE マルコ 39

を起こし、証明してみせなさい」 ある時、イエスが本当に神の使者なのかを知りたいパリサイ一派が突拍子もな いことを吹っかけにイエスのもとへやって来た。  「はぁ~・・・」

12

イエスはあきれて、深いため息をついた。  「なぜ、しるしを求める?はっきり言うが、あなたたちを説得するためのキセキ なんて起こりはしない・・・!」   そう言って、そそくさとイエスはその場を去った。それから舟に乗り、湖の反 対側へ向かったのだった。  13

仲間の誤解    さぁ次だっ!  一同は、気持ちを切り替えて舟を出航した。  14

あ!ッちゃー・・・・・・イエスの仲間たちは、肝心なパンを積み忘れていた・・・。 1つだけパンを持っている人はいたが、食料はこれだけとなってしまった。  15 ——「パリサイ一派のイースト菌や、ヘロデ党のイースト菌は危ないから気を つけんだぞ!」

イエスは仲間に忠告した。  16

・   ・・・・・? となる仲間たち。

「たぶんあれだ、俺たちがパンを忘れたからだ・・・」  「い゛ッ違いねぇ・・・」  一味は、イエスの言ったことについて話し合い始めた。  「なぁなぁおまえたち   !」

17

イエスは仲間の話していることに気付いた。  「なんでパンがないことを気にしてんだ? まだ見ることも理解もできないのか? おまえたちの頭は停止でもしたか? 18 目はあっても見えないのか?それは聞こ


えもしない耳なのか? 前にパンが足りなかったとき、俺が何をしたか覚えてな いのか? 19 5つのパンを 5000 人に分け与え、おまえたちが拾った残りもんで、 いくつのかごがいっぱいになった?」  「12 のかごがいっぱいに・・・」  「4000   人に7つのパンを配った時は?」

20

「7つ・・・」  「俺のしたことを覚えていてなお、理解できないのか?」

21

ベツサイダの盲人に2度目の手  22「お願いしますッ   !どうか、彼に触れてやってください!こいつの目を治してやっ てください!!」

イエスと一味がベツサイダの町に着くと、数人の人が盲目の男を連れて来て、 イエスに頼み込んだ。  23

イエスは了解すると、男の手を取って村の外まで連れて出た——

ペッ!  イエスは盲目である男の目につばを吐きかけると、その上に手を置いた・・・。  「見えるか?」

24

盲目の男は顔を上げ、見えないはずの目で見ようと目をパチクリした。

「えぇ・・・あ、は、はい!ひ、人? 何人か見えますが・・・まるで、木が歩き回っ てるようだ・・・」  25 イエスは、もう一度彼の目に手を置いた。  ——カッ!  「み、見える、見えるぞぉ〰〰〰〰!!!」  盲人の目は、かっ開いてはっきり見えるようになった!


ALIVE マルコ 41

「帰る途中、街へは寄らないように   !」

26

変な騒ぎが起きることを心配したイエスは、家に帰らせる前に忠告しておいた。   イエスのうわさ  27

イエスと一味は、ピリポ・カイザリヤの町々へ向かっていた。

——「人は、俺のことを誰だと言っている?」   「洗礼者ヨハネだと思ってる人たちがいましたよ   !」

28

「預言者エリヤだとか、預言者の一人だって言う人たちもいるよなぁ」  「そうか、おまえたちはどうなんだ?」

29

「あなたこそが神に選ばれし王、救世主だ!!!」  真っ先にペテロが答えた。  30「ああそうだ。だが、俺が何者かは、ここだけの話だ・・・   !」

イエスの後に続く者   「この人、イエスは、多くの苦しみを通らなければならない・・・。ユダヤ   教の指導者、祭司長、モーセ法学者たちは、俺を認めない。そして俺は彼ら に殺される必要があり、その3日目に蘇る・・・!!!」  31

イエスは歩きながらこれから起こる預言を仲間へ伝えた。  32

イエスは、仲間に何1つ隠さなかった。

ちょっと、ちょっとイエス—— すると岩のペテロが、イエスを横に連れて仲間から少し離れた・・・  いけないよ・・・  ——ペテロはイエスの預言を正そうとした。 33 するとイエスは、仲間たちの方を 向いた。


「失せろ、サタン!神の思いはそっちのけで、人間の欲に漬け込みやがって・・・!」   これは岩のペテロを使用した悪魔に放った言葉だった。   ——するとイエスは一味と群衆を呼び集めた。  「誰でも俺について来たいなら、自己中な考えを捨てなければならない。俺の 後に続けば、わたされる十字架を進んで背負わなければならない。  34

誰でも自分の人生を自分で救おうものなら、それを失う。だが俺のため、また、 最高な知らせを告げるために人生を捧げる者は、人生をモノにする。  35

たとえ、世界を手にいれようと、自分自身を失えば元も子もない。 37 どれだ けお金を積もうが、失った命を取り戻すことはできないからだ・・・!  38 おまえたちは、神に不忠実で過ちだらけな世の中にいる。だがいいか、そん な中でもこの俺と俺の教えを恥と思うことがないように。もし仮に恥だと思うよ うなことがあれば、この人、すなわち俺が父さんの栄光をおび、天使の軍政を 従えて戻る時、俺はその人を恥る・・・!!!」  36

9 イ

エスは群衆を見渡し、こう続けた。 「 こ の 中 に は、 神 の 王 国 の 圧 倒 的 な 力 を 死 ぬ 前 に 拝 め る 者 が い る・・・!!!」

伝説の預言者エリヤ・モーセ現る  2 6日後のことであった—— イエスは十二使徒のうち、岩のペテロと雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネの3人を連 れて高い山に登った。山頂には、彼ら以外だれもいない。 ・・・ドヒュンッ! 「ゔわぁぁぁ—っ!!!」 使徒たちの目の前で一瞬にしてイエスが変身したではないか! 3 服は光り輝くほ ど純白で眩しい。それは人の手で作ることのできない白さであった・・・


ALIVE マルコ 43

4

トコトコ・・・・・・「!」

突然、2人の男が現れたかと思うとイエスと親しそうに話し始める・・・誰だ? と使徒たちは目をこらすと・・・な、なんとそれは、あーの伝説の預言者エリ ヤとモーセではないか!!! 5「   イ、イエスゥ〰〰っ!光栄ですっ!ほんと光栄ですっ!なんと言うか、こ、この 場に居合わせることができるなんて・・・そ、そうだ!みなさまが神を讃える ためのテントを3つ、われわれに作らせて下さい!ひ、ひとつはイエスの名誉、 それとモーセ様とエリヤ様の名誉のた、た、た、ために!!!」 ——【紀元前、神殿が建てられる前のユダヤ人は、テントの中に神を礼拝する 場所を設けていたのだ】   岩のペテロは勢い余って口走ったが、自分でも何を言っているのかさっぱり。 彼を含む使徒の3人は恐れのあまり、瞬きもせずに硬直していた。 7 ——ぐおぉぉぉ・・・ 6

すると、雲が現れ、彼らを雲がおおった。また、その中から声が聞こえてきた。 「・・・これは俺の愛する子だ。いいか、カレの言うことに従うのだ・・・・・・!!!」  ヒュ~・・・・・・使徒たちが、ふとわれに返って辺りを見回すと、元通り、 彼らとイエスしかいなくなっていた。 8

9

その後、イエスと3人の使徒が、一緒に山を降りている時のこと——

「いいか、この人が死から蘇るそのときまで、ここで見たことは心に閉まってお け・・・!」   使徒3人はこのイエスの忠告を守り、山で見たことを他言することはなかっ た。しかし、“死から蘇る”という言葉の意味が理解できず、なんのこっちゃと 話し合い、煮詰まったあげく、イエスに尋ねることにした。 10

11 ——「なぁイエス、なんで宗教家たちは、 “まず最初に、預言者エリヤが来な ければならない”なんて言ってんだ?」 12「   あぁ、確かにまずエリヤが来て全てを備えるが、なぜ聖書には、“この人は 大きな苦痛をとおり、人にさげすまれる”と記されていると思う? 13  だが実際、 エリヤはすでに来た。いまだにエリヤが来ることを楽しみに待ち望んでいる彼ら こそが、知らず知らずエリヤをひどい目に遭わせた張本人だ。聖書で起きると 記されたとおりにな・・・!」


取り憑かれた少年   山を降りたイエスと岩のペテロ、雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネが一味のもとへ 戻ると、大勢の人たちが一味を中心に集っていた・・・何やらモーセ法学者と 仲間たちが議論しているようだ。 14

15 ——「おっ !イエスだー!」 「イエスが帰ってきたぞー!」

仲間はイエスを見るなり走り寄って、歓迎した。 「   何を議論してんだ?」

16

17

イエスが聞くと、ある男が進み出てきた。

「先生!息子が悪魔に侵され、話すことができないんです・・・イエス先生なら と思い、見てもらいに来たんです!! 18 憎い悪魔は、息子が口から泡を吹くほど にドンッと地面に投げ倒し、歯ぎしりをして硬直させやがるんです・・・ぐすッ・・・ 先生がいないって言うんで、先生のお弟子さんに悪魔を追い払うよう、お願い したんですが、無理だったようで・・・先生、どうかっ!」 「   なぜ信じない・・・? いつまで俺が一緒じゃなきゃいけない。あなた方の ためにいつまで我慢すればいいんだ・・・!その子をここに」 19

20  —— 数人がかりで取り憑かれた少年を連れてきた。ところが悪魔は、イエス を見るなり少年をさらに苦しめ始める!

ぐわぁぁぁ〰〰っ・・・ブクブクブク・・・・・・ 少年は地面に倒れて転げ回り、口から泡を吹いた。 21 それを見たイエスは哀れ んだ表情を浮かべた。 「いつからですか?」 「もぉ幼いときからです・・・ 22 この悪魔が息子を殺そうと、炎や湖の中に身を 投げ込むもんで、息子は何度死にかけたか。お、お願いします!もし救えるなら、 うちの子を救ってくださいッ!!」 23「   なぜもしと言う?・・・信じる者に不可能はない」 24「   し、信じますとも!どうか、不届き者である私がもっと信じられるように、助 けてください!!!」


ALIVE マルコ 45

イエスはわんさか野次馬が集まってきたのを見てから、悪魔をギロッとにらん だ。 25

「おい、耳と口をふさぐ悪魔よ。少年から出ろ。そして2度と戻ってくんじゃねぇ」 26「   ウギャァァァァ〰〰・・・・・」 悪魔は叫び声をあげながら、少年を地面にもう一度投げ倒して出ていった。少 年は白目を向いてピクりともしない・・・ 「し、死んじまったァァァ——!!」 恐ろしくなった群衆はキャーキャー騒ぎ始めた。 27 イエスは平然と少年の手を 取り、立ち上がらせた。 28

騒ぎが一段落すると、イエスは仲間たちと一緒に家に帰った。

——「先生・・・どうして俺たちにはあの悪魔を追い出すことができなかったん だい・・・?」 一味だけになってから仲間たちは尋ねた。 「   あの種の悪魔は、祈らなければ追い出せない」

29

イエスの死にざま   イエスと一味は、人に見つからないよう、密かにその町を出発し、ガリラヤ 地方を通って旅を続けた。 30

イエスは一味にのみ伝えたいことが あったため、他に誰もいない 所に来 た—— 31

「この人は人の手に渡り、殺される・・・。そして、3日目に蘇る・・・!!!」 「   ・・・?」 一味にはなんのことかさっぱりだったが、恐ろしくて誰もつっこむ気になれな かった。 32

最も偉大な者  33

イエスと一味はカペナウムの町に向かった。


——「道中、何について議論してたんだ?」 ある家に着くと、イエスが一味に問いただした。 (い゛ッ・・・気づいてたのか   !)

34

仲間たちは、たちまちとぼけて、なんのことか知らんぷりっ。自分たちの中で誰 が一番偉いのかを論じ合っていたなんて、とてもじゃないがイエスには言えな い・・・。 35 イエスは腰掛けると、十二使徒を集めた。 「一番になりたいか?誰でも一番になりたいなら、自分のことは後回しで人に仕 えなければならない・・・」 36

イエスは幼い子どもを一味の前に立たせ、その子を両手で抱えた。

「   このように、幼い子どもを俺の子かのように受け入れる人は、俺を受け入 れた。誰でも俺を受け入れる人は、俺を遣わした神をも受け入れたことにな る!!!」 37

敵対しなければ味方  「   先生!先生の名前を勝手に使って悪魔を追い出している人がいたんだ!だが もう大丈夫だ! 仲間じゃなかったから、俺たちで止めといたかんなっ!」 38

「   おいおい、止めるなよ! 俺の名によって、大きなことを成し遂げる人が、俺 のことを悪く言うことはないだろ? 40  俺たちに敵対しない人は俺たちの味方 だ! 41  いいか、おまえたちが俺の仲間だからというだけで、水を一杯でも飲ま せてくれる人は必ず報われる」 39

誘惑を絶つ警告  42「   俺を信じるうぶな人を間違った道へ陥れる人は、首に大きな石臼を巻かれ て、海に沈められる方が、まだましだ・・・ 43  もし片方の手が過ちを犯すなら、 その手を切り捨てればいい。両手を持って地獄に行くより、片手を失って天国 に行く方が断然いいからだ!地獄では燃えつきることがない炎で燃やされ続け る・・・ 44 - 45 もし片方の足が過ちを犯すなら、その足を切り捨ててしまえ。両足を持っ たまま地獄に投げ込まれるよりは、片足を失って永遠の命を得る方が間違いな

くましだ! 46 - 47  もし片方の目が過ちを犯すなら、その目をえぐりだせ。両目を


ALIVE マルコ 47

維持したまま地獄に投げ込まれるよりは、片目を失ってでも神の王国へ行く方 がいい。 48 地獄では、人を食い尽くすうじ虫と炎とが絶えることがない!   全ての人は火のような試練で塩漬けされて塩気を増す・・・! 50  いい塩も、 塩気をなくせば、だいなしだ。味付けの役にたたない。いいか、おまえたち は塩気を失わないように注意すんだ!そして、互いに平和を持って暮らすように、 いいな!」 49

10 カ

離婚の権利

ペナウムの町を出発したイエスは、ユダヤ地方に向かっていた。ヨルダ ン川を渡ったところで・・・

「おっ!イエスだー!!」 再び多くの人たちが集まって来たので、イエスは教え始めた。 2 するとそこへ、パリサイ一派がやって来た。 「イエス先生に質問です! 夫は妻と離婚する権利を、はたして持っているのでしょ うか?」

(さあ答えてみなさい・・・)笑顔の裏腹にイエスを罠に陥れたくて突っかかった。 「   モーセは、何て言った?」

3

「   夫が離婚状を書くならば、妻との離婚を許すとありますが」 ——【聖書:申命記より引用】 4

5「   ああ、妻を愛し続けないことで、神の教えに背くあなたたちのために、モー セが記した掟だ! 6 ・・・真にあるべき姿はではない。神がこの世界を創ったとき、人を男と女 とに造った。 7 男は父親と母親を離れ、自分の妻と結ばれる。 8 こうして、夫と 妻はひとつになる! 9 神がひとつに結び合わせたんだ、誰も引き離してはならな い!」

——【聖書:創世記より引用】


うっ・・・パリサイ一派は、イエスの言葉に何も言えなくなってしまった。 10

その後、家に帰ってからのこと——

「イエス、さっきの離婚についてだけど・・・・・・」 一味は、再確認した。 11「   事実、妻と離婚して他の女と結婚すれば、不倫を犯したことになる。 12  妻 もしかり、夫と離婚し、他の男と結婚すれば、不倫同然だ」

子どもの祝福  13

ある時、どこからともなく子ども連れの人たちが集まって来た。

——「しっし、だめだめぇー! 先生は忙しいのッ!」 イエスに手を置いてもらって、自分の子どもの幸せを祈ってもらおうとしたが、 イエス一派から数人、それを止めようとした。 14

——それにイエスが気づいた。

「止めるなッ!!! 子どもたちを通せ・・・子どもたちは、まるで神の国民だから だ。 15 いいか、子どもが物事を鵜吞みするように、神の王国を受け入れなけれ ば、入国できやしない・・・!」 16  そう言うと、イエスは子どもたちを抱きかかえ、彼らの上に手を置いて祝福 したのであった。

裕福な男   イエスがその場から立ち去ろうとすると、ある男が駆け寄って来て、イエスの 前にひざまづいた。 「聖い教師よ、私が永遠の命を得るためには、どうすればよいのでしょうか?」 17

「   なぜ俺を“聖い者” 呼ばわりする? 神のみが聖なる方だ。 19 それに、“殺 さない、結婚した人以外とセックスをしない、盗まない、うそをつかない、だ まさない、父と母を敬う”という神の掟ぐらい知っているだろう?」 20「   もちろんです、先生! 幼いころから、ぜんっぶ守り続けておりますッ!!」 男は、自信気だ。 18


ALIVE マルコ 49

21

イエスは心から彼のことを思った。

「ああ、惜しいが1つやり残している・・・。俺のあとについて来い!だが、そ の前に自分の全財産を売り払って貧しい人たちに与えるんだ。そうすれば、天 にあなたの富が築かれる!」 「   え・・・・・・!」

22

はつらつとしていた男の表情がとっさに曇った・・・・・・ この男、相当な金持ちなのだ。結局、お金だけは諦められないと男は帰って行っ た。めそめそしながら立ち去るその背中はなんと小さいことか。 23

イエスは、仲間たちの方へ振りかえった。

「裕福な者が神の王国に入るのは、至難の業だ・・・」 「   えッ?」

24

このイエスの言葉に、仲間は驚いた。 「若者のみんな、富に信頼をよせる者が神の王国に入るのは厳しい。  25  富に信頼をよせる者が神の王国に入るよりか、らくだが針の穴を通る方がま だ簡単だ・・・」 「   そ、それなら一体誰が救わるって言うんだよ・・・」

26

仲間たちは、こう互いに言って一様にとまどいはじめた。 27「   人間に不可能でも、神にはできる。神に不可能という概念ない!」 イエスは、仲間たちの疑問を断ち切った。 28「   俺たちは全てを置いて、あなたについてきたッ!」 岩のペテロが突然声を上げた。 「   約束する! 誰でも最高な知らせである俺のため、自宅や兄弟姉妹、父と母 に子ども、財産までも差し置いた者は、 30 その 100 倍の報酬を受けとることに なる。 29

この世で悪くされ、悪く言われようが、家や兄弟姉妹、母、子、財産は倍になっ


て戻って来る! それだけじゃない。後に行く世界では永遠の命さえ報酬として与 えられる!! 31  その時には、この世で最もいばった者が最も低くされ、最もへりくだった者 が最も高くされる!!!」

死に場所へ   イエスは、仲間と群衆の先頭に立って、エルサレムの町に向かい始めた。仲 間たちは、後ろでこれから何が起こるのかと考えていた。そのまた後ろの群衆は、 これから起こりうることを恐れつつもついて来ている。 32

——イエスは十二使徒を呼び集めた。歩きながら彼らにのみ、エルサレムで起 こることを伝えたかったのだ。 33「   俺たちは、これからエルサレムへ行くが、まずこの人は、祭司やモーセ法 学者たちの手に渡る。彼らは、“この人が 死ななければならない” と言って、 俺を外国人に引き渡す。 34 その外国人たちは、この人をバカにし、つばを吐き かける。そして、ムチで打ち・・・殺す。だが、3日目にこの人は復活するッ!!!」  苦しみの杯  「   先生・・・お、お願いがあるのですが・・・」

35

ゼベダイの子である雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネが、イエスのところにやって来た。

「   ん、どした?」

36

「   あなたが王として王座に君臨する時、その栄誉を俺たちにも分かち合っても らえないでしょうかッ!! 1 人は、あなたの右の座に、もう1人は左の座に座ら せて下さい!」 37

「   おまえたち・・・自分でも何を言っているか分かってないみたいだな。 俺 が飲まなければならない苦しみの杯を味わえるか? 俺が通らなければならない 洗礼という名の試練を受けられるか?」 38

「   も、もちろんッ!!」 「ああ、確かにおまえたちは、俺と同じ苦しみの杯を飲み、同じ洗礼を受ける。 39

40 だとしてもだ。隣の座に座る人を決めるのは俺ではなく、神だ。神に選ばれ


ALIVE マルコ 51

た者がその座に座る・・・!」 41

——2人がしたお願いについて、他 10 人の使徒の耳まではいった・・・。

「俺らを出し抜こうってのかッ・・・!!」 他の使徒たちは2人にキレた。 42 その状況を知ったイエスは、みんなを呼び集 めた。 「外国人たちには権力者がいるよな。知ってのとおり、権力者は自分の力を見 せつけるのが大好きだ。そしてその権力者に仕える指導者たちは自分たちの権 力を振りかざすのがたまらなく好きだ。 43 いいか、おまえたちは、そうであっちゃ いけない! 上に立ちたいなら、喜んで彼らに仕えなければならない。 44 1番になりたいな ら、召使いように彼らに仕えなければならない。 45 この人は、人に仕えてもらう ためではなく、仕えるために地球に来た。 それは、自らの命と引き換えに、人 間が救われるためだ・・・!!!」  盲目のバルテマイ  46  その後、イエスと一味はエリコの町にやって来た。イエスの周りには、たく さんの人がついて来ていたので、あっという間に町は人であふれ返ってしまっ た!

イエスたちがエリコの町を出たとき、道端にバルテマイという名の盲目の男が 座っていた。彼は、いつもその場所で物乞いをしていたのだ。 47

——(ん? 何だか今日は、やたら騒がしいな・・・)

目の見えないバルテマイだが、周りにいた人たちの話し声から“ナザレのイエ ス”が自分のいる道を通ることが分かった。 ——「イエスさまぁー!ダビデの子よぉ!どうか私を助けて下さい!!」 突然、バルテマイは大声で叫んだ。 48「   うるさいよ、お前!」 「お前やかましいな、おい!黙ってろ」 「んダ〰 ビデの子、イ〰エスさまぁ〰〰!!ど〰か私を助けて下ざぁ〰 い!!!」


そこにいた多くの人が、突然叫び始めた盲目の男を黙らせようとした。 だがバルテマイは、黙るどころか、さらに大声で叫ぶ!

49

ピタッ・・・

イエスは、その場に立ち止まった。 「こっちへ来るよう、彼に伝えてくれるか!」 「うっす!」 「よかったなー!さあ立ちな!イエスが呼んでんぞ!!」 50  バルテマイは軽快に立ちあがり、上着をバサッとその場に置いてからイエス まで案内してもらった。

「   どうしてほしいんだい?」

51

「先生!もう一度・・・もう一度、見えるようになりた゛い゛ッ!!」 52「   行けッ!あなたが信じたからこそ、目は完治した!」 ——ハッ! バルテマイは目をパチクリさせた。 「み、見えるぅ――!!!」 彼は大喜びで町の外までイエスについていったのであった。


ALIVE マルコ 53

11 イ

王の帰還

エスと一味はエルサレムまであと少しというところであった。オリーブ 山の近くにあるベテパゲとベタニアの町に到着し、イエスは2人の仲 間を呼んだ。

「   これからあの町へ行ってくれ。そこには、まだ誰も乗ったことのない若いロ バがいる。その綱をほどき、俺のところに連れてくるんだ。 3“   なぜロバを連れ て行くんですか?”と聞いてくる人がいれば、“主人が入用で、すぐに戻す”と 答えるといい」 2

——おっ!2人は町に入ると、通りに面した家の戸口に若いロバがつながれて いるのが見えた。彼らはよしよしと綱をほどいていると、 5  その場に立っていた 人たちが不思議そうに見ていた。 4

「あんちゃんたち、ロバの綱をほどいてどうすんだい?」 6「   いや、主人が入り用でね。すぐにお戻ししますんで!」 2人はイエスに言われたとおりに答えると、不思議なことにその人たちは納得 しているようだった。   —— 2人はイエスのもとにロバを連れて来た。バサッと次々に仲間たちが上 着を脱ぎ始め、イエスが乗るロバの背に上着をかけると、イエスはその上にど しっと座った。 8 イエスを迎えるために、大勢の人が道の上に上着を敷き始めた。 中には、小枝を切ってイエスの通り道の上に敷く人たちもいた。 9  ある人はイ エスの前を歩き、ある人は後ろについて歩いた。 7

バンザーイ!神に栄光あれェ—! 我が君の名によって来られる方に幸あれェ—! ——【聖書:詩篇の預言】  我らの父、ダビデの王国に幸あれェ—! 今こそ、その王国が建ちあがる! 10


天の神に栄光あれェ—!えい、そら、わっしょい!! みんなはイエスを王として崇め、讃えた! 11 こうして、イエスはエルサレムに入ったのである。 ——それから、イエスは神殿の境内に入り、辺りを見渡したが、既に日も暮れ ていたので、十二使徒と一晩休むため、ベタニアに向かった。

呪われたイチジクの木   翌日、イエスと一味はベタニアを発った。ぐぅぅぅ・・・イエスはお腹の虫が 鳴るほどおなかが減っていた。 12

13

イエスが遠くを見ると ——「お!」

これはこれは遠くに葉が茂るイチジクの木が見える。イエスは実がなっているか どうかを確かめに、その木に近寄った。しかし、実が生る季節ではなかったので、 あるのは葉っぱのみ。 ヒュ~・・・ 「   人は、もう二度とお前の実を口にすることはない・・・」

14

イエスがイチジクの木に向かって言ったことは、仲間たちにまで聞こえた。

神殿内の商売  15

イエスと一味がエルサレムに着くと、彼らは神殿の境内に入った。

——「!!!」 神殿の境内で商売をしている人たちを見て、イエスの目が変わった。 ドンッ! 何やってんだ、コラ゛ァァァ——っ!! イエスは両替人たちの机や、ハトを売っていた商売人たちのイスを勢いよくひっ くり返した。 16 イエスは神殿の周辺で物を売ることを許さなかった。 17「   聖書に“私の神殿は全ての国々の祈りの家と呼ばれる。”と書いてあるにも


ALIVE マルコ 55

かかわらず、なんだこの有様はッ!おまえたちは神殿を泥棒の巣にしてしまった んだぞ!!!」 「ひぃーすみません・・・!!」 イエスは、追い出した人たちや関係者たちを強く叱った。 ——【聖書:イザヤ書、エレミヤ書より引用】 18 あ、あやつめ、許しませんぞぉ・・・ イエスがここで行ったことを耳にした祭司とモーセ法学者たちは、イエスを逮捕 して、殺すための策略を練り始めた。ただ、懸念していることがあった。

イエスの教えに影響された人たちだ。今やイエスは、町中、いや、各地方中 の人たちから慕われ、多大な支持を得ていた。イエスを殺したとなれば、大勢 の人の反感を買い、己の支持を失い兼ねない・・・ 19  その夜、イエスは仲間 を連れ、町を後にした。  確信の祈り  20 翌朝、イエスと一味が歩いていると・・・ おぉ!昨日、イエスが呪ったイチジクの木が見えた。だが、様子が明らかに変だ。 つい昨日まで元気いっぱいだったその木が、根元から枯れ、変わり果てていた のだ。

「   せ、先生ッ!見てくれ!あんたの言ったとおりになってるよッ!!」

21

これを見た仲間たちの中でも、特にペテロが強く反応した。 22「   神を信じるんだ。 23  おまえたちがこの山に向かって、“海に入れ”と命じ、 そうなると信じて疑わないなら、神がそのとおりにする。 24 また己の願いを神 に祈り求め、それが既に与えられたと確信するなら、その通りになる・・・! 25 だ が、もし誰かを許せずにいるならば、願う前にまず、その人を許すんだ。そう すれば、天にいるおまえの父さんも、あなたの過ちを許してくれる・・・!」 26

神?それとも人の権威?  27

イエスと一味は、再びエルサレムに行った。イエスは神殿の周辺を歩いてい

ると祭司やモーセ法学者、年配のユダヤ人権力者たちがイエスのもとに血相を 変えてやって来た。


28「   い゛ったい、あなたは誰の権限によって、このような事をされているのです か、えェ?誰がその権限を与えたのか、言ってごらんなさいッ!」

「   ・・・その前に、聞きたいことがあります。それに答えることができれば、 私も誰の権限によってこれらの事をしているか答えます。 30 さて、洗礼者ヨハ ネが人に洗礼を授けていた時、彼の権限は神から来たのでしょうか、それとも 人から来たのでしょうか?」 29

31

ユダヤ人の権力者たちはイエスの質問についてヒソヒソ相談し始めた。

「もし“ヨハネの洗礼は神から来たものです” だなんて答えてみなさい、やつ はきっと“でわなぜ、ヨハネを信じなかったのですか?” なんてほざくに違いな い・・・。 32 くっ、しかし、ヨハネの洗礼が人の権威によるものだなんて、言 いたくても言えませんね・・・・・・」 大多数の人が洗礼者ヨハネは神に召された預言者だと信じていたのを知ってい たお偉いさん方は、民衆を敵にまわすことを恐れていたのだ。 「   ゴホッ、ゴホン。えぇ、我々は存じておりませぬ」

33

「そうですか!では、私も答えるまい!」

12 イ

遣わされた一人息子

エスはなぞかけを用いて、ユダヤ人指導者をはじめ、そこにいる群衆に 教え始めた。 ——「ある人がぶどう園を造り、ビジネスを始めた。まず、園の周りに 垣根を造り、ワインを作るための穴を掘り、その上に見張り用のやぐらを建てた。 彼は、何人かの農夫を雇い、そのぶどう園を任せてから旅に出た。

やがて、収穫の時期が来ると、ぶどう園の主は自分の分け前を取りに、雇わ れ農夫たちのところへ使用人を遣わした。 3 雇われ農夫は、到着した使用人に 分け前を与えて敬うべきところだが、使用人を袋叩きにし、何も持たせずに送 り返した。 4 そこで主は別の使用人を遣わしたが、結果は変わらず、農夫たち 2

は使用人の顔をぶん殴って、侮辱した。


ALIVE マルコ 57

それでもこらえた主は、また別の使用人を遣わしたが、今度はその使用人が 殺されてしまった! 主は農夫たちのもとへ、何度も何度も使用人たちを遣わし たが、彼らはことごとく袋叩きにしたり、殺したり残忍極まりないことを続け た・・・ 5

こうなったら・・・!と主は最終手段をとることにした。それは、最愛の一人 息子を送り出すことだった・・・。 6

(非情な農夫たちもわが息子になら敬意を払ってくれるはずだ・・・)との考え からだ。 7 と、こ、ろ、が!雇われ農夫たちはとんでもないことをたくらみ始めた。 “こいつぁ、驚いた。主さんのガキじゃあねぇか! いいこと思いついた!このぶ どう園はいつか、跡取りのこいつのものになる。ならいっその事、こいつを殺 しちまえばいいじゃあねぇか。そうすりゃあ、このぶどう園は俺たちのもんよ!! ガハハハハ――”  農夫たちは彼を捕えて殺害し、その遺体をぶどう園の外に放り捨ててしまった のだ! 9 この後、主はどうすると思う・・・? さすがの主でさえも堪忍袋の緒は 切れ、ぶどう園にすっ飛んで農夫たちを殺し、他の人を雇うだろう。 10 これは、 聖書に書かれている通りだ! 8

“大工が捨てた石は、最も重要ないしずえに。 11 これぞ神業! 神よりなされしこの偉業、 われわれ人間には信じ難し素晴らしさ”」 ——【聖書:イザヤ書、エレミヤ書より引用】 (ッ   !あやつもしや・・・んぬ゛ぅぅぅ・・・)ユダヤ人権力者たちの顔が真っ 赤になった。この例え話の悪い農夫は自分たちを指しているのだと気付いたか らだ。 12

それからどうやったらイエスを逮捕できるか、必死に良い口実はないかと探って いたが、途端に民衆の反感を買うことを恐れ、イエスの逮捕を諦めることにし た。・・・その場を立ち去る背中はなんと小さいことか・・・。  納付の義務  13

その後、深く根に持ったユダヤ人権力者たちは、イエスを陥れるために、パ

リサイ一派やヘロデ党から数人、使者を送り出した。 14「   先生、あなたは正直な方であられることを存じ上げております。あなた様


は他人の顔色をうかがうことなく、真っ直ぐに神の道を教えておられます。先生、 一つお尋ねしますが・・・ローマ皇帝に税金を納めることは正しいことで? そ れとも拒むべきでしょうか?」 使者たちはイエスを目の前にするとさっそく食って掛かった。 「   なぜ私をはめようとする・・・? ここに銀貨を持って来なさい」

15

イエスはひっかけ問題だと察したため、あきれたそぶりだ。 16

チャリンッ

彼らが銀貨をイエスに手渡した。 「この銀貨に描かれているのは誰の肖像だ?また、刻まれている名は誰だ?」 「カエサル様ですが・・・」 「   なら、カエサルの物はカエサルに返し、神の物は神に返すんだ」

17

イエスの答えは、使者の想像を逸していた。 あまりの立派な答えに驚きを隠せ ず、それ以上は何も言う事ができなくなってしまった・・・  生きた者の神   次に挑戦しに来たのは、死人が生き返ることはないと強く信じているサドカイ 一派だ。 18

「   先生、モーセは掟の中で、もし夫が子どもを残さずに死んだ場合は、兄の 家系を絶やさないため、夫の弟が兄の妻と結婚しなければならないと定めてい ます。 19

仮に7人の兄弟がいたとしましょう。兄が亡くなったため、次男が結婚しまし たが、子どもを残さずに次男も亡くなりました。 20

21  そこで、三男がその妻と結婚しましたが、三男も子どもを残すことなく亡く なりました。同じことが四男にも起こり、 22 7 人の兄弟全員がその女性と結婚 しましたが、誰ひとり彼女との子どもを残すことなく、亡くなりました。そして、 ついには彼女も亡くなりました。 23 7人全員が彼女と結婚したわけですが、蘇っ てから天国に行くとき、彼女は結局、誰の妻になるのでしょうか?」


ALIVE マルコ 59

——【聖書: 申命記より引用】 24「   なんのために、そんなお門違いなことを考えているんだ?まずひとつ、あ なたたちは読んでいる聖書を理解できていない。ふたつ、神の力がどう働くか をもまるで分かっちゃいない。 25  人が死から復活するとき、結婚という概念は まず存在しません。天に住む天使たちのようになるからだ。 26  あなたたちは聖 書を読んだことがないのですか? モーセの書には、神が燃える柴の中からモー セに語った言葉が記されている。私はアブラハムの神、イサクの神、ヤコブの 神であったではなく、神であると書いてある。 27  神は生きている者の神であり、 死んだ者の神ではない。あなたたちの考えは全くもって的外れだ」

イエスはあきれた様子だ。 ——【聖書: 出エジプト記より引用】

最も重要な掟  28「   質問してもよろしいですかな?」 「なんでしょう?」

あるモーセ法学者がサドカイ一派やパリサイ一派に挑戦されたとき、彼らを上 回る鋭い返答と対応をしたイエスを見て、ある質問をイエスに問いたくなった のだ。 「神の掟の中で最も重要なのは、どの掟ですか・・・?」 「   ・・・イスラエル人の同士たちよ、よく聞くんだッ!最も重要な掟を・・・ われらの王、神は唯一無二だ。 30 心、魂、思い、ちからを尽くして神を愛すこ と。 31  次に周りの人間を自身同様に愛すること。以上の2つが最も重要な掟 だ!」 29

——【聖書: 申命記、レビ記より引用】 「   大変素晴らしいお答えです先生!おっしゃるとおり、神は唯一無二・・・! 33 情 熱、知性、全身全霊で神を愛し、自分同等に人を愛すること。これらのことは、 どんな捧げものをどれだけ捧げたとしても、まったくとるに足りないほど重要な 掟です!」 32

34

この賢明な応答を聞いて、イエスはニコッとした。


「あと少しだ。あなたは、神の王国のすぐ近くにいる!」 ——これ以降、イエスと知恵比べしようとする人はいなくなったのだった。  救世主はダビデの子か  35

あるとき、神殿の境内でイエスがこんなことを教えていた——

「なぜモーセ法学者たちは、救世主はダビデの子だと教えるのだろうか? 36  神 の魂は、ダビデを通して次のように言った。 “我が神は我が君に言われた。 さあ私の右に座り、あなたの足元に敵を伏せさせよう” ——【聖書:詩篇より引用】  ダビデ自身が救世主のことを我が君と呼んでいるにも関わらず、どうして救 世主がダビデの子になりえる?」 37

ありとあらゆる人がイエスの教えに夢中になり、心を躍らせた。  宗教家の正体  38

さらに、イエスは教えをこう続けた——

「モーセ法学者や宗教家たちに気をつけるんだ。彼らは人から敬意をもってあ いさつされるのが大好きだから、身分の高い服装を好んで着ては、人通りの多 い場所をうろうろする。 39 また、彼らは集会所でも、パーティー会場でも上座 に座りたがる。 40 しかし、裏では夫に先立たれた貧しい女たちの家をだまし取 る・・・。表では長々と祈って、自分がいかに信仰深い者なのかを平然と見せ びらかしている。残念ながらそんな八方美人は神によって厳しく罰せられるのが オチだ」

額を上回る価値  41 イエスは神殿の献金箱の反対側に腰掛け、人が献金を入れる様子を眺めて いた。

ジャリリリリン・・・多くの金持ちたちが来て、大金を入れていた。 42  そこへ、 1人の貧しい未亡人が来た。


ALIVE マルコ 61

チャリン、チャリン 1円にも満たない小さな銅貨を2枚入れた音がした。 「   見ろッ!」

43

イエスは自分の仲間たちを呼んだ。 「あの女性は小さな銅貨を2枚も捧げた。分かるか、彼女はどの金持ちよりも 多く捧げた。 44 あの金持ちたちは、自分にとっちゃどうってことない金額をあり あまるふところから捧げたが、彼女は生きていくために必要な生活費すべてを 捧げたんだ!」

13 エ

終末の前兆

スが神殿から出て行こうとしているときのことだった。

「うっわー!先生、あれ見ってください!あのおおっきな、いしぃ〰〰! こりゃあ立派な建物だッ!」

イエスの一味は、建物が並んでいるのを見かけ、目をキラキラ輝かせた。 2「   ああそうだな!みんなもこの立派な建物をよく見てくれ! こいつぁいつか全壊 すんだ。1つ残らず今のように他の石と重なることがないほど、あとかたもな くだ・・・!!!」 先を見越したその表情で神殿を見つめるイエスだった。

3 ——それから、イエスは岩のペテロ、雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネ、そしてアン デレの、使徒4人を連れてオリーブ山に行った。山の頂上に着くと、みんなで 腰掛けた。そこからの眺めは素晴らしく、神殿がよく見える。 4「   イエスさん、さっきの話だが、いつそんなことが起きんだ? なんか前兆とかっ てあるのか・・・?」

仲間がそう聞くと、イエスの目が鋭くなった・・・


5「誰からも騙されないように注意しろ・・・   ! 6 俺の名を語るヤカラが多く現れる。 “私こそが救世主!!”などと言って偽り、人を惑わす・・・。 7  あっちで戦争があったことを耳にし、こっちでも戦争が始まることを聞く。だ が恐れる必要はない。これらは終末の前に必ず起こることだ。

8 民族は民族同士で対立し、国は国同士で対立する。食糧は底をつき、人は飢 えに苦しんだり、あらゆる場所で地震が起きたりもするが、陣痛のように、そ れはほんの始まりでしかない・・・!!

9  気をつけろよぉ、俺の仲間だって理由で捕まえ、訴えようとする人たちがわん さか出てくるからな。集会所で打たれ、叩かれては、王や政治家たちの前に立 たされ、俺のことを証言することになる。 10 おまえたちは、終末の前に最高な 知らせを全世界へと伝えなければならない!

逮捕され、連行されたとき、どう弁明しようかなどと心配する必要はない。 神の魂がおまえを通じて語るからだ! 神が教えてくれるままに語ればいい。 11

兄弟が兄弟と、父はわが子と、子どもたちは両親と敵対し、死に追いやって しまう・・・。 13  俺の仲間だからって、憎まれることもあるが、最後まで忠実 な者は救われる・・・!! 14  預言者ダニエルの言ったとおり、崩壊をもたらす者たちが本来居るべきでな い場所に居るのを見たら、すぐ逃げろ! <読者に告ぐ、これが誰を指してい るか、分かっていることを前提で記す>——【聖書:ダニエル書 引用 福音書 の筆者マルコは、読者にこの破壊をもたらす者がローマ軍であり、彼らがエル サレムを破壊するということを伝えようとしている。しかし、それを一般に公開 すれば、身が危うくなるため伏せたのだ】 12

そのとき、ユダヤにいる人は山へ。 15 何があっても足を止めてはいけない。屋 上にいる人は、家に荷物を取りに入らないように。 16  畑にいる人は上着を取り に戻らないように。 17 その日、妊婦や赤ん坊を持つ母にとっては、特につらい 時期になる・・・。 18 また、それが冬に起こらないように祈るんだ! 19  神が世 界を創造してから起こる、最も悲惨な時期になるからだ!! 20 ・・・だが、神が 選んだ人たちのため、神はこの過酷な時を短縮することにした。でないと全滅 する・・・!!! 21“   救世主がいるぞ!” だとか、“彼がそうだ!” なんて叫び始める人が、次々 出てきはするがシカトしろ。 22 えせ預言者やえせ救世主が来て、うそを信じさせ るために衝撃的な業を行って、神に選ばれた人たちをだまそうとする。 23 その ための警告だッ!! だれもだまされないことを願う・・・」——【この業は悪魔 の力によって成される】


ALIVE マルコ 63

終焉の季節  「   これらの困難に続いて、預言者イザヤが言うとおり“太陽は暗くなり、月は 輝きを失う。 25 星たちは天から落ち、天空の権威は揺り動く!”」 24

——【聖書:イザヤより引用。その時代、ファラオを神としてたたえ、ファラオ の死後、星になって天で輝き、天空の神の一人に数えられると信じる者が大勢 いた。また、世界を治める権威を与えてくれるのも、天空の星々だと信じてい る文化的背景があったため、このように例えた】 「   人は目の当たりにする・・・この人が雲に乗り、神の栄光と権威をまとって 来るのを! 27 この人は地上の至る所に天使を遣わし、神に選ばれし人たちを呼 び集める!! 26

イチジクの木から学ぶんだ。その枝が緑色になり、柔らかくなると、新しい 葉を茂らせる。人はそれを見て夏が近づいていることを知る。 29  同じように、 これらのこと全てが起こったら、ついにそのときが来たと察するんだ! 30  保証し よう。今この時代に生きている人たちの中には、これらの事を全て体験する者 がいる・・・! 31 やがて、この世界は、天と地の全てが滅びる。だが、俺の言 葉だけは永遠に残る・・・!!! 32  その日がいつなのか、この人や天使も含め、 知るものはいない。知るのは、父さんのみ。 28

だからこそ、いつも万全の準備をしていることだ・・・! それがいつになるか、 おまえたちに知るすべはない。 34 まるで、召使いに自分の家を任せて旅に出る 主人のようなもんだ。 主人は召使いたちに、それぞれ仕事を割りふって、留守 の間、しっかり家を守るようにと命じる。 35 主人が昼に帰るか、真夜中になるか、 ニワトリが鳴くころか、朝日が昇ってくるころか、なんて分かりはしない。だか らこそ念を押す!万全に備えろ。 33

いつも万全でいるなら、主人が早く帰ってこようと、居眠りしてサボった姿を 見られることはない。 37  いいか、俺は全ての人に対して言っているんだ。しっ かり準備万端でいろ・・・!」 36


14

祭の前の企み

1  ——【イスラエルでは種なしパン祭という祭りがあり、初日には過越の祭典と して、子羊を生け贄にする習慣があった】この種なしパン祭が2日後に迫った ころのことだ——

祭司長とモーセ法学者たちは、人に見られることなくイエスを逮捕する方法は ないもんかと話し合っている。 「   ちっ、祭りの最中にイエスを捕まえることはできない。民衆の怒りを買い、 暴動が起きるだろう・・・」 2

大多数の人がイエスを敬い、慕っていることが彼らの悩みだった。  香油を注ぐ女   イエスはベタニアの村にあるシモンの家で食事をとっていた。このシモンは以 前、重い皮膚病にかかっていた男だ。 そこへ、ササッ・・・と、一味の女が入ってきた。手には純粋なナルドで作ら れた、非常に高価な香油が入った石こうのつぼを持って。彼女はイエスに接近 すると、ポンッとつぼを開け、敬意と感謝の意を持って、イエスの頭にツーと香 油を注いだ。 3

「   お、おいッ!なんてことをする! 5 その香油は 300 デナリ以上の値打ちがある ぞ!売れば、貧しい人たちを助けることもできたというのに・・・!! くぁーもっ たいない」 4

イエス一味の数人は香油を注いだ女の行為をとんでもない無駄遣いだと言い、 彼女への不満をべらべらと並べた。 ——【1デナリは銀貨1枚で、1日分の給料に値した。300 デナリは年収に値 する】 「   やめろッ。俺のためにいいことをしてくれたっていうのに、なぜ彼女を責め る? 7  貧しい人たちはいつも近くにいる。彼らを助けることはいつだってできる が、俺はいつまでもみんなと一緒にいるわけじゃあない・・・。  8  彼女は俺のために最善をつくし、俺の埋葬に備え、体に香油を注いでくれ 6


ALIVE マルコ 65

た。 9 約束する、最高な知らせが世界中に広まり、彼女がした事は世界中に知 らされる!彼女は、永遠に忘れられるがない・・・!!!」 ——聖書:出エジプト記より引用】  イスカリオテのユダ   おやおや、十二使徒の1人であるイスカリオテのユダは、なぜか1人祭司長 たちのもとへ向かっている。師匠であり、友人であるイエスを殺すことにやっき になっている祭司長のもとへだ・・・。 10

彼らとおち合うと、祭司長たちに混ざって何やら話あっている。 「どうすれば、人に見られないところであやつをとっ捕まえることができる・・・?」 な、なんと!ユダは、祭司長たちに協力して、イエスを連行する手だてを企てて いるではないか・・・!!!  11  祭司長たちは、イエスと引き換えに希望の報酬額を支払うとイスカリオテの ユダに約束した。それからのユダはイエスとともに行動しながらも、頭の中は“イ エスを引き渡す機会はないか”ばかりだった・・・。  過越の食事   さて、種なしパン祭の初日である過越を祝うため、子羊を生け贄として捧げ る日がきた。 イエスの仲間が何やら聞きにきた。 「イエスさんのために過越の食事を用意したいんだが、食事はどちらで?」 12

そこでイエスは2人の仲間を町に遣わすことにしたが、その前にこう言付け ておいた—— 13

「町に行くと、水瓶を持っている男がおまえたちの所に来るから、彼の後につい て行ってくれ。 14 水瓶持ちの男が家に入ったら、“お供する者たちと一緒に過越 の食事をする部屋を見せてほしいと先生から頼まれた”と、家の主人に伝えれ ばいい。 15  主人は俺たちのために用意された2階にある広い部屋へ案内して くれる。そこで、食事の準備を整えてくれ!」 16

仲間たちが町に着くと、全てイエスの言った通りに事が進み、2人は笑みを

浮かべて互いに見合った。こうして、彼らはその家で過越の食事の準備を整え た。


17 夕方になると、イエスは十二使徒を連れ、その家に入った。美味しそうな香 りは微かではあるが、外まで漂っていた・・・。

18 食事の最中—— 「今、共に食事をしているうちの1人が、俺を敵の手に引き渡す・・・!!」

「   なッ!!!」

19

イエスの言葉を聞いて、仲間たちに衝撃が走った。イエスを裏切った自分の姿 を脳裏に浮かべ、死んでもそんなことしてたまるか!と1人を残して、みんなが 思った。 「俺は絶対、あなたを裏切りません!!」 おのおのが矢継ぎ早に言った。 20「   俺を裏切るのは、12 人のうちの1人。そう、俺と同じ器にパンを浸してい る者がな・・・」

驚きを隠せない使徒たちの視線が一斉に彼へいった。 21「   この人は聖書に記されている通り、苦しむことになる。だが、この人を裏切 り、敵の手に引き渡して、死に追いやる者はなんと哀れなことか。彼は生まれ て来ない方がましだった・・・」

最後の晩餐  22  それから、食事を続けていると、イエスはパンを取った。神に感謝を捧げ、 そのパンを裂くと、仲間たちに配った。

——「このパンは俺の体。さあ取って食べるんだ」 23  次に、ワインの入った杯を取り、神に感謝を捧げると、同じように仲間たち に配った。

「   このワインは、俺の血。神と人が新しい契約を結ぶために流される俺の血 だ。 25 言っておくが、神の王国で新しくなったワインを飲むその日まで、俺がワ インを口にすることはない」 24

26

それから、イエスと仲間たちは愉快に歌を歌った・・・・・・!!!


ALIVE マルコ 67

翌日——オリーブ山に向け、出発した。  死ぬ覚悟  27「   おまえたちはみな、俺を裏切る。聖書にはこうある。 “私が羊飼いを殺すと、羊たちは逃げ惑う。”

28  だが、俺は殺された後、死からよみがえり、ガリラヤに行く。いいか、俺は そこでおまえたちを待つ・・・!」

29「   たとえ、他の誰が 裏切ろうとも、この俺は決してあなたを裏切りはしな いッ!!」

この言葉にペテロが強く反応した。 「   ・・・残念だな、おまえは俺を否定する。ニワトリが2回鳴く前に、3度 俺を知らないと断言する」 30

31「   お、俺がイエスを否定するって?んなの、とんでもない!俺はイエスのため なら死ぬ覚悟だってできてんだッ!!」

他の仲間たちも続けざまに同じようなことを言うのだった・・・。  独り祈るイエス  32

イエスと仲間たちはゲツセマネという場所に着いた。

——「祈ってくるから、ここに座っててくれ」 33 しかし、イエスは岩のペテロ、雷兄弟 兄ヤコブ・弟ヨハネだけ、一緒に来る ようにと言った。

——ゔッ・・・・・ イエスは苦しみのあまりもだえ始めた。 「   俺は今、悲痛のあまり、心が張り裂けそうだ・・・。目を覚まして、ここで 待っていてくれ」 34

イエスは仲間が見聞きできないところまで離れ、その場にひれ伏すと、祈り 始めた。 35


「   はぁはぁ・・・アバ、あなたにできないことはない・・・。俺がこの苦し みの杯を飲まなくても、すむようにしてほしい・・・が、俺じゃあなく、アバの 思いのままにしてくれ・・・・・・」——【アバ:アラビア語で父】 36

37 イエスが仲間たちのもとに戻ると彼らはぐっすり眠っていた。 「おいシモン!なぜ寝ている・・・? 俺とともに1時間さえも、起きてらんない のか。 38 しっかりと目を覚まして、誘惑に負けることがないように祈るんだ。お まえの魂が正しくありたくても、体は弱い」

——イエスは、再び仲間たちから離れ、同じことを祈った。 40 イエスが仲間 たちのもとにまた戻ってくると、睡魔に負けた3人が仲良く寝ているではない か。イエスに気づいた彼らは、はッと起き、心臓が一瞬止まったかのように感じ、 あたふたする。 41 イエスは3度目も、同じように祈りに行った。 39

——さぁ3度目の正直・・・ イエスが戻ってくると、3人はくかー・・・と寝息をたてている。イエスはあき らめのため息をついた。 「また寝ているのか・・・もういい、この人が罪深い者の手に渡されるときが きた。 42 立て、時は満ちた。裏切り者のご登場だ・・・・・・」

口づけの挨拶   イエスが話し終わらないうちに、十二使徒の1人、イスカリオテのユダが、 剣やこん棒を持った武装集団を従えてやって来た。彼らは、祭司長やモーセ法 学者たちをはじめとした、ユダヤ教の権力者たちに派遣されたのだ。 43

——「いいか、俺が口づけのあいさつをする人を捕まえるんだ。連行する時は、 逃げないように注意しろよ・・・」 44

と、イスカリオテのユダは、あらかじめ武装集団にイエスを見分けるためのサイ ンを伝えていた。 「   あ、先生!」

45

ユダは笑顔でイエスに近づき、口づけのあいさつをすると、不気味な笑みを浮 かべた。 46 すると、武装集団が来て、イエスを取り押さえた。 47  にゃろォォォ・・・スパッ・・・。イエスの近くにいた仲間の1人は、武装


ALIVE マルコ 69

集団の隙を突き、剣を抜き盗ると、武装した男に向かって振りかざした。 「!」 ぼとッ・・・地面に落ちたのは武装した男の耳だ。 48「   なぜ犯罪者を捕まえるかのように、剣やこん棒を持って来たッ? 49 私は逃げ も隠れもせず、毎日神殿の境内で教えていたじゃあないか。なぜそのときに捕 まえない?まぁいい、聖書に記されたことが完全になされるために起きたこと だからな・・・!」

50

イエスが捕まると、仲間たち全員が一目散にその場から逃げ出した。

「ゔ、ゔわぁぁぁ——!!」 「コラッ、待て!」 ザザ、ザザザザッ!ガサガサ・・・・・・ 「逃げられました・・・追いましょうか?」

「いや、よい」 51  ある青年は、亜麻布の服しか着ていなかったが捕まりそうになり、武装集団 に服を掴まれたため、 52 服をさっと脱ぎ捨て、下着のまま逃げ出して行った。イ エスの他に武装集団の手にある青年の服のみが残った・・・

ユダヤ教権力者の口実づくり   イエスを捕えた武装集団は、イエスを大祭司のもとに連行した。そこには祭 司長たちや年配のユダヤ人権力者たち、そしてモーセ法学者など宗教関係の首 領が集結している。殺したくてたまらないイエスの顔を拝みに来たのだ。 53

54  ——そのころ、岩のペテロはというと・・・距離を保ちながら、イエスの後 をつけていた。そして大祭司の庭に入り、焚き火で体を温めている看守たちに こっそり混ざった。

55 祭司長や最高議会の議員たちは、イエスの汚点をさっさと見つけて、死刑に する気満々だった・・・。しかし、十分な証拠が全くもって見つからない。 56 う その証言をするヤカラは大勢いたが、彼らの言うことはばらばらで、てんで一 致しない。 57 すると、そこにいた数人がザッと一斉に立ち上がり、うその証言 をべらべら並べた。 58「   私たちはこやつが、“私は人の手で造られたこの神殿を壊し、3日目に人


の手を一切借りることなく、別の神殿を建てる”と言ったのを確かに聞きまし た!」 彼らは、イエスの名前を伏せて言った。名前を言うことさえ、しゃくにさわるか らだ。 59

しかし、彼らの話もまたもや食い違う。

「   彼らがお前にとって不利な証言をしているぞ。これらの訴えに対して、何か 反論することはあるか?それとも彼らの言っていることは誠なのか?」 60

群衆の前に立った大祭司がイエスに聞いた。。 「   ・・・・・・」

61

しかし、質問に答える気配が全くないイエスに、大祭司は別の質問をした。 「お前は創造主の子、救世主なのか?」 62「   その通りです。みなさんはいずれ、神の子が全能なる神の右の座に腰をす えている姿を見る。そして、この人が雲に乗ってやって来る光景をも目の当たり にする」——【聖書:ダニエル書より引用】

「   んなッ、何じゃと———!!!」

63

ビリビリビリィィィ——!大祭司は怒り狂って、自分の服をひき裂いた・・・! 「え゛———ぃ!!!もう十分じゃ。これ以上の証言はいらん! 64  我々は聞いた!今 まさにこの耳で、こやつが神を侮辱するのを!みなの者、異論はあるかッ!!!」 「ありませんッ!!!」 そこにいた人全員が、イエスの死刑に同意した・・・。 65 ペッ、ペッ ! そのうちの何人かは、イエスに向かって唾を吐きかけた。 ビシッ、ボコッ、ゴキ・・・・・

「オラッてめぇが 本 当 に 預 言 者 なら、 誰が 殴ったか 当ててみ やが れぃ!は は は——!!」


ALIVE マルコ 71

イエスに目隠しをして殴り始める・・・! ——看守たちはイエスを連れ去り、さらにこてんぱんに痛めつけたのだった。  二度鳴くニワトリ   そのころ、岩のペテロはと言うと、まだ大祭司の庭の焚き火のそばで体を温 めていた。 66

——そこに召使いの少女がやって来ると、 67 火が反射し、ゆらゆらとだいだい色 に照らされたペテロの顔を覗き込んだ。 「あ、ねぇ!ナザレのイエスと一緒にいた人ですよね?!」 68「   うおッ! な、なーにを意味の分からないことをッ!俺は知らん!」 ペテロは彼女の言葉を否定した。慌ててその場を離れ、庭の出口へ向かってい ると・・・コケッコッコ——! ニワトリが鳴いた。 「   ね—ぇ!あの人、あの男の仲間ですよー!」

69

少女はペテロの慌てる様子を見て、周りに立っている人たちに言った。 70「   にゃろ、違うつってんだろッ!!」 ペテロは振り返って再度、彼女の言葉を打ち消した。すると、周りに立ってい た人たちの目線が一斉にペテロに行った。 「間違いない!発音からしてあの男同様、ガリラヤ出身だ!!」 「   ざけんな! 神に誓って言うが、あんなやろう俺は知らん!!!」

71

ペテロは呪いをかけて誓った・・・。 72

コッケコッコォォォ—・・・・・

ハッ! ——ニワトリが2回目の鳴き声を上げたと同時にペテロは、“ニワトリが二度鳴 く前に、イエスを三度否定する”とイエスが預言されたことを思い出した。 「う、ゔわぁぁぁ〰〰〰〰〰〰!」 ペテロは、泣き崩れた・・・・・・


15  尋問

明けごろのことだった。

「この者の処分を決定する・・・!!!」

祭司長やユダヤ人権力者たち、モーセ法学者、最高議会の議員たちは、イエ スの処刑の判決に対し、満足げに立ち上がって拍手した。そうとなると、待っ てはいられない。さっそくピラト総督のもとにイエスを連行した。 「閣下、騒動を起こしておりますイエスを只今連れてまいりました」 「うむ」 イエスは、ピラト総督の前へと突き出された。 「   聞くところによるとだが、お主、ユダヤ人の王なのか?」

2

「ええ、間違いではないです・・・!」 総督を前にイエスは堂々な風貌。 「   閣下!こやつはとんでもないことをしでかしたんでございます!」 「そうです、ピラトさま!こいつはとんでもない悪党です!!」 「誠実で正しいお方であるピラトさま!どうか、こやつを!」 3

祭司長たちは、次々にイエスの有罪を訴えた。あまりの数の訴えに 4 ピラト総 督は驚きながらイエスを見た。 「これだけ多くの者が訴えておるというのに、お主は黙っておくのか・・・?」 「・・・・・・」 5

弁解どころか、全く気にもしてなさそうな様子にピラト総督はなおさら驚いた。


ALIVE マルコ 73

ピラト総督の慈悲    さて、 毎 年 過 越 の日には 民 衆が 選んだ 囚 人を1 人、 釈 放する慣 習が あっ た。 7  牢にはバラバという名の囚人がいた。バラバは、一味とともに殺人を犯 した罪状で、投獄されている悪党である。 6

8

——「閣下、いつもの・・・!」

ある民衆の者たちが今回はどの囚人の解放をするのかとピラト総督のもとへ やってきた。 9「   !」ピラト総督はひらめいた様子で群衆を見た。 「・・・お前たちは、ユダヤ人の王を釈放してほしいか?」  ピラトは察していた。イエスが連行されたのは祭司長たちの嫉妬のみが原因 だと。 11 とんでもない!と慌てたようすで祭司長たちは、イエスではなく“悪党 バラバの釈放を”と言うように民衆を促した。 10

——「・・・バ〰ラ〰バ!バ〰ラ〰バ!!バ〰ラ〰バ・・・・・・!!!」 12「   ・・・な、ならお主らは、このユダヤ人の王だという男をどうしてほしいと いうのだ?」 「   十字架で殺せぇ〰〰〰〰!!!」

13

「   なにィ・・・?なぜだ?こやつが一体何をしたと言うのだ?!」

14

「じゅ〰じ〰か!じゅ〰じ〰か!!じゅ〰じ〰か!!!」 (ぬ゛ぅ   ぅぅ・・気は進まんが、これとばかりは手に負えぬ・・・)

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ピラト総督は野犬のように吠える人たちを見て、彼らの要望どおりにしなけれ ば、大きな暴動が起きる・・・そう思った。役職上、暴動を起こさせるわけに はいかない。なくなく悪党バラバの釈放を承認した。そして、イエスをムチで 打ち、極悪人にのみ与える刑である十字架での処分を兵士に命じた。 16

——「来い!」

ピラトの兵士たちは、イエスをピラトの官邸へ連行した。そして仲間の兵士た ちを全員、呼び集めると、 17 イエスを王に見立てるため、無理やりムラサキ色 のガウンを着せ、鋭いとげが無数にあるイバラで編まれた冠を頭にかぶせた。 とげは皮膚をえぐり、イエスの額からは血がしたたり落ちる・・・・・・。


18 ——「おーこれは、これは! ユダヤの王殿ではございませんか!」 「コラッ、おまえたち!ユダヤ人の王に敬礼せんか!」 「プ・・・ブワッハッハッハァ—!」

ドスッ ドシ、ゴキ・・・・・・・   そして兵 士 は、イエスの 頭を何 度 も棒で殴り倒し、 ペッと唾を吐きか け た・・・!!! 兵士らは、イエスの前にひざまづいて見せた。まるで、王にひざ まづくかのように皮肉ったのだ—— 19

さんざんイエスを侮辱し、あざわらうと、ムラサキのガウンを脱がせ、元々 着ていたイエスの服を着せ直した。イエスの顔はボコボコに腫れている・・・。 兵士たちは、殴り飽きたところで、イエスを十字架で処刑するため、官邸から 連れ出した。 20

十字架につけられたユダヤ人の王  21 アレキサンドルとルファスの父親である、シモンというクレネ人の男が田舎か ら町に向かっていたときのこと——

ボロボロになっているイエスは、十字架を背負って進むよう強要されるが、苦 戦していた・・・ ——「おい、そこのお前!こいつの十字架を一緒に背負え!」 「え!で、でもこれから用が・・・」 「ええい、いいから手伝え!」 「ゔッ・・・」 クレネ人のシモンは、いきなり兵士たちに手伝わされた。 22 兵士たちが向かわ せるは、どくろの地。そこは、極悪人が処せられる十字架がある場所だ。 23 兵 士らは道中、麻酔の効果があると言われていた没薬を混ぜたブドウ酒を差し出 したが、イエスは飲まなかった。 24

——カンッ、カンッ、カンッ、べチャッ・・・・・・

兵士たちは、イエスの身体を釘で十字架にはりつけた。辺りにイエスの血が飛 び散っている・・・。 ——「おーし、サイコロで決めるぞ!」 「行くぞー。そーらよっ!」


ALIVE マルコ 75

「き、きたー!!もーらいっと!」 兵士らは、イエスが着ていた上質な服を切り分け、誰がどの部分を貰うかをサ イコロで決めた。 25 兵士たちがイエスを十字架に架けたのは、朝の9時ごろの ことだ—— 26 イエスの頭上には、イエスの罪状を記した看板・・・ユダヤ人の王と記され ている。 27 また、イエスの両側には、犯罪者が2人。イエスと同じように十字 架にかかっていた。 28“   彼は犯罪者の1人として数えられた”という聖書の言葉 が現実になった瞬間だった。

29

——「あらら、クズがこーんなとこにっ!」

その場を通りがかった人はイエスに近寄っては、侮辱してあざ笑う。 ——「そーこのごみクズさん!神殿壊して、3日で建て直すんですって?プッ! 30 神 殿の心配する暇あったら、ご自分を助けてみたらどーう?」 「そこに架かってるあなた、十字架から降りてみなさいっ!あーおっかし!」 31 そこにいた祭司長やモーセ法学者たちは、お腹を抱えてイエスをあざ笑うと、 こう言うのであった。

「彼は他人を救いはしたが、当の自分は救えやしない!みっともないったらありゃ しない!ククク」 32「   もし、仮にですよ。この方が救世主で、イスラエルの王ならば、今ここで十 字架から降りて来ればよいではないですか。さすれば、このわれわれでさえそ なたを信じますよ!プー」 さらに、イエスの両脇の十字架にはりつけられていた犯罪者たちまで、一緒に なってイエスをあざ笑った。  救世主の死?真に神の子だった・・・   ブオオオオオ・・・・・・正午になると、国中が暗やみに包まれた・・・。 3時ごろになってもなお、暗闇のままだ—— 33

「   エロイ!エロイ!ラマ、サバクタニ〰〰!」

34

・・・・・・イエスは残りわずかの力をふりしぼって叫んだ。 ——【それは、 聖書の詩篇 22 章の題名をアラム語にしたものであり、“見捨てた”と嘆いた


訳ではなかった】 35 その声は、そこらに立っていた人たちにまで届いた—— 「お、おい・・・こいつ今、エリヤを呼んだぞ・・・!」 ——【イエスが言った“エロイ” が、遠くからは紀元前 850 年頃に存在した有 名な預言者“エリヤ”に聞こえたのだ】 36 1 人の男が慌てて走り出したかと思うと、彼はスポンジを手に取り、水を混 ぜた酸味あるワインを吸わせて棒に結びつけた。そして、上にいるイエスへそ の棒を伸ばし、飲ませようとした。 「おい、止めろ! 預言者エリヤが救いにくるかどうか、確かめてみようじゃねぇ か・・・!」 「   ぐ、ゔあ゛〰〰〰〰〰〰・・・・・・」

37

イエスは大声で叫んだ!かと思うとそのままぐったりしてしまった・・・。息を引 き取ったのだ・・・。 38

バ、バリバリバリィ———!!!

イエスが息をひきとると同時に神殿の幕が上から下まで勢いよく真っ二つに裂 けた!!! 「   ご、ご、ごの方は真に゛神の子だった・・・・・・!!!」

39

十字架の正面に立っていた軍の将校は、イエスの死に様を見て確信した。 40 ——イエスの仲間である女たちは、一部始終を離れた所から見ていた。 その中にはマグダラのマリア、サロメ、ヨセそして末っ子であったヤコブの母マ リアなどがいた。 41 イエスがガリラヤにいたとき、いつも面倒を見ていたのは 彼女たちだ。また、その他にも、イエスと一緒にエルサレムに来た女たちがそ の場に大勢いた。  救世主の埋葬  42

休日の前日のことである。太陽が沈み始め、あたりが暗がかりはじめた。

43

——「閣下、イエスが息を引き取ったと聞きました。ぜひ彼の遺体をこの私


ALIVE マルコ 77

に埋葬させていただきたく参りました」 アリマタヤ出身のヨセフという男が、勇敢にもピラト総督に願い出た。 ——アリマタヤのヨセフは最高議会でも重役である議員の1人で、何よりも神の 王国を待ち望んでいる男だった。 44

——「なんと!あやつはもう息を引き取ったのか・・・?」

ピラト総督は、イエスがすでに息を引き取ったことを聞いて驚いた。 「おい、すぐ将校に確認してこい」 「はっ!」 45

——「閣下、将校が確かに死亡を確認したとのことですッ!」

(そ、そうか・・・) ——「ヨセフさん、確認がとれましたので、お望み通りになさってください」 「ありがとうございます。では」  ピラト総督から許可をもらったアリマタヤのヨセフは即座に高価な亜麻布を 買い、遺体のあるどくろの地へ向かった。 46

——「うっ、なんて無惨に・・・」 「うわぁぁぁん!ひどすぎるよぉー」 「グスン・・・非道よ、グスン、非道!!・・・グスン」 イエスを十字架から降ろし、その変わり果てた姿に仲間たちは、感情をむき出 しにした。その姿は誰だか分からないほどだったのだ・・・。そして、購入し た布にイエスの遺体をそっと包んだ。 ——それから、山の側面を掘って造られた立派な墓に、遺体を持って行き、そ こへ安置させた。 最後に、墓の扉となる大きな岩をゴロゴロと転がし、入り口を塞いだ。 47 この とき、マグダラのマリアとヨセの母マリアは、イエスの墓場の位置を覚えた。


16 休

復活の伝令

日が終わったその晩、マグダラのマリア、サロメ、そしてヤコブの母 マリアは、イエスの遺体に塗るための甘い香りのする香油を買いに 行った。 2  週の始めとなるこの日、朝日が昇ると同時に女たちはすぐ に墓へ向かって行った。 3 その途中、女たちはふと思った。 「 そう言えば墓の入口の大きな石どうする?」 「確かにッ!私たちだけじゃ、あれ動かすのは無理だね・・・」 「そうねー、誰か頼めそうな人いないかなー」 4

そんな話をしながら歩いていると墓が見えた・・・

「???」 「なんだ、もう開いてんじゃない!」 「う、うん・・・でも誰だろう・・・?」 入口を塞いでいた石でできた大きな円状の扉は、すでにどけられている。 5  彼 女たちは、とりあえず誰がいるのかを墓の中に入って確認することにした。 「もしもーし?」 「やあ☆」 「え・・・!」 「ぎゃぁぁぁ〰〰〰〰!!!」 白い衣を着た若い男が墓の右側に座っているではないか! 彼女らの心臓は一瞬 止まったかと思うほど驚いた。そして、恐怖に怯えた。 6「   ははッ!恐がらなくていいよッ! 十字架にかけられたナザレのイエスを探して るんでしょ?

彼ならここにはいない! 死から蘇ったからね! 疑うなら、自分の目で確かめてみ なよ! ほらッ ここ、ここ! 遺体はここにあったんだ。 7

いい?今から、イエスの仲間たちの所へ行って、何が起こったかを伝えてく


ALIVE マルコ 79

んだ! 特にペテロ! 彼にはよく伝えておいて! イエスが以前から言ってたとおり、 イエスはガリラヤで一味に会うのを待ってるから! ガリラヤに行ってイエスに会 うように伝えてね!」 こう話している白い衣を着た男は、そう、天使であった! 8 ヒィー! 彼女たちは、天使とは知るよしもなく、恐くてもうどうなっているのか がさっぱり! 逃げ去るようにして墓を出て行った。その後、彼女たちはあまりの 怖ろしさに、自分たちが見たことを誰にも話せなかった・・・。

疑心暗鬼になる一味   イエスが死から蘇ったのは、週始めの早朝であった。復活したイエスは、まず、 過去に自分が7つの悪魔を追い出した、マグダラのマリアの前に姿を現した。 9

彼女の中に住む7つの悪魔をイエスに追い出してもらったのが彼女だ。  マリアは復活したイエスに会った後、仲間たちにその事を伝えたが、肝心の 仲間たちは悲しみに暮れ、泣きじゃくっていた。 10

「   みんな!!!イエスが死からよみがえって復活したんだよ!死んだだけじゃない、 蘇って今も生きてるのよッ!」 11

マリアは必死になって仲間たちに伝えたが、イエスに付き従ってきた仲間ですら、 マリアの言うことを信じなかった——

12

それからのこと、イエスの一味である2人が田舎道を歩いていると・・・

「よう!」 「?・・・」 え゛ぇぇぇぇぇぇ!!! 2人の前に姿を現したのは紛れもなくイエス。でも、その姿は殺される前とは 少し違っている。 13 2人の仲間たちは他の仲間たちのもとに行って、自分たち の身に起きたことを話したが、またも、他の仲間たちはこの証言を信じない——  最後の助言  14

それから後、11 人の使徒が集って食事をしているところだった。スタッ・・・


そこへ来たのはイエスだった!一味が断固として信じないことを叱りにきたの だ。 15

——「さあ行け!世界中のありとあらゆる人へ最高な知らせを伝えるのだ!

いいか、最高な知らせを信じ、水に浸かって洗礼を受けた人は、だれでも救 われる。 だが、信じない人は有罪と定められる。 16

17  信じた人が救われた証か?俺の名により人から悪魔を追放し、今まで知らな かった言葉を話せるようになる! 18  蛇をつかもうが、毒を飲もうが害を受けず、 病ある人の上に手をかざせば、病は治るよのだ・・・!!!」

天国へ帰る王   イエスは一味にこれらのことを語り終えると、天に引き上げられ、神の右の 座にこしをすえた。 19

それからの一味はと言うと、世界中に出て行って神の最高な知らせを会う人 会う人に伝えていった。 20

神は一味にキセキを起こす力を授け、彼らの語ることが真実であることを証明 していったのだった。



イエスを信じたい? すべての人が過ちを犯しました。それにより、完璧である神様との関係が持てなくなっ たのです。だからこそイエス・救世(キリス)主(ト)はこの世に来て、完璧な人生を生き、 私たちの過ちを背負って、十字架に架かったのです。 しかしその死から3日目に復活 をとげ、神であることを証明しました。聖書では以下のように書いてあります。 なぜなら、もしあなたの口でイエスを主と告白し、あなたの心で神はイエスを死 者の中からよみがえらせてくださったと信じるなら、あなたは救われるからです。 聖書・ローマ人への手紙10章9節(新改訳) イエスを信じたいと思ったなら、下の祈りを心から祈りましょう。その時、あ なたが過去に犯したすべての罪は赦され、神(ホーリ)の(ースピリ)魂(ット) が与えられます。そして天国へ行くことが約束されるのです。 祈り イエス、今、あなたを信じるよ。 私の罪を許してくれてありがとう。 今私の人生に入って来て。これからはあなたについて行くから。 信じたらどうすればいいの? 出会った友達と関係を深めるのと同じように、 イエスはあなたとの関係を深めた いと思っています。あなたの神様であるイエスと関係を深めたい。神様が用意した 最高な人生の計画を歩みたいのであれば、以下のことを実践してみよう。 ・地域教会に根付こう イエスを中心としている教会へ行ってみよう。教会は、 イエスを信じ る人の家族、家です。ひとつの教会に根付いてみよう! ・聖書を読んでみよう 聖書は神様の生きた言葉が詰まっています。神様は聖書をとおして毎日あなたに伝えたいこ とがあります。1日10分ほどでいいので、毎日聖書を読んで神様のことを知ってみよう! ・いつも祈ろう 祈りは神様とのコミュニケーションです。神様はあなたの心を知っている ため、いつも声にだす必要はありません。神様はあなたの父親なので、父 親に話すように感謝の気持ちや願いを神様にぶつけていこう! わたしは、おまえたちのために立てた計画をよく知っている。 それは災いではなく祝福を与える計画で、ばら色の将来と希望を約束する。 ```


Project Manager - Yancy W Smith Senior Editor - Brandon Sato Assistant Editor - Shiva Horiuchi Editor - Shinsuke Otomo |Volunteer Editor| - Kyoichi Takemura - Yoshie Papatua - Reiko Kano |Back Translator| - Daniel Joseph - Alexander Takuma Kubota - Jeffrey Rodkin |Proofreader| Tomoyo Takata Keisuke Imamura Book Designer - Ruyi Igiehon



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