明倫茶会| POP UP TEA ROOM 2012.11.24 REPORT
RAD - Research for Architectural Domain
明倫茶会| POP UP TEA ROOM
photo: 403 architecture [dajiba]
明倫茶会| POP UP TEA ROOM 日にち:2012 年 11 月 24 日(土) 会場:京都芸術センター 時間: 10:00 -:1 席目
明倫茶会| POP UP TEA ROOM
15:30 - :2 席目 17:00 - :3 席目 --
元明倫小学校を改築して京都における芸術振興の拠点施
主催:京都芸術センター
設として 2000 年にオープンした京都芸術センターが開
席主:RAD - Research for Architectural Domain
催する、来場者のためのお茶会を各界で活躍する方々が
協同
席主を務めて行う企画「明倫茶会」にて、私たち RAD が
:403 architecture [dajiba]
席主の役を務めました。
:NO ARCHITECTS :marl design studio and more
そこで、私たち RAD が現在進めている 3 つのプロジェ
:三木佑美
ク ト(Research Store Hamamatsu、HAPS 町 家 改
:茶の湯集団 鴨ん会
修、大見新村)を反映し、またその現場に移設できる一 日限定の仮設的な(= POP UP)お茶室を 3 組の建築家 (403architecture [dajiba]、NO ARCHITECTS、marl
中山福太朗/内藤圭祐/吉田真成 サポート :松村茉莉(特記のない本文中写真の撮影者)
design studio and more)に設計を依頼し、ワークショッ
:黒田彰吾
プ形式で芸術センター各所に制作。完成後はその場でお
:松岡篤
茶会を行いました。
:後宮淳一
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スケジュール
10:15 - 13:15:茶室設置ワークショップ 14:00 - 14:30:RAD 紹介プレゼンテーション 1 14:30 - 15:00:お茶会 1(10 名 × 3 箇所) 15:30 - 16:00:RAD 紹介プレゼンテーション 2 16:00 - 16:30:お茶会 2(10 人 × 3 箇所) 17:00 - 17:30:RAD 紹介プレゼンテーション 3 17:30 - 18:30:お茶会 3(10 人 × 3 箇所)
内容
【茶室設置ワークショップ】 RAD が実施している 3 つのプロジェクト(大見新村、HAPS 町家改修、Research Store Hamamatsu)の実施場所に移設することを想定した 3 つの茶室をワークショップ形式で作 成します。茶室のデザインとワークショップは、RAD のコラボレーターとして若手建築家 3 組が実施します。※ワークショップ参加者はその後、 「RAD 紹介プレゼンテーション 1」と「お 茶会 1」に参加します。 -参加人数:10 人ずつ 時間:10:00 - 13:15 設置場所:京都芸術センター内各所
【RAD 紹介プレゼンテーション】 席主の活動を紹介しつつ、今回つくられる茶室の背景についてお話しします(計 3 回) -時間:約 30 分 場所:講堂、または和室
【お茶会】 芸術センター内に設置されたお茶室にて、それぞれ 10 名 ×3 カ所 ×3 回(計 90 名)のお茶 会を開催します。その際にコラボレーターによる茶室についての説明などを行います。 -時間:一回 60 分 場所:茶室設置場所
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RAD 紹介プレゼンテーション 3 つの「茶室」でのおもてなしの前に、まず私たち RAD が何者かを来場して頂いた皆様に知っていた だくため、約 30 分のプレゼンテーションを行いました。
今回、それぞれの「茶室」が移設される 3 つのプロジェクトはもちろん、その他いくつかのプロジェク トについてご説明しました。各回 30 名、計 3 回、プレゼンテーションを行いました。
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京都芸術センター北館入り口
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茶室| TEA ROOM 1
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Research Store Hamamatsu 403 architecture [dajiba]
浜松を拠点に設計活動を行う 403 architecture [dajiba] の三人には、梱包材として使用されるエアーキャップ(通称プチプチ)を用いた 「茶室」を、京都芸術センター北館 1F の玄関口に設計していただきました。幅 30 センチで 40 メートル、直径にして 35 センチのエアーキャッ プ 1 ロールを 60 ロール用意し、ひたすら巻いていくことで大小の「床」をつくっていきました。およそ 4 ロール分を利用した床 4 席を 客席に。およそ 15 ロールを利用した床 1 席をお点前用に。そしておよそ 20 ロールを既存の柱に巻き付け、「待ち合い」をつくりました。 ワークショップでは 8 名の参加者に 4 つのペアをつくっていただき、それぞれ 4 ロール分のエアキャップを巻いて客席 4 席分をまず制作 していただきました。待ち合いをつくるために柱にエアキャップをまきつける作業は、一人がぐるぐると柱の周りを回る、という方法から、 全員で「バケツリレー」的にエアーキャップを巻き付けていくという新しい方法が発見され、約 2 時間という短い時間でお茶会のしつら えを完成させることができました。
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photo: 403 architecture [dajiba] 「お茶会」では京都の茶の湯集団「鴨ん会」中山さんに、毎回全ての 客人にお点前をふるまっていただきました。お茶請けとして、浜松 名菓「安倍川餅」をふるまいました。この「茶室」のしつらえが移 設される先のプロジェクト「Research Store Hamamatsu(詳細 は後のページで説明します)」に関する RAD 榊原による説明はある 程度にとどめ、皆さんにはお点前に集中していただきました。 なお、待ち合いに控えていらっしゃる方々には、Research Store プロジェクトで行っているアンケートにお答えいただきました(右 上)。「街についての疑問」や「街のよいところ」を指摘していただき、 それを具体的な場所とともに挙げていく、という内容です。
photo: 403 architecture [dajiba]
お茶会終了後には、「茶室」を移設運搬するための梱包材という本来 の使用法で、しつらえのためのプチプチが活用されました(右下)。
403 architecture [dajiba] 2011 年に筑波大学大学院芸術専攻貝島研究室修了の彌田徹(写真左)と、横浜国立大 学大学院建築都市スクール Y-GSA 修了の辻琢磨(写真中)、橋本健史(写真右)の三人 によって設立された建築設計事務所。静岡県浜松市を拠点として、都市そのものをフレー ムとした活動を展開している。これまで手掛けたプロジェクトに、賃貸集合住宅の改修 計画「海老塚の段差」、インスタレーション「浜松の展開図」、都市空間の提案として「パ ラレル・マテリアル・スケープ」など。 RAD - Research for Architectural Domain 7
茶室| TEA ROOM 2
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HAPS ベース町家改修 NO ARCHITECTS
photo: NO ARCHITECTS
大阪を拠点にして仮設展示会場や空間構成を多く手がける NO ARCHITECTS には、ドーナツ型の「茶室」を、京都芸術センターの講堂 に設計していただきました。茶室に特徴的な「にじり口」を再解釈したこの「お茶室」では、参加者はドーナツの穴から座面に上がって お茶を待つというしつらえになっています。移設される「HAPS ベース町家(詳細については後のページをご覧下さい)」では、一般的な 京町家が持つ中庭の空間に設置される予定。おおよそ胸の高さに天板があるので、立食パーティ等の際に便利なテーブルとして使用する ことが目指されています。 ワークショップでは参加者自身が座面に当たるドーナツ、ならびにそれを受ける柱を組み立てるという、3 組の中でももっとも大工作業 に近いものとなりました。参加していただいた元大工さんがリーダー的役割を担われ、着物を着たご夫人にも上手に作業を割り振ってい ただきました。最後は座面に黄色のフェルトを貼って完成。余りのフェルトで参加されたみなさんの名札をつくるという心配りもなされ たワークショップとなりました。
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photo: NO ARCHITECTS 「お茶会」では建築設計事務所に務められる傍らお茶も嗜まれる三 木祐美さんにお点前を披露していただきました。お茶請けとして、 HAPS ベース町家が位置する東山の名菓「五行ういろ」をふるまい、 お茶の間には RAD 木村より、この「茶室」が移設されるプロジェ クト「HAPS ベース町家改修」プロジェクトについての紹介を行い ました。
NO ARCHITECTS 西山広志(写真左)奥平桂子(写真右) 2009 年 神戸芸術工科大学大学院修士課程鈴木明研究室を修了し、 nishiyamahiroshiokudairakeiko として活動を開始。トウキョウ建築コレクション 2009、RIC アートカプセル、六甲ミーツ・アート「芸術散歩 2010」や U30-30 歳以 下の若手建築家 7 組による建築の展覧会などに出展。 2011 年 大阪市此花区への事務所移転に伴い NO ARCHITECTS に名称変更。 現在、建築をベースに、設計やデザイン、インスタレーション、ワークショップ、会場 構成など幅広く活動しています。また、此花アーツファームの事務局として、企画やデ ザイン、広報などにも関わっています。http://nyamaokud.exblog.jp/ RAD - Research for Architectural Domain 9
茶室| TEA ROOM 3
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大見新村 marl design studio and more
関西を中心に、新築住宅、リノベーションなどの設計活動を行い、実際にこの「茶室」が移設される先のプロジェクト「大見新村(詳細 は後のページをご覧下さい)」にもご参加いただいた marl design studio and more には、あたかも落ち葉でできているかのような座布 団が印象的なしつらえを設計していただきました。実際には建築工事現場でよく使用される「土嚢袋」の中に落ち葉でコーティングされ たクッションを入れるという仕組みですが、これは実際に大見村でも転用可能なシンプルさです。他にも、落ち葉を使った飾り付けなど を効果的に配し、京都芸術センター北館 2 階の廊下が一時的な「茶室」に変わりました。 ワークショップでは大量の落ち葉に格闘する班と、いわゆる「にじり口」の建設に格闘する班に分かれたバランスのよい作業内容となり ました。
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お茶会では京都の茶の湯集団「鴨ん会」のみなさまにお点前を披露 していただきました。お茶請けとして、RAD がまた別のプロジェク トで訪れた大分は竹田のお菓子「荒城の月」をふるまいました。参 加者の皆さんにお茶を楽しんでいただいている間に、RAD 川勝から この「茶室」が移設されるプロジェクト「大見新村」のこれまでと これからについてのプレゼンテーションが行われました。
marl design studio and more 2009 年、伊藤崇の団地 1 室リノベーションをきっかけに、建築設計を中心とする事 務所としてスタート。2012 年に夏川が加わり、マンション 1 室リノベーションや個 人住宅設計などを行っている。建築設計だけでなく、空間を構成する家具などのデザイ ンにも取り組み、それらを取り巻く人たちとともに作って行きたいという想いが ‘and more’ に込められている。 RAD - Research for Architectural Domain 11
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茶室が「移設」されるプロジェクト紹介—その 1 「RESEARCH STORE HAMAMATSU」
RESEARCH STORE HAMAMATSU 403 architecture [dajiba] に 参 照 し て 頂 い た プ ロ ジ ェ ク ト 「RESEARCH STORE」は、全国の地域を移動して短期滞在型のリサー チを行なプロジェクトです。その地域の人、物、場所、出来事と関わり ながら、多種多様なリサーチを行ないます。上の写真は 2012 年 4 月に 行った福岡での様子です。2013 年には浜松で開催します。 このプロジェクトにおいてなすべきことは、地元の人が日常的に何気 なく過ごしていることで見えにくくなっている地域の問題(=Social Issue)を発見し、地域内外に伝えていくことです。地域のための情報と、 地域に暮らす人、訪れた人の疑問とをうまく結びつけるような情報提供 とともに考えることで、都市の見方を提案していきたいと思います。
ISSUE MAP Research Store プロジェクトでは地域にまつわる情報の データベースを、地理的な条件を契機にして活用するための 仕組を提案し、それを「ISSUE MAP」として利用できるよ うにすることを目指しています。こうした方法によって、新 しい都市の見方を提示していきます。
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茶室が「移設」されるプロジェクト紹介—その 2 「HAPS ベース町家改修」
HAPS ベース町家改修 NO ARCHITECTS に参照して頂いたプロジェクト「HAPS ベース町家改修」は、 京都市が行うアーティスト支援プログラム「HAPS(東山アーティスト・プレイス メント・サービス)」の拠点となる町家を改修するプロジェクトです。「トレーサビ リティ」をテーマに、「改修の痕跡」が、改修後の建物を訪れた人にも目に見える ような仕組みを取り入れた改修ワークショップを行っています。有り難いことに、 これまでにおよそ 100 名を超える多くの人による参加をいただいています。 また、ワークショップのデザインのみならず、普段完成してしまうと見えなくなっ てしまう作業プロセス、また職人さんがなかなか語りづらい「やってみたらこうなっ た」的トライアル & エラーを、このプロジェクトではひとつひとつ記録していま す(左図ワークシートを参照ください)。 目指すべきは「こうすべき」を伝える「町家改修のガイドライン」をつくることで はなく、このひとつの建物から広がっていく「こうした」「こうなった」のバリエー
HAPS ベース町家改修ワークシート
ションを見えるようにすることによって、建物への関わり方の幅広さをより多くの 人たちに知ってもらうことです。
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茶室が「移設」されるプロジェクト紹介—その 3 「大見新村」
大見新村 京都市左京区大原大見町。市街地から車で 60 分、大原のさらに山の奥に「大見」 という村があります。ここは長い間住む人が 0 人のほぼ廃村でしたが、昨年 1 人の若者が移り住 みました。marl design studio and more に参照して頂 いたプロジェクト「大見新村」は、この唯一の住民である藤井さんとともに、 10 年後 10 世帯を目標にかかげ、新しい大見村をつくるためのプロジェクト です。と同時に大見から全国の農村の未来のあり方を考えていきたいと思っ ています。 定住者獲得が大きな目標ですが、活動自体は大見村の魅力を発見し、広く伝 えていくことで、大見ファンをふやすことを目指します。また、整備や交流 活動を通して、この村の新しい生活像を模索し、大見で生活することの可能 性を発見していくための活動を行っていきます。普段はあまりにも当たり前 の風景になってしまった「インフラ」をこの土地から改めて考え直すこと、 その先に、新村の姿を描いていきたいと思います。 初年度は特にこれから大見新村にむけて一緒に取り組んでいってくれるメン バー集め、また活動拠点となるであろう山小屋の補修とトイレなどの施設整 備を中心に実施し、来年度以降の住人探しや、環境整備、村の魅力つくりな ど新村にむけた活動の計画を作っていきます。
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- RAD(Research for Architectural Domain) 「RAD」 は、2008 年 に 開 始 さ れ た「 建 築 の 居 場 所 (Architectural Domain)」を探るインディペンデン トなリサーチ・プロジェクトです。建築的なアイデア が「建てること」を超えてどこにあり、あるべきかを、 建築展覧会「rep - radlab. exhibition project」の企 画運営、レクチャーのコーディネートやドキュメン テーション、インタビュープログラムの実施と記録、 多様な主体による様々な建築的実践の記録と収集、イ ベントにおける空間構成や書籍その他の編集、翻訳な どを通して考えていきます。
- 京都芸術センター 京都芸術センターは、京都市、芸術家その他芸術に関 する活動を行う者が連携し、京都市における芸術の総 合的な振興を目指して、多様な芸術に関する活動を支 援し、芸術に関する情報を広く発信するとともに、芸 術を通じた市民と芸術家等の交流を図るために 2000 年 4 月に開館しました。 具体的な事業としては、展覧会や茶会、伝統芸能、音 楽、演劇、ダンスなどの舞台公演やさまざまなワーク ショップ、芸術家・芸術関係者の発掘、育成や伝統芸 能の継承、創造を目指す先駆的な事業のほか、市民と の交流を条件とした制作や練習の場である「制作室」 の提供、アーティスト・イン・レジデンス・プログラ ムでの国内外の芸術家の支援などを実施しています。 このような活動をとおして、新しい世紀の都市文化の 創造拠点となることを、京都芸術センターはめざして います。
お問い合わせ RAD - Research for Architectural Domain 〒 604-8005 京都市中京区恵比須町 531-13 3F tel:075-241-9126 mail:info@radlab.info 16 RAD - Research for Architectural Domain
文責:榊原(RAD)