HAMAMATSU 2013.1.19 - 2.16 REPORT
RAD - Research for Architectural Domain
RESEARCH STORE HAMAMATSU
photo © Kentahasegawa
地域活性化の「土台」づくりを支援するリサーチプロジェクト 「RESEARCH STORE」は、全国の地域を移動して短期
RESEARCH STORE HAMAMATSU
滞在型のリサーチを行ない、地域の地図をつくっていく
期間:2013 年 1 月 19 日(土)- 2 月 16 日(土)
プロジェクトです。その地域の人、物、場所、出来事と
拠点:山下時計店ビル 1F
関わりながら、地元の人が日常的に何気なく過ごしてい
(浜松市中区鍛冶町 1-43)
ることで見えにくくなっている「地域の課題(SOCIAL
--
ISSUE)」を発見し、その地域の人々とそれ以外の人々と
主催:
が共有できるよう提示していきます。今回は静岡県浜松
+ tic
市を拠点に開催しました。
共催:
昨今、「地域活性化」の「活性化」の手法や成否が多く語
協力:
RAD(Research for Architectural Domain) られていますが、一方でその「地域」とは何かがあまり 語られていないと感じます。ある地域のことをその地域 だけで考えるのではなく、より広い視点からとらえ、考 えること。そして各地域が抱えている課題を、地域内外
浜松まちなかにぎわい協議会 助成: みんなのはままつ創造プロジェクト 参加者:
で共有すること。つまり「地域活性」の土台をつくるこ
榊原充大
との手助けとしてこのリサーチプロジェクトを行います。
川勝真一 木村慎弥
私たちが最終的な目的とするのは、浜松という地域の魅
鈴木知悠
力を伝えるガイドブックの作成や地域活性化ではありま
鈴木陽一郎
せん。むしろ、また別の地域にも当てはまる現象、問題、
藤田隆永
応答を、浜松という地域から見ていくことです。
会田良(サポート) 松岡篤(サポート) 後宮淳一(サポート)
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会場構成
photo © Kentahasegawa 遠州鉄道新浜松駅から徒歩数分の近距離にある山下時計店ビル 1F(右写真)に、 RESEARCH STORE HAMAMATSU の拠点となる会場を設置しました(上写真参照)。 がらんどうになっていた商店スペース(下左写真参照)に、大東翼さん(大東翼建築設 計事務所)の設計で RESEARCH STORE HAMAMATSU の会場をつくりました。 通常は断熱材として使われるスタイロフォームを床に敷き、新たにつくった長テーブル を作業台として設置。プロジェクションが行えるようにスクリーンを設けています。椅 子には浜松を拠点にする建築事務所 403architecture[dajiba] の設計です。
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具体的なプログラム
RESEARCH STORE HAMAMATSU
インタビュー RESEARCH STORE HAMAMATSU で は、 浜松を拠点にして活動を行われている研究者 や実践者、浜松で働く方、また浜松で商店を 営まれる方や浜松に暮らす方にインタビュー を行いました。食、文化、都市、建築、医療 等、分野を限定することなく「どのような活 動をなされているか?」「そこから見えてく る課題は何か?」といった地域をめぐる疑問 についておうかがいしました。1 ヶ月の間に 約 20 名を超える方々にインタビューを行い ました。
ヒアリング/アンケート 会期中会場にお越しいただいた方々へのヒア リング(右写真)、また浜松に暮らす方々へ のアンケート(左写真)を行いました。「街 についての疑問」や「街の便利なところ/不 便なところ」を指摘していただき、それを具 体的な場所に結びつけていきました。
まちあるき インタビュー、ヒアリング、アンケートなどで話題に登った場所や地域について、実際に自分たちの目で確認す るためにまちあるきを行い、気づいた点や感想を地図に書き込んでいきました。
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ワークショップ 「まちを感じてとらえる」をテーマに、浜
フィールドレコーディングと曲作り「街を聴く」 講師:中川裕貴
松の方とともにいくつかのワークショッ
作曲家である中川裕貴さんを講師にお招きし、浜松市内で街の音を採取
プを行いました。
するフィールドレコーディングと、それをつなぎあわせて曲をつくる ワークショップを行いました。
こども写真ワークショップ「街を撮ろう」 講師:長谷川健太 写真家である長谷川健太さんをお招きして、浜松に暮らすお子さんたち に一眼レフカメラの使い方をレクチャーしていただき、彼らの目線から 浜松の風景を撮影してもらうワークショップを行いました。
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統計データの読み直し
浜松市やその他の団体が公開している浜松のデータを抽出し、 より見やすいものにつくり変える、いわゆる「インフォグラ フィックス」と呼ばれる情報の可視化をデザイナー会田良さ んと行いました。浜松ではすでにそれが部分的に試みられて いたので、それも参考にしました(下図参照)。
浜松市市政情報誌「もっとはままつ ずっとはままつ」より
浜松市ウェブサイトより
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RESEARCH STORE HAMAMATSU チラシ画像
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RESEARCH STORE HAMAMATSU 成果物「ISSUE MAP」の提案
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ISSUE MAP - RESEARCH STORE HAMAMTSU 約 1 ヶ月間の取材を終えて私たちが提案したいのは、RESEARCH STORE HAMAMATSU のねらいでもある「日 常生活のなかで見え難くなっている「地域の課題(SOCIAL ISSUE)」を発見し、共有する」ために、地域の資 源や活動、それらを伝えるメディアや街の人の声を包括的に知ることができる地図「ISSUE MAP」です。一般 的なウェブサイトでは、必要な情報を「探す」ことに特化しているのに対して、「その地域はどんな課題を持っ ているのか?」「地域の人はその地域に対してどんなことを考えているか?」「どこでどんな人がどんなことを しているか?」といった情報とともに、「地域の課題」を「見つけて」いくためのウェブサイトです。
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ISSUE MAP の構造—地図+タグ+データベース ISSUE MAP では上部の地図、中部のタグ、そして下部の情報群(データベース)からなっています。
地図
タグ
データベース
「タグ」による分類 RESEARCH STORE プロジェクトでは取材したあらゆる情報に「タグ」をつけて分類しています。例えば「道路が狭い」という街への気 づきに対して、これまでは「交通」という「項目」に分類していたところを、「# 交通」「# 安全」「# 子育て」と「タグ」によって整理し ていきます。分野や立場を超えて様々な課題を見て行くための仕組みです。 今回の RESEARCH STORE HAMAMATSU では 22 の「タグ」と、8 の「地域タグ」を選びました。
タグ:学習、衣料、都市環境、観光、支援、経済、地場産業、子育て、介護、自然、情報環境、国際、地域活性、創造都市、食文化、音楽、 大型 SC、防災、歴史、スポーツ、交通、建築、 地域タグ:中心部、駅前、東街区、浜松駅周辺、郊外、中山間地域、浜名湖、沿岸
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ISSUE MAP の内容 ISSUE MAP は 6 種類の情報からなっています。
インタビュー
コメント
統計情報
NPO
場所
メディア
地域で活動する NPO その他団体
地域の中の注目すべき場所
地域を伝えるメディア
ここで紹介するのは、地域を拠点にして活 ここで言う「場所」とは、公園のような公共 ここで言う「メディア」とは、地域の情報を 動される NPO その他の団体です。浜松では スペースから、街の人がよく訪れる商店や文 伝える「ウェブサイト」、また地域で流通し すでに NPO 法人浜松 NPO ネットワークセ 化的スペースなどを指しています。様々な方 ている「フリーペーパー」、そしてアーティ ンター(N-POCKET)さんによって浜松の からのオススメがあった場所や話題になっ ストや街の人たちが作成した街の「ガイド NPO を紹介するウェブサイト「はままつ市 たお店をここで紹介していきます。
ブック」を指しています。
民の力きらきら BOX」というウェブサイト があるため、こちらを引用させていただいて います。 10 RAD - Research for Architectural Domain
例)HAMAZO
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ISSUE MAP の使い方 1】データベースを流し読む 「地図」や「タグ」を通り越して、データベースだ けを流し読むことができます。気になる記事があれ ばクリックしてください。
2】タグで記事を絞り込む 「データベース」の情報には全て タグがつけられているので、「タ グ」によって絞り込むことも可 能です。
タグ「国際」が含まれるもの
タグ「国際」かつ「創造都市」が含まれるもの
3】地図上のピンを選択する 「データベース」の中に入っている 記事のいくつかは、上部の地図に マッピングされ、ピンが置かれてい ます。 それぞれのピンを選択すると吹き出 しが出てきますので(左:右図参考)、 気になる吹き出しのタイトルをク リックしてください。
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ISSUE MAP の記事 ISSUE MAP の記事をクリックすると、下図のような個別ページに移動します。
個別のページでは、選んだ記事内容の詳細が読めるだけではなく、開いた記 事に関連のあるタグを持った記事がその下に並び、「データベース」をつくり ます(上図参照)。 このようなウェブサイトによって、それぞれの使用者の関心のあることから スタートし、これまで取り立てて気に留めていなかったことを知ることがよ り容易になると考えています。
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報告会&展示
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at はままっくすデザイン会議
photo © 鈴木陽一郎 2013 年 2 月 24 日に浜松は鴨江別館にて開催された、ものづくりに携わる方々によるプレゼンテーショ ン&展示イベント「はままっくすデザイン会議」にて、RAD と+ tic のプレゼンテーションとともに、 RESEARCH STORE HAMAMATSU / ISSUE MAP のプレゼンテーションを行い、同時に常設展示 を行いました(上記写真参考)。展示は会場のしつらえをそのままこの室へと移設し、会期中に使用し ていた資料を全て公開させていただきました。また ISSUE MAP を訪れた方に実際に操作していただ く機会も設けました。
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移動 地域移動型短期滞在リサーチプロジェクト「RESEARCH STORE」では、「異なった立場や関心を超え て共有すべき地域の課題(SOCIAL ISSUE)を通して、その地域の「また別の見方」を提供すること」 をテーマに 1 ヶ月間、地域に滞在し、地域の人、場所、出来事、それらを伝えるメディア、地域の人の 声を、外側の目線から取材していきます。 また「RESEARCH STORE」プロジェクトでは、何か特定の情報を「探す」ことなく、地域のことを知り、 立場や関心や場所を超えて共有されるべき「地域の課題(SOCIAL ISSUE)」を「見つける」ためのマッ プ「ISSUE MAP」を制作します。こうした方針を持った試みによって、「人それぞれの持つ関心から出 発して、特に意識していなかったことがらに至る」経路を生み出していきたいと思います。
これを日本各地で行うことによって、より広い視野から地域間の比較を行っていきたいと考えています。
RESEARCH STORE プロジェクトは滞在調査先を募集しています。 ご関心のある方は以下までご連絡下さい。
お問い合わせ RAD - Research for Architectural Domain 〒 604-8005 京都市中京区恵比須町 531-13 3F tel:075-241-9126 mail:info@radlab.info 文責:榊原(RAD) 2013 年 3 月 15 日
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主催/共催者紹介
- RAD(Research for Architectural Domain) 「RAD」 は、2008 年 に 開 始 さ れ た「 建 築 の 居 場 所 (Architectural Domain)」を探るインディペンデン トなリサーチ・プロジェクトです。建築的なアイデア が「建てること」を超えてどこにあり、あるべきかを、 建築展覧会の企画運営、レクチャーのコーディネート やドキュメンテーション、データベースの提案、イン タビュープログラムの実施と記録、多様な主体による 様々な建築的実践の記録と収集、イベントにおける空 間構成や書籍その他の編集、翻訳などを通して考えて いきます。現在、川勝真一、榊原充大、木村慎弥が参加。 http://radlab.info
- +tic 静岡文化芸術大学に在籍する鈴木知悠、鈴木陽一郎、 藤田隆永の 3 人によるユニットで、建築、プロダクト、 グラフィック、マネジメントなど他分野に渡り活動し ています。+tic とは、+( 付け加えること ) と tic( ~ 的な ) を掛け合わせた造語で、解釈の幅をもったもの をつくり、人や場と相互的な関係性を生み出すことを 意味します。地域コミュニティーに実際に介入し、様々 なものごとのインターフェイスの創出を活動の目的と しています。 http://plus-tic.info
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