再読 - 山水風景をつくる “群” としての建築設計
王澍の思想と設計意図
文人としての王澍 王澍 : 中国文人の伝統を敬慕し、 それを追求している。
文人 = 中国の伝統文化における知識人であり哲学者
→管楽器を好み、 書法と山水画に長け、 龍井茶を飲んで
妻と庭園を歩くことを生活の不可欠な一部分としている。
「いかにして 〈自然の道〉 ( 老子 ) に立ち戻るか」 ・ 自然を尊重すること ・ 自然を追求すること
・ 人間は自然的系統と非常に近しい秩序を作り上げることができる
建築の配置 / 空間構成 / 地理的条件 に適合させ、 調整する
= 歴史的な住居 や 園林
設計コンセプト例 〈銭江時代小区〉=「庭を有する高層住宅」 4 この家族が一つの小さな庭 「木が植えられた小さな庭…庶民の小庭にも似たような」 を共有する。 〈中国美術学院象山キャンパス〉=「我々は中国の伝統的息吹をもった大学キャンパスを復活させようとした」
山水風景をつくるための 〈中国美術学院象山キャンパス〉 に込められた4つの意図
1
自然ー建築
杭州という都市が有する 伝統的な構成を再解釈する。
2
自然の地形を整理する
人間→自然
都市構成の再解釈
人工 〉〉〉 自然
再造
自然への敬意
自然と人工の融合
再造 「景観都市」=
3
ランドスケープの構成を 微視的な建築の場所に融合させる
照応
建築のスケールと空間の状態
建築 ⇄ 自然
モノとモノとの対話関係
人工の自然物としての建築
対話
自然 建築
「湖山のランドスケープは都市構成の中で中心的な地位を占めている。」
「地形の再造には、 人々の 「自然の道」 に対する理解が体現されている。」
「それぞれ似ているようで似ていないひとつひとつの風景のなかで、 我々が 行うアクティビティは明確に隔たれつつ、 しかし同時に照応してもいる。」
「都市と建築は、 山水の成長や広がりに従わなければならない。」
「ランドスケープの構成は、 我々の眼の中では建築以上に重要でさえある。」
「建築を、 自然を撫で、 眺めるというプロセスの中に加入させること。」
北京などの都市計画に引用されている
4
象山から眺めたキャンパス
西湖周辺の山並み
再造されたキャンパス
西湖の湖畔に置かれたベンチ
斜めの床とそこに置かれた居場所
「建築のスケールはまず山との対話関係の中から決定されたわけだが、 しかしこの 「対話」 はさらに建築と建築の間にも、 そして建築内部に も発展していく。 異なるスケール間のより細やかな対話関係を形成 させたのである。」
建物と建物の間から山が見える
山に対して凹んだ大きな門のような
象山キャンパスにおけるコンセプトの現れを読み解く
身体化するプロセスとしての再読
建築家や建築が、 それらを読み、 見学し、 つくる過程で身体化されていくプロセスそのものが 「再読」 だと考えた。 そこで、 中国で撮影した写真をひたすら眺め、 気付いたことや思い出した記憶をひたすら記述していき、 王澍の設計におけるコンセプトの現れを読み解くとともに、 その背景にある中国を少しでも身体化することを試みる。
要素の抽出 ランドスケープ - 地面を少し持ち上げる
作業例 )
外形 - 細長いヴォリューム
方向性が生まれる 人が数人通れる道 その左右が池と川になっている 見る角度によって全体形が移り変わる
向こうを感じるが見えない 土どめが椅子になっている
動線が長くなる
薄い基壇
全体像の見え方や感じ方が
椅子のように使えたり、
場所によって移ろう
古本市を行なっていた 再読方法 ・ 中国リサーチトリップ時に撮影した約 1500 枚の写真を、 関係のない写真を取り除き 1070 枚にする。 ・ A4 用紙にカラー写真と白黒写真を出力し、 思ったこと、 気づいたこと、 思い出したことなどを白黒写真、 及び余白に書き込む。
経験 - 動線上のターニングポイント
・ 観察の際に、 フレーミングされた画ではなく、 その周囲の状況や経験を思い出し、 書く。 ・ 107 枚の写真を 1 単位とし、 107 枚で旅行が1周するようにする。
様々な独立した要素たちが互いに なんらかの関係性を持ちながら 寄り集まっており、 移動する中で 様々に見え方の変わる建築と自然 の風景。
読み解き例 )
再造 地形が空間を緩やかに分節するとともに 人の動線になっている。
照応
→多様な人の居場所がありながらも、 人がいなくても成り立つ風景 1つの空間に色々な要素が
地形と建築によって囲われた場所が生まれつつ、
寄り集まっている
ピロティや丘の向こうなど、 別の場所の存在も
地方都市に建つ建築がつくる風景の 目指すべきものとなりうる。
感じる。
→庭のような建築 ・ 歩き回る中で様々な風景が見られる。 ・ 使うだけでなく、 見ることも目的となりうる
対話 コの字の開かれた方には山があったり、 地形にヴォリュームが着地したり。
視線が抜ける
・ 人が集まることを前提として作られてはいないが、 いることもできる。 ・ 持続可能な風景
YNU
関東の奥座敷 / 東伊豆の玄関としての伊東
85 km
伊東市は静岡県の最東部に位置する市。 相模灘に面した伊豆半島の東岸中部に位置し、 傾斜の厳しいこの半島において伊豆東部火山群の影響で 比較的に緩い傾斜地が多く、 市南部はこの火山群の溶岩流 によって荒々しい絶壁の海岸が多い。 この海岸や西端の山稜が富士箱根伊豆国立公園として指定を 受けている。 市中部は戦後、 別荘地として開発され、 観光施設も集まるよう になり、 大室山の麓にある伊豆高原地域は半島東部でも有数の 観光地として知られるようになった。 市内ではほぼ海岸沿いに JR 東日本伊東線 ・ 伊豆急行線と 国道 135 号が縦断している。
Ito Sta.
ITO
昭和8年の伊東とその周辺 伊東市街地はかつては農村、 漁村として栄え、 その後戦国時代 などには木材などの資材を供給する拠点として重宝され、 山と海 に挟まれた地勢を生かした生業があった。 江戸時代以降は江戸の奥座敷として、 また流れ者の行き着く先として の湯治場として栄えた。 街は現在は国道 135 号線になっている小田原から下田までを結ぶ 街道沿い、 温泉までの道が栄えており、 図中央大川沿いには旅館 や別荘が立ち並んでいた。 田園、 住宅地、 繁華街、 別荘、 寺社など様々なものが地勢の 東伊豆の玄関としての伊東
伊東公園より伊東市街、 海、 山をみる
伊東市
山脈を背に、 比較的に緩い傾斜地の多い伊東
伊東市の観光状況
伊東駅 1938 年 国鉄伊東線が網代駅から開通、 その終着駅として伊東駅が開業。
伊東での滞在日数
伊東へ来遊回数( 今回を 含む )
1961 年 伊豆急行線が伊豆急下田駅まで開通。
24.7% 26.0%
日帰り
42.4% はじめて
62.4% 64.8%
1泊2日
47.0%
10.6% 7.6%
2泊3日
57.2%
平成28年度
2回以上 52.7%
平成27年度
4泊以上 無回答
0.4%
平成28年度
1.2% 0.9% 0.7% 0.2% 0.4% 0.5%
3泊4日
無回答
0%
平成27年度
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
0.3% 0%
伊東市の人口は年々減少傾向にある。 産業別職業人口の状況 ( 平成 22 年 ) 5,000
男性 特化係数(男性)
4,500
5
女性 特化係数(女性)
10%
20%
50%
2 回以上来遊している層では、 「日帰り」 の割合が高い。
伊東ま での交通手段
54.8%
2
1,500
1,000
1
農 業 、 林 業
う ち 農 業
漁 業
鉱 業 、 採 石 業 、 砂 利 採 取 業
建 設 業
製 造 業
電 気 ・ ガ ス ・ 熱 供 給 ・ 水 道 業
情 報 通 信 業
運 輸 業 、 郵 便 業
卸 売 業 、 小 売 業
金 融 業 、 保 険 業
不 動 産 業 、 物 品 賃 貸 業
学 術 研 究 、 専 門 ・ 技 術 サ ー ビ ス 業
宿 泊 業 、 飲 食 サ ー ビ ス 業
生 活 関 連 サ ー ビ ス 業 、 娯 楽 業
教 育 、 学 習 支 援 業
医 療 、 福 祉
複 合 サ ー ビ ス 事 業
サ ー ビ ス 業 ( 他 に 分 類 さ れ な い も の )
公 務 ( 他 に 分 類 さ れ る も の を 除 く )
分 類 不 能 の 産 業
卸売 ・ 小売業 / 宿泊 ・ 飲食サービス業 従事人数が全体の 2/3 程度を占める。
1日平均来遊者数
15000
42.5%
自動車・バイク
10000
44.1%
500 0
20000
55.6%
鉄道
2,000
18 歳以下を除き、 高齢ほど滞在日数が多い。
70%
高年齢、 周辺地域からのリピーター率が高い。
3
2,500
0
60%
初回の来遊では 「1 泊 2 日」 の割合が高く、
3,500 3,000
40%
リピーター率が高い。
4
4,000
30%
1.6%
団体貸切バス・ツアーバス
平成28年度
0.6%
5000
平成27年度
0
0.1%
その他
0.2% 0.2%
無回答
20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 平成
0.2% 0%
10%
20%
中で領域わけされ、 寄り集まっている。
30%
40%
50%
60%
鉄道や自動車 ・ バイク、 つまり個人での来遊が多い。
伊東市だけで見たとき、 来遊者はここ数年上昇している。
単式ホーム ・ 島式ホーム計 2 面 3 線を持つ地上駅。 西側に留置線が 3 本。 ホームは 1 番線の東京方一部を除き 全長屋根付き。 ホームに待合室なし。
1日平均乗車人員 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
JR東日本 伊豆急行1日平均 13,857 7,478 13,419 7,250 12,372 6,659 12,909 6,853 11,520 6,837 10,959 6,664 10,575 6,481 10,071 6,011 9,886 6,181 9,529 5,822 9,397 5,821 9,032 5,759 9,068 5,961 9,051 5,937 8,960 5,872 8,835 5,893 8,249 5,472 7,877 5,553 7,403 4,727 7,661 5,176 7,703 5,186 7,616 5,168 7,676 5,308 7,576 5,296
JR 伊東駅定期利用者 1 日平均 : 約 2000 人
利用者全体の約半数が 地元住民と考えられる。
観光客だけでなく地元の 住民、 東伊豆の人々が 日常的に使う駅である。
海と山の間に横たわる伊東駅
伊東駅とその周辺の状況 状況 Diagram 山側と海側の関係は薄い
人々が駅からの経験の中で自然を感じることは多くない
駅前は渋滞が起きやすい / 道がわかりづらい
伊東駅は予想津波到達点の際にある
至 熱海
細く低いトンネルで 車通りづらい
伊東公園 湯川弁天の湯 松原大黒天人の湯 東海館 松川藤の広場 なぎさ公園 伊東観光会館
伊東駅周辺 1:4000
信号がないので 混雑する 至 伊東市街 至 伊東市街 道が細い
伊東駅前 湯の花 ・ 仲丸通り アーケード等 海への道 銀座按針通り
駅
至 下田
自然
街
駅から海側には四方八方に道が伸び、 車や人々が出入りする。
伊豆には山と海がある。
駅前から商店街が連続し、 文化財等も街中に点在する。
改札は大きくはなく、 改札前には宿泊客を待つ人々がいる。
それらは連関している。
日本三大温泉地でもあり、 町湯や日帰り温泉が点在する。
狭いトンネルをくぐった先の駅の裏側は人通りや車通りはあまりなく、 広い場所が広がっている。
山は見る場所によって様々な表情を見せる。
住宅地のいたるところに小さな社がある。
伊東駅前
駅前のバスターミナル
改札
改札前
オレンジビーチ
大川と山
東海館
街中の社
駅前の空き地
駅の裏通り
駅の裏側
トンネル
なぎさ公園と山
河口と山
商店街
アーケード商店街
八幡神社が見える
山の方から道を引き込む
公園へ
既存立体駐車場へ 裏路地のように伸びていく
飲食店街へ接続
ホワイエ 海と山が見える 駐車場へ
既存雑居ビルに接続
バス・タクシーターミナル