Y-GSA修士ポートフォリオ「連なる領有空間を見出す建築」

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連 な る領有空 間 を 見 出 す 建 築

フィ ク シ ョ ン を 重ねることで街を建築する

18RA202 池谷浩樹


連なる領有空間を見出す建築 フィクションを重ねることで街を建 築 す る Architecture to extend a chain of cultivation Architecting the city through layers of fiction

池谷 浩樹 IKEYA KOKI 指導教員 藤原徹平准教授


滄浪亭 - 蘇州 - 中国 周囲の川や緑が引き込まれた水の都の最も古い庭園の1つ。 中国庭園は小さな居場所や広い場所が風景の変化とともに細かく連続していく。

マウアーパーク - ベルリン - ドイツ 2重になっていたベルリンの壁の無人地帯を整備した公園。壁について学べるだけでなく、 地形を生かした劇場で行われるカラオケ大会、週末の蚤の市、野良スポーツなどが有名。


CONTENTS 1. 序論 1- 1. 本研究の動機 1- 2. 背景 1- 2- 1. 領有とは 1- 2- 2. 領有の都市的価値 1- 2- 3. 領有の限界 1- 3. 目的 1- 3- 1. 領有を見出す 1- 3- 2. 連なる領有 2. 事例研究 2 - 1 - 1 . 維 管 束 プ ロ ジ ェ ク ト ( 田 中 央 総合 建 築 士 事 務 所 ) 2- 1- 2. Fun Palace(Cedric Price) 2- 1- 3. 劇団維新派による野外公演(劇団維新派) 2- 2. 事例考察 a. 忘れられた場所 b. 複数のコミュニケーションルートが通る場所(とする) c. フィクションを重ねる 3. ケーススタディ 3 - 1 . 都 市 の 中 庭 - 渋 谷 に 紛 れ 込 む 劇 場 集 落( 卒 業 設 計 ) 3- 2 . 山 へと 至る道 -愛宕参道を近代の開発跡から再編する (大西スタジオ) 3 - 3 . 現 代 百 姓 学 校 - 津波から暮らしを守る裏山建築( 西 沢 ス タ ジ オ ) 3- 4. Cat Corridor- 連なる遊戯的中心をつくる装置としてのアーケード (藤原スタジオ) 4. ケーススタディ考察 4- 1. 忘れられた場所の風通しの良さ 4- 2. フィクションを重ねることによって現れる過剰さ 4- 3. 曖昧な全体により生まれる運動性 5. 結論 [ 参考文献 ]


1. 序論

コンポンプルック村 - シェムリアップ - カンボジア 乾季と雨期で水面高が 6m 以上変化する環境で生まれた超高床住居集落。 下の空間は雨期には水が入るため開かれた境界の薄い空間が様々に使われている。


1-1. 本研究の動機

1-3. 目的 - 領有を拡張する

人はそれぞれの環境を自分 ( たち ) に合わせて開拓し、環境内や、環境同士の相互作用

本論では領有という概念を拡張し、「気持ちの良い場所との関係の可能性を開拓していく

から独自の街や文化をつくりあげてきた。一方、現代社会は近代以降のトップダウンの

行為」とし、その対象となる場所 / 空間を領有空間とする。ここから、街に多様な領有を

都市計画や、資本主義、敷地の分割所有により個別に多くの閉じた建物が建てられる非

生み、地域文化を豊かにすることができる建築をつくる方法について考察していく。

人間的な開拓によって街は切り刻まれてしまい、均質化し、地域固有の文化は失われつ つあると言われる。さらに、公園などのオープンスペースや公共空間はますます管理や

1-3-1. 領有空間を見出す

規制がされ、多様なものや活動を受け入れる、人々によって身体をもって開拓されてい

領有はどこにでも生まれうる可能性を持つが、高い頻度で生まれ、多様な領有が生まれる

く場所ではなくなっている。それらの現在目の前に横たわる新しい環境を、元からある

には、何もない原っぱではなく、場所に適した設えが必要だと考える。建築によって場所

環境と合わせて開拓していく術が必要である。本論では、街の変化のプロセスに自らが

の領有の可能性を見出し、拡張することを「領有空間を見出す」と定義する。

関与できる権利について提示された「領有」という概念を拡張し、現代社会において街 に新たな環境や文化が生まれて行く可能性について研究を進める。

1-3-2. 連なる領有空間 領有空間が連なることによって異なる種類の領有や領有空間が分断されることなく緩やか

1-2. 背景

に連続し、時間変化や多様性により、中枢性が現れる。それにより生まれる事象の連続は、

1-2-1. 領有とは

建築による蓄積等に補助されながら、次第に変化していく可能性を持つ。

フランスの哲学者・社会学者であるアンリ・ルフェーブルは、著書『都市への権利』に おいて、各身体に自然と備わっているものとして遊戯的なるものに注目し、演劇やスポー ツ、遊び、縁日などの身体を介した時間 - 空間の我有化を「領有」と定義している。「領

×

有」は法や規則により個々の空間に、帰属する主体を持つ「所有」や「共有」とは異な

×

り、ある空間に一時的にひとつの共同や集団を形成する概念である。

1-2-2. 領有の都市的価値 ルフェーブルは、都市における、人や物が同時に集合することで思いがけない出会いや 交配による創発をもたらす、複雑な相互作用の場の性格を都市の「中枢性」とした。中 枢性に関わる権利 「 ( 都市への権利」 ) を獲得する術として、都市を領有することを提示し、 それを「遊戯的中心」としている。都市への権利は、都市に住まう私たちの集合的な力 で都市を変化させるとともに、そのことによって私たち自身も変化していくことを示し ている。それは、街の変化のプロセスに自らが関与できるということでもあり、街 / 建 築への愛着や帰属意識を生むものである。

1-2-3. 領有の限界 領有は周囲の誰にでも波及していく可能性を持ちうるが、それは一時的な現象ではない だろうか。また、その相互作用が街の新たな環境や文化に繋がっていくための物象化や 蓄積の方法にまでは言及されていない。

所有 共有 領有


2. 事例研究 連なる領有空間を見出し、中枢性を持つ場 所 が 生 ま れ て い ると考えられるスケールの異なる 3 つの 事 例 か ら 、 方 法 を 取り出す。

2- 1- 1.Fun Palace 2- 1- 2. 維管束プロジェクト 2- 1- 3. 劇団維新派

テンペルホーフ空港跡地 - ベルリン - ドイツ 街の中にある巨大な元空港と広大な滑走路は断片的に様々に使われている。 この場所をどうしていくかということが、市民のこの場所への関与の中心である。


2- 1 - 1 . Fun Pal ace

敷地スタディ

コミュニケーションルート

Fun Palace 初期スケッチ

ideal site [ 分析 ]

[ 概要 ]

セドリック・プライスは FP を日常の経験の一部とするため、理想の敷地として「複数の

1961 年にイギリス人建築家セドリックプライスが劇作家ジョ

コミュニケーションルートが通る場所」を構想していた。コミュニケーションルートとは

ン・リトルウッドやサイバネティク、社会学者などの専門家と

歩行者の動線や電車、インフラ、川など、あらゆる移動するものの通り道のことである。

の協働によって発案された提案。 「社会体験のライブラリー」 「通

FP の地上部分には柱が立つのみで開かれた場所であるため、この場所はあらゆるものが自

りの大学」などのコンセプトから構想され、訪れた人は遊ぶよ

然と入って来てしまう場所となっている。社会体験のライブラリーとして構想された FP は、

うに気ままに様々な活動を学ぶことができる。

訪れた人が気ままに移動する中で様々な活動で遊び / 学ぶことができる「連なる領有空間 が見出された」場所である。そして、活動の変容とともに建築も姿を変えて行くことが構 想されていた。 Cedric Price


2- 1 - 2 . 維 管 束 プロジェクト

[ 分析 ] [ 概要 ]

プロジェクトの敷地には、かつて旧市街の城壁沿いに建っていた日本軍の工場や施設、暗

台湾の地方都市の1つである宜蘭に事務所を置く、黄聲遠

渠、人の寄り付かない川辺などの一度「忘れられた場所」が使われ、それらに「領有空間

( ファン・シェンイェン ) +田中央総合建築士事務所 (Field

を見出して」いる。それらと古い路地や学校や新しい公共施設、暗渠を掘り起こした親水

office architects) によって約 20 年に渡って漸進的に行われて

公園、橋などが段階的に広場や路地で繋がれ、大小様々な居場所が連続する「連なる領有

きた個別のプロジェクトの総称。現在も新築改築メンテナン

空間」をもった開かれた場所が創られている。これらは旧市街と新市街を行き来する人々

ス含めて進行中である。

の移動上にあり、交通や水などの「コミュニケーションルートが通る場所」でもある。 黄聲遠


2- 1 - 3 . 劇 団 維 新派

舞台装置 野外劇場 フィクションを重ねていく

居住

屋台村 舞台 土地

演劇

[ 概要 ]

[ 分析 ]

1970 〜 2017 年にかけて活動した松本雄吉を中心とした劇団。国

維新派の代表的な公演は、大阪の埋立地や犬島精錬所跡地、平城宮跡地など、「忘れられ

内外様々な場所で、50 名ほどの劇団員自らの手で 2 ヶ月以上か

た場所」で行われた。維新派は演劇というフィクションのために架空の街というフィクショ

け巨大な野外劇場とともに1つの街を建設し、そこで寝泊りを

ンを重ねて作り上げ、それを場所の歴史という「フィクションに重ね合わせる」ことで、

しながら演劇を制作し、大規模な公演を行った。公演後は釘一

自分たちでその場所に「領有空間を見出し」た。また、公演は主に夕方〜夜の変化が大き

本残らないように完全にその場所から撤退する。野外劇場と共

い時間に行われ、そこに演劇による虚構の時間が重ねられている。野外劇場は必然的に周

につくられる屋台村も有名だった。

辺環境を舞台装置として取り込む。この1つの街は居住場所や屋台村を含み、関係のない 人とも関係が生まれる、領有空間の連なりが周辺へ広がる可能性に満ちている。 松本雄吉


2 - 2. 事 例 考 察 以 上 の 事 例 よ り、建築によって連な る領有空間を見出し、ある場所に中枢性を 与 え る た め の 3 つの具体的な方法を抽 出する。

① 忘 れ ら れ た 場 所 に 領 有 空 間を見出す 忘 れ ら れ た 場 所は、人間の直接的な 目的から一度解き放たれ、今までよりも自 由 な 行 動 や 自 由 な精神が許容される、 探検と成長の場所であると考えられる。ま た 、 そ の 場 所 で 起 こった様々なことを想 起させ、街の歴史や時間を感じさせる。

② 複 数 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンルートが通る場所とする コ ミ ュ ニ ケ ー ションルートが通る場 所として行くことは、様々な要素や時間が 遭 遇 す る こ と を 可能にし、場所の不確 実性が増す。人々にとっては日常の中で思 わ ず 入 っ て し ま う場所となる。

③フィクションを重ねる 建 築 設 計 に お けるフィクションを「 ある枠」とする。それは名前、機能、出来 事 、 物 語 な ど で あ る。建築の境界とフィ クションの枠がずれることにより領有空間 が 都 市 へ の 広 が りを持つ。あるフィク ションはその場所に関わる要素に全体性を 与 え 、 人 々 に 共 有される。

河と寺院 - マトゥラー - インド 河に面して階段が横に広がり、その中央に寺院があるガンジス川の上流。 寺院との距離感や河との距離感で様々な活動が連なっている。


3. ケーススタディ 自 ら の 設 計 を 通 し て、 ど の よ う に し て 建 築 に よ っ て 連 な る 領有空間が見出されたかを前章① , ② , ③を用いて分析す る。 ま た、 い か に 地 域 文 化 や 環 境 に 貢 献 し た か に つ い て 、 及 び、 フ ィ ク シ ョ ン を 生 む き っ か け と し て 考 え う る も の を ③’として考察する。

3- 1. 都市の中庭 渋 谷 に 紛 れ 込 む 劇 場 集 落 (卒業設計)

3- 2 . 山 へと至る道 愛宕参道を近代の開発跡から再編する (大西スタジオ)

3- 3. 現代百姓学校 津波から暮らしを守る裏山建築(西沢スタジオ)

3- 4. Cat Corridor 連なる遊戯的中心をつくる装置としてのアーケード (藤原スタジオ)


都市の中庭-渋谷に紛れ込む劇場集落









[ 分析 ] ① : 渋 谷 1 0 9 の 裏 に ぽ っ か り と 空 い た 空 地。 古 代 : 渋 谷 を 見 下 ろ す 丘 の 1 つ の 墓 地 。 明 治 ~ 昭 和 : 有 名 な 旅 館。 提 案: ス ク ラ ン ブ ル 交 差 点 の よ う に あ ら ゆ る も の を 受 け 止 める場所として中庭と 定義し領有空間を見出した。 ② : 四 方 八 方 か ら 入 っ て こ れ る よ う 入 口 を 設 け、 道 を 延 長 し た ホ ワ イ エ が 劇 場 の 諸 所 の 部 分 を繋いで行くことで、領有空間が連なるよう計画した。滞在型アー テ ィ ス ト イ ン レ ジ デ ン ス を 主 と す る 劇 場 計 画 に よ り、 渋 谷 の 文 化 が 連 な る 結 節 点 と も な る よ うにした。 ③ : 建 築 を 劇 場 と し、 中 庭 を 野 外 劇 場 と す る こ と で、 建 築 だ け で な く 周 囲 の 建 物 も 客 席 で あ り 舞 台 美 術 に な っ た。 劇 場 を 集 落 劇 場 と 名 付 け る こ と で、 必 要 な 機 能 が 多 様 化 し た。 そ れ ぞ れ の 機 能 が 敷 地 四 方 そ れ ぞ れ の 特 性 に 重 ね ら れ、 街 の 一 部 に な っ た。 ホ ワ イ エ を 線 状 に し、 既 存 の 道 を 引 き 込 む こ と で、 渋 谷 の 道 の 劇 場 性 と 重 なり、領有が街に広が って行く可能性を示せた。 客席 集落劇場 舞台 土地

ホワイ

既存と似たプログラム

[ 考察 ] 渋 谷 の 文 化 的、 景 観 的 バ ラ バ ラ さ に 全 体 性 を 与 え、 こ こ か ら 新 た な 文 化 が 生 ま れ て い く 可 能 性 を 示 せ た。 し か し 、 実 際 に 建 築 は 裏 側 や 屋 上 に 建 つ の み で、 既 存 の 内 部 や 屋 上、 路 上 に は 希 望 を 示 す 程 度 に な っ た。 そ れ ら を 実 際 に 領 有 し て い く 建 築 的 操 作やプログラムが今後 必要である。 ③ ’: 自 然 地 形 , 建物地形 , 新しい全体の名前 , 機能 ,


Architectural Projects

2 0 1 8F 8 F a l lOn l O n i sshiSt hiStudi 20

山へと至る道 - 愛宕参道 を近 代 の開 発 跡 か ら 再 編 す る









[ 分析 ] ①:京都の愛宕山の街道沿いの近代以降テーマパークや車道など様々な開発が さ れ て き た 場 所。 そ の 非 人 間 的 ス ケ ー ル を 用 い 境 界 装 置 と し、 周 囲 を 広 場 に す る こ と で 領 有 空間を見出した。

②:参 道 沿 い 、参拝者、観光客が多く 通る。住宅も多くあり住民の動線でもある 。 川 が 通 る 部 分 もある。 水 や 自 然 、 温 泉を引き込み活動を多 様化した。

③ : 誰 も が 通 る 街 道 自 体 に 建 築 及 び 活 動 を 境 界 と し て 重 ね る。 そ れ ぞ れ の 場 所 周 辺 の 祭 事 や イ ベ ン ト の 活 動 や 準 備 の 場 と し て 重 ね る。1 年 に 1 度 の 千 日 詣 り の ル ー ト を 拡 張 し、 街 道 全 体 を 歩 く こ と で、 一 時 的 に 街 道 全 体 が 領 有 さ れ る と と も に 愛 宕 街 道 全 体、 ま た は 京 都 全 体 に 刹 那 的 に 全 体 性 が 感 じ ら れ 領 有 空 間 の 連 な り が 広 が ることを目論んだ。

祭り 観光

千日詣り

広幅道路

線路跡

街道

銭湯

高架

祭り

[ 考 察 ] 既 存 の 多 様 性 を は ら む 街 道 と 忘 れ ら れ た 場 所 の 関 係 を 断 片 的 に 結 べ た。 距 離 が 大 き く 離れているのでそれぞ れの関係性が薄く感じる。また、街道にもっ と 多 様 な 領 有 を生み出すには至って いない。 ③ ’: 自 然 地 形 , 土木建造物 , 連続した経験 , 行事 , 祭事


現 代 百 姓 学 校 津 波 か ら 暮 ら し を 守 る 裏 山 建 築







[ 分析 ] ① : バ ブ ル 期 に 海 岸 線 を 埋 め 立 て 建 て ら れ た ほ と ん ど が 廃 墟 の ホ テ ル 群。 内 陸 部 へ の ス プ ロ ー ル、 空 地 の 目 立 つ 旧 海 岸 沿 い 道 路。 少 子 化 に よ り 使 わ れ な く な る 校 舎 。 提 案: 海 岸 沿 い を 津 波 を 弱 め る 防 波 堤 に、 校 舎 を 裏 山 と し て 大 き な ス ラ ブ を 伸 ば し ていくことで領有空間 を見出した。 ② : 内 陸 部 の 居 住 地 と 海 と の 往 復 の ル ー ト 上 に 位 置 す る。 三 角 州 の 中 央 部 な の で あ ら ゆ る 移 動 時 に 通 る。 津 波 か ら の 避 難 道 と し て の ス ラ ブ を 街 の 交 差 点 に 接 続 す る こ と に よ り 街 の 移 動 を 多 様 化 し た。 湧 き 水 が 多 く、 活 動 の 中 で 触 れ ら れ 利 用 で き る よ う に し た。 百 姓 学 校 の プ ロ グ ラ ム に よ り 海 / 山 / 農 の 情 報 や 活 動 が 相 互 作 用 す る場とした。 ③:スラブに避難通路 , 通学路 , 生活動路 , 既存の住宅のテラスの延長という 使 い 方 を 重 ね た。 過 剰 と も 思 わ れ る 形 態 は ほ と ん ど フ ィ ク シ ョ ン に 近 い 津 波 か ら 生 ま れ て い る。 津 波 か ら ホ テ ル 群 を 防 波 堤 と 見 立 て 、 学 校 は 裏 山 と 見 立 て ら れ て い る 。 廃 墟、 住 居、 学 校、 巨 大 ス ラ ブ に 現 代 百 姓 学 校 と い う プ ロ グ ラ ム を 与 え る こ と で 全体性と関わるきっか けを与えた。

現代百姓学校校 舎

現代百姓学校活動 ↑蔵 ↓工房

住居

校舎

↑教室 ↑滞在 ↓広場 ↓特別教室 予想

津波 高さ

旧形式住居 ホテル

生活動線 -通 学路 - 避難動線

[ 考 察 ] 現 代 百 姓 学 校 と い う プ ロ グ ラ ム、 津 波 と い う 大 き な 存 在 に よ っ て 村 の 様 々 な 要 素 が 取 り 込 ま れ 中 枢 性 は 生 ま れ た が 暴 力 性 も 感 じ る。 ホ テ ル、 住 居 、 学 校 と い う 全 く違うものに関係性を 与えることができた。 ③ ’: 災 害 , 建物地形 , 四季










[ 分析 ] ① : か つ て の 旅 館 や 開 発 に よ る 大 き な 空 地。 上 階 が 空 き 家 だ ら け の 防 火 建 築 帯。通行可能なアーケードを街の中に張りめぐらせることで領有空間を見出 した。マスタープランとして設計敷地外の同様の空地にもベルト状に領有空 間 が 連 な っていくよう提案した。 ②:繁華街や海のある低地と駅や住宅 / 学校等の公共施設のある高地を行き 来 す る ル ー ト に 面 す る。 温 泉、 自 然、 観 光、 車、 川 な ど の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ル ー ト に も 面 す る。 ア ー ケ ー ド が 道 の 延 長、 道 に 覆 い か ぶ さ る、 道 を 横 断 し て あ る こ と で、 動 線 が 自 然 と 入 っ て し ま う よ う に し た。 温 泉 を 活 用 し た 活 動 や 公 共 的 プ ロ グ ラ ム 計 画、 ア ー ケ ー ド が 既 存 や そ の 屋 上 に 接 続 さ れ る こ と で 多 様 な 領有空間が様々に連なるよう計画した。 ③ : ア ー ケ ー ド は 屋 根 で あ り、 道、 地 形、 設 備、 ベ ラ ン ダ、 部 屋、 桟 敷 席 で も あ る 。 アーケードに囲まれた場所は広場であり、人は入れない場所、舞台 、 部 屋 、 そ し て 道、 通 り で も あ る。 商 店 街 の 道 は 通 り と な る が 一 部 は 別 の 広 場 に な る 。 ア ー ケ ー ド に 繋 が れ 建 物 の 3 階 は 店 に な っ た り、 複 数 件 ま と め て ホ テ ル に な っていたりする。

ホテルと露天風呂 オフィス 飲食店 ベランダ 店 軒下 ア 飲食店 銀座通り 広場

地形

広場

[ 考 察 ] 今 回 は プ ロ グ ラ ム 全 体 に 名 前 は 与 え て い な い。 そ れ ゆ え 建 築 は 単 純 だ が 、 そ れ ゆ え に あ ら ゆ る 機 能 を 持 ち、 街 と 一 体 に 複 雑 に 折 り 重 な っ た 連 な る 領 有 の 可 能 性 に 開 か れ た 場 が 生 ま れ た。 建 築 自 体 が フ ィ ク シ ョ ン そ の も の / 源 泉 、 のような様相を持っている。 ③ ’: 自 然地形 , 建物地形 , 歴史 , 祭事 , 観光 , 自然


4 . 考察 4 - 1 . 忘れられた場所の風通しの良さ スタジオを通した実践により、街の中で忘れられた場所を見つけ、そ こに領有空間を見出していくことは、場所の地勢や歴史を引き継ぎつ つ 、 外 か ら 来 た 人 に と っ て は 街 に 関 わ る き っ か け と な り う る 場 所 に、 街の人にとっては日常の延長にある開放感のある少し特別な場所とな り 、 寛 容 さ の あ る 風 通 し の 良 い 場 所 と 、 新 し い 街 の環 境 と な っ た 。

4 - 2 . フィクションを重ねることによって現れ る 過 剰 さ フィクションを重ねていくことにより建築は街の一部であるととも に、地形のような街の環境の一部としての存在感が表れ、あらゆるも のを受け入れる可能性に開かれた。しかしフィクションには際限がな い。フィクションの良し悪しの判断基準を間違えると、むしろ建築は 街を破壊しかねないという危機感も感じた。

4 - 3 . 曖昧な全体により生まれる運動性 フィクションが重ねられ、様々なコミュニケーションルートが通る場 所は、どこまでが建築でどこからが街かわかりづらい曖昧な全体を獲 得した。それは設計段階や使われていく中で、建築がいかようにも変 化していく運動性と、それにより主題が失われるよりも、むしろ強化 されていく特性を持った建築となっている。


5. 結論 本論を通して、建築によって連なる領有空間を見出していくことが中 枢 性 を 持 つ 場 を つ く る こ と が わ か っ た 。 ま た 、研 究 を 進 め て い く 中 で 、 領有が連なるとはどういうことか、建築におけるフィクションとそれ を重ねるとは何かなど、様々な問いが生まれ、それらは今後も考え続 けていく課題となった。実際に建築をつくる際には敷地に都合よくコ ミュニケーションルートが複合する場合は少なく施主という所有者も いる、その中で本研究がどのように建築の組み立て、及び新しい街の 環 境 や 文 化 に 繋 が っ て 行 く の か 実 施 を 通 し て 考 え 続け て い き た い 。


[ 参考 文 献 ] 1. 序 論 ・ア ンリ ・ ル フ ェ ーブル『都市への権利 』ちくま学芸文庫、1 9 6 8 年 / 2 0 1 1 年 ・ア ンリ ・ ル フ ェ ーブル『空間の生産』 青木書店、2 0 0 0 年 ・イ アン ・ ボ ー デ ン『スケートボーディ ング、空間、都市 身体と建築』新曜社、20 0 6 年 ・中 谷礼 仁 『 セ ヴ ェラルネス+ 事物連 鎖と都市・建築・人間』鹿島出版会、2 0 1 1 年 ・ア トリ エ ・ ワ ン 『コモナリティーズふ るまいの生産』L I X I L 出版、2 0 1 4 年 ・槇 文彦 ・ 真 壁 智 治『アナザーユートピ ア』、2 0 1 9 年 ・中 谷礼 仁 『 セ ヴ ェラルネス+ 事物連 鎖と都市・建築・人間』鹿島出版会、2 0 1 1 年 ・C h i m ↑ Pom『 芸 術実行犯』朝日出版社 、2 0 1 2 年 2. 事 例 研 究 2- 1 - 1 . 維 管 束 プロジェクト ( 田中央総合建築士事務所 ) ・黄 聲遠 『 LIVING IN PLACE』TOTO 出版 、2 0 1 5 年 2- 1 - 2 . Fun Palace(Cedric Price ) ・磯 崎新 『 建 築 の 解体 -Cedric Price』鹿島出版会、1 9 9 7 年 ・C e d ric Price『Cedric Price Works 1 9 5 2 - 2 0 0 3 』、A r c h i t e c t u r a l A s s n 、2 0 2 0 年 2- 1 - 3 . 劇 団 維 新派による野外公演(劇団維新派) ・永 田靖 編 『 漂 流の演劇 - 維新派のパースペクティブ』大阪大学出版会、2 0 2 0 年 2- 2 . 事 例 考 察 ・ケ ヴィ ン ・ リ ン チ『廃棄の文化誌』工 作舎、1 9 9 4 年 / 2 0 0 8 年 5. 結 論

オリンピック公園 - プノンペン - カンボジア 旧市街と新市街の間につくられた運動公園。 トラックは丘のように、その周辺には自由な様々な運動スペースが連なっている。



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