AWASHIOMI BUSSTOP PROJECT BOOK

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Contents

1

2

Overview 概要

1-1 プロジェクト概要

1-2 計画地

1-3 既存バス停の問題

1-4 敷地条件

... 12

... 14

... 16

... 18

1-5 デザイン体制・施工体制 ... 20

3

Design⇔Collect デザインと収集

2-1 デザイン検討と 入手可能な素材の往き来

... 24

4

Integrate 統合

3-1 与条件を成立させる 平面計画

2-2 停留所のデザイン - 方向性を決定づけた要因 - ... 26

3-2 木々の情報を手に入れる

2-3 停留所のデザイン - コンセプトの決定 -

... 28

3-3 地震・強風に 耐える構造を考える

2-4 裏山の木

... 30

... 36

5

Construct 施工

4-1 施工方法・施工手順

... 48

Photos

... 74

4-2 ゴンジロウ塾Ⅰ期

... 50

Credits

... 88

4-3 ゴンジロウ塾Ⅱ期

... 58

... 38

... 40

Photos 完成写真



森の中にいるようなバス停。









1 Overview


1

概要

1-1 プロジェクト概要

12

1-2 計画地

14

1-3 既存バス停の問題

16

1-4 敷地条件

18

1-5 デザイン体制・施工体制

20


12

千葉県館山市の塩見区にある上り ( 館

2018.10

山駅 ) 方面の停留所の新築工事である。 2018 年の強風によって壊れたことで 建て替えの必要性があった。

プロジェクト開始

運行本数が少なく長時間停留所で待つこ ともあるため物理的にも心理的にもより

デザイン提案

使いやすいものに変える必要があった。 住⺠だけではなく観光客も利用するため 「デザイン性の高いもの」へのニーズも あり、機能性との両立を目指した。

裏山の木

建材の入手、住⺠と建物のデザインの決 定に 1 年、行政審査・クラウドファンディ ング・施工に 1 年を費やし 2020 年 12 月に竣工・完成した。

1-1

プロジェクト概要

自然乾燥

伐採

搬出


2019.10

2020.5

デザイン方針決定

デザイン決定

クラウドファンディング

2020.11

2020.12

施工開始

竣工

台風被害 木材 3D スキャン

詳細検討

材料実験

構造計算 建築審査会

事前協議

行政申請

確認申請

施工

13


14

東京ー館山

館山ー塩見

安房塩見バス停

千葉の先端に位置し、東京から 東京湾アクアラインを利用し 2 時間程度で着くリゾート地。療 養地とも知られ、近年はそのア クセスの良さから二地域居住の 場所としても選ばれている。

館山市の中心部から西へ車で 15 分ほどの距離に位置する西 岬地区の中の集落の一つ。半農 半漁の営みに加え旅館業も盛 ん。交通の便がよいことから新 規移住者や別荘所有者が増加し 人口の 4 割近くを占める。

館山と休暇村を結ぶ路線で、東 京との直通運転もある。使い勝 手はいいものの、運行本数が少 なく長時間停留所で待つことも ある。既存は倉庫を停留所にし たもので老朽化が激しい。住⺠ だけでなく観光客も利用する。

1-2

計画地


15

東京

安房塩見バス停 館山 2h

館山

塩見

15min

館山駅

SHINRA 休暇村

ゴンジロウ


16

サビなど老朽化に加え、バスの往来が確認できない・吹き溜まりがあり汚いなど問題点も多くあったため 新たなバス停はこれらの問題点を解決する事も目指した。

1-3

既存バス停の問題


17


18

強烈な西日

バスと人の見合

遮るものがないため西日が厳しい。さらにバスも西側から来るため日射遮蔽とバスの視認性の両立を図る必要がある。

1-4

敷地条件

西側からの強風


19


20 資金支援

クラウドファンディング

利用

バス停利用者

116名

地域住民 観光客

デザイン

安房塩見バス停

施工

西岬海辺の里づくり協議会

NPO ゴンジロウ

地元住民

学生メンバー

専門家・教員

多能工 大工

参加者

停留所の問題 区の現状・要望

具体的な提案 模型化・図面化

専門家の視点 実現性の視点

参加者への技術教育 施工の請負

大工技術習得 施工協力

利用者視点の指摘

設計・デザイン

専門家視点の指摘

施工スキルの教育

施工スキルの体験・実践

プロジェクトチーム

建築デザインを行う協議会メンバーと区の現状や要望を伝える住⺠、建築家・教員・大工といったアドバイザーをコアとする体制でデザインを進めた。 建設資金はクラウドファンディングで集め、施工は NPO ゴンジロウが担当した。

1-5

デザイン体制・施工体制


西岬海辺の里づくり協議会 茅葺き⺠家「ゴンジロウ」を借りたことを きっかけに地元住⺠有志、市職員、教員、 学生をメンバーとして設立された。 地域コミュニティに基づく美しい里山の景 観を維持しながら、新しいコミュニティ運 営の形を探ることを目標に活動している。 ケア活動以外にもテーマについて話し合う かや談義、餅つきといった活動をメンバー と地域住⺠と協働している。

NPO ゴンジロウ NPO 法人ゴンジロウは 2019 年の台風 19 号直撃の被害を受け発足した。職人による 建物の復興が追いついていないことを乗り 越えるチャレンジを行っている。 房総半島で、地域の人たちや地域の力にな る外部の人たちを対象として、長期的に建 築を教える「ゴンジロウ塾」という建築塾 を開校。災害で被災してもしなやかに対応 できる地域づくりを目指している。

21


2 Design

⇄ Collect


2

デザインと収集 2-1 デザイン検討と 入手可能な素材の往き来

24

2-2 停留所のデザイン - 方向性を決定づけた要因 -

26

2-3 停留所のデザイン - コンセプトの決定 -

28

2-4 裏山の木

30


24

Design

2-1

デザイン検討と入手可能な素材の往き来


25

-茅-

-木-

- 粘土 -

Collect

- アースバック工法 -

-竹-


26

裏山の木々

2-2

停留所のデザイン - 方向性を決定づけた要因 -


27

強風に負けない構成


28

選定した木

測量し写しとった実際の裏山の木々の配置

何度も山に木を見にいくと、次第に木々が作る柔らかな空間の作り方に魅了された。 実際の木々の配置を写し、敷地とバス停の機能に合うよう最適化した。

2-3

停留所のデザイン - コンセプトの決定 -


29

コンセプトを表現した建築模型

「森の中のいるようなバス停」


30

搬出を行いやすい細い木々を選定

裏山の木とは集落奥の山に生えるヒノキのことである。協議会メンバーでゴンジロウの所有者でもある方がバス停建設のた めならと昔植えた木々を提供したことから始まる。 裏山の手前は休耕地となっており、近くに行くことすら困難な状態であった。再度道を作り植わっていることを確認した後、 約 1 年をかけ材木屋、木こり、学生など沢山の方々に手伝っていただきながら建材化していった。

2-4

裏山の木


31

STEP.1 木々の乾燥を促す皮むき 立ち木による自然乾燥を目指し皮むき間伐を行う。 約 3 ヶ月後には葉が茶色くなり十分乾燥された木々になる。

2019.5


32

STEP.2 木こりさんと行なった伐採 木こりさんに木々を伐採してもらう。但し、乾燥が思いの外 進んでおらず搬出は延期、追乾燥を行うことになった。

2019.9


33

STEP.3 山から木々を搬出 十分に乾燥が進み木々もかなり軽くなったため搬出。山で 3m 前後に切り 滑り出しで山から下ろした。7 本の木々から 16 本の建材が取れた。

2019.11


3 Integrate


3

統合

3-1 与条件を成立させる平面計画

36

3-2 木々の情報を手に入れる

38

3-3 地震・強風に耐える構造を考える

40


36

敷地の特性、住⺠の要望、木の特徴、建築計画、構造を一つの形として統合する。 座面の位置、柱の配置は決まったが、木の防水処理方法、作りやすい屋根の形状など実際に作ることを踏まえた検討をしていく必要があった。

3-1

使い勝手を考える平面計画


37


38

木の特徴を把握するスケッチ (2019.7)

木々の形を正確に読み取る 3D スキャン (2019.11) どの木をどの柱に使うのか検討するために 3D スキャンを行い木々の形を正確に読み取った。 また採取した木が市販の木材と比べどのくらい強度があるのか知るため実験による検証を行い、市販以上の強度があることが分かった。

3-2

木々の情報を手に入れる


39

木々の強度を計測する (2019.12)


40

座面ブレース

水平力を負担する構造材

枝振りブレース

自然の造形を構造に活かす

基礎天端 土間部分よりレベルを高くし、腐食を防ぐ

独立基礎

引き抜き力に耐える

「地震で倒れないこと」「強風で倒れないこと」の 2 点が重視された。 地震に耐える方法として、停留所の重要な機能である座椅子を建築と一体化する方針が取られた。強風対策は強い引き抜き力が発生するこ とが考えられたため、十分重い基礎にすることとした。柱ごとに受ける力が違うため、それに応じた大きさの異なる独立基礎を採用した。

3-3

地震・強風に耐える構造を考える


41

解析モデル全体図

断面検定比図


42

South Elevation Scale=1:40


43

East Elevation Scale=1:40


断面詳細図

44


45


4 Construct


4

施工

4-1 施工方法・施工手順

48

4-2 ゴンジロウ塾Ⅰ期

50

4-3 ゴンジロウ塾Ⅱ期

58


48

各種申請、クラウドファンディングを行い建設フェーズに入った。 施工はゴンジロウ塾のメンバーを中心に 2 期に分けて行われた。Ⅰ期ではゴンジロウで 各種部材の事前加工、Ⅱ期には敷地で建設を行い、約1ヶ月の作業を経て竣工した。

2020.6

2020.10 工事準備開始

各種申請

ゴンジロウ塾Ⅰ期

2020.11 現場工事開始

ゴンジロウ塾Ⅱ期

・占用許可申請

・鉄筋 / 丸太加工

・独立基礎 / 型枠

・建築許可申請

・型枠

・土間基礎 / 立ち上がり ・柱

・建築確認申請

・梁 / 木材加工 クラウドファンディング

4-1

施工方法・施工手順

・ベンチ ・屋根


49

2020.11.15


50

ゴンジロウ塾 Ⅰ期 ①

鉄筋加工 今回独立基礎は、650 角、450 角、350 角、240 角の 4 種類に分かれているため、それらに合わせて 鉄筋をカットした。それらを OGURA 君という愛称の付いたベンダーを用いて曲げ、ハッカーを使っ て結束する。 塾に参加した元施工管理士がアドバイスをしてくれたことにより、効率良く作業を進めることができた。

4-2

ゴンジロウ塾Ⅰ期


51

2020.11.17


52

ゴンジロウ塾 Ⅰ期 ②

丸太加工 材の表面を金だわしで磨くことで綺麗な表面に仕上げるこできたため、丸太本来の風合いをそのまま活 かすことが決まった。 仕上がりを綺麗にするために手ノコで底部を切りそろえた。中身の詰まった木材を切り出すのは重労働 で、手作業の大変さを実感したほか、少しのずれで地面との隙間ができてしまうため、細かい部分が見 た目や仕上がりに大きく影響するということが分かった。


53

2020.11.20


54

ゴンジロウ塾 Ⅰ期 ③

型枠 材料確認してから桟木とコンパネを切り出していく。図面から必要な型枠の寸法を割り出し、必要 なピースを拾っていった。ここで風車のように桟木とコンパネの組み方を調整することで、同じ作 業の繰り返しでできるように工夫した。 塾生自ら主体的に考え施工性や強度などの優先順位を判断し、施工の仕方を工夫しながら決めてい く良いトレーニングとなった。


55

2020.11.24


56

第一期主要施工メンバー

地域の活動とテレワーク コロナによってテレワーク・リモート授業が 促進されパソコンとネット回線さえあれば何 処でも働けて学べるようになった。そのため、 今まで出来なかった平日に地域の活動に参加 することが可能となった。今回のゴンジロウ 塾では実際に新しい日常生活と地域活動の両 立の一例となる試みを行うことが出来た。


57

2020.11.25


58

ゴンジロウ塾 Ⅱ期 ①

独立基礎 型枠 道路脇の作業であるため、掘削は手掘りで行った。砂浜のようなサラサラな土ため、650 角独立基礎 の下端に合わせて 90cm ほど掘ると決めた。その深さは、道行く人にホテルが立つのかと冗談を言わ れるほどである。 そこに捨てコンを打ち、墨出しを行う。その上に型枠と鉄筋を配置した。コンクリ打設時にずれないよう、 自具を作り配筋、パイプを固定。打設も同様、手運びで行った。暗くなるまでの作業が終わると、第一 関門を突破したことに皆安堵した。

4-3

ゴンジロウ塾Ⅱ期


59

2020.11.25


60

ゴンジロウ塾 Ⅱ期 ②

土間コン打設 立上がり 打設面が乾かないよう、土間コンと立ち上がりは同日に打設した。 配筋を行い、コンクリを打設。ハッカーの扱いに慣れてくると作業スピードも上がる。車通りの少ない時 間帯を狙い、短時間で生コン車から直接土間に流し込んだ。 立ち上がりの小さいところでのコンクリートの扱いは難しく、コテを使いながら丁寧な作業が必要だった。


61

2020.11.25


62

ゴンジロウ塾 Ⅱ期 ③

柱 柱下部はパイプの径に合わせたボアビットを用いて丸太の中心に穴を開ける。予め径の小さいドリル ビットで複数の穴を開けておくことで、道具に優しく作業効率を上げることができた。 道具は誤った使い方をすると駄目になってしまうため、道具の仕組みを理解したうえで正しく使うこと が大切だと感じた。 また、柱の下端のホールダウン金物が取り付く部分をノミで削り、平らにした。この作業は、コンクリー ト打設の際に生じた柱固定用のアンカーボルトの位置のずれを納めることにもつながった。


63

2020.11.27


64

ゴンジロウ塾 Ⅱ期 ④

梁 木材加工 丸太は水平器を用いて高さを合わせた後、施工の手間や部材のズレを減らすため、丸太は倒さずに立て たままチェーンソーで切りそろえた。 これまでの施工過程で発生した誤差を埋め合わせるため、梁の位置は現場で合わせ、垂木を挿す切り欠 きの角度も現場で見ながらノミで切り欠いた。長手方向の梁を設置した後、順に上から短手方向の梁を 打ち込み、金物を取り付けた。ノミで切り欠く際は、予め丸鋸でラインに切り込みを入れることで、施 工性と完成度を上げた。


65

2020.12.01


66

ゴンジロウ塾 Ⅱ期 ⑤

ベンチ 曲面であるため丸太周りの加工は難しい作業であった。横材両端に来る柱面を予め形を合わせたベニヤ に光つけし、それをあてがって卓上糸鋸で加工した。 接合部は梁と柱の両方にほぞ穴をドリルであけ、鉄パイプを噛ませることで固定した。施工性と正確さ を考えての判断である。そしてブレースの設置、接合部の金物による固定を行った。 座面は柱材である檜に合わせ、針葉樹の中でも粘り気があり、座り心地の良い杉を選んだ。


67

2020.12.02


68

ゴンジロウ塾 Ⅱ期 ⑥

屋根 屋根は垂木の上に野地板とアスファルトルーフィングを敷き、ガルバリウム波板で葺いている。野性的 な柱と大梁に対してシャープな納まりが対照的な設計となっていた。 野地板の小口と端を押さえる桟木に波板と同系色の亜鉛メッキ塗料を塗って存在感をすっきりと見せる 工夫をしている。高所での作業であることに加えてこれまでに比べて少ない手数で収める工程であり、 屋根に上る前の周到な段取りが肝心であった。


69

2020.12.03


2020.11

70


2020.12

71


5 Photos


5

完成写真

Photos

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Credits

88


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Credits

西岬海辺の里づくり協議会メンバー 荒井毅 飯沼宏太郎 飯沼武 飯沼肇 岡部明子 小金晴男 鈴木信雄 鈴木守

NPO ゴンジロウメンバー 井関瑞生 伊藤智寿 河村佳萌 菊池裕斗 杉浦匡 田中翔太 日比野遼一 矢野裕一朗

SP Thanks

荒井毅 飯沼信宏 金澤亮磨 岸田一輝 國江悠介 佐藤淳 高木俊 都筑碧 森下裕介 JR バス関東館山支店の皆様


※当冊子は一般社団法人 窓研究所による研究助成金により作成いたしました。 発行 2021 年 3 月吉日



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