NOVEM B ER 2 01 6
BIKING
3
www.f u llm a r ks sto re . j p
ICE CLIMBING, CANYONING, CAMPING, TREKKING, FLY FISHING, KAYAKING, TRAIL RUNNING, ROCK CLIMBING, BACKCOUNTRY, SKI & SNOWBOARDING, MOUNTAIN BIKING
YUKI メッセンジャー/HÜ BN E R
“メッセンジャーの仕事は単なる配送業じゃない。 人と人との繋がりなんだということを見せていきたい”
ていこうと思っていました。でも、その頃
レースがあったり、トリック大会があったり、
友達から貰ったフリーペーパーをパラパラ
映画祭があったり、パーティも毎晩あったり、
読んでたら、DMBQ(ゼロ年代にカルト的
一週間の間にいろんな場所でいろんなイベン
な人気のあったサイケデリック・ガレージ
トがあります。それをみんなでグループライ
バンド)の増子真二さんが「アウトドアを
ドして回ったりするんですけど、ニューヨー
してこなかったことを後悔している。俺は
クはメッセンジャー発祥の地なんで、世界中
いつも暗いスタジオでギター弾いているの
からすごい数のメッセンジャーが集まってい
に、みんなはキャンプとかして楽しそう
て、すごく刺激を受けました。
だ」って語ってて(笑)、それ読んで「自分
帰ってきて固定ギアのピストを組んで、メッ
に足りないのもそこかも」 って、 ハッとなっ
センジャーの草レースにも出るようになりま
アートや音楽が好きだった女の子が、ひょ
たんです。大学院の試験も受けたんですけ
した。当時は「男には負けたくねえ!」って気
んなきっかけでメッセンジャーになった。すぐ
ど、このままアカデミックな世界で現代音
持ちでめちゃくちゃな走りをしていましたけ
に頭角を現した彼女はメッセンジャー世界大会
楽とかやっていくのも、何か違うなって。
ど (笑)。それは本当に面白かったから今でも
CMWC(Cycle Messenger World Champion
もっとちゃんと世の中を見てからじゃない
やりたいんだけど、ちょっと我慢してる(笑)。
ships)など数々のレースで輝かしい成績を
と表現なんてできないなって。
残し、名実共に日本の女性メッセンジャーを
それで卒業後はしばらくデザイナーの仕
─メッセンジャーは仕事としては郵便や宅
代表する存在になった。ピストバイクブーム
事をしていたんですけど、 「もっと体を動
急便と同じ配送業ですよね? それが単なる
華やかなりし時代にはまさにブームの中心的
かすことをしたいな」と思っていたとき、
配送業を越えてカルチャーとなり、CMWC に
な存在でもあった彼女は、3年前にメッセン
新しいメッセンジャー会社の立ち上げメン
代表されるような世界的なコミュニティを形
ジャーの世界を離れたものの、昨年現役に復
バー募集を偶然見つけたんです。だから経
作るまでに至ったのは何故なんでしょうか?
帰した。そんな彼女、YUKI さんが今も路上
験ゼロで始めたんですけど、どんどん走る
を走り続けるわけ。
範囲が広くなり、1 日 100km くらい走る
みんな完全に自転車に中毒なんですよ(笑) 。
ようになりました。その頃、仕事中に路上
自転車もずっと走っているとランナーズハイ
─ YUKI さんは美大出身でかつては音楽
で会ったメッセンジャーに、その年の夏に
みたいになるんですけど、ピストは特にそう
を志していたとお聞きしたんですが、そこか
ニューヨークでメッセンジャーの世界大会
なりやすい。だって止まらないですからね
らメッセンジャーになるというのは結構な
(CMWC) が開かれるって話を聞いたんで
(笑)。止まらないからバンクみたいに走れ
ジャンプですよね。どんなきっかけがあった
す。彼は仲間とチームを組んで出場すると
るし、 楽に走れる。よく 「ピストって大変じゃ
のでしょうか。
言っていて、私も同僚と遊びに行くことに
ないですか」って聞かれるんですけど、登り
したんです。それでまんまとはまった (笑)。
坂も回転ついてたら足を乗っけているだけで
美大の頃はすごくテクノが好きで、自分で
CMWC はメインのメッセンジャー競技
行けるから、実は楽なんです。それは世界的
打ち込みしたり DJ したり、絶対それで生き
の他にも、競輪場みたいな場所でトラック
に共通認識で、メッセンジャーの体にインプッ
トされているものだから、世界大会でもその
す。ピストブームが来たときそこはゴリゴリ
たいと思っているんです。お金のためにお客
感覚を共有している者同士、言葉が通じなく
のピスト系で。でも、時代が変わって道交法
さんを増やすとかじゃなくて、本当に気に
てもすぐにファミリーになれる。それにメッ
も変わったし、自転車が政治の世界からも注
入った人に使ってもらえればいいやって。だ
センジャーの仕事には暑い日も寒い日も、雨
目されるようになってきて、これまでのよう
からメンバーには普段デザイン事務所をやっ
の日も雪の日もあるけど、世界中のメッセン
に無鉄砲な走りをしているとちょっとやばい
ている人がいたり、みんな兼業でやっていま
ジャーが多かれ少なかれ同じような経験をし
なって危機感を感じるようになって。だから
す。それでもメッセンジャーが好きだから
ているから、戦友みたいな感覚があるんです。
変えたいって話はしていたんですけれど、
やっている。
私もいろんな国の世界大会に行っていろん
やっぱりどうにもならなくて。それで、2 年
いまはそうやって絆を作っている段階なん
な人に会ったけど、 「どこの人も一緒だな」っ
くらいメッセンジャーからは離れていたんで
ですけれど、気持ちの部分で仕事できている
て。国なんて関係ないって思えるようになっ
す。そんなときに昔の同僚から新しい会社を
から、同じようなことを気づいている人が繋
たことが、世界大会に行って一番良かったこ
立ち上げるから一緒にやろうって誘われて、
がっていっている実感があります。お客さん
と。だからメッセンジャー同士はすぐ仲良く
話をしたらすごく共感できるものがあったか
同士が繋がっていたりして、 「あ、なんか輪
なれるし、そういうコネクションの強さも魅
ら、もう一度やってみようと思ったんです。
になっている」って思ったり。私はメッセン
力だと思います。
この 10 年メッセンジャーをやってきて感
ジャーはただの配送業者じゃなくて、そうい
そのせいか自転車の人って暗い人がいな
じるのが、会社のセキュリティがどんどん厳
う人と人の繋がりなんだっていうことを見せ
いっていうか、 「考え込むより行動して結果
しくなっていて、贈り主も届け先も顔が見え
ていきたい。自分はメッセンジャーを長く
出せ!」みたいな人が多くて、だからずっと
ない状態になってきて、それと同時に仕事も
やっているからこうして取り上げていただく
この世界にいるのかな。だって、私も暗いっ
質より金額だけで判断されるようになってき
ことも多いんですけど、だからこそそれを
て気持ちを忘れちゃいましたもん(笑)。
たんです。仕事って自分の人生とほとんどイ
言っていきたいなって。ときどき「そんなの
コールなのに、それがお金だけに支配される
関係ねー!」ってバーって暴走したくなる時
─ YUKI さんが現在所属するヒュブナー
のは嫌だなって。だからヒュブナーはお客さ
もありますけど(笑)、今はそういうことを
バイクメッセンジャーのウェブサイトには、
んとのコミュニケーションをもっと大事にし
やってる場合じゃないなって。
「モノを運ぶだけでなく、デリバリーを通じ て人と人を繋ぐ存在を志します」と書かれて いますが、とにかく早くモノを運ぶことが命 題であるメッセンジャーサービスとしては稀 有な考え方だと思います。何故こういったコ ンセプトを掲げられているのですか? ヒュブナーは立ち上げてまだ1年くらいな んですけど、その前の会社には7年いたんで
YUKI
(小川有紀) メッセンジャー。武蔵野美術大学在学中はメディアアー トを専攻。卒業後、 デザイナーを経て、 2005年よりメッセ
ンジャーの仕事に就く。 (株)メッセンジャー、 CYCLEX を経て、 現在はHÜBNER Bike Messengerに所属し活 動中。これまでにピストバイクでヨーロッパ3,000km縦
断や世界各国のメッセンジャーレースに参加するなど、 日本を代表するメッセンジャーとして活躍。革新的なデ ザインと機能性で、 サイクリスト達の話題を独り占めにし た POC Bike Helmet&Eyes を愛用している。自転車は WBASEよりサポートを受けている。www.hbm.tokyo
www.pocsports.jp
GO FAST AND BE SAFE
より速く、 より安全に、すべての天候でそれらを可能にする POCは最適なパフォーマンスを実現するため、空気力学に基づいてデザインされています。 素材研究者、医学、 インダストリアルデザイナー、 グラフィックデザイナー、保護性、快適性、通気性、 動き易さに妥協することなく製品の開発と向上に取り組んでいます。革新的なデザインと機能性で、 ロードバイク市場参入わずか2年でサイクリスト達の話題を独り占めにしたRoad Bike Collection。 『より速く、 より安全に、すべての天候でそれらを可能にする』、更なる進化を是非体感してください。
OCTAL AVIP MIPS 軽量のOctalに衝撃吸収に優れるMIPSシステムを採用したロードバイクヘルメットです。最高レベルの通気 性と快適性で、 業界でもトップクラスの軽さを誇ります。必要な部分だけを厚くして最適化したEPSライナー
を巧みに使い、 表面積が広くプロテクション性能を向上させても、200グラム弱という軽量の維持に成功しま
した。特徴的なシルエットである全体を包み込むユニボディシェルは、 殻の役割を果たし、 ヘルメットの安全特 性と構造的一体性を高めています。 OCTAL AVIP MIPS ¥54,000 DO Half Blade AVIP ¥36,720
HIGH PERFORMANCE Road/Raceday Collectionは自転車に最適なパフォーマンスを実現するため、 空気力学に基づいてデザインされています。安全性 と機能性を中心に考えられたコレクションです。そのコンセプトのもと、 科学、 医学、 工学など各分野の専門家と共に研究を重ね、 製
品開発が行われています。 左上 Raceday Stretch Light Rain Jacket ¥41,040 左下 AVIP Printed Light Jersey ¥23,760 右 上 Raceday Gilet ¥19,440 右中 Raceday Cap ¥4,320 右下 Raceday Glove ¥8,640 & Raceday Scarf ¥6,480
EYES
DO HALF BLADE
POCの高性能アイウェアは、 スキー用ゴーグルの開発で得た経験を元
ロードサイクリングのために開発されたDO Bladeのハーフリムモデ
ラスは自然の中での様々なコンディションから目を保護し、 最適な視
通上での安全性を高めています。フレームには軽量性と耐久性に優れ
に、 その知識と技術を最大限に利用し開発されました。全てのサング 界を保つことができるようデザインされています。 上 K n o w
Uranium Black ¥16,200 中上 Want ¥21,600 中下 WAS Photochromatic ¥34,560 下 Will Aron Blunck Ed. ¥19,440
ルです。下部のフレームをなくすことで視認性を向上させ、 レースや交 るグリルアミドを使用し、 柔軟性もあるためコンディションに合わせ
てのレンズ交換が容易です。ノーズピースは高さを調整可能でフレー ムのフィット感を体感してください。カールツァイス社製レンズを使 用、 レンズは曇り止め加工済みです。 DO Half Blade ¥36,720
BEHIND THE SCENE
THE PRODUCTS
スウェーデンの新鋭ブランドPOCは、 重大な事
野の専門家、 エンジニアと緊密に協力し合い、 保
故からアスリートを守るためにテストや研究開
護性、 快適性、 通気性、 動き易さに妥協することな
発を重ね、 ヘルメット、 ゴーグル、 アイウェア、 プ
く製品の開発と向上に取り組んでいます。ロー
ロテクションなど、 優れた製品を生み出していま
ドバイクの楽しさはフィニッシュラインを目標
す。Bike Collectionは最適なパフォーマンスを
とすることだけではありません。チームPOCの
実現するため、 空気力学に基づいてデザインされ
ポジティブで熱心な姿勢が表現されたチーム
ています。素材研究者、 医学、 インダストリアル
ウェアはロードバイクに対する楽しみ方をより
デザイナー、 グラフィックデザイナー、 様々な分
一層情熱的なものにします。
P O Cのバイクヘルメットは、これまでに革新的なス
キーヘルメットを開発してきた経験に基づき、 その知識
や技術を採用しデザインされています。ダウンヒルか らダート、 フリーライドやBMXまで、 バイクユーザーす べてのニーズを満たすため、 スキーヘルメットに用いら れていた概念や技術はさらに改良を重ね、 洗練されてき ました。POCの目標は単純です。常にスキーやバイクの ために最良のプロテクションを提供することです。
FONDO LIGHT JERSEY Fondo Light Jerseyは透湿性の高いポリエステル生地を使用した軽量サイクルジャージです。体の湿気を効率的に排出し、 快適で優れた着心地 を実現します。フロントのフルジップと脇下のメッシュ生地で通気性と伸縮性を最適に保ち、 襟と袖口はソフトな肌触りで快適性とフィット感 に優れています。背面には3つのバックポケットを配し、 裾の後部は弾性と伸縮性の高い素材を使用しています。 Fondo Light Jersey ¥19,440
Publisher: Fullmarks Inc. Editor in Chief / Direction: Kouki Ishibashi Art Direction / Design: Masaya Takeda Photography (Yuki) / Interview & Text (Yuki): Masaaki Mita