生態系農業 人を中心とした食と農業の未来像ー7つの原則

Page 1

生態系農業 人を中心とした食と農業の未来像 ー 7つの原則

2015年10月


© Peter Caton / Greenpeace

生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

目次 謝辞 序文:食はいのち

02 04

01 はじめに

食料システムは破綻している

07

02 グリーンピースの食と農業ビジョン:7つの原則 1 食料主権 2 農家と地域社会へもたらす利益 3 経験と科学にもとづく生産方法と産出高 4 生物多様性と多様な種子のシステム 5 持続的な土壌の健全性とよりきれいな水 6 生態系に対して害のない害虫防除 7 気候変動に強い食料生産

09 10 10 11 11 12 12

03 グリーンピースの7つの原則の科学的裏付け 1 食料主権 2 農家と地域社会へもたらす利益 3 経験と科学にもとづく生産方法と産出高 4 生物多様性と多様な種子のシステム 5 持続的な土壌の健全性とよりきれいな水 6 生態系に対して害のない害虫防除 7 気候変動に強い食料生産

17 22 28 32 37 42 50

04 結論

53

用語集 定義と略語 参考文献 脚注

56 58 66

謝辞 この報告書は、グリーンピースで「食と農業」キャンペーンに携わるグローバルなチー ムワークによって作成された。各国現地で活動するチームの努力と熱い意思なしにこの 報告を書き下ろすことは不可能だったと思われる。感謝すべき大勢のうち、とりわけ大 きな支援とユーモアを授けてくれた Iza Kruszewska、Alessandro Saccoccio、James Choi、Paul Johnston、Zeina Alhaji にこの場を借りてあらためて感謝の意を表したい。 持続的な食料生産へのシフトについて、私に最も希望を与えてくれたのは、執筆中に多くを 学ばせてもらったインド、ブラジル、ケニア、タンザニア、メキシコ、そしてスペインにい る何百人もの農民たちだ。農民は人間の世界の主柱であり、尊敬そして支援されるべき存在 である。しかしながら今日でも、世界では多くの農家、特に小規模農家の間で実りのある安 全な生活を求めて苦悩している。この報告書は、私たちに尊厳と愛のこもった食物を提供し てくれている世界中の何百万人もの農民に捧げたいと思う。

お問い合わせ:

編集:

表紙写真:

pressdesk.int@greenpeace.org

Martin Baker, Daniel Kramb

© Peter Caton / Greenpeace

執筆:

制作・デザイン・インフォグラ フィクス:

Published in May 2015 by Greenpeace International Ottho Heldringstraat 5 1066 AZ Amsterdam The Netherlands greenpeace.org

Reyes Tirado, Greenpeace Research Laboratories, University of Exeter reyes.tirado@greenpeace.org

2

Sue Cowell / Atomo Design www.atomodesign.nl

第1節


第1節

食物はいのち。 私たちのからだは 植え育て、食べることで 生かされている。 栽培し、食べること - それが 私たちの文化を豊かにし、 地域の絆を強くする。 おそらく、 この営みが 何にもまして人間を際立たせ 特長づけている。 3


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第1節

序文: 食はいのち 食はいのち。私たちのからだは、植え育て、食べることで生か されている。栽培し食べること、それが私たちの文化を豊かに し、地域の絆を強くする。おそらくこの営みが、何にもまして 人間をきわだたせ、特徴づけている。

不可能な工業型農業モデルに挑戦するまでに発展した。今、さ らにに進むべき時である。アグロエコロジーに関連して新たな 運動が形成されつつあり、世界中から絶大な支持を受け隆盛し ている。1

しかし、食料システムは破綻している。消費者の食料に対する 信頼性はすでに失われ、世界で多くの農家が貧困と戦っている のが現実だ。表面上は全く問題がないように見えている地域で さえ栄養失調や肥満が生命を脅かしている。そして今なお、世 界中で何百万人という人が毎日飢えに苦しみ続けている。さら には、世界の多くの国で受け入れられている収益優先の、化学 薬品を大量に投入する工業的な農業モデルが地球に絶大な脅威 を与えている。

グリーンピースは、この成長しつつある運動の一構成員に過 ぎないと考えている。本稿では、アグロエコロジーに焦点を 当てるとともに、他の視点を排除はしていない。本稿の目的 は、最重要課題とその有望な解決策にハイライトを当てるこ とである 。

Preface: Food for Life

人が生命を維持するためのもっとも基本的な営み、すなわち食 物を栽培して食べること自体が今日、人類と地球に深刻な結果 をもたらす脅威となっているのである。 本レポート「生態系農業:人を中心とした食と農業の未来像 7つの原則」は 現状とは違う、別の食料生産方法が可能である ことを立証することを目的としている。 生態系農業 (Ecological Farming) とは自然と生物多様性を重 視し、最新の科学と技術革新をふまえた農法である。生態系農 業は、健康的な農業と食料を約束してくれる。そして、土壌、 水、気候を守り、化学物質や遺伝子組み替え作物によって環境 汚染を引き起こすこともない。そして何よりも、現在食料をコ ントロールしている企業ではなく、人々と農家 ( 消費者と生 産者)とを最も中心におく農業のあり方である。 レポート「生態系農業:人を中心とした食と農業の未来像 7つの原則」では、 生態系農業の意味とアグロエコロジー (agroecology、農生態学)において増え続ける科学的証拠 (Altieri, 1995, Gliessman, 2007) に基づいた、包括的かつ相 互に依存する7つの原則について述べる。 生態系農業は、生態系と共存する食料システムを広げていくた めの – 決して単一ではないが – 鍵となるものである。 そして同 時に、農村および都市の食料消費と廃棄物、健康と人権、平等 な資源配布、その他食料生産と消費に関連する多くの問題と密 接に関連している。こうした問題はすべて、今後対応の必要な 課題でもある。 ここ数十年で著しい進展がおきている。有機農業運動、地元生 産食品(地産地消)運動、そして食料主権が、 現在主流の持続

4

アグロエコロジーが支持される基盤となったのが、農業、社 会、そして消費者運動や環境NGO、学者、他多くの人々からの 協力である。 今現在、ビア・カンペシーナ(農民の道:La Via Campesina)、 アグロエコロジー中南米科学協会 (SOCLA)、そして農薬行動 ネットワーク(PAN)が協力してあらゆる問題解決に取り組 んでいる。その間、大学や国際機関、国連食糧農業機関 (FAO) の各地域の事務所や国際農業研究協議グループ (CGIAR) など が、食の将来を約束する研究の為に連携し、共同研究を始めた のもアグロエコロジーの科学研究が拡大している証でもあると 言えるだろう。 我々は、広範囲に焦点をあてた生態系農業の取り組みに、共通 した確かな未来像が存在すると確信している。共に力を合わ せれば、生態系の限界に注意を払いながら、地球上の生命の保 全、維持、 そして生物多様性の修復を可能にする食料システ ムを創造することが可能である。 それは、食料と農業を多国籍企業の支配下におくのではなく、 地域住民に託し、基本的な人間の要求に応えた持続性、正直 さ、食料主権にもとづいた安全で健康な食物を生産する未来像 である。 私たちが力を合わせれば、食を本来あるべき姿へ、地球上のす べての人にとっての生命の源へと回復させることができる。

Reyes Tirado

グリーンピース調査研究所

エクセター大学


© Peter Caton / Greenpeace

第1節

5


03 6

© Emile Loreaux / Greenpeace

食料システムは破綻している。 すべての人々のくらしと 地球のために、 一刻も早く立て直さなくては ならない。


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第1節

01 はじめに いくつかの図を見ただけで、何かが間違っていることに気づくだろう。毎晩10億人近くの人々が空腹のまま眠り についている。 一方、毎日の食料生産量は 70億人もの世界人口を十分に満たすことができており、10億人もの 人口が肥満対象となっている。その上世界の食料生産の30%もが廃棄処分されているという事実には驚愕するほ かはない。 食料生産を増加させるのではなく、自然を尊重した方法で、最も食料が必要とされている地域で生産することが 今日の課題である。現在の工業的な農業システムはこの要件を満たしていない。 一方、地球環境は苦難を極めている。私たちが資源を過剰に利用し、土壌の豊かさ、生物多様性、そして水質を 悪化させているのだ。有害物質が周辺環境を汚染し、廃棄物の量も増え続けている。これらすべてが気候変動の 脅威の下で起こっており、地球上の資源の減少に拍車をかけている。 現在の農業システムは膨大な量の化学物質と化石燃料に依存している。そして世界でもごく一部の豊かな先進国 の一握りの大企業がコントロールしている。特定の種類の作物に極端に依存し、人の命とくらしを支える基盤で ある持続的な食料生産と生態系に破綻を生じさせている。 この現在の農業システムは環境を汚染し、水や土壌の豊かさやそして大気の質を損なっている。そして、気候変 動にも大きく荷担し、生物多様性、農家や消費者の健康にも危害をもたらしている。それは、幅広い意味での食 料システム – これもまた崩壊しつつある – の一部であり、下記のような事象をひきおこしている。 • 世界のいくつかの地域で、企業による食と農業のコ 不健康な食事が助長され、しばしば栄養的に欠陥が ントロールの強まり、食料をどこでどのように生産 あり、栄養不良および肥満の原因となっている。 し何を食べるかといった農民や消費者の選択権を低下 • 生態系へ重大な影響を及ぼしている、たとえば: させている。 - 危険な気候変動(土地利用の変化など約 25%の温 • 食料供給システムの中での廃棄率が増加(20 - 30 室効果ガス排出 (IPCC 2014))および大気汚染。 %)している。これは主に途上国での収穫後のロス - 農業は今、世界各地で水不足と水質汚染の原因と と、先進国での小売・購買後の廃棄に起因する(FAO なっている。農業は淡水資源の70%を使用してい 2011a)。 る。2 • 広域の土地と作物が、家畜の飼料(全ての土地の約 - 土壌の劣化。化学肥料の過剰使用または土壌の有機 30% および農地の 75%)や、バイオ燃料のため(全 物が失われることによる土壌の酸生化を含む。 作物のエネルギーの約 5% (Searchinger & Heimlich - 生物多様性と農業多様性の喪失。農場レベルの作物 2015))に使用されている。 の遺伝学的多様性から自然界レベルの種の豊かさの • 数種類の換金作物のモノカルチャーを基本とした 喪失にいたる、全てにおける多様性の喪失。 グローバルな食料システムにより、持続可能でなく 農民、特に女性が公平に資源にアクセスできないなどの社会構造の問題 3 を解決し、構造的に発生している食 料廃棄物を減らし、より健康的な食事へと切り替えることによって、私達は現在の破綻した食料システムから 「生態系農業」に適合したシステムへと切り替える必要がある。 「グリーンピースの食と農業ビジョン」(Greenpeace’s Food and Farming Vision) は、なぜ「生態系農業」が 持続性のある未来への解決策となるのか、また、なぜ私達は構造的な変化を加速させるため今行動しなければな らないか、を解説している。

7


(Scialabba et al., 2014)

8

© Peter Caton / Greenpeace

「農業生態系は通常、 多機能性・多様性を持ち、 互いに結びついている。 それは環境の統合性と 社会的な福利に つよく関わっている。」


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

グリーンピースの 食と農業ビジョン: 7つの原則

第2節

02

生態系農業 はアグロエコロジーの原則に沿った食と農業のシステムである。 生態系農業 は単に生態学的に健全なだけではなく、経済的にも実現可能である。それは農業を基本に社会と文化 を尊重する、公平で構造的なアプローチである。 生態系農業 は多様性がある。これは最大の強みの一つであり、その実践方法が普遍・共通なものというより、地 域に特化しているということでもある。 生態系農業 は小規模農地・大規模農場の両方に適用可能である。それは多様で知識集約型であり、外部からの [物質などの]投力や化石燃料への依存性が低い(Tittonell, 2013)。農地レベルから地域レベルにわたり多様 性(土壌、水、大気、そして気候保護)を含む農業への体系的なアプローチをする。しかし、このアプローチが どうあるべきかという普遍的な処方箋はない。 このように多様性が重要であることをふまえて、生態系農業 の根底にある一般原則を見出すことは可能である。 以下は、現在の食料システムに対して、変更すべき主要な点としてグリーンピースが認識する7つの原則の要旨 である。

1

食料主権(食料の自己決定権) 生態系農業が支持するのは、企業でな く、生産者と消費者が食物の供給を管理する世界である。食料主権(食 料の自己決定権)は、食料を生産する人々と方法に関わるものである。 少数の大企業がばらばらな商品市場の要求に基づき食料システムをコント ロールしているのが現状である。食料主権とは、このコントロールを食料 の生産、分配、消費する人々の手に取り戻すことである。こうして、農 家、地域社会、消費者が自分たちで食料システムを決定する権利を確かな ものにする。

食料主権は、地域社会の基礎にある女性の役割を重視する。これまで歴史的に、種まきや収穫において 女性の果たしてきた役割を、生物多様性や遺伝資源を守る者として認識する。ジェンダー平等の問題へ の対応は、食料を誰がコントロールするのかという食料主権の大きな概念の一部である。

9


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

2

第2節

農家と農村地域社会へもたらす利益 生態系農業は、安全性、健全性、 そして経済的実効性をもたらす生活を農村の地域社会で実現するために 農村地域の発達や、貧困や飢餓の問題解決に寄与する。 今もっとも不条理な矛盾の一つを挙げるならそれは、我々の食物を生産す る農家・農業労働者や漁師を貧困にし、食物の入手困難を強いている食料 システムといえるだろう。

政策による十分な支援がある場合、生態系農業は、安定した経済利益を 小規模の農家にもたらす効果的な手段である。それが農村地域にも利益 となり、労働に見合う安定した生活をする権利を高めるという証拠が、世界中の生態系農業の取り組み から得られている。

3

経験と科学にもとづく生産方法と産出高 世界各国で食物の入手可能性 を向上させて貧困地域の生活を改善するには、まず、農産物の持続不可 能な用途を減らすと同時に、食品の廃棄を減らし、肉消費量の抑制に努 め、バイオ燃料のための土地使用を最小限に抑えなければならない。ま た、収穫高の向上が必要な地域では、生態系に則した手法でそれを達成 する必要がある。

世界人口は増加を続け、平均値では裕福になっているが、その食料を数 量的に満たすだけでは不十分である。重要な問題は、多くの食料をどこ で、どう生産し、改善すべき点をどこに見出すかということである。貧 困、限られた資源、土壌劣化、そして不適切な水の使い方により、現在収穫量が非常に低い地域では それを高めることが必要である。それ以外の地域では、肉消費量、バイオ燃料生産用の農地使用、そ して食品の廃棄を減らす必要がある。 現在、企業や食料政策決定者は、収穫量の増加にしか目を向けようとしていない。このため、生産し た食料の使い方を見直す緊急かつ将来にわたる課題が不明確になっている。食料システムの改善にあ たっては、生態系に則した家畜利用システムの導入が、人間の食料の耕作には適さない資源と土地を 活用できる。また適正な畜産システムに基づくならば、世界中で過度に生産・消費される動物性食品 を大幅に減少することにもつながる。しかし公平な分配という点では、動物性食品によって食生活の 改善がのぞめる地域も存在するということにも留意が必要である。 世界のどこでもむやみに収穫量を増加することは解決にならない。例えば米国では、トウモロコシの 半分近くが国内の燃料需要をまかなうために生産されている。こうしたやり方は、アフリカやアジア の農家にとって何の助けにもならない。生態系農業は、収穫量の増加の最も必要な地域で生態系に則 した手法によって収穫を増やすしくみを創りだすものである。

10


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

4

第2節

生物多様性 生態系農業は自然界の多様性に関わることであり、まさに種 子から食卓まで、そして農業景観全体にわたる。それは食味、栄養、そし て食文化を称え、食事と健康を向上させることである。 現在の農業システムはモノカルチャー[単一栽培]を増進させている。大 半の農地が多様性を欠いた単一遺伝子の植物に配分されており、野生動 物・植物が避難する隙さえない。現状の農業システムでは本来の生態系の 機能が発揮されず、我々の食生活も栄養素のバランスを欠くなど、悪影響 がもたらされる。

一方、生態系農業がもたらす結果はその逆である。まず、自然界の多様性 を中心に置く。そうすることにより、生物多様性の保全に不可欠な自然生息地が保護される。そして、 その自然からのお返しとして、たとえば野生の作物種の多様性、栄養循環、土壌回復、そして害虫の天 敵の活用などが得られる。 生態系農業では今日のテクノロジーと農家が蓄積してきた知識とを組み合わせることにより高度な多様 性をもった種子を開発できる。そして、遺伝子組換え作物や農薬によるリスクを生物多様性に与えるこ となく、変動する気候の中でもさらなる食物の栽培を可能にする。

5

持続的な土壌の健全性ときれいな水 化学物質を使用せず土壌の豊かさ を向上させることは可能である。生態系農業は、土壌浸食や汚染、酸性 化から守る。必要に応じて土壌中の有機物を増加することにより、保水 力を高めたり土壌劣化を防いだりできる。 生態系農業は、土壌の養分に注意を払う事により土壌の有機物(堆肥や有 機肥料など)を保ち増やす。それによって土壌の生物多様性も養われる。 また、井戸、河川、湖を汚染から守り、水を最も効率よく使用できるよう にする。

農業は、世界中で淡水を最も使用し、多くの地域で窒素やリンの肥料が水汚染の主要な原因となり、地 球上の生命の不安定を招く最大の脅威のひとつとなっている。その改善は、世界にとって欠かすことが できない(Steffen et al., 2015)。

11


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

6

第2節

エコロジカルな「害虫」防除 生態系農業は土壌、水、生態系、そして 農民や消費者の健康に害する可能性のある高価な農薬を使用することな く「害虫」や「雑草」を制御できる。 有毒な化学農薬は、地球環境や我々の健康に有害な性質がある。残念なが ら、工業型農業は事業を維持するために大量の除草剤、殺菌剤、殺虫剤に 頼っている。今日、現在の食料生産システムのもとで農家はこれらの化学 農薬を企業から高額な費用で購入せざるを得ない状況におかれている。

7

回復力のある食料生産方法 生態系農業は、ダメージからの回復力を養 う。農業を強くし、食料生産システムが気候変動による気候条件や経済 の実態に効果的に対応できるようにする。 多様性を受け入れ、多種の作物を畑や農業集落で栽培することによって、 予知不能になっていく気候変化に対して農業が着実に対応力をつけること ができると証明されている。

手入れされた有機物の豊かな土壌は、干ばつでも保水力があり、洪水の時 には土壌浸食を受けにくい。利点は他にもある。多様性のある農業を営む ことで、収入源も多様となり、先行きが不透明な状況への担保となる。 食料生産システム を再設計すれば、それは大規模な二酸化炭素吸収源を提供することにもなり、様々 な方法で大気中の温室効果ガスの減らすことも可能になる(気候変動緩和策)。たとえば、栄養循環、 生物的窒素固定、土壌回復による炭素放出の減少が考えられる。農業生態系では、家畜が大きな役割 をはたすが、動物性食品とその消費率にも大きな変化がみられるだろう。このように、生態系農業 は、気候変動に対する最も強力な手段の一つと見ることができるのである。

12


© Peter Caton / Greenpeace

現在の食料システムは 食に関する人々の権利を 保障していない。 生物多様性や環境も 全く保全されていない。

13


14 Š Peter Caton / Greenpeace


人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

生態系農業は、 自然と 生物多様性に配慮した 現代科学と革新の 組み合わせである。 それは健全な農業と食を 確かなものにする。 15


生態系農業は、回復力を 養うことができる。 それは農業を強くし、 食料システムが 気候や経済の変動に対して 効果的に順応できるようにする。 16

© Peter Caton / Greenpeace

03


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

03 グリーンピースの7つの原則の 科学的裏付け 1 食料主権 「アグロエコロジーは政治的な力をもつ。社会の権力構造に挑戦し、改変をうながす。種子、生態多様性、 土地と独自の地域性、水源、知識、文化、およびコモンズ (commons) の管理を、食料を供給する人々 の手にに取り戻すことが必要だ。」 国際アグロエコロジー・フォーラム宣言(マリ、ニェレニ 2015年2月27日 日本語訳: http://altertrade.jp/archives/9247) Declaration of the International Forum for Agroecology, Nyéléni, Mali, 27 February 2015 4

現在の食料生産システムは、主に人々や地球ではなく資本の要求に応えている。少数の巨大企業の支配する グローバル市場が、生産する食料の種類のみならず、生産方法や配分方法まで決定している。そこには巨大 な権力の不均衡がある。農地、農業、そして食品加工に大規模な投資がなされる一方で、小規模農家が過小 評価され、排除されるという事態がおきている。これに対し、生態系農業はより優れた解決法を提供するこ とができる。 現行の食料システムでは、人々の食料に対する権利を保障できない。生物多様性や環境の保全も全くおこなわれ ない。現在システムのほとんどの投資や政策による規制は、直接の影響を受ける小規模農家を無視している。 消費者も、企業による不透明な決定の影響を受けている。企業によるコントロールとは、食料が、必要性では なく購買力に基づいて配分されることを意味する。利益優先に立つ企業が支配する現行の食料システムでは、 新鮮な食品ではなく、より利益の大きい加工食品の促進に力をいれる。これにより、世界の多くの地域で不健 康な食品が過剰消費されている。その最も顕著な表れが、肥満症という現在進行形の危機である。現在世界中 で1億5千万人もの大人が体重過多 (overweight) とみなされ、そのうち500万人が肥満症 (obese) である (Finucane et al., 2011) 。 現在の食料生産システムの目標は食料保障、つまり人々に十分な食料が行き渡るという、食料保障の概念によっ て形作られてきた。しかし、近年高まっている食料主権をめぐる運動は、現在の食料システムの不均衡をこそ改 善すべきだと主張する。 簡潔にいうと、食料主権 (food sovereignty) とは各人が自分の食料システムの定義をする権利 [自己決定権] で ある。それは、食料へのアクセスに限定された(または食料援助を含む)食料保障 (food security) の概念とは 異なるものだ。国際開発の努力により食料保障が促進されれば飢餓の緩和にもつながるが、それだけでは不十分 である。なぜなら食料システムに存在する不公正や力の不均衡について何もせず、企業が相変わらず生産者と消 費者の両方から最大限の利益を搾り取ることを可能にしているからである。 「食料主権」の構想は、世界中の社会運動によって発展してきており、国際農民運動のビア・カンペシーナ(農 民の道)はその主導的な役割を果たしてきた。5 近年、「食料主権」は、自らの食と農業システムを定義する権利 を唱える人々の間で共通のビジョンとなっている。現在では、生態系農業はその主たる柱の一つとして受け入れ られている。

17


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

表1:グローバルな食料システム

二つのボトルネック ー 生産者と消費者の間を企業がコントロールする 植付

6

5億7千戸 全世界の農家

4

10 5

種子: 2011 年には世界の種子の販売の66%をわずか 6社が占めていた。 2004 年から2008 年の間に米国の品種登録の特許申請の 72%を 3 社(モンサント社、Pioneer、シンジェンタ)が独占していた。 農薬: 2011年の世界の農薬の販売の 76%はわずか 6社 によって独占 されている。 畜産: わずか4社が世界の 99%の養鶏産業を独占している。

農家

全世界の農家は 5億 7千戸。 全世界で 3人に 1人が農業関連産業に従事・雇用されている。

農産物取引業者

たった4 社(ADM, Bunge, Cargill, Dreyfuss)が世界の 75%の 農産物(穀物と大豆)取引を握っている。

食品加工業者と製造業者

上位 10社の食品加工会社が世界市場の 28%を支配している。

小売業

2011年にEUの食品販売市場の30.7%を小売業者の上位10 社が 占めていた。13 のEU加盟各国で、小売上位5社が小売市場の 60 %超を占めた。

72億人 消費者

消費者

加工業者上位10社 ¦ 1 Nestlé ¦ 2 PepsiCo ¦ 3 Kraft ¦ 4 ABInBev ¦ 5 ADM ¦ 6 Coca-Cola ¦ 7 Mars Inc. ¦ 8 Unilever ¦ 9 Tyson Foods ¦ 10 Cargill EU小売業社上位 10社 ¦ 1 Schwarz Group (Lidl) ¦ 2 Carrefour ¦ 3 Tesco ¦ 4 Edeka ¦ 5 Aldi ¦ 6 Rewe Group ¦ 7 Auchan ¦ 8 ITM (Intermarché) ¦ 9 Leclerc ¦ 10 Ahold ¦ EU各国内での小売業の上位5社の順位はこのリストと異なる場合があり、また各国内の上位5社 が同じとは限らないことに留意のこと。 種子 上位6 社 ¦ 1 Monsanto ¦ 2 DuPont ¦ 3 Syngenta ¦ 4 Vilmorin ¦ 5 WinField ¦ 6 KWS ¦ 農薬 上位 6 社 ¦ 1 Syngenta ¦ 2 Bayer ¦ 3 BASF ¦ 4 Dow ¦ 5 Monsanto ¦ 6 DuPont ¦ 畜産 上位4 社 ¦ 1 Aviagen International Group (part of EW Group) ¦ 2 Cobb-Vantress (part of Tyson) ¦ 3 Groupe Grimaud ¦ 4 Hendrix Genetics B.V.

18


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

アグロエコロジー:今後の展望 中小規模農家や農業従事者の国際的な運動組織であるビア・カンペシーナ (La Via Campesina) が重視 するのは、何世紀もの間培われてきたその土地の知恵に基づく「農民の生態学 (peasant agroecology) が、食料の自己決定権を築く基本的な構成単位」であるという点である。6 同様に、SOCLA 7 は企業による食料システムの支配や、土地、種子や、水に関する利権が食料の自己決 定権の概念とのきわめて重要な繋がりをもっている点を重視している。8 他の団体、農薬行動ネットワーク (Pesticide Action Network) などはさらに焦点を絞り、工業型農業が もたらす具体的な影響として、化学農薬の影響に対して運動をしてきた。 多くの大学の研究者たち、国連食糧農業機関 (FAO) の各地域事務所のような国際組織や国際農業研究協 議グループ (CGIAR) 9 のセンターの研究により、アグロエコロジーが、食物や農業の直面する危機に対す る唯一の解決法であることを科学的に裏付ける研究結果が続々と出されている。

2007年には80カ国から小規模農家や農業労働者、先住民、そして社会運動など各団体の代表ら500人以 上がマリ共和国のニェレニに集結し、行動計画と宣言をまとめ、食物の自己決定権の原則を策定した10。下記リス トはその時の食料の自己決定権に基づく食料システムの定義である: 1)人々の暮らしのための食料を重視する 2)食料を提供する人々を尊重する 3)食料システムを地域に根ざしたものにする 4)地域のことは地域で決め、管理する 5)知識と技術を蓄積する 6)自然と共存する 2008年には世界の専門家400人により設立され、58ヶ国の政府が承認した開発のための農業技術評価会 議(IAASTD)が、食料主権をこう定義している:「人々や主権国家が、農業および食料に関わる政策を、民主 的に自分たちで決定する権利である」と11。 2014年 食料主権会議(The Colloquium on Food Sovereignty)に、食料主権に関する主だった人々がオラ ンダのハーグに集まった。社会科学の専門家から食料主権運動の代表まで様々な専門家が世界中から集まり12、そ の概念について議論した。その中で、食料主権の意味も議論された。それは、概念、過程、将来像、政治的骨組 み、実践、パラダイム、運動、対話、生き物、旗印、理念、反対運動、そして理想郷といったものだった。文脈 や話し手の立場によって、食料主権とはこれらのいずれをも、また全てを意味することもあるとされた。 2015年の2月に、ニェレニで新たな宣言が発表された。この宣言は、食料主権国際計画委員会(IPC)の機能 を強化するもので、これによりIPCの役割は、世界レベルと地域レベルの試みとの連携をとり、従来の工業型の食 料システムを転換して生態系農業による食料システムの確立に向けた戦略を策定することとされた13。これは「新 しい歴史的な一歩」として社会的に認識されている。

19


食料主権を現実に確立するには、 土地改革、地域市場の立て直し、 そして農業において、女性が 中心的役割を果たしてきたという 認識が必要である。

20


Š Peter Caton / Greenpeace

21


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

こうした議論や、その他多数の話し合いや会話にもとづいて、食料主権は「ひらかれた」概念として、いまも成 長し進化を続けている。この、明確にしきれないことは、弱みでもあり強みでもある。 グリーンピースは、食料主権を提唱する世界中の農業生産者コミュニティを支持し、生産者が生態系農業を通し て自らの権利を認識するのを支援し、食料システムの自己決定権を生産者の手に戻せるよう各国政府に働きかけ ている。 食料主権を実現するには、土地改革、地域市場の立て直し、そして農業における女性の中心的な役割の認識が必 要である。また、不公平な貿易のしくみや気候問題の不正義(気候変動の原因者が責任ある対策をとらないこ と)などの障壁も克服しなければならない。食料主権の環境的側面は「自然との共存(working with nature)」 として特徴づけられるものである。これが生態系農業の中核であり、グリーンピースの活動と最も一致する点で ある。

2 農家と地域社会へもたらす利益 「農業だけではアフリカのサブサハラ地域などでの貧困問題の解決はできない。しかし農村部の数千世帯 の過酷な生活を緩和することには十分貢献できる。」 (Tittonell, 2013)

悲痛かつ皮肉な現在の食料生産の現状の一つは、発展途上国の貧しい農村地域で食料生産(農作物、畜産や漁 業)に人生を捧げる大半の人々が飢餓に苦しんでいるということだ(2012年FAO、WFP、IFAD)。そこから 一つ明確な結論が引き出せる。それは、大量の化学物質に依存する工業型農業はひどく不公平で持続不可能とい うことだ。この問題に対して、生態系農業にはできることがある。 人類史上、これほどの量の食物が生産されたことは前例がない。定量的には現在地球に暮らす70億人に食物を 分け与えることは可能だ。しかし現実はもう少し複雑である。現在、世界の15億人もの成人が肥満であり14、 世界で生産される食料の30%が廃棄されている(FAO 2011a)。同時に約10億人が飢餓状態にある(FAO統 計:2012年には8億7千万人)。 2ヘクタール以下の農地を営む農家が世界中の農家で90%以上を占め、それは世界中の農地の60%に相当す る(De Schutter and Vanloqueren, 2011)。この小規模農家は、自然資源(土地、水源、その他)を十分に利 用することができない。また、適切な知識や技能の習得(例えばアグロエコロジーを駆使し収穫率を向上するな ど)が不十分である。価格や天候などの情報も不足しており、さらには収穫物の保管場所や販売市場にも事欠い ている。さらに、彼らに影響する政治的な意思決定の過程にも、ほとんど無力である。 このような背景に対し、 生物多様性に根ざし、地元で入手可能で経済的負担とならない資源を活用した生態系農 業は、地球上の生命を保つために必要な自然資源を保護しつつ、これから発展が最も必要とされる地域での生産 力の増加と暮らしの改善化に貢献できる (UNEP andUNCTAD, 2008, De Schutter, 2010, Bommarco et al., 2013, Tittonell, 2013)。 研究により次々と明らかになっているのは、地元で手に入る自然資源を使用して高品質な作物生産をするため、 物質の投入をゼロか最小限に抑えるため、経済力の弱い小規模農家にも向いている。そして、より多様性に富 み、悪天候や病害虫に対する回復力を備えた農業へと、システム全体をシフトさせることを促進する(UNEP and UNCTAD, 2008)。

22


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

生態系農業が貢献して食料生産と自然保護により発展途上国の暮らしを好転させた例は、数多くあり、その例は 増えている。下記は最近の例である: • アフリカのある15世帯での有機農業15の詳細な分析によると、1ヘクタール当たりの作物の生産率の向上を 始めとして農家収入の増加、環境的利益、地域コミュニティの強化、そして人的資本の発展などがもたらさ れた。生態系農業によって、環境に害を加えることなく農業生産性を向上させ、低費用かつその地にふさわ しい適性技術を利用することで収入を上げることができる (UNEP and UNCTAD, 2008) 。 • ケニアとマラウィでは、生態系農業の手法の一つとしてマメ科の樹木(窒素固定)legume treesを使ったア グロフォレストリー(農林複合)と、農薬不要の害虫防止であるプッシュ-プル法を導入したことにより、暮 らしと収入に高い効果があった(プッシュ法は害虫を作物から撃退する[押す]効果を利用するもので、逆 にプル法は害虫を作物ではなく“おとり”別の植物に引き寄せる[引く]効果を利用する)。ケニアでは、生 態系農業を実行している世帯は近隣の化学肥料使用の農家より3倍もの収入を得られた。マラウィでは、農 薬を使用している農家に比べ1.5倍もの収入を得ることが可能となった。これは、農薬に補助金の出されて いるケースでも同様で、実際マラウィでも農薬補助金が出ている (Greenpeace Africa, 2015) 。 • 最近の分析によると、インドネシアとエクアドルの熱帯のカカオ生産では豊かな多様性と高い生産性の両 立・統合が可能であることが示され、それが暮らしに高い利益を与え、野生動物保護にも貢献している (Clough et al., 2011, Waldron et al., 2012) 。 • バングラデシュでは、草の根活動として生態系農業を通じて貧困と飢餓問題、特に疎外された女性のために 取り組み、結果として6つの遠隔地に住む貧しい男女2万1000人に相当な利益をもたらした。生態系農業 の実践と優れた管理法により、米生産量が5−10%の向上し、野菜とフルーツ生産が25−40%、鶏と家 畜生産量が30−40%、漁猟生産率が20−30%それぞれ向上し、付加価値の増加や化学肥料・農薬の購 入減少によるコスト減から平均純収益が20−30%生まれた (Wijeratna, 2012) 。 • 生態系農業による経済的利益を得た例として、インドのアンドラプラデシュ州 (Andhra Pradesh) の無農 薬管理プログラム (Non-Pesticide Management Programme) により栽培の経費を節減させ、農家の収 入が増加したことが挙げられる。通常1ヘクタールにつき600から6,000ルピー($15−150米ド ル)する化学肥料を節約したことで、生産量に影響することなく、生産の経費が大幅に減少した (Ramanjaneyulu et al., 2008) 。

発展途上国で、農薬を使用しない生態系にもとづく農業の方法によって、生産性、収入、そして環境の健全性を バランスよく保つことができることが数々の調査より明らかになっている。 • 最近、アメリカ合衆国のアイオワ州での調査結果では、長いスパンで多様な作物を輪作することにより、同 じ収入で、地下水を農薬で汚染することなく、トウモロコシと大豆の生産量が増加している16。 • 欧州全土での分析で指摘されているのが、有機農業の収入が平均的すると慣行農業(化学農薬を使う従来の 農業)の収入に匹敵するという事実である (Offermann and Nieberg, 2000) 。最近のデンマークの有機 酪農家に関する経済分析によると、もっとも環境に優しい畜産方法は、地域環境、および世界の環境への 悪影響を減少できる一方、経済的にも悪影響が無いということが示された。大半の生態系農業の農家では、 濃厚飼料の輸入や、汚染源となる家畜のし尿 (excrements) の排出を最小限に抑えることにより、高収益 を確保している。そうした農家は、牛乳や肉の商品価格変動の影響が少ないので収益性もより安定している (Oudshoorn et al., 2011) 。

23


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

表2:作物生産システムの多様性増加による利益     高生産性、高収益、そして環境の健全性の向上 利益 影響

低い生態的多様性:2年サイクル

高い生態的多様性:4年サイクル

0

0

燃料使用

0,2

チッ素化学肥料投入

0,2

農薬

0,4

淡水の毒性

0,4

収穫物の質量

0,6

収益

0,6

労働

0,8

雑草種子銀行の消耗

0,8

トウモロコシ収穫量

1,0

大豆収穫量

燃料作物使用

チッ素化学肥料投入

除草剤

淡水の毒性

収穫物の質量

収益

労働

雑草種子銀行の消耗

トウモロコシ収穫量

大豆収穫量

1,0

トウモロコシ­大豆の長期パフォーマンス比較(2年サイクル)トウモロコシ­大豆­小規模穀物またはアルファルファ-アルファルファ (4年サイクル)アイオワ州のブーン市での作物生産。 調査期間2003年から2011年の平均値。 変動枠を0から1の間で表す。 絶対値1(1作物生産システムによりN=36)が作物生産高の最高を意味する。 評価基準:トウモロコシと大豆の収穫量、輪作作物 全体の収穫の質量、土地と管理に対する純収益、化成チッ素肥料と除草剤散布率、化石燃料使用量、所要労働力、淡水に害を及ぼす可 能性、雑草種子バンクの下落 減衰指数は一定として計測。 Adapted from: Davis, A. S., Hill, J. D., Chase, C. A., Johanns, A. M. & Liebman, M. 2012. Increasing Cropping System Diversity Balances Productivity, Profitability and Environmental Health. PLoS ONE, 7: e47149. [available under the Creative Commons CC0]

24


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

• また欧州でも、条件の異なる気候と農業条件のもとで行わなわれたスペインの研究では、有機農業による穀 物生産(小麦、ヒマワリと豆果の輪作)が、現在の有機農産物価格を前提にした場合62%収益が向上し、 また慣行農産物の市場で販売するとした場合でも36%向上することが示された(Pardo et al., 2014)。 この場合、有機農家への助成金や付加価値(price premium)が収益向上へ の役割を果たしている。 • ウィスコンシン州(米国)での10年にわたる研究によると、無農薬と無化学肥料で生物多様性の高い農業を 営むことにより、農薬を使用した単一栽培よりも収益が上回る結果が証明された(Chavas et al., 2009)。 • 米国中西部では、トウモロコシと大豆と緑肥の粗放的輪作(extended crop rotations)によって、少ない 物質投入(有機質と、外部からのわずか物質投入)による栽培で収穫高の向上が実証された(Coulter et al., 2011)。 • 米国西部では、有機栽培のりんご畑で収穫されたりんごの方が酸味が少なく甘みが強く、慣行型の農業に比 べると収益が高くエネルギー効率もよいことが判明した。同様に、カリフォルニア州のいちご畑の分析で は、有機栽培のイチゴ畑では品質の高いいちごが収穫されていることが示されており、微生物の働きが高く ストレスに強い、豊かな土壌が形成されているとみられる(Reganold et al., 2010)。 • 生態系農業とは、市民にとって純貯蓄を大幅に増やす機会でもある。たとえば、もし英国の全農業が有機 農業へと転換すれば、環境保全のコストは一年間で約10億ポンド(15億米ドル)節約できる(Pretty et al., 2005)。

2004年から2008年の開発のための農業技術評価会議(IAASTD または ‘Ag Assessment’)は、 FAO、GEF、UNDP、UNEP、UNESCO、世界銀行およびWHOの共催する政府間の検討プロセスであり、 その中には110ヶ国から、多くの第一線の科学者を含む900人の参加する検討会議なども含まれていた。 IAASRDは、持続可能な発展という目標にむけた世界規模の取り組みについて、農業知識、科学やテクノロ ジー、公共と民間部門における政策や組織のあり方の有効性を評価した。会議は「現状維持という選択肢は ない」と結論した。行動案の一つとして示されたのが「持続性のある農業を促進する政策として(中略)生 態系農業のアプローチや有機農業など技術革新を奨励し、貧困問題の緩和や食料保障の改善する」というも のだった(IAASTD, 2009, Global Summary, Options for Action)。

25


豊かな土壌、 よりよい水管理、そして 高価な化学品投入に頼らずに 生産量と生産性を向上させる 生態系農業が、いま ベストな選択とみなされている。 26


Š Peter Caton / Greenpeace

27


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

3 経験と科学にもとづく生産法と産出高 「食品生産をすべて人間が直接消費するならば,食料カロリーは約70%増加する。よって、養える人口 を約40億人増やせる可能性がある。」 (Cassidy et al., 2013)

端的にいえば、世界中の食物生産は、世界人口を十分にまかなえる量がある。しかし、何十億人もの人々が毎日 空腹のまま眠りについている。食料が無駄に大量生産され、それを廃棄処分している地域がある。あるいは収穫 量が不十分なため、農家自身が食べていくのがやっとの地域も存在している。これらの複雑な状況には、全体の バランスを考慮し、それぞれの地域の状況に応じて賢明な対策をとる必要があるということを意味しており、多 くの食料や農業の専門家が同意している。生態系農業は、こうした対策において決定的な役割を果たしている。 鍵となる問いが2つある。私たちの食料は、どこでつくられているのか、どのようにして作られているのかとい うことである。広く認識されているのが、たとえば、食料生産量が現在きわめて少ないアフリカやアジアのいく つかの地域では、貧困も非常に深刻で、こうした地域で栄養源として重要な作物の生産量を向上させることは、 食料生産、健康維持、そして農家の暮らしにきわめて重要だ。つまり、現在の世界的目標は、次のように集約で きる:生産量をとにかく世界のどこであれ増やそうとするならば、まずこうした地域に重点を置き、地域に応じ た解決策を優先する必要がある(Garnett and Godfray 2012)。 どのようにして作られているかも、同じく重要である。収穫量が低い地域では、作物への養分と水の供給を改善す ることで生産量の向上が可能ということを、多くの専門家は認めている(Foley et al., 2011)。言いかえれば、 これらは高価な遺伝子組換作物や化学農薬を購入しなくても達成できるという事だ。手頃な価格で効果の高い技 術により、生産量が非常に低く今なお減少を続けている貧しい地域で、収穫量の改善が達成できる十分な可能性 がある(Clough et al., 2011)。 生態系農業が果たすべき重要な役割を示す研究が増えている 生産量を増やす必要に迫られている資源の乏しい地域の小規模農家にとって、今現在、最良の選択肢とみられて いるのは、土壌の養分を増やし水管理ができ、高価な化学品投入に頼らず生産量と生産性の改善が可能な生態系 農業 である(Pretty et al., 2006)。生態系農業は、化学合成農薬の使用に起因する水源汚染や大気汚染、温室 効果ガス、土壌汚染、花粉媒介生物の減少、害虫への効果、土壌劣化、回復力の喪失、生物多様性などへの悪影 響を減少させる。 生産を増加させようとするとき、念頭に置くべきことがある:生産量の増加には上限があり、生態系がいかに地 球の生命に重要なのかを常に気に留めながら行う必要があるということだ(Rockstrom et al., 2009)。また生 産増加の努力は、世界の他の地域で起きている変化を把握しながら実施することもきわめて重要である。我々が 行うべきことは: • 持続性のない用途で使う食用農産物の量を減らす • 食物廃棄物を減らす • 動物タンパク質の低い食生活の採用(食用作物の飼料への転用を減らす) • バイオ燃料用の作物栽培につかう土地面積を見直す 最近の分析によれば、食生活で口にする動物タンパク質の量を半分に落とすだけで20億人もの人口を養える ことが示されている。現在、生産される作物のカロリーの36%もが人間にではなく、家畜に使用されている (Cassidy et al., 2013)。さらなる分析によると、世界の4地域、米国、中国、西欧州、ブラジルで、農産物の 消費を人間が直接消費するものにまわすだけで食料カロリーが増加し、24億人もの人々を養えることが示され ている(West et al., 2014)。

28


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

© Peter Caton / Greenpeace

食料自給率を高めたり、食料生産を必要に応じて最適化したりする(現地の季節に適た生産、都市農業など)こ とも、効率の良い生態系と共存した食や農業システムに繋がる鍵となる。 生態系農業は、土地が提供する生態系の働きによって、農業生産にとどまらず水のろ過や、養分循環、炭素固 定、その他全ての生態系サービスの最適化を目指している(表2参照)。 カリフォルニア大学バークレー校の最近の分析によると、生態系の多様性を基盤にした(輪作、多品種栽培、そ の他)生態系農業は、生産量を増やすのに効果的で、有機農業17と慣行農業の間の「生産高の差」を減少させる ことが明らかになった(Ponisio et al., 2014)。最初の重要な発見は、慣行農業と有機農業の生産高の差が、 それまでに見積もられていた数字(たとえば有機農業では生産高が19%少ない、というもの)より小さいこと である。さらに重要なのは、生態系の多様性に根ざした農法が最適な条件で実施された場合、有機農業の生産 高が慣行農業での生産高と肩を並べうるということである。いくつかの事例では分析の差はほとんどなかった (Ponisio et al., 2015)。 この画期的な結果は、化学農薬依存の農法では決して実現できないこと、つまり高い食料生産性と地球環境への 高い価値の両立に、多様性に根ざした生態系農業がどれほど近いかを証明したのである。

29


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

2007年、全世界食料生産量のメタ分析によると、生態系農業で生産できる食料の量が慣行農業の場合より1 ヘクタール当たり平均30%多いことが明らかになった。途上国では、生態系農業によって慣行農業より1ヘク タール当たり80%も多く生産することが可能だ(Badgley et al., 2007)。この世界統計のデータは、やや限定 的であるものの、この研究により生態系農業が、生産量の増加を最も必要としている地域での潜在的可能性が大 きいことが確認できた。 途上国からのデータがかなり限られていること、アジアで不可欠な米などの農産物が入っていないため、結論は 不確定ではあるが、他の分析では、有機農家の生産量が慣行農業の場合より平均20%少ないことも示されて いる(Seufert et al., 2012)。しかしこの20%の差は、有機農業と工業型農業への投資額の差を反映してい るとも言える。「緑の革命」以来、約90−95%(あるいはそれ以上)の投資が 工業型農業に投資されている (Tittonell, 2013)。このようなきわめて不公平な土台のもとで比較していることを考慮すれば、この差は微々 たるものといえる。 2012年発表の Seufert らの研究による平均20%の差は、農産物や地域を全体で見たものであるから、次の ような重要な統計値を見ておく必要がある: •

果物(オレンジ、バナナ、リンゴ)と油糧種子に関しては、平均的に生態系農業と工業型農業の生産量は同 程度であった。

発展国での主要農作物に関する差は、約10%であるが(データがかなり限定的)、この分析にはアジアの 米の生産率は全く含まれず、このため有機農業による主要穀類の生産量がほとんど反映されておらず確定 的とは言えない(米は世界的に重要な穀類である)。アジアでの米の生産量が反映されているデータによる と、有機農業と慣行農業での生産量の差は無に等しい(di Ponti et al., 2012)。

Seufert ら(2012)の分析によると、「有機農業の土壌は保水能力や浸透性が高く干ばつや大雨といった気象条 件でも慣行農法より生産量が多かった」ことが明らかになった。生態系農業法が、天水利用の下ですぐれた生産 性を発揮できるという事実は、気候変動が現実となり頻繁に水不足がおきている世界ではきわめて重要である。 農業用水のほとんどを降雨に頼る小規模農家にとって、生態系農業のアプローチが非常に重要だということでも ある。 現在の食料システムは、今も土地を集約的に利用する視野の狭いアプローチに偏ったままである。このアプロー チでは、今ある農地での食料生産量を最大化し、使っていない土地(遊休地)で生物多様性が保護されると提唱 する。しかし、それは使っていない土地がすべて自然のままに保護されるという非常に現実離れした仮定をして いる上、化学物質を大量に使用して単一栽培を行う集約的な土地利用が、農地やその周辺の生物多様性に及ぼす 悪影響を軽視している(Matson and Vitousek, 2006, Weinzettel et al., 2013, Bommarco et al., 2013)。 生態系農業のアプローチは、生態系サービスの最適化と食料生産のバランスがとれている。表3は、生態系サー ビスの大きいケース(土地の共用)から単位あたりの食料生産を増やすケース(土地の使い分け)まで、段階的 な選択肢を表している。 グリーンピースは生産量を伸ばすことに反対していない。むしろ賛成である。ただし、収量の低い農地の生産量 を増やす場合は、生態系と共存した実践が必須であり、そうしてはじめて農家、食料保障、地球環境にとって好 ましいものになる。生態系農業は、生態系サービスと食料生産を共に同じ土地の中で高める方法である。

30


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

表3: 土地の共用と節約の比較 生態系サービス vs 食物

生態系農業 ̶ 生態系サービスを回復した農地では、高い食料生産量と健康な地球環境の ための生態系サービスを両立させることができる。 生態系サービスが 回復された農地

自然生態系

1

集約的農地

1

2

1

2

2

3

3

4

3

4

4

5

5

6

5

6

6

7

7

8

7

8

1

食物・バイオマス生産

5

水質調整

6

2

炭素固定

森林生産 7

8

3

生息地と生物多様性の保存

地域的な気候と大気の質の調整

8

4

水流調整

感染症の緩和

© Fred Dott / Greenpeace

土地利用と生態系サービスの両立しにくい関係を比較した概念的な枠組み--自然保護と土地利用、あるいは「自然を考慮した農法」と土地の 使い分けを段階的に図式化したもの。 同じ土地について 土地利用の違いによって提供される生態系サービスの違いを簡略に「木」の図で表しており、それぞれの生態系サービスの 機能は葉の大きさで表した。葉が大きいほど生態系サービスを有効活用している。(質的な図式のため、葉の大きさは一般的な規模を表して いるわけではない)。図は、3つの土地利用のタイプを自然保護(左)、他の要素はさておき生産量を最大化することを優先した農地(右)、 そして生態系サービスを回復させた農地(中央)と段階的に表示。自然生態系は、食物生産以外では大半の生態系サービスが効率よく保たれ ている(例:自然保護)。農地を集中的に生産の為に利用した場合、食物の生産は豊かになるが(少なくとも短期間では)、他の生態系サー ビスは弱まる(土地の使い分け)。しかし真中の図、意識的にに他の生態系サービスを維持・管理している農地は、食物生産を含む幅広い生 態系サービスの役割(土地の共用)を保つことが可能となる。 出 典 : Foley JA, DeFries R, Asner GP, Barford C, Bonan G, Carpenter SR, Chapin FS, Coe MT, Daily GC, Gibbs HK, Helkowski JH, Holloway T, Howard EA, Kucharik CJ, Monfreda C, Patz JA, Prentice IC, Ramankutty N & Snyder PK (2005). Global consequences of land use. Science, 309: 570-574. Reprinted with permission from AAAS.

31


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

4 生物多様性と多様な種子のシステム 「栄養強化が微量栄養素の欠乏に対する最も効果的な解決法だされる時代に、私たちは、現在の食物生産 システムが無視し、忘却し、消滅してきた限りない食の多様性を自然が提供していたことを忘れては ならない。」 Florence Egal, Food Security, Nutrition and Livelihoods, Nutrition Division, FAO

生物多様性は、地球の生命を保つ鍵である。これがなければ健全な食物生産システムは機能しない。しかし、 ここ数十年で食物の多様性が大幅に減少している。現在、植物から得るカロリーの半分は、米、小麦とトウモロ コシから由来している。かつては7千もの作物を栽培していた人類にとって驚くべき数値である18。生態系農業 は、この多様性の回復をめざしている。 作物の多様性が、いかに食の安全・栄養・健康に重要な役目を果たしているのかが、今日ますます認識されてき ている。農業の生物多様性が、栄養失調と肥満症という2つの矛盾した重大な健康問題の影響を回復させること ができると多くの専門家が指摘する19(Fanzo et al., 2013, Fison et al., 2011, Frison et al., 2006)。たとえ ば、オリヅルラン(ユリ科)、アマランス(ヒユ科)、アフリカン・ナイトシェイド等、軽視され利用さない先 住民の野菜を、アフリカではその利益・栄養・健康問題の改善の可能性として、見直されてきた(Ojiewo et al., 2013)。 多様性が、自然や農地で生態系への重大な変化に対する自然の保険制度の働きをしていることを、科学者は示し てきた(Diaz et al., 2006, Chapin et al., 2000, McNaughton, 1977)。生物多様性は、環境の変化のなかで 生態系サービスを最大に引き出し、生産的で栄養のある農業システムを支える。そのため、農地全体を通して、 種子から食卓に至るまで生物多様性を保つ必要がある(表3参照)。 • 一つの農地に、多種の作物や一種類の作物でも多品種を混植することは、天候変化の著しい農地での適応力 を強化する方法であることが明らかにされている(Costanzo and Barberi, 2013)。さらに、地域固有の 作物多様性(地方品種や在来種)は、特定のストレスへの適応能力のために非常に重要である。たとえば、 イタリアの雨水を利用する小麦畑では、遺伝子多様性を高く保つことで乾期における不作のリスクを低減 した。通常では、降水量が20%減少すると小麦の収量は一気に低下するとされるが、多様性を高めた畑 では収量が低下しなかったばかりか、平均生産量を上回った(Di Falco and Chavas, 2006, Di Falco and Chavas, 2008)。 単一の作物品種の場合、悪条件に対する耐久力の強化には、遺伝子組換えではない近代の繁殖技術、例えばマー カー利用選抜(MAS)20 が最も向いているだろう。それに対して、遺伝子組換え作物(GE)の大半は、除草剤耐 性作物か特定害虫抵抗性作物ないしは両方である(Quist et al., 2013)。これらは気候変動時の食料安全保障を 考慮していない。遺伝子多様性が天候異変に耐久性を強化させる鍵だと考えられているのに、遺伝子組換え作物 (GE)は「一種が全て」という品種群を生み出すことにより農作物の遺伝子基盤を狭める。 (Jacobsen et al., 2013, Lin, 2011)。 最近の生物多様性(種の多様性)と有機農業に関する調査によると、生物多様性のある有機農業が従来の農法よ り植物、昆虫、そして動物種を34%も多く支えていることがわかった。そして結果はここ30年間変わってい ない(Tuck et al., 2014)。ハチのような 花粉媒介者の種類数は、有機農場では50%も多い。これは、ハチや 他の花粉媒介者が受粉することで、世界の食物生産の最大化に貢献している点で重要である(しかし現在、生息 地の不足、病気や殺虫剤のせいで花粉媒介者の数が減少している)。発展途上国に関してはさらなるデータが必 要になるが、これらを研究した著者たちによると、有機農業の生物多様性に対する好影響は、広範囲に広がる現 行の集約的農業地域ではさらにに大きいと結論づけている。

32


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

表4: 生物多様性の各段階の様子 農地での作物の遺伝子多様性、地域レベルでの景観多様性、および食卓における栄養的多様性

高い

低い

異なる品種の米

単一品種の米

多様性

多様性

作物の遺伝子 多様性

農地での作物 栽培の多様性

トウモロコシと豆の間作と   アグロフォレストリー      (農林複合)

単一栽培のトウモロコシ

地域での農場 の多様性

食卓・食物の 多様性

33


34


© Peter Caton / Greenpeace

生物多様性は、 地球の生命の鍵である。 これがなければ 健全な食と 農業システムは 機能しない。

35


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

多様性を高める農法がもたらす利益は、近年の科学的データでも数多く示されている。この数年間に、生物多様 性が生産性と生態系機能の促進のために最も重要であることを示す有力な研究結果が多く提出されている。

• 生物多様性が生態系の生産力と機能にもたらす影響は、火災や施肥、干ばつ、放牧家畜または CO2排出な どの人間社会が自然環境に及ぼしうる変化の規模にほぼ匹敵する。例えば、草地の生物種が1から16種 に多様化した結果、1ヘクタールあたり窒素 95kgの施肥よりもより多くの作物生産の向上をもたらした (Tilman et al., 2012)。農業システムで、外部からの投入の代わりに生物多様性を活用することで、生産性 の上昇、水の浄化、栄養素の循環、益虫などの生態系サービスを高める大きな可能性がもたらされる。 • 別の研究では、長期間にわたる化学肥料の使用がどのように生物多様性に悪影響を与えるか(生産性の低 下)が示されている 。牧草地に窒素を加えることで、最初は生産性を上げることができたが、生物多様性の 損失を招いたので、長期的な生産性は低下していた (Isbell et al., 2013)。 • 米国ミシガン州で、農学者がコーン(トウモロコシ、米国語)の単作栽培と様々なレベルの間作栽培の収穫 高を3年間にわたって比較した。最も多様性のある栽培(3種の作物と3種類の間作作物)を行った畑は、 継続的に単一栽培した畑の収穫高を100%上回る結果であった。作物に多様性のある間作が土壌肥沃度を高 め、化学肥料の必要性を低下すると共に収穫高を維持したのである (Smith et al., 2008)。 • メイズ(トウモロコシ、英国語)とそら豆(マメ科)を、リンに乏しい痩せた土壌で間作栽培を行った結 果、単作栽培に比べて高い収穫率(メイズは43% そら豆は26% の伸び率)を得た。メイズはそら豆との根 の相互作用から有益な影響を得ることで、土壌を肥沃にし窒素吸収が改善される。間作が土を豊穣にし、メ イズ - そら豆栽培の収穫率を大幅に高めた (Li et al., 2007)。

農業で、水汚染を防ぎ、貯水し、農場内で効率的に水を利用することは、地球全体の生物多様性を守るために欠 かせない。農業による汚染は今日、多数の地域において最大の水汚染の原因だと考えられている。メキシコ湾 の「酸欠海域」、世界の海を横断する広範囲に及ぶ富栄養化現象 (eutrophication)、中国の大規模な水質汚染、 これらのほとんどの原因は工業的農業による (Sutton et al., 2013, Sebilo et al., 2013, Grizzetti et al., 2011, Watts, 2010)。 農業は、世界最大の淡水使用者でもある。多くの地域で水不足が起きており、干ばつの悪化と不規則な降雨のパ ターン化が、今後の気候変動で予測されている (IPCC, 2007, 2014)。 生態系農業は、効率的でより良い灌漑(irrigation)と適切な作物の選択を通して、水資源の保全と効果的利用 をめざしている(例:アフリカにおける分散型の太陽ポンプによる灌漑 (Burney et al., 2010))。この農業シ ステムは、利用可能な水を最大限に活かすことができる。例として、土壌の有機物の改善、集水農業 (water harvesting)、アグロフォレストリー(農林複合)などが挙げられる (Rockström and Karlberg, 2010)。

36


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

5 持続可能な土壌の健全性とよりきれいな水 「有機農業で管理された土壌は、保水力と浸水性に優れ、干ばつや大雨においても、従来のシステムに比べ 作物の収穫率が高い」(Seufert et al., 2012) 「窒素の役割に関して、市民は知るべきである。市民が知識をもつまで、政治家は動こうとしないからだ」 Mark Sutton21

農家は、良い状態で適度な栄養を備えている健康的な土壌が、作物の栽培に欠かせないことを理解している。し かし、近代農業システムによる悪影響により、土壌の健康維持力が低下した。化学肥料に過度に依存した施肥方 法では、長期間にわたって地力を維持することができない。それは高額の費用がかかり、周りの環境へも悪影響 を及ぼす。生態系農業は、より良い方法である。 作物は、土壌から必要な窒素やリン酸などの栄養素を蓄えながら成長する。栄養素は、作物の収穫と共に農地を 去る。農場での耕作と収穫を継続していくためには、栄養素の補充が欠かせない。これは農家が残った作物や家 畜の糞、台所からのコンポスト等を土壌に与えることにより実現する。 しかし- 食品加工が大半を占め、家畜が耕作地から切り離され、食料品が世界各地に輸出される最近の産業システ ムでは、 移出と補充の循環サイクルが乱されている。そうして、食物を栽培するには化学肥料が必要であるとい う迷信に繋がるが、それは全くの誤りである。 現在の工業型農業は、化学肥料によって土壌を健康に保つために不可欠な2つの栄養源を化学工場と採鉱作業に 依存しており、持続不可能な栄養サイクルを恒常化させている。 工業的な窒素の固定化は、大量の化石燃料を消費して合成窒素を生産する。リン酸やカリウム等の鉱物性の栄養 分は、大きな環境破壊を伴いつつ大規模に鉱床から採掘される。このやり方は、これまで一定の地域で作物の栽 培を増加させてきたが、 環境と人類に対し大きな被害を与えている。22 こうしたことを、今や無視することはで きない (FAO,2011b)。 この数年間、私達の持続不可能な化学肥料への依存が世界的な環境問題であることを、科学者たちは強く合意す るようになった。化学肥料の殆どは合成窒素とリン酸である。最近示された以下の3つの問題は、この依存への 再考を求めている。 1) 窒素とリン酸肥料が地球に及ぼす影響が、人が地球で安全に暮らせる限界範囲(プラネタリー・バウン ダリー)を大きく超過している事実が、現在広く認められている (Rockström et al., 2009, Carpenter and Bennett, 2011, Steffen et al., 2015)。地球の健康に最も衝撃を与えている問題の一つは、栄養素循環の破壊で ある。メキシコ湾の「酸欠海域」、中国の海岸におし寄せる大量の毒性藻類、広範囲にわたる農村地域の飲水汚 染 – これらの全ては化学肥料による汚染と関係する環境問題であり、暮らしに重大な損害を与える。 2) 窒素とリン酸の施肥は、地球上の農耕地の栄養限度を大きく超過している。過剰な施肥は広がっており、ア フリカの農業システムにおける広範なリン酸不足でさえ、もはや事実でなくなった。幾つかの地域では栄養素の 過剰蓄積がおきている。 過剰なリン酸は、アフリカの土壌に60%に存在しており、その多くは東アフリカの畜産 経営の地域と都市近郊である。その他の地域では、土壌の管理が行き届いておらず、必要な食物の栽培ができな い。農村地域では土壌の 20%がリン酸不足である。(MacDonald et al., 2011, Elser and Bennett, 2011)。アフ リカを含む世界中の痩せた農地に、現在廃棄されている有機質の栄養素を再投入し、土壌の地力を長期に持続さ せるアグロエコロジーの実践に投資することで改善できるだろう。

37


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

図5: 地球の限界範囲:人類に住みやすい地球を保証する鍵となる要素 地球上での生活を形づくる9項目のうち4項目が「安全」レベルを超えている。 人類による気候変動、生物圏の全体性の喪失現象、土地の改変、肥料による海洋への大量の リン酸と窒素放出である。 気候変動

遺伝的多様性

生物圏の全体性

新たな要因

機能的多様性

成層圏オゾン層 の破壊

土地システム の変化

成層圏オゾン層 の破壊

大気エアロゾル の負荷

リン酸

生物化学的な流出

海洋の酸性化 窒素

境界の不確定領域を逸脱(危険度大)

境界の不確定領域を逸脱(危険度大) 境界範囲から不確定領域(危険度増加) 境界範囲内(安全)       境界範囲は未測定

2015年のサイエンスに記載された最新の研究によると、プラネタリー・バウンダリーで地球が「新しい状態」に変化し、人類の生活快適 度が低下しつつあることが示されている。窒素とリン酸肥料による汚染と生物圏の全体性(生物多様性)の喪失の2つが、地球上の生活 を破壊に導く最も危険な要因である (Steffen et al., 2015)。また新たな未知の要因、 「新物質」や以前から存在する物質が変化した新物 質、そして組み替えられた生命体による地球物理学的、生物学的な望まない結果を招く可能性もある(例:微細プラスチック、ナノ粒子、 遺伝子組み換え生物)。(参照 68-71, Steffen et al., 2015) Graphic © theguardian.com (2015)

38


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

3) 科学者たちは、栄養分問題に対してアクションを起こすように呼びかけている。2013年、UNEP(国連環境 計画)は他の科学者団体と共に、「栄養をめぐる世界(Our Nutrient World)」”汚染を減らして食料とエネルギー の生産を向上させる挑戦” という包括的な論評を行った (Sutton et al., 2013)。 同時に UNEP は栄養分を管理する ための “強力な行動要請” を付け加えた。窒素消費量を年間20 Mt 減少させると、2020年には合計1700億USド ルの節約になる(実施費用と農家の肥料コストの節約、健康と環境への利得を含む)。 化学肥料の大量な使用は、中国の広域での深刻な土壌の健全性の低化を招いてきた。その影響は、将来の食料安全 保障に欠かせない農耕地の主要な領域に広がった (Guo et al., 2010, Darilek et al., 2009)。幾つかの地域では、土 壌の酸性化が食料生産の潜在力をおさえ、将来の食料安全保障に大きく影響する (Guo et al., 2010)。土壌浸食も、 栄養素の循環と土壌の健全性に多様な影響を及ぼし、世界のほとんどの場所で、人類の生存と食料安全保障を揺る がすのである (Quinton et al., 2010) 。 より良い代替案が存在する:生態系農業は、発展途上国の多くの農民が直面している土力の低下と土地の劣化を回 復することができる。 土壌浸食、土地の酸性化、有機物の喪失などの問題は、アグロエコロジーを実践することで 土壌の質を富ませ、生物を多様化できる。(Eyhorn, 2007, Mäder et al., 2002, Fließbach et al., 2007, Tittonell et al., 2012) 。 生態系農業は、土壌を命ある必要不可欠な農業の要素だとみなす。植物が必要とする栄養素は、健全な土壌に貢献 する3つの源からもたらされる。 1. 農場の土から地質学的に自然にもたらされたミネラル 2. 農家の土壌に戻される有機質資源(家畜の糞尿, 作物の残渣, 家庭から出た廃棄物のコンポスト)23 3. 生物学的な窒素の固定化、マメ科や他の植物または固定機能を備えた微生物による大気のN2 が固定化される 以下、生態学的に土壌の肥沃化を支える4つの原理について、科学的な証拠の概略を述べる。 1 生態系農業は、有機肥料と多様性に富んだ農業にもとづく。とくに窒素とリン酸の化学・合成肥料の使用を避け

るが、場合によって、短期間で劣化した土壌の肥沃度を回復するためには無機栄養素を必要とする場合もある。

メタデータにて解析した 77 件の公表された研究結果によると、窒素を固定化するマメ科植物の緑肥は、現在利用 されている全ての合成窒素肥料に代わって、十分な量の生物学的に固定化された窒素を供給することができる。そ の際に食料生産が減少することはない (Badgley et al., 2007) 。 アフリカでメイズと間作したマメ科の樹木は、メイズが収穫を維持できる十分な量の窒素を補い、その収穫量 は化学肥料を使用した場合と同じ値になる。さらに、間作とバイオマスの組み入れにより土壌の健全性が促進さ れ、水に浸透性を改善し、土壌の流出と流亡量が減少する。リン酸、カリウムの栄養分の吸収を高める効果もある (Akinnifesi et al., 2010) 。 生態系農業は、堆肥や食物残渣の全てを生産的な農地の土壌に戻すことをめざしている。バランスの取れた栄 養分を生産性に富む農牧地へ確実に戻すには、堆肥や他の廃棄物(適切な方法で安全に衛生的に処理された人の排 泄物を含む)を土壌に施肥することが重要である。遠隔地間での栄養物の大規模な移転を防ぐことにより、農地に おけるの適切な栄養素の循環が達成される。例えば、世界を横断するほどの飼料の大規模移動は再検討されるべき である (Galloway et al., 2007)。生態系農業は、栽培に適さない土地での複合農業(作物と家畜)と牧畜(小規模 農牧、農耕牧畜)を営むことを意味する -- 今日の最も非効率的な栄養分の使用は食料システムにあり、家畜の生産 と消費の大幅な削減に努める必要がある。 2

39


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

最近の総合的なグローバルモデルの推定によれば、地元の需要に適した畜産として調整し再分配することと、マ メ科牧草類による生物窒素の固定化を利用することにより、化学肥料を用いることなく作物生産のための窒素 が供給できて、全人類の食料供給が可能になり、栄養分の損失と汚染の大幅な減少が実現できる (Billen et al., 2013)。生態系畜産の管理においては、家畜の糞は排泄物ではなく 土壌にもどすべく価値のある資源とみなされ る。現在の農業システムにおける非効率な堆肥の利用状況については、例えば、農耕地には堆肥のリン酸の半分 しか還元されておらず、耕作を回復できないことに示される (Cordell et al., 2011, Bouwman et al., 2011)。 生態系畜産業におけるグリーンピースの立場は、農業システムで家畜が果たす不可欠な役割に基づく。生態系畜 産は、家畜を農業システムの不可欠な要素であり、家畜は栄養分の利用と循環を最適化し、多くの地域で農業労 働力の必要性を産み、それは副収入として保険の働きをする。生態系畜産は、牧場や放牧地や畑の作物残渣から 飼料を得ることで、人間の直接的な食料生産のための耕作地利用や食料生産との競合を避け、地球上の公正な食 料システムとともに自然の生態系を保護する。 現在、世界人口の約半数が適切な衛生施設を利用できず、その72%はアジアに居住している (Mihelcic et al., 2011)。これは、毎日地球上の多くの土地の子供達を病や死に至らしている水に関わる感染症や寄生虫感染症な ど、健康上の最大のリスクの一つであると考えられている。不備な衛生は水路を汚染し、安全な飲み水へのアク セスが妨げられており、そうした人々は世界で約8億人に上る。24 多くの地域における衛生設備と下水処理施設の欠如は、農場の養分の回復をめざす、真に持続可能なシステムを 構築する機会となる (SEI, 2005)。 環境的公衆衛生による養分回復は、非常に効率的である。尿と便に含 まれる90%に及ぶリン酸と窒素は潜在的に再生可能であり、農耕地の 肥料に使われて生産物の収穫を改善できる (Andersson et al., 2013) 。安全上の注意を払いつつ、排泄物から再生された養分でコストが掛 かる化学肥料を置き換えることができる。サブサハラアフリカでは、 現在使用されている全量をこの方法で置き換えることができる (SEI, 2005)。25 3 生態系農業は、農地の有機物を維持または増加させる。これは土 壌の肥沃さの維持または改善に欠かせない過程で、水利用を最適化 し、干ばつに対する耐性を強化し、侵食を防止する。

植物が育つには栄養素が必要である。根の成長を容易にするために は、保水性に富み、良好な状態の土壌を必要とする。それは、植物の 成長を助け栄養素の可溶性を高める微生物を助ける働きもする。多く の農民が「土壌は命」であると証言している 27。 土壌は、地球の気候の調節にも重要な役割を果たしている。土壌が貯 蔵する炭素量は 大気中と植物内を合わせた量よりも多い。 (Averill et al., 2014) 生態系農業で良く行われる実践内容は、 土壌中の炭素とその安定性 を増加させる事である。そうして、侵食や土壌 の荒廃につながる他の 原因を防止するのである (Thomas, 2008, Ajayi et al., 2007)。例え ば、21年間に及ぶ欧米農地の研究によれば、有機肥料で施肥された 農地は化学肥料で処置された土壌よりも良い結果を示した。土壌の安 定性と肥沃度の上昇、生物多様性、微生物やミミズの活動が増加した (Mäder et al., 2002)。

40

バイオマスは限られた 資源 どの様に利用するべきか?家畜 肥料からバイオエネルギーを得 るか、土壌の肥沃度の向上に使 うか?家畜の餌に使うか、土壌 に撒くか? 場合により、相乗的使用が可能 である。分散化されたバイオガ ス栽培植物を例に取ると、家畜 糞尿はガス生産に利用され、栄 養素に飛んだ残留物は土地を肥 やすために使われる。その他の 場合にも、簡単なガイドライン が存在する。例えば、収穫後の 最優先事項は食物生産であり土 壌肥沃を保つことである。 特に、ソーラーパワー 26 などに よる資源の確保が可能な場合は 優先される。 一般的には、解決方法がそれぞ れの地域により異なるので、各 地の土地に最も適応したバイオ マスの利用が薦められる。


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

その他、アメリカのりんご園で施肥に堆肥(化学肥料を使用した場合と比較して)を使用した結果、土壌中の炭 素量、微生物の種類とその活動量が増加した。窒素の水中への流出を防ぎ、ほぼ同量の亜酸化窒素の大気への放 出を防いだ (Kramer et al., 2006)。 4 生態系農業は、生物多様性と協調して栄養素の利用効率を向上させることで、窒素とリン酸の喪失を最小化

する。そして、最も効率的で無駄のない資源の利用をめざす。

農作物が吸収する窒素の値について、幾年にもわたる世界的な調査を分析した最近の総合研究の結果によると、 多角的農業の実践によりその値が上昇し、喪失を防ぎ、汚染の軽減が実現できる事がわかった (Gardner and Drinkwater 2009)。この研究は、農業システムにおける多様なローテーションが窒素喪失を30%軽減させる (つまり作物・土壌に残る)事を示している。 多角的農業は、化学肥料を利用した場合に比べて、より効率的に汚染原因を削減ができると考えられる(例えば化 学構造の変化、化学窒素利用率の削減など)。重要なのは、化学肥料と有機肥料のどちらを使用した場合でも生産 高に変わりがなく、施肥から2年後には、有機の窒素の方がより多く土壌に存在していたことである。この結果 は、有機肥料が土壌に蓄積し、環境へ流出せずに年月をへて土壌の栄養状態を豊かにすることを示している。 低価格で手に入りやすい有機肥料は、生態系農業をより安全にし、外部からの投入や価格変動の影響を受けにく くする。これは、最近のマラウイにおけるアグロフォレストリー(農林複合)においても示された。彼らは化学 肥料からマメ科の木による肥料に切り替えて、より良い経済的見返りを得るようになった (Greenpeace Africa, 2015)

41


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

6 生態系に害のない害虫防除 「多様性のある農地利用をしている農業は、生物多様性の保全と害虫防除の機能を維持する潜在能力を最も 備えている」(Bianchi et al., 2006)

化学農薬 -- それは環境の生態系バランスを壊し、標的でない生物にも数々の悪影響を与える。ミツバチやその他の 花粉媒介生物の数の減少にも関わっている。農地での天敵による害虫防除を担う益虫をも殺してしまう -- 生態系農 業の方が有利な害虫対策を行えるという証拠が増えているにも関わらず、農薬は現在の農業システムで重要な位置 を占めている。 世界各地で毎年、大量の化学農薬が使用される。世界の農薬貿易高を見ると、その量が過去10年間に明らかに飛躍 的な成長を遂げた28。今日その額は、ほぼ年間 300億USドルに達している(図6)。

図6:世界の農薬貿易 農薬の輸出高は、世界的な農薬使用を映す鏡であり、過去10年で3 倍に増えた。

貿易額(単位: 10 億 USドル/年)

35

世界 欧州 アジア アメリカ アフリカ

30 25

世界

20 欧州

15 10

アジア

アメリカ

5 0 1990

アフリカ 1995

2000

2005

2010

1990年から2012 年における世界の農薬輸出額(単位:10億USドル) 世界の農薬輸出額は農薬消費量を映す鏡である(注28 参照)。出典:FAO Stats, 2015 欧州は世界最大の農薬消費地域ではないが、世界最大の農薬輸出地域である(地域の構成は FAO Stats による)。

42

2015


© Peter Caton / Greenpeace

撒いた農薬のうち、 実際に農作物に達するのは ごく一部にすぎない。 ほとんどは周囲の環境、 つまり土壌、水、大気に 残留する。 43


© Peter Caton / Greenpeace

生態系農業は、 化学農薬を使わずに作物を守る: 農家は、 さまざまな方法を駆使して 有害な化学物質に頼らずに 害虫を制御できる技術や知識を 身につけることができる。 44


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

農地に撒いた農薬のうち、実際に農作物に達するのはごく一部にすぎない。農薬のほとんどが周囲の土壌、水 と大気に拡散する。農薬は標的でない生物にも悪影響を与える。そして周りの環境の生態系バランスを破壊す る (Relyea, 2009, Relyea, 2005, Ippolito et al., 2015)。その影響は重大だ。例えば、現在実行されている農業 の必然的な結果として、世界の陸地の43%で地表水が農薬によって汚染される恐れがある(図 7, Ippolito et al., 2015)。

図7:殺虫剤使用の拡大による水系汚染のリスク、および農業開発に伴う リスク上昇 殺虫剤の散布により、世界の水系の43%が危険にさらされている。

とても低い 低い 中間

とても高い 高い

非農業地区 世界の潜在的農薬リスクマップ。殺虫剤が地表水の生態系に流出する潜在性の空間的分布を示した地図。現在の農業のやり方の結果、世界の 全陸地の43%の地表水が農薬によって汚染される恐れがある。分類における境界 (-3; -2; -1; 0) は以前の研究で使用されたものと同一である (kattwinkel et al, 2011)。灰色の領域はあまり農業活動が行われていない地域である。Elsevier の許可を得て、Environmental Pollution, 198, Ippolito, A., Kattwinkel, M., Rasmussen, J. J., Schäfer, R. B., Fornaroli,& Liess, M., Modeling global distribution of agricultural insecticides in surface waters, 54-60ページ, Copyright (2015), より転載。

最近の科学的分析によって、特定の化学農薬が花粉媒介生物の数の世界的な減少の原因の一つであるという見方 が強まってきた(EASAC 2015, Tirado et al., 2013 の参考文献も参照されたい)。花粉媒介生物の個体数を健 全に保つことは、生態系および経済的観点から重要であり、ハチに被害を与える農薬の使用を緊急にやめる必要 がある。別の研究によれば、ミツバチなど約23種のハナバチと花に寄るスズメバチがイギリス(ブリテン島)で 全滅し、その原因は農業の集約化と深く関わりがあるとしている (Ollerton et al., 2014) 。 化学農薬は、農場において自然に害虫をコントロールしている益虫も殺してしまう。これが、化学農薬が農作物 の被害を防ぎにくくしている一つの理由である。その結果は、害虫と病害による被害の増大である。そして長期 的には化学物質を利用して生産力を増強する農業は、害虫による悪影響を受け易くなり、それに合わせてさらに 効力の強い農薬が必要になる。こうして、我々は「止めどない農薬使用の罠」に陥るのである。

45


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

「止めどない農薬使用の罠」は農家に多額の負担をかけており、低所得の農家にとって特に負担が大きい。これ は容易に陥りやすく、一度はまるとほぼ抜け出せなくなる。しかも、農業システムを通して有害化学物質の量が 増えるため、我々すべてがより高いリスクにさらされることになる。 生態系農業は、化学農薬を使わずに農作物を守る。有害化学物質を使わずに害虫のコントロールを可能にするさ まざまな方法がある。 農家は、農地に多様な作物を栽培して地域で利用可能な低コストの技術を使用することで、害虫問題に対する長 期的な解決策を見つけることができる。生態系と共存した害虫対策は、農業生態系の「抵抗力」を高め、健全な 土壌と健全な植物を育てることに基づいている (Altieri and Nicholls, 2005) 。害虫による被害を減らし(例:害 虫被害に耐えるよう多様な作物を植える)、害虫の増殖に対する脆弱さを克服する(例:生態系の多様性を高め 天敵が増えるようにする)といった農業生態系を構成することにより、農家は害虫の数を大幅に減らすことがで きる (Gardiner et al., 2009, Crowder et al., 2010, Turnbull and Hector, 2010) 。 生態系農業の害虫対策の中心は、生態系の多様性と共存した農業を行うことにある。生態系農場に典型的な豊 かな多様性(種が豊かで偏りがない)システムは、天敵によって自然の害虫コントロール機能を高めている。 化学農薬を使用する農場よりもはるかに強い害虫コントロール機能が、生態系農場に備わる結果となっている (Turnbull and Hector, 2010, Crowder et al., 2010, Krauss et al., 2011) 。さらに多様性をもたせた農業シス テムは、受粉作用の増加にも繋がっている (Kremen and Miles, 2012) 。 ドイツの穀類畑では、慣行農業の畑と比べて、有機農業の畑の花粉媒介生物の種類は20倍、個体数では100倍 にも及ぶことが明らかになった。「その一方、穀類の害虫のアブラムシの個体数は、有機農業の畑で 5分の1であ り、アブラムシを捕食する天敵の個体数は有機農業の畑で3倍多く、有機農業では生物学的害虫コントロールの潜 在力が大幅に高いことを示している。」(Krauss et al., 2011) 研究課題の主流は、ここ数十年間、化学的害虫コントロールに焦点をあててきた。しかし、特定の害虫問題への 対処として、アグロエコロジーによる特定の害虫対処についての有効な方法に関する研究は数多くある。 生態系農業は、状況に応じて適用でき、エコロジカルな害虫制御としてさまざまなアプローチがある。その基本 的な方針は、自然の力を活かした害虫制御について、害虫の被害に対する保険として生態系の多様性を高め維持 することにある。これには、農業システム全体の再構成が必要となる (Tittonell, 2013) 。産業的な単一栽培に典 型的に見られる遺伝子的に均一な作物の栽培は、害虫対策としては短絡的な戦略である。普通、害虫の進化は人 間による品種改良などよりも速く、害虫に強い品種を開発して栽培するということ自体は長期的な戦略とはいえ ない。生態系の多様性を、栽培品種レベルから農業地域まで全ての規模で組み込むことが、害虫制御として効果 的であり、持続可能な最も有望な戦略であることを裏付ける研究は増え続けている。 農場規模でのエコロジカルな害虫対策の過程を管理するために、5段階レベル別にアプローチ(図8を参照)が 提案されている (Forster et al., 2013)。このモデルでは、間接的に、しかし効率的に害虫から農作物を守るため に、生態系の多様性を農業システムに組み込むための最初の3段階に最も重点を置いている。

46


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

図8:農場規模で害虫対策をする5段階アプローチ 生態系農業において害虫対策は、以下の5段階に要約されるレベル別のアプローチに基づいて いる(段階 1 から3:さまざまな規模での生態系の多様性に基づく)。 基本は段階1 から3の予防対策を重視し、より直接的な対応手段は後の段階になってのみ、 そして必要な場合のみに適用される(段階 4 と 5:生物防除やその他の生物農薬)。

予防的、間接的な害虫管理 1

2

3

環境保全

栽培の方法

機能的な生態系の多様性

畑以外のエリアの生態系の多様 性を豊富にし、農業地域のなか で作畑用地とそれ以外の土地の 生息環境をつなぐ。

輪作、土壌の養分の強化、生育条 件に適した耐久性のある栽培品 種を選ぶ。農地の中での栽培箇 所を選ぶ。

農地の中での植生を管理し、有益 な作用をもたらす競合的な種を 増やす。

課題対応的、直接的な害虫管理 4

5

栽培の方法

その他

有益なバクテリア、ウィルス、昆 虫、線虫を放ったり局所的に菌 を植えつけるなど。

生物由来または天然鉱物由来の 承認済み殺虫剤の使用、交配の 阻害、物理的対策。

出典:Forster et al. 2013 の「Hernyk Luka, FiBL 2012 により修正されたWyss et al. (2005) and Zehnder et al. (2007) の概念に 基づいた、有機農業における節足動物害虫管理の5段階アプローチ。」に基づく。

47


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

これらが農業から化学農薬を廃止していくのに必要な最も本質的な方法である。最後の手段として、そして生態 系多様性を高めるという基本の次に大事なものとして、農家にとって緊急性の高い場合に害虫に対処できるよう な生物防除剤、生物農薬、およびその他の化合物がある。 以下は生態系の多様性に基づいたエコロジカルな害虫対策の成功例である。 • 1998年から1999年における中国の科学者と雲南省の農家による独自の共同プロジェクトでは、細菌によっ て起こる深刻な稲の病気であるイモチ病とのたたかいで生態系の多様性が有益であることが実証された (Zhu et al., 2000 ) 。中国の何千という農場で違った稲の品種を育てることで、例えば抵抗力のある品種と交互に 植えた場合、単作された場合と比べて、病気に感染しやすい稲の品種が89%高い生産高を達成し、病気にか かった割合は94%も低かったのである。2年にわたるプロジェクトの終わりまでに、殺菌スプレーはもはや 使われなくなっていた。このアプローチは、巨大アグリビジネスが植物の遺伝子にのみ焦点をあてて、農業 全般に推し進めつつある極端な単一栽培を、完全に逆行させたものといえる (Zhu et al., 2000, Zhu et al., 2003, Wolfe, 2000) 。 • [稲+アヒル+魚]農法、[稲+魚]農法、また、これに加えて時にアカウキクサに付随する窒素固定細菌 (Anabaena azollae) )をも活用する方法は、生態学的に密度の高い水田生態系を創り出しており、東南アジ アの多くの地域でその持続可能性が証明されている。稲の単一栽培(モノカルチャー)から[稲+アヒル+ 魚+アカウキクサ]を使う複合栽培(ポリカルチャー)へ移行することにより、米の生産高では2倍以上の結 果となり、同時に相当量の動物タンパクを供給することとなった (Khumairoh et al., 2012) 。この複合的な 農法にはさらに、効率的で無農薬の雑草と害虫コントロールや、栄養網が多様化していることによるメタン (非常に強力な温室化ガス)放出の減少といった恩恵がある。 • アフリカでは国際昆虫生理生態センター (Centre of Insect Physiology and Ecology, ICIPE) の科学者が、 化学物質を使わずにトウモロコシの害虫(茎に穴を開ける蛾)に対抗するコストパフォーマンスの高いプ ッシュ・プル法を考案した。トウモロコシ畑の境界線に植えられた草(ネピアグラスとスーダングラス) が害虫を惹きつけることでトウモロコシから遠ざけ(プル効果)、トウモロコシと交互に植えられた2種類 の植物(トウミツソウと2つのハギ属マメ)が作物から害虫を撃退する(プッシュ効果)というものである (Hassanali et al., 2008, Khan et al., 1997, Khan et al., 2011) 。プッシュ・プル法を使用する農場では蛾の 被害が 40% ~ 90%少なくなり、トウモロコシの生産高は単一農場と比べると平均で 50%伸びた。さらに、 例えば蛾とストライガ(withchweed 寄生植物)の両方に悩まされていた降雨量の少ないスバ地区では、牛 乳の生産が増加している。これは、ネピアグラスとスーダングラスから生産される飼料で飼育する乳牛の数 を増やせるようになったからである。経済的には、ケニアの4つの地区で7年間にわたり、1ヘクタールあ たりの平均的な経済的利益は単一栽培農場よりもプッシュ・プル法を使用する農場のほうが 74% 高くなっ ている (Hassanali et al., 2008) 。29 • ケニア西部における最近のグリーンピースの研究では、農薬を使用しないプッシュ・プル法の害虫対策に より、小自作農であるトウモロコシ農家の純利益がほぼ3倍に増加したことを示している。これは、より 高い生産高と栽培コストの低下(化学肥料や農薬の使用なし)によるものである。プッシュ・プル法を使 用したトウモロコシの平均生産高は、プッシュ・プル法を実践していない農場のおおよそ2倍であった (Greenpeace Africa 2015)。 • インドのアーンドラ・プラデーシュ州ではここ数年、無農薬の農業革命が起きている。地元で手に入る資源 と、現代の科学で補完された地元の農法とに基づいた農薬を使用しない農業へのアプローチは、農家に生態 系と経済の両面で利益をもたらした。化学農薬を使わずに作物への被害を10%~15%減少させることができ

48


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

るので、植物を保護するコストは低い。いくつかの村の小さな成功は150万ヘクタール以上へと拡大し、こ の州の18の地区、1800の村の35万人の農家が恩恵を受けている。50 の村が無農薬となり、7の村が完全 に有機農業となった (Ramanjaneyulu et al., 2008)。インドでのこの成功のもう一つの例は、乾燥地農業 中央研究所 (Central Research Institute of Dryland Agriculture, CRIDA) の研究による遺伝子組み換え Bt 綿 30 と非組み替え綿における無農薬管理の実績である。この研究は、農薬を使用/不使用いずれの Bt 綿 よりも無農薬栽培の非組み替え綿の栽培の方が、経済的に優位であることを示していた (Prasad and Rao, 2006) 。 • フランスで最近行われた実験では、除草剤の使用を70%減少させたり、完全に除草剤なしで雑草管理をし た栽培の方が、雑草を少なく抑え、高い生産高を維持できることが証明された。物理的に雑草を取り除く 技術や、雑草種子バンク (weed seed bank) を準備しておくことが効率的であると証明されている。しか し、これは農家にとって時間のかかる作業なので、初めて導入するときにはサポートが必要な場合がある。 環境影響が低いことや利益が高いといった利点を考えれば、こうしたサポートを提供する意義は十分あると いえる (Chikowo et al., 2009) 。 半自然生息地と耕作地がモザイク状に入り組んでいる複雑な地勢の場合は、半自然生息地がほとんどない単純な 地勢よりも天敵昆虫にとって 74%有利である (Bianchi et al., 2006) 。草原、草や木が茂った生息地では、いず れも天敵の密度が高い。この報告は温暖な地域(北アメリカやヨーロッパ)に焦点をあてているが、著者は「生 態系の多様性と害虫コントロールの関係の基本的なメカニズムは、一般性があり、他の地域においても重要であ る」としている (Bianchi et al., 2006) 。 無農薬技術に関するさらなる研究と開発に加えて、専門家らは、公的機関が農家に対して効率的な科学的な支 援や技術的情報の伝達を適切な方法で行うことが急務であることに同意している (Van den Berg and Jiggins, 2007) 。東アフリカでの最近の分析では、持続可能な農業の実践のために設立された農民学校 (Farmers Field School) に参加することで所得を61%増加させたという結果が出ている。こうした傾向は特に、女性、読み書き に困難のある農業労働者、そして中規模の広さの農場を持つ農家の間で顕著にみられた (Davis et al., 2012b) 。 アジアでの農民学校 (Farmers Field School) は、技術的知識と農家の知識とのつながりを強化することが潜 在的かつ緊急に必要であることを明らかにしている。これらの取り組みのプラスの効果は、特に生態系農業 の実践を対象とした場合、際立っている。例えば、フィリピンの玉ねぎの栽培者の中で、農民学校 (Farmers Field School) に参加して化学物質を使わない害虫抑制について学んだ農家は、化学農薬の使用を減らす知識を 総括的に利用した技術を学ぶプログラムに参加しなかった慣行農家よりも農薬のコストを大幅に減らすことが できた(約Ph 5,000、約100ユーロ少ない)(Yorobe Jr et al., 2011) 。 ベトナムでのクリエイティブな取り組みとしては、稲作農家が楽しみながら農薬の使用を減らす技術教育を受け ることができるようメロドラマ仕立てのラジオ番組が製作された。ドラマシリーズの放送後、農家の使う殺虫ス プレー剤は 31%減った。稲の生産高は増加し、農薬をほとんど使用しなかった農場主の割合は2倍にもなった。 この効果は、ドラマシリーズを聴いた農家(農薬使用の減少とより高い生産高を示した)と聴かなかった農家の 比較において明白となった。この例では、メロドラマは農家を巻き込む参加型プロセスにより企画され、現場で も多くの活動場面で農家がサポートした。このイニシアチブは農薬に関する慣行と見方に変化をもたらし、多く の賞を受けることとなった (Heong et al., 2008) 。

49


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

7 気候変動に強い食料生産 「回復力に富む農業生態系は、厳しい干ばつや降雨量の大幅な減少に見舞われても、食料生産などの生命の 維持に必要な機能を提供し続けるだろう。」(Holling 1973)

農業にはストレスがかかっている。 気候の危機は既に地球のあらゆる地域で状況を悪化させているからだ。この先 の数十年は、不安定な天候や見たことのない異常気象が当たり前となってくるだろう。エネルギーシステムの不確 実性や商品市場もこの図に寄与していると言える。この状況に対して、より回復力のある農業システムを築かなけ ればいけない。この必要性への一致した意見は今、高まりつつある。そして、生態系農業はその答えの大部分を提 供してくれる。 回復力とは、外的条件の劇的な変化(天候、害虫、市場価格等)に耐え、それから立ち直ることができる能力であ る。脆弱性とは正反対の性質である。 回復力を重視した思考とは、農業生態系とそれに頼る人々の適応力を高めることでリスクを減少させることに重点 を置き、農家が不確実性と変化に対処しつつ、現在と将来の食料ニーズを満たせるようにする (Adger, 2003) 。こ れは、生産力を高めることのみに焦点をあてている現在の高リスクを伴うシステムとは非常に異なっている。 国連のタスクフォースは、変化する気候や不安定な市場において、小自作農の生計と長期の食料安全保障をサポート するためには回復力を高めることが重要であると強調している(FAO, UN High Level Task Force on the Global Food Crisis, UN Commission on Sustainable Development, UN Special Rapporteur on the Right to Food (United Nations, 2008, Commission on Sustainable Development, 2008, De Schutter, 2008, FAO, 2008) )。 生態系農業は、さらなる回復力を持つ農業システムを可能とする。具体的には、以下の方法で達成できる。 1 農業生態系における遺伝子・種のレベルでの生物の多様性を確保すること。これは、土壌の生物多様性(自然

の制御システムとして作用するものや、ハチのような花粉媒介生物を含む)、昆虫相の多様性、作物の多様 性、食料と栄養の種類の多様性を含む。これはまた、植物、昆虫、土壌生物相等の多様性を減少させる化学農 薬や化学肥料の使用などを抑制することを意味する。生物多様性があれば、その地域の生態系が、外的な劇的 変化による衝撃を吸収し、変化に適応することができる。

2 適切な栄養摂取を促進するよう食の多様性を確保するため、食料源の多様性を確保すること。これには、都市住

民の世帯レベルで食料の自給自足の可能性を高め、より良い栄養摂取のために、都市農業を推奨するような都市 計画システムづくりなどが挙げられる。農村では、食用作物や動物性タンパク質など複数の食料源を持つ多様な 農地活用が、地域レベルの食料安全保障を強化する。

3 農 村の人々の生計をサポートするような社会・経済的システムを構築する。拡大できるものの例としては、地元

生産者の市場の促進、コミュニティにサポートされた農業プログラム、消費者と生産者の再連結、イギリスに見 られるサステイン・イニシアチブ (Sustain’ initiative) などの地元の生態系農場からの生産物の公的調達、病院 と地元の農家との連携、農場と学校のプログラムなど多岐にわたる。

4 農業コミュニティの災害対策に栽培を組み込む。例えば、コミュニティ種子バンクや世帯の種子バンクネット

ワークを通して種子を保証するシステムを持つ、または災害後の復興中に分配できるような種子を蓄えておく、 などが考えられる。

5 リスクと不確実性を減少させるため、その地で獲得され農民たちが受け継いできた、地に根ざした知のシステム

(indigenous knowledge) を基に築くこと。

50


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第3節

農業の適応戦略の中心は、遺伝子の多様性を維持し、コミュニティに基づいた自然資源の管理を促進することに ある (Jarvis et al., 2011) 。 私たちの現在の食と農業システムは、専門家が推奨するような緩和と適応戦略を取り入れるように整ったものと は程遠い (Smith et al., 2013) 。従来型の農業における現在の作付体系は、安定した気候と理想的な条件を必要 とし、狭義の土地と気候の範囲で健康に育つ、非常に特殊化した作物の栽培品種に適合している。また、コスト のかかる化学薬品の使用に頼ることにもなる。農民は通常「前借り」の枠を使ってこれらを購入し、利子を合わ せて返済できるぐらいの高い利益が出ることを期待している。工業型農業のシステムは通常、種子の遺伝子的多 様性に欠ける単作であり、大きな土地一面を使って行われるため生態系の多様性をほとんど残らない。だが、そ の多様性こそが、害虫対策、受粉、栄養循環、水のろ過、気候への適応を含む複合的な生態系サービスの鍵なの である (Cardinale et al., 2012) 。 生態系農業は、限られた水資源で対処できる地域固有の能力を活かして食と農業システムを築くことにも貢献で きる。地球規模の回復力を確保するには、(ある研究グループの言葉によると)農業システムは「将来の生産性 を強化する重要な鍵として、天水農業において土壌が蓄えた水 31 を使用する、という未開拓の機会に投資するこ とが必要である。水の介入に関しては、土壌に蓄えられた水と川、湖、ダムからの水を含めたより革新的なオプ ションが、地勢レベルで必要となっている。」(Rockström and Karlberg, 2010) 。このような革新の一つとし て、コストの低いソーラー灌漑ポンプを使用した非集中的、分散型の灌漑がサハラ以南のアフリカで開発の優先 事項となっている (Burney et al., 2010) 。 世界中の約1万人の科学者とスタッフが関与する国際農業研究協議グループ(Consultative Group on International Agricultural Research (CGIAR))の気候変化、農業と食料安全保障(Climate Change, Agriculture and Food Security (CCAFS))に関するプログラムは、天候パターンと気候の変化に直面した今、 農民にとって、非常に低い技術でできる適応と緩和の戦略が必要不可欠であるとの認識をもっている。32 ほとんど とまではいかなくても、多くの適応オプションは完全に新しい技術としてではなく、既存の農法や持続的農業の 上に築くことが可能である (Jarvis et al., 2011) 。 耕作地に樹木を組み込んでいく方法(アグロフォレストリー(農林複合))や、農場をより多様にする方法、伝統 的な乾燥耐性の植物育種などはすべて、将来の気候的衝撃を緩和する効果的な対策を見出すために有望な全体的 (holistic) なアプローチとして知られている (Beebe et al., 2008, Jarvis et al., 2011, Akinnifesi et al., 2010) 。 農場が干ばつに対処する上で、健全な土壌を築くことは有用かつ必須の要素である (Pan et al., 2009, Sharma et al., 2010, Mulitza et al., 2010) 。現在、農場主が今すぐにも実践できると証明された方法が多数ある。風や 水による侵食から土壌を保護する作物と、作物の収穫残渣、マメ科植物の間作、有機物が豊富な土壌を育てる肥 料や堆肥、土壌構造の強化などはすべて、水分浸透の増加を助け、水分が一度入るとそこに蓄えられ、植物が栄 養素によりアクセスしやすくする方法である (Fließbach et al., 2007, Mäder et al., 2002) 。人間の食料を供給 し、生態系の回復力を確保するには、貧しい農民が水と土壌の維持に関する今日のノウハウを駆使して天水農業 地域での生産性を上げられるようにすることが必要不可欠である。 生態系の多様性を活用し、化学物質の集中投入ではなく知や経験の集積に根ざした生態系農業の農場は、より乾 燥し不安定になってゆく気候のもとで最も回復力のある選択肢である。

51


農業危機は、 食べ物と農民に 直結している。 そして、私たち一人一の 日々の食卓の選択に 関わっている。

52

© Peter Caton / Greenpeace

03


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第4節

04 結論:生態系農業を通して 食を取り戻す 壊れた食のシステムを、人間中心に考えたエコロジカルな食料システムへ変えるために、私たちに何ができるだ ろうか? 毎日、少なくとも一日三回、我々は「何を食べようか?」と考える。 飢餓に苦しむ約10 億人の人々にとってこれは、答えようのない辛い問いである。 だが、何を食べるかの選択肢がある幸運な人々にとっては、行動をとる機会であり、必要な変化を起こす機会でも ある。 世界に起きている多くの不公正な状況とは異なり、食料システムの破綻は、私たちの身近にある。毎日、しかも 一日に数回、感じ、触り、匂いをかぎ、口にしているのである。私たちが口にする食料に関することであり、そ れを育てる人々のことであり、どのように育てているかということなのである。農業の危機とは食と生産者の危 機でもある。そしてまた、一人一人が毎日何を食卓に載せるかということに関わっているのである。つまり、マ イケル・ポーランがうまく言葉にしたように「食べることは政治的行動なのである。」33 市民、消費者、または単なる食事をする側として、私たちができることのリストは長く、興味深いものとなって いる。 まず、どの食料をどこで買うか、無駄を減らし、肉の消費を減らすことから始められる。食料を生産する生産者 を知り、話を聞き、私たちが口にする食料を育てる情熱に触れることは、私たちがまずできることである。生産 者が直接売っている場(ファーマーズマーケットや直売所、イベントなど)に立ち寄ったり、新鮮な農産物を生 産者から直接購入したりすることは、我々の食料は誰がどこでどう育てているのか、具体的に顔の見えるように する簡単な方法である。また、持続可能な食の選択のヒントやレシピをたくさん紹介してくれている著名なシェ フたち、たとえばジェイミー・オリヴァー 34、マイク・タトゥンサルトゥ 35、アキレス・チャベス 36 などの魅力 的な食を参考にして、私たちの食生活を変えていくこともできる。。 その次は、家で堆肥を作成したり、学校や市町村に、残飯を最少化した上で生ごみ堆肥を作るように頼むことも できる。堆肥作りは、ごみを、土壌を豊かにし生命を育む力を高める貴重な資源に変換する作業である。これ は、食料システムと土壌を、よりよい未来のために作り変える可能性のある作業でもある。 最後に、食料を自分たちで育てることもできる。バルコニーやテラスにハーブを植えることからはじめてもいい し、都市農業や近所の庭園に参加したり、子供たちの学校に菜園を作ったりすることもできる。始める方法は簡 単なものから大がかりなものまで様々だ。37 食料を育てる小さな行動はいずれも、やりがいや、多くの気づきに満 ちている。自分たちで食料を育てることは、水と太陽と土とが生命を育む食を授けてくれる神秘に一歩近づく行 為である。これだけでも食料システムを変えるために必要な最初の画期的なステップと言える。

53


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

第4節

食料システムを消費者と生産者の手に取り戻し、健康な食のためのムーブメントに加わる簡単な例は www.iknowwhogrewit.org(英語)で紹介されている。 一方、政策や民間部門といったレベルでは、より多くの行動が必要である。 グリーンピースは、民間企業、政府、資金供与者や慈善事業に対して、農業への投資を増やし、かつ政策的支援 を工業型農業から生態系農業へと移すことを求めている。 具体的にはたとえば、政府が農地で潜在的に有害な化学物質の幅広い使用を認可したり、助成したりするのをや めることなどである。ヨーロッパでは、科学者らが影響を指摘したことに加え、大勢の市民による、ミツバチそ の他の花粉媒介生物を有害な農薬から救うムーブメントのおかげで、EUはミツバチに有害な農薬の使用に制限を かけ始めている。38 補助金やや慈善事業が工業型農業に資金を提供すれば、現在の破綻した食料システムに拍車をかけることにな る。これはもうやめるべきである。世界中の力強い生態系農業の例(そのいくつかはこのレポートに要約されて いる)は、現実の、非常に実現可能性の高い代替選択肢が既に各地で実践されていることを示している。 しかし、生態系農業とアグロエコロジーが拡大していくにはサポートが必要となる。今現在、アグロエコロジー には世界の農業研究開発の分野の資金のうち、約5%しか配分されていない。残りの95%の資金は、現在の破綻 し、環境を害する不公正な食料システムとそれをコントロールする一握りの人々を存続させ、保護するために費 やされている。39 生態系農業は、地球環境を守ると同時に、全ての人々のために健全でおいしい食べ物を生産す るための、より良い、進歩的な代替手段を提供する。 ここ何年かの間に、アフリカは工業的農業を拡大する新しい開拓地と見られるようになってきた。G7の食料安 全保障及び栄養のためのニューアライアンス (New Alliance for Food Security & Nutrition) のようなイニシア チブや、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のような財団は、小規模自作農や田舎のコミュニティのニーズよりも、農 業関連産業の大企業が利益を受ける工業型農業のモデルを促進しているようである。グリーンピース・アフリカ は、生態系農業の経済的価値を援助資金供与者やその他の農業開発関連の基金に説明し40、生態系農業に投資す るように勧めている。化学物質の使用ではなく農家の知識やスキルに投資することにより、経済的福祉や食料保 障の改善をはかることができる。つまり、政府は、かけた費用よりも価値の高いものを手に入れ、かつ貧困緩和 という目標に向かって前進することとなる。41 地球規模の破綻した食料システムを変えるには、我々すべて(消費者も、食に関心の高い人も、生産者も)が、 生態系農業を既に実践している生産者をサポートし、資金提供先や、政府の方針も生態系農業支援へと転換する よう求めるなどして、生態系農業を支援し、世界中で生態系農業の理解を促進する必要がある。 グリーンピースは現在、ヨーロッパ、メキシコ、アルゼンチン、東アフリカ、インド、中国、日本、ブラジル、 フィリピンでより良い食料システムをサポートする農業政策と資金提供のための活動を行っている。生態系農業 に対するより大きな支援を呼びかけることはどこにいても可能である。 農村や社会、消費者のムーブメントや、環境NGO、研究者たちは、地球の生命の多様性を保護、維持、回復す る食料システムをつくるという共通のビジョンの下に次第に団結していっている。目指すのは、基本的な人間の ニーズを満たす安全で健全な食料を育てられるシステムであり、多国籍企業ではなく、地元のコミュニティに食 料と栽培が任せられるシステムである。それはすなわち、農家をはじめ人を中心におき、我々全員が参加できる システムなのである。あなたもムーブメントに参加しましょう!

54


© Peter Caton / Greenpeace

地球規模の 壊れた食料システムを変えるには 私たち全員(消費者、食べ物を愛する人、農民) が、生態系農業を実践している農民を サポートし、生態系農業の後ろ盾となる 必要がある。

55


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

用語集

用語集 定義と略語 農業多様性

料と農業に直接・間接的に使われる動物、植物、微生物の多様性と変異性を指し、農 食 作物、家畜、森林、水産を含む。食料、飼料、繊維、燃料、薬剤に使用されるさまざま な遺伝子的資源(種、系統)や種類から構成される。また、生産を支えるが収穫対象で はない種(土壌微生物、捕食者、花粉媒介生物)、農業生態系(農場、田園、森林、水 42 棲)を支えるより幅広い環境に存在する種、農業生態系の多様性も含む。

アグロエコロジー

グロエコロジー(農業生態学)は、すべての相互作用と機能(すなわち、食料生産だ ア けでなく、栄養素の循環や回復力その他の機能や関連性も)視野にいれて、農業を生態 系として研究する科学の分野である。

アグロフォレストリー

林を含めた複合的な農業。グリーンピースは、IAASTDのレポートに含まれる次に示 森 す混農林業の定義に従う。「農場内と地勢の樹木を統合することで、あらゆるレベルで 土地利用者がより高い社会的、経済的、環境的恩恵を受けるように生産を多様化して持 続する、動的で生態学に基づいた自然資源管理システム。混農林業は、農場で育てられ る樹木や田舎の地勢で育てられる樹木の幅広い機能に焦点をあてる。その中には、土地 再生、健全な土壌と食料安全保障のための肥料樹木、栄養のための果樹、小自作農の家 畜生産を向上する飼料樹木、住まいやエネルギーのための材木や薪、病気と闘うための 薬効のある樹木、ゴム、樹脂、ラテックス製品を生産する樹木などがある。これらの樹 木の多くは多目的であり、社会的、経済的、環境的恩恵を提供してくれる。」

CGIAR

Consultative Group on International Agricultural Research 国際農業研究協議グ ループ。将来の食料安全保障に関する研究に従事する組織が連携した世界的な組織。43

化学物質集約的

の農業モデルは、化学肥料や農薬を大量に使用することが特徴である。多くの化学物 こ 質を投入するた農業は、緑の革命と呼ばれる動きや、人間と環境に対する(藻類の異常 繁殖による酸欠状態から農民や農場労働者の中毒まで)多くの悪影響との関連が幅広く 挙げられている。

(農林複合)

援助資金供与者 援助資金供与者は幅広く定義されており、二国間の国際開発支援を提供する政府、多国 間の金融機関、慈善団体、国際的(国連)の開発組織などがある。 生態系農業

56

態系農業は、土壌、水、気候を保護することで、今日と未来の健全な農業と食料を確保 生 する。生態系の多様性を促進し、化学物質や遺伝子組み換えされた植物種などで環境を 汚染しない。生態系農業は、生産高や収入の増加を目的とした広範囲の作物/家畜管理 システムを含み、外的物質の投入を最小限に抑えつつ、地元の自然資源の持続可能な活 用をする。


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

用語集

FAO

Food and Agriculture Organization 国連の食料農業機関。

IAASTD

International Assessment of Agricultural Knowledge, Science and Technology for Development 開発のための農業技術評価会議。IAASTDは政府間 のプロセスとして立 ち上げられた。FAO、GEF、UNDP、UNEP、UNESCO、世界銀行、WHO の共同のもと 複数のステークホルダーにより運営されている。

有機栽培

プッシュ・プル法

機栽培は、化学肥料、化学農薬の使用による病虫害対策を避けて作物生産を行うシ 有 ステム。国際有機農業運動連盟 (International Federation of Organic Agricultural Movement, IFOAM) は有機農業を「有機農業は、土壌・自然生態系・人々の健康を持 続させる農業生産システムである。それは、地域の自然生態系の営み、生物多様性と循 環に根差すものであり、これに悪影響を及ぼす投入物の使用を避けて行われる。有機農 業は、伝統と革新と科学を結び付け、自然環境と共生してその恵みを分かち合い、そし て、関係するすべての生物と人間の間に公正な関係を築くと共に生命(いのち)・生活 (くらし)の質を高める。」と定義している。 ッシュ・プル法は、作物に被害を与える寄生的雑草や害虫をコントロールするため プ の、生態系農業の一形態である。化学農薬は一切使用しない。たとえば、食用作物(ト ウモロコシ、モロコシ、稲)と交互に植えられ たマメ科のハーブであるヌスビトハギ属 からの揮発性成分が、トウモロコシに穴を開ける蛾を撃退する(プッシュ)。一方、境 界線のネピアグラスからの揮発性薬品が蛾を惹きつけ、作物でなくグラスに卵を産み付 けることになる(プル)。ヌスビトハギ属はまた、土壌肥沃度を向上させるので、寄生 植物であるストライガ草対策にもなる。プッシュ・プル法は小規模農民にとって手ごろ な栽培技術であり、生産高を上げるだけでなく、動物の飼料(ネピアグラス)を提供も してくれる。これにより、牛乳の生産高が上がる。

57


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

参考文献

参考文献 Adger, W. N. 2003. Governing natural resources: institutional adaptation and resilience. In: Negotiating Environmental Change: New Perspectives from Social Science, F. Berkhout, et al. (eds.), Cheltenham: Edward Elgar. 193-208. Ajayi, O. C., Akinnifesi, F. K., Sileshi, G. & Chakeredza, S. 2007. Adoption of renewable soil fertility replenishment technologies in the southern African region: Lessons learnt and the way forward. Natural Resources Forum, 31: 306-317. Akinnifesi, F. K., Ajayi, O. C., Sileshi, G., Chirwa, P. W. & Chianu, J. 2010. Fertiliser trees for sustainable food security in the maizebased production systems of East and Southern Africa. A review. Agronomy for Sustainable Development, 30: 615-629. Altieri, M. A. 1995. Agroecology: the science of sustainable agriculture, Westview Press. Altieri, M. A. & Nicholls, C. I. 2005. Agroecology and the Search for a Truly Sustainable Agriculture, United Nations Environmental Programme, Environmental Training Network for Latin America and the Caribbean. Andersson, J. C. M., Zehnder, A. J. B., Wehrli, B., Jewitt, G. P. W., Abbaspour, K. C. & Yang, H. 2013. Improving Crop Yield and Water Productivity by Ecological Sanitation and Water Harvesting in South Africa. Environmental Science & Technology, 47: 4341-4348. Averill, C., Turner, B. L. & Finzi, A. C. 2014. Mycorrhiza-mediated competition between plants and decomposers drives soil carbon storage. Nature, advance online publication. Badgley, C., Moghtader, J., Quintero, E., Zakem, E., Chappell, M. J., Avilés-Vázquez, K., Samulon, A. & Perfecto, I. 2007. Organic agriculture and the global food supply. Renewable Agriculture and Food Systems, 22: 86-108. Beebe, S. E., Rao, I. M., Cajiao, C. s. & Grajales, M. 2008. Selection for Drought Resistance in Common Bean Also Improves Yield in Phosphorus Limited and Favorable Environments. Crop Science, 48: 582-592. Bianchi FJJA, Booij CJH & Tscharntke T (2006). Sustainable pest regulation in agricultural landscapes: a review on landscape composition, biodiversity and natural pest control. Proc. R. Soc. 273: 1715-1727. Billen, G., Garnier, J. & Lassaletta, L. 2013. The nitrogen cascade from agricultural soils to the sea: modelling nitrogen transfers at regional watershed and global scales. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, 368. Bommarco, R., Kleijn, D. & Potts, S. G. 2013. Ecological intensification: harnessing ecosystem services for food security. Trends in Ecology & Evolution, 28: 230-238. Bouwman, L., Goldewijk, K. K., Van Der Hoek, K. W., Beusen, A. H. W., Van Vuuren, D. P., Willems, J., Rufino, M. C. & Stehfest, E. 2011. Exploring global changes in nitrogen and phosphorus cycles in agriculture induced by livestock production over the 1900-2050 period. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110: 20882–20887. Burney, J., Woltering, L., Burke, M., Naylor, R. & Pasternak, D. 2010. Solar-powered drip irrigation enhances food security in the Sudano-Sahel. Proceedings of the National Academy of Sciences, 107: 1848-1853. Cardinale, B. J., Duffy, J. E., Gonzalez, A., Hooper, D. U., Perrings, C., Venail, P., Narwani, A., Mace, G. M., Tilman, D., Wardle, D. A., Kinzig, A. P., Daily, G. C., Loreau, M., Grace, J. B., Larigauderie, A., Srivastava, D. S. & Naeem, S. 2012. Biodiversity loss and its impact on humanity. Nature, 486: 59-67. Carpenter, S. R. & Bennett, E. M. 2011. Reconsideration of the planetary boundary for phosphorus. Environmental Research Letters, 6: 014009. Chapin, F. S., Zavaleta, E. S., Eviner, V. T., Naylor, R. L., Vitousek, P. M., Reynolds, H. L., Hooper, D. U., Lavorel, S., Sala, O. E., Hobbie, S. E., Mack, M. C. & Diaz, S. 2000. Consequences of changing biodiversity. Nature, 405: 234-242. Chavas, J.-P., Posner, J. L. & Hedtcke, J. L. 2009. Organic and Conventional Production Systems in the Wisconsin Integrated Cropping Systems Trial: II. Economic and Risk Analysis 1993-2006. Agronomy Journal, 101: 288-295.

58


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

参考文献

Chikowo, R., Faloya, V., Petit, S. & Munier-Jolain, N. M. 2009. Integrated Weed Management systems allow reduced reliance on herbicides and long-term weed control. Agriculture, Ecosystems & Environment, 132: 237-242. Clough, Y., Barkmann, J., Juhrbandt, J., Kessler, M., Wanger, T. C., Anshary, A., Buchori, D., Cicuzza, D., Darras, K., Putra, D. D., Erasmi, S., Pitopang, R., Schmidt, C., Schulze, C. H., Seidel, D., Steffan-Dewenter, I., Stenchly, K., Vidal, S., Weist, M., Wielgoss, A. C. & Tscharntke, T. 2011. Combining high biodiversity with high yields in tropical agroforests. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108: 8311-8316. Commission on Sustainable Development 2008. Chairman’s Summary – Part 1. New York: United Nations. Cordell, D., Drangert, J.-O. & White, S. 2009. The story of phosphorus: Global food security and food for thought. Global Environmental Change, 19: 292-305. Cordell, D., Rosemarin, A., Schröder, J. J. & Smit, A. L. 2011. Towards global phosphorus security: A systems framework for phosphorus recovery and reuse options. Chemosphere, 84: 747-758. Costanzo, A. & Bárberi, P. 2013. Functional agrobiodiversity and agroecosystem services in sustainable wheat production. A review. Agronomy for Sustainable Development: 1-22. Coulter, J. A., Sheaffer, C. C., Wyse, D. L., Haar, M. J., Porter, P. M., Quiring, S. R. & Klossner, L. D. 2011. Agronomic Performance of Cropping Systems with Contrasting Crop Rotations and External Inputs. Agronomy Journal, 103: 182-192. Crowder, D. W., Northfield, T. D., Strand, M. R. & Snyder, W. E. 2010. Organic agriculture promotes evenness and natural pest control. Nature, 466: 109-112. Darilek, J. L., Huang, B., Wang, Z., Qi, Y., Zhao, Y., Sun, W., Gu, Z. & Shi, X. 2009. Changes in soil fertility parameters and the environmental effects in a rapidly developing region of China. Agriculture, Ecosystems & Environment, 129: 286-292. Davis, A. S., Hill, J. D., Chase, C. A., Johanns, A. M. & Liebman, M. 2012a. Increasing Cropping System Diversity Balances Productivity, Profitability and Environmental Health. PLoS ONE, 7: e47149. Davis, K., Nkonya, E., Kato, E., Mekonnen, D. A., Odendo, M., Miiro, R. & Nkuba, J. 2012b. Impact of Farmer Field Schools on Agricultural Productivity and Poverty in East Africa. World Development, 40: 402-413. de Ponti, T., Rijk, B. & van Ittersum, M. K. 2012. The crop yield gap between organic and conventional agriculture. Agricultural Systems, 108: 1-9. De Schutter, O. 2008. Building Resilience: a human rights framework for world food and nutrition security. New York: United Nations. De Schutter, O. 2010. Agroecology and the right to food. UN Special Rapporteur on the right to food. http://www.srfood.org/images/ stories/pdf/officialreports/20110308_a-hrc-16-49_agroecology_en.pdf. De Schutter, O. & Vanloqueren, G. 2011. The New Green Revolution: How Twenty-First-Century Science Can Feed the World. Solutions, 2: 33-44. Denison, R. F. 2012. Darwinian Agriculture. How understanding evolution can improve agriculture, New Jersey, Princeton Universtiy Press. Di Falco, S. & Chavas, J.-P. 2006. Crop genetic diversity, farm productivity and the management of environmental risk in rainfed agriculture. European Review of Agricultural Economics 33: 289-314. Di Falco, S. & Chavas, J.-P. 2008. Rainfall Shocks, Resilience, and the Effects of Crop Biodiversity on Agroecosystem Productivity. Land Economics, 84: 83-96. Diaz, S., Fargione, J., Chapin, F. S. & Tilman, D. 2006. Biodiversity loss threatens human well-being. PLoS Biology, 4: e277.

59


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

参考文献

EASAC 2015. Ecosystem services, agriculture and neonicotinoids. European Academies’ Science Advisory Council EASAC policy report 26. http://www.easac.eu/. Elser, J. & Bennett, E. 2011. Phosphorus cycle: A broken biogeochemical cycle. Nature, 478: 29-31. Eyhorn, F. 2007. Organic farming for sustainable livelihoods in developing countries? The case of cotton in India. , Zürich, vdf Hochschulverlag ETH Zürich. http://www.nccr-north-south.unibe.ch/publications/Infosystem/On-line Dokumente/Upload/Eyhorn_ organic_farming.pdf. Fanzo, J., Hunter, D., Borelli, T. & Mattei, F. 2013. Diversifying food and diets: using agricultural biodiversity to improve nutrition and health, Routledge. FAO 2008. Declaration of the High-Level Conference on World Food Security: The challenges of Climate Change and Bioenergy. Rome: Food and Agricultural Organization; World Bank, 2008. FAO 2011a. Global food losses and food waste – Extent, causes and prevention. Rome. http://www.fao.org/docrep/014/mb060e/ mb060e.pdf FAO 2011b. The state of the world’s land and water resources for food and agriculture (SOLAW) – Managing systems at risk. Food and Agriculture Organization of the United Nations, Rome and Earthscan, London. FAO, WFP and IFAD. 2012. The State of Food Insecurity in the World 2012. Economic growth is necessary but not sufficient to accelerate reduction of hunger and malnutrition. Rome, FAO. Finucane, M. M., Stevens, G. A., Cowan, M. J., Danaei, G., Lin, J. K., Paciorek, C. J., Singh, G. M., Gutierrez, H. R., Lu, Y., Bahalim, A. N., Farzadfar, F., Riley, L. M. & Ezzati, M. 2011. National, regional, and global trends in body-mass index since 1980: systematic analysis of health examination surveys and epidemiological studies with 960 country-years and 9·1 million participants. The Lancet, 377: 557-567. Fließbach, A., Oberholzer, H.-R., Gunst, L. & Mäder, P. 2007. Soil organic matter and biological soil quality indicators after 21 years of organic and conventional farming. Agriculture, Ecosystems & Environment, 118: 273-284. Forster D., Adamtey N., Messmer M.M., Pfiffner L., Baker B., Huber B. & Niggli U. 2013. Organic agriculture – driving innovations in crop research. In: Agricultural Sustainability: Progress and Prospects in Crop Reaearch, G.S. Bhuller & N.K. Bhuller (eds.). Elsevier Inc. Oxford, UK. ISBN: 978=-0-12-404560-6. Frison, E. A., Cherfas, J. & Hodgkin, T. 2011. Agricultural Biodiversity Is Essential for a Sustainable Improvement in Food and Nutrition Security. Sustainability, 3: 238-253. Frison, E. A., Smith, I. F., Johns, T., Cherfas, J. & Eyzaguirre, P. B. 2006. Agricultural biodiversity, nutrition, and health: making a difference to hunger and nutrition in the developing world. Food & Nutrition Bulletin, 27: 167-179. Galloway, J. N., Burke, M., Bradford, G. E., Naylor, R., Falcon, W., Chapagain, A. K., Gaskell, J. C., McCullough, E., Mooney, H. A., Oleson, K. L. L., Steinfeld, H., Wassenaar, T. & Smil, V. 2007. International Trade in Meat: The Tip of the Pork Chop. Ambio, 36: 622629. Gardiner, M. M., Landis, D. A., Gratton, C., DiFonzo, C. D., O’Neal, M., Chacon, J. M., Wayo, M. T., Schmidt, N. P., Mueller, E. E. & Heimpel, G. E. 2009. Landscape diversity enhances biological control of an introduced crop pest in the north-central USA. Ecological Applications, 19: 143-154. Garnett, T. & Godfray, C. 2012. Sustainable intensification in agriculture. Navigating a course through competing food system priorities. Food Climate Research Network and the Oxford Martin Programme on the Future of Food, University of Oxford, UK. Gliessman, S.R. 2007. Agroecology: The ecology of sustainable food systems. Boca Raton, Florida, USA, CRC Press.

60


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

参考文献

Greenpeace Africa 2015. Fostering Economic Resilience: The Financial Benefits of Ecological Farming in Kenya and Malawi. http:// www.greenpeace.org/africa/financialbenefits/ Grizzetti, B., Bouraoui, F. & Aloe, A. 2011. Changes of nitrogen and phosphorus loads to European seas. Global Change Biology, 18: 769–782. Guo, J. H., Liu, X. J., Zhang, Y., Shen, J. L., Han, W. X., Zhang, W. F., Christie, P., Goulding, K. W. T., Vitousek, P. M. & Zhang, F. S. 2010. Significant Acidification in Major Chinese Croplands. Science, 327: 1008-1010. Hassanali, A., Herren, H., Khan, Z. R., Pickett, J. A. & Woodcock, C. M. 2008. Integrated pest management: the push–pull approach for controlling insect pests and weeds of cereals, and its potential for other agricultural systems including animal husbandry. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, 363: 611-621. Heong, K. L., Escalada, M. M., Huan, N. H., Ky Ba, V. H., Quynh, P. V., Thiet, L. V. & Chien, H. V. 2008. Entertainment‚ education and rice pest management: A radio soap opera in Vietnam. Crop Protection, 27: 1392-1397. Holling, C. S. 1973. Resilience and Stability of Ecological Systems. Annual Review of Ecology and Systematics, 4: 1-23. IAASTD 2009. International Assessment of Agricultural Science and Technology for Development. Island Press. http://www.unep.org/ dewa/agassessment/index.html. IPCC, 2014: Climate Change 2014: Impacts, Adaptation, and Vulnerability. Part A: Global and Sectoral Aspects. Contribution of Working Group II to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Field, C.B., V.R. Barros, D.J. Dokken, K.J. Mach, M.D. Mastrandrea, T.E. Bilir, M. Chatterjee, K.L. Ebi, Y.O. Estrada, R.C. Genova, B. Girma, E.S. Kissel, A.N. Levy, S. MacCracken, P.R. Mastrandrea, and L.L. White (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, 1132 pp. Ippolito, A., Kattwinkel, M., Rasmussen, J. J., Schäfer, R. B., Fornaroli, R. & Liess, M. 2015. Modeling global distribution of agricultural insecticides in surface waters. Environmental Pollution, 198: 54-60. Isbell, F., Reich, P. B., Tilman, D., Hobbie, S. E., Polasky, S. & Binder, S. 2013. Nutrient enrichment, biodiversity loss, and consequent declines in ecosystem productivity. Proceedings of the National Academy of Sciences, Published online before print. 10.1073/ pnas.1310880110 Jacobsen, S.-E., Sørensen, M., Pedersen, S. M. & Weiner, J. 2013. Feeding the world: genetically modified crops versus agricultural biodiversity. Agronomy for sustainable development, 33: 651-662. Jarvis, A., Lau, C., Cook, S., Wollenberg, E., Hansen, J., Bonilla, O. & Challinor, A. 2011. An integrated adaptation and mitigation framework for developing agricultural research: synergies and trade-offs. Experimental Agriculture, 47: 185-203. Khan, Z., Midega, C., Pittchar, J., Pickett, J. & Bruce, T. 2011. Push-pull technology: a conservation agriculture approach for integrated management of insect pests, weeds and soil health in Africa. International Journal of Agricultural Sustainability, 9: 162-170. Khan, Z. R., Ampong-Nyarko, K., Chiliswa, P., Hassanali, A., Kimani, S., Lwande, W., Overholt, W. A., Overholt, W. A., Picketta, J. A. & Smart, L. E. 1997. Intercropping increases parasitism of pests. Nature, 388: 631. Khumairoh, U., Groot, J. C. J. & Lantinga, E. A. 2012. Complex agro-ecosystems for food security in a changing climate. Ecology and Evolution 2, 1696–1704. Kramer, S. B., Reganold, J. P., Glover, J. D., Bohannan, B. J. M. & Mooney, H. A. 2006. Reduced nitrate leaching and enhanced denitrifier activity and efficiency in organically fertilized soils. Proceedings of the National Academy of Sciences, 103: 4522-4527. Krauss, J., Gallenberger, I. & Steffan-Dewenter, I. 2011. Decreased Functional Diversity and Biological Pest Control in Conventional Compared to Organic Crop Fields. PLoS ONE, 6: e19502.

61


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

参考文献

Kremen, C. & Miles, A. 2012. Ecosystem Services in Biologically Diversified versus Conventional Farming Systems: Benefits, Externalities, and Trade-Offs. Ecology and Society, 17. Li, L., Li, S.-M., Sun, J.-H., Zhou, L.-L., Bao, X.-G., Zhang, H.-G. & Zhang, F.-S. 2007. Diversity enhances agricultural productivity via rhizosphere phosphorus facilitation on phosphorus-deficient soils. Proceedings of the National Academy of Sciences, 104: 1119211196. Lin, B. B. 2011. Resilience in agriculture through crop diversification: adaptive management for environmental change. BioScience, 61: 183-193. MacDonald, G. K., Bennett, E. M., Potter, P. A. & Ramankutty, N. 2011. Agronomic phosphorus imbalances across the world’s croplands. Proceedings of the National Academy of Sciences, 108: 3086-3091. Mäder, P., Fließbach, A., Dubois, D., Gunst, L., Fried, P. & Niggli, U. 2002. Soil Fertility and Biodiversity in Organic Farming. Science, 296: 1694-1697. Matson, P. A. & Vitousek, P. M. 2006. Agricultural Intensification: Will Land Spared from Farming be Land Spared for Nature? Conservation Biology, 20: 709-710. McNaughton, S. J. 1977. Diversity and stability of ecological communities: a comment on the role of empiricism in ecology. The American Naturalist 111: 515 –525. Mihelcic, J. R., Fry, L. M. & Shaw, R. 2011. Global potential of phosphorus recovery from human urine and feces. Chemosphere, 84: 832-839. Mulitza, S., Heslop, D., Pittauerova, D., Fischer, H. W., Meyer, I., Stuut, J. B., Zabel, M., Mollenhauer, G., Collins, J. A. & Kuhnert, H. 2010. Increase in African dust flux at the onset of commercial agriculture in the Sahel region. Nature, 466: 226-228. Offermann, F. & Nieberg, H. 2000. Economic performance of organic farms in Europe. University of Hohenheim, Hago Druck & Medien, Karlsbad-Ittersbach, Germany vol. 5. Ojiewo, C., Tenkouano, A., Hughes, J. d. A. & Keatinge, J. D. H. 2013. Case study 6 – Diversifying diets: using indigenous vegetables to improve profitability, nutrition and health in Africa. In: Fanzo, J., Hunter, D., Borelli, T. & Mattei, F. (eds.) Diversifying food and diets: using agricultural biodiversity to improve nutrition and health. Routledge. Ollerton, J., Erenler, H., Edwards, M. & Crockett, R. 2014. Extinctions of aculeate pollinators in Britain and the role of large-scale agricultural changes. Science, 346: 1360-1362. Oudshoorn, F. W., Sørensen, C. A. G. & de Boer, I. J. M. 2011. Economic and environmental evaluation of three goal-vision based scenarios for organic dairy farming in Denmark. Agricultural Systems, 104: 315-325. Pan, G., Smith, P. & Pan, W. 2009. The role of soil organic matter in maintaining the productivity and yield stability of cereals in China. Agriculture, Ecosystems & Environment, 129: 344-348. Pardo, G., Perea, F., Martinez, Y. & Urbano, J. M. 2014. Economic profitability analysis of rainfed organic farming in SW Spain. Outlook on Agriculture, 43: 115-122. Ponisio, L. C., M’Gonigle, L. K., Mace, K. C., Palomino, J., de Valpine, P. & Kremen, C. 2015. Diversification practices reduce organic to conventional yield gap. Prasad, Y. G. & Rao, K. V. 2006. Monitoring and Evaluation: Sustainable Cotton Initiative in Warangal District of Andhra Pradesh, Central Research Institute for Dryland Agriculture, Hyderabad. http://www.solutionexchange-un.net.in/food/cr/res22120701.pdf.

62


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

参考文献

Pretty, J. N., Ball, A. S., Lang, T. & Morison, J. I. L. 2005. Farm costs and food miles: An assessment of the full cost of the UK weekly food basket. Food Policy, 30: 1-19. Pretty, J. N., Morison, J. I. L. & Hine, R. E. 2003. Reducing food poverty by increasing agricultural sustainability in developing countries. Agriculture, Ecosystems & Environment, 95: 217-234. Quinton, J. N., Govers, G., Van Oost, K. & Bardgett, R. D. 2010. The impact of agricultural soil erosion on biogeochemical cycling. Nature Geosci, 3: 311-314. Quist, D. A., Heinemann, J. A., Myhr, A. I., Aslaksen, I. & Funtowicz, S. 2013. 19 Hungry for innovation: pathways from GM crops to agroecology. Chapter 19 in: European Environmental Agency (EEA) Late lessons from early warnings: science, precaution, innovation. Vol. 2. EEA Report no 1/2013 pp. 490-517. Ramanjaneyulu, G. V., Chari, M. S., Raghunath, T. A. V. S., Hussain, Z. & Kuruganti, K. 2008. Non Pesticidal Management: Learning from Experiences. http://www.csa-india.org/. Reganold, J. P., Andrews, P. K., Reeve, J. R., Carpenter-Boggs, L., Schadt, C. W., Alldredge, J. R., Ross, C. F., Davies, N. M. & Zhou, J. 2010. Fruit and Soil Quality of Organic and Conventional Strawberry Agroecosystems. PLoS ONE, 5: e12346. Reganold, J. P., Glover, J. D., Andrews, P. K. & Hinman, H. R. 2001. Sustainability of three apple production systems. Nature, 410: 926. Relyea, R. A. 2005. The impact of insecticides and herbicides on the biodiversity and productivity of aquatic communities. Ecological Applications, 15: 618-627. Relyea, R. A. 2009. A cocktail of contaminants: how mixtures of pesticides at low concentrations affect aquatic communities. Oecologia, 159: 363-376. Rockström, J. & Karlberg, L. 2010. The Quadruple Squeeze: Defining the safe operating space for freshwater use to achieve a triply green revolution in the Anthropocene. Ambio, 39: 257-265. Rockström, J., Steffen, W., Noone, K., Persson, A., Chapin, F. S., Lambin, E. F., Lenton, T. M., Scheffer, M., Folke, C., Schellnhuber, H. J., Nykvist, B., de Wit, C. A., Hughes, T., van der Leeuw, S., Rodhe, H., Sorlin, S., Snyder, P. K., Costanza, R., Svedin, U., Falkenmark, M., Karlberg, L., Corell, R. W., Fabry, V. J., Hansen, J., Walker, B., Liverman, D., Richardson, K., Crutzen, P. & Foley, J. A. 2009. A safe operating space for humanity. Nature, 461: 472-475. Scialabba, N. E.-H., Pacini, C. & Moller, S. 2014. Smallholder ecologies. Food and Agriculture Organization of the United Nations, FAO, Rome. Searchinger, T. & Heimlich, R. 2015. Avoiding Bioenergy Competition for Food Crops and Land. Working Paper, Installment 9 of Creating a Sustainable Food Future. Washington, DC: World Resources Institute. Available online at http://www.worldresourcesreport. org, Sebilo, M., Mayer, B., Nicolardot, B., Pinay, G. & Mariotti, A. 2013. Long-term fate of nitrate fertilizer in agricultural soils. Proceedings of the National Academy of Sciences, 10: 18185–18189. Seufert, V., Ramankutty, N. & Foley, J. A. 2012. Comparing the yields of organic and conventional agriculture. Nature, 485, 229–232. Sharma, B. R., Rao, K. V., Vittal, K. P. R., Ramakrishna, Y. S. & Amarasinghe, U. 2010. Estimating the potential of rainfed agriculture in India: Prospects for water productivity improvements. Agricultural Water Management, 97: 23-30.

63


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

参考文献

Smith, P., Haberl, H., Popp, A., Erb, K.-h., Lauk, C., Harper, R., Tubiello, F. N., de Siqueira Pinto, A., Jafari, M., Sohi, S., Masera, O., Böttcher, H., Berndes, G., Bustamante, M., Ahammad, H., Clark, H., Dong, H., Elsiddig, E. A., Mbow, C., Ravindranath, N. H., Rice, C. W., Robledo Abad, C., Romanovskaya, A., Sperling, F., Herrero, M., House, J. I. & Rose, S. 2013. How much land-based greenhouse gas mitigation can be achieved without compromising food security and environmental goals? Global Change Biology, 19: 2285-2302. Smith, R. G., Gross, K. L. & Robertson, G. P. 2008. Effects of crop diversity on agroecosystem function: Crop yield response. Ecosystems, 11: 355-366. Steffen, W., Richardson, K., Rockström, J., Cornell, S. E., Fetzer, I., Bennett, E. M., Biggs, R., Carpenter, S. R., de Vries, W., de Wit, C. A., Folke, C., Gerten, D., Heinke, J., Mace, G. M., Persson, L. M., Ramanathan, V., Reyers, B. & Sörlin, S. 2015. Planetary boundaries: Guiding human development on a changing planet. Science. Sutton, M. A., Bleeker, A., Howard, C. M., Bekunda, M., Grizzetti, B., W., d. V., van Grinsven, H. J. M., Abrol, Y. P., Adhya, T. K., Billen, G., Davidson, E. A., Datta, A., Diaz, R., Erisman, J. W., Liu, X. J., Oenema, O., Palm, C., Raghuram, N., Reis, S., Scholz, R. W., Sims, T., Westhoek, H. & Zhang, F. S. 2013. Our Nutrient World: The challenge to produce more food and energy with less pollution. Global Overview of Nutrient Management. Centre for Ecology and Hydrology, Edinburgh on behalf of the Global Partnership on Nutrient Management and the International Nitrogen Initiative. 114pp. http://www.initrogen.org and http://www.gpa.unep.org/gpnm. Thomas, R. J. 2008. Opportunities to reduce the vulnerability of dryland farmers in Central and West Asia and North Africa to climate change. Agriculture, Ecosystems & Environment, 126: 36-45. Tilman, D., Reich, P. B. & Isbell, F. 2012. Biodiversity impacts ecosystem productivity as much as resources, disturbance, or herbivory. Proceedings of the National Academy of Sciences. Tittonell, P. 2013. Farming Systems Ecology. Towards ecological intensification of world agriculture. Inaugural lecture upon taking up the position of Chair in Farming Systems Ecology at Wageningen University on 16 May 2013. http://www.wageningenur.nl/en/show/ Feeding-the-world-population-sustainably-and-efficiently-with-ecologically-intensive-agriculture.htm. Tittonell, P., Scopel, E., Andrieu, N., Posthumus, H., Mapfumo, P., Corbeels, M., van Halsema, G. E., Lahmar, R., Lugandu, S., Rakotoarisoa, J., Mtambanengwe, F., Pound, B., Chikowo, R., Naudin, K., Triomphe, B. & Mkomwa, S. 2012. Agroecology-based aggradation-conservation agriculture (ABACO): Targeting innovations to combat soil degradation and food insecurity in semi-arid Africa. Field Crops Research, 132: 168-174. Tuck, S. L., Winqvist, C., Mota, F., Ahnström, J., Turnbull, L. A. & Bengtsson, J. 2014. Land-use intensity and the effects of organic farming on biodiversity: a hierarchical meta-analysis. Journal of Applied Ecology: in press. Turnbull, L. A. & Hector, A. 2010. Applied ecology: How to get even with pests. Nature, 466: 37. UNEP & UNCTAD 2008. Organic Agriculture and Food Security in Africa. United Nations, New York and Geneva http://www.unctad. org/en/docs/ditcted200715_en.pdf. United Nations 2008. High-level Task Force on the Global Food Crisis: Comprehensive Framework for Action.” New York: United Nations. Van den Berg, H. & Jiggins, J. 2007. Investing in farmers‚ the impacts of Farmer Field Schools in relation to integrated pest management. World Development, 35: 663-686. Waldron, A., Justicia, R., Smith, L. & Sanchez, M. 2012. Conservation through Chocolate: a win-win for biodiversity and farmers in Ecuador’s lowland tropics. Conservation Letters, 5: 213-221. Watts, J. 2010. Chinese farms cause more pollution than factories, says official survey. Groundbreaking government survey pinpoints fertilisers and pesticides as greater source of water contamination. Guardian.co.uk 9th February 2010, 09/02/2010.

64


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

参考文献

Weinzettel, J., Hertwich, E. G., Peters, G. P., Steen-Olsen, K. & Galli, A. 2013. Affluence drives the global displacement of land use. Global Environmental Change, 23: 433-438. West, P. C., Gerber, J. S., Engstrom, P. M., Mueller, N. D., Brauman, K. A., Carlson, K. M., Cassidy, E. S., Johnston, M., MacDonald, G. K., Ray, D. K. & Siebert, S. 2014. Leverage points for improving global food security and the environment. Science, 345: 325-328. Wijeratna, A. 2012. Fed up: Now is the time to invest in agro-ecology. Action Aid and IFSN. . http://www.ifsn.info. Wolfe, M. S. 2000. Crop strength through diversity. News and Views. Nature, 406: 681-682. Wyss, E., Luka, H., Pfiffner, L., Schlatter, C., Uehlinger, G., and Daniel, C. (2005). Approaches to pest management in organic agriculture: a case study in European apple orchards In: CAB International: Organic-Research.com May 2005, 33N–36N Yorobe Jr, J. M., Rejesus, R. M. & Hammig, M. D. 2011. Insecticide use impacts of Integrated Pest Management (IPM) Farmer Field Schools: Evidence from onion farmers in the Philippines. Agricultural Systems, 104: 580-587. Zehnder, G., Gurr, G.M., Kühne, S., Wade, M.R., Wratten, S.D., Wyss, E., 2007. Arthropod pest management in organic crops. Annu. Rev. Entomol. 52, 57–80. Zhu, Y., Chen, H., Fan, J., Wang, Y., Li, Y., Chen, J., Fan, J., Yang, S., Hu, L., Leung, H., Mew, T. W., Teng, P. S., Wang, Z. & Mundt, C. C. 2000. Genetic diversity and disease control in rice. Nature, 406: 718-722. Zhu, Y. Y., Wang, Y. Y., Chen, H. R. & Lu, B. R. 2003. Conserving traditional rice varieties through management for crop diversity. Bioscience, 53: 158-162.

65


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

脚注

脚注 1. FAO Director-General José Graziano da Silva said at the first ever FAO International Symposium on Agroecology for Food Security and Nutrition in 2014 “Agroecology continues to grow, both in science and in policies. It is an approach that will help to address the challenge of ending hunger and malnutrition in all its forms, in the context of the climate change adaptation needed”. 2. http://www.fao.org/nr/water/aquastat/water_use/index.stm 3. Securing land tenure, stopping land grabs and other urgent issues around access to natural resources are intentionally left out of the scope of this paper. They are crucial issues addressed by a large number of civil society organisations worldwide. 4. http://www.foodsovereignty.org/forum-agroecology-nyeleni-2015/ 5. La Via Campesina (global peasant network) on food sovereignty:

above, the fundamentals of agroecology where used to select organic farms, not necessarily meaning ‘certified’ organic farms. 16. http://opinionator.blogs.nytimes.com/2012/10/19/a-simple-fix-forfood/ 17. Organic farming can be equated with ecological farming when it goes beyond chemical inputs substitution and is based on biodiversity-rich and people-centric farming systems. 18. Anna Lartey, Director Nutrition, FAO: http://www. bioversityinternational.org/news/detail/a-step-closer-tomainstreaming-biodiversity-for-improved-nutrition-and-health/ 19. http://www.bioversityinternational.org/research-portfolio/dietdiversity/biodiversity-for-food-and-nutrition/

http://viacampesina.org/en/index.php/main-issues-mainmenu-27/

20. Greenpeace 2014. Smart breeding: the next generation.

food-sovereignty-and-trade-mainmenu-38

http://www.greenpeace.org/eu-unit/en/Publications/2014/Smart-

6. http://viacampesina.org/en/index.php/main-issues-mainmenu-27/ food-sovereignty-and-trade-mainmenu-38/1671-internationalsymposium-on-agroecology-at-the-fao-in-rome 7. SOCLA: Sociedad Científica Latinoamericana de Agroecología

breeding-The-next-generation/ 21. http://cehsciencenews.blogspot.co.uk/2013/02/nitrogennarratives-in-nairobi.html 22. One recent example of these human costs can be seen from

(Latin-American Scientific Association of Agroecology) http://

the impacts of Phosphate mining and processing operations in

agroeco.org

China. http://www.greenpeace.org/eastasia/news/stories/food-

8. http://rajpatel.org/wp-content/uploads/2014/09/SOCLA-reflectionsAgroecology-Conference-in-ROME-in-english.pdf 9. CGIAR: a global partnership that unites organisations engaged in research for a food secure future, formerly known as ‘Consultative

agriculture/2013/living-with-danger-sichuan/ 23. Safety concerns related to pollutants in organic sources need to be eliminated prior to their use in soils, but this is a feasible approach already up-scaled in many regions of the world.

Group on International Agricultural Research’. Within CGIAR

24. http://www.unicef.org/wash/

centres, some scientists continue to follow the paradigm of industrial

25. Precautionary measures are necessary to avert health risks

agriculture systems, while others are increasingly focusing on issues

associated with fertilising soils with urine and composted faeces.

relevant to smallholders and agroecology. http://www.cgiar.org/

In 2006, the World Health Organization published comprehensive

who-we-are/e

guidelines on the safe reuse of wastewater in agriculture.

10. Nyeleni, 2007: Forum for Food Sovereignty Synthesis report. Feb 23-27, 2007. Accessed by http://nyeleni.org/spip.php?article334 11. IAASTD, 2009. Agriculture at a Crossroads. International

Use of human excreta is safer where waste streams are not mixed with other waste streams such as industrial or domestic wastewater because of pollutants such as heavy metals or

Assessment of Agricultural Knowledge, Science and Technology

organic contaminants (Cordell et al., 2009). Human excreta

for Development. Global Report. Accessed by http://www.unep.

itself may contain pollutants, primarily steroidal hormones and

org/dewa/agassessment/reports/IAASTD/EN/Agriculture at

pharmaceuticals which can be removed to different degrees

Crossroads_Global Report (English).pdf

thought natural attenuation or with existing engineering treatment

12. Food sovereignty: a critical dialogue 2013/14 conference paper

technologies (Mihelcic et al., 2011). More research is needed on

series: http://www.iss.nl/research/research_programmes/

how to treat hormone, pharmaceutical residues and microbes

political_economy_of_resources_environment_and_population_per/

in human excreta. However, this is also true for any other type of

networks/critical_agrarian_studies_icas/food_sovereignty_a_critical_ dialogue/ Additional papers from the 2013 conference can be

66

are substituted to organic ones, these principles differ. In the study

wastewater treatment, including the “flush and forget” system. 26. Crop residues form an important ingredient for improving soil

found here: http://www.yale.edu/agrarianstudies/foodsovereignty/

nutrients and soil organic matter. Crop residues (used as feed,

papers.html

fuel or for soil improvement) can also be used in sequence

13. http://www.foodsovereignty.org/forum-agroecology-nyeleni-2015/

(cascading), thus minimising competition between the various

14. Of these, half a billion are obese (Finucane et al., 2011).

potential functions. For example, in India crop residues in the

15. Organic farming can be equated with ecological farming when they

form of rice straw after harvest are used to feed cows in a mixed

share the fundamental principles of being based on biodiversity

farming system. The manure produced by cows is then used in

and people, irrespective of standards certification. In occasions,

small-scale biogas plants to supply energy to the farm household.

like with ‘industrial’ organic agriculture where just chemical inputs

The nutrient-rich residue from the biogas plant is later put back to


生態系農業

人を中心とした 食と農業の未来像 ー 7つの原則

脚注

the soil to enhance soil fertility (given that the residue is not polluted, which depends in turn on un-contaminated cow’s feed). Some crop residues should also be returned to the soil to enhance soil organic matter. This type of cascading of nutrients and energy can build efficient and resilient food systems. 27. http://www.greenpeace.org/india/Global/india/report/Living soils report.pdf 28. Trade in pesticides is the best proxy available to the trend on global use of pesticides, as data on pesticide volumes use is more uncertain and unavailable, and pesticide volumes change with the nature of active ingredients composition (e.g. less volume but more potent), so volume does not necessarily reflect usage. 29. http://www.push-pull.net/adoption.shtml 30. Cotton genetically modified (GM) to produce the Bt toxin -Bacillus thuringiensis proteins- insecticide toxins produced by the GM plants themselves. 31. Green water is the water stored in the soil, while blue water is the water in rivers, lakes, dams and groundwater wells. See more: http://www.stockholmresilience.org/21/research/research-news/426-2010-a-paler-shade-of-blue.html 32. http://ccafs.cgiar.org/bigfacts2014 33. http://michaelpollan.com/resources/cooking/ 34. http://www.foodrevolutionday.com 35. https://www.tumblr.com/search/chef%20tatung 36. http://www.aquileschavez.com.mx/ 37. http://www.growtheplanet.com/en/ 38. http://sos-bees.org/ 39. https://www.wageningenur.nl/en/show/Towards-ecologicalintensification-of-world-agriculture.htm 40. http://www.greenpeace.org/africa/financialbenefits/ 41. http://www.greenpeace.org/africa/en/campaigns/EcologicalFarming-in-Africa/ 42. http://www.fao.org/docrep/007/y5609e/y5609e01.htm 43. http://www.cgiar.org/who-we-are/

67


グリーンピースは環境保護と

平和を願う市民の立場で活動する 国際環境 NGOです。

問題意識を共有し、社会を共に 変えるため、政府や企業から

資金援助を受けずに、独立した

キャンペーン活動を行っています。

原題:Ecological Farming: The seven principles of a food system that has people at its heart 2015年5月 発行 発行:グリーンピース・エクセター研究所 日本語版制作 国際環境 NGO グリーンピース・ジャパン 監修協力 古沢 広祐(國學院大学教授) 田坂 興亜(アジア学院理事、元国際基督教大学教授) 日本語版発行(2015年10月) 国際環境NGO グリーンピース・ジャパン 〒160-0023 東京都新宿区西新宿 8 -13 -11 NFビル 2 F

Tel. 03-5338-9800 Fax. 03-5338-9817

www.greenpeace.org / japan


Turn static files into dynamic content formats.

Create a flipbook
Issuu converts static files into: digital portfolios, online yearbooks, online catalogs, digital photo albums and more. Sign up and create your flipbook.