変化の波 ーTurn The Tide

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変化の波 Turn The Tide タイの遠 洋 漁 業における 人権 侵 害と違 法 漁 業

2017年 5 月


本レポートに掲載されてい る労 働 者の画像は 必ず しも 人 身 売 買や 労 働 搾 取の 被 害 者 を写 したものではない。グリーンピースは必要に応 じて 被 害 者、生 還 者、情 報 提 供 者 のプ ラ イバ シーを保護するための措置を講じている。 表紙の写真

ラ ノ ー ン 港に 停泊す るコ・ナ ーヴ ァ ー モ ン コン シャイ1の警備員。グリーンピースの調査によ り、このマグロ刺し網漁船が人身売買やインド 洋におけるIUU(違法・無報告・無規制)漁業に 関わっていることが判明していた。

タイ南部ラノーンで巻き網を修理する漁師。 © Biel Calderon/Greenpeace


目次 1. 概要 5. はじめに 11. 人権と不当労働 ― 脚気が蔓延する底引き網漁船 19. 人身売買と強制労働 ― マグロ刺し網漁船 25. タイ政府の対応 ― 海上監視 31. サヤ・デ・マルハ・バンク 33. 悪質漁業 ― 地域に広がる危機 39. 悪質漁業 ― 規制の緩い漁場へ 47. 悪質漁業 ― インド洋 49. サプライチェーンの疑惑 ― Big Fish(大物たち) 59. サプライチェーンの疑惑 ― 網から食卓まで 69. 結論 71. 提言 73. 付録


01 概要

グリーンピースの12カ月間の 調 査 から、 悪質なタイ籍漁船の活動、それらの背後 に存 在する企 業 、これら企 業のサプライ チェーンと輸出市 場との関わりが明らか になった。 タイは世界第4位の水産物輸出国であり、直近のデータ1 によれば、その年間歳入は65億米ドルにのぼる。しかし、過 去2年間、タイの遠洋漁業は別の意味で注目の的となって きた。一連の報道により、複数の大手グローバル水産業者 のサプライチェーンに関連した深刻な人権侵害が明らかと なったのである2、3。一方、タイを含む東南アジア諸国の政府 が人身売買やIUU(違法・無報告・無規制)漁業に対する措 置を講じたことから、かつて意のままに事業ができたタイの 企業は、その自由が効かなくなってきている。本レポートで は、12カ月にわたる調査をもとに、タイ籍のゴースト漁船が、 「積み替え」という手口を用いて行っていた悪質な海上操業 と、その悲惨な実情を詳細に報告する。なお、これらは2016 年の1月から7月にかけ、新たな規制による遠洋漁業の一時 停止が行われる以前の状況である。 本レポートでは、インド洋で操業するタイの遠洋漁船で行 われていたIUU漁業、人身売買、その他の人権侵害(過失 による死亡事故を含む)についてグリーンピース・東南アジア の調査結果をまとめている。調査では、2014年から2016年 にかけ、漁船の移動を調査・分析し、2015年後半にタイの遠 洋漁船がインドネシアやパプアニューギニアによる取り締ま りを逃れ、「サヤ・デ・マルハ・バンク」と呼ばれるインド洋の 海域にたどり着いていたことを突き止めた。

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タイ南部ラノーンの公共の漁港で、漁船 から水産物を降ろす漁港労働者たち。 © Biel Calderon/Greenpeace

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タイ南部ラノーン港の整備地区に停泊し、 整備作業を待つタイの巻き網漁船。 © Biel Calderon/Greenpeace

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サヤ・デ・マルハ・バンク海域で、タイの遠洋漁船は過 去数年の間に関係当局の知るところとなった手口とほ ぼ同じやり方で操業を続けていた。手口とはすなわち、 「規制の緩い漁場の利用」、「脆弱な海洋生態系におけ る極めて持続可能性の低い漁法の展開」、「人身売買・ 強制労働を用いた労働力確保」、「19世紀以降ほぼ見ら れなくなっていた致命的な疾患を引き起こしかねない労 働環境」、そして「違法かつ無許可の漁業および漁獲物 の積み替え」のことである。

漁業に関わっているのみならず、複雑な所有権構造や 血縁関係を通じて、水産物サプライチェーンの奥深くにま で極めて大きな利権を有しており、業界の主要ポストや 政治にまで関わっていることを示している。タイの輸出 部門は一部の「Big Fish(大物たち)企業」によって寡占 されており、長年にわたり東南アジアやその他の海域で 悪質漁業が行われてきた。それらの企業に、近代的で 持続可能かつ倫理的な事業経営を行おうという意思は みられない。

こうしたショッキングな環境破壊・労働者虐待行為の 多くは、大型冷蔵運搬船、いわゆる「リーファー」を用 いた海上での積み替えによって可能となる。これによ り、漁船は期限を定めずに海上にとどまり、人目に触 れず規制から逃れることができる。そこでグリーンピー スは2015年10月以降に、サヤ・デ・マルハ・バンク海域か らタイの漁港に水揚げしたリーファーの活動を監視す ることにした。当初3カ月は、グリーンピースの調査担 当者が、リーファー各船からタイの主要水産拠点であ るサムットサーコンの民間漁港に水揚げされた水産物の 追跡調査を実施した。その結果、次のことが明らかと なった。2016年9月時点で、リーファーを伴う遠洋漁業の 一時停止措置が実施された後も、サヤ・デ・マルハ・バ ンク海域の水産物は、世界各地への輸出を行うタイ大 手水産企業のサプライチェーンに流入していた。

現在、タイの無規制で操業していた遠洋漁船は、再び 海に出ることを許され、サヤ・デ・マルハ・バンク海域を占 拠し、水産資源略奪を続けている。また、フィジーのよう な沿岸国との新たな協定締結に向けた交渉も行われて いる。こうした状況を受け、グリーンピースは、現在関係 各方面に対し行動を呼びかけている5。このような潮目を 変えるためには、いまこそ、タイやその他の各国政府・ 規制当局、漁業会社や業界団体、水産物バイヤー、そ して消費者が結束し、持続可能かつ倫理的な操業を行 う遠洋漁業者を保護しなければならない。

2015年3月にAP通信が、ベンジナ島などの島々に関 するショッキングな調査結果4を発表したが、一部のタイ 企業と、遠洋でおきている問題とのつながりを明らかに したのは、本レポートが初である。本レポートでは、これ ら企業の多くが過去数年の間に重大な人身売買やIUU

具体的には、海上での積み替えといった、違法漁業 の可能性が高い行為を排除する施策を優先的に実施 するなど、遠洋漁船に対する統制を強化する必要があ る。また、検問体制の改善、漁業・労働規制を担当する 当局検査官の能力強化も必要だ。透明性とトレーサビリ ティを確保するための制度をより厳格に施行し、基準を 満たさない事業者の責任を明確化することも求められ る。そうしなければ、タイ遠洋漁業部門において、前時 代的な搾取・破壊行為を行う一部の悪質業者に利益を 与え続けることになってしまう。

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はじめに 2015年3月、AP通信はインドネシア領海で操業するタイ漁船に よる組織的かつ広範な人権侵害について、1年間にわたる調査結 果を発表した6。この衝撃の実態には、多くの漁船の本国引き上げ につながったばかりか、世界屈指の水産物生産者のブランドを傷 つけることにもなり、その影響は現在も広がっている。この世界的 な惨事は、タイ遠洋漁業部門の企業が行ってきた、冷酷かつ違法 な行為に原因がある。なお、この報道が発表されたのは、2014年 10月にインドネシアのジョコ・ウィドド大統領の新政権による、迅速 で実効性の高い漁業規制改革が施行されてから数カ月後の2015 年3月だった。つまり、数十年にわたりタイ遠洋漁業部門の重要な 柱であった、インドネシア領海での操業が不可能になりつつあっ た時期にあたる。 2015年12月、タイの新軍事政府は遠洋漁船を対象とした法律制 定に続き、早々にタイ籍遠洋漁船の規制強化を実施した7。これに 伴い、漁業オブザーバー制度の導入や、2016年1月を期限として 実施された公式検問による新規制の遵守確認など、次々に新た な対策が施行され、サヤ・デ・マルハ・バンク海域で操業していた タイ漁船74隻が、本国への帰還を余儀なくされた8。また、タイ政府 は領海外での洋上転載を6カ月間禁止とし、新たな法規制によっ て2016年2月から7月までの間(おそらく史上初めて)タイ籍リー ファーの操業が全面停止されることになった。 今回のグリーンピースの調査では、2015年前半のAP通信の報 道後にタイの遠洋漁船に起こった変化を調べ、同年末にかけて 行われた改革が今日の遠洋漁業に与えた影響を検討した。調 査期間は、2015年9月から2016年9月である。調査には漁船監 視から航行記録の分析、漁師や人身売買生還者への取材、さら には当局による公式検査の立会いや設立文書・商業記録による ふるい分けに至るまで、様々な手法を用いた。サプライチェーン を明らかにすることが調査全体の主な目的であり、机上調査や出荷 された水産物の物理的な追跡、おとり捜査など、様々な方法でそ の解明に努めた。

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タイ南部ラノーンの公共漁港で水揚げ されたばかりの魚を仕分けるビルマ人 労働者たち。 © Chanklang Kanthong/Greenpeace

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タイ南部ラノーンの公共の漁港で次の 漁船の到着を待つビルマ人労働者。 © Chanklang Kanthong/Greenpeace

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本レポートでは、強制労働や過失による死亡事故を含む人権侵 害が、いかにタイの遠洋漁船に蔓延しているかを示すと共に(第3 章、第4章)、こうした問題の一部に対する政府の対応を検証する (第5章)。また、タイの遠洋漁船が置かれる近年の状況、および 北オーストラリア沖や東インド洋における違法行為への関与につ いて分析する(第7章~第9章)。次に、タイの遠洋漁業の背後に 存在する、いくつかの企業の存在をグリーンピースがはじめて浮 き彫りにしている(第10章)。最後に、これらの漁船で水揚げされた 水産物の国内外への流通経路と、水産物のトレーサビリティ体制 の問題点に関する調査結果をまとめている(第11章)。 グリーンピースの1年にわたる調査の結果、2015年に行われた違 法漁業・人身売買に対するインドネシア政府の取り締まり強化によ り違法性の高いタイ漁船が、通称「ドッグレッグ」海域と呼ばれる、 オーストラリアとインドネシアの国境海域で、パプアニューギニア南 部に位置する場所へ追いやられたことが分かった9。また、その後パ プアニューギニア政府が規制を強化したことで、2015年8月に再び タイ漁船による遠洋漁業海域が移動したことを示す証拠も得られた。 タイ漁船は東南アジア海域を離れ、東アフリカ本土から2,000km 以上離れたインド洋に位置する、サヤ・デ・マルハ・バンク海域(タイ 中心部の母港からは7,000km以上離れている)に移動した。タイの 遠洋漁業は、規制の緩い漁場や法規制が及びにくい海域での漁獲を 長年の慣習としてきており、この移動はその慣習を反映したものと言 える10。つまり、タイ漁船(その多くが底引き網漁船)は、底引き網漁 について実効的な管理・支配が基本的に及んでいない海域に移動 したのである。 グリーンピースは28隻のタイ籍リーファーの過去の動きを確かめ るため、船舶自動識別装置(AIS)の信号・位置情報データを1999 年にさかのぼって20万件近く分析した。この分析ではタイ、インド ネシア、パプアニューギニアの政府当局から得た漁業許可取得船 舶の一覧を照合し、その所有権構成や船舶命名の慣例をもとに漁 船の移動とリーファーの移動が同時に起こっていないか検証した。 これにより、タイの遠洋漁船は過去2年間に旗国、沿岸国、寄港国 のMCSE(監視・管理・監督・法規制)措置が強化されるたびに、 MCSE措置の緩い海域への移動を繰り返していることが分かった。 また、水産企業はその操業内容だけではなく組織自体としても 相当に複雑な構成となっていることも判明した。企業の所有権 構造や、遠洋漁業会社の運営に関わる個人間・血縁間の関係を 詳細に分析したところ、産業・政治に影響力を持つ幾重もの利害 関係が存在することが分かった。例えば、水産物サプライチェーンの 一次業者ら(うち一部は輸出向けの生産者)は同族系列企業を 通じて漁船操業者につながっていた。この調査結果は、比較的 小規模の事業者団体であっても「業界の変革」や「タイの水産物

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サプライチェーンで行われている悪質漁業、IUU漁業、 人権侵害の撲滅に向けた取り組み」を促進、あるい は阻害できるだけの力があることを示唆している。 い ず れ に せ よ 、 法 の 適 切 な 執 行 のためには違法 行為を行う悪質な事業者の責任を問う必要がある。 タイの水産業法規制の枠組みは政府による検問が基 礎となっているため、第5章に検問の詳細を示している11。 サヤ・デ・マルハ・バンク海域で操業する漁船について の疑惑を調査したところ、一部のタイ遠洋漁業会社で は、いまだに人身売買、労働搾取、人権侵害、IUU漁 業が横行していることが分かった。そこでグリーンピー スでは、より広範囲なサプライチェーンにおける調査 を行うことを決定し、衛星技術を利用しリーファーの活 動を監視したほか、タイの主要水産拠点であるサムット サーコンの民間漁港から同地区全域にある施設に出 荷される水産物を監視・追跡するチームを結成した。さ らに、サプライチェーン関連文書・記録の机上調査、監 視・追跡、覆面調査、取引データ分析により輸出市場と のつながりを確認した。 サヤ・デ・マルハ・バンクに集まる漁船、なかでも1隻の 底引き網漁船は不正な方法で漁獲した水産物を水揚 げしており、それらは世界各国に水産物を供給する企業 のサプライチェーンに流入していた。またグリーンピース の調査チームは、2015年の大部分にわたりサヤ・デ・ マルハ・バンクで操業を行っていたタイ籍漁船ソ・ソム ブーン19が2016年1月にタイに強制帰港した際、同漁 船のカンボジア人乗組員への取材を行った。予備調査 の段階で、同漁船の労働者たちが国際的に認められている 定義に照らして強制労働者に該当することを突き止め ていた。ビタミンB1欠乏症による脚気が集団発生し、彼 らの多くは入院し、なかには死亡した者もあった。政府 の調査では、乗組員に長期にわたる過酷な労働条件 を課すことを可能とする「洋上転載を前提とした漁業ビジ ネスモデル」がその根本原因であると結論付けられてい る。 本調査では、漁業に関するMCSEが強い海域と弱い 海域で悪質操業の分布に偏りがあることが確認され、

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このことからもIUU漁業に対抗する地域協力の枠組み 強化の必要性が強調される。タイの遠洋漁業に関わ る環境的・社会的リスクは、その多くが洋上転載に直 結する。このことは後述する底引き網漁船における脚 気集団発生事例からも明らかである。現在の遠洋漁業 に関する規制、特にタイ領海外での洋上転載に対する 規制は改善すべきだ。タイ政府はサヤ・デ・マルハ・バ ンクにおける底引き網漁業を取り締まることによって、 旗国としての責任を果たすべきである。 関連法規への明らかな違反行為を犯している遠洋漁 業会社は、サヤ・デ・マルハ・バンクにおける行為、イン ドネシア当局による追求の対象となった行為の両方に ついて、その法的責任を負わなければならない。法規制 の施行と市場側からの対策により、悪質な漁船を海上か ら一掃することができれば、それは人類とこの地球に とっての勝利であり、乱獲や悪質漁業による負の影響 の軽減にもつながる12。そのためには業界団体や水産 加工業者(その多くは血縁を通じて大手水産業者と関係 がある)による、強固な措置も不可欠だ。 世界中に水産物を供給しているグローバルブランド を含む、企業のサプライチェーンに不正な水産物が流 入している件は、調達業務におけるより強固なトレーサ ビリティ体制とさらなる透明性の確保が必要であること を浮き彫りにしている13、14。そもそも、信頼性の低い書 面上でのトレーサビリティ体制に依存していることや、 人身売買された労働者を使役するIUU漁船が漁獲した 水産物の最終仕向地について大きな疑惑があることか ら、タイの主要輸出品目のひとつである水産物のトレーサ ビリティに信頼性があるとは言えない。 現在、遠洋漁業者はタイの新たな規制制度への対応 を図っており、リーファーを用いた漁業はサヤ・デ・マル ハ・バンクに限定されている。しかし、2016年2月に締 結されたフィジーとの入漁協定に続く協定の交渉も進 行中であり、いまこそ地域内の各国政府とグローバル 産業による行動が求められていると言えるだろう。これ らの漁船がすべて海に戻ってしまう前に、タイの遠洋漁 船に対して適切かつ十分な措置を講じる必要がある15。


ラノーンの公共漁港に停泊中の漁船から 水産物を降ろす乗組員たち。 © Chanklang Kanthong/Greenpeace

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人権と不当労働 ― 脚気が蔓延する 底引き網漁船 脚気とは? チアミン(ビタミンB1)の不足によっ て発症する疾患20。精白米(あるいは その他の精製された穀類)を主食と する人々に多く見られ、2~3カ月で 症状が出る。また、チアミンの欠乏は そのタイプに応じて四肢のむくみや 痛み、感覚喪失、しびれ、筋萎縮、息 切れ、心不全といった幅広い症状を 引き起こす。WHO(世界保健機構)に よって死亡率の高い疾病のひとつに挙 げられている21。 近年では世界的に栄養状態が改善 されていることから、比較的珍しい病 気ではあるが、過去20年間にも台湾 の移民勾留センターやタイの難民キャ ンプといった限定的な場所での集 団発生が確認されている 22、23。昨年 にはタイの刑務所で80~90名に脚 気の症状が見られた 24 。また、ソ・ソ ムブーン19やソ・サップシンタイ20と いった遠洋底引き網漁船の乗組員な ど、過酷な肉体労働に従事するタイ人 労働者の間でも確認されている25。

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2016年1月、グリーンピースの調査チームはタイ南部とミャンマー の国境に位置するラノーンに渡り、インド洋から帰還した2隻のタイ の底引き網漁船で、漁師が死亡したとされる事件を調査した。問題 の漁船はソ・ソムブーン19とソ・サップシンタイ20である16。これら漁 船の乗組員のうち計32名はビタミンB1(チアミン)の欠乏による合併 症にかかっており17、6名は死亡していた。死亡原因はその後の政府 調査により脚気と判断されている18、19。 グリーンピースの調査担当者は、上記2隻のうちのひとつである ソ・ソムブーン19のカンボジア人乗組員6名に話を聞くことができた。 同漁船は9カ月連続で海上操業しており26、30名すべての乗組員は 脚気にかかっていた。5名はこれが原因で死亡していた27。そのなか の生還者らは、およそ90日ごとにサムットサーコンからサヤ・デ・マル ハ・バンクにやって来るリーファーから補給品を受け取っていたと言っ た。乗組員の食料用に生野菜や肉も送られてきていたものの、それ ぞれ10日と20日で底を尽いたそうである。つまりその後の食事は大 部分が精白米と海で獲った魚だったという28。 私たちは、入院中だったソ・ソムブーン19のカンボジア人乗組員 4名を訪ねた。船長はグリーンピースの取材に対し、「乗組員の四 肢のむくみに気付いた時、一般的な抗生剤を投与した」 29 と話し ていたが、取材に答えた乗組員たちからは抗生剤の話はなく、高 熱、四肢のしびれ・むくみ、嘔吐、呼吸困難といった広範な症状が 聞かれた。政府が行った公式調査では、6名の死亡は心疾患に よるものと結論付けられた。原因は栄養失調、過重労働、洋上転載 を利用した長期の連続海上勤務であった30、31。


「乗組員が死亡した2隻の漁船は 陸に戻ることなく長期間海上に留 まっていた。食物の量、栄養価、供 給スケジュールを含め、これらの漁 船への物資供給の仕組みそのもの が、乗組員たちのビタミンB1欠乏症 リスクを高めたのだ。」32 疾病管理センターが作成した報告書より

ラノーン病院で脚気から回復したソ ・ ソム ブーン 19 のカンボジア人漁師たち。 タイ政 府の調査により、 ソ ・ ソムブーン 19 におけ る脚気の集団発生とこれによる入院 ・ 死亡 は海上積み替えを利用したビジネスモデル が直接の原因と判断された。 グリーンピー スの調査では、 この漁船から水揚げされた 水産物が世界的輸出のサプライチェーンに 流入していることが分かっている。 © Chanklang Kanthong/Greenpeace

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ラノーン病院で脚気から回復したソ・ソム ブーン19のカンボジア人漁師。タイ政府の 調査により、ソ・ソムブーン19における脚気の 集団発生とこれによる入 院 ・ 死 亡 は 海 上 積 み替えを利用したビジネスモデルが直接の 原因と判断された。グリーンピースの調査で は、この漁船から水揚げされた水産物が世 界的輸出のサプライチェーンに流入してい ることが分かっている。 © Chanklang Kanthong/Greenpeace

2016年1月、ラノーンで確認された脚気集団発生は タイのメディアに大きく取り上げられた 33、34、35。このた め、グリーンピースの調査担当者らがラノーンに到着し た頃には、帰港からわずか3日にもかかわらず乗組員 たちはすでに多くのメディアの取材を受けた後だった。し かし、こうした状況でもソ・ソムブーン19の運営会社の代 表者や幹部乗組員らは、あからさまに部外者と彼ら出稼 ぎ労働者(健康か入院中かにかかわらず)との接触を嫌 い、すべてのやり取りを管理しようとした36。調査担当者

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らがもう1隻のソ・サップシンタイ20について調べたとこ ろ、報道によれば、この漁船はロヒンギャでの人身売 買に関与したとして昨年逮捕されていた、現地水産業の 大物の所有とされていた37。調査チームはソ・サップシン タイ20の出稼ぎ乗組員への取材を試みたが、同漁船と サヤ・デ・マルハ・バンクからともに帰港したその他4隻の 底引き網漁船を所有する企業の代表者を名乗るタイ人 男性らによって、出稼ぎ乗組員との一切の接触を拒否 された。ソ・ソムブーン19の事業者とは異なり、彼らは漁


船の乗組員に一切健康上の問題はなかったと主張していたが、グリーン ピースが確認した記録によればソ・サップシンタイ20では少なくとも1名が死 亡、1名が入院しているほか、別の漁船でも1名の脚気患者が出ている38、 39 。とはいえ、タイの水産業が人身売買や労働搾取、人権侵害で注目を集め てきた事実を考えれば、漁船運営業者が出稼ぎ乗組員への取材を許可した がらないのに不思議はない。 2016年の政府報告によれば、当局の労務検問によりサヤ・デ・マルハ・バン クで操業していた50隻の漁師996名のうち、半数近くが2014年に制定され た海洋漁業従事者保護省令を含む移民法・労働法に違反した労働状況に あったことが分かっている 40。なお、労働省が発布した同省令は、労働時 間・休憩時間、採用方法、給与体系、漁船内の安全衛生基準など、様々な労働 問題に対処するために制定された41。 ソ・ソムブーン19の幹部乗組員はグリーンピースの調査担当者に対し、 事業者の労働者採用方法と給与体系について次のように説明していた42。 まず、カンボジア人の仲介業者が労働者1人につき3,000タイバーツ(85米ド ル)を同事業者から受け取り、移動や食料などの経費を除いた500~600 タイバーツ(14~17米ドル)を利益として得る。労働者が密入国者であった場 合は事業者が労働者に費用を渡してパスポート申請のためにカンボジアに 戻す43。カンボジア政府は、2014年半ばにタイへの出稼ぎ労働者向けパス ポートの発行手数料を120タイバーツ(4米ドル)に減額しており44、グリーン ピースが取材した乗組員の全員がパスポートを持ってタイに入国していた45。 遠洋漁船は国の領海を出たり入ったりするため、タイでは遠洋漁船で働く者に 船員手帳の所持を法律で定めている。船員手帳の申請費用は520タイバー ツ(14米ドル)で、通常、この費用は雇用主である事業者か仲介業者のいず れかが用立てると言った46。 この採用コストは最終的に労働者に転嫁される。幹部乗組員によれば、これ は上述のように採用実費であるのに、漁師たちは漁船に乗り込む時点で仲介 業者に対し既に約2万タイバーツ(571米ドル)の負債を負っているとのことだっ た。さらに、漁船上での補給品や家族への仕送りの費用に充てられる、初 回の前払い金3万タイバーツ(857米ドル)も負債となる。これらの負債を清 算するには、およそ6カ月間働く必要があり、その後は事業者に対して再 度、前払いを求めることができると言った47。 グリーンピースが取材したソ・ソムブーン19のカンボジア人乗組員は全員 が雇用主との雇用契約に署名していないと証言したが、これはタイ漁船で 働くすべての漁業者との契約書の取り交わしを義務づけた2014年省令へ の違反である48、49。彼らは2年間の就労期間終了時に、1月当たり8,000タイ バーツ(228米ドル)の報酬を一括で支払うという口約束のみで働いていた 50 。従業員の給与の取り決めについて雇用契約書に明確に定められてい ない限り、漁業者に対し給与を月ごとに支払わないのは2014年の省令へ の違反である51。 1カ月間の労働日数によっては、8,000タイバーツとされる月給も「1日当たり 300タイバーツ(8.5米ドル)」を最低賃金として定める同省令に違反してい る可能性がある。 14


「長時間の重労働環境では、 エネルギーを生み出すために 代謝速度が早まるためビタミン B1が不足しやすくなる。」55 疾病管理センターが作成した 報告書より翻訳

トラックに水産物を降ろすソ・ソムブーン 19の労働者。この底引き網漁船では35 名以上の乗組員が劣悪な労働環境のた め脚気にかかり、6名が死亡していた。グ リーンピースは、この漁船からの水産物 を追跡したところ、世界中の市場に水産 物を輸出している企業に運ばれた。 © Biel Calderon/Greenpeace

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脚気の集団発生に関する政府調査では、ソ・ソム ブーン19の乗組員には適切な休暇・休憩時間が与え られていなかった可能性が高いと結論付けられた52。 ソ・ソムブーン19の所有者はグリーンピース調査担当 者の取材に対し、乗組員は通常8:00~20:00の12時間 働き、この間に底引き網を2回投入していると説明53して いたが、幹部乗組員によれば、乗組員は5時間ごとの ローテーションで働いており、大漁時や網が損傷した 場合には最大3日間連続で働かなければならなかっ た。これも2014年の省令違反である54。 長時間の激しい肉体労働はビタミンB1を枯渇させ、 適切な栄養補給がなければビタミン欠乏症につなが る恐れのあることが医学的に分かっている56。グリー ンピースが行った調査では、政府が定めた2016年1 月の期限までにタイに帰港したその他の遠洋漁船で も脚気の集団発生があったことが確認された。同月に 遠洋漁船で発症した脚気により、少なくともさらに2名 が死亡、9名が入院したが、これらのケースはメディア に取り上げられなかった57。2016年のビタミンB1欠乏 症のケースはすべて、「海上労働者の安全、衛生、健 康に関する省令B.E.2558(2015)」への違反だが、ど れほどの事業者に適切な制裁措置が下されたかは不 明である。 タイの遠洋漁業では、最近になってはじめてビタミン 欠乏による致命的な合併症が見られるようになった わけではない。2005年にはタイ感染症局が海上にお ける重過失行為により脚気を発症したと思われる生還 者15名の事案を調査していた58、59。また、2003年、6隻 の底引き網から成る漁船団がインドネシア領海での 漁に向けてサムットサーコンの港を出発したが、ちょ うど1年が経過した頃に漁船団の漁業許可が失効。 この漁船団は、洋上転載による物資の補給を頼り に、新たな漁業許可証の到着を待っていたが、タイの リーファーは数カ月も同漁船を放置したと言われてい る。同漁船団は洋上で立ち往生することになり、食料 や飲み水の備蓄が少なくなると死者が出始めた60。 そして2007年、これらの漁船から生還した乗組員と 死亡した39名の乗組員の遺族を合わせた61名の原 告団が、漁船を運営する同族企業プラパートナヴィー を提訴した61。原告団は犠牲者の身体がむくみ、口や 耳などいたるところから出血して倒れていった様子を 描写し、39名の死亡は適切な食料と水の不足による ものと主張した。死亡した乗組員のうち2名はインドネ シアに埋葬されたものの、その他37名の遺体は「船長

が彼らをタイに連れ帰ると問題が生じると考えた」ため に海に投げ捨てられたと言った62。 また生還者らは雇用主に対して未払賃金の支払も要 求した63。乗組員のほとんどはビルマ人で、彼らは虚偽 の文書によって「数年間インドネシアで45日交代の勤 務に就くことになる」と騙されて出稼ぎに来ていた。しか し、生還者の証言によれば、実際には35カ月にわたり海 上で働き続け、1日22時間の労働時間が常態となっていた 場合もあったと言う。そしてサムットサーコンに到着した 彼らが雇用主から受け取った金額はわずか3,000タイ バーツ(85米ドル)だった64。 プラパートナヴィー社の事件と2016年の脚気集団発 生は、洋上転載の上に成り立っている遠洋漁業には、 隔離された環境特有の危険性があるという強烈な警告 だ。ラノーンで入院していたある労働者はグリーンピー スの取材に対し、もし病気になっていなかったら2年の 期間が終わるまで陸には戻してもらえなかっただろうと 話した66。 このように、拘束力のない口頭での契約、採用手数 料の水増しと誘導的に負わされた負債、過剰な労働時 間、無秩序な給与体系など様々な手口によって労働搾 取、人権侵害が行われている67。タイが1969年に批准 した、国際労働機関(ILO)の「強制労働に関する条約 (第29号)」では、強制労働は「処罰の脅威によって強制さ れ、また、自らが任意に申し出たものでないすべての労働」 と定義されているが 68 、以下に示す事実から、ソ・ソム ブーン19の乗組員に当該労働に対する同意がなかったこと は明らかだ。 1. 2. 3. 4. 5. 6.

業務の性質に関する偽装 雇用条件に関する虚偽の採用 強制的な長時間労働 いつでも労働に応じるように強制される 退職の自由がない 仕向けられた負債

ソ・ソムブーン19では、食料の欠乏、孤立(コミュニ ティや社会生活からの疎外)、賃金の支払停止など、 「処罰の脅威」を利用し、労働を強制していたことは明 らかだ。通常、海上における政府検問のように不十分 な乗組員聴取を行っても「現代の奴隷制」とも言える人 身売買や強制労働の犠牲者を見つけ出すことは困難 だが、ソ・ソムブーン19の乗組員についてはどうやら強 制労働の犠牲者であると言っていいようだ。 16


遠洋漁業における 脚気

洋上転載

不適切な食事

ビタミンB1の不足

漁船はリーファーの支援 を得て何年も洋上で操業 することができる。

リーファーによる食料 補給間隔は90日間で あることから、乗組員 の食事量と栄養価は 十分でない。

特に過酷な肉体労働に従 事する人々にとって、十分 なビタミンB1の摂取は健 康維持のために不可欠。

搾取

過重労働

タイの遠洋底引き網漁船 の乗組員の多くは、身分 証明書の取り上げや賃金 の支払停止、威嚇、身体 的虐待といった搾取を受 けている。

タイの底引き網漁船の乗 組員の労働時間・日数は 極めて過酷であり、休憩も なく1日22時間働 かされ ることが珍しくない。

@ Chanklang Kanthong/Greenpeace

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2016年に サヤ・デ・マルハ・バンクの 乗組員に見られた 主な脚気症状:65

63%

59%

56%

53%

50%

38%

呼吸困難

痛みを伴う 虚脱

胸の痛み・ 締め付け

疲労

筋肉の痛み

むくみ

脚気の原因となる ビタミンB1の欠乏 入院

四肢のむくみ・ 痛み

息切れ

心不全

感覚喪失・しびれ

脚気はチアミン(ビタミンB1)欠乏症が原因で発 症し、精白米(あるいはその他の精製された穀 類)を主食とする人々に多く見られる。また、過 酷な肉体労働とバランスの悪い食事は身体から ビタミンB1を奪う。

死亡

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04

人身売買と 強制労働 ―マグロ刺し網漁船

タイ水産業における人身売買については以前から広く報じられている。タイの商業 マグロ漁は、数十億ドル規模になるタイのツナ缶製造業や輸出産業を形成してい たが、マグロ漁船における現代奴隷制については、ほとんど詳細が明らかになって いない。2016年、グリーンピースはその事例に突き当たった。 2016年1月にグリーンピースの調査担当者らがラノー ンに到着した翌週、サヤ・デ・マルハ・バンクからさらに3 隻の漁船が到着した。漁船名はコ・ナーヴァーモンコン シャイ1、コ・ナーヴァーモンコンシャイ8、コ・ナーヴァー 19である。タイ当局はこれらのうち最初の2隻から、人 身売買の被害者である15名のカンボジア人を救出した。 いずれも刺し網漁船で、13カ月にわたり流し網を使用した マグロ漁を行っていた69。2016年4月、グリーンピースの 調査チームは許可を得て、政府の人身売買被害者の 保護施設を訪れ、19歳から52歳の生還者15名に取材 することに成功した。1名を除く全員が、前述の漁船で 13カ月働いていた乗組員だった。 14名のカンボジア人生還者は、もともと2014年末頃 にカンボジアの人身売買ネットワークを通じて水産業者 に売られてきた28名の労働者グループの一部だった70。 もう1名は漁船が出港した4カ月後にリーファーを介して 人身売買された。パスポートやバンレームとダウンレム の国境通過の手配は、現地リクルーターとプノンペン の人材会社が行っていた。仲介業者の説明では、仕事 内容は陸上の水産加工場での勤務で、1日8時間労働で

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月給8,000タイバーツ(228米ドル)、食事・衣服は会社支給 という条件だったという71。また、カンボジア政府は2014 年中頃にタイへの移民パスポート申請手数料を124米 ドルから4米ドルに切り下げているが、彼らは 書類1枚 当たり250米ドルの費用が掛かると聞かされていた72。 仲介業者からは、タイへの交通費とあわせて徐々に払 い戻しすると告げられていたが、交通費については金額 さえ明示されていなかった。1年以上働けばパスポートの手 数料を「相殺」できるという約束もあったと話した73。 しかし実際には、彼らはサムットサーコンに売られる。 彼らのほとんどはサムットサーコンに到着後すぐに河岸 に停泊していた漁船に乗せられた。彼らはその時点でよう やく何が起こっているかに気付いたという。こうして事業者 に売られた労働者は、船員手帳の手続きが完了するまで 事業者が所有する港湾地区に監禁される。長い場合で1 カ月以上待たされる場合もある。この間、彼らは「演習漁 船」に乗せられて漁具の使用方法を教えられることにな る。この漁船内で、彼らは初めて労働者への暴力行為を 目撃する74。タイ政府は、こうした演習漁船について、人 身売買やIUU漁業への対策の一つとして、報道関係へ


インド洋のタイ籍マグロ刺し網漁船に 売られて生還したカンボジア人労働者。 タイ政府の保護施設にて。 © Biel Calderon/Greenpeace

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の発表の中で取り上げてきた。2015年以降の政府広 報記事では、脚気の集団発生があったトロール船ソ・ サップシンタイ20の運営業者の演習漁船が特集されて いる75。 人身売買された28名のカンボジア人のうち9名は、港 の監禁地区から脱出を試みるが、すぐにサムットサー コンの警察検問所で捕まってしまう 76。彼らのひとりが その時のことを詳しく話した。警察は即座に彼の電話を 没収し、彼を水産会社のオーナーの家に引き渡した。 そして、カンボジア人の埠頭管理者からは、彼らは1人 当たり3万バーツで仲介業者から買い取られたのであ り、自由になって国に帰るにはその金額を返さなけれ ばならない、と告げられた。実際、彼らの内ひとりの若 者は、家族を通じて現金を工面しカンボジアに戻された ということだった77。 出稼ぎ労働者をこうして詐欺にかけることは、タイ水産 業界への人身売買ルートの主要な手口である。また、 仲介業者から説明される手数料や交通費といった虚偽 の採用手続きも、労働者を借金で拘束し人身売買に持 ち込むためによく使われる手口だ。また、2016年にグ リーンピースが取材した15人の被害者の全員が、前金

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として労働者たちに支払われるべき金額のかなりの部分 (最高で50%)が仲介業者に中抜きされており、家族か らの指摘で気付いたという78。 これらのマグロ刺し網漁船は、人身売買で得た労働 者を連れて2014年12月にサムットサーコンを出港して いた79。なお、マグロ漁船での人身売買についてはこれ までにあまり記録が残っておらず、体系的な調査もほと んど行われていない80。主な理由は、タイが世界的なマ グロ製品生産の中心地ではあるものの、世界市場に輸 出するマグロ加工食品・缶詰製品の原材料のほぼす べてを輸入に頼っているためである81。いずれにせよ、 サヤ・デ・マルハ・バンクの刺し網漁船では、マグロという 商業的価値の高い魚を獲っていたわけだが、このことは 漁船で働く労働者の労働環境には何の影響もなかっ た。これはタイの漁業に蔓延する人身売買・強制労働 とほぼ同じ状況と言える82。 刺し網漁船の乗組員は毎晩4時間かけて網を仕掛 け、3~4時間後には引き上げる。その他の時間には長さ 12~15キロの刺し網を修繕しなければならない。総じて 彼らの休憩時間は1日3~4時間程度で、休日はなかっ た。1~3日程度漁を停止する満月の時期であっても、朝


タイ中部サムットサーコンに停泊する 巻き網漁船で網を修繕するビルマ人 労働者たち。 © Daniel Murphy/Greenpeace

の6時から夕方の5時半まで、刺し網の修繕にかかるこ とになる。また、タイ人の船長や技師らは常に虐待的で あったという。言葉による暴力や脅しは頻繁にあり、行 動の自由も制限されていた(トイレに行かせてもらえない など)。厳格な作業工程に従わせるための恣意的な制 裁など、その他にも数え切れない数々の陰湿な虐待行 為があった83。 また、グリーンピースが取材した15名の生還者の半 数近くは、漁船上で肉体的な暴力を受けている。船長 らは脚や拳で頭、背中、肩を蹴ったり殴ったりするのみ ならず、木のバットやナイフの研石などの凶器まで使用 していた。こうした暴力が行われた背景には体調不良 があり、特に積んだ食料が不十分だったり、疲弊した 乗組員らが休みを取るために抜け出したりした時に起 こった。一部の乗組員には、前述の底引き網漁船の ケースのようなビタミン欠乏症もあらわれていた84。また、 網の修繕作業中も、幹部乗組員は作業ペースが遅いと 判断するとすぐさま暴力を加えていた。ある船長は、さ らなる制裁として、暴力を加えられた乗組員とその兄弟 を「別の漁船に移す」と脅したそうである85。

コ・ナーヴァーモンコンシャイ1の乗組員はタイ人への 暴力も頻繁に目にしていた。ひどい時には出血をする ひどいケガを負うこともあった。生還者の話によれば、 積み替え時に8名のタイ人乗組員が脱出を試みたもの の5名は捕まって、体罰を受け作業に戻された。地獄の ような環境から逃れようと6名のタイ人が海に飛び込ん だ時には、4名はやはり捕まって体罰を受け、他の2名 は溺れ死んだとされている。船長と技師がひとりのタイ人 乗組員を体罰して痛めつけた後に「海に投げ捨てるぞ」 と脅していたのを聞いた生還者もいた。2014年12月に、 取材をした15人のカンボジア人乗組員とともにサムット サーコンを出港した別のタイ人は、コ・ナーヴァーモンコ ンシャイ1で就労中に80キロだった体重が40キロにま で落ちたと話した。このタイ人は、睡眠中だろうと船長か ら毎日のように容赦ない暴力を受けており、ひどいアザ と出血で作業ができなくなることもしばしばだったという 証言もあった86。 洋上転載の際には、漁獲物をリーファーに積み替える ために漁船が集まるので、生還者たちは別の漁船の乗組 員と話す機会があった。生還者たちによると、サヤ・デ・マ ルハ・バンクで出会った乗組員は、タイ人・カンボジア人 問わず、誰もが同じような労働条件だと口にしており、中 には5年間も陸に戻っていない乗組員がいたという。あ る時、15名のうちひとりは積み替えの際にリーファーに 逃れようとしたが、リーファーの乗組員によって刺し網漁 船に戻され、その後船長によってそれまで以上の重労 働が課せられた。他の生還者らは、その様子をまさに「奴 隷」と表現していた87。 彼らの誰も、いつになったら漁船での労働を終えるこ とができるのか分からない状況だった。生還者のひとり は、それに耐えきれなくなり、リーファーで港に戻れない かと船長に尋ねたところ、冷淡に却下されたと振り返っ ていた。逃げ場のない海上にあって、コ・ナーヴァーモン コンシャイ8のカンボジア人乗組員は、漁船が陸に着い たら即座に脱走する計画を練り、コ・ナーヴァーモンコン シャイ1の一部乗組員は、力ずくで漁船の支配を奪取す ることを考えた。そんななか、2015年後半になってタイ政 府が遠洋漁業に対する規制を発布したことで、これら刺し 網漁船は帰港を余儀なくされた。また、タイ王国海軍によ る新たな海上検問体制が構築され、強制労働下にある 乗組員には脱出のチャンスが生まれることになった88。

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インド洋マグロ漁船の 人身売買生還者の声(抜粋)

「船長がタイ人やカンボジア人の乗組 員に暴力を振るうところを何度も見た。 私たちは蹴られたり、殴られたり、棒で 打たれたりした。あるときはタイ人の乗 組員がデッキの床に組み伏せられてい て、船長がその顔を踏みつけているの を見た。彼はその後10分間、顔がふく れあがるまで技師に殴られ、海に投げ 捨てると脅されていた。」 「どこにも陸が見えない海の真ん中で、 暴力と虐待にさらされて働いていた・・・ まさに未来がないという感じだった。」

「私から見れば、あの漁船で獲れた魚 を買ったり食べたりすることは、私たち を苦しめ続けることと同じだ。魚を獲る だけのために、私たちはあんな苦しみ を受けたのだから。」

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「家に戻っても、家族には『会いたかっ た』ということ以外は話したくない。何 カ月も何年も家を離れていたのに家 族に何もしてやれなかったばかりか、 連絡を取ることすらできなかったのだ から。」 「消費者には、あなたたちが食べてい る魚介類は、私たちのような労働者の 苦しみと過重労働によってもたらされ ているんだと伝えたい。その魚を水揚 げするために、私たちがどのような試 練に見舞われたのか。その魚は、強 制労働と虐待によって得られている。 魚を食べる時は、どうか私たちのこと を考えてほしい。その魚を獲るのはと ても大変で、消費者が魚を買うのと同 じように簡単なことではなかったんだ。」


「企業には違法なやり方で漁獲された 魚を買わないようにしてほしいと思う。 騙されて漁船で働かされている人たち が虐待を受けている。そのような血に まみれた魚を買わないでほしい。労働 者は休みもなく過重な労働に苦しめら れている。」 「ここから逃れるために海に飛び込ん でも、サメに食べられるかもしれないと 思うと恐ろしかった。実際6人のタイ人 が重労働と暴力に耐えられず海に飛び 込んだが、4人は捕まって体罰され、も う2人は見えなくなってしまった。その夜 は嵐で波が高かったのだ。」

「ときどき、虐待に耐えられず海に飛 び込んでしまおうかと思ったこともあっ た。運がよければ生き延びられるかも しれない。でも運が悪ければ、溺れて 魚のエサになっただろう。」

「ある時、ひどい腹痛だったので船倉 に戻って休んでいたら、船長が来て私 を棒で殴り始めた。事情を聞くこともな く、ただ怠けていると責め立ててきたの だ。体調が悪いので働くことができない と言ってもかまわず殴られ続け、デッキ での作業に戻された。」

© Biel Calderon/Greenpeace

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タイ政府の対応 ― 海上監視 タイ政府は近年になって大がかりな漁業改革を主導し たが、労務検査官の能力が追いついていないため、助 けを必要としている乗組員を効果的に見つけ出して支 援することはできていない。 2015年4月、タイ政府は広がりを見せる国際社会の圧力を前に、大規模な漁 業部門改革プログラムを旗揚げした。慢性的に無規制状態だった同部門に関する この方針転換については、IUU漁業を通じて漁獲されたと思われる水産物に対 し、欧州連合が「イエローカード」を発行し警告を発したことが主な要因と見られ ている。この軍事政府の一括改革案は、省庁間の連携を通じた陸上・海上での 漁船・乗組員検問体制89を主眼としており、その実施規模や対象範囲は素晴らし い。ただし、漁業規制の実効性や実際に助けを必要としている乗組員を特定でき るかについては疑問が残る90、91。 実際、2016年初頭にはタイ王国海軍がアンダマン沿岸で、上記の刺し網漁船 コ・ナーヴァーモンコンシャイ1、コ・ナーヴァーモンコンシャイ8、コ・ナーヴァー19 を停止させ検問を行っている。15名の生還者らはこの時のことを次のように振り 返っている。彼らはまず所定の手順通り、幹部乗組員とは別に海軍の船に移さ れ、人身売買の徴候がないか、一人ひとり労働保護福祉局担当官による聴取が 行われた。その後、全員がそれぞれの漁船に戻されてラノーンの港まで護送さ れると、2名の船長は逮捕されることになるが、一部の乗組員はさらに事情聴取 を受けた92。 しかし海上労務検問は、幹部乗組員が漁師に成りすますのを許すことにな るため、この検問方法には重大な不備があると言える。また、労働搾取と虐待 の被害者を監視なしでそのまま漁船に戻してしまったのでは、加害者側による 威圧や報復をまねく恐れがあり、守るべき被害者の安全を脅かしかねない。 取材した15名によれば、船長らは当然の如くこの機会を逃さなかった。船長の ひとりはラノーンへの護送中にミーティングを招集し、1名の乗組員に通訳をさせ て次のように伝えたという。ちょうど漁船の所有者から連絡があり、「漁船上での 待遇は適切だった」と当局に証言すれば、報酬をすべて支払った上で家に帰そ う、と93。 25 Greenpeace Southeast Asia Turn the Tide


水揚げ後に休憩するサプシンタイ19の 労働者たち。 © Chanklang Kanthong/Greenpeace

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サヤ・デ・マルハ・バンクから帰港したタイ 籍の底引き網漁船を検問する違法漁業対 策指令センター(CCCIF)の合同専門調査 団。サヤ・デ・マルハ・バンクから帰港し検 問を受けたタイ漁船の半数近くに漁業・労 働関連法規への違反が確認された。 @ Anchalee Pipattanawattanakul/Greenpeace

こうした強引な交渉は帰港後、当局担当官の前でも 続いたと話した。さらに、陸では漁船を所有する事業者 の代表と名乗る者も交渉に加わったそうである。生還者 らの話では、人権侵害を行なった事業者の口から出た このような約束を信じる者も、中にはいたという。また、15 名の生還者と一緒にサムットサーコンに送られてきたそ の他12名のカンボジア人は、タイ当局者によってカン ボジアに送還されていたが、生還者たちはその理由を 知らなかった。生還者らは、グリーンピースの調査員 に、その12名は搾取や虐待の被害者とみなされないよ うな受け答えをしたのだろうと語った94。同様に、生還者 たちは、毎日のように船長から暴力を受けていたという 例のタイ人男性を含め、虐待を受けたタイ人乗組員たち がどうなったのかも知らなかった。このタイ人男性は港 に到着するまでに体重が半分程度にまで落ちていて、 まともに歩くこともできない状態だった95。 2016年1月、グリーンピースはサヤ・デ・マルハ・バン クから帰港した3隻の漁船に対する合同検問に直接立ち

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会う機会を得た。3隻(サップパームナヴィー2、サップパー ムナヴィー48、シャイナヴィー17)はすべて大型底引き網漁 船で、主にすり身の原材料に使用されるグルクマ(サバ の一種)や単価の安い魚の漁を行っていた96。また、現 地市民団体と国際労働機関(ILO)のオブザーバーの協 力のもと、出稼ぎ乗組員らとの面談も行われた。船長らが 保管していた最も日付の新しい出港手続き書類によれ ば、これらの漁船がパプアニューギニアでの漁のため タイ当局から出港許可を受けたのは2010年だった97。 当局検査官は漁具使用許可書に記載されていない 漁具(底引き網)の使用など、これら3隻すべてに操業違 反を確認した。ちなみに、2015年半ばに新たな規則の 施行が始まっていたことから、タイの底引き網漁船で許 可書の内容と実際の漁具が一致しない事例が実に多く なっていた98。グリーンピースが海上検問に立ち会った 2016年1月時点では、この種の違反は法律によって「重 大違反」に分類されており、この規模の底引き網漁船 に対しては600~3000万タイバーツ(17万1,000~85


万7,000米ドル)または漁獲高の5倍(いずれか高い 方)の罰金が定められていた 99。その他当局が取り得 る制裁としては、漁獲物・漁具・漁船の押収、漁業許可 の停止、IUU漁船の公式ブラックリストへの掲載もある 100 。しかし、このときに発覚した漁業違反は見逃された。そ の場にいた当局者によれば、同漁船の人身売買や労働 法違反の調査に集中するためとのことだった101。 当局者に取材したところ、当局がこれら3隻の底引き網 漁船のタイ人乗組員、出稼ぎ乗組員から得た情報の一 部は、グリーンピースがサヤ・デ・マルハ・バンクの労 働者(搾取・虐待行為の犠牲者を含む)から得た証言 とかなり一致することが分かった。具体的には、一部の 乗組員は仲介業者に2万6千タイバーツ(742米ドル)と いう法外な採用手数料を払わされており、彼らは船に 乗るまで労働条件や給与、海上での労働期間につい て一切知らされていなかった。報酬の支払体系につい ては、まず仲介業者から母国の家族に前金が支払わ れるが入金記録は見せられず、給与は数年の海上勤

務の終了時に一括で支払うと約束されていた。何年も給 与が支払われていない乗組員も数人おり、契約書に署名 していても支払われるべき金額が分からない状態だっ た。なお、賃金の遅配は2014年の海洋漁業従事者保 護省令への違反行為である102。一部の乗組員は船員手 帳を持っていたが、本人が申請したものではないため 検査官によって偽造と判断された。また、契約書に雇 用期間は1年と定められていたにもかかわらず、長い 場合には5年間も海上で働かされていた労働者も数名 いた。検査官の話によれば、57名の出稼ぎ乗組員の 誰一人として、適切な労働許可を得ていなかったという ことだった103。 これらはすべて、タイの過去の事例でも頻繁に確認さ れてきた「強制労働のための人身売買」や「債務によ る拘束」が存在する可能性を示す重要な事例である。な かでも、乗組員たちが申告した海上労働期間(5年間)と 2010年の出港手続き書の発行時期の一致については 即座に関心が向けられるべきだった。しかし、合同検問

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チームの当局者は上記の問題点や操業違反を確認した にもかかわらず、3隻の漁船に帰港許可を下した。これ ら漁船の問題について当局がその後追跡調査を行った のかどうかやその結果については不明である。検査官 と乗組員の面談は幹部乗組員のいない場所で行われ たが、長期にわたる無報酬労働にもかかわらず乗組員 らは人権侵害の実情を語りたがらなかった。あるいは話 せなかったのかも知れない。 すでに述べたように、インド洋から帰還した50隻の漁 船に海上検問が行われ、総計996名の乗組員のうち半数 近くに労働・移民法違反が確認されている。そのほとん どは不法入国や労働許可書(船員手帳)、雇用契約書 の不備に関わるものであり、検査官らは人身売買の存 在を証明するような事実は確認されなかったとしていた 104 。海上での検問は容易ではない。特に実情を話して

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はならないと思い込まされていたり、労働者の権利につ いて十分な知識を持っていない出稼ぎ乗組員の信頼・信 用を得ることは非常に難しいのだ。新たな規制枠組み で業務を行う検査官の側にとっても、外部利害関係者 の目や時間の制約があるなかで検問を行うことは、大き なプレッシャーとなっている。 とはいえ、ラノーンに帰港する刺し網漁船を取り巻い ていた状況やこれら3隻の乗組員から発せられた危険 信号を考えると、グリーンピースとしては人身売買、強 制労働、奴隷労働の徴候を見極めるという点でタイ当 局の能力を疑わざるを得ない。グリーンピースが出した この結論は、2014年に出された遠洋漁船に対する海上検 問についてのBBCの見解や、2015年にタイ政府が目玉 的政策として打ち出したPIPO(入港/出港)検問制度に 関する最近の調査研究結果とも一致していた105、106、107。


ただ、検問体制に不備があるとはいえ、2015年12月 にタイ王国漁業条例B.E.2558(2015)として施行された 遠洋漁船に対する各種の規制はすでに広範囲にわた る影響力を発揮していた。2015年12月には政府が6カ 月間の遠洋漁船の洋上転載禁止措置を発布し、2016 年半ばにこれを延長していたが、この措置には3つの例 外がある108。これら例外に該当する場合のみ、リーファー はタイの排他的経済水域(EEZ)の外での洋上転載が 可能だ。(1)外国の排他的経済水域で積み替えを行う 場合は、当該沿岸国の許可を得ている。(2)公海上で 積み替えを行う場合は、関係国際機関の監督を受けて いる。(3)正規の漁業オブザーバーが同乗している。

領海、あるいはタイが加盟している国際機関が管轄す る公海で操業する漁船にのみ発行される。 また現在では、タイの法律ですべての漁船・補助船 に取得が義務づけられている船舶識別番号に加え、国 際海事機関(IMO)番号の取得も必要になっている。 これはIMO独自の船舶識別方式であり、現在では「世 界標準記録」に向けた動きの一環として総量100トン以 上の漁船にまでその取得が拡大されている110、111。これ らの船 舶 識 別番 号 とタイの新たな漁船監視システム (VMS)が組み合わさることで、遠洋漁業の世界にも 基本 的 な監視・管 理 ・監 督 の体制が構 築 されていく だろう。

現在、タイ漁船運営者は、遠洋漁業許可証を取得し なければ遠洋漁業を行うことができない109。また、この 漁業許可証は、タイが漁業協定を結んでいる沿岸国の

タイ南部ラノーンでタイ式巻き網を 片付ける漁師たち。 © Biel Calderon/Greenpeace

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サヤ・デ・マルハ・バンク 遙か遠洋にあり、生態系が豊かなサヤ・デ・マルハ・バンク海域は、規制が及び にくいことから、過去18カ月間にわたり悪質なタイ水産業者の安息の漁場となっ ていた。 2016年、グリーンピースはインド洋上の海域サヤ・ デ・マルハ・バンクとその周辺で操業していた6隻の遠洋 漁船(付録1参照)について直接調査を行った。サヤ・デ・ マルハ・バンクはマダガスカル北端から1,300kmの位 置にある広さ4万km2の海域である。 その面積はベル ギーの国土に匹敵し、世界最大の熱帯浅海生態系の ひとつを形成していた112。2011年に国連機関が近隣国 であるセーシェル、モーリシャスが申請した大陸棚延伸 を承認しているため、同浅瀬海域の大陸棚は両国が共 同管理することになっているが113、 いずれの国も漁業 について実効性ある管理を行っていないことから実質 的に無規制海域となっている114。 サヤ・デ・マルハ・バンクはサンゴで覆われた約10~ 20%以外すべて海草藻場であり、世界最大かつ最も 重要な海草群落生態系のひとつだ115。また同海域はア オウミガメ(学名Chelonia mydas)の餌場、ザトウクジラ やシロナガスクジラの主要な繁殖地でもあり、浅海生息 種にとってはインド洋を回遊するための足掛かりとして 重要な役割を果たしていた116、117。2011年に世界自然 保護基金(WWF)が行った調査では、生態学的・生物学 的に重要な海域(EBSA)の7つの基準すべてに該当すると いう結論が出ている118。漁業の影響を受けやすく、2010 年からICUNレッドリストに掲載されている絶滅危惧種メ ガネモチノウオ(学名Cheilinus undulatus)にとって現 存する数少ない生息地のひとつになっていると考えら れている119。 サヤ・デ・マルハ・バンクでは少なくとも1970年代から商 業漁業が行われており、モーリシャスのGDPの5%は同 海域の水産資源に依存していた120、121。2006年に国際

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連合食糧農業機関(FAO)が発表した報告によれば、地 元の漁業はタイやフエダイ、ハタなどを狙った中層・底 引き網漁が中心であり、サヤ・デ・マルハ・バンクからの 水揚げはマスカリン海嶺(そのほとんどがセーシェルと モーリシャスの排他的経済水域内にある)沿いで行わ れている、近隣の底生漁業と比較して相当に大きい122。 洋上転載は、タイ遠洋漁業のビジネスモデルにとっ て不可欠な要素である。サヤ・デ・マルハ・バンクで遠洋 漁業を継続するには、7,000km以上離れた港からリー ファーで物資を補給し、漁獲物を持ち帰る必要があるた めだ。ソ・ソムブーン19を含め、この海域で操業するタイ の底引き網漁船はグルクマ、イトヨリダイ、フエフキダイ、 イトヒキキントキ、コウイカ、ニベ、ハタ、エソ、ヒイラギ、 キス、ヒメジ、その他フエダイやエイの仲間、サメの幼魚 など様々な魚種を漁獲しつつ123、124、およそ90日おきに リーファーと落ち合って積み替えを行うことで同海域にと どまっていた125。 15名の人身売買生還者の証言や視認情報によれ ば、彼らの刺し網漁船は長さ12~15kmの流し網を用い てマグロ類を漁獲していたという126。これらの刺し網漁 船は、網を張る最適な場所を探すため、サヤ・デ・マル ハ・バンクから3~14時間の範囲ならどこへでも移動し た。また漁獲物はマグロ類だけではなく、半分近くはサメ の仲間だったと言い、この証言はインド洋の刺し網漁船 に関する科学的調査結果とも一致していた127、128。そして 洋上転載を行う際は波の穏やかなサヤ・デ・マルハ・バン クの浅瀬に戻り129、マグロや頭を切り落としたサメをタイ籍 のリーファーに積んでサムットサーコンへ送っていたと いう130。


海草

繁殖地

壊れやすい 生態系

餌場

サヤ・デ・マルハ・バンクは世界 最大の海草群落生態系である。 2015年8月には、サヤ・デ・マル ハ・バンクおよびその周辺海域 で違法操業を行っていたタイの 漁船が捕まった。

絶滅危惧種の 生息地

サンゴ

サメ

フエダイ

イトヒキキントキ

豊かな 生物多様性

マグロ

サヤ・デ・マルハ・バンクは 様々な海洋生物の繁殖地、 餌 場であり絶 滅 危 惧 種も 生息していた。 エイ

グルクマ

コウイカ 地中海カプライア島の美しいポジド ニア海草藻場(2006年)。海草藻場 にはサンゴ藻が付くことが多いが、 この海草藻場は特にきれい。 © Greenpeace / Roger Grace

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悪質漁業 ― 地域に 広がる危機

グリーンピースの最新の調査結果は、サヤ・デ・マル ハ・バンクで操業するタイ漁船で、深刻な人権侵害の危 険性が拡大していることを示すものだった。このことは 人身売買の被害者を含む乗組員への取材からも裏付 けられている。彼らは自分たちと同じような労働環境で 働いているタイ人、カンボジア人漁師たちにサヤ・デ・マル ハ・バンクで出会ったと話していた131、132、133。さらに、海上 での省庁合同検問(この検問自体にいくぶん問題はあ るものの)によってサヤ・デ・マルハ・バンクで操業してい た漁船の半数近くに労働法違反が確認されたとする公 式統計も、上記の懸念を裏付けていると言える134。 加えて、こうしたタイの遠洋漁船における人権侵害 は、持続可能性が低いうえに違法でさえある漁業慣行 (関連規制に反した洋上転載など)と密接不可分な関 係にある。タイの遠洋漁業の歴史には、常に老獪で自 責の念を持たない違反事業者の存在があった135。そし て数十年にわたる乱獲の時代を経て、彼らの違反行為 はさらに度を超してゆき、「基準を満たさない漁船」、「劣 悪な労働条件」、「壊れやすい海洋生態系を無視した操 業」といった特徴を持つ「利益最優先型」のビジネスモ デルへと傾いていった。このような歴史を考えたとき、 今回サヤ・デ・マルハ・バンクで明らかになった諸々の 不法行為からは次のような疑問が湧いてくる。それは、 サヤ・デ・マルハ・バンクにおけるタイ企業の「悪質漁 業」はどの程度の範囲にわたって行われていたのか、と いう問題だ。この問いの答えにたどりつくにはタイ籍リー ファーの動きが鍵となる。 2015年12月初旬にグリーンピースがリモートセンシン グ技術を用いてサヤ・デ・マルハ・バンクの漁船を監視 33 Greenpeace Southeast Asia Turn the Tide

していたところ、タイ船籍のリーファー・ブリスフルが同海 域に現れた。この漁船は2015年8月からパプアニューギ ニアのポートモレスビーで当局に拘束されていたが、解 放されて同港を出港すると一直線にサヤ・デ・マルハ・バ ンクを訪れていた136。ちなみに8月にリーファー・ブリスフル が拿捕されたのは、2015年3月にAP通信がインドネシア 海上でタイ漁船が行っている組織的人身売買・人権侵害 と同漁船の関わりを報じたことを受けてのものだった137。 AP通信はこの時、スカイトゥルース社の協力を得て船舶 自動識別装置(AIS)信号を監視することでタイの人身売 買組織への関与が疑われるリーファーの動きを追跡して おり、グリーンピースも今回この分析手法を採用した138。 グリーンピースが1999年にまで遡ってAISなどの位置 情報データを検証したところ、リーファー・ブリスフルが 2014年後半からパプアニューギニアの排他的経済水 域内の、通称ドッグレッグと呼ばれる海域で漁獲物を積 んでいたことが分かった。リーファー・ブリスフルはドッグ レッグ海域でダル島に寄港しており、洋上転載と思われ る動きも見せていた139。ドッグレッグ海域に移動する前の 2012年から2014年の後半にかけては、現在は悪い意味 で有名になってしまったインドネシアのベンジナ島で漁獲 物を積み込んでいたようである140。また2000年から2007 年までの古い位置情報データでは、同リーファーが定期 的にアンボン島に寄港していたことも分かった。この島 も、タイの遠洋漁船での組織的人身売買に関わる島の ひとつである141、142、143。 ドッグレッグ海域でのリーファー・ブリスフルの拿捕は、 AP通信の情報部門が行った人身売買に関する内偵が きっかけだった 144。AP通信の第一報では、2名のビル マ人と6名のカンボジア人の人身売買の被害者は、リー ファー・ブリスフルによって、ドッグレッグ海域で操業する 漁船に輸送されたことが詳細に報じられている145。被害 者らは、2隻のタイ籍底引き網漁船(シャイナヴィー12と シャイナヴィー24)で働くために送られてきたことを示す 文書を所持していたと話した。いずれの底引き網漁船も 2014年11月後半からドッグレッグ海域での操業許可を得 ていたものの、AP通信によれば、これらの漁船はインドネ シアにおける人身売買の取締強化にともなってベンジナ 島から逃亡した34隻の逃亡漁船のうちの2隻だった146。 同じくタイ籍の逃亡漁船アンターシーナー331のビルマ人 乗組員は、後にAP通信に対し、元のインドネシア船名の 上に別の名前を打ち付け、パプアニューギニアの旗を 掲げるだけで簡単に排他的経済水域間を往き来できた と振り返っている147。同様にインドネシア政府も、マビル 98という逃亡漁船が「ポーンポホーンサップ740」(原文


ママ)に名を変えてドッグレッグ海域に移動し、リーファー・ アジアンマリン(旧シルバーシーライン3)やリーファー・シー ネットワークとの洋上転載を行っていたとする148。 しかし、シャイナヴィー12とシャイナヴィー24はそれか ら6カ月も経たないうちにサヤ・デ・マルハ・バンクからタ イに戻ることになる。ドッグレッグ海域からではなく、だ149。 リーファー・ブリスフルとこれら2隻の漁船もやはり東南ア ジア海域からはるばる8,500kmも離れたサヤ・デ・マル ハ・バンクに移動していた。さて、ここで2つの疑問が生じ る。「他にどれだけの漁船が同じような航跡をたどったの か」、そして「それは何のためか」という疑問だ。 グリーンピースが1999年までさかのぼって20万件以 上のAIS信号とロイズ・インテリジェンス・サービス社の データを分析したところ、特定されているすべてのタイ籍 リーファーのうち70%以上(休業中の船を含む36隻中26 隻)が、悪質漁業が行われていた港や海域(アンボン、 ベンジナ、トゥアルといったインドネシアの島々、およびパ

プアニューギニアのドッグレッグ海域)で1回ないし複数 回操業をしていたことが分かった150。また、これら26隻 のリーファーのうち17隻は、過去24カ月間にアンボン島 またはベンジナ島で操業していた。これはインドネシアが 2014年の終わりに始めた人身売買・IUU漁業への取り 締まり強化中のことである。さらにこの17隻のうち8隻 は、2014年の末頃あるいは2015年の前半に操業海域を ドッグレッグ海域に移していた。なお、そのうちの4隻は過 去24カ月間にドッグレッグ海域で漁獲物を積み込んでい るが、インドネシアでは行っていない。上記の8隻中6隻 は、その後2015年後半にサヤ・デ・マルハ・バンクに移動 (インドネシア領海で操業開始していた4隻を含む)して いた。また、もう1隻のリーファーも過去24カ月間にサヤ・ デ・マルハ・バンク(ドッグレッグ海域やインドネシアでは 行っていない)で操業していたことが分かった。さらに別 の1隻は2015年8月にサヤ・デ・マルハ・バンクで操業開 始していたが、過去4年間その他の海域では一切操業し ていない151。

追跡したリーファーの漁業エリアごとの分布 アンボン/ベンジナ島 (インドネシア) 2014~2015年

ドッグレッグ海域 (パプアニューギニア) 2014~2015年

サヤ・デ・マルハ・バンク 2015~2016年

リーファー・ブリスフル

リーファー・ブリスフル

リーファー・ブリスフル

リーファー・ウィズダムシー

リーファー・ウィズダムシー

リーファー・ウィズダムシー

プレシャス9

プレシャス9

プレシャス9

リーファー・アジアンマリン

リーファー・アジアンマリン

セルティックアイス

セルティックアイス

シルバーシー2

シルバーシー2

シルバーシー3

シルバーシー3 リーファー・シャイナヴィー

リーファー・シャイナヴィー

パットソーン

パットソーン

シーネットワーク

シーネットワーク

リーファー・アジアンマリン2

リーファー・メガ

リーファー・シリシャイ

ケー・ゴールデンシー

エス・リーラワディー

リーファー・ミッソーリ

マリンワン リーファー・メガ シーヴィック・アーマー シーヴィック・プリンセス リーファー・シーヴィック リーファー・セリーン スンバースクセスウタマ リーファー・スッティ

危険性の高い3つの海域で操業

危険性の高い2つの海域で操業

危険性の高い1つの海域で操業

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リーファー・ブリスフルの航路

タイ・ サムットサーコン 母港

インドネシア

追跡期間: 2015年7月~2016年1月 この地図はグリーンピースが入手した AIS データに基づいてリーファー ・ ブリスフル の航路を再現した。 トランスポンダ (電気 信号送受信機) を切っている場合など 不規則なデータが含まれるため、 あくまで リーファー ・ ブリスフルのおおよその経路 である。

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インドネシア・ アンボン島

インドネシア・ ベンジナ島

パプアニューギニア・ ドッグレッグ海域

2000 - 2007

2012 - 2014

2014 - 2015

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サヤ・デ・マルハ・バンクを往来したリーファーの動きを 詳細に見てみると、タイ籍リーファーの操業パターンの 変化について興味深い示唆が得られる。例えば、2015 年4月、AP通信の記事が発表された直後にタイのリー ファー・プレシャス9がベンジナ島を離れており、オーストラ リア北部海域を経由してパプアニューギニアのドッグレッグ 海峡にあるダル島に向かっている。しかしリーファー・プ レシャス9は、9月にはサヤ・デ・マルハ・バンクにいた。同 じく、2015年初頭には、リーファー・ウィズダムシーがベン ジナ島からドッグレッグ海域に向かい、その後9月にサヤ・ デ・マルハ・バンクに移動していた。2015年8月には、リー ファー・ウィズダムシーがサヤ・デ・マルハ・バンクに向か う前の最後の航海であった、ドッグレッグ海域からサムッ トサーコンへのルートで奇妙な進路変更を行っている。 バンダ海とジャワ海を横切るのではなく、インドネシア領 海の南側に回って同国の排他的経済水域を迂回したの である。同月にはリーファー・ブリスフルとシルバーシー2 がそれぞれパプアニューギニアとインドネシアの当局に よって拿捕されており、リーファー・ウィズダムシーは同 様の事態を避けようとした可能性がある。パットソーンは 2013年からトレス海峡地域局が管轄する遠隔海域で積 み替えを行っていた。同海域では、数年にわたって複数 のタイ籍リーファーが頻繁に往き来しており、ワルールカ ワ先住民保護区(デリバランスアイランドとも呼ばれる)の 近くだ。このパットソーンも2015年9月にサヤ・デ・マルハ・ バンクに移動していた。また、AISデータによれば、サヤ・ デ・マルハ・バンクで操業していた1隻のリーファー・シー ネットワークは過去4年間で1度もタイ以外の港に寄港し ておらず、常に漁船と洋上転載を行っていたようだ152。 操業していたリーファーがミッソーリの1隻だけだった 2015年前半と比べ、新たにサヤ・デ・マルハ・バンクに移 動したタイ籍リーファーは、2015年末までに、大きさにし て7倍(2,481GTから1万7,644GT)、載貨重量にして9倍 (2,196トンから1万9,342トン)に増加していた153。こうして 2015年8月から冷蔵運搬能力が著しく増加したということ は、平行して漁獲量も増えているはずである。しかし残念 なことに、これらのリーファーとともに2015年にサヤ・デ・ マルハ・バンクに移動したタイ漁船の数を調べることは 容易ではない。総トン数300トン以下の漁船には、国際法 でAIS送受信機の搭載が義務づけられていないため(た だし国内法では義務づけられている場合がある)、公開 されているリモートセンシングデータからタイ漁船の航路 を分析することはできないのである154。また、2015年に サヤ・デ・マルハ・バンクで操業した76隻の漁船の5分の 2程度は総トン数300トン以上の漁船だったが、AIS送受 信機が作動していた漁船はわずかであり、特定のタイ漁 37 Greenpeace Southeast Asia Turn the Tide

船を確認することもできなかった155。 しかし前述のカンボジア人乗組員への取材から、2016 年初頭の脚気集団発生事件に関わった底引き網漁船 ソ・ソムブーン19が、7カ月間ドッグレッグ海域でコシナガ マグロを含む様々な魚を漁獲し、その後サヤ・デ・マルハ・ バンクに移動していたことが分かっている156。また、グリー ンピースは、タイ遠洋漁船の動きを検証するため、タイ、 パプアニューギニア、インドネシアの当局から入手した 過去6年間の船舶一覧表を時期別に比較対照した。こ の結果、2015年にサヤ・デ・マルハ・バンクで操業した漁 船の75%は、それ以前にドッグレッグ海域で操業許可を 受けており、その認可時期が2014年最後の2カ月と2015 年3月に集中していることが分かった157。 しかし、タイの合弁事業漁船がインドネシア名を使用し ていたり、チャーター漁船がインドネシアのダミー会社経 由で操業していることなどから、インドネシアに同様の分 析手法を適用することはそう簡単ではない。ただし、イン ドネシア名と旧タイ名の両方が記載された複数のリスト が入手できたため、76隻のサヤ・デ・マルハ・バンク漁船 のうち4隻については、インドネシアで操業していたタイ 籍漁船に関するタイ側またはインドネシア側のリストと一 致した158、159。これら4隻が記載されたリストのひとつは、 2016年に「違法漁業対策のためのインドネシア大統領タ スクフォース」によって作成されたもので、同資料には、 当局によるIUU漁業・人身売買捜査に関連して指名手配 を受けていたタイ籍逃亡漁船に関する記録がある。しか しながら、これら4隻の総トン数の値はリストによってばら つきがあり(タイとインドネシアのリスト間)、たとえ漁船名 が一致していたとしても、過去6カ月間に行われた支離 滅裂な漁船名交換・変更によって生じた人為的ミスであ る可能性も考えられる。このことは、タイ遠洋漁船の名前 変更が当時いかに容易であったかを物語っていると言え る。なお、2015年後半に遠洋漁業許可証の申請条件とし て、事業者に水産省への船舶登録を義務付けた新法がタ イで導入されている160。 グリーンピースではさらに漁船の所有権情報や命名 の慣例についても分析を行った。例えば、直近のタイ海 洋局の記録に記載されているコ・ナーヴァー19(コ・ナー ヴァーモンコンシャイ1とコ・ナーヴァーモンコンシャイ8と ともにサヤ・デ・マルハ・バンクからラノーンに帰港した3 番目の刺し網漁船)の所有者の住所は、タイ水産省の もっと古いリストに登場する企業の所在地と一致してい た。そのリストには、インドネシアで操業をしており、水産 物輸入関税の免除申請を行った漁船が記録されてい


る161。この古いリストに記載のある漁船、チサダネー09 (旧名コ・ナーヴァーモンコンシャイ19)は、2016年の「違 法漁業対策のための大統領タスクフォース」によるタイ 籍逃亡漁船の一覧にも掲載されている162。 インドネシア大統領タスクフォースのリストをベースに 所有権、漁船命名慣例を考慮して分析したところ、中程 度の確信度でさらにサヤ・デ・マルハ・バンクの11隻の漁 船を照合できた。加えて、サヤ・デ・マルハ・バンクで操業 していた計19隻は3つのグループ(同じ漁船名・所有者だ が番号が異なる船団)に属しており、タスクフォースのリ

ストに登場する27隻の逃亡漁船と一致することも分かっ た。これらの船舶一覧リスト資料の比較分析結果を総合す ると、2015年にサヤ・デ・マルハ・バンクで操業していた 漁船の46%(35隻)はインドネシア領海から逃亡してき た漁船だという可能性がある。これら漁船のほとんど(35 隻中32隻)はインド洋に移動する前にドッグレッグ海域で 漁を行っていた。2014年末頃から2015年前半にかけて 総トン数にして18,177トンのタイ籍リーファーがインドネシ ア領海からドッグレッグ海域に移動していることを考えれ ば、これらの漁船が当初インドネシア領海で漁を行って いた可能性は極めて高いだろう163。

タイ水産業の主要拠点サムットサーコン の港町でターチン川沿いに停泊するリー ファー。グリーンピースでは、サヤ・デ・マ ルハ・バンクで漁獲されサムットサーコン市 内の数多くの水産食品関連施設に出荷さ れていった水産物の追跡調査を実施した。 © Greenpeace

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悪質漁業 ― 規制の緩い漁場へ インドネシア、パプアニューギニア、サヤ・デ・マルハ・バ ンク間で、過去2年間に大規模な漁船・リーファーの移動 があったことを示す証拠が得られたところで、ひとつの 疑問が残る。このような遠洋漁業場の変更を行う動機 は何か、ということだ。答えはタイ水産業者の悪質漁業 に関わる環境の変化にある。グリーンピースが行った 分析結果から言えば、沿岸国、旗国、奇港国のMCSE (監視・管理・監督・法規制)が強化されたことでタイ遠 洋漁業者の漁業ビジネスモデルに変化が生じ、当局の 意図しない結果を招いたものと思われる。つまり、極め て悪質な操業を行うタイの遠洋漁業者たちは、規制の 緩い漁場を求めてドッグレッグ海域やサヤ・デ・マルハ・ バンクへと移動していったということだ。 東南アジアの海洋漁業の歴史は、タイ遠洋漁船運営 業者の無節操・無規制な行為の歴史の一部でもある 164 。その歴史は1970年代後半にタイの水産資源が急 速に枯渇したことをきっかけに、商業漁船団が何の規 制もなく外の海域へと進出していったことが始まりだ。 こうした拡張に歯止めをかけたのは、近隣国領海での 密漁に払うべき代償が大きくなったことだった。東南ア ジア諸国が領海の監視を強化しはじめ、領海に侵入し たタイ籍漁船を拿捕し乗組員を拘留するようになった。 1980年代にスハルト大統領が底引き網漁を東インドネ シアに制限する政策を実行すると、タイの事業者はあ からさまな領海侵犯から表向き正式な規則に沿った操 業へと移行していく。1990年代初頭にベンジナ島、アン ボン島近海で行われていたタイ遠洋漁業の構造を記し た有名な論説には次のような記述がある。

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「比較的規模の大きい事業者に属するこれら[底引き 網漁船]のほとんどは、大なり小なり正式な手続きを経 てアラフラ海で底引き網漁を行っている。[中略] 彼らは インドネシアの旗を掲げているので、インドネシアの燃 料補助も受けているわけだが、その漁獲物はタイ企業 のリーファーでタイに送られている。タイの底引き網事業 者は、事実上インドネシア当局にもインドネシアの[ビジ ネス]パートナーにもこうした漁獲物について申告してい ない。彼らのパートナーは当局関係の手続を処理してい るに過ぎないのである。」165 2000年代に入ってもインドネシア海域におけるタイ遠 洋漁業の状況はほとんど変わりなかった。2003年にイ ンサイド・インドネシア誌に掲載された記事は、アラフラ 海でタイ籍底引き網漁船が行っていた大規模な水産資 源の「合法的略奪」に代表される、広くはびこった不正行 為や水産物搾取を非難していた166。こうしたタイとインド ネシア両国に関わる汚職や詐欺の問題に関する報道 は2010年代に入っても続く167、168。インドネシアの当局 者は、2014年10月下旬にジョコ・ウィドド大統領の新政 権が発足するまでの期間に、複数の国の外国籍漁船が 行ったIUU漁業から生じた経済的損失を「著しいもの」と 見積もっている169。「破壊的かつ持続可能性のない漁具 の使用」、「規制海域での操業」、「インドネシアの排他的経 済水域内で獲られた魚の違法な積み替えや不正輸出」 を行う商業漁船によりこの大きな経済的損失がもたらさ れたのである。


「パプアニューギニアは漁業改革に 積極的に取り組みはじめ、現在では IUU漁業の排除に向けた強固な法律 的・政策的枠組みを有している。」179 カメヌ・ヴェラー氏(欧州委員会の環境・海事・漁業 担当委員。2015年10月)

インド洋サヤ・デ・マルハ・バンクからラノー

ンに帰港し停泊する底引き網漁船ソ・ソム ブーン19。タイ漁船によるサヤ・デ・マル ハ・バンクの底引き網漁は完全に無規制 状態であり、同海域の稀少な海草・サンゴ 生態系にとって大きな脅威となっている。 © Chanklang Kanthong/Greenpeace

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リーファー・ブリスフルの航路

インド洋

追跡期間:

2015年7月~2016年1月 この地図はグリーンピースが入手した AIS データに基づいてリーファー ・ ブリ スフルの航路を再現した。 トランスポン ダ (電気信号送受信機) を切ってい る場合など不規則なデータが含まれる ため、 あくまでリーファー ・ ブリスフル のおおよその経路である。

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サヤ・デ・マルハ・ バンク 2015年12月


タイ・ サムットサーコン 2016年1月

パプアニューギニア・ ポートモレスビー 2015年7月~11月 まで拘留

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蔓延する漁業犯罪に対応するため、インドネシア海洋水 産省はスシ・プジアストゥティ大臣の指揮のもと、「外国漁 船の一時操業停止」、「洋上転載の禁止」、「底引き網や巻 き網といった生態系を破壊する漁具の使用禁止」といった 措置を実行した。これにより1,100隻を超える外国漁船が 出港差し止めを受け、IUU漁業への関与について厳しい 検査を受けることとなった。引き続き出港停止となっている 漁船のうち、133隻がタイ籍漁船である(漁船128隻、リー ファー5隻)170。また、インドネシア当局による監査により人

サヤ・デ・マルハ・バンクから帰港したタイ の底引き網漁船を検問する違法漁業対策 指令センター(CCCIF)の合同タスクフォー ス。サヤ・デ・マルハ・バンクから帰港し検 問を受けたタイ漁船の半数近くに漁業・労 働関連法規への違反が確認された。 © Anchalee Pipattanawattanakul/Greenpeace

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身売買、違法薬物・野生生物の密輸、シャーク・フィ ニング、詐欺、密入国といった数々の組織的国際犯 罪行為が確認された171。インドネシア当局はこれま で、このように同国領海内で違法漁業を行ったこと が明らかな外国漁船に対して断固たる処置を実施し てきた。特に2014年10月から2016年4月までの期 間には、合計176隻の外国漁船を破壊しており、このこ とは全世界で大きく報じられた172、173、174。


前章で述べた通り、これらインドネシア漁業管理改革の施行 直後から多くのタイ籍遠洋漁船がインドネシアの領海を離れ ていったことは、AISデータが示す通りだ。前述の「違法漁 業対策のための大統領タスクフォース」がまとめた資料に は133隻のタイの逃亡漁船が掲載されているが、実際にはさ らに多くの漁船がインドネシア領海から逃亡した可能性があ る。これら漁船の一部は、2015年3月のAP通信の報道で渦 中にあったリーファー・アジアンマリン2(旧名シルバーシー ライン)のように、一時的に別の漁場に移動してからサムット サーコンに帰港し、そこに留まっている。その他のタイ漁船は、 パプアニューギニアのドッグレッグ海域に流れ込み、操業し 続けた。 ドッグレッグ海域には一時期IUU漁業に関する懸念があ り、2005年にはパプアニューギニアの当時の野党指導者で あったピーター・オニール氏が議会で「政府が3万5,000米ド ルと引き換えに、ドッグレッグ海域で操業している58隻の漁 船に学術・調査漁業許可を与えた疑いがある」と訴えている 175 。ベン・セムリ水産大臣はこれに対し、そのような漁業活動は 承知していないと否定していた。2010年、パプアニューギニ ア漁業団体との相互入漁協定によってパプアニューギニア 領海は正式に52隻のタイ底引き網漁船に開放される176。し かし2014年には南太平洋諸島フォーラム漁業機関が「クルク ルオペレーション」の作戦名で合同監視を実施し、ドッグレッ グ海域で操業する5隻のタイ籍のIUU漁船が拿捕される結 果となった177。この出来事は、2015年4月に欧州連合がタイ に「イエローカード」を出すことを決定した際に、タイの遠洋 漁船によるIUU漁業のひとつの事例として言及された178。 パプアニューギニアは、2014年6月に欧州連合からIUU 漁業に対して「イエローカード」180を受けると、大規模な漁業 改革プログラムの実行、外国籍漁船への検問・制裁の枠組 みを定めた法律の改正、問題の多かったドッグレッグ海域 の漁業閉鎖といった様々な対策を施行した 181。同国政府 による積極的な対応の末、欧州連合は2015年10月にパプ アニューギニアに対する「イエローカード」を取り下げた182。 しかし、パプアニューギニアのドッグレッグ海域の漁業一時 停止措置は、警告取り下げの2カ月前の2015年8月になるまで 執行されなかった183。このことにより、タイの漁船はウィドド 大統領政権下で2014年末に始まったインドネシア領海の 規制強化から逃れるチャンスを得る。2014年11月28日から 2015年7月31日までに、80隻以上のタイ漁船が相互入漁協 定によってドッグレッグ海域での操業許可を得ていたが184、 パプアニューギニアの漁業当局が公開している2016年の 船舶許可一覧にタイ漁船の名は記載されていない。2015年 に漁業許可を得たタイ漁船の大部分は、本レポートでたびた び言及してきた通り、サヤ・デ・マルハ・バンクへと既に操業 海域を移していた185。 44


今日の課題

IUU漁業

持続不可能な漁業 水産物の搾取

汚職

問題 悪質なタイの遠洋漁業会社 無規制状態で基準を満たさ ない漁船がこの海域を中心 に環境的・社会的問題を引 き起こしていた。

密輸

野生生物の 密輸

現代的奴隷 麻薬の密輸 汚職

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対策

効果

政府によるMCSE (監視・管理・監督・法規制)措置

強化されたMCSE措置から 逃れるための操業海域の移動

国によるMCSE措置には、検問 強化、外国籍漁船による漁業禁 止海域、洋上転載の禁止、調査 活動の強化、漁船の拿捕、拘留 などがある。

過去2年間、悪質なタイの漁業 会社は搾取しやすい漁場を探 し求めて、繰り返し操業海域を 移動し、彼らが引き起こす社 会的・環境的問題の現場もそ の都度移動してきた。

サヤ・デ・マルハ・バンクから帰港したタイ籍 の底引き網漁船を検問する違法漁業対策 指令センター(CCCIF)の関連機関特別委 員会。サヤ・デ・マルハ・バンクから帰港し検 問を受けたタイ漁船の半数近くに漁業・労働 関連法規への違反が確認された。 © Anachalee Pipattanawattanakul/Greenpeace

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悪質漁業 ― インド洋

インド洋はこれまでもタイ漁業のスキャンダルと無縁では なかった。例えば、2010年4月にはサムットサーコンを拠 点とするマグロ事業者が操業する3隻のタイ籍漁船(プ ランタレー11、プランタレー12、プランタレー14)がソマリ ア海賊に乗っ取られた。当時の現地報道では、この事件 は「珍しく海賊がソマリアの海をまもった」出来事として 報じられた186。いずれにせよ、これらの漁船はジブチへ の帰港に向けてソマリア沖約1200海里の地点を航行し ていた時に乗っ取られており、これは過去4年間に海賊によ る攻撃があった地点としては最も東の海域にあたる187。 報道によれば、いずれの漁船もインド洋まぐろ類委員会 (IOTC)に登録されておらず、マグロ類の漁業を行う許可 も得ていなかった。このことはIOTCの記録からも確認で きる188、189。 2011年初頭、プランタレー14はラクシャディープ諸島 沖でインド海軍に沈められ、その後すぐプランタレー11 もインド海軍パトロール隊によって拿捕された190、191。これ ら2隻に乗船していたタイ人、ビルマ人の人質らは救出 されたと報道された。プランタレー12は海岸に遺棄され たが、乗組員らは人質に取られたままだった。プランタ

レー12のビルマ人乗組員、オン・ソウは、2010年12月に 同漁船がインド海軍から逃れる際に海に飛び込んでなん とか脱出した192。オン・ソウは救助されたものの、身分を証明 する書類がなかったため、事実上の無国籍者として扱 われ、インドのケララ州コーチの警察署に拘留された。 なお、彼はここで後の短編ドキュメンタリー映画の題材と なった193。プランタレー12からの脱出から1年半以上の ち、オン・ソウはコーチの地から姿を消した。その後のイ ンドの報道によると、インド警察はオン・ソウが国境を越 えてミャンマーに渡った疑いがあると見ている194。 その他のプランタレー12の乗組員はソマリアで拘束さ れたままだった。6名は病死(5名は脚気と報じられた)、 14名のビルマ人は海賊による漁船乗っ取りから1年の間 に解放された195、196。残り4名のタイ人乗組員は2015年2 月まで5年近くにわたり拘束され、ソマリアの海賊史上最 も長期にわたる人質となった197。海賊行為の分析者らは、 この事件がなければ各乗組員が稼げていたであろう損 失額は1人あたり4万米ドル相当と試算していた198。 2015年11月にはタイ籍の延縄漁船ムック・アンダーマ ン028に対し、ソマリア海賊はすでに乗っ取っていた貿 易用帆船を使って攻撃を仕掛けている199。攻撃は失敗し、 確定情報ではないものの、5名の海賊と貿易用帆船の乗組 員1名は「ムック・アンダーマン028への攻撃中に行方不明 となり、死亡したもの」200とみられている。おそらくはこの 事件によってムック・アンダーマン028はタイ当局の目に とまったものと思われ、タイ当局は2016年1月に対IUU 漁業おとり捜査を実施。漁業許可が失効していたマグロ 延縄漁船6隻(ムック・アンダーマン018、ムック・アンダー マン028、セリブー、ユウ・ロンNo.6、ユウ・ロンNo.125、 ファン・シー・フーNo.68)が拿捕され、3名のタイ企業経 営者と船長4名が逮捕される結果となった201。なお、これ らのうち少なくとも1隻(ファン・シー・フーNo.68)はサヤ・デ・ マルハ・バンクまたはその周辺で操業をしていたものと 思われる202。

サヤ・デ・マルハ・バンクにおけるIUU漁業 2016年1月、タイ政府はサヤ・デ・マルハ・バンクから 戻った50隻の漁船に海上検問を実施し、そのうち24隻に 計34件の操業違反を確認したと報告した203。違反のほ とんどは有効な漁具使用許可証がなかったことによるも のであり、グリーンピースが立ち会った3隻への海上検問 や、グリーンピースが取材した人身売買の生還者が乗って

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いた2隻のマグロ刺し網漁船(コ・ナーヴァーモンコンシャイ 1、コ・ナーヴァーモンコンシャイ8)の場合と同様の結果 だった204。すでに本レポートで述べたように、2015年末に 導入されたタイの漁業規制では無許可操業に対して重 い罰則が科せられることになっているが、サヤ・デ・マル ハ・バンクから帰港した漁船で、操業違反により制裁を


受けた漁船が何隻あったのかは不明である。タイ軍事政 府は、2015年4月より船舶許可証に明記されていない漁 具の使用を禁止205しており、これに違反した場合は1年 間の禁固刑もしくは最大10万タイバーツ(2,800米ドル) の罰金のいずれか、または両方が課せられることに なっている206。 サヤ・デ・マルハ・バンクで漁業を行なっていた漁船の ほとんどがタイ法規に違反する操業を行っていたのであ れば、多数の底引き網漁船が、極めて繊細で独特の生 態学的価値があるのに、保護管理措置によって漁業が 規制されていない公海域に移動したという事実は、その 操業が無規制漁業であるということを物語っている。実 際、2016年8月にはタイの水産省長官がサヤ・デ・マル ハ・バンクの漁船は規制管理のない海域で操業してい ると、公に認めている207。 遠洋上での無規制な底魚漁業は国際社会にとって 大きな懸念であり、過去20年の間、責任ある旗国とし て自国の漁船に、国際法に準じた規制のもと操業させ ることを求める数々の文書、決議、宣言が交渉のすえ 採択されている。1995年の「国連公海漁業協定」、国 連FAOの「不法、無報告及び無規制操業を防止、阻止 及び排除するための国際行動計画」、同じく国連FAO の「寄港国措置協定」、その他国連総会で採択された 種々の決議がその例である。 国連総会は2006年以降、各加盟国にこの問題に対す る「至急の対応」を求めるとともに、公海上で底魚漁業を 行う漁船を管轄するすべての加盟国に対して生態系へ のダメージを防止し、一連の管理策を導入して水産資 源を保全することを求める決議を複数採択していた。 具体的な管理策としては環境アセスメント(環境影響評 価)の実施や、国際的に受け入れられている「脆弱な 海洋生態系」の基準に該当する漁場での底引き網漁 禁止などが挙げられる208。もちろん、サヤ・デ・マルハ・ バンクの生態学的価値を考慮すれば、同海域はそれ 自体が脆弱な海洋生態系と見なされるべきだ209。 しかし、タイはインド洋公海での底魚漁業を管轄する 法的権限をもつ地域漁業管理機関(RFMO)である南 インド洋漁業協定(SIOFA)に加盟すらしていない。この ことも同海域におけるタイ漁船による漁業を無規制漁 業とみなす、もう一つの理由だ。タイは自国の漁船に制 約なく操業を行わせているという点で、明らかに旗国とし

て海洋環境を保護し、他国と協調してインド洋公海上で の漁業を管理するという責任を果たせていない。現在 でも漁獲量や漁具の制限、禁漁海域が存在せず、持 続可能な漁業を担保するための他国との連携も行って いない。しかも2015年半ばからは、総トン数2万トンを 超えるタイ漁船がサヤ・デ・マルハ・バンクで操業を行っ ており、タイが責任ある漁業国として行動していないこと は明白だ。このような状況下では、国際的に合意された 保護管理措置が施行され、サヤ・デ・マルハ・バンクの 公海上で漁業を行う他国との合意形成が行われるま で、タイは同海域での自国籍漁船による底魚漁業を禁 止すべきである。 サヤ・デ・マルハ・バンクの漁船は当該海域を所管す る、その他複数の地域漁業管理機関が定めた規制に 違反していた。2015年にサヤ・デ・マルハ・バンクまた はその周辺海域で操業していた76隻の漁船、8隻の リーファーはインド洋まぐろ類委員会(IOTC)の過去の 許可船名簿に一切の記録がない210。したがって、少な くともグリーンピースの調査によりサメやマグロ類を漁 獲していたことが判明した3隻の刺し網漁船は必要な 許可を得ずに操業していたことになる 211。取材を行っ た人身売買の生還者らによれば、サヤ・デ・マルハ・バ ンクおよびその周辺でマグロ類の漁獲・転載を行ってい たこれら3隻の刺し網漁船は、長さ12~15kmの流し網 を張っていたと言う。IOTCの所轄海域では、大規模な 流し網(長さ2.5km以上の網)の使用は禁止されてお り、IOTCの沿岸国の排他的経済水域で使用する場合 も当該国の許可が必要とされている 212 。また、IOTC 管内ではリーファーにマグロ類やサメ類を洋上転載 することも禁止されており、例外として認められるのは 所定の条件を満たした延縄漁船と運搬漁船の間で、 正規の漁業オブザーバーの監督のもと実施する場合 のみである213。 また、これらの漁船の漁獲はどこにも申告されていな い可能性がある。IOTCに提出された直近の公式資料 は、タイ政府当局は無許可の刺し網漁船が大規模な 流し網を張って、IOTC管内でマグロ類やサメを漁獲し、 洋上転載によりタイ国内の民間漁港に水揚げしていた 事実を認識していなかったことを示していた214。したがっ て、これらの船によって水揚げされたマグロのトレーサビ リティに関する必要書類に、実際の漁場・漁法が記載さ れているとは考えにくい。

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サプライチェーンの疑惑 ― Big Fish(大物たち) グリーンピースは今回はじめてタイ水産業の背後にある企業や関係者にスポッ トライトを当てた。そこで明らかとなったのは、一部の関係者が業界全体の改革 を促進あるいは停滞させることができるほどの集合的な権力を握っているという ことだった。 2011年、モーリシャスはIOTCに対し、タイ籍刺し網 漁船ルァン・ラープ8がサヤ・デ・マルハ・バンクから約 280km南西のナザレス・バンク近海で違法操業を行っ ていると訴えた215。タイ政府はこの件に対応せず、調査 報告も提出しなかったが、このことが2015年4月の欧州 委員会によるタイへの「イエローカード」発行につながる 要因のひとつとなっている216。ルァン・ラープ8にはルァ ン・ラープ2、ルァン・ラープ3、ルァン・ラープ9、ルァン・ ラープ10という4隻の姉妹船があり、すべて2015年に サヤ・デ・マルハ・バンクで操業していた。これらの4隻 はタイの遠洋漁業・水産加工部門で見られる複雑な所 有権構造を説明するのにちょうどよい例だ。

タイ海洋局の記録によれば、ルァン・ラープ9はソム ギャット・キットポーカー氏、ルァン・ラープ3はカムヌン ヌァン・ヲンカチョンキッティ氏、ルァン・ラープ10とルァ ン・ラープ2はソムシャイ・ジェッタナポンサムラン氏がそ れぞれ所有していた217。タイ中部サムットプラーカーン 在住のウォンカコンキッティ氏は、グリーンピースが取材 した15名のカンボジア人の人身売買生還者らが乗ってい たマグロ刺し網漁船コ・ナーヴァーモンコンシャイ1とコ・ ナーヴァーモンコンシャイ8の所有者でもある。グリーン ピースが入手した内部情報によれば、ウォンカコンキッ ティ氏はこの人身売買事件で容疑者となっているほか、サ ムットソンクラームでの別の人身売買の捜査対象になって いたという現地報道もあった218。しかし最終的に起訴され 49 Greenpeace Southeast Asia Turn the Tide

たのは2隻の船長とジェッタナポンサムラン氏だった219。同 氏はプノンペンから飛行機で帰国したところをバンコク のドンムアン空港の入国管理局によって逮捕されてい る220。 ジェッタナポンサムラン氏と比べ、サヤ・デ・マルハ・ バンクの漁船の10%以上を運用しているウォンカコンキッ ティ氏はいくぶんか「Big Fish(大物)」であると言える。彼女 が所有するこれらの漁船は2つの住所に登録されてい る。ひとつは商務省事業開発局の旧サムットプラーカー ン事務所221。もうひとつはコ・ナーヴァーモンコンシャイ 1とコ・ナーヴァーモンコンシャイ8の登録住所だが、こ の住所には少なくとも5つの異なる事業者が関わってい る。そのうちの1社はK.N.S商事という資本金1千万バー ツ(28万5,000米ドル)の水産・冷蔵貨物物流会社で、 2014年時点ですでに消滅していたものと思われる222。 もう2社はC.H. & N.社とオーシャン・ワールド・シーフー ド社の遠洋漁業会社だ223。2009年以降のものと思われ る水産省の「水産物輸入関税免除漁船」の一覧には、こ の2社が所有する漁船46隻が記録されており、これら はすべてインドネシア領海で操業していた224。なお、こ の一覧にはインドネシア、ビルマ、インド、オマーン、バン グラデシュ、イタリア、イエメンの領海で漁獲された水産 物に対する輸入関税免除を申請した560隻の登録済み 遠洋漁船の詳細が記載されている。


タイ遠洋漁業協会 タイの遠洋漁業は、水産省内の関係機関以外にタイ 遠洋漁業協会(TOFA)という業界団体がその大部分 を取り仕切っている。TOFAは総計283隻の遠洋漁船 を擁する加盟企業20社の利益を代表する団体として 1986年に設立された237。同協会は加盟企業のために 他国海域への新入漁権交渉などを行っているほか、加 盟企業間での漁獲物・補給品転載のコーディネートも 実施していた。 タイ遠洋漁業界ではその構造上、ほぼ大手企業の独 占状態にある重要資産(リーファーやリーファー用の設 備が整った指定水揚げ場など)を小規模事業者が使用 料を支払って利用するという形式で、一定の事業者間協 力が行われている。漁船レベルの所有権にしても、遠洋 漁業には固有のリスクがあり、資本コストも高いことか ら共同投資やパートナーシップが盛んだ。

ウォンカコンキッティ氏は約6年前のこの水産省資料 に登録されている多数の遠洋漁船の10分の1近くに関 与しており、タイの遠洋漁業ビジネスにおける重要人物で あると言える。また、2016年6月9日、ウォンカコンキッティ氏 はサムットプラーカーンにタイ海洋漁業協会(TSFA)を登 記し、自らはその会計担当となっている225。TSFAは国内外 におけるタイ水産関連企業の課題解決にむけて加盟 企業をサポートすることを設立趣意に掲げている。ま た、ウォンカコンキッティ氏とともにTSFAの登記を行っ ている共同事業者が2名いる。一人は彼女の夫である トンシャイ氏で、TSFAの会長でありルァン・ラープ9の所 有者でもある。もうひとりは副会長を務めるソムギャット・ キットポーカー氏だ226。 ソムギャット・キットポーカー氏が関わっている事業は タイ水産業の拠点であるサムットサーコンの近隣に集 中していた。また、キットポーカー氏はセンチュリー・ リーファー社を通じてリーファー(サヤ・デ・マルハ・バ ンクで最も長く操業していたリーファー・ミッソーリを含 む)を運用しているほか、5名の親族とともに同県の 7つの民間漁港運営業者のひとつであるセンチュリー・ ターチン社を経営していた 227、228。キットポーカー氏と4 名の親族はあわせてサヤ・デ・マルハ・バンクで操業 していた漁船の5分の1近くを操業していることになる 229 。2015年3月には、同氏が所有する2隻の漁船(セ

コールドチェーン(低温流通体系)における物流協定 の促進に加え、様々な共同事業の利益を代表してタイ 政府、国外の主要当局、国内外の各種産業に働きか けることもTOFAの役割のひとつだ。本章に示す通り、 タイの遠洋漁業部門は中国・タイの同族事業者グルー プによって事実上支配されており、これらのグループは 親族間で複雑なホールディング体制を敷いている。こう した所有権構造は複数の部門や水産物サプライチェー ンの企業にまたがっており、漁業、リーファー、水揚げ 施設、コールドチェーン(低温流通体系)における物流 から冷蔵貯蔵所、加工、輸出市場向けの付加価値施 設まで多岐にわたる。

ンチュリー4とセンチュリー7)がインドネシアとパプア ニューギニアの排他的経済水域近くで違法漁業を 行っていたとされる疑惑を否定する趣旨のタイメディア 報道230があり、キットポーカー氏の漁業経営について 議論が起こった。なお、同氏の漁船はいずれもIUU漁 業を行ったとして2014年12月にインドネシア当局に よって爆破されている231。 TSFAにはウォンカコンキッティ夫妻とソムギャット・ キットポーカー氏の他にプーワナット・シャウチャロー ンパット氏とスパナット・シャウチャローンパットがそれ ぞれ登録事務官、書記官として参加していた232。この 2名は、サヤ・デ・マルハ・バンクで操業している漁船 の5分の1近くを運用しており233、その中には2016年 1月にソ・ソムブーン19とともにラノーンに帰港した5隻 の底引き網漁船も含まれる。これらはグリーンピースが 事業者側から取材拒否された漁船で、うち2隻は少な くとも2名が入院し、1名が死亡するに至った脚気集団 発生のあった船だ。またトンシャイ・ウォンカチョンキッ ティ氏、スパナット・シャウチャローンパット氏、ソムギャッ ト・キットポーカー氏は2008年に登記されたリーファー会社 のMIエクスペディター(タイ)社の共同所有者であり、同 社の所在地はカムヌンヌァン・ヲンカチョンキッティ氏 の関連会社であるK.N.S商事、C.H. & N.社、オーシャ ン・ワールド・シーフード社と同じである234。 50


タイの同族水産企業系列

A一族 漁船 運営業者

B一族 海洋 物流業者

» 業界団体の現 ・ 元代表 » 民間漁港運営者 » 海洋物流業者

» 水産加工業者 » 国内水産物 販売業者 (卸売 ・ 小売)

関与している組織 » 県政府 » 主要な法執行機関 » 業界団体 (水産業その他の部門)

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» 冷蔵貯蔵業者 » 漁船運営業者 » 業界団体理事 » コールドチェーン (低温流通体系) の物流業者


C一族 » 投資銀行 » 建築 » 国 ・ 県の政府機関に関与 » 法律家 » 業界団体に関与 (水産業 ・ その他の部門)

» 投資銀行 » 低課税国での国外口座 » 海外からの投資 (水産部門) » 建築 » 国 ・ 県の政府機関に関与 » 通信 » 業界団体に関与 (水産業 ・ その他の部門)

» 冷蔵貯蔵業者 » 水産加工業者 » 水産物輸出業者 (卸売 ・ 小売)

» 業界団体 理事

» 漁船運営業者 » 海洋物流業者 » 業界団体の現 ・ 元代表

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「ほとんどの事業者や船長たちは そんなことはしていない。これらの [ 人身売買に関する ]報道は多くの 部分が事実ではないと思っている。」282

アピシッド・テシャニティサワッド氏 (タイ遠洋漁業協会会長)

サムットサーコンの港に停泊するタイ籍の リーファー・ブリスフル。同船は強制労働 やIUU漁業が横行する東南アジア各海域 で長年操業し、対人身売買おとり捜査によ るパプアニューギニアでの数カ月の拘留を 経てサヤ・デ・マルハ・バンクに移動。 このリーファーは人権侵害やIUU漁業に よ って 不 正 に 漁 獲 さ れた水産物を 持ち 込 んでいたことから、グリーンピースでは数 多くの輸出企業が関わるサプライチェーン 上でこれら水産物の足取りを追った。 © Biel Calderon/Greenpeace

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2015年11月、グリーンピースはAIS追跡プラットフォー ムを用いてサヤ・デ・マルハ・バンクを往き来する8隻の タイ籍リーファーの継続監視を開始した。その後3カ月の 間に5隻のリーファーが水揚げのためサヤ・デ・マルハ・ バンクからサムットサーコンに帰港しており、グリーンピー スの監視チームは市内の各民間水揚げ施設で、これらの リーファーから386件の出荷(マグロ、 グルクマ、その他 の水産物やいわゆる「屑魚」も含めて合計でおよそ5千 トンに及ぶ)があったことを確認した。これら出荷の37% (144件の出荷)は、県内23ヶ所の主要な水産加工工 場、冷蔵貯蔵施設、すり身製造工場、魚粉製造工場さら にはタイ最大の水産物卸売り市場に送られた事が追跡 チームにより確認された(付録3参照)。 なお、グリーンピースが追跡した出荷品を運んだリー ファーのうち少なくとも2隻は、人権侵害(人身売買など) や操業違反(IUU漁業など)に直接関わっている(すでに 述べたように、サヤ・デ・マルハ・バンクの船のほとんど が同様の操業を行っていたわけだが)。ウォンカチョン キッティ氏のマグロ刺し網漁船から救出された15名の人 身売買生還者らは、13カ月の海上労働期間中3~4隻の リーファーと転載を行ったと証言していた。これらリー ファーのうち1隻はパットソーン、もう1隻は「シャイナ ヴィーが所有する」リーファーで、彼らは2016年1月27日 に救出される「1~2カ月前」に見たとのことだった。シー ネットワーク、リーファー・シリシャイ、リーファー・ブリスフ ルの3隻が同期間にサヤ・デ・マルハ・バンクにいたこと が、AISデータで確認されており、これら3隻のうち「シャイ ナヴィー」の会社と船を運営している一族の一員(ワンシャ イ・サンスックイアム氏)が所有していたのはリーファー・ブ リスフルのみだった236。 2016年1月のグリーンピースの取材に対し、ソ・ソム ブーン19の船長は、最後にリーファーと合流したのは 2015年12月15日前後だったと話していた237。AISデータ では、その時期にサヤ・デ・マルハ・バンクにいたタイ籍 リーファーはリーファー・シリシャイのみだ。同じく2016年 1月、グリーンピースの調査担当者がラノーンにある2ヶ 所の埠頭を訪れ、サヤ・デ・マルハ・バンクで操業してい た底引き網漁船のソ・ソムブーン19とソ・サプシンタイ20が 水揚を行っていたのを確認していた。両漁船ともサムット サーコンを拠点とするコールドチェーン(低温流通体系) の物流企業2社のトラックに漁獲物を積み込んでいた。 これらの物流会社は港からの監視・追跡作業でも確認さ

れた企業である。また、この水揚げの際、シャイナヴィー・ コールド・ストレッジ社のトラックがソ・サプシンタイ20の傍 らに停車していたことも確認できている。海上合同検問 で、別の底引き網漁船3隻(サップパームナヴィー2、サップ パームナヴィー48、シャイナヴィー17(すべてヴィシャイ・サ ンスックイアム氏の登録))の船長らは、リーファー・ブリ スフルおよびリーファー・ウィズダムシー(いずれもワン シャイ・サンスックイアムの登録)への転載を行ったと証 言した。 さかのぼること数十年前、ワンシャイ・サンスックイアム氏 の両親がタイに一大水産帝国を築いていたことで、現在 は同氏を含む5人の子どもとその一族がこれら合同事業 のほとんどを運営している状態だ。特にワンシャイ・サンスッ クイアム氏とヴィシャイ・サンスックイアム氏の2名だけでサ ヤ・デ・マルハ・バンク操業漁船の4分の1以上を運用し ていた。これらの漁船はシャイナヴィーグループとシー ヴィックグループそれぞれのホールディング会社と関わ りがある住所に登録されており、このなかにはインドネ シア政府の調査対象となった船が少なくとも1隻含まれ ている238、239。サムットサーコンの極秘情報筋によれば、 「シャイナヴィー所有」とされるある遠洋漁船で脚気の集 団発生があり、2016年1月の帰港時には約10名の出稼 ぎ労働者が入院し、少なくとも1名の遺体が特に騒がれ もせず当局に収容されたと言った。これはほぼ間違い なく前述の報道をまぬがれた脚気事例のひとつと考え られる240。 タイ水産省の輸入関税免除漁船リストには、以前イン ドネシア領海で操業していた漁船18隻が掲載されてお り、これらの漁船は2つの会社によって運営されている。 これらの会社にはワンシャイ・サンスックイアム氏とヴィ シャイ・サンスックイアム氏がそれぞれその他4名の親 族とともに取締役として入っている241、242、243。このうち1 社の住所は、シャイナヴィー・コールド・ストレッジ社の ものとして登録されており、グリーンピースが追跡した出 荷物の9%が同社に送られていた。シャイナヴィー・コール ド・ストレッジ社の所有者であるヴィシャイ・サンスックイ アム氏はTOFAの前会長であり現在は名誉顧問兼理事 を務めている244。また2015年にサヤ・デ・マルハ・バン クで操業していた漁船のうち相当数(グリーンピースが 立ち会い、当局の検問を受けた3隻の底引き網漁船を含 む)はワイチャイ氏の名義で登録されており、リーファー・ シャイナヴィーもパナマ登記の会社経由で同氏の名義

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となっている245、246。ワイチャイ氏は高い利益を上げてい る小売・ホテル系不動産投資会社2社の株も少数保有 していた247。 ワンシャイ・サンスックイアム氏は少なくとも6隻のリー ファー(うち1隻がリーファー・ブリスフル)と数隻のサヤ・ デ・マルハ・バンク操業漁船に加えてホテル運営会社も 所有する漁業・水産加工業のシーヴィックグループの代 表者である248、249、250。ワンシャイ氏はTOFAの元会長で もあり、さらには2011年の任期満了まで上院議員として 上院農業協同組合委員会の第一副委員長を務めてい る251。国家汚職防止委員会の報告では同氏とその妻の 純資産は3億3,500万タイバーツ(950万米ドル)とされて いる252。3番目の兄弟のスワンシャイ氏はタイの超エリート校 である防衛大学校の出身253で、タイ商業会議所および タイ商品取引所の委員、倉庫貯蔵冷蔵業協会の会長を 務めている254、255。2008年には同氏の家族が運営する慈 善団体がスワンシャイ氏を上院議員に推薦していた256、 257 。 ヴィシャイ・サンスックイアム氏のシャイナヴィーグルー プは、この一族の女性家長が以前会長を務めていた タイ最大の水産物市場タレー・タイ(マハーシャイ・ルァム ジャイ・パッタナ社)に卸売り場を有していた258。グリーン ピースが行った追跡調査では、タレー・タイへのサヤ・デ・ マルハ・バンクの水産物出荷が少なくとも14件確認され た。なお、現在はヴィシャイ・サンスックイアム氏の親族 が同市場の取締役に名を連ねている 259。またヴィシャ イ・サンスックイアム氏の別の親族は、1970年代初めに 設立され、コシナガマグロやグルクマを含む極めて幅広 い水産製品を扱う卸売会社シリカーン・シーフード社を 経営していた。公式ウェブサイトによれば、同社はタイ・ユ ニオン冷凍食品会社の下請け業者上位5社のひとつで あり、タイの主要ショッピングモールのグルメマーケット やホームフレッシュマートにも水産物を卸していた260、261。 グリーンピースが追跡した5隻のリーファーからの出 荷件が最も多かったのは商社・流通のニワット・フィッシ ング社だった(21%)。同社は2015年にAP通信にタイ・ユニ オンへのサプライヤー(現在は異なる)として報じられた 会社である262。このニワット・フィッシング社の取締役に はスパマート・ルァンソムブーン氏がおり263、彼女の親 族であるパンヤー・ルァンソムブーン氏は2015年のAP 通信の報道によって世界的に悪名が知れわたったシル

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バーシーリーファー社の共同所有者のひとりだ264。この AP通信の調査がきっかけとなってタイ当局はルァンソム ブーン氏が共同所有する遠洋漁船を調査することに なったわけだが、同氏はその人身売買への関与を一切 否定した265。 2番目に出荷が多かったのは水産加工・冷蔵貯蔵会社 のマハーシャイ・マリーン・フーズ社だった(15%)。同社 にはパニャ・ルァンソムブーン氏とスパマート・ルァンソム ブーン氏の親族4名が取締役として入っている266。 また、少なくともトラック10台分の出荷品がニワット・フィッシ ング社に隣接する総合水揚げ施設、冷蔵貯蔵施設を運 営しているアール・シリシャイ・コールド・ストレッジ社に搬 入されたことも確認した267。インサイド・インドネシア誌に よれば、「シリシャイ社」またはシリシャイグループは、前 述のように汚職や水産物搾取がはびこる中、2003年には すでにアラフラ海でインドネシア水産資源の「合法的略奪」 に関与していた268。なお、ほぼ同時期にシリシャイグルー プはソマリアの沿岸警備隊の下請企業と保安契約を締結 した。2011年に出版されたソマリア海賊に関する書籍 で、この警備会社は現地漁業コミュニティよりも外国の クライアントの利益を守ることで知られており、「海上のみ かじめ料制度とも言える仕組み」を運営する「法執行者で あり、貿易管理者であり、独立請負業者である」と評されてい る269。シリシャイグループとの保安契約が終焉を迎える原 因となった、同グループの漁船上で起きたある事件後 の公式報道では、この警備会社の警備隊は「プントランド 国家警察」と描写されている270。シリシャイグループは、その 漁業ビジネスの一環で、サヤ・デ・マルハ・バンク最大規 模の漁船を3隻、同じく最大規模のリーファーを1隻、自社 水揚げ施設、そして前述の冷蔵貯蔵施設を保有してい た271、272、273。 ヴィシャーン・シリシャイ・エッカワット氏は前述のワン シャイ・サンスックイアム氏とともに上院農業協同組合 委員会の委員長を務め、2014年の軍事クーデターの時 点まで上院議員の職にあった274、275。同氏はタイ全国漁業 協会(NFAT)によって上院議員にも推薦された276。国家汚 職防止委員会の報告ではヴィシャーン氏と妻の純資産 は4億9,900万タイバーツ(1,420万米ドル)とされている 277 。ヴィシャーン氏はタイの漁業部門全体を見渡しても 最大の有力者のひとりであり、同氏とその兄弟はTOFA とNFATで複数の要職を占めている278、279。


ヴィシャーン氏はNFATの名誉顧問であり、タイ水産 業界の人権問題に関する多国間協議に同協会の代表 としてたびたび出席していた。また2008年に退任するま での5年間にわたり海洋管理協議会(MSC)の役員を務 め、現在はタイ魚粉生産者協会の名誉顧問となってい る280、281。 サヤ・デ・マルハ・バンクからの出荷先には、もうひと つの有力一族が所有する企業も複数含まれていた。ア ンダマン・スリミ・インダストリー社とアヌソーン・マハー シャイ・コールド・ストレッジ社である283、284。家長のアヌソー ン・テシャニティサワッド氏はアピラシャイ・フィッシング(現 存しない)の漁船団を用いてはじめてインドネシア領海で 操業を行った事業者として知られている285、286。以後、ア ヌソーン氏の漁船・リーファーの多くが他の事業者に売却 されているが、同氏の親族の一部がザップD、ハイシェ フ、ヒーローのブランド名で冷蔵貯蔵施設、すり身生産、

製氷、魚粉・サバ缶詰など様々な水産物関連事業を維 持していた287。なかでもアピシッド・テシャニティサワッド 氏は現在2期目のTOFA現職会長であり288、2016年7月 にはタイ中央労働裁判所の調停人に選任された289。また アピチャイ・テシャニティサワッド氏は、サヤ・デ・マルハ・ バンクからの水産物の出荷先のひとつであるアヌソー ン・マハーシャイ・コールド・ストレッジの重役も務めてい る。同氏はタイ魚粉生産者協会の理事会メンバーでもあ り、最近ではサムットサーコン県タイ工業連盟の委員長 に選出290、291されているほか、もうひとりの親族とともに すり身工場のアヌソーン・マハーシャイ・スリミの取締役 も務めている292。さらに、アヌシャー・テシャニティサワッ ド氏は、やはりサヤ・デ・マルハ・バンクの水産物の出荷 先であったアンダマン・スリミ・インダストリーのCEOを務 めており、タイ水産物輸出業者クラブであるタイ冷凍食 品協会(TFFA)の理事でもある293。

タイ南部ラノーンの公共漁港で水揚げ されたばかりの魚を仕分けるビルマ人 労働者たち。 © Chanklang Kanthong/Greenpeace

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タイの遠洋漁業 サプライチェーン

冷蔵貯蔵

冷凍水産物

冷凍水産物

漁船

生鮮水産物 屑魚 生鮮水産物

漁港

リーファー

魚粉工場

冷凍水産物 魚粉

冷凍すり身

すり身 ベース工場

卸売業者、 商社、 販売業者

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冷凍水産物 生鮮水産物

すり身ベース


卸売業者、 商社、 販売業者

小売業者

冷凍水産物

水産加工業者

飲食店

食品事業者

水産物 パッケージ・ 缶詰

切れ端 家畜 鶏、豚、エビ、 ナマズなど

ファーム

動物用 飼料工場

鶏、豚、 養殖水産物など

動物用飼料

カニカマ

ペットフード、 カニカマ 製造業者

すり身 加工業者

国内・国外に流通

キャットフード

成形すり身

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サプライチェーンの疑惑 ― 網から食卓まで タイの水産物サプライチェーン浄化を目指す政府・ 業界による数年間の取り組みにもかかわらず、2016 年のグリーンピースの調査では、いまだに人権侵害 やIUU漁業を通じて不正に漁獲された水産物がタイ 生産者のサプライチェーンに流入していることが確認 されている。これらの生産者は、世界のほぼあらゆる 地域に輸出を行う企業であり、日本に本社を置く世界 最大の複合水産企業であるマルハニチロ株式会社の 子会社キングフィッシャーホールディングズもそのひと つである294。米国、欧州、オーストラリア向けのイカ、エ ビ、サバ製品を生産するキングフィッシャー社は、2015 年のAP通信の現代奴隷報道でもその名前が挙がっ ている 295。米国の貿易データによれば、キングフィッ シャー社の水産物は米国の飲食チェーン、食品事業 者、卸売業者、小売業者を顧客とする材料調達企業へと 出荷されている296。 サヤ・デ・マルハ・バンクで漁獲された水産物のタイ の買い手には、タイ冷凍食品協会(TFFA)や輸出認可 団体の加盟企業の少なくとも10社が含まれている297、 298 。また、この他欧州連合向けの輸出認可を得ている 企業5社も含まれる299、300。人権侵害やIUU漁業によっ て不正に漁獲された水産物は現在も複数のタイ水産 業界団体の加盟企業のサプライチェーンに流入し続け ており、この事実は様々なタイ水産業界団体がこのよ うな不正操業の排除を約束した2015年6月16日の誓 約や、同様の公約のため、タイ政府とこれら団体の間 で交わされた2016年1月15日付けの覚書に真っ向か

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ら違反する301、302、303。これらの誓約には、「法令を遵守 していない漁船から原材料を買わないこと」、「IUU漁 業や人権侵害への関与が確認された加盟企業からの 権利剥奪のため、輸出許可を取り消すこと」が含まれて いる。 すり身のサプライチェーンは、今回の調査で確認され たなかでも不正操業に関連している危険性が最も高い もののひとつだ。すり身(魚肉をペースト状に加工したも の)は様々な形状に加工されアジア各地で幅広く消費さ れている。北米・欧州市場ではカニ肉を模した「カニカマ」 として最もよく知られており、寿司のネタや練り物、ペット フードなどに用いられることもある。今回サプライチェー ン関連の調査で、サヤ・デ・マルハ・バンクで漁獲された 魚がタイで3番目、4番目、5番目、6番目の大手すり身製造 業者に直接供給されていることが分かった304、305。2014 年にはタイ産すり身ベース(成形前のブロック)の57% は輸出されており、うち9%が欧州向けだった(ちなみに 同年のタイ産すり身加工製品の38%は輸出)306。しかし 2015年にはインドネシアでの漁業停止措置とタイ政府 のIUU漁業規制があったことで、すり身ベースの輸入量が ほぼ倍増したうえ、生産高も前年比25%減が見込まれ た307。また、切れ端やすり身加工の副製品は魚粉製造に 用いられるが、魚粉は最終的に様々な動物用飼料の原材 料となる。サヤ・デ・マルハ・バンクの魚を調達しているす り身製造業者も豚用飼料大手のユナイテッド・フィーディ ング社に魚粉を供給していた308。


タイ南部ラノーンの公共漁港で売られる水 産物。国境に面するラノーンは重要な漁港・ 貿 易 港 であり、隣 国 ミャンマーからの人 身 売買の主要ルートでもある。 © Chanklang Kanthong/Greenpeace

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あなたが食べている寿司や 与えているキャットフードは どこから来ている ?

インド洋漁船

洋上転載

「水産物はクレーンで吊り上げ られて冷蔵運搬船に移される。 [中略] この船にはセミトレー ラー50台分もの容量があるが、 国連や米国の基準で言うなら ばこれらはすべて奴隷労働に 関わっていると考えられる。」 309

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リーファー


その他の サプライチェーン

漁港

すり身ベース工場

すり身加工業者

仕分け

カニカマ

キャットフード

一般的なすり身生産ラインでは、最大 限の生産高を得るために加工の前にも う一度サイズ別に魚を仕分けする必要 がある。果たしてこの工程で不正な方法 で漁獲された魚と、そうでない魚を分け たままでいることができるだろうか?

寿司

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あなたの食べている寿司や 与えているキャットフードには 何が入っている?

ヒメジ?

ニベ?

人権

キャットフード

イトヨリダイ?

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すり身とは、「すりつぶした肉」を意味する日本 の言葉で、価格の低い魚をミンチにして砂糖や ソルビトールなどの甘味料を混ぜペースト状に したものである。様々な形状や質感に加工でき るため、カニやホタテ、エビ、ロブスターといっ たより高価な食材に似せることが可能。

IUU漁業?

侵 害?

イトヒキキントキ? 寿司

フ エダイ?

© Roengchai Kongmuang/Greenpeace

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2016年はじめ、1隻のリーファーがサヤ・デ・マルハ・ バンクで不正に獲得された水産物(漁船ソ・ソムブーン 19からの漁獲物を含む)をサムットサーコンで水揚げし た。このとき水揚げされたブリーム、フエダイ、ヒイラギ、 エソ、ヒメジ、イトヒキキントキの一部は同市内のすり身 ベース製造者であるパシフィック・マリンフード・プロダク ツ社にも運送されたことだろう。グリーンピースの調査 結果を提示したところパシフィック・マリンフード・プロダ クツ社から書面で回答があった。このなかで同社は、 2015年8月~2016年1月の間にグリーンピースが作成 した問題漁船リストの漁船から原材料を調達したことを 認めているが、どの漁船かは明らかにしなかった310。ま た、グリーンピースの調査では、パシフィック・マリンフー ド・プロダクツ社が2つの現地すり身加工工場にすり身 ベースを供給していること、さらにそれらの工場で生産さ れたすり身加工製品はアジア太平洋地域、欧州、北米 の幅広い卸売業者、スーパーマーケット、飲食店に供 給されていることも分かった311、312、313。 さらに、このすり身ベース製造者はタイ・ユニオンの 傘下のすり身加工業者、ラッキーユニオンフーズ社 (LUF)にも製品を供給していた314、315、316。なお、2016年 11月にグリーンピースがタイ・ユニオンの代表者らと会 談した際、同社はパシフィック・マリンフード・プロダクツ 社が問題の期間にLUF社に製品供給したことを認めて いる。 米国の貿易記録によれば、LUF社は2015年8月~ 2016年8月までにアジアの食品流通会社7社および国 内の食品事業者にカニカマを供給していた317。これらの 供給先には、マーケットリーダーであるリー・ブロス社の ように、複数の大手飲食チェーンや小売業者(コストコ含 む)やフードサービス業者のサプライヤーも含まれてい る318。なお、リー・ブロスが供給しているフードサービス 業者のうち4社は、グリーンピースが「責任ある調達」、 「トレーサビリティ」など5つの基準で評価した2016年8 月の報告書で下位にランクされた事業者である319、320。 また、LUFの米国顧客であるアドバンス・フレッシュ・コン セプトは「持ち帰り用のプレミア寿司やアジア料理の事 業者」として世界3,800以上のフランチャイズに製品を 供給しているとうたっている321。

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タイ・ユニオンの年次報告書によれば、LUFはタイ・ユ ニオン・マニュファクチャリング(TUM)にもペットフード用 成形済みすり身を供給しており、グリーンピースの調査 でも、LUF社のトラックがTUM所有の工場で荷を降ろし ていることが確認されている322。TUMは世界的なブラン ドである『ファンシーフィースト』や『アイムス』を含む様々 なブランドのペットフードを生産している。TUM社から米 国への出荷記録によれば、すり身は少なくとも『ファン シーフィースト』(ネスレ・ピュリナペットケア傘下)が製造 するキャットフード5種、 『ミャオミックス』(ザ・ジェイ・エ ム・スマッカーカンパニー傘下)のキャットフード1種に使 用され、北米中で販売されている323。なお、2016年11月に グリーンピースがタイ・ユニオンの代表者らと会談した際、 タイ・ユニオンはLUF社のすり身がネスレ・ピュリナペッ トケア、ザ・ジェイ・エム・スマッカーカンパニーのキャット フードに使用されていることを認めている324。 TUM社が製造したすり身の入った『ファンシーフィー スト』の「ブロス」と『ミャオミックス』のキャットフード缶の 両方もしくはどちらかが、少なくとも25の小売業者を通し 全国的に販売されていた。これには、米国の大型小売 チェーン上位5社中4社(ウォールマート、クローガー、ア ルバートソンズ、アホールドデルハイデ)のほか、大手 ペット用品店も含まれている325。 また、29種類の同一または類似した高級キャットフー ドが英国、イタリア、日本、オーストラリア、ニュージーラ ンド、台湾でも確認された326。これらは、ネスレ・ピュリナ ペットケア傘下の『ファンシーフィースト』、『モンプチ』、 『グルメ』のブランドの名で販売されている。初期調査を 通し、上記ネスレ・ピュリナペットケア製品のうち25種類 のキャットッフードの包装に「タイ製」もしくは「タイ・ユニ オン・マニュファクチャリング製」と記載があり、これら6カ 国の大手15小売店に陳列されていることが判明してい た327。さらに、タイ・ユニオン製キャットフード2種類にも すり身が使用されており、キャットフードブランドのベロッ タの商品としてタイの主要小売店で売られていることが 分かっている328。 なお、本レポートで指摘したタイ水産業に関わる多く の問題や諸々の事例を鑑みて、ネスレは強固な措置を講 じ、同社のグローバルサプライチェーンから洋上転載を排 除することを約束した329。


グリーンピースの調査結果についてタイ・ユニオンは、 LUF社から供給されたすり身がグリーンピースの指摘す る大手キャットフードブランドに使用されていることを認 めた。そして、グリーンピース調査対象期間中にLUF社 がパシフィック・マリンフード・プロダクツ社から調達を行っ ていたことは事実だが、いかなる時点においてもパシ フィック・マリンフード・プロダクツ社がLUF社に供給した すり身にグリーンピースが指摘した11隻の船(5隻のリファー 含む)を供給源とする原材料は含まれていないとも主張 していた330、331。 また、タイ・ユニオンはその回答のなかで、LUF社 のすり身サプライチェーンでは原材料供給元を管理 するためのトレーサビリティ体制を敷いており、特に、 LUF社サプライチェーンのすり身ベース製造者に原 材料を供給するすべてのタイ漁船から漁獲物調達記 録(MCPD)の提出を受けていることを強調していた。 MCPDには漁獲物の水揚げ場所と漁船の詳細が記載 され、漁業日誌などの記録も添付される。この記録は 販売時に漁船の船長が作成・署名し、水産省の検査を 経て原材料とともに流通していく。2015年12月に発効 したタイ王国漁業条例B.E.2558(2015)は漁港・市場に MCPDの添付を義務づけている。 グリーンピースへの回答にMCPDを根拠として挙げて いたのはタイ・ユニオンだけではない。パシフィック・マリ ンフード・プロダクツ、紀文(タイ)、アンダマン・スリミ・インダ ストリーも、サプライヤーにはMCPDの作成を要求してい るほか、タイ冷凍食品協会(TFFA)やタイマグロ産業協 会(TTIA)もその加盟企業に対して同様の要件があること を言及している332、333、334、335、336。すり身ベース製造者の アンダマン・スリミ・インダストリーとパシフィック・マリン フード・プロダクツは、使用しているサプライヤーはMCPD、 漁獲物転載記録、遠洋漁業許可証を提出して適法に操 業しており、原材料産地トレーサビリティに問題はないと 強調している。 このように複数の団体がグリーンピースの調査結果 に対する反論としてMCPDを挙げているという事実か ら、タイの水産物サプライチェーンからIUU漁業と人権侵 害を排除しようと表向きには取り組んでいるこれら企業の 調達行動に疑問を抱かるを得ない337、338、339。都合よく公 になった、サヤ・デ・マルハ・バンク漁船における人権侵 害報道の事実ひとつを取っても、MCPDによってサプラ

イチェーンから不正な水産物を排除できなかったのは明 らかである。 タイ・ユニオンは上記のように回答していたが、MCPD に依存したすり身のトレーサビリティ体制には問題があ る。現在、タイ水産業界のトレーサビリティ施策の大部 分は書面上によるものであり、そもそも、船長や漁船操 業者といった利害関係者の自己申告に大きく依拠して いる。とりわけ、漁業日誌や船長の証言、その他MCPD の根拠となる書類記録を適切に検証する機能がいまだ 水産省やその他政府当局によって開発中であることを 考えれば、このような体制は文書ねつ造の温床となる。 現行システムでこれらの記録を適切に検証するには、 時間・労働力などリソースがかかりすぎるため、持続性 がない。漁業日誌の記録は多かれ少なかれ船長による 見積もりであり、通常は手書き(しかも多くの場合は帰 港後に記入される)で水産省に提出される。現行のシス テムでこうした記録を適切に検証するには、水産省が 漁獲物の水揚げ・計量に立ち会い(漁獲物転載記録の 検証については、洋上転載の立ち会いも)、さらには漁 船監視システム(VMS)を追跡して日誌に記載されている 漁獲海域・時期を検証する必要があるだろう。なお、 ヒューマニティ・ユナイテッドとフリーダム・ファンドは、タイ 政府による近年のトレーサビリティ対策について評価し た2016年のレポートで、魚粉サプライチェーンについて 次のように記していた。 「・・・・・・企業はトレーサビリティの確保、漁業管理、さら には自社製品が人権侵害や環境破壊に無縁であるこ との担保[について根本的な課題]に直面していた。洋上 転載が蔓延しているということは、違法漁船がほとんど 港に戻らずに市場に原材料を供給できているということ だった。港に検査体制が存在せず、民間水揚げ施設の 数が多いうえにこれら施設の多くは直接現地の魚粉工 場に漁獲物を販売していることから、タイの水産物の多 くは記録されることなく加工に回されているのが現状だ。 唯一の記録は調達関連書類だが、この書類は事業者 や漁船操業者の側で作成される。彼らは漁獲量の過小 報告や漁船の虚偽報告によって利益を得られる立場で あることから、この書類が偽装されたり報告ミスがあっ たりする危険性が高く、その信頼性は極めて低いと言え る。また魚粉製造に使用される漁獲物は多くの漁船か らのものが一緒くたになっているため、どの漁船から得 られた原材料なのかを特定することはほとんど不可能

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であり、魚粉の製造に使用される原材料の少なくとも一 部は奴隷労働に頼ったものである可能性が高い。」340 すり身の製造自体が持つ特徴もまた、水産物のトレーサビ リティの確保を困難にしていた。一般的に、すり身生産 ラインでは加工に入る前に手作業で魚を種類別に仕分 け、洗ってきれいにした後で再度サイズ別に仕分ける必 要がある。これは機械加工をスピードアップし、生産ライ ンで使用できる身の部分をできるだけ多くするための工 程だ。また、すり身はそもそも色々な魚をすりつぶして 混ぜ合わせ魚肉ペーストに加工したものである。ほとん どのすり身工場には一括管理・在庫システムがあるが、 同時にすり身製造業には似たような大きさの魚を一括 加工して卸すことで生産効率、生産高、利益を上げるこ とができるという経済原理も存在する。パシフィック・マリ ンフード・プロダクツのような企業が、すり身生産プロセ スにおいて違う原材料が混ぜ合わさる危険性がゼロで あることを確実かつ実証可能な方法で顧客に保証でき ないのであれば、強固なトレーサビリティ体制構築に向 けたタイ・ユニオンらの企業努力はその根本から揺らぐ ことになる。 冷蔵貯蔵施設もまた、グリーンピースの調査により不 正漁業による漁獲物のサプライチェーンへの流入ポイ ントである危険性が高いと確認された。冷蔵貯蔵施設に は巨大企業の組織の一部となっているものもあれば、 民間の原材料再販・貯蔵業者が第三者向けサービスと して運営しているものもある。水産省によれば、タイ国内 の冷蔵貯蔵施設のレイアウトおよび在庫はタイの漁港 に水揚げされた魚に適用される記号体系に従っており、 当局は1年に最低2回は冷蔵貯蔵施設の検査を行ってい ると言った341。しかしながら、本レポートでもすでに述べ たように、IUU漁業によって漁獲され、タイの漁港で水揚 げされたマグロ類・サメ類についてタイ当局がその漁獲 海域を把握していないことは公式記録から明らかであ り、企業はこれらの記録を正確に申告していなかったも のと思われる342。 IUU漁業および人身売買に関与したとされる3隻の刺し 網漁船に関するグリーンピースの調査結果に対してタイ マグロ産業協会(TTIA)は、これら3隻から水揚げされた マグロ類・サメ類がMPCDおよび漁獲物転載記録で報告 されていない「可能性がある」ことを書面での回答で認め ている343。数年にわたって水産物を貯蔵できる冷蔵貯

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蔵施設もあることから、持続可能かつ倫理的な水産物 調達を可能とするための、隙のないトレーサビリティ体制 が必要不可欠だ。信頼性のあるトレーサビリティ文書が なければ、グローバル市場向けの缶詰やペットフードを 製造している加工業者のサプライチェーンに不正なマグ ロが流入する危険性は著しく上昇する。 前述のTUM社は国内外の大手ブランド向けに、魚肉を 使用したキャットフードや缶詰製品を製造していた。これ らの製品にはマグロに加えてサバ、フエダイ、ハタ、タイ といったサヤ・デ・マルハ・バンクで獲れる魚が使用され ている。また、グリーンピースは2016年、サヤ・デ・マル ハ・バンクの漁獲物の供給先として特定されたある冷蔵 貯蔵施設からタイ・ユニオンが複数回にわたり何らかの 在庫原材料を引き取っていることを確認していた。これら 在庫原材料を積んだトラックはTUMの工場に入っていっ た。グリーンピースが取材した複数の情報源によれば、サ ヤ・デ・マルハ・バンクの漁獲物が保管されている他の冷 蔵貯蔵施設もタイ・ユニオンとの間に同様の供給関係 を持っているという344。なお、2016年11月、タイ・ユニオ ンはグリーンピースに書面で回答し、次のように自社の 冷蔵貯蔵施設トレーサビリティ体制への自信を示してい た。「[当社は]指摘された冷蔵貯蔵施設のいくつかを利 用していたが、漁獲物記録、さらには漁船から貯蔵、加 工に至るまで追跡を行う当社独自のトレーサビリティ体制を 用いることで、これら施設に貯蔵する漁獲物のトレーサビ リティを完全に確保している。」345 2016年9月現在、グリーンピースはサヤ・デ・マルハ・ バンクで無規制漁業を行っていたタイ籍底引き網漁船 で漁獲された水産物が、引き続きタイの主要な生産者 に供給されていることを確認した。これらの生産者には パシッフィック・マリンフード・プロダクツも含まれており、 同社は世界的なキャットフードブランド用の成形済みすり 身や米国向けのカニカマを製造しているタイ・ユニオンの 子会社に原材料を供給していた。


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12 結論

2016年7月、タイ水産省は新たに訓練を受けた、初の 漁業オブザーバー2名を遠洋漁船団に派遣したと発表し た346。同月にはリーファー・ミッソーリがサヤ・デ・マルハ・ バンクに戻っており、2016年9月になってもなお、大量の 水産物が同リーファーを所有管理するグループの大手 生産者へと供給されている。サヤ・デ・マルハ・バンクで は、タイ籍の底引き網漁船が今日も操業していた。しか し、2016年半ばに取材に答えた水産省当局者の話によれ ば、タイはモーリシャスおよびセーシェルと漁業協力協定を 結んでいない347。よって、現在サヤ・デ・マルハ・バンクで 行われている漁業活動は、「タイが漁業協力に関する基 本合意書を締結している沿岸国が管轄する領海」および 「タイが加盟している地域漁業管理機関(RFMO)または 国際機関が管轄する公海」348に限り、タイ籍遠洋漁船は 操業が許可されるとした政府規制への明らかな違反行 為だ。サヤ・デ・マルハ・バンクで、これに該当する国際 機関はない。 2016年半ばにリーファーの支援を受けたタイ遠洋漁 業活動が再開された時点で、どこかの海域で再びこの 悪質かつ汚職に満ちたビジネスモデルが行われるのは 時間の問題だった。7月に水産省が出した漁業オブザー バーに関する発表の直前には、タイとフィジーが「タイ漁 船への入漁許可書発行」を盛り込んだ漁業協力協定の 交渉を行っているとの報道もあった349。12カ月間にわたる グリーンピースの調査研究は、タイの遠洋漁業界で水揚 げされている不正に漁獲された水産物に関して、潮目を 変えるきっかけとなるいくつかの方向性を浮き彫りにして いる。 まず、悪質なタイ漁船がこれまで漁場を転々としてきた 背景には、強化されたMCSE(監視・管理・監督・法規制)

69 Greenpeace Southeast Asia Turn the Tide

措置から逃れる目的が見られた。このことから、堂々 と悪質な操業ができる海域を制限していくためには、 MCSE措置に関して地域協力をさらに強化していく必 要があることが分かる。 地域協力の強化によって取り締まるべき項目のひと つは洋上転載である。洋上転載は、違法に漁獲された 魚のロンダリングや人身売買された労働者の輸送を容易 にするだけでなく、長期操業を可能にし、奴隷労働者をい つまでも洋上に孤立させることを可能にする。政府による 調査でも示されている通り、ソ・ソムブーン19をはじめとす る脚気が集団発生したサヤ・デ・マルハ・バンクの底引 き網漁船の乗務員が死亡したり、入院したりした直接 的な原因のひとつは、洋上転載を利用したビジネスモ デルなのである。 本レポートですでに述べた洋上転載に対するタイ政 府の暫定措置は、とても十分なものとは言えない350。こ れらの規制は常設されるべきだけでなく、不正行為の 完全排除に向けた研究と政策決定による厳格な監視 体制も追加されるべきである。 タイ政府は旗国としての責任を果たし、サヤ・デ・マル ハ・バンクでの操業を行う前に、確実に適切な保護管 理措置を導入するべきだ。 また、タイの遠洋漁業および海上物流の大部分が比較 的少数の事業者によって運営されているということは、 同部門全体の改革を推進するにも停滞させるにもこれ ら重要人物が大きな意味を持つということだ。


こうした「Big Fish(大物たち)」はその多くが水産物サ プライチェーン全体やその他の部門、さらには政治から さえ利益を得ている同族企業グループに属している。この ことから、長期的な未来を見据えて慎重にきめ細かな政 策を決定していくことがいかに重要であるかが分かる。 一方、当局は基準を満たさない事業者を追い詰め、法 の裁きを受けさせなければならない。政府は2016年初 めに6隻のマグロはえ縄漁船を差し押さえて、その所有 者らを違法漁業の容疑で起訴するなど、すでに新たな 法制度のもと遠洋漁業者による法令順守徹底のために 権限を行使する意思と能力を示していた351。当局はこれに とどまらず、サヤ・デ・マルハ・バンクとその周辺海域で 違法操業を行うすべての遠洋漁業者の責任を問い、適 切な制裁を受けさせる必要がある。 悪質極まりない違反者を海上から駆逐することができ れば、海と人にとって真に良い影響があるばかりか、タイ の現代奴隷制や違法漁業を推し進めてきた乱獲による 環境への影響も軽減される352。 定期的な検問とその強化は、現在タイが行っている 人権侵害・IUU漁業対策における不可欠な要素だ353。し かしグリーンピースが立ち会ったサップパームナヴィー 2、サップパームナヴィー48、シャイナヴィー17の検問の 様子やコ・ナーヴァーモンコンシャイ1、コ・ナーヴァーモ ンコンシャイ8、コ・ナーヴァー19の人身売買被害者らが 語った実体験からは、現在の海上検問手法に関する課 題が浮かび上がってきた。悪質な事業者を根絶するに は、政府が検問の枠組みを改善し、対策強化の一環と して他国や民間との情報交換を活発化させなければな らないだろう。 また、市場から不正な水産物を排除するには生産者、 バイヤー、業界団体、消費者の取り組みも不可欠であ る。今回のサプライチェーン調査では、不正な方法で漁 獲された水産物が2016年を通してグローバル市場への 輸出サプライチェーンに流入していることが実証された。 なかでもこうした魚はタイ・ユニオンの製品として寿司ネタ やキャットフードに用いられている可能性が極めて高い のである。

「製品のトレーサビリティ」と「調達の透明性」は水産物 の搾取やIUU漁業・強制労働により漁獲された魚のロン ダリングに対抗するために不可欠な要素だ。しかし、脚 気集団発生のあった底引き網漁船で漁獲されたすり身 原材料や、人身売買され労働者を使用してIUU漁業に 従事していた刺し網漁船のマグロ類・サメ類のトレーサビ リティには複数の疑問符が付き、タイ政府の現行トレー サビリティ体制の信頼性を疑わしいものにしていた。 とはいえ、最終的な責任の所在は業界そのものにある。 疲労困憊した労働者、その多くが強制労働の被害者 であると思われ、現代では滅多に見られない病により死 の危険にさらされている。そのような労働者に漁獲され た魚が、今でも高い確率で世界有数のキャットフードブ ランドのサプライチェーンに流入しているという事実は、 水産物の調達・追跡に関わる制度の大幅改善が必要で あることを如実に示している。「サプライヤーから顧客に至 るまで」、あるいは「ブランドメーカーから消費者に至る まで」の調達とトレーサビリティを完全に保証することは不 可欠だ。タイ・ユニオンとネスレの両企業はすでに水産 物トレーサビリティ向上への取り組みを始めている 354、 355 。例えば、ネスレ・ピュリナペットケアはこうした問題に 関する継続的な懸念に対応するために洋上転載の禁止 を約束し、IUU漁業や海上労働者に対する人権侵害の 撲滅に向けて強力なリーダーシップを発揮している。 タイは、輸出を主眼とする同国の水産物サプライ チェーンから悪質な漁業と人権侵害を排除するため前 進しかけている。しかしながら、タイの遠洋漁業部門に 対する持続的監視、毅然とした統制、そして漁業部門内 に真の責任がなければ、苦労して成し遂げた改革も、な し崩し的に形骸化して無意味なものとなってしまう。国内 外を問わず民間部門、公共部門、第三部門のすべての 利害関係者が責任をもって一致団結し、持続可能かつ 倫理的な方法で生産されたタイ水産物のみが、世界中 の店の商品棚、冷凍庫、寿司屋、そしてあなたの猫へと 届けられるようにしなければならない。

70


13 提言

すべての利害関係者 ● 即座に、かつ恒久的に洋上転載を禁止するか、ある いは強制力のある枠組みによって同行為の禁止に 向け全力をつくす(より適した方を採択)。 ● サヤ・デ・マルハ・バンクのような「遠洋における脆弱 な海洋環境」での「底引き網漁をはじめとする無規制 かつ破壊的な漁業行為」の一時的な停止、あるいは 強制力のある枠組みによって同行為を禁止する(よ り適した方を採択)。

タイの業界団体 タイ遠洋漁業協会(TOFA)、タイ冷凍食品協会(TFFA)、タイ食品加工協会(TFPA)、 タイ海老協会(TSA)、タイマグロ産業協会(TTIA)、タイ魚粉生産者協会(TFMPA)、 タイ飼料生産者協会(TFMA) : ● 2016年1月15日にタイ王国政府との間で調印された、タイ水産物サプライチェーンから違法漁 業および人権侵害を排除するための覚書のもとに定められた公約を果たす。具体的には、IUU 漁業・搾取・人権侵害を通してサヤ・デ・マルハ・バンクから漁獲された水産物のサプライチェー ンへの流入経路を明らかにすべく、迅速で透明性ある調達監査を行う。 ● 可能な場合、市場から当該水産物の在庫を排除し、これが不可能な場合はバイヤーに正式 な通知を発行する。 ● 不正な手段で漁獲された水産物を調達または供給したことが証明された企業の会員資格・輸 出許可を取り消す。 タイ遠洋漁業協会(TOFA)、タイ海洋漁業協会(TSFA)、タイ冷凍食品協会(TFFA) : ● IUU漁業および/または労働者虐待の疑いがあるすべての企業の会員資格を即座に一時停 止する。また、規制当局・市民団体と連携してこれらの内部調査を実施し、IUU漁業および/ または労働搾取に関わったことが確認された企業の会員資格を取り消す。 ● すべての加盟企業に対し、ビタミン補助食品の備蓄、遠洋漁船上での食事・栄養状態・健康 に関する詳細なガイドライン(搭載医薬品チェックリスト含む)の規定を義務づける。また、すべ ての加盟企業に対し下記に基づく基準書を発行する。 ● 海上労働者の安全、衛生、健康に関する省令B.E.2558(2015) ● 海洋漁業従事者の保護に関する省令B.E.2557(2014) ● すべての加盟企業、およびこれらの企業が運営するすべての遠洋漁船・支援船の一覧を最 新に維持し公表する。

71 Greenpeace Southeast Asia Turn the Tide


タイ王国政府 ● 漁業許可を得ているすべての遠洋漁船・支援船の一覧を最新に維持し公表する。また、企業 または漁船所有者、使用許可された漁具、有効期間、操業海域を明記する。 ● タイ領海外における洋上転載についての現在の暫定措置を無期限に延長する。また、漁船監 視システム(VMS)のデータを精査してオブザーバーの報告内容、海上積み替えに関する申告 内容を検証する。洋上転載を漸次廃止することで所定の期間に想定される経済的影響を調 査するためにリソースを投入する。 ● すべての遠洋漁船・支援船に船舶自動識別装置(AIS)トランスミッターを搭載・保守し、常時信 号送信をオンにすることを義務づける規制を取り入れる。また、漁業活動を行っていないときに AIS機器をオフにする、あるいは改ざんするといった行為に対する適切な制裁措置を講じる、 また同機器に故障があった場合には帰港することを義務づける条項を盛り込む。 ● 搾取・虐待の徴候を読み取るための検査官(海上・漁港)の能力を向上させる。また、威圧や 威嚇を一切受けず、確実に、遠洋漁船の労働者らが公式・非公式の両経路(例:市民社会)を 通して労働状態を定期的に報告できるようにする。 ● 既存の法令を基礎に、遠洋漁船乗船中における食事・栄養状態について明確な基準を定め、 すべての乗組員へのビタミン補助食品の支給を義務づけることで、漁師の安全と福祉の保護 をさらに強化する。また、業界と協力して遠洋漁船のための「病院船」の仕組みを確立する。 ● 2015年~2019年の国家統制・査察計画に記載された目標を強化する。具体的には、タイ漁 港(国有漁港以外の漁港を含む)に寄港するすべてのタイ籍冷蔵貨物運搬船を出入港管理 (PIPO)・寄港国措置協定の枠組みの元、検問する。また、検問にはVMSデータや漁業オブ ザーバー報告を統合したデジタルデータベースを可能な限り用いる。

72


14 付録

1. グリーンピースの調査対象となったサヤ・デ・マルハ・バンクで 操業していたタイ籍漁船 漁船名

旗国

総トン数 (GT)

漁具

登記名義人

コ・ナーヴァーモンコンシャイ1

タイ

160 GT

流し網

カムヌンヌァン・ヲンカチョンキッティ氏

コ・ナーヴァーモンコンシャイ8

タイ

158 GT

流し網

カムヌンヌァン・ヲンカチョンキッティ氏

ソ・ソムブーン19

タイ

296 GT

底引き網

ワイチャイ・パターナウィタヤナン氏

サップパームナヴィー2

タイ

798 GT

底引き網

ヴィシャイ・サンスックイアム氏

サップパームナヴィー48

タイ

483 GT

底引き網

ヴィシャイ・サンスックイアム氏

シャイナヴィー17

タイ

383 GT

底引き網

ヴィシャイ・サンスックイアム氏

2. 2015年8月~2016年1月の間にサヤ・デ・マルハ・バンクで 操業していたタイ籍リーファー リーファー・ブリスフル

5296795

334640000

ホンジュラス

リーファー・シャイナヴィー

7637591

334567000

ホンジュラス

リーファー・ミッソーリ

7635878

567293000

タイ

パットソーン

7713230

567391000

タイ

プレシャス9

7811513

334816000

ホンジュラス

シーネットワーク

7637553

567487000

タイ

リーファー・シリシャイ

8211837

567196000

タイ

リーファー・ウィズダムシー

7637527

334674000

ホンジュラス

73 Greenpeace Southeast Asia Turn the Tide


3. サヤ・デ・マルハ・バンクの5隻のリーファーからの届け先別出荷割合 2015年11月~2016年1月(出荷量は反映せず)

ニワット・フィシング社 タレー・タイ市場 グラムバーケン L.P グローバルフィッシュ社 アピテゥン・エンタープライズ・インダストリーズ社 キングフィシャー・ホールディングス PLC チョックマチャチャイ・マリン社 K.L コールドストレッジ社 ニワット・フィッシュミール・インダストリーズ社 スリサーエングラウンピー社(SRSP) マハーシャイ・マリンフーズ社 シャイナヴィー・コールドストレッジ社 アールシリシャイ・コールドストレッジ社 パシフィック・マリンフード・プロダクツ社 PTマハーシャイ・コールドストレッジ社 アンダマン・スリミ・インダストリーズ社 スターフィッシュ社 シンチャイ・コールドストレッジ社 サムットサーコン水産取引団体の港 アヌソーンマハーシャイ・コールドストレッジ社

74


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Department of Fisheries, Thailand (2016) ฐานข ้อมูลเรือประมงทีม ่ าขึน ้ ทะเบียนตามระเบียบกรมประมงว่าด ้วยการจดทะเบียนและขอรับหนังสือรับ รองสาหรับของได ้รับการยกเวน ้อากร http://www.fisheries.go.th/foreign/ fisher2/images/004.pdf

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Presidential Task Force to Combat Illegal Fishing, Indonesia (2016) Ex-Thai missing vessels

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Refers to gross tonnage figures for eight reefers (Asian Marine Reefer, Blissful Reefer, Celtic Ice, Mega Reefer, Precious 9, Silver Sea 2, Silver Sea 3, Wisdom Sea Reefer) using figures sourced from http:// www.marinetraffic.com/

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Thai Overseas Fishing Association (TOFA) (2016) คณะผู ้บริหาร http:// www.tofa.or.th/index.php?mo=59&action=page&id=130880

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Bangkok Post (2015) New fishing law ‘lacks public input’ http://www. bangkokpost.com/print/710420/

279.

Seafood Source (2008) SCA’s Boots joints MSC Board http://www. seafoodsource.com/news/environment-sustainability/sca-s-bootsjoins-msc-board

82


300.

Ministry of Foreign Affairs, Thailand (2016) Thailand further strengthens regulations to improve labor condition in fisheries sector Private sector signs MOU to eliminate forced labor from supply chain http:// www.thaiconsulatechicago.org/uploads/Press-Release-FurtherImprovement-of-Labor-Conditions-in-Thailand-Fisheries-Sector-1Feb-2016.pdf

301.

Board of Trade, Thailand (2015) Board of Trade of Thailand leads key private-sector players in redressing fishing and human trafficking issues in line with Government policy http://www.seavaluegroup. com/download/Press%20Release_ENG.pdf

302.

Ministry of Foreign Affairs, Thailand (2016) Thailand’s progress in combatting IUU fishing http://www.thaiembassy.org/budapest/contents/files/news-20160126-212654-264858.pdf

303.

Respectively - Starfish Co. Ltd., Andaman Surimi Industries Co. Ltd, Pacific Marine Food Products Co. Ltd., Apitoon Enterprise Industries Co. Ltd.

304.

Southeast Asian Fisheries Development Center (2007) Status of surimi industry in the Southeast Asia http://map.seafdec.org/downloads/ pdf/publication-surimimile/Report_Status%20of%20Surimi_Part1_final_ed2.pdf

305.

Undercurrent News (2016) Thailand to double 2015 surimi imports as domestic production dives https://www.undercurrentnews. com/2015/09/30/thailand-to-double-2015-surimi-imports-as-domestic-production-dives/

306.

Undercurrent News (2016) Thailand to double 2015 surimi imports as domestic production dives https://www.undercurrentnews. com/2015/09/30/thailand-to-double-2015-surimi-imports-as-domestic-production-dives/

307.

United Feeding (2016) About us http://www.unitedfeeding.com/ index.php?lay=show&ac=article&Ntype=4

308.

Associated Press (2015) AP Investigation: Slaves may have caught the fish you bought https://www.ap.org/explore/seafood-fromslaves/ap-investigation-slaves-may-have-caught-the-fish-you-bought. html

309.

Pacific Marine Food Products (2016) Written response to Greenpeace, 16 November 2016

310.

Greenpeace (2016) Interview with confidential informant, Samut Sakhon, July 2016

311.

Thaveevong Industry (2016) About us http://www.tvi.co.th/aboutus/?lang=en

312.

Kibun Trading (2016) About us http://www.kibun.com.sg/about/

313.

Greenpeace (2016) Interview with confidential informant, Samut Sakhon, July 2016

314.

Greenpeace (2016) Interview with confidential informant, Samut Sakhon, September 2016

315.

Thai Union (2016) Annual report 2015 http://tu.listedcompany.com/ misc/ar/20160317-tu-ar2015-en-04.pdfhttp://tu.listedcompany.com/ misc/ar/20160317-tu-ar2015-en-04.pdf

316.

AFC Distribution Corp; Ocean Blue Products, Inc.; Rhee Bros. Inc.; Nishimoto Trading Co. Ltd.; China Mehadrin Products; South Eastern Food Supplies; Daiei Trading Co. Inc.

320.

Advanced Fresh Concepts Corp. (2016) About the company http:// www.afcsushi.com/index.php?main_page=about_us

321.

Thai Union (2016) Annual report 2015 http://tu.listedcompany.com/ misc/ar/20160317-tu-ar2015-en-04.pdf

322.

Fancy Feast Creamy Broths Wild Salmon & Whitefish in a Decadent Silky Broth; Fancy Feast Classic Broths Chicken, Vegetables & Whitefish in a Decadent Silky Broth; Fancy Feast Classic Broths Chicken, Vegetables & Whitefish in a Decadent Silky Broth; Fancy Feast Classic Broths Tuna, Anchovies & Whitefish in a Decadent Silky Broth; Fancy Feast Creamy Broths Tuna, Chicken & Whitefish in a Decadent Creamy Broth; Meow Mix Savory Morsels Real Tuna and Crab in Gravy

323.

Thai Union (2016) Comments made by senior representatives from Thai Union Group and companies during a meeting with Greenpeace, 22 November 2016

324.

Full list includes: Ahold-Delhaize, Albertsons, Demoulas Market Basket, Dierbergs, H-E-B, Hy-Vee, Giant Eagle, K Mart, Kroger, Lower Food Store, Lowes, Meijer, Petco, Petsmart, Pet Supplies Plus, Publix, Save Mart, Schnuks, Southeastern Grocers, Stater Bros., SUPERVALU, Target, Wakefern, Walmart, Wegmans,

325.

Fancy Feast Classic Broths Chicken, Surimi and Vegetables in a Decadent Creamy Broth (Australia); Seabream, Surimi, Sole and Snapper in a Decadent Silky Broth (Australia); Fancy Feast Royale Broths Tuna, Surimi & Whitebait in a Decadent Silky Broth (Australia); Fancy Feast Royale Broths Tuna, Surimi & Whole Prawns in a Decadent Silky Broth (Australia); Fancy Feast Royale Broths Bonito, Surimi and Anchovies in a Decadent Silky Broth (Australia); Gourmet Soup Classic Con filetti di tonno naturale e gamberetti interi (Italy); Gourmet Soup Classic Con filetti di tonno naturale e deliziose acciughe (Italy); Gourmet Soup Classic Con fiocchi di pollo naturale, pesce Bianco e gustose verdure (Italy); モンプチ まぐろスープ かにかま、 しらす入り(Japan); モンプチ まぐろスープ かにかま、 かつお節入り (Japan); モンプチ まぐろスープ かにかま、小海老入 り(Japan); モンプチ かつおスープ 小魚、かにかま入り(Japan); モ ンプチ 鯛入りスープ 舌平目、かにかま入り (Japan); モンプチ さ さみスープ 緑黄色野菜、かにかま入り (Japan); モンプチ まぐろ、 かにかま、 しらす入り クリーミースープ (Japan); モンプチ まぐろ、か にかま、 ささみ入り クリーミースープ (Japan); モンプチ ささみ、か にかま、緑黄色野菜入り、 クリーミースープ (Japan); モンプチ 11歳以 上用 かがやきサポート まぐろスープ ささみ、かにかま、 しらす入り (Japan); Fancy Feast Royale Broths Tuna, Surimi & Prawns in a Decadent Silky Broth (New Zealand); Fancy Feast Royale Broths Chicken, Surimi & Vegetables in a Decadent Silky Broth (New Zealand); Fancy Feast Royale Broths Tuna, Surimi & Whitebait in a Decadent Silky Broth (New Zealand); 貓倍麗鮪魚蟹肉極品濃湯 (Taiwan); 貓倍麗銀 魚極品鮮湯 (Taiwan); 貓倍麗鮮蝦極品高湯 (Taiwan); 鰹魚極品上湯 (Taiwan); 貓倍麗鮪魚蟹肉鰹魚極品上湯 (Taiwan); Fancy Feast Royale Broths Tuna, Surimi & Whole Prawns in a Decadent Silky Broth (UK); Gourmet Soup Classic Tuna, Anchovies & Whitefish in a Delicately Refined Broth (UK)

326.

Coles (Australia); Woolworths (Australia); Auchan (Italy); Carrefour (Italy); Coop (Italy); Esselunga (Italy); AEON (Japan); COOP (Japan); Countdown (New Zealand); New World (New Zealand); Costco (Taiwan); Ocado (UK); Sainsbury’s (UK); Tesco (UK); Waitrose (UK).

327.

เบลลอตต ้าซีฟด ู้ ในน�้ ำเกรวี่ (Thailand); เบลลอตต ้าปลาทูน่าและปูอด ั ในน�้ ำ เกรวี่ (Thailand)

328.

Nestlé (Nov 11 2016) Letter sent to Greenpeace by a senior representative from Nestlé

317.

Rhee Bros.Inc. (2016) Company http://www.rheebros.com/company. html

329.

Thai Union (2016) Written response to Greenpeace, 11 November 2016

318.

Sysco; Gordon Food Service; Performance Food Service; US Foods

330.

319.

Greenpeace (2016) Sea of Distress http://www.greenpeace.org/usa/ wp-content/uploads/2016/08/Sea-of-Distress.pdf

Thai Union (2016) Comments made by senior representatives from Thai Union Group and companies during a meeting with Greenpeace, 22 November 2016

83 Greenpeace Southeast Asia Turn the Tide


331.

Pacific Marine Food Products (2016) Written response to Greenpeace, 16 November 2016

332.

Kibun Thailand Co. (2016) Written response to Greenpeace, 16 November 2016

333.

Andaman Surimi Industries Co. (2016) Written response to Greenpeace, 16 November 2016

334.

335.

336.

337.

350.

Ministry of Foreign Affairs, Thailand (2016) Thailand’s fisheries reform: Progress and way forward in the fight against IUU fishing and forced labor http://www.thaiembassy.org/warsaw/en/information/65449-Thailands-Fisheries-Reform-Progress.html

351.

Thai Frozen Foods Association (2016) Written response to Greenpeace, 17 November 2016

Environmental Justice Foundation (2015) Pirates and Slaves: How overfishing in Thailand fuels human trafficking and the plundering of our oceans http://ejfoundation.org/sites/default/files/public/EJF_Pirates_and_Slaves_2015_0.pdf

352.

Thai Tuna Industry Association (2016) Written response to Greenpeace, 16 November 2016

Department of Fisheries, Thailand (2015) National Plan of Control and Inspection, 2015-2019

353.

Sustainable Shrimp Supply Chain Task Force (2015) How the Shrimp Sustainable Supply Chain Task Force is leading Thailand’s seafood supply chain towards a more sustainable pathway, Progress update October 2015

354.

Nestlé (2015) Responsible sourcing of seafood — Thailand, Action Plan 2015-2016 http://www.nestle.com/asset-library/documents/ library/documents/corporate_social_responsibility/nestle-seafood-action-plan-thailand-2015-2016.pdf

355.

Marine Department, Thailand (2016) เรือประมงพาณิชย์ ทีไ่ ม่ได ้รับอนุ ญาติท�ำการประมง 514 ล�ำ, ก.นาวามงคลชัย 1 http://www.md.go.th/ ship-no-fishing/ship-detail.php?id=1821

356.

Marine Department, Thailand (2016) เรือประมงพาณิชย์ ทีไ่ ม่ได ้รับอนุ ญาติท�ำการประมง 514 ล�ำ, ก.นาวามงคลชัย 8 http://www.md.go.th/ ship-no-fishing/ship-detail.php?id=2065

357.

Marine Department, Thailand (2016) เรือประมงพาณิชย์ ทีไ่ ม่ได ้รับอนุ ญาติท�ำการประมง 514 ล�ำ, ส.สมบูรณ์ 19 http://www.md.go.th/ship-nofishing/ship-detail.php?id=1867

358.

Marine Department, Thailand (2016) เรือประมงพาณิชย์ ทีไ่ ม่ได ้รับอนุ ญาติท�ำการประมง 514 ล�ำ, ชัยชนะโชค 22 http://www.md.go.th/shipno-fishing/ship-detail.php?id=2366

359.

Marine Department, Thailand (2016) เรือประมงพาณิชย์ ทีไ่ ม่ได ้รับอนุ ญาติท�ำการประมง 514 ล�ำ, ชนะโชค 48 http://www.md.go.th/ship-nofishing/ship-detail.php?id=2350

360.

Marine Department, Thailand (2016) เรือประมงพาณิชย์ ทีไ่ ม่ได ้รับอนุ ญาติท�ำการประมง 514 ล�ำ, ชัยชนะโชค 17 http://www.md.go.th/shipno-fishing/ship-detail.php?id=2331

Ministry of Foreign Affairs, Thailand (2016) Thailand further strengthens regulations to improve labor condition in fisheries sector Private sector signs MOU to eliminate forced labor from supply chain http://www.thaiconsulatechicago.org/uploads/Press-Release-FurtherImprovement-of-Labor-Conditions-in-Thailand-Fisheries-Sector-1Feb-2016.pdf Board of Trade, Thailand (2015) Board of Trade of Thailand leads key private-sector players in redressing fishing and human trafficking issues in line with Government policy http://www.seavaluegroup. com/download/Press%20Release_ENG.pdf

338.

Ministry of Foreign Affairs, Thailand (2016) Thailand’s progress in combatting IUU fishing http://www.thaiembassy.org/budapest/contents/files/news-20160126-212654-264858.pdf

339.

Humanity United and Freedom Fund (2016) Assessing Government and business responses to the Thai seafood crisis https://humanityunited.org/wp-content/uploads/2016/05/FF_HU_Assessing-Reponse_FINAL_US-copy.pdf

340.

Department of Fisheries, Thailand (2015) ระบบการตรวจสอบย ้อนกลับ http://www.fisheries.go.th/quality/IUU/3.ระบบการตรวจสอบย ้อนกลับ %20ผอ.สุวม ิ ล%20%20กีรติวริ ย ิ าภรณ์.pdf

341.

Indian Ocean Tuna Commission (IOTC) (2016) Report of implementation for the year 2015, Thailand, IOTC-2016-CoC13-IR30[E]

342.

Thai Tuna Industry Association (2016) Written response to Greenpeace, 16 November 2016

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Greenpeace (2016) Interviews with confidential informants, Samut Sakhon, July and August 2016

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Thai Union (2016) Written response to Greenpeace, 11 November 2016

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National News Bureau Thailand (2016) Fisheries Department deploys onboard observers on fishing vessel http://nwnt.prd.go.th/CenterWeb/NewsEN/NewsDetail?NT01_NewsID=WNSOC5907060010054

346.

Greenpeace (2016) Correspondence with Department of Fisheries official (name withheld by Greenpeace), July 2016

347.

Ministry of Foreign Affairs, Thailand (2016) Thailand’s fisheries reform: Progress and way forward in the fight against IUU fishing and forced labor http://www.thaiembassy.org/warsaw/en/information/65449-Thailands-Fisheries-Reform-Progress.html

348.

RYT9 (2016) รัฐมนตรีเกษตรฯ ไทย หารือรัฐมนตรีประมงฟิ จ ิ ร่วมแก ้ปมไอ ยูยู พร ้อมผลักดันความร่วมมือด ้านประมงภายใต ้กรอบเอ็มโอยู เล็งต่อยอด วิชาการด ้านประมงและพัฒนาอุตสาหกรรมประมงร่วมกันทัง้ ภาครัฐ -เอกชน เพิม ่ http://www.ryt9.com/s/prg/2363029http://www.ryt9.com/s/ prg/2363029

349.

Ministry of Foreign Affairs, Thailand (2016) Thailand heightens law enforcement to combat IUU fishing and illegal labour practices in overseas fishing activities http://www.mfa.go.th/main/en/mediacenter/14/63487-Thailand-heightens-law-enforcement-to-combatIUU-f.html

84


「グリーンピースは環境保護と平和を願う 市民の立場で活動する国際環境NGOです。 問題意識を共有し、社会を共に変えるため、 政府や企業から資金援助を受けずに 独立したキャンペーン活動をしています。」

原題 “Turn The Tide”

Human Rights Abuses and Illegal Fishing in Thailand’s Overseas Fishing Industry (2016年12月発行) 発行元:グリーンピース・東南アジア 日本語版発行 2017年5月 日本語版製作 国際環境NGOグリーンピース・ジャパン 〒160-0023 東京都新宿区西新宿 8-13-11 NFビル 2F Tel. 03-5338-9800 Fax. 03-5338-9817 www.greenpeace.org/japan


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