植物工場の普及に向けたブランディングデザインの提案 Brand Design Proposals for Plant Factory Vegetables 江田 直紀1) 田中 俊1) 松井 実1) 小野 健太2) 蘆澤 雄亮2) 渡邉 誠2) Eda Naoki Tanaka Shun Matsui Minoru Ono Kenta Ashizawa Yusuke Watanabe Makoto 1)千葉大学大学院 2)千葉大学
Abstract : In this article the package design for vegetable products grown experimentally in Faculty of Horticulture at Chiba University is introduced. The current situation of the market of vegetables grown in plant factories and the existing package design for various kinds of vegetables are researched and then analysed. Branding requirements for the plant-factory-
grown-vegetables are established, namely safety, feeling of security, and high quality. As the result of the requirements, four different types of branding designs with different concepts, package designs and package structures, targeting different kinds of consumers, simulating different places to be sold.
Key Words : Plant Factory, Package Design, Branding 1 研究の背景と目的
植物工場とは水耕栽培技術と環境管理システムを組み合わ せた先進的な作物の栽培方法である.栽培領域の省スペース 化,栽培工程の簡略化といった様々な利点を持っているため, 農家の減少や食の安全問題などの農業問題の解決策として, 注目を集めている.一方で,その人工的な栽培環境のため, マイナスイメージを持たれることも多く,これまでもそれら
( 図 1 包装する作業場の様子 )
を払拭すべく,その産業展開の方法が検討されてきた.しか し,植物工場で生産される野菜の販売に関するブランディン
2.2 路地物野菜の流通
グは検討されていない.野菜の普及において,消費者が販売
現状の野菜に関する流通ルートを調査した.植物工場では
方法やパッケージから受ける影響は大きい.そのため,野菜
栽培の場所に高い自由度があるため,消費者に近い場所での
の販売に対するブランディングは植物工場の普及に大きな役
栽培が可能である.そのため,流通コストが削減できると
割があると考えられる.
いう特徴がある.路地物の野菜では流通経費が小売価格の
そこで本研究では野菜の販売時におけるイメージ改善を目
50%強を占めているので,生産の費用に問題のある植物工
的に,千葉大学で実際に生産・販売される植物工場野菜のブ
場野菜では流通の面で価格の低下を図ることができる.
ランディング及びパッケージのデザイン提案を行う. 2 現状調査 植物工場野菜のブランディングを考えるうえで,出荷後の 包装作業から消費者の手に届くまでの過程を明らかにし,そ こから要点の抽出を行った.調査対象として,植物工場野菜 の包装工程,路地物野菜の流通,既存パッケージ,消費者の
( 図 2 小売価格に占める流通経費の割合 )
意識の 4 つを抽出し、調査を行った.以下に調査の結果と考 察を示す.
2.3 既存パッケージの分析 現在販売されているトマトとレタスのパッケージを収集
2.1 植物工場野菜の包装工程
し,それぞれの傾向を分類した.トマトのパッケージでは日
植物工場野菜を販売しているメーカーの資料をもとに包装
常料理用,こだわりの料理,贈答用,生食用の4つに分類さ
工程や包装に使われる素材などを調査した.
れた.レタスでは高価なものになるに従って,無包装からビ
植物工場野菜では,安全,安心の野菜を実現するため,低
ニール,プラスチックのパックの順に分類された.
細菌と無農薬を販売の売りにしているものが多い.今回の調
大
査では,包装をする作業者は抗菌の作業着を全身に纏い,か つエアシャワーで全身を洗浄して作業にあたっていることが 明らかになった.また,包装する作業場もビニールで覆った うえで空調管理し,滅菌を徹底していた.野菜のパッケージ においても密閉性を重視した構造にしていた.
日常料理
安
こだわり の 料理 サラ ダ・ 生食 用
小
贈答 用 高 特別なシ ーン
一般
( 図 3 トマトとレタスのパッケージの分類 )
BULLETIN OF JSSD 2012 日本デザイン学会 デザイン学研究
特殊