数字で見る 2 0 1 8 会計年度のパタゴニアの 環 境 的 ・ 社 会 的 取 り 組 み の い く つ か を 数 字 化 2 0 1 7 年 5月 1日 〜 2018年 4月 30日
1億400万
103
1,531,886
85,627
パタゴニアが 1985 年に寄 付
今 年、完了した環 境インター
今年、ドライブ・レス・プログ
今年、お客 様が交換したパタ
プ ロ グ ラムを 開 始 して以 来、
ンシップ(個人および団体)
ラムで削減した、運転手だけで
ゴニアの衣類とギアの数
環境的および社会的取り組み を支 援するために寄 付してき た 金 額( ドル。 現 金 および そ の他の支援を含む)
700万 寄 付 プ ログラムの 開 始 以 来、 環境的問題に取り組む最前線 と先住民族および社会的に疎 外されている地 域に寄 付して きた金額(ドル)
1,082 今年、助成金を受け取った環境 保護団体数
49,200 パタゴニアのフェアトレ ード USA のプログラムへの参加に より、フェアトレードの賞与を 受け取った、および/または、 より良い恩恵を受けた、衣類製 造に携わる労働者数
今 年、製品寄 付プログラムを 通して寄 付された新品/中古 品の原価総額(ドル)
126,000 今年、パタゴニアが全額マッチ するチャリティー・マッチ・プ ログラムを通して社 員 が 非営 利団体に寄付した金額(ドル)
547 今年、環境インターンシップ・ プログラムに参 加した社 員の 総数
トル)
2億
今年、環境インターンシップ・ プログラムにおけるボランティ ア活動の時間
2,589 1994 年に開始以 来、パタゴ ニアの環 境インターンシップ・ プログラムを通してボランティ
が 設 立 し た〈1 % for the Planet®〉 がこれまでに非 営 利環境保護団体に寄付した合 計金額(ドル)
100 リサイクルのためにパタゴニア が 引き取る製 品の 割 合( パー セント)
アをした社員の数
3,083
179,000+
今年、パタゴニアがリサイクル
今年、パタゴニア・アクション・ ワークスを通して助 成 先 のた めに実施されたアクション数
10,000+ パタゴニア・アクション・ワー クスを通して技 能を生 かした ボランティア活動に捧げられた 時間
82 今 年、 ヨーロッパと日本で草 の根 活動家のためのツール会 議で訓練を受けた活動家の数
今年、Worn Wear の修理セ ンターで修理した衣類の数
2002 年 に パ タ ゴ ニ ア の 創 業 者 イヴォン・シュイナ ード
17,316
100,288
した衣類の重量(キログラム)
4.93
72 無料または手数料ほどの金額 で衣類を修 理する、世界中の パタゴニア直 営店に設けられ た修理センターの数
94 アメリカからヨーロッパに製品 を輸 送する物 流システムを変 えることで 達 成した二酸 化 炭 素排出削減率(パーセント)
12 ティンシェッド・ベンチャーズ 投資基金の設 立以来パタゴニ アが 支 援してきた、環 境再生
新品を製造する代わりに Worn Wear ® を 通して 交 換 / 再 販
型有機農業、再生可能エネル
売された各製品が削減した二
ベンチャー企業の数
ギー、水効率などに取り組む
酸化炭素排出量 (キログラム)。 25 リットルの水も節約
78万
84,235
2014 年 9 月にティンシェッド・
今年、Worn Wear の修理イ
して以 来、 スケートボードの
ベントに参加した人数
デッキ、サングラス、ディスク
ベンチャーズが ブレオに投 資
やその他の製品に再利用され た、廃棄された漁網の面積(平 方メートル)
2018 環境的・社会的イニシアチブ
438,000
自動車通勤する距離(キロメー
私たちは、 故郷である 地球を 救うために ビジネスを営む。
カリフォルニア州サンフランシスコで行われた「RISE for Climate, Jobs and Justice(ライズ・フォー・クライメート、 ジョブス・アンド・ジャスティス)」の行進に参加したパタゴニア代表団。写真:MICHAEL ESTRADA
気候危機
「私は自分たちが地球を壊しているという事実に、 正面から立ち向かいたい。80 年後には、地球は 住めない場所になってしまうかもしれない。 少なくとも人間と野生動物は」 ー イヴォン・シュイナード、パタゴニア創業者/オーナー
タスマニア、タカイナ/ターカイン
「タスマニア州政府もオーストラリア政府も タカイナ/ターカインの世界遺産指定を 支持していません。しかし世界中の支持者の 共同体からの圧力により、この驚くべき地域の保護に 必要な推進力が提供されるかもしれません」
ー デーン・オシャナシー、パタゴニア・オーストラリア/ニュージーランド・ディレクター
熱帯雨林を走るニコール・アンダーソン。タスマニア、タカイナ/ターカイン。写真:KRYSTLE WRIGHT
グリズリーと 2 匹の子熊。ワイオミング州グランド・ティトン国立公園。写真:THOMAS D. MANGELSEN
グリズリーのトロフィーハンティング
「絶滅の危機に瀕する生物への危害は 取りかえしがつきません。なぜなら いったん絶滅危惧種が傷つけられれば、 その種を保護する課題は より一層困難になるからです」 ー 米国連邦地裁判事デイナ・クリステンセン
それでもとにかくやってみる................................................ 10 大統領を訴える................................................................... 11 パタゴニアの 「地球税」を引き上げる.................................... 13 B コーポレーションへの忠誠を守りつづける....................... 15 最も脆弱な地域や人びとを支持して.................................... 17 出会いのお手伝い............................................................... 18 マッチに火をつける............................................................. 21 民主主義には参加が必要.................................................... 24 世界が依存する農業のやり方.............................................. 30 食の未来を変える............................................................... 37 より少ない影響でより多くを得る........................................ 38 アウトドアを育てる............................................................. 41 冒険、献身、希望............................................................... 42 目に見えない配当............................................................... 46
10 それでもとにかくやってみる
生活賃金に向けて前進する................................................. 51 石炭からの脱出.. ................................................................. 55 小さな、じつに大きな問題.................................................. 56 ゼロ・ウェイストに照準を合わせる..................................... 62 テクノロジーとアクティビズムが結集.................................. 65 ヨーロッパの青い心臓における愛と欲................................. 66 ソーシャルメディアから機動隊まで..................................... 72 借地に非ず.......................................................................... 79 そして、私たちは衣料品を販売する.................................... 80 全員参加............................................................................. 86 資金調達、野外の仕事、自然災害...................................... 88 尽きることのない仕事/サーモン・ラン ............................. 89 ポイントを研ぎ澄ます......................................................... 91 正しいことのために仕事をはなれる..................................... 92 パワーを求める闘い............................................................ 99 私たちが引き取ります.......................................................100 カーボンシンク (炭素吸収源)も含めて..............................106
37 食の未来を変える
ベアーズ・イヤーズの力..................................................... 110 数字で見る.................................................................... 裏表紙
環境助成先:パタゴニアが支援する団体 クライメート・ジャスティス・アライアンス...................... 22 サーファーズ・アゲインスト・スウェージ.......................... 28 ナショナル・サスティナブル・アグリカルチャー・. コーリション................................................................... 36 ワンガン&ジャガリングウ・トラディショナル・. オーナーズ・カウンシル................................................... 40 ブラウン・ガール・サーフ................................................44 ハンフォード・チャレンジ.. .............................................. 52 ラティーノ・アウトドアーズ............................................. 54 コースタル・ウォーターシェッド・インスティテュート..... 64 ウィー・アクト.. ............................................................... 74 シエラ・クラブ BC.......................................................... 75 パワー・シフト・ネットワーク......................................... 78 レラベス.. ........................................................................ 90 グラスルーツ・エコロジー.. ............................................. 96 アウトドア・アフロ.......................................................... 98 グリーン・コリア・ユナイテッド....................................104 クマノ・イ・ケ・アラ.....................................................108
66 ヨーロッパの青い心臓に おける愛と欲
目次
18
24
出会いのお手伝い
民主主義には参加が必要
46
56
目に見えない配当
小さな、じつに大きな問題
100
110
私たちが引き取ります
ベアーズ・イヤーズの力
9
「失敗するかもしれない。 それでもとにかくやってみる」 パタゴニアの使命感をイヴォン・シュイナードが語る
昨年、草の根環境保護団体に支給したパタゴニアの助成金総額が1億ド ルに達したとき、それを公表するのは気が進まないように思えました が、パタゴニアは数字を自慢する会社ではないからでしょうか。
イヴォン・シュイナード:いや、気が進まないなんてこと
はまったくない。むしろ誇りに思うべき。ひとつの会社に 何ができるかを実証するものだからね。しかも株主が配 当を得たあとで収益の一部をどう寄付するのかを決める のではなく、私たちの場合はビジネスを行いながら助成 金を支給している。
動主義のない科学は死んでいるも同然。一方、活動家は 過激な行動をするかもしれないと恐れられ、資金集めに 苦労している。とくに企業は活動家への資金援助はリス クをともなって割りが合わないと考える。だから私たちは 「科学は誰かにまかせよう。 〈ザ・ネイチャー・コンサーバ ンシー〉が取り組むような大規模な環境保護プロジェクト は他の誰かにまかせよう」と考えた。その代わり、私たち は活動家を助成してきた。 変わったことと言えば、 『ダムネーション』のような映画を
独立した慈善基金を設立する企業が多いなか、パタゴニアは活動家 に直接助成金を支給してきましたが、企業の成長にともないそれを変 えようと思ったことはありますか?
作りはじめたこと。ダム建設反対に取り組む国際的な組 織に資金援助することもできたが、自分たちで映画を作っ たほうが、良いことができるという気がした。そして思っ たとおりだった。『ダムネーション』はよくある行き詰ま
私たちはつねにいちばん金が必要なのは活動家だと考え てきた。科学を支援する財政援助はたくさんあるが、行
りの環境映画にはならず、本当にあちこちで広く上映さ れた。
故郷である地球を救うためにビジネスを営むパタゴニアのオーナー/創業者イヴォン・シュイナード。写真:JIMMY CHIN
アップデート
これまでずっと言ってきたが、私たちはそれぞれ独自の やり方で、手持ちの資源に準じて、悪に立ち向かうた めに何かをしなければならない。パタゴニアには多く の資源があり、大半の環境保護団体よりも優れたマー ケティングの専門知識ももっている。それにもかかわら ず、私たちは懸念する問題のマーケティングのために 他人に金を渡していた。それよりも自分たちの専門知 識をもっと使えばいいじゃないかと考えて、映画制作 に乗り出した。いまや映画制作会社だよ。 私は自分たちが地球を壊しているという事実に、正面 から立ち向かいたい。80 年後には、地 球は住めない 場所になってしまうかもしれない。少なくとも人間と野 生動物は。それでつい先日ミッション・ステートメント をこう変えた。 「私たちは、故郷である地球を救うため にビジネスを営む」 「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」のですね。
そう、いたってシンプルだ。私は 80 歳にもなって、ど うしていまだに会社に来るんだろうと思っている。それ はもっとウェアを売るためでも、金を稼ぐためでもな い。私たちは地球を破壊している、そして何かをしな ければならないほど切迫した事態に陥っているからだ。 会社で新しい社員と話をすると、彼らがなぜパタゴニ アに来たかがわかる。彼らもまた地球を救うことに身 を投じているからだ。 同じ緊急性を感じる社員を雇うほかに、パタゴニアはこの問題へ の取り組みをどのように深めていくのですか?
私たちにできる最善策は環境再生型農業の支援だとい う結論に達した。地球温暖化の問題を間違いなく解決 できる方法はそれ以外思いつかない。もちろん、化石 燃料の使用を止めようと試みることはできる。まあ頑 張ってくれ。エクソンをはじめとする大手のエネルギー 企業を相手に闘っても多額の金を無駄にするだけ。一方、 農業による炭素の貯留について学んでいることには期 待がもてる。さて有機農業では、有害化学物質を取り 除くことはできるが、それだけ。ところが 環 境再生型 農業では、栄養価の高いおいしい食物を栽培できる。 そのうえ表土を育て、炭素を蓄える。つまり一石二鳥 どころか、一石四鳥。これはまったく前向きな解決策 で、いちばん期待できる。
大統領を訴える
(時間はかかるかもしれない) 2017年12 月、トランプ大統領はベアーズ・イヤーズ国定記念
物の 85%とグランド・ステアケース・エスカランテ国定記念物 の 50%を縮小する声明を発表しました。これを受けて、パタ
ゴニアは先住民と草の根環境保護団体の連立に加わり、大統
領の行動の合法性に異議を唱えてコロンビア特別地区連邦地 方裁判所に訴状を提出するという、これまでにない対応に出ま
した。法理論は単純です。 「1906 年の古文化財保護法令が大 統領に与える権限は国定記念物の創造であり、国定記念物の 縮小や撤回ではない」
現在グランド・ステアケースに関して 2 件、ベアーズ・イヤーズ に関して3 件の、合計 5 件の訴訟が係争中です。連邦地方裁判
所はそれぞれを同じスケジュールで進行させる管理目的のため
にグランド・ステアケースとベアーズ・イヤーズの一連の訴訟を
統合しました。私たちは共同原告である〈ユタ・ディネ・ビケヤ〉
〈フレンズ・オブ・シーダー・メサ〉 、 〈コンサベーション・ランズ・ ファウンデーション〉 、 〈アーキオロジー・サウスウエスト〉 、 〈ナ
ショナル・トラスト・フォー・ヒストリック・プリザベーション〉 、
〈ソサエティ・オブ・バーテブレート・ペリオントロジー〉 、 〈アク
セス・ファンド〉を含むベアーズ・イヤーズの複数の先住民部族お よび非営利団体との連携を誇りに思います。この2 つの国定記 念物は多数の考古学的、古生物学的、人類学的遺跡の保護に
指定されていた場所で、先住民にとって明らかに重大な文化的 意味をもつ、数々の遺跡が含まれています。しかし5件の訴訟 で係争の的となっているのはこれらの事実ではなく、古文化財
保護法令の下で何が許され、何が許されないかという点です。 2018 年1月、トランプ政権は訴訟をワシントン DC からユタ州 に移そうとしました(裁判所が拒否)。そして10 月には政府が 訴状却下の申し立てをしました。本書の英語版の印刷時点で は、両者が政府の訴訟却下の試みに関する準備書面を提出し ています。訴訟の継続/不継続の裁決は 2019 年の半ばから
後半にかけてターニャ・S・チャトカン判事によって下されます。 パタゴニアが法律騒動に加わるのは異例であると同時に、明 確な決断でもありました。10 年以上にわたり先住民、クライ マー、キャニオニア、トレイルランナー、釣り人と協力して公有
地の保護に取り組んできたパタゴニアは、トランプ大統領がそ れらの公有地を石油やガスや採鉱業界に提供しようとすること
に対して訴訟を起こす決断をすばやく下しました。 「取締役会
に送った1通の e メールだけで決まりました」とパタゴニアの弁 護士ヒラリー・デスーキーは言います。 「そしてその反応は『ぜひ 進めてください』という即答でした」
11
環境再生型農業は温室効果を無効にするのに十分な炭素を間違いなく 土壌中に蓄積できるのですか?
そう、カリフォルニア大学とフランス政府の研究によるとそ れは可能らしい。広範囲で環境再生型農業に移行すれば、 私たちが出す全 炭素 量以 上の炭素を蓄えることができる と。パタゴニアではそれを誰かにまかせるのではなく、み ずから実行する具体的な計画をもち、先頭に立って環境再 生型農業を推進している。 パタゴニアが行っているひとつの方法はリジェネレイティブ・オーガニッ ク・サーティフィケーション(ROC) ( 30 ページ参照)ですね。しかし、 そのような認証は実際に効果があるのでしょうか?
前代未聞の試みでとても難しい課題だ。失敗するかもしれ ない。それでもとにかくやってみる。 環 境再生型 農業を発 進させる要となるのは、これまで誰 も考えなかったこと。それはこの農法で、農家がより栄養 価の高い食物を栽培できるということ。一般的な農産物よ りも有機農産物の方が栄養価が高いという実証はないが、 環境再生型有機農産物は実際に栄養価が高いことを私た ちは証明する。 2012 年にスタンフォード大学は有機野菜と工業型農業で 栽培された一般的な野菜を比較調査し、どちらも栄養的に は変わりがないという結論に達した。なぜなら有機野菜は 有害な化学物質を使わないという以外、まったく同じ方法 で栽 培されているから。被覆作物や堆 肥を使わない栽 培 は表土を作らず、またいまだに液体窒素を使用する農場が 多い。つまり植物を育てるのに、植物が土壌から引き出す 栄養素を生かすのではなく、外から何かを加えているんだ。 その場合、有機農産物は一般的な農産物よりも体にいいも のにはならない。すべてに環境再生型の方法を導入すれば 栄養素は土壌に戻され、非常に栄養価の高い農作物がで きると私は思う。アメリカで販売しているパタゴニアのバッ ファロー・ジャーキーがその例だ。 昨年、パタゴニア プロビジョンズのジャーキーの調達元で あるダン・オブライエンの牧場を訪れた。数百種の草や花 や雑草を毎日食んでいるオブライエンのバイソンはとても
環境再生型農業で栽培された人参の栄養価を調べる 計画もある。他の人参と比較して環境再生型農業の 人参は栄養価が高いことを証明できれば 画期的だ。 ビジネスにとって途方もないマーケティングの強みに なり、世界中の農業を変える可能性も出てくる。体 にいいことが確実にわかれば、みんな喜んで金を払 うだろう。 シェフのダン・バーバーと同じく、おいしさと栄養価には関連が あると信じているそうですね。
それには確信がある。野イチゴを食べると、直径わ ずか 6 ミリほどでも本物のイチゴの味がする。そして 直径 5 センチもある水耕栽培された水っぽいイチゴ よりずっと栄 養 価 が 高いのだが、 科 学 的には 証 明 されていない。それを証明するのが私のやりたいこ とだ。
健康だ。その結果パタゴニアのバイソン・ジャーキーを食 べれば豊富な微 量栄養素を摂取できると、初期検査で実 証されている。
グレートプレーンズで気候変動と闘うワイルド・アイデアのバッファロー。写真:JILL O'BRIEN ウェス・ジャクソンの不耕起栽培のウィートグラス 「カーンザ」 も同じことを行う。写真:JIM RICHARDSON
アップデート
パタゴニアの「地球税」を 引き上げる パタゴニアは何十年もみずからに課した地球税を支払ってきまし た。1985 年以来、私たちは売り上げの1%を非営利の草の根環 境保護団体に寄付しつづけ、これまでに現金総額 1億ドル以上を、 米国内外でそれぞれの地 域を保護するために闘う数千の力強く 献身的な草の根環境保護団体に助成しました。表面的には小さ な闘いは、複雑な環境問題を世間に提起するのに最も効果的な 方法だからです。本書ではそのような活動をご紹介します。 私たちはこの数年間に 2 度、さらに数百万ドルを地 球 税に加え ました。まず 2016 年にはブラックフライデーの売上すべてを環 境保護活動家に寄付することを誓約する100%フォー・ザ・プラ ネットを実 施し、支持を明確に示してくれたお客 様のおかげで、 わずか数時間で当初の販売予測を上回る売上に達しました。こ のお客様からの支援により、地球を守る活動家のために1千万ド ルを届けることができました。これらの助成金は本年度までに支 給されています。 また無 責 任な 減 税により、 パタゴニアの 2018 年度の税 金は1 千万ドル減じました。そのお金をビジネスに投資する代わりに、 私たちは地 球のための取り組みに還元することでこたえました。 私たちの故郷である地球は、私たちがビジネスをする以上に、そ れを必要としているからです。 私たちはつねに公正なる連邦税および州税を納めてきました。責 任ある企業であることは、その成功に見合った税金を支払い、州 および連邦政 府が民主社会の健康と公正に貢献できるよう後押 しすることです。私たちの重要な公共サービス、緊急救援隊、民 主的機構は税金によってまかなわれます。私たちの社会において 最も脆弱な人びと、公有地、そしてその他の命を存続させるため の資源は税金によって守られます。こうしたことにもかかわらず、 トランプ政権は法人税削減を導入し、地球を犠牲にして、これら の公益事業を脅かすのです。
13
ダン・バーバーが 強調するのは、これまで誰も味 を良くする目的でタネの品種改良をしていないとい うこと。トラックで輸送できる数を増やすための 四角いトマトや、腐らずに長持ちするトマトはあっ ても、味のためだけに品 種改 良されたトマトはな い。だからダンはタネの会社をはじめたがってい る。私も彼と同じ路 線を走っている。人参栽 培に ふさわしくない場所でむりやり育てるのではなく、 適切な土地で、よりおいしい人参が育てられるかど うかを知りたいんだ。人参は砂地で栽培すべきで、 また、よりおいしい人参は寒冷な気候下でできる のに、食料品店で売られている人参の多くは夏の バハ・カリフォルニアで栽培されている。人参には 一般的なオレンジ色だけでなく、おそらく何千種も があるだろう。紫の人参はオレンジの人参よりも多 くの抗酸化物質を含む。他の種には別の何かがあ
認証の話に戻りますが、環境再生型農業はコットンや繊維に も適応されます。パタゴニア プロビジョンズでの農業の取り 組みは親会社(パタゴニア)にも通じていますか?
ああ、 もちろん。 コットンを有 機 栽 培してオーガ ニックコットンの衣類を作るのは地球のためになる わけではなく、与える害がより少ないというだけ。 有 害な化 学 物 質 が含まれてい ないのは 着る人に とってはいいことだが、コットンの有機栽培では表 土は育たない。国連が 2050 年までに 30 〜70% の食料の増加が必要になると報告するなか、食物 を栽培できる農地でコットンを栽培するのはかなり 無責任な行為と言える。将来はコットンも環 境再 生型で栽 培しなければならないんだ。パタゴニア は環境再生型コットン栽 培の 2 つの試 験プログラ ムをインドで実践していて、大豊作だと聞いている。
るかもしれない。まったく興味深い分野なんだ。
表土を作り炭素を隔離する環境再生型農業を慣行するインドのコットン畑。写真:TIM DAVIS それは栄養価も高めるだろうか?私たちはそれを証明する。写真:AMY KUMLER
アップデート
Bコーポレーション への忠誠を 守りつづける 今年はじめ、私たちはパタゴニアの 50 倍 の規模をもつフランスのあるアパレル小
売 企 業の 代 表者から、同社の社 会 的/
環境的責任を高めるには何ができるのか という問い合わせを受けました。巨大な
グローバル産業においては比較的に小企 業である私たちにとって、それは嬉しい 驚きでした。
私たちはしばしば他企業からこのような 要請を受けることがあります。 「ビジネス
を手段として環 境 危 機に警 鐘を鳴らし、 解決に向けて実行する」というパタゴニア
企業が B コーポレーション運動への参加
業の取締役に会う約束をしました。
B インパクト・アセスメントは良い出発点
の価値観にもとづき、私たちはその大企
パタゴニアはみずからの行動を正す 2 つの 進 歩 的な 基 準を導入しました。ひとつは 2011年に B コーポレーションになったこ とですが、それは有意義なことでしたか?
そうだね。期待したほど広まらな かったけど、いい枠組みになって いる。他企業からも役立ったとい う話を聞いている。B コーポレー ションを検 討しはじめた当初は、 その援 助をしてくれるところはあ まりなかったが、いまではいくつ かのいい機関があるようだ。
パタゴニアの目標や、これまでに達成し てきたことに加えて、社会的/環境的改 善に関する欠点と機会の特定に非常に有
効であることが証明されている B コーポ
レーション運 動での体 験について話し、 彼らにも B コーポレーションについて検 討するよう勧めました。
を望むか否かにかかわらず、 〈B Lab〉の となります。B コーポレーション認 証へ 向けて取り組む場合も、たんに自社を正 直に見直したい場合も、無償で利用でき ます。アセスメントは業務とビジネスモ
デルと企業統治が、労働者、地域社会、 環境、顧客にどう影響するかをすべての 分野で評価するため、かなりの時間を要 します。
パタゴニアは 2011年 12 月に 〈B Lab〉の
〈B Lab〉によると 「(それは)企業の社会
ました。2012 年 10 月には 持 続 可 能 性
する唯一の認証。サプライチェーンや装
認証を受けて B コーポレーションになり への誓 約と、協力的 的な 職 場 環 境を継 続的に提供することを採択し、会社定款
を改正しました。またカリフォルニア州に
て法的にベネフィット・コーポレーション として登記しました。数年おきに B イン
パクト・アセスメント(BIA)を実施します
的/ 環 境 的 パ フォーマンス 全 体を査 定 置、 原 料から、 慈 善 事 業 への 寄 付、 社
員の福利厚生まで、B コーポレーション
認証は (BIA を用いて)ビジネスが検証さ れたパフォーマンスの最高基準を満たし ていることを証明する」ものです。
が、これは業務を評価する自己査定であ
パタゴニアにおいては、 アセスメント・
することに忠誠を誓うB コーポレーション
して私たちのビジネス決定が株主だけで
り、善行を促す力としてビジネスを利用 として、みずからを再認証するものです。 2014 年 の 査 定 で は 環 境 影 響 の 測 定を
改善する必要性が明らかになり、現在取 り組んでいます。
ツールにより、私たちの長所と短所、そ
なくすべての利害関係者にどう影響する
かが明確に示されていることがわかりま した。それにもとづいて改善計画を作る のは、はるかに容易です。
15
パタゴニアがサプライチェーンの社会的/環境的問題の査定に利用し ているヒグ・インデックスはどうですか?
このインデックスは物事を順調に進めるのに役立つが、 大 企 業 が 利 用してい ないのが 残 念 だ。2007 年にこれ を検討しはじめたときは誰もが「持続可能性」を話題にし ていたが、いまではその言葉も実際は無意味になってし まった。 気候 危機の深刻さを考えると、その方向を転じるためには政 府を含 むあらゆる機関を取り込む必要がでてきますが、パタゴニアは地球を 救うために政府とより協働していく考えですか?
いまの政府は当てにならない。現政権は悪で、地球を破 壊して金儲けがしたいだけ。彼らを変えることはできない だろう。無駄骨を折るだけだ。私は殉教者にはあまり向 いていない。とにかく彼らを追い出すしかない。 企業として私たちは政治的方策にもっと金を費やすように なるだろう。しかし私としては地球温暖化の症状に浪費す るのではなく、原因に対してできることに金を使いたい。 助成金の支給をはじめた当初、私たちが地球に害を及ぼし ていることは承知していた。だが地球を完全に破壊している ことには気づいていなかった。しかもものすごい速さで。
アップデート
最も脆弱な地域や 人びとを支持して 気候 変動は疑う余 地のない現実です。海面は上昇し、自然災害の 頻度と強度は増し、世界の平均気温は新記録を更新しています。こ
うした気候 変 動の影 響を最 初に、そしていちばんひどく、不均 衡
なほど被っているのは、社 会 的に疎外されている地 域です。そこ で私たちは 2016 年のブラックフライデーに実 施したパタゴニアの
100%フォー・ザ・プラネットの大 成功につづき、100 万ドルを気
候 変動、とりわけ脆弱な地 域に焦点を当てて活動する草の根環境 保護団体に寄付することを誓いました。
気候変動および気候正義に対する現政権のこの2年間の見解の展開
を目にして明らかになったのは、私たちが支援を倍掛けする必要が
あることでした。対象を絞った気候 変動イニシアチブを通して、私 たちは現在脅かされている土地管理 局と環境保護 庁の天然ガス汚
染規定の擁護に取り組む〈ウエスタン・オーガニゼーション・オブ・ リソース・カウンシル〉のような団体に資金援助をしました。化石燃 料インフラと闘う団体にも寄付をし、 〈スタンド・アップ・トゥ・オイ
ル〉は北米史上、提案された最大の石油輸送拠点であるワシントン
州バンクーバーのテソロ・サベージ・プロジェクトを打倒しました。 また地元地域を気候 変動の影響から守るために環境正義の実現を
目指すリーダーたちを組織し力づける手段を開発し、気候正義を促
進する〈エンバイロメンタル・ヘルス・コーリション・イン・サンディ
私 がいちばん伝えたいのは、いまや 全 員が 総力を挙げなければならない事態にあるとい うこと。危機に瀕しているのは数種の絶滅危 惧 種や大 型哺乳 類だけではなく、人 類の未 来だということ。そしてそれは私たちの寿命 のうちに起こる。いまや状況はまったく異な る。だからすぐに行動を開始しよう。 インタビュー:ブラッド・ウィーナー
エゴ〉のような地域主導の団体にも投資しました。
気候の安定性への脅威と闘う団体以外に、気候 変動に対する解決 策を発展させる団体にも資金を提供しました。屋上、地域社会およ
び低所得世帯が太陽光発電を取り入れたり、クリーンエネルギー技
術に対応する送電系統の最新化に努める〈ヴォート・ソーラー〉のよ
うな団体にも寄付しました。 〈カリフォルニア・エンバイロメンタル・ ジャスティス・アライアンス〉 はパタゴニアの基金を使って、再生可能
エネルギーへの100%の移行を目指すカリフォルニア州 SB100 法 案のような気候変動関連の革新的な政策を通過させました。
現状を効果的に打破するこうした団体を支援することで、私たちは 化石燃料採掘型経済と過熱した惑星の影響を最も受けるであろう地 域や人びとを支持します。 サンフランシスコ・ストアに結集するクライミング・アンバサダーの
トミー・コールドウェルと仲間たち。写真:MICHAEL ESTRADA
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パタゴニア・アクション・ワークスを通して 地域社会の力を利用
1998 年にパタゴニアはフリースもレインシェルもラグビーシャツも 一切掲載しない小冊子を発行しました。それは緑色で、シンプルで薄 く、ガタつくテーブルの足の下に敷くのにちょうどいいくらいの厚さで した。 「言葉よりも行動を」と題されたその小冊子は、何人かの人びと の「服屋がいったいどういうわけで環境保護の演説なんかしてるんだ」 という疑問に答えようとしたものでした。 1985 年以来、私たちは草の根環境保護団体に寄付を行い、1990 年 代初期から自社の製 造 過程における悪 影 響を減らすことに努めてき ました。しかしこの疑問(と時折の批判)を受けるたび、私たちの取り 組みについてもう少し説明が必要なのではないかと考えるようになり ました。そこで、活動最前線への資金援助、オーガニックコットンや PCR(消費者から回収/リサイクルされた)プラスチックで作ったフリー スの使用、環境インターンシップ・プログラム、環境への影響を削減す る努力などに関するいくつかのストーリーを書いて公表しました。 そしてその小冊子の裏表紙には、 「ファンレター」と称した手紙も掲載 しました。これは地元で活動する森林保護団体への私たちの支援に 憤りを覚えた、オレゴン州グランツ・パスの住民のひとりから届いた ものでした。 「デイリー・クーリエの広告を見た」と、彼は書いています。 「俺からの 忠告は、他人事には首を突っ込むなってこと。俺たちの生活にも!! ここに顔を出そうものなら、お前らのようなヘドは痛い目にあわせて やる! 嘘つきのお前らなど絶 対に阻 止してやる。俺たちには関わる な、引っ込んでいろ。自分の仕事を心配しろ」 これを最初に読んだとき、怒りの手紙を公表することはいささか低俗 と思われたかもしれませんが、私たちがそれを含めたのには正当な理 由がありました。 「自分の仕事を心配」するというのは、まさに私たち がしていたことだったからで、それがそもそも環境保護団体に寄付を はじめた大きな理由のひとつだったからです。 そのときこそ、レクリエーションの場となる健全な環境や公有地や風景 から利益を得るビジネスとして、私たちにはそれらを守る必要があるこ とがわかりました。その理解はいまも変わりません。自分たちの利益に しか興味のない木材/開発/採鉱/石油・ガス産業界は、私たちのため にそれらを守ってくれるわけなど絶対にありません。自分たちが大切に 思う場所や地域を注意深く見守り、懸念を抱く市民が団結して立ち上 がってくれたからこそ、私たちはパタゴニアのミッションとビジネスの重 要性が、彼らを心から支援することに合致していると感じたのです。
パタゴニア・アクション・ワークスを通して、地元地域の 環境保護活動と直接関わることができる。 写真:FOREST WOODWARD
私たちはその後もずっと、なぜこのような団体に寄付をするかを語る
1千万ドル以上にまで成長し、私たちが助成先のストーリーを語るだ
のをやめたり、あるいは助成先に声明の場を提供するのを躊躇したこ
けでなく、彼らと 2 百万人以上のパタゴニアの読者を直接結びつける
とはありません。その反 対に環境 助成金プログラムは現在では年間
機会を提供する取り組みも発展を遂げました。 19
それをさらに効果的に行うため、2018 年にパタゴニア・ア クション・ワークスをローンチしました。これは私たちが助
Environmental grantees nearby
成する団体の取り組みを活気づけ、彼らをパタゴニアの読者 (それがどこにいる誰であろうとも)とつなげる手助けを目指 したイニシアチブです。 パタゴニア・アクション・ワークスでは、個人の皆様が地元 地域で関心をもつ問題に取り組む環境保護団体と直接関係 を築き、イベントに参加したり、嘆 願書に署名したり、自分 の技能をボランティアとして提供することができます。この オンラインプラットフォームは、私たちの皆が気にかける場
Ventura, CA
Ventura County Farm to School Ventura County Farm to School is schools, farmers and communities working together to build a sustainable...
Ventura, CA
SOAR Nonprofit SOAR works to limit urban sprawl, protect open space and agricultural lands, and promote livable and...
所や地域を守るためにもっている活力を引き出して、導くよ うに作られています。 パタゴニア・アクション・ワークスの開始以来、17 万 9 千件
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View & Support
以上のアクションが私たちの助成先のために実施されました。 これはつまり助成先にとっては、嘆願書の署名、イベントの 参加、受け取った寄付金が増加したことを意味します。新し いロゴをデ ザインしたり、資 金集めのプランを改 正したり、 ウェブサイトを改装したりなど、これまで人びとがボランティア
2018 年 3月にパタゴニア・ソーホーのストアイベントとして行われたアクション・ワークスの ローンチ以来、新たなボランティアや寄付や環境保護活動が、私たちが支援する団体の 取り組みを活気づけてきた。写真:FOREST WOODWARD
Ame Lo
This gr advance c climbin
活動に費やした時間は総計1万時間以上になります。端的に言えば、
アップデート
パタゴニアの読者と私たちが支援する団体のあいだに、たくさんの真 の関係が生まれたということでもあります。 私たちは読者と団体からのフィードバックをもとにして、さらに意義の ある関係を築くためのツールキットを開発するために、パタゴニア・ア クション・ワークスの改善と補足をつづけています。 環境を守る団体へのパタゴニアの支援や主張は、ときに怒りの 「ファン レター」をもたらしますが、皆が健全でより幸せな生活の拠りどころと する場所の保護と復元のために私たちが取り組みをつづけることを誇 りに思います。私たちは今後も 「自分の仕事を心配」しつづけ、他の人 たちもそれにつづいてくれることを願っています。 patagonia.com/actionworks( 英 語サイト。日本 語サイト未 リリース)から #AnswerWithAction へ
1万以上
160万以上
技能を生かしたボランティア. 活動に捧げられた時間
技能を生かしたボランティア活動の時 間をドルに換算した総額
17万9千以上 1千万以上 助成先のために実施された. アクション数
助成先のアクションのために行われた. ウェブサイトとソーシャルメディア上の インプレッション数
マッチに火をつける パタゴニア・アクション・ワークスで 〈Catchafire(キャッチャファイア)〉 を通して遠隔ボランティア 草の根環境保護団体でボランティアとして働 くために動きまわることは、誰にでも簡単に できるもので は なく、 すべ ての 活 動 に 必 要 なことでもありません。 だからパタゴニア・ アクション・ワークスでは、私 たちのパート ナーである〈Catchafire〉のプラットフォー ムを 通して、 技 能 に 応じた ボラン ティア 活 動 を 提 供 し て い ま す。patagonia.com/ actionworks(英語サイト。日本語サイト未 リリース)をご覧いただくと、私たちが支援す る団体の100 種類以上のプロジェクトで、遠 隔ボランティアとして働くことができます。こ れは私たちの地域社会と助成する団体のあい だに意義深い関係を築き、そうした団体の能 力を高めるとともに、それに関わるすべての 人をかき立てるための便利な手段です。
Ventura, CA
erican Alpine Club – os Padres Chapter
roup provides leadership to climbing interests, broaden the ng community and promote...
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Ventura, CA
Ventura, CA
VCCool
California Institute of Environmental Studies
VCCool champions sustainable, carbonneutral living by providing tools and expertise for change, influencing policy...
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This organization specializes in seabird ecology and is dedicated to promoting the conservation of natural resources.
詳細は patagonia.com/actionworks (英語サイト。日本語サイト未リリース) でご覧ください。
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環境助成先:パタゴニアが支援する団体
クライメート・ジャスティス・ アライアンス カリフォルニア州オークランド
ミッション:〈Climate Justice Alliance (クライメート・ジャスティス・アライアンス)〉 は、気候危機に立ち向かい、環境正義のために最前線で活躍する 67の地域社会か らなっています。私たちのメンバーは先住民族やアフリカ系、ラテン系、アジア系の アメリカ人、白人の低所得者など、従来少数派として過小評価される有権者たちで 構成され、その多くは有害なエネルギー施設やその他の産業汚染地域に住んでいま す。私たちはともに地域の対応力を養い、気候変動の根本的な原因を取り除き、採 掘エネルギーに依存する経済からの「ジャスト・トランジション (公正な移行)」を導く ために活動しています。 (ジャスト・トランジションとは、採掘エネルギーに依存する 経済から環境再生型の経済への移行を促進するための経済力と政治力を構築するビ ジョンに導かれた、その地域に特化する原則/過程/実践のプロジェクトです。) 活動:2018 年、私たちはメンバーが最前線で実践するジャスト・トランジションの プロジェクトやキャンペーンの支援と拡大を成し遂げました。ジャスト・トランジショ
ン・プリンシプルとツールボックスを開発し、指導者のための研 修を行い、地域拠 点を7 つに拡大することでジャスト・トランジションを普及させました。またメンバー が実践するジャスト・トランジションのプロジェクトを支援するために非採掘産業へ の投資信託の基盤を構築しました。さらにテキサス、フロリダ、プエルトリコで起き た気候変動関連の災害のあと、 「ジャスト・リカバリー」のキャンペーンを通じて人材 交流による解決策を実施しました。また、 「カーボンプライシング(炭素価格付け) :地 域が有する抵抗力の重要な観点」と題した報告書を通じて、私たちのメンバーが複 雑な炭素価格付けの政策や提案の理解を深めるための支援を提供しました。 成果:9 月には、サンフランシスコ・ベイエリア地 域のオーロン・テリトリーで開催 されたグローバル・クライメート・アクション・サミット (GCAS)と平行して、 〈イッ ト・テイクス・ルーツ(ITR)〉のパートナーと「ソリダリティ・トゥ・ソリューション ズ(Sol2Sol)・ウィーク・オブ・アクションズ」を企画し、気候変動のリーダーたち に気候変動の解決策は「ピープルズ・ソリューションズ(人びとの解決策)」でなくては ならないことを示しました。1,500 以 上の ITR メンバーを Sol2Sol に招 待し、 市 場ベースの計画や企業/政 府主体の技術的な解決策を提案する GCAS とは対照的 なジャスト・トランジションのモデルと地域先導型の気候 変動解決策を強調しまし た。Sol2Sol 開催中には、3 万人以上が参加した「Rise for Climate, Jobs and Justice ( ライズ・フォー・クライメート、ジョブス・アンド・ジャスティス)」の行進に ITR メンバーも参加し、企業ではなく地域社会の利害を優先する気候変動対策行動 を要求しました。行進につづいて、ITR は本プロジェクトの地域巡り、ITR メンバー 交換、Sol2Sol サミットを企画し、最前線で活躍する 28 の地域社会先導のワーク ショップを開催しました。また、 「誰が決定するのか、誰が利益を得るのか、他に影 響するものは何か」という3 つの単純な質問によって気候変動解決策が公正なもので あるかどうかを判断する、ピープルズ・ソリューションズ・レンズという手段を紹介し ました。 文 by〈クライメート・ジャスティス・アライアンス〉
SOL2SOL:企業ではなく地域社会の利害を優先する気候変動対策行動を要求して サンフランシスコで行進する〈イット・テイクス・ルーツ〉 同盟のメンバー。 写真:BROOKE ANDERSON
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
民主主義には 参加が必要 BY ローズ・マーカリオ、パタゴニアCEO
2018 年の初期、パタゴニアのロストアロー・ビルで少 人数で身を寄せ合って会議室のテーブルを囲みました。 主題は来たる中間選挙へと移りました。記憶に新しかっ たのは、つい数か月前にアメリカの公有地への全面的 な攻撃の一部として、ユタ州南部の2つの国定記念物の 保護を取り除く違法の試みをめぐり、トランプ政権に訴 訟を起こした私たちの決断でした。私たちはこれほどリ スクの高い選挙はないことを知っていました。 先立つこと数か月、ベアーズ・イヤーズおよびグランド・ステアケー ス・エスカランテを保護するために必死で取り組みながら、私たち のチームのスローガンは固まっていました: 「前代未聞の脅威には前 代未聞の行動が必要である」です。それはまた私たちが身を寄せ合 い 2018 年の中間選挙のためのパタゴニアの戦略を議論するにつれ、 違った方法を要することも明らかになりました。 企業が選挙に関与し、政治に影響を与えることは目新しいことでは ありません。石油とガス産業がそのよい例です。しかしパタゴニアの 中間選挙のための努力との違いは明らかです。私たちは会社のロゴ を前面に打ち出すのです。パタゴニアは有権者の参加を促し、公有 地を保護するための私たちの意図や努力について完全なる透明性を 目指しています。 これらの問題はパタゴニアにとって非常に直接的なものであり、私た ちの国の未来にとって根本的なものです。そして私たちは変化をもた らす一助となる力を秘めています。そこで私たちはいくつか新しい試 みを行うことにしました。
投票への垣根を取りはらう パタゴニアでは地域社会にむけて、出かけて投票するようつねに促 してきました。私たちは市民権の責任はアクティビズムに先行するも のであるとみています。民主主義には参加が必要なのです。前向き な変化を生みだすために、投票は最初の、そして最後のステップな のです。 2016 年、私たちは一歩先へ進みました。社員が投票所へ確実に行 けること、そしてお客様に市民として関わることの重要性についての メッセージを送ることを目的とし、アメリカを拠点とする直営店、オ フィス、配送センターすべてを選挙当日に閉じることを決めたのです。 それでも非常に多くの有権者が家にとどまり、同時に選挙の結果は それだけでは足りないことを明らかにしていました。 2018 年の選挙が近づくと、私たちはここ数十年間で激 減した投票 率についてよく調べてみました。2014 年の中間選挙では、2010 年 の 42%より少ない、たった 37%の有 権者が 投 票しただけでした。 なぜなのでしょう? あまりにも多くの勤勉なアメリカ人は、給料か 投票かのどちらかを選択しなければならないのです。 私はふたたび選挙当日に閉店するパタゴニアの決断を発表し、なぜ 他の企業もそれにつづくべきかを論 証するブログ記事を投稿しまし た。またそれに参加することを促すために他の会社の友人たちにも メールを送りました。 私たちには目標があったのです。もし社員に投票することを促し、投票 所へおもむく垣根を取りはらうよう他の CEO を説得できれば、投票 に参加する有権者を増やすことができるのではと考えたのです。そ れ以外にたいした計画はありませんでした。
「タイム・トゥ・ヴォート」 イニシアチブの夏のインターンとしてパタゴニアで働き、9月8日にサンフランシスコで開かれた「RISE for Climate, Jobs and Justice (ライズ・フォー・クライメート、ジョブス・アンド・ジャスティス) 」 の行進で私たちと一緒に街頭に出た、カリフォルニア州コンプトン出身の環境保護/地域活動家の ユニーク・ヴァンス。 写真:MICHAEL ESTRADA
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そしてトランプが現れた:5 千数人のユタ州民が 2017年12 月4日、ベアーズ・イヤーズとグランド・ステアケース・ エスカランテの両国定記念物の縮小をめぐりトランプ政権に抗議。写真:ANDREW BURR ネバダ州の次期上院議員ジャッキー・ローゼンのような候補者の支持ははじめてのことであり、 成功を収めた。写真:ETHAN MILLER/GETTY IMAGES
私たちは受話器を取り、他社の友人に1人ず
しました。パタゴニアの全 国の正 規 取 扱 店
づいた一票を投じる幅広いメッセージを提供
つ電話をかけはじめました。全員が(最低で
の 80 社以上も誇らしげに参加しました。
しました。
私たちのアイデアには共感してもらえたよう
何 百もの大きなブランドを含む 全 国 的な運
しかし過 去 2 年 間にわたるアメリカの 公 有
でした。概して CEO は同業他社には厳しい
動の構 築は容 易なことではありません。そ
地と水へ の 容 赦 な い 前 代 未 聞 の 攻 撃 によ
ものですが、私たちが話をした CEO のほと
れをわずか 2 週 間で行うのは、 もし民 主 主
り、私 たちは 戦 略を変える必要があること
んどが、アメリカの労働者すべてが良い市民
義 が 危 険 にさらさ れて い な け れ ば 不 可 能
を知りました。 私 たちは力の及 ぶ かぎり野
となるよう促すことで民主主義が守られるよ
だったかもしれません。私たちのチームは長
生 地を保 護するために、みずからのウェブ
うに企業が協働することの力を、すぐに理解
い日々と多くの夜をその細かい計画を相談す
サイトを閉 鎖し、 ハンターとハイカー のあ
しました。ことはそこから雪だるま式に進展
るのに費やしました。ときとしてコーヒーが
いだのパートナーシップの 構 築 を含むすべ
しました。
冷めるまで、感情を熱くさせながら。
てを尽くしてきました。 また 聖 地 であるベ
選挙当日を完璧に休日にするという選択肢に
私 はそ の 影 響 は 意 義 深 い も の だったと信
エスカランテの両国定記念物の保護を取り
加えて、私たちはミーティングをしない日や、
じて い ま す。2018 年 の 選 挙 の 投 票 率 は、
除き、石油とガス産業の金持ちの仲間に解
投票用紙の郵送のための資源提供、あるい
1966 年 以 降 の 中 間 選 挙としては 最 高 で、
放する試 みをめぐり、大 統 領とその政 権を
は有 給 休 暇の申請など、私 たちとともに行
参加企業からは肯定的なフィードバックを得
訴えました。
動するための他の創造的で意義のある方法
ています。
もすぐに)飛びついたわけではありませんが、
アーズ・イヤーズとグランド・ステアケース・
をまとめました。また革新的あるいは保守的 な先入観を避け、私たちの新たな企業主導
パタゴニアは一度も政 治の候 補者を支持し 公有地のための新たな領域を計画する
の運 動と区 別するために、他の団 体とは正 式にパートナーを組まないことにしました。
たことはありません。じつのところ選挙資金 制度の専門家たちは、アメリカ企業が(正体
2004 年から選 挙 の年 のパタゴニアのキャ
のはっきりしない政 治活動委員会 やその 他
ンペーンは、お客 様に地 球を第一に考えて
の団体の影に隠れずに)候補者を支持したこ
私 たちは 9 月に140 以 上 の 企 業 とともに、
投 票 所に行くことを 促すように設 計されま
とがあるかどうかを思い出せません。悲しい
無党派の「タイム・トゥ・ヴォート(投票のと
した。当初「環境に投票を」として、その後
かな選挙に使われる暗黒の企業資 金を当て
き)」キャンペーンを発足しました。選挙当日
2016 年に「私たちの地球のために投票しよ
る道は、白昼堂々と候補者を支持することに
までにこの運 動は全 50 州、400 社 以 上に
う」となった無党派のキャンペーンは、特定
比べて、より明らかに定義されています(皮
まで膨らみ、テクノロジーから運輸、ヘルス
の候 補者と投 票への評 価についての調査を
肉なことに両方がシチズンズ・ユナイテッド
ケアまで多岐にわたる産業グループへと成長
有権者自身に任せながら、その価値観に基
により可能となりましたが)。パタゴニアは
パタゴニアはまた、接戦のなか再選したモンタナ州上院議員のジョン・テスターも支持。 写真:TOM WILLIAMS/GETTY IMAGES 仕事により往々にして有権者は投票所から遠ざかってしまうため、私たちはアメリカの業務を閉鎖し、 他の会社もそれにつづくよう促した。写真:TIM DAVIS
新天地に足を踏み入れ、合 法な道を歩むためにコツコツと取り組み
これから先は?
ました。 パタゴニアにとって数多くの新たな試みと全国の環境および市民団体の 私たちの目標はより明確でした。 「私たちの地球のために投票しよう」
飽くなき努力を目撃した 2018 年、私たちのチームの熱心な仕事を誇り
の意図に誠実であることを望んでいましたが、どの候 補者が公有地
に思います。しかしまだまだ多くの仕事があることは明白です。公有地
のより責任ある管理者として行動し、ベアーズ・イヤーズやバウンダ
は深刻な脅威のもとにあり、私たちはそれを保護するためにこれまで以
リー・ウォーターズなどの最も特別な場所を確実に保護するかを有権
上に激しく闘いつづけます。記録的投票率ではありましたが、いまだに
者に理解してもらうこと、よりはっきりさせることにも突き動かされて
50%のアメリカ国民がこの選挙で投票しませんでした。崩壊した政治か
いました。
ら力強く健全な民主主義へと、どうしたら移行できるのでしょうか?
10 月中旬、私たちはアメリカ連邦議会の候補者 2 人を支持しました。
私たちは投票をもっと容易にする必要があります。
ネバダ州のジャッキー・ローゼンとモンタナ州のジョン・テスターで す。両州において公有地の問題は中心となるそれであり、野 生地の
投票はアメリカの市民権の中心的かつ最も強力な表現です。しかし市
提唱者と石油/ガス/採鉱産業びいきのあいだにおける選択は明らか
民権の団結へと移行させるためにはリーダーシップが必要であること
でした。さらにパタゴニアには、両州における主要な環境保護イニシ
を認識せねばなりません。選挙当日を祝日とし、全国的な郵送によ
アチブの草の根支援において、長年の会社としての歴史と堅固な記録
る投票プログラムを作るなど、投票を阻むものを取り除く大きな変化
があります。私たちのメッセージは明確でした。ジョン・テスターと
を起こすべきです。私たちの選挙に干渉しようとする部外者だけでは
ジャッキー・ローゼンに投票することは公有地に投票することです。
なく、この国で投票権を制限することを試みるどんな人とも闘いつづ けねばなりません。そして大小を問わず、企業は積極的に市民参加
私たちが候補者を支持したのは、派閥中心政治により深く入り込みた
を向上させるための役割を担いつづけるべきです。
いからではなく、それどころかその反対で、私たちの民主主義を弱体 化させ、地球を破壊することを求めるどんな人にでも立ち向かい闘う
国として、私たちは少数のひねくれた政治家の手中で計り知れない危
ということです。それは政党とは関係なく、私たちがずっと取り組ん
機に瀕している故 郷である地球を含む、多数の強固な問題に直面し
でいくことです。
ています。環境保護庁はその気概を奪われ、北極圏国立野生生物保 護区における石油掘削は現実化しようとしています。そして政府が野
テスター議員が素晴らしいモンタナ州を代表するためにもう一期再選
放しにするなかで、気候危機は日ごとに緊急さを増しています。
したこと、そしてジャッキー・ローゼンが素晴らしいネバダ州を代表 して 1月に米上院議員として就任したことをご報告できるのを嬉しく
しかし11月にはるかに多数の有権者が参加し、ローゼン議員とテス
思います。
ター議員が勝利しました。だから私は市民権の復興には楽観的です。 それが事態を転換させる最善の方法なのです。 27
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
サーファーズ・ アゲインスト・ スウェージ イギリス、コーンウォール州セント・アグネス
ミッション:劣悪な水質の改善という単一の問題に対してキャンペーンを
立ち上げた〈Surfers Against Sewage(サーファーズ・アゲインスト・ スウェージ)〉は、海岸線におけるあらゆる脅威に対して闘うリーダーへと 成長しました。私たちは、支援者が地元レベルの問題に取り組みながら 全国レベルで肯定的な変化もたらすことができるよう力づけることに献身 しています。プラスチック汚染、気候変動、開発、立ち入り禁止、沿岸プロ ジェクトなどはすべて私たちの海に対する脅威です。何千人ものボランティ アを動員してビーチクリーンを行い、水質に関するリアルタイムな情報を 国中に提供し、海洋保護に関心を抱く唯一の超党派の議員団体を運営し ています。政府機関や業界のリーダーたちと協力して草の根レベルで問題 に取り組み、私たちの環境を包括的に保護する方法を提供しています。 活動:昨年、海岸線のプラスチックゴミの除去を目指すたゆみない草の
根市民運動を成長させました。2018 年の「ビッグ・スプリング・ビーチ・ クリーン」では、35,500 人を超えるボランティアとともにイギリス全土の 571のビーチで 65トンのプラスチックゴミを集め、ペットボトルによる汚 染を阻止するためにデポジット制度を求める、環境関連としては史上最大 の嘆願書をイギリス首相に提出しました。また「プラスチック・フリー・コ ミュニティ」のプロジェクトを始動し、地元の地域社会が使い捨てプラス チックへの依存から脱却するために支援しています。世界中の 360 を超 える地域社会がプラスチックの根絶を目指し、私たちの認証評価を達成 する努力を行っています。 成果:地元の脅威に立ち向かうための支援を個人に提 供しつづけていま
す。サーフ・アクティビスト・ツールキットを作成し、活動家が地元での キャンペーンを効果的に展開できるよう支援しています。排水処 理後の 水質改善や、企業が使用する使い捨てプラスチックの削減、海洋開発に 対する利害関係者の政治参加など、私たちは多くの成功を収め、地元の ニーズをより深く理解してきました。草の根活動主義のおもな成功例は、 2018 年春、何千もの市民が議会にロビー活動を行い、使い捨てプラス チックの使用禁止を求めた結果、イギリス議会が世界初のプラスチックフ リー議会となったことです。 文 by〈サーファーズ・アゲインスト・スウェージ〉
スウェージ以上の成果:〈サーファーズ・アゲインスト・スウェージ〉の ボランティアは65トンのプラスチック廃棄物を収集した。同団体はイギ リスで気候変動と粗悪な開発計画、ビーチへの立ち入り禁止とも闘う。 写真:GREG MARTIN
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
数十年前に環境再生型農業を開拓しはじめた〈ロデール・インスティテュート〉 。 その運動の成長を手助けする農夫のライアンとヘンドロ。写真:RODALE INSTITUTE
前進中:リジェネレイティブ・オーガニック・サーティフィケーション(ROC)を目指すステップ
2016年9月
2016年12月
2017年 4月
パタゴニアにとって「 環 境再生型」という言
第2回年次パタゴニア・ケース・コンペティ
大学院生が構成する10 チームがカリフォル
葉 が 何を意味するかを明 確にするために、
ションで、 「パタゴニアは気候変動と闘うた
ニア大学バークレー校のハース・スクール・
環 境 再生 型 農 業に関する最 初の内 部白書
めに環境再生型農業をどのように発展させ
オブ・ビジネスで、パタゴニア幹部に環境再
を起草。
るのか?」という質問が投げかけられる。
生型有機農業慣行を拡張する計画を提案。
世界が依存する 農業のやり方 パタゴニアがリジェネレイティブ・オーガニック・サーティフィケーション(ROC)に こだわる理由
リジェネレイティブ・オーガニック・サーティフィケーション (ROC)はパタゴニアの ミッションから日々の生活までつながっています。それには政策への提言や関与、そして なによりも農場の目線での食物や繊維の調達方法があります。 〈リジェネレイティブ・ オーガニック・アライアンス〉と密接に関わる数人のパタゴニア社員に 現状を説明してもらいました。 企業開発のシニア・ディレクターを務めるフィル・グレーブスは、アライアンスの ためにパタゴニアの取り組みの陣頭指揮を取っています。パタゴニア プロビジョンズの シニア・ディレクター、バーギット・キャメロンはパタゴニアの食品事業における ROC の履行責任者で、ソーシャル/エンバイロンメンタル・レスポンシビリティ担当 副社長のキャラ・チャコンは繊維の認証に関する責任者です。
農 業体系を全体的に変えようとするパタゴニアの取り組
環境再生型は非常に重要です。不耕起(耕うんを行わない)
みについて、現段階に至るまでの経緯を説明してください。
栽培、または耕起を控え、堆肥化、被覆作物、混作、牧
フィル:パタゴニアの食品事 業であるパタゴニア プロビ
的に自然がみずから健康を回復させるようになります。つ
ジョンズは製品の調達方法によって世界に変化をもたらす
まり私たちは自然を利用して、食物や繊維を育てるのです。
ことができるという重要な教訓を教えてくれました。生ま
化学薬品を使って生 産性を上げるのではなく、上 質の繊
れた川に戻ってきたサーモンを釣ったり、グレートプレー
維や栄養価の高い食物を豊富に生み出す自然環境を作る
ンズを修復する方法で育てたバイソンでジャーキーを作っ
のです。さらに生物多様性を改善し、大気中では害となる
たり、ロング・ルート・エールを醸 造して得た教 訓です。
炭素を土壌内に隔離して食物の成長を助けるという重大な
カーンザ をはじめて商 業 利 用したこのエールに関しては
副次効果もあります。
草 地や樹木間での畝作などを採用する方法により、本質
バーギットが興味深い話をしてくれます。
2017年5月
2017年9月
2017年12月
〈ロデール・インスティテュート〉やドクター・
リジェネレイティブ・オーガニック・サーティ
民 間 意 見 調 査 期 間 が 終了し、 農 家、 監 査
ブロナー社など志を同じくするパートナー
フィケーション (ROC)の枠組みの原案が提出
人、NGO、科 学 者等から認 証の改善に役
たちと会 談を重ねたのち、CEO のローズ・
され、民間意見調査期間がはじまる。 〈ロデー
立 つ 300 以 上のフィードバックが 集まる。
マーカリオを含むパタゴニアの上級幹部は、
ル・インスティテュート〉、パタゴニア、ドク
〈リジェネレイティブ・オーガニック・アライ
認証に高い基準を設定することは環境再生
ター・ブロナー、 〈コンパッション・イン・ワー
アンス (ROA)〉が ROC を支援する独立非営
型有機農業の拡張および、気候変動と闘う
ルド・ファーミング〉、 〈デメター・インターナ
利団体として創設される。ローズ・マーカリ
ためのこれらの農業慣行の重要性に関する
ショナル〉、グレイン・プレイス・フーズ、ホ
オを含む、基準の各柱の専門知識をもつ 9
消費者の意識を高めるために、極めて重要
ワイト・オーク・パスチャーズ、 〈フェアワー
人の取締役が組織を先導。
であると断定。
ルド・プロジェクト〉、 〈テキスタイル・エクス チェンジ〉等からコメントが寄せられる。 31
大気窒素を窒素肥料に変換するデイヴィッド・オイエンのレンズ豆などは、モンタナ州の タイムレス・ナチュラル・フードの農場の環境再生型農業慣行に重要な役割を果たす。 写真:AMY KUMLER
2018年2月
2018年 3月
2018年 4月
パタゴニアは世界の主要コットン・サプラ
ローズ・マーカリオが世界最大の自然食品
ROA は〈NSF インターナショナル〉 ( 製品
イヤー 4 社を招いて、ROC について、そし
イベントであるナチュラル・プロダクト・エ
テスト、検査、認証を行うアメリカの機関)
て ROC をパタゴニアのアパレル・サプライ
キスポ・ウエストでの基 調 講 演で ROC を
に ROC プログラムの管理を依頼。
チェーンにどのように組み込むかについて
正式に発足。
協議。
環境再生型 農業は有機農業にとどまりません。ただその用語 の定義は曖昧です。たとえば、農薬を製 造する大企業が 不耕 起栽培などの環境再生型農業を推奨しはじめていますが、彼ら が収穫高を上げ害虫を駆除する農薬も買うべきだと農家に勧め ていることに違和感を覚えます。長期的にそれは食物や繊維の 生 産と地 球の健 康を左右する土壌の健全 性を改善することに はなりません。そこで私たちは正真正銘の環境再生型農業を 定義する新たな認証を作ろうと考えたのです。 そしてこの新たな認証の制定のために〈ロデール・インスティ テュート〉およびドクター・ブロナー社とパートナーを組んだ のですね?
フィル:そうで す。ROC の 実 現を独 自に 進 め るので は なく、 パートナーと連携し、それぞれの強みを活用していきたいので
す。頼みの綱である 〈ロデール〉は非営利団体で、数十年にわた り環境再生型農業の先駆けとなってきました。ドクター・ブロ ナーは急進的な手強い仕事をこなし、サプライチェーンの中で 農場や農家に環境再生型農業を紹介してきました。 〈ロデール〉 もドクター・ブロナー社も、ROC は原則的には土壌の健 康に 関する認証であるものの、包括的な視点でとらえなければなら ないことを理解しています。ROC を長期にわたって機能させる には、土壌だけでなく動物、農家、地 域社会の状 態も良くな ければなりません。それで私たちは 2017 年に大規模なオーガ ニック・トレードショー「エキスポ・ウエスト」で両社に接触し たのです。両社とも意欲的に参加してくれました。 フィルがロング・ルート・エールについて触れましたが、より
高い基準の例となるこのビールと ROC が、プロビジョンズに とってどんな意味をもつか説明してください。
バーギット:そう、ロング・ルート・エールですね。これはウェ
ス・ジャクソンと彼がグレートプレーンズの自然を回復させるた めに創設した〈ザ・ランド・インスティテュート〉 の終生の事業で す。かつてグレートプレーンズは場所によっては 5.5 メートルも の表土があったのですが、いまでは小麦やトウモロコシ、大豆 など換 金作物の単作と過 剰な耕起により、大半が劣化してい ます。15 年前、 〈ザ・ランド・インスティテュート〉は多年生の ウィートグラスの繁殖をはじめて、それがカーンザになりまし た。その根は土中に 3 メートル以上伸び、深い根はまるで反転 耕のような働きをします。根は土壌を砕いて改良し、土壌バイ オマスを作り出す微生物や菌類の完璧な生息地となるうえ、大 気の炭素を引き込んで土中に隔離します。
2018年5月
2018年7月
民 間 意 見 調 査 期 間に寄 せられたフィード
ROC の初の試験プログラムに参加する 22
バックと、ROA およびその 他の連 携 組 織
のブランド、農場、牧場、ブドウ園を世界
からの考察を組み込んだ ROC の枠組みの
各地から選択。
2018年8月 〈NSF〉が 正 式に ROC 試 験プログラムを 開始。
試験版が完成。 33
すでにフェアトレードかつオーガニックのドクター・ブロナーの姉妹会社セレンディポル社はこのスリランカのココナツ農園で新しいリジェネレイティブ・ オーガニック・サーティフィケーション(ROC)基準のための試験プログラムを実施中。写真:DR. BRONNER'S
カーンザは驚くべき植物なのです。でも栽培者を探すのは至難の技!農家
トレード・サーティファイドや、動物福祉に関するサーティファイド・
はこの穀物には市場がない、売れなければ作らないと言うのです。それ
ヒューメイン、ホールフーズが進んで支援するグローバル・アニマル・
で私たちはオレゴン州ポートランドの醸造者と共同でビールの原材料に
パートナーシップの評価システムなど、すでに実績のある基準やプロ
カーンザを使用してストーリーを伝えるという大胆なアイデアを思い付き
グラムを活用したかったのです。
ました。このアイデアをホールフーズに提案したところ、ロング・ルート・ エールを108 店舗で販売してもらえることになりました。その結果、カー
良い農法に報いるだけでなく、より良い農法へと導く認証を作りたく
ンザがミネソタ州の 81ヘクタールではじめて実験的に植えられました。
て、金、銀、銅の3つの基 準を設けました。ROC の草案を提出して
それは私たちからウェスへの素敵な80 歳の誕生日プレゼントとなり、また
一般からの意見を求め、どこで基準が高すぎるか低すぎるかに関する
ストーリーを伝えることにもなりました。いまではメジャーな食品会社が
300 以上のコメントを受け取りました。その後ローズ(マーカリオ、パ
カーンザの可能性に興味を示しており、もし同社の朝食シリアルの原材料
タゴニア CEO)とデイヴィッド・ブロナーが今年のエキスポ・ウエスト
となれば16,000 ヘクタール以上の農地にカーンザが植えられます。
で ROC をローンチしました。
これは最善の結果です。産業界の目に映るビジョンと、人びとが参加
今後の展開はどうなるのでしょうか?
できる運動を作り出し、それぞれがメリットを吟味できるのです。カー ンザ、サーモン、バイソン、スカジット・バレーで採れるすべての素晴 らしい穀物を利用してきた私たちのこれまでの経験は、環境再生型農
フィル:農場の目線で試 験プログラムをはじめます。牧草飼育の牛、 乳製品、畝立て栽培、樹木作物、コットンなど、異なる地域からさま
業がどれほどの変化をもたらすかを示し、ROC はパタゴニア プロビ
ざまな農業を代表する 80 近い参加希望者が集まり、好調なスタート
ジョンズの未来を定義し、支援する枠組みとなるでしょう。
を切っています。12 か月後に試 験プログラムの結果を考察し、基 準 を改善するのが目標で、パタゴニアのトレーサブル・ダウンとウールの
ROC に関してパタゴニア全体ではどんな状況にありますか?
プログラムを管理している 〈NSF〉が認証機関となります。
フィル:2017 年に〈ロデール〉、ドクター・ブロナー社とともに本格的
その間、 〈リジェネレイティブ・オーガニック・アライアンス〉はダノン・
に ROC のたたき台の制作に取り掛かりました。キャラのソーシャル/
ノース・アメリカ社やキャンベル・スープ・カンパニーなどひとつでも
エンバイロンメンタル・レスポンシビリティ(SER)チームとマット・ド
多くのブランドと契約を結べるよう懸命な努力をつづけます。より多く
ワイヤーの素材チームは社内での基準開発の多くを担ってくれました。
のブランドと消費者がこの運動を支持すれば、より速い移行が可能に
書類の作成や監査で農家に負担をかけたくなく、労働に関するフェア
なるのです。
環境再生型有機農業:3本柱
土壌の健康
動物福祉
社会的公平性
• 土壌有機物の育成
• 牧草と放牧による飼育
• 公正かつ安全な労働環境
• 省耕起栽培または不耕起栽培
• 輸送の制限
• 強制労働の撲滅
• 大規模畜産経営 (CAFO)を採用しない
• 生活賃金の確保
• 適切な畜舎の設置
• 農家への公正な報酬
• 5 つの自由:
• 民主的な組織づくり
• 被覆作物 • 輪作 • GMO(遺伝子組み換え作物) や. ゲノム編集を使用しない • 無土壌栽培を採用しない • 合成物質を投入しない
不快感からの自由
• 連合の自由
恐怖と苦悩からの自由
• 長期的な関与
飢餓からの自由
• 生物多様性の促進
苦痛や負傷や病気からの自由
• 輪換放牧
自然に行動するための自由
あなた自身とソーシャル/エンバイロンメンタル・レス ポンシビリ
• 改善の継続 • 透明性と説明責任
工 場での社 会 的/環 境 的影 響に焦 点を置き、またヒツジ、アヒル、
ティ・チームの役割は何ですか?
ガチョウの動物福祉基準に取り組んできました。しかし農場の目線で
キャラ:この夏私たちは ROC を管理する〈NSF〉に提出するための社
ラムによって、私たちが与える影響を十分理解し、ROC を介して改
会的責任と動物福祉に関する基準を作成してまとめました。またフェ
労働や地域社会の問題に取り組んだことはありません。試 験プログ 善していきます。
アトレード・プログラムを監視する〈フェアワールド・プロジェクト〉に 連絡をとりました。2 月には SER と素材チームが初のコットン・サプ
私たちのチームは健康な土壌がどれほどの違いを生み出すか、また
ライヤー・コンファレンスを開き、ROC の試験プログラムへの協力を
パタゴニアの繊維を育てる農家にどのような経済発展をもたらすかを
要請しました。インドに工場と農場をもつアーヴィンドとプラティバの
知ることに胸を膨らませています。たとえばコットンとターメリックの
2 社が参加を同意してくれました。
混作により、農家は第 2 の換金作物を栽培することになります。地域 社会が貧困から抜け出せる可能性があるのです。リック・リッジウェ
ゆくゆくは農場および特別プロジェクトのサプライチェーン・レスポ
イ(パタゴニアのパブリック・エンゲージメント副社長) と私はオハイ
ンシビリティを管理するレイチェル・キャンター・ケプニスがアーヴィ
オ州立大学で、世界屈指の土壌科学者であるラッタン・ラル 教 授と
ンド社とプラティバ社とともに取り組み、ソーシャル・レスポンシビ
素晴らしいミーティングをしました。炭素測定についてはもちろん、
リティとトレーサビリティのディレクターを務めるウェンディ・サベー
最適な土壌の健康が人びとを貧困から救い出し、食料不安をなくし、
ジと私 がそれを監督します。将来的にはその他のサプライヤーにも
世界の政局安定に役立つことについても学びました。
ROC の試 験プログラムに参加してもらい、最終的にコットン以外の 繊維作物でも実施したいと考えています。
私たちの部門にとっては、この取り組みは夢が実現するようなもので、
土壌の健康から動物福祉、労働者の福祉まで究極の責任をともなう
範となります。世界に前向きな変化をもたらす、とても大きな可能性
ROC にとても胸を膨らませています。試験プログラムは農場の労働
環境的責任と社会的責任の実行が公益のためにどう機能するかの模 があるのです。
環境をはじめて私たちに見せてくれることになります。長年私たちは 35
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
支持を育てる: 〈NSAC〉は多数の家族経営農家によって生産された 安全で栄養価の高い、豊富かつ安価な食品供給のために取り組む。 写真:REANA KOVALCIK
ナショナル・サスティナブル・ アグリカルチャー・コーリション ワシントンD C
ミッション: 〈National Sustainable Agriculture Coalition (NSAC)
( ナショナル・サスティナブル・アグリカルチャー・コーリション)〉は、
業界の強化に関するプログラムや政策の促進を支援する 300 以上の 団体から署名を集めました。
農業や食のシステム、天然資源、地元の地域社会の持続可能性を促 進するため、国レベルの政策改革を提唱する120 以上の草の根団体
成果:〈NSAC〉は、2018 年度予算において持続可能な農業の研究
の同盟です。小規模から中規模の農業従事 者を支援し、新しい世代
と拡張プログラム、有機 栽 培への移 行に関する研究プログラム、農
のために農業参入のハードルを低くし、重要な持続可能な農業に関す
業と食物研究イニシアチブ、食の安全アウトリーチ・プログラムへの
る研究への資 金や支援を強化し、気候 変動を意識した公正な食のシ
歴史的な投資を含む大きな勝利を収めました。私たちは 2018 年度の
ステムと貴重な天然資源の保護を目的に活動しています。
農業法 案のための包括的な政 策を提唱し、環境保護や農業 初心者、 地元/地域ベースの食のシステム、研究、農作物保険の改定などの優
活動:本年度は 2018 年度の農業法案に重点的に取り組み、私たちの
先項目にまたがる〈NSAC〉 が承認する15 の法案の導入を達成しまし
メンバーや草の根活動家たちの意見を連邦議会で主張しました。新し
た。最も注目すべきは、審議会の投票前に下院で作成された劣悪な
い農業法案を理解するために農家、政策アナリストや支援者に援助を
農業改革法案の原案を敗北させたことです。これは農業法案において
無料で提供するだけでなく、この農業法案とその予算案関連イベント
は過去1度しか前例のない歴史的な勝利でした。上院で作成された農
のために家族経営農家をワシントンに呼び、議会に彼らの現状を伝え
業法案の原案では、家族経営農家と持続可能性支援者の優先事項を
る機会を設け、持続可能な農業プログラムや政策の重要性を強調しま
前進させ、有色人種や社会的に不利な立場の農家、環境保護農業や
した。 〈NSAC〉は農業法案にある持続可能な農業問題についての支
地元地域の食のシステムにとって重要な勝利となりました。
持を築き提唱するために無数の草の根イニシアチブ始動を指揮しまし た。その一環として、農園から食卓までのつながりを広げ、食品製造
文 by〈ナショナル・サスティナブル・アグリカルチャー・コーリション〉
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
食の未来を変える パタゴニア プロビジョンズが地球を養う 栄養価の高い食品市場を開拓
農家の創造性と好奇心と探究 心を掻き立て
レンズ 豆の窒 素固定の奇跡を示す、それぞ
数 世代にわたる農家や、農家を目指す若者
る農 業とはいったいどんな農 業でしょうか。
れの根に付いた根粒を観察しました。
がますます減少するなかで、たんに植物を
それは農産業というシステムの一部になるの
成長させるだけでなく、創造性と知性を生か
ではなく、農業の生態系に完全に没頭でき る農 業です。パタゴニア プロビジョンズの チームは環境再生型有機農業を実践するモ ンタナ州のレンズ 豆 畑を訪れ、その様 子を 目にしました。 環境再生型有機農業は、農業や土壌肥沃度 を向上させる包括的な方法です。スタンフォード 大学の講師で『Lentil Underground(邦題: 豆農家の大革命 アメリカ有機農業の奇跡 築地 書館、2016 年)』の著者リズ・カーライルは 「環境再生型有機農業に関して忘れてはなら ない重要な点は、それが生命を支えるシステ ム全体であるということ。それは土壌および 土壌の健康を築くということです。土中の生 命と地面の上の生命両 方を養うことでもあ るのです」 と述べています。 地面の上では、デイヴィッド・オイエンのよ うな農家が 耳を澄ませて農地から学び、植 物が最も育ちやすい環境を作っています。そ のためには細心の注意と積極的な関与が必 要です。夏の酷 暑、大雨、予 想外の昆虫な どに目を凝らし適応するのです。 デイヴィッドは 30 年以上前に仲間と共同で タイムレス・ナ チュラル・フードを 創 業し、 農家の学習共同体としてゆっくりと着実に成 長してきました。彼らは逆境への対処法はも ちろん、成功と発見に重点をおく方法も学ん でいます。私たちは視界の向こうまで広がる 青々とした広大な有機レンズ豆畑を訪れ、タ イムレスが発見したことを共有してもらいま した。それは 小 麦との混作に最 適なレンズ 豆の品種、畑と畑のあいだで繁 殖する送 粉 者のための多年生植物、乾 燥した夏季に繁
す農業のやり方は、将来に希望を抱かせて
「 私 たちは 食 卓 に並 ぶ食 べ 物が環境および社会に与える
影 響について意識的に決定 する。そして食卓に並ぶ食べ
物は農家がどういう農業を実 践するかを決めるのだ」
デイヴィッド・オイエン、有機レンズ豆農家、 タイムレス・ナチュラル・フード共同創業者
殖するレンズ豆の品種などです。各農場では
くれます。 私たちは未 来を意 識して栽 培する原材料の 市場を生み出すべく、パタゴニア プロビジョ ンズを立ち上げました。アメリカでは今 年、 有機レンズ豆のような被覆作物からひらめき を得て、タイムレスのレンズ豆やそばの実や ヘンプ で 作った歯ごたえのある美味しい 軽 食、オーガニック・セイバリー・シーズの販 売をはじめました。食料資源を変えるのは、 私たち自身を変えること。どのように農業を 行い、どのように食べるかを変えることです。 私たちは食のつながりをとり戻し、食の未来 を変える方法を学んでいる最中なのです。
レンズ 豆の苗を引き抜いて私たちに手渡し、
レンズ豆の窒素固定を示す根粒を見せるジム・バーングローバー(中央) 。 写真:AMY KUMLER
37
より少ない影響でより多くを得る リサイクル、リクレイム、またはバイオベース素材100%を目指して
私たちはパタゴニアのカーボンフットプリントの 85%以上が、製品を作るために使用する素材の製造、染色、 加工に由来することを認識しています。また私たちは、パタゴニアのサプライチェーンのパートナーたちの 施設における水の使用量と、環境への影響を抑えるために彼らが行っている取り組みも追跡しています。 自分たちの目標についてあまり語らないのは、それを 「口先だけ」と軽くあしらわれたくないからですが、 その一方で私たちは悪影響を最小限に抑えるため、パタゴニア製品のすべてを100%リサイクル (再生)または リクレイム (回収)された素材か、バイオベース (生物由来)の素材で作ることに取り組んでいます。 この取り組みは1991年に、私たちが使用する 4 種類の素材のライフサイクル分析を実施したときから はじまりました (以下に掲載の年表を参照)。ここでは今年のハイライトをいくつかご紹介します。
取り組みの歴史
1991 コットン、 ポリエ ステル、 ウ ール、 ナイロンに関するライフサイクル分 析を依頼。
1992 初の持続可能性マネージャーを雇用 し、社内で環境アセスメントを実施。
1993 ヘンプ 2017 年秋にアメリカでワークウェア製品をリリース以降、ヘンプを使用するスタイルは 54 種 類に増えました。ヘンプは環境への影響が少ない方法で栽培される天然繊維で、ほとんどの 害虫がつきにくい強い植物であるため、農薬を必要としません。また、不可欠な栄養素を補給 して侵食を防ぐヘンプを育てることは、土壌の健康の改善にもつながります。地球上で最も丈 夫で多用途に使える天然繊維のひとつで、リネンのような美しいドレープを描く素材に生まれ 変わります。 私たちは長年、産業用ヘンプの栽培を支持してきました。アメリカ合衆国では1937 年に課さ れた税金のためにほぼ姿を消し、1970 年に完全に違法となったこの植物は、2018 年の農業 法の通過とともに、ついにまた合法化されました。
ついに合法:1997年にヘンプ製ウェアの導入以降、パタゴニアのヘンプは他国から購入しなければならなかった。 中国、河南省。写真:LLOYD BELCHER
ペットボトルからリサイクルされたフ リースを導入。
1996 オーガニックコットンのみの 使 用を 開始。
1997 ヘンプの使用を開始。
リサイクル・カシミア 世界中で愛されるカシミアは、モンゴルの牧畜家たちをカシミアヤギの生産の増加へと駆り立 て、その結果としてもたらされた過放牧により、モンゴル高原の草原地帯は砂漠化しています。 この問題の一部となりたくない私たちは数年前にバージン・カシミアの使用を中止しましたが、 カシミアを要望するお客様に応えるため、2017年秋にリサイクル・カシミア 95%/ウール 5% 素材を使用した 8 種類のスタイルを再登場させました。リサイクル・カシミアは廃棄されたカシ ミア製セーターや工場から回収された端切れを原料とするもので、それらを切り刻んだ繊維を 糸として混紡し、新たなカシミア製セーターに編み上げます。リサイクル・カシミアの市場を提 供することにより、私たちは埋立地や焼却炉行きとなる運命の廃棄物を救い、モンゴルの草原 の砂漠化に加担しないことを自分たちなりの小さな方法で実現しています。
2000 消費者と労 働 者の 健 康と安 全を改善 し、素 材の製 造において資 源を最も 有効に活用するため、ブルーサイン・ テクノロジーズと提携。
2002 ポリ乳酸(PLA)の可能性を模索した ものの、 その原 料 のトウモロコシ が GMO (遺伝子組み換え作物)であるこ とから使用を断念。
2003 木 材パ ルプを原 料とする繊 維、 テン セル・リヨセルで製品の製造を開始。
2007 リサイクルされた/リサイクル可能なポ リエステルと非塩素処理ウールを使用。
2008 リサイクル・ナイロンを採用。 リサイクル・ウール ウールを生産するために羊を育てるには、広大な土地での放牧が必要です。また、刈り取った 羊毛を品質の整ったきれいな繊維に仕上げ、それを美しいウール製品として染色する製造過程 では、エネルギーと水と化学物質も要します。そうした影響を抑えるひとつの方法は着古した ウールを再利用することで、その実践には何百年もの歴史があります。パタゴニアでは、回収 された古いウール製セーターを切り刻んで繊維にし、新しいウール製品に織り上げています。 2018 年にはビーニーなどの帽子からアウターウェアまで、23 種類にわたるリサイクル・ウー ルのスタイルを提供しました。これらの製品のほとんどはリサイクル素材を 50%以上含み、通 常リサイクル・ナイロンやリサイクル・ポリエステルを混紡して耐久性を高めます。 リサイクル・ナイロン パタゴニアが「飽くなき冒険者たち」の元祖であるバギーズ・ショーツを作りはじめたのは 36 年 前のこと。いまや私たちが販売するその種類と数はこれまで以上に豊富です。2018 年春に は、バギーズの素材をバージン・ナイロン(石油由来)からリサイクル・ナイロンに切り替えま した。その結果、フットプリントで水の使用量を 52%、二酸化炭素の排出量を18%、バー ジン素材の原料となる石油の使用量を 92%削減したことになります。 リフィブラ パタゴニアでは、木材パルプと端切れをリサイクルしたコットンを原料として、レンチング社(オースト リアを拠点とする製造業者)が生産する素材も採用しています。2018 年春の製品ラインに含まれ た5 種類のスタイルには、このリフィブラ・リヨセル繊維を使用。持続可能な方法で管理された森 林を供給元とする木材パルプは再生可能な原料で、端切れをリサイクルすることで廃棄物の流れか ら救われたコットンをさらにその木材パルプの一部に置き換えることにより、必要な原料も節約し ます。この繊維は溶剤の99.7%を何度も回収/再利用しつづけるクローズド・ループ (循環型) シス テムで製造され、残り0.3%以外に外へ出るものはリフィブラ繊維と水だけです。 2018 年に 23 種類のウェアとアクセサリーを作るために使用したリサイクル・ウールは、イタリアのプラートにある カラマイ工場から調達。写真:TIM DAVIS
2011 アルゼンチンで持 続 可能 な方法で放 牧された羊をメリノウールの供給元と して採用。
2014 農場から工場まで動物福祉を保証する ため、ダウンのサプライチェーンを追跡。
2015 有害な化 学 物 質を使 用しないで染 色 されたデニムの使用を開始。
2016 リサイクル・ダウンを採用。ユーレッ クス天然ラバーをウェットスーツに使 用開始。
2018 水の使用を削減するため、バックパッ ク製品に原料染めを採用。 39 39
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
国を守るために:巨大な炭鉱によって土地が脅かされているワンガン& ジャガリングウ先住民とその支持者たちがクイーンズランドの州議会で抗議。 写真:WANGAN & JAGALINGOU TRADITIONAL OWNERS COUNCIL
ワンガン&ジャガリングウ・トラディショナル・ オーナーズ・カウンシル オーストラリア、ブリスベン ミッション:国を守るために。私たちはクイー
活動:アダニ社とクイーンズランド州政府によ
成果: 〈Wangan & Jagalingou Traditional
住むワンガン&ジャガリングウ国の先 住民族
効にする試みの後、2015 年 3 月に「ディフェ
ウ・トラディショナル・オーナーズ・カウンシ
です。私 たちワンガン&ジャガリングウ族は
ンス・オブ・カントリー」という一般キャンペー
ル)〉がアダニ社の計画に反対しつづけて6年
何万年もの間この伝統の地を守り、私たちの
ンを立ち上げました。これは、私たちが 4 度
以 上の年月が経ちます。継 続して法 廷でこの
土地と水、人びと、知識、歴史、そして聖地
にわたって拒 絶したにもかかわらず、アダニ
計画に抗い、アダニ社が融資を獲得し合法的
を保護する責任を負ってきました。
社が取得した採掘権と土地使用契約に挑むべ
に炭鉱を前進させるために必要な同意を拒否
くローンチした法的/政治的戦略です。私た
しつづけています。このキャンペーンは国 際
多国 籍企 業アダニ・グループ社 が、オースト
ちの抵 抗を強化するために儀 式を執り行い、
的に注目を集めており、先住民族の権利と人
ラリアの州および連邦政府からの強力な支援
次世代の先住民族の権利キャンペーンを構築
種差別に立ち向かう支援を獲得するべく国連
を受け、私たちの伝統の地にカーマイケル炭
するためにワンガン&ジャグリングウ族の若
機関と積極的に関わっています。
鉱の開発を進めています。世界最大規模とな
者の組織化をはじめました。また市民社会団
るこの炭鉱は1億 4 千万トン以 上の二酸化炭
体や組合、NGO 環 境保 護 団 体 のネットワー
文 by〈ワンガン&ジャガリングウ・トラディ
素を新たに大気に排出することになり、それ
クを築くことで、州および連邦政 府にプレッ
ショナル・オーナーズ・カウンシル〉
は欧州連合全体の年間排出量を超えるほどの
シャーをかけ、資源掘削への抵抗キャンペー
量です。この炭鉱は何十 億リットルもの地下
ンを拡大して、事前承認制度を求めるために
水を汚染/流出し、これまで守られてきた神
他の先住民族を鼓舞しています。現在国内外
聖な水源を徹底的に破壊し、絶滅の危機に瀕
で数十万人の支援者を集めました。
ンズランド州中西部に広がるガリリー盆地に
る私たち先住民族の土地に対する所有権を無
Owners Council ( ワンガン&ジャガリング
する種を消し去る可能性があります。これは 私たちの故郷の心臓を引き裂く行為です。
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
アウトドアを育てる 環境における正義、公平性、参加を奨励
環境保護に投資するパタゴニアは、環境を守ることが環境のためだけ
な場合はいつでも、私たちの「地上部隊」である直営店を利用したり、
でなく、そこで生活を営む人びとや地域社会にとっても重要であると
その区域の環境コーディネイターを仲介役として、地元レベルでの関
理 解しています。1985 年に環 境 助成金プログラムを開始して以 来、
係づくりとさらに公平な助成金選考を目指しています。とくに助成金
私たちは 500 以上の団体を支援し、彼らの活動の最前線の資金とな
申請のガイドラインには、過小評価されている人びとや地域社会によ
る700 万ドル以上の寄付を行ってきました。そうした助成先にはしば
る環境保護活動を含む、より明白な改正を施しました。
しば、環境への影響や気候変動によって不相応に苦しむ先住民族や、 社会的に疎外されている地域が含まれます。
将来的に見れば、財政援助の提供は答えのほんの一部でしかないこ とを私たちは認識しています。そこで自社内の雇用の過程、パタゴニ
パタゴニアが環境を守る闘いの最前線に立つ地域社会を支援してきた
アのメディアのプラットフォーム全体で紹介する人びと、環境保護分野
歴史の一方で、彼らが自然を楽しむための手段を得ることもまた、試
でリーダーとして強調する声についても見直しています。私たちは人種
練のひとつとなってきました。次世代の環境保護活動家たちがアメリ
と環境保護 運 動にまつわるみずからの偏見を解消するための社内研
カの人口統計を反映することを望んでいた私たちは、2017 年に、過
修をつづけ、さまざまな地域社会で不正をもたらしてきた根深い障壁
小評価されている人びとがアウトドアへ向かうことを促すために取り
の奥底に迫ります。さらに広く見れば、私たちは助成先の選考過程の
組む団体と関係を築きはじめました。
公平化をつづけ、その決定には多様な視点が含まれることを確実にす るということです。
2018 年には、全 米の地 域社会で公平 性と正義のために尽力する団 体に 57 万 7 千ドルを寄付し、この取り組みを支えるための助成金 協
あらゆる背景をもつ人びとに加わってそれを私たちの資産とし、次世
議会を設立しました。
代の環境保護 活動家たちの声を高めるために利用しなければ、故 郷 である地球を救うというパタゴニアのミッションを成功させることはで
パタゴニアはアウトドアにおける公平性と参加に取り組む団体を支援
きません。
するため、それを意図的に重視した投資をつづけます。地理的に可能 2018 年11月、アウトドアにおける多様性、公平性、一体性の拡大の 奨励を先導する環境保護活動のため、ヨセミテ国立公園に集まった パタゴニアの社員と友人たち。写真:EUGENIE FRERICHS
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冒険、献身、 希望 知識とひらめきを与えて行動を促すストーリー
秀 逸な写 真やイラストとデ ザインによって彩られた素晴らしい物 語 という10 年以 上にわたる伝 統を継 続するパタゴニア・ブックスのプ ログラムは、 冒 険と献 身と希 望のメッセージ を 伝 え、 受 賞に 輝く 書 籍を出版しつづけます。今 年のリリースには、野 生生物の管 理と 保護に携わるジム・ウィリアムスによる『Path of the Puma: The Remarkable Resilience of the Mountain Lion(英語版)』が含 まれています。 開発と気候変動に直面するほとんどの野生動物が減少をたどるなか、 ピューマやクーガーなど多数の異名をもつマウンテンライオンは、猛々 しくも生息数の回復と行動域の拡大を見せている、とウィリアムスは 書いています。食物連鎖のピラミッドにおいて人間のすぐ下に位置す るこのネコ科の肉食動物は、なぜそれほどまでに回復力と機知に富 んでいるのでしょうか。そしていますぐにも守られるべき生物多様性 の網について、環境や野生生物の保護活動家たちがマウンテンライ オンから学べるものとは何でしょうか。これは切迫する挑戦と衰退の 時代にありながらも、すべての種に保護の可能性が残されていること を教示する、魅力的な物語です。 ロッキ ー 山 脈と南 米 パタゴニアの原 生 地 域 での実 地 体 験 をもとに ピューマの道を追跡するウィリアムスは、その旅の過程で人間の役割 について、また自然保護への献身が今日何を意味するかについて考え ることを読者に促しています。 今 年 パタゴニアから出 版され た 他 の 書 籍 には、 リズ・クラー ク著 『Swell ( 英 語 版 )』、 オードリー・サ ザ ー ランド 著『Paddling My Own Canoe』 (日本未 発 売)、イヴォン・シュイナード/クレイグ・ マシューズ/マウロ・マッツォ著『Simple Fly Fishing 改訂第 2 版』 (日本では初版の日本語版を販売中)が名を連ねます。 patagonia.jp/books
回復力と機知に富み、行動域を拡大中。 写真:Laura Crawford Williams
43 43
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
ブラウン・ガール・サーフ カリフォルニア州オークランド
ミッション:〈Brown Girl Surf(ブラウン・ガール・サーフ) 〉は、サーフィン への参加を拡大し、地域社会を育成し、有色人女性のサーファーの声を
拡散し、地球を大切にすることで、より多様かつ環境に敬意を払う楽しい 女性のサーフ文化を構築するために活動しています。 活動:〈ブラウン・ガール・サーフ〉では、女性としての多様な経験を喜ぶ
サーフ文化を創造し、より多くの女性、とくに有色人女性がサーフィンし、 海とつながり、サーフィンにかかわるあらゆる恩恵を楽しむことを目指し ています。プログラムの一例として 「サーフ・シスター・サタデー」を開催し、 海への文化的/経済的/交通面の手段を提供しています。このプログラム には有色人女性や海にまつわる否定的なイメージを肯定的なそれに置き 換えること、サーフィンが有色人の地域社会にとって身近な場所で楽しめ るものであること、有色人女性を海や水とつなげる歴史と伝統を高めるこ とがあります。 成 果:カリフォルニア州オークランドに拠 点を置く私 たちはこれまでに
300 人以上の少女や女性に海を紹介してきました。90%以上の参加者、 また 85%以上のボランティアが有色人女性です。スタッフは有色人女性 100%で構成されています。今年は地元の地域社会や教育団体からだけ ではなく、ロサンジェルスやポートランド、クリーブランド、アトランタ、 カンザスなど、メディアへのアウトリーチを通じて〈ブラウン・ガール・ サーフ〉を知った遠方からの団体も参加しました。南カリフォルニアや東 海岸にも支部を設立してほしいという要望を頻繁に受けています。 また私たちは環境汚染を減らし、地球を守り、海への参加を公平なもの にするために市民関与や環境アドボカシーのリーダーとしての役割も担い はじめています。 〈ブラウン・ガール・サーフ〉は 2018 年 2 月にサクラメ ントで開催された「ラリー・トゥ・プロテスト・オフショア・ドリリング(海 洋掘削に対する反 対運 動)」で講 演しました。現在政 府機関や提携団体 と連携し、私たちのような非営利団体が直面する、少数派の市民を一部 の州立ビーチへと導くことについての経済的および法的 (許可)な障害を乗 り越える活動に取り組んでいます。今年の秋には私たちの地域社会にお ける市民関与の促進を目的とした初のワークショップ 「シヴィックス・イズ・ セクシー!」を開催しました。大きな使命を掲げた小さな団体である私た ちの運動への参加に感謝します! 文 by〈ブラウン・ガール・サーフ〉
ラインアップで:〈ブラウン・ガール・サーフ〉はオークランド出身のリサ・パディーヤなどの 300人以上の少女や女性にサーフィンを紹介した。写真:KRISTI CHAN
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
目に見えない 配当 フェアトレードが生み出す お金以上の価値
大半のアパレル企業と同じように、パタゴニアはパタゴニア製品を製造する工場を 所有していません。私たちは品質、安全で健康な労働環境、社会的/環境的 ベストプラクティスにおけるパタゴニアの高い基準を満たし、志を同じくする サプライヤーをパートナーとする最善の努力をしています。しかし労働者の 賃金に関しては管理が非常に困難です。
社会的/環境的責任に深く献身する企業であ る私たちは、パタゴニアのサプライチェーンで 働く常勤労働者に生活賃金を支払う取り組み を進めています。生活賃金とは労 働者とその 家族が基本的な生活をするための十分な賃金 を意味します。それには食料、水、住居、健 康 保 険、 教 育、 衣 類、 交 通、 育児、 その 他
パタゴニア:フェアトレード製品の購 入によ り工 場 の労 働 者に賞与が支 払わ れ、労 働 者
はそのお金をさまざまな方法で利用できます
が、パタゴニア製品を製造する労働者が本年 度に選んだ使い道を教えていただけますか?
フェアトレード USA:もちろんです!フェアト
の基 本的なニーズ、そして不測の事態に備え
レード USA は自分 や家 族や社 会 のニーズを
る蓄えがあります。私たちは業界全体での生
最もよく理 解しているのは労 働 者自身だと考
活賃金の促進を目指しています。
えているので、労働者に賞与の使い道の決定 権を与えています。
しかし、薄給と安価な衣類を望む消費者の要 求に応じるための過酷な労働条件の上に成り
本年度、パタゴニア製品を製造する労働者は
立つ業界において、私たちは小さな存在です。
賞与をさまざまなことに利用しました。賃金を
はるかに高い収 益をもつブランドの力に押し
補うボーナスとして現金を受け取ったり、自転
やられ、この取り組みを独自で目指すのは困
車を購入したり、また子 供の教育費に使った
難です。そこでパタゴニアは 2014 年にアパレ
人もいます。
ルおよび家庭用品の工場基準についてフェア トレード USA とパートナーを組みました。
タイの V.T. ガーメント社 の 従 業 員は 工 場で 働くタイ語を話さない移民労働者の援助に使
フェアトレード USA の工場基準がどのように
う選択をしました。病院を訪れる際に通訳を
機能するかをさらに探求するために、フェアト
雇って、医療スタッフとコミュニケーションが
レード USA の製造品プログラムのビジネス開
取れるようにしたのです。また従 業 員が緊急
発マネージャー、アリソン・ファイトに話を聞
時に資金援助を受けられる 「フレンズ・ヘルプ・
きました。
フレンズ」プログラムを開始しました。
パタゴニアのフェアトレード・プログラムの参加により、タイの V.T. ガーメント社の布地倉庫で働くイェ・ミン・トゥンのような 49,200人以上のアパレル労働者が賞与を受け取り、より優れた 労働環境で働くことができる。写真:THEODORE KAYE
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「フェアトレードの託児所が
「フェアトレードは労働者を讃え、私たちに
なかったら、私は家から離れる
売上の一部を還元してくれます。製品を購入する
できないでしょう」
ことを知ってほしいと思います」
ことも自分の志を遂げることも
お客様には、私たちにも利益がもたらされる
ウペクシャ・マドゥシャニ. スリランカ、ヒルダラマニ・ミヒラ工場
パタゴニアのフェアトレード製品の売り上げは、それを製造した人びとの社会に数百万ドルを還元してきた。 写真:JAMES RODRIGUEZ
タン・ウィン・トゥン. タイ、V.T. ガーメント・カンパニー
「フェアトレードはフリースを 扱う私たちの仕事を、
とても誇りに感じさせて くれます」
パスクアラ・パトリシア・マリン・バルデス. メキシコ、ホンホー・ファクトリー
メキシコのバーティカル・ニット社とインド
しかしこの協働を介して 「目に見えない配当」
のプラティハ・シンテックス社は家庭用にガ
が生まれるのです。この過程で労 働者と工
スレンジとブレンダー、そして圧力鍋の購入
場管 理者が協力しあって労 働 者のニーズと
に賞与を利用することを決めました。それま
課題を率直に話し合い、労働者の生活と社
では多くの家庭が薪ストーブや低品質のガス
会を改善する解決策を探ります。このような
レンジを使用し、調理は時間のかかる面倒
共有経験は社会規範と力関係が管理者と労
な作業でした。新たな調理器具の導入で調
働者を引き離しがちな製造業ではまれです。
理時間が短縮され、家族と過ごす時間が増
このように、フェアトレード・プログラムの
え、朝の遅刻も減ったという報告があります。
最大の価値は必ずしも賞与そのものの効果
メキシコのホンホー社では洗濯機、テレビ、
ではなく、労働者と工場管理者の関係改善
ラップトップのいずれかの購入に使うことを
である場合が少なくないのです。
選択しました。これらの製品は労働者とその 家族に大きな変化をもたらしました。 パタゴニア:賞与と労働環境の改善のほか に「目に見えない配当」について話していま したが、それはどういうものですか?
パタゴニア:「目に見えない配当」から労働 者が得た恩恵の例を聞かせてください。
フェアトレード USA:メキシコの工場でフェ
アトレード委員会の代表を務めるフリアン・ エ ル ネ ストにそ の 質 問 をしたこと が あり
フェアトレード USA:労働環境の改善と賞
ます。
ラムのなかで最も明白で話題になる恩 恵で
彼は「(賞与プログラムから)多くを学びまし
す。 「目に見えない配当」というのは労働者
た。たとえば支出プロジェクトの作り方と管
と彼らの社会にもたらされる、あまり人目に
理の仕方です。それまでこれほど大きなプ
つかない長期的な恩恵です。
ロジェクトに携わり、人びとをまとめたこと
与による追加収入はフェアトレード・プログ
はなかったのですが、いまでは自分にそれ 工場がフェアトレード・サーティファイドの
ができることがわかりました」と言いました。
認証を受けるためには、まず全従業員がフェ アトレード賞与の使い道を決定するフェアト
工 場の 従 業 員に与えるフェアトレードの効
レード委員会のメンバーを同僚のなかから
果について話しながら、フリアンは「プログ
選出しなければなりません。委員会はアン
ラムにより従業員が互いをより良く理解する
ケートまたは面談で労 働者の意見を集めて
ようになり、工場のモラルが向上しました」
使用方法を決めます。この過程は教育、食
と言いました。またプログラムは「労働者の
料、健康保険などの利用についての全従業
自信につながりました。自分たちが 作った
員の課 題や経 験を知るのに役立ちます。お
製品に対して、消費者がよりお 金を支 払う
金 の 使 い 道 は 労 働 者 の 大 多 数と委 員 会 に
のは、消費者が自分たちと自分たちの幸 福
よって決 定され、往々にして工 場管 理 者か
を気遣っているからで、自分たちは特別なの
らの支援も加わります。賞与の使 用が大 掛
だと思わせてくれるのです」とも言いました。
かりな作 業となることもあります。 たとえ ば、とりまとめて交渉し、600 台の洗濯機 を購入してメキシコの 8 つの村の労 働 者に 分配するのはかなりの任務です!
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「恩恵を受け取ったときは、本当に信じられませんでした」とフェアトレード・プログラム について語るユカタンのバーティカル・ニットで働く3人の母親、アドリアナ・ロブレス。 写真:JAMES RODRIGUEZ
パタゴニア:フェアトレードから工場労働者
す。工場管理者と労働者はパタゴニアをバイ
果たします。私たちは複雑な産業界で変革を
が受け取る恩恵とは別に、フェアトレードの
ヤーとして維持するためにより良い製品を作
作り出すためにパタゴニアのようなブランドと
パートナーとなることにより、パタゴニアを
ることを望み、製品の品質もブランドと工場
ともに取り組んでいます。しかし、この変革
はじめとするブランドにはどのようなメリッ
の関係も向上します。関係者全員に利益とな
の創出は困難で、ときとして通常のビジネス
トがあるのでしょうか。
るプログラムなのです。
慣行に逆行するものであり、それがこのプロ
フェアトレード USA:いまは意識の高い消費
パタゴニア:さらに多くのブランドや工 場、
しくしています。
の懸念から、人びとはますますその価値観に
ラムを拡大または変化させる予定はあります
パタゴニア:消費者には数々の選択肢がある
ますか?
です。それでもフェアトレード製品を買うべ
者の時 代です。世界 的 視 野と持 続 可能 性へ
基づいた購入を望んでいます。消費者は製品 が何でできているかだけではなく、どこでど
グラムを効果的かつ早急に拡大することを難 労働者を募るためにフェアトレード・プログ
か? また、その成長にともなう障害があり
のように製 造されているかを知りたがってい ます。フェアトレード・サーティファイドのラ
フェアトレード USA:より多くの消費 者に、
うえ、フェアトレード製品は値段がやや高め き理由は何でしょう?
フェアトレ ード USA:私 たちはこれまで以
ベルは価値があることの象徴であり、その製
責任ある工場で製品を製造する責任あるブラ
品は労働者と地球を尊重しながら作られ、製
ンドから製 品を購 入して 欲しいと思います。
品の陰にいる人びとがその労働に対する賞与
フェアトレードに参加する消費者、ブランド、
す。政治、気候変動、土地の権利など多くの
を受け取っているということを、パタゴニア
工場、労働者は多ければ多いほど良いのです。
難 題に直 面し、圧 倒されてしまうほどです。
上に懸念すべきことが多い時代に生きていま
そんななか、誰もが巨額のお金を寄付したり、
製品の購入者に伝えます。 フェアトレードはサプライチェーン全 体のつ
ボランティア活動に参加したり、選挙に出馬
さらに、フェアトレード・プログラムはパタゴ
ながりを深め、互いのニーズを理 解し合い、
できるわけではありません。でも誰もが食事
ニアがパタゴニアの衣類やギアを作る人びと
威 厳ある労 働 環 境とビジネス関 係 を 作り出
をし、服を着なければなりません。フェアト
とビジネスの成功を分かち合うことができま
すビジネスモデルを奨励して促進する役割を
レードの製品を選択することは日々の些細な
アップデート
選択を意味深い何かへと導く手段なのです。モノを購 入するたびに自分が望む世界に投票しているのです。 パタゴニア:パタゴニアはアパレル企業のなかでも早 くからフェアトレード USA のアパレルおよび家庭用品
の工場認証プログラムに参加した企業で、現在までに
この部門で最も多くのフェアトレード・サーティファイ ド製品を導入しています。パタゴニアはフェアトレー
ド・プログラム自体の成長にどのような影響を与えた
生活賃金に 向けて 前進する
でしょうか?
フェアトレード USA:パタゴニアは 2014 年に工場に
おけるフェアトレード・プログラムの早期導入者および 支持 者となりました。それ 以 来、草分けとして活躍し ています。1か国のひとつのフェアトレード・サーティ ファイド工場からはじまり、いまでは10 か国で 29 の フェアトレード・プログラムを支 援しています。 現 在 パタゴニアのビジネスを介して49,200 人以上がフェア トレード・プログラムの恩恵を受け、パタゴニア製品を 製 造した人びとの社会に賞与として数百万ドルが送ら れました。 その 他にもパタゴニアのパートナーシップはフェアト レード・プログラムに関する消費者の意識を高めたり、 ビジネスの成功と良い行いが 両立することを同業者に 示したり、独自の目に見えない配当を生み出してきました。 そのおかげで、より多くの消費者が衣類やギアを購入 する際にフェアトレード・サーティファイドのラベルを 探すようになり、さらにより多くのブランドからプログ ラムについての問い合わせを受けるようになりました。
〈フェアトレード USA〉とパートナーシップを組むことにより、 私たちはパタゴニア製品を作る労働者に生活賃金を支払うため の第一歩を踏み出しました。それは素晴らしいスタートであり、 労働者の懐をより潤す最も直接的な方法です。しかし、私たち の衣類を製 造するすべての労働者が確実に生活賃金を得るた めの、恒久的な解決策を見つける必要があります。 私たちはそれに向けて前進しています。本テーマにおける昨年 のアップデートで、私たちは生活賃金の進行を妨げる 2 つの問 題に言及しました:生活賃金における合意された定義がないこ と、そして完全に異なる地 域においての、何が生 活賃金と呼 べるのかについてのあやふやな観念です。それ以来、非営利団 体と専門家のグループである〈グローバル・リビングウェージ・ コーリション〉は定義において合意に達し、また 〈公正労働協会〉 は一般に公開されている生活賃金基準をまとめました。 またパタゴニアでは私たちの製品を製 造する契約工場からの 詳細な賃金データの収 集/分析を終え、それは彼らが労働者 に払っている賃金について、より明白な情報を提供するもので した。朗報は私たちが思っていた以上に前進していることでし た。初回の分析によると、パタゴニアのアパレル・サプライヤー は生活賃金の少なくとも 81% を支払い、そのうち18%は生活 賃金を上回っています。パタゴニアはこれからも監視をつづけ、 長期にわたって確認していきますが、私たちは正しい方向へと 進んでいます。 私たちはまた、ずいぶん前から気づいていたことに確証を得ま した。それはサプライヤーに予測可能な発注を行うことで、彼 らが労働者に生活賃金を、より確実に支払えるということです。 季節ごとにオーダー量が上下する工場では実際の賃金とその生 活賃金に、より大きな差があります。責任ある買い付け慣行は 生活賃金を支払うという私たちの目標を実現するための鍵であ り、また〈公正労働協会〉の認証評価の鍵となる原則でもあり ます。 私たちは遂げてきた前進に喜びを感じ、これからもこの取り組 みをつづけていきます。さらにフェアトレード製品を作る他の ブランドが増えており、それによりさらに多くの労働者が賞与
人びと、産業、そして地球に、より公平な世界貿易モデルをもたらすために 取り組むフェアトレードUSAのエイミー・ブライス、アリソン・ファイト、 デスタ・レインズ。写真:MICHAEL ESTRADA
を受け取り、生活賃金へと近づいていることを嬉しく思います。
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環境助成先:パタゴニアが支援する団体
アメリカのチェルノブイリ: 〈ハンフォード・チャレンジ〉 の活動は、汚染の ひどい旧核生産施設における多様な健康および安全改革へとつながった。 写真:JEFF T. GREEN/GETTY IMAGES
ハンフォード・ チャレンジ ワシントン州シアトル
ミッション:ワシントン州シアトルに拠 点を置く〈Hanford Challenge( ハン
フォード・チャレンジ)〉は、人の健康や安全、説明責任や持続可能な環境遺産 を確保するハンフォード核施設のための未来を築いています。 活動:核および環境災害を回避し、それについて報告するために内部関係者と 緊密に連携し、除染作業者の保護に努め、ハンフォード諮問委員会などの除 染作業諮問機関に参加しています。また若者に重点を置きながら公衆を教育 し、早急な改革を推進するキャンペーンの企画も行っています。 成果:パタゴニアの助成金により、本年度はハンフォード・サイト付近にリアル タイムの放射線モニターを設置し、放射線データをウェブサイトで誰もが閲覧 できるようにしました。また環境モニタリングを実 施し、車両や住宅から 30 のサンプルを採取し、汚染拡大の有無を評価しました。 現場外における汚染についての調査結果は 『バズフィード』 の素晴らしい記事や 『シアトル・タイムズ』紙で報道されました。2018 年 9 月初旬に公開された別 の報告書では、現場で生物学的に重大なプルトニウムの粒子が発見され、現 場以外の場所で環境保護庁が許容する標準値のほぼ 10 倍の粒子も見つかって います。エネルギー省の受託業者であるワシントン・リバー・プロテクション・ ソリューションズ(WRPS) によるこの発見は、汚染にさらされた 42 人のプルト ニウム除染作業者の健康リスクは限られたものである、という生物学的検査後 のハンフォード核施設の当局者による説明とまったく異なるものです。この発 見により、とくに住居、職 場、学校など人間が居住する地域の建 造物の汚染 について、さらに大規模で独立性のあるハンフォード地域の環境調査につなが ることを願っています。 パタゴニアのおかげで、ワシントン州政府を含む他のどの団体もできなかった、 もしくは実行する意思がなかった監視ができました。また私たちの研究結果が 出版されたことにより、ハンフォードで多数の改革が行われ、汚染拡大を防ぎ、 作業がより安全に行えるようプルトニウム処理施設の解体作業工程を大幅に遅 らせることができました。 文 by〈ハンフォード・チャレンジ〉
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
カルチュラ・イ・ファミリア:アウトドアでのアクティビティを通じて 〈ラティーノ・アウトドアーズ〉はアメリカの環境保護に関心をもつ 有権者の再生と拡張に貢献する。写真:RAÚL HERNÁNDEZ
ラティーノ・アウトドアーズ カリフォルニア州レッドウッド・リージョナル・パーク
ミッション:〈Latino Outdoors( ラ ティー
リージョナル・パークで開催されたハイキン
を置く団 体 から、ハイキング、バックパッキ
ノ・アウトドアーズ)〉はアウトドアにおけるラ
グのイベントで、 〈ラティーノ・コミュニティ・
ング、キャンプなど自然で人生観を変える体
テン系の地域社会の鼓舞、つながり、関与を
ファウンデーション〉と協力して 60 人のハイ
験に年間約 1,500 人をつなげる全国のボラン
目的とした団 体です。私 たちはアウトドアの
カー(そのうち 8 人 が 初体 験者)を集め、巨
ティア運 動へと拡大しました。また、従来の
物語を広げる方法としての「カルチュラ・イ・
大なレッドウッドの森を散 策しました。この
アウトドアの活動では見過ごされがちな、自
ファミリア(文化と家 族)」を積極的に受け入
イベントの前にはファウンデーションのスタッ
然についての文化的なつながりと物語を分か
れ、 ラテン系の歴史や伝統、リーダーシップ
フが来訪者を温かく迎え、 〈ラティーノ・アウ
ち合うための刺 激 的なプラットフォームとし
が確実に尊重され代 表されることを目指して
トドアーズ〉のハイキングリーダーたちは自然
ても機能しています。アウトドア・レクリエー
います。
とつながることの大切さ、トレイルでの安全、 ションや環境保護、環境教育におけるラテン ゴミを持ち帰る原則について話し、その日は
系 の声や 存 在を強 調 することによって、 〈ラ
活動:〈ラティーノ・アウトドアーズ〉は、アウ
連邦、州、地方の公有地のレクリエーション
ティーノ・アウトドアーズ〉はアメリカの環 境
トドア・レクリエーションを先導し、アウトド
と保護を促進する 「全国公有地デー」に制定さ
保護に関心をもつ有権者の再生と拡張にも貢
アへの参加を少数派の地域社会に拡大するた
れていることも紹介しました。
献しています。
成 果:2013 年に設 立されて以 来、 〈ラティー
文 by〈ラティーノ・アウトドアーズ〉
めに互いを支 援するボランティアによって運 営されています。活動の一 例は、2018 年カ リフォルニア州オークランドのレッドウッド・
ノ・アウトドアーズ〉はカリフォルニアに拠点
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
石炭からの脱出 パタゴニア日本支社の草の根活動家のための「ツール会議」 日本がかつて経 験したことのない猛暑と豪雨にみまわれる夏が勢い
会議の参加者は、素晴らしい食事やパタゴニア プロビジョンズのロ
を増すなか、18 の環境保護団体から 22 人の活動家がパタゴニア日
ング・ルート・エールを楽しみながら施設の内外で過ごし、化石燃料
本支社の草の根活動家のための「ツール会議」に集まりました。本年
に依存する日本のエネルギー政策の根本的な問題や、この国が再生
度の「ツール会議」は、6 月 29 日から7月1日の 3 日間、山梨県清里
可能エネルギーに素早く移行するための戦略や戦術を探りました。休
高原のキープ協会清泉寮にて開催されました。
憩時間にはニホンジカ、キツネ、リス、そして 100 種を超える鳥た ちに囲まれながら、フライフィッシングやトレイルランニングでこの
環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏による基調講演で、3
美しい高原を堪能しました。
日間の議 題 が設 定されました。飯田氏は、 「気候 変 動解決のための 政策と持続可能な地域社会」と題したこの講演で、世界における化石
参加者は彼ら自身の気候変動に関わる環境活動について共有し、ま
燃料からのダイベストメント(投資撤退)の巨大なうねりと、飛躍的に
た気候 変 動解決 へ向けて、現在稼 働中の100 基の石炭火力発電 所
拡大している太陽光/風力発電の動向について語りました。その後、
に加え新たに提案されているおよそ 35 基の建設を中止させ、再生可
大和 総研調 査本部の主 席研究 員である河口真 理子氏の講 演 がつづ
能エネルギーへの移行を実現させるためにどのように協力して取り組
き、世界的に再生可能エネルギーが拡大する一方で、日本政 府が化
めるかについて話し合いました。
石燃料や原子力エネルギー以外に興味を示さない現状について語り ました。
日本で開催された草の根活動家のための 「ツール会議」 でカーボンニュートラルな未来を 計画する活動家たち。写真:TAISHI TAKAHASHI
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荒波と紫外線照射によって小さくなった、ハワイ島のカミロビーチに蓄積したノース・パシフィック・ジャイアのプラスチック破片。写真:JIM HURST
小さな、 じつに大きな問題 パタゴニアはこの先数年間でマイクロプラスチック問題への大きな前進に期待を寄せています。 しかしこの汚染の根本的解決には数十年を要する可能性もあります。 パタゴニアはつねにプラスチック問題を抱えてきましたが、その全体
繊維が抜け落ちます。 生地の構造もおそらく抜け落ちに影響を与えて
像は最近まで見えませんでした。リサイクルによるポリエステルとナイ
いるようです。そして洗濯機の種類も重要です。タテ型洗濯機で洗っ
ロンを製品ラインに取り入れることに大きな前進を遂げてきましたが、
たフリース・ジャケットからは、ドラム式洗濯機で洗った場合に比べ
現在は、衣類の寿命全体にわたって抜け落ち、海鳥のお腹のなかとい
て 7 倍のマイクロファイバーが抜け落ちました。
うあってはならないところに到達する可能性のある極 小のプラスチッ ク繊維に対処するためにエネルギーを注ぎ、尽力しています。
私たちはこの問題に対応するためにいくつかの面から取り組みはじめ ました。まず〈アウトドア産業協会〉と〈サスティナブル・アパレル・
海洋プラスチックの研究によれば、海では古い漁網、ストロー、袋な
コーリション〉、そして鍵となるパートナーと競合他社に問題を喚起し
どが太平洋還流というテキサス州よりも大きな面積で渦巻いているこ
ました。また REI、MEC、アークテリクス、 〈オーシャン・ワイズ〉、
とが確認されていますが、海にはまた 5 ミリ以下と定義される化繊の
メトロバンクーバーと協力し、繊維の抜け落ち、繊維の風化、および
マイクロファイバーも偏在しています。
排水処理場の能力についての研究を行いました。この研究の1つの要 素は昨年の夏『マリーン・ポルーション・ブレティン』に発表され、そ
海に流れこむマイクロプラスチックは多くのものから派生し、それは
れは 99%も有効なろ過システム(1兆 8 千億粒子)ですら大量のマイク
多くの場合大きなプラスチックの破片です。またその大半が自動車の
ロプラスチック(300 億粒子) が海に流出していることを明らかにして
タイヤのくず、製造工程で出る樹脂、排水処理場のフィルターでは集
います。流出するマイクロプラスチックは 66.5%が 繊 維、28.1%が
められない歯磨き粉と化粧品に含まれる極小ビーズです。しかし、海
プラスチック破片、5.4%が小粒のプラスチックであると推定されてい
のプラスチックの一部には化繊の衣類から抜け落ちるマイクロファイ
ます。
バーもあり、ナイロン製ショーツとパタゴニアのポリエステル・フリー スに起因するものもあります。
2017 年と 2018 年、私たちはノース・カロライナ州立大学とともに洗 濯中に繊維が抜け落ちる可能性について生地を査定するための、短時
洗濯機と自治体の排水処理場により優れたフィルターを設けるという
間でできる繊維の抜け落ちテスト方法を開発しました。テスト方法を
マイクロファイバーの抜け落ちの問題の最も包括的な解決策はパタゴ
標準化することでパタゴニアの素材開発チームはすべての素材の潜在
ニアのコントロール外にあるため、問題の規模や私たちに何ができる
的な抜け落ちの可能性をテストし、その結果を他の同様のテスト結果
かについてもっと理 解を深めるための 研 究プロジェクトを委 託しま
と比べることができます。繊 維が抜け落ちる傾向についての見識は、
した。
抜け落ちにくい生地や糸の構造をパタゴニアが確認するのに役立つと 期待しています。
そんなプロジェクトのひとつがカリフォルニア大 学 サンタバーバラ 校のブレン環 境 科 学・経 営スクールで行 われました。 『Microfiber Masses Recovered from Conventional Machine Washing of New or Aged Garments(新品あるいは着古した衣類を洗濯し た洗濯機から回収されたマイクロファイバー量)』と題し 2016 年に出 版されたこの研究により、パタゴニアおよびポリエステルとナイロン 衣類のその他の製造業者が海のマイクロファイバー汚染の重要な一因 になっている可能性が高いことを確認しました。その量やこれらの繊 維が海の生態系に及ぼす危害の程度はまだ明らかになっていません。 排水処理場のフィルターシステムの効果にもバラツキがあり、そのろ 過率は 65%〜 99%であることも学びました。また品質が重要である こともわかりました。この研究では、品質の低いノーブランドのフリー スはパタゴニア製品に比べて、その寿命全体にわたりはるかに大量の
私たちはまた排水からマイクロファイバーをより効果的にろ過する方 法を求め、家 庭 用洗濯機メーカーに連 絡をとりました。その技術は すでに存 在していました。実 際、洗 濯 機のろ過システムは昔からあ り、洗濯機のアフター・マーケットとして、Lint LUV-R や WEXCO Environmental Filtrol 160 という効果的なろ過システムがあるこ とがわかりました。いずれも150ドルと配管費用で家庭用の洗濯機置 き場に取り付けることができます。またパタゴニアのティンシェッド・ ベンチャーズ基金を通して、水を使用しないテキスタイル加工企業ター サス・ソリューションズに投資しました。その技 術はすでに商 業ラン ドリーで使用されています。さらなる革新により、水を使わない洗濯 が家庭で可能となることを私たちは期待しています。それに加えて〈ア ルガリタ〉、 〈アドベンチャー・サイエンティスツ〉、 〈サーフライダー・ 57 57
2010
使い捨てのプラスチックの使用を削減し、すべて
のプラスチックのリサイクルを提唱する「ライズ・ アバブ・プラスチック」キャペーンのために、. パタゴニアとしてはじめてプラスチック汚染問題 に焦点を当てる団体〈サーフライダー・. ファウンデーション〉に助成金を提供。
2011
パタゴニアの素材チームがカリフォルニア大学. サンタバーバラ校のマーク・ブラウン博士と. ミーティングをし、海岸線で発見される高密度の マイクロプラスチックについて学ぶ。私たちは. ブラウン博士の研究に共感しさらなる研究を委託。
2014
ファウンデーション〉、 〈ファイブ・ジャイア・インスティテュート〉 を含む、マイクロ プラスチック問題に取り組む非営利団体に 20 万ドル以上を助成してきました。 また、家庭用洗濯機で化繊の衣類を洗うための GUPPYFRIEND ウォッシング・ バッグの販売もはじめました。バッグの滑らかな内側表面は摩擦を最小限に抑え、 排水に流れ出るマイクロファイバーの量を削減します。 (どの衣類も洗濯機で洗うと 繊維が抜け落ちることにご留意ください。しかし、ヘンプやコットンなどの天然素材 の繊維からのマイクロファイバーは、海に排出される際に生分解します。) 私たちは産業界を巻き込み、学術研究を委託し、適切な NGO を支援し、パタゴ ニアの素材チームのために優 先度を設 定し、マイクロファイバー廃棄 物に関して フィルターや水を使わない解決策を研究しています。さらに、製品のケアについて のお客様へのアドバイスを改善しました。衣類の寿命における環境への影響の約 半分が店舗を出てから起きており、そのほとんどが洗濯機と乾燥機の使用に起因 します。
ティンシェッド・ベンチャーズが、漁網を.
製品の寿命を延ばし、マイクロファイバーの抜け落ちを削減するために、洗濯の
サングラス、スケートボード、リサイクル・.
回数を減らすことをおすすめします。また新たに洗濯機が必要となった際はタテ型
ナイロン繊維に再生する、カリフォルニア州.
洗濯機よりも水の使用量を減らし、マイクロファイバーの抜け落ちが 7 倍も抑えら
ベンチュラを拠点とする会社ブレオに投資。.
れるドラム式洗濯機に投資することを推奨します。そして完璧ではありませんが費
ブレオは 78 万平方メートル以上の漁網をチリの 海岸線から取り除いてきた。
用が抑えられる GUPPYFRIEND ウォッシング・バッグや、永久に取り付けられる Lint LUV-R や WEXCO Environmental Filtrol 160 のようなフィルターシス テムも有効です。また、より高い完全性と耐久性をもつ高品質の衣類を購入するこ
2015
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のブレン. 環境科学・経営スクールにマイクロファイバーの 抜け落ちの研究を委託。実験はドラム式洗濯機と 比較するとタテ型洗濯機からは 7 倍のマイクロ ファイバーが抜け落ちることを示す。
2016
ノース・カロライナ州立大学のウィルソン・. カレッジ・オブ・テキスタイルがマイクロファイ バーの抜け落ちのテスト標準の改善に協力。
ともおすすめします。そして、必要なものだけを購入し、長くご使用ください。 パタゴニアはマイクロファイバーが海に流出することを防ぐために努力をつづけま す。私たちはマイクロファイバー(そしてその他のプラスチック廃棄物)がどのよう に海洋生態系に危害を与えるのかについてのさらなる研究を支援しています。抜け 落ちの少ない生地を開発するため、そして自治体の排水、最終的には海からマイ クロファイバーを締め出す革新的な方法を開発するため、社内、アウトドア、アパ レル産業全体で能動的な取り組みをつづけていきます。 パタゴニアがサプライチェーンにおいて直面する短期的な環境問題すべてにおい て、マイクロファイバー汚染は2つの最も大きな問題の1つであり、私たちの製品 の多くに使用されている非生分解性の撥水加工が引き起こす環境への危険性に匹 敵するか、それよりも重大な問題です。
2017
長期的には私たちは最も大きな問題、つまりプラスチックの原料である石油、化
ティンシェッド・ベンチャーズが洗濯中に抜け
石燃料を土中に留めるための解決策を見つけなければなりません。それが車の排
落ちる繊維の量を削減する GUPPYFRIEND
気管でただ燃やされるのではなく、長持ちする有益な製品に使われていたとして
ウォッシング・バッグの開発に投資し、.
も。これは簡単でも素早く解決できる問題でもなく、マイクロファイバー汚染を削
パタゴニアが販売を開始。
減することよりもはるかに長い時間がかかるものですが、私たちはその道を進むた
異なる素材から繊維がいかに抜け落ち、. それが排水システム内でどのように移動するかに ついての研究をバンクーバー水族館に委託。
2018
〈アメリカン・アソシエーション・オブ・. テキスタイル・ケミスト&カラリスト〉が. テスト機関のための標準を草稿。
めの確固としたステップも踏んできています。パタゴニアのポリエステルとナイロ ン製の衣類が、すでに地球上に出回っている 60 億トンのプラスチックの一部から、 100%調達される日が来るでしょう。あるいはこれらの素材が天然資源や、食料 生産をさまたげない方法で育てられた植物に由来する日も。100%リサイクルまた はバイオベースのポリエステルとナイロンは、それでも環境へのコストを要します が、それはいま地球に住むすべての生物によって支払われている代償よりもはるか に低いものです。
ほとんど目に見えない 5ミリ以下のマイクロプラスチックは食物連鎖に侵入し、クリーンアップはほぼ不可能だ。写真:JIM HURST
テキサス州の面積よりも広い範囲で 太平洋に渦巻くプラスチックのスト ロー、袋、漁網などはたいへんな 量だと思うかもしれません。
行き着きます。すべてのプラスチック 新たな海のプラスチック汚染 950 万トン 年次
が同じ場所からやって来るわけで はなく、そのほとんどはペット ボトル、ストロー、衣類から
しかし、水面付近に浮いている
抜け落ちた繊維など、陸地に
プラスチックは海洋プラスチック
起因します。1年で海に流れ
の1%にすぎません。海に流れ
出る 950 万トンのプラスチック
出た残りのプラスチックはやがて
のうち、推定 150 万トンが衣類
は目に見えない場所、海底に
などのマイクロプラスチックです。 一次的マイクロプラスチック 150 万トン 年次
衣類 525,000 トン
タイヤのくず 420,000 トン
街のゴミ 360,000 トン
塗料 160,000 トン
化粧品 30,000 トン
プラスチック・ビーズ 4,500 トン
出典: Boucher, J. and Friot D.(2017年) 。Primary Microplastics in the Oceans: A Global Evaluation of Sources. スイス、グラン : IUCN. 43pp. Eunomia Research & Consulting Ltd. (2016 年 )
59
オアフ島ワイメア湾のベイトボール。写真:RYAN T. FOLEY
マイクロプラスチック
「抜け落ちの少ない生地を開発するため、 そして自治体の排水、最終的には 海からマイクロファイバーを締め出す 革新的な方法を開発するため、 社内、アウトドア、アパレル産業全体で 能動的な取り組みをつづけていきます」 ー ヴィンセント・スタンリー、パタゴニア企業理念ディレクター
61
ゼロ・ウェイストに照準を合わせる 埋立地行きゼロへ向けた取り組み
カリフォルニア州ベンチュラにあるパタゴニア本社は、地元のサーフブ
以上が私たちの海に流れつくと推定されています。2025 年の時点で
レイクであるサーファーズ・ポイントから 400メートルの場所に位置しま
海は魚よりもプラスチックの方が多くなり、そのほとんどが完全に分
す。そこは 40 年以上も前に、波がいいときにすぐにサーフィンに行ける
解するのに 450 年以上を要するのです。
ように創業者が戦略的に選んだ場所でした。サーファーズ・ポイントは 波の質と水質の両方において比較的きれいですが、毎年数回、太平洋か
パタゴニアは世界中にオフィス、ストア、倉庫を有し、そこでは社員
ら冬の嵐がやってくるとその降雨はすさまじく、道路と排水管、そして
が使い捨ての包み紙に入ったグラノラバーを食べ、製品をプラスチッ
自然の排水路に何か月も溜まったゴミとその他の目に見えない廃棄物を
クの袋に入れて出荷し、請求書を印刷し、あまりにもライフサイクル
押し流します。プラスチックの袋、ペットボトル、食品容器やその他の
の短いそのシーズンだけのための店内ディスプレイを作ります。つま
使い捨てのゴミが沖へと流出すると、現実が胸に突きささります。 (この
り私たちが問題の一部であることは明白です。
他、廃棄物から派生する目に見えないバクテリアはこれに劣らず有害で、 賢明な人は嵐のあと最低 72 時間は水に入ることを避けます。 )地元の非
私たちは長い間、再利用可能なカップやお皿や再生紙の使用、堆肥
営利団体がゴミを取り除くためにクリーンアップを主催していますが、そ
化とリサイクルのための容器の増設、製品やサンプルを梱包している
れがバンドエイド(これも見つかります) のような一時しのぎであることは
ポリ袋のリサイクル・システムなどにより、ゴミ収 集箱行きとなるも
誰もが知っています。現実は巨大なゴミ問題が存在するということです。
のを削減しようと取り組んできました。しかしそれでは不十分である こと、もっと改善できることも知っています。そこで今年、パタゴニ
世界規模でみると 2025 年までに、人間は毎年 22 億トンの廃棄物を
アが所有、運営する施設でゼロ・ウェイスト型企業になるための取り
発生させると科学者は予想しています。そのうちリサイクルや堆肥に
組みに着手しました。それは将来的に私たちのオフィス、配 送セン
利用されるのは平均でわずか 35%で、ほとんどが埋立地や焼却炉行
ター、ストアから出るすべての廃棄物が再利用、リサイクル、寄付、
き、またはポイ捨てされ、やがてお気に入りのサーフブレイクなどに
堆肥化、アップサイクルされるようになるということです。埋立地や
漂 着します。研究によれば、プラスチックだけでも毎年 500 万トン
焼却炉や海岸に行きつくものが何もないように。
私たちは業務、調達慣行、行動の多くを変える必要がでてき ます。便利さに基づいた習慣を、はるかに深い思考と多くの 時間と行動力を要するゼロ・ウェイストの解決策に変える必要 があるのです。私たち自身が変わらなければなりません。 前進させるため、2018 年の春、ベンチュラ本社のボランティ アは 3 日間分のゴミと、リサイクルや堆肥化できるものを集 め、仕 分けしました。食べ物の残り、梱包材、電池、その 他あらゆる種類の廃棄物の量は 544 キログラムになりまし た。この身が引き締まる取り組みは、私たちがおもに何を不 要なものとして捨て、リサイクルや堆肥に利用できるものを どれだけ上手くリサイクルや堆肥化しているのかを認識する 一助となりました。 (それは悪くもなく、上出来でもなく。)そ して同じことをリノの配送センターで行い、直営店でも同じ ように廃棄物の監査を展開しています。 全社にわたるチームと共同で、私たちは異なるビジネス部門 でどうすればゼロ・ウェイストを達成できるのかを分析してい ます。世界中のストアで私たちはゼロ・ウェイスト週間を開催 し、その期間に社員はゴミを出さない買い物の方法や破れた 衣類の修理方法を同僚たちと共有しました。またゴミを抑え た生活に取り組む志を同じくするビジネスを促進するために、 地域社会でイベントを開催し、社員全員にマイカップ、ウォー ターボトル、金属製ストロー、スプーン/ フォーク、お箸など 自分の携帯用キットを持参するよう呼びかけました。 2 月にパタゴニアはペンシルベニア州ピッツバーグに最新の ストアをオープンしました。同店のスタッフはゴミゼロのにぎ やかなパーティを開催しました。地元の非営利団体のパート ナーへの寄付と引きかえに、堆 肥化可能な食器 類と無料の ビールがいっぱいに注がれた金属製のパイント・カップを参 加者に提 供してもらいました。パタゴニアの他のストアもす べてこれにつづき、2019 年 5 月までにゼロ・ウェイストのイ ベントだけを開催することを目標に掲げました。 長年、素晴らしいサーフブレイクのすぐ近くにいて学んだこと のひとつは、パドルしなければ波をつかまえることはできな いということです。私たちのゼロ・ウェイストの目標は、私 たちの水を風のない朝の美しくグラッシーな波のようにでき るでしょうか。それは不可能かもしれませんが、最低でもラ インアップに並び、絶対に挑戦します。
22億トン 2025 年までに、人間が毎年発 生 させると科学者が予想する廃棄 物 の量
35%
544
キログラム 固形廃棄物の監査の一部としてベン チュラにあるパタゴニア本社で 3 日 間にわたりボランティアによって集 められ、仕分けられたゴミと、リサ イクルや堆肥化された廃棄物の量
それらの廃 棄 物のうち、 リサイク ルや堆肥に利用される比率
500万トン
0 2019 年 5 月までにパタゴニアのス トアイベントで出るゴミの量
毎年、世界の海に流 れつくプラス チックの量
450年 プラスチックが 完 全に分 解するの に要する推定年数
3日間にわたる廃棄物監査でゴミを仕分けする、 ベンチュラのパタゴニア本社のボランティア。 写真:KYLE SPARKS
63
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
科学とアウトリーチ:〈コースタル・ウォーターシェッド・インスティテュート〉 のメンバーは 2 つの ダムの撤去以来、エルワ・リバーにおけるエキサイティングな変化を記録し、共有してきた。 写真:DR. ANNE SHAFFER
コースタル・ウォーターシェッド・ インスティテュート ワシントン州ポート・エンジェルス
ミッション:ワシントン州ポート・エンジェルスに拠点を置く 〈Coastal
魚類の孵化調査を 2 度行い、エルワ・リバー沿岸ビーチの大半で、は
Watershed Institute (CWI)( コースタル・ウォーターシェッド・イ
じめてチカの孵化が記録されました。またこれらのデータを地元地域
ンスティテュート)〉は、科学的研究や地域ベースのパートナーシップを
のワークショップ、ソーシャルメディアや科学学会で紹介し、オリンピッ
通じて、海洋および陸生の生態系の保護と改善に努めています。ダム
ク半島地域で4つ、パタゴニアのシアトル・ストアで1つの地元地域の
撤去に関連する沿岸地 域の理 解と修 復の促 進に献身する科学者、責
ワークショップを開催しました。
任者、市民団体が先導する、エルワ・リバーでの多数のプロジェクト をコーディネートすることが私たちの優先事項のひとつです。
成果:私たちが採取したデータは、エルワ・リバー沿岸地域の問題を 特定し、地域の修復/保全活動を始動するために不可欠であることが
活動:エルワ・ダムとグラインズ・キャニオン・ダムの撤去(過去最大
証明されました。私たちが地域社会で交わす会話により、土地所有者
のダム撤去)により、エルワ・リバーはワシントン州オリンピック山脈
や天然資源の管理者、地域社会のメンバー(地元と世界のメンバー双
の源流からフアン・デ・フカ海峡へと自由に流れるようになりました。
方) が関わるようになりました。私たちは地元、地域、全国レベルの管
〈CWI〉はエルワ・リバーの沿岸を10 年以上監視しつづけ、ダムが撤
理者、研究者、市民と協力して私たちの科学とアウトリーチ活動をつ
去されて以降、多くのエキサイティングな変化を目の当たりにしてきま
なげ、長期的かつ生態系に基づいた保護に必要な活動を促 進してい
した。パタゴニアの助成金により、今年も私たちの研究とアウトリー
ます。
チ活動を継 続することができました。毎月エルワ・リバー沿岸とソル ト・クリーク/クレセント湾の河口で引き網による 6 つのサンプリング
文 by〈コースタル・ウォーターシェッド・インスティテュート〉
を行い、エルワ・リバーとソルト・クリークの水質調査を実施しました。
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
テクノロジーと アクティビズムが 結集 ここ数年におけるアクティビズムの増幅は、信じることのために行動を起 こすことの団結の第一歩となり、人と場所と故郷を守るために思いもよら ない人びとを結集させています。パタゴニアのサンフランシスコ・ストアは 11月 8 日、パタゴニアについてあまり知らない人たちと出会い、関わりの あるクライマー、サーファー、トレイルランナー、スキーヤーというパタゴ ニアの核となる地域社会を超えて届くように、黒人の技術者、スタートアッ プ企業、起業家のための画期的で革命的な経験と謳われる年次の全国会 議である「アフロテック」のオープニング・イベントを開きました。テクノロ ジーとアクティビズムの結集についてのパネル討議では、パタゴニアが助 成する草の根環境保護団体との、より意義ある関係を構築するのにパタ ゴニア・アクション・ワークス (英語サイト)がいかに貢献しているか、また、 私たち皆が気にかけている地域社会を守るために、本イベントに参加した およそ100 人がそのプロの技術をいかに利用できるかについて示されまし た。人権活動家のディレイ・マッケソンとパタゴニアの助成先である〈アウ トドア・アフロ〉のルー・マップが議長を務め、パタゴニアのブランド・アク ティビズム、テクノロジー、および採用チームからも数人が参加しました。
パタゴニアのサンフランシスコ・ストアで開催された 「アフロテック」 の オープニング・イベントで、アクティビズムのためにテクノロジーを 利用する方法についてのパネルに積極的に関与する参加者たち。 写真:MICHAEL ESTRADA
65
ヨーロッパの青い心臓における愛と欲
新たなダム建設を阻止し、バルカン地方の. 真の英雄たちを称える
「ヴョサ川、そして私の国を支える栄誉ある同志の皆様、 お招きくださり、そして欧州議会の前で演説する機会を 与えてくださり、ありがとうございます。私が暮らす
地域の住民が直面している最も深刻な問題を提起するた
めには、アルバニアから歩いてでもやって来る覚悟でした。 野宿の用意もして、どんな形でも話を聞いてもらうよう
請願する準備をしていましたが、こうして民主主義と自由 と正義の聖堂そのもので、聴衆を前に演説することを 実現させていただき感謝します」 トリフォン・ムラタジ クタ村民/活動家
「セーブ・ザ・ブルー・ハート・オブ・ヨーロッパ(ヨーロッパの青い心臓を守る)」のために集い、欧州議会の前に立つアルバニアの活動家トリフォン・ムラタジ、 〈Bankwatch〉の イゴール・ヴェイノヴィッチ、パタゴニアのライアン・ゲラートとミヘラ・フラディン・ウルフ、 〈EuroNatur〉 のガブリエル・シュワドラー。写真:JASON ALDEN
67 67
2018 年 6 月 27 日、トリフォン・ムラタジはブリュッセルにある欧州議会の 前に立ち、支援を懇願しています。このアルバニア人ビジネスマンは、 ヨーロッパの政治的権力の中心部まで、はるばる1,600 キロメートル 以上を旅してきました。彼が伝えたいのは、2,000 年の歴史をもつ 故郷のクタという小さな村が危機にさらされており、欧州議会なら それを救えるかもしれない、ということです。 問題の元凶は、アルバニアのヴョサ川に提案されている38 の不要な水力発電開発で、クタは その川のほとりに佇んでいます。これらのダムはヴョサ川沿いにあるクタを含む多数の村の 息の根を止めるうえ、ヨーロッパ最後の完全に自由に流れる川と、それを故郷とする生態系 および地域社会を消滅させてしまう、とトリフォンは集まった政治家や官僚たちに訴えます。 トリフォンの力強い演説は、この場に限ったものではありません。聴衆のなかにいる活動家団 体とパタゴニアのチームにとって、これは数年の努力の誇るべき頂点となりました。トリフォ ンの手には国際銀行の水力発電事業への投資に反対する12 万以上の署名を集めた嘆願書が 握られ、これが多くの支援のもとに成り立っている取り組みであることを実証しています。 この瞬間までの道は、パタゴニアの映画『ダムネーション』のヨーロッパツアーとともに 2015 年にはじまりました。各地の上映会場ではダムに反対する活動家たちから、あまり にもよくあるダム建設の筋書きを次々と聞くようになり、ポルトガルからグルジアまで水 力発電事業の波がヨーロッパに広がっている現実を知りました。これはヨーロッパ大陸 にわずかに残された、自由に流れる川に対する空前の攻撃です。 パタゴニアが 「セーブ・ザ・ブルー・ハート・オブ・ヨーロッパ(ヨーロッパの青い心臓を 守る)」キャンペーンを展開する団体からはじめて話を聞いたとき、とくに最大の危機に 瀕しているのはバルカン地方であることが明らかになりました。ここでは 6 か国にわたっ て 2,800 以上のダム建設が提案されていたからです。この数に危機感を募らせた私た ちはカヤッカーの小グループとともに同地方へと旅立ちました。そこには手つかずの川、 野生のままの谷、在来種の魚や鳥、そして時代を超越した共同体がありました。しかしこ の問題の規模、緊急性、複雑さには誰もが圧倒されました。 けれどもそうした不安は、イヴォン・シュイナードと話をすると和らぎました。私が問題 とそれにまつわる挑戦を伝えると、イヴォンは明確な答えを返してくれました。 「たしか にこれは困難な問題だが、闘う価値のあるものだ。真の変化をもたらすためにはよくあ ることだが、とにかく根底から闘い上げるのがいちばんだ」
(左) ダム反対の嘆願書に集まった12 万以上の 署名を欧州議会に提出する活動家たち。 写真:JASON ALDEN (上) 『Blue Heart』 の世界初上映は、 ボスニアで廃墟となったダムに投影された。 写真:FLYFISHING NATION
それから数 週間後、私たちはアンバサダー、活動家、抗議行動者た
それから数か月間は精力的に推し進められました。映画監督のブリト
ちのグループとともに、ティラナにあるアルバニアの首相官邸の前に
ン・ケルエット、複数の NGO パートナー、パタゴニア社員のグループ
立ち、ヴョサ川の国立公園指定を要請しました。警官が建物の前に立
とともに、まずはバルカン諸国、次にヨーロッパ、そして世界へと、
ちはだかって鎖を掛け、私たちは地元政府と当局による妨害の典型を
ほぼ毎日のようにめまぐるしく『Blue Heart』の上映会をつづけまし
目の当たりにしました。それは威圧的でしたが、粘り強く耐えた私た
た。はじめはこの地方にゆかりのある人たち、次にこの地方を訪れた
ちはその後まもなく、新作映画『Blue Heart( ブルー・ハート:ヨー
ことのある人たち、そして似たような問題に取り組む他の国の NGO
ロッパ最後の原生河川のための闘い)』の撮影許可を与えられました。
に出会いました。
川は往々にして人びとを団結させる役割を果たします。それは目に見
私たちは 2018 年 6 月までに12 万の署名を集め、ダム事業の屈指の
えない共 通の情 熱をつなぐ、形ある存 在なのです。撮 影を通して出
財政支援者である欧州復興開発銀行と会談する機会を得ました。ロ
会った人びとや地域社会は、それまでとくに意識することなく、川に
ンドンにあるガラス張りのビジネスタワーで私たちは NGO パートナー
対する愛で結ばれていました。地元の食べ物や豊かな原生地 域、何
たちの隣に座り、より良く、環境への影響が少ないエネルギー開発案
世代にもわたる歴史、人を結ぶ思いやりを体験するうちに、私たちは
を添えた嘆 願書を提示しながら、事業の背後に潜む財政源と対面し
この地方に対する鮮明な理解と、その保護がいかに重要であるかと
ました。この会談にはダムに破壊される可能性のある人びとは一切含
いう認識を深めました。
まれず、あくまでもビジネスに基づくもので、パタゴニアのような企業 が声高かつ合法的に発言し、そして願わくは力の均衡をくつがえすこ
『Blue Heart』の世界初上映は、ボスニアの廃墟となったダムで行われ ました。地元住民が 400 人以上集まり、その多くは映画で取り上げた 地域から来ていました。家族と一緒に流木に座っていた私は、観客の 感情的な反応を目にしました。それは力強く、象徴的な瞬間でした。
とができるかもしれない機会でした。 それから数日、そして数か月のあいだには、鍵となる勝利が湧き起こり ました。映画で特集されたボスニアのクルシュチツァとフォイニツァの 69
ウナ・リバーはバルカン半島で水力発電用ダムの可能性に脅かされる、多数の原生河川の ほんのひとつ。ボスニア・ヘルツェゴビナ。写真:ANDREW BURR
(上) 発電所建設の工事を阻止するために、地元の川を24 時間体制で16か月間監視しつづけたクルシュチツァの村民たち。写真:ANDREW BURR (下) 欧州議会で正当性を主張する活動家たち。写真:JASON ALDEN
両村では、7つのダム建設計画が中止されました。これによってフォイ
そして私たちはふたたび、ブリュッセルの欧州議会へと戻ります。トリ
ニツァでは10 年の闘いに終止符が打たれ、また16 か月近く毎日24 時
フォン・ムラタジはいま演説を終えたところで、その全体的な効果はま
間体制で川を見張ってきたクルシュチツァの人びとは、ついに家に帰る
だわかりません。闘いはまだまだつづきます。しかしトリフォンが拍手
ことができました。2018 年12 月、アルバニア政府はベルン協定からの
を浴びるなか、私たちはこのようなキャンペーンにおける自分の役割の
より綿密な環境影響評価の要請に応じ、ヴョサ川のすべての水力発電事
力を実感できます。私たちの力、そして世界のいたるところから集まる
業を中断しました(これにはトリフォンが暮らすアルバニアのクタ村の近
人びとを、野生のままの純粋な水の流れで結びつける1本の川の力を。
くにある、ポセム・ダムも含まれます)。また欧州議会は、小規模の水 力発電用ダムが EU の環境基準を弱体化させるという懸念を強調した決
文 by アレックス・ウェラー(パタゴニア・ヨーロッパ マーケティ
議を採択。金融機関は水力発電事業への投資を見直すよう迫られ、さ
ング・ディレクター)/ミヘラ・フラディン・ウルフ
らにアルバニア政府は、同国初の大規模な太陽光発電所の計画を発表 しました。これは、水力発電を化石燃料の代替手段だと考えることを、 ヨーロッパの諸機関が見直している事実を明らかにしています。
296 上映回数
20,791 上映会の参加者数
126,287 嘆願書の署名数
527,359
『Blue Heart』のウェブサイト閲覧数
21,280,000 ソーシャルメディアでのリーチ数
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ソーシャルメディアから 機動隊まで ヨーロッパの草の根活動家のための「ツール会議」
「ソーシャルメディア・キャペーンの最適化から
機動隊との対決まで、何でも学びたいと願うなら、 これこそ最適な場所だ。ツール会議は、世界を より良い場所とするために僕ら自身が少しでも 貢献できるよう、態勢を整え、関連づけ、 インスピレーションを与えてくれた」
ダン・イェイツ、 〈セーブ・アワ・リバーズ〉ウェールズ支部
暗くて冷房の効いた部屋で行われる環境会議は、化石燃料と同じように即座に取りやめ るべきだと信じ、私たちは今年のヨーロッパの草の根活動家のための「ツール会議」をボス ニア・ヘルツェゴビナにあるヨーロッパで最も新しい国立公園のひとつ、ウナにて開催し ました。アウトドアを楽しみたいという思いの他に、参加者にパタゴニアの「ブルー・ハー ト・オブ・ヨーロッパ(ヨーロッパの青い心臓)」キャンペーンの一部である美しい地方を経 験してもらいたいと思いました。本キャンペーンはこの地方に自由に流れる川の 2,800 基 のダム建設の中止に献身するものです。2018 年 5 月 30 日から 6 月 2 日まで、ダムのない ウナ・リバーのほとりにキャンプを設営し、ヨーロッパ全土からの 60 団体の活動家とパ タゴニアの社員、進行役と特別ゲストが集まりました。参加者はキャンペーン戦略、コミュ ニケーション機会の理解、ソーシャルメディアの掘り下げ、思考の可視化、ロビー活動と ブリュッセルの機関の理解、資金集めの戦略、直接行動の練習などの課題とツールを与 えられました。休憩時間にはヨガ、ラフティング、フライフィッシング、ダンスなどで団結 力を高めました。
ウナ・リバーの川岸でストーリーを分かち合い、 新たな技能を学ぶ活動家たち。 ボスニア・ヘルツェゴビナ。 写真: (上)PIERRE CADOT、 (右)JAN PIRNAT
73
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
マンハッタン北部を結集する:〈ウィー・アクト・フォー・エンバイロンメンタル・ジャスティス〉は 環境問題における人種差別と環境健全性の向上、有色人種の地域社会の保護と政策のために闘う。 写真: WE ACT FOR ENVIRONMENTAL JUSTICE
ウィー・アクト ニューヨーク州ニューヨーク市 ミッション:有色人種や低所得の住民が公正な環境健全性を作り、保
より円滑な情報インフラを用いることにより、気象関連の問題や緊急
護政策や活動に有意義に関与することで健全な地域社会を築いてい
事態に迅速に対応することができます。夏の熱波の際にはマンハッタ
ます。
ン北部全体に 2 か国語による標識を設置し、被害を受けやすい住民 を 43 の冷房が効いた施設に案内しました。
〈WE ACT ( ウィー・アクト)〉はニューヨーク市で最も古い歴史をもつ 環境正義団体で、ニューヨーク州においては有色人種が先導する初の
またクリーンで安価な再生可能エネルギーをマンハッタン北部の低所
環境保護団体のひとつです。過去 30 年間、マンハッタン北部の住民
得層の 900 世帯に供給するために「ソーラー・アップタウン・ナウ」を
を動員し環境問題における人種差別と闘い、有色人種の地 域社会の
立ち上げました。太陽光発電アレイを1つ設置し、住民 75 人に太陽
環境や保護政策の改善に努めてきました。私たちの活動は地元、州、
光パネル設置について教育し、5 つのフルタイムのグリーン雇用を創
全国レベルの政策に影響を与え、生活の質、気候 変動への対応力と
出しました。
環境保護を改善してきました。 活動:本年度は私たちのマンハッタン北部の気候変動アクション計画
成果:継続的にマンハッタン北部の地域社会を教育し、動員させ、彼ら
の生活に影響がある環境問題や政策に関わってもらうことにより、私
を進 展させ、気候 変動への地 域社会の対応力を改善させるための政
たち〈ウィー・アクト〉は全国的な環境正義の草の根活動におけるリー
策提 案や地元における行動に取り組みました。地 域社会の意見を反
ダーとしての地位を確立しました。
映させたこの計画は、エネルギー安全保障と災害対策を優先事項と し、マンハッタン北部の体系的な不平等や悪影響を受けやすい人びと のニーズに対応しています。
文 by〈ウィー・アクト〉
一致団結:先住民族主導の告訴はキンダー・モルガン社によるトランス・マウンテンのタールサンド・パイプライン およびタンカー・プロジェクトの遅延を達成。ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーで行われた このような抗議行動により、プロジェクトは社会の注目を集めつづけた。写真:Jimmy Jeong
シエラ・クラブBC ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー ミッション:〈Sierra Club BC (シエラ・クラブ BC)〉は、気候変動の
スウェップムック・テ・セーコペンムクのファースト・ネーションズの訴訟の
影 響という緊急の観 点から、ブリティッシュ・コロンビア州の野生地
ための結束会の組織化に人びとに関わってもらいました。 〈シエラ・クラブ
や動植物、生態系について市民を教育し、その保護と保全に取り組ん
BC〉は集まった資金を全額助成しました。イベントや情報伝達、企業の関
でいます。
与や草の根組織化などを通じて、何百人もの人びとを巻き込み、先住民族が 孤立して闘っているのではないという力強いメッセージを発信しました。
活動:キンダー・モルガン社によるトランス・マウンテンのタールサンド・パ
イプラインとオイル・タンカープロジェクトは、気候を脅かし、その希釈ビ
成果:パタゴニアの惜しみない支援により、660 万カナダドルの資金
チューメンの流出はサーモンやクジラ、およびアメリカとカナダの国境両
を集め、先住民族が先導した訴訟は法廷で成功を収めました。2018
側の地域社会を危険にさらします。数多くのファースト・ネーションズが法
年 8 月、連邦控訴裁判所のパイプライン認可を覆す判決によってファー
廷でこのプロジェクトと闘って彼らの土地と水を守っていますが、彼らだけ
スト・ネーションズは勝利しました。まだ闘いは終わっていませんが、
がこの問題を担うのはおかしいと考えました。私たちの目標は、先住民族
パイプラインとタンカー・プロジェクトを著しく遅延させることに成功
の懸念を拡声化し、法的な異議申し立てについて一般の支援を集め、同時
しました。その過程において、地元リーダーたちの組織化の能力を向
に先住民族の権利と和解の歴史、気候正義についての理解を深めること
上させ、住みよい気候と活発な地 域社会の支援を高める運 動の構築
です。2016 年には、エンブリッジ社のノーザン・ゲートウェイ・パイプラ
の一助となりました。プル・トゥゲザーが提供するのは、個人や多く
イン建設計画の阻止に成功した 「プル・トゥゲザー・イニシアチブ」 を再始動
の企業と先住民族が和解へと歩み寄る機会です。私たちは協力するこ
しました。これは先住民族の法的な意義申し立ての資金集めのために大
とにより、深刻な問題であるパイプラインの建設阻止と同時に、地域
成功を収めています。第2回プル・トゥゲザー「ブリティッシュ・コロンビ
社会を築きその過程を楽しめることも証明しました。
ア州対キンダー・モルガン社」では、協力団体とともに、寄付やオンライン での募金活動、スレイ・ワツース、コールドウォーター、スコーミッシュ、
文 by〈シエラ・クラブ BC〉
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
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北極圏国立野生生物保護区 「私は北極圏国立野生生物保護区を救うために どんな努力をも厭わない、全国の献身的市民とともに 立ち上がること、グウィッチン先住民の故郷と 生活様式を保護する要請に敬意を表することを 誇りに思う」 ー 上院議員トム・ウドール(民主党/ニューメキシコ州)
北極圏国立野生生物保護区の沿岸平原を季節移動中のカリブー。写真:NATHANIEL WILDER
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
先駆者たち:これらのユース・クライメート・インターベノアーズは、提案されている ライン3タールサンド・パイプラインのミネソタ州の認可に対する闘いを先導している。 写真:ANDY PEARSON
パワー・シフト・ネットワーク ワシントンD C ミッション:〈Power Shift Network ( パ ワー・シフト・ネット
の実施、気候 変動問題のリーダーとなるための訓練も提供しました。
ワーク)〉は気候 変 動の緩 和、公正でクリーンなエネルギーの未来、
またこれらの若者が先導するキャンペーンを物質的、経済的に支援し、
すべての人にとって活発で盛況な地域社会の創造のために、若者の集
彼らのライン 3 反 対キャンペーンのための創業資 金を提 供しました。
団パワーを動員しています。
私たちは前線の地域社会、少数民族および低所得者層の個人の訓練 をとくに強調してきました。
活動:今日の若者たちはアメリカの多様で大胆かつ漸進的、そして力
強い気候 対 策 運 動における先駆者的存 在です。2020 年までに有権
成果:〈パワー・シフト・ネットワーク〉 の 「次世代のグリーンリーダー
者の 2.5 人にひとりがミレニアル世代になると予 想されていますが、
育成プログラム」への支援によって、17 歳から 24 歳までの13 人の若
この極めて重要な有権者層の組織化に専念する団体はほとんどありま
者が、ミネソタ州公益事業委員会のエンブリッジ社のライン 3 タール
せん。若者の多くが気候 変動による脅威について基 本的な知識をも
サンド・パイプライン計画認可訴訟で闘っています。彼らは本件で 「ユー
ち、国がそれについて早急に対処することを願いながらも、彼らの声
ス・クライメート・インターベノアーズ(気候変動に立ち向かう青少年
がどうやって変化をもたらすのかという理解に欠けています。
仲裁人)」として法的地位を与えられました。これらの若者たちは代表 して法廷に立ち、気候 変動研究者や先住民族の長老たちを含む専門
この問題に対処すべく、私たちのプログラムはすべて人種的/民族的
家証人を招集しました。彼らはこのプラットフォームを利用して立案者
/社会経済的多数 派と少 数 派の両方を含む公正でクリーンなエネル
や地域社会の支援者やいくつかの団体を巻き込み、3 万 8 千以上のパ
ギー未来を提唱する若い活動家を集め、動員し、支援を提 供する活
イプライン反対の署名を集めました。現在彼らは公益事業委員会の決
動に専念しています。私たちのタールサンド反対運動や「次世代のグ
定に控訴し、必要であればパイプラインの建設現場で阻止行動をする
リーンリーダー育成プログラム」を組み合わせ、タールサンド採掘の拡
ための準備を整えています。
大を止めて、エンブリッジ社によるライン 3 パイプライン計画を阻止 するために若者を支援しています。若者を対象とした目標設定やキャ
文 by〈パワー・シフト・ネットワーク〉
ンペーン企画、メディアへの拡 声化、ライン 3 計画反対キャンペーン
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
プロジェクトの経過:北極圏国立野生生物保護区
借地に非ず 北 極 圏 国 立 野 生 生 物 保 護 区は 北 米 に残さ
のちの 2018 年、 同 政 権は 石油・ガス開 発
れた最も野 生的な辺 境の地のひとつで、約
のための地震探査の許可へと動き出しました。
は同企業に、許可申請から手を引くことを要 求する10 万件以 上の電話と e メールが寄せ
793 万ヘクタールから成るアメリカ最大の指
それは 25トン級のサンパー・トラックの一行
られました。
定保護区です。その生物学的中心部である 約 61万ヘクタールの海岸平野は、無数の鳥 類をはじめ、ジャコウウシ、カリブー、オオ カミ、ホッキョクグマなど多数の象徴的な陸 生哺乳類の生息地であり、何千年もそうして きたように今日もカリブーを生活の糧として 頼るグウィッチン族の人びとには、特別な意 味をもつ場所でもあります。また多くの冒険 者にとって北極圏保護区を訪れることは、人 生最高の原生地体験となるものです。 その 保 護 指定から数十 年が 経った 2017 年 12 月、税制改革討 論が 幕を閉じようとする ワシントン DC では、アラスカ州選出の上院 議員リサ・マーカウスキーが掘削を支持する 2 ページの文言を最終法案に忍び込ませまし た。現在トランプ大統領はこの案を成立させ、 公開審 査を最小限に済ませることで北 極圏 保護区を石油・ガス企業に手渡そうとしてい
が、北 極圏保護区の海岸平野 全土にわたり、
市場の力は最終的に、企業を追い出す究極
ます。
ときにはわずか 200 メートル 間 隔で石油を
の力であるかもしれません。昨年 2 兆 5 千億
探しにやって来ることを意味しています。
ドルに値した投 資家たちは、北 極 圏 保 護区
この脅威 が大きいことは事 実ながら、破 壊
を発表したからです。
の掘削の財政 的リスクの概要を述べる書 簡 的な石油・ガス開発活動を食い止める方法は、 幸いにもまだたくさんあります。北極圏保護
私 たちは 2019 年 のうちに、 さらに公 衆 に
区の保護をもとに戻すための法 案はすでに
介入する機会があると期待しています。皆様
連邦議会に提出されており、私たち〈アラス
もこの問題に関わるためにパタゴニア・アク
カ・ウィルダネス・リーグ〉は、その聴取期
ション・ワークス(英語サイト)で登録し、今
間ごとに強まる公衆の反 対意 見の記録を積
日もそして毎日でも行動を起こしてください。
み上げています。もしトランプ政権が法律に 違反すれば(そしてこれまでにもすでにその
文 by〈アラスカ・ウィルダネス・リーグ〉
違法行為は見てきましたが)、私たちは法廷 に訴える意 向を固めています。 一方、 石油 企業とそれに投資する金融機関は、社会的 トランプ政権は昨春、北極圏保護区のリース
責任と気候変動が彼らの 「利益」にとって重要
販売に関する環境影響評価書を準備してい
な役割を果たすことに気づきはじめています。
ることを宣告しました。その後 60 日間に限定
保護区で破壊的な地震探 査を行うことを申
された公衆意見聴取期間では、回答者の大
請する唯一の企業〈SA エクスプロレーショ
部分を占める70 万人以上の人びとが、石油・
ン〉は、消費者の反発の矛先を向けられると
ガス開 発に反 対 であることを表 明しました。
いう苦い経験を味わっています。2018 年に
トランプは野生生物、先住民族、観光業を犠牲にして、北極圏保護区を石油・ガス開発事業者に引き渡すことを 企んでいる。写真: (上)KEN MADSEN、 (その他)NATHANIEL WILDER
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プラカードを作って参加:公有地のために発言するパタゴニアのソルトレイク・シティ・アウトレットの社員たち。写真:LEE COHEN
ソルトレイクシティ
ワシントン DC
2017 年 12 月 4 日、ベアーズ・イヤーズ 国定記念物とグランド・ステ
ワシントン DC・ストアのスタッフは 7月に〈モンゴメリー・カウンティ・
アケース・エスカランテ国定記念物の縮小を発表するためにトランプ
コンサベーション・コープス(MCCC)〉とともにメリーランド州のロン
大統領がソルトレイクシティを訪れた際、ソルトレイクシティ・ストア
グ・ブランチ・ガーランド・ネイバーフッド・パークを清掃しました。
の社 員、パタゴニアのアンバサダー、本社の環 境チームは 5,000 人
大 量のゴミを集め、ロング・ブランチからアナコスティア川にゴミが
以上のユタ州民とともに州議会議事堂の階段に集結しました。公有地
流出するのを防ぎ、 〈ラテン・アメリカン・ユース・センター〉の労働力
の尊厳を支援するデモ行進に先行し、スタッフは店舗でイベントを開
開発プログラムである〈MCCC〉にとって格別に有意義なアクティビ
き、プラカードを作り、抗議行動会場への車の分乗を手配し、軽食と
ズムの日となりました。今年、ワシントン DC・ストアは雇用イニシア
飲み物を楽しみました。
チブを通して〈ラテン・アメリカン・ユース・センター〉とパートナーを
そして、私たちは 衣料品を販売する 環境保護活動の拠点として資金、ボランティア、衣料品、 イベントを提供するパタゴニア直営店
1993 年、パタゴニアの北米直営店 10 店舗のマネージャーがベンチュ ラに集まり、店舗運営について話し合いました。1週間にわたる会議 のなかば、パタゴニアのオーナーであるイヴォン・シュイナードがやっ てきて、直営店はその地域社会で、より積極的に環境保護活動に関与 してほしいと言いました。そこで各直営店は助成金や衣類を寄付する 地元の環境保護グループを決定するために、社員で構成する助成金委 員会を設けました。また、パタゴニアが新たに設定したインターンシッ プ・プログラムを利用して、社員がボランティア活動をはじめました。 それから 25 年が過ぎ、現在北米で 34 のパタゴニア直営店は年間予算 250 万ドルを環境保護活動に寄付しています。資金のほかにも、各直 営店は衣類の提供やボランティア活動への参加、地域の環境問題や 保護団体への認識を高め支援するためのイベントの開催、公聴会や平 和的抗議への参加をつづけてきました。ここでは本年度のパタゴニア 直営店の活動のいくつかをご紹介します。
組み、メンバーの 4 人 が 夏のあいだワシントン DC・ストアで 働き、
オスウェールは公園の雨水を管理し、汚水が排水路やピッツバーグ
ストアの欠かせない一員となり、そのうち数人は秋からホリデーシー
のすでに汚染された川に流れ込むのを防ぎます。
ズンにかけても仕事をつづけました。 ピッツバーグはパタゴニアにとって新市場ですが、スタッフはボランティ ピッツバーグ パタゴニア・ピッツバーグのスタッフ、ウェスリー・ハメットは今年、 直営店の環境保護活動時間を利用して、 〈ウエスタン・ペンシルベニ ア・コンサーバンシー〉が約 200 の在来種の樹木や植物を同団体が 管理するバイオスウェール (浸透池) に植える作業に協力しました。バイ
ア、イベントの開催、助成金の提供などですでに市の環境保護団体と 強力なパートナーシップを展開しています。毎週土曜日は通常の午前中 のミーティング時間を利用してスタッフが店舗前の通りでゴミ拾いをし ます。これに感化された近隣の会社や住民も加わるようになり、その 結果、通りがさらにきれいになり、地域のつながりも深まりました。
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リッジウッド貯水池でのアシの刈り込みのボランティア活動中に、脇の下まで 水に浸かるクイーンズ出身の高校生アダリス。写真:RYAN STRUCK
250万
北 米 のパタゴニアの直 営 店 が 2018 年度に直 営店の助 成 金プロ グラムを通して地 元 地 域の環 境保 護団体に寄付した金額(ドル)
125,732 製品および 現物支 給 サービスとし て助成した金額(ドル)
1,412 今年、パタゴニアの直営店の社員が 提供したボランティア活動の時間
335 直営店の助成金プログラムから恩 恵を受け取った非営利環境保護団 体の数
シカゴ シカゴの 2 店舗のスタッフは環境ロビーの日に約 300 人の賛同者とともに州都のスプ リングフィールドに集合しました。この年次トレーニングはパタゴニアのパートナーで ある〈イリノイ・エンバイロメンタル・カウンシル〉、 〈シエラ・クラブ〉イリノイ支部、 〈フェイス・イン・プレース〉により編成されています。イベントでは州および全国の環 境問題をより把握し、問題に関して議 員に接触するための情報を得て、ロビー活動 の方法をより深く理解することができました。環境への絶え間ない脅威を考慮する と、州議会議員に私たちの懸念を伝えることはこれまで以上に重要です。また別の イベントでは、絶滅危惧種保護委員会の力を弱め、連邦政府指定の絶滅危惧種保護 を監視する州の権限の剥奪を目的とする法令を打倒するために、イリノイ州全域から 集まった環境擁護者に加わって州議会議員に会い、州議事堂の前で集会を開きまし た。トランプ政権が環境保護を削減しようとするなか、イリノイ州は 2018 年度の州 議会でクリーン・エネルギーの拡大支援、産業用ヘンプの新たな好機、州の流域の さらなる保護をもたらしました。
外来種を叩きつけるボランティアたち。写真:RYAN STRUCK
ニューヨーク市 ブルックリンのブッシュウィックとクイーンズのリッジウッドのあいだに
時間とボランティアの数を割り出すために、小さなチームを作って事
あるリッジウッド貯水池は、19 世紀後半のニューヨーク市の水源でし
前の刈り込みを実施しました。
た。現在は使用されておらず、3 つの溜池のうち 2 つからは水が抜か れて植物が茂り、中央の溜池は野生生物に欠かせない淡水生息地と
アシは何年も成長しつづけていたので、これは決して容易な作業では
なっています。
ありませんでした。初日は中央の溜池の端からアシと水の境まで刈り 取って進 路を開きました。高さが 5 メートル近くもあるアシの分厚い
パタゴニア・バワリーの環境助成先である非営利団体の〈NYCH2O〉
茂みをたたき切るのはなかなか進まない厄介な作業でしたが、なんと
はリッジウッド貯水池の主要な管理役を務める団体のひとつで、ニュー
か水との境にたどり着き、環境影響を評価できました。それはさらに
ヨーク市民が水の生態系について学び、楽しみ、守ることができるよ
厳しい作業が待ち受けていると実感しながらも嬉しい瞬間でした。
う取り組んでいます。歴史的な貯水池、公園、水 域、湾、川、湿地 での公共/学校プログラムを提供しながら、市民に責任ある公共政策
2 日目は少数からなるチームが初日に切り開いた進路からアシと水の
の提唱を促しています。
境にたどり着きました。約 30 分間無我夢中でアシを刈り、作業を成 し遂げるための時間とボランティアの数を割り出すのに必要なデータ
〈NYCH2O〉の事務局長マット・マリナがボランティアと戦略計画パー
をマットに提出しました。この小さな作業チームは学生、教師、ニュー
トナーを求めてパタゴニア・バワリーを訪れたとき、私たちはその好
ヨーク市公園局員、 〈NYCH2O〉のボランティア、パタゴニア社員 3 人
機に飛びつきました。マットはすぐに行動を起こさなければリッジウッ
からなる素晴らしいチームで、皆の努力の成果は明らかでした。アシ
ド貯水池の中央の溜池の淡水生息地としての存在が失われる危機に
が刈り倒され、水との境が少しずつ近くなってくるのを目にするのは
あることを知らせてくれました。外来種であるアシが鬱蒼と茂り、放
驚くべき体験となりました。この春、私たちはパタゴニアのボランティ
置すれば残りの水をふさいでしまう状態でした。私たちはニューヨー
ア全員で溜池の作業を再開します。
ク市の公園と提携して適切な許認可を受け、アシの刈り込みに必要な
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パタゴニア・バンクーバー パタゴニア・バンクーバーがあるキツラノ界隈で 7月に開かれた大 規
ブリティッシュ・コロンビア州政府と市民からのパイプライン反対にも
模なストリート・フェスティバルであるキャツァラノは、トランス・マ
関わらず、連邦政 府は 2018 年 5 月にパイプライン拡張事業を 45 億
ウンテン・パイプライン拡張事業反対の声をあげ、事業の阻止に取り
カナダドルの公金で購入すると発表し、事業達成への道を保証したも
組む〈ジョージア・ストレイト・アライアンス〉への支援を公にする素
同然です。
晴らしい機会となりました。アライアンスはバンクーバー島と本土の あいだにあるジョージア海峡の沿岸地 域および海洋生物の重要な代 弁者です。
キャツァラノ開催中、私たちはパタゴニアのバンクーバー・ストアに 「パイプラインこそが環境破壊の原因」と書いたバナーを掲げました。 店内ではジャスティン・トルドー政権の事業買収に対する直接反応と
ブリティッシュ・コロンビアでは近年 12 以 上の石油、石炭、液化天
して教育資料を提供し、また「気候変動対策の主導者はパイプライン
然ガス施 設の新 規 建 設および 拡張 が 提 案または認可されています。
を建設しない」と書いたメッセージボードを設置し、多くの人がパイプ
とくに物議を醸しているのはブリティッシュ・コロンビア沿岸のほぼす
ライン反対を訴える書き込みをしました。このボードはのちにオタワ
べての局面に脅威を与えるキンダー・モルガン・トランス・マウンテン・
の国会に送られました。また、 〈ジョージア・ストレイト・アライアン
パイプラインです。事業では既存のビチューメン・ラインに 980 キロ
ス〉 とパイプライン拡張阻止活動の資金調達として「NO PIPELINE」
メートルが追加され、アルバータ州のタールサンドとブリティッシュ・
とプリントしたシャツを販売しました。
コロンビアの流域がつながります。パイプラインは数々のファースト・ ネーションズの領土を通過しますが、すべての部族が承諾しているわ
パタゴニアの バ ンクーバー は 2014 年 に キツラノで 開 店して以 来
けではなく、また、欠陥のある環境アセスメントの過程で先 住権が
〈ジョージア・ストレイト・アライアンス〉を支援してきました。キャ
連邦政府によって無視されました。
ツァラノ・フェスティバルの日、私たちはさらに 3,000ドルを同グルー プのために集め、石油流出の危機とパイプライン施設のない海洋生
パイプラインは 89 万バレルという桁 外 れ の 石 油を毎日ブリティッ
態系および健康な海の保護を提唱することでパイプラインの建設阻止
シュ・コロンビア沿岸に運び、この石油はさらに 400 の油槽船で毎
を目指す、トランス・マウンテン・パイプライン反対運動に寄付しまし
年輸送されます。船舶輸送だけで1億トン以上の二酸化炭素を排出す
た。また、無視されている先 住権、オルカやサーモンを脅かす配慮
るうえ、ジョージア海峡の騒音公害のリスクを高めます。パイプライ
に欠ける行動、連邦政府のパイプライン買収に世間の注目を集めるた
ンの拡張はサーモンが生息する川や、すでに絶滅の危機に瀕するオル
めにストアの存在とバナーを利用しました。 〈ジョージア・ストレイト・
カや、ブリティッシュ・コロンビア沿岸を破壊的な石油流出のリスク
アライアンス〉とパタゴニア・バンクーバーの共同の取り組みの結果、
にさらし、それらの健康を脅かします。またブリティッシュ・コロンビ
意 思 決定者に世論の圧力をかけ、市民にはパイプライン事業の危険
アの気候変動対策計画に則さないペースで気候変動に加担することに
性を伝えることができました。
なります。
マルチデーのストリート・フェスティバルを利用してトランス・マウンテン・石油パイプラインの拡張に反対する ブリティッシュ・コロンビアのバンクーバー・ストアの社員。写真:JONATHON MCKECHNIE
ベンチュラ・ストアでのサーフィン映画の夜はスペイン語を話すグループとのより密接な つながりに貢献した。メキシコのラ・ティクラでサーフィン準備中のカレ・カランザと オットー・フロレス。写真:NIK WEST
Great Pacific Iron Works, Patagonia Ventura
翻訳文
Para poder conectar directamente con la comunidad hispanoparlante de Ventura, el gerente general de la tienda de Patagonia en Ventura, Bruce Livingstone, organizó una noche especial de películas de Surf “En Español”. Dos de nuestros embajadores surfistas—Ramón Navarro de Chile y Otto Flores de Puerto Rico—presentaron las películas a más de 225 personas que se juntaron en el patio trasero de la tienda este 10 de octubre. Ramón introdujo Poco a Poco, un cortometraje que trata del manejo de una reserva internacional de surf en México, y Sub Sole, una película sobre una ola de clase mundial que él y Otto encontraron en algún lugar de Chile. Otto introdujo Chulada, una historia que cuenta un viaje de surf donde viejos amigos se reencuentran y comparten olas buenas en Mexico. Seguido por un cortometraje que destaca el trabajo sustentable de Amigos Marinos, organización medioambiental sin fines de lucro, ubicada en Baja y que fue beneficiada por un grant de Patagonia, para luego conversar de por qué los jóvenes de hoy en día no están votando, y finalizar esta conmemorable jornada con una sesión de preguntas y respuestas con Ramón y Otto.
グレート・パシフィック・アイアン・ワークス、パタゴニア・ベンチュラ ベンチュラに住むスペイン語を話す人たちとより直接的なつながりを もつために、パタゴニア・ベンチュラのジェネラル・マネージャー、ブ ルース・リビングストンはスペイン語によるサーフィン映画の夜を計画 しました。10 月10 日、パタゴニアのサーフィン・アンバサダーである チリのラモン・ナバロとプエルトリコのオットー・フロレスは、直営店 の裏に集まった 225 人以 上の観客に映画を上映しました。ラモンは メキシコにある国際サーフィン保護地での彼の仕事(そして豪快なサー フィン)に焦点を置いた短編映画『Poco a Poco』と、彼とオットーが チリで見つけたワールドクラスのウェーブを撮ったビデオ『Sub Sole』 を、オットーはかつての仲間が未開拓のメキシコのバレルを巡ってふ たたびつながる『Chulada』 というサーフィン旅行のストーリーを紹介 しました。また、バハに拠点を置く非営利環境保護団体でパタゴニア の助成先でもある〈アミーゴス・マリノス〉の持続可能性への取り組み を特 集した短編映画、さらに若者が投票しない理由を探る映画を上 映し、最後はラモンとオットーへの質問コーナーで忘れられない夜を 締めくくりました。
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環境助成先:パタゴニアが支援する団体
全員参加 地域社会の環境保護活動への資金援助により、 パタゴニア直営店はお返しをして多くを得る
パタゴニア・ピッツバーグ 樹木の保護、有機農業の促進、ダム撤去など、直 営店の助成金プログラムはパタゴニア直営店がそれ ぞれの地域社会で環境保護活動を支援する方法の ひとつです。以下にご紹介する東海岸の3つの直営店 とパートナー団体は、パタゴニアが全米各地で展開 する取り組みの例です。
〈ピッツバーグ・パークス・コンサーバンシー(PPC)〉は新し く開店したピッツバーグ・ストアの最初の助成先です。ある週 末、賑わう店内で同団体の代表が私たちやお客様に活動の 内容を話してくれたのがきっかけでした。パタゴニア・ピッツ バーグは〈PPC〉とパートナーを組み、インベントの開催や ボランティアの提供をしています。スタッフは直営店の助成金 が地域のトネリコの木に予防接種する同団体の活動を支援し ていることを誇りに思っています。 〈ピッツバーグ・パークス・コンサーバンシー〉は政府および地元地域と
提携して公園システムを修復することにより、ピッツバーグ市民の生活 の質の向上を目指します。プロジェクトとプログラムは、環境、歴史的 デザイン、多様なこの地域のニーズを尊重しながら実施されます。 活動:2007 年の夏、ピッツバーグ市内の複数の公園でアオナガタマム シが枯らしてしまった約 6 万 8 千本のトネリコの木が見つかりました。こ
れは樹冠全体の16%におよびます。残ったトネリコの木がわずか160 本となり、 〈ピッツバーグ・パークス・コンサーバンシー〉は 2011年に予 防接種をはじめました。 〈PPC〉の目標は残されたトネリコの木に再度予 防接種し、これらの木の存続が地元の種の未来にどれだけ大切なのか を伝えつづけることです。 成果:アオナガタマムシ予防接種プログラムへのパタゴニアの支援と1
万ドルの助成金により、2018 年 6 月現在、154 本のトネリコの木に予 防接種ができました。木はすべて順調に成長し、今後 2 〜 3 年保護され つづけます。また、ペンシルベニア州の環境保護/天然資 源局および 米国森林局と樹木の場所と予防接種記録を共有しはじめ、州全域およ び全米のデータ・システムに取りこみました。これらの木はこのシステ (上) ピッツバーグ・ストアの助成金はトネリコの木を救う一助となった。 写真:LAURYN STALTER (中央) パタゴニアのアトランタ・ストアは「200 オーガニック・ファームス」 プロジェクトに1万ドルを寄付。写真:GEORGIA ORGANICS (右)パタゴニア・フリーポートの〈メイン・リバース〉への支援は このダムの撤去に貢献した。写真:MAINE RIVERS
ムを通じて追跡され、この地域のトネリコの樹種の復活に貢献すること が期待されます。
パタゴニア・アトランタ 〈ジョージア・オーガニックス〉に提供されるパタゴニア・アト ランタの助成金は、食物連鎖の再考に取り組む団体へのパタ ゴニア・スタッフの熱意が示されています。 〈ジョージア・オー ガニックス〉はパタゴニアがインターンシップ、ボランティア活 動、ストアイベント、環境 助成金を介して継続的な支援をつ づける長年のパートナーです。 〈ジョージア・オーガニックス〉はジョージア州の農場で栽培される有機
食物とジョージア州の家庭をつなげる努力をしています。私たちは食物 を介して地域社会のつながりを強化できると信じています。 活動:1997 年以来、 〈ジョージア・オーガニックス〉はジョージア州の有 機食物の生態系におけるリーダーとして活躍し、すべての人が良い食物 を、より入手しやすくなるよう州全域のパートナーと協力しています。目 指すのは、農家支援、農場から学校へ、地 域社会関与の 3 つの領域に おいて市民を教育し、支援し、鼓舞することです。人と食物のつながり を深め、また有機栽培への意識を高めることにより、良い食物を優先す る文化を奨励しています。 成果:〈ジョージア・オーガニックス〉の「200 オーガニック・ファームス」 にパタゴニアから支給された1万ドルの助成金: 「環境スチュワードシップ
としての農業」プロジェクトは、100 の農家に食品安全、有機認証過程、 1対 1の支援、経理、記録管理、食品安全基準の実践、全体農業計画に 関する技術的および経営の訓練を提供します。必須の経営技術に加えて、 ワークショップは農家同士のネットワークの構築にも役立ちます。ワー クショップ参加者はその後〈ジョージア・オーガニックス〉のファーマー・ サービス・チームから個別のフォローアップを受け、輪作、有機害虫駆 除方法、温室管理などそれぞれの目的に合わせた技術的な実地訓練を受 けます。ジョージア州内で年間 15 以上の有機農家が新たに認定される ことを見込んでいます。パタゴニアの資金援助により〈ジョージア・オー ガニックス〉のスタッフは定期的に農家を訪問しアドバイスすることがで き、また年次会議で徹底的な訓練を展開し、より多くの農家の有機認定 が促進されます。長期的には、2020 年までにジョージア州の有機認定 農家数が 200 に達することを目指しています。
パタゴニア・フリーポート フリーポート・ストアは〈メイン・リバース〉のダム撤 去および川の復 元プロジェクトに長期的支援を提 供 してきました。 その 結 果、2017 年のマッセ・ダム、 2018 年のロンバード・ダム撤去が実現しました。 〈メイン・リバース〉はメイン州の河川システムの生態系の健康 を守り、修復し、強化する取り組みをつづけています。エール
ワイフ・レストレーション・イニシアチブを指揮し、ダム撤去お よび約 100 万匹のエールワイフの成魚の年次回遊の復元を目 指しています。 活動:エールワイフ・レストレーション・イニシアチブは大西洋 からメイン州ケネベック郡にあるチャイナ湖までの魚の通り道
の復 元に取り組んでいます。2017 年、数年来にわたる努力、 資 金集め、エンジニアリング、一 般 集会と許認可手続きを重 ねたのち、私たちはマッセ・ダムの撤去に成功し、2018 年には ロンバード・ダムの撤去も実現しました。しかし活動は終わった わけではなく、95 万匹のエールワイフのチャイナ湖への回遊 を妨げる 4 つの小規模ダムの撤去に向けて活動をつづけます。 成果:ヴァサルボローのアウトレット・ストリームにあるマッセ・ ダムとロンバード・ダムの撤去にあたり、パタゴニアに資 金援 助の依頼がありました。ロンバード・ダムは100 年前、地元の 発明家 A. O. ロンバードによって木製の屋根板工場の敷地に建 設されました。A. O. ロンバードの特許および発明は私たちが 撤去したダムと直接の関連はありませんが、ロンバードはメイ ン州の歴史的人物であるため、撤去の前にダムの本格的な史 料の作成が必要でした。エールワイフ・レストレーション・イ ニシアチブへのパタゴニアの1万 5 千ドルの助成金により、撤 去前に歴史家と写真家を雇ってダムの史料を作成し、土地所有 者の水際の境界線を移すことができました。
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
ベンチュラの直営店で温かい衣類を受け取るために並ぶ、 地元地域を救った消防士たち。写真:TEE SMITH (右) カリフォルニア州南部を襲ったトーマス・ファイヤーは 州史上最大の火災のひとつ。写真:DONNIE HEDDEN
資金調達、野外の仕事、自然災害 多くのニーズに応える製品寄付
います。これらの団体は資 金調達のための景品、あるいはメンバー集めや認 知度を上げる
30万
ために寄付品を利用します。ウェーダーやレインシェル、防水性パックなどの中古の製品は、
2018 会計年度に寄付した.
団体の人びと自身が野外で仕事を行うのにとても重宝します。野生のサーモンの数を数えた
パタゴニアの衣 類とギアの.
り、河川のゴミを拾ったり、野生のバッファローを保護するために何時間も雪の中で過ごすと
金額(ドル)
毎年パタゴニアは環境のために働く小規模の非営利団体に新品および中古の製品を寄付して
きなど、スタッフとボランティアはつねに体を保護するギアが必要なため、感謝されます。 近年、私たちの製品寄付プログラムでは、急 速に増えている衣 類が必要な新たなお客 様、 つまり自然災害の影響を受けた人びとも支援しています。現時点では、2017 年はアメリカで 史上最大の壊滅的な被害を受けた年で、その被害額は 3 千 60 億ドルにもおよびます。前代 未聞の規模と強烈さをもった火災は、パタゴニアの本社があるベンチュラで人の命を奪い、 家屋を焼き尽くしました。ハリケーン・ハービーはヒューストンに1,200 ミリの豪雨をもたら し、またアーマやマリアやその他のひどい嵐は、南東部に大規模な洪水と住居の喪失を引き 起こしました。集中豪雨は河川を氾濫させ、中西部の 5 つの州が浸水しました。全国の街で は記録的な高温を経験しました。 当初、母なる自然のために働く非営利団体を支援することを目的とした製品寄付は、最近で はその自然の怒りによる災害に苦しむ人びとを援助し、その人びとの数は増えています。
950以上 今年、パタゴニアの製品寄付. プログラムにより寄付を受けた 非営利団体数
尽きることのない仕事 2010 年以来、リノのサービスセンターの社員は地元の非営利 環境保護団体でボランティア活動をし、湿地や河川を修復し、 1万本 以 上の在 来種の樹 木や植物を植え、有 機 農園で 働き、 草をむしり、在来魚を数え、堆肥作りなどをしてきました。 今年、サービスセンターの社員は通常の業務から離れ、 〈ネイ チャー・コンサーバンシー〉、 〈シュガーパイン・ファウンデー ション〉、 〈コッカドゥードルムー・ファーム・アニマル・サンク チュアリー〉、 〈セーフ・ヘイブン・ワイルドライフ・サンクチュ アリー〉、 〈 フェザー・リバー・ランド・トラスト〉、 〈 シエラ・ ビューツ・トレイル・スチュワードシップ 〉、 〈 キープ・トラッ キー・メドウズ・ビューティフル〉、 〈TNC /パイユート・トライ ブ〉で合計 624 時間をボランティア活動に捧げました。 エンバイロ・デーは私たちを地域社会と繋げるだけでなく、各 部門の志を同じくする社 員同士の友 好関係を深め、やる気を 高めます。社員は野外で一日ボランティアをしたあと、携わっ た仕事に情熱をもち、同僚とその経験について語り、より深く つながり、より幸せに、より元気になって戻ってきます。エン バイロ・デーは私たち全員にとって有意義なもの。私たちが支 援する非営利団体だけでなく、私たちの地 域社会にも恩恵を もたらすのです。
リノのサービスセンターで非暴力の直接行動訓練中に抗議で 腕を組むパタゴニア社員。写真:LIZ O'DONNELL
サーモン・ラン 25周年を祝う 毎秋、カリフォルニア州ベンチュラのパタゴニア本社の ボランティアは、地元地域で活動する非営利環境保護団 体のための資金集めにベンチュラ・リバー沿いで 5K ラン を開催しています。今年はサーモン・ランの 25 周年で、 昨年のトーマス・ファイヤーによる甚大な被害を受けた 土地を修復している団体の連合のために1万 5 千ドル以 上を集めました。500 数人の参加者がこのゼロ・ウェイ ストの楽しい地域の朝のイベントに繰り出しました。
トーマス・ファイヤーで被害を受けた地域を修復するために、今年1万 5 千ドルの 寄付を集めた楽しいランニングのイベント。写真:PAUL HENDRICKS
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環境助成先:パタゴニアが支援する団体
水銀、鉛、シアン化物:〈レラベス〉 はチリ国民に 鉱業廃棄物の危険性を教え、より責任ある透明な 業界を奨励することに取り組む。写真:RELAVES
レラベス チリ、サンティアゴ ミッション:「Relaves ( レラベス)」とはスペ
る被害を明らかにするドキュメンタリー映画
たのは、生存 者の1人であるヘンリー・ユル
イン語で鉱業廃棄物を意味します。私たちの
の制作にも取り組んでおり、それは 2019 年
ゲンス。 〈Relaves( レラベス)〉財団を発足さ
団 体はチリの鉱 業 廃 棄 物の危険 性について
後期に完成する予定です。
せてその代表を務める彼は、同じような惨事 が二度と起こらないように防止策を求めなが
国民に情報を提供し、推定 740 か所(稼働中 101、停止中 469、放棄 170)の現場を取り
この映画は放棄された鉱山が 2010 年に崩壊
ら、人びとと土地と生態系の威厳と尊重のた
締まるための規制の執行を求め、周辺地域を
したときの話を伝えるもので、その事故の結
めに尽力しています。
教育して、より責任ある透明な鉱業を奨励す
果、ある夫婦と 2 人の幼い娘たちが何百万ト
ることに取り組んでいます。
ンもの有毒廃棄物の下に生き埋めにされまし た。 鉱 山の所 有者と関 係当局以 外には、 そ
成果:長い道のりではあるものの、私たちは チリ国内の尾鉱の膨大な量とその公衆衛生と
活動:鉱業廃棄物には採掘される鉱物に応じ
の地域に住むことの危険性について知る人は
環境への影響についての情報を、着実に人び
て、 水 銀、 ヒ素、 鉛、 シアン化 物、 硫 酸 な
いませんでした。崩壊の引き金となったのは
とに広めています。 〈レラベス〉はソーシャル
どが含まれている可能性があり、それらは土
地震でしたが、この事態を多大に悪化させた
ネットワークでのフォロワー数を増やし、放
壌や地面や地表の水だけでなく、海までも汚
のは鉱業界とチリ政府側の責任の欠如にあり
棄された尾鉱の問題について見直すための調
染します。私たちは科学的調査を行い、尾鉱
ます。 彼らは 過 去100 年 以 上も渓 谷や 河川
査委員会をチリ議 会の上院と下院で要求し、
の試験によって汚染物質を分析し、その結果
流 域や砂 漠、さらには 海でも有害廃 棄 物の
鉱業廃棄物によって影響を受ける地域で土壌
や関連情報をソーシャルネットワークで発 信
投 棄、 あるいは投 棄の許 可をつづけ、 基 本
と水質の検査をつづけています。
しているほか、鉱業活動の影響に苦しむ周辺
法の執行に対する敬意などは一切示すことな
地域と協力し、尾鉱の危険性を教えています。
く国際条約に違反してきました。この大惨事
また、尾鉱が 環 境と地元 地 域の健 康に与え
のあとに何かをしなければならないと決意し
文 by〈レラベス〉
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
プロジェクトの経過:プンタ・デ・ロボス
ポイントを研ぎ澄ます
ポイントは永久に。
非営利団体〈セーブ・ザ・ウェーブ〉は効果的な
2017 年にポイントの所有と管 理を引き継い
クラウドファンディングのキャンペーンを先導
だ同財団は、ただちに仕事に取りかかりまし
チリの象 徴 的なレフトハンドのサーフブレイ
し、世界中のサーファーたちからたくさんの個
た。この地域を毎夏訪れる 3 千人の観光客や
人寄付を集めました。パタゴニアは10 万ドル
サーファーや漁師のために水の要らないバイ
のマッチング寄付を行い、非営利財団〈フンダ
オトイレを設置し、断崖や生態的に傷つきや
シオン・プンタ・デ・ロボス (FPL)〉の設立に協
すい場所への人間の影響を抑えるために車の
力。2017年夏には、パタゴニア独自のビッグ
交 通 量を規 制する環 状 交 差 点を建 設したほ
ウェーブ用インフレーション・ベストのライセン
か、浸食対策として崖縁に人が立ち入るのを
ク、プンタ・デ・ロボスを守るための闘いは いまから10 年以上前、パタゴニアのサーフィ ン・アンバサダーであり活動家であるラモン・ ナバロが、地元の水 域を汚染してサーフィン および漁業文化を永久に破壊する開発計画に 反 対して立ち上 がったときからはじまりまし た。それから何年ものあいだ、ラモンと仲間 の活動家たちが組織した協働は開発者たちを 阻んできましたが、彼がパタゴニアに新たな 知らせをもたらしたのは数年前のことでした。 それはロボスのポイントが私有化され、大規 模なコンドミニアムやリゾート建設のために舗 装されてしまう危 機に直 面しているというも のでした。
ス料から得た15 万ドルをさらに寄付しました。 防ぐために船 舶 用ロープ で柵を作りました。 しかしミラドールと呼ばれているポイントの先
また歴史的な家屋を復元し、現在では 〈FPL〉
端にある土地を購入するためには、まだかなり
の科 学・調 査・教 育センターとして利用して
の資金が必要でした。そこで、愛する場所を救
います。
うために実践的な行動を起こすことの重要さを 信じている私たちは、その差額を埋めるために 〈FPL〉にはまだまだ仕事が残っています。同 さらに高額の寄付を行いました。そして去年、 財団は現在では、この素晴らしい場所のさら 10 年以 上の取り組みを経て、ついにプンタ・
なる美しさと生物多様性を未来の世代に残す
デ・ロボスのポイントの先端の購入と永久保護
ため、プンタ・デ・ロボスにある他の土地の
が実現し、脅かされていたミラドールの土地所
獲得を目指して努力をつづけています。
有権は〈FPL〉に譲渡されました。 乱開発の危機から逃れたプンタ・デ・ロボスは現在、年間 3 千人の訪問者に対応するための公共施設の整備に取り組んでいる。 写真:(上)RODRIGO FARIAS MORENO、 (下)SCOTT SOENS
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正しいことのために 仕事をはなれる 環境インターンシップ・プログラム
パタゴニア社員は毎年最長 2 か月間職場をはなれ、給与と福利厚生を受けながら 各自が選択する NGO の環境保護団体の活動に参加することができます。まる 2 か月間 参加する社員もいれば、2 週間参加する人もいます。また職場の業務の一部として 1〜2日間ボランティアする社員もいます。1994 年に開始以来、これまでに 2,589人が このプログラムに参加しました。今年だけでも76 人の社員、27 部門が世界各地で インターンシップに取り組み、全体で合計 547人の社員が参加し、 非営利環境保護団体に17,316 時間を提供しました。
クリスティ・フォング
〈アラスカ・マリン・コンサベーション・カウンシル〉 アラスカ州アンカレッジ
アン・ラウワー・ランバート
〈クリーン・オーシャン・プロジェクト〉 カナリア諸島
クリスティ・フォングは〈アラスカ・マリン・コンサ
カナリア諸島で〈クリーン・オーシャン・プロジェク
ベーション・カウンシル〉での仕事を通してアラスカ
ト〉のインターンとして働いたアン・ラウワー・ラン
州アンカレッジの水域と人びととの深いつながりを築
バートは「日々違うビーチを清掃しました。毎朝 7 時
きました。ヤング・フィッシャーマンズ・ディベロッ
にビーチへ行き、プラスチックやその他のゴミを収集
プメント法への署名集めやワイルド・サーモン・デー
しました」 と語ります。フエルテヴェントゥラ島ではプ
の認識を高める活動をしていないときは、時間をみ
ラスチックの袋の禁止キャンペーンを促進するために
つけてハッチャー峠付近でクライミングをしたり、フ
ラハレスとコラレホの店のオーナーを訪れました。禁
ライロッドで野生のサーモン釣ったりしました。また
止を説明するハガキと禁止に賛成を表明するステッ
「AMCC の 『キャッチ・オブ・ザ・シーズン』プログラ
カーを武器に、彼女はコツコツとこの世界的な問題
ムを通してブリストル湾のベニザケの配達を手伝いま
について地元での認識を高める手助けをしました。
した。それは持続可能な漁法を採用している地元の
〈アラスカ・マリン・コンサベーション・ カウンシル〉 でのインターンシップ中に 時間をみつけて野生のブルーベリーを 集めるクリスティ・フォング。 写真:COLEMAN BECKER
漁師から地元民が海産物を購入することを可能にし ています」と語ります。彼女はこの仕事で人里はなれ た漁港の町へ行き、海洋酸性化についての教育用キ オスクの設置も手伝いました。
76
27
547
2,589
17,316
今年、個人としてボラン
今年、ボランティアを.
今年、ボランティアを.
1994 年に開始以来、.
今年、非営利環境保護
ティアをした社員の数
した部門の数
した社員の総数
ボランティアをした.
団体に提供されたボラン
社員の数
ティア活動の時間
ハナノ・シイダ
〈カコオ・オイウイ・オーガニゼーション〉 オアフ島コオラウポコ、ヘエイア
バネッサ・バトラー
〈アイリッシュ・シード・セーバーズ・アソシエーション〉 アイルランド、スカリフ
マウカからマカイ(山側から海側)まで、ハナノ・シイダはオアフ島コオ
バネッサ・バトラーは〈アイリッシュ・シード・セーバーズ・アソシエー
ラウポコ、 ヘ エイアの沖 積 湿 地 帯の農 業 および 生 態 学 的 生 産 性を
ション〉のミッションである 「アイルランドの特別な、かつ危機にさらさ
修復することを使命とする〈カコオ・オイウイ・オーガニゼーション〉に
れている植物の遺伝子資源」の保護を支援するために働きました。彼
加わりました。 「私はロイ(湿地およびタロイモ畑)、乾燥地農園で働
女は 2 人の庭師と一 緒に 8 ヘクタールに種を蒔き、苗床を手入れし、
いたり、ポイを作ったりして多くの時間を過ごしました」と語ります。
野 菜と穀 物を収 穫しました。 「 その土 地には 5 つのビニールハウス、
1800 年代、サトウキビ、パイナップル、お米、牧畜というヘエイア
30 以上の野外の苗床、林檎の果樹園、森があります。収穫の後、サ
の新しい土地利用は流域に壊滅的な浸食をもたらし、河川システムを
ンルームに運んで数日間乾かしました。乾いたら植物から種を取り出
つまらせ、在来種にとっての湿地生息域の減少を招きました。シイダ
すことも含めた処理をしました」と語ります。先祖代々伝わる伝統的な
は在来種のフリとカロをこの美しい場所に再導入したこと、土地と地
作物の品種の保護は、アイルランドの豊かな農業の歴史と未来への高
域社会の文化的つながりを修復する手助けをしたことを誇りに思って
い期待を気づかせてくれました。
います。 93 93
(左から右、上から下) アイルランドでタネを保護。写真:BARRY FOLEY、ニュージーランドでペンギンの移動を記録。写真:NIKO GEORGE、カリフォルニアで有刺鉄線の柵を撤去。 写真:SCOTT GOODIN、カナリア諸島でビーチの清掃。写真:Clean Ocean Project、オアフ島で農業と生態学的生産性を修復。写真:NICK REPPUN
ニコ・ジョージ&ミケーラ・オリアリー
〈ウエスト・コースト・ペンギン・トラスト〉 ニュージーランド、ホキティカ
ギャリー・ジゲリ
〈フェザー・リバー・ランド・トラスト〉 カリフォルニア州クインシー
ペンギンは夜、ビーチを散歩するのが好きです。そこでニコ・ジョー
3 列に並んだ有刺鉄 線はアメリア西部を象徴するもののひとつです
ジとミケーラ・オリアリーはペンギンの足跡を数えて記録するために、
が、いまや囲い込む家畜もいなくなり無用となった何キロメートルに
毎日夜明けに海岸で仕事をしました。 「足跡の数で、開発が進む海岸
もおよぶ有刺鉄線が、何百ヘクタールもの修復済みの草原に残され、
線で繁殖するペンギンの重要な営巣地についてがわかりました」とニ
在来種の動物の回遊の行動様式を妨害しています。ギャリー・ジゲリ
コは話します。2 人は〈WCPT〉のマネージャーとともに地域への働き
と 30 人のリノのサービスセンターの社員は〈フェザー・リバー・ラン
かけの方法を改善し、団体のウェブサイトを一新しました。野外では
ド・トラスト〉に加わり、野外で 8 日間、現場の柵や古い杉の杭や何
「ペンギン・レンジャー」とともにペンギンの繁殖地を監視し、捕食者
百メートルもの有刺鉄線を撤去しました。 「この作業の最後に擦りき
捕獲のワークショップに参加しました。 「こうした日々はペンギンの窮
れてぼろぼろになった工具を置くと、それまで囲われていた草原はも
状について多くのことを教えてくれました」と語ります。
との自然な状態に解き放たれ、野生動物はふたたびラッセン山麓で 自由に歩き回ることができるようになりました」と語ります。
Aaron Sever / The Nature Conservancy-River Fork Ranch / NV • Allison Hendricks / Futaleufú Riverkeeper / Chile • Andrew Koehler / Wild Bird Fund / NY • Ann Palmer / Los Padres Forest Watch / CA • Annika Washburn / Return to Freedom / CA • Anthony Shough / Belize Audubon Society / Belize • Art Lemus / Mojave Desert Land Trust / CA • Benjamin Dobson / Grupo Asociativo de Cafe Especial la Barniza / Colombia • Breann Sliker / Stone Barns Center for Food and Agriculture / NY • Carrie Baldwin / Rancho Santa Ana Botanic Garden / CA • Chelsea Saul / Urban Roots Garden Classrooms / NV • Cheney Caldwell / Fundación Agro Ecological Iguazú / Argentina • Chris Hare / Ojai Raptor Center / CA • Christie Fong / Alaska Marine Conservation Council / AK • Customer Service Department / Feather River Land Trust / NV • Danielle Poirier / Surfrider Foundation Rincon / Puerto Rico • Dealer Service Department / Friends of Nevada Wilderness / NV • Denise Neil / The Nicoya Peninsula / Costa Rica • Dennis Ryan / Conservación Patagónica / Chile • Enviro Department / California Institute of Environmental Studies / CA • Dillon Brook / American River Conservancy / CA • Elena Egorova / Fundación Fungi / Chile • Elizabeth Chenoweth / Ojai Raptor Center / CA • Emily Geeza / City Kids DC / WY • Emma Lore / Kako’o Oiwi / HI • Erik Krahn / CEIBA Foundation for Tropical Conservation / Ecuador • Geoff Holstad / For Love of Water / CA, MI • Hanano Shiida / Kako’o Oiwi / HI • Hector Castro / Amigos Marinos / Mexico • Helena Barbour / Nest / India • Jane Sievert / Redwood Community Action Agency / CA • Jasin Nazim / Friends of Cedar Mesa / UT • Jennifer Garcia / Shark Stewards / CA • Jim Little / Ojai Valley Land Conservancy / CA • Jonathan Carter / Recreation Northwest
547
/ WA • Judson Heard / The Nature Conservancy / ID • Jules Isaac / Bronx River Alliance / NY • Julie Hale / Tilth Alliance / WA • Kevin Landeros / Fundación Agroecológica Iguazú / Argentina • Lars Linden / Gaining Ground / MA • Leigh Bost / Southern Appalachian Highlands Conservancy / NC • Lex Kridler / Conservación Patagónica / Chile • Linda Glave / Environmental Entrepreneurs / CA • Manuelle Chanoine / Kupu / HI •
Marcela Riojas / Fundación Fungi / Chile • Mary
人
Elliott / Oregon Natural Desert Association / OR • Meghan Wolf / Friends of Nevada Wilderness / NV • Micaela O’Leary / West Coast Penguin Trust / New Zealand • Michelle Edmonson / Tahoe Rim Trail Association / NV • Monica Warsaw / Salviamo L’Orso / Italy • Nanette Stowell / Nest / India • Nate Ptacek / Northeastern Minnesotans for Wilderness / MN | CA • Niko George / West Coast Penguin Trust / New Zealand • Pamela Pedley / The Nature Conservancy / VI • Paul Hendricks
今年、
/ Futaleufú Riverkeeper / Chile • Atlanta Store / Georgia Organics / GA • Boston Store / Urban Farming Institute / MA • Cardiff Store / San Diego River Park Foundation / CA • Freeport Store / Hurricane Island Foundation / ME • Ventura Store / Surfrider / CA • Hale’iwa Store / Hi’ipaka Waimea Valley / HI • Honolulu Store / Kākoʻo ʻŌiwi | Huli the Movement / HI • Palo Alto Store / Yosemite Climbing Association / CA • Portland Store / Forest Park Conservancy / OR • Salt Lake
ボランティアをした 社員の総数
City Store / Green Urban Lunchbox / UT • San Francisco Store / Bull Valley Agricultural Center / CA • Santa Monica Store / The Bay Foundation / CA • SoHo Store / City Growers / NY • Toronto Store / Park People / Canada • Washington DC Store / Dreaming Out Loud / DC • Ryan Blum / Mahwah Environmental Volunteers Organization / NJ • Sara Strader / Oregon Natural Desert Association / OR • Sarah Darnell / Conservación Patagónica / Chile • Sarah Huckins / EcoPeace Middle East / Jordan • Scott Carrington / Costas Verdes / Costa Rica • Sebastian Cancino / Bob Marshall Wilderness Foundation / MT • Shipping Department / Trout Unlimited | Be The Change Project / CA | NV • Sonny Bentz / The R.O.L.E. Foundation / Indonesia • Tara Conway / Canadian Parks and Wilderness Society Yukon / Canada • Todd Copeland / The Nature Conservancy / CA • Vanessa Butler / Irish Seed Savers Association / Ireland • Yarden Orly / Garden City Harvest / MT • Anne-Laure Lambert / Clean Ocean Project / Canary Islands • Bernard Kocher / STOPP / Switzerland • Vanessa Ruebe / STOPP / Switzerland • Caroline van Heule / Surfers Against Sewage / UK • Cem Tanyeri / The Pollinators / Netherlands • Steven Barrow / Moy Hill Farm / Ireland • Emma Backlund / South West Marine Debris Clean Up / Tasmania • Belinda Baggs / The Wilderness Society / Victoria • Swann Laurent / The Bob Brown Foundation / Victoria •
Hiro Sato / Ryuiki
No Shizen Wo Kangaeru Network / Hokkaido • Kazuya Yoshitani / Kaminoseki no Shizen wo mamoru kai / Yamaguchi • Tomoe Michiue / Kaminoseki no Shizen wo mamoru kai / Yamaguchi • Nozomi Toida / Satoyama Guruguru Smail Farm / Saitama • Junichi Sekikawa / Kamigo Segami No Shizen Wo Mamoru Kai / Kanagawa • Go moritake / Kamigo Segami No Shizen Wo Mamoru Kai / Kanagawa • Yasuhiro Yagi / Minamisanriku Nature-center Tomo no kai / Miyagi • Yoriko Ohnuma / Minamisanriku Nature-center Tomo no kai / Miyagi • Etsuko Kuroda / Minamisanriku Nature-center Tomo no kai / Miyagi • Yasuaki Hori / Minamisanriku Nature-center Tomo no kai / Miyagi • Kauhito Miyagawa / Minamisanriku Nature-center Tomo no kai / Miyagi • Moriko Nishida / Minamisanriku Nature-center Tomo no kai / Miyagi • Takehiro Yoshimoto / Kaminoseki no Shizen wo mamoru kai / Yamaguchi • Kouhei Syouda / Kaminoseki no Shizen wo mamoru kai / Yamaguchi • Saori Oyamada / Kaminoseki no Shizen wo mamoru kai / Yamaguchi • Sappro kita Store / Sanrugawa wo mamoru Kai / Hokkaido • Fukuoka Store / Ishikigawa Mamori Tai / Ngasaki • Baysaide Outlet / Tokuteihieirikatudouhoujin Hotaru No Furusato Segamizawa Kikin / Kanagawa • Kamakura Store / Tokuteihieirikatudouhoujin Hotaru No Furusato Segamizawa Kikin / Kanagawa • Yokohama Store / Kamigo Segami No Shizen Wo Mamoru Kai / Kanagawa 95
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
丘麓から湾にいたるまで:〈グラスルーツ・エコロジー〉 の保全活動の 成果として繁茂する野生のオオハナウドの傍に立つ、同団体所属の ヴァレリー・リー。写真:GRASSROOTS ECOLOGY
グラスルーツ・ エコロジー カリフォルニア州パロアルト
ミッション:〈Grassroots Ecology(グラスルーツ・エコロジー)〉はシ リコンバレーの公衆を教育し、地元の生態系復元活動への参加を促すた
めに活動しています。相互に支え合いながら存続し、変化しつづける世界 に対応するための回復力と順応性を備えた、活気ある健全な土地と人間 の共同体を展望として掲げています。 活動:沿岸部の湿地から山地まで、シリコンバレーは豊富な自然に恵まれ ています。同地は生物多様性において重要な意味をもつことが世界的に
も認められている地 域にあり、そこが生息地を提 供している何千もの動 植物種には、地球上の他の場所には存在しない固有種も含まれます。同 時にシリコンバレーは 300 万以上の人口を支え、世界最大のテクノロジー 企業が集まる場所でもあります。 都市と自然が緊密に交わるこの地域は住むには素晴らしい場所である一 方、難しい問題も生み出しています。洪水や山火事の危険性の増加、生 息地の劣化と分断、土壌や水域の汚染、生物多様性を脅かす外来種の増 殖など。こうした問題はすべて気候変動によって勢いを増しており、私た ちの環境や地域の健康を徐々に破壊しています。 〈グラスルーツ・エコロジー〉はボランティアの力を利用して、シリコンバ レーを健全な土地にするために活動し、緑地や住宅地での在来植物の復 元、川や水域の管理、実地体験を通じた自然教育などを提供しています。 私たちは草の根(グラスルーツ) と名乗るだけでなく、草の根的な活動を実 践する団体です。さまざまな部門や世代にわたって活動することで力を増 幅し、地球の一部であるこの地域の維持と回復を目指しています。 成果:〈グラスルーツ・エコロジー〉は地方政府や公共機関、学校、企業、 個 人、 その 他の非 営 利 団 体との 協 働 で、 シリコンバレー の土 地と水を 守っています。環境保全や地 域科学や教育にまつわるプログラムを、丘 麓から湾にいたるまでの野外スペースで開催する私たちのチームは、年間 12,000 人の参加者をあらゆる年齢層から巻き込んでいます。 文 by〈グラスルーツ・エコロジー〉
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
つながりを築く:〈アウトドア・アフロ〉 は、アフリカ系アメリカ人の地域社会の何千という人びとが、 アウトドアとのつながりを取り戻すために尽力する。写真:OUTDOOR AFRO
アウトドア・アフロ カリフォルニア州オークランド ミッション:自然のなかでのアフリカ系アメリカ人のつながりやリー
ダーシップを称賛し鼓舞する〈Outdoor Afro(アウトドア・アフロ)〉
用して楽しむことの公平性について、私たちの構想を共有するアウトド ア企業の支持に消費力を利用することを促しています。
は、人びとが自身や自分たちの地域社会や地球を大切にする方法を よりよく学ぶための支援をしています。アウトドアのレクリエーション
成 果:2018 年 4 月に開 催した年 次の全 米リーダーシップ 研 修には、
と自然と保全活動にすべての人を含めていく道を切り開くために、何
約 80 人の新規および既存のボランティアが〈アウトドア・アフロ〉の.
千もの人びとをつなげる活動に取り組んでいます。
リーダーとして参加しました。以来、彼らは国内で 332 のイベントを 主催し、自分たちの地域社会と自然をつなげてきました。アリゾナ州
活動:私たちは地域社会内外のアウトドア活動を通じて、アフリカ系ア
スコッツデール、テネシー州ナッシュビル、メイン州ポートランド、ユタ
メリカ人が公平に自然界とのつながりを取り戻すための支援を、最前線
州ソルトレイク・シティでも新たに〈アウトドア・アフロ〉 のネットワー
で展開しています。研修を受けたボランティアリーダーたちが導く、ハ
クが立ち上がりました。アドボカシー活動の面では、カリフォルニア
イキング、バイクライディング、キャンプ、環境教育、保全活動などの
州法 「プロポジション 68」の可決において重要な意見を示しました。こ
さまざまな活動を実施し、30 近くを数える州でネットワークを築いて
の法令は、州や自治 体の管轄にある公園、環境保護や水インフラや
います。このように企画された活動を通して年間 3 万にのぼる人びとと
食の安全に関するプロジェクトへの出資を許可するものです。そして
関わり、その経験はソーシャルメディアや従来の媒体を用いて何百万人
現在では、アメリカで最も重要な保全とレクリエーションのプログラム
にも拡散しています。私たちはビジュアル・ナラティブに移行しながら、
である「Land and Water Conservation Fund(土地および水保全
地元の公園やトレイルや緑 地など都会の中にある自然と同じように、
基金)」の再承認を支持することに重点を置いています。さらに注目す
原生の自然に接する機会を促しています。こうした活動は健全なライフ
べきは 2018 年 6 月に〈アウトドア・アフロ〉のリーダーたちがキリマン
スタイルを促進するだけでなく、地域社会が癒しの場を見つけ、多くの
ジャロ遠征に乗り出したことです。これはキリマンジャロ登頂におい
自然にも秘められている黒人の歴史とつながり、誰もが楽しむことので
て、クライマーやサポートスタッフを含む全員がアフリカ系アメリカ人
きる公有地を脅威から守りたいと熱望するよう人びとを鼓舞しています。
で構成された史上初のチームとなりました。
〈アウトドア・アフロ〉はまた、公有地に対してアフリカ系アメリカ人が 影響力を発揮するための援助を誓い、皆の遺産である公園や緑地を利
文 by〈アウトドア・アフロ〉
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
プロジェクトの経過:石炭と闘うパタゴニア日本支社
パワーを求める闘い 2011年に東日本大震災とその津波が引き起
悪化させます。石炭とバイオマスの混焼発電
パタゴニア日本支社はスノースポーツ関連の
こした福島第一原子力発電所のメルトダウン
所としてもう1基の建設も予定されています
企業や積雪地帯の地 域社会と協力し、再生
と放射性物質の放出は、信頼できて賢明だ
が、世 論の圧力に屈した事 業 者はこれをバ
可能エネルギーを支 援するよう地方自治 体
と信じてきた日本人の原発神話を揺るがしま
イオマス専焼にすると宣言しました。仙台市
に 働 き か け て い ま す。 パ タゴニア 直 営 店
した。そしてほとんどの原子力発電所を閉鎖
は石炭火力発電所に関する厳しい規制を施
のサーフ千葉とサーフ大阪ではソーラーパネ
する埋め合わせとして、日本政府は石炭に目
行し、市民運動は勝利を収めました。
ルを設置し、自家発電に取り組んでいます。
パタゴニアが資金や戦略やボランティアで支
また日本支社は農業をしながら太陽光発電
援する NGO 環境保護団体〈気候ネットワー
を行い、それによるコストと利益を分け合う
パタゴニアの助成先である〈仙台港の石炭火
ク〉は、石炭を燃やして電力を生成するマイ
ソーラーシェアリング (営農型太陽光発電) に
力発電所建設問題を考える会〉からの訴訟な
ナス面について啓蒙しています。同団体は石
投資し、持続可能な農業も促進しています。
ど、断固とした反 対にもかかわらず、2017
炭火力発電の増加に反対し、再生可能エネ
年 10 月には仙台港で新しい石炭火力発電所
ルギーの使 用を促 進するためのロビー活動
が運転開始しました。他県への電力供 給の
に励み、 「Don't Go Back to The 石炭」と
ために建設されたこの発電所は、同地 域の
いうキャンペーンを立ち上げました。
を向けました。 2012 年以来、50 基ほどの石炭火力発電所 の建 設 が 提 案されました。そのうち 7 基の 計画はおもに経営的な理由により中止となり ましたが、8 基は建 設されて現在 稼 働中で す。そして残り35 基の建設の可能性もいま も大きく立ちはだかっています。もしこれら の発電所が建設されれば、日本には135 基 以 上の石炭火力発電所が 存 在することにな ります。 石炭火力発電所は日本の温室効果ガス排出 の大きな原 因のひとつです。他 国がエネル ギー源としての石炭から段 階 的に脱 却する 宣言をしているなか、さらなる石炭 火 力発 電の増加を継続する先進国は日本だけです。 日本全国の人びとが 新しい発電 所の建 設に 反 対を表明し、世 論の圧力が 7 基の建設中 止に影 響をあたえましたが、日本政 府は再 生可能エネルギーへの投 資ではなく、都合 の良い短 期的な解決 法を選 択しつづけてい ます。
空気と水を汚染し、地 球規模の気候 変動を 原子力発電所の閉鎖の埋め合わせとして日本政府は 石炭に目を向けている。写真:KISHUJI RAPID
99
私たちが 引き取ります WORN WEAR ® プログラムがパタゴニアの衣類の修理、 再利用 、リサイクルの5周年を祝う
2018 年は Worn Wear の 5 周年記念でしたが、ギアを修理、再利 用、リサイクルする取り組みはパタゴニアにずっと深く根付いていま す。私たちは1970 年代からお客 様のギアを修 理し、2005 年には リサイクルのためにパタゴニア製品を回収しはじめ、2011年にアメ リカのパタゴニアでは、お客 様が 不要となったパタゴニアの衣 類を eBay で売ることを促し、そのお手伝いをしました。そして、ローレ ン&キース・マロイによる「Worn Wear:着ることについてのストー リー」というブログが始動したのは 5 年前のことでした。これは、購 入したものをより長く活用し、必要ならば修 理し、あるいは不 要と なった際には誰かに譲ることで、どうしたらもっと多くの人びとに自 分のものとして考えてもらえるかを再考する試みとなりました。その 目的は、消費そのものを削減することでした。 このブログ、そしてその後に登場した同名の映画は、人びととパタゴ ニアのギアの関係についてのストーリーを共有するもので、人生の浮 き沈みを通して次世代に引き継がれた衣類、あるいはアイデンティ ティの一部となった衣類を祝うものです。私たちがここで分かち合う 言葉は、わずかな良いモノに満足することの美と幸福をもたらしてく れます。それらは量より質を体現し、私たちに責任ある市民であるこ と、真に必要なモノだけを消費することを促してくれます。統計や企 業活動で私たちが伝えようとしていることをこのブログで発言してく れたのは、お客様ご自身です。このギアを使いつづけよう!と。 そうして 2013 年、Worn Wear はストーリーだけでなくギアを長く 使用してもらうためのプログラムの名前になりました。これには修理 を行うとともに、お客様ご自身に修理してもらえるようにその方法を 教えること (製品保証は無効になりません!)、現在の所有者が不要に なったパタゴニア製品を買い戻し、他の人が購入できるようにオンラ インで販売するアメリカの交換サービス、そして真に使い果たされた 製品が埋立地行きとならないように回収するリサイクル・プログラム も加わりました。
4.93 ロードトリップ中:昨年のスノーツアーで次の修理 イベントへと出かけるオーストリアのカウナータールの Worn Wearトラック。写真:AARON SCHWARTZ
新品を製造する代わりに Worn Wearを通して交換/ 再販売された各製品が削減 した二酸化炭素の平均の. 排出量(キログラム)
25
6
節約した平均の水量.
Worn Wear のツアーで.
(リットル)
話された言語の種類
40
200
84,000
85,000
100,000
パタゴニア製品の修理の
昨年、Worn Wear の.
昨年、Worn Wear の.
お客様が交換した、ある
昨年、Worn Wear の
ために使える在庫の年数
何人かの修理スタッフが
修理イベントに参加した
いは製品保証プログラム
修理センターで修理した
旅した日数
人数
を通して返却され、再販
衣類の数
売されたパタゴニアの. 衣類とギアの数
101 101
2013 年 以 降、Worn Wear ® はアメリカ、 ヨーロッ
ブランドが自社の製品を再販売するためには、まず何
パ、そしていまは中南米と日本でも移動式修理サービ
人もの所有者が信頼して使用できる長持ちする製品を
スを展開し、昨年だけでも 8 万 4 千の人と出会いなが
作ることからはじめる必要があります。Worn Wear
らパタゴニア製品だけでなく他のブランドのギアも修
は、パタゴニアの製品チームが作り上げる衣類の品質
理してきました。世界中の Worn Wear のツアーでは
と、修理が可能であるということなしでは成り立たな
6 か国の言語が話され、アーティストでありサーファー
いからです。幸運にも私たちには、40 年以 上 経ても
でもあるジェイ・ネルソンにより特別に設 計された数
修理に使用できる在庫があるのです。
台のトラックで、200 日以上も旅をして過ごしたスタッ フも何人かいます。また昨年、Worn Wear のツアー
パタゴニア製 品の中古品の市 場を作ることによって、
に巡りあえなかった人びとのために、パタゴニアの世
何 回も買い替えなければならない品 質の 低い新品で
界中の修理センターは 10 万点以 上のパタゴニア製品
は なく、 今 後 も長く使 えるより手 頃な 価 格 の 製 品を
を修理しました。
お客 様にご購入いただく機会ができます。アメリカの Worn Wear でご購入いただくパタゴニアの衣類は新
昨年アメリカの WornWear.com のローンチによりギ
品と同じ製品保証付きで、修理が必要となれば新品と
アの再利用に革命が起きました。今日では完璧に機能
同様に修理します。
する良い状態のパタゴニアの中古製品を1万点ほどご 覧いただけます。2013 年時点では私たちの再販売プ
Worn Wear は不変の消費者を品質のキュレーターへ
ログラムはいくつかの直営店の片隅に置かれた数点だ
と変身させることをミッションとしています。生涯のス
けだったことを考えると、これは短期間で達成された
トーリーを提供するのに十分長持ちするパタゴニア製
非常に画期的なことでした。昨年パタゴニアのお客様
品を皆様に所有していただくお手伝いをしたいのです。
は 8 万 5 千以上の衣類を交換し、私たちの製品保証プ
そしてそのストーリーをお聞かせいただくことを楽しみ
ログラムを通して返却された品とともに Worn Wear
にしています!
の在庫となりました。交換され、WornWear.com で 再 販 売された1製 品につき、平均 4.93 キログラム相 当の二酸化炭素と 25リットルの水が削減されたことに なります。
ブランドが自社の製品を再販売するためには、 まず何人もの所有者が信頼して使用できる
長持ちする製品を作ることからはじめる必要が あります。Worn Wearは、パタゴニアの
製品チームが作り上げる衣類の品質と、 修理が可能であるということなしでは 成り立たないからです。
修理完了:昨年、アメリカ、ヨーロッパ、日本と中南米で衣類を修理しながら 200 日以上を旅したパタゴニアのWorn Wearツアーのスタッフ 写真:(最左)JULIAN ROHN、 (上)KERN DUCOTE
103
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
押し寄せる変化の波:開発、汚染、観光の増加によって脅かされている韓国のソフトコーラルの 生息地は、 〈グリーン・コリア・ユナイテッド〉 の活動のおかげでより良い保護を受けることが できるかもしれない。写真:GREEN KOREA UNITED
グリーン・コリア・ ユナイテッド 韓国、ソウル
ミッション:〈Green Korea United (グリーン・コリア・ユナイテッド)〉 は人間と自然界のより良い共存を求めて活動し、生命の尊重、自然と調 和する社会秩序、非暴力を奨励します。 活動:実地調査の結果、済州(チェジュ)沿海のソフトコーラル(軟質サン
ゴ)の生息地は、海岸の埋め立て、乏しい開発計画、観光の増加、海洋 汚染によって脅かされていることが確認されました。韓国に生息する多種 のソフトコーラルが絶滅の危機に瀕しており、法的に保護されるべきこと を認識した私たちは、報告書の発表後に記者会見を開きました。そこで 地元の環境保護団体や済州島の住民の協力を得てこれらのサンゴを守る ことを訴え、意見書とともにこの報告書を環境部と文化財庁に送り、保護 を要求しました。またウェブサイトを設立し、実地調査中に撮影した写真 やビデオを用いてソフトコーラルに関する公衆の理解も促しています。こ のウェブサイトは他のキャンペーンにも利用されます。 成果:実地調査から得た事実に基づき、ソフトコーラル生息地の包括的 な保護計画を立てることを、説得力をもって韓国政府に要求することがで
きました。蚊島 (ムンソム) では文化財庁が、遊覧潜水艇のツアーが与える ソフトコーラルへの被害について調査をはじめました。調査結果次第でそ のようなツアーはサンゴに回復期間を与えるために中止されるかもしれま せん。 文 by〈グリーン・コリア・ユナイテッド〉
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
カーボンシンク (炭素吸収源) も含めて 2025年までに私たちがカーボンニュートラルとなる一助として、学生たちに課題を挑む パタゴニア・ケース・コンペティション
「パタゴニアは二酸化炭素排出量の目標を 定めるだけでなく、自社の生産に 上限を設けるべきである」
バード大学チーム(パタゴニア・ケース・コンペティション第 2 位)
生産に上限を設ける? 大胆で革新的なアイデア……これぞ私たちがパタゴニア・ケース・コ ンペティションで求めているものです。環境危機を解決する方法を見 つけるために、大学院生の脳力を結集させて活用しようというこの年 次コンテストは、今年で 3 年目を迎えました。そこでバード大学チー ムから出た「パタゴニアは作る製品の量を制限すべき」という提 案は、 私たちが 2025 年までにカーボンニュートラルを達成するためにじつ に大胆なもので、同時に私たちのお客様が求めていることでもあるよ うでした。結局のところ、私たちはモノを売るビジネスを営んでいる のですから。 バード大学チームは数年前にパタゴニアが出した広告「Don't Buy T his Jacket( このジャケットを買 わないで)」をもじり、 「Don' t
Make This Jacket(このジャケットを作らないで)」キャンペーン を提案。二酸化炭素排出量の目標を定めることに加え、新たな生産 に上限を設けるというものです。より多くの製品を製造して販売する 代わりに、パタゴニアは革新的な貸し出しやモジュール式デザインな ど、現状のビジネス運営法の外にある他のビジネスモデルを通して成 長を狙うべきであると述べました。 バード大学は、今年提案書を寄せた学際的な大学院生による100 以 上のチームのうちの1つで、気候変動の要因である二酸化炭素排出量 の削減、相殺、貯留などを通じて私たちがカーボンニュートラルとな ることを実現するために力を貸してくれました。カリフォルニア大学 バークレー校のハース・スクール・オブ・ビジネスと共同で開催して いるこのコンペティションに参加した他のチームの案には、再生可能 なエネルギー計画、衣料品リサイクルの中心となる拠点づくり、サプ ライチェーンの透明性を向上させるためのブロックチェーン技術の採 用、などがあります。 第 3 位を占めたイェール大学の「カーボンシンクも含めて全部」チーム は、農地の土壌に炭素を貯留するために環境再生型有機農業を利用 するさまざまな方法 (他の複数のチームによっても出されたアイデア)を
(左) カーボンニュートラルなパタゴニアのために、革新的な提案を 共有する学際的な大学院生のチーム。写真:MANALI SIBTHORPE (下) そして、その後彼らはサーフィンに行った。写真:ALEX KREMER
「現状維持を疑問視することこそが、ここバークレーで
私たちが固守する原則です。パタゴニアもまた現状維持に ついて問い、現状維持に挑戦を投げかけ、現状維持を ほぼ間違いなく打ちくだきます。もしかしたら、
そもそも現状維持など眼中にないのかもしれません」 ロバート・ストランド センター・フォー・レスポンシブル・ビジネス事務局長 カリフォルニア大学バークレー校、ハース・スクール・オブ・ビジネス 奨励したうえで、さらなる提案を掲げました。
を組む、というものがありました。同社はポ
ニアのイノベーション部門は複数の勝者チー
それは、パタゴニアが自身に課した炭素税を
リエステルの代替となる生分解性素材を作る
ムと協働で、彼らのアイデアを実現に導くた
徐々に増やしていき、その税 収を再生可能
ために、温 室 効果ガスの 一種であるメタン
めの取り組みを行っています。過去 3 年間に
なエネルギーや炭素吸収 源となる土地管理
を利用します。これはパタゴニアにだけでな
はそうした学生のうち数 人をコンサルタント
のプロジェクト、つまり 「カーボンシンク」に投
く、衣 料 品 業 界全 体に大 変 革をもたらすで
として雇い、環 境に合わない今日の 化 学の
資するというものです。
しょう。排出されるメタンをとらえ、マイク
代わりにバイオベースの耐久性撥水加工を探
ロプラスチック汚染を緩和して、化石燃料の
究した、あるチームの提案を掘り下げていま す。また環 境再生型有 機 農 業を実 践して土
小規模 農業と環境生態系を活気づけるため
消費を削減するというその可能性は、パタゴ
の大きな土地基金への投資は、地球の健康
ニアを差し引きプラスの道へと導くかもしれ
壌が管理されていることを測定するプロトコ
を改善しながら企 業の二酸化炭素排出量を
ません。
ルを開発するために、土壌科学博士課程の
相殺するために新たに出現しはじめた方法 ですが、それは膨大な提案でもあります。バー ジニア大学博士候補生のステファニー・ロウ によると、 「陸 上のカーボンシンクのみを利 用して、パリ協定の世界的な気温限 度内で 炭素の貯 留を行うためには、中国に相当す る大きさの土 地が 環 境再生のために必要と なる」そうです。 今 年、優 勝に輝いたのはそのバージニア大 学で、ビジネス、材料科学、環境科学の分 野からチームを構 成した学生たちが見せた 方 針と投 資と材料 科 学に関するアイデアは、 パタゴニアの 審 査 員をあっと言 わせました。 パタゴニアがカーボンニュートラルとなるこ とを達成するだけでなく、それを超越すると いう彼らの提 案はやはり大 胆なもので、科 学に基づく目標、奇抜な素材の使 用、陸上 カーボンシンク、マイクログリッドによる電
バージニア大学の優勝を告げたパタゴニアの
大学院生と協力しています。そして今年すで
力供 給などを挙げ、二酸化炭素の排出量を
人事部長ディーン・カーターは、同チームの
に私たちは、バージニア大学チームと組んで、
削減するだけでなく、私たちが発生させる以
提案を「じつに感激するもので、すでに市場
生分解性 繊 維を使 用して衣 類を作ることに
上に貯留するというものでした。
化されている解決策で違いをもたらすという
ついての探究をはじめ、バード大学チームの
点で、皆が圧倒された」と説明しました。
アイデアのいくつか(生産に上限を設けるとい
とくに興味をそそる解決策のひとつに、 〈Mango
う案もそのひとつ)について、彼らとも話を
Materials(マンゴー・マテリアルズ)〉とい
ケース・コンペティションは舞台上で終わる
うスタートアップ企 業に投 資してパートナー
ものではありません。その開始以来、パタゴ
しています。
107
環境助成先:パタゴニアが支援する団体
クマノ・イ・ケ・アラ ハワイ州カウアイ島ワイメア
ミッション:〈Kumano I Ke Ala(KIKA) ( クマノ・イ・ケ・アラ)〉は、ハ ワイ伝統の文化教育を通して「アロハ・アイナ(土地への愛)」の基礎を築
き、自発的かつ建 設的な思考の持ち主を育てることで、カウアイ西部の持 続可能性を強化し、その文化的資源を復元することを目指しています。 活動:ワイメア・リバーはカウアイ西部で最も重要な場所のひとつであり、 地元住民は学校や職場や病院へ通ったり、家族で余暇を楽しんだりする
ため、毎日のようにそこを渡ります。しかし長年見過ごされてきたことや 分水によって川の水量が減少した結果、地元地 域の水資 源の不足ととも に、在来魚の生息地の喪失を招きました。川の水位が危険なまでに低く なると、沈泥は山のように堆積しつづけます。そして河口部はほぼ 1年中 閉ざされたままとなり、沈泥に覆われた岩によって、ヒナナ (ハワイアンゴ ビー)が上流へ回帰できなくなっています。 カウアイ西部の経済的安定はかつて、畑を潤すために毎日何百万リットル という水を川から引いていた砂糖産業に依存していました。川の水はそう した用水路にいまでも流れ込み、減少しつづける水位は早急な対応を必 要としています。 成果:地元の学生や住民は、水を使い、守り、管理する方法を未来の世
代のために変える必要があるという理解に達しました。地元地域で行動 を起こすための計画は、 〈KIKA〉とワイメア高校によって立てられました。 私たちはともに、ワイメア・リバーにできた7 つの沈泥の島のうちの1つを 除去する作業日を設定しました。目標は沈泥を手作業でバケツひとすくい ずつ取り除くことで、それは現在もつづけています。機械を使うことは費 用が割に合わず、川に入るために特別な許可を要するからです。この挑戦 は私たちの川の未来のためだけでなく、地域社会をその文化の歴史とふ たたび結びつけるために、ケイキ (子供)からクプナ (年長者)までが一丸と なり、肩を組んでラウリマ (協働)に励むというよい機会となりました。 文 by〈クマノ・イ・ケ・アラ〉
アロハ・アイナ:より持続可能なカウアイ西部のために、ワイメア・リバーで ハワイアンゴビーの回帰を阻む沈泥の島を取り除く作業に勤しむ ボランティアたち。写真:KUMANO I KE ALA
patagonia.com/actionworks(英語サイト。日本語サイト未リリース)でこの団体とつながる
ベアーズ・ イヤーズの力
モニュメントバレーを舞台にしたジョン・フォードの名作西部劇『駅馬 車』で、銀行家のゲートウッドは「この国に必要なのはビジネスマンの 大統領だ」と言いました。ゲートウッドは顧客から盗んだ現金を入れ た手提げ袋をもって足早に町を去ります。この映画が製作されたのは 1939 年で、それから 80 年近くが過ぎたいま、アメリカにはビジネス マンの大統領が存在し、彼も同じように窃盗を働いています。しかも お金以上のものを有権者から盗んでいます。ドナルド・J・トランプと 第一の子分である前内務長官ライアン・ジンキは、ユタ州のグランド・ ステアケース・エスカランテ国定記念物やベアーズ・イヤーズ国定記 念物など、比類のない保護された景観をアメリカ国民から奪っている のです。 これは私たちの目の前でいま現在実際に起きている犯罪です。自然保 護団体は、トランプ大統領が 1906 年の遺跡保存法を使ってこれらの 土地から保護を奪った行為を、前代未聞かつ違法であると糾弾しまし た。また〈ベアーズ・インタートライバル・コーリション〉は「インディ アンの主権に対する攻撃」と呼んでいます。 ほぼ 10 年にわたりホピ族、ナバホ族、ユート・マウンテン・ユート族、 ユート・インディアン族、ズニ族はユタ州南東部にあるレッドロックの
BY テリー・テンペスト・ウィリアムス
キャニオンとメサから成る約 77 万ヘクタールのベアーズ・イヤーズ地 域を国定記念物として保護するよう訴えてきました。その地図はピニョ ンとジュニパーに囲まれたクマの耳のような形の 2 つのメサを尊重し
(左) ゼブラ・スロットへのトレイルヘッドはグランド・ステアケース・エスカランテ国定記念物から除外された。 写真:KENNAN HARVEY ベアーズ・イヤーズを守るためにソルトレイク・シティの街頭に出た抗議者たち。写真:ANDREW BURR
ながら、伝統的な知識を用いて先住民によって描かれました。この神
まビジネスに利用される危機に直面しています。国定記念物の保護が
聖な土地は先住民の祖先の骨が埋葬される場所であり、在来植物か
剥奪された土地での石油とガスのリースがオンラインで競売にかけら
ら薬を見つけて採 集する場所、儀式が執り行われる場所です。地元
れたり、石炭やウランの鉱業権が行使されたりする可能性があり、ま
や全国の環境保護団体と大半のユタ州民、アメリカ国民が協力し、ユ
た適切な抑制や均衡がとれていない産業観光が、傷つきやすい砂漠
タ州南部の遠隔地にあるレッドロックの砂漠に新たな国定記念物を設
の風景を台無しにするかもしれません。
けるこの運動を支援しました。 〈ネイティブ・アメリカン・ライツ・ファンド(アメリカ先住民権基金)〉 その努力は報われ、2016 年 12 月 28 日、バラク・オバマ大統領は約
の専属弁護士ナタリー・ランドレスが指摘するように、トランプ大統
55 万ヘクタールをベアーズ・イヤーズ国定記念物に指定しました。そ
領の発令はこの土地を「侵入、位置情報、選択、売却」、 「鉱物および
れは連邦政 府関連機関と先住民による共同管理協定において西洋科
地熱リースに関するすべての法律下の裁量権」、 「鉱業法のもとにおけ
学が伝統的知識への参加に同意するアメリカ史上初の出来事でした。
る侵入、位置情報、特許」に解放することになります。先住民の主権 国家の主張に対する敬 意の場はいま、化石燃料開発を主張する企業
しかし協定は短命に終わりました。
の公開市場に変わってしまいました。保護という長期的な展望は採掘 という目先の利益に取って代わり、多くの人のための広大な土地は、
4 か月後、 トランプ 大 統 領 は 大 統 領 令を 発し、 内 務 長官ジ ン キに
ごく一部のためだけの公開市場となったのです。
1996 年以来指定された約 4 万ヘクタール以上の面積をもつ国定記念 物すべての見直しを要請したのです。この基準に当てはまる 27の国定
「これはまさにアメリカ国民の所有物である公有地を奪い、最高額入
記念物の 6 つが 「大きすぎる」とみなされ、劇的な縮小を勧告されまし
札者に売却しているのと同じことです」とランドレスは言います。5 つ
た。6 つのうち 2 つは私の故郷であるユタ州にありました。
の先 住民族がトランプ大統領と連邦政 府関連機関に対して訴訟を起 こし、全国と地元の環境保護団体やアウトドア衣料品会社のパタゴニ
保護を解除された約 81万ヘクタールの野生地には10 万か所以上のプ
アも告訴しています。
エブロ以前の考古学的遺 跡が 存在すると推定されますが、それはい
111
2017 年 12 月 4 日、ユタ州議会議事堂の大 広間で、ユタ州の共和党 指 導 陣に囲まれたトランプ大 統 領はベアーズ・イヤーズ 国定記 念 物 の 85 パーセントを削減する新たな声明に署名しました。これにより 非連結の 2 区画だけが残され、国定記念物の名前は他の部族を考慮 することなく、ナバホ語の「シャシュ・ジャア」に変えられました。グ ランド・ステアケース・エスカランテ国定記念物も半分に縮小されま した。 トランプ大統領はこれらの土地をアメリカ国民に返しているのだと言 いましたが、それは嘘です。公有地は私たちが共有する土地であり、 これらの土地はすでにアメリカ国民の管 理のもとにあったものです。 ユタ州の共和党下院議員ジョン・カーティスは、トランプ大統領がベ アーズ・イヤーズから剥奪した地域の考古学的遺跡を保護する法案を 提出しました。法案はこれらの地域での鉱業開発の新規のリースも禁 じています。しかしトランプの行為に反対する先住民族のリーダーた ちは、カーティスの法案の大部分はごまかしで大した保護にはならず、 また連邦議会は紛れもなく国定記念物の設立に関する権限を維持す るため、仮に法案が通過したとしても、それは連邦政府を告訴する先 住民族の権利を無効とし、ベアーズ・イヤーズを擁護するその他の訴 訟の現実的意味を喪失させると言います。 しかしインディアンの主権は擁護されなければならず、1906 年の遺 跡保存法の完全性も維持されなければなりません。国定記念物にこ の種の見直しを行った歴 代大 統領は存在せず、国定記念物をこれほ ど大 規模に縮小した歴 代大統領もいません。しかも同じ州に存在す る 2 つのそれをです。そしてさらに 4 つの国定記念物がいまも縮小の 危機にさらされています。万一、すでに指定されている国定記念物を 大統領の発令により縮小することが裁判所で認められた場合、これは 危険な判例となってしまいます。メイン州のカタディン・ウッズ・アン ド・ウォーターズからカリフォルニアのミュア・ウッズまで、あらゆる 国定記念物が安全ではなくなるのです。 ベアーズ・イヤーズ国定記念物のストーリーは力にまつわるストーリー です。土地がもつ力、連邦政府の力、ユタ州の政治を支配するモルモ ン教会の力、化石燃料産業の力、そしてこの土地に数千年間居住して きた先住民の力。 昨年の春、トランプの大統領令発令後まもなく、オリン・ハッチ上院 議員がベアーズ・イヤーズに関する記者会見を開き、 「現在これらの土 地で当然のように行っていることの大半は、土地が国定記念物や原 生地に指定されるとできなくなるということをインディアンはよく理解 していない」と言いました。記者から例をあげるよう迫られると議員は 「私の言うことを信じなさい」と答えました。それはモルモン教会の家 父長制が露骨に現れた瞬間でした。 私はアメリカ先住民の作家ヴァイン・デロリア・ジュニアが 1974 年に 講演を行うためにユタ大学に来たのを覚えています。テーマは 「文化的 大虐殺」でした。彼はモルモン教会のインディアン・リプレースメント・ プログラムは人種差別だと訴えました。これはモルモン教徒の家庭で よく行われていたことで、ナバホ族またはユート族の子供をモルモン 教徒の家で育て、 「ザ・スピリット」に従って「教育する」というもので
した。プログラムは 「子供たちの救済」 のために末日聖徒イエスキリス ト教会(通称モルモン教会)に奨励され支援されました。 自分の家 族と自分の家で育つよりも、モルモン教 徒の家で育つ方が ためになると考えるモルモン教徒は恥を知るべきだ、というデロリア の言葉は私の良心を切り裂きました。彼は必要なのは慈善ではなく敬 意、モルモン教の文化ではなく自分たち独自の文化なのだということ を語りました。デロリアの訴えは十分に理解できました。彼の憤激は 私の血流に入って直接心に達し、私は迫害者であることの痛みを感じ ました。自分たちは「選ばれた者」 であり、正しいと信じるよう教え込 まれていた私は突然、自分の間違いに気づいたのです。 まもなく私は生まれたときからの宗教から離れました。しかし故郷を 離れることはなく、自分が育った場所や一緒に育った人びとを愛しつ づけるのをやめたわけでもありません。 先日、私はディネ(ナバホ)のスピリチュアル・アドバイザーで、ベアー ズ・イヤーズをめぐる論議の強力なリーダーであるジョナ・イエローマ ンを訪ねました。ジョナは私が大いに敬慕し信頼するようになった友 人です。ビュートとバットレスが石碑のようにそびえる、セージと砂地 が広がる真っ赤なモニュメントバレーに立ちつづけるのは、その象徴 的なライトミトンとレフトミトン。それらは風と水に削られ、形づくら
二者択一の世界には暮らしたくありません。田舎か都会か、道徳的 に適切か不適切か、そして最も恐ろしいのは人を黒、茶、白に差別 する世界です。ユタの野生地をめぐる現在進行中のこの闘いは、私 たち全員を衰えさせています。ベアーズ・イヤーズについて言えば、 この問題に対する賛否にかかわらず、私の愛する人たちも、国定記 念物の賛 成派と反 対 派も、私の家 族も、先 住民 族に協力する地 域 社会の人たちも、皆で一緒に座って食事をするとき、その誰もがこ れらの土地を愛し、尊い野生の場所が広がる未来を望んでいること がわかります。カラスの羽ばたきを祈りとし、セージの甘い香りが故 郷を思わせる未来です。 私たちを切り離すのではなく結びつけるもの、そして共通の言葉を見 つけなければなりません。隣人や家族と真剣に話し合い、互いの主 張に心から耳を傾ける必要があるのです。 ジョナの「さらなる一歩を踏み出す」という呼びかけは、地球そのも のに存在する力、つまり砂漠や森、川、海、そして人間だけでなく すべての種がもつ有機的な知性を認識する呼びかけではないでしょ うか。私たちは自然を生み出すことはできません。できるのは破壊 することだけです。やがて後 悔の念に駆られても、オオカミやヤナ ギ、カットスロート・トラウトや貴重な砂漠の土地など、それまで自 分自身を犠牲にしながら軽々しく排除してきたものを取り戻すことは できないのです。 ベアーズ・イヤーズは力に満ちた場所です。ビュートとメサの浸食地 形を歩き、古代の人びとの手形が押された砂岩の壁が星空に向かっ てそびえるレッドロックの渓谷にいだかれた経験をもつ人は、土地が 産出するものや売却可能な不動産、または商品化できるものにしか 目のない人によってこの場所が 破壊される様子を傍観してはいられ ないでしょう。 すでに危機にさらされているユタのレッドロック砂漠は、それでも大 れた地質時代の自然の顕現です。鋸歯状の地平線に目を走らせると、 ときを重ねたこの広大な砂漠を前に、自分がどれほど取るに足らな い存在であるかを感じずにはいられません。その無関係な美しさの パノラマの景観に動揺して謙虚になり、私は土地が放つ不可知のス ピリチュアル・パワーの縁にいる自分に気づきます。
統領の発令の有無にかかわらず 存在しつづけるでしょう。でもそれ がなければ私たちの存続は難しいかもしれません。 『EROSION: Essays of Undoing』 (Farrar, Straus & Girou より 2019 年 10 月発行予定)から抜粋。オリジナル・バージョンは 『Yale Environment 360』に初出。
「ベアーズ・イヤーズは私たちにとって神聖な場所」とジョナは繰り返 しました。 「それがいま危 機にさらされている。私 たちはさらなる 一歩を踏み出さねばならない」 私はジョナが言う 「さらなる一歩を踏み出す」ことの意味を、そしてそ れがユタと呼ばれる場所に根差す私たちを、アメリカに暮らす私たち を、いかにして異なる軌道に乗せることになるのかについて考えつづ けています。ジョナは一貫して言います。 「私たちは先住民のためだ けにベアーズ・イヤーズを守っているのではない。すべての人のため に守っているのだ」 私は政治的極左、過激な環境保護主義者、エコテロリスト、活動家 だと言われるのにうんざりしています。トランプのツイートや、化石 燃料は時代遅れになっているにもかかわらず、北極圏国立野生生物 保護区を石油掘削に解放するといった、内務省が展開する侵略行為 にたやすく煽られる自分の怒りにうんざりしています。
(左) ベアーズ・イヤーズを保護する闘いでソルトレイク・シティの州議会議事 堂の階段に結集するユタ州民。写真:ANDREW BURR (上) 著者テリー・テンペスト・ウィリアムス。写真:DEBRA ANDERSON
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チリの再野生化 「チーム全体で協力し、25 年にわたる 取り組みのおもな成果であるこれら 2つの国立公園を完成させた夫ダグと、 いまも私たちの指針でありつづける 彼のビジョンを誇りに思います」 ー クリス・トンプキンス、〈トンプキンス・コンサベーション〉
チリのパタゴニア国立公園のクリス・トンプキンス。写真:JIMMY CHIN
数字で見る 2 0 1 8 会計年度のパタゴニアの 環 境 的 ・ 社 会 的 取 り 組 み の い く つ か を 数 字 化 2 0 1 7 年 5月 1日 〜 2018年 4月 30日
1億400万
103
1,531,886
85,627
パタゴニアが 1985 年に寄 付
今 年、完了した環 境インター
今年、ドライブ・レス・プログ
今年、お客 様が交換したパタ
プ ロ グ ラムを 開 始 して以 来、
ンシップ(個人および団体)
ラムで削減した、運転手だけで
ゴニアの衣類とギアの数
環境的および社会的取り組み を支 援するために寄 付してき た 金 額( ドル。 現 金 および そ の他の支援を含む)
700万 寄 付 プ ログラムの 開 始 以 来、 環境的問題に取り組む最前線 と先住民族および社会的に疎 外されている地 域に寄 付して きた金額(ドル)
1,082 今年、助成金を受け取った環境 保護団体数
49,200 パタゴニアのフェアトレ ード USA のプログラムへの参加に より、フェアトレードの賞与を 受け取った、および/または、 より良い恩恵を受けた、衣類製 造に携わる労働者数
今 年、製品寄 付プログラムを 通して寄 付された新品/中古 品の原価総額(ドル)
126,000 今年、パタゴニアが全額マッチ するチャリティー・マッチ・プ ログラムを通して社 員 が 非営 利団体に寄付した金額(ドル)
547 今年、環境インターンシップ・ プログラムに参 加した社 員の 総数
トル)
2億
今年、環境インターンシップ・ プログラムにおけるボランティ ア活動の時間
2,589 1994 年に開始以 来、パタゴ ニアの環 境インターンシップ・ プログラムを通してボランティ
が 設 立 し た〈1 % for the Planet®〉 がこれまでに非 営 利環境保護団体に寄付した合 計金額(ドル)
100 リサイクルのためにパタゴニア が 引き取る製 品の 割 合( パー セント)
アをした社員の数
3,083
179,000+
今年、パタゴニアがリサイクル
今年、パタゴニア・アクション・ ワークスを通して助 成 先 のた めに実施されたアクション数
10,000+ パタゴニア・アクション・ワー クスを通して技 能を生 かした ボランティア活動に捧げられた 時間
82 今 年、 ヨーロッパと日本で草 の根 活動家のためのツール会 議で訓練を受けた活動家の数
今年、Worn Wear の修理セ ンターで修理した衣類の数
2002 年 に パ タ ゴ ニ ア の 創 業 者 イヴォン・シュイナ ード
17,316
100,288
した衣類の重量(キログラム)
4.93
72 無料または手数料ほどの金額 で衣類を修 理する、世界中の パタゴニア直 営店に設けられ た修理センターの数
94 アメリカからヨーロッパに製品 を輸 送する物 流システムを変 えることで 達 成した二酸 化 炭 素排出削減率(パーセント)
12 ティンシェッド・ベンチャーズ 投資基金の設 立以来パタゴニ アが 支 援してきた、環 境再生
新品を製造する代わりに Worn Wear ® を 通して 交 換 / 再 販
型有機農業、再生可能エネル
売された各製品が削減した二
ベンチャー企業の数
ギー、水効率などに取り組む
酸化炭素排出量 (キログラム)。 25 リットルの水も節約
78万
84,235
2014 年 9 月にティンシェッド・
今年、Worn Wear の修理イ
して以 来、 スケートボードの
ベントに参加した人数
デッキ、サングラス、ディスク
ベンチャーズが ブレオに投 資
やその他の製品に再利用され た、廃棄された漁網の面積(平 方メートル)
2018 環境的・社会的イニシアチブ
438,000
自動車通勤する距離(キロメー
私たちは、 故郷である 地球を 救うために ビジネスを営む。