私の
めの本 す す お
撮影協力:紀伊國屋書店シアトル店
心を潤してくれる本。シアトル在住の日本人の方々に、心に残る “おすすめの本” を 紹介してもらいました。 山本浩一郎さん
シアトルシンフォニー 首席トロンボーン奏者
『Mind Body Prescription Healing the Body Healing the Pain』
僕自身が留学中で、経済的に裕福で んが初めて随筆家として ない状態で海外に出たので、励みに 連載した2年間にわたる なりました。当時の東欧はインター エッセーをまとめたもの ネットどころか電話もなかなかつな です。全編に家族愛が描 がらないところでしたからね。大変 かれていて、 とても心が優 だけど、それでもやっぱり勉強しな しくなる本です。向田さ んというのはとても優し John E. Sarno M.D.(著) きゃいけない理由がその大変さの中 い方だったそうですね。 そ ニューヨークのオペラハウスで働いていた にあるみたいな。読んでいて共通す れがよく現れている。人 頃、 ひどいときは一日9時間座りっぱなしとい る部分がたくさんあって、すごく心 間って、 つらい時にかえっ う状態で、 しかも貧乏学生から急に給料がもら に響いてきました。最も、留学してい て自分を追いつめたくな えるようになって食べたいものを好きなだけ る時に読むとすごく落ち込む本です (笑) 。 る時ってあるじゃないで 食べたりしていたら腰痛になってしまって。 い が すか。 そういう自己憐憫に わゆる職業病なんですけどね。 その時に同業者 陥っている時に、自分で自分を見つめ直すた からすすめられて読んだ本がこれです。10年 『父の詫び状』 めに読むとといい本です。 「 甘えるな、これを くらい前に書かれた本で、 ニューヨークタイム 向田邦子(著) と。 これも留学中に読んだ本です。表題のもの 読め」 スのベストセラーに挙がっていました。 「スト レスというのはみんな持っているんだよ」 とい を含んだエッセー 笹川茂樹さん う話から入っていって、 ちょっと読んでいるだ 集 で、向 田 邦 子 さ 紀伊國屋書店シアトル店 店長 けで、腰の痛みが和らいでくるんで す。 すごく読みやすい本で、 腰が痛く なってきたらすぐ読むし、旅行に行 『角川春樹句会手帖』 佐藤和歌子(著) く時にはいつも持って行きます。 五・七・五のリズムは、かえって海外の方が体に浸み込みやすいと感 じるのは私だけでしょうか。 ヒットメーカーとして、またコカイン疑惑 『留学』 遠藤周作(著) などで何かと世間を騒がせてきた出版界の寵児・角川春樹氏が出所後 に人知れず開いているという句会のルポルタージュです。内容はやや 東ヨーロッパに留学をしていた頃 18禁ですが、言葉に対する美学はいつでも真剣勝負。彼の添削の前に、 に遠藤周作の本を読みあさっていま 北方謙三、茂木健一郎、島田雅彦ら著名人がひれ伏します。 「俳句メモ」 した。40冊くらい読んだかな。 『沈 という実践俳句講座も読ませます。 「ビール」=夏、 「日記買う」=冬、 「水 黙』 『 、海と毒薬』 はすごくよかったで 温む(ぬくむ)」=春、の季語だそうです。 すね。それから 『怪奇小説集』も面白 かったですよ。中でもこの 『留学』は (10 ページに続く)