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難関校対策 の カリスマ教師が教える
わが子を確実に合格へ導くために 親がなすべき4つ のステップ
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山田 正
こどもの中学受験 は 失敗する! ω
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山田 正
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α]
まえがき
﹁これだ!﹂ と思 った塾 に入れた。友 達と 同じ教材 で同じくら い長 い時間勉強 し て いる。
と ころが、 ﹁ あれ?﹂。どうも こども の様子が ヘン。元気 がなくな ってき た し、どう やら宿 題もたま って いくようだ。
﹁ 勉強時間が足りな いのかしら﹂ ﹁ 基本が出来 て いな いのかしら﹂とあれ これ考え る。塾 の
先生 には ﹁ 親は教え るな﹂と言われ て いるけど、どう し ても手が出ち ゃう。 ﹁ え っ︱ こんな
ことも できな いの?﹂ ﹁ 困 った。 こ の先どう しよう﹂と不安 が募 る。中学受験を ひかえ たお 子さんをも つ親 には、 こんな方が多 いのではな いでし ようか。
同じだけ の努力 、同じだ け の費用 、同じだけ の時 間を費 やし て いる のにうまく いかな い と、疑心暗鬼 にな って、 つい塾 の先生 や テキ ストを疑 ってしまうも のです。 そし て、塾 や 教材を いろ いろと変え る放浪 の旅が始まる のです。
それ でも ダ メだと気付 いたとき、 ﹁ 家庭 でなんとかしなき ゃ﹂となります。そうす ると中
学受 験がな んとなく分 か ってきます。と ころが、家庭 で受験 に力を入れれば 入れ るほど家 の中がギ クシ ャクし、 こども や夫と の会話がトゲトゲしくな ったり します。 こう し て、 い つしか楽 し いはず の夢が遠 のいて いきます。
それ でも 、な んとか夢を つなぎと め ておき た い。だ からも っと力 が入 る。す ると、家庭
まえがき
3
内はさら にギクシ ャク。そんな悪循環が多 く の家庭 で見られます。
受験を決意 したら、ど こでどう つまずく のか、なぜ つまずく のか、ど のよう にサポ ート
す れば よ いのか に ついて予備知識を持 つべき です。 そ のほう が断然有利 になります。 そ の
ためには、受験 に成功 した人から詳しく話を聞 いて、 でき ることから マネす ること です。
と ころが残念 ながら、成功 した人はあまリ コツを教え たがりま せん。仮 に教え てく れた
と し ても 、成功 した人は型どおり のこと しか言わな いので、それを マネ し ても し っくり こ な いことが多 いも のです。
そ こで、中学 入試と はどう いうも のか、来 る べき危機 にどう対処 したらよ いかを これか
ら 一緒 に考え て いこう と 思 います。受 験 生を抱え るご家庭 は 日 々問 題 に直 面 し て います 。
どう したら勉強 に集 中 し てく れ る のか﹂ ﹁ ど のよう な教材をどう や ってやれば いいのか﹂ ﹁
﹁このまま塾を続ける べきかどう か﹂ ﹁ 反抗期 に入 ってこども に手出しが できな い﹂ ﹁ 勉強 の
ペースが つかめな い﹂ ﹁ 志望校が決まらな い﹂などなど、多く の問題と向き合 って います。
こう した様 々な問題 に直面 したとき に、適切 に対処 できなか ったり、中途半端な対処を
したら、後に な って ﹁ あ れが悪 か ったかな﹂ ﹁ これが悪か ったかな﹂と後悔 します。そう な
らな いために、中学受験 に関す る危機管 理力 の つけ方を 一緒 に考え て いきまし よう。
難 関校 対策 のカ リ ス マ教師 が教 え る
中学受験 は ﹁ 親﹂で決まる
べ き 4 つの ス テ ツプ ーー
もくじ
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“
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J S`ep
こど も の危 機 レ ベ ル を 知 る︱︲ 親に求められる帥 謄瓢履 管 理力とは
◆由山子受験生が自分 のペー スを つかむま での4段階をチ ェックする
2 ① 本 書 の読 み方 ︱1 1 ◆順序立てて考えること 3 1 4 ◆前提条件を整理してから行動すること 1 5 ◆問題は小分けにして考えること 1
② まず は自 分 の危 機 管 理 レ ベ ルを 知 ろ う ︱ 17 1 7 ◆成績が伸び悩んだら成績に運動する対策をとる 1 ◆成績に直結する対策は親が見極める 8 1 0 ◆段階的危機管理力 ͡ 4つの区別︶ 2 1 ◆①ただ家と塾とを行き来するだけのこどもたち ︵ ステ ップ ー︶ 2 2 ◆②結果だけをも ってこようとするこどもたち ︵ ステップ 2︶ 2 3 ◆③自分のベースが つかめずあたふたするこどもたち ︵ ステップ3︶ 2 3 ◆④自己完結するこどもたち ͡ ステップ 4︶ 2
わら0任鶏丼一 ヨ到キ 画す 了︱こどもの重 い腰を上 げさせる秘技
なるほど ︵ ◆﹁ 動機︶ ﹂から ﹁ 自分からや つてみよう ︵ 行動変容︶ ﹂ヘ
6 ① ただ家と塾とを行き来するだけ のこどもたち ︱12 7 ②なぜ強制 しようとする のか ︱12
0 ③強制 の出番はな い? 1 3 1 ④ただ塾と家を行き来す るこどもに対する基本的な スタンス ー 3
3 ⑤﹁ やる気を引き出す秘技﹂を有効活用す るために必要な こと ︱13
7 ⑥ こどものやる気を引き出す秘技① 大人 の体験談 は甘 い果実か劇薬か ︱13
o ⑦ こどものやる気を引き出す秘技② 勉強 に興味を持たせる暗示法 ︱14
5 ③ こどものやる気を引き出す秘技③ 勉強 に対する抵抗感を和らげ る ︱14
⑨ こどものやる気を引き出す秘技④ こども の反抗期 の対処法 ︱18 4 7 ◆トビックス① あんた、勉強す る気あるの? 5
﹂から ﹁ やれば できる ︵ 小さな成功体験︶ ﹂ヘ ◆﹁ 自分からや ってみよう ︵ 行動変容︶
2 鮨 成 功 体 験 を 味 わ せ る ︲︱ 露 沐り伴除 から出 山させる数暖 . 詢 黎 ¨ ①結果だけをも ってこようとするこどもたち ︱10 6
2 ②大きな成功よりまず は小さな成功体験 1 6 3 ③小さな成功体験を積ませるため の基本的な アプ ローチ ー 6
もくじ
7
S`epQ′
2
④小さな成功体験を味わせる秘技① こどもを上手 に コント ロールする手法 ︱17 6 3 ⑤小さな成功体験を味わせる秘技② 褒めて﹁ 伸びる﹂メカニズム、 褒めて﹁ 伸ばす﹂メカニズムーー7
⑥小さな成功体験を味わせる秘技③ こどもを褒 める基準を持 つ︱16 7
2 ⑦小さな成功体験を味わせる秘技④ 先生と の信頼関係 の作り方 ︱18
③小さな成功体験を味わせる秘技⑤ 自由 に質問 できる場作 り ︱ “
2 ⑨小さな成功体験を味わせる秘技⑥ 目的を持 って ﹁ 書く﹂︱19 6 ⑩小さな成功体験を味わせる秘技⑦ ﹁ 期待﹂はしても ﹁ 放置﹂はしな い︱19 9 ◆トビックス② お小遣 いのあげ方 ︱19
葛 藤 を 克 服 さ せ る ︱ 自 分 で組 み立 てさせる捜暖
◆﹁ やれば できる ︵ 小さな成功体験︶ ﹂から ﹁ もう大丈夫 ︵ 自信︶ ﹂ヘ
2 ①自分 のベースが つかめず あたふたす るこどもたち ︱︱0 ︲ ②自分 のペースが つかめずあたふたす るこどもたちに対す る基本的な スタンス ーー胡
8 ③物事を 一から自分で組み立てさせる秘技① 家庭学習 の ﹁ 型﹂をもたせる ︱︱︲ 0 o ④物事を 一から自分で組み立てさせる秘技② 家庭学習 の計画 ︵ コ彗 ︶︱ 2 ︲ ⑤物事を 一から自分で組み立てさせる秘技③ 家庭学習 の実行 ︵ ∪・︶︱︱ツ
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′ 月日
s`ep(■
6 2 ⑥物事を 一から自分で組み立てさせる秘技④ 家庭学習 の確認 ︵ 曽Φ︶︱︱︲ ⑦物事を 一から自分で組み立てさせる秘技⑤ 日々積みあがる課題を要領よくこなす ︱ 由
7 ③物事を 一から自分で組み立てさせる秘技⑥ 小学生 の算数 の考え方 ︱︱3 ︲
⑨物事を 一から自分で組み立てさせる秘技⑦ 理科 の考え方 ︱︱4 ︲ 3 5 ⑩物事を 一から自分で組み立てさせる秘技③ 疑問から正解を導 かせる ︱︱︲
⑪物事を 一から自分で組み立てさせる秘技⑨ こど も の混 乱を助長 しな い ︱ 畑 8 ◆トビックス③ 中学受 験 に塾 は必要 か ︲ 6
活力を吹き込む︱一 碍 きを与える拉 畷 ◆﹁ もう大丈夫 ︵ 自信︶ ﹂から ﹁ なるほど ︵ 動機︶ ﹂ヘ
①自己完結するこどもたち ︱︱2 7 ︲ ②自己完結するこどもたちに対する基本的なスタンスーー憫 ③こどもに気付きを与える秘技① ミスの原因を書き出させる ︱︱6 7 ︲ 0 ④こどもに気付きを与える秘技② 変わらない自分に対する脅威を痛いほど思い知らせる︱︱︲ 8
⑤こどもに気付きを与える秘技③ 親自身が正確に伝える技術を身につける ︱ 爾 7 8 ⑥こどもに気付きを与える秘技④ コミ ュニケーシ ョンの精度を上げる ︱ ︲
もくじ
9
⑦ こどもに気付きを与える秘技⑤ 偏差値 の読 み方 ︱︱爛 3 ③ こどもに気付きを与える秘技⑥ こどもを コント ロールしようとしな い 1 2 0
⑨ こどもに気付きを与える秘技⑦ 人 のいいと ころに目を向けさせる ︱︱”
2 ⑩ こどもに気付きを与える秘技③ こども の承認欲求 の行方を見守 る ︱12 1
6 ◆トビックス④ こどもが受験をやめた いと言 い出した 2 1 9 ◆トビックス⑤ 競争心を煽ることの功罪 2 1
原 一孝
も りも り
藤瀬 和敏
▼本文 図版 作 成
▼カバ ー装 偵 ▼カバ ー &章 扉イ ラ スト
10
躙γ吻切
こどもの危機レベルを知る 丁親に求められる段階別危機管理力とは ◆中学受験生が自分のペースをつかむまでの4段 階をチェックする お 父様 、 お 母様
中学 受験生 をお持 ち の
あ り ま せん
心 配 の必 要 は
ク ″
こう いう 状 態
お 子さ んが
こん に ち は 山 田 です
`=
くこン‐ ″
│││
ゞ
︰ ζ ヽに じ ● ら ヽ
め
は じ め ま し ょう
レ ベ ル チ ェック か ら
お 子さ ん の
お 子さ ん は 今 ど の よう な 状 況 です か
僕 が んば る よ
日
ゴ二
本書 の読み方
これから中学受験を成功 に導くため のたく さん の ﹁ 秘技﹂ を紹介 し ていきます。しかし、
本書 で示す方法を試し てみても ﹁ や っぱリダ メだ った﹂となる可能性もな いとは言えません。
そ のようなとき、﹁ やみくも にや っていなか ったか﹂ ﹁ 考え方がし っかりしていたか﹂を検証し てもら いた いのです。
何か行動を起 こすとき、後 で手 にすることができ る成果は次 の式 で表せます。 ﹁ 成 果﹂ = ﹁ 能力﹂ × ﹁ 努力 ﹂ × ﹁ 考 え方 ﹂
そう です。かけ算 です。すぐれた ﹁ 能力﹂をも つ人が、人 一倍 ﹁ 努力﹂すれば、も のすご
い﹁ 成果﹂を生み出す可能性は高 いと いえます。しかし、 ﹁ 人 の足を引 っ張 ってやろう﹂とか
﹁ 自分だけ目立とう﹂と思 っていれば、 ﹁ 考え方﹂ に問題があるので、掛け算 の ﹁ 成果﹂はガク ンと落ち、﹁マイナス﹂ になることさえあります。
勉強も同じ です。本来頭が良く、人 一倍努力家 のこどもは潜在的 にも のすごく伸びる可能 性を秘めています。しかし、そ のような優秀なこども であ っても ﹁ 自分 には できな い﹂と思 っ
ていたら、高 い成果は望めず、平均点 にも届かな いかもしれません。反対に、能力 や努力がほ
12
どほどでも、 ﹁ 考え方﹂をユ 甲同き に保 つことができれば、高 い成果が期待できます。
このことを ﹁ ウサギとカ メ﹂ の話 で考え てみまし ょう。実は、ウサギとカ メの競争 は、 ス
タート地点 です でに勝負が ついていたと考え ることができます。なぜかと いうと、ヵメは スタ
ートする前から ﹁マイ ペー スでいこう﹂と考えていたから です。この地 に足が ついた ﹁ 考え方﹂ が勝負を決した のです。
ですから、本書 で紹介す る 一つの方法を試し ても ダ メだ つたとき、 いたずら に落ち込 んだ り、それま での失敗をむやみに繰り返す のではなく、﹁ もう 一度徹底してやる﹂、ある いは ﹁ 別
の考え方﹂を探すよう にし ていただきた いのです。要するに、本書 で紹介する方法をみなさん なりにアレンジしていただきた い、と いう こと です。
前問答は次 の3 つからなります。
どん まず、 ﹁ 順序立 てて考え る﹂とは、 ﹁ 勉強 で つまずく﹂︱ ﹁ 何が原因かを考え る﹂← ﹁
信頼感を与える力﹂が必要 ですが、そ の力を つけるためには ﹁ 事前問答﹂が必要な のです。事
の混乱した話を整理する力﹂ ﹁ 物事を こども にも分かり やすく説明する力﹂ ﹁ こども に安心感と
適な方法を得 る コツは、﹁ 事前問答をし てから結論を導く﹂と いう こと です。親 には、﹁ こども
そ のため には、次 のことを知 ってお いていただきた いのです。それは、自分 にと っての最
ジ︶ ① 順序立 てて考 え る こと ︵
こどもの危機 レベル を知 る 一
親 に求め られる段階別危機管理力 とは
step o
13
な処方が いいかを検討する﹂と いうプ ロセス全体をみると いう こと です。そ の際 には、何が重 要 で、何が重要 でな いかを意識することが大切です。
例えば成績が落ち込 んだとき に、そ のことだけを嘆く のは生産的 ではありません。成績が
落ち込むなんてことは珍しくありませんが、原因は時 によ って様 々です。それな のに、 いつも 同じよう に落ち込んでは いられません。
ですから、 やみくも に叱 ったり落ち込 んだりす る のではなく、 ﹁ 他 に原因はな いか﹂ ﹁一番
の原因は何か﹂を探るべき です。そうすれば、こども に対して共感を持 って接することができ
るよう になります。 ﹁ 褒め﹂ て自信を つけさせ て、 ﹁ 苦しみ﹂を ﹁ 楽し み﹂ に変え ていきましよ う。 ② 前提条件を 整理し てから行動す る こと ︵ ゼ ン︶
﹁ 前提条件を整理して行動す る﹂とは、こどもが現在ど のような状況 にあ るかを知 ったヽ ?え
で行動すると いう こと です。例えば大手塾など では自学自習 。自己責任が前提条件とな ってい
るので、自分 のこどもをそう した塾 に入れるには、こども に自己管理能力があ るかどうかと い ヽ ユ馴提条件を知らなく てはなりません。
自己管 理能力 が不十分な状態 で大手塾 に入れたら、 こども が苦 し い思 いをす るだけ です。
そのような場合 には、塾 に入れる前に、毎 日5ページず つ漢字練習帖を自分から進んででき る
14
事 前 1問 │1答 の ス ス メ
答 (ド ウ )
蘭 (モ ン )
事 (ジ )
前│く ゼシ) 考えること
よう にし つけ ておくなど の事前準備をしておく必要がありま す。 このよう に、何かを行動 に移すとき には、前提条件を考 え ておく ことがと ても重要 です。
また、す でにお兄さんやお姉さんで受験を経験したかどう か、あ る いは父母 のネ ット ワークの有無 によ つて、中学受験
に対する認識 に格差があります。特 に中学受験 では経験がも
のを いいます。中学受験 の経験 のな いご家庭が、経験 のあ る
ご家庭を同じことを真似しようとし てもうまく いくとは限り ません。
こうなるは 日 平も悪 いのは、これら の前提条件を顧みずに ﹁
あ の塾 に入れ ずだ﹂と いう思 い込 みで行動す ること です。 ﹁
れば、 こどもはこうなるはずだ﹂と いう思 い込 みで行動し て
剋促条件がそ の塾 に マッチし て い も、 こどもが置かれ て いるユ なければ、思 ったような成果は期待 できません。
モン︶ ③ 問題 は小分け にして考 え る こと ︵
﹁ 問題は小分けにし て考え る﹂とは、 いろ いろな問題をひと
こどもの危機 レベルを知る一 親に求められる段階別危機管理力とは
step o
15
(Do) えること
え 答 けにして考
問題は小分
勒
前提条件を 整理 してか ら行動する こと 順序立てて
③ ② ①
くくりにし て、 いつぺんに解決しようとせず、問題を小さく分け て取り組むと いう こと です。 例えば、中学受験生をも つご家庭 では内紛が起 こることがあります。お父さんは働き盛り で忙し いし、お母さんだ ってお父さんが仕事で手を抜けるほど甘くな いことを知 っています。
こうした状況 では、お父さん の事情、お母さんの事情、お子さんの事情、塾 の事情などが い つ しょくたにな って、家庭内がぎくし ゃくしてきます。
そんなとき は、問題を小分け にし て、対応 し ていく こと です。抱え ている問題が いくら大 きく て困難なも のであ っても、小分け にしてしまえば大したことはありません。大きな困難 の 前 で立ちすくんで 一歩も前 に出れな いより、小分け にした小さな問題を解決して少しでも進歩
する方がはるかに生産的 です。 小分け の視点 で 一番重要な視点は、結果とプ ロセ スを、事実と感情とを区別し て把握す る こと です。中学受験も受験 である以上結果が求められるわけですが、そこで求められる結果は
こども の努力 に応じた柔軟なも のでなければなりません。 こども の将来を決めるには早すぎま すし、むしろ勉強 のプ ロセスを楽しむ こと の方がこども の能力を伸ばすからです。 また、人は感情 の動物 ですから、 一見冷静 に物事に対処し ているよう に見え ても、それは 感情 の裏づけなしにはあり得ません。 こどもも大人と同じく生身 の人間であると いう ことを常 に意識しておくことが大切 です。
16
9 ①成績 が伸び悩 んだら成績 に運動す る対策をと る
受験 一般 に ついて言え ること ですが、自分 のペースを つかむま でが 一番辛 いも のです。ま
これでいいんだ!﹂と、自分が納得 でき る勉強法 にめぐり合え た受験勉強を始めた当初から ﹁
アイ ツができ てなぜオレにできな いんだ﹂と精神的 にも追 い詰めら ることは非常 に稀 です。 ﹁ れることもしばしば です。
心・ 心 ・技 ・体﹂が備わ って いること です。 ﹁ 自分 のペースを つかむと いう のは、 いわば ﹁ 技﹂、継続して 技 ・体﹂とは、自分を勉強 へと動機付ける ﹁心﹂、要領よく学習を進めていく ﹁ 体﹂ です。 勉強を続けることができ る ﹁
心 。技 ・体﹂ は 一朝 一夕 に身 に つけることは できませんし、人から の借り物 であ っ この ﹁
ても いけません。自分がよかれと思 っていたやり方を破壊して、絶えず精神的脱皮を繰り返す
中 で徐 々に身 に つけ ていくも のです。そして、自分が納得した勉強法と成績 の向上がガチ ッと 連動したとき、さらに高 い位置を目指す ことができるのです。
自分が ﹁ こ の勉強方法 で大丈夫﹂ と思 って いても、成績が上がらなければダ メ。反対 に、
親 に求められる段階別危機管理力 とは
こどもの危機 レベルを知 る 一
step o
17
まずは自分の危機管理レベルを知ろう
イン
一度成績が上が ったとしても、それが長続きしなければ今 の勉強法を改善しなければなりませ ん。 このいたちご っこから抜け出すために悩み、苦しむ のです。
しかし、 このいたちご っこから抜け出す のは意外 に難しくありません。﹁ 成績 に連動す る対 策﹂を強化すれば いいだけ です。
﹁ 成績 に連動す る対策﹂とは、それをすれば成績が上がり、それをしなければ成績が下がる
と いう対策を いいます。 つまり、 ﹁ 毎日○○をしたら成績が上がり、か つ、○○をしなくな っ たら成績が下がる﹂、と いうような対策 です。○○ の部分には漢字 や計算など の基礎普 驚自から、
早起きなど の生活習慣ま でさまざまなも のが入りますが、その内容 やタイミングは個人によ つ て異なります。
6年生 にな ったら習 い事を やめ て受験 に専念す る、と いう人が います。それはそれで選択
肢 の 一つです。 ですがそれは、習 い事を やめれば成績が向上する、と いう ことま で保証するも
のではありません。習 い事 に代え て塾 に通わせてみたも のの、やれば やるだけ成績が下がる、
と いう事態 になることだ ってあります。そうな ったら大変 です。本質的 に重要な ことは、成績 に直結する対策を見 つけ て、それに専念すること です。 ② 成績 に直結す る対策 は親 が見極 める
﹁ 毎日○○をしたら成績が上がり、か つ、○○をしなくな ったら成績が下がる﹂と いうよう
18
な成績 に直結する対策は、高校生にもなれば自分で見 つけることができ るよう になります。勉
強 に向け て自分を強く動機付けることができ るから、放 ってお いてもあれこれ工夫していくう ち に、成績 に直結する対策 にめぐり合う ことができます。
これに対し て小学生は、高校生 に比 べて人 に教えられ て成長す る部分がと て つもなく大き
いんです。 ノート の取り方から スランプから の脱出ま で、何 でもかんでも人に教えられな いと
できな い。だから、中学入試 では親 の加担度はイヤでも大きくならざ るを得ません。 ですが、人 に教わること に終始し て いる小学生と、勉強が好き で工夫す る小学生とは伸長
度合 いに格段 の違 いがあります。人から教えられることによ って伸びる成績は実は大したこと
はありません。親 の頑張り の割にはこども の成績が伸びな いことがあるのはこのためです。 こ
れに対して、好き で工夫して勉強す るこども の方が圧倒的に伸びます。
ですから、小学生には教え込まな いとならな いことは多 いも のの、それは勉強が好き で工
楽し い﹂ 勉強楽し い?﹂ って聞 いてすぐ に ﹁ 夫するよう にさせることが目的 です。 こども に ﹁
﹁ やりが いがあ る﹂ って返事がくるよう であれば、中学受験 で思うような成果を得ることがで きます。
そ のためには、親は こども の成長 に応 じ て、成績 に連動す るような対策を見極めることが 必要な のです。
親 に求められる段階別危機管理力 とは
こどもの危機 レベルを知る 一
Step O
19
C段階的危機管 理カ
中学受験 にお いても自分 のペースを つかむま でが 一番苦 し いのですが、それは ﹁ 期限ま で に膨大な課題を こなさなければならな いから﹂ であり、しかもそれを ﹁ 自分で コント ロールす
る余地が少な いから﹂ です。 つまり、こなさなければならな い課題に振り回され ている間が 一 番苦し いのです。 苦し いのは親も 一緒 ですから、 ついこども に辛くあた ってしまゝ ?ものです。しかし、特 に 中学受験 の場合、こどもたちは言われるまま になじみ のな い課題を与え られるも のですから、
一般 に飲み込みが悪く、 一度習 ったこと でもすぐ忘れがち です。 これは仕方 のな いこと です。 そこで、 こども の具体的な状況 に応じ て、成績 に連動す るよう な対策を練 る必要がありま
す。理想 に目が奪われたり、思 い込みによ つて現状を見 て見ぬふりをす ると、とんでもな いし っぺ返しを食らう ことがありますから、あくま で現状 に応じた対策 である必要があります。
中学受験生が自分 のペースを つかむま での段階は、次 の4 つに区別することができます。 ① ただ家 と塾 とを行 き来 す るだ け の こども たち ︵ ステ ップ ー︶ ② 結 果 だ けをも って こよう とす る こど も たち ︵ ステ ップ 2︶
③自 分 の ペー スが つかめず あた ふたす る こども たち ︵ ステ ップ 3︶ ④ 自 己完結 す る こど も たち ︵ ステ ップ 4︶ これらをグラフに表わすと次 のよう になります。
20
│ │■ ・ 臓め
││●
,あ たふた ■│● た●│
行き来するだけ のこどもたち
自分のベースが . ただ家と塾とを
効一 率
''彩
―蒻 辣 蝙
課題 の分量と の戦 い﹂、 ヨ コ軸 タ テ軸 は ﹁
は ﹁ 効率 と の戦 い﹂ を表 し て いま す。 こ の
﹁ 分量﹂ と ﹁ 効率﹂を軸 に悪戦苦 闘す るこど
もを分類すると、上 のグラフのよう にステ ッ
プ ーから ステ ップ 4に区別す ることができ る
一般 に ﹁ステ ップ ー﹂ ← のです 。 そし て、
﹁ステ ップ 2﹂ ← ﹁ステ ップ 3﹂ ← ﹁ステ ッ
プ 4﹂ のプ ロセ スを経 て成長し て いきます。
こ のよう な ステ ップを念 頭 におく こと によ
り、次 の 一手を考えながら、現在 の取り組 み
に集中す ることができます。
① ただ家 と塾 とを行 き来す るだ け の こど も
たち ︵ ステ ップ ー︶
﹁ やらなき ゃ﹂とは分か っているも のの、 つ
い勉強以外 のこと に気 が い ってしま います。
親は期待しているのに、こどもは知らんぷり。
親に求められる段階別危機管理力 とは
こどもの危機 レベルを知る 一
step o
21
ステ ップ 3 1
ステ ップ
ステ ップ 4 ステ ップ 2
鰺慮
自己完結する こどもたち
初め のうちはどんなこどもだ って課題 の意味が分からな いか、あ る いは課題に向き合おうとは しません。 これがステ ップ ーです。
ステ ップ ーに いるこども には、 ﹁ やらされている状笙 悪﹂から ﹁ 自分からや つてみようと いう 状態﹂ へ、ど のよう にすれば行動変容を促すことが でき るかが問題になります。 ﹁ 受験は大切
だ﹂と分か っていても、すぐに行動 に移せるこどもは多くありません。後 で何とかなりそうだ し、自分には関係なさそうだし、と いう感じです。 ② 結果だ けをも って こよう とす る こどもたち ︵ ステ ップ 2︶
ステ ップ ーに いるこどもが自分から行動を起 こすよう にな ったら、次 はムダ 。ムラ ・ムリ
の壁が待ち受け ています。自分に求められていることが理解 できな いために、ピ ント のズ レた
ことを 一生縣犬叩にやる ﹁ ムダ﹂、や ったり やらなか ったりする ﹁ ムラ﹂、できもしな いことを言 ムリ﹂ が目立 つ状況 です。 う ﹁
ステ ップ 2のこどもたちは、自分を認め て欲し いがために大きな目標 に飛び付き、結果だ けを持 ってこようとします。
小学生 のし ている勉強はたどたどし いも のですから、見 て いる親 の方がイ ライ ラしてしま います。しかし、 ステ ップ2のこども にはそ の身 の丈 にあ つた課題を与え て、小さな成功体験
を味わせることができ るかどうかがカギになります。 ﹁ おかげ ででき るよう にな ったよ、あと
22
は自分でがんば ってみる﹂と言わせた いのです。
ステ ップ 3︶ ③ 自 分 のベー スが つかめず あた ふたす る こどもたち ︵
と ころが、やみくも に勉強しても成績は上がりません。知識を片 っ端から手当たり次第 に
覚えようとしても頭に入らず、次第 に膨大な分量を覚えられるか不安にな ってきます。そして、 今 や っている勉強法 に懐疑的になり、効率的な学習法を模索しはじめます。 このとき、親子と もども手詰まり状£ 悪になります。この段階が ステップ 3です。
ステ ップ 3では、それま での勉強法を大幅 に修正してゼ ロから スタートを切れるかどうか、
自分流 の勉強 スタイ ル、科目横断的な解決能力を身 に つけられるかどうかがカギになります。
少量 の課題を深める学習方法と、多量 の課題を効率的 に学習する方法は異なるからです。 これ
もヽ を クリアすれば、た いていのこどもは ﹁ ?大文夫﹂と田やえるよう になり、並みの志望校 に手 が届くよう になります。 ステ ップ 4︶ ④自 己完結す る こども たち ︵
低学年から通塾して いるこども に多 いのですが、それま で頑張 ってきたダ メージがと ても
も っと頑張 ろう﹂ で 大き いため、自分を動機付けることを やめ てしまう ケースがあります。 ﹁ はなく ﹁ もヽ つ目分はこれでいいや﹂ です。
親 に求められる段階別危機管理力 とは
こどもの危機 レベルを知る 一
step o
23
こ のような ステ ツプ 4のこどもは、自分よりも っとも っと頑張 つている人が いることを知 らなか ったり、頑張 つている人に目を向けなか ったりします。 ハタから見ると ﹁ まだまだ伸び るのにも った いな いな﹂と思 ってしま います。
ステ ップ 4のこどもをさらに伸ばすためには、自分 にはまだまだ課題があ ることを発見さ せられるかどうかがカギになります。自分 の得意 に目が向けば慢心して後退しますが、不得意 に目が行けば謙虚な努力家 になれます。
これら のステ ップ ー∼ ステ ップ 4各段階 では つまずき や失敗を当然 の前提と し て います。
つまずき や失敗は不可避 です。 でも、失敗は単なるムダではありません。 ﹁ 必要な ムダ﹂ です。
受験界では、そ の ﹁ 必要なムダ﹂を隠すよヽ フな風潮がありますが、それでは いけな いと田やつの です。 ムダや失敗 にこども自身が向き合わねばなりません。 ムダを経験するなかで自ら発見し た答えだけが、そ のこども の財産になるから です。
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辟灯吻仄
やる気を引き出す
― こどもの重い腰を上げさせる秘技
◆「なるほど (動 機)」 から「自分からやってみよう(行 動変容)」 ヘ
で
ヽ′ ヽ ‘ヽ ‘ ′ ρ, ヽ
βヽ
お 子さ ん は 今 ど のよ う な 姿 勢 で 勉 強 し て いま す
勉 強 って
ヽ β
楽 しい
誘導
勉 強 できなくても
反抗 期 の 対 処 法も 伝授 !
引 き 出 す には ?
こど も の や る 気 を
状 態 だ った ら
。ず し こ ん な
ヘ ッチヤラ
鴇
fヤ ィヤ
り′
ゴ二
ただ家と塾とを行き来するだけのこどもたち
本章 では、﹁ したくな い︶こどもたち﹂ に、ど 勉強しなくち ゃと分か っているけどしな い ︵
のよう に自発的 に勉強させるかを取り上げます。 ﹁ 勉強しなくち ゃと分か っているけど勉強し
たくな いこども﹂とは、勉強 に身が入らず、ただ家と塾を行き来し ているだけ の状態 で、例え ば次 のようなこども です。 *﹁ 宿題は答えを写して持 っていく﹂ *﹁ 家 で宿題を やらせ てみると、 一から教えな いと解けな い﹂ *﹁ 勉強にとりかかるま でにと ても時間がかかる﹂
*﹁ たまに塾をサボる﹂ある いは ﹁ 成績は伸びな いけれど塾は楽し い﹂ *﹁ 親や先生 に叱られ ても へっち ゃら﹂ *﹁ 塾選び に失敗したと思 っている﹂ こうしたこどもは常 に成績が低迷しています。
ただ、たま に頑張るときもあ って、 ﹁ この子 ってでき る子なんだ!﹂とうれしく思うときも あります。しかし、どうしても勉強以外 のことに目が行 ってしまうため、成績が上がるはずも
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なく、 一時的に嬉しくなる分、かえ って親を落胆させます。
このようなとき、塾 の先生 に相談し ても、 ﹁ まだ幼 いですから、仕方な いですよ﹂と言われ しかたな いかな∼﹂と思 ってしま います。でも入試 に間に︿甲つかどうか心配ですし、 て、つい ﹁ 希望通り に何とか合格させた い、と いう のが親 の気持ち ですね。
す ると、多く の家庭 では こども の監視を強めようとします。例えば、塾 の補習 や自習を強 制したり、集団塾から個別指導塾や家庭教師に変えたり、勉強部屋 の後 ろで見張 っていたりす
る のです。そして ﹁ 勉強しな いなら塾 に行かせな い﹂とか、 ﹁ 勉強しな いと友達と遊ばせな い
よ﹂とか、 ﹁ 勉強しな いとお小遣 いあげな いよ﹂などと脅迫したくなります。
一つには、 ﹁ 強制すれば何とかなる﹂式 の発想 で もち ろん強制する側にも理由はあります。 こどもは受験 の大切さが分か っているはずだ﹂ ﹁ 受験が大切だなんてことはだれでもすぐ す。 ﹁
分かることだ﹂と いう思 い込みです。 ﹁ 受験 の大切さは本人が 一番よく知 っている、だから今
強制すれば何とかなるし、それが本人 のためだ﹂と考え てしまう のです。
絶対あ の職業 に つきた い﹂と強く 確 かに、 ﹁ 将来お父さんやお母さんみた いになりた い﹂ ﹁
こどもの重い腰 を上げさせる秘技
やる気を引き出す ―
step l
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なぜ強制しようとするのか
∠レ
9
願う こどもは、目標を高く持 ったり、計画を立 てたりするなどし て自分を勉強 へ動機付けるこ
とができます。心 の底から本当 に ﹁ 受験が大切だ﹂と田やえれば、勉強 にしか目が いかなくなる
からです。 だから、 ﹁ 受験 の大切さが分かればす んなり いく﹂と いヽ 2石え方も理解 できます。 ﹁ こども
にやる気がな いから、受験 の大切さを教え てや ってくださ い﹂と いう親の要望 にもそれなり の 説得力があるわけ です。
しかし、本当 に ﹁ 受験が大切だ﹂なんて心 の底から思う こどもが いるでし ようか。 ﹁いい塾﹂
﹁いい学校﹂ ﹁いい会社﹂ に所属することを想像しただけ でモチベーシ ョンが上が って行動的 に
なるような小学生はほんの 一握りに過ぎません。高校生 でさえ ﹁ まわり の雰囲左 塾 に押されて
勉強 に打ち込むよう になるのが普通 です。心 の底から本当 に ﹁ 受験が大切だ﹂と田やつよう にな るのは、実は受験が終わ った後な のかも知れません。
ですから、ただ塾と一 本を行き来す るだけ のこども に対しては、﹁ 受験 の大切さはこどもが 一
番よく知 っている、だから強制す る﹂とか ﹁ 受験 の大切さが分かれば何とかなる﹂ ﹁ 塾 に放り
込めば何とかなる﹂と いう発想そ のも のが通用しな いと いう ことを前提 にしなければなりませ ん。
ま た、家庭教育 の大部分を担 って いるお母 さん であ れば 、 ﹁ こんな に私 が 一生縣人叩な のにこ
の子は私を受 け入れな い﹂ ﹁ こ の子は私 の思 い入れを一 曇切 って いる﹂ ﹁ 私が何とかし てやらなけ
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たとえ本人が嫌が っても私は愛 し続けなければならな い﹂と思 れば この子はどうなる のか﹂ ﹁ う ことがあります。
自分が完璧な こども の援助者 であ る式﹂ の思 いが強ければ強 いほど、強制 に このような ﹁ 目が向か いがち になるのです。しかし、監視を強める、脅迫するなどし て勉強を強制したら、
こどもはど のよう に反応するでしようか。 やらされ感﹂ が先立 ってこどもが手抜きをす るよう にな ったり、そ まず、強制されると ﹁
宿題は答えを写して持 っ の場を取り繕うだけ のずる賢 いこども にな ってしま います。だから ﹁
勉強 にとりか 一から教えな いと解けな い﹂とか ﹁ 家 で宿題を やらせてみると、 ていく﹂とか ﹁
かるま でにと ても時間がかかる﹂とな ってしまう のです。 また、人は快楽を求 めるより苦痛から逃れる方を優先させる傾向 がありますから、たとえ
4ざけようとす 勉強が楽し いも のであ っても、親と の摩擦を感じれば、勉強 に向かうより親を﹂
土日が嫌 い﹂と いう こどもが いますが、 これは家 に いるとガミガミ言われるだけ るのです。 ﹁
だからと いう のがその理由 です。 つまり、強制から来 る苦痛が、こどもを勉強嫌 いにするだけ でなく、こども の居場所を奪うこともあ る、と いう こと です。
さらに、肉体的 には強制 でき ても、頭 の中は絶対 に強制す ることは できません。自分から
考え ようとしな いと頭は働かな いのです。勉強は肉体作業 ではなく知的作業 ですから、本質的 肉体的﹂ に強 に強制 にはなじまな いんですね。家と塾を行き来するだけ のこどもは、まさに ﹁
こどもの重い腰 を上 げさせる秘技
やる気を引き出す ―
step l
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υ ‘”Q ,
制されているだけであ って、﹁ 頭 の中﹂は勉強に向 いていな いのです。 だからと い つて、 ﹁ 楽なほう に逃げなさ い﹂と言 って いる のではありません。 ﹁ やるべき こ とがあるのに、それに向き合わな いのはよくな い﹂と いう ことを伝え るのに ﹁ 強制﹂と いう手 段 ではうまく いかな い、と いう こと です。
強制の出番はない?
しかし、強制がうまく機能す る場面があります。例えば 、こども がやろうとしな い算数 の 問題を強制的 に解かせる場面を思 い浮か べてくださ い。
このようなとき、 ﹁ なぜこんな簡単な問題が解けな いの﹂と頭 に血が上るようなときがあり
ますよね。 でも、こどもが知 っていると ころま で戻 って教えると必ず できるはず です。教え る
側 には大変な労力 ですが、こどもが分かるところま で戻れば必ず でき るよう になり、こどもは 大満足です。
このよう に、 こどもを強制す るときは、必ず達成 でき る課題を与え ることが必須 の前提条
件 です。到底 できな い課題を与えたり、課題を与え っ放しにして挫折感を味わせると、こども は自信もやる気も失 ってしま います。こどもを強制する以上は、こどもが達成感を得 ると ころ
30
′
ま で寄り添 ってあげなく てはならな いのです。
も ち ろん課題 の質と量は徐 々に上げ て いく必要 があります。 こ のよう にし て、 こども は
徐 々に耐性を つけ て自分で勉強 でき るよう にな っていく のです。 ただ、家と塾とを行き来す るだけ のこどもは、課題を強制す る云 々のレベルではなく、そ
もそも勉強する意味が分からな い状態 です。ただ でさえ中学受験 では抽象的な内容が盛りだく さんですから、 いかに勉強 に関心を持たせるかが先決な のです。
ですから、強制と いう手段を用 いるにせよ、それは ステ ップ 2以降 の段階 です。まず は、
家と塾を行き来す るだけ のこども に対しては、本章 でご紹介する方法を用 いて、こどもたちを 学問 の世界 へ引き入れ ていくことが必要 です。
ただ塾と家を行き来するこどもに対する 基本的なスタンス
強制﹂と いう スタンスで臨むと、 ついつい辛 塾と家を行き来するだけのこどもに対して ﹁
.‐
‐ ‐ ・ ・ ― ■― ・ ‐‐■ ‐●■ │■
非難するニュアンスが感じられますから、こどもがイラッとするのも当然です。
なぜ∼﹂と いう言 い方には と言 ったり、ため息を ついて暗にこどもを非難してしま います。﹁
受験する気あるの﹂﹁ 塾やめち ゃいなさ い﹂ なぜやらな いの﹂ ﹁ くあた ってしま いがちです。﹁
4
こともの重い腰 を上げさせる秘技
やる気を引 き出す ―
step l
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―‐ ■■│■ ■│■ ■ ‐‐ ― ・ ・
本来、自覚がな いこども には勉強をさせ てもらう資 格はありません。 でも 、せめ て人並 み
の教育を受けさせてやりた いのが親心。しかし ﹁ 強制﹂ ではうまく いかな い。何か効率的な方 法はな いか、と悩みます。
よく ﹁ 褒めると ころを探し てでも褒 めろ﹂などと言われますが、理想と現実 があまり にか け離れていては褒める言葉 に力が入るはずがありませんね。中途半端 に褒めたら、かえ つてシ
ラけ てしまう のがオチです。そんなことはどんなお母さんだ って知 っています。
そこで、どうしたら自こ 見のな いこどもが自発的に行動子ノ るよう になるか、 です。 ﹁ 強制﹂と いう スタンスは、相手 に何かをさせると いう スタ ンスです。と ころが、親が いく ら強制し ても、そ の結果こどもを待ち受け ているも のは ﹁ 受験はし ょせん自分次第﹂と いう現 実 です。 ﹁ 親子共 々やることはや った。 でもだめだ った。結局自分 で何とかしようとしな いか らな のよね∼﹂となるわけです。
しかし、 ﹁ 結局は自分次第﹂と いう結論 に至る前 に、 ﹁ 親 や先生自身が本当 にち やんと やる
こをや つた のか﹂ に目を向けて欲し いのです。 相手は受験す ること の意味さえ分からな い小学生 です。中学受験はこどもが自力 で乗り越
え るには高すぎ る ハードルです。中学受験 の勉強量は高校受験に匹敵するか、むしろ教科 によ っては高校受験より多 いのです。それな のに、﹁ し ょせんは自分次第﹂と い って突き放す のは
残酷 です。こうし て、これま でに多く の大切な芽が潰されてきた のです。
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′‐
出発点﹂と捉え る 結論﹂ ではなく ﹁ 二又験は自分次第﹂と いう のは ﹁ 中学受験 にお いては ﹁ べき です。受験は自分次第なんだから、自分 で戦え るよう に補助し てやらなければならな い、
塾と家 の間をただ行き来するだけにな です。親亀がこけたら小亀も こける、です。こどもが ﹁ った﹂ のは、こども のせ いではなく大人 の責任 です。
中学受験 で親子 の関係 がぎ こちなくなる のはど のご家庭 でも同じ です。そし て、そ の問題
大人と こども﹂ の間にあります。たんにこど だれか特定 の人﹂ にあるのではなく ﹁ の原因は ﹁
もをやり込めるのだけ ではギクシャクしてうまく いきません。だからと い って親だけが褒めま
こどもと く ってもうまくは いきません。 こども のモチベーシ ョンを上げようとす るならば、 ﹁
大人 の間 の関係﹂、 つまり、大人がど のよう に接すれば こどもはど のよう に反応するか、 に注 目す べき です。
塾と家を行き来するだけ のこども﹂ のやる気を引き出す具体的な方法を紹介し これから、﹁
実際 に試し ても こども に通じなか った﹂ では意味がありません。言 いた て いきます。ただ、﹁ いことが伝わらなければ何も言 っていな いことと同じです。また、こども への伝え方はご家庭
こどもの重い腰を上 げさせる秘技
やる気を引き出す ―
step l
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やる気を引き出す秘技﹂を ﹁ 有効活用するために必要なこと
Э
によ つてさまざま です。 です ので、これからご紹介する秘技を実際 にこども に試すとき には、 次 の3 つのことを前提とします。
① こども の話 を聞く とき は、 こども の混乱 した頭を整 理しながら聞く こと こども の頭 の中は常 に混乱し ています。勉強も遊びも、学校 のことも塾 のことも い っし ょ
くた です。 ですから、どうし て ﹁ そ の話﹂をするのかをち やんと整理し てあげながら話を聞 い てあげる必要があります。
例えば、 こどもが ﹁ 算数 の成績が下が っち ゃ った﹂と言 ってきたとします。 このとき、 ﹁ も っと勉強しなくち ゃね﹂ って優しく言 って行動を指示しただけ では、こども の話を整理したこ
と にはなりません。こどもが ﹁ 成績が下が っち ゃ った﹂と言 った のには訳があ るはずだから で す。
友だち に負け て悔しか ったとか、先生 に叱られ て落ち込 んだとか、もう勉強したくなくな ったとか、努力は認めて欲し いとか、お母さんに申し訳な いとか、何か伝えた いと いう動機が あ って初めて ﹁ 成績が下が っち ゃつた﹂と 口にする のです。
何か話した いとき には、それ には動機があ るはず で、そこをきち んと汲 み取 ってあげ る必
要があります。気持ちを汲み取ること でこども の頭を整理することが大切な のです。また、汲 み取 ってもら つた経験はこども の気持ちに安定とゆとりをもたらし、他人 の気持ちを汲み取る
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原動力にもなります。
国語力が低く て、他 の科目 の足を引 っ張 って いる﹂と嘆くご家庭 では特 に気 このことは、 ﹁
に留めていただきた いところです。国語だけ成績が低 いと いう のは、裏を返せば 一問 一答式 の
問題には強 いと いう こと です。答え方が分か っているから、猛烈に知識を吐き出す ことができ
ます。反対 に、ど の教科 であ っても答え方を複雑 にされるとひとたまりもな いんです。
確かに国語 の読解問題には、経験則的な情動 に ついての知識 や、社会 に存在す る何かしら の法則性 に ついての知識がも のを いヽ つものもあります。しかし、出題意図 の本質は他 の教科と
基本的に同じです。シンプ ルで基本的な事柄を組 み合わせて結論を導けるかどうかが試される のです。
読解問題 での基本事項は、筆者 の意図を深く探求す ること ではなく、筆者と受験生を媒介
する出題者 の意図や指一 不を汲み取る力 です。筆者 の意図に共感する力よりも、問 いの位置 や問
われ方から出題者と の対話 の流れを つかんで、それを推し進め ていく力が求められています。
このような力を つけるためには、日常的 に対話 の誤差 や誤解を埋める訓練が必要 であ って、 それがこども の頭を整理すると いう こと に役立 つのです。 ② こども に分 かりやすく 説明す る こと
こどもは人 の話を聞くとき に、必ずと いっていいほど自分 のいいよう に勝手 に解釈します。
こどもの重い腰を上げさせる秘技
やる気を引 き出す ―
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話を聞 いて分からな いとき でも、見事なま でに分か ったふりをします。 でも これは亜坐息による
も のではありません。背伸び です。こうしたこども の背伸び にゆ つたりと接してあげ ていく こ
と によ つて、こどもはゆ っくり ではありますが、確実 に進歩して いく ことができます。 ﹁ こど
もは大人 の話 の行間を理解 できな い﹂と いゝ ユ剛提に立 って、分かりやすく話すことが必要 です。 ③ こども に安 心感 と信頼感 を与える こと
こどもたちは本来おし ゃべりなも のです。 いろ いろな話をしたく てウズ ウズ し て いて、話
し相手に飢え ています。と ころが いつしか ﹁ こんなこと話 ても いいのかな∼﹂ って田やつよう に なり、親と の会話が途切れ途切れにな っていきます。
こんなとき に親と の会話が弾み、 ﹁ 話してよか ったな﹂と思われることが、こども の安心感
と信頼感 に結び つきます。 いくらこどもと話をしても、こどもが ﹁ よか ったな﹂と思わなけれ
ば話がすれちが ってしま いますし、こども のストレスになることもあります。
実は、 こども に安心感と信頼感を与え るのに ﹁ 何を話すか﹂ は重要 ではありません。重要
な のは ﹁ 笑顔﹂ や ﹁ 包容力﹂ です。人にはそ の場 の雰囲気を醸し出す空気があります。陽気な
空気、元気な空気、 のん気な空気、イ ライ ラした空気など です。イ ライラした空気 のある人に
は近寄りがた いも のです。 こどもだ って、イライ ラしたオーラを出した大人に対しては警戒し
ます。大人には、こども の警戒している態度が ﹁ 拒否﹂ に映 るので、余計 にイ ライ ラします。
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■ ■′
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これでは何を言 っても通じ合うわけがありません。
何をさせようか﹂と考え 何をしよう か﹂ ﹁ こどもを元気 にさせるために ﹁ 何を言おう か﹂ ﹁ 話してよか った﹂と い 笑顔﹂と ﹁ 包容力﹂を徹底すること です。 これが ﹁ るよりも、まずは ﹁ ヽ 2女心感と信頼感 に つながるのです。
このよう に、① ∼③ のことを前提 に、 これから紹介す る秘技を試し てい ってくださ い。人 によ つては ﹁ そんなめんどくさ いこと⋮⋮﹂と田やつかもしれません。しかし、大人が手抜きを
しては いけません。 こどもは親 の手抜きをし っかり見 ています。親がこども に真剣に向き合わ
親 の財布だけを見 て な いと、そ のこどもは親 の財布だけを見 るこども になります。 こどもが ﹁
いるのか、それとも親 の生き様を見 ているのか﹂は、こども の将来 にと っても親 の将来にと っ ても非常に重要なこと です。
こども のやる気を引き出す秘技①
大人の体験談は甘い果実か劇薬か ① 親 は自 分 の体験談を語ろう
大手塾 では小 5の夏くら いには難関 の御 三家中学 の問題を扱う ので、親が下手 にこども の 学習内容 に手を出すと メンツが潰れるので要注意 です。しかし、勉強は教えな いにしても、自
こどもの重い腰 を上げさせる秘技
やる気を引き出す ―
step l
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分 の体験を一 冬えて、 いろ いろと アドバイ スをすることはできます。
こどもたちは大人 の体験談 にと ても強 い関心を示し、自分も や ってみようと田やつものです。 特 に身近な人 の話 には親近感をもち、より強 い関心を示します。 テレビ の旅番組を見 ていて、
知らな い土地より知 っている土地 のほう に強く反応するのと同じです。 ですから、こども の身
近 に いる大人 ︵ 特 に親︶は、どんどん体験を話していく べき です。 ただし、ただ体験談を話せばよ いのかと いうと、そう ではありません。体験談 には ﹁ 成功 例﹂と ﹁ 失敗例﹂がありますが、それぞれ の性質を踏まえ て上手 に使 い分ける必要があります。
C成功例 は結論 だけでなく背景と セ ットで伝え よう まず、 ﹁ 成功例﹂を話す場合 ですが、そ のとき には結論だけ でなく、成功 に至 った背三 昼も同 時に伝えなければなりません。
例えば、﹁ お父さんは昔、この問題集を使 つたら劇的 に成績が上が ったから、あなたも これ
を使 いなさ い﹂と いう のは結論しか伝え ていません。一結卦 唖だけ聞 いたら、そ のこどもは最初か らセ ッセとそ の問題集を やるでしょう。しかし、同じ問題集 でも人 によ つてやり やす いやり方
があるので、いきなり最初からや つても、そ の子ができ るよう になるかどうかは分かりません。
成功体験は、 ﹁ 何を、ど のよう にや つた、だから成功した﹂と いうよう に、背景と結論を セ ットで伝え て初め て ﹁ そ の子だけ のやり方﹂が つかめるよう になります。
結論だけの成功例は ﹁ 劇薬﹂ です。例えば、自分の受験のことを思 い返して、夜中まで必
死にな ってや ったと いう限界体験が志望校合格に結び ついたと いうことをこどもに伝えたいと
① しましょう。このような限界体験はいつでも経験できるものではありません。限界体験は、︵
気力が充実していること、②体力が十分であること、③到達点が明確であること、の3条件が そろって初めて経験することができます。
ですから、こどもに限界体験の大切さを伝えるためには、①どうしても合格したいと思 い、 ②勉強に専念できる環境にあ つて、③今こそやらねばならない課題がある、このような状況で
あればムリを押してでも限界に挑戦できる、と いうふうに伝えてあげてほしいのです。
お父 くれぐれも避けなければならないのは、やみくもに挑戦した挙句に挫折してしま い、﹁
さんにはどうや つてもかなわな いや﹂と いうように誤 った思い込みをさせてしまうことです。 ③ 失敗体験 はど んど ん話そう
甘 い果実﹂ そ の これに対し て、失敗例はどんどん話し てあげ てくださ い。人 の失敗例は ﹁
人もそうなんだ﹂ ﹁ 自分だけじ ゃな いん も のです。特 にスランプ に陥 ったとき の話を聞くと、﹁
だ﹂と安心することができ、肩 の力が抜け て、地に足が つく のです。 自分 の偏差値が大幅 に下が った!﹂なんて話題はリアルすぎ て人と話す気 にはなれ また、 ﹁
ません。しかし、他人 の失敗は自分にと つてリアルではな いので、冷静 に聞く ことができます。
こどもの重い腰 を上げさせる秘技
やる気を引 き出す ―
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″″
説教を聞かされるより、人 の失敗談を開くほうが、はるかにモチベーシ ョンが上がるのです。 と ころがも った いな いこと に、受験 に関す る失敗談を こども に話す大人はそゝ 2多くはあり
ません。 ﹁ 第 一志望校に不合格にな った﹂とか ﹁ 小さ いとき算数が十 童キだ った﹂などと いう み じめな話はしたくありませんし、こども にナメられるかも知れな いからです。
しかし、親が弱 みを見せると いう ことは、こどもを信頼して いる証拠 です。また、親が弱 みを見せな いと、 こどもも弱みを見せなくなります。人 の共感を得る のに、自分を開け っぴろ げ にすることはと ても大切な のです。 ﹁ 実は入試 で失敗したことがあるんだ﹂
この 一言を投げ かければ、 こどもは ﹁ なぜ?﹂と思 い、親 の体験 に現在 の自分を投影 し て みるはずです。
こども のやる気を引き出す秘技②
そうな ってしまう原因は、勉強 に興味がな いこと、あ る いは勉強 に強 い抵抗意識を持 って
家と塾を往復す るだけ のこども でも、とりあえず塾 には通 って いるわけ ですから、 ﹁ 勉強し なくち ゃ﹂とは思 っています。ただ、どうしても勉強以外のも のに目が向 いてしまうだけ です。
勉強に興味を持たせる暗示法
′
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いること です。だから、勉強 に対する興味を持たせたり、勉強に対する抵抗を和らげることが 必要です。
そこで、まず ﹁ 勉強 に対する興味をも ってもらう秘技﹂をご紹介します。
受験を志し てこどもを塾 に入れ ても、 いきなり ﹁ 勉強 一筋﹂ にはなりません。勉強す る時
間より、習 い事 の時間、友達 や兄弟と遊ぶ時間、ゲームをや ったリ マンガを読む時間 の方が多 いのが普通 です。
それを見 ると、 ﹁ そんな時間があ ったら勉強しなさ い﹂と言 いたくなりますが、勉強以外 の
やるな、やるな﹂ばかり では、こどもは耳を貸してはくれません。 こどもはサラリー ことを ﹁
マンと違 って大人 の機嫌取りをしてはくれな いのです。どんな優秀なこども でも、入試が終わ
るま で完全 に マンガを手放す ことは稀 です。人は心 のよりどころにし ているも のを禁止される と余計に執 看してしまヽ つものです。
そこで、, 禁止させた いことを忘れさせ てしまうくら いに、﹁ 勉強が楽し い﹂と暗一 不をかける
必要があるのです。 これは、塾と家を往復するだけ の自覚 のな いこども に行動変容を働きかけ
るヽ ?えで、叱 ったり褒めたりするよりもはるかに有効な手段となります。 ① 親も学校 でのタイムリ ーな話 題 に目を向 けよう
まず 一つ目 の方法は、① こども の学校 でのタイ ムリーな話題と受験勉強とを リ ンクさせる、
こどもの重い腰 を上げさせる秘技
やる気を引 き出す ―
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です。 こどもたちは学校 で様 々な刺激を受け てきます。 こどもたちは、家庭 の中 でしか知り得
なか った経験と、自分 の知らなか った他人 の話をすり合わす こと によ つて、絶えず自分 の世界 を広げています。
こども の成長を知るためには、普段から の情報収集が欠かせません。学校で何を や つたか、
何 に成功した のか、何 に失敗した のか、などに ついて、 できるだけ多く情報を収集しておくよ
う にします。 こどもたちが学校 に いる時間はと ても長 いですし、ほぼ毎日通うわけ ですから、 学校 の話 には事欠かな いはず です。
それと同時 に、失敗す る のはよし、勇 み足 での失敗は歓迎、 の雰囲気作りを しておきまし ょう。失敗を隠して、今後の糧 にしな いのはダメ。 一緒に解決しよう。 これを こども に普段か ら強烈にアピ ールしておく のです。
そし てチ ャンスを待 つ。 こどもが学校 でな にかしら の失敗を 犯したり、目立 ったりした こ
とを耳にしたら、 ﹁ 惑教秋勉強に活かせることあるんじ ゃな いの?﹂ ﹁ 受験勉強していれば学校 で
もも っと目立 てるんじ ゃな い?﹂と の 一言を添え てくださ い。 こども の切実 で身近な話と受験
を リンクさせると、こどもはよく話を聞 いてくれますし、し ゃべりすぎるほど話してくれるよ う になります。 ② 受験勉強 はすぐ に役立 つも のだと意識づ けよう
42
今すぐ″役立 つことを 受験勉強 に興味を持たせるため の2 つ目 の方法 は、② 受験勉強が ″ 教える、です。
勉強が いつも後回し になる子は、勉強 の価値を知りません。勉強す ること によ つて、自由
にも のを考えられるよう にな ったり、今ま でとは違 った見方をすること で視野が広がると い っ
勉強がすぐ に役に立 たこと に関心がな いのです。勉強が後回しにな ってしまう こども には、 ﹁ つ﹂と思 い込ませるのが 一番です。
例えば、家族 で旅行をす るとします。宿泊する旅行 でも いいですし、遊園地など への日帰
り旅行 でもかま いません。そ のとき にこども に計画と予算を委ね てみてくださ い。どんな乗り
物を利用し、ど こに宿泊し、どんな行程を組むか決めさせるのです。予算 の範囲内かどうか、
予備費は いくらと っておけば いいか、支払 いはどうすれば いいか、も決めてもら います。 す ると こどもは目を輝かせ、普段見 ること のできな い集中力を発揮 します。そし て、受験
勉強 で培 った能力が随所 に発見 できるはず です。旅行 ではなく、お遣 いでも構 いません。 Ⅷ円
渡し て、税抜き で いくら のも のま で四 早えるかを考えさせてもよ いでしょう。
普段見た こと のな い魚 や野菜を買わせ てもよ いです し、 テレビを見 ていて知 って いること 今すぐ″ を尋ねるのもよ いでしょう。こんな小さな小さなこと でいいですから、受験勉強が ″ 役立 つことを教え てあげ ていただきた いのです。
こどもの重い腰 を上げさせる秘技
やる気 を引き出す ―
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43
C集中 して勉強す れば 早く終 わ る ことを教え よう
受験勉強 に興味を持たせる3 つ目 の方法は、③集中してやれば ″ 早く終わる″ です。
こども のホ ンネは ﹁ 楽 し て成績を上げた い﹂ です。 こんな ムシの いい話はな いのですが、 ただ家と塾を行き来するだけ の段階 では、そんなこども のホンネ に目を つむるほかありません。
問題な のは課題 の与え過ぎ です。 一体 みす る間もなく、次から次 へと際限なく課題が降り かか ってくれば、誰だ ってやる気が萎え て余計 にダ ラダ ラしてしまうはず です。しかも、勉強 する意味が分からなければなおさらです。
そこで、ときどき ﹁ 集中し て勉強すれば早く終わるわよ﹂と 一言投げかけ てや つてくださ い。塾でも ﹁ 今 日の授業は早く終わ った人から休憩!﹂なんて言うと、生徒たちは無我夢中 で 勉強 に取り組みます。 これをご家庭 でも や つてほし いのです。
もち ろん、 これ で全部 の課題が消化 しきれるはずはありませんし、 こんな対応 で最後ま で
ヽ つまく いくはずもありません。しかし、当面は自発的に行動を促す ことが目標 です。イヤイヤ、 ダラダラ勉強す るよりも 、短時間でも集中してやるほうが頭に残ります。
こどもを見 ていると、長続きしな いとか散漫だとか で ついイ ライ ラし てしま います。けれ ど、塾と家を行き来するだけ のこども にと つて重要な のは、長続きを期待する前 に、そ の子が 自発的に行動に移したかどうかです。
小 4くら いま では手取り足取り でど んな子 でも大人が言うとおり にでき るよう になります
44
が、小 5くら いからは勉強量が飛躍的 に多くなるため、自発的 に勉強するのかどうかが受験 の 成否 に決定的なじ驚音を与えます。
こども のやる気を引き出す秘技③
勉強に対する抵抗感を和らげる
勉強が難しく て分からな い﹂と い ったことを思 い浮か べま 勉強 に対す る抵抗感と いうと ﹁ 失敗を恐 すが、塾と家を行き来するだけ のこども にと って、勉強 に対する抵抗感と いう のは ﹁
れる﹂ です。だから、間江 導えた答えは見られな いよう にすぐ消すなんてことはしょ っち ゅう で す。
書く﹂と いう作業は こ ウチ の子は式を書かな い﹂と いうご相談を受けます。式を ﹁ よく ﹁
ども に自分 の頭 の中を整理する手段を与えると同時 に、指導者がこども の頭 の中を理解するた めにも必要なこと です。
特 に応用問題 の場合は、書 いて整理す ることがどう し ても必要 です。 です が、普段から式
を書 いていな いこどもが、応用問題 のとき にすぐ書くよう になるかと いえば、それは ムリです。
だから、ふだんからし っかり式 や図を書くよう に指導す ることはと ても大切なことな のです。
なぜ式を書かな いか﹂ です。式を書いたほうが いいと いう ことは そこで問題 になるのは、 ﹁
こともの重い腰 を上げさせる秘技
やる気を引き出す ―
step l
45
8
だれでも分か っています。それにもかかわらず、なぜ式を書かな いか、です。 これには次 のよ うな原因が考えられます。 ①本質的に理解していな いから 璽日 けな い﹂ ︵ 塑間違 いを指¨ 摘されるのがイヤだから 璽日 かな い﹂
③式を書 いて いては授業 に ついていけな いから ﹁ 書く ヒ マがな い﹂
塾と家をただ往復す るだけ のこども の場合、 この3 つのうちどれが原因 でし ょうか。お母
さんにお尋ねす ると、 ﹁ ︵︶仝質的 に理解していな いから﹂とお答え になる方がと ても多 いので す。
しかし、塾と家を往復す るだけ のこども にと つては、 ﹁ 授業 の内容﹂ よりも、 ﹁ 穏便 に授業 が終わること﹂ のほう が大切な のです。 ﹁ 授業 で学 ぶこと﹂より ﹁ 無難 に家と塾を行き来 でき
ること﹂を願 っています。 ﹁ 授業を理解していな いんじ ゃな いか﹂と先生に ニラまれ て、授業 に参加 できなくなることを嫌がります。だから、間違 いを指摘されるのが怖 いんです。 ﹁ 授業
が本質的に理解 でき ていな い﹂と い つた レベルの話 ではな いんです。
家 で勉強を教え ていても、 ﹁ そ のやり方じ ゃダ メでし ょ﹂ ﹁ このユ 甲も同じこと教えた でし ょ﹂
﹁ ふ∼﹂ ︵ ため息を ついて暗 に非難︶なんてことを繰り返し ていると、親 の思 いとは裏腹 に、こ どもは ﹁ 自分は親 に嫌われち ゃうんじ ゃな いか﹂と不安に日やつも のです。
そうす ると、 一見 一生懸命勉強し て いるよう にみえ ても、先生 や親が ﹁ よし﹂と い つてく
46
白紙︶から思考を組 では、ゼ ロ ︵ れるような答えを ﹁ 探している﹂だけな のです。そんな状龍︹ み立 てることなど できません。
だから式 が書けず、 いつも テスト の成績が悪 いのです。返し てもら つた テストを隠し、 こ
ども は ﹁ や っぱり自分は できな い子な んだ ¨ こんな に辛 いなら遊 んで いた ほう が マシだ よ﹂ と思 ってしまう のです。
つまり、成功を喜 ぶことはだれでも でき るけど、失敗した自分を コント ロールす ることは
失敗したこと 自分 の失敗を︶見ザ ル﹂ ﹁︵ 大人だ って難し いんです。大人だ って失敗すれば、﹁︵
人 の注意を︶聞かザ ル﹂ にな ってしま いがち です。 を︶言わザ ル﹂ ﹁︵ 失敗大歓迎﹂ の雰囲気 ですから、塾と家を往復す るだけ のこども の行動変容を促す には、 ﹁ 作りがどうしても必要です。
教えた通り に解かなく て腹立たしくな る のは、わざわざ失敗しようとす るそ の子がもどか
失敗しち ゃ った﹂ し いからです。しかし、失敗する前 に引き止めるより、失敗 したこどもから ﹁
じ ゃあ失敗しな いですむ にはどうすれば いい?﹂と聞くほ と いう言葉を引き出すととも に、 ﹁
堅局の教科書な のです。 うが、こどもが将来失敗する確率は下がります。失敗はそ の子にと って日 しかも、指導者にと っても、そ のこども の失敗 こそが日 要局の教科書 でもあるのです。
﹁ 失敗大歓迎﹂ の雰囲気作り には、まず最初 に、大人が小さな失敗 にとらわれな いことが必
要 です。小さ い失敗 に気をとらわれて、そ の子 の大きな芽を摘んでは いけません。
こどもの重い腰 を上 げさせる秘技
やる気を引き出す ―
step l
47
■7 ′こ ι
そして次 に、 一 チ ャレンジした子には暖か い支援を保証する﹂ ことが必要 です。 いくら 口で ﹁ 失敗しても いいよ﹂と言われた つて、失敗したとき にし つぺ返しを食ら ったら、結局は失敗
を恐れるよう にな ってしま います。 失敗を恐れる子は理屈だけでは行動に移そうとはしません。 だから、理屈だけ でなく ﹁ 本当 に頑張 った子は、結果 の良し悪 しにかかわらず、チ ャレン
ジしたことを賞賛する﹂と保証し、大人がそれをキチンと実行す べき です。大人からみて不満 足な結果であ っても、思 いっきり賞賛する。 このよう にして、努力そ のも のを称え る環境がで
きれば、勉強に対する抵抗感 ︵ 恐怖︶はなくなります。 繰り返しますが、ここでのテー マは ″ 行動変容″ です。要す るに、 いかにこどもを勉強 に 向かわせるかです。変容した行舗ツτ一 情続し、さらに質的に変化させることが でき るかどうかは 次 ステ ップ以降 で取り上げます。
こど も のや る気を 引 き出す秘技④
こどもの反抗期の対処法
こども の反抗 に手 を焼 いて いると いう ご相談 は、小学 3年 生 く ら いから中学受 験 が終 わ る
ま で、ず ∼ つと続 きます。 そ こでまず、反抗期と いう のはど のよう なも のかを確認 し ておき ま す。
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4歳頃 の第 3∼ 1 反抗期 には、① 3∼4歳頃 の第 1反抗期、② 6∼7歳頃 の中間反抗期、③ l 2反抗期、があります。
これは面白そうだ!﹂と いう感情が芽生え、 こどもが初めて 3∼4歳頃 の第 1反抗期は、 ﹁
自分でする!﹂ ﹁ ○○した い!﹂ ですね。 自分で考え、行動しようとする時期 です。 ﹁
同時 に、ダダを こね て ﹁ ヤダヤダ﹂を連発 します。が、大人 に反抗する気持ちはほとんど ありません。 こども の頭 の中にあるのは興味だけです。だから理屈が通用しません。そんなこ
ダダ﹂ ども に大人が つい感情的 に怒 っても意味がな いのです。大人からす ると ﹁いたずら﹂ ﹁
興味がある﹂と いうち ゃんとした理由があ るのです。 に見えますが、この時期 のこども には ﹁
これに対し て、 6∼7歳頃 の中間反抗期は、こどもが反抗しようと思 って反抗す る時期 で
自分だ って!﹂と感情的 に反発 ウルセー﹂とか ﹁ す。注意 されると干渉されたよう に感じ、 ﹁ し、大人に反抗する気満 々ですから、派手 に衝突することもあります。
大人は本当はえ ら い﹂と思 っ ですが、まだ救 いがあります。 この頃 のこどもは基本的 に ﹁
ています。それな のに、こどもを圧倒してねじ伏せると、頭が混乱して心を閉ざしてしまう こ
と にもなりかねません。 、 、 。 3 1∼ 4 1歳頃 の第 2反抗期 は 大人 の欠点 に気付き 社会 のルールに嫌悪を抱く時期 です 件 に受け入れず、こども扱 いされることを嫌が って親と話さなくな ったりし もはや大人を缶災木 ます。そして、気 の合う同士 でグループを形成し、帰属意識や自己顕示欲を満足させようとし
こどもの重い腰を上げさせ る秘技
やる気 を引 き出す ―
step l
49
ます。周囲 の批判に対して極度 に傷 つくかと田やえば、失敗を認めようとしなか ったりします。
このよう に、 ﹁ 反抗期﹂は3 つに大別できますが、 ﹁ 反抗期 にど のよう に対処すれば いいか﹂
と いヽ 2実践的観点からすれば、3 つの反抗期 の共通点を知ることが重要 です。 親子で衝突が生じる場合、そ の原因は特定 の誰かにあ るのではなく、 ﹁ 親﹂と ﹁ 子﹂ の間に
ある心理的 。物理的影響力 にあります。親が強 い影響力を示したり、こどもが親 に過度 に寄り
かかるような場合 に初めて ﹁ 反抗﹂が起きます。影響力 のな い人同士 の間では反抗は起きませ ん。
こども に反抗されると つい ″ キー″ っとな ってしま います。そし てケ ンカ の後 で、 ﹁ ああ言 ってやればよか った﹂ ﹁ これも言 ってやればよか った﹂と思うも のです。しかし、 こどもは旦
那とは違 います。感情 に支配されてこどもとケンカしては いけません。
ケ ンカ の原因は双方 にあ るはず です。 ですから、お互 いに相手 の悪 い点 にこだわ ると感情
的 にな つて解決が遅れてしま います。こども の ヨ心いと ころ﹂を突 こうとすると、こどもは傷
ついてしま います。こども の 配いいと ころ﹂を い つたん取り出して、それを親子 で冷静 に見 つ
め直して退治する、そう した スタンスが重要 です。そして、﹁ お互 い﹂ が ﹁ 自分も悪か ったか な﹂と日やえるのが ベストです。
そうした距離感を持 つために、私は次 のような対処をお ススメしています。
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① 世話を焼く よリヒントを与え る
受験生な のにグ ラダ ラし て いるのを見 ると、頭 の血管 がちぎ れそう になるなんてしば しば
だからあれほど言 っただ ろう﹂と、 つい小言が回 ですよね。 ﹁ まだ宿題終わ ってな いの っ?﹂ ﹁ を ついて出 てしま います。
でも、小言を言 っても、 こども には声 は聞 こえ ては いるも のの、話し て いる内容 のほと ん
どは頭 に残りません。むしろ、小言が反抗 の原因 になることがほと んど ですよね。 ですから、
冬えて話してみること で 小言や指示ばかり でなく、こどもが自分 で考え るキ ッカケやヒントを一
す。 あ のとき頑張れた のは何 でかな﹂、決められたことをしな 例えば、 やる気が出な いときは ﹁
どうしてこれを やる って決めた のかな﹂と投げかけるとよ いでしょう。 こどもとケ いときは ﹁
ンカしてお互 いに体力も気力も消耗するより、こどもが つまず いたら、 いつでも軌道修正して あげられる距離感を持 つことが大切です。
自分 は大したも んじ ゃな い﹂ と開 き直 る ② ﹁ 人は、頼れる人が いると、 ついそ の人 に寄り掛か ってしま い、本来備わ っているはず の自
思考停止状態﹂ ですね。 甲刀を発揮しなくなります。 これが いわゆる ﹁ 分 の生
これは大人 の世界 にもあります。上司を拒絶す るくせ に、上司 に寄りかかる人が います。
こどもの重い腰 を上げさせる秘技
やる気を引き出す ―
step l
51
これも 一種 の思考停止渋£ 悪です。このよう に、人は頼れる人が いると、何かをしてもらう こと
にばかり目が行 って、自分でしようとはしなくなります。 だから、寄りかかられる前 に、自分は大 したも んじ ゃな いと開き直 ってしま いま し よう。 そし て、こどもがまだ本当 に困 っていな いとき には、親はまだ頑張らな いこと です。 こどもが
本当に困 っているとき に、はじめて頑張 って手助けしてあげればよ いのです。そんな親はこど もから尊敬されます。ちなみに、こどもと正面から格闘しなければならな いのは、 ステップ 3 で取り上げる場面 です。 ③ 一日の終 わりは笑顔 で締 めくく る
こどもと ケ ンカす ることはと ても自然な こと です。しかし、次 の日に持ち越す のだけはタ ブーです。
こどもは 一度 ケ ンカす るとケ ンカの後も ﹁ 母ち ゃん、次はどう出 てく るか﹂と身構え て い ます。そうした状況はと ても ムダです。ケ ンカ自体は いいけれども、後 に引きず って勉強 に向 けるべき意識を削ぐ のは本当 にも った いな いこと です。
ですから、 いつも怖 い顔 ばかりせず に、 一日の終わりは ﹁ 笑顔﹂ で締めくく ってくださ い。 それだけで、ケ ンカのしこりは残らなくなるも のです。
④ こども に後 ろめたさを感 じさ せな い
も っと遊びた い﹂と思 って いるも のです。遊びを こどもたちは、塾 に行く前は、本当は ﹁
塾 に行かなき ゃ﹂が いつも入り混じ って 遊びた い﹂と ﹁ 切り上げ るとき、 こども の心 の中は ﹁
います。 ﹁ 塾 に行かなき ゃ﹂と後 ろめた い気持ち で遊んで いたとしたらかわ いそう ですね。従
もう受験をしな い﹂ ﹁ 塾 に行きたくな い﹂と言 順 で真面目な こどもほど、小 6の秋 にな って ﹁ い出します。
遊びと勉強 のケジ メを つける のは当り前。だから、遊びを切り上げ て塾 に行く のは当然と 当然じ ゃな い﹂ のです。 思 いがち です。 でも、 こどもからすれば ﹁
だからと い って、塾を休 んでま で思 い切り遊ば せ てあげ てくださ いと言 って いるわけ では
遊びた いと思う ありません。遊んで いても後 ろめた い気持ちを取り除 いてあげた いのです。 ﹁ のは自分 のワガ ママな のかなあ﹂とは思わせたくな いんです。
大人は後 ろめたさを感じながら、それとず っと付き合 っていく ことが できますが、こども
には できません。後 ろめたさがあ ると、 ﹁ 勉強しなき ゃ﹂と思 っただけ で金縛り にあ ってしま う ことだ ってあ るんです。
何をして遊んだか﹂を聞 いてあげ る こども に後 ろめたさを感じさせな いよう にするには、 ﹁
と効果的 です。遊びを途中 で切り上げ てきたとしても、親が遊び の続きを聞 いてあげること に
よ って、こどもは満足でき るからです。 ですから、たまには勉強 のことばかり言う のはお休 み
こどもの重い腰 を上げさせる秘技
やる気を引 き出す ―
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4 にして、こどもと遊んだ気 にな つた つもり で ﹁ 何をして遊んだか﹂で話を盛り上げ てくださ い。 5 ⑤ 一般的な話 ではなく ﹁ そ の子だけ の話﹂ をす る
翌日 通は∼と いヽ みんなは∼しているぞ﹂なんて話をすると、聞かされたほ つものだ﹂とか、﹁ うはゲ ンナリします。
なぜゲ ンナリし てしまうかと いうと、このよう な言 い方をされると、次 のよう になるから です。 ① 一方的 で、質問 ・反論を許されな い ② 一度聞けば、2度目からは聞きたくなくなる ③聞く側は漠然とした不安を覚え る
人は本来的 に分かり切 ったことを注意 される のを嫌 います。家 の中を掃除し ているとき に
﹁ ち ゃんとキレイ にしろよ﹂と言われると、途端 にやる気を失 います。洗面所 で手を洗 ってい
るとき に ﹁ も った いな いから水を出しすぎ るなよ﹂と言われると、も っと蛇 口をひねりたくな るも のです。
それと同じ で、 ﹁ みんな必死で勉強や ってるんだからお平 甲もやれ﹂と言われると、こどもは
そんなことは承知な ので、 つい ﹁ 友達はそんなに勉強 や っていな い﹂と言 い張りたくなるんで す。 ﹁ も っと遊びた い﹂と一 〓 甲つと バカにされるから、 ﹁ 友達も や っていな い﹂と言う んです。
「テレビを見続けていると この前みたいに勉強時間が なくなつち・ ゃうぞ」 「みんな 1日 3時 間勉強しているぞ」
親 しい人のア ドア ドバイス
一度聞いたことがあれば
生徒の状況に応 じて色々な
2度 目からは全 く効果がない
言い方で伝えることができる
生徒 │よ
具体的に 漠然とした不安を覚える
自分を見つめることができる
そ の子だけ の具体的な話﹂と これ に対し、 ﹁
は、 そ の子 の個 人的 な話 や アド バイ スです 。
﹁ 遊び時間を 1時間けず ってそ の分を勉強 にあ
てたら?﹂ とか、 ﹁こ のテレビ番組を見たら、
こ の前 みた いに勉強 しな いで1日が終わ つち
やう んじ ゃな い?﹂ と いう よう な話 です。 こ
ども自身 に ﹁ 何か不利益な こと が起 こる﹂ と
その いう ことを匂 わす のです。 こ のよう な ﹁
子だけ の具体的 な話 には、次 のよう な長所 が あります。
① こども に反論する機会 ・考える機会を与
え ることができ る
② こども の成長段階 に合わせ てアドバイ ス
することができ る
③ こどもは親近感を覚え て受け入れやす い
﹁ そんな生ぬる いことじ ゃ先が思 いやられる﹂
と感 じる方も多 いと思 います。 しかし、ただ
こどもの重い腰 を上げさせる秘技
やる気を引き出す ―
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一方的で質問を許さない
瑕瑕置
因因圃圃因圃園園 一 般 的 な 話
.
家と塾を行き来するだけ のこども には、 このくら いで十分すぎ るほど です。 ﹁ テレビを見続け
ていると、この前 みた いに勉強時間がなくな っち ゃうぞ﹂と言 い続け ていれば、自然と テレビ を見る時間は減 っていきます。これで十分なんです。
完全な勉強 モードを手 に入れる前 に、こどもが自分 の欲望を抑え たと いう人間的な成長を し っかり評価し てあげることが不可欠な のです。 ︻ まと め︼
ここま で読まれて、﹁ そんな の生ぬる い っ!﹂と田やつ万も多 いと思 います。
しかし、最近 のこどもは、逆境を耐え抜く忍耐力が ″ な い″、も のごとを やり遂げ る継続力 が ″ な い″、論理的思考力が ″ な い″、コミ ュニケーシ ョン能力が ″ な い″、などとボ ロク ソに 言われています。
こんな ﹁ ナイナイ尽くし﹂ のこどもを、 いきなり中学受験 のため の勉強 に向きあわせるこ とができるでし ょうか。塾 で落ちこぼれたら ﹁ そ の子 のせ い﹂な のでし ょうか。本書 の答えは ﹁ NO﹂ です。
こどもを受験勉強 に向かわせるには、 ﹁ 行動変容﹂ が必要 です。そ のため本章 では、まずは
こどもを こどもとして見るために、こども に乗り移 って考え る必要がある、中学受験はこども 自身を問題にする前 に、まずは大人がなす べき ことをす べき であ る、とお伝えしてきた のです。
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◆トビックス① あんた、勉強する気あるの? あんた 、勉強す る気あ るの?﹂ ﹁ あんた 、受験す る気あ るの?﹂ ﹁ あんた 、塾に行く気あ る の?﹂ ﹁
これ って、 つい言 いたくなりませんか? 私だ って言 いた くなります。
この ﹁ ∼す る気あるの?﹂と いう フレーズ 、私生活 でもありますね。
オ マエや る気あん のかよ お∼﹂ ﹁ あなた私を愛する気あ るの?﹂ ﹁ オ マエ練習す る気あん のかよ ︱﹂ ﹁
﹁ ∼す る気あ るの?﹂と いう フレーズ は激励だ った り意識 の共有 の表 明だ った りします 。言う側
は ﹁︵ 私はが んば っているのだ から、あむたも︶も っとが んば ろうね﹂と いうわけ です。 あなたは私を愛す る気が あ るの?﹂と は、裏を返せば 、 しかし、同時に手詰まり感も漂 います 。﹁
私とあなた の関 もうこれ以上私があなたを愛す る術はな い﹂ です 。﹁ 私は十分愛し ている﹂ し、﹁ ﹁ 係がうまく いくかど うかは、あなた次第な のよ﹂ です 。
あんた 、勉強す る気あ る の?﹂と いう のは 、﹁ 受験と いう のは 、いくら親が 受験 も同じ です 。﹁ 手を貸 し ても 、所詮は本人次第﹂と いう ニ ュアン スを感 じさせます 。激 励 の つもりが 、実は相手
を追 い込め ていた り、共感を 得ようと している のに、かえ って相手を突き放 し ているの です。 こ
こどもの重い腰 を上 げさせる秘技
やる気を引き出す ―
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うな っては事態が こじれ るば かり です。
﹁ 受験は本人次第﹂と いう考え方は 、﹁こど もに何 をや らすか﹂と いう発想 です 。数多 くあ る良 さそうな教材をそ ろえ て、それら の教材と こど もを土俵 に乗せ る。そ し て、土俵 の下から声援を 送 る。教材 ︵ 塾︶を与えたから、あと は本人次第 、と突き放 します 。
こう し て多 く の受験生が押 し潰され てきた のです 。確 かに、いい教材はた くさんあります 。 で も 、小学生 は教材を 取捨 選択 す ることが できません し 、教材を与えたらそれ で終 わり でもありま せん。だ から 、こど も の成績が上がらな いと きに、﹁ 所詮受験は本人次第﹂と言 って突き放す のは 残酷 です 。
受験 で最も大切 な のは ﹁ 本 番 に強 い子に育 てる﹂ です 。本番 で戦 ってく る のは ﹁こど も自 身﹂
、教材や塾 です 。だ から 、 ど ﹁ こ 自 を も 身 変 え り ﹂ ﹁ 一 回 二 り が る も 回 も 成 長 せ で さ ﹂ こ と 一 番 る を効率よく利 用す ること は 二の次 です 。そ こ では ﹁ 何をやらすか﹂と いう こと より 、﹁ だ れがす る 。 の が か 決 定 的 に で ﹂ 重 要 す ﹁ 何をやらすか﹂を ﹁ 体﹂と す ると 、﹁ だ れがす るのか﹂ は ﹁ 心﹂ です 。﹁ 心﹂を抜きにしては何
も始まりません。﹁ 心﹂を無視 したまま ﹁ 体﹂ に気を つか っても、やが て行き詰ま るも のです 。 な ので、相 手を責め立 てた くな った ら 、﹁ 愛し合 った ころ﹂ ﹁ 勉強が楽 しか ったと き﹂ にもど っ て、少しず つ共感を取り戻す努力が必 要にぢるのです。
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辟
成功体験 を味わせる り状態か ら脱出させる秘技 F口 F ¬ =握
「やればできる(小 さな成功体験 ヘ ◆「自分からやってみよう(行 動変容 から 勉強
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こども の褒 め方 先生 と の信頼 関 係
作 り方も お教 え します
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ゴ二
結果だけをも つてこようとするこどもたち
こどもが自発的 に勉強 に取り組むよう にな ったら、次は小さな成功体験を味わせる段階 に
進 みます。 この章 では、 ﹁ 結果だけをも ってこようとするこどもたち﹂ に、自分が求められて いることを理解させ、ど のよう に小さな成功体験を味わせるかを取り上げます。
﹁ 結果だけをも ってこようとするこどもたち﹂とは次 のようなこども です。 *﹁ すぐ答えを聞きたがる﹂ * ﹁一度 つまずくとやる気を失ゝ 2 *﹁ 間違 いを指摘されるのが嫌 い﹂ *﹁ 親が教えようとす ると反抗する﹂ *﹁ 何 でも上 っ面に触れるだけでや ったような気 にな っている﹂ *﹁ 単純なミスが多 い﹂
*﹁ 難し い問題になると固ま ってしま い、机 の前 で放心状£ 悪になる﹂ * ﹁ 友達はそんなに勉強していな いと言 い張る﹂
0点を目指そうね﹂ ﹁ 結果だけをも ってこようとするこどもたちは、親 や先生が ﹁ 次は 8 次は
分か った﹂と即答 します。 ﹁ 質問はな いの?﹂と聞く 偏差値を 5だけ上げようね﹂と言うと ﹁
でき と ﹁ 大丈夫﹂と言 い切ります。そんなに簡単 に成績が上がるはずもな いのに、たやすく ﹁
る﹂と言 い切るのです。 でも現実は甘くありませんから、やがて現実と のギ ャップ に混乱して 反抗したり、ごまかしたりするよう になります。
結果だけをも ってこようとす る﹂ のは、 こどもだけ の責任 ではな このよう に、 こどもが ﹁
く、大人がそうさせている面もあります。中学入試 では親がこども の勉強に関与せざ るを得な 孟自成果を測 ってしま いがちになるからです。ですから、 い部分があ るので、勢 い大人 の基準 でき
2考え方を、 ﹁ 早く結果をも ってこ い﹂と いヽ 結果は後か まずは大人がそれを改めるべき です。 ﹁ ら ついてくる﹂と いヽ 2考え に変えなければなりません。
こんな こどもたち には、 いきなり大きな結果を要求せず、まず ﹁ 小さな成功体験﹂を積 み
上げさせる必要があります。とりあえず、小 テストとか範囲指定 のあ るテストで いい結果を出 させてあげ てくださ い。過大な要求は禁物 です。
大幅な成績 ア ップ﹂だけ に目が向 いて います。本 結果だけも ってこようとす るこどもは ﹁
日々の努力﹂ に目を向け て欲し いのに、結果だけ早くみせたく て焦 ってばかり います。 当は ﹁ 結果﹂ ではなく て ﹁ 努力過 いくら念じたと ころで成績が上がるはずもありません。だから、 ﹁
程﹂ に目を向かせ、まずは ﹁ 小さな成功体験﹂を 一緒 に積み上げ ていくことが必要な のです。
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験を味わせる 一
step 2
61
■■■■■‐■―│■ ‐
きません。プ ロ棋士 で有名な羽生善治さんは、入門当初は実力よりかなり下のレベルから始め
出せな いこども︶ に対して、はじめから実力以上 の課題を与え ては、勝負強さを培うことはで
しかし、それは次章 の問題 です。結果だけをも ってこようとす るこども ︵ 勉強 に課題を見
強さが決定的 に重要な のです。
れば不合格。反対 に、本番 で実力以上 の力を発揮して合格するこどもも います。受験 では勝負
自身﹂ です。受験 で 一番重要な のは ﹁ 本番に強 いこども に育 てることができ るかどうか﹂ にあ ります。この 一点 のみだと言 っても過言 ではありません。 いくら優秀でも本番で得点 できなけ
マがあ ったら、さ つさと先 に進めてしまえ﹂と言 いたくなるお気持ちもわかります。 しかも、先述したよう に ﹁ 受験は こども次第﹂ です。本番 で戦う のはほかならぬ ﹁ こども
のです。そこ へ ﹁ 小さな成功体験﹂なんて い ってもピ ンと こな いかもしれません。 ﹁ そんな ヒ
むま でが 一番苦し いのです。自分 のペースでせ っせと こなせるよう になるま でが本当 に苦し い
率と の戦 いです。大量 の課題を いかに要領よく こなすかが大切な のですが、そ のペースを つか
現在す でにお子さんを塾 に通わせ て いる方はお分かりだと思う のですが、受験は分量 や効
大きな成功よりまずは小さな成功体験
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たそう です。師匠 のご判断だ ったそう ですが、連戦連勝を重ねた方がし っかりした実力が つく
から、と いう のがその理由だ ったそう です。 中学受験 でも同じだと思う のです。親 や先生 には欲目がありますから、 0 1題 の問題を出し たら7題くら いできれば いいかな、 って思ゝ つものです。 0題中 7題﹂ の正解を求めるべき ではあ しかし、 ﹁ 結果だけをも ってく るこども﹂ には、 ﹁1 5題中5題﹂ にす べき です。 これが小さな成功体験 りません。せめて分量を半分 に減らして ﹁ のイ メージです。
具体的 には、分量で いえば ﹁ 授業 で扱 った問題だけを徹底して身 に つける﹂、教科 でいえば
﹁ 1教科だけ でき ても仕方な い﹂と いう のも現実 ですが、 飛びぬけ て強 い教科を作 る﹂ です。 ﹁
せるため の
しかしそれは最終的な試験本番ま での話 です。普段 の学習 では徐 々に成績を上げ ることが大切 です。ぶれな い教科が1科目でもあれば、危機に陥 つたとき にそれが突破 口となります。
基本的なアプ ローチ
試験本番 で力を出し切れるよう にす るには、小さな成功体験を積 み上げ て勝負強さを養う ことが必要だと いう ことはお分かり いただけたと思 います。
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験 を味わせる ―
step 2
63
ただ、小さな成功体験ばかり で いい気 にな って いて、 こなす分量が いつま でた っても増え なければ、受験 に間に合うはずがありません。受験 には厳然たる ﹁ 期限﹂があるのです。だか ら、本 ステ ップ で ﹁ 結果だけをも ってくるこどもたち﹂ に成功体験を味わせた後は、次 ステ ッ プで ﹁ 自分 のペースが つかめず にあたふたするこどもたち﹂ に耐性 や教科結い 断型 の学羽 皇肛力を つける必要があるのです。
本 ステ ップと次 ステ ップと では、こども に対す る アプ ローチが大きく異なります ので、 こ
こで予めそ の違 いを確認しておきた いと思 います。 まず、本 ステ ップ で想定する ﹁ 結果だけも ってくるこども﹂ は、自 ら進んで勉強をするも
のの、先が見えな い状況 に置かれています。 ﹁ 穴 の掘り方は正し い﹂ のに ﹁ 掘 ってる場所が違
埜悪で、これには想像を絶する苦痛を伴 います。意味が分からな い作業を やり続け う﹂と いうこ ることはと てもキ ツイことなんです。
ですから、﹁ 結果だけも ってくるこども﹂ に対しては、大人がこども の苦痛を和らげるため に、完璧を目指さず、達成感があればよしとするべき です。このレベルでは大して難し い問題
を扱うわけ ではありませんから、 いや いやでも できるよう になりますし、志望校が決ま ってい
なく ても でき るよう になります。変な話 ですが、お金 やモノで釣 っても いいんです。小学生は
ただ でさえ中学生よりも多 い勉強量をこなさなければなりません。それな のにこども に つらく
あたるば っかりだと、せ つかく の生 叩刀を引き出せな いで終わ ってしま います。
64
■Step 2■
.・
‐ ‐―
‐ _‐ ・ ・ ■
F● │`=を ,│││ら ││● │●
Step 3
ベ 「 やればできる」から「もう大丈夫」ヘ できる」
不安 だ らけ、場当 た り的 、
受 け売 り、できたつ も り
や り残 しが多い
11燃 1燎1爾
チ
憮蜀餘 ※継続性 ・ 耐性 、教科横 断型の解 決能
※不安 ・ ス トレスの緩 和 、承認 が必要。 定型 的 ・基本的作 業 は 、だれでも、
力 をつける必要 があ る。複雑 で知的 な作業 は、 自分で なん とき ゃ しな き
いやいやでもで き るよ うになる
ゃと思わない と、乗 り越 えるこ とが で きない 合格 、学力向上 、人 間的成長 (勉 強 以
│を│わ 1饉
目標は成績・志望校以外のものでよい。 教材はマニュアルさえあればよい
外 の ことで行 き詰 る ことはない )。 マニ ュアル以外の「 自分 の経験 」「 他 人 の経験 」も取 り入 れ ることが必要
小学生は批判能力 に乏しく、親 への依存度
手探 り状態 から脱出させる秘技
がと ても高 いも のですが、大人からみるとそ れが頼りなく感じてしま います。そヽ ?すると、
親は こどもたち に、勉強だけ でなく、し つけ
し っかりし て欲 し い﹂ ﹁ の意味 からも ﹁ 自立
して欲し い﹂と願うも のです。
しかし、し つけは物事 の差呈心の判断 ですか ら、こどもはし つけ の有用性を容易 に判断し
成功体験を味わせる 一
てそれに従う ことができます。これに対して、
学習内容は学年 が上がるに つれ て抽象的 にな
りますから、勉強 に ついていけるこどもとそ
う でな いこども に大きな差が生じ ていく こと になります。
step 2
も し勉強がはかどらな いこども に対し て、
し つけと 同じ よう に勉 強面 でも 厳 しく した ら、 こどもは自分 の能力を疑 い、やが て挫折
し混乱します。す ると幼児 に逆戻り してしま 65
い、もはや ﹁ 理性﹂ や ﹁ 言書と が通用しなくなります。
し つけ﹂と ﹁ ですから、上手 に合格を手 に入れた いならば、 ﹁ 受験勉強﹂は区別し、し つけ
はし っかり教え ても、 ﹁ 受験勉強﹂ に ついては寛容な態度 で接す ることが必要な のです。 こど
もが ﹁ これならや っていける﹂と いう確信を持 てるよう になるま では、こどもをせかしてはな らな いのです。
こうし て勉強 で達成感を得た こどもたちは、次 のステ ップ で いよ いよ ﹁ 分量﹂ ﹁ 効率﹂と の
戦 いに入ります。問題も難しくなり複雑な作業も伴 いますから、こども自身がなんとかしなき
ゃと思わな いと乗り越え ることができません。適度な ストレスを与え ること によ つて耐性を つ
けなければならな いのです。受け売りばかりするこども や、 できた つもり のこども に根本的 に 考え方を変え てもらう必要があるのです。
そこで次 ステ ップ では、 これま では他人 の助力 のおかげ でできた ことを理解させ、 一から
自力 でやるにはどうす ればよ いかを こども に考え させます。 一から自力 でやる以上は、継続
性 ・耐性が求められます。また、強化横断型 の解決能力を身 に つけさせな いと いけません。 こ れが ﹁ 自立 への第 一歩﹂ です。
そ こでは、どう や って上手 にこどもを突き放すかが問題 になります。少し可愛そう になる
ときもありますが、受験 には期限がありますから、親はどうしても鬼 のよう に接せざ るを得ま せん。 ですから、次 ステ ップ での行動原則は、 ﹁ 鬼行動﹂ です。 こどもは教わ ったことは忘 れ
66
′
ますが、叱られたことは忘れません。鬼行動はこども の財産 になります。 いかに鬼 に徹するこ とができ るかが、こども の将来 に大きく影響します。
こう し てみると、 いきなり次 ステ ップ に飛んで いき たくなりますが、鬼行動が功を奏す る
のは、本 ステ ップ で扱ヽ 鬼行動﹂と 2寛容な接し方を身 に つけた場合だけです。そ の接し方は ﹁
正反対 の ﹁ 仏行動﹂と いえます。 いずれにしても、くれぐれも ここでの内容を十分 に理解して
くださ い。 ﹁ 勉強が楽し い︱﹂と思う こどもだけが学力を伸ばす ことができるのですから。
小さな成功体験を味わせる秘技①
こどもを上手に コント ロールする手法
こども に勉強を教えようとし ても、反発してどう にもならな いことがあります。そんなと
も っと手 っ取り早く でき る のに﹂ き には ﹁ せ っかく教え てあげようとし ている のに﹂とか、 ﹁
などと思 ってしま い、もどかしく感じるも のです。実際 ﹁一緒 に勉強しようとしたらバトルに
な ってしま った﹂なんて家庭は非常に多 いのです。 実は、勉強を教えようとす る前 に、 こどもが親を指導者とし て認知し て いるかどうかが重
要な のです。 ﹁ 問題 の答え さえ知 って いれば勉強を教え られる﹂と いゝ ?ものではありません。
タテの関係﹂を作り出しておく必要があ るのです。 勉強を教え る前 に、指導者と生徒と いう ﹁
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験 を味 わせる ―
step 2
67
4
や さ し さ
低 ← 生 徒の 満足 度 → 高 低 一 生徒の ス トレス → 高 低 ← 生徒の 満足 度 → 高
←弱
←弱
↓ 少
強→ 厳 格 さ
強→ 厳 格 さ
多 ↑
爾国は爾調 厳格さとス トレス
やさしさと満足度
そこで、 ﹁ タテの関係﹂、すなわち指導者と生徒、教え る側
と教わ る側 の関係をど のよう に構築す るかが問題 になりま す。タ テの関係は、 ﹁ 親 の態度﹂と ﹁ こども の満足感﹂ と の
相関関係 で決まります。そ の相関関係 の内容は次 の3 つです。
︵ そ の 1︶﹁ 仏行動﹂と ﹁ こども の満足感﹂は比例する
︿ そ の2﹀﹁ 鬼行動﹂と ﹁ こども のストレス﹂は比例する
︿ そ の3﹀厳格さを維持する ︵ ﹁ 鬼行動﹂と ﹁ こども の満足
、と いうも のです。 感﹂と の間に相関関係はな い︶
︿そ の1﹀と ︿そ の2﹀は分かり やす いですね。 やさしく、
愛情た っぷり にこどもを愛 でてやれば、こどもは満足します。
小6の男子だ ってお母さんにまとわり ついて優しくしてもら いた いときがあるはず です。そんなとき に、甘え てくるこど
もを叱 つたり突き放せば、こどもはとまど いスト レスがたま ります。
難 し いのは、 ﹁アメ﹂と ﹁ ムチ﹂ のバランスです。 やさし
いばかり ではこどもは つけ上がり、言 った こと には耳を傾け
68
なくなります。かと いって、叱 ってばかりだと、こども の頭に親 の言葉は残りません。親 の言 いつけを守らな いこどもは、親 の愛情を受ける資格がな い、 って言 いたくなります。
こども の満足感と の間 に相関関 鬼行動﹂と ﹁ そ こで、︿そ の3 ﹀が重要 にな ってきます。 ﹁
厳格さを維持する﹂ です。人は目 の前 に立派な人が いると、そ の人 に頼 ろうとし 係はな い﹂ ﹁
ます。学校 でいえば、シャキ ッとしていては つら つとした先生はこども の信頼を得やす いです し、一 容廷で いえば、母親より、なんとなく立派なことをしていそうな父親 の言う ことをよく聞 くも のです。
厳格さ﹂と いう のは、 モノサシを 指導者 にと つて、 ﹁ 厳格さ﹂ は必要不可欠な要素 です。 ﹁ 家事 の手伝 いをすれば多少 テスト の得点が低く ても大目に見る、 多く持たな いと いう こと です。 なんてことはダ メです。し つけはし つけ、勉強は勉強、 です。学力と いう モノサシのほか に、
いい子とか優し い子など のよう にモノサシを多く持 ってしまうと、こども に言 い訳 の余地を残
してしま いますし、こどもだ って言 い訳をするのは実は苦し い。 ですから、勉強 に集中す るた めにも、こどもは厳格さに寄り掛かりた いも のな のです。
もう叱らな いか と ころが実際 には、こどもと対立し て ニッチもサ ッチも いかなくなると、 ﹁
ら⋮⋮﹂なんて言 ってしまう ことがあります。しかし、叱 った直後 にとたんに態度を翻し て、
﹁ もう怒らな いから﹂と言 ってこども の機嫌を直そうとし ても、 こどもは満足しません。 こど
さつ もは、大 の嗅覚ほど の鋭敏さをも って親 の意向を嗅ぎ分ける能力を持 っていますから、 ﹁
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験 を味わせ る一
step 2
69
き の叱 った能い どうせまた怒るんでしょ﹂と身構え ています。 度は いった い何だ ったわけ?﹂ ﹁ だから、 ﹁ 厳格さ﹂と ﹁ こども の満足感﹂ に相関関係はなく、厳格さは貫徹しな いと いけな
いのです。悪 いことを見 つけたら、見 て見ぬふりしてやり過ごしては いけな い。悪 いことは悪 いとすかさずピ シャッと言わなければなりません。受験生にと つて悪 いことと いう のは、自分 の不得意 に目を向けな いと いう こと です。
人は自分 の得意 に目が いけば慢心す る、反対に自分 の不得意 に目が いけば謙虚な努力家 に なれます。 一日のうち に必ず 一つは改善点を見 つける、そうした克己心が受験生 の未来を保証
するのです。 こどもたちが慢心に陥 ったとき に、そ の精神 の緩みをビ シ ツと引き締め てあげる のは親 の責務 です。
そして、叱 った後は ﹁ 叱 る側﹂と ﹁ 叱られる側﹂ があ べこべの立場 にな っては いけません。
そう しな いと、親だ つて、愛しながら責めた てる矛盾した感情を克服することができません。 こどもと接するとき には、﹁ 厳格さも優しさもし っかり表現す る﹂ こと です。優しさだけ で
は誤解を生みますし、厳格さだけでは耳を貸してもらえません。また、こどもと の関係がこじ
れたら、仏行動を強めるべき であ って、鬼行動を弱めては いけません。せ っかくがんば って怒 っても、急 に態度を軟化させたら、親 の言葉はこども の頭には残りません。それは、 こども に
何も言 っていな いのと同じこと です。 ただ、先述したよう に、 ﹁ し つけ﹂ はし つかり区別する必要があります。人 受験勉強﹂と ﹁
70
し つけ﹂ に関しては日頃から厳格 に接するべき です。 いつでも “ としての ﹁ ビシャ″ っと言え る準備をし つつ、厳しさを匂わせておきます。そうした雰囲気だけ で言う ことを聞かせるのが 理想 です。
これに対し て、勉強 に ついては、現在取 っている行動が ﹁ 威圧﹂な のか、それとも ﹁ 威厳﹂
な のかを意識し て接す る必要があります。 ﹁ 威圧﹂と ﹁ 威厳﹂は人間関係が信頼 の上 に成り立 っているか いな いか の違 いです。
﹁ 威圧的な接し方﹂がこどもを強制的 に従わせる行動 である のに対し、 ﹁ 威厳 のある接し方﹂
はこどもを自発的 に従わせる行動 です。威圧的な態度 に対しては、こどもは案外冷めた日で見
ていて、 ﹁ 言う ことをきく べきか、聞く べき ではな いか﹂と いう損得勘定をします。これに対
して、威厳 のある態度 には、こどもは共感を覚え、 ﹁ 自分はどうす べきか﹂を考え るよう にな ります。
計算 ミスが多 い﹂と嘆く親は多 いです が、計算 ミスが多発する原因は単純 です。 例えば、 ﹁
要領が悪 い、ただそれだけ です。要領が悪 いのは頭 の中が整理されていな いからですから、自
分 で段取りを組めるよう になればミスはなくなります。計算問題を いくら解かせても ミスはな くなりません。問題 のストーリーを読み解く ことができ る力が計算 ミスを減らす のです。
それな のに、普段からまくし立 ててお いて、そ の結果 ミスを したら非難す る のは生産的 で
はありません。計算 ミスを多発するのは、教える側が ﹁ 早く正確に計算するのは当然だ﹂と威
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験 を味わせ る 一
step 2
71
圧しているから です。そう ではなく て、本を読み聞かせるよう に、 こどもと問題 のストーリー
を 一緒にたど つていく、そヽ ?すること によ つてこどもは大人 の威厳を感じる のです。
入試 の直前 にな っても ミスを連発されると、 ﹁ あんた大丈夫な の?﹂なんて思 ってしま いま すが、これを 国にしてしまうと、かえ ってこどもを追 い詰めてミスを誘発します。こどもを心
配する気持ちを 口に出さず に耐え るのは辛 いも のですが、本当 にこども のためを田やつ気持ちそ のも のが ﹁ 威厳﹂な のです。
し つけ﹂ の場面 では、 ﹁ 勉強以外 の ﹁ 威圧﹂とか ﹁ 威厳﹂などと考え ている暇なんてありま
し つかりしなさ い﹂ ﹁これはダ メ﹂ で いいんです。しかし、勉強 の場面 では せん。厳格 に ﹁
﹁ 威圧﹂ ではヽ つまく いきません。勉強は基本的 に知的な作業 ですから、指揮命令 にはなじみま せんし、勉強は面白 いと田やつこどもだけが成績を伸ばしていくも のです。
こどもを上手 に勉強 にのせていく手法 の核 になるも のは ﹁ 威厳﹂ です。 ﹁ 答え﹂ や ﹁ テク ニ
ック﹂を知 っているかどうかは重要 ではありません。 こども にあれこれ与えたがる人は、他 の 人 の手を借り てこどもを威圧しようとする人 です。
こどもを上手 に コント ロールするためには、大人 の都合を引 っ込め て、自分 にしか持ち得
ない ﹁ こども のことを本当に思う気持ち﹂を こども に伝えることが決定的に重要な のです。
72
小さな成功体験を味わせる秘技②
褒めて ﹁ 伸 ば す ﹂メカ ニズ ム 褒めて ﹁ 伸 び る ﹂メカ ニズ ム 、
■,)・ │■・■ ・ ■‐
.`
褒め て伸ばす メカ ニズ ム﹂を知らな い 褒め方﹂、 つまり ﹁ 褒め てもうまく いかな いのは、 ﹁
てばかり でも モチベーシ ョンは 一向に上がりません。
るわけでもありません。褒めてばかり では いい気 にな って終わり です。とは言 っても、けなし
と ころが、褒 めたからと い つて、必ずしも成績が伸び るとは言 い切れませんし、伸び続け
良さ﹂ に気付き、物事に一 印同き に取り組むよう になること です。
自分 の 褒め て伸びる﹂とは、それま で自分 では確認 できなか った ﹁ と自覚する、から です。 ﹁
人からすご いと認められる﹂← ③ ﹁ 自分はやれば できるんだ﹂ ① ﹁いい成績をとる﹂← ② ﹁
こどもたちが褒められて伸びるのには理由があります。それは、
伸び続ける﹂と言われます。
叱り続けたこども のグループは頭打ち になるのに対し、褒め続けたグループは は当然 です。 ﹁
らなくな ってしまう ことさえあります。こどもだ って褒められれば モチベーシ ョンが上がるの
︲ 人は褒 められれば気持ちが高揚します。あまり に舞 い上が って、何を言 っていいやら分か
「
から です。褒め方を間﹂ 導えると、せ っかく褒めても逆効果になりかねません。上手な褒め方と
手探 り状態 から脱出させる秘技
成功体験 を味わせる―
step 2
73
0
いう のは ﹁ 最初にけなし、後 で褒める﹂ です。 例えば、 ﹁ なんでも手を出す のは いいんだけど、失敗ばかりだな﹂ ﹁いつも頑張 っているのは分かるんだが、結局長続きしな いな﹂ なんて言われたら、だれだ つて ヘコみますよね。
褒めた後にけなしていた のでは、褒めたことにはならな いのです。 これに対し て、
﹁ おまえはドジだなあ。 でも、なんでもチ ヤレンジする精神は立派だぞ﹂ ﹁ すぐ諦めるなんて情けな いなぁ。 でも、おまえが いつも頑張 っている姿は見 ているぞ﹂ と言われれば気持ちがユ 則同き になります。
このよう に、 ﹁ 最初 にけなし、後 で褒める﹂が いいのです。 ただ、 いくらけなす ことが必要だと い つても、 こども の ﹁ 能力﹂をけなす のはタブーです。
能力を否定されると人はと ても落ち込むからです。でき るだけ、運やタイミング のせ いにした り、大人 の気持ちを言う にとどめるのがよ いのです。
それ でも つい能力をけなし てしまう人も います。 ﹁ この成績はダ メね﹂ ﹁ 何回や っても ダ メ ね﹂ です。このよう に、こども の ﹁ 能力﹂をけなしたくなるのは、他 のこどもと競わせること
に目が いっているから です。人と比 べること に力が入る。だから、競争 に負けると辛くあた っ
て、 つい能力をけなしてしまう のです.
競争を意識す るな﹂と いう のは ムチ ャな気がします。しか 確か に、受験は競争 ですから ﹁ し、競争はあくま でも こども本人が自分 の置かれた情況を意識しな いと意味がありません。競
争 には戦略を伴うから です。 しかし、 ﹁ 結果だけをも ってこようとするこども﹂ にそれを期待す るのはムリです。むしろ
競争を意識させようとすると逃げ出す可能性 のほうが高 いのです。競争を意識させるよりも、
今日 の前 にある課題にじ つくり取り組ませ、小さな成功体験を積ませるほう が先決 です。
繰り返しますが、上手な褒め方は、 ﹁ 最初 にけなし、後 で褒める﹂ ﹁ 能力はけなさな い﹂ で す。競争 に目を奪われ て、 こども の大切な能力を潰してはなりません。長 い日でみると、能力
は ﹁ 比 べるも の﹂ ではなく、 ﹁ 共有す るも の﹂ です。人 に勝 つことばかり考え ている人には限
界が訪れます。そうならな いためにも、他人 の能力と自分 の能力を共有する、そうした視点を 持 っておく ことも大切です。
心理学 の実験 で有名な話があります。学校 で担任を引き継ぐとき、 ﹁ あ の子は いい子だよ﹂
と言 って引き継ぐと、新し い先生はその子を ﹁いい子﹂として扱 います。そうすると、そ の子
はますます伸びるそう です。だまされたと思 って、自分 のこどももそう いった目で見 ていては いかがでし ょうか。
手探 り状態 から脱出させる秘技
成功体験 を味わせ る 一
step 2
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小さな成功体験を味わせる秘技③
こどもを褒める基準を持つ
仏行動 のあり方は、先 に示したよう に ﹁ 最初 にけなし、後 で褒める﹂ です が、次 は ﹁ 何を
人 で、 いわば個人商店 の経営者 みた いな人 です。 こう いう人 には、①自分 で意思を決定す る、 ②教わ るのではなく学ぶ、③ ″ 自分にと って″ でき るかできな いか5分 5分 のと ころでがんば
達成意欲 の強 い人と いう のは、簡単 に いうと独立自営 の意識が強く、自己管 理に力を注ぐ
成意欲﹂ に裏打ちされ ていますから、達成意欲を伸ばせる点を褒めるべき です。
そこで、受験 に強くなるには こども のど こを褒めれば いいか、が問題 になります。受験 で 一番大切な のは ﹁ 本番 での勝負強さ﹂ です。勝負強さは、何がなんでも合格した いと いう ﹁ 達
て虚し いだけ ですよね。
われた経験 のある方も いると思 いますが、余計 に褒めてしま っては親 の欲目がバレバレにな っ
勉強に粘り強さがでるとは限りません。塾 の先生 に ﹁ 褒めると ころを探してでも褒めろ﹂と言
女性は 一層念入り に化粧をすること でしよう。 しかし、こども に対して ﹁ も のすごく頭が良くな ったね﹂ ﹁ すご いじ ゃん﹂と褒め続け ても、
褒めていいか﹂が問題となります。女性 に対して ﹁ 最近キレイにな つたね﹂と褒めれば、そ の
6
る、と いう特徴 があります。
① 自分 で決 めた ことを実行 した点を褒 めよう
校庭 自分 で意思を決定したことならば、多少 の困難は自力 で乗り越え ることができます。 ﹁ 0周走ると決めれば辛さはなくなり、意欲 0周走れ!﹂と△ を1 哭下されれば辛 いですが、自分 で1 をも って取り組む ことができ、楽し いとさえ感じます。
達成意欲 のあ る人は、強制されれば苦痛、自分 で決めれば楽 し い、と いう ことを明確 に意
識している人 です。だから自分 で決めたヽ ?えで物事を 進めようとするのです。
もち ろん、自分 で決めた ことを達成 できな いときもあ るでし ょう。しかし、たとえ自分 で
決めたことを達成 できなか ったとし ても、達成しようと心 に決めたこと自体もひ っくるめ て無
意味となるわけではありません。むしろ、試行錯誤を繰り返すからこそ、徐 々にではあ っても、 現状を踏まえた的確な意思決定ができ るよう になります。
ですから、ど んな小さな こと であ っても、自分 で目標を立 てさせ、それを達成したら ベタ
褒めしてあげ てくださ い。反対に、命令されてしぶしぶや ったことは絶対褒めません。このギ
ャップがこども の心を打ちます。また、 ﹁ 成績が伸びたら褒める﹂ では、褒めるネ タが途切れ
自分 で目標を達成したら褒める﹂なら、ネタが尽き ることはありません。 てしま いますが、﹁ まずは、 1日単位から計画を立 てさせ てみます。次第 に期間を長くして いき、 1週間、 1
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験を味わせる 一
step 2
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ヶ月ま で伸ばしていきます。大事な のは、親が絶対 にリードしては いけな い、と いう こと です。
どんなも のでも いいから 1日の計画を立 てなさ い﹂と水を向け続けます。 こども に ﹁ そし て、 いざ実行段階 に入 ったら、 こども に気付かれな いよう に計画がうまく いくよう取 り計ら つてあげ、計画を達成したら ベタ褒めします。計画を達成 できなければ、うまく いかな
か った原因を話し合 い、次 の計画に つなげ ていきます。こうして自分 で計画を作れるよう にな ったら、そこを褒め続けるのです。き っと態度がシ ャキ ッとすること でしよう。 ② 学 ぶ姿勢を褒 めよう
次 に、 ﹁ 教わ る﹂ ではなく ﹁ 学 ぶ﹂と いう姿勢 のこども ですが、これは例えば、友達同士 で
勉強を教え合うような こどもたち です。 こうした姿勢をも つこどもは受験に強 いです。
友達同士 で勉強を教え合う こどもたちは、常 に知識を アウトプ ツトす ることを意識し て い ます。 ﹁ 授業 で習 ったことを試してみた い﹂ ﹁ そんな ことはオレに任せろ﹂と いう ﹁ 学 ぶ姿勢﹂
を持 っています。また、お互 いに教え︿甲つこと で自分 の誤 った思考に気付くことも できますし、
くじけそう にな っても励まし︿甲つことができます。ただ授業を受けるだけ の ﹁ 教わる姿勢﹂ で は挫折しやす いですが、友達 の輪を作 って ﹁ 学ぶ姿勢﹂を持 つこどもは勉強が長続きしやす い のです。
ですから、こどもが友達と勉強を教え合 ったり、人の分からな いところを解決してあげた
78
りしたら、そこを褒め てあげ て欲し いのです。とき には勇 み足 で傷 つく こともあ るでし よう。
そんなときはそ の子 のプ ライドは傷 つく でし ょう が、別 に悪 いことをしたわけ ではな いので、 学 ぶ姿勢﹂を褒めてあげ てくださ い。 やはり ﹁ ③自 分 で計 画を立 ててそ れを実行 した ら褒 めよう
小学生 の勉強を見 て いると、す でにでき るよう にな ったと ころを重点的 にせ っせと取り組
んでいるケースが思 いのほか多 いも のです。反対 に、塾から到底 こなし切れな い大量 の宿題を
出されて、やみくも に時間を浪費させているのもよくあるケースです。
菫十に目を向 かせ、毎 日 コツコツとそれに取り組んで い このよう ようなとき には、自分 の一
く必要があります。しかしそうは分か っていてもなかなか長続きしな いのも現実 です。
なぜ長続き しな いかと いえば、 こどもが自分 で自分を勉強 へ駆り立 てることが できな いか
らです。やらなき ゃいけな いのは分か っているけど、どう頑張 つていいか分からな いと いう状 。 で十ノ 能い
自分 で自分を動機付ける﹂ です。自分を勉強 へと動機付ける そこで効果を発揮す るのが、 ﹁
には、希望を持 つ、自信を持 つ、好奇心を持 つ、計画を立 てる、などがあります。
計画性﹂ です。 こ の中 でも、結果だけを持 ってこようとす るこども にと つて必要な のは ﹁
結果だけを持 ってこようとす るこどもたちは、以前 でき るよう にな ったこと や習 ったことをす
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験を味わせる 一
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ぐ忘れるなど、勉強が行き当たりば ったりだからです。
確かに受験勉強 にお いては、塾 のカリキ ュラムが ペー スメーカーとし て重要な役割を果た します。中学受験 でもそれは変わることはありません。しかし、ここで誤解しては いけな いこ
とがあります。それは、塾 のカリキ ュラムを こなしていさえすれば偏差値が上がると いう思 い 込みです。
塾 にせ つせと通 って、友だちと同じよう に勉強して いる のに、自分 のこども の成績は悪 い。
このような嘆きは、塾 のカリキ ュラムを こなしていれば偏差値が上がると いう思 い込みに根ざ したも のです。
塾 のカリキ ュラムを こなし ていれば偏差値が上がるなんてことはありません。あくま で自
分 の不得意 に労力を割くから偏差値が上がるのです。そして、自分 の不得意は自分 で明確 に意
識できる必要があり、それを可能 にする のが勉強計画な のです。勉強計画は自分 で作 って初め て自分に対する動機付けとして機能します。
ですから、勉強計画は不完全 であ つても こども に立 てさせる、 これが本当 に重要 です。そ して、ここでの親 の出番は、こどもが 躙%の力を発揮 でき るよう に補助してあげ ること です。
例えば、かけ っこをす る場合、到底勝 てな い相手と競争す るとき は、初めからやる気を失 いますが、勝 つか負けるか分からな い相手 であれば、自分 の力を %発揮しようとします。ま た、絶対勝 てるよヽ 盟ギする気 にすらならな いでし よう。 つな相手とは量
80
同じよう に、 こどもが初めから到底 ムリな計画を立 てて いたり、明らかに余力をも てあま
すような計画を立 てていたりしたときは、こどもは 則%の力を発揮することはありません。 こ
んなとき こそがチ ャンスです。成績が落ち込むはず ですから、親が子ども に対して、できるか
できな いか 5分 5分 のと ころで頑張れるよう にそ っと協力してあげ るのです。
具体的 には、宿題 や課題が多すぎれば学校 や塾 の先生 に頼んで減らしてもらう ことも必要
でし ょう。また、こども のやる気が見られな いときは、こども に寄り添 ってあげ てこども のペ ースを回復させてあげることも必要 でし ょう。
大切な こと は、 こども自身 が自分 で自分を奮 い立たせ、全力を出し切 って いるかどう か、 です。常 に人と比 べて追 い詰めるようなことをしては いけません。どんなに いくら頑張 ったと
しても、結局は他人と比 べられては、達成感も吹き飛んでしま います。 しかも、人を基準 に目標を設定す ると ﹁ あせる 。油断す る 。諦める﹂ に つながり、結局は
挫折してしま いがち です。恐ろし いのは、能力がな いこと ではなく、やる気が失せることな の です。
褒める基準﹂ です。大人がし っかり褒める基準を持 つことは 以上がそれぞれ のこどもを ﹁
と ても重要 です。偏差値が上が ったとか、 テストの点数が上が ったとかは、こども の日からみ
ても分かること ですが、 ﹁ ① 自分 で意思を決定したか、② 教わるのではなく学 んで いるか、③ ″ ユ企質的な 自分にと つて″できるかできな いか5分 5分 のと ころでがんば っているか﹂と いヽ
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験 を味わせる 一
step 2
81
″″
部分はこども には分かりません。表面上 の成果だけならこども でも判断 できますが、それだけ だと本質を見誤ります。だから大人が常 に本質を意識して誘導してあげる必要があるのです。
小さな成功体験を味わせる秘技④
訃響珈轡騨警彎
月 に1回と い った具合 に、なる べく定期的 に連絡をと ると、親近感を維持しやすくなりま す。 ﹁ 何か問題がおこ ったときだけ連絡する ︵ ある いは怒鳴り込む︶ ﹂ ではどう してもそ の場限
① 連絡す る頻度 ︵ 間隔︶を決 めよう
分は内向的だからムリ﹂と決め付けてかかる保護者 の方も多 いのですが、次 の点 に気を つけれ ば、良好な人間関係を築き、情報交換が スムーズ に行え るよう になります。
交換をする、など の方法があります。そ の際 には人間関係を良好 に保 つ必要があります。 ﹁ 自
外 での様子を知 るには、友達を家 に呼 ぶ、友達 の親と親交をも つ、学校 や塾 の先生と情報
が分かると、こどもが取る態度 の意味がよく分かるかも知れません。
家 での様子はよくご存知 でし ょう。しかし、外 での様子はなかなか分かりません。外 での様子
こども にどう い つた対応をす るにせよ、 こども の生活をよく把握しておく必要があります。
先生との信頼関係の作り方
′
立佐 日
段 の 何 で
も な い と き そ
何 気 な い
△
ロ ロ が 必 要 で す
7ヽ 言手
つまり、 こども の話ばかり では先生も親も互 いに駆け引きをしますし、当事者だけにリア
きな効果を発揮します。
共若爆拌 験﹂が大 る方も いら つし ゃると思 います。そこで、親と先生を直接 つなぐも のとして ﹁
とは いえ、 ﹁ 先生と話しても いつもと同じ返事ばかり﹂と い って、不安が積もり積も ってい
持ちます。ですから、なにかしら共通 の話題を見 つけ、それを介して関係を保 つよう にします。
ます。これに対して、特に親密 でな い場合には、趣味や子育てや仕事などを介して つながりを
親子 や恋人 のよう に特 に親密な関係 にあ る場合は、無条件 に相手を受け入れることが でき
③ 共有体験を持 つよう にしよう
を作 るには、あまり間をおかず に連絡をとる必要があります。
のと同然 です。 1年前と今と ではかなり状況も変わ っているはず です。先生と つまく人間関係
ど んな に親 し い先生 であ ったとし ても、それが 1年前 ではもう人間関係はなくな って いる
② 親 し い間柄 であ っても長く ほ った らかし にしな いよう にしよう
ま す
ルになりがち ですから、ユ 則同きな認識を共有 できな いまま話が終わ ってしまう ことが多 いので 共有体験﹂を話 の中 に取り込 んでみて欲し いのです。 す。そこで、 こども の話から離れ て、 ﹁
手探 り状態 から脱出させる秘技
成功体験を味わせ る一
step 2
83
り の 文寸 応 に 終 始 し て し ま い
子育ての話 でも いいでし ょう し、地域情報 でも いいでしょう。
まずは、 こども の話をす る日と、 こども の話をしな い日を意識し て区別す ることが大切 で す。お母さんの場合は1人 で先生と話す のは気が引けると いヽ つ万も多 いと思 います ので、お友 達と 一緒に先生 のと ころ へ行く のがよ いでし ょう。
以上 の3 つを実行するだけ で、先生とよ い人間関係を作 ることが できます。 ﹁ 何を話したら
どう受け止められるんだ ろう﹂などを気 にする必要はありません。失礼なこと いいか﹂とか ﹁
を言 ってしま ったならば次回に謝れば いいのです。悪く受けとめられたかどうかは次 に会 って
みれば分かること です。 ﹁百い方﹂とか ﹁ 能筆こ のような表面的なことよりも、﹁ 心が通じるか どうか﹂ のほうがはるかに重要です。
こどもを客観的 に把握す るには、外 での様子を知 ることが欠かせません。また、 いざと い
うとき に効果的な手段を考え るヽ ?えでも、外 でのこども に関す る情報 は不可欠 です。 ﹁ 手は離
しても、日は離すな﹂ です。こどもは親 の言う ことは聞かな いくせに、親に見守 っていて欲し
いも の。 ﹁ え っ、お母さん、そんなことも知 ってた の?﹂と言わせ てや つてくださ い。ガミガ ミ言うより、はるかに親としての貫禄 に箔が つきます。
84
小さな成功体験を味わ せる秘技⑤
自由に質問できる場作り
やる気がな い﹂と いう レ ツテルを貼られが 結果だけをも ってこようとするこどもたちは、 ﹁
ち です。だから、 ついていけなか ったり、落ちこぼれたりすると、 ﹁ やる気がな いからだ﹂と
責め立 てられます。 しかし、中学受験は高校受験 。大学受験と異なり、学習内容 の体系があ やふやな面があ る
ので、親と塾が言 っていることが違 ってしまう こともあります。しかも、小学生は批判能力が
低く、 ﹁ 相手 が間違 ってる﹂とうすうす感じたとし ても、それを受け入れ てしまうも のです。
1度言えば分かる﹂ では また、大人 の話 の行間を読めません。 ですから、小学生 に対しては ﹁
なく ﹁ 1度言 っても分からな いのが当り前﹂と考えねばなりません。
そ こで、結果だけをも ってこようとす るこどもたちが、教えた内容をし っかり吸収し て い
自由 に質問 でき る場作り﹂を心がけ ていただきた いのです。 ﹁いつだ っ くよう にするために、﹁
て質問し ても いいのよ﹂と いくら言 っても、こどもが質問しようとしな い場合、 ﹁ 自由 に質問
でき る場作り﹂ に失敗しています。それは、次 に挙げるような ﹁ 質問 の役割﹂を意識していな いからです。
手探 り状態 から脱出させ る秘技
成功体験 を味わせる 一
step 2
85
8
C 質 問 は授 業 の方 向 性 を 決 め る羅 針 盤
まず第 1に、質 問 には親 ︵ 先 生︶ が こども の理解度 を確 かめ て、次 回 の勉 強を効率 的 に進
め るため の ﹁ 羅針盤﹂ と し ての役割 があります。同じ解説を し ても 、 こども によ つて受 け取り
方 はさまざ ま です。親 子と いえ ども 、言 いた いこと が スト レート に伝わ ることは意外 と少 な い も のです。
だ から、教え た内 容 がち ゃん伝 わ ったかどう かを チ ェツクす る には、質 問が不 可欠 な ので す。
② 質問 は こども が頭を整理す るため の試験薬
第 2の ﹁ 質問 の役割﹂ は、 こども自身 が自分 の思考過程 の良 し悪 しを確かめ る ﹁ 試験薬﹂ としての役割 です。
質問は不安 の発露 です。特 に、初め て習う分野 に ついては、教わ ったとおり に解けた、 い
われたとおり に解けたとしても、こども には ﹁ 不安﹂が北 月後霊によう に つきまと います。また、
新 し いことを教わるとき には、 ﹁ なぜ﹂とか ﹁ 前習 った ことと違う﹂と いうような ﹁ 気付き﹂
があ るも のです。 、﹁ このような ﹁ 不安﹂ や ﹁ 気付き﹂を言わず に ︵ 言えず に︶ ま っ、言われた通り やれば い
いや﹂なんて思 ってしまうと、成績が伸び悩みます。応用問題なんてもう ムリです。
86
そして、 こどもが い ったん ﹁ 自 ま っ、言われた通り にやれば いいや﹂と思 ってしまうと、 ﹁
分 で考え る姿勢﹂を取り戻す のにと ても時間がかかります。それはなぜか。 ﹁ 親 の言 ったとお
り や ってるから いいじ ゃん﹂となるから です。完全な寄り掛かり です。
受験す る﹂ って言う こ こども のダラダ ラを見かね て叱 ったとき、こどもが ﹁ 塾やめな い﹂ ﹁
反省して心を入れ替えます﹂じ ゃなく て、 ﹁ 言う ことを聞くから、 とがありますよね。 これは ﹁
そんなに怒らな いでよ﹂なんです。親 の言 いなり の自分と、親 の言 いなり になりたくな い自分
が同居し ていて、結局は ﹁ 後 で言う ことを聞く﹂とお茶を濁しているだけです。
親 の言 った指示を守 るかどう か﹂ ではなく、 ﹁ 説得力 のあ る こども にと つて大事な のは、 ﹁
整然とした考え方ができるかどうか﹂ です。これは、親だけ でなく、こども自身も自覚しなけ れば意味がありません。
親は こども の話をきちんと聞 いている つもり でも、こどもが親 の言 いた いことを言 い当 て
ているだけ では、結局親が答えを誘導しているのと同じこと で、後 々すれ違 いを生む こと にな
だれが正し いか﹂より ﹁ 何が正し いか﹂が重要な視点 です。 ります。 ﹁
ですから、 こども自身 が発す る質問を通じ て、親がこども の ﹁ 思考過程﹂を確認し、 こど
も の不安を払拭するととも に、論理的な考え方を教え てあげる必要があ るのです。このよう に
して、自分 で考え る姿勢を身 に つけ、自信を つけた こどもが、 い ったん ﹁ やる﹂と決めれば、 ぐんぐん成長していきます。
手探 り状態から脱出させる秘技
針ep 2 成功体験 を味わせる 一
87
③ 質問 は こども の心 に安 心感と満 足感 を与え る栄養 剤
第 3の ﹁ 質問 の役割﹂ は、 ﹁ ほら、 こんなに頑張 った でしょ﹂と いう こども の自己承認欲求
を満たす ﹁ 栄養剤﹂としての役割 です。子育ては、こどもが いろいろ話してくれるうちが花 で すが、こども の話 の意図はさまざま です。
ただ話を聞 いてもら いた いだけ のときもあ るし、相談した いこともあ るし、とき には議論 した いときもあります。 こどもが話をし てくれたとき に、ト ンチ ンカンな答えをすると、こど もは ﹁ 話が分からな い人だ﹂と ソッポを向 いてしま います。
どう し て∼な の?﹂とし つこく聞 いて こどもは大人と の話が好き です。 ﹁ なぜ∼な の?﹂ ﹁
きます。そし て、質問 の中 に、﹁ こんなことま で知 っているんだぞ﹂﹁ こんなに頑張 ってんだぞ﹂ と いう気持ち ︵ 自己承認欲求︶があることが多 いも のです。
こども には威張れるチ ャンスが少な いから、そう や つて控え めに主張す る のです。 こども
が質問し てきたとき、﹁ そんな こと に気付 いた の? すげ ∼﹂なんて褒めてあげれば、こども
の気持ちは弾みます。 こども の気持ちは弾むボールと 一緒。だから、止ま ったまま ではなく、 どうせなら でき るだけ高く高く弾ませ てや ってくださ い。
だれにでも自己承認欲求があります。だから ムシされると傷 つきます。 こどもたちが勉強
で傷 つくこと のな いよう に、こどもが認めて欲し いとき に、こどもが認めて欲し いことを、タ イミングを逃さず褒めてやりた いも のです。 親が褒めた いところだけ褒めるのでは不十分 です。
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そ のためにも、自由 に質問 でき る環境づくりが重要な のです。 ④質 問を通 じて 一から物事 を組 み立 てる素 地を作 る
第 4の質問 の役割は、 ﹁一から自分 の頭で物事を組 み立 てるよう になるため のき っかけ﹂と
しての役割 です。疑間を持たず に暗記したことはすぐ忘れますし、暗記したことを試験 で吐き
出そうとしても、見たこと のな い問題 の前 では吐き出せな いも のです。
そ の場 で考え 入試 では見た こと のな い問題が出 ると いう ことを前提 に、普段 の勉強 では ﹁ 疑間を解決す る姿勢﹂を奨 る﹂訓練を積んでおく必要があります。そ のためには、普段から ﹁ 励しなく てはなりません。
しかし、実際 には ﹁ 疑間を持 つよりどんど ん勉強す る分量を増 やし てしまえ﹂となりがち 質問ばかりするこどもは要領がよくな いから受験 に向かな い﹂とま です。塾 の先生 の中には ﹁
で言う人も います。確か に、できな い問題が山 のよう にたま ってからでは、質問も山 のよう に
出 てき て対応し切れません。しかしだからと いって、詰め込むだけ詰め込んでもどんどん忘れ て いくだけ で、まさに時間 の無駄です。
現場思考﹂ です。知識が応用 の効く最小限 のも の 最小限 の知識﹂と ﹁ 受験 で大切な のは ﹁
であるからこそ、普段からよく頭を使うよう になる。 これに対して、初めから知識をどんどん
詰め込んでしまうと、物事 の本質を軽視しがちにな って、試験本番 で何が問われているかどう
手探 り状態 から脱出させる秘技
成功体験を味わせる一
step 2
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かさえ分からなくな ってしまう のです。
そして、 ﹁ 現場思考﹂ は必ず ﹁ 疑問﹂ から出発します。そし て、普段から ﹁ なぜ﹂ にこだわ
るこどもだけが現場思考を手 に入れることができます。 ﹁ なぜ﹂ にこだわらず、むしろ ﹁ そん
な の決ま っているじ ゃん﹂と一 百 2客易な こどもは、ど の科目も伸び悩み、ミスを連発します。 そうならな いためにも、でき るだけ早くから ﹁ 自由 に質問 でき る場作り﹂をしておく ことが必 要な のです。
授業と復習を機械的 に繰り返すだけ で成績 が伸び るわけ ではな い、と いう のは常識 です。 1を聞 いてЮが分かるこどもなんて極め て少数だからです。教える側も教わる側も ﹁ 質問なん て、ま っいいか﹂とな つたときは手遅れです。自由な質問ができ る場作りを通じて、疑問から 考え る姿勢を身 に つけさせてくださ い。 C 塾 ではど んど ん質 問さ せよう
第 5の質問 の役割は、 ﹁ 塾 で失敗させな い﹂と いう役割 です。受験は自分 のペー スを見 つけ
るま でが苦難 の連続 です。 ﹁ やるべき こと﹂ が分からな いから一 市労す る。そし てみんなが塾 に
通 っている。だから塾 に行く、 です。 しかし、周り に引きずられ て塾に行 っても、やる べき ことが次から次 へと降 ってき てうま
く いかなくなります。安心感を買 っている つもりが、逆 に不安感を買 っている気持ち にな って
90
しまう のです。
復習だけし っ 予習は不要﹂ ﹁ なぜうまく いかなくな つたか には理由があります。それは、 ﹁ 復 予習は不要﹂ ﹁ かりやれば いい﹂ です。多´ く の塾が、こども の負担を軽くしようと考え て ﹁ やるべき ことは全部塾 にそろ って いるから、とりあえず 習すれが大文夫﹂と言 って います。 ﹁
いら つし やい﹂と いうわけです。 と ころが、塾 では詳 し い解説を原理原則 に遡 つて繰り返しやることはありま せん。季節ご
と の講習など では繰り返し同じ分野を扱う にしても、基本原理に遡 って解説することはな いの です。しかも、す べての教師がす べてのクラスに均等 に労力を投下することは稀 です。塾 の経 に左右されるからです。 営方針や担当するこども の親 の魏讐¨
も し理解不足 のまま塾から帰宅した場合、そ の日の復習 の実体は予習となんら変わりはあ りません。小学生 の場合は、授業を受け てち ゃんと理解してきたかどうかがそもそも怪し いこ どもが非常に多 いんです。
しかし、仮 に授業 の理解が不十分 であ ったとし ても、質問が自由 にでき る のであれば、家
での復習も予習ほどには苦しくな いはず です。大切な ことは、こどもたちが自分 の苦手 に腰を
もし自分 のこどもが塾 で質問 できな いならば、 据え て取り組めるような環境を藤千えること です。 家庭教師など の代替手段を取ることは必要 でしょう。
手探 り状態 から脱出させる秘技
成功体験 を味わせる一
Step 2
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小さな成功体験を味わせる秘技⑥
目的を持 って ﹁ 書く﹂
しながら学習す る意味﹂を理解しておく必要があります。 まず、 ノートを取らな いで授業を聞く場面を想像し てみてくださ い。先生が楽 しく授業を 進めていき、こどもも先生 の話 にのめり込んでいく楽し い授業 です。 こうした授業 では、こど
また、 ノートはきれ いに書くよう にな ったも のの、きれ いさだけ で満足し てしまう ことも あります。 こうした傾向は女子に強 いですね。意味 のあ るノート作りをす るため には、 ﹁ 記述
い﹂と言 っても、なかなか書かな いも のです。
な いからだと指摘されることがあります。ところが、大人にと つては ﹁ きちんと ノートを取る﹂ と いう のは当然なこと ですが、こども に ﹁ ち やんと ノートを取りなさ い﹂とか ﹁ 式を書きなさ
なかなか成績が上がらな いとき、そ の原因は ノート のとり方 が乱雑だからとか、式を書か
こと に意識を向け ていく段階に進みます。
自由 に質問 でき る環境 になると、 こどもはとたんに活き活きとし てきます。本当 に知りた か ったこと、なんか モヤモヤしていることを解決 できたとき、こどもたちは ﹁ 質問してホント よか ったよ∼﹂と言 ってくれるも のです。そうな つたら次は、教え る側も教わ る側も ﹁ 書く﹂
9
もが効率的 に知識を吸収し、思考力を高めているかが問題です。
いくら楽し い授業 でも、 こどもが メモを取 る時間がな い限り、そ の授業はこども の記憶力
頼みにな ってしま います。面白 い話は記憶 に残りやす いのですが、こと勉強 に関しては面白 い
つものです。 ことばかり ではありません。興味を引かな い言葉は、聞 いた瞬間に消え てしまヽ
も し、授業 の核 になる重要な ことを聞 いたとたんにすぐ忘れ てしまえば、それから先 の授
業はほとんど無意味 になります。よほど記憶力が長けていな い限り、授業 で習 ったことを効率
メモを取る時間を確保す 的 に吸収することはできません。 ですから、授業 に参加する以上は ﹁ る習慣﹂が必要な のです。
もち ろん何 でも書けば いい、と いうわけ ではありません。書 いただけ で満足し て いた ので
は意味がありません。そこで次 に、何 に注意して書かせるかが問題になります。ポイ ントは3 つです。 ① 体系性 ・論 理性を明確 にす るため に書く
式を書け﹂と言 体系性 ・論理性を明確 にするために書く﹂ です。算数 で ﹁ まず 1 つ目は、 ﹁
われるのはこのためです。もち ろん論理 の流れはち ゃんとした理解 に根ざしたも のでなく ては
なりませんが、それに関しては後述します。 ここでは、算数以外 の科目でも、単 に知識を羅列す るだけ ではなく、事柄 の相互関係、原
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験 を味わせる一
step 2
93
理原則と の関係を意識したノート作りが大切 です。そ の際には、最低限 テキ スト の目次 にある 項目を書くことは欠かせません。目次は学習項目 の体系的位置づけを一 不すも のな ので、 一通り を 動自した後 に必ず目次 に立ち戻る必要があるからです。
② 伝 いた いことを は っきりさ せるため に書く 2 つ目は、 ﹁ 教え る側と教わる側 の認識 のズ レをなくすために書く﹂ です。 こども のノート を覗 いて、写し間違 いがあ つたり、誤 ったことを書 いていた場合、そのこどもはそもそも何を
勉強しているのかが分か っていません。これではテストでよ い点数を取れるはずもありません。 だからと い つて ﹁ なぜち ゃんと書かな いのよ﹂と、こどもを責めても意味がありません。書く
こと自体 に意味があるのではなく、どう いう 目的をも って書くかが重要な のです。 そこでまず、先生が 一番言 いたか った ことを書く ことから始めさせ てくださ い。親子 の間
でも同じ です。 ﹁ 今 日勉強した中 で私が 一番言 いたか った ことを書 いてごらん﹂ です。もし、
自分が言 いた いこととこどもが受け止めたこと にズ レがあれば、教え方を変えればよ いだけ で す。先生 の言 いた いことを こどもが受け止められるよう にな ったら、そ のこども の成績が伸び な いはずはありません。 ③ 授業 に集中す るため に書く
きちんと ノートをと る﹂と いう作業 集中す るために書く﹂ です。 ﹁ 最後 に3 つ目 ですが、 ﹁
は ﹁ 復習に役立 てる﹂と いう側面が強調されがち です。確かに、帰宅した後 にノートを見 て授
業 で教わ つた ことを再現すると いう作業は受験勉強 に欠かせな いと ても重要な作業 です。
しかし、 ﹁ きち んと ノートをとる﹂と いう作業は、授業後だけ でなく、授業中 に集中す るた
あれは何だ った めにも大切な作業な のです。音声は聞 いた瞬間に消えますから、後 にな って ﹁
っけ﹂と モヤモヤした気分 になることはしょ っち ゅヽ ?すると不安 にな ってしま つあります。そヽ
い、授業 に集中することができません。 そこで、 ﹁ 授業 の際 にはきちんと ノートをとる﹂ ことが重要になります。 ノートを取る習慣
が身 に ついていれば、授業 の内容 のす べてを いち いち記憶しながら聞く必要はありません。だ
書く﹂ ことばかり に熱中していては から先生 の言う ことを集中して聞けるのです。もち ろん ﹁
書く﹂作業は スト ップ です。そ のか 授業 に ついていけませんから、先生が話しているときは ﹁ わり、先生 の説明 の合間にせ っせと書く のです。
式を書く﹂ こと に目的があ ることを認識したヽ ?えで書く訓 このよう に、 ﹁ ノートをと る﹂ ﹁ 整然と書 練をす ることはと ても重要なこと です。 こども のノートをチ ェックす るとき には、 ﹁
書く目的﹂ にそ って いるかどうかに着 美しく書 いて いるか﹂ ではなく、 ﹁ いて いるか﹂とか ﹁ 目してくださ い。
手探 り状態 から脱出させ る秘技
成功体験 を味わせる一
Step 2
95
Iθ 小さな成功体験を味わせる秘技⑦
つまり、 ﹁ 親 の期待がこどもをダメにす る﹂と いう のは、こどもを ムリに高 いレベルに引き 上げようとしても、肝心 のこどもがそれに応じられなければ結局はうまく いかな い、と いう こ と です。﹁ 過度 の期待﹂と ﹁ 親 の過干渉﹂と い つてもよ いでしょう。 しかし、実 は こどもを ダ メにし て いる のは ﹁ 過度 の期待﹂ や ﹁ 過干渉﹂ よりも 、む し ろ
疲れてやる気がなくなる。
④ こどもが疲れて無気力 にな っているとき に、 ﹁ 勉強しなさ い﹂と一 一 一 0つと、こどもはさらに
③塾に行かせるだけ で勉強させた気 にな ってしまう。
田やつ。
① こども に期待をかける。 ﹁ 強 い子はえら い﹂と刷り込む。 どうせムリだ﹂とは思われたくな い。 ﹁つち の子はできると いう ことを証明した い﹂と ② ﹁
なケースを指しています。
受験生とは無条件 に他人 に期待し てもらえ る存在 です。 こんな にうらやまし い人種 は いま せん。な のに ﹁ 親 の期待がこどもをダメにする﹂と言われることがあります。それは次 のよう
﹁ 期待﹂はしても ﹁ 放置﹂はしない
■ │ _‐ ■■■■.・ │■■■
放置﹂な のです。 ﹁ 放 つたらかし﹂ ﹁
塾︶ に入れたとします。テームメイトがど んどん上達し 例えば こどもを サ ッカーチーム ︵
?まくならな いと、取り残され ているのに、そ の子だけが いつま でた ってもドリブ ルやパスがヽ た気分 になります。
しかし下手 でも ﹁ 練習を続け ていけばき っと でき るよう にな る﹂と思 い込 みます。要す る に、練習を積ん でいけば、やが て上達すると思 っているわけです。しかし、上手にドリブルや
なぜ上手 にならな いか﹂を自覚 練習不足﹂以前 に、 こども自身が ﹁ パスができな い原因は、 ﹁ していな いこと にあるのです。
ドリブ ルやパスがうまく できな い原因が分からな いまま ﹁ 放置﹂ され て いるから上達 しな
取り残される︶ のは想像を いのです。 このよう に、失敗 の原因が分からな いまま放置される ︵
絶する苦痛 ですから、当然 モチベーシ ョンも下がります。ふ つうならもう練習 に行きたくな い と田やつと ころですが、小学生はなかなかそれを言 い出せません。
放置﹂ が原因 で大きなチ ャンスを逃し て いるこどもがたくさん います。大学受験 や この ﹁
こうして いれば自分だ つて合格 できたはず﹂などと後悔す ることがたく 資格試験など でも、 ﹁ さんあります。
放置された﹂なんて甘 ったれた ことは許されません。自分 で もち ろん、大きくな ったら ﹁ 開拓していくほかな いのです。しかし、小学生はそうは いきません。放置したらせ っかく の芽
手探 り状態から脱出させる秘技
成功体験 を味わせる一
step 2
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が伸びな いのです。塾や教材 の価値なんかよりも、こどもを放置しな いこと の価値 のほうがは るかに大き いのです。
それでも ﹁ 練習 ︵ 授業︶にしがみ つけば何とかなる﹂と思 っている大人は、 ﹁ こども の分か
らな い﹂ が ﹁ 分からな い﹂人 です。 ﹁ こんな ことも できな いのか﹂と言う人 です。挙句 の果 て には、こども の ﹁ でき るよう になりた い﹂と いう気持ちを断ち切 って、 ﹁ 練習 ︵ 塾︶ に通わせ ても意味がな い﹂と言う人 です。
期待し ておきながら こども の能力 の限界を理由 に期待を翻したり、 ﹁ 受験させ ても意味がな
い﹂などと脅して駆け引きをす る人 です。 こうし て、﹁ 結果だけをも ってくるこども﹂ ができ るのです。
そ つならな いためにも、普段から ﹁ 達成意欲を高める褒め方﹂ ﹁ 質問が自由 に飛び一 年つ場作 り﹂ にも っとも っと目を向け てもら いた いのです。目先 の小さなこと に目を奪われて、こども の大きな芽を摘んではなりません。
さ て、以 上が自由 に質 問 でき る場作り の役割 に ついてです が、 ここま でお読 みにな って ﹁ でも ウチ の子は質問する気配すらな いんだよな あ∼﹂と いう人も いると思 います。そんなと
きは、大学 ノートを用意して、 ﹁ 疑間帳﹂を作ることをお ススメします。
テレビ 。新聞を見たり、外出したとき に見聞した こと で ﹁ 知らなか つたこと﹂ ﹁ 疑間に思 っ たこと﹂を いち いち ノートに書きださせます。そ の場 ですぐ調 べてもよし、あと で調 べるもよ
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し、さらには調 べな いでもよし、です。 このよう にラクな気持ち でやらな いと挫折す るからで す。
ひ つか ひ っかかり﹂を つけ ておく こと です。ち ょ っとした ﹁ 大切な のは、 こども の頭 に ﹁
ひ っかかり﹂が契機とな って、芋 かり﹂があ ると、学校 や塾 で何気なく授業を聞 いていても ﹁
づる式 に知識が増えたり、誤 った思 い込 みに気付く ことがあります。集中力も つきます。 この
冬つよう になります。ぜひ試してみてくださ い。 積み重ね で質問が自由 に飛び一 * * *
◆トビックス② お小遣いのあげ方
こど もを勉強 に向かわせようと し てお金 で釣 ること もあ ると 思います。
あげ 方﹂が 問題になります。 そ の際に 、お小遣 いの ﹁ よくド ラ マなど で見 るのは 、親が こど もにせが まれ るまま にお金を渡す シーンです 。 ﹁ 母ち ゃん 、金 くれよ∼﹂ ﹁ 金よ こせ∼﹂ ﹁ は いは い、いくら必 要な の?﹂ これは良くな いあげ方 で、かなリイメージ も悪 いですね。
こど も の受験生活 ではそんなあげ 方 のほ かに 、﹁駆け引き﹂す るよ うなあげ方 も良 くありま せ
手探 り状態 から脱出させる秘技
成功体験 を味わせる一
Step 2
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0番以内 に入 ったら 、時計を買 ってや る﹂ です ︵ ん。﹁ 今度 1 ちなみに、こど もは現金よリ モノを欲 しが ると 思 っていましたが 、最近 では現金 のほうが 好まれ るよう ですね︶。
さ て、そもそ もお金 で受験生 の モチベーシ ョンを釣 る のは いいこと でし ょうか 、悪 いこと でし 。 ょヽ つか″
私は 、 モノ で釣 るや り方も アリかな、と 思 います 。こど も のモチベーシ ョンは確 かに上が るか ら です。﹁ そんな安易な考え方 でいいのか っ!﹂と 怒られそう ですが ⋮⋮。
でも 、だ れだ ってお金 ︵ モノ︶ でこど もを釣 った こと はあ るでし ょう 。かなり有効な武器 であ ること は誰だ って知 っていると 思うん です 。それな のに、お金 ︵ モノ︶ でこど もを釣 ること のイ メージが 悪 いのは 、こど もに良からぬ影響を与え、グ レ てしまうような感 じが す るから ですね。
でも心 配ご 無 用 です 。少 しくら いお金 で釣 った って、小学生ご と きが カ ンタ ンにグ レること は まず ありま せん 。中学生だ って、多少グ レ ても 、ほ っと けば必ず 直 ります 。だ から 、こど も の モ チベーシ ∃ンが上が るなら 、多少お金 ︵ モノ︶ で釣 った っていいん です 。
問題はあげ方 です 。頑 張 った こと への褒賞と し てお小遣 いをあげ ると 、実は こど も の勉強 のや り方が いい加減にな ってしま います。それは 、勉強が アルバイト気分 にな ってしまうから です 。 つまり 、勉強 の目的が お金にむ ってしまうと 、﹁ と りあえず 勉強 し てお こう﹂と いう短期的な考
え方にな って、手を抜 くん ですね。こうした事態を避けるた めには 、﹁ ど れだ け の勉強量をこなし た か﹂ ではなく て、﹁いかに苦 手を克 服した か﹂を基準 にご 褒美 をあげ るべき です 。そうす ると 、 こど もはや りが いを感じ て、も っと伸び ようと し て頑張 ってくれます 。
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辟賦舅珀
葛藤を克服させる
― 自分で組み立てさせる秘技
◆「やればできる (小 さな成功体験)」 から 「もう大丈夫 (自 信)」 ヘ 課 題は 膨大 ︲
自 分流 の
でに
て︵
自 力 で問 題 を 解 決 でき る こど も に 変 身 さ せま しょう
だ け
ゝ″″ソ
与 え られ た 課 題
″ つ
効率が 悪
こど も の叱 り 方
成 績 も 安 定 しま せ ん
は
あ ります よ
一一
課 題 チェック 表 も
役 に立 つ
お 教 え しま す
算数 ・理科 の考 え方 も
ネ
1
゛
踪
ゴ二
自分のベースがつかめずあたふたするこどもたち
前 ステ ップ では、小 テストとか範囲指定があ るテスト で いい成績をとらせ てあげ る、 いわ
ゆる小さな成功体験 の話をしました。そこでは、こども に乗り移 って、こども の ﹁ 分からな い﹂ に徹底的に付き合 い、大人がリードし てあげなければなりません。
次 に問題となる のは、小さな成功体験を活かし て、科目横断的な解決力を身 に つけること で、そ のためにはどうすれば いいか、 です。 こどもがよう やく勉強 に目が向きだして、 ﹁ 本当
に成績を上げた い﹂と願 ったとたん、今度は ﹁ 分量﹂ の壁 に突き当たります。 ﹁ 理解 の壁﹂ の 次に ﹁ 効率 の壁﹂が待 っているのです。
塾通 いのこども のかば ん の中は教材 やノートが い っぱ いで、そ の重さは4∼5増に達す る
ことさえあります。これら の分量を効率よく こなしていく には、もはや大人がリードするだけ でなく、こども自身が ﹁ 自分 でなんとかしなき ゃ﹂と自覚して、自分 で自分を管理してもらう
しかありません。与えられるも のだけをせ つせと こなすだけ では、時間切れで入試が終わ って しまうからです。
しかし、大人がこども に 一方的 に ﹁ 理解﹂ の手助けす ることよりも、 こども に ﹁ 効率﹂を
102
身に つけさせること のほうがはるかに難し いのです。そこで、 このステ ップ 3では、 ﹁ 自分 の
ペースが つかめずあたふたするこどもたち﹂が、成功体験をど のよう に自信 に結び つければ い いか、を考え ていきます。
﹁ 自分 のペースが つかめずあたふたするこどもたち﹂とは次 のようなこどもたち です。 *﹁ やることはや っているのに成績が田やつよう に伸びな い﹂
*﹁ 問題 の出方が変わると解けなくなる﹂ ﹁ 応用問題 ・総合問題が解けな い﹂ *﹁ 以前は解け ていた問題が解けな い﹂ *﹁ 宿題を こなす のが精 一杯﹂
*﹁ 内容が難しくな って、学校 の勉強 にすら身が入らなくな った﹂ *﹁ やることが多すぎ て何をしていいか分からな い﹂
*﹁ 平日の宿題を こなそうとすると夜中ま でかかる。宿題を土日にためると こなせなくな る。土日も ゆ っくり でき な いため、平日に疲れがたまり、勉強がはかどらず、家 の中が
殺伐としている﹂ 課題 のプ レ ツシヤーからか、だるさ、頭痛f腹痛を訴え、極端 に集﹁ *﹁ 甲刀が下がる﹂ やればやるほど ︿あれも これも ﹀と いう気持ちにな つてしま い、落ち着かな い﹂ *﹁
このような こどもたち に ﹁ 効率﹂を身 に つけさせるにはどヽ ?すれば いいか。言 い換えると、
﹁ 小さな成功体験は人 の助力があ ったからこそできた﹂ ことを こども に理解させ、大人 の助力
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させ る 一
step 3
103
なしに成果を出させるよう にするにはどヽ ?すれば いいか、と いう こと です。
親 や教師 に頼る他律的な こどもたちが自律的な変容を遂げるためには、 ﹁ 自分がなんとかし
なき ゃ﹂と思うようなき っかけ作りが必要 です。 ﹁ 人は易き に流れるも の﹂などと のん気な こ
とは言 って いられません。自分を律すると いう辛 い過程を乗り越え ることができなければ、本
当 の自由は手 に入れることができな いのです。そこでステ ップ 3では、自分 で自分を律するた め の方法を考え ていく こと にします。
﹁ あんなに徹底的 に教えた のに何 できな いの?﹂となります。
取り足取り教え込 んだ のに総合 テスト では点 が取れな い、なん てことが起 こるよう になり、
ッ︶ わか った﹂ ﹁ もゝ ﹂﹁ ?大文夫﹂ です。 これ で小さな成功体験ま では いきます。と ころが、手
す ると、手取り足取り教え て、 ﹁ ホラ、 でき るでし ょ﹂となります。 こどもも ﹁ コク うん ︵
まず いてんのかな∼﹂なんて思 ってしま います。
こども に勉強を教え て いるともどかしくなることはありませんか。 ﹁ 何 でこんなと ころで つ
ほら、 でき るでし ょ﹂ ◆ 暴走す る ﹁
自分のベースが つかめずあたふたするこども たちに対する基本的なスタンス
∠レ
9
104
キ
模範解答
ク
カ
ケ
ウ
そうなる理由は、ズ バリ ﹁ 物事を 一から自
分 で組み立 てさせ ていな い﹂から です。
上 の図を見 てくださ い。この図はアが問題、
クが正解を模式的 に表 し て います。 そし て、
点線 が模範解答、実線 Aが不正解、実線 Bも
不正解を表しています。
小さな成功体験を得させるには、 こどもを
リラ ック スさせ て、し っかり導 いてあげ る必
要があります。そ の意味 で、手取り足取り教
え て、図 の点線を い っし ょにたど ることも必
要 です。 そ の場合 は ﹁ ホラ、 でき る でし よ﹂ でいいんです。
これに対して、小さな成功体験を自信 に つ
なげ る段階 では、言われたとおり にでき るだ
け では十分 ではありません。科目横断的な学
力を身 に つけ て自信 に つなげ る段階 での実践
自分で組み立てさせる秘技
葛藤を克服 させる 一
step 3
105
00AL オ
→
イ ー・
的な課題は ﹁ こどもが自力 で疑間を解決す ること﹂ ﹁ こどもが同じミスをしな いこと﹂ であ っ て、﹁ 模範解答を覚えること﹂ ではありません。
もし ﹁ こども に正解 や模範解答を与え れば同じ ミスをしな い﹂と考え る人が いれば、それ
はとんでもな い誤解 です。模範解答を示しても、それと同じ問題なんか出るはずがな いから で す。模範解答 に取り上げられ ている唯 一の解き方を覚え ること で、教える側も教わる側も満足
した気分になりがち ですが、これは 一見良 いよう に見え ても実はあまり進歩がな いのです。個 別 の問題 の答えは 一応 の結論 にすぎません。
大切な のは、個別 の問題 の答え が問題 の出発点だと いう こと、 つまり、あ る1 つの解き方
やも のの見方を学んだ こと で、さらに別 の考え方 に取り掛かることができる、と いう こと です。
模範解答を マネさせることは必要な いとは言 いません。例題だ って必要 です。だた、模範
解答を与えただけ ではこどもは必ず同じミスを繰り返すと いう こと です。
実線 A のよう に不正解だ った こども や、実線 Bのよう に遠回りだ った こども に模範解答を
与え るだけだと、こども の頭 の中に ﹁ 自分 の出した答え﹂と ﹁ 模範解答﹂が並存すること にな
あたふたす るこども﹂ の特徴 です。頭 ︵ る のです。 これが、 ﹁ 模範解答︶と体 ︵ 自分 の体験︶ がばらばらなんです。
だから、こどもがど こで つまず いて いるかを いち いち確認し てやらな いと、ミ スが減らず
成績は 一向 に上がらな いこと になります。 いつま でた っても ﹁ ほら、できるでし ょ﹂を繰り返
106
し て いると、 こども自身が自分 のつまずきを気 にしなくなります。 ﹁ 正解を覚えり ゃいいや﹂ とな ってしま います。だから、こどもは正解ばかりを追う○ ×思考に陥り、問題 の出発点を見 失 って、やがて行き詰るのです。
授業を聞 いて伸びる子は、自分が つまず いたと ころや疑間に思 ったと ころを考えながら授 業を聞きます。絶えず思考 の脱皮をしています。だから、もう 同じミスをしな いし、応用もき
く のです。授業を聞きながら、知らず知らず のうち に自分 のミスや疑問から スタートして、そ
れを解決することを繰り返し ているから、本番 で知らな い問題がでても ﹁ 疑問から スタート﹂ できるのです。
塾 に ついていけな いこども は、疑問やミスを 口にし ても相手 にされなか ったリ バカにされ
るから、仕方なく次から次 へと問題を暗記していく ハメになるのです。 こうして ﹁ 勉強嫌 いな こども﹂が量産されていきます。
自分 のペースが つかめずあた ふたす るこどもたち に対する基本的な スタンスは、 ﹁ 物事を 一
から自分 で組 み立 てさせる﹂ です。 ﹁ もら つた答えは頭に残らな い、自分 で見 つけた答えだけ
が血肉 になる﹂ です。だから、模範解答ばかり に目をとられな いで、﹁ 自分 の疑間﹂ ﹁ 思考 の出
発占生 にこだわり、そこから物事を 組み立 てさせる必要があるのです。
自分で組み立てさせる秘技
葛藤を克服 させる―
step 3
107
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物事を 一から自分 で組み立 てさせる秘技①
家庭学習の ﹁ 型﹂をもたせる
― ‐ ■― ・
︻ 問 3︼勉強中 に足を組んだり、ほおづえを ついたり、体をねじ ったりしていますか?
︻ 間 2︼お子さんの机 の上に マンガと勉強教材が 一緒くたに散乱していますか?
︻ 問 1︼お子さんは学校 ・塾 でのテストや行事などを コマメに報告しますか?
そこでまず、お子さんに ついて質問 です。
付 いていな いことを指摘してあげること です。それは、こどもが ﹁ なんとなく﹂ や っているこ とが、どう いヽ ユ思味を持 っているかを教えること です。
ズ バ ッと指摘されたら、だれだ って反発したくなります。大人がやるべき ことは、こどもが気
ただ、 いきなり ﹁ 成績が悪 いんだから勉強しなさ い︱﹂なん て言 っても バト ルになるだけ です。 ﹁ 成績が悪 い﹂ ことはこども自身がよく知 っているから です。分かりき っていることを
ません。
入した以上は、 ﹁ 勉強 や合格 のことだけ﹂を考え て、自律的な生活をし てもらわなければなり
目的がお小遣 いなど の ﹁ 成績以外 のも の﹂ でもかま いません。しかし、 ﹁ 効率と の戦 い﹂ に突
小さな成功体験を味あわせる段階 では、ダ ラダ ラや って いても何とかなります し、勉強 の
│― ―
■ ・
108
︻ 間 4︼家庭学習に取り組むとき にすぐ に集中 でき ていますか?
こどもと いう のは ﹁ 自分 のやりかた﹂を通そうとします。式 がぐち ゃぐち ゃな子 に対し て
﹁ 式はち ゃんと書きなさ い﹂と言うと、はじめは渋 々従 います。式をち ゃんと書くと褒めてく
れるので、とりあえず書く のです。 ぐし ゃぐし ゃ﹂ に戻 ってしま います。そこで再び でも、面倒くさくなると、すぐもと の ﹁
﹁ ち ゃんと書きなさ い﹂と一 百 つと、﹁いいの っ。これでいいの っ。う るさく言わな いで﹂と反抗 どう せ困 る のは自分な のに⋮⋮﹂ ﹁ どう し て分か ってくれな いの?﹂ します。 こんなとき、 ﹁
﹁ ミスがなくなればも っと いい成績がとれるのに﹂と思 ったことありませんか?
自分 のペー スが つかめな いこどもは、 いつま でも自己流 にこだわ つて いることが多 いも の です。それが良 いやりかたなら文句はな いのですが、勉強から逃げた い気持ちが見え見え のや
りかたでは成や 心できません。家庭学習 には、やりやす い、集中しやす い ﹁ 刑置 があります。そ
型﹂ で重要な のは次 の5つです。 絶対めげ てはなりません。勉強 の ﹁
間1︼についてですが、学校や塾での行事に無関心なこどもは、勉強について 先ほどの ︻
そこで ﹁ 鬼行動﹂ の発動 です。勉強 の ﹁ 型﹂を身 に つけるま で鬼行動をとり続けるのです。
の ﹁ 型﹂を守らな いのは単なるワガ ママ、自減 への道 です。
① l週間ごとにやることを書き出させる
葛藤 を克服 させ る 一
自分で組み立てさせる秘技
Step 3
109
は ﹁ 指示待ち﹂な ことが多 いも のです。学校 や塾 に着 いたとたんに ﹁ 今 日何する の?﹂ です。
授業が始まる直前ま で友達とたわむれ ていて、教科書やノートを開 いて授業を待 つことができ ません。
学校 や塾 では先生が入 ってく るなり ﹁ 今 日何 やん の﹂なんて聞く こどもは、それが冗談 で
もな い限り、授業 の準備は何もしていな いはず です。こうした ﹁ 指示待ち﹂ のこどもは、勉強 をやらせても非常に効率が悪く、こども にと つても消化不良 でなんだか気持ちわる い感じが付 きまと います。
これに対し て、自分 の課題や目標を意識し ているこどもは、要領 よく勉強を こなす ことが でき、深 い達成感を味わう ことができます。そしてそ の達成感がまた次 の意欲を生みます。
何か行動を起 こすとき に、予め目的を持 つことは重要 です。例えば、車を運転し ていて急
にトイレに行きたくな ったとき、それま で漫然としていた目が、 コンビ ニや公衆トイレを探す
獣 の目に変わります。また、単なる雑巾がけにしても、今 日は顔が映るくら いピ カピ カにして やるぞ、 って思うだけ で作業が楽しくなるも のです。
勉強 でも、目的があり、そ の目的が近ければ近 いほど モチ ベーシ ョンは上がります。そし て、それを自分 で書き出させれば明確 で吸引力 の強 い目的 になります。 口約束より書き出させ たほうがこどもは頭を使 いますから、なかなか忘れません。
さらに、予定を書き出し ておけば親子 で認識がズ レることがありませんし、うまく いかな
110
か つたとき に ﹁ こども自身﹂を非難するのではなく ﹁ 予定 の立 て方﹂を再考すると いう建設的 な行動を取ることも でき るよう になります。
具体的 には、大きな紙 に月曜 ∼日曜 の枠を書 いておき、そこに予定を書き込 んだポ ストイ
ット ︵ 付箋︶を貼 ると いいでし ょう。重要度 ・緊急度に応じて赤 ・黄 ・青と視覚的 に区別する
ことができますし、やむを得ず予定を変更しなければならな いとき にポ ストイ ットをすぐ に別 の曜日に貼り変え ることができ るからです。
このよう に、日曜日には 一週間分 の予定を こども に書き出させ てくださ い。 こども のため
書き出さな いと気持ちが悪 い﹂と いヽ と思 って鬼行動に徹し、こどもが ﹁ つまで頑張 ってくださ
② 机 の上を 整理整頓す る
次に ︻ 問2︼に ついてですが、机上を自分 で整理整頓 できな いこどもは成績が悪 いことが
さあ勉強す るか﹂と思 い立 っても ﹁ 教科書が見 つからな い﹂ ﹁ついマンガに手が 多 いですね。 ﹁ 伸びる﹂なんてこと ではと ても効率的とは いえません。
もち ろん大人だ って嫌な こと にはなかなか取り組 みたくはありません。仕事や家事など や
らなければならな いことがあるのにどうも気が進まな いとき、 つい見たくもな いテレビ番組を つものです。だから机上が雑然とし ているこどもを責 つけたり、ネ ットサー フインをしてしまヽ
自分で組み立てさせる秘技
葛藤を克服 させ る 一
Step 3
11l
めるのも少し気が引けます。
しかし ﹁ 自分 のペースが つかめず にあたふたし て いるこども﹂ の課題は 一から自分 で物事
を組み立 てること です。そこで、毎 日の勉強を効率的 にこなす には、①学校や塾から帰 ったと き、必ずカバンの中 のも のをす べて取り出し、②勉強が始まる前と後 に、ち ゃんと やるべき こ
ととや ったことを整理させます。こどもが ﹁ 整理整頓を実行しな いと気持ちが悪 い﹂と言 い出
すま で、鬼行動を徹底させ てくださ い。 ただ、 こども の机を ﹁ 整理整頓す る﹂と い っても 、それは商品 の陳列 のよう に ﹁ 見た目﹂
を整えること ではありません。 ﹁ 見た目﹂を整理整頓するのではなく、 ﹁ やろう﹂と田やえるよう に ﹁ 心を整理整頓﹂すること です。ホ コリがあ っても いいし、整然と本を並 べる必要もありま
せん。ピ カピ カにこだわるのではなく、あくま で、こどもが ﹁ やろう﹂と田やえるような ﹁ 整理
整頓﹂を心がけること です。そうした整理整頓が時間 のロスをなくします。 ③ 姿勢を 正す
次は ︻ 間3︼ に ついてですが、勉強中 に落ち着き のな いのは、勉強 に対す る粘り強さがな
い証拠 です。そ のような こどもは、宿題をまとめてや ったり、 ﹁ 勉強するとすぐ疲れる﹂など と言 ったりします。
勉強時間は長ければ長 いほどよ いと いうわけ ではありませんが、勉強中 に落ち着き のな い
112
こどもは、勉強した内容が身 に つくま でに必要な勉強時間な いし労力を確保 でき ていな いこと が多 いのです。
授業中 でも、体を軟体動物 のよう にクネ クネさせ ている小学生はかなり います。 こども が
仕方なく勉強しているんだ﹂と い つ意思表示です。小さな成功体験 ク 不ク 不運動をするのは ﹁
を味あわせる段階なら、これでも何とかなる のですが、 一から自分 で物事を組み立 てさせる段 階では ﹁ 仕方なく﹂は通用しません。
こども が勉強 に取り掛か った瞬間から姿勢がシ ャキ ッとなるま で、姿勢 に ついては鬼行動
に ﹁ やらねば﹂ ﹁ 聞かねば﹂と思う を取り続け てくださ い。姿勢を シャキ ッとさせると、自興い
あ∼疲れた∼﹂と言うはず で も のです。実際 に姿勢を注意 し続けると、ほとんど のこどもが ﹁ す。しかしそれもはじめだけですから、頑張 つてこども の姿勢を正してくださ い。 ④ 家庭学 習 のやりかたをパ タ ーン化す る こと
最後 に ︻ 間 4︼ に ついてですが、ず っと監視 して いな いとすぐダ レるこどもが います。し かし、 いくら監視を続けたとし ても、こども自身が ﹁ これじ ゃマズイ﹂と思わな い限りは ﹁ 効 率 の壁﹂を乗り越え ることはできません。
﹁ 家 でち ゃんと勉強させ て いる のに総合 テストでは点数を取れな い﹂と いう悩 みを持 つご家
本当はでき るんですが⋮⋮﹂と一 〓 甲つばかり で、ますま 庭が多 いですが、塾 の先生に聞 いても ﹁
自分で組み立てさせる秘技
葛藤を克服 させる一
step 3
113
すわけが分からなくなります。
こんなとき は、ただ こども に対す る監視を強めるのではなく、家庭学習 のやり方を パター ン化し、それを体 で覚ゝ えさせることが必要 です。すぐ に体が動くよう にしておく のです。
具体的 には、 0 ﹁ 授業 で のポ イ ントを ノート でおさ ら いす る﹂← 0 ﹁ そ のポ イ ント に 従 って解 き直 す﹂← 0 ﹁ 類 題を解 く ﹂です。
家 で解 いてできな いこどもは、 ①や ②のステ ップを省略し て いることが多く、塾 で習 って
きたことを家 で再現 でき ていな いのです。う ろ覚え の知識 で何となく解 いているから不一 久ばか
りが増します。そして、授業と復習 の間隔が長ければ長 いほど解き にくくなり、結局また 一か ら学び直す ハメになります。
だから、授業は復習す ることを前提 に受講する必要があります。ご家庭 で勉強を教え て い
る場合 には、 こども に必ず新 しく学 んだと ころや間違 ったと ころをおさら いさせ てくださ い。
この①②のステ ップがと て つもなく重要 ですから、こどもが ﹁ おさら いをしな いと気がすまな い﹂と いうま で鬼行動を取り続け てくださ い。 ⑤ ﹁ 鬼行動﹂ の対象
① ∼④を通し て、 ﹁ 鬼行動を徹底し てくださ い﹂と繰り返し てきましたが、 ﹁ そんな つま ん
な いこと でムキになる必要はな いんじ ゃな いの?﹂とか ﹁ 勉強と直接な関連な いんじ ゃな い
114
の?﹂と思 った人も多 いと思 います。
整理整頓をす ること﹂ 確 か に、 ﹁ 勉強をす ること﹂ に比 べたら、 ﹁ 予定を書き 出す こと﹂ ﹁
﹁ 姿勢を正す こと﹂ ﹁ 家庭惑 子習 のやり方を パターン化すること﹂などは直接的 には勉強と関係は な いでしょう。受験対策と しては ﹁ 勉強をすること﹂が本質的なこと であ って、その他 のこと
は周辺部分にすぎません。だから、多く の親は ﹁ こども の勉強を手伝うこと﹂が親 の役目だと 思 ってしまう のです。
しかし、親が こども の勉強 の内容 に深く関わりあ ってもうまく いかな いのも事実 です。小
学校 の低学年から塾通 いをさせているご家庭ならよく分かると思 いますが、親がこども に勉強
を教え て いると、他人が教え る のと違 って、 つい感情 が スト レート に出 てしまヽ つものです。 ﹁ こんな のも できな いのか﹂ です。
幼 いときは こども の行動も考え方も強制 ︵コント ロール︶ でき て いたも のが、 いずれ ﹁ 行
動だけは強制 でき るが考え方は田やつよう には強制 できな い﹂となります。そ のうち に、やが て
親も こどもも迷走しはじめて ﹁ 行動も考え方も強制 できな い﹂と いう壁 に突き当たること にな
し ょせんうまく いかな いよ﹂と言 親は勉強 にかかわるな﹂ ﹁ る のです。だから、塾 の先生は ﹁ ゝ つのです。
しかし実際 には、親 にはも っとも っと やることがある のです。受験対策 には、﹁ ①勉強そ の
も のに関わる本質的部分﹂と、﹁ ②勉強そ のも のとは直接関係しな い周辺部分﹂がありますが、
自分で組み立て させる秘技
葛藤 を克服 させ る ―
step 3
115
どちら の部分 でも やれることがたくさんあるのです。
︿ 1﹀勉強そ のも のに関 わ る本質的部 分 まず、 ﹁ ① 勉強そ のも のに関わる本質的部分﹂ に ついてですが、大人 の社会がそう であるよ
知的作業を伴わな い労働は指揮命令系統がし っかりしていな いとヽ う に、 つまく事が運びません。
上司が いて部下をし つかり監視する、です。これに対して、知的作業は人と人とが対等な関係
にな いと良 い成果を生み出す ことができません。体は強制 でき ても、頭 の中は強制 できな いか ら です。
受験勉強 でも 同じ です。 ﹁ 勉強﹂ は暗記など の ﹁ 肉体労働﹂と いう側面よりも、 ﹁ 暗記した
ことを使 いこなせるかどうか﹂と いう知的作業 の側面 のほうが圧倒的 に重要 です。受験勉強と
いう のは、本質的 には知的作業 です。 ですから、教え る側と教わる側 の関係は、 ﹁ 指揮命令関 係﹂ ではなく、﹁ 対等な関係﹂が原則的なあり方 になります。
そう は分か って いても 、こども に勉強を教え て いてもどかしくな ったり、イ ライ ラし てし
ま い、しかめ っ面にな ったりため息を ついたり叱 つたりするなど感情が ストレートに出 てしま
う のは、勉強が できな いことが親子 にと ってと ても リアルに辛 いことだからです。
こども の成績が上がらな いとあせ つてしま って、親 の能力ま でもが否定 されたような錯覚
に囚われてしまうと同時 に、こどもは希望を失 っていきます。ひど いときは、親が自分 の辛さ
116
を こども にぶ つけます。そうするとこどもは反射的 にひるんでしま います。 この関係はまさに
﹁ 指揮︿ 哭T関係﹂ です。 こどもは知的作業を放棄して、怒られな いためにど のよう に迎合す る かだけを意識す るよう にな ってしま います。
なぜオレの言う ことを聞け このことは、義務感 や責任感 の強 い先生 にもあ てはまります。 ﹁
聞かな いのか︶ 義務感 や責任感そ のも の﹂が悪 いのではありま な いのか ︵ ﹂ です。もち ろん ﹁ 親 で言えば ﹁ 親心﹂︶ の表現 の仕方が問題な のです。 せん。 ﹁ 義務感や責任感﹂ ︵
鬼行動﹂ 大人が ﹁ こども の勉強﹂と いう本質的部分 に付き合 つて いくとき には、絶対 に ﹁
知 をと ってはなりません。大人がこども の勉強 に付き合うとき には、 ﹁ 勉強をすること﹂ = ﹁
的作業﹂ = ﹁ 教える側と教わる側は対等な関係﹂と いヽ ユ今釆的な姿から遊離しな いよう に意識
する必要があるのです。勉強 に満足するこどもだけが学力を伸ばせるのです。 2﹀勉強そ のも のと は直接関係 しな い周辺部分 ︿
②勉強そ のも のとは直接関係しな い周辺部分﹂ はし つけそ のも のです。 ﹁ 家 これに対し、 ﹁
族は構成員がそれぞれ の役割をキチ ッと果たす こと でうまく機能する﹂と いう ことを こども に
も分か ってもらわねばなりません。お父さんもお母さんも、 いつま でも こども に振り回されて
いた のでは自分 の人生だ って心もとなくなります。 だから、 ﹁ 机 の上が乱雑﹂ ﹁ 姿勢がダ ラダ ラ﹂ ﹁ 勉強が行き当たりば 予定を書き出さな い﹂ ﹁
自分 で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させる一
step 3
117
ったり﹂なんてことを目にしたら、すぐさま鬼行動を取ります。使 ったも のを元に戻さな いと か、授業 でや った問題を解き直さな いと いう ような小さな ことこそ叱らなければなりません。
こうした小さな ことは無意識 でや っていることが多 いので、気付かせ てあげ る必要があり
ますし、反対に ﹁ 偏差値が大幅に 下が った﹂と いった大きなこと、しかも こども でも分か って
いることを叱 ると、こども のつら い気持ちに塩を塗り、混乱させるだけ です。
使 ったも のを元 に戻さな いとか、授業 でや った問題を解き直 さな いと いうような小さな こ
とは T千T多発しますから、それを正す のは骨 の折れる作業 ですし、こどもを信頼し ていれば いるほど小さなことを叱 るのはかえ って気兼ねしてしま います。
しかし、人は大き な石には つまずきま せんが、小さな石には つまず いてしまうも のです。
小さな つまずき が重なると大きな つまずき になります。また、こどもは勉強した ことは忘れ て も、小さな こと で叱られたことは忘れません。小さなことを叱るのはこども にと つて財産 にな
るのです。それでも言う ことを聞かなか ったら、 ﹁ お前がち ゃんとしな いと、うちら家族 のみ んなが不幸になる﹂くら いのことを言 っていいと田やつのです。
そして、叱責がち ゃんと効果をあげ るためには、 ﹁ すぐ に叱る﹂ ﹁一度 に 一つ叱 る﹂ ﹁ こども
を叱 るのではなく現象を叱る﹂が大切 です。すぐに叱らな いと、こどもは忘れてしま い効き目 がなくなります。
また、こども に改善を促すときは、 ﹁いつ、何を やれば いいか﹂を明確にする必要がありま
118
すから、 い っぺんにあ れも これも叱 る のはよくありま せん。さら に、 ﹁ 机 の上を整理し ろ︱
そんな ことも できな いからお前はダ メ人間なんだ﹂なんて非難されたら、だれだ って ﹁ 整理し ダメ人間﹂ のほう に気が行 ってしま いカチ ンときます。 ろ﹂より ﹁
とした状態がダ メだ﹂と いう ふう そうならな いためには、 ﹁ お前がダ メだ﹂ ではなく ﹁ 雑殊い
に ﹁ 人﹂ ではなく ﹁ 現象﹂を指摘します。また、単 に ﹁ 雑然とするのがダメ﹂と指摘するだけ
ではなく、﹁ 自律するためには雑然としていてはならな い﹂と目的を含めて伝えます。
このよう に言うと、 ﹁ 何も そこま でやらなく ても﹂と思うかもしれませんが、 ﹁ 自分 のペー
ただ家と塾を行き来するだけ のこども﹂と スが つかめずあたふたす るレベルのこども﹂は、 ﹁
か ﹁ 結果だけをも ってこようとするこども﹂ に比 べたら、受験 に対する意識が相当高 いはず で す。だからこそ、もう 一押しが必要な のです。
本項 の冒頭に挙げた① ∼④ の ﹁ 勉強そ のも のとは直接関係しな い周辺部分﹂ の話は、家族
の 一員としてこども に与えられた義務 です。家庭がうまく機能するために絶対 に守 ってもらわ
ねばなりませんし、﹁ 自分 のペースが つかめずあたふたす るレベルのこども﹂ であれば でき る はず です。
こう した ﹁ 家族 のルール﹂ はし つけそ のも のですから、絶対 に ﹁ 鬼行動﹂を弱め てはなら な いのです。
自分で組み立て させる秘技
救ep 3 葛藤を克服 させ る 一
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物事を 一から自分 で組み立 てさせる秘技②
‐‐ ‐ ‐・ ‐ ‐ ‐ ‐■■■│ ・・ ・
4 の計画 ︵ コ曽︶からみていく ことにしましよう。
そこで、次 に家庭学習 のやらせ方 のポイ ントを挙げ ていきます。ポイ ントは、家庭学習 の 、家庭学習 の実行 ︵ 、家庭学習 の確認 ︵ 計画 ︵ コ臼︶ ∪o︶ ∽8︶ の3 つです。まずは、家庭学習
ること こそムリです。効率的に受験を乗り切るには、出来合 いのカリキ ュラムを自分に︿甲つよ う にアレンジするしかありません。そし て、どう アレンジするかが問題な のです。
しかし勉強 では、人 に与え られたカリキ ュラムを忠実 にこなす ことはそもそも ムリな ので す。だからと いつてカリキ ュラムが不要だと いう のではありません。自分 でカリキ ュラムを作
項目立 てがかなり違 っているのを知 って、途方 に暮れるも のです。
と感じるはず です。そして、﹁ これではダメだ﹂と思 つたとき に他 の教材を手 にと つてみると、
中学受験 で ﹁ 学習計画﹂と いえば、教材 の目次 であ ったり、塾 のカリキ ュラムであ ったり します。ところが、 いざ教材を手 にしてみると、﹁ 何をど のよう にこなせば いいか分からな い﹂
歩進んで ﹁ こども に家庭と 孟自の計画を いかに上手 に作らせるか﹂を考えます。
前項 で ﹁ 1週間ごと にやることを書き出させる﹂と いう話をしましたが、本項 ではもう 一
家庭学習の計画 ︵ ﹁一 ●こ
‐‐ ■,I■ ■―
■■
120
◆家庭学 習 の計 画 ︵ コ彗 ︶
﹁ この教材が いいわよ﹂と勧められ て いざ購入する。あ る いは塾 に入 って教材をもらう。新 し い教材を手 にすると ﹁ 教材 にそ つて さあ、がんば るぞ﹂と気が引き締まります。しかし、 ﹁
どんどん進めていけば自然と成績は上がる﹂と思 ったら大間違 いです。進めていくうちに ﹁ で きな いところ﹂がでてくるから です。
できな いと ころ﹂と いう のはこども によ つても違 います。小学校は6年間と長 いで また ﹁ すから、小さ いときから勉強 に親しんで いるこどもとそう でな いこども の差は中学生や高校生 以上に大き いのです。
と ころが、塾 のカリキ ュラムはど の生徒 にもあ てはま る最大公約数 のようなも のな ので、
自分に足りな いも のを補 いながら勉強を進め ていかなければなりません。それができればよ い のですが、補う べきも のが余り に多すぎ ると歯車が狂 い出します。
も っと やらなき ゃ﹂とあせります。 こう 人が終わ って いると ころが手 つかず のままだと ﹁
して今現在 の ﹁ 不理解﹂を放置したまま先 へ先 へと急ぐよう になります。だから結局本質的 に
理解しな いままズ ルズ ルと先 に進んでしま い、そうし ているうちに、ある日突然、やりすごし てきた穴が表面化して行き詰ります。
自分 の課題﹂を意識していな いこと にありま 理解が追 いつかなくな って行き詰る原因は、﹁ 人がや っていることを自分も や って いれば いい﹂と いヽ 2考え方が問題な のです。 こども す。 ﹁
自分で組み立て させる秘技
葛藤を克服 させる 一
step 3
1 21
にと つてみれば、 ﹁ 自分 の分からな いと ころ﹂ に向き合う のはリアルで辛 いも のです。 いざ向
き合おうとしても、親 や先生を巻き込む こと になるから二の足を踏んでしま います。
先生は ﹁ 復習すれば大丈夫、今はくよくよするな﹂と言 い、親は祈 るような気持ち で ﹁ こ
のまま頑張れば いつかは成績が上がる﹂と言 います。こうして、こどもたちはみんなと同じこ とをせ っせと やるだけ で、 ﹁ 自分 の課題﹂ に向き合う ことをしなくなります。勉強内容 の基準 が ﹁ 自分﹂ ではなく ﹁ 他人﹂な のです。
と ころで、中学受験を乗り切るルートは2 つあります。 ﹁ 塾 に行かな いルート﹂と ﹁ 塾 に行
く ルート﹂ です。そして、 ﹁ 塾 に行く派﹂ には塾 のカリキ ュラムに並行し て自分 の課題も こな
す ﹁ 他人基準 十自分基準派﹂と、塾 のカリキ ュラムに盲従する ﹁ 他人基準派﹂が います。
中学受験 で 一番悔 いが残 る可能性が高 いのが、次 の図 の ﹁ 通塾派 A﹂、すなわち完全 に他人
基準 で勉強内容を決める人たち です。なぜ悔 いが残 るかと いうと、他人を基準 に勉強内容を決
めると ﹁ あせる﹂ ﹁ 油断する﹂ ﹁ 諦める﹂ に つながりやす いからです。
自分が劣 って いたり できなか ったりす ると ﹁ あせる﹂、自分 に余裕があ ると ﹁ 油断す る﹂、
そ の結果自分を見失 って ﹁ 諦める﹂と いう こと です。だから、他人を基準 に勉強内容を決める
と、 ﹁ 理解す る﹂と いう勉強 の本質を見失 いがち になり、受験間際 にな ってあわ てふためく の しま った︱・ も っと早く手を打 てた のに﹂と悔 やまれるわけ です。 です。﹁
こう した状態 に陥らな いよう にす るため には、まず、① 教材は項目が体系的 で コンパクト
122
B 派 塾 ・ 通一
なも のを選んでおく ことが大切 です。そ のほかには興味を惹
き やす いとか、見 やす いとか、 いろ いろな判断要素があ ると
は思 いますが、それらはす べて ﹁ やらせ方﹂ でカバーできま
す。 また、塾 でもらうような大量 のプリ ント類 では保存 や検索
に手間がかかりすぎます。中学受験をご経験 のご家庭 であれ
ばご存知だと思 いますが、小学校低学年から塾 のプリント類
を集め ていると 4畳半くら いの部屋を埋め尽くすほど の分量 になります。 これ ではと ても整理しき れま せん。 ですから、
﹁コンパクト で体系的﹂な教材を いつも手元 に置 いておく必 要があ るのです。
次 に、②普段 の学習 で苦手な分野を発見したら、そ の分野
の ﹁コンパクトで体系的な教材﹂を用 いて復習計画を立 てな
ければなりません。 これが ﹁ 自分流 の学習計画﹂ です。もら
ったカリキ ュラムだけを や つて いれば いいと いうわけ ではあ りません。
テストなど で自分 の不得意分野を発見したら、そ の ﹁コン
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させる―
step 3
123
非通塾派
躙
自分基準 (自 分の課題 )
鰺頸緻鰤陶同
′‐
パクトで体系的な教材﹂ で 一定期間をお いて3∼5回復習をします。 1回ではダ メです。なん
せ十 菫十分野な のですから、特 に力を入れる必要があるのです。塾 に通 っている人は、塾 の宿題 を半分にしてでも自分 の一 童十分野を学習計画に組み込む べき です。
﹁ それじ や塾 のペースに遅れち やう﹂なんて言 っていたらもと のもくあ みです。塾 の復習は 先生が授業 で取り上げた問題だけで十分 です。 ﹁ 自分 の課題﹂ ﹁ 自分基準﹂を見失 った瞬間に受
験は歯車が狂う ことを忘 れ てはなりません。塾 のカリキ ュラム自体に価値があ るのではなく、
﹁ 自分 の課題﹂ にこそ価値があります。 ﹁ 自分 の課題﹂を大切にす るからこそ ﹁ 塾 のカリキ ュラ ム﹂ に意味がでてくるのです。
物事を 一から自分 で組み立 てさせる秘技③
しく て、 ついイ ライ ラしてこども に辛くあた ってしま ったりします。
や ってきます。そんなとき、こどもが疲れているのを知り つつ、以前 のペースを取り戻して欲
﹁ や っと勉強 のペースが つかめてきた﹂とか ﹁ や っと自分から勉強するよう にな った﹂と思 つたら、と 予一 天バや運動会やらでペースが乱れることがあります。 でも、塾 のテストは容赦なく
◆家庭学 習 の実行 ︵ ∪o︶
家庭学習の実行 ︵ Uo︶
0
124
家庭学習 の分量﹂と ﹁ 家庭学習 の指示 のしかた﹂ にはルールがあります。 ただ、﹁
今 日は 5ページだけど、明 日 まず 、﹁ 家庭学習 の分量﹂は 一定量を決めるのが原則 です。 ﹁ 0ベージ﹂なんて気まぐれな課題 の出し方は良くありません。なぜなら、日標が人 の不規則 は2 な指示 に左右されると、自分 のペースが つかめず にモチベーシ ョンが下がるからです。そして
気持ちが不安定 になり、失敗す ると自己嫌悪 に陥ります。だから、課題 の分量はそ のとき の状
況や気分 で変え るのではなく、 一︷ 香一 里に決めておく必要があります。これが原則 です。
生徒は自分 の勉強 のペー スが つかめれば、 テストも喜 んで受けるよう になります。自分 の
自分 にムチ打 って﹂ 成 果を試したくなるも のです。本当は これが勉強 の本来 のあり方 です。 ﹁
﹁ 他人に絶対 に負けな いよう に﹂試験勉強すると いうよりは、﹁ 自分 の努力 の成果をみるために﹂
﹁ 型円き ですよね。 自分 の能力を確かめるために﹂試験勉強する、と いゝ つ万がユ
﹁ 分量﹂を決めたら、次は ﹁ 課 家庭学習 の指示 のしかた﹂ です。指示は ﹁ 分量﹂ ではなく ﹁
ウチ の子は、分からな い問題があ ると、すぐ にやる気をなくしてしまう の 題﹂ で示します。 ﹁
難し い﹂と思 っているだけ で、よくよくみる よ﹂と いうご家庭が多 いのですが、実は漠然と ﹁
と ﹁ 乗り越え るべき課題﹂が分か っていな いだけ のことが多 いのです。
それ にも かかわらず、多く の親は ﹁ 分量を こなせばな んとかな る﹂と思 い込 ん で います。 0ページ の中 の問題 そんなときは ﹁Юページ やりなさ い﹂と ﹁ 三 邑 で指示す るのではなく、 ﹁1 に ﹁ 課題﹂ で指一 を使 って分数の割り算を でき るよう にしなさ い﹂と いう旦べ口 不するよう にして
自分で組み立てさせる秘技
葛藤を克服 させる 一
step 3
125
くだ さ い。
中学受験 では勉強す べき分量 に圧倒され、﹁ 弱点を克服すること﹂が二の次 になりがち です。
しかし分量 に目を奪われたとたんに、 ﹁ 穴 の掘り方 は正し いが、掘 っている場所が違う﹂とな
分量はこなしているも のの弱点を克服 できず、成績が伸びなくなる﹂と いう ります。 つまり ﹁ こと です。
だ から、常 に ﹁ 家庭学習は分量 ではなく課題 で指示す る﹂ こと です。ど の学習項目 にも 、
まず ﹁ 理解﹂があ って、そ の次 に ﹁ 練習﹂がきます。 ﹁ 課題 ︵ 理解︶ 分量 ﹂を補うも のとして ﹁
︵ 練習︶ ﹂があるのです。 この点を こども に分からせな いと、 こどもは 一から物事を組み立 てら れるよう にはなりません。
物事を 一から自分 で組み立 てさせる秘技④
家庭学習の確認 ︵ Ooo︶
家庭学習を ﹁ もう や った の?﹂と聞くと ﹁ や った﹂と返事 が返 ってくるも のの、や った内
がと ても効果的 です。 ﹁ やり っ放しにさせな い﹂ です。
﹁ あたふたす るこども﹂ に物事を 一から組 み立 てさせるには、家庭学習 の確認をさせること
◆家庭学 習 の確 認 ︵ ∽8 ︶と指 示 の出 し方
6
126
容をよく見ると穴だらけだ つたり、答え合わせをしていなか ったり、やるべきと ころを や つて いなか った、なんてことはよくあること です。
これが終われば テレビが見れる﹂なん て 課題 で指示﹂を出し ても、 こどもが ﹁ せ っかく ﹁
課題﹂ に向き合 っては いな いのです。こんなことを 考えで勉強し ているよう では、こどもは ﹁ 繰り返しているから、余計 にあたふたするよう になります。
そ こで、 こどもが課題を達成 できなか ったとき、そ の原因を こども に考えさせる必要があ
ります。ただ、こどもが怠け ていたと即断していきなり辛くあたるのは いけません。指示 の出 し方が悪か ったから、と いう こと のほう が多 いから です。
教師 であればだれでも悩む こと ですが、人 に言 いた いことを正確 に伝え る のは本当 に難し
不を守らなか った人に対して つい不満を持 ってしまうも のです。しかし、こどもが課題 く、指一
を達成 できなか った主な原因は、﹁ 指示 の出し方﹂ の勉強不足にあることが多 いのです。
先生 の指示をよく守 るこども は、実は先生 の言 いた いことを補 ってくれて いるも のな ので
不を出しても、こどもが親 の言 いた いことを す。家庭 で親子 のいさか いが起きるのは、親が指一 補 ってくれな いから です。
どうすればよ い指示 の出し方が でき る こどもが課題を達成 できなか ったとき 、まず親が ﹁
か﹂を考え て、初めてこどもが ﹁ 課題に真剣に向き︿甲つ﹂よう になります。それを可能 にする
課題チ ェック表﹂を掲載しました ので、記入例ととも に見 てくださ い。 ツールとして、﹁
自分で組み立てさせ る秘技
葛藤を克服 させる 一
step 3
1 27
課題チ ェック表 勉強 日
間
/
(
勉強内容 強 容 勉 内
勉 強 一 達 ︲膚.度
実施 日
/時
回 までの課題
/課
題 を達成 できなか つた理由
①
②
③
①
②
③
曜日)
時間 時間 )
(
宿題
達成度 て先生が記入)1 達
/次
氏名
宿題を達成できなかつた輩歯・(=薇 豪繭│を 記入〉
未達成
成
大 変 よ く頑 張 りま した
"ヽ
達 成 で きな か つた理 由 は何 かな
'
(
強 容 勉 内
削鰈炒
実施 日
/
①
②
③
①
②
③
曜日)
時間 時間 )
(
宿題
達●成●鷲
―
未達成
成
大 変 よ く頑 張 りま した
■菫壼│
宿議を
で 先生が記入〉 達
達 成 で きな か つた理 由 は何 かな
'
強 容 勉 内
(
/
時間 時間
(
選 ■成 一 渡
達
①
②
③
①
②
③
曜日) ” >
勉 ︱機
実施 日
成
大変 よ く頑 張 りま した
宿題
未達成 達 成 で きな か つた理 由 は何 か な
'
※コピー して使用 して ください
128
1課 1題 │チ ││││■ │,│夕 │1表 │‐
の 記入 例
①④⑤⑥は勉強前に、②③は勉強後に記入します。また、①∼⑤は親が、 ⑥はこども自身が記入します。それぞれの詳 しい使い方は次に説明します
‐ │■ ■■■│ ・勉 の 強 最 初に■ ■ じ 織 か ,1崖 ■ヽ 1葉 =二 =あ 基 自│IⅢ=││111轟 商 = │二
│
・ 親が記入する
・
■■
_‐
│・
了後 ││17]螢 終 学書内容のポイントを まとあなから、できる だけ具体的 .
│こ
_親
か記入 す る
勉強終 了後 、
次回までの課題をでき るだけ具体 的に 親 が記入 する 。 次回の勉強内 容 も告知
して、このシー トを子 どもに渡す .‐ _
強 容 勉 内
勉 強
実施 日 10/3
(
月 曜日 )
17:30∼
時間
( 2
時間 )
宿題
① 四則演算 (小 数 と分数 文章顧
②
③
②
③
)
o oar+z
p22∼ 28
r-
達 域一衰
(奎篠が澤毒を議入)
達成度 (先 生が記入 ) 達
成
く頑 した
未達成 達 成 で きな か つた理 由 は何 か な つ
l:ヽ
0
::_.10.│
績機1をさ饉おぅたとし :2t, 蟹 憲 産ヨ 驚轟罐彗 畿 が 養り つける 構婦む 鶏麟聯ξ 31 TT議 穐 震 颯纂 ‐ ケ ん逸 薇 ズ ■ 卜 ││ │.親
110を 'l修
1末 .
│
1面
129
.そ
Step 3
口を燿す● .│.._・ ■‐
葛藤 を克服 させる 一
.
子どもが課題を終わら なかつたり、あまり真 剣にやらなかつたとき は、子どもが 1ず その 理由を次回までにこと 1こ 書き、勉強の最初に 親に 提出するよ うに ‐ ││ ― 伝える
自分で組み立て させる秘技
,2ノ
│‐
この課題チ ェック表 の目的は、親が効果的な指示 の出し方を身 に つけること です。と ころ が、実際 にや つてみると、 ﹁ 言 ったとおりや っていな いな ぁ﹂ ﹁ こんな にやり残しがあ ったんじ
ゃ先が思 いやられるなぁ﹂ ﹁言われたことしかや っていな いな あ﹂と思う こと でしょう。
しかし、 ﹁ こどもを責める気持ち﹂ が ﹁ 効果的な指示 の出し方を学 ぶ気持ち﹂ に勝 ってしま
つたら、親子ともども両すくみの状態 に陥 ってしま い、結局危機から脱出することはできませ ん。
また、ど のよう に指示を出して いいかを考えず に、 つい見 て見 ぬ フリをし て次 の単元に進 んでしま ったり、 ﹁ 後 でち ゃんと やる のよ﹂なんて指示 ・︿ 哭﹁だけ でやりすごしてしま っては
学習量は増え ていきません。あくま で親自身が学ぶ姿勢 で根気強くやり続ける必要があります。
他方 で、 こども にも ﹁ 自分 の課題﹂ に向き合 っても らわねばなりません。課題チ ェック表
には、こども の課題達成度が低 いとき に、その理由を こども自身に書き込ませる欄があります。
考えたことを書く ことによ つて、自分 のことを客観的 にみることができ るよう になります。な
んとなく ﹁ 恥ずかし い﹂と思 っていたことも、は っきりと ﹁ 恥ずかし い﹂と認識することがで
きるのです。 しかも、﹁ 書く﹂と いう作業は頭を使 いますから、実はこども にと つてはと ても辛 い作業な
のです。 ですから、課題を達成しなければならな いと いう必要性を感じ ているこども でな いと なかなかヽ つまく いきません。
130
″″
結果だけをも ってこようとす るこども にやらせると、親 のほう が参 ってしま います。 です
助け舟﹂と から、 ﹁ 自分 のペースが つかめず にあた ふたす るこども﹂ の段階に至 って初め て ﹁ して利用 でき るのです。
理由﹂ はこども に任せる必要があります。ど んな に幼稚な こと でも、こども に 書き込む ﹁
と って 一番身近な理由ほど、それを乗り越え ることができ るからです。ト ンチ ンカンなことを
書く こともあ るでしょうけれども、それを叱 っては いけません。 こども の視線 の高さを親が理
解することこそが重要だから です。むしろ、こどもが意外な ことを考え ることを知 って感動す
ることもあるでしょう。そヽ ?すると、親 の態度そのも のが変わ ってくるはず です。
家庭学習 の確認 ︵ 以上 のような ﹁ ∽8︶ ﹂ は親 にこそ粘り強 い努力が必要 です。 こども に小
言を言 いたくなるでし ょうけれども、心を鬼 にしてやり通していただければと思 います。
物事を 一から自分 で組み立 てさせる秘技⑤
だれだ つて ﹁ こなし切れな い課題﹂に直面したことがあると思 います。定期 テストの直前
でまとめて試験対策をするとき、大学受験の参考書を何冊も買 い込んできたとき、などなど。
ですから、課題をこなしきれない小学生の嘆きは、大人でも容易に想像がつくはずです。膨大
step 3 葛藤を克服 させる せる秘技 一 自分で組み立てさ
1 31
日々積みあがる課題を要領よくこなす
′
な課題を目の前 にしたら、ふ つうどうなりますか? こんなふう になると田やつんです。
① あせ っていな いとき ︵ 試験ま で余裕があ るとき︶は、とりかかるま でに時間がかかる。 好きな科目から手を つける。
②あ せ っているとき ︵ 試験が近 いとき︶は、ど の科目も暗記に頼 ろうとする。中途半端な まま試験 に臨む。 そ の結果、こうな ってしま います。
① あせ っていな いとき ︵ 試験ま で余裕 があ るとき︶は、好きな科目から手を つけ、とりか
かるま でに時間がかかるので、他 の科目 の課題がたま っていき、嫌気がさしてますます好きな 科目しかやらなくなる。
② あせ って いるとき ︵ 試験が近 いとき︶は、ど の科目も暗記 に頼 ろうとしたり勉強が中途
半端 に終わ ってしまう ので、本質的 に理解しておらず、試験が終わればほとんど のことを忘れ
てしまう。また、や っても や っても達成感がなく、後 にな って ﹁ も っと できた のに﹂と思う。
自分 のペースが つかめず にあた ふたするこども にと つては、 ﹁ 勉強量﹂ や塾 の宿題がと ても
負担 にな つています。気付 いたらこなし切れな い負債が山 のよう に積み上が って、首が回らな くなると いう話は現実 の、しかも切実な悩みです。
そう であ っても、がむし ゃら にやれば範囲指定 のあ る問題は何とか できるよう になります。
132
と ころが、どう し ても解決 できな いのは、範囲指定 のな い総合問題 です。 ﹁ や っても や っても 追 いつかな い﹂ です。
そこで、 ﹁ も っと要領よく こなせな いか﹂を考え てみます。具体的 には、①何とか分量はこ
なせているケース、②分量を こなし切れな いも のの、得意科目があるケース、③ 分量を こなし
切れな いし、これと いって得意な科目もな いケース、の3 つの場合 に分け て検討していきます。 ①何 と か分量 は こな せて いるケ ース
何とか分量は こなせ て いるケー スは、 いつも頑張 って勉強し ているけれども、成績がたま
にすごく落ち込む こともあ って、 いつも不安を抱えたまま勉強している状籠︹ です。
こう したケースでは、 ﹁ 現在 の勉強を こなし つつ、あ る いは現在 の勉強量を圧縮し て、3ヶ 2ヶ月前 巫看度を見るために、3∼ 1 月前 の部分も並行し てやる﹂ です。総合問題では、知識 の一 のも のを出題するのが通例だからです。 ですから、﹁ 今 や って いるので精 一杯なんだから⋮⋮﹂と いう人 であ っても、まず、授業 で
扱われた問題だけを復習し、それと並行して3ヶ月前 のテキストに戻ります。それでもダメな ら、先生に相談して、今やるべき ことを絞り込んでもら います。そうした上 で、それと並行し
て3ヶ月前 の復習をして知識を︷ 巫看させるよう にします。 これで大丈夫 です。
自分で組み立て させる秘技
葛藤 を克服 させ る ―
Step 3
133
② 分量を こな し切れな いも のの、得意科 目があ るケ ー ス
課題や分量を こなし切れ て いな いと いう ことは、基本的 に過去 に遡るど ころの話 ではあり
ません。ど こから手を つけ ていいか分からな いと いう状況 です。 こんなとき に ﹁ 得意科目﹂が
あ ると いう のは、本当 に心強 いこと です。 ﹁ 得意科目を活かし つつ、 いか に苦手科目を克服す るか﹂を考えればよ いからです。
先ほど、家庭学習 の実行 ︵ 分量 でなく課題で指一 ︶ の項目で、﹁ ∪o 不を出す﹂と いう話をしま した。これは指一 不を出す側と指示を受け取る側が正確 にやりとりするために必要な姿勢 です。
ただ、得意科目 に ついてはあえ て指一 不を出さなく ても自分 でどんどん進めることが できま す。むしろ、不得意科目をほ つたらかしにして、 いつも得意科目だけを や ってしまう のが悩 み のタネ です。
こうしたとき の解決法は、 ﹁ 得意科目は課題で指示し、不得意科目は課題 ではなく時間 で指
示する﹂ です。不得意科目な のにあえ て ﹁ これが できな いとダ メよ﹂ ﹁ これが でき るま でやり
なさ い﹂と いうよう に課題で指一 不すると、も のすごく時間がかか ってしま います。グラダ ラし たり、机 の上 で遊びだす こともあります。
不得意科目は誰だ ってイヤですから、時間がかか ってしまう のは仕方 のな いこと です。大 人だ って、やるべき苦手な仕事が目の前 にあると、 ついネ ットサー フインにのめり こんだりし てしまヽ つものです。
134
1時間﹂とか時間を区切 ってやらせる のです。最初 の だから、十 童手科目は ﹁0分﹂とか ﹁ 3 短時間﹂ の うちは時間が短ければ短 いほど集中 できます。しかも、苦手 であればあ るほど、 ﹁ 毎日﹂することが必要 です。 勉強を ﹁
そし て、残 った時間 で得意科目をと ことんやらせます。 やりた いことをと こと んやるのが
成長 に つながります。得意なも のが伸びれば成長している証だし、これがダ メでも アレがある と開き直る ことも できます。
菫手科 目に圧倒的な時間を費 やし て、得意科目を やらせな いこと です。 一番まず いのは、十
ストレスがたま ってモチベーシ ョンが下がります。得意科目 のある人は、そ の得意科目を大切 にしなく てはなりません。
そ の教科 の勉強時間を圧 得意な科目︶をと ことんやらせる﹂← ﹁ そして、 ﹁ やりた い科目 ︵
縮す る﹂ ← ﹁ 他 の教科 の勉強時 間を増 やす﹂ と いうプ ロセ スで進 ん で いきます。 こう した
日々短時間十 菫十科目に費やした努力﹂ が報われる日が突然 や ﹁ 下準備﹂ があ って、はじめ て ﹁ ってくるよう になるのです。
得意科目は課題で区切 って 一気 にやる﹂と いう ペ ﹁ 不得意科目は時間で区切 って毎 日やる﹂ ﹁
ー スが つかめると、塾 での授業も面白くなります。塾 では、先生 の話す速さ、カリキ ュラム、
自分 で コント ロールでき る余地が少な いのです。 自菫などほとんどす べての条件が塾次第 で、 演羽 ですから、 一度 つまずくと挫折感 やあせりばかりが募ります。 コント ロールできな いこと
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させる―
step 3
135
を、コント ロールできると思 い込んで悪戦苦闘して疲弊してしまう のはも った いな いこと です。 だから、自分 のペースを手に入れる、やれること ︵ コント ロールでき ること︶を やる、と いう のが重要になるのです。
③ 分量を こな し切れな いし、 これと い って得意 な科 目もな いケ ー ス
得意教科を突破 口に ﹁ 科目横断的﹂な学力習得を目指す ことが できな いこども の場合、ど
の教科 にせよ、 テキ ストを開く のさえ気が進まな いはず です。 ですから ﹁ 教材﹂を絞る必要が
あります。とは いえ、真 っ白なまま放置された大量 のテキ ストを、す べて引 っ張り出して机 に
並 べたら、最初 の1冊、最初 の数 ページで挫折するのが関 の山 です。
そう ではなく て、 一から仕切り直すために、 でき るだけ コンパクトな問題集 ︵一行問題が
ベスト︶を選んで、少しず つやるよう に指示します。その際 には、量 ︵ 何 ページから何 ページ︶ ではなく、課題 ︵ 何 々を できるよにしよう︶で指示します。
日 々の課題が累積債務 のよう に積 み上が ったとき、 こどもはプ レ ツシヤーで押し つぶされ
そう にな つて います。そこにき て ﹁ やれば でき る﹂ コ心は高くも て﹂なんて精神論 で背中を押 したら、こどもはそ の声を押し返すよう に勉強から遠ざ かり、 ﹁ これ以上、どう や って頑張れ ば いいんだ!﹂とな ってしま います。
ですから、 ﹁ これだけは絶対 にやるんだと決意し て、それをやり通す﹂ こと です。塾 の進度
136
に縛られては いけません。薄く てカ ンタ ンな問題集 に切り替え て、それをやり遂げるよう にし
ます。はじめはでき るかどうか分からなか った問題集を 一冊や っつけると、そ の問題集をキ ッ
どうだ、オレ様 の実力が分か ったか﹂ ﹁ と呪み つけ て ﹁ やれば でき るんだぞ﹂と いう充実感 ・ 征服感がこどもを 一回り大きく成長させてくれます。
プ レ ツシ ヤーは強すぎ ると人をダ メにしますが、適度なプ レ ツシヤーは人を大きくし てく
れます。だから、 ﹁ これだけは﹂と いゝ つものを決め て、それを徹底的 に打ち のめす のです。そ のためには、課題を小さくしてあげなければなりません。
﹁ 自分 で何とかし てできなき ゃダ メ﹂なんて古臭 いこと言 っていたら、せ つかく やる気 にな
った小学生 の芽がでてきません。事実、そ のような ことが繰り返されているのです。入試は自
分 のペースを つかむま でが本当は 一番苦しむも の。自分 のペースを つかむ のは正直 い って、難 産 です。しかし、本物 の自信が つくと、こども の顔が紅潮して生き生きしてきますし、行動が シャキ ッとするよう になります。
物事を 一から自分 で組み立 てさせる秘技⑥
課題 の分量が多く てあた ふたするこども には、 ﹁ 算数が苦手な こども﹂が多 いのです。そ の
自分で組み立てさせる秘技
葛藤を克服 させる一
step 3
137
小学生の算数の考え方 ︵ 宝探しから物語へ︶
8
原因は、実は教える側にもあります。それは、たくさん の問題 の ﹁ 与え っ放し﹂ です。 ﹁ 多量
の問題をやり込めば いつかしらできるよう になる﹂、と いう思 い込みです。
確か に、 やる気 のあ るこどもががむし ゃら に勉強 に取り組むよう にな って急成長す ること はあります。 でも、それは非常 に稀な現象 です。中学受験生 の通塾用 のカバンの重さは中身が
4∼5キ ログラムにも達すると いわれ ています。そんな分量 の問題を与え られてこなし切れる と田やつほう がおかし いのです。
だから、勉強を教え る側は、どう したら効率よく吸収 でき るかを考えなく ては いけません。 この点 に ついて、類題を見ながら検討してみまし よう。
①視覚効果を利 用して ﹁ 分 かり易く﹂ ﹁ 刺激を与え る﹂ まず、十 菫十意識が強 い子が多 い整数 の問題から見 てみまし ょう。次 の例題を見 てくださ い。
m、横 の長さが5 mの長方形を向きをそろえ て並 べ、 1辺 の長さが 0 ︻ 例 題 1︼縦 の長さが2 c C 9 mの正方形を つくります。 こ の正方形 の対角線 は何個 の長方形と交わりますか。 C [ 答] 4 5個 0 mを 1辺とす る正方形を最小単位とし て計 mと 5 mの最小公倍数 であ る 1 この問題は、2 c c 算していく こと になります。
図 1に対角線を書き込めば、最小単位 の正方形 では6個 の長方形と交 ることが分かります。
138
10 cm
│
[図 1]
上
0 mの正方 形 では 6 × 従 って図 2 の1辺 9 9=4 ︵ 個︶となるんですね。 5 と ころが、図 1が複雑 にな ったら ︵ 例えば 0列 で横が H列 になると実際 に図を書 い 縦が 1 て対角線を引 いてもそ の対角線と交わる長方
形 の数 が数え られま せ ん︶、それはもう計算
で解くしかありません。 ここで、生徒 に ﹁ こ
の問題は実は植木算なんだ﹂と気付かせ てあ
げた いんです。 5度傾けると、図 3のよう つまり、図1を 4 に植木算とま ったく同じにな るんです。植木 0 mの道路 に 0 mおき に木を植え 算と は、 ﹁0 1 1 るには木は何本必要 ですか﹂ なんてや つです ね。
従 って図 1の求め方を 一般化すると、縦が m列、横が n列 であれば、対角線と交わる長
方 形 の個 数 は ︵ ヨ ︲●上 ︶ 個 、 本 間 で は
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させる 一
Step 3
139
3] [図
2] [図
︵ 2+5 ︲1=︶6個、となります。小学生 にはこのよう にビジ ュアルで補完しながら指導す る必要があるのです。
小学生は抽象的な論理的思考力が未発達 ですから、ビジ ュアルな方法 で補完す る必要があ ります。 これが重要 です。分かりやす いだけ でなく、こども に刺激を与え ていると いヽ 2忠も見 逃してはなりません。 ② 宝探 しで体 力を つける︱ 原理原則 で串刺 し にせよ それではもうひと つ例題をみてみまし よう。
0 、 ︻ 例 題 2︼ 1から 0 ︲ま での整数 のうち 2または3のどちらか 一方 でしか割れな い数は いく つ 1個 ありますか。 [ 答] 5 このような整数 の問題は早ければ小 4くら いから扱 いますが、小 5や小 6にな っても これ
ら の問題を解けな いこどもがわんさか います。そし て、解けな いとなると、 ﹁ 式を書かな いか
ら理解 できな いんだ﹂と指摘され、こどもたちは ﹁ 式﹂を書くよう に言われます。 もち ろん、単に解法を忘 れて いるときもあるでし ょう。しかし、単に忘れ ているだけなら、
少し ヒントを与えれば思 い出すはず です。ところが、多く のこどもは前出 の問題に ついて少 し ヒントを出したくら いでは思 い出す ことができません。
それは、最初 に習 ったとき に、頭 に残 るような理解 の仕方をせず、単 に式を ﹁ 写経﹂ した
140
だけだから です。ただ単 に数字を追 いかけ ていただけ で、数字 の意味を考え て式を書 いていた
のではな いのです。 ﹁ 書く﹂と いう作業は大切な のですが、算数は ﹁ 写経﹂ では通じません。 ﹁ 理解したことを書く﹂ でなければ意味がな いのです。
大切な のは、ど のよう に考えさせればよ いか、です。 ︻ 問 1︼は ベン図 で教える人が多 いで す。確かにベン図で解ける問題はあります。 ですが、こどもたち に割り算を やらせ ても、割り
算 の答え が何を意味するか戸或やつことが多 いも のです。割り算を やらせたあと で、 ﹁ 次どうす
るの?﹂なんてこども に聞かれたら、全然理解してな いのと同じです。
式だけ で理解 させようとす ると、 いつのま にか突然 ﹁ パ ッ﹂と答え が出 てきたよう に思え
てしま い、感動も何もありません。 ﹁ 式を書く﹂は強制 でき ても、﹁ 理解して腹 に落とす﹂は強 制 できな いのです。
ど こかに宝があ る。それ 小学生 の算数は基本的 に ﹁ 宝探し﹂ です。 ﹁ 宝探し﹂と いう のは ﹁
を探す﹂ です。 いきなり ﹁ 宝 ︵ 解答︶ ﹂を取り出し てこども の目 の前 に差し出したら、宝探し
になりません。そう ではなく て、具体的 に ﹁ 宝 の埋ま っている場所﹂を示して、ど こを掘れば 数表﹂ です。 いいかを提示してあげます。そ の ﹁ 宝 のありか﹂が ﹁
︻ 例題2︼ の場合、最小公倍数である6を ヒトカタ マリとした次 のような数表 で考えます。
そうす ると、﹁ 2または3のどちらか 下万でしか割れな い数﹂は、 2列日、 3列日、4列目
の数だと分かります。小学生は、こうした ﹁ 目に見え る全体像﹂が分か って初めて ﹁ 式﹂を立
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させる 一
step 3
141
フ
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
2徴
51‐ ,」
圃國
4
5
6 2
4列
││,F 2'「 発 11■
てることができ るのです。
このような宝探しは、原理原則 で数多くある問題群を串刺
しにす ると いう実践的な意味があり、さら に、宝探しを しな
がら算数的な体力を作ると いヽ フ大切な ステ ップ でもあります。
﹁ 原理原則 で串刺しにする﹂と いう のは、例えば、類題2と
同じような問題群をど のよう に攻 め るか、と いう こと です。
別 の言 い方をすると、 ﹁ 見え方﹂ ではなく、 ﹁ 問 個 々の解法 の普 題群を前 にど のよう に頭を使うか﹂と いう こと です。例えば、
類題2と同じような問題群 には、次 のような問題があります。
︻ 類題3︼6で割 っても 8で割 っても 3余 る3けた の整数 のう
3 ち、も っとも小さ い数を求めなさ い。 [ 答] 1 2 0ま での整数 のうち、 2で割ると 9余り、9 ︻ 類題4︼ から 0 1 2 1、 5、 4 で割 ると 6余 る数をす べて求 めよ。 [ 答] 0 1 1
︻ 類題 5︼ 7を足すと Hで割り切れて、 Hを足すと 7で割り切
れるような整数があります。
142
3
、 9
1︶このような整数で、も っとも小さい数を求めなさい。 [ 答] 9 ︵ 5 3 答]9 8 ︵ 2︶このような整数で、も っとも1000に近 い数を求めなさい。[ 0 。 答] 2、4 1を割ると9余り、0 ︻ 類題6︼8 1 2 ︲を割ると4余る整数をすべて求めよ [ ︻ 類題7︼2つの整数A、Bの最小公倍数が2310で、A ¨B=3 一Hのとき、AとBの和 o を求めよ。 [ 8 答]9 1 3を っ っ が同じになる整数をすべて求めよ ︵ ︻ 類題8︼5 を て も て も 余 り ただし、割り切 割 割 6 。[ 2 れる場合を除く︶ 答]2、4、6、1 6、9 9、0 答] ︻ 類題9︼8 5を1以外のある整数で割ると余りは同じになる。ある整数を求めよ。[ 2 3
これら の問題を教え るとき、たくさん の解き方が噴出します。と ころが、 いろ いろな ﹁ 考
え方﹂を丸暗記してもす べての人が本番 で強くなるとは言えません。 ﹁ あれも これも知 って い
なぜか本番 では解けな い﹂ です。人に ﹁ このよう に解けばよか った のに﹂と言われ る﹂ のに ﹁
てはじめて ﹁ あ っ、そうか﹂です。これじ やせ っかくや った勉強も意味がな いことになります。
大事な ことは、 ﹁ 頭 の使 い 個 々の問題 の解法を でき るだけ多く暗記させる﹂ のではなく、 ﹁
方﹂を教え ること です。先ほど挙げた問題 でも、ち ゃんと教えなければならな いのは、﹁ 個々
の解法を覚え ろ﹂ ではなく ﹁ 約数 の問題か倍数 の問題かを区別したら、後は数表なり に書き出
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させる一
step 3
143
し て調べろ﹂ です。 この作業はと てつもなく手間がかかりますが、 この手間を省くから成績が 伸びな いんです。
この作業を面倒だと言う こどもは、算数 の力が伸びません。算数は限られた手段を使 って
頭 のしなやかさを轟 をつ科目ですから、最初 にたくさん の手段 ︵ 解法︶を与え ては いけません。
特定 の問題にだけ通用するよヽ つな 一見 ラクな解法よりも、多く の問題に通用するタ フな解法を 身 に つけるのが王道 です。
先ほど の問題 で言えば、 ﹁ 面倒 でも書 いて調 べろ﹂ です。仮 にカ ンタンな別解があ ったとし
ても、そ の解法が別 の問題 に通じるとは限りません。ど の問題にも通じる考え方は ﹁ 面倒 でも
書 いて調べろ﹂ です。あくま でここが出発点 です。 4﹂ ではなく ﹁ ゆとり教育 の影響 で、円周率を ﹁1 3﹂とす る試 みがありました。 これ では 3・ 面倒なことを回避するのを奨励しているようなも のです。 小さ いときから ラクばかりするから、
後 でこども自身が苦しむ こと になるんです。中学受験 では ﹁ 腹をくく つたこども﹂だけが勝ち 残ります。
ですから、先 の約数 ・倍数 の問題 で いうと、まず は ﹁ 約数 の問題か、倍数 の問題かを見極
めてから書き出し て調べろ﹂と教え て欲し いのです。 これが、たくさんある問題を ﹁ 原理 。原
則 で串刺しにす る﹂ こと です。大学受験 の数学だ って、 ﹁ この解法ならあれも これも解ける﹂
と田やえたとき に、アドレナリンがあ ふれ出しますよね。中学受験 の算数でも同じ思 いをさせ て
144
算数的な体力に関連して、【 類題フ】の補足をしておきます。 類題7】 には次のようなとき方があります。 【
■琴事凛議:
← この △ と □ は「互いに素」になります
3と 11は「互いに素」ですから、△ と□ は3か 11に なるはずです。 従って、□ (最 大公約数)は 、2310-(3× 11)で 70に なります。 しかし、この問題が解けたかどうかはあまり重要ではありません。重要なのは、 「3や 11を 見たときに素数だと気付いてしヽ 「50く らいまでの素数はス ること」 ラスラ言えること」です。 そもそも50ま での素数がスラスラ出てこないこども が数字を上手に操れるとは思えません。それなのに「 □ X3× 11=2310」 という式を書かせて「これでよし」なんて思うことはおかしいのです。
あげた いのです。
整数問題以外 にも 、線分図 や平面図形 や空
間図形などをうまく操れるよう にな るために
自分で組み立てさせる秘技
は ﹁ 図を書く練習﹂ が必要 です。中学受験 で
ビジ ュアル﹂ に訴え ることがと ても効果 は ﹁
的 です。 ﹁ 式 や図を書け﹂と何回言 っても書か
な い、書 こうと しな い場合、それは ﹁ やる気
がな い﹂ より ﹁ 解く手段がな い﹂ こと のほう
を疑 ってみる べき です。多く の場合、小 4 の
葛藤 を克服 させる 一
内容ま で遡 る必要 があ ること に気付く でし ょ
う 。 こう した 下準備 がな いため に、後 々苦労
す るこどもが多くなるのです。
step 3
③ ﹁ 宝探し﹂から ﹁ 物語﹂ ヘ
宝探しによ つて原理原則で串刺しにして、
算数的な体力を つけたら、次は本番 で実力を
発揮してもらわねばなりません。模試 のたび 145
に偏差値が乱高下するのではと て つもなく不安です。
試験 で実力を発揮し てもらう ため に必要な ことは、 こども に ﹁ 物語﹂を与え ること です。 。 0 分かりにく いと思 います ので、次 の例題 1 を だ て さ い 見 く 、 ︻ 例題 0 1︼4人 ですると 3時間 で終わる仕事を 5人 で1時間したあと 残りを 2人 でするとあ 0分 と何時間何分 で終わりますか。 [ 答] 3時間 3 5・ と記述され てい さて、これは仕事算 です。通常 の解説 には、 ︵ 4×3 ︲5×1︶ ÷2=3 ます。 でも、この式だけ で応 用力を つける のはと ても難し いこと です。 この問題 の背景には、 次 のような ﹁ 物五巴 があります。
。 壬体の什雪曹軍を決¨ [ A]△ める ︵ それを1とおくか最小公倍数でおくかは大きな問題ではありません︶ ↑
[ B]各人が単位時間あたり でこなせる仕事量は いくらか、を求める。 一 く
[ C]あとは題意 に従 って答えを導く。 これを ︻ 例題 0︼ にあ てはめると、 [ A]全体 の仕事量は、 4×3=⑫ 、 [ B] 1人 で1時 1 間 できる仕事量は、⑫ ÷4÷3=① です。あとは問題文をよく読んで [ C] の作業をするだけ です。
[ C] の作業は次 の通り です。 1人 で1時間頑張れば① の仕事が できますから、 5人 で1時
146
間仕事をすれば、① ×5=⑤ できます。だから、残り の仕事は⑫ ︲⑤ =⑦ です。そして、2人 で頑張れば、 1時間で、①︶ ×2=②だけ の仕事を できます。
5・ だから、残り の仕事を 2人 ですれば、⑦ ÷② = 3 時間かかること になります。 この作業が、 5・ 冒頭に挙げた ﹁︵ 4×3 1 5×1︶ ÷2=3 ﹂と いう式 に凝縮されているのです。 この式を こ どもから見ると、 [ C] の作業しかしていな いよう に見えます。
塾 の授業 で重き が置かれる のは [ C] の場面 です。しかし、指導 の核心は、本当 は [ A]
[ B] にあ るのです。 [ A] [ A] [ B]が分かれば同種 のす べての問題に応用が利きます。 [ B]
の過程を意識して初めて、 [ A]← [ B]←二 C]と いう ﹁ 物証巴 が完成し、本番 で強くなる のです。
﹁ 桃太郎﹂ のような音話を聞 いたとし ても、そ の 一部分を聞 いただけ では面白くも何ともあ
りませんよね。算数 でも、 [ A]←二 B]← [ C]と いう全体 の ﹁ 物語﹂ が分からな いと面白
C]だけに目が いってしまう のには理由があります。受験は コ霧す﹂だから です。もし、 つい [
[ B]も言 っていたとしても [ C]を強調す るため、 こどもは [ C]ばかり に目が い ってしま
本当 に大切な のは [ A]← [ B]← [ C]と いう ﹁ 物語﹂ であ ることは分か って いても 、
A] [ くな いんです。大事な のは、 [ B] の過程、 つまり ﹁つかみ﹂ です。
ためら いや疑間が頭をかすめても、ただち にそれを振り払わねば競争 に勝 てません。 だから、勉強を教え る側も つい [ C]ばかりを強調しすぎるよう になるのです。仮 に [ A]
葛藤 を克服 させる ―
自分で組み立てさせる秘技
step 3
147
ち ゃんと教え ているのに、なぜ試験 では報われな いのか﹂となります。 う のです。 こうして ﹁
これは ﹁ 早すぎた自滅﹂ です。 こども の成長は、大人が考え て いるほど早くはな いんです。
普段 の勉強 で大切な のは、 コ肌争 に支配されな い﹂と いう こと です。家 でも塾 でも追 いまくら
れるだけ のこどもは成績が伸びません。追 いまくられること自体は悪くな いのですが、追 いま
くられた後 に自分に戻ること で、勉強が感慨深 いも のになるのです。
いろ いろ言 いましたが、①視覚効果を利用して、 ﹁ 分かりやす い﹂だけ でなく ﹁ 刺激を与え
ること﹂、②宝探しを通じ て、算数的な体力を つけるととも に、問題群を原理原則 で串刺しに
すること、③それができたら、物語 の形 で考え方を身 に つけること、この3 つのす べてが欠け ていると算数 の成績は立ち行かなくなります。
ちなみに、算数 の成績が いいこどもは、数 の論理や空間図形が得意 です ので、丁寧 に学習 してくださ い。
物事を 一から自分 で組み立 てさせる秘技⑦
暗記 でなんとかなる﹂と高をくく つていた のが、 いざ入試問題を解 いてみ ます。それま では ﹁
中学受験 の直前期 になると、 ﹁ 理科 の計算問題が分からな い﹂と いう こどもたちが多くなり
理科の考え方
9
148
問】下の (表 1)は 日本と日本付近の海上の 3つ の地点 A∼ Hの 緯度と 【 経度を示しています。また、 (表 2)は A∼ Hの うちのある地点で 日の出、日の入りの時刻などを 10日 間の間隔で2回 観測したデータ です。この地点は A∼ Hの うちのどの地点だと考えらねますか '
騒爾爾襲鰈
137度
131度
140度
38度
140度
31度 IH
ると でき な いか ら、あ た ふた し てしまう ので す。
本 番 で理科 や社 会 が強 い子 は、 問 題文 から
求 め ら れ て いる情 報 を 抽 出 し、 それ に基 礎 的
な知 識を 組 み合 わ せ て解答 を 出 す こと が でき
ます 。 要す る に、基 礎 知 識を 用 いて整然 と答
えを導け るかどう かが重 要と いう こと です。
そ こ で、普 段 か ら理科 にど のよう にし て取
り組 ん で いく べき か に ついて考え ま す 。ま ず
は上 の問題を見 てくだ さ い。
記憶 を 思 い出す だ け の問題﹂よ り ﹁ ①﹁ 基礎
知識 を使 わ せる問題﹂を選んでやら せる
、 て季節を特定 します 。昼 の長 さは約 2 1時 間
ず答えを出してしま いましよう。 表 2︶から昼 の時間 の長さを計算し まず、 ︵
さ て、 この問題 の考え方 ですが、とりあえ
自分で組み立てさせる秘技
Step 3
134度
35度
葛藤 を克服 させる 一
149
塚 40度 140度 鰈 33度 35度
書│_の │1麟 `‐
2) (表 (表 1)
486度 52.3度
131度
:58 1フ
136度
18:10
6:10
6:02 35度 40度
目
1回 1蒙 1書
鱚吻 1著 織
」緯
0 マイナ ス緯度﹂ しかもだんだ ん短くな っているから秋。そう るすと、南中高度 の公式は ﹁9 0度だ とな って、 四度と いう ややこし いのが出 てきません。 ︵ 表 1︶からみて、南中高度は約 5 から、この地点は北緯 “度となります。 2 ¨6∼2 ¨4です。南中時刻は日の出 の時 次 に、この地点 の南中時刻は、 ︵ 表 2︶より、 1 0 1 0 5度︶ では太陽は正 刻と 日の入り の時刻 の平均をとればすぐ出ます。そし て、明石市 ︵ 東経 1 3 午に南中します。そヽ ?すると、この地点は明石より西にあること になります。
ここで、答え はFと でてしま います ︵ 本当 は ﹁ 経度 が 1度違えば 日 の出が何分ズ レるか﹂
0 、 4時間 で6 も検討するべき です。 ﹁ 日の出﹂ の問題 ですから ﹁ 地球 の自転﹂を考え、 2 3度 1時 5度。あれ、星 の動き でみたな、 って思 いますよね。さら に進めると、 0分 で5度、 4 間で1 6 1 分 で1度。だから、経度が1度ズ レると 4分ちがう。 ﹁ 自転 の問題﹂だと分かれば、 ﹁ 1度 = 。 4分﹂なんて覚え る必要はありません︶
この問題 には基本事項がたくさん入 って います。太陽 の南中時刻 の求 め方、太陽 の南中高
、経度と時差などなど。 このような難問は敬遠されがち 度 の求め方、太陽と季節 ︵ 日照時間︶ です。もち ろん、本番でも上 の説明 のよう にスラスラとは いかな いでし ょう。
しかし最近 では、この問題 のよう に、情報処理力を通じ て基礎的知識を ﹁ 使え るかどうか﹂
を見 る問題が増え て います。知識 の詰め込 みでは通用しな いのです。基礎知識を使 いこなせ るかどうかが重要な のです。
150
知識 の詰め込 みに終始したこども の多くは、情報処理力が必要な問題を見 ると ﹁ 何を や つ
ていいか分からな い﹂と いう壁にぶ つかり、基礎的な知識が吹 っ飛んでしま います。暗記だけ
でや ってきた受験生は、 こうした問題にでくわすと、はじかれ てしまう のです。
そうならな いためにも、普段から ﹁ 記憶を思 い出すだけ の問題﹂より ﹁ 基礎知識を使わせ
る問題﹂を選んでやらせることが大切です。これによ って、試験 で ﹁ 知識を使える﹂ よう にし ておく必要がある のです。 ②基礎知識 を使 わ せた ければ 、まず ﹁ 大きな視点﹂ を与え る
次 に、 この問題 にど のよう に取り組ませるかが問題 です。実際取り組ませ てみると基本事
項だ らけ です から、それら の確認 にな ってしま いがち です。 ﹁ 太陽 の南中高度 の出 し方 は、 4度だ ったよね ﹁ 0 ﹂ あ ∼そうだ ったよ﹂となります。しかしこれでは本番で解ける 3・ 9 ︲緯度 ±2 よう にはなりません。 この基本的知識 の確認 で済ましてしま い、あとはこども任せにするから 成績が伸び悩む のです。
こどもが本番 で基本的知識を使え るよう にするには、基本的知識を ﹁ 確認﹂ させるだけ で なく、 ﹁ 大きな視占﹂ を伝授しなければなりません。例えば、 この例題 の場合は、地域を特定
するには緯度と経度が分かれば いいのです。当然と いえば当然 です。
しかし当然だからと い つて、言わなく て いいわけはありません。個 々の基本事項を確認す
自分で組み立て させる秘技
葛藤を克服 させ る 一
step 3
1 51
る前 に、 ﹁ 経度と緯度を特定しろ﹂ です。そう した ﹁ 大方針﹂があるから、こどもたちは個 々
の道具 ︵ 基礎知識︶を総動員して解こうとするんです。こうしたこと の積み重ねが ﹁ 本番 に強 いこども﹂を作るのです。
﹁ 基礎事項 がな っていな いから偏差値 が伸び悩 んで いる、だから暗記を徹底させれば いい﹂
と いう のは的外れな考え方 です。教えなければならな いことは、 ﹁ 暗記する﹂ ではなく て、 ﹁ 使 え るかどうか﹂ です。
こどもたち に必死に考え させるのは、 ﹁ 経度と緯度を特定しろ﹂と いうような ﹁ 大方針﹂を
出すかどうかにかか つているのです。そして、必死に考えたことはそうカンタンには忘れませ ん。 いつま でも ﹁ 南中高度 の公式を覚えたかどうか﹂ のレベルで留ま っていては、入試 では勝 てません。
普段から基本事項が てんこ盛り の ﹁ 良質 の難問﹂をビ ツクア ツプし てお いて、それに労力
を集中します。確か に初めは時間がかかります。本番 で出されたら解けるかどうかも分かりま せん。
しかし、細かな暗記を繰り返すより、大きな視点を持たせるほうがはるかに効率的 で中身
の濃 い勉強をすることができます。植物 の分類、動物 の分類、水溶液 の分類、力学 の原理など、
大きな視点から考えさせることを徹底し ていく ことがこども の思考力を伸ばす のです。
152
物事を 一から自分 で組み立 てさせる秘技③
疑間から正解を導かせる
﹁ ケアレスミスが多すぎ て困るの﹂と いう 集中力を つけるにはどヽ ?すれば いいの?﹂とか、 ﹁
いです。確かに集中力は勉強 の進度と深度に大きな影響力 問題を抱え ているご家庭はと ても多´ を持ちます。
受験 で合格す るこども は、試験問題を覚え てく るほど集中し て取り組 んできます。 これ に
対して、受験 で不合格になるこどもは試験 で何が聞かれたかさえ正確 に再現す ることができま
せん。試験中ず っとあたふたしていて集中ど ころではなか った証拠 です。
しかし、単 に ﹁ 集中しろ﹂とか ﹁ ケ アレスミスに気を つけ ろ﹂と言 っても、なかなか抜本
■■■■■│■ ■
的な解決 にはなりませんね。 つける薬がな いよう にも田やえます。しかし、普段 の勉強に対す る 姿勢 の中に基マえが隠されています。
疑間を 同じ授業を受け て いても、 こども によ つて頭 の使 い方が異な って います。それは ﹁
疑間を突き詰 新し いことばかり に反応し ているこども﹂ です。 ﹁ 突き詰め ているこども﹂と ﹁
│‐ │‐
■■― ・‐
なぜ﹂と思 つたことを解決しようとし て授業 に臨ん で います。だから、疑 めるこども﹂ は、 ﹁ 間が解決したときはと てもうれしがります。次も頑張 ろうと モチベーシ ョンが上がります。
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させる一
step 3
153
Iθ
これ に対し て、 ﹁ 新しく習う ことばかり に反応す るこども﹂ は、 ﹁ これを覚えなき ゃ﹂ばか り に気が行 ってしま い、自分 の疑間を解決するのは後回しにな っています。 いつも義務感に追
い立 てられ ていて余裕がありません。だから いつま でた ってもあたふたしているのです。
疑間を突き詰めな いこども は、次 ページ の ︻ 図 1︼ のよう に ﹁一気 に済まそう﹂と いヽ 2女 易な考え方をす るこども です。授業を受けていても、絶対唯 一の正解を即座 に出さな いと意味 がな い、と考えます。
確かに受験は競争 ですから、疑間が浮かんでも直ち にそれをかき消さな いと、まわり の人
に置 いて行かれてしま います。だから、疑間を解決することは後回しで、新し いことばかり覚 えようとします。 ﹁ 疑間を持 つより解答を覚え る﹂ です。
しかし、 これ では いずれ分量 の壁 に突き当たります。本番 のテスト でも、問題を ろく に読
まず に知 っている知識を吐き出そうとします。 ﹁ 受け売り、キメ打ち、 できた つもり﹂ になる
ことが多く、 ﹁ 感動﹂も ﹁ 自問自答﹂も少な いのです。だからすぐ に挫折し、集中力も減退し ます。
宿題をまとめ てや ったほうが効率が いい場合もありますが、逆 に言えば、まとめ てや って
済むような勉強は勉強 ではありません。 一気 に済ます ことができたと思 っても、 いずれ 一気 に 滑り落ち てあたふたします。
これに対し て、疑間を突き詰めるこども には、 ︻ 図2︼ のよう に勉強 に時間がかか つてしま
154
疑 うと いう デメリ ットがあります。しかし、 ﹁
間が解けた﹂ ﹁ や つと理解 できた﹂と いう自信
や感動があるため、前進することはあ っても、
す べり落ちることはありません。疑間を突き
詰めた受験生だけが正解を手 にす ることが で き るのです。
紙 に書 か れ た 解 答 ﹂ では な く 、 正解 は ﹁
﹁ 自分 の頭 で考えた思考そ のも の﹂ です。さら に、 ﹁ 疑間を突き詰める﹂と いう作業は、試験
見たこと のな い問題 でも疑問から考 本番 で ﹁
える﹂ ﹁ 問題をよく読む﹂と いう訓練にな って
います。 ですから、自ずと本番 に強くな って いく のです。
また、 ふだ んの勉強を よく見 て いると、普
通 の子 は問題を解くだけ で四苦 八苦 です が、
要領 の良 い子は ﹁ 問題を解き つつ覚え る﹂ で す。要領 の良 い子は、答え合わせ で 一喜 一憂
自分で組み立てさせる秘技
葛藤を克服 させ る一
step 3
155
2] [図 [図 1]
するのではなく、その先 に ﹁ 覚え る﹂と いう作業が必ずあ ることを知 っています。疑間を解消 できたからこそ、 ﹁ 覚え ておこう﹂と いう気持ち になれるのです。
しかしよく考え てみると、 ふ つう のこどもたちが ﹁ 疑間を持 つより解答を覚え る﹂ に陥 っ た のは、果たしてそ の子たち の責任な のでし ょうか。大人が結論を急ぐあまり に ﹁ 疑間を持 つ より解答を覚え ろ﹂ にな っては いな いでし ょうか。 ﹁ オ マエはこんな問題もすぐ に解けな いの か﹂と追 い込んでは いな いでし ょうか。
も しそうだとすれば 、こどもが疑間を突き詰めることを放棄した のは こども のせ いではあ りません。 こどもは、分からな いのではなく、混乱して いるだけなんです。 ﹁ 分からな い﹂よ
う に見え るのは、能力がな いからではなく、疑間を封殺したからです。 こどもたちだ つて本当
は ﹁ 理解した い﹂ ﹁ 勉強を楽しみた い﹂と思 っています。 こどもは親 に刃向かう” 称抗勢力 でな く、迷 い子にすぎな いのです。
ですから、自分 のペー スが つかめず にあた ふたす るこどもたちを、普段 の勉強から ﹁ 自分
の疑問から公甲えを導く﹂ ﹁ 思考力を つける﹂よう に導 いてあげ ていただきた いのです。 ﹁ 疑問か
ら導く﹂と い つてもイ メージがわかな い方は、次 の問題で確認してみてくださ い。
1年度第 3間︼ ︻ 駒場東邦中学 平成 1 3地点A、B、Cを直線で結ぶ道があります。A地点からB地点までは平地であり、B地
156
点からC地点ま では上り坂、また、C地点からA地点ま では下り坂にな っています。 太郎君は午前 9時 にA地点からB地点 に向 か い、また次郎君は午前 9時 0 1分 にA地点から C地点 へ向か い、それぞれ歩き始めました。 2人は途中休んだり引返したりすることなく、各 地点を通過し、そ の間午前 9時 7分 0秒には出会 い、 1周して、午前 0時 に同時 にA地点 にも 1 3 3 m、2b、6k mで どりました。また、2人はとも に、平地、上り坂、下り坂をそれぞれ時速 4k 歩きました。
① BC間 の距離と、CA間 の距離 では、どちらが長 いですか。そ の基甲えのみを書きなさ い。
② 2 人 が 出 会 った 地 点 は 、 A B 間 、 B C 間 、 C A 間 のう ち のど れ です か 。 答 え の み 書 き な さ い。
③AB間の距離を求めなさい。 ④太郎君の歩 いた距離を求めなさい。
疑問﹂にこだわ って この問題は受験生だけでなく、多くの講師をも悩ませます。しかし、﹁
のヒントを活用すると、スッと解けます。まず解法ありき、ではなく糸回は問題文から見 ①②︶
つけようとする姿勢が大切です。 0分 の差が生じた まず、①は、太郎君も次郎君も同じ距離を歩 いたにもかかわらず、なぜ1 のかを聞 いています。太郎君が余計に時間がかか ったのですから、太郎君のほうが上り坂が長 か ったんです。だから、① の答えは、BCのほうが長い、となります。
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させる―
step 3
157
、① A点 ︵ 次 に、太郎君から見た場合 ︵ 左から右 へ︶ 出発点︶から出会 った地点ま での時間 5分、②出会 った地 から 5・ は3 点 7・ A地点 ︵ 終点︶ま での時間は 7 分。他方、次郎君からみた場合 2 、 5分、④ A ︵ ︵ 右から左 へ︶ っ ③ 出 会 た 地 か らA地点 ︵ 点 終点︶ま での時間は 2 出発点︶から出 2. 5・ 。 会 った地点ま での時間は 7 2分 です ② の問題意識は、①と 同様 です。 ﹁ 太郎君① と次郎君③は歩 いている距離が同じな のに、な 5分 の差が生じるのか﹂と いう こと です。これでこの問題 の分析はオシ マイです。 ぜ1
平地 では速さは同じだから時間 の差は生じな いが、坂道 では速さが違うために時間 の差が 生じる。だから、AB間で出会うはずはな い。よ って② の基甲えはBC間となる。そしてBC間
は距離が 一定 で、速さ の比が 1 ¨3な ので、時間 の比が3 ¨1となり、そ の差 2にあたる の 5・ 5分 で歩 いたことに が5 。 っ 、 分 従 っ て 次 は 郎 君 会 出 た 地 か ら 点 点 で7 分、またAB間を 1 B ま 1 。 なるから、③ の答えは1﹄となります ︵ ④は省略︶
物事を 一から自分 で組み立 てさせる秘技⑨ ヽロ
rし
中学受験 では、親 の加担度がどう し ても重くなります。 こども は家庭 に対す る依存度が高 いので、当然 のこと です。ただ、自分 のペースが つかめずあたふたするこどもたち にと つて、
こどもの混乱を助長しな
II
158
ここは自分 のペースを つかむ貴重な時期 です。それな のに、親が こども のペースを乱したり、
こども に自信を つけさせる つもりがかえ つて自信を喪失させた、なんてこと にな っては いけま せん。
と ころが、得点 や偏差値が上がらな い、安定 しな いと親 のほう があせ ってしま い、 こども
に自信が つく前 に、 ﹁ こんな成績な のに、あんたは自分 でなんとかしなき ゃとは思わな いの!﹂ ?すると、こどもは親 と田やつものです。ため息を ついて暗に こどもを非難してしま います。そヽ の期待と正反対 の行動をとるよう になります。
ストレスを溜め込 んで幼児 にかえ つてしまう のです。また、親がこどもを追 い詰め て いる 悪 つもりが、実はかえ って親 の方が追 い詰められていたりします。このまま こんがらが つた状笙
基本だけし っかり暗記しなさ いね﹂ の で小 6の秋を迎え ると、不十分だと分か っていても、 ﹁
自分 でなんとかしようと思 自覚が足りな い﹂ ﹁ まま入試 に突入すること にもなりかねません。 ﹁
果し いはず の受験を ゆがめるんです。これでは いけませんね。 わな い﹂と いう一 樟神論が、本莱T
そこで、親がこどもをど のよう に見守 っていけばよ いかに ついて考え ていきます。
① こども の頭が こんがらが って いるとき には、進度 のベースを少しだけ緩めて、質問を待 つ
こども の頭が混乱し ているとき には、も っとくわしく解説してやりたくなります。しかし、
いくら詳細な解説をし ても、 こども に安心感を与えられる解説 でなければ意味がありません。
自分で組み立てさせる秘技
葛藤を克服 させる 一
step 3
159
混乱しているところにごり押ししないのが、結局は近道です。﹁ こんがらが つて飲み込めない﹂ のを無理に飲み込ませようとしてもダメです。
受験のライバルの多くは ﹁ 凡人﹂ です。天才はごくわずかです。ですから、あせらずじ つ く り いき ま し よう 。
② 分 かると ころま で戻 る
テレビ の旅番組を見 ていると、知らな い場所よりも知 って いる場所 のほう が強く反応 しま
す。勉強だ って、 ﹁ それ知 ってる!﹂と田やえると ころま で戻ると、元気がでてき て、﹁ 勉強が好 きな自分﹂を取り戻し、 硼%の力を発揮しようとするよう になります。 チ ヤレンジ できれば、失敗し ても充実感があり、次 に つながります。反対 に、 朋% の力を 発揮しな いまま失敗すると、﹁ 自分には能力がな い﹂と いう誤 った思 い込みをしてしま います。 ③成績 が思う よう に伸び な いとき に、 ﹁ 能力﹂ のせ いにしな い
失敗 の原因を ﹁ 能力﹂ のせ いにす ると、 やる気をなくし てしま いやす いし、立ち直 る のに
と ても時間がかかります。大人 でも同じですし、こどもならなおさらです。自分 のペースが つ かめるま では、結果が田やつよう にならな いとき に、 ﹁ 能力﹂ のせ いではなく、﹁ 運﹂ や ﹁ タイミ ング﹂ のせ いにすれば一 印回き になれます。
160
成功を喜 ぶのはだれでも できます。反対 に、失敗した自分を受 け入れることは難し いも の です。だから、こどもが失敗したときは別 の見方があることを教えます。こどもが失敗したと
どうしてそうな った のか﹂ ﹁ も っと いい方法はな いか﹂を こどもと 一緒 に探し てあげる き に、﹁
のが原則 です。失敗を責めたり、プ レ ツシャーをかけるのは、それが愛情 の表明 であ っても、 例外的手段 にとどめて欲し いのです。 ④ こどもが順序立 てて考 え るよう にし つける
﹁ 段取りを組む力﹂は何も勉強だけ で育 つも のではありません。朝起 論理的な思考力﹂ や ﹁
きたとき に、 一日の段取りを考えるこどもは、そ の日 一日を生き生き、シャキシャキ過ごす こ とができます。
だれが、 いつ、ど こで、何を、ど のよう にす るか﹂を意識するよ ですから、 でき るだけ、 ﹁
も のごとを表面的 にとらえ るのではなく、も のごと の関連性をよく考え さ う にし つけます。 ﹁ せること﹂ で、そ の子 の生活は大きく変わります。 課題﹂を共有す る ⑤ こど もと ﹁
今何を や っているのか﹂ ﹁ 何 のためにこれを や って い こどもは、勉強を進めて いくうちに ﹁
あれも これも やらなき ゃ﹂と焦 ってしま います。 るのか﹂を見失 います。 一方 で、教える側も ﹁
自分 で組み立てさせる秘技
救ep 3 葛藤 を克服 させる 一
161
そこで陥りやす いのは、 一 今 や っていることに集中 できな い﹂ です。 こどもが混乱し て いるなか、塾 のカリキ ュラムはど んど ん進 んでしまう。 こんな に悩まし
いことはありません。 ですが、入試 の勝敗を決めるのは ﹁ 集中力﹂ です。合格す るこどもは、
入試問題を全部覚え てくるくら い集中して試験を受け てきます。入試問題を覚え るほど集中 で きた のは、 ﹁ 問われ ていることが分か ったから﹂ です。
つまり、 ﹁ 聞かれ ていること﹂ ﹁ 与えられた課題﹂ が分か って いな いと、そも そも集中 でき
な いんです。だから、成績が思うよう に上がらな いときは、 ﹁ 当然 やることは分か っているで しょ﹂ ではなく、 一緒に課題を共有し ても いら いた いんです。 C 必要以上に励 ましたリ ハッパ を かけたりしな い
﹁ 頑張れ﹂ は思 いやり の発露 ですし、そし て高 い志を持 つこと の尊 さを説く気遣 いの言葉 で す。
でも、 こども は学校と塾 のダブ ルスクールで疲労 がたま っているのがふ つう です。平 日に
宿題をやろうとす ると夜中ま でかかる。平日にこなせな い宿題は土日にまわす。宿題が多すぎ
たり、学校 の行事が重な ったりすると、土日にまわした宿題も こなせな い。土日にゆ つくり で
きな いから疲れが取れな い。だから平日も疲れ で集中 できな い。中学受験は体力勝負と田やえる ときがあります。
162
これ以上ど 頑張れ﹂と言われても、﹁ そう して疲れがたま って体力も気力も限界 のとき に ﹁
即 原 う頑張れば いいんだ!﹂と反発したくなり、また、余分 に力が入 ってかえ ってペースを山 , 因 にもなります。
そんな に頑張らなく ても いいよ﹂と声をかけ て よく頑張 っているね﹂ ﹁ ウ ソでも いいから ﹁ あげれば、こども の肩 の力が抜けます。
こどもがなかなか行動変容を起 こさな いとき、外見上はグラダ ラし ているよう に見え ても、
何かしら のスランプ に陥 っているかも知れません。表面だけ でこどもを判断する大人は、こど
も の心 に触れることができません。 こども に乗り移 ってこども の心 に触れること の出来な い大 人は、こども の力 にな ってあげられません。
︻ まとめ︼
本 ステ ップ の課題は、 ﹁ 小 さな成功体 験 は人 の助力 があ ったから こそ でき た﹂ ことを こども
に理解 さ せ 、大 人 の助 力 な し に成 果 を 出 さ せ るよう にす る こと でし た 。特 に、学 習 計 画 の
鬼行 動﹂ で ∽ 8 は厳格 に行 なわねば なりま せ ん。本 ステ ップ でと る べき 行動 原則 は ﹁ 日とo︲ も一 す。
と ころが、私も 塾講師 と し て走り出 し のころ、鬼 行動 のとり かた がまず く て失敗 した こと
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させ る一
step 3
163
があります。中2の生徒が私 の元を去 ってい った のです。
新中 2を受け持 ったとき のこと。優秀 でやんち ゃな子が多 いクラスでした。と ころが、や んち ゃすぎ て、授業中 にも平気 で後 ろを向く生徒は いるわ、先生が話していても隣と ペチ ャク チャ話すこどもが多く いるわ で、それはそれは驚きました。
何十人 いる騒がし いクラスを鎮圧す る のは私 の得意とす ると ころ。 でも、 いきなり怒鳴 っ たりは しません。
机間巡視 の間に、 一人ひとり のノートに ペンを入れ て いきます。そうす ると、 こどもたち は次 々と手を上げ て ﹁ 先生、見 てみて∼﹂と言 ってきます。ついてこれそゝ ?もな い子が いれば、
クラス全体 に対して つまずき やす いポイ ントを フィードバ ックします。 こうして授業は初日か
ら粛 々と進められ ていきました。 ただ、 1週間た っても解消しな い心配事 がありました。それは、宿題を マジ メにやらな い こどもが多か ったこと です。 ﹁ なぜ マジ メに宿題をやらな いのか っ!﹂
﹁ みんなや ってな いもん﹂ そう、そ のクラスは特定 の学校 の生徒 の寡占状態 で、友達同士 の状況がお互 いに つつぬけ でした。だから ﹁ みんなや ってな いもん﹂となるのです。 ﹁ そヽ つさたか﹂と、私は心 の中 で ニヤリ。 ﹁ lヶ月後、 コテ コテに絞り上げ てやるぞ⋮⋮﹂
164
″ それま での間、生徒たちと の コミ ュニケーシ ョンをたくさん取り、 厳重注意″ ″ 超鬼行 動″ の下準備をしました。ただ怖 いだけ の先生 の言う ことは、こどもたちに伝わらな いから で す。
こどもたちは、 ﹁ 本当 に自分 のことを思 つてくれ ている﹂と いう人 の言う ことだけを聞きま す。だから、宿題 のいい加減さには多少目を つぶり、と にかく勉強が楽しくなるよう、あ の手 この手 で盛り上げ ていきます。そしてlヵ月後⋮⋮。
﹁ こ の宿題は次回ま でに完璧 にや つてく るよう に。 この宿題をち ゃんと や って来な い人は、
厳重 に注意を与え る﹂と教去大三体を見渡しました。ただならぬ様子だと こどもたちもゝ ?Tつす
感じている様子。 そし て次回 の授業。 やはり、怠惰 の習慣から脱出す る のは難しく、宿題を や つてこな いヤ
ツは必ず います。 でも、今日こそは厳重 に注意せねば、と職員室 で ﹁ 演技﹂ の準備。もう使用 しなくな つた テキ ストを忍び込ませました。
は い っ、宿題提出﹂ ﹁ 授業終了間際。 ﹁ や っベー、忘れち ゃったよ、先生﹂。4∼5人が同調。
私は 一呼吸し、 ﹁ 常習犯 の男子と女子を 一人ず つ叱 ろう。もう信頼関係は でき て いるはずだ﹂ と自分に言 い聞かせました。
﹁ A男と B子、立 て!﹂ ﹁ 何回言 ったら分かるんだ!﹂。古 いテキ ストを机 に叩き つけ て、そ
のテキ ストを破り捨 てる。 ﹁ 宿題をしな い。それはお金をドブに捨 てるのと同じだ︱。 お前な
自分で組み立てさせる秘技
葛藤 を克服 させる 一
step 3
165
ら自分 のお小遣 いをドブ に捨 てられるか? なぜ親 のお金なら捨 てられる のか。甘 つたれる な っ!﹂
教壇を殴る右手 のこぶしには血がにじみ、そ の手を握り締め て5分くら い説教をす る ︵ ち
なみに、叱るときは、お尻を叩く要領 で、 できるだけ音本 剣に、でき るだけ短時分 で収束させる 。 のが原則 です︶
これは心も体もと ても痛 いので、もヽ つ今はやりませんが、か つて小学生 にも中学生 にも用
じ ゅうたん爆撃作戦﹂ です。教去キ甲が凍り つきます。 ﹁ いていた ﹁ 次回 の授業ま で提出を待 つ。
必ずち ゃんとや って持 って来 い﹂と告げ、授業終了。やれやれと、職員室 に戻ります。 と ころが、です。 ﹁ 山田先生、B子ち ゃん のお母さんから電話 です﹂ ﹁ は い山田です、こんばんは﹂
﹁ こんばんは、じ ゃな いですよ。 こどもが泣 いているんです。先生 には子供 の気持ちが分か らな いんですか っ﹂ ﹁ いゝ め、 え、︰⋮﹂ ユ
直属 の上司は ﹁ 思 いつき で叱 ったわけじ ゃな いから⋮、問題 のクラスだから⋮﹂と慰 め て
くれはしました。けれども、 ﹁ 私はただ の怖 いだけ の人だ った のか。なぜもヽ つ少し丁寧 に人間
″ 関係を作 っておかなか った のか。 慢心″があ った のか。 でも、 一人残らず、しかも でき るだ
166
け早く成績を上げなければならな いし⋮﹂と悶 々としながら退塾した のです。
﹁ 鬼行動﹂を徹底 して改善がみられな いときは、ただ の ﹁ 怖 い人﹂と思われ てしま って いる
可能性があります。 ﹁いつも の怖 いお母さんに戻 っち ゃ った﹂ です。 これではこどもは心を開
いてはくれません。 こどもは ﹁ 親心﹂を理解してはくれません。 ﹁ 鬼行動﹂が効果を発揮す る 鬼行舗ど ︵ のは、 ﹁ 怖 いけど やさし い人﹂ がやる場合だけ です。だから、﹁ ステ ップ 3︶を起 こ
しても反発されるだけ のときは、もう 一度 ﹁ 仏行舗こ ︵ ステ ップ 2︶から再チ ヤレンジし てみ ていただきた いのです。
後 日談 ですが、A男は県内ト ップ の進学校 に合格し、私 のと ころ へ来ました。 ﹁ 先生があ の
とき叱 つてくれたおかげだよ﹂。 ﹁ おめでとう﹂とは言 ったも のの、同時 にB子 のことが心配に なり、心 の中はグレーでした。
自分で組み立てさせ る秘技
葛藤 を克服 させる 一
step 3
167
◆トビックス③ 中学受験 に塾 は必要 か
中学受験 の受験率が年 々上が るに つれ て、﹁ 中学 受験に塾 は必要か﹂と いう議系 咽が盛んになりま した 。と ころが ﹁ 中学 受験に塾が必 要かど うか﹂と いう テー マで議論 し ても 、神学 論争 のよう に
な ってしま い、終わ ってみると 何を議論 した かさえ忘れ てしまうほど です 。こう した ﹁ 解 釈 の自
由﹂を得た テー マの議論は 、内容が広 く浅 いも のにな ってしまうから です 。ただ 、実際 に塾 に行
かせようかど うか悩ん でいる親がと ても多 いので、このこと を取り上げ てみた いと 思います。
中学受験に塾が 必 要かど うかと 聞かれた ら 、私 は ﹁一度 は必 要﹂と 申 し上げ ること にし ていま
す 。中学受験 の場合 、高校や 大学 のそれと は異な って、学習内容 の体 系が 不明確 です 。多 く の人
にと って、何をど れだ けやれば いいかが分 かりません。だ から 、﹁ と りあえず﹂大手塾 に入 ってみ て、他 の受験生が 何をし ている のかを覗 いてみる必 要があ ると 思 います 。
大学受験 にも代ゼ ミと か駿台 など の大手 予備校が ありますが 、け っこう予備校を 乗り換えた経
験 のあ る方 は多 いですよ ね 。ムダにお金が 飛ん でいき ますが 、これは必 要なムダだと 思 います 。
塾はど こ でも いいでし ょう。ど こでも勉強 の コツを掴んだ人から順 に塾を去 っていくから です 。
中学受験や高校受験 でオカ シイ のは 、最後 の最後ま で塾 にど っぶ リ ハ マ ッている人がと ても多 いこと です 。大学 受験 の例が 分 か りや す い の ですが 、入試 直前 にな ってま で塾 の授 業 を 聞 い て
168
自分 ﹁ な るほど 、な るほど﹂ なん てうなず いている人は合格 できません 。人試直前 にな った ら 、﹁
には何が 足りむく て、何をすれば いいか﹂に全力投球す る生徒が合格 します。
入試直前 に塾 に通う生徒を見 ていて、同じ テーブ ルに座 っている受験生 であ っても 、自分 の課
題を持 っている生徒と そう でな い生徒 は目 の色が違 います。自分 の課題を持 っている生徒は 、自
習 し ている時間 のほうが 長く 、授業 ではリ ラ ック スし ています 。課題を も っていな い生徒は 、自 習はダ ラダ ラや って、授業 のと きだ け力が 入 るよう です 。
中学受験 の場合 、﹁ 何を し ていいか分からな い﹂から 一度は大手塾 に参加 し てみるのが いいので
す 。そ の意味 で、中学 受験 には ﹁一度は塾 は必 要﹂ です 。ただ 、本当 に重要な こと は 、塾に通 っ 依存度﹂ です。 ているか いな いか ではなく 、塾に対す る ﹁
い つま でも ﹁ 理解した﹂ ﹁ 理解 し ていな い﹂ のレベルにとど ま っていな いで、い つかは塾 の授業
が ﹁ 確認 のた め﹂と な るよう にしな ければ なりません 。自分 で学習 した ことが 正し いかど うかを 授業 で ﹁ 確 認﹂ できるようになれば 、そ の生徒はもう大丈夫 です 。
偏差値﹂ と ころが 、中学 受験 の場合 、塾 に最後ま で依存 した くな る原因が あ ります 。そ れは ﹁
です 。ブ ログ の中 でわが 子 の偏差値を公 開し ている方が おられますが 、親 はど う し ても自分 のこ ど もを偏差値 で見 てしま います。
偏差値 で最終的な決断を 下す﹂ です 。そ し て、偏差値を上げ るためには塾が必 要と 思 い込ん で ﹁
しまう のです 。他人 のこと であれば ﹁ 受験は偏差値 じ ゃな いよ﹂と 言 っても 、自分 のこど もは別
自分で組み立てさせる秘技
葛藤を克服 させる一
Step 3
169
です 。これは人と し て自 然な こと ですね。
ステ ップ 4 で触れますが 、偏差値は ﹁ 見 る﹂も のでは想く ﹁ 読 む﹂も のです。﹁ 最終的な判断 の
資料﹂ ではをく 、﹁ そ の場そ の場 のベ スト の判断を 下すた め の資料﹂ です 。しかも 、受験 で決定的 に重要な のは ﹁ 偏差値﹂よ りも ﹁ 問題と の相性﹂ です 。例えば 攻 玉社中や芝浦 工大中 の算数 のよ
うに骨 のあ る問題を出す学校 もあれば 、城北中や豊島 岡 の理科 のよう に、暗 記が 限りなく少 なく てすむ問題を出す学校もあります。思考力勝負 のこど もは こうした学校を受ければ いいん です 。
中学受験 に塾が 必 要かど うか﹂と いう問題提起 は 、﹁ ﹁ 塾 に通うと いう事 実﹂と ﹁ 合格す ると い う こと ﹂が いかにも密接 に関係 し ていると いう錯覚を前提 にし ていますが 、実は塾 に依 存 じすぎ
危機管 理力 を磨 いておく︶ こと を前も って考え ておく こと のほうが合格 に近づ くと 思う の ない ︵ です。
170
辟祗炒仄
活力を吹き込 む 一 気付きを与える秘技
「なるほど (動 機)」 ヘ ◆「もう大丈夫 (自 信)」 から
このく ら い勉 強す れば いい でしよ
ほか の子 は そ んな に
勉 強 し てな いよ
を 回復 さ せ ま し ょう
ヽ 、 ヽ
こど
伸 び 続 け毎
全力投球
だからもう 勉強 しない ′
う ル﹂
ゴ二
自 己完結するこどもたち
ここで取り上げる、﹁ 自己一 匹福するこどもたち﹂とは、こんな こども です。 *﹁ 安心感を求めて、ほどほど の志望校 で妥協している﹂ *﹁ 偏差値ばかりを気 にする﹂ *﹁ 友達は勉強していな いのに﹂と不満をもらす
*﹁ 塾 でのクラスが下がりたくな いからテストを欠席した い﹂などと言 い出す。
こうしたこどもたちは、 ﹁ 自分はもう これ以上勉強しなく ていい﹂とか ﹁ 今勉強す る必要が
な い﹂と自分 に言 い聞かせています。実は、このケースが 一番扱 いづら いのです。
ただ家と塾を行き来するだけ のこどもたち﹂ は、勉強を し ている最 ステ ップ ーで扱 った ﹁ 中 に ﹁コレが終われば遊 べるぞ﹂と田やつこどもたち です。勉強が終わると、水を得た魚 のよう
に生き生きと遊びを始めます。こうしたこども には ﹁ 強制﹂ で臨んでもうまく いかな い、とお 話しました。
これに対し て、 ﹁ 自己完結す るこどもたち﹂ は、勉強も遊びも中途半端な こどもたち です。
試験前 には要領よく勉強する 一方 で、コ心 は高 いほう が いい﹂﹁ でき るだけ いい学校 に行きた い﹂
172
これくら いや っておけば いいだ ろう﹂と いう自分勝手 で安 とも思 って います。それな のに、 ﹁
易な判断を下します。 ﹁ 勉強をしなく てすむ理由﹂を探し出す名人な のです。
自分 には何が足りなく て、何をすれば いいか﹂ に全 ﹁ 自己完結﹂せず伸び続けるこどもは、 ﹁
力投球します。授業を受け ている時間よりも自習している時間が長く、授業 ではリラ ックスし
自己を 覆桓﹂ して いるこどもは、入試直前 にな ってま で授業を聞 い ています。 これに対して、 ﹁
て ﹁ なるほど、なるほど﹂なんてうなず ています。自習はダラダ ラや って、授業 のときだけ力 が入るのです。
悪にあります。 寄り掛かり病﹂と いう思考停止状£ こう した ﹁ 自己完結す るこどもたち﹂は ﹁
﹁ とりあえず、 いい塾、 いい学校、 いい会社 に いれば大丈夫﹂と い った消化試合 のような人生
観 です。と ころがそんな夢 のような話が いつま でも続く ことは絶対 にありません。 いつま でた
っても自分が主役 になろうとしな い人は、見向きもされな いときがきます。そんなこどもたち には、気付きを与え て、活力を回復してもらヽ 2必要があります。
ステ ップ 3ま では親 が こどもを牽 引す る形 で の関わり方 が中心 でしたが、本 ステ ップ では
気付 きを与える秘技
活力を吹 き込む 一
Step 4
173
自己完結するこどもたちに対する 基本的なスタンス
イン
9
でき るだけ手を貸さずにこどもを良 い方向 に導く ことを考え ていきます。
自己完結す るこどもは、自分 の評価をと ても気 にします。 ﹁ 偏差値 やクラスが下が ったらど
親が自分を見離したらどうな っち ゃう んだ ろう﹂と思 っている のです。 つまり、 うしよう﹂ ﹁
﹁ このよう に考えな いと立派 でな い﹂とか、 ﹁ こうならな いと恥ずかし い﹂と いう見栄が強 いん です。
こ のよう に、自 己完 結す る こども たち は見栄 と いう プ レ ツシ ヤーと必 死 に戦 って いるわ け
です が、 こ のプ レ ツシ ヤーに負 ければ思考 停止 に陥り、反対 にプ レ ツシ ヤーに乗 ること が でき れば高 い壁を乗り越え ることが できます。
見栄と いう プ レ ツシ ヤー に乗 れ るか乗 り損ね るかは、結 局 のと こ ろ人 の評価を 気 にせず に
わが道を せ つせと進む こと が でき るかどう か にかか つて います。自分 の持 って いる見栄と戦う
と いう こと は、他 人を モノサ シにし て自 分を測 って いるわけ ですから、実 は自 分を押 し殺すと
いゝ つ大変な苦痛を伴 います。 つまり、見栄と いう プ レ ツシ ヤーに乗 ると いう のは、期待 された 目的を達成す るま では、 一切甘え が許 されな いと いう こと な のです。
自 己完結す る こども たち は、 こ の ﹁ 期待 された 目的を 達成す るま では、 一切 の甘え が許 さ
れな い﹂ と いう 現実を前 にし て、内心 で葛藤を繰り返 し て いる のです。 そう こう し て いるう ち
は勉強 に身 が入らず 、 テスト の成績表を見 ては 一喜 一憂 したり、落ち込 んだりす るわけ です。
しか し、 人 の評価 な ん て行きず り のも のです から、自 分 が コント ロー ルでき るはず があ り
174
評価﹂ に振り回されることはムダです。それな のに周囲 の評価ばかりを気 に ません。そんな ﹁
してこども に無意味な重圧をかけるから、こどもが戸或やつのです。 こどもが思考停止 に陥る主 か っこ つけたがり﹂ にあるのです。 な原因は無意味な ﹁
こども の評価を高めること﹂ に腐心し ていると、 こどもも自分 の評価ばか つまり、親が ﹁
し っかり勉強しろ﹂と 努力﹂を軽視す るよう になります。 ﹁ り に気が向 いてしま い、肝心な ﹁
評価﹂ 言 つていれば、こどもは努力すること に目が向 いていると田やつのは大間違 いです。親が ﹁
評価﹂だけを追求します。 努力﹂を無視して ﹁ に重心を置 いて いれば、こどもは ﹁
こどもが努力するこ だから、親は ﹁ こども の評価を高めること﹂ に手を貸す のではなく、 ﹁ と﹂ に手を貸す べきな のです。
ただ、手取り足取り や ってしま っては ステ ップ 3 の段解 で足踏 みをす ること になります。
こどもは目に見え るラクな解決法があると、すぐそれに飛び つこうとします。そば に いる大人 を捕まえ て、他人 の力 でも のごとを解決しようとします。 これは幼児 そ のも のです。だから、
こどもを自立させるためにも、大人がこども の前から姿を消すような配慮も必要な のです。
自己完結するこどもたち﹂がはま っている思 そこで、 でき るだけ大人が手を貸さずし て、 ﹁
をいかに解消し、気付きを与え ることが でき るか、に ついて考え ていきます。 考停止状龍い
気付 きを与える秘技
活力を吹 き込む 一
step 4
175
υ″ ‘.L
こどもに気付きを与える秘技①
ミスの原因を書き出させる
ケ アレスミスを繰り返す確信犯は、言 い訳をし て自分 の努力不足を隠 そうとします。相手 がどう受け止めるかも考えず に自分 の内面ばかりを主張する人は、 いわゆる思考停止状龍小 にあ
﹁ ケアレスミス﹂は絶対に見過ごすことはできません。
﹁ 自分は本当は でき るんだぞ!﹂と主張するこどもも います。そし て、大して努力もし て いな いくせに、だれよりも悔しがります。 けれども 、入試はケ アレスミスと の戦 いで、ケ アレスミスをした者から順 に不合格 になる と い っても いいほど です。受験は天才と の戦 いではなく、多く の凡人と の戦 いです。ですから、
しかし他方 で、 いつも ミスを連発し て いるくせ に、 ﹁ ケ アレスミスだ﹂と言 い張 ること で、
近 のケアレスミスは緊張からくる ﹁一過性 のも の﹂ でもあるので、さほど気を揉む こともな い でしょう。
受験生がミスを連発するよう になればなおさらです。そ のような場合、集中力 の低下が主な原 因 ですから、 ﹁ 疑間から解答を導く﹂と いう勉強 の王道 に戻る必要があります。ただ、入試問
﹁ ケ アレスミスが多く て困 っている﹂と いう人は多 いと思 います。特 に入試を間近 に控えた
‐ ■ ■・ ■‐ ・■ ■■,│‐ ■
│・
│■
176
です。 もう分か ってるよ﹂と同じことばかり言う のも同じ状罷い ります。 ﹁ ウルセー﹂とか ﹁
ミス﹂ には継続性があります。 現実 に向き合 おうとしな いので、 こう いう 人が やらかす ﹁ 必ず繰り返します。だから、言 い訳するのがダ メな理由を分からせて、本当 の問題に目を向け させることが必要な のです。
言 い訳 に目を奪われると本当 言 い訳がダ メな理由は2 つあります。まず 1 つ目 の理由は、 ﹁ の問題点 に向き合う ことができな いから﹂ です。
変わりたくな い﹂ ﹁ 動きたくな い﹂ です。 口では立派な ことを言 言 い訳 の達人 のホ ンネは ﹁ 塾は いく、受験はす る、と言 ってお いながら、本当は人 の助けを当 てにし て生き ています。 ﹁
けばそ の場は丸く収まるし、失敗しても言 い訳が立 つ﹂と打算的なことを考えます。 れた﹂とかを連発します。入試 では必ず未知 まだ習 っていな い﹂とか 響心 問題を出すと、 ﹁
の問題が出題されると分か っていても、既存 の知識を総動員して未知 の問題に取り組もうとは
しません。真面目に解 いているよう にみえ ても、心 の中 ではだれか の手助けを期待しています。 結局、﹁ 勉強は手取り足取り教わるも の﹂と いう成営見から抜け出せな いのです。
なぜ失敗したか﹂ このよう に、自分 の失敗を正当化することばかり に目が いってしまえば、﹁
には目が いかなくなります。人は同時 に2 つのことを考え ることが できませんから、まず は 。 ﹁ 言 い訳﹂を やめさせてくだ さ い。そして、ミスの原因を 0 1個書き出させてくださ い 中途半端 では気持ちが伝わりませんから、相当な覚悟をも ってこどもと向き合う必要があ
気付 きを与える秘技
活力を吹 き込む 一
step 4
177
8 ります。親子 で2時間、部屋 にこも る覚悟が必要 です。 ﹁ 何もそこま で⋮⋮﹂と思わな いでく 7 ︲
*ゲームに夢中になりすぎ て勉強する前 に疲れ てしま った
*・ 友達と過ごす時間が長く て勉強時間が短か った
*試験 の2∼3日前 にな ってドタバタして試験勉強をし てしま った
また、次のよヽ つなことが書 いてあるかもしれません。
*落ち着 いて試験を受けることができなか った
*試験に遅刻した
*問題を読み疵 繹えた
*試験中 に見直しをしなか った
*試験に集中 できなか った
*ノート の字が汚か った。
入試 には ″ 期限″があります。効率と の戦 いです。本人が自覚す るかどうかが勝負 です。 0個書かせるには、本当 に2時間かかりますが、絶対にめげな いで ガ ンコな子に ミスの原因を 1 くださ い。ケアレスミスを連発するこども に対しては最低 1回はやる価値があります。 0個書き出させたら、ここからが本番です。き っと いろ いろな ことが書 いてあ る こう し て1 と思 います。たとえば、こんな具合 です。
だ さ い
*勉強をする気がおきなか った 0分も経 つと家 の中をウ ロウロしてしまう *勉強しなき ゃとは思 って机 に向かうけれど、 3 *弟 や妹と つい遊んでしまう 0個書き出させ て、﹁ ホラ、分か ったろ。 これから気を つけろよ﹂ ではダ メです。 こども の 1 混乱した頭を整理するのが大人 の役目です。 こどもが書 いたも のを見ると、こども の言 い分に
も正し いも のがあります。弟 や妹と つい遊んでしまうなど の場合、 ﹁ お兄ち ゃんだから面倒を みなくち ゃ﹂ って思 っていた のかもしれません。
こんなときは、﹁ お前も辛か ったんだね。ゴメン。これからはお母さんも協力するね﹂ です。
﹁一緒 にや つていこう﹂と いう親の気持ちが、 ﹁いいわけ小僧﹂ の凝り固ま った心を氷解させる
紙 に書かせてホンネを引き出す﹂ です。 この結果、﹁ 言 い訳しているヒ マがあ ったら のです。 ﹁
さ っさと勉強したほうが いい﹂と いう ことを こどもが受け入れられるよう にし てあげられます。
実現するかどうか分からな い夢ばかりを見るよりも、︿ユ実現 でき ることを コツコツこなしてい く こと のほうが最終的には大きな目標 に近づけるのです。
良 い学校﹂ ﹁ 良 い企業﹂ に入ることは ﹁一応 の結塾 将来的 に ﹁ 理 にすぎず、実はそこが出発
理 にすぎません。そんなも のはすぐにな 点 です。偏差値とか テスト の成績だ って ﹁一応 の結訟 くなります。
こども に本当 に見せ てもら いた いのは、 ﹁ 結果﹂ でなく て 翌日 段 の努力﹂ です。人が本当 に
気付 きを与 える秘技
活力を吹 き込む 一
step 4
179
´
見られ ている のは、そう した 一時的な ﹁一応 の結メ 理 ではなく、 ﹁ そ の人がど んな努力をし て いるか﹂ です。本当 の問題は、成績表 の中ではなく、普段 の生活 の中にあるのです。このこと を こどもたち に分からせることが大切です。
こどもに気付きを与える秘技② 変 わ ら な い自 分 に 対 す る 脅 威 を 痛 い ほど 思 い知 ら せ る
言 い訳がダ メな理由 の2 つ目は、﹁ 言 い訳を連発するこどもは挫折しやす い﹂と いう こと で
とか ﹁ 勉強しろなんていわれるのは自分だけだ﹂とか ﹁ 何 のために勉強しなければならな いの
言 い訳をす るこどもは、 いよ いよ言 い訳が通用しな いとなると、 ﹁ 友達は勉強し て いな い﹂
いるこどもは、挫折しやす いこども にな ってしまう のです。
に中身が いつま でた っても こども のままだから、挫折しやすくなるのです。言 い訳ばかりして
﹁ 考え の甘さ﹂ に対して鈍感 になります。そ のくせ言う こと や態度はデカ いのです。 このよう
それな のに、 いつも こども の言 い訳 に同調し てばかり いると、そ のこども は ﹁ 手抜き﹂ や
こども の言 い訳 に同調し ていれば、そ の場は丸く収まるでし ょう。 こどももそ の場 では 一 安心 です。しかし、失敗 の原因は ﹁ 手抜き﹂や ﹁ 考えが甘 い﹂こと にあることがほとんど です。
す。
. ■● 一一
4
180
か﹂なんて言 い出します。本当 に都合 のいいことばかりを並 べ立 てます。
まわり の人 のレベルを落とす こと によ って努力を避け つつ、自分 のプ ライドが傷 つかな い
よう に取り繕う、と い った技術を身 に つけるのです。 でも内心 では、 ﹁ 自分 には勉強は向かな いかもしれな い﹂と、誤 った考え方をしていることもあります。
こう した こどもたち には、変わらな い自分 に対す る脅威を痛 いほど分からせな いと いけま せん。と同時に、失敗は必然的 に起こるも のだし、失敗を糧にしてこそ人は成長す る、受験 の
本当 の楽しみは ﹁ 苦しみ﹂を ﹁ 楽しみ﹂ に変え るプ ロセスにある、と いう ことを教える必要が
あります。 私は、言 い訳がまし いこども には、 ﹁ 失恋ダ メ男﹂ の話をして考え させます。失恋ダ メ男 の 話とは次 のようなも のです。
﹁ 失恋ダ メ男﹂ ︵ 失恋を繰り返す男︶は、なぜ フラれた のかを理解 できなか ったり、あ るいは
理解しようとせず、 ﹁ アイ ツは人を見る目がな い﹂ ﹁ オレが フツてや つた﹂ ﹁ 女は信用 できな い﹂
などと いって偏見をも ったまま ふてくされます。自分を フッた人 の立場 に立 って自分を見 つめ 直し、欠点があればそれを教訓として次 の亦堂友に生かそうとは思 いません。
自分 に密着したまま でジ レン マに陥 って いるくせ に、人 のことを貶め てそ の場を取り繕 い
ます。見事な理想を掲げ ているのに、なぜか人は自分 のことは分か つてくれな いと思 い、似た
恋愛なんてロクなも んじ ゃな い﹂と誤 った考え方を強めていきます。 ような失恋を繰り返し、 ﹁
Step 4 活力を吹 き込 む きを与える秘技 一 気付
1 81
人は自分 の中にあるイヤな部分と向き合う ことを嫌 いますが、これはごく自然な こと です。
のダ メな人 の話 な ら 、 こども は冷 静 に聞 く こと が でき ま す 。
ですから、言 い訳がまし いこども に ﹁ お前 のココがダメなんだ﹂なんて言 ってしまうと、溝が 深まるばかり です。 これ に対 し、 こ
ですから、 こども に対する説教は例え話を通し てやればうまく いく ことが多 いのです。大切な
ことはこどもを やり込めること ではなく、 ﹁ うまく いかな い理由 のほとんどは自分 にあ る﹂と
いヽ ユ課虚な気持ちを こどもたち に持 ってもらう こと です。こども自身を責めるより、例え話 で、 しかも強烈な内容 のも のをぶ つけると効き目があります。
ダ メじ と ころで、 こども に ﹁ 失恋ダ メ男 のことをどう 思う﹂と聞くと、多く のこどもが ﹁
ゃん﹂とか ﹁ じ ゃ、何 でそう思う の?﹂と聞 いてあげ てくだ 惨め∼﹂と言 います。そこで、 ﹁
さ い。そゝ カ ッコ悪 いからじ ゃな い?﹂とか、 ﹁ 人 の気持ちが分からな いからじ ゃな ?すると、﹁
い?﹂なんて返事 が返 ってく ると思 います。こうし ていろ いろな意見が出揃 ったとき、 ﹁ 失恋 ダ メ男 の何が 一番ダ メな のか﹂を話していただきた いのです。
社会 に出れば、外見 や話し方 や仕草も重要 です。 一度 マイ ナ スの評価を受 け てしまうと、
人と同じことをや ってもなかなか評価されなくなるから です。しかし、外見や話し方 や仕草は、
あくま でも表面的なことにすぎな いので、 いくらでも変え ることができます。大事な のは ﹁ 考
え方﹂ です。考え方次第 で表面的なことは いくらでも変え ることができ るから です。
182
人を ナメた﹂ こと です。 ﹁ ﹁ この程度 の女ならば落とせる﹂ 失恋ダ メ男﹂ の 一番 マズ い点は ﹁
と思 って、自分を磨かなか った ことが問題なんです。 ﹁コイ ツはこの程度だ﹂と勝手 に決め付
け てかかるから、かえ って自分がバカにされ て捨 てられるのです。そして自信を失 っていきま
す。ひど いときは、まともな人間に相手 にされな いから、お年寄りとか弱者を食 い物 にするよ
う になります。将来大人 にな ってダメになる人間は、根気も気力もな い人 です。
言 い訳をす るこどもたちは、案外 ラクし て合格 でき ると思 い込 んで いる フシがあります。
人はラクし ていると思 い込 んで いるのです。そんなこどもは、偏差値を見 て ﹁ もうだめだ ∼﹂
とか ﹁ アイ ツだけには負けたくな い﹂とか言 って、無意味にジタバタします。本当に勝ちた い
と思 ったら、 ﹁ ライ バルが何をど のよう にや つているか﹂ に目を向けなけ 偏差値﹂ ではなく ﹁ ればなりません。
だから、 ライ バルや目標校 に肩を並 べるために必要な努力はどれほどかを ﹁ 知 ること﹂、ほ
か の人は決して手を抜 いていな いことを ﹁ 知ること﹂を手伝 っていただきた いのです。
とき には少 々厳し いことも言わなければならな いのですが、 これは ステ ップ 3ま でのやり
方を ていね いに踏んで、信頼関係を作 った後 にやる、と いう ことを忘 れな いでいてくださ い。
ステ ップ 3ま での手順を踏んだにもかかわらず、まだ言 い訳をする場合 に初め て厳し い話もし なければならな いのです。
気付 きを与 える秘技
活力を吹 き込む 一
step 4
183
′‐
こどもに気付きを与える秘技③
自己完結するこどもたちは、大人 の話 のことば尻を つかんで反論したり、ある いは人 の話を頑 な に拒否したりしますが、これは主体性がな いこと の表れです。
分 の世界に固執す ることも、人に尽くしてばかり いることも ﹁ 主体的﹂とは いえな いのです。
﹁ 主体的﹂と いう のは、自分とも他人とも上手 に付き合え ることを いいます。 ですから、自
は いても、実は納得して取り組んでは いな いのです。
徴 ですが、そ の原因は行き着くと ころ ﹁ 主体性﹂がな いからです。 一見するとよく勉強をして
自己完結す るこどもたちは認知 レベル ︵ も のごと の見方 や捉え方 のレベル︶が低 いのが特
の先生と言 っていることが﹂ ξつ﹂なんて言われて困 った経験があるのではな いでしようか。
あります。 こども が間違 って理解し ているのに、 ﹁ 塾 の先生が言 ってた﹂とか ﹁ お母さんは塾
しかも表現力が乏し いので、家 では 口答えす るこども でも、外 では親と同じ ことを言 った り、ありきたり のことしか言う ことができません。ある意味素直なんですが、困 ったこと でも
生が言 いた いことを柔軟に汲み取 ってはくれな いのです。
自己完結す るこどもたちは、親 や先生 の言う こと の行間を読む ことが できません。親 や先
親自身が正確に伝える技術を身に つける
0
・ ■ ■■・ ・ ■ ■‐
184
相手 の話を汲 み取 って、適切な反応を返す ことができ るかどうかは、受験を成功させる上
で非常に重要 です。 いわゆる コミ ュニケーシ ョン能力 です。最近 の中学入試 の国語 で ﹁ 自分 の
意見も一 年えて﹂と いう記述が散見されるのは、 コミ ュニケーシ ョンカを重視した高校 の新課程 の影響を強く受け ているためです。
一つの例 ですが、詐欺師は美辞麗句を並 べ立 てて、被害者 の気を引 こうとします。 ここで、
詐欺師 の視線は被害者、特 に被害者 の財布 に向けられています。と ころが、被害者 の視線は詐
欺師 には向 いていません。詐欺師 の向 こう にある ﹁つま い話﹂ に向 いているのです。
詐欺師が虎視眈 々と財布を狙 っているのに、被害者は自分 の財布 に目を向け ていな いわけ
です。だから、知らな いうちにやられます。手 口が巧妙 にな っていて被害者 に同情す べきとき もありますが、基本的には自己責任 です。
受験 にも これと似た面があります。出題者は受験生 の弱点を狙う のです。失敗す る受験生 は、出題者 の視線を意識せず自分勝手な基甲え方をするので、当然撃沈します。撃沈してからで はもう遅 いのです。
自分勝手 に考え るこどもは完全な思考停止状£ 悪にあ る ので、試験 で変化球がくればひとた
まりもありません。 ﹁ 言われた通り にやれば いい﹂ では通じな いのです。受験は出題者と のサ
シの勝負 です。出題者 の視点、出題 のポイ ントをピ ンポイ ントでゲ ツトしなければならな いの です。
気付 きを与 える秘技
活力を吹 き込む 一
step 4
185
じ ゃあ コミ ュニケーシ ョン能力を つけ るにはどうすれば いいのか﹂となりますが、はじめ ﹁
からこどもたち に ﹁ 行間を読め﹂なんて言 っても無理です。親や先生が率先垂範して ﹁ 正確な
伝え方﹂を学 ぶほかありません。こどもは親 の言う ことを聞 いていな いよう に見えますが、や
ることは真似しています。こども の表現力は親 の影響をと ても強く受け ているのです。
教えた ことが正確に伝わらず、間違 ったまま覚え てしまう ことはよくあること です。教え
られたことが ﹁ 間違 っているかも﹂と疑間に思 っても、こども の頭は ﹁ 親や先生 の言う ことは
正し い﹂が支配し ていますから、自分 の正し い考えを押し殺して、間違 った基甲えを覚えようと します。しかし、そ のこと自体を責めることはできませんね。
普通に教えた つもり でも、 ﹁ まだ こんな こと覚え ていな いのかよ∼﹂なんてこともよくあり
ますが、生徒自身が覚え ていな いことが半分、教えたことが正確 に伝わ っていな いことが半分、
だと思 ってくださ い。 ですから、はじめからこども のせ いにす るのは フ ェアではありません。 むしろ、大人 の側が手本を示す のが原則 です。
勉強を教え るとき に、こどもが へんてこりんな質問をしてきたらチ ャンスです。 ﹁ 教え る ペ
ポイ ント の強調が足りなか ったかな﹂ ﹁ ースが早か ったかな﹂ ﹁ 説明が論理的 でなか ったかな﹂ ﹁ 難し い言葉を使 いすぎたかな﹂ ﹁ 前回 のおさら いが足りなか ったかな﹂ ﹁一方的 にし やべりす
ぎたかな﹂ ﹁ 考え る時間、 ノートを取る時間が不足し ていたかな﹂と いう よう に、正確 に話を 伝える技術を磨き上げることができ るから です。
186
′■
項を改め て、 コミ ュニケーシ ョンのとり方をご紹介しますが、 やりはじめたときはめんど
くさく感じられるも のの、こどもが コミ ュニケーシ ョン能力を身 に つけるために必須 の技術だ と思 ってくださ い。
こども に気付きを与える秘技④
コミ ュニケーシ ョンの精度を上げる
﹁ 主人は、どう せダメなら受験を諦めさせろ、本人がそ の気 にならなければ結局 ムダだ、 つ
て言う んです。それは分かるんですが、母親としてはこども に望みをかけた いんです。何とか ならな いでしょうか﹂
このよう にギクシ ャクし ているご家庭は多 いのです。特 に働き盛り のお父さんは時間 に余
裕がなく、お母さ んも、お父さん の手を煩わせるのはムリだと分か っているので、どうしてい いか分からなくなります。
グー ・チ ョキ ・パー の関係﹂ が原因 です。 ﹁ 家族 の意 思が統 一されな いのは、 ﹁ お父さん﹂ は、 いつも家事を や ってくれる ﹁ お母さん﹂ に頭が上がらな い。 ﹁ お母さん﹂ は、グレたら困
こども﹂は養 ってくれて いる ﹁ る ので ﹁ こども﹂ に頭が上がらな い。 ﹁ お父さん﹂ に頭が上が
らな い。結局だれも勝 てません。だから、問題が生じ てもなあなあ で済まされてしま います。
気付 きを与 える秘技
活力を吹 き込む 一
step 4
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0
政治家﹂ ﹁ これ って、 ﹁ 官僚﹂ ﹁ 財界﹂ の関係と同じ ですね。 ﹁ 政治家﹂は、献金をし てくれ
る ﹁ 財界﹂に頭が上がらな い。﹁ 財界﹂は、許認可権 のある ﹁ 官僚﹂に頭が上がらな い。﹁ 官僚﹂ は、人事権 のある ﹁ 政治家﹂ に頭が上がらな い。だれも決定的なリーダーシ ップをとることが できな い。なあなあ で済まされてしまう、と いうわけ です。
しかし、指をくわえ て待 つわけには いきません。 ここで必要な のは、 コミ ュニケーシ ョン
の精度を上げること です。特 に共働き のご家庭 では、家族が顔を合わせる時間が少な いので、 そ の中 で家族 の気持ちを 一つにするため の環境づくりが必要 です。
こどもと の関係がギ クシ ャクし て、家 で話 しづら い雰囲気 が続くと、 いず れそ のう ち に
﹁ 何 で言 ってくれなか った の?﹂とか ﹁ 言 ってくれれば何とかできた のに﹂と いう場面 に直面 します。こども の変調に最後 に気付く のは ″ 親″だとも言われています。そんな ことにならな いためにも、 コミ ュニケーシ ョンの精度を上げることは必要不可欠 です。
、② ﹁ コミ ュニケーシ ョンの精度を上げ る方法 は、 ﹁ ①会う ︵ 目を合わせる︶ 言わせた いこ
と﹂より ﹁ 言 いた いこと﹂を言わせる、③ 悩みを聞く、④ 大人 の知的な会話を聞かせる﹂です。
①目を見て話をしよう
まず︵︶天下つ ︵ 目を合わす︶ ﹂ です。 いた って当然なことと思うかもしれませんが、気まず
く な る と 目 を 合 わ せ た く な く な る も の で す 。 し か し 、 ﹁日 は 回 ほ ど に モ ノ を 一 一 二 甲つ﹂ で す 。 ど ん
188
な に嫌なことがあ っても ﹁ 無視﹂だけは絶対 にダメです。無視した回数だけ、そ の子 の承認欲 求 ・尊厳を深く傷 つけること になります。
さらに、 ﹁ 目を合わせ て話す﹂ ことはし つけとし ても大切 です。 こどもは親 の言う ことは聞 目を合わす﹂よう にす べき です。 かな いけど、やることは真似します。だから、まずは親が ﹁ ② 言わ せた いこと より言 いた いことを言わ せる
親がこど 言 いた いことを言わせる﹂ ですが、これは ﹁ 次に② の ﹁ 言わせた いこと﹂ より ﹁
こどもが親 に言 いた いことを言わす﹂と いう こと も に言わせた いことを言わす﹂ ではなく、 ﹁ です。
話しても あくま で、 ﹁ こどもが言 いた いことを話す﹂ が原則 で、そ のためには、 こどもが ﹁
こんな ことを話し ても いいんだ﹂ いいんだ﹂と安心感を持 てるよう にす ることが大切 です。 ﹁ 2夫感が必要 です。 と いゝ
そんなこと言 ってもね え⋮⋮﹂となりますよね。 こどもが言 っている このよう に言うと、 ﹁
ガミガミ言われるか ことを聞 いていると際限がな いし、まど ろ っこし いも のです。しかも、﹁
らやる気なくした﹂なんて生意気なこと言われると腹が立ちます。確かに、勉強を自分 の責任
と自こ 見できな いよう では勉強する資格なんてありません。 しかし、 いくらこどもを叱 っても、 こどもが ﹁ 私は勉強をなめ ておりました。 これからは
気付 きを与 える秘技
活力を吹 き込む 一
Step 4
189
計画を立 ててきちんと実行し、 至らな いことがあれば反省し て次 の試験に生かすよう にします﹂ なんて言甲つわけありません。 むしろこんな言葉を期待したらこどもと の溝が深ま るばかり です。 だから、 ﹁ こども が言 いた いことを言わす﹂ が原則 で、 ﹁ 言わせた いことを言わす﹂ は例外 です。 ﹁ こども に言わせた いこと﹂ が優勢 にな った途端 に、歯車が狂 いだします。 こどもが言 いた いことを言えな いよう では、もはや教育 ではありません。
こどもが言 いた いのに言えな いと いう のは、だ いた い次 のような旦朱口です。 ﹁ もう、勉強は
終わ った の?﹂と聞くと、 こどもはイ ラ っとす る。そ の能坐 度を みて、大人は ﹁ やる気がな い﹂ と決め付ける。そしてこどもは自分 の殻 に閉じこも る。 こんなことを繰り返していた のではお 互 いに疲れるだけ です。
親は つい焦 って ﹁ 何を話すか﹂ に気が向 いてしま いますが、実は ﹁ 問 いかけ の中身﹂ より
も ﹁ 問 いかけ方﹂ の方が大切 です。 こどもと上手 に付き合 っていける親は、 ﹁ 良 い答え﹂を持 っている親 ではなく、﹁ よ い問 いかけ方﹂を知 っている親 です。次 の例をみてくださ い。 I ﹁ 今日の勉強 のメ ニューは何?﹂ Ⅱ ﹁ なんか モヤモヤす るよね?﹂
Ⅲ ﹁ 今日復習しなければならな いも ので、1番重要なも のは何な の?﹂ Ⅳ ﹁ この前 のテストは良か ったから、次も期待 できそうだね﹂
V ﹁ この前運動会 で活躍でき てよか ったね。勉強も頑張れそうだね﹂
190
これら の問 いかけは、 こども の自尊心を尊重し、 こども に気付きを与え るヽ ?えで効果があ
ります。問題は ﹁ なぜ効果があるか﹂ です。 一つず つ見 てみまし よう。
I∼Ⅲは、 いわ ゆる ﹁5WlH﹂を用 いた問 いかけ方 で、質問される側 の回答 の自由度が
広 いのが特徴 です。回答 の自由度が広 い会話は、 ﹁ イ エス ・ノー﹂だけを やり取りする会話よ
り、格段に盛り上がります。 事実 ︵ こどもが置か また、 ﹁ 勉強 の中身︶ ﹂だけを やりとりす るのではなく、感想 や感情 ︵
れている状況︶を ふんだんに取り入れると、も っとも っと会話がはずんで いきます。味気な い
会話は ﹁ 事実だけを伝える︿翼山 ﹂ です。ま るで取調官と被疑者 です。今日の出来事や明日の予
定 の羅列 では、たんに計画表を眺めているのと同じで心 のふれあ いがありません。
これに対し て、Ⅱのよう に ﹁ なんか モヤモヤし ているよね?﹂と話し掛けると、 ﹁ こどもが
置かれている状£ 一 一 一 悪に ついての発一 己 がこども の口を ついて出 てき やすくなります。盛り上がる
会話は ﹁ で、どう思 った の?﹂ ﹁ 何を思 い﹂ ﹁ 何を感じた のか﹂ が話 の中心 になります。 ﹁ なん でそう思 った の?﹂ です。
勉強 に全力投球 できな いとき は誰 でも何か違和感を感じ て いるも のです。そう した違和感 を緩和し、取り除 いてあげること で、こども の集中力を引き出す ことができ るのです。
Ⅲの問 いかけ に ﹁ 1番﹂と いう言葉が入 っていますが、 これは小技 です。 ﹁一番言 いた いこ
とは何な の﹂と聞かれると、聞かれた側はよくよく考え て答え ることを余儀なくされます。
Step 4 活力を吹 き込む 気付 きを与 える秘技 一
1 91
みなさん の周り にもし ゃべりまく ったり、何を言 いた いのか分からな い人が いると思 いま す。そ のような人に ﹁一番言 いた いことは?﹂と問 いかけると、 話が スムーズ に運んだりします。
I∼Ⅲの問 いかけをしたあと には、時折 ﹁ なぜそうな の?﹂と聞 いてあげ てくださ い。 こ ども が思考を整理す る のに役立ちますし、 ﹁ ∼だと思う ︵ 結論︶ なぜならば ∼ ︵ 理由︶ ﹂← ﹁ ﹂
と いう論理的思考力を つけるためにも役立ちます。論理的思考が できるよう になると洋†刀も伸
びます。 Ⅳ、Vは激励 です。実は、激励 には副作用があります。精神的 にも肉体的 にも疲弊 し てい
るとき や不安が先立 つとき に ﹁ も っとも っと﹂と言われても、気持ちがはやるばかり で体が つ いていきません。Ⅳはそう い った危険性を含んでいます。
この点、 Vは こどもを追 い詰める危険性をうまく回避し ています。勉強以外 の成功体験 に
意識を向かわせて、 一瞬勉強 のことを忘れさせています。力みを抜 いてやること によ つて、か え って目の前 の勉強 に集中 できるよう になります。
こう した気 の利 いた アドバイ スができ るよう にな るためには、 ふだ んから こども の生活全
般を把握しておかなければなりません。これら の問 いかけは、怖 い顔をせず に笑顔 で、正面か
らこども の目を見 て、絶えずうなずきながら、繰り返し行な ってくださ い。あくま で ﹁ こども
に言 いた いことを言わす こと﹂ ﹁ こども の活性を引き出す こと﹂が目的だからです。
こども の言う こと に いち いち 口を挟 んで いては話が先 に進 みませんし、それ では問題 の本
192
質 に迫 ることができません。こどもは言う ことが コロコロ変わりますし、自分が言 ったことさ えすぐ忘れるも のだと覚悟して接してあげ てくださ い。 ③ こども の悩 みを聞く
悩みはな いか﹂と聞 いても、こどもたちはなか 次 に、③ ﹁ 悩 みを聞く﹂ ですが、 ふ つう ﹁
つものです。 なか話してはくれません。そう こうしているうちに爆発してしまヽ
こどもが行き詰 っているとき、原因はなかなか見え にく いも のです。 こども の変化 に最後
に気付く のは親だと いわれていますが、それは何か問題が起きると、親は自分 の知 っている過
去だけからたどろうとするために、こども の変化 に ついていけな いことがあるからです。 0月ご ろには、突然 ﹁ 塾 に行きたく 勉強をしな い﹂ ﹁ 中学受験 では、 5∼6月ごろや、9∼ 1 な い﹂と いう こどもがでてきます。 いろ いろな原因が重なりあ ってこどもが爆発してしまう の です。そんなときは、大人 のほうが動揺してしま いますよね。 こう したとき、ど のよう にして
悩みの原因が分からな いと対処 のしようがな いからです。 悩みを引き出すかが問題になります。
荒れる職場﹂とし て次 のようなケースがあるよう です。部下が上司 一般 の会社組織 では、 ﹁
なぜ言 ったとおり にしな い にクレームの報告をする。すると上司は ﹁ お前がなんとかしろ﹂ ﹁
今は忙し いんだ﹂と ニベもな い。まるでヤブ ヘビ。相談した いのに、逆 に非難される。 んだ﹂ ﹁
しかし私 の実感 では、 こんな アホ上司 でなく、たとえ よ い上司 に対し てでも仕事 上 の悩 み
気付 きを与 える秘技
活力を吹 き込む 一
step 4
193
を打ち明ける人は少な いよう に田やえます。 ﹁ こんな こと言 ったら悪く思われち やう﹂と思 った り、﹁ 向 こうが察知してくれな いかな∼﹂と上司に寄りかか ってしまうからかもしれません。 家庭 でも、 ﹁ お母さん、塾 の勉強が追 いつかな いんだけど、どうすれば いい?﹂なんて聞 い
てくるこどもはまず いません。 ﹁ あんた の努力が足りな いんじ ゃな いの﹂ って切り返される の が分か っているからです。
そし てこどもが勉強 のことを親 に話さなくなると、親は ﹁ 勉強 や った の?﹂ って聞くしか なくなります。そゝ ?すると、こどもは ﹁ や つた﹂と言 い張ります。怪し いと思 いつつチ ェック
してみると、チ ョロチ ョロと計算 しただけ。 ﹁ や ったなんてウ ソじ ゃな いの。なんでち ゃんと やらな いの︱﹂と いつも の調子で言 い返します。こうな ったらもう会話 になんかなりませんね。
こんな ことを繰り返し て いたら、 こどもだ って悩 みを打ち明け るど ころではありません。 しかし、現代 のお母さんは多忙を極めています。家事なんて探せば いくら でもあります。それ
こそ山ほどあります。こども に付き っきりなんてと ても ムリです。 だから、こどもが言 いつけどおり や って いるかどう か不安 で、言 いつけどおり やらな いと ガ ッカリします。そして、 つい思 いもしな いキ ツイ言葉を投げかけ てしま います。視線が合わ
せられず に、ため息を ついて非難してしまう のです。中学受験生を持 つ親ならだれでも踏む轍 です。だから上 のような言 い方 になる のも致 し方な いかも しれません。受験は、親 にと つて ﹁ 家庭内修行﹂な のかも知れません。
194
そ こで、たま にはじ っくり こどもと話す時間を設け てくださ い。そこでは、 こども の悩 み
を効率的 に聞 いていくにはどうすれば いいかが問題になります。 こども の悩みを引き出す のに
ゆ っくりと問 いを繰り返す﹂ です。成績が落ち込んだときなんかはチ ャン 効果的な方法は、 ﹁ スです。
母 ﹁ このあ いだ のテスト の前はあまり算数 の勉強をし てなか ったみた いだね﹂ 子 ﹁ 別に い﹂ 人に負けたくな いって頑張 つてたじ ゃな い﹂ 母 ﹁ 子 ﹁ 算数はもともと好きじ ゃな いんだ﹂ しばし沈黙。 母 ﹁ 算数 のど こが好きじ ゃな いの?﹂ 子 ﹁ 勉強しているとばかばかしくな っち ゃうんだ﹂ ばかばかし いと思う のはどんなときな の?﹂ 母 ﹁ 解 こうとしてもぜんぜん解けな いんだ﹂ 子 ﹁
勉強が難しく 怠けた い﹂と いう こと ではなく ﹁ このこどもが勉強をしなくな った理由は、 ﹁
できな な った﹂から です。 でも、こども にだ って立派なプ ライドがありますから、 いきなり ﹁ ゆ つくりと問 いを繰り返す﹂ でな いと、こど い﹂とは言わな いことが多 いのです。だから、﹁ も の回から本当の悩みが出 てきません。
気付 きを与 える秘技
活力を吹 き込む 一
Step 4
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そして、こどもが悩 みを見せたら、ここからが親 の腕 の見せど ころです。 このとき、 ﹁ じゃ
あ、分からな いと ころを教え てやろうか﹂ ではダ メです。親が勉強を教え るのには物理的 にも 能力的 にも限界があ るからです。また、こどもが勉強に行き詰まるたび に手を貸すと、もたれ 合 いにな って自己一葬結し てしまう のです。
こどもが行き詰 った原因は、勉強 で理解を得られたかどうか以前 に、理解を得 るま での過 程にもあるはず です。勉強 のやりかた、対人関係、私生活全体 のバランスなど、 いろいろなこ
とが原因になり得ます。そして、自分 で解決 でき るところは自分 で解決させるのが先決 です。 そこで、 こどもが悩 みを みせたなら、 ﹁ こども のため の質問﹂ に徹 します。 ﹁ こども のため の質問﹂とは、こどもが自分 の考えを整理するのに役立 つ質問、 こどもが気付 いていな いこと を気付かせる質問 です。 子 ﹁ 算数 の問題を解 こうとしてもぜんぜん解けな いんだ﹂ 親 ﹁一生縣人叩 解 こうと思 っても解けな いとき って、辛 いよね﹂
※ ﹁ 勉強内容﹂だけでなく、﹁ 勉強している様子﹂も話題に取り上げる。 子 ﹁ う ん﹂ 親 ﹁ と ころで、前から人に負けたくな いって頑張 ってたよね﹂ ※話を最初に戻す。 子 ﹁ そうだよ﹂
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じ ゃあ、人に負けな いためにはどゝ 親 ﹁ ?すれば いい?﹂
人に負けたくな い﹂と いう強 い動機を持ちながら、そ の方法が分か ってい このこどもは、 ﹁ ません。もしかすると、塾や学校 で人にバカにされていじけ ている のかも知れません。そんな
とき に、﹁ 人に勝ちたければも っと勉強しなさ い﹂ ではうまく いくはずもありません。
﹁ 聞 勉強すれば いい﹂なんてことはこどもだ って分か っています。 こどもが知らな いのは、 ﹁
印同き の見方 であり、それを自分 で実行す る くは 一時 の恥、聞かぬは 一生 の恥﹂と いう よヽ フな一 こと の大切さです。
これに対し て、 ﹁ 自分が悪 いんじ ゃな 負けたくな いならなぜも っと勉強しな いの?﹂とか ﹁
いの?﹂なんて言う のは ﹁ 親 のため の質問﹂ です。親が自分を納得させるためだけ の発言 であ って、こどもを一 親 のため の質問﹂ は、そ の多くがこども 印同き にさせることが できません。 ﹁
にも分かり切 っていることばかり ですから、こどもが反発するのも自然なこと です。
こども でも分かり切 って いる ﹁ 大人 のため の質問﹂ ではなく、 こどもが知らな いこと に気
付くような ﹁ こども のため の質問﹂を投げかけられるよう にしてくださ い。 ④ こども に大 入同士 の知的な会話を聞 か せる
最後 は、④ ﹁ 大入同士 の知的な会話を聞かせる﹂ です。模試 や講習 のたび に、多く の家庭 から歓声 や悲鳴が聞 こえ てきます。
気付 きを与 える秘技
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父 ¨夏休 み後 の模試 で成績が下が ったし、塾 の宿題も山積 みだ。せ っせと夜中ま で勉強し て んのに、こなす のがや っと で志望校対策が手薄 にな ってしまう。 母 一ち ょ っとあなた、こども にガミガミ言 い過ぎなんじ ゃな い?
父 ¨これま でお前が何を や ってきたと いうんだ︱ 勝手なことを言うな H これま で俺はノート
作りやなんやらや つてきたんだ。それな のに⋮⋮。あ ∼、もう この学校はムリか。
家庭 の中が こんな殺伐とした会話ばかり では、伸び るはず のこどもも伸びなくなります。
こどもは、大人 の知的な会話を理解しようとして 一生縣穴叩大人 の会話 に耳をそばだ てているも のです。
それな のに、親が ﹁ ああ しなさ い﹂ ﹁ こう しなさ い﹂ なん て指示 ・命令ばかり し ていたり、 夫婦喧嘩ばかりしていた のでは、こども の一 餐庭内 の居場所がな いですし、また、 こども のコミ
ュニケーシ ョン能力は上がりません。親はこども の倍は読書なり勉強して、こども には知的な
会話を聞かせてあげ ることが必要な のです。 なお、最近 の有名中学 の出題 のしかたを みると、明らかに国公立大学 の入試を意識し て い
ます。国公立大学 の入試はこども のコミ ュにケーシ ョン能力をみるために、ほとんどが記述式
です。だから、有名中 の入試 にも記述式 の問題が多 いのです。 端的 に いうと、 ﹁ 整然と答えを出せるこども﹂が欲し い、と いう こと です。有名中学は超難
問や奇間を解け る生徒 にはあまり関心がな いんです。有名中 の入試問題 の作 間者 の課題は、
198
″ ‐ ′ ″
﹁ 素養﹂ の中 国公立大学 に受かる素養 のあ るこどもを落とさな いこと﹂ にあ るのです。そ の ﹁
心 に ﹁コミ ュニケーション能力﹂があること に注意する必要があります。
こどもに気付 きを与える秘技⑤
なぜこんな失敗をしたんだ この考え方を徹底すると、部下が失敗や相談を持ちかけても、﹁
は言 います。﹁ オレに恥をかかせるなよ。何が何でも目標を達成しろ!﹂と。
ノルマに達しな い人には目標や課題が与えられ、暗黙のプレツシヤーがかかります。上司
﹁ 塾生○○人達成!﹂とか⋮⋮。
教去多数○○達成!﹂とか 獲得達成!﹂なんてデカデカと貼 ってあるやつです。塾でも同じ。﹁
の結果、成績も伸び悩むと いう悪循環に苛まれます。 ○○件契約 これは、実は会社の ﹁ 棒グラフ﹂ ︵ 営業成績︶と似ているんです。会社の壁に ﹁
自己完結するこどもたちは、あと 一歩の努力を惜しむ代わりに ﹁ 偏差値﹂にとても強 い執 着を持ちます。だから、テストの直前は猛烈に頑張るけれど、それが長続きしないのです。そ
偏差値 の読み方
J
っ!﹂﹁ なぜオレの言うとおりにしないのか!﹂﹁ お前 の話は聞きたくな い!﹂なんてやられま 棒グラフ﹂や ﹁ す。もう誰にも相談できずに意気消沈。そうです。﹁ 偏差値﹂にも ﹁ ノルマ達
気付 きを与える秘技
活力を吹 き込む 一
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‐ ‐ ‐ ■■ ・│・・ ・ ■│■ │■ │■ i■ ・
成主義﹂ に陥る危険性があるのです。
なぜ ﹁ ノル マ達成主義﹂ が危険かと いうと、もともと やる気 があ って能力もあ る人が、や る気を失 って本来 の力を発揮 できなくなることがあるからです。
能力があ っても 、 スランプ等 で成績 が伸び悩む ことは当然あります。そ のよう なとき に、
やみくも に ﹁ 挽回し てやる!﹂ って力が入ると歯車が余計 に狂 いだします。 ﹁ これま で通り で
いいはずだ﹂と ﹁ これからどう しよう﹂が い つしよくたにな つて行き詰 ってしまう のです。 こ
んなとき こそ、そ の場そ の場で のベスト の判断ができれば いいんですが、た いていは スランプ の原因が分からな いまま放置され、劣等感 に苛まれてモチベーシ ョンが下が っていきます。
しかし、 ノル マ達成主義 の人たちは救 いの手を差し伸 べることはしません。 ノル マ達成主 義 の人は、 ﹁ 偏差値﹂ や ﹁ 営業成績﹂を ″ 見 る〃 ことはし ても ″ 読む″ ことをしな いのです。 人﹂ ではなく ﹁ ﹁ 数字﹂ばかり に目が行きます。指示 ・命令はし ても、 一緒 に解決しようとは しません。
そし て先 へ先 へと突 っ走るだけだから、課題だけが膨らんで いきます。だから、見落とし てきた穴が広が っていき、 いつしか いきなりそれが表面化します。 い ったん危機 に陥ると、互
いに責任を押し付け合 い殺伐とした雰囲気 になります。こうして解決策を見失 っていく のです。
中学受験 でこ のような悲惨な こと にならな いためには、 こどもたちが偏差値 に執着す るよ
う になる前 に、周囲 の人が ﹁ ノル マ達成主義﹂ではなく ﹁ 能力主義﹂に変わることが必要 です。
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数字﹂ ではなく ﹁ 読む﹂。 ﹁ 人﹂を見 る。成績が低迷 して い 偏差値を ﹁ 見 る﹂ のではなく ﹁
るとき、低迷 して いる本人がそれと向き合う のは つら いも のです。 ﹁ ウチ の子は苦しんでいる
よう には見えな いわ﹂と思う でしょうけれども、反発すること自体、苦しんでいる証拠 です。
そ のようなとき は、むしろこども の ﹁ 逃げ出した い﹂と いう気持ち に共感し てあげ て、冷
静さを回復させてあげるほうが、遠回りなよう で、実は近道 です。結果 ︵ 成績︶が欲しく ても、 それだけを強調す ると こども の共感を得 ることはできません。
特 に、実力以上 の学校 に入りた いなら、自分 のカラを破らな いと受かりませんし、しかも
受験 には期限があります。だから、こども自身が納得する突破 口を与える必要がでてくるんで す。そこで、 ﹁ 読み方﹂を こども に教え てあげ て欲し いんです。 偏差値﹂ の ﹁
言うま でもなく偏差値 は相対評価 です。自分 の成績 が人 の成績を上回れば、偏差値も上が る。だから、偏差値を上げ続けると いう のはサバイバルです。
でも、それを支え続ける のは本人 の努力 です。偏差値を ﹁ 読む﹂とは、 こども の地道な努
力そ のも の、競争から離れた個人的な成長、 こうした絶対的な価値に目を向けること です。 、そして② 自分 の実力が他人 のそれを上 絶対的なも の︶ 偏差値は、①自分なり にがんば る ︵ 、この2 つが合わさ って初め て上がります。 回る ︵ 相対的なも の︶
見る﹂ しかできな い人 の発想は、コ賜争に勝たせるためにひたすらこどもを鼓舞 偏差値を ﹁
する﹂ です。 ﹁ 勝 つか負けるか﹂を重視するため、 いざ負け るとすごく落胆します。それま で
気付 きを与 える秘技
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の自分 の努力を前向き に評価 できなくなり、自信を喪失します。今 のやり方を全否定して、ゼ ロから の再出発を心 に誓ヽ ?ものの、やがて疲弊します。
しかし、受験 で成功す る人、偏差値を ﹁ 読む﹂人は違 います。 ﹁ 勝 つか負けるか﹂はあまり
重視しません。偏差値は ﹁ 自分なり のがんばりを自分 で評価する道目ご と割り切ります。 ﹁ こ
れま での努力 によ つてどれだけ自分 の能力が高ま ったかを試した い﹂と思 います。 だから、仮 に競争 に負けたと しても、次 の戦 い への足場がし っかりし て いるから、すぐ に
体勢を立 て直す ことができるんです。 これが、成長し続けるこども の姿 です。
偏差値 に翻弄される のは入りた い学校 に入れるかどう かが不一 女だから です。だから反対 に、
自信 のある子はあまり偏差値を気 にしません。 ﹁ 入れるかどうかなんて結果を見 てみな いと分 からな い﹂、と腹をくく つているからです。
﹁ 自信﹂と いう のは、﹁ 自分は頭が いいぞ﹂と ふんぞり返ること ではありません。そんなこと
ではあ っと いう間 に人に追 い越されてしま います。 ﹁ 本当 の自信﹂とは、そ の場そ の場 でベス トを尽くせる、と いう ことなんです。
偏差値が高止まりして いるこどもは、ほんの 一握り です。大多数 のこども の偏差値は流動
的か、なかなか上がりません。すると、﹁ 納得 できな い︱ がんば った のに、なぜ偏差値が上が
らな いの?﹂と思われるでし ょう が、こどもは親 の欲目 に敏感 ですから、ぐ つと こらえ てくだ さ い。まず、偏差値 の見方をこども に教え てあげることが先決 です。
202
こどもに気付きを与える秘技⑥
フとしな い こどもを コント ロールしよ﹃
こどもを上手 に コント ロールす る手法﹂をご紹介 しました。厳格さを維持 ステ ップ 2で ﹁ したまま、優しさを増減すること で操る のが コツです。
家 ではこどもが言う ことを聞かな いから、先生何とかし てくださ い﹂とお っし と ころが、 ﹁ ゃるお母さんが後を絶ちません。そんなとき でも、まずは ﹁ 厳格さを維持したまま、優しさを 増減すること で操る コツ﹂を掴んでいただきた いと思 います。
厳格さを維持したまま、優しさを増減す ること で操る﹂ では いずれう ただ残念なこと に、﹁ まく いかなくなります。
親 の期待﹂と こどもを コント ロー ルしようとし ても いず れうまく いかなくなる原因は、 ﹁
﹁ 1対 1の関係﹂ です。お互 いに言 いた いことは分か って こども の承認欲求﹂が硬直化した ﹁
納得していな い︶と、そこには妙な距離感ができます。 いるのに行き違 っている ︵
そうした虚しさを埋めるために、親は ﹁いつかき っと こどもは期待に応え てくれる﹂、こど
もは ﹁いつかき っと親に認めてもらえ る﹂と考え て疑 いません。 この ﹁いつかき っと﹂を心 の
支えとして、親も こどもも苦しみに耐え続けるのですが、実はこれが原因 で目先 のことがおろ
気付 きを与える秘技
活力を吹 き込む ―
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そかになります。
冷静 に考え てみれば目先 のこと に全力投球 できな いのに、 ﹁いつかき つと﹂なんて考え る方
がおかし いですよね。 でも、﹁いつかき つと﹂ のせ いで、 こどもを手 っ取り早く コント ロール しようとしてしまう んです。と ころが、そう や つてこどもを コント ロールしようとし ても、 い
ずれ立ち行かなくなります。それには理由があります。 まず第 1に、 ﹁アメ﹂と ﹁ ムチ﹂ ︵ 外的動機付け︶を使 いすぎ ると ﹁ 自発的 にやろう﹂と い う気持ちが薄れ ていくから です。結果的 に、 ﹁ アメと ムチ﹂ がな いと動かなくな ってしまう の
です。優しか ったと思 ったら突然怒り出す。さ っきま で叱られていたと思 ったら急 に優しくな る。これを頻繁に繰り返し ていたら、こども の自己決定 の意思が希薄になるのです。
馬 の目先 に ニンジ ンを ぶら下げ るような ことを繰り返して いると、 ニンジ ンがな いと走れ
ない ﹁ 指示待ち人間﹂ になります。誘導す る側は ﹁ も っとも っと﹂と思う のに対して、誘導さ 、 れる側は疲れ果 てて、無気力 になります。そして ﹁ 言われたからやる﹂と いう︲ 変悪に矛盾を感 , ヽ じるよう になり、自分 の意思を表明できな い欲求不満が募 ってき て、自ら成長す ることを やめ
てしまう のです。 第 2に、減点主義 ︵ 叱責︶を多用しすぎ ると、 こどもはそれを避けることばかり に気が向 いてしま い、学業と いう本質から﹂ 4ざか ってしまうからです。叱責は、危険を予防したり、回
避するなど の限定的な目的には有効な手段 ですが、 勉強 に関しては つい叱りすぎ てしま います。
お前 にこれ以上教え ても ム ﹁ この前 や ったばかりじ ゃな いか﹂ ﹁ なぜ これが できな いんだ﹂ ﹁
叱られな いた ダだ﹂ です。し つけと同じよう に、勉強 の面 でも叱責を繰り返すと、こどもは ﹁
め の勉強法﹂を身 に つける ハメになります。 ﹁ ノル マ達成主義﹂ です。
指定された分量、指定された時間、指定されたやり方さえ守 つていれば叱られな いと思 い、
多少分からな いことがあ っても、ノル マの波 に流されていくよう になります。親 に嫌われたく な いから、期待 に応えようと必死に頑張るのです。
しかし指定されたも のを こなせな いことが分かると、こどもたちは巧妙な手 口を考えます。
自分ができ る問題しか解かな い﹂ です。そうしな いと親と の絆を維持す ること そ の手 口とは ﹁ ができな いと思 い込んでしまうんですね。
本来、学習 には基本 の上 に応用問題があり、勉強は絶えず進化と深化を遂げ て いくはずな のですが、叱責が過ぎると学習する意味すら見失 ってしまう のです。
第 3に、 こども が ﹁ 親 の言う ことさえ聞 いていれば いい﹂と思 ってしまうと、親 の期待と
0%発揮しようとしなくなります。おまけ に ﹁ やらされ感﹂が先立 つとしんどくなり 分 の力を 0 ︲
○○ の教え方が悪 い﹂ ﹁ せ っかく 失敗を人 のせ いにす る﹂ ことがよくあります。 ﹁ も の場合は ﹁ と いった具合 です。 一 一 一 一 甲つとおりや った のに﹂。 人は何か立派な人 やモノに頼りたが って寄りかかるも のですが、そうすること によ って自
step 4
はうらはらに、こどもは %の力を発揮しようとしなくなります。特に自己完結しているこど
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ます。寄りかか っていることを棚 に上げ て、反発したり、拒絶したり、非難したりします。こ れは実社会 でも同じです。
親 や先生は ﹁ 答え﹂を知 っているから、教え るとき に ﹁ これはこう でし ょ︱﹂と ﹁ 誘導 ・
命令﹂ にな ってしま いがち です。 こどもは、 ﹁ 誘導 ・命令﹂ に従 っておけば、自動的 に、そ の 先 にある ﹁ 答え﹂をもらえ ると思 い込 みます。そヽ ?すると、親 や先生は ﹁ 何が足りな いのか﹂ と思 い悩みます。
と ころが、解決 でき る素材は身の回り にす でに揃 っているはず です。受験 で勝ち抜く には、 基本的な知識と過去間だけ でいいんです。むしろ、志望校 のレベルが高ければ高 いほど、塾 の
教材 や参考書 の例題と過去問だけ で合格しなければならな いはず です。余分なことを や ってい る暇はありません。
自己完結す るこどもたちは完全 に大人 に寄り掛か って いるから、うまく いかな いと人 のせ
いにして非難す るんです。だから、まず親 のほうが力を抜 いて、 一度 ﹁ こどもを コント ロール すること﹂をやめてみていただきた いのです。
自己完結す るこどもたちは コント ロールされること にはもヽ 2つんざりし て いますか ら、そ
もそも ﹁ こどもを コント ロールする﹂と いう手法は通じな いんです。そこで、プ ライド の高 い ﹁ じ ゃあ、何をすれば いいの?﹂ です。これに ついては項を改 自己を 西朽﹂なこども に対して、﹁ めて見 ていく こと にします。
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■″ ′ ′■ ι
こども に気付きを与える秘技⑦
人 のいいと ころに目を向けさせる
何が いいモノ﹂ 何か いいモノ﹂を期待しています。ただ、﹁ 自己を 葬結しているこどもたちは ﹁
な のかは分か っていません。受験は必要なも のだろうけれど、別にやりた いからや っているわ
あんた悔しくな いの?﹂と聞 いても、 けじ ゃな い、と いう感じです。成績が悪か つたとき に ﹁
﹁ そんな話聞きたくな いよ﹂ です。今ま での親 の苦労を台無しにするような発言を平気 で言 い ます。
1対 1の 親 の期待﹂と ﹁ こども の承認欲求﹂ が硬直化した ﹁ 自己完結するこどもたちは、 ﹁ 関係﹂ にうんざりしています。あと 一歩 のと ころで伸び悩んでいるこどもは、表情が暗く、声 も小さく て、気持ちが萎縮しています。
1 だからと い って、 ﹁ 1対 1の関係﹂ がそも そも不要だ ったと いうわけ ではありません。 ﹁
対 1の関係﹂がな い、 つまり、親がこども にま ったく期待しな い、こどもも親 の視線を気にし
いましめま な い、と いう状況 ではヽ つまく いくはずがありません。小学生 の場合、親子間 の戒護 ︵ 1対 1の関係﹂を経る必要があります。 もる︶関係と いう ﹁
期待を裏切られ て傷 つ ﹁ こども にはもう期待し ていな いの﹂と言う人も いますが、それは ﹁
気付 きを与 える秘技
活力を吹 き込む 一
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くくら いなら期待しな いほうが マシ﹂と いう こと であ つて、ホ ンネは ﹁ 期待した い﹂なんです。 だから、﹁ 期待しな い﹂と いう親 であ っても、通常は ﹁ 1対 1の関係﹂は でき ています。 ただ、親と こども の ﹁ 1対 1の関係﹂ はお互 いに縛り合う関係 ですから、当然行き詰りま す。だから、こどもがう んざりするのも当然な のです。そこで、 ﹁いつも の親と、 いつも の先 生と、 いつも の教材 で勉強す る、はじめからす べてが与えられていて、ただそれを こなしてい く﹂、そんな消化試合 のような受験生活 に 一石を投じてもら いた いんです。硬直した ﹁ 1対 1
の関係﹂から、何か いいモノが見 つかる ﹁ 1対多数 の関係﹂ への脱皮 です。
人は何か立派なも のに頼 ろうとします。まし てやこどもならば親 に寄り掛か ろうとす るの は自然な こと です。しかし ﹁ 絶対 に正し い人﹂なん ていません。そ の意味 でこどもたち には
﹁ 誰が正し いか﹂と いう ﹁ 1対1の関係﹂から、﹁ 何が正し いか﹂と いう ﹁ 1対多数 の関係﹂ に 世界を広げさせなければならな いのです。
﹁ 1対多数 の関係﹂ への第 一歩は、﹁ 人 のいいところを見 つけ てホメさせる﹂ です。受験は競
争試験 ですから、勢 い自分を見失 って埋没してしま いがちになります。 この点、高校生にもな
れば いろ いろな受験情報を集 め て、 ﹁ この問題集 は自 分 に︿甲つ﹂ ﹁この予備校なら頑張れる﹂ ﹁ アノ人 のやり方を真似し てみよう﹂などと判断し、自分を見失 ったとき でも自力 で軌道修正
す ることが できます。これに対して、小学生は人 の良 いところを自分 で取り入れて、軌道修正 す ることができな いと思われがち です。
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しかし、 こども が ﹁ 人 の良 いと ころを真似しよう﹂と思うかどうかは大人 のやり方次第 で これは私 の責任、これはあんた の責任﹂と割り切るこどもは自分以外 の人をよ す。日頃から ﹁ く見ようとしません。
こんなこと では相手 の気持ちが読めず、周囲から見放され てしま います。自分 の言 いた い ことばかり言うから、周囲を不快にさせます。謙虚さがな い、恩義を覚えな い、雑用を嫌が る、
つ、だから人間関係も長持ちせず、自分に引 逃げ出す のが得意、力 のある人 の機嫌ばかりを伺ヽ き こも って疲れ果 てる、となります。
人 の良 いと ころに目を向け て欲し い﹂ ﹁ 他人 の行動 。結果を他人事 でな だから、日頃から ﹁ く、自分 の問題として捉え て欲し い﹂と こどもたち に訴えかけていく必要があるんです。
人 の良 いと ころを自分 のも のにでき る人だけが、成長し続けることができ るのです。そ の
ためには ﹁ 1対 1の関係﹂だけ では足りず、普段から他人 に目を向けさせ ているかどうか で、
その子 の危機管理力が つく のです。これは、社会 に出 ても絶対に役 に立 つ姿勢 です。
ど のよう にこども に話せば いいか﹂ です。例えば、朝暗 いうちから町を掃除し て そ こで ﹁ それはそ の人 の責任﹂と割り切るな、と教えます。もしそ の人たち いる人が いるとします。 ﹁
自分が代わ ってや ってみろ﹂とま がしなければ、自分 の町はどうなるか、と想像させます。 ﹁
では言 いませんが、人 のやること には必ず価値があることを分からせるのです。それがどんな 価値をもち、自分とど のよう に関わ っているかを考させるのです。
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受験勉強 でも 、同じ クラスの友達が何をし て いる のか、同じ ことを や っているよう に見え
る友達 の成績がなぜ伸びた のかを、こども自身 に考え させます。目を外 に向ける習慣があれば、 こどもたちが硬直した ﹁ 1対 1の関係﹂ に埋没することはな いのです。
受験 のライバルが何をど のよう にや つているのかを知らずに いることほど危” 険なことはあ りません。しかも、他人と いうお手本を素材 にすれば冷静 に考え ることができますし、何より ﹁ 自分 の頭﹂ で考える訓練 になりますから、受験 にも役立ちます。 人 の良 いと ころに目を向けさせる﹂と同時 に ﹁ また、 ﹁ 人 の批判は絶対 に言わせな いこと﹂
にも気を つか つてくだ さ い。小さ いとき こそ、 いいことを でき るだけ吸収させた いですから、 人 の批判をさせ ている場合 ではありません。
さらに、﹁ 人 の良 いと ころを褒めることは、自分 のことを詢む こと ではな い﹂ ことも教え て
くださ い。このことは、ささくれ立 った受験生活 ではと ても大切なこと です。根源的 には人 の
能力は最 黙つも のではなく、共有するも のです。能力を塁 なつだけ の人は必ず行き詰ります。だか ら、 ﹁ 自分 の欠点を包 み隠さずさらけ出し、人 の経験を盗む ことができ る人が強 い﹂と いう こ とを教え てくださ い。
結果とし て、人 の優れたと ころによく目が行き、それを認め てほめることが でき るよう に なると、そ の子も他人から受け入れられやすくなります。困 っていれば誰となく手を差し伸 ベ てくれるよう になります。自分ひとり では解決 できなか つたことが解決 できるよう になり、自
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分 の本当 の能力 に目が行くよう になります。受験はこうした出会 いがあ ってこそ充実します。
子育 ての目標は自分を超え させること にあります。能力 のあ るこどもを いつま でも自分 の
預言者﹄ の中に次 のよ 枠 の中に収めよヽ フとしては いけません。カーリル ・ギブランが書 いた ﹃ うな こども に関する詩があります。 あなた の子ども は あなた の子ども ではな い 子ども は ﹁ 生命﹂ の渇望から の子ども であ る 子ども は あなたを通 ってく る しかし あなたから ではな い しかし 子どもは あなた のも のではな い
子ども は あなたと共 にあ る あなた は 子ども に愛を与え ることが出来 る しかし 考えを与え る こと は出来な い 子ども は 自 分 の考えをも って いる のだ から あなた は 子ども の体を 動 かし てやれる
しかし 子ども の心 は 動 かせな い子ども は 明 日 の家 に生き て いる あなたは それを訪 ね る ことも 見 ることも できな い
あなたは あなた の子どもを 思 い通り にしよう と し ては いけな い 人生 は 後 ろに退き 昨 日にとどま るも のではな いのだ から
気付 きを与える秘技
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Step 4
21l
あ な た は 弓 であ る そ し て あ な た の子 ど も ら は 生 き た矢 と し てあ な た の手 か ら放 た れ る 弓 を ひく あ な た の手 に こそ 喜 び あ れ
こども に気付 きを与える秘技③
っていた のか、を見逃さな いことが重要 です。
こども の意識が ﹁ 自分 の能力 の向上﹂ に向 いた のか、それとも ﹁ 親 の期待 に合わせる﹂ に止ま
能力 に目を向 かせることが できたかどうか です。 こどもが親 に褒められたり期待された結果、
見逃してはならな いのは、 こども の承認欲求 の行方をし つかり見届け て、 こどもが自分 の
が内容を咀疇し吸収 できるかどうか です。意地 でもそれを噛み砕 いて吸収してやろうと思うか どうかです。勉強 の進み具合を監視しただけ では、こどもはそ のよう にはなりません。
受験勉強 には いろ いろ便利な教材はありますが、大切な ことは、それらを学習した こども
じ ゃあ、あんたも頑張りなさ いね﹂ では不十分です。 とは いえ、 ﹁
こども が人 の良 いと ころに目を向 け始 めたら、次はそ の子自身 に目を向け させる番 です。
こどもの承認欲求の行方を見守る
Iθ
212
例えば、大学受験 の場合、自分 の興味と親 の勧める進路が違 っても、自分を押し殺し て周
囲 の期待 に自分を合わせる学生が います。 いい大学、 いい企業 に入 って、手 っ取り早く人生を
片付け ていこうとします。要す るに、自分 の頭で考えようとせず、周囲 の期待だけを支えとす
次は何をすれば いいんでし ょうか?﹂と人に聞きま るよう になる、と いう こと です。だから ﹁ くるのです。
こう い った学生は受験はそこそこ上手 にすり抜けたも のの、やが て行き詰ります。原因は
﹁ 自分を押し殺し て周囲 の期待 に自分を合わせた﹂ こと にあります。もち ろん、人 に認められ た いと いう承認欲求は本能的な欲求 ですから、止むを得ません。
いう能 力 があ った のか !﹂
しかし、 ﹁ 認め てもらえ てうれし い﹂と いう ことを繰り返すだけ では成長し続けることはで 自分 には 認め てもらえ てうれし い﹂ に加え て ﹁ きません。 ﹁ と いう気付きがあれば こそ、成長があるのです。
こども が他 の人 の良 いと ころに目を向け始めたら、次は実行 の段階 です。そ のとき に、 こ
どもが ﹁ 親 に見 てもら いた いだけ﹂ に終わらな いよう にすることが必要 です。こどもが他 の人
の良 いところを真似したら、そ のことを褒め るだけ でなく、真似した結果、それがこども のた
めにな っていることを具体的に示す ことが必要です。 友達が十 童手な科目を毎 日 0分勉強している﹂と いう話を聞き つけ て、こどもがそ 例えば、 ﹁ 3 れを真似したとします。 このとき に ﹁ よく頑張 って いるね﹂と声をかけるだけではなく、さら
気付 きを与える秘技
活力を吹き込む 一
step 4
21 3
に強 い動機付けを与えるべき です。
具体的 には、 ﹁ この調子 で いけばき っと成績が上がるよ﹂とか、 ﹁ 毎 日続けられるなん てす
ご い﹂など、希望や自信を与え るのです。さらに、家族全員 で祝福したりがんば つている様子 を写真やビ デオに撮 っておく のもよ いでし ょう。
﹁ 自己完結す るこども﹂ は、小さ いときから過大な期待 にさらされ て いる家庭 に多く見受け
られます。そんな一 容廷では、こどもが少し つまずくと、親は ﹁ こんな ことも できな いのか﹂と なります。そヽ 認めてもら いた い気持ち﹂ が ﹁ つすると、こども の ﹁ 自分 の新たな能力を発見す る喜び﹂を凌駕してしまう のです。
そうは言 っても、親戚など周囲 の目を気 にして、 ﹁ 過大な期待﹂ は簡単 には引 っ込められな いかもしれません。そんなときは、無理に ﹁ 親 の期待﹂を操作せず、こども に自分 の能力を気 付かせればよ いのです。そ のほうがはるかにカンタ ンです。
︻ まとめ︼ これまで、次の内容を扱 ってきました。
︻ ステップー︼ただ家と塾とを行き来するだけのこどもたちに ﹁ 行動変容﹂を促す ︻ ステップ2︼結果だけをも ってこようとするこどもたちに小さな成功体験を味あわせる
214
Stl● │
小 さ な成 功 体 験
やればできる もう大丈夫
科 目横 断的な 学 力 をつ ける
$● 気づ き を与 え る
なるほど
︻ ステップ 3︼自分 のペースが つかめずあたふ
たするこどもたち に科目横断的
な学力を身 に つけさせる
︻ ステ ップ4︼自己完結す るこどもたちに気付
きを与え る
読 み進め て いくうち に、 ステ ップ ー∼4 の
あれも これもあ てはまる﹂ 項目にまたが って、﹁
と い った方も いたと思 います。そう いゝ ?万は、
数字 の若 いステ ップ の秘技から試 し て い って
くだ さ い。例えば 、 ステ ツプ 2は ステ ツプ ー
を クリ アした こども の話 です ので、 ステ ップ
ーと 2にあ てはま る人は、まず ステ ップ ーの
秘技から試してくださ い。
いきなリ ステ ップ 3とか 4に入りたくな る
かも しれませんが、それ で多く の受験生 が失
敗 し て います。 ステ ップ 0から順 にて いね い
に段階を追 って い ってくださ い。 つまり、 ス
step 4 活力を吹 き込む 気付 きを与える秘技 一
21 5
自分から やつてみよう Stlp●
行動変容 を促す
テ ップ ーがす べての段階 の土台 にな っています。
次 に、 ステ ツプ 4ま で進 んだ人は、 ステ ップ ーに戻 ってイチからやり直すも のだと考え て
くださ い。 ステ ップ ー∼4の項目は、図 の右 のよう に、繰り返しながら身 に つくと いう ﹁ サ
イクル構造﹂ にな って います。小学生 のうち に繰り返す こともあれば、高校受験 や大学受験 のとき に参考にすることもあるでし よう。
本書 のねら いは ﹁ 伸び続けるこども﹂を応援すること です。﹁ もうダメか﹂と思 ったとき に、 ﹁ もうひと ふんばり﹂を応援す ること です。
◆トビックス④ こどもが受験をやめた いと言い出した
2月には 、こど もにかなり のプ レ ツシ ヤーが かかります 。2 小6 の2学期 、特 に受験直前期 の1 1 月初旬から冬期講 習が 終わ る頃 には入試が 始ま るの で、﹁ あと は本人 次第﹂と いう ムード にな る から です。
そん構と き 、こど もが ﹁ 受験をや めた い﹂と 言 って、朝は起きなくなり学校 に遅刻 し 、塾にも
行かなくなり 、家 で勉強もせず ダ ラダ ラと テレビを見続 けるようにな ったら、ど う しますか? こう い った ケー スは男子に多 く、中 でも希望 に燃え ていた こど もたち に多 いのです 。6年生 に
216
な って習 い事 もゲ ームも自粛 し、志望校合格 のためなら 、親や先生 の言う ことを忠実に守 る。 で
も 、内心 では ﹁ 自分 の勉強方法は これ でいいのか﹂と疑 間を持ち続け 、不完全燃焼 のまま で受験 生活を送 る。心と体がバ ラバ ラ。
爆発的な集中力とダ ラダ ラが妙 に同居し 、成績が安定 しな い。外 面 ︵ そとづ ら︶が よくク ール
でませた 面が ある反面、停滞気味 にな ると親や先生 の指 示を仰で甘えん坊になります。
志望校合格だ けが心 の支え ですから 、そ の見込みが な いと 思 い込んだと き の反動 は大き いも の です。時 には凶暴な態度 に でることもあります。
そんなとき 、多 くの親 はこど もと の距離を置こうと します 。﹁こど もが こうな った のは私 の責任
かしら﹂と 思 い悩 み、手が出せなくなるから です。仕事 で忙 し い夫 には面倒をかけた くな いので、 第 二者 に何と かし て欲し い﹂と 思うも のです 。 ﹁
しかし、﹁ こうな った﹂ のはお母さん の責任 ではありません。よかれと 思 った こと にはほと んど
すべ て手を 尽くし てこられたはず ですから 、自 信をも ってもら いた いの です 。女手ひと つでよ く
そ こま でや ってこれたと 思 います 。こど もを縛りすぎ て反動 を招 いた 面があ るも のの、中学や高
校や大学 、ひ いては社会 に でれば 縛られ っ放 しにな るわけ ですから 、早期訓練 を したと 思えば い いのです 。入試が終われば 、意外に こど もはケ ロ ッと するも のです。
ただ 、入試が 近 いので悠 長な こと は言 っていられません 。こど もが ﹁ 受験をやめた い﹂ って言
い出 した らど うす るか 。朝なか なか布 団から でよ うと しな くな ったらど うす るか 。勉強を せず 、
ダ ラダ ラと テレビを見続 けるようにな ったらど うす るか 。凶暴 にな ったらど うす るか。これら の 行為はすべ て ﹁ 自傷行為﹂ で、自分 で自分を苦 しめ ているのです 。
私 の扱 った ケー スでは 、リ ストカ ツトを し ていた こど もも います 。そ の子 のお母さん はす でに
step 4 活力を吹 き込む 気付 きを与 える秘技 一
21 7
上 の子を育 て上げ られた ベ テラン主婦 でしたが 、まさか自分 のこど もが リ ストカ ツトをす ると は 思 っても いなか った ので、かなり動揺 し ておられました 。
こうしたと き に大切な のは 、こど もと の距離を も っと 縮 めること です 。そ し て、集中 し て打 ち 込め るも のを 一緒 に探 し てや ること です 。 こど もが 朝布 団から出 なく ても いいから 、 一緒 に寄り
添 ってあげ ます 。相手は小学生 です 。まだ まだ お母さんにまと わり つきた いのに 、照れくさ く て できな いだ け です。本心は 、辛さから逃れ て ﹁ 赤ち ゃんに戻りた い﹂ です。
テレビ をダ ラダ ラ見 ていたら 、 一緒 に見 てあげます。そうす ると 、何と なく こど も の言 いた い ことが伝 わ ってきます 。殴られ ても蹴られ ても モノを投げ られ ても 、﹁一緒 に片付 けよう﹂と声を かければ こど も の心に響きます。
そ し て、こど も の行動をよく観察 し て、集中 し てやれ るも のを探 し て、それに打 ち込めるよう に し てや りま す 。 こど もが自 傷行為を繰 り返 し てば かりだ から 、光 を差 し向 け てあげ るの です 。
例えば 、読書が好きな子 であれば ﹁ よく頑張 っているわね﹂と声をかける。﹁ 何をすべきか﹂ では 集中 した態度﹂そ のも のを 評価 し てあげ る のが コツ です。 なく 、﹁
競争に負 けた り失敗 したと き の身 の処 し方は大人 でも難し いも のです 。 ですが 問題は ﹁ 考え方﹂ にあ るのです 。こど もが 失敗 したら 、身 の処 し方を学ぶ 重要な チ ャン スを得たと 考え 、それを活 かせばよ いのです。
繰り返しになりますが 、能力 は競 うも の ではなく 、人と 共有す るも の です 。能力を競おうと し ても いず れ負 け ると きが きます 。だ から 、自 分 の能力 の限界を知 り 、人と 能力 を共有す ること に 目を向 け てほし いのです 。
いず れ人と能力を共 有 した いと 思 ったと き に 、共 有 し ても恥ず か しくな いだ け の能力を持 って
218
能力﹂を潰さな いでほ し いのです 。合格ば かり 欲 し いの です 。そ のた めには 、︿フあ るそ の子 の ﹁
に目が い って、こど も の大 切な芽を摘 ん ではも った いな いです 。合格自体に 意味が あ る のではな
く、こど もが結果と して成 長し てこそ合格 に意味が あ るのだと 思 います。
◆トビックス⑤ 競争心を煽ることの功罪
﹁ お兄ち ゃんは努力 し て 一流校 に合格 した のよ﹂なん て人と比較すれば 、簡単 に競争心を煽 るこ
とが できます 。 ですから 、受験 の世 界 では 、人と 比較す ること によ ってこど も の モチベーシ ∃ン を上げ る手法が多く用 いられます。
ただ 、人と 比較されればだ れだ って競争心を煽 られますが 、それをど う 受け止め るかは人 によ って違 います 。 ですから 、人と 比較 し てこど も の モチベーシ ョンを上げ ようと す ると きは、そ の こど もが競争 に強 いかど うかをまず 考え る必 要があ ります 。
人と比較された こど もが粘り強さを見せるのか 、それと も耳 こど もが競争 に強 いかど うかは 、﹁
自分が 認められ ている﹂ ﹁ 自分に を貸さな いか﹂ で判断 できます 。人と 比較され ること によ って ﹁ も できる﹂と感 じるのか 、そ れと も大人 の欲目を察知 し てシ ラケ ている のか 、の違 いでもあ りま す。
本番 に強 いかど うか﹂ です。志望校がど こ であれ 、1 月 いず れ にし ても 、受験 で大 切な のは ﹁
本番 での強さ﹂ にかか っています 。そ の に願書を出 した学校 に合格す るかど うかは 、ひと え に ﹁
と りあえず ﹂競争 に強 くな ってもら いた いと 思 います 。受験は競争試 意味 で、こど もたちには ﹁ 験だ から 、比較 されること を恐れな いでもら いた いのです 。ど うせ自 分だ って人を比較 し ている
気付 きを与える秘技
活力を吹 き込む 一
step 4
21 9
はず です し、社会 に出ればイヤ でも比較され続けます 。 ここま では いわば当然 の話 です。
ですが 、ち ょ っと心 配事もあります 。﹁ 競争だ けが意識付 けられ ると 、話を聞けなくな るおそれ
が あ る のでは﹂、と いう心 配 です 。事実 、﹁つまんね えよ∼﹂ ﹁ 早く答えを言 ってよ∼﹂ ﹁ 授業 は延 長しな いでよ∼﹂ って言う こど もが多 く見受けられます 。
もち ろん 、指導側 の力 量 不足もあ る でし ょうけれど も 、こど も の意識 の問題もあ ると 思う の で す。こうした発言をす る生徒は 、案外 要領 のいい子 で、いざと いうと きに勝負強 いのです 。
それ で受験はなんと かなる でし ょう けれど 、人 の話をよ く聞く こと の重 要性が分 か っていませ ん。人に使われた こと のあ る人なら分か ると 思 いますが 、人はあ る程度 の自信が つくと 人 の話を 煙たが るようになります。
例えば 、仕事 を任され てあ る程度 スムーズ に行なえ るよう にな ると 、上 司 の指 示や命令がう っ と うしくなります。 ﹁ ち ゃんとや ってん のよ﹂ あんたど こ見 てん のよ﹂ ﹁ じ ゃあ、あんたは何し てん のよ﹂ ﹁
こうした考え方 の根底には 、﹁ あんた になんか負 け てな いよ﹂と いう競争意識があ ると 思う ので す 。仕事 はし っかりや っていると いう自 信 です 。
確 かに仕事を し っかりや っていると いう こと は立派な こと です し 、褒 められ るべき です 。しか
し 、人 の言うこと に耳を傾けられ検 ったら 、そ の時点 でそ の人 の成 長は止ま ってしま います 。 く な ﹁つまんね えよ∼﹂ ﹁ 早 く答えを言 ってよ∼﹂ ﹁ 授業 は延長しな いでよ∼﹂と 言う こど もた ちは 、
220
勝ち負 けしか目 に入 っていません。人 の話 の奥底 を読 もうと しません 。だ から 、人から求められ
ていることが分からな いのです 。 受験 では勝 ち負 けと いう結 論は大 切 です 。 ですが 、受験勉強と 並行 し て、人 の話をよ く聞くよ う にし つけ ること も同じくら い大切だと 思う のです 。むしろ 、人 の話を 聞けるから こそ 、勉強 で
人と 比べ ること によ って︶ こど 得た知識 に意味が あ るのだと 思 います 。人を引き合 いに出 し て ︵ も の競争心を くすく るのは有効 な手段 です 。 ですが 、勝 ち負 けだ けに目が 行くと 、こど も の本当
の成 長の芽を摘 みかねな いと 思 います 。 能力 は競うも のではなく 、共有す る 受験を通じ て必 要な考え方 、こどもを潰さむ い考え方は 、﹁ も の﹂﹁ 今だ け ではなく、先を見 る﹂と いうこと です 。
あとがき
一つは中高 一貫 の女子校 私が中学受験 に従事 し て いた ころ、 こんな こと がありま した。
当時 ︶を 目指す小 6 の A子︶ の話 、もう 一つは中高 一貫 の男子校 ︵ を 目指す小 6 の女 子 ︵ B男︶ の話 です。 男子 ︵
A子 に算数を指導す るよう にな った のは小 6 の秋ご ろ、 A子は明 るく て思 いやり のあ る
優 し い子 でした。 しかし算数 が苦手 で、学習す る単 元が遅 々と し て進まず、宿題 の取り組
気付 きを与える秘技
活力を吹 き込む 一
Step 4
221
み方も いい加減 です。 こ のよう な状態 が長引くと良くな いので、 ﹁ 今 のこと、そし て今後 の ことをお母さんに正直に話そう﹂と告げました。
す ると A子は突然 のどを震わせ て泣き出し、 ﹁ 絶対 にお母さんには言わな いで﹂と嘆願す る のです。なぜかと聞くと ﹁ お母さんに嫌われる のがイ ヤだから﹂。続け て ﹁ お母さんは小
6にな ったとたん怖くな った﹂ ﹁ 勉強部屋 の後 ろで私を見張 って いる﹂と言 います。 私が ﹁ 学校 や塾は好き?﹂ って聞くと、 ﹁ と ても楽 し い﹂とも言う ん です。
つまり、受験勉強 が本格化す るに つれ て、 A子 にと つて家庭 で の居心地が悪くな った ん です。
他方 B男は、受験直前 の秋ご ろ登塾を拒否す るよう になり、毎朝 小学校 にも 遅刻す るよ
う になりました。家 の中 で暴言を吐く、物を投げ るなど の自暴自棄状態 に陥 って います。
電話 回で声 にならな いお母さ んに対 し て私が ﹁ お父さん にお力を お借り し ては いかが で し ょう か﹂と申 し上げま した。す ると ﹁ 主人は、ダ メなら受験を辞 め ろの 一点張り﹂ ﹁ 主人
は仕事 に忙 しく てこども に手 が回らな い﹂ と のこと です。 お父さ んと B男はどう し ても対 決ム ードにな ってしま い、お母さんはそ の板ばさみにあ つて いたんです。
中学受験 では これら のよう な事態 に陥 ること は珍 し いこと ではありませ ん。 しかも これ ら の事態 は、それなり に理由 があ って起 こること です から、決 し て忌む べき こと でもあり ません。
222
しかし親子関係 に ﹁ 人と し ての情﹂を捨 て去 って いな いかどう かを問 い直 し てみる必要
はあります。 しょうこう︶が孔子 論語子路第十三に次 のようなくだりがあります。楚 の長官 であ る葉公 ︵
きゅう︶と いう正直者 がおり、父親がよそさま の羊をネ コババした のを に ﹁ わが国 には嬌 ︵
父は子をかば い、子は父を 見 たと証言 しま した﹂ と告げ たと ころ、 これ に対 し て孔子は ﹁ かばう のが正直さと いうも のだ﹂と言 ったそう です。
反抗 され る、費 用がかさむ 、不合格 にな る﹂ です。 親 が受 験 で嫌う のは 3H、 つまり ﹁
こ の3Hに頭が支配され てしまう と、親 子 で目を光 らせ て監視 したり、親子 であ っても許
さな いと いう殺伐とした状態 になります。それは こども の心 に深 い傷を残 し、合格 し て社 会 に出 てもそ の傷は癒え ることはありません。
中学受験 は多 く の子ども たち にと って早すぎ る試練 です。 しかも 、そ の試練を ただ こな
今 日私はあ れも これも でき なか った﹂ すだけ の作業ととらえ てしまうと苦痛 になります。 ﹁
今 日はあ の人 ︵ こ の子︶と これが でき るよう にな った﹂と いう加 と いう減点法で はなく、 ﹁
点法 の考え方を持ち続けることが、人 の気持ちを前向き にさせ てくれます。
理屈 ではなく、人間とし て の情、かば い合う精神 で苦難を乗り 切る、実 は これ こそが中 学受験 で手 にす ることが でき る最高 の成功だ、と私は思う のです。
ぁとがき
223
山田
正 (や まだ 。た だ し)
19“ 年5月 8日 生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、大手進学塾講師 、中学受験
専門個別指導塾運営責任者 を経て、現在、国内最大規模の小中学生向け自立学習 映像授業 を制作 ・配信する株式会社建築資料研究社 ニ ッケンアカデ ミーにおいて、 講師育成 トレーナーを務める。魂のこもった指導技 術を元に、保護者・教師の相 談 を精力的にこなす。結果 を生み出すわか りやす い方法論で多くの成功者 を輩出 し、絶大 な支持を得る。本書の内容に関するご意見・ ご質問・ご相談は歓迎。著 者プログ「こども活性化プロジェク ト」 (ht,/47okli」。 /)か らお寄せ ください。 ◆イラス ト:も りもり 自由が丘産能短期大学卒。都内で OLと して働 くかたわら、インター不ット上でオフ ィスを舞台にした漫画を発表 している。 ◆企画協力 :橋 永隆行 東京経済大学卒業後、ものづくりの世界からコーチングの世界に触れて、2∞7年 コー アクテイブコーチとして独立。人の日々の課題を扱いながらも本質的な生き方を共に 探るコーチングをしている。またインプロ (即 興劇)を 使った研修講師 としても活躍 中。毎週木│1習 開催高田馬場C」e` de co¨ 仙哩でも活躍中。2008年 2月 CPCC(Cermed Ro急 ord Coた e Co¨ h)米 国CΠ 認定プロフェッンョナルコーチ取得予定。
中学受験は「親」で決まる 2008年 1月 18日
初版発行
著 者
山
田
発行者
奥
発行所
株式会社
沢
正 邦
成
ば る出版
〒160-0011 東京都新宿区若葉 1‐ 9-16 03(3353)2835-代 表 03(3353)2826-FAX 03(3353)3679-編 集 振替 東京 0010)3■ 31586 印刷 ・製本 中央精版印刷 (株 ) ◎2008 Yanlada′ radashi
Printed in Japan
落丁 ・乱丁本は、お取 り替 えいたします lSBN978-4-8272‐
0384-4 C0036
│││‖ ││││‖ ││││││‖ │‖ │││‖
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難 関校対 策の カリスマ教 師が教 える
中学受験は ││!││ll馳 │
97848272〔 〕3844
│lllll!││││‖
で決ま る
ISBN978‐ 4-8272‐ 0384‐ 4
C0036 ¥1400E 定 価 本体 1400円 +税
わが子を確実に合格へ導くために 親がなすべき4つ のステップ S,epO◎ こどもの状態を知る (い ま、 どのステップ?)
↓
S“ Pl◎ 自分からやつてみようかな (や る気を引き出す)
↓
Sbp20や ればできるじゃん (成 功体験を味わせる
)
↓
S"P3◎ これならもう大文夫 (葛 藤を克服させる
)
讐 SLP4◎ なるほど!や るしかない(活 力を吹き込む )
↓