優秀な子どもが失敗する9の理由

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教 育ジャーナ リス ト

山田 正

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健 全受験 で合 格 しちゃ う 受 験 上手 のス ス メ

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ト シ ク ツ ´ト 藤びチエ 勢 1】 シ 露 ク ツ 付 エ 【 明会チ 説 校 学 ´ 付録 2】 【 クシ ト ツ エ チ 反対照表 去問 進 過 数 3】 算 ス 付録 【 ・サピツク 塚 大 四谷 付録4】 【

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山田

正著

エ ール 出版社

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優秀な子どもが 中学 受験で失敗する

0

の理 由

山田 正・ 著



*目

次*

・ ◎成功する子どもは特別なことをしているわけではない 。 ・・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・・ 8

・・・・・・・ ・・・・・・・・・・ (1)も ともとやる気がない子どもはいない・ ・・・ ・・・・・・ ・ 14 (2)「

・・・・・ やる気がない 」から「勉強しない 」はウソ・・・・・・・・・ ・・・¨・ ・・。15

(3)「

やる気 」と「やりがい 」 ・・ ・・・・・・・・ 、あなたはどつち ?・・ ・・・・ ・・・・・・ 17

やる気がないのは本人の責任だ 」はデタラメ・ ・・・ ・・・・・ ・・・ ・・・・ ・・ ・・ ・ 19 ――親 の評価は子どもの行動を左右する 提言 1<テ どもをエサで釣るの は本 当に効果的か > 22 (4)「

・・・・・・・・・ 26 終わった」 で終わる子と、「 できた」 で終わる子・・ ・ ・・ ・・・・

・・・・・ (2)成 績が不安定なままの2つ の理 由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ 27 ・・・ (3)受 験勉強 に必 要な「記憶 力」 のつけ方・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・ 28 ・・・・

-そ

の 1「 自力で最後まで解き切る」

・・・・・・・・・・・・・ (4)受 験 勉強 に必要な「記憶 力」 のつけ方・・ ・・・・・・・・・・。31

-― その2「 定期 的に思い出す」 ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (5)理 解不足を克服する 。 ・・・・・・。38

-一 その 1「

思者 力で記憶 力をカバーする」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・ (6)理 解 不足を克服する 。 ・・・・・・・ ・・・・・・ ・ 41

-― その2「 質問力をつける」 提 言 2く 理解力は人によつて異なるが、理解力によつて差はつかない>・ ・

29

提 言 3<復 習 する 回数の決め方 >・・・・・・・・・・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・・・ ・・・・・・ ・・。32 提 言 4<定 着 している問題 とそ うでな い問題 の選列方法 >・・・ ・・・・・・。33

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一一

(1)「


・・ 36 ・・・・ ・・ ・・ ・・・・・・・ ・・・・ ・・・ ・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・ 提言 5<睡 眠の役割 >・・ ・・ ・・ ・ 37 ・・・・・・・ 「負 けないこと」>・・・ 提言 6く 記憶 に定着 させるとは、 ・・・・・・・・・・・・ ・・ ・ ・・・ 42 提言 7<勘 違 いが起 こる理 由>・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・ ・・ ・・ ・・ 43 ・・ ・ ・・・・・・・・・ ・・・ 提言 8く インプ ツ トとアウ トプツ ト>・・・

いますぐやる子」 と「あとでもやらない子」

(1)「

46

・ 47 ・・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・・ (2)途 中で終わってもいいから「まずやる」 ・・・・・・・・・・・。48 (3)ど れをやっていいか分からない一一 パックラット症候群 ・・ ・ ・・ 51 ・・ ・・ ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・ (4)す ぐにとりかかる準備ができていない 。 (5)「

・・ ・・・・ ・・・・ 53 うちは放任主 義よ」では子 どもの真価 は発揮されない ・・

一    ¨ 一イ ¨

一  一

・・・・・ 56 ・・・・・・ ・・・・・・・・ (1)何 のために、それやってんの ?・・・・・・・・・・・・・・ ・ 57 ・・・・ ・・・・ ・・ (2)賢 者は愚者からも学 ぶが、愚者は賢者からも学ばない・・

-一 人 のアドバイスを武器にせよ (3)木を見て森を見ようとしない子どもたち一

・・ 60 過程に夢中になってしまう 。

・・ ・・・・ ・・ ・・・ 59 ・・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ 提言 9く 指示の 出 し方 >・・・・・・・ ・・・・・・・・ 62 ・・・・・・・ ・ "。・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・・ 提 言 10く 手段 と 目的 >・・・

・・・・・ 66

(1)集 中力と持続 カ

(2)集 中状態を作 り出す方法――「よし、やるぞ」 と思えない場合・・・・・・・ 66 ・・・・・・・・ ・・ ・・ ・・ 75 ・・・・・・ (3)集 中状態を邪魔するものを排除する方法・・・・・

-気

が散って勉強がはかどらない場合

(4)集 中状態を維持 する方法 一

・・ ・ 78 勉強途 中でギブアップしそうな場合・


*目

次*

・・ ・・ ・・ ・・・・・・・・・ ・・・ ・・・・・・ 82 (1)自 分の本気度を試すために「壁」 がある 。 ・・・・ 83 ・・・・・ (2)失 敗 (間 違うこと)に 対する恐怖 との付き合い方 ・・・・・・・・ (3)失 敗や屈辱から立ち直る方法 (4)「

90

・・・・ ・・ 97 勉強 しない子どもにはペナルティが当 然だ」なんてことはない 。

(5)― 流 のナンパ師であれ∼結果でな<行 動に注 目させよ・・

104

・ ・・・・・・・・・・ ・ ・・ ・・ ・ ・・・ ・・・・・・ 86 提言 11く お見事 !テ どもの新発見 >・・・ ・ ・・・・・ 提言 12く 競争の功罪 1∼ 受験戦争を勝 ち抜 くために>・・・ ・・・・ 92 提言 13く 競争の功罪 2∼ 将来社会人 と して活躍するために>・・・・・・・ 95 ・・ ・・・・・・・・102 ・・ ・ 提言 14<子 どものよいところを見つけて、褒める >・・ ・ ・・・・ ・・・・・ ・・・・ ・・ ・ ・・・・・・ ・・ ・・ ・・・・・・・・103 提言 15く 教師の術策 >・・・・・・

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(1)「

あたりもらして終わる子」と「反省 して先へ進む子」

110

・・・ ・・ ・・・ ・・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・ 110 (2)親 に認められたい子どもは失敗する 。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 114 ・・・・・ ・・・・・・ ・・・ ・・・・・ (3)書 物 の 中から学 べ・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・・・・・・・・・。117 (4)主 体性がない∼ 過度の他者依存 ・・・

・ ・・ ・ ・・・ ・・ ・・・ 提言 17く 人に助 けを求めろ >・・・・・・・・・・

113

・・ ・ ・・ ・・・・・・・・ 116 提 言 18<「 テどもの話をよく聞 く」 という教斉 >・・・・ ・・・・・ ・・ ・ ・ ・・・・・・・・・・・ ・ ・・ ・・・・・・・・122 提言 19く 自分を評価する能力>・・ ・・ ・・・ ・・・。124 ・ ・・・・・・・ ・・ ・ ・・・・・ 提言 20く マシユマロ脳を最えろ>・・・・・・

・。128 (1)未 来を予測するための最良の方法は、 自分で未来を作り出すことだ 。 ・ ・・ ・・¨・・・・・・・ ・ ・・ ・・・・ ・・・・ ・ ・・ ・・・・・・・・。129 (2)積上方式から逆算方式へ 。

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・・ ・ ・・・・・ ・・・・106 提言 16く 「文ず解決 してみせる」という気概>・・・・・・・


・・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・132 (3)1週 間の学習計画のたて方・・・・・・・・・・ ・・・ ・・・・・・・ ・・・・ ・・・。133 ・・・・・・・・ ・・・・ ・・・・ (4)試 験前の学習計画のたて方 ・ (5)計 画の実行を視覚化 する

136

提言 21く いつたん計画 したものは、万難を排 して完成 させよ>・・・・・135

・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・ ・・・・・・ 140 ・・・・・・ ・ (1)今 のやりかたで本 当にいいのだろうか 。 ・・・・ ・・・・・・・ ・・・・・・・・ 140 (2)先 生 (塾・ 家庭教 師 )を 選ぶ 7つ の基準・・・・・ ・ 145 ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・ (3)志 望校 の決め方・ (4)子 どもの成長力を信 じて接する一 (5)中 学受験 一

・・・・・ ・・・・ ・・・・・ 147 ピグマリオン効果・

・・・・・。149 ・・・・・・・・・・ ・ ・・・・・・・・ ・・・ 時期別 サポー ト法・・・・

(6)心 配するよりもまず行動

158

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・・ ・・・・・・ ・・・・・・159 提言 22<子 どものやる気が出る リス ト>・・・・・・・・・・・

あとがき 付録 l塾 選びチェックシー ト 付録 2学 校説 明会チェックシー ト 付録 3過 去 問チェツクシー ト 付録 4四 谷大塚・ サビックス算数進度対照表


序章


◎威珀する子どもは特1」 なことをしているわけではない 中学受験 は親 に とって楽 しみな ものです。それ は、 自分の子 どもが 、そ の気 にさえ なれば 高学歴 を手 に入れ ることができるん だ、 とい う権利 を手 に入れたか らです。 それ とは裏腹 に、 中学受験 には 現実的な側面 もあ ります。あるベ テラン のお母 さんの話では、 中学受験 は「 出産 だ」 といい ます。 まだまだ余裕 のある妊娠直後 は、子 どものためによか れ と思 う ことは何 で もや ってみ る。 しか し、出産 (受 験 )が 日前 にな って余裕がな くなる と、 何 とか健康 で生 まれて くれ さえすればいい (合 格 で きる ところに受 か って 欲 しい)、 と願 うばか り。 本 当 に実感が こ もってい ますね 。 妊娠直後か ら出産 直後 までの 間は、本 当に 目移 りす る ことが多 いで す。 ′

「何をやれば うま くゆ くのか」、 「 どうすれば うま くゆ くのか」、 「 うま くや っ てい る家庭 は どの よ うに してい るのか」・…。 ただで さえ、首都 圏 の 中学受験 は、 私立 中学 の 募集 定員合計 が 弱 なの に 対 して、実受験者 が ですか ら、お よそ

4万 人

5万 4000人 (2009年 度、四谷大塚 調 べ )

5人 に 1人 は全 滅す る試験 です。

しか も、世 帯年収が年収

800万 円を境 に して、「子 どもを私立 に入れ る

世帯数」 が「子 どもを公立 に入れ る世帯数」 を上 回る とす る研究発表等 も あ る くらい、保護者 に とって も過 酷な試験 です。 しか し肝心 要 の勉強 の 中身を分析 してみる と、 中学受験で成功 している 子 どもは、何 も特 別 な ことを しているわ けではあ りません。 成功す る子 どもは今 も昔 もきちん と勉強 してい るだけなんで す。 ただ、 失敗 しないカ ラクリはあ ります。 成功す るカラク リはあ りませんが 、失敗 しないカ ラク リがあるんです。 勉強が うま く回ってい る子 どもの成長イメー ジは次 のよ うな ものです 。


序章 *優 秀な子 どもが失敗する理由

応用 問題

情報 の獲得

B

A

C

D

情報 の保持

基本 問題 タ

図は、タテ軸に「応用問題」 と「基本問題」、 ヨコ軸 に「意 味理解 (情 報 の獲得)」 と「記憶保持 (情 報 の保持)」 を とりました。基本を しっか り 理解 していて、それを頭 に蓄えつつ、それを武器 に して先へ進む。 このよ うなイメージです (Cゾ ー ンか ら Aゾ ー ンヘ)。 ところが、 このよ うに解きなが ら覚えるようになるまでには、学習習慣 を身につ ける必要があ ります。 しかも、学習習慣は、成績向上 に直結 して いる必要 があ ります。学習習慣が身につ くまでは、およそ次の図のよ うに な ります。


応用問題

情報 の獲得

B

A

C

D

情報 の保持

基本問題

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基本問題 を着実 に理解・ 記憶 し、その学習 プ ロセスを応用問題 にあては める。応用 問題 に移行すれば当然苦痛を伴 うわけですが、苦痛 になるのは 能力が低 い わけではあ りませ ん。学習プ ロセス 、 つ ま り「練習 の仕方」が 悪 いので す。 練習 の仕方が悪 い と、優秀 な子 どもで も失敗す るのは当た り前 です。勉 強 に限 った話ではあ りません。勉強 の仕方が悪 い と、次の図のよ うに 「不 理解」や 「頭打 ち」 にな って しま うのです。


序章 *優 秀な子 どもが失敗する理由

応用 問題 頭打 ちタイ プ

不理解 タイプ

銀中 麟 一 華 騨

情報 の獲得

B

A

C

D

情報 の保持

鱗 難

基本問題 「全然分 か らな くな った」とか │

成 績 も急降下

した」とい うような場合 に、

「打開策 がな い」「余計 に こじれた」 とい うことが よ くあ ります。具体的 に みてみ る と、「できて当た り前 の 問題 が解 けな い」「毎 日頑張 ってい るのに 成果が上 が らな い」 とい う ことがあ って、びっ くりす ることもあるで しょ つ。 しか し、 こんな ことは誰 だ って経験す る ことなんです。 大事 な ことは、 このよ うな失敗経験 か ら成功の コ ツを学ぶ ことで す。 本書 では、優秀 な子 どもで も失敗す る理 由を検証 しなが ら、今 日か らで もできる対処法 を提案 してゆきます。

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(1)も ともこやろ気がない子どもはいない 中学入試をや るかや らないか 、思 い悩 んでい る保 護者 は少な くあ りませ ん。公立 中学 の評判 を見 聞 きす るにつ け、できれば入試 を させたい 、けれ ども、子 どもの様子をみてい る と中学入試 をや り切 る 自信 もない。 すでに子 どもを塾 に 入れ てい る家庭 の 中には、「 この まま うま くゆ くは ず もない」 と思 つてい る保護者 もいるで しょう。 子 どもが親 の期待 に応 えて くれない、応 えて くれそ うにない とき、子 ど ものや る気 を信 用できな くな る ときが あ ります。 こん な寓 話 があ ります。 スイスの レマ ン湖 とい う湖 畔で、「ボー ッ」 と釣 りを している人を見 か けた男 が近 づ いて、 こ う言 った。「魚 が こん なにた くさん い るのだか ら、 網を使 えばい っぱい とれ ます よ」 と。 ′イ

する と釣 り人 は「網 でた くさんの魚 を とって どうす るのですか ?」 と聞 き返 した。 通 りすが りの男 は「魚 を市場 に持 つてい けば、いいお 金 になる じゃない ですか」 と答 えた。 する と釣 り人は「お金 に換 えて どうす るのですか ?」 と聞き返 した。 通 りすが りの男 は「 お金 があれば、 この湖 のほ とりに別荘 を建 てる こと もできる じゃないですか ?」 と答 えた。 す る と釣 り人 は「別荘 を建 てて どうす るのですか ?」 と聞き返 した。 通 りすが りの男は「別荘 があれば、 一 日、ボー ッと釣 りを楽 しめる じゃ ないですか

!」

と答 えた。

(寓 話おわ り)

この釣 り人 のよ うに、意欲 がないよ うにみ えるわが子 を見 る と、 もどか しくな りますね 。 しか し、 この釣 り人の よ うな子 どもで も、意 欲 はあ るんです。


1章 *も ともとやる気 がない

(動 機付けが弱い)

マ ズ ロー の有名 な「欲求段階説」 によれば、人 は満 たされない欲求 があ る と、それを満たそ うとす る行動を取 る とい う。 そ して、満 たされな い欲 求 には段階があ り、食欲 な どの生理的欲求が満 たされ る と安定 した生活を 望 み (安 全欲 )、 生活 が安定す る と次 は孤独感 のない環境を求 め (所 属 と 愛 の 欲求 )、 孤独感 がな くなる と次 は 自分 が価値 あ る人間であ る ことを確 認 した くな る (承 認 の欲求 )。 そ うだ とすれば、現代 の豊かさの中で育 った多 くの子 どもは「 自分を価 値 ある存在 として認 めて もらいたい」 とい う段階 に位置す るで しよう。 つ ま り、多 くの子 どもが「良 い成績を とって驚かれ るよ うにな りたい」と思 っ てい る、 とい うことで す。 「子 どもに欲 がない」と嘆 く必要 は全 くあ りません。 む しろ、 だか ら親 は、 子 どもたちは心底 や る気満 々です。 それ なのに 「意欲 がない」 とレッテ ル を貼 ってか えってや る気 をそ いでいないか、親 自身 が 自間 自答 してみ る必 要があ ります。 水道 の水 を節約す るために、頭 ごな しに「ちやん と閉めろ」 と命令 され れば、余計 に蛇 口をひね って水を出 した くなる ものです。同 じよ うに、や る気 があるのに 「や る気 がない」 とレッテルを貼 られてはたま った もので はあ りません。考 え方 は掛 け算だか ら、気持 ちが消極的な ら、能力はま っ た く伸 びな くなって しまい ます。 ただでさえ、中学受験 は上位層 の戦 い です し、学校 と塾 とではや る こと の質 も分量 もまった く違 います。それを 「や る気 がな い」 のひ と言で片 づ けるのは酷 とい うものです 。表面 だけをみて判断す るな ら子 どもで もでき ますが、表面 だけで判 断す ると見誤 ります。

(2)「 やろ気がない」から 「勉強 しない」勝ウソ 大人 が禁煙やダイ エ ッ トが長続 き しない ことはよ くあ ります。そ うす る とその人 は、「本 当 にや る気 がない」 とか「意志 が弱い」 と片 づ け られ て

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しま うのが常 ですね。 しか し、禁煙や ダイ エ ッ トが失敗す る理 由は、本 当 に「や る気がないか ら」な ので しようか 。 「禁煙や ダイ エ ッ トが失敗 した」か ら「や る気がない」のか 、それ とも、 「や る気がない」か ら「禁煙や ダイ エ ッ トに失敗 した」 のか。 どうや ら、そ の どち らとも言 えそ うですね。 ニ ワ トリと卵 の どち らが先 か、 とい う循環 論 法な ので す。 つ ま り、「や る気 がない 」 とい うのは、「禁 煙 や ダイ エ ッ トに失敗 した」 とい うこ とを言 い変 えただ けで、「禁煙 や ダイ ェ ッ トに失 敗 した」 とい う こ との理 由を示 してはいないの です。 この こ とは勉 強 も同 じです 。 「や る気 がないか ら勉 強 しない」 のか 、 それ とも「勉強 しないか らや る 気がな い」 のか。 どっち とも言 えます。 つ ま り、 「勉強 しない こ と」を「や ′ φ

る気がない」 と言 い換 えてい るだけです。 だか ら「や る気がな い」 とい うこ とを 嘆 いて みて も現状 は何 も変わ りま せん。む しろ、マ イナスの レッテル を貼 つて子 どもの 自尊心を傷 つ ける分 、 話が こじれ るだけです。 では反対 に、子 どもが 「合格 したい」 と願 えば、勉強す るよ うになるで しょ うか。 多 くの人 は、塾 の先生 に「志 望校を決 めればや る気 もでるで しょう」 な んて言われ て、 早 い 時期 か ら学 校見学や学校 説 明会 に参加 させ られ ます 。 私 も昔 はそんなあや しげな こ とを言 ってい ま した。 もち ろん、「志望 校 が 決 まれ ば勉 強す る」 な どと、そ う簡単 には ゆ くは ず もあ りません。みんな うす うす感づいてい るで しょ。 理由は、合格 が決 まるのはず っと先 の話 だか らです。禁煙や ダイ エ ッ ト が長続 き しないの も同 じことです。肺 ガンになるもの、痩せ るの もず っ と ず っと先の話 に思 える。 だか ら続かない。


1章 *も ともとやる気がない だいたい 小

(動 機付けが弱 い)

6の 夏 までは、受験生 たちはのんび り構 えてい る ものです。

しか し、 だい たい小

6の 秋 ころにな る と、 どの受験生 も頑張 り出すのは、

合否が リアル に感 じられ るか らです 。 まだ受験 が先 に思 える うちは、 「志望校 の合格」よ りも「 目先 の小 テス ト」 とか「実力試験」 の方が、 はるか に吸引力が強いんですね。 この よ うに、子 ども自身 が勉強 に力を入れ出す までは、「や る気を出せ 」 とか「合格 できる」 とい うお題 目が子 どもの行動を変 えることにつ なが り ません。子 ども 自身が 自発的・ 継続 的に勉強す るよ うになるまでは、子 ど もの出番 を増やすほかあ りません。 や る気 とは、む りや り引き出す ものではな く、その発達を見守 るものな ので す。 では、子 どもが 自分 の 出番 を意識 して 、「よ し、 い っち よや るか」 と思

物 です。 「や る気 」 とい うのは、進 んで物事 をな しとげよ うとす る気持 ちをいい ますが、別 にや りたい わけではないけれ ども仕 方な くや る、 こん な場合 に も「や る気」 は起 こ ります。 しか しこれでは長続 きす る保証 はあ りません。 これに対 して「や りが い」 とは、そ の ことを するだけの価値 とそれに伴 う気持 ちの張 り、です。「 よっ しゃ、や ってみ るか」 とい う気持 ちの張 り があれば、長続 きす る。 「や る気」 があ って も、 そ こに 「気持 ちの張 り」 がな ければ、 よい成 果 を期待 しに くいんです。 心理学者 のアルバー ト・ バ ンデ ュー ラが提 唱す る「自己効力感」 とい う

一    一

あ ま り意識 され る ことは あ りませ んが 、「や る気」 と「や りがい」 は別

一7   一 ′ 一

(3)「 やる気」こ 「や ι lが い」 、あなたはどっぢ ?

えるよ うにな るには どうす べ きか。次節 でみてゆきま しょう。


概念 があ ります。 自己効 力感 とは、 自己 に対す る信頼感、有能感 、あ るい は、 自分 が どの程度 うま く行 えそ うか、 とい う予測 を言います。 「 うま くやれそ うだ」 とい う自己効 力感 が高い人 は、「よっ しや、や って み るか」 と、思考 を行 動 に移す こ とができ、か つ 、努 力を生 む。 反対 に、 自己効力感 の低 い人 は「その課題 は 自分 にはできないか もしれな い 」 と尻 込み して、思考を行動 に移す ことさえできない。 そ して、 自己効力感 は、主 に次 の 4つ の ことが原 因で高 まる、 と言われ てい ます。 第 1に 、達成体験 (121ペ ー ジ参照 )。 スモ ー ル ステ ップで達 成体験 を 積 み重ねれば、 これが 最 も自己効 力感 を定着 させ る といわれてい ます。 い きな り難 しい問題 で四苦八苦 させ るのではな く、現 時点 の レベ ル に適 した 学習 内容 か ら取 り組 ませ る。成績 が伸 び悩んだ ときには、勇気 を もって、 分 か る ところまで立 ち返 ることが必要 です。 ′′

この 習慣が身 についてい な い と、都度 「難 しい」 とい う先入観 が固定 し て しまい、そ うな って しま うとそ の教科がキライ にな って しまい ます。「キ ライで もテス トに出るか らやんなき ゃ」 とい うときは、緊急避難 的 に、途 中の理 屈をす っ とば して、結論 だけを覚 えようとして しまう。本 人 に とっ ては「試験対策の神技」 とで もい うべ きで しょうけれ ども、 これでは入試 に全 く役立 たないです よね (笑 )。 やは りちゃん と理解 す るには基礎 か らちゃん と積 み上 げなけれ ばな りま せん。 第 2に 、 モデ リング (人 まね )。 友達 が うま くや ってい る様子 を観察す る ことで、「 自分 に もで きそ うだ」 と思 う ことで す。塾 の友達 と友好 な関 係 を築 き、人を前 向 きに評価 し、 うまいや り方を真似 る。先輩や兄姉が い れ ば 自然 とモデ リングす るのです が (反 面教師 も含 めて)、 同年代 の友達 をモデ リングさせ る ときは、大人 がモデ リングの対象 となる子 どもを積極 的 に評価す る ことでモデ リングが しやす くな ります。


1章 *も ともとやる気がない

(動 機付けが弱い)

第 3に 、言語的説得。「君 な らできるぞ」 と繰 り返 し説得す る ことです。 ただ、 こ うした説得 だけでや る気を起 こして も、それ はその場限 りにな り やすい ものです。 第 4に 、生理的情緒的高揚。か つて不得意、苦手 、苦痛 だ と感 じていた ことが 、不思議 とそ うは思わな くな った こ とで、 自己効力感が強 め られ る ことが あ ります。テス トの ときはいつ もな ら緊張 していた り、手 に汗をか いていたのに、不思議 とそれ らの現象 がな くなった、 とい う場合 です。 苦 手 な問題 がふ っと解 けるよ うにな った とき もそ うです。意識 してできるよ うにな つたわけでは あ りませんが、深い感慨を覚 える瞬間です。 これ らの第 1∼ 第 4の 実績 の積み重ね によって、新 しい ことに前向き に 挑戦す る ことがで きます。 そ して、 自己効 力感が高 まれば、 自分 か ら課題 に取 り組 む とい う意欲 がみ られ るよ うにな り、行動 の 変化が促 された り、 学習 へ の 自信が高 まるよ うになるわけです。 この よ うに、子 ども自身が「仕方 な くや るか」か ら「よっ しゃ、や ろ う」 ¬ と思 え る よ うにな るには、上 にあげ た 4つ の方法 が あ るわけです 。繰 り 返 しにな りますが、基本 か ら教 えた り (第 1方 法 )、 人 の よい ところを真 似 させ た り (第 2方 法 )、 あ るいは、子 どもに「やれ ばできる」 と説得 す るのです (第 3方 法 )。 ただ、子 どもが反 抗期 にある場合 には 、 これ らの方法 に限界 があるの も 事実 です 。「 どうせ分 か りっ こな いの に」 とか「 うるせ ― 」 って 押 し返 し てきます 。 その よ うな場合 には、 も う少 し子 どもとの距離を縮 めてみ る とい う方法 があ ります。それは次節 でみてゆ くことに しま しょう。

(4)「 やろ気がないのは本人 の責任だ」勝テタラメ ー…親の評価勝子どもの行動を左右する 小学生や中学生だった ころ、運動会で 自分 の出番が回 ってきた ときの緊


張感を覚 えていますか。例 えば リレー 。刻 々 と自分 の 出番 が近 づ き、周囲 の声援 に も力が入 る。 それが プ レッシャー にな って力が出 しきれない こともあ りますが、人 は 一 般 に他 人 か ら注 目され、期待 され る と、「よっ しゃ、や ろ う」 とい う気 持 ちにな ります。 これが 「ホ ー ソン効果」 (人 に見 られ てい る ことが もた らす効果 )と 呼 ばれてい るものです。 具体的 な 内容 は、工場 にお ける調光 が生産性 に与 え る影響 を調 べ る際、 「生産性 に 関す る実験 を行 ってい る」 ことが 被験者 に知 らされていただけ で、工場 内 の光を強めた場合 にも、逆 に光 を弱 くした場合 に も生産性が上 が った、 とい うものです。 つ ま り人 は、「見 られ てい る」 と感 じるだけで「能力 が低い人 間 に見 ら れた くな い 」 とい う心理 が働 き、「 よっ しゃ、頑張 ろ う」 とい う気持 ちに なる、 とい う ことです。 ′´

自分 一 人 だ となかなかモチ ベー シ ョンが上が らない傾 向が強けれ ば強 い 人 ほ ど、「人 か ら見 られ てい る」 とい う感 じがモチベ ー シ ョンア ップにつ ながるので す。図書館や 自習室 でライ バ ル と一緒 に勉強 した方 がなぜか効 率が上が るのは、ホー ソン効果 のためで しょう。 子 どもは特 に、 自分 の 良 い ところは人 に見て もらい たい ものです。悪 い ところは別 として、 とい う条件 つ きですが (笑 )。 ただ、親子の間では難 しい、 と感 じる方 も多 いはずです よね。子 どもは 大 き くな るにつ れて、親 が勉強 に首を突 っ込んで くるのを嫌がるよ うにな ることがあるか らです。 そ うす る と、親 は遠巻 きに子 どもの様子を うかが うしかな い と思 っちゃ う。 しか し子 どもは、評価 され る ことには熱心 に取 り組 み、それ以外 はいい 加減でよい 、 と考える傾 向 があ りますか ら、や っぱ り親 の何 らかの評価 は 必要です。 じゃあ、 どのような場合 に子 どもは親 が勉強 に首を突 っ込む ことを嫌が


1章 *も ともとやる気がない

(動 機付けが弱 い)

るのか。 それは、親 が「結果 だけを評価する」 とい う場合、 つ ま り「私 が 満足す る結果 を持 って来 なさい」 です。 偏差値 が低 い ときには 親 はあ ま り欲がな い の ですが、 偏 差値 が

40→

50→ 60と 上 が ってゆ くにつ れ て、「もっともっ と」 と意地 汚 い くらい に 欲がでち ゃ うのが人情です (笑 )。 ですが、人 は「結果 だけを見 られ る」 と受 け取 る と「厳 しく管理 されて いる」 とい うプ レッシャーを受 け るのが普通 です。調子が良い ときにはほ どよいプ レッシャー にな って も、 ス ランプの ときには とで もキツ く感 じる ものです。 テス トでひ どい結果 を とってきて 、その ときす ごく落ち込 んでいたはず なのに、ほ どな くす る とケロ ッとす る子 どもっていますよね 。 この よ うな とき、大人 の常識 か らすれば、「成績 が悪 けれ ば奮起 して頑 張 るのが普通 なん じゃないの ?」 って思 うで しょ。でも、現実はそんなプ ロス ポー ツ選 手 と同 じよ うにはゆ き ません。子 どもたちは、テス トが終 わ る とともにプ レッシャーか ら解放 されるんです 。 つ ま り、「結果 を見 られ る」 とい うプ レッシ ャー に翻弄 されて、真価 を 発揮できな い ままでい る状態 です。 このよ うな状態 か ら脱 出す るため には、日々 の 勉強 のプロセスを評価 し、 子 どもに分 か りやす いア ドバ イスを与 えることが必 要 です。人 は評価 され ることには熱心 に取 り組み ますが、評価されない ことは手 を抜 くものなん です。 大人 が 子 どもの行動を適切 にフ ィー ドバ ック しない と、子 どもが無駄 な ことをせ っせ とや って しま う、そんな ことに もな りかね ませ ん。 子 どもが困 ってい る ときに助 け舟 を出す ことが できる親 は尊敬 され る。 そんな ことは分 か り切 っているの に、子 どもに「お母 さんは何 も分か って い ない」 なんて言われ る と頭 にきち ゃいますね。 そ こで、 どのよ うな勉強 のプロセスを評価 し、 どのよ うな ア ドバ イスを

′′


す るかについ ては、次章で くわ しく述 べ ます。

rロ

提言

1

<子 こもきエサτ釣 501さ 本当│こ 効果的ガ > 「恥ずか しながら、ウチの子はとても受験をするような状況ではないんで す」 中学受験を視野に入れたものの、塾の先生にこのように言いたい人は多 いものです。子 どもが親の言うことを 聞かない。頑固で意固地。言 い合 い は常に平行線。もうヘ トヘ ト。 でも考えてみれば、子 どもに受験の負荷をかけているから、ち ょつとは 子 どもの意見も受け入れてやろう、 とも思 う。だか ら、たまには友達 と遊 ぶのもよ し、ゲーム も許 してやろう。ただ しそれは、きちんと勉強するこ ′′

とが条件だ。 このように考える親は多 いはずです。 しか し、 この考えは決 して子どものやる気を伸ばすとは限りません。 例えば大人の場合、給料の多寡は仕事に対するモチベーシ ョンに多 くは 1影 響 しません。む しろ、高給をゲ ッ トすると、仕事がおろそかになる場合 :さ えあります。 このような実験があ ります。 お絵 かきに興 じる子 どもたちが いま す。楽 しくお絵 かきを していて、あ れ これ 考 えなが ら、その子 にとつての作 品が仕上 が る。そ こで大人が「よ くできたね」 つて、 ご褒美におや つを あげるとします。 すると、子 どもの関心はお絵かきか らおやつに移 つて しまい、それ以降は、 お絵かきを しな くなるか、あるいはお絵かきがいい加 減になるといいます。 つ ま り、「面白い」 と興味をもつて取 り組んでいた ことでも、 い つたん報 酬 に目が向 くと、それ まで熱中 して取 り組んでいた ことがおろそかにな つ て しまうのです。


1章 *も ともとやる気がない ■

(動 機付けが弱い)

特に勉強 尤 面 白 くな い子 どもにと つて、たまに与え られ る報酬が楽 しみ・■ )`

iに

l身

なれば、 一見 ま じめに塾 に通 つて勉強 しているよ うにみえても、 その中

i

はおろそかにな っている可能性が高 くな ります。

お小遣 いで子 どものやる気 を引き出そ うとす る場合 にも、同 じような現 :

日象が起 こります。

こんな話があ ります。

:

・ 弁護士 を対象に社会的弱者を救済す るために法律相談 の仕事を依頼 した

1

ころ、 無報酬 のボランテ イア と して募集 した場合は何人 もの弁護士が手 i :と を対価 と して募集 した した場合には一 日 口を挙げたの に対 して、わずかな報酬

1人 も引き受け手はなか つたそ うです。

1

つ ま り、金額を提示 した とたんに、や りがいよ りもお金の計算が勝る。だつ │ 日 ■て、お金 の計算のほうが分か りやすいですもんね。 ■ │

i

子どもでも同 じです。

i

勉強 の価値 よりもお金の価値 のほうが見えやすい。だから、お金で子ど │

口 日もを釣ると、子 どもはお金 の方に目がいつて しまい、それ欲 しさに勉強の 1 日や り方がずさんになる恐れがあるわけです。

:

しか し、だからといつて絶対に報酬をあげてはならない、 というわけで

:も ありません。大事なのは、勉強に対する興味もまた、大切に育てればよ : │

いのです。 ■ L

1

´ヨ




(1)「 終わった」で終わる子と、「できた」で終わる子 その 日の勉強が「終 わ った」か らとい って、そ のや った ところが 「でき るよ うにな った」 とは限 りません。 こん な こ とは当た り前なんですが、多 くの子 どもたちは、その 日の勉強 が 「終わ った」 だけで「できた」 よ うな 錯覚 に陥る ことが しば しばです 。 まぁ、学校 の宿題 とか塾 の宿題 とか、や らなきゃいけない ことがた くさ んあるので 、かわ い そ うではあ ります。かわ い そ うですけれ ども、や っぱ り意味のある勉強を して欲 しいですね 。 日本 の水泳界 に次 の よ うな話があ ります。 日本選手 の記録 が伸 び悩んだ ときに監督が、 ゴール 直前で選手 の気 が緩 むのに気 づいた。 それを選手 に告 げる と、 国 ぐちに「そんな ことは絶対 に ない」 とい う声が上 が る。「最後 まで気力・ 体力を振 り絞 っている」 と。 ′σ

しか し選 手 の主 張 とは裏腹 に、確か に直前でペー スは落 ちてい る。 そ こで監督 は、「 ゴール に手 を タ ッチす る瞬間」 を ゴール にす るのでは な く、「ゴール にタ ッチ した後 にす ぐさま振 り返 って タイムを 自分 の 日で 視認す る瞬間」 を ゴール にす るよ うに選手 に指示 しま した。 す る と、伸 び悩 んでいた記録 を塗 り替 えらることができた、といい ます。 ゴールの決め かた次第 で、 自分 が出す ことが できる力に違いが出て くる わけです 。 これは勉強 で も同 じことで しよ。 日々 の勉強で 「終 えること」 を 目標 し ていたのでは、 自分 の本 当 の力 を 出せ てはいないん じゃないか 、む しろ、 「できるよ うになる こと」「本番 で通用す ること」 を 目標 に して、 コ ツ コ ツ 取 り組むべ きなん じゃないか、 とい う ことです。 こん な ことは 当然 な ことなんです けれ ども、親 も先生 も子 どもも、「た だ こなすだけ」 の消化試合 のよ うな 日々にはまる と、努力に見合 った成果 を得 る ことはできないん じゃないで しょうか。


2章 *フ エーズに適 した能力を用いていない そ こで 本章 で は、 日 々の勉 強 につ い て、何 を 目標 に頑張 れ ば よい か を考 えて ゆ きた い と思 い ます。

(2)成 績が不安定なききの 2つ の理由 学習 には フ ェー ズがあ ります。例 えば、「算数 を得意 にす る とい うプ ロ ジェク ト」を想定 して ください。 いきな り「算数 が得意」 にな って、プ ロ ジェク トが完成す る とい うことはあ りません。 始 めの うちは、 プ ロジェク ト全体 (算 数 )を それ よ りも小 さな単位 で区 切 った もの (例 えば数量 とか図形 )を 一つ一つ 潰 してゆき、最終的 に算数 が得意 にな ります。 この よ うな小 さな単位 を一つ一つ 攻略 してゆ く場面 が フェー ズです。 そ して、ほぼすべ てのフェー ズを正攻法 で取 り組み、そ れが定着 した と きに初めて、得意 になる (成 績 が安定す る)の です。 時期 でい えば、小

6の 1学 期 までの間 に受験 に必要 な 内容 を一 通 り学

ぶので、ここまではいろい ろな知識 が ごち や ごちゃして い る、だか ら こそ 、 ここか らが頭 を整理す るチ ャ ンスであ り、反対 に、それ までは成績 が不安 定なま まなのが 自然な ことなのです。 だか ら、成績が安定 しないか らとい って、 び っ くり した り、怒 った り、 悲 しんだ り、あき らめた りしな い ことです。心配 して も何 も変 わ らないな ら心配 しない こと、 です。

成績 が安定 しない理由は、あ るフェーズでまだ「理解不足 である」、あ るいは、マス ター したはずの知識や解法 を「忘れて しまっている」 かの ど ちらか にあ ります。 だか らここにメスを入れる ことだけを考えましょう。 では次項か ら、 これ らの伸び悩みの原因を克服するため に、 フェー ズに 適 した能力 の具体的な伸ば し方をみてゆ きたい と思 います。

′7


(3)受 験勉強に必喜な 「記憶力」のつけ方 ……その ,「 自力で最後きで解き切る」 「成績が安定 しない」とい う場合、その原 因は「忘れ て しまつてい る」か「理 解不足」 かの どち らか です 。 ここでは、「 うつか り忘 れ」 の対処法 につい て考 えます。 「 うつか り忘れ」 の 対処法は 2つ しか あ りません 。

1つ 目は、「一 人 でできるよ うにな るまで解き切 る こ と」です。「そん な こ とは 当た り前」 と思 う人 で も、「いつ も実 行 してい るか ?」 と問われれ ばあや しいのでは ないで しょうか。 有名な「スキナー ボ ックス」ですが、 これは箱 にネズ ミ入れて、ネズ ミ がスイ ッチを押す とエ サが出て くる仕 掛 けですね 。ネズ ミはエ サ欲 しさに、 スイ ッチを押す ことを覚 えるわ けです (道 具を使用 す る学 習づ け と呼ばれ ′′

ます)。 しか し早 とち りしないで くださいね 。① エ サが欲 しい→ ② スイ ッチを押 す こ とを覚 える、 ではあ りません。 正確 には、① エ サが欲 しい→ ② スイ ッチを押す こ とを「繰 り返す」 → ③ 「スイ ッチを押す ことを覚 える」 です。 ネズ ミが エ サ につ られ た こ とは動機 にす ぎませ ん 。「 エ サが欲 しい」 と 思 っただ けでは道具 を使 えるよ うにはな らないので す。 あ くまで、 スイ ッ チを 押す とい う行動 を「 くり返 した」 か ら、スイ ッチ とい う道具を使 える よ うになった (ェ サが手 に入 った)の です。 たまたま「スイ ッチを押す」 とい う容易な作業 だか ら簡 単にエ サを手 に 入れ ることがで きますが 、 もしこれが 「ジ ャンプ してス イ ッチを押す」 と い う高度 な作業な らば 、それは練習 しない とエサを手 にす ることはできな い で しょう。 受験勉強 の場合 は、「 スイ ッチを押 す」 だけで「答 えが 出る」 なんで こ


2章 *フ ェーズに適 した能力を用いていない とはあ り得 ません。 もっ と複雑な作 業 を しない と答 え (エ サ )は 手 に入 ら な いはず です し、い くら答 え (エ サ )が 欲 しくて も作業が複雑す ぎれば答 え (エ サ )を 手 に入れ る ことができない こともあ るで しよう。 だか ら、 自力 で解 けるまで繰 り返 す、難 しい 問題 であればそれな りの 時 間を かけ る、解 く時間が半分 にな る まで繰 り返 し練習す る、 とい う習慣 を 当然 の もの として身 につ けてお く必 要 があ ります。 練習 中 にできない もの は、本番 で もできるはずがないんですね。 これ をや らな い人 は 、「繰 り返 し練 習が必要 な い 」 と思 ってい るか、繰 り返 し練 習を先送 りして しまってい ます。 こ うい う人 は、貯蓄 が下手 で、 借金返済 に熱心な人 です。残念な こ とに、成績 が悪 くなって首が回 らな く なるまで、本 当に大切 な ことに 目が 向 かないんですね。 ただ し、勉強 に対 して意欲 的 で熱 心であって も、先行 きが見 えない場合 もあ ります。問題 の難易度 が上げれ ば上がるほ どこの作業 は必然的 に苦痛 を伴 うか らです。 い くら魅力的な エ サ (例 えば「あの有名校 に合格 できる」 な ど)が あ って も、作業 が困難であればある ほ ど、挫折 しやす い ものです。 苦手 な教科 が誰 にで もあ るように、 この手 の挫折 は誰で も経験のあ る こと だ と思 い ます。 この 場合 には、「繰 り返 し練習」 それ 自体 が好 きになるよ うにす るほか あ りません。 つ ま り、勉強 その もの が好きにな る ことです。勉強 が好 きに なれば、 もはや 一生勉強 しな くて済 むわけです。 この方法 については別 に 述 べ ます (103ペ ー ジ <提 言

… 「

15>参 照

)。

口 提言 2

1 1

<理 解力│さ 人│こ さ。こ異なるガ、理解力│こ さoこ 差│さ Эガない>日 頭がよい人って、 うらやましいですよね。す ぐ理解できちゃう し、問題

i

もスイスイ解けちゃう。人には「理解力の差」があることを、これまで何度ヽ日

′タ


ロ ロに してきたことで しよう 日 1く

しか し、理解力では差はつ きません。いや、本当ですよ。次の図をみて ださい。 ▲ ︹・・・口・・

▲ 二・・・・・・

定着の フェーズ

:

!

← 合 否 を決 めるのは こ こ !

理解の フェーズ

]

す ぐ理解 する人

理解に時間 がかかる人

←時間をか けてでも理 解すれば ハ ンデはな い !

日 日

人 には理解力の差は確 か にあ ります。 しか し、一 度理解 して しまえば、 す ぐ理解 する人も、理解 に時間のかかる人 も同 じスター トラインに立つの

βク

です。 なぜ な らば、入試で は人 が理解 できない よ うな問題 は出ないか らです。 だか ら、理解 に時 間がかかる人 も、それな りに時間をかければ、理解でき 日るようにな ります。 日 「そんな ことはない

!」

と言 う人もいるで しよう。けれ ども、極めようと

iし

ないから、勉強がつまらな くなるんですね。 入試で決定的な差がでるのは、理解力ではな く、理解 したことを入試で

1ち ゃんと発揮できるかどうか、です。

日 理解 したことを忘れ ないように定期的に思い出す。算数があるから社会 日 目ができない、 じゃダメ。 どつちもやるんです 日 。 ■ ・ 子ども自身がこのように腹を くくつたときに初めて、少 しずつ勉強が前

i

日進 してゆきます。 L

i

日 」


2章 *フ エーズに適 した能力を用 いていない

(4)受 験勉強 に必要な 「記憶力」のつI十 有 ……その2「 定期的に思い出す」 さて、「 うっか り忘れ」 の対処法 の

2つ 目です。

試験 や模試、特 に本番 の 入試 では、「 うっか り忘 れ ていた」 とい うイイ ワケ は通用す るはず もあ りません。「 しっか りや つたはず だ」 とい うの も

NGで す。 「 うっか り忘れ」 の人 に共通 してあてはまるのは、「今勉強 してい る こと が試験 に出る可能性があ る」 とい う ことに対す る関心や危機感 が とて も薄 い とい う ことです。 試験 で問われやす い重 要 問題 は、 1回 や 2回 や っただけでは本番で は通 用 しません。 いつ 出題 されて も良い よ うに、①定期 的 に思い出す よ うにす る、 あるいは、②す ぐに思 い 出せ る状態 に してお くことが必 要 です。 脳 の記憶 は変化 してゆ くものだか らです。 例 えば、算数の場合 よ うに思考力 が必要なフ ェー ズであれば、定期的 に 「定期 的 に」とは、問題 に翌 日、2週 間後、1ケ 練習す る必要があるで しよう。 月後、 2ケ 月後 の 日付 を書 いてお くとか、や った 回数 だけ「正」 の字を書 いてゆ く、な どの方法があ ります。 また、知識 の整理が必要なフ ェー ズであれば、 図表 な どに整理す る こと が有効 です。既製 の 図表 な どを利用す るな らば、それを定期 的 に反復 しな ければな りませ ん。

1回 お さ らい した人 と、 10回 おさ らい した人 とで本番 の 点数 の 開 きが 出るのは当然なんです。 この作業 を しない人 は、あい まいな記憶 を頼 りにそ の場 の とっさの思 い つ きで勉強 しますか ら、深 い感慨 もなければ、発見 もあ りません。 だか ら、 自分 の力を試験 で試 した くもな くな るのです。 大事 なのは、試験 の点数 が悪か った ときに、「 これはでき る」「 これはで

′′


きない」 とい うふ うに、 自分 の能力 に限界を設 けない こ とです 。 確かに理解力 については個人差があるものの 、時間をか ければだれで も 分か るよ うにな ります。人 に頼 ってで も理解 して しまえば 、天才 も凡 人 も 同 じスター トライ ンに立 ってい ます 。 そ して 、勝負 はそ こか らです。 「記憶 力が悪 い」と嘆 く必要 はあ りません。 「 どれ くらい できるよ うにな っ たか」「 どれ だけ覚 えたか」 に注 目 して しま うと、「記憶力が悪 い」 とな り がちです。 そ うではな く、「 どれ だけ忘れていたか」 に注 目して、「何 回復 習すればいいか」 を客 観的に見定 める こ とが 大切 です。 試験 で差がつ く理 由は、自分 の頭を いつ もメンテナ ンス してい るか否か、 にあるので す。

r―

________.

提言 3 β12

<復 習 す る回数 の決め 方 > 塾で しつか り勉強 してきたにもかかわらず、家庭で解き直すとかな り時 間がかかつて しまう、忘れて しまった、ということはょ くぁります。塾でいっ たい何を学んできたんだろうねえ、です。 このようになるのはよ くあることです。 日 │ 1

ピアノとか英会話などを習 うときもそ うですが、先生と一緒に勉強 した

ことは、その場ではできた ような気持ちにな ります。 しか し、その場を離 れればす ぐに 「分かるけれ ど、できない」 │こ なつて しまいます。進歩は じ │ ているはずなのに、その進歩が後で実感できないんです。 │ 教える側 としては同 じことを何度も説明するのは物理的に難 しい場合も あ りますか ら、教わ つた ことを 自分のものにするシステム を自己責任で作 つ ておかないと、 成果が上が りに くいのです。 この点が小学生の場合、優秀な子 どもの成績が上が らない大 きなポイン


2章 *フ ェーズに適 した能力を用いていない

ロトの 1つ になつています。

しか し、多 くの子 どもたちはこのこ とに気づいていませ んか ら、「分かる 日 けれ ども、できない」 とい う状態の 中で、大 きな喪失感 に苛 まれ ます。 し かもその苦痛を乗 り越える快感が分か つてい ないか ら、「も うやだ」 となつ て しまうことにな りかねません。 日 ですか ら、「習 つた翌 日、その 日か ら 1週 間後、さらにその 日から 1ケ 月 日 後、最後 にその 日か ら 2ヶ 月後、合計 4回 は復習する こと」をきちん と実 日 行することです。 この ように、形式的に割 り切 つて実行するのが一 番ラクです。 ただ し、必 ず 4回 やる必要があるとい うわ けではな く、反対 に 4回 以上 やらなければな らない場 合もあるで しょう。 本番で通用する学力の形成 は、通 常、次 のよ うな 4段 階の経過をた ど り ます。第 1に「教わつてできるようになった」、第 2に「できそ うだけれ ども、 │

分か らない」 とい う状態、第 3に 「よ く考 えれば、 できる」状態 へ 、そ し

日 │

て最後に「考 えな くても、できる」 という状態です。 最終段階の「考えな くても、できる」「ス トレスな くできる」 という状態

日にも つてい くまで繰 り返 せ ばよいので す。 この繰 り返 しに必要な回数 が、日

1教 科や分野によって異なるわけです 。 日 │

:

提言 4

<定 着 0て いる問題ここうこない問題0選 別方法 >

日 │

模試の結果をみてみると、案外基 本的な事柄で間違え ているのが見受けら

日 れることが あ ります。 日 │ : :

この とき子 どもに理 由を聞いてみると、「単純 ミスだ よ」「次は大丈夫」 と

いう返事が返 つて くるものです。 人は、 自分の 「悪い現状」 は直視 した くないの と同時 に、「将来の 自分」│

gヨ


日には期待する傾向 があ ります。 自分 は正 当化 したい し、未来はき っとょ く 日 1な る、と思えるからこそ、今を耐え忍ぶ ことができるんですね。

子どもだつて同じです。今の自分が全 くダメだ、なんて思いたくないで

: 日

:す

よ0 しか し、安易に 「できる」と思い込んで、本番で泣 くのは自分自身です。

1

│だ から、本領を発揮 できるようにしてあげな くてはな りませんね。

そこで、本当に苦手な分野を洗い出す作業を手伝 ってあげましよう。 │ │ 勉強 は、すでにや つたことの復習から始めるのが原則です。足場が固まつ ていないと、次のステツプに進むのにものす ごく苦労 して、勉強が嫌 になつ て しまうからです。 ですので、勉強 は通常、難易度によつて次のステツプで進めます。 ①す ぐできる問題 ②少 し考えればできる問題 ③時間をかければできる問題

ヨイ

④全 く手が出せない問題 この①∼④の順序で勉強 してゆ くと、驚 くべ きことに④までた どり着か ずに終わってしまう人 がなんと多いことで しよう

!

④ の問題が正答率数 パーセン トのような超難問であれば別ですが、そ う でない限 り、できないところをできるようにするのが勉強のはずです。 つ ま り、②の問題も①の レベルヘ、③ の問題も①の レベルヘ、そ して④ の問題も①のレベルヘ もつていくことが勉強なんです。 ですから、①→④の順序で解説 を見ながらでも一通 り理解 したら、今度 は④→①の順序で定着 を図らないといけないのです。 もちろん、す ぐできる問題 はもはや練習する必要 はあ りません。 しか し、 自分 はできると思 つていたのにテス トではできない問題 を見逃 して しまう │ │と

大変な ことにな ります。

│ そ うい う問題 はたいて い基 本問題 ですか ら、合否 に直結 して しま うか ら


2章 *フ ェーズ に適 した能力 を用 い て いない

日です。

そ こで、定 着 している問題 とそ うでな い 問題を どの ように して見分 ける 日 日

i

まず、子 どもに問題 を読ませる、そ して、正解である自信がある問題 に

1は その問題番号 に○ を つ ける、 自信 がなければ何 も印はつ けない、そ して │

1解 く、5∼ 10分 考えて手が出ない問題 はとばす、同 じ要領で、次の問題 に 日 1進 む。

す べ て解 き終わ つた ら、答え合わせを します。する と、 自分ではできる :

・ iは

ずだと思 つていても、意外とできない問題があることに子ども自身が気 i

lづ きます。

日 日 そ して、問題番号に○がついていて、かつ答えが正解であ つたものは復 │ 1習 の必要があ りません。そうではな く、問題番号に○がついていたのに不 │

正解であつた場合 と、正解に自信がなかつた問題は 4回 復習する。 このよ うに手伝 つてあげると、試験 の直 前に有効な対策ができるで しよ う。 また長期的にみ ても、持 つているテキス トの全部をやる必要 がな くな るため、効率的に復 習をする ことができます。 問題番号に○印

採点結果

判定

○印あ り

正解

復習の必要な し

不正解

4回 復習

不正解

4回 復習

○印な し

ただひ とつ だけ、注意 していただきたい ことがあ ります。それ は、復習 の中身 (復 習 のや り方 )に ついて、です。 例えば、 このよ うな問題があ ります。

「半径の長さ尤いずれも 1 )`

0cmで ある 2つ の円 Aと

Bが ある。円 Aを 固定 し、

円 Bを 滑らないように円 Aの まわ りを 1周 させると、円 Bは 何回転するか」 この答えは 2回 転にな りますが、仮にこれを 4回 復習 したとしても、答 えを暗記 しただけでは本番に通用するはずはありません。

g5


なぜ 2回 転 になるのか、円 Aの 半径がも つと長 くなつたらどうか、ある 1

日いは円 Aの 内側を 1周 させたときにはどうなるかな ど、思いつ く疑問を一 日 :つ ひとつ解消 してゆ く過程で本当の基礎 (原 理 )が 身につ くのです。

:

よ く「応用 問題が解 けない」 とい う話を耳に しますが、それは 「難 しく

i

日 「 つていないか いか ら」 、 きそ ら」 なのではな く、 基本が分か うもな 能力が届 1 1て

日つま り「 どのように考えればいいかを分かつて い な いから解けな い」、なの 日 日です。 ・

基本が分か つていれば、 見方を変えて問われても答 えられるはずで しよ。

i反

対に、見方を変えて問われても答えることができれば、基本が分かつて ことにな りますよね。

1い る

1

ですから、復習するときにはただ丸暗記するのではなく、復習するたび

1に 何か しらの発見があることが望ましいのです。

4日 嘔■

βび

IFヨ

DE

"嘔

<睡 眠 0役 割 > 小学生の睡眠時間に つい て、小学校では、低学年だ と 9時 間以上、高学 年だと 8時 間以上が 目安だ と指導 されるようです。 つ ま り、だいたいで言 えば、低学年 には夜 9時 までに寝て朝 7時 には起 きる、高学年 になると夜

10時 までに寝て朝 7時 には起きることにな ります。 しか し、 なかなか この通 りにゆかない ことが 多 いで しょう。現実 には、 「第 1回 子 ども生活実態基本調査報告書 (Benesse教 育研究開発 セ ンター (2005))」

によれば、睡眠時間が 8時 間未満の小学生は 2割 います。

ただそ うであ つても、睡眠の効用を理解 して、原則 と例外を取 り違えな いようにする ことは大切です。 おおまかに言 うと、睡眠には次のような効果があるとされて います。 人の成長 ホルモンは睡眠中に活発 に分泌され ますか ら、寝る子 は育ちま


2章 *フ ェーズ に適 した能力 を用 いてい ない

:す 。

日 睡眠には免疫力を高める作用があ りますから、夜 更か しが度重なると風 │ │

i邪 日

をひきやす くな ります。 睡眠 には疲 労を回復 させ た リス トレスを解消する働 きがあ りますか ら、

1睡 眠不足 だ と体のだるさを訴えた り、集 中力が低下 した り、イライラ した 日りします。 そ して、睡眠は一 時的に入 つてきた情報 を長期記憶 と して保存させる機 能があ ります。 しか しただ寝ればよいとい うわけではあ りません。 例 えば、勉 強 した後 にテ レビを見た り漫画を読んだ りして新たな刺激を 受けると、せ つか く勉強 した内容が頭に定着 しに くいのです。「あれ、今 日 何を勉強 したつけ ?」 です。 ですので、勉強 したらさつさと寝ればよいわけです。 塾の宿題 が終わ らず に心配 な ときでも、や つぱ り健康が優先 ですよね。 それでも心配な ときは、「も しかの法 則」 で気を しずめて ください。「これ しかできなか つた」ではな く、 「こんなにもできた」です。よか つた、よか っ た∼、明 日も頑張ろ∼、 つてね。 子 どもの成績 を上げるには、 しつか り勉強するの と同時に、親は十分な 睡眠を取 るよう子 どもに指導すべ きである、 これが原則なんですね。

提言6

<記 憶 │こ 定着 じせ る06、 「員 けないここ」 > 兼好法師の『徒然草』の百十段に次のような記述があります。『双六の上 手といひ し人に、その手立を問ひ侍 りしかば、「勝たんと打つべからず。負 け じと打つべ きな り。いづれの手か疾 く負けぬべ きと案 じて、その手を使 はず して、一 目な りともおそ く負 くべき手につ くべ し」と言ふ。 』 意味は大概次のよ うなものです。双六の名人 と言われる人にその必勝法 日

′7


■ ・ を聞いてみたと ころ、「勝ちたいと思 つて打 ってはいけない。負けてはな ら iぬ

と思 つて打たな くち ゃいけないのだ。 どんな打ち方 を した ら、たちまち i

l負 けて しまうかを予測 した ら、その手 は打たないでおいて、た

とえ 1マ ス :

日でも負けるのが遅 くなるよ うな手を使 うのがよい」 と答 えた とい うもので 日

:す 。

i 口

受験でも この考え方 は一緒だと思いませんか ?

i

「勝 ち」だけに目が向 いていると不安定な受験生活 が続 いて しまいます。日

1つ ま り、「早 く成績を上 げたい」 と強 く願 えば願 うほ ど、そ してあせればあ │ :せ るほど、「守 り」が急激に弱 くな り、結局は成績が下がるんです。

:

受験 で い う「守 り」 とは、理解 した ことを記 憶 に定着 させる、です。忘 :

:れ

ない ことが、負けない こと、なんです。ふだんの学習が この点に忠実で 1

1あ るかどうか、が勝敗を決する と言 っても過言ではあ りません。 L ′′

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(5)理 解不足を克服する 思考力で記憶力をカバーする」

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子 どもの能力を伸 ばす とき、その能 力 に「思考力」が含 まれ るのには異 論 がない と思います。 しか し、いざ「思考力 とは ?」 と問 われ る となかな か答 えづ らい ものです。 思考力 とは、観察や記憶 によって頭 の 中 に蓄 え られた内容をい ろい ろ関 連付 けて、新 しい 関係 を作 り出す能力、を いいます 。 つ ま り、演繹 した り、 帰納 した り、類比 した りす る能力の ことです。 何 で も覚 えてお く力 (記 憶力)だ けの勝負ではあ りませ ん。 受験勉強 は、 もの ごとを 関連付 けて考 える力 (思 考 力 )も 大 きな武器 です。 そ こで 、「成績が安定 しない」 とい う場合、そ の 原 因 は「忘れて しまっ てい る」 か「理解不足」 かの どち らかが原 因です が、「理 解不足」 を補 う 方法 は 2つ あ ります。 それは 「思考 力」 と「質問力」 です。


2章 *フ ェーズに適 した能力を用いていない ここでは、まず「思考 力」か らみて行 きたい と思 い ます。 勉強を粘 り強 く続 けてい るうちに、急激に成績 が伸 びることがあ ります。 それ は学んだ個 々の事柄 を点 として と りあえず理解 したものが、後 にな っ て線 とな ってつ なが り、 つい には 3次 元 とな って 知識体系 が立 ち上 が る よ うな ものです。 それ には理 由があ ります。「事象 の 連合」 とい う現象です。 サル に「届かな い位置 にあるエ サ を棒を使 って取 る」 とい う行動を覚 え させ る ときは、すべ てを一 度 に教 える ことは しません。 まず「棒を使 えば エ サが取れる」 ことを教 え、それがで きるよ うにな った ら「短い棒 よ り長 い棒 の方が届 きやすい」 ことを教 えます。 そ して 、「棒 を使 えば エ サが取 れ る」 と理 解す るまでに どうして も数週 間は要 しますが 、それが習得できさえすればそ の 日の うちに、短 い棒 で長 い棒 をた ぐり寄せ て、長 い棒を使 って遠 くのエサを取 る、 とい う組み合わ せ ワザ も覚 えて しまい ます。 この よ うに して、 2つ の ことを 覚 え る と、後 は 2,4,8,16,32… と等比級 数 的 に成果が現れ る (Aと

Bを 理解 す る と、Aか ら見 た B、 Bか ら見 た A

も理解す るようにな る)、 これが 「事象 の連合」 と呼ばれ るものです。 この よ うな「事象 の連 合」を起 こす ためには、 2つ の コツがあ ります。

1つ 目の コ ツは、「パ ッケー ジカ」 です。つ ま り、1題 1題 の 問題 に全 力投球 を してすべ てを理解 しよ うとす るのではな く、1つ の単元な り章 だ てを ま とめて理解す るよ うにす る ことです。 例 えば速 さ と比 について、「 この 問題」が解 けな いか らとい ってその間 題 で足踏 みす るのではな く、「速 さ と比」 とい う単元 を とりあえず一通 り や る。分か らなければ、 もちろん解説 をみなが らで もや り通す。 確 か に、「 この 問題 が分 か らなか った ら、次 の 問題 も解 けるか どうか不 安 だ」 とい う気持 ち も分 か ります。 しか もその 1題 に、重要 なポイ ン トが 含 まれているか も知 れ ません。

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しか し、それで は木を見 て森 を見ない よ うな もので、少 な くとも受験上 は、 もの ごとを 多面的 に見 る練習 として時間がかか りすぎます。 とりあえ ず、1単 元 は一 気 にや り通す ことが早道です。 そ うして 1巡 した ら、あ とは考 えな くて も解 ける くらいにな るまで繰 り 返せば いいので す。 この繰 り返 しの過程で、点 と点 がつ なが って線 とな り 体系的知識 となってゆ くので す。 「要約力」 と「比喩力」です。何 とな く理解 で きなか っ 2つ 目の コ ツは、 た り覚 え られなか った りす る ときは、「つ ま り∼ とい うことだ」 とか、「例 えば∼ とい う こ とだ」 とい うふ うに、 自分 の言葉 で説明できない ことがほ とん どです。 既知 の 知識 に 関連 づ けな い と未知 の 知識 は増 えてはゆかない。 しか し、 小学生 は既得 の知識量が とで も少 ない。実は このジ レンマ を乗 り越 える こ とが、成功す る大 きなポイ ン トにな ります。 `θ

も し子 どもに「つ ま りそれ は どうい う こと ?」 「例 えばそれ は どうい う こと ?」 と尋ねた ときに、子 どもが答 えに窮す る ときは、高い確率でそれ に 関連す る知識 が抜け落ちてい る可能性があ ります。 「つ ま り」「例 えば」 小学生 の場合 にはそ もそ も知識量が少ないですか ら、 が言えるよ うに教 えた り、調 べ させ る ことが とりわけ重要なんです。 この 過程 を通 じて、「何 が核心 か」 とい う問題意識 が芽生 えて きます。 思考力は「 も ともとあるかないか」 ではな く、 徐 々に育 つ ものなんですね。 論語述而第 七 158か ら「啓発」 とい う言葉 が生 まれ ま したが、一つ 開 くと次か ら次 へ と連鎖反応が起 きて、意識 の拡大作用が起 こる ことに なる。 これが「啓発」の真の意味です。正 しい 問題意識を持 つ とそれが起爆剤 と なるわけです。 いつ も言 われ た通 りの ことだけを こなすだけではな く、「 自分 の言葉 で 考 え、 自分 に正 直 に、そ していつ もなぜかを考 える」 とい う主体的な態度 を伸ば してや りたい ところです 。


2章 *フ ェーズに適 した能 力を用 いていない

(6)理 解不足を克服する ――その2「 質問力をつl■ る」 理解不足 と言 っても、ち ょっ とした気 づ きが足 りず、「解 けない」「分か らない」 ものは どうして も出てきます。 その場合、質問す るほかあ りません。 しか し、 この「質問す る」がや っかいなんですね。質 問 について考 える とき、「なかなか質問に行 けない」 とい うとっかか りの 問題 と、「質 問 して も解決 にな らない」 とい う内容 の 問題 があるか らです。 「なかなか質 問できない 」とい う場合、その理 由はい くつか考 え られ ます。 例 えば、わざわざ質問す るほ どの ことか どうか分か らな い 、疑 間 に思 うの が 自分 だけか も しれない、質 問 したか ったけ ど質問す る内容を忘れた、な どがあ るで しょう。 しか し、人の脳 は、すでに獲得 した知識 に 関連付 けて考 えない と理解で きない よ うにな ってい るんです。反対 にい えば、関連付 けによって、1つ の疑間 が 10の 知識を生 むのです。 だか ら、す べ てにおいて、理屈 が説 明で きるよ うにな らなければ、「で きるよ うにな った」 とはいえない、 こ うい う心持 ちで勉強 して欲 しいので す。 そ うでな い と、ぜんぶ 暗記 に頼 り、ち よっ と考 えただけで瞬間的 に感覚 で答 えを言 って しま うレベ ルの ままにな っちゃ う。 それで もなお「なかなか質問できない 」 とい うな らば、それは質 問す る 相手 との人 間関係や子 どもの心構 えな ど、複雑 な問題を解決す る必要があ ります ので 、別 に述 べ ます (141ペ ー ジ参照 )。 次 に問題 になるのは、質 問 に行 って も解決 にな らな い場合 です。 これは、 教 える側 の説明 の巧拙 の 問題 だけに 目が向か いがちですが 、実 は、質問す る側 の 質 問 の仕方 の巧拙 も同 じくらい大 問題 です。質 問 の仕方 によ って、

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答 え方が決 まるか らです。 指導者 を選 べ るよ うな環境であれば 、 い ろいろな先生 に間けば よいので すが、質 問す る子 ども 自体 は変 えるわ けには行 きません。その意味で、しっ か り質 問す る力 (質 問力)を つ けてお くことが大切 なのです。 もっ とも困る質 問は、論理的でな い質 問です。質 問 している側 が、 話 し てい る途 中に 「い ったい何 を聞きたか ったのか」 を混乱す る、 こん な場合 です。 この よ うにな って しま うのは、 質 問 と日常会話を混 同 しているか らです。 特 に論理的な問題 についての疑間につ いては、考 えた過程を整理 してか ら 質 問す る必要があ ります。 そのためには、「紙 に書 いて質 問す る」 のが一 番 です。 算数 でいえば途 中式を書 いて持 って行 く、記述問題 では答案を書い て もってゆ く、です。 も し分か らない 問題 があれば、その問題 を切 り貼 りして、 「間違 い ノー ト」 イ′

を作 てお くことで、苦手 な問題 を放置す る ことが な くな ります。 こ うす る ことに よって、だれの 目に も弱点が分 か ります し、間違 いやす い傾 向 もは っ き りします。 この よ うな習慣 を つ くり、論理的 な 「質 問力」 をつ けてお くと、誤解・ 読み飛 ば し 。分か ったつ も り、を取 り除 くこともで きるようにな ります。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ロ ー ー ー ■

提言 7

<勘 違いガ起 ころ理由 > 勘違 いには、図のような「入カ ミス」「判断ミス」 「動作 ミス」があ ります。 入カ ミス、判断 ミス、動作 ミスのい ずれ も、小学生 にはよ く発生するも のです。 これ らの ミスを他人が い ちいち修正 していたのでは、 多 くの労力 や時間を浪費 して しまいます。 だか らといつて、 これ らの ミスを放 置する ことはできません。


2章 *フ エーズに適 した能力を用いていない ですか ら、子 ども 自身が これ らの ミスを 自分で発見で きるように してお │ くことによって、 ミスの発生を最小 限に抑える ことが必要です。そのため

には、質問力を鍛えることが欠かせな いんですね。 情報捕捉

(○

と書きなさい)

日 入カミス

(○ ではなく△だと聞こえた)

意味理解 (△ と書けばいいんだな) 記憶された 経験 。知識

1 1

日 ――――――●

判断 ミス 判断

(□

とは□のことだ)

(△

1 1

と書 こう)

1

動作 ミス (□ 実行

と書 こうと思ったが、×と書いた)

と書いた) イヨ

提言 8

<イ ンプ ットこアウ トプ ット > 学習 の しかたには、インプッ ト型 とア ウ トプッ ト型があ ります。 インプッ ト型の学習法 には、教科書・ 参考書を読 む、書き写す、調 べ る、 人に教わる、まとめる、などの方法があ ります。 これ らの方法を組み合わせて、 一応 の理解を 目指 します。ただ ここで得

1ら れる成果は試験本番で通用するか どうかは分か りませんので、アウ トプツ 卜の練習が必要にな ります。 ア ウ トプ ッ ト型の学習法 には、 問題 を解 く、人 に教 える、問題 を作 る、 討論をする、発表 をする、などの方法が挙げられ ます。 これ らのアウ トプ ツ ト型の学習法をみると、日常の学習では「問題を解 く」 くらい しかできないのではな いで しょうか。そ うだ とすると、吸収 した知


■ 識が試験 で通用するか どうかを確認するためには、 問題を解いた り試験を 目

i受

けた りすることが中心にな ります。

i

目 すると問題になるのが、不理解が判明 したとき、です。 1 日 この とき、一般的には「先生に質問する」ですね。先生に質問 して解決 │ 目すれば、それで問題はあ りません。

しか し、苦手教科の場合 には、ち ょっと質問 した くらいで解決するはず │ はあ りません。 しかもひ どい ときには、質 問すれ ばするほど不明な ことが・ ■ 増えて、その教科がますますキライになつて しまいます。

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こうな つて しまう前に質 問力をつ けてお くことが非常に効 果的です。

アウ トプ ッ トの学 習 の場 面 (実 戦力があるか どうかを確認する場面)で │ 「ひたす ら問題を解 くだけ」ではな く、思考の過程を紙に書いて、先生に添 │ 削を受 ける。そ して、先生か ら「その考え方は正 しい」 とい うお墨付 きが │ もらえた ら、すごく自信がつ くんですね。 イイ

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もちろん、ひたす ら問題 を解 くだけで コツが身 につ くフ ェー ズもあ りま i

す。 しか し、苦手な分野で、かつ思考力が必要な場面では、 しつか りした 1考 え方を身につけることが必要です。

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(1)「 いきすぐやる子 」こ 「あこでもやらない子」 日々の勉強 で「や らなければな らない こと」 って何 ですか ? 試 しに、親子別 々に「や らなければな らない こと」 を書 き出 してみて く ださい。その結果、子 どもが書 き出 した こ とよ り親 が書 き出 した ことのほ うが多か った り、子 どもが分か ってい なか った りした ら、ちょっ と注意

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「あんた、なぜや らないのよっ (怒 )」 です (笑 )。 もちろん 、その原 因を子 どものや る気や能力や性格 のせいに して も、話 が こ じれ るだけで、何 の 改善 もあ りませんね 。 子 どもをつい 叱 って しまうのは、人 の責任をあげ つ らう方が、 自分の責 任 として受 け止 めるよ りず っとラクだ か らです。 横山やす しさんの元 マ ネー ジ ャー だった大谷 由里子 さんが著書 で、 次 の よ うな話をされてい ま した。 当時、芸人が舞台 に立 っているの を裏 で腕 を イφ

組 んで見 ていた ところ、先輩か ら「マネージ ャー な ら、袖 の裏か らで も手 を 叩 いて、大声 で笑 って、 タ レン トを盛 り上 げ るのが仕事 じゃないのか」 とた しなめ られた、 と。 腕を組んで「あれ、できたの ?」 「 これ、どうな っているの ?」 とチ ェツ クばか りしていた 自分 を恥 じたそ うです。 親や先生 もマ ネ ー ジ ャー と同 じか も しれ ません。子 どもの本領 を発揮 さ せ よ うと思 う、その気持 ちはあるけれ ども、実際の行動 は現 実 とかみ合わ ない こ とがあ る。 人 は不思 議 な もので 、や らなければな らない ことが分か っていて も、 「や る」「できる」 とは限 らないので す。 つ ま り、人 は優先順位 の高 い ことか ら手をつける とは限 らない。子 ども も大人 も、みんなそ うです。す べ ての人が先延 ば しの 問題を抱 えてい る。 だか ら 「す ぐや る子 」であるのは とて も望 ま しい こ とではあ りますが、 「あ とで もや らない 子」 であ ることのほ うが、む しろ普通 なのです。


3章 *思 考を行動に移すことができない 問題 は、 ど うす れ ば子 どもが思 考 を現実化 す るか、 です。 そ こで 本 章 で は、子 どもが思考 を行 動 に移 す仕 組 み作 りを考 えて ゆ こ う

と思います。

(2)途 中で終 わ ってもいいから 「きずや る」 中学受験 を志 して塾 に入 る とや るべ き ことの 多 さにび っ くり します。学 年 が上が るにつ れて、それ は顕著 になってゆきます。 これに対 して、小学校 で もらって くる宿題 は、 一 気 に終わ らせ る ことが できます。 この 「一 気 に終わ らせ る」 とい う爽快感や達成感 が体 に しみつ いてい るぶん、塾 の宿題 はよけい に辛 く感 じる ことにな ります。 このよ うに、人 がや るべ き ことを先延 ば しにす る、や らなければな らな い と分か っていて も行動 に移せ ない 一つ の理 由 は、「や り切 るには時間 が かか りそ うだ (め ん どくさい)」 「や り切 るのは疲 れそ うだ」 です。 つ ま り、す ぐに終わ らな い ことの優先順位 は低 くな るんですね。イ ヤな 教科、 たまった宿題 のよ うに、 一 気 にできない ものは後回 しになる。 これに対す る対処法は、「まず手をつ ける」 です。 ドイツのゲシュタル ト心理学者 であるクル ト・ レヴィンは「 ツ アイ ガル ニ ク効果」 とい う現象 がある ことを示 してい ます。 ツアイガル ニ ク効果 と は、人 は達成で きなか った事柄や中断 してい る事柄 のほ うを、達成 できた 事柄 よ りもよ く覚 えてい る、 とい う現象 です。 人 は正解 の ゴールに到達 した達成感 よ りも、そ の途上にあ る高揚感 に心 「記 は沸 き立 つ もので、その高揚感 ゆえに現在取 り組 んで いることに対す る 憶」 は忘れに くいわけです。 ですか ら、イヤ な科 目や たまった宿題 で も、「す ぐ全部 で きないか らや らな い」 ではな く、 とりあえず手 をつ ける。 す ると、全部 は終わ りませんが、そ こがツボです。気持 ち悪 いか ら、ちゃ ん と終わ らせ なきゃと思 う。全 く手をつ けな い ままズルズル と先延ば しに

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す ることに比 べ れば、 大進歩 です 。 しか も一度手 をつけた ものは、次 回取 り組む ときにスムー ズに始 め られ る こ ともあ ります 。 ただ この方法 による ときは、 2つ 、注意が必 要 です 。 まず、や りっ放 しにさせない こと。 つ ま り、記憶が 鮮明な うちに、次 の 行動 に移 るこ とができる よ うに支援 しな くてはな りません。 例 えば 、次 は どこまでやるのか 、 目標を立 て させ る。 もちろん 、その 目 標 は達 成 されな くて もよい。 しか し努 力が 目に見 えるよ うにす るために、 達成 した ときは カ レンダー に★

2つ 、未達成 の ときは★ 1つ を書 き こん

であげる。 この よ うに して 、少 しずつや れば壁 を乗 り越 え られ ることを学習 できれ ば 、大収穫。す ぐ行動 に移 せばよい 、 とい う話が 説得力を もつ ことに もな ります 。 イ′

2つ 目は、子 どもが全部や り切 るまで監視 した り、や り切 らなか った こ とを理 由に子 どもをな じった り、 バ カに した りしない こ とです。 子 どもが行動 を起 こさない理 由は「めん どくさい」か らです。それなのに、 全部 や らなか ったか らとい って評価 されないので あれば、子 どもは「や っ ぱ りめん どくさい」 となって、余計 に動かな くな って しまいます。 行動を起 こさない子 どもが行動を起 こ した ときは 、最後 まで全 部やれば ラ ッキ ー 、そ うでな くて もラッキー なのです。 もちろん最後 までや り通す ことが 目標 ですが 、 「行動を起 こす こと」と 「最 後 まで完 遂す る こと」 とは対処法が別物です。後者 につい ての対処法 は第

5章 で述 べ ます。

(3)こ れをやっていいか分からない――パックラット症候群 さて、終わ るか どうか分か らないけれ ども、 と りあえず行動を起 こす こ とが大事。それ じゃあ次 に、何 をすればいい か、が 問題 ですね。


3章 *思 考を行動に移すことができない 今や学習教材 は塾 に書店 にイ ンター ネ ッ トにあふれかえっていて、 どれ に手 をつ けていいか分か らな くな りますね。苦 手 な分 野が克服 できずにい る ときには特 に 困 ります。 低学年か ら受 験対策 を してい る人 は 、それ までの教材 を集 めてみれば、 まるで万華鏡を見 るよ うな気分 になるの ではないで しょ うか。 実 は この 「何か ら手 をつ けていいか分 か らない」 が、ズバ リ「す ぐに行 動 に移 せない理 由」 です。何をす るかを選 べ なければ、そ もそ もす ぐに行 動 に移せ るはずがないですか らね 。 ところで 、なぜ教材がたま りにたまってゆ くか とい うと、人 の評判を聞 いて手 に入れた り、塾 で手 に入れ た り、兄弟姉妹、親 戚、友人か ら手 に入 れ た り、あ りがたい ことにい くつ もの経路があ ります。 しか も、良さそ うな教材をあれ もこれ も取 りそ ろえると、何 か完璧 で無 敵 になったよ うでヮ クヮクす るもので す。 ところが い ったん 教材 を入手 す る と、 容易 には 手放す こ とがで きな く な って しまい ます 。人 は「失 うか も しれない もの」 について は、その価値 を過大 に評価 して しま うものだか らです

(こ れを「所有意 識」と呼び ます )。 つ ま り、せ っか く手 に入れた教材 を手放す と考 えただけで、不思議 な こ

とにす ご く損す るよ うな気分 になるん です。 余談 ですが 、オ ー クシ ョンって あ りますで しょ。 ォー クシ ョンでつい熱 が入 って しま うのは、 所有意識 の一 種 です (仮 想的所有意 識 )。 所有意識 は、 現 に手 に入れ る前 の段階で も現れ る強い感 情なんですね。 だか ら、入塾 試験 で合 格通知 を もらうと、そ の塾 に入 る確 率 は とて も高 くな っち ゃ う (笑 )。 話を元 に戻 しますが 、手 に入れたテキス トの価 値 を過 大 に評価 して しま う、そんな感 情 に支配 されてい る状態が、 パ ックラ ッ ト症候群 (モ ノが捨 て られず 、 どん どんため込んでゆ くネズ ミのよ うな性癖 )な んですね 。 しか もや っかい な こ とに、教材 をため こん だために選択肢 が 増 える と、

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くる くると目移 りして しま うん です。 長期的 にみれば、 1冊 の メイ ンテキス トを しっか りや り込む のが よい と 考 えるのが合理的な はずです。勉強 は本来やればや るほ ど知 らな い ことが 増 えるものですが、受験 に限 ってい えば、学校別過去 問題集 と教材を絞 る ことで、やれ ばや るほ ど知 らな い ことを減 らす ことができる。 しか し、 日先 の成績 が動揺 した り、 目に見 えて効果が上が らな い と、 つ い他 のテキス トに手が伸 びて しま う。 将来現れ るか もしれな い素敵 な異性を待 つ よ りも、身近 な異性 に魅力 を 感 じやす く、しか もそれがあたか も正 しい ことだ と後 にな って正 当化す る。 これ と同 じよ うな ものです (笑 )。 しか し現実 問題 として、子 どもが活用 していなか った り、あるいは活用 できて いない 、 となればガ ッカ リです よね。何度、 こんな思いを してきた ・ (苦 笑 )。 ・ ことか・ 5´

こんな ときは、 た ま りにた ま った教材 を整理 す る こ とが必要 にな るで しょう。 合理的 に考 えれば、同 じ内容 が重複 している教材や、す でに見返す必要 のない教材は い らな いはずです。反対 に、理解の助 けになる教材 や、知識 を補 うため の教材 は必要です。 ですか ら実 は、教材 をい ろい ろ仕入れてみ る ことは 悪 くな いんですね。 完璧 な教材 なんてあ りません か ら、い ろい ろな本か ら良 い とこ取 りすれば いいはず。 だけ ど、良 くな いのは 、 ため込んだまま放 ってお くことです。 や りたい こと、や らせたい ことを増ゃ しただけだ と、結局 は何 もやれな くなる。 ぶ つ う食材 を買 って くれ ば、 それを加 工 し、適切 に保存す るで しよ う。 買 っただけで、それを放 っておけば腐 るんです。教材 も同 じです。 必要な部分 は、既存 のメイ ンテキス トや ノー トに書 き写 した り、 コピー した りして残 した ら、後は思 い切 って捨てる (必 要 か どうかを判 断す る方


3章 *思 考を行動に移すことができない 法は、 33ペ ー ジ <提 言 4>を 参照 )。 コピー する場合 には 、あ らか じめ大 きさを 決めてお くとよいで しょう。 塾 の 多す ぎる教材 も、 同 じよ うに整理 して、 自分 だけの教材を作 るのが よいで しょう。 も し迷 って捨て られそ うにないのであれ ば 、それは押 し入れに しま うな どして 、子 どもの 目には触 れ させ ない よ うに してお く。「いつかや って く れ るだろ う」 とい う期待 は、必ず裏切 られ ます。 この作業 ができる人が い るな らば、抱 え込 んだ参考書や問題集 に も意味 があ ります。 しか し反対 に、 この作業 をす る人が い ないのに参考書や問題集を抱 え込 んでい るな らば、む しろ有害。教材をため込 んだぶんだ け何か らやれば分 か らな くな る し、教材費が 「お 布施」 とな って消 えち ゃ うだけです 。 ただ し、 この作業 には とて も時間がかか る場 合があ りますか ら、定 期的 に、 しか も学 校がな い 日にや るのがよいで しよう (132ペ ー ジ参照 )。

(4)す ぐにこιlか かる準備ができていない 子 どもに「勉強 しな さい 」 って言 えば 、「 うん、分 か って る」「や るよ」 なんて 、そ の ときばか りの返事が返 ってき ます。 しか し実際には、 10分 、 20分 と、勉 強 の 開始時間はず るずる と先 延ば しにな りがちです。 しか も、いざ勉強 し始 めたか と思 えば、教材 を机の上 にば らまいたまま、 何 ともま ぁ、要領 の得 ない こと。 これ じゃ ぁ、イラッとくるの もしかたな いですね。 しか し、叱れば また またいつ もの バ トルになる。 だか ら とい って、す ぐ始 めな くて よいわ けはあ りませ ん。 そ こで、子 どもが す ぐに勉強 に と りかか る こ とができ るよ うな仕組 み づ くりを 3つ 、 考 えたい と思います。 まずや らなければな らない ことは、勉 強 に 関係 しない ものは子 どもの視

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界 か ら消滅 させ ることです。 いろい ろな ものが 目に入 って しま うと、つ い 楽 しそ うな ものに関心 が 向 いて しま うか らです。 そのためには、大 きめの箱 を用意 して、 マ ンガやゲーム な ど今か らす る 勉強 に直接 関係 ない ものは片 っ端か ら この箱 の 中 に放 り込 んで ください 。 1∼ 2分 もあれば完了。捨 てるわけではな く、使 うとき には取 り出せば済 む話 ですか ら、子 どもの抵抗 も少な くて済みます。 しか も、後 々になって いつ までも取 り出されな い ものは何 らかの形で処 分すれ ばいいので、結局 は部屋がす っき りします。 まず は、勉強 に関係す るもの以外 は子 どもの視界か らな くして しまい ま しょう。 そ して次 は、や るべ き ことを リス トに してお くことで す。 子 どもに 「勉強 しなさい」 と言 えば、子 どもは 「や る」 とい うのが普通 です。 なぜな らば、大雑把 な問 いに対 しては、あ ま り考 えな くて も答 えや 5′

す い ものだか らです。「旅行 に行 こ うか」 とい えば、別 に細 かい ことは言 わな くて も、子 どもは「行 く、行 く」 と言 うの と同 じです。 だか ら、子 どもが「 うん、勉強す る」 って素直 に返事 を したか らとい っ て、す ぐには勉強 し始め るわけではな いんです。 そ こで 、や るべ き ことをす ぐやれる よ うに リス トを作 っておきま しょう。 リス トの典型例 は、「 自動車 の車検」 です。 自動車 の修理 はか つて 、所 有者 の 申告 によって個 々の修理・ メ ンテナ ンスを都度 に行 ってい ま した。 しか しそれでは、なされ るべ き修理 がなされな い ことがあ り、それ は同時 に 自動車 工 場 に とって の機会損失 とな って しま う。 そ こで 自動車 工場 が 一つのパ ッケ ー ジ として定期的な「車検」を考案 し、 現在 に至 った と言われて い ます。 小学生 の勉強の場合、機会損失 を被 らな いよ うにす るためにす る リス ト 作 りのポイ ン トは、①す ぐとりかか る こ とができるものか ら順 に配列す る こと、そ して、②普段の勉強 と試験前 とを区別す る こと、 の 2点 です。


3章 *思 考 を行動 に移す ことが できない いきな り困難 な課題 か ら取 り組 も うとすれば、当然手 は 出 に くくなるの が人情です。いた しかたあ りません。 だか ら、す ぐに とりかか る ことがで きるものか ら順 に とりかか る。 そ して、普段 の勉強 と試験前 の勉強 とは 、範囲は違 いますか らリス トの 内容 も当然異な ります。 中学生や高校生 であれば、学 校 の定期試験があるので、 自然 と勉強 にメ リハ リがあ ります。 これ に対 して、小学生 の場合、学校 の定 期試験がない せいか 、普段 の勉強 と模擬試験対策 としての勉強 の メ リハ リがつ きに くい ものです。 確か に塾 は小テス トを しては くれ ます。 しか し、毎 回授業で小 テス トを して くれ るか ら大丈夫、 とはゆかないのが現実です。 模擬試験 は 自分 の学力をメ ンテナ ンス す るよい機会 ですか ら、試験 日の

2週 間前か らしっか り準備 してお きま しょう。 なお、 リス ト作 りの具体的な内容 は 133ペ ー ジを参照 して ください。 さて、す ぐに勉強 に とりかか るための最後の方法 は、机 に 向か っている とき以外 に も勉強 になる、あるいは勉強 のきっかけになるよ うな環境を作 る ことです。 例 えば、 覚 えが悪い ものは紙 に書 き出 して壁 に貼 っておきます。 日常 よ く目につ くと ころに貼 っておけば、 繰 り返 し目に入 る ことが期待 できます。 そ して、だいたい覚 えた らそれをはが してフ アイル し、また別 の紙 を貼 る。 これを繰 り返 してゆけば、 自分 だけの 暗記 ノー トが完成 し、後 々思 い 出す のが楽 にな ります。

(5)「 うちは旅任主義よ」では子どもの真価勝発揮されない 「 うちは勉強 については放任主義で、子 どもが 自主的に勉強 してい るわ」。 ウソで もこんな こと言 ってみたいで すね。 しか し現実 には 、子 どもの 自主性 にゆだねていたのではあま り成果 は上

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が らない よ うです。 しか もそれは子 どもに限った ことではあ りませ ん。次 の よ うな実験 があ ります。 大学生 に レポ ー トを課 す際 に、 〆切 を課 した グル ー プ とそ うでな い グ ル ー プでは、〆切 を課 したグル ー プの方が平均 して優れた成績を収 めたそ うです。 それは、〆切を課 されなかったグル ー プは、 レポー トの提出を先延 ば し に して 、結局 はあわてて課題 を仕上 げたためで しょう。 つ ま り、子 どもに限 らず、大学生や大人でさえ、だれで も先延 ば しの問 題 を抱 えてい るわけです。 ですか ら、中学受験生 であって も、 日々の勉強 の ペー スを子 どもの 自主 性 に任せ ておいたのでは、大 きな成果 を期待す る ことが難 しいのです。 だ とすれば、小学生 に対 して も適度 な〆切を課す ことによって 、子 ども が真価 を発 揮す るよ うに手助 けを してあ げ る ことは必要 だ と考 え られ ま ´″

す。 具体的 には、〆切 には、時 間的な もの (期 限を区切 る)と 、物理 的な も の (分 量を区切 る)が あ ります。時間的な〆切 については、 スケ ジュール の立 て方 (132ペ ー ジ)に あるよ うに、時間的な枠組みを与 えるのです 。 これ に対 して、物 理 的 な〆切 につ い て は、 リス ト作 り (133ペ ー ジ ) で対処す る ことができます。 ただ、 ここで完壁主義 に陥 らない ことが大切 です 。 ま してや、〆切 を守 らなか った ことを理 由 にペ ナルテ ィを与 える ことは禁物 です (97ペ ー ジ 参照 )。 予定 はあ くまで予定 に過 ぎず、常 に現実 とのす り合 わせが必要 だか らで す。 まず実行 してみてか らでない と、効 果 の上がる進 め方をつ かむ ことが で きないんです。子 ども自身が「 これな らできる」とい う実感をつ かむ まで、 じっ くり寄 り添 ってあげる感覚 で付 き合 ってあげ る ことが大切 です 。



(1)何 のために、それや ってたの ? 子 どもが勉 強 してい るのを見ている と、 確 かに勉強を しているよ うに見 えるんですけれ ども、「そんなんでいいの 」 と首 をか しげた くなる ことが あ ります。 例 えば 、 ノー ト作 りを していてそれにハマ って しまい、 まるで芸術作 品 を作 ってい るかのよ うな場合。 あるいは、解 けるまで延 々 と時間をかけて解 こ うとす る場合。 特 に算数 の場合、式 を書 かない ことは論外 ですが、単 に式を書けばよい とい うわけではあ りませ ん。書いた式 の意 味が混乱 して分 か らな くなる こ とがあるか らです。計算 して出 した数 値 は速 さなのか時 間な のか、あ るい はそれがだれ に とっての速 さなのか時間なのか。 ト ーーー 5`

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だか ら、ボ タンを掛 け違 えたまま先 に進 まない よ うに、式の途中経過 に は必ず出 した数値の意 味な り単位を必ず書 く。検算を した り、問題文を読 み返 して必 要 な条件を見逃 していないかをチ ェックす る ことも必要な作業 です 。 なのにい くら言 い 聞 かせ て も、式を書 かない。単位 も書 こ うとしない。 くしゃ くしゃっと書 いて 簡単 に答 えを 出す。 これ らの よ うな場合 で も、子 どもは確かに勉強を してい ます。そ う、確 かに勉 強 は しているんで すが、「それ じゃ進 歩な い じゃない」「いったい何 や ってんの よ」 って突 っ込 みを入れた くな ります よね。 ただ実 際にツ ッコ ミを 入れ る と、頑 固な子 どもほ ど「 うるさいな」 って 顔 されちゃい ますけ ど (笑 )。 面 白いのは、 日常的 に不経済な勉強方法 を繰 り返 してい る本人ほ ど、そ の状態 に慣 れ きって しまい 、別 の効果的な勉強法を考 えた り想像 した りす ることができない。現状 を よ く知 る人 ほ ど、それ以外の ことを考 える こと が苦手 なんです。


4章 *最 終結果に対 して関心が薄い 確かに勉強 は してい るわけですか ら、全 くムダだ とは言い切れないか も しれ ません。 しか し、 よ り合理的に判 断すれば、 も う少 し方法 を改善でき るはずです。 だか ら、「成績 を上げ る」「入試 で合格 す る」 とい う最終 日標 か らあま り にかけ離れて い る場合、特 に頑張 ってい るけれ ども成績 が伸びない場合 に は、軌道修正をす るチ ャンスを与 える必 要があ ります。 本章 では、 このよ うな問題点 について考 えてゆ こ うと思 い ます。

(2)賢 者は愚者からも学ぶが、愚者勝賢者からも学ばない ―一人のアドバイスを武器にせよ 学校や塾 のセ ンセイ に、勉強 の仕方 を ア ドバ イス され ることはあ りがた い ものです。合格 とい う最終結果か ら現状をみれば、 よ り効率 的な学習を 進 める ことができるか らです。 しか し現実 問題 として 、ア ドバ イス して もらった勉強法を子 どもが 自分 の もの とす る ことは、 たやすい ことでは ないので す。 それは「現状維持 バ イ アス」 がかか っているか らです。 現状維持 バ イアス とは、未知 な もの、未体験の ものを受け入れず、現状 は現状の ままでいたい とす る心理作用 の ことです。 も し今の勉強法を変 えた ときに、「めん どくさい」「やや こしい」 とい う コス ト (負 担 )が かか るな らば、その コス トが大 きければ大 きいほ ど現状 に しがみつ こ うとす る。 あるいは、勉強法を変 えた としても大 した コス ト はかか らな いが 、現状 と大差ない よ うに感 じれば、現状に とどまろ うとす るわけです。 算数 で式 を書 きなさい と言 って も書 かない。 間違 いはノー トにま とめな さい とい って もや らない。 このよ うな子 どもが実 に多 いのです。 よ り良 い結果 を追求 しよ うとす るな らば、誰か ら見ても現状 を変 えるの が合理的な場合 であって も、本人 に とっては現状 を変 えないほ うが妙 に説

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得的 に感 じて しま うのです。 しか も多 くの 人 は、 自分 に都合 が悪い ことには フタを して、「将来 は今 よ リマ シだ」 と考 えやす くな ります。 自分 のプライ ドを守 りつつ 、 よ り良 い未来 を信 じて疑わな いので す。 だか ら、「 この ままで もうま くい く」 と考 えて 、意 固地 にな ります。合 理 的 に考 えれば、「現在」 を変 えない と「よ り良 い 未来」 もないはずなん ですけ どね。 この よ うに、「現状維持 を決 め込 む」 → 「将来 に期待す る」 → 「 この ま まで もうま くい く」 とい う判 断は、受験 とい う最終結果を考 えれば どうみ て も不合理な場合があるにもかかわ らず、多 くの受験生が 自分 自身、十 二 分 に納得 した上 ではまってゆ く落 とし穴なんです 。 そ して、その先 に待 ってい る現実 は、勉強の質 も分量 もコ ンデ ィシ ョン も日々変化 し、上か ら降 って くる課題 に振 り回 され、無駄 な努力を費や し J′

続 けてゆ く、 とい うもの。 かわいそ う、で しよ。ホ ン トに。 しか しここであせ って、「あなた入試 で失敗 す るよ」 って子 どもを脅 し て も、ほ とん ど効果 はあ りません。 例 えば、 10人 の生 徒 に 向 か って「 この

10人 の うち、1人 だけ不合格

にな るで しょ う」 と伝 える と、 自分 が不合格 にな る確率が頭 を よぎって、 心配 にな ります。 これ に対 して、 1対 1で 向き合 って「あなたは不合 格 に な るで しよう」 と高 い確率 を伝 えれ ば、「そん なはずはない」 って 開 き直 るものです。 これ も自己防衛本能 に基づ く反応 とい えるで しょう。 そ こで、現状維持現 バ イ アスを上 手 に回避 して、キチ ンとした勉強習慣 を身 につ けさせ るためには、「なぜ現状維持 バ イ アスにはまるのか」 に立 ち返 って対策法を考 える必 要 があ ります。 現状維持 バ イ アスにはまるのは、 (A)新 しい 勉 強方法を受 け入れ るの に大 きな コス ト (負 担 )が かか る場合 と、 (B)コ ス トはかか らないが現


4章 *最 終結果に対 して関心が薄い 状が とて も良 くなる とい う見込みを感 じない場合、この 2つ の場合 で した。 まず

(A)の 場合 は、い きな り改善方法 を完壁 に真似 る ことを要求す る

べ きではな く、週 1回 か ら隔 日、そ して 日々へ とい うふ うに、徐 々に慣れ させ る必要 があるで しょう。 あま りに急激な変化 は、混乱 と失敗 を招 きます。 しか し、無意識 にでき るよ うにな るまで見守 らな くてはな りません。 これに対 して (B)の 場合 は、ビフ ォー・アフター テス ト(160ペ ー ジ参照 ) を実施す るな どして、その勉強法の効果 を実感 させ る必要があ ります。「そ れ までで きなか った問題 を最後 まで解 く ことができた」「解 くス ピー ドが 速 くな った」「す ぐ覚 え られ た」 と実感 で きれば、子 ども自身がその勉強 法を 自分 で工夫 して使 うよ うになるで しよう。

提言 9

<指 示0出 0方 > 子 どもに対 しては 日常、「部屋を片付 けなさい」 つて「短い命令言葉」で せつつい て しまいがちです。 ところが後で部屋をのぞ いてみると、「ち ゃんと片付 けなさい つて言 つた じゃないの」なんてことにな りがちです。 これは、指示の出 し方に問題があるんですね。 例 えば、「机を拭きなさ い」ではな く、「机の上 の水分がな くなるように 拭きなさ い」 と言えば、子 どもには結果 が想像 しやすいか ら、指示通 りの 行動をとる ことができる。 同 じよ うに、「部屋 を片付 けなさい」 ではな く、「遊び道具が 目に入 らな いように片付 けなさい」 とい うふ うに目的をは つき りさせれば、子 どもは 自分な りに手段を考えて、親の期待に答 えることができる。 また、子 どもに して欲 しくない ことがあれば、 子 どもに選択 をさせ る、

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・ とい う手段 もあ ります。例 えば、子 どもがテ レビも見たい し、ゲーム も し ・ い とき、「 どち らかを 30分 だけ しなさい」 と指示する。子 どもは 自分 な iた i りに判断 して段取 りを考えるで しょう。 日 日 1 大切 な ことは、子 どもを 「モノあつかい」 しない ことです。「モノあつか │ │い 」 とい うのは、機械的に作業ばか りさせることです。「これ とこれをや り │ ■なさい」「 なぜや らないの」「だか らあなたは」・…、 こん な ことを連発 して・ ■ │ た ら荒み ますよ、だれだつて。効率はあつても、教育はな い。 iい i l 子 どもが 自主的に考 えて行動す る よ うに、 家庭 内での指示 の 出 し方 に 日 :ち ょつと工夫を加えてみてはいかがで しょうか。 1

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(3)ホ を見て森を見ようとしない子どもたち ――過程に事中にな っτしきう びθ

子 どもの勉強の様子を見ていると、成果や結果を意識せずに、過程に夢 中になって しまう場合があ ります。主 に次 の 4つ のタイプです。 ① ノー ト作 りを指示す ると、カラフルですばらしいノー トを作 ろう とするタイプ ②知 らなかつた ことは図鑑で調 べ るように指示すると、脱線 して余 計な ところにまで関心を持 って しまうタイプ ③読書が好きで、勉強時間を削ってでも読書にいそ しむタイプ ④問題が解けるまで途方 もな く時間を費やすタイプ これ らのタイプのように、過程に夢 中になって しまう場合、ムダに遠回 りしているように見えるので、何 とかな らないか、 と思 って しまいます 確かに、受験の過程を経験 した人か ら見ればそ う思 うはずです。結果か ら必要な学 習量を逆算できますから。 しか し反対に、い くら勉強する時間があっても、気分がのっていなけれ ば、形は勉 強 していても、頭 の中が真 っ白なんて ことはザラです。それに


4章 *最 終結果 に対 して関心が薄い

比べ たら、過程に夢中になる子 どもは有益な精神活動を している分、進歩 があるはずです。 問題 は、効率です。 まず①のタイプ。子 どもがノー ト作 りに一所懸命 になるのは、その科 目 に対す る自信や不安を補お うとするためです。だか ら、あれ もこれも盛 り 込みた くなる。 しかも、他人 もそれが素晴らしい ものだと評価 して くれる ものだ と思い込んで しまいます。 ところが、自信が強 まるに従 って、 自然 とノー トに書 く分量 は減ってゆ くんです。 自分が補わなければならないポイン トが絞 られて くるか らです ね。 そのようになるため には、子 どもがノー トを作 ったら、 1日 1回 はノー トを見る習慣をつ けさせる ことがポイ ン トです。 ノー トは見返すため にある、 とい う ことを子 どもに教えるのです。そう すれば、ノー トの作 り方 も自分で工夫するようにな ります。大人が もっと もらしいノー トの取 り方を教 えようとするより、はるかに簡単で、効果 が 上が ります。 キー ワー ドにマー 次 に② のタイプ。図鑑 にはまり込んで しまう場合 には、 クす るように指示 します。例えば、動植物 の分類、物理 の原理な どです。 もともと図鑑は知識を整理す るものですから、 目次 と照 らし合わせて読み 込めば、それ だけで受験対策にな ります。 次 に③ のタイプ。読書に必要以上 の時間を割 いている子 どもに対 しても キー ワー ドに注 目して読み進めるとともに、できるだけ早 く読むよう指示 します。 例 えば、論説文 や説明文では、「∼ ではないだろ うか」 とい う筆者 の間 いかけは必ず といってよいほど設間にな ります。 しかもそ こが形 を変えて 他 の設間 として登場するのです。 小説文や随筆では、登場人物 の気持 ちに注意 して読 ませましょう。 この

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「気持ち」 とい うのは、本音 。本心、つ ま り自分でもいかん ともしがたい 感情です。つ まり、隠 しきれない愛情や嫌悪な どですね。 このよ うな 「筆者から読者 へ の問いかけ」や「登場人物 の心の叫び」を 捉 えなが ら読む と、早 く読めるようになるんです。 次に④のタイプ。 このタイプは本番の試験でも時間切れにあって、実力 を出し切れない ことが多い ものです。そ してこのタイプがやた ら時間がか かって しまうのは、 普段 の勉強で「できる こと」 にばっか り意識が向いて、 「できない こと」 にはほとん ど意識を向けないか らです。 だか ら解けないことが とでも悔 しく感 じて しまうのです。 そのため この タイプの子 どもには、できる こ との確認 とできないことの 確認をセ ッ トで勉強するようにア ドバイスするべ きです。 もちろんその具 体的内容はすでに述べ たことです (33ペ ー ジ<提 言 4>参 照)。 トーーーーーー σ′

「最後 まで答 えを出せない と意味がない」 のは本番 であって、普段 の勉 強では少 しで もそれに近づ けるよ うに学習す ることが大切 なんですか ら ね。 以上 のように、子 どもが過程 に夢中になっているときは、それを制止 し た りせず、その努力を効率的に実 らせるようなア ドバイスを しましょう。

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提言 10

<手 段 こ目的 > 今現実に取 り組んでいる ことは、「手 段」で しようか、それ とも 「 目的」 で しようか。 あま り普段 は意識 しない ことで すが、 この 2つ の関係 を意識 することは重要です。 例 えば、今 や つている算数 の勉強 を手段 と考 えれ ば、中学入試 は 目的。 しか し、中学入試が手段だと考えれば、大学受験は目的。 はたまた、大 学受験が手段 だ と考 えれば、就職 は 目的、 とな ります。就


4章 *最 終結果に対 して関心が薄い ・ 職が手段な ら、や りたい ことが 目的 となることで しよう。 │

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このよ うに、手段 と目的を互いに入れ替えなが ら、階段を上るように人

日は成長 してゆきます。 1 しか し、 も し今現在や つていることが 目的にな って しまえば、 目の前の 日ことが 100%の もの とな つて、現在 においては 自分 のやるべ き ことの範囲 :を 見失 い、将来的には無気力感 に苛 まれる ことにな りかねません。 日

つま り、今現実 に取 り組んで いる ことは手段ですが、それ は目的とい う

:枠 内で の行動 にすぎないのです。反対 に、 目的 とい う枠がな い行動 には効 1率 もなければ沸き立 つ躍動感もあ りません。

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日々の課題 に振 り回されたまま受験 を終えた小学生の中には、 中学 に進 しても向上心を示さないケースがあるのがとても多 いものです。

ーツの試合で いえば、何が何 だか分からない うちに試合に勝 つちゃつ ロ スポ 1た ような場合、勝 った ときは うれ しいけれ ど、勝 った ことが次の試合 に対 日 日 目する自信 にはつ ながらないんですね。受験でもこれ と同 じなんです。

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日 そ うな らないためにも中学受験 の場合、まずは偏差値 5の 上昇を目指 し、

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れに必要な ことだけに絞 つて徹底 して取 り組む。それに成功 したな らば、i

日 :そ のコツを生か してさらに 5ポ イン トアツプを目指すo 1 小学生 には言葉ではまだ難 しすぎる話ではあ るで しよう。だか ら こそ、日 1目 的を持 つ ことが、現 在 の活動 を活発化 させる と同時に、将来 の希望 をさ 日 :ら に高み に押 し上げるものなんだ、 とい うことを 中学受験 をきっかけに体 :

で覚えて欲 しいのです。 ■ ]夢 は果たすものではな く、追 い続 けるものなのです。 L

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(1)集 中力こ持続カ 勉強 では「集 中力・ 持続力」が入 り口です。 この 入 り口を通 らな い と、 勉強 がはか どりません。 ところが集 中力・ 持続力 は、意識の問題や環境 の 問題 な ど、複数の要 因 が競合的 に関わ りあって、 ついた り消 えた りす るものですのですか ら、多 くの受験生をて こず らせ ます。 優秀 な子 どもで も集 中力・ 持続 力 で失 敗 す るケ ー ス は次 の 3つ です。

1つ めは、集 中状態 を作 り出せ な い こ と。「よ し、や るぞ」 と思 えない か ら、 だ らだ らして しま う。学校 も塾 もない 日な ど、 1日 を まるごと棒 に 振 って しま う こともあ るで しょう。 この よ うな ときに、 どの ようにすれ ば 集 中状態 を作 り出せ るか、が問題 です。 そ して 2つ めは、集 中状態 を邪魔す るものを排除できな い こと。脳 は 2 つ 以上 の ことをいっぺ んに考 えることはできないので、集 中 したい こと以 外 には注意が向かない よ うにすればいいのです。勉強 していて も気が散 っ て どうも勉強がはか どらない ときは、 どうすれば一つの ことに集 中できる か、が問題 とな ります。

3つ めは、集 中状態を維持 できない こと。根気がな くて途 中でギ ブア ッ 「やめたい」の板 ばさみにあ っ プ して しま う ことが あ ります。「や らね ば」と て、 つ い根負 け して しま う。 このよ うな ときは、 どうすれば集中状態を維 持できるか、 が問題 とな ります。 そ こで 本章 で は、集 中力・ 持続力 を上 の

3つ の フ ェー ズ に分 けて整理

してゆ きます。

(2)集 中状態を作 ‖出す方法 ―― 「よし、やるぞ」こ思えない場合 ①眠いと「よし、やるぞ」とは思えない


5章 *集 中力・持続力が弱い 寝 ていない と集 中 で きるはず もあ りませ ん。 あ ま りにも眠か った ら 10 分∼

15分 寝 るだけで も頭がす っき りします (36ペ ー ジ <提 言 5>参 照 )。

Qロ ユ鳳L壼 虫上 生 じコと_[」二L_主登 ぞ」_と匙 1豊 LlL5_量僣盤 」饉 豊ぬ塗 Lュ 日々の学 習で、や るメニ ュー とゴールが見通せ ない と「 よ し、やろ う」 とは思えない ものです。それは霧の中を進んでゆ くよ うなものだからです。 気分 だけの問題ではあ りません。見通 しが立っていない と、やるべ き勉 強量をつい過小評価 して失敗 して しま うものです。 つ ま り、見通 しが立たないまま手をつ けてみると、段取 りが悪 く時間が やた らとかかる。そ うして最後 までや り通すことができる確率が低 くなっ て しま うのです。 だか ら、勉強の計画は集中力を出すために必要なんです。学習計画の立 て方は 8章 で述べ ていますので、参考に して ください。 この とき注意すべ きことは、勉強計画を時間で見積 もらない、 とい うこ と。つ ま り、今 日は 4時 間、明 日は 8時 間勉強す る、で満足 してはいけ ません。同 じように、「午前は習い事、午後は勉強」、で計画 したつ もりに なってはいけません。 結局、ムダやムラがあって、満足な成果をあげ られないか らです。 勉強計画は、 「時間」で見積 もるのではな く、 「や るべ きもの」で具体的 に見積 もって ください。

Q塑 塾董直 捏 翌 堕 五 日々の学習内容 の見通 しが立 っても、なかなか実行 に移せない ときは、 やる気を視覚化するのもよい方法です。 例 えば、写真法。 子 どもの家庭での様子をデジカメで 2通 り撮影 しておきます。1つ は、 ダラダラとテ レビを見ている様子。 もう 1つ は、机 に向かって勉強 してい

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る様子です。 そ して 、 この 2枚 の 写真 を額 縁 に並 べ て入 れて、い つ も 日に入 る とこ ろに置いてお く。 す ると子 どもは、 どち らの行動を選択す るべ きか、瞬時 に判断する こと ができます。 もう 1つ の方法 は、 バ ン ド法。 その 日にや るべ き ことを書 いた腕 バ ン ドを用意 してお き、それが終 わ る まではず さない よ うにす るだけです。 課題をやれ ばバ ン ドをはずせ る、 とい う爽快感を期待 す ることができま す。 しか し、強制的にバ ン ドを つ けさせて も効果 はあ りませ ん。あ くまで子 ども自身が 自発的 にや らない と、虐待 にな りかね ませ ん (笑 )。

(4)「 か ん た ん に 終 わ る

!「 す ぐ終 わ る

│と 思 え な い と 「 よ し、 や る ぞ │と

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は思えない 大掃除 って 、 一気 に済 ます とたまらな く爽快 です よね。 この爽快感 のせ いか、毎 日少 しずつ掃 除す るのはおっ くうな ものです。 子 どもの場合、学校の勉強 は一気 に終わ らせ ることがで きるので、そ こ か ら得 られ る爽快感を体 で覚 えているものです 。だか ら、 コツ コツや る こ とにちょっ とした抵抗感 があ るのが普通 です。 ですので、受験勉強 とな る と、や らなきゃな らない こ とが山積みで、い つ か魔法の よ うに片付 いて くれ る ことを願 っているものです 。 だか らす ぐ や らない (笑 )。 中学受験 の 場合 にけ っ こ う軽 視 され てい るん じゃない か と思 うのです が、勉強す る ときに気合い 。根性・ 努力が必要 だった り、作業量が多す ぎ るな どして、ス トレスや不安 を感 じる と、小学生 は動けな くなるか、動 い て も中身がなか った りす るものです。


5章 *集 中力 。持続力が弱い 勉強 の ことを考 えただけで体調 を崩 す子 どもだ っているんです よ。本格 的な受験 の初心者 ですか ら、当然 です。 中には、子 どもが勉強 でさぞか しス トレスをため込んでいるのを察 して 、 たまには レス トランでお食事 を、休 暇 には旅行 へ 、 と工夫 されてい るご家 庭 もあ ります。 確 かにそ うす る こ とによって 、子 どもには気分 転換 にはな るで しょう。 しか し、そ うしたか らとい って 、子 どもが一 層勉強 に精を出す よ うにな る ことは稀 です。親 のス トレスは解消 されるで しょうけれ ども (笑 )。 向上心 のある子 どもに とっては、勉強のス トレスは結局、勉強 で しか返 す ことはできないのです。 ですか らまず、勉強 ス トレスを減 らす ことで 、記憶力・ 集 中力・ や る気 を高めてあげる必要 があるのです。 具体的 には、や るべ きことを小分 けにす る、つ ま り、 1時 間 の勉強 よ り、

20分 を 3回 のほ うが簡単 に思 えるんですね。 分量 でいえば、「 まず は 2ペ ー ジだけ終わ らせ る」 と考 えれ ば、 取 り組 みやす くな るはずです。 内容 でい えば、 まず「習 った ところの復習 か ら始 め る」です。 この「習 った ところか ら始める」 は絶対 におススメです。 しか も、でき るだけその 日にや ってほ しい。 この 点 は、優秀な子 どもが失敗 しやすい 鬼 門です。特 に算数 についてはよ くあてはま ります。 中学生 の場合、例 えば連立 方程式 を習 った とします。たいてい宿題 とな るの は、「類題」 とか 「練習問題」 で、その実質 的 な内容 は授業 でや った こととほぼ 同 じです。単 に数 字 を変 えただけだか ら、教わ った方法をあて はめればそれで済み ます。 しか し小学生 の算数 は違います。例 えば授業 で「速 さ と比」 を習 った と します。そ して 中学生 と同 じよ うに「類題」 とか「練習問題」 が宿題で出 された として も、その実質的な内容 は授業で習 った 内容 とは別物 にみえる

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ことが多 いんで す。 例 えば文章題 では、「変 わ らない ものに注 目す る」 とい う ことが重要 な ポイ ン トなのですが、それを見抜 けない と式す ら立 たないのです。 だか ら算数 の場合、 図を描 いた りしてイ メー ジ しなが ら解 くよ うに指導 され るわけです 。 授業や例題 ではそのイ メー ジ化 の しかたを学ぶ はずですか ら、 まずは教 わ った通 りに復習す るのが一 番 ラクで、 しか も効率 的な方法 です。 国語で もや は りすでにや った素材 で も、復習す るべ きです。何 も、授業 で与 え られた答 えを また書け、 と言 っているわけではあ りません。 設間 とその よ りどころ とな った本文を マー カー で引 くな どすれば、授業 で習 ったポイ ン トが よ り鮮明に理解 できるで しょう。理科や社会 で も同 じ です。 失敗す る子 どもは、 一 度や った ことを三 度や ろ うとしない傾 向 があ りま Z´

す。 しか し二 度や らないのは、その重要性が分 か っていないか ら、そ して 早 く宿題を終 わ らせ たい と気持 ちがはやるか ら、です。 しか し実 際は、すでにや った 内容 か ら順 に取 り組 んだ方が、結局 はラク だ し効果 も上 が ることを教 えてあげていただきたいのです。

Q塵塗ゴ宣堂L」 m2上 L主 と」 二上二 _主壁白_とLEL≧ 上上 主 いつ までた って も机 に 向かお うとしな いわが 子 を見 る と、「あなた、受 験生で しょ。 自覚 しなさい」 って思 いますよね。 そ りゃ、 当然です よ。 自覚があ るな ら、や るはず です もん。 社会人で も、 会社や仕事 の ことを ウダウダ文句言 った り、 人 の上 げ足 とっ た りす る人 っているで しょ。あれ も同 じなんですね。 自覚 がない。 しか しそん な レベ ル の人 で も、 も し社長 にな った らそ うはゆきません。 顧客 との対応 の仕方、経費 に対す る見方、勤務態度 に対す る考 え方、すべ てにおいて

180度 変わ るのです。 これが 「 自覚」 です。


5章 *集 中力・ 持続 力が弱 い だか ら、「 も しも 自分 が社長 にな った ら」 と考 える ことは、視界 を広 げ て くれ るんですね。 「受験生 としての 自覚」、つ ま り 「勉 小学生 の場合、かな り多 くの子 どもに、 強が第 一 優先 で、 しか も成果 を上げなければな らない」 とい う意識 が欠 け てい る とい っていいで しょう。 自分 が 何者 か分か ってないんです。 だか ら「よ し、や ろ う」 って 自分 を 奮 い立 たせ る ことがで きない。 そ こで 、子 どもたちに「受験生 としての 自覚」を持 たせ るために、志望 校 を宣言 させ ま しょう。「○○ 中 に合格 す る」 と紙 に大書 して部屋 に貼 っ てお くのです。 ただ し、 これは気持 ちの問題 にす ぎないので、具体的な計画が伴わなけ れば何の意 味 もあ りません。 一 方、「志 望校を宣言 して 頑張 ろ う

!」

とい う誘 い に乗 って こな い

(こ

れな い)子 どもいます。「行 きたい中学校 に行 く」と「行 ける中学校 に行 く」 の 間をさ まよっているために、親 だけがあせ って しまいがちです 。 しか し、親 があせ って も意味があ りませ ん。子 ども自身が、職業 と学歴 について具体的にイ メー ジできないか 、あるいは関心 が薄 いか らです。学 校見学 に行 って も、イヤ な学校 はイヤ と言 って も、「絶対 に この学校 に入 りたい」 とは言わない 。何 とな く他人事 の よ う。 この場合 、受験生 としての 自覚 で奮 い立 たせ ることが難 しいので、別 の 手段を考 えま しょう。 「勉強すれば○○」ではな く、 「勉強 しなければ○○ 」です。 その手段 とは、 つ ま り、「勉強すれば良い ことが あ る、 だか ら勉強 しなさい 」 が通 じな いな らば、「勉強 しなければ 、イヤな こ とになる」 を具体 的にイ メー ジさ せ るのです。 これは効果 があ ります よ。例 えば、「 目の前 のデザー ト」 と「足 を這 い 上が って くる虫」が同時 に 出現すれ ば、 ほ とん どの人が 「足を這 い上が っ

7′


て くる虫」 に注意 が 向 きます。生来的 に、嫌悪感 (特 に喪失に対す る嫌悪 感 )と い うのは、強 い感情 なんです。 具体 的 には、「きちん と勉強 して合格 しない と、怖い先生や怖い友達 の い る中学校 に進学す る こ とになるよ」 とか、「きちん と勉強 して合格 しな い と、高校受験 があって、遊ぶ時間がな くなるよ」 な どです。 しか しこの方法 は、事実 の信ぴ ょう性や倫理性の点で問題があ りますの で、 ほ どほ どに して くださいね (笑 )。

Ω L墾 二 重基 空 左型 題 理 璽 上 親が子 どもに勉強を教 える場合でも、子 どもの集中力を引き出す技があ ります。それは、 リ トライアル方式 とチェックペ ン方式、です。 いずれ も、子 どもの想像力を刺激 して、集中力を呼び起 こす方法です。 まず「リ トライアル方式」 とい うのは、子 どもの先入 観や常識 だ と思 っ Z′

ていることをひっくり返す方法です。裁判 の「再審」 になぞ らえて、 リ ト ライアル方式 と名づ けてい ます。 例えば電流を教えるとき、私は子 どもたちに電流を実感 してもらうため に、次 のよ うなクイズを出 します。 「さて、君たちに質問。下の図で豆電球がつ くのはどっち ?」 (電 池 は長 い方が +極 です。)

〈 図 1〉

〈 図 2〉

│‖

す る と子 どもたちは 、 <図

1>は シ ョー トします か ら、豆電球 はつ か


5章 *集 中力・ 持続力が弱い な い こ とを知 ってい ます。 これ に対 して図 2は 、 マ イ ナス極 とマ イナス 極 をつ な いでいるために豆電 球 は つ かない、 と考 えます 。 ほ とん どの子 どもが このよ うに考 えます。 しか し、豆電球がつ くのは <図

2>の ほ う。電流 は「お しくらまん じゅう」

を しますか ら、電池が同 じ方向に

2個 ついてい る向きに電流が流れ る

(押

し切 る)ん です。 す る と子 どもたちは 「え∼

!」

「ほ∼

1」

とな るわけです。 自分 の 常識

が覆 されて、集 中力が引 き出され た瞬間です。電流の流れを実感 としてつ かむ きっかけにな ります。 調子 にの って、 も う一 題 い っち ゃいましょう。落下運動 です。

4本 の 同型 の太 ペ ンを準備 します。この うち 3本 は輪 ゴムで束ね て、残 っ た 1本 と同時に手 を離 して落下 させ る準備をす る。 「さて、君たち に質 問。 どっちが早 く落ちるで しょう ?」 「同時に落 ち るよ。そ う習 った もん。」「いや 、や っ す る と子 どもたちは、 ぱ り重 いほ うが先 に落 ちるん じゃない ?」 な どの反応を示 します。 直感 的 には、重い方が先 に落 ち るって思い ますで しょ。そ うなるはずで す よ。 「 じゃ、落 とす よ。 よ く見て

l」

子 どもたちの集 中力 が引き出され る瞬間です。す る となん と、同時 に落 ちた。子 どもたちか ら「お∼」 と声 が上が る。 自分 の 目で確かめ たか ら、 納得す る。落ちる速 さは高 さだけが関係 して、重 さは関係 しない、 と。 分 か りやす い理 科 の 例 を挙げ ま したが、他 の教科 において も、子 ども たちが 「 当た り前 じゃん」 と思 っている ことが た くさんあ ります。それが 間違 った思い込みである ときは もち ろん、それが正 しい思い込みであ って も しっ くりこない 知識 であれば、それをひっ くり返す。 す る と、子 どもの集 中力を引 き出す ことがで きるんです。 「人 はみな、 分 か る ことだ けを聞 い ている」 (ゲ ー テ)と 言 われ るよ うに、

Zヨ


人 はみな腰 をお ろ して安住 したい ものです。 親 が宿題 の管理をす る こと も大事 ですけれ ども、家庭 に資 料集や図鑑を おいて、「本 当 にそ うな のか 」 とい う問 い を発 し続 けるの もそれ以上 に大 事 な ことです よね。優 秀 で も伸 びない子 は、想像力や探究心 を発揮できな いでい るのです 。 さて次 に、チ ェックペ ン方式 です 。 例 えば、黒 い 下敷 き とペ ンを用意 し、下敷 きでペ ンを 隠 して子 どもたち に こ う告 げます。 「下敷 きの裏 にあるものを 当てた ら、 1000円 あげる。 」 す る と、子 どもは「何 だろ う」 と思 う。集 中力が引き出され た瞬間です。 そ して 、

敷 きの端か ら少 しだけ見せ る。す る と子 どもたちの関心がそ

の 部分 にググ ッとひきつ け られ る。集 中力が高 まった瞬間です。 これが、市販 されてい る「チ ェ ックペ ン」 や、「一 問一 答 式教材」 の本 7イ

来 的な効果 です 。既製 の教材 には、空 欄 に答 えを埋めてゆ くものがけっ こ うあ りますね。 しか し、これ らを使い こなせ ていない場合 もあるん じゃな いで しょうか。 とい うの も、社 会 に代表 され るよ うに、埋 めるべ き空欄が多す ぎるんで す。それ らをい っぺ んに覚 えなきゃな らないなんて、想像 しただけでゾッ とします よ。 ですか ら、 どうして もそれ らの教材 を使い こなせないな らば、覚 える分 量 を小 出 しにす るべ きです。 つ ま り、空欄 に解答をあ らか じめ書 き こんで お いて、少 しずつチ ェック ペ ンで隠 してゆ くんです。 例 えば、地名 や植物 につ い て、 今 日は 5つ チ ェ ックペ ンで 塗 ってそ こ を覚 える。翌 日それを覚 えた ら、次 は また 5つ 塗 って覚 え る。 それ を繰 り返 してゆ くな らば、無理 はあ りません。 解答 を 4∼

5枚 用意 してお けば、後 にな って再度繰 り返 してゆ くこと


5章 *集 中力・ 持続力が弱い ができます。 暗記 のフェー ズでは、 一 気 に覚 え よ うとすれ ば挫折 します。 しか し、 5 個程度 であれば 「なんだ っけ」 つて思 いだそ うとす る気持 ちになれ ます。 つ ま り、集 中 しよ うと思 えるんですね。 以上 のよ うに、リ トライ アル方式 とチ ェックペ ン方式 を ご紹介 しま した。 いずれの方法 も、子 どもの集 中力 を呼び起 こすには効果的 な方法です。 集 中でき る確率が どん どん低下 します。 日々の学習が マ ンネ リ化すれば、 や らなきゃな らな い と分 か っていて も、それ は止 め る ことはで きません。 集 中 しない ことを叱 るほ どバ カげた ことはないのです。 小学生 には、できるだけ「理屈 を理屈 で説明 しない こと」 が とて も大切 です。教 える側 は つい 、 自分 の思考 をた どるだけ の 教 え方 を して しまい、 子 どもに単純労働 を強いて しまい ます。 しか し、子 どもの集注力を引 き出す ためには、想像力や興味

0関 心 に訴 Z,

える方法 もある、 と考 えてみて くだ さい。

(3)集 中状態 を邪鷹 するも のを排除 する方法 ―一気が散 って勉強が勝かこらない場合 」ニユ 注 LL=三ζ 三 童え二 重聾 ≧ 二五二 壁堕二 Ω里 塑型 “ 人 間 だれで も悩みがあ ります よね。

子 どもの生活 に関す るア ンケー ト調 査

(2007年 3月 、第 一 生命経 済

研究所 )に よれば、過去 1年 間 で悩 みや不満が あ った と回答 した割合 は、 小 学 4年 ∼ 6年 の 男子 (以 下、男子 )で 約 4割 、小学 4年 ∼ 6年 の女子 で約半数、で した。 悩 み の 内容 は、多 い 順 に男子 は、勉強、友達、い じめ。女子 は、友達、勉強、 自分 の性格・ クセ 、容姿 で悩 む。 そ して、小学

4年 ∼ 6年 の男女 とも、主な相談相手 は、男子 の 87.5%、

女子 の 78.7%が 「お母 さん」を挙 げて います 。 ちなみに、「お父 さん」を


挙げたのは、男子 の 35.4%、 女子 の 26.2%で す。母 は強 し、ですね (笑 )。 それはさておき、勉強中に これ らの悩みがついつい頭 に思 い浮かんで し まった ら、 集 中できません。子 どもの不安 は放置 してはな りません。 単 に、 気持 ちを吐 き出す ことさえできれば、ず いぶん 違 うはずです。 子 どもの相談 を受 けるのが上手 なお母 さんは 、子 どもの気持 ちをま とめ るのが うまい 、 と言われます。 例 えば、子 どもが 学校 で友達 と仲 たがい してきた とします。子 どもは「 自 分が悪 い」 と「相手が悪 い」が い っ しょ くたにな っているけ れ ども、何 と か して 自分 を正 当化 したい。その実、何 とか して 自分 の気持 ちが分か って 欲 しい。 これを じっ くり聞 いてい たお 母 さんが最後 に、「お前、 くや しいんだね」 とまとめあげ ます。 それですべ てが まる く収 まるわけではない で しょうけれ ども、人は 自分 7び

の気持 ちを人 に分か って もらえる こ とほ ど安心 す る こ とはないんです。 そ こで、子 どもの気持 ちを 聞 いて あげる。その コ ツは、

(i)理 解 「気持 ちが分か るよ」 ( )感 心 「す ごいね」 (■ )信 頼 「できる と思 ってい たよ」 ( )共 鳴 「なるほ ど」 (v)関 心 「 もっ と話を聞かせ て」 この 5つ です 。 子 どもは、 自分 の気持ちが分か って もらえる と感 じられれば 、子 どもか ら話 しかけて きます 。そんなステキな親子関係 が家庭 内 にあればいいな ぁ、 と思います。

②割 り込みが登 生する聖因 を排除する す ご く集中 して勉強 しているときに、なんだかいつ もの自分 じゃない よ


5章 *集 中力・ 持続力が弱 い うな 自分 に気 づいてび っ くりす ることってあ ります よね。 「 自分 って、す ごい じゃん」 ってね 。 しか し、 こん な最 中 に邪魔 モ ノが割 り込 んできて、集 中力を奪 い去 って しまうときがあ ります。理解 は各駅停車 の よ うにの ろいのに対 して、や る 気 は超特急 の よ うにす ぐにな くなって しま うもので す。 そ して、 この邪魔 モ ノには 2つ あ って 、1つ は外部 か らの割 り込み (外 部 の干渉 に よって集 中力 がそがれて しま う場合 )、 も う 1つ は内部か らの 割 り込み (自 分で 自分 の集 中力をそ いで しま う場合 )で す。 外部 か らの割 り込み とい うのは、例 えば、弟や妹 が 「遊んで」 つてせが む、だれか に用事を頼 まれ る、携帯電話 に電話や メールの着信 が入 る、な どです。 これに対 して 、内部 か らの割 り込み とい うのは、例 えば、勉強 してい る ところか らテ レビが見 える、勉強机 にゲ ー ムが置 いて ある、勉強 してい る 姿勢 に負担 がかか ってい る、勉強机 のす ぐ横がベ ッ ドにな っている、な ど です。 これ らの割 り込みが入 る と、後 で勉強 を再 開す る ときに、問題文を理解 し直 した り、計算 しかけていた ことをや り直 した りな ど、 ロスが生 じて し まいます。 しか も、せ っか く集 中 してい たのに割 り込みが入 って中断す る と、「 っ いでにち ょっ と休むか」 にな りやす いので す。 そ うす る と、「割 り込 み に付 き合 ってい る時間」、「割 り込 まれ る前 に考 えていた ことを思 い 出す ために必要な時 間」、「割 り込み前の集 中状態を取 り戻すため の 時間」を ロス して しまい ます。 このよ うに、割 り込みが入 る と、 自分 で思 ってい る以上 に時 間 のロスが 生 じますか ら、外部的割 り込 み、お よび 内部的割 り込 みの要 因を排除す る よ うに して ください。

77


(4)集 中 状 態 を 維 持 す る方 法 ――勉強途中 でギ 7ア ッ電 しそうな場合 Ω上固鯉■│の 1匡 主」 聖型団墨主璽淫型墾聾鰹理型慶塑躍重団墜立五 難 しすぎる問題をやると 1間 理解するのにとでも時間がかかり、勉強の 進み も遅 くなるので、や る気が減退 し、同時 に集 中力 も落 ちていきます。 この場合、 (1)そ の 前 の段階が定着 していないか 、あ るいは、 (

)必

要 なステ ップを飛ば して高すぎる課題 を設定 したか、の どち らかです。

(1)の 場合 には解 ける問題 に立 ち戻 って再チ ャ レンジ します。 そ して、 (

)の 場合 にはまず類似 の問題か ら取 り組 むよ うに します。 人 の 脳 はで きるかで きないか 5分 5分 の ところで 、 一 番 の集 中力 を発

揮す るよ うになって い るのです。同 じ負 けで も、「惨敗」 と「惜敗」 では、 全 く学習意欲 に与 える影 響 が違 うわけです。 7′

② 副 壁 塞杢睦 整 LL菫 塁 ■過 小学生 の場合は特に、「今 日は これ とこれをや りなさい」 って、一 方的 に人か ら課題を与えられて、それが終わるまでや らされることが多い もの です。 しか し、ずっと同 じ教科ばか りや っていると、普通だれだって飽 きが生 じてきますよね。 例 えば、「今 日は江戸時代。テキス トの 10ペ ー ジ分 を覚えなさい」 と 言われた とします。それが本当にや らなければならない ことだ と分か って いて も、やっぱ り途中で眠 くな りますよ。 ですので、 日々の学習 のメニ ューが決 まっているな らば、飽きた ときに は教科を変 えて取 り組むのも集中力を維持するには効果的です。


5章 *集 中力・ 持続力が弱い

Q墨

塑立菫堕望

勉強 だけでな く、読 書 の ときな どで もそ うなん です が、「早 く終わ らせ て しまい たい」 と思 った ときに、「あ と何 ペー ジあ るかな ぁ」 って、残 っ てい るペー ジを数 えた経験 はあ りませ んか。 きっ とあ るで しよ (笑 )。 この よ うに、「早 く終 わ らせ たい」 とい う思 いが 募 れば募 るほ ど、集 中 できな くな って しまい ます。す ぐに結果 を求める (満 足 の延期 ができない) タイプの人が陥 りやす い 。 この よ うな場合、「 この まま じゃダ メだ」 と思 って余計 に力 を入 れて し ま うと、今度 は頭 の 中が真 っ 白にな って しまいます。 もし「早 く終わ らせ たい」 とい う気持 ちが高 じて集 中力が減退 し、視野 が拡散 して しまった ら、その ときは思 い 切 ってそ こでやめるべ きです。 ど うせ先 に進 めて も、中途半端 に終わるだけですか ら。 こんな ときには、「 も しかの法則」 で気 を しずめて ください。「 これ しか 進 まなか った」 ではな く「 こんなにも進 んだ」です。 まだ頭が真 っ白 とまでゆかない場合 には、①最後 まで 自分 が もちそ うな らや る (自 分 の気持 ち と相 談 )、 ② あ と 20分 だけ粘 る (時 間 と相談 )、 ③ あ と 1ペ ー ジだけ粘 る (分 量 と相談 )、 ④途 中休憩を入れ た後 に再 開す る (分 散学習 )、 な どの方法 があるで しよう。 い ずれ に して も、一 気 に終わ らす ことだ けをや りが い とはせず、 こまめ に休憩 を入れたほ うが結局 ははか どる場合がある、 と知 るべ きで しよう。

7タ




(1)自 分 の本気度を試 けために 「壁 」がある 人 はだれ しも「 しくじった

!」

とか「も うダメだ」と思 うことが あ ります。

失敗 と挫折ですね。勉強だけ でな く、語学 とか ダイ エ ッ トとかで も、 いつ も背後霊 のよ うにつ きま とうもの。 大人 はけっ こ う失敗 も挫折 も経験 してい ます ので 、 もう慣れち ゃ ってい ます よね。 しか し子 どもはそ うではあ りませ ん。大人 の感 覚 で「大丈夫、大丈夫」 とい って も子 どもには通 じない場合 もあ ります。 ところで、そ もそ も「失敗」とか「挫折」とい うのはナニ モノで しようか。 辞書的 に言 えば、失敗 は「方法や 目的を誤 ったために良い結果 を得 られ ない こと」 であ るのに対 して、挫折 は「仕事や計画 な どが途 中で ダメにな る こと (そ の ことによって気力を失 う こと)」 です。 ′′

つ ま り、失敗 は「一 時的な ミス (計 画 の部分的欠陥)」 、挫折 は「 もはや や り遂 げ られない こと (計 画 の全 体 的欠陥)」 、です。 ミスは誰 にで もつ き ものです か ら、「失敗す るな」 とい うのには無理 な 相談 です。む しろ、失敗 した地点 をか ら再び前進す る しかあ りません。 これに対 して、ひ とたび挫折 して しま うと、それ までの努力や計画が台 無 しになるわけですか ら、ゼ ロ地点 に立 って再 びや り直 さなければな りま せん。 失敗 に して も挫折 に して も、それは 自分 自身 が成長す る貴重な経験 であ ることは、 だれ も疑わないで しよう。受験 は子 どもたちに とって「壁」で あって、 どの子 で も乗 り越 え られ るものではあ りません。本気度 が試 され るんです。 本気 になれば、失敗 を恐れず、挫折 しない。 あ る意味、人間的 に大 き く 存在感 を示す よ うにな る。間違 えて恥をか くことは、 自分 の枠 を超 える こ となる。


6章 *挫 折 しやすい しか し失敗 や挫折 を踏 み台 として 自分 を成長 させ るため には、「知恵 」 が必要 です 。イヤな 自分 と付 き合 ってい けるよ うになるには、発想の転換 が必 要 だか らです。 そ こで本章では、失敗や挫 折 との上 手 な付 き合い方 を考 えてゆ こ うと思 い ます。

(2)失 瞭

(間 違うここ)に 対する恐怖この付き合い有

子 どもが塾や 学校 のテス トで、あま りよ くない成績を とってきた ときの 常套句があ ります。 それは … 、「 自分 は ビ リじゃないよ」「○○ちゃんよ り上 だよ」。 こん な言葉 を聞 くと、 ガ ッカ リですね 。「あなた最下位 を競 って も しか たないで しょ」 って言 いた くな ります よ。 で も、 「 自分 は最下位 ではない とい う安堵感」は、とて もよ く分か ります。 ビ リを免れ た こ とで、不名誉 な衆 目を集 めずに済 んだのです。 自分 のいや な部分 が表 沙汰 にな らなけれ ば、 従来 どお り平然 としてい られ るわけです 。 これはつ まる ところ「現実逃避」なんですが 、だれで も持 ってい る感 情で すので、単 に責める ことは で きません 。 しか し、改善が必要でそれが可能な こ とであれば、手伝 ってあげたほ う がいいですね 。子 どもの現実逃避が現実 に 問題 になるのは、次のよ うな場 合です。 まず 1つ は、「分か らない」「分か りそ うにない」 ところはす べ て 白紙 の ままです まそ うとす る場合 です。「少 しで もいいか ら書 きな さい」 とい っ ても、「だ って分かんな いん だもん」 で押 し切 ろ うとす る。 この場合 、「理 解 していない」 と判 断 されがちなんで すが、そ うとも言 い切れ ません 。確か に、まった く教わ っていない な ら白紙 もあ りうるで しょ う。 しか し、多 くの場合 は、すでに学習 した 内容 であるはずですか ら、 何 か しらは書 けるはずです 。 なのに、書か ない。

′3


この ときの子 どもの心情 は、「 どうせ 間違 ってい るん だか ら、あえてそ れを書 きた くな い」、 です。 自分 の 失敗 を さ ら した くな い し、 自分 の 失敗 を見 つ め るの も苦手。 だか ら、「分 か らない」 と言 い 張 って、す べ てを教 わろ うとす るのです。 もう 1つ 、現実逃避 が問題 になるのは、間違 っているのが恥ずか しいか ら、 自分 の答 えを消 して、先生や親 の言 う正解を覚 える ことに腐心 して し ま う場合 です。 勉強 を していれば必ず壁 にぶつか る。そ うなれ ば、 自分がつ まずいてい ると ころを解決 したい、分 か らない ところを理解 したい、 と思 うのが普通 です。 それ なのに、1つ 目のケー ス と同 じく、失敗 を恐れ る子 どもは、「つ ま づい てい る ところ」「分 か らな い と ころ」 を明かそ うと しない、 つ ま り、 自分 の失敗 にスポ ッ トライ トを当て られ た くないのです。 ´イ

「ミ 「 なんで もきちん とや りなさい」 この よ うな傾 向を持 つ に至 ったのは、 スはだめ」 とい う先生 。親 のメッセー ジを子 どもが強 く受 け取 ったためで しょう。 しか も、子 どもが学校 のテス トで「90点 を とってきた よ

!」

と喜ん で

いる ところに、「何 で満点 じゃないの」 って親が不満を 国に した りす る と、 子 どもに とってはやぶ へ び と感 じて、「 も う二 度 と失敗 は人 の 目にさ ら し た くな い」 と思 うよ うになるで しよう。 塾の成績 となれば、受験 にか らむだけに事態 はよ り深刻 です。失敗 しや す い 問題 に取 り組 まず に、できる問題 だけ解 いていた とすれば、勉強時間 をかけて い るわ りには成果 が上が らな いか らです。 勉強 では最初 に間違 い 、途 中でもつ まず くのは避 ける ことはできません。 しか し、 間違 った音 を出 してみて初 めて、本 当の音 の美 しさが分か るの です。無事習得できる か どうかは、失敗 のたびに失敗 か ら教訓 を引き出す ことがで きるか どうか、 にかか ってい るのです。


6章 *挫 折 しやすい 失敗 した ところでやめて しまえば本 当の失敗 にな る、成功す る ところま で続 ければ成功 にな ります。 そ こで 、 どうして も答 えを書 かかない ときや、 自分 の書 いた答 えを消 し て しま うときは どうすればいいか、です。 まず、 どうして も答 えを書かな い ときは、その後 、答 えを丸写 しして終 えて しま う場合が多 い よ うです。それ では収穫 はあ りませんね。 ですので、 どうすれば答 えを 出す こ とができるのか、その手がか りをま とめてお くべ きです。例 えば国語 の 場合、解説 を読 んで、問題 と解 説 の 中 で ヒン トになる部分 を マー カー でチ ェ ックする。 算数 の場合 は、問題 を コピー して ノー トに貼 り、解説 を書 き写 しなが ら どこでつ まず いたか を確認 し、つ まず いた ところを赤 ペ ンで 囲 ってお く。 理科 。 社会で初めて出会 った知識 は、 メイ ンとな るテキス トに書 き足す、 あるいはノー トにま とめ まる。 もちろん、 これ らの素材 は定期的 に思い 出す とい う作業が必要 にな りま す (31ペ ー ジ参照 )。 他方、 自分が書 いた答 えを消 して しま う場合 は、性格的に失敗を嫌がる 傾 向 が強 いので、 まず大人が、何があ ってもバ カに した り、あきれ た りせ ず、失敗す るのを見越 して広い心 で接 す る ことが必要です。 そ して失敗 に対す る恐れは、失敗 の 繰 り返 しによって薄 まってゆきます ので 、失敗 に慣れて しまえば、 自分 の 失敗を笑 えるよ うにな ります。失敗 に慣 れ るまで、 だい たい

2∼ 3ケ 月 はかか ります が、辛抱 強 く失敗 に付

き合 ってあげて ください 。 受験 では、 トライ &エ ラー を繰 り返 して、徐 々に 目標 もや り方 も定 まっ てい くものです。子 どもの 日々の トライ &エ ラー の うち、「 エ ラー 」 をな くそ うとす る と子 どもは大人 に寄 りか か ったまま、 消化試合 のよ うな勉強 にな って しまい ます。 トライが評価 されない と、子 どもは トライには意味 がない と考 えて しま う。

gF


重要な ことは「 トライ もエ ラー も必要」。 そ して「 エ ラー を減 らす こと よ りも、 トライを増やす ことの方がはるか に子 どもを伸ばす」 とい うこと です。 自分 で発見 した ことは忘れ に くいのです。 ―

提 言 11

<あ 見事 !子 ごもの新発見 > 子 どもが 「 自分の答えを消 して、先生の答えを写 して しま う」 とい う現 象には、子 どもが 自分が犯 した誤 りを隠 して しまい、貴重な ミスを是正す 日 ることが不可能 になって しま う、 という問題点があ ります。 しか し問題 はそれだけではあ りません。子 どもが 「 しまつた

!」

と思 つ

てつい消 しゴムで消 したことが、正解へ の 1つ のル ー トである場合です。 一般的に言 えば、親や先生のや りかたの方に従 つた方が早 く適切 に処理 ´

`

できる場合が多い と思います。 ですか ら、強制 的指導 によつて (119ペ ー ジ参照)、 時間を節約する ことが でき、か つ、子 どもの 自己効力感 (18ペ ー ジ参照)を 引き出す ことができます。 集団授業形式の場合には、 この方式 によるのが通常です。 しか し、中学受験算数の場合は、答 えに至るル ー トが複数 にわたるケー スが授業 に比 べ て多 い、 とい う特殊な事情があ ります。限 られた知識で頭 の柔 らかさを競 うのが、受験算数なのです。 そ して、答えに至るル ー トが複数ある場合に、先生が提示するル ー トと、 子 どもが考 えるル ー トが衝突 する と、時間的な ロスを生が生 じる、 このよ うな問題があ ります。 つ ま り、子 どもと先生 とで答 えに至 るル ー トが異なる場合、子 どもは自 分の考え方 に先生の考えを継 ぎ足 して しま うため、混乱するのです。質問 の解決に時間のかかるのは、 まさにこのケースです。


6章 *挫 折 しやすい 具体的 に問題でみてみま しよう。 「みかんを 1個 48円 で何個か仕入れ ま した。 くさ つていた 20個 は捨て、 残 りを 1個 80円 で売 った ところ、全体の利益 が 3200円 にな りま した。仕 入れたみかん の個数は何個ですか。」 図で表す と次のようにな ります (図

1)。

20個

図 1

48円 。・ ・ ・ ・ 48円

(腐 敗 )

48円 。・ ・ 48円

仕 入れ値

80円 。・ ・・ ・ 80円

売値

32円 。・ ・ ・ ・ 32円

3200円 の利 益

仕入れ た個数 ′7

解答は一般に、「仕入れ た個数すべ てが売れたときの利益は、3200+80

4800÷ × 20=4800円 。したが つて、 仕入れた個数 は、 とな ります

(80-48)=150個 」

(図 2)。

これを 【 解法 1】 とします。

図 2

輌牲

1)

48円 。・ ・・ ・ 48円

20個

48円 。・ ・ 48円

80円 。・ ・・ ・ 80円 32円

(腐 敗 )

。32円

仕入 れ た個数

仕入れ値 売値 (80× 20増 加 )

3200+80× 20


ここで「 ?」 が頭に浮かぶ人もいる と思います。「なぜ、3200円 に 80×

20を 足すのか」「どうして、48× 20じ ゃダメか」です。「腐つていた分だ 日 け回収すればいい」と考える人だつているはずで しょ。 大人であれば方程式を立てて、「80C-20)-48χ

i

=3200円 」とな り

ますから、3200円 に 80× 20を 足すという意味が分かるのですが、小学生 日に対 しては基本的に方程式はタブーです。

]

この 問題の解法の視点は、 「仕入れた個数 と、売れた個数をそろえること」│ ■

:

この点、解法 1は 、「も しも腐敗 した 20個 分も単価 80円 で売れたと した i

lら 」 と考えるわけ です。仕入れた個数 と売れた個数 をそろえれば、 1個 あ 日

│た りの利益 もそろい ますか ら、3200+80×

20(円 )を 32(円 )で 割れ 日

日ば仕入れた個数が 150個 、 と求まるので す。

日 ■

しか し、解法のポイン トが 「仕入れた個数 と、売れた個数をそろえること」■ にあるな らば、腐敗 した 20個 をな くす、 という考え方もあるはずです。

′′

つ まり、腐敗 した 20個 を返品すれば、その分のお金が戻 つて くるわけで すから、返金分が利益に上乗せされる。だから、3200+48× 20(円 )を

32(円 )で 割れば、売つた個数が求まるわけです

(図 3)。

これを 【 解法 2】 とします。 日

図 3(角 早法 2)

20個

(腐 敗 )

48円 ・ ・ ・ ・

48円

80円 。・ ・・

80円

32円 ・ ・・ ・ ・ 32円

く咀 〕野“

(3200+48× 20)÷ 32=130個

仕入れ た個数

130+20=150個

仕 入 れ値 (20個 返 品) 売値

3200+48× 20


6章 *挫 折 しやすい 算数の勉強現場で恐ろ しい ことは、例 えば この 問題で子 どもが、 3200+日

48× 20(解 法 2)と や ったとき、それが先生 (解 答 )の や り方 (解 法 1)と 違 っ

ているか ら自分の考えが間違 つている、 と考えて しまうことです。 しかも、 自分 の考え方 と先生の考 え方 とが混ざ り合 うために頭の中が混 日 乱 し、短時間の解説について行けな くなる。

1

このような状況を回避するためには、まず、教える側 には 「思考の分岐点」 ・ │

「着眼点」を しつか り強調することが求め られます。それは 「子 どもが考え i

「言 うとお りに解 け」ではあ りません。 るきつかけ」を与えることであつて、 1 先ほ どの問題でいえば、着眼点は 「仕 入れた個数 と、売れた個数をそろ │ えること」 ということです。そこか ら後 は子 どもの思考は 自由にな ります。日

そ うではな く、自分の思考の道す じや、解答のや り方を単になぞるだけの 教え方をすると、子どもの思考と衝突 して しまう恐れがあるのです。 そ してまた、子どもが発 した考え方には、それがたとえ間違つていたと しても、称賛を贈ることが大切です。「その考え方、お見事 !新 発見だね

!」 │

です。子 どもの心 は弾み、 か つ、子 どもは安心するで しょう。 自分 はイケ │

るぞ、つてね。 他方、子どもたちには、混乱 しないような手立てを講 じさせる。具体的 には、 自分の考え方は消さずに しつか り残 してお く。そ して、先生の考え 方と自分の考え方が異な つていそ うなときは、ひとまず自分の頭を リセッ : 卜して、先生のや り方をノー トにとつて理解する。最後に、先生の考え方 │ 日 と自分の考え方を比べる。 ■

このよ うにすることによつて、 自分の考えた ことが 無駄 にな らないばか i

りか、よ り深 く理解する ことが できるようにな ります。優秀な生徒の本領は、 日 自分の考えを突き詰める こと、 つ ま り粘 り強 さとか しつ こさを発揮すると 日 きです。

勉強が つ まらないのは、極めようと しない、あるいはそのような環境 に 日 :な

いから 重 r=オiL ∼

′タ


(3)集 腋や屈辱から立ち直る方法 受験生活 には必ず「テス ト」 がつ き ものですね。 テス トとか模試 とい うの は調 子が よい ときはあ りが たい ものなのです が、調子 が悪 い ときは逃 げ出 した くなるもので す。試験 の結果次第で クラ スが決 まるよ うな場合 には、必要以上 に神経質 になって しま う。あま りに ひ どい と、「塾 に行 きた くな い

!」

ってな ります。

とりわ け、 ライ バ ルに負 ければ嫌で も自尊心が傷 つ け られ ます。 自尊心 が傷 つ け られれば、勉強が嫌 になって しまい、勉強 は足踏 み状態 にな りま す。 しか し、テス トは健康診断の よ うなもの、本番 の入 試 とは違い ます。 たっ た 1回 のテス トですべ てが決 まるはず もあ りません。 しか も、テス トの結 果で一 喜 一 憂 している ヒマ なんかないで しょ。 夕θ

親がか らむ とどうして も大 げさになっち ゃ う (笑 )。 です か ら、 テス トを解 き直 して次 回以 降 のテス トに備 え るの は もち ろ ん、精神 的 に もテス トに強 くな らな くてはな りません。テス トでひ どい点 を とって しまった ときに、 ダメージを最小 限 に抑 えることができれば、勉 強 のペー スを落 とさずに済むはずですか らね。 そ こで 、テス トの結果 の受 け止め方 について、 ワイナ ーの原 因帰属 マ ト リックスをみてみま しょう。 ワイナ ーの原 因帰属 マ トリックス とい うのは、人が失敗 した ときに、そ の原 因を 4つ のパ ター ンにま とめたものです。 具体的 には、成功・失敗 の原 因 には「能 力」「努力」「課題の難 しさ」「運」 の 4つ が あ る とし、個人 が どの原 因 に着 目す るか によってその 後 の行動 へ の期待 が異 なる、 とす るものです。


6章 *挫 折 しやすい 変わ らない こと

変わ り得る こと

(安 定要素 )

(不 安定要素)

自分 (内 部的要素)

能力

努力

自分以外 (外 部的要素 )

課題 の難易度

パ ター ン別 に見てゆきま しょう。

(1)成 功・ 失敗 の原因を「能力」 のせい にするタイプ 成功 した ときにその原 因 を「 自分 の能力 が高い」 と考 えるタイプは、満 足感 や誇 りを得て、次 回へ の期待 を持 ちやす い。 つ ま りこの タイプは、 自 信家 でや る気 にな りやす いのです 。「オ レって頭 いい じゃん」です。 逆 に、失敗 した ときにそ の原 因 を「 自分 の能力が低 い」 と考 えるタイプ は、落胆 し、次回へ の期待 を持 ちに くい 。 このタイ プは、失敗 を繰 り返す と「何 をや って も駄 目だ」 とい う無力感 に埋没 して しまい ます。 こ うなる と、人が何 を言 って も子 どもは聞 く耳を持 たな くな ります。そ のよ うな場 合は、子 どものやる気を補 てん してあげる必要があ ります (17∼ 21ペ ー ジ参照 )。 (

)成 功・ 失敗 の原因を 「努力」 のせいにするタイプ

成功 した ときにその原 因を 「 しっか り努 力を した」 と考 えるタイプは、 満足感 や誇 りを得 て 、次 回へ の期待 を持 ちやす い。概 して、 この タイプが 受験 に強 くな ります。 逆 に、失敗 した ときにその原 因を 「努 力 が足 りなか った」 と考 えるタイ 「努 プは、その ときは落胆す るが、次 回へ 期待 を持 ちやす い 。 この タイプは、 力すれ ば成功す る」 とい う期待を無 くさな い ものの、努力 は 自分 のさ じ加 減次第 なので、失敗を繰 り返 す こともあ ります。そ の場合 には、継続 的 に 行動す るよ うな仕組み作 りが必要 にな ります (8章 参照 )。 (

)成 功・ 失敗 の原 因を 「課題 の難易度」 のせいにするタイプ

成功 した ときにその原 因を「課題 が易 しか った」 と考 えるタイ プは、満 足感 や誇 りを持 ちに くい 。 つ ま り、簡単す ぎるものをや って も物足 りなさ

夕′


が残 るので、できるかで きないか五 分五分の課題 を与 えてモチベー シ ョン を上 げてあげ る必要があ ります。 失敗 した ときにその原 因を 「課題 が 難 しか った」 と考 えるタイ プは、そ の ときは大 き く落胆す る ことはないが 、 自信を得 る こと も少ないので次 回 へ の期待を持 ちに くい 。 それ までの努力を認めてあげ る とともに、勉強方 針 を一 緒 に見直 してあげる必要があ ります。 (

)成 功・失敗の原因を「運」のせいに するタイプ

(外 部 的 0不 安定的要素 )

成功 した ときにその原 因を 「運が良か った」 と考 えるタイプは、満足感 や 誇 りを持 ちに くい。 また、 努力が必要 なのは本人が一 番 よ く知 ってい ま す。 失敗 した ときにその 原 因を 「運が悪 か った」 と考 えるタイプは、大 き く 落胆す ることはな く、次 回へ期待を持 ちやすい。なお、失敗の原 因を 「 自 分 の 能力」 のせいに して しま うタイ プには、「ただ運 が悪 か った」 と言 っ 夕′

てあげて、気持 ちを リセ ッ トさせてあげ るのが よいで しよ う。

提言 12

<競 争 0功 罪 │∼ 受験戦 争 き勝ち抜 <た め │こ > 家に帰ると、学校や塾の優秀な友達の ことをよく国にする子どもがいま す。「○○君、またテス トで 100点 だつたよ」つてね。 そんな話を聞かされる くらいなら、もっとあなたに頑張つてもらいたい のに、と思つて しまいます。 この ような子どもは、案外人の評価をとても気にする傾 向があ り、大国 をたた くこともなく、 これ といって粘 り強 くもありません。 ですから親が子どもに対 して、人の ことは気にせず自分の課題に熱心に 打ち込み、 自分 自身の真価をもっと発揮 して欲 しいと願 うのは、もつとも なことなのです。


6章 *挫 折 しやすい 日 ただ入試は競争試験なので、イヤでも競争を意識せざるを得 ません。案外、日

1親 のほうが競争に熱心だ つた りします よね

1

(笑 )。

余談 ですが、男性が給料 に満足す るかどうかは、金額 の多寡そのもので : はな く、親戚の男性陣の給料 よ リマ シか どうかだ、 とい う指摘 もある くら

i

いです0

しか し注意が必要 なのは、子 ども 自身が競争 を意識 しすぎる と、優位 に 日 立 って油断する、負 けて挫折する (負 けたくな い と焦 る)、 混乱 して停滞 し目 た り諦める、 とい う罠にはま りやす くなる、とい うこと。

こうなって しまっては、さすがに優秀な子どもでもその真価を発揮する

i

ことはできないで しよう。そこで、競争は適切に使 い分ける必要がでてき │

ます。

そもそも競争が効果 を発揮するのは、競争する作業が、①単純なもので 日 ある こと、②すでに習得 したものであること、そ して、③ 自分だけで完成 させることができるものであること、 この 3つ の要件を満た した場合です。 ですから、計算 の速さを競わせて計算力をつけさせる、というような場合 には効果があります。 しか し、複雑で思考力を要する作業を競わせた り、単純な暗記問題であ つ ても新出事項の習得を競わせるような場合には、競争のメ リッ トを享受す ることはできません。 また 「競争の本質」 は、相対的に評価 したり、成績を公表 した りするな どして、勝者がいて敗者も必ずいる という点にあ りますから、 自分 の成績 日が人の 目にさらされるのを嫌悪する人 ほど、競争 の罠

1挫 折・ 諦念)に はま りやすい。

: lで

:

(油 断、挫折・ 焦燥、日

そ うなると、対策が手薄 になままテス トに突入 して、 自爆 して しまうの : す。

そんなわけで、 テス ト前 には運動会 と同 じ感覚 で、大人は子 どもに対 し│

│て 「ガンバ レ !負 けるな !!」 とつ い 言 って しまいがちです。 しか しその 日

タタ


日とん どの小学生はこの レベ ルではあ りませんが )に なるまでは、競争の舞 │ 台に子 どもを立たせてはいけません。 つ ま り、現実に実力が つい ていない子 どもに対 して、努力を促す つ も りで、 あるいは、 ペ ナルティをにおわせて競争を意識させるような送 る エールに はあま り効果がない。反対 に、 テス ト準備万端の子 ども、あるいは、実 力 1 を試 したい とい う子 どもに対 して送 る エールには効果がある、 とい うこと │ 日 です。 │

ただそれは「実力がつくまでテス トを受けさせてはいけない」というよう i

な神経質な意味ではあ りませんよ。も しまつた くテス トを受けないならば、 日 いつも 自分の立ち位置が分か らず、効果的な対策を立てることが できな く│ なつちゃうからです。学力の健康診断とい う意味でのテス トはどうしても20 …… ″

要なんです。 結局多 くの子 どもにとつて、テス トや模試 は、 ライバル との勝 ち負け 子 どもの能力の程 度を明 らかに しようとするために利用するのではな く、

﹂ ハフ ハ

:よ うな 正一ル を送 る前に、子 どもが解答する速 さを競 うような レベ ル (ほ 日

現在の勉強の指針を確認 した り調整 した りするための参考資料 と して用いる日 のがよいのです。今現在、テス トをそのように利用 しているか どうか、昨 日: と同 じ誤 りを繰 り返 していないか、を冷静かつ客観的に確認すべ きです。 日 ■

人 と自分を比 べ るよ りも、昨 日と今 日の 自分を比 べ ることの方がはるか に

i

収穫が多い し、前進できる。

もちろん、弱 くてダメな 自分 と向き合 うのは難 しい。確かにそ うではあっ日 ても、「強い人が勝 つの ではない、勝 つた人が強いんだ」 と心 して、子 ども日 たちには自分 に向き合 つて欲 しいのです。

・ 自分の嫌な ところと上手に付 き合えるのが大人です。子 どもたちに大人 へ の一 歩を踏み出 して欲 しい。

日 子 どもたちに夢があるとすれば、その夢はいつも逃げない、逃げているの 1

はいつ も自分 なんだ、 と知 つてもらいたいの です。


6章 *挫 折 しやすい

提言 13

<競 争 0功 罪 2∼ 将来社会 人 こ Oτ 活躍 す るため E> 「競争の本質」は、勝者がいて敗者も必ずいるという、いわば「ゼロサム ゲーム」である点にあります。 ゼロサムゲームとはつま り、参加者 の得点 と失点の総和 (サ ム)が 零 (ゼ ロ)1 │ になるゲームで、例え ば、 2人 いるプ レイヤー の うち、片方 がプラス 10点

ならば、必然的 に他方がマイナス 10点 になる。入試で あれば、合格者 がい れば必ず不合格者 がいる、 ということです。 しか し、入試 に勝ち抜 いた ことで、その人の有能性 が一般的に証明され ることはあ りません。 つ ま り、入試 に勝 った という ことは、「 5+3=8」 とい う○ ×式の問題 や、条件 つ きで解 く「○ +△ =8」 式の問題 を解決できる、 とい う ことに 止まるのです。 その種の問題 を解決する方法 は限 られて いて、 しかも、それを はみ 出す ことな く処理する ことが求め られ ます。そ の結果、受験者 はできるだけ早 く達成する こと しか考えな くなる。 これに対 して、社会上の問題 は、「○ +△ =□ 」のように、条件 も結論も 定かで はあ りません。そ して、その種 の問題を解決する方法 は多様であ り なが ら、解決する方法 の多 くは他人 との協働な しに実行する ことができま せん。社会 に出れば、 自分 のパ ッシ ョンとスキル とマ ー ケ ツ トを見極めて、 1自 分 の役割 を見 つけない とな らな いのです。

日 従 って、受験 に成功 した優秀な子 どもが、受験 における問題解決手段、 日 ・ つ ま り誰 かの負 け と引き換 えに 自分 が勝 つ とい うや り方 に どっぷ りとひ ■ ったまま社会に出てなお それを引きずる と、なぜ 自分 の真価 が発揮でき iた くなる、 このような ことが現実に起 こりうるのです。 │な いのかが分からな │ そのよ うな人 は、人か ら期待をかけ られても斜 に構 えて、期待 され る最

夕5


日低 限の こと しか しよ うと しません。 そのように して、 ますます 自分の本領 日 目を発揮できな くなるのです 日 。

:

こ うい う人はけ っこう、建前は立 派な ことを言 うのですが、それは通常、:

「このよ うに考えない と恥ずか しい」 とか 「こうしない と立派 じゃない」 と 日 i lい うプ レツシヤーの裏返 しにすぎない ことが多いものです。

日 つ ま りそれは、 答 えあ りきの意思 決定なんです。 だか らそれは、 本 当の 日 日意思決定ではあ りません 。その証拠 に、つまらない ことに 執着 した り、あ っ 日 ]さ り前言を翻 した りするな ど、極 端 な態度をとる ことが 多い。結局 は「次 日

一 歩」が伴わないのです。失敗 しない人 とい うのは、失敗が怖 くて、意 iの i 日思決定ができない人だ、 といって良いの です。 日 : それなのに、人を動 か したい、人 に認め られたい とばか りに地位や肩書 │ 目を欲 しが り、それが 交通誘導員が持 つている指示棒 ほ どの価値 もない こ と 日

夕び

日に気づか ない。 │ 日 . しかも、仕事はたいてい受身で始 ま り、社内での 内部競争を 日々のモチ

i

lベ

ーシ ョンの源泉 と し、 自分が代替のき くつ まらない人 材 であることを一

1顧 だに しない。

i

│ つ まるところ、や りがいがなけれ ば仕事は単に金 目当てにすぎず、物事 │ 日に対する取 り組み 日 方も短絡的・ 天下 り的になつて しま うで しょう。 :

ただ残念な ことに、いたず らに他人を蹴落 とすよ うな単なる「競争好き」:

を直すのはカンタンな ことではあ りません。 日 1 そ うであれば、 受験勉強ばか りではな く、クラブ 活動や地域活動 に参加 1 日して人の役に立 つこ とを学ぶ ことの意義は大きい で しょう。

1

現代は、象徴的に「七五三現象」といつて、入社 して 3年 以内に中卒の ア割、1

:高卒 の 5割 、大卒の 3害」 が転職をすると言われています。現実問題 と しては、日 :ス

キルや所 得を向上 させることが できる仕 事につ ける人 は ご く少数 で、む i

lし ろ多 くの人は仕 事 自体からは働 く意味を見いだせ ない、ということで しよ │

日う。


6章 *挫 折 しやすい しか しそれは社会だけの問題ではな く、 自分 自身の問題でもあ ります。 受験勉強で得た能力は、そもそも人 と競争するためのもの ではな く、人 と共有するためのもの。将来、他人 と協 力 してゆ くときに恥ずか しくない 程度の能力が必要だか ら、勉強するので す。 学問は世界につ なが る一、 自分の悩み だけでな く、人の悩みを解決でき るよ うになつてもらいたい。「好きな こ とをするよ り、することを好きにな れ」 と言われるのは、 このよ うな意味なのかも しれ ません。

(4)「 勉強しない子どもにはぺ十ルティが当然だ」なんてここ勝む `1

かつ て教 え子 の ご父母 か ら、「知人 の 方 は、勉強 が 終 わ るまで 夕食 を与 えない方針 で、実 際に夕食 を与 えない ときもあるそ うです よ」 とい うお話 を伺 った ことが あ ります。 かたや 、「子 どもに対 してあ り得 ない よ うな言葉 を吐いて しま う」 とい うご相談 もあ ります。ふ と我 に返 る と、「 もしか して これはプチ虐 待 なの ではないか」 と頭をよぎる といい ます。 親 だけではあ りませ ん。 私 の知人 の 先 生の中には 、「子 どもは恐怖心 を 持 つ か ら勉 強す るんだ」 が持論の人 もい ます。 これ らの よ うな子 どもに対す る物理 的、あるいは精神的なペ ナルテ ィは、 それな りの理屈があ ってなされる こ とです。 つ ま り、次のよ うな理屈 です。 受験 したい 、勉強 したい と言 ったの は 自分のはず だ。な らば、親 に言わ れな くて も自分 で勉 強す るはず。そ うであるはずなのに、 もし自ら行 動 を 起 こさないのであれば 、お まえの言 う こ とは信頼 で きない。だか ら、勉 強 ぶ りを監視するほかない。 しか も、矛盾 したことを 言 う子 どもにはペ ナル ティを科す べ きで、子 どもの方 もそれを甘受 しなけれ ばな らない。 この よ うな理屈です。

夕7


もちろん現実 問題 としては、子 どもが恐怖 を感 じてい る、あるいは、過 度 に敏感 にな ってい る、 とい う場合 は少 な いで しよう。学校 や塾では元気 い っぱいのはずですか ら (笑 )。 しか しも し、子 どもが 自分 で何 も意思決定 できな い とか、親の 目を盗 ん では遊ぶ、な どとい う場合 には、多少 な りともペ ナルテ ィを意識 してい る と考 えて よいで しよう。 問題 は 、子 どもの学習を推進す る効果 が上が っているか どうか、です。 残念 なが ら、子 どもが ペ ナルティを意識 してい る場合、親 が期待す るほ どの効果 は上が ってい る ことはほ とん どあ りません。そ の場 を取 り繕 って いるだけで 、進歩 がないか らです。 ペ ナルテ ィは、本来、監督者 がい る場合 に、そ の影響 の下 で被監督者 の 行動 を規律す るために用 い られる補助的な手段 です。 つ ま り、監督者 の影響力 が及ばなけれ ば、 ペ ナルテ ィは全 く威力を発揮 夕′

しません。 だか ら、子 どもは家の外では元気 い っぱいなんです。 反対 に、家 に帰れ ば、 ペ ナルテ ィを受 けな い よ うに、無意識 の うちにそ の場そ の場 を取 り繕 う。何 をや りた くて何 をや りた くな いか について 自分 の意思 を表 明す る ことを控 える。や っかいな ことは隠 しだて して、極力波 風を たてない ようにす る。 この よ うに、 ペ ナルテ ィを意識す る子 どもは、「いい つ けに違反 した ら どうな るか」 を敏感 に感 じ取 るだけで、かん じんの勉強の中身 とか先 に待 ち構 えてい る試験 の対策 とかには意識 を集 中 しません。 つ ま り、 ご褒美 で子 どもの気を引 く場合 の 効果 と同 じく (22ペ ー ジ < 提言

1>参 照

)、

脅迫で追 い込む と本業 がおろそかになるわけ です。

これ は監督者が親であ って も先生であ って も同 じことです。 もし家 で も塾で もペ ナルティが待 ち構 えてい るよ うな場合 には、子 ども には知 的な作業 を行 う場がな くな り、子 どもは もはや ロボ ッ ト状態 と化 し て しま う。


6章 *挫 折 しやすい このよ うな ことに しないためには 、 どうすればよいのか。 次 のような あるお母 さんの話があ ります。 『 自分 の子 どもが将来社会 に出て も困 らない よ うに、「時間を守 れ る子」 に育てたい。 しか し、 学校 の登 校で さえ、 自分が いな ければ毎 日が遅刻 と い う状態。 自分 自身が几帳面 なお母 さんだか らこそ 、 の ろまに見 える 自分 の子 ども が 許せず、 つい イ ライ ラ して「何 回言 った ら分 か るの ?」 「早 く朝 ごはん 食 べ なさい

!」

と言 って しま う。

ところがい くら叱 って も治 らず、不安が募 ってい く。 もしか して、 自分 の育て方が甘 いのか も知れない と思い、叱責 が感 情的 になる ことが増 えてゆ く。 しか し効果 はみ られず 、かえって子 どもの言葉 数 はめ っき り減 って しまった。そんな子 どもの姿 を見て、 自分 を責めるば か りの 日が続 く。 割 れ た茶碗 のか け らをいつ まで た って も眺 め てい るよ うな気持 ちが続 く。 そんな折、人か らの ア ドバ イスがお 母 さんの胸 を刺 した。「親 の偏 った 価値観 で子 どもを しば ってはいないか」 と。 つ ま り、 自分の子 どもには他人か らみれば とて も素晴 らしい ところがあ るのに、人か ら褒め言葉 を もらって も、心の中では「そんな こ とはない」 「本 当はルーズ な子 どもなん だ」 と子 どもの 良 い部分 を否定 した り、子 どもの 良 い 部分か ら目をそ らした りして しま う。親 にはない子 どもの個性や能力 を発見 した り、評価す る こ とができない。 偏見 とは根拠 のない 非好意的な先入観 をい うが、子 どもの長所を短所で 覆 い 隠 して人格攻撃 をす るのは、 まさ しく偏見その もの じゃないのか。 その偏見 のために子 どもの主 体性 を奪 い、み じめな くらいに親 に甘 える 子 どもに仕立 てていないか。 小 さな ことに こだわ って 、子 どもの大 きな芽を摘 みそ うになっていない

タタ


ハ ッとした。 それ以来、子 どもを見てイ ラっ ときた ときは、子 どもの長所 に 目を向け る ことで心 を落 ち着かせ るよ うに努力 した。その努力を続けてい る うちに、 子 どもの長所 を実感できるよ うにな った。 そ うす る と、時間 のルーズ さ も「 この年齢 な ら しかたな い 」「少 しず つ できるよ うになればよい」 と考 える ことができるよ うになって きて、叱 る 回数 が減 り、子 どももよ くしゃべ るよ うになって きた。 さらに、少 し子 どもと距離を置 くためにパー トに出でてみ る と、親が帰 宅す るまでに学校 の宿題 を終わ らせ るな ど、子 どもは驚 くほ ど自主的に行 動す るよ うにな った。』 話 の 内容 は以上のよ うな ものです。 大 きなポイ ン トとなるのは、 い くら子 どもの将来 が心配であ って も、大 ′´θ

人は何 らかの方法 によって感情的 にな りそ うな 自分 を抑 え、で きるだけ冷 静で寛容 でいなければな らない、 とい うことで す。子 どもは感情的に叱 る 大人 が大、大、大キ ライなんですね。 先 ほ どの話 では、子 どものよい と ころを再評価す る ことによって 、ある いは子 どもと少 し距離 を置 くことによって、子 どもを全体的で長期的 に捉 える ことができるよ うになった。 問題 は「その人」 にあるのではな く、「人 と人 の 間」 にあったわけです。 確か に、時間 に追われれば追 われ るほ ど、「や らなか った らどうなるか」 とか「失敗 した らどうなるか」 で子 どもを脅迫 して しまいがちです。 しか しこれでは、本来優秀な子 どもであって も、意思決定が抑圧 されて 本領 は発揮 できません。だか らまず、子 どもが安心 して 自由 に発想 できる よ うな土台作 りをす る。 その後 はその上 に、「勉強計画 とその実行」 が乗 っか ってゆ く ことにな るわけですが (8章 参照 )、 土台 を覆 す ような事態 は再び招 いてはな らない、


6章 *挫 折 しやすい と肝 に銘 じておきま しょ う。 この点 、 「罰や ペ ナル テ ィがあるか ら こそ今、子 どもはま ともにや って いる」 と言 う人がい ますが、それは本末転倒です 。罰を恐れた子 どもは 自 分で意思 を決定 しませんか ら、ま とも以 前 がま とも じゃない、本領が発揮 されていないんです。 これ に対 して、 自分 で意思 決定がで きる子 どもであれば、 ペ ナルテ ィが な くて も、失敗すれば 自分 で修正す る ものなのです 。 大人 は子 どもに対 して 、「や らなか った らどうなるか」 ではな く、「子 ど もの 自主 的な判断を どこまで許すか」 とい う態度 で接す るべ きです。子 ど もが親や先生 にいちいち うかが いを 立 てずに勉 強を進 める ことが できるよ うにな るか どうかは、 この点 にかか ってい ます。 つ ま り、できるだけ計画 も行動 も子 どもの決定を尊重する。人 は任せ ら れる とそれ だけで、有能感 を得 て、頑張 ろ うとす るか らです。 具体 的 には、「や らなければな らない こと」 よ りも、「や ってはいけない こと」 を強調す ることです。や らなければな らない ことは分 か っている人 に、重ね て 「や りなさい 」 と言 うのは生 産的ではあ りません。 そ うではな くてむ しろ、や ってはな らない ことを はっき り伝 え、あ とは 自分次第 だ、 とす るの です。例 えば、 睡眠時間の こ とを考 え、「今 日は 2 時間 しか 勉強 してはな らない、後 は任せ る」です。 す る と、子 どもはその 範囲で何 とか課題 を仕上 げ よ うとす るで しょう。 同 じ く校庭 を 10周 走 るので も、命令 されて走 るの と、 自分 の意思 で走 るの とでは、要 領 も効果 も全 く違 うものになるのです。 もち ろん、その後 の子 どもの判 断や行動が常 に正 しい とは限 りません。 その とき こそ、大人の助言が必要なの です。子 どもが手を伸 ばせ ば届 く範 囲の助言、子 どもの心 に届 く助言、です。 ここで子 どものや り方 を全否定 しない ことが大切 です。あ くまで子 ども の考 え方 を発展 させ るよ うに、大人 の アイデアを子 どものアイデアに付 け

′´′


足す ことで す。 子 ども と接 してい る と、 つ いイ ライ ラ して「あな た は どう思 ってい る の ?」 「本 当は どうしたいの ?」 と言 って しまいがちです。 しか し、子 ど もの返事 ははっき りせず、要領を得な い ことがほ とん どです よね (笑 )。 そ うであ って も、少 しずつ で も言 えるよ うに してあげればよいのです。 子 どもの意思決定 とはむ りや り引き出す ものではな く、 それができるよ う になるのを見守 るものだか らです。 次 のよ うな傾向にあ る方 は、もう一 度、本項 を読み直 してみて ください。 □子 ども自身が頑張 らないのな ら見放 して もいい と思 う □親戚や近所や知人 の子 どもの進学先 の話をす る とあせ る □夫 (あ るいは妻 )の キ ャリアに不満がある □普通 ・ 人並み の こ とができて当た り前 だ と思 う : :‐ 1 : 〕 口 「

提言 14

′″′

<子 ごものさい0こ ろな見Эけτ、:裏 める> 子 どもは、 よいと ころを伸 ばせばまつす ぐ成長 しますが、 ダメ出 しばか りしていると曲が つて 成長 して しまいます。それは子 どもにとつて、 自分 を武器に して生き抜 くことができるかどうかの分岐点でもあ ります。 私 は小 さい とき吃音 が とて もひ ど く、今 でも話す ときはよ くカ ミます。 カミカ ミです。吃音 つて、その定義は「発音の第一声が円滑 にでない言語 障害」なんです。私はだか ら、今でも 「言語障害」なんです (笑 )。 中学受験も失敗 してます しね (笑 )。 それでも私の親は私 の 能力をけなす ことは一切あ りませんで した。何 と な くこれ まで頑張 って これたのは、その ことに対するち よつと した恩返 し なのかも知れません。 おかげさまで今でも、 いろいろな ことに挑戦 し続 ける ことが でき、困難


6章 *挫 折 しやすい 日であればあるほど、それを克服するのに快感を覚えるほどです。 子 どもの良いところは、親の固定観念ではなかなか発見できるものでは 日

あ りませんので、次に例を挙げておきましょう。 ①口べ たな子ども → 相手の話を じつくり聞ける ②自分の主張が通せない子ども → 相手の持つ情報がより多 く収集で きる ③好き嫌 いがはつき りしている子 ども → 表裏がないので人を傷 つけ ない ④時間がかかる子ども → 粘 り強 くなる ⑤ケア レスミスが多い子ども → 小さな ことにめげない このほかにも、も つと子どもには良 いところがあるはずです。良いとこ ろを伸ばせば子どもはまつす ぐ育つ。 これは実は、大人にもあてはまる こ となのかも知れません。 人は素直になれないとき、自分の長所は理解 して欲 しいけれど、人の長 所は曲げて理解 しようとするものですからね。 ■日■■ ■r IFヨ

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<教 師①術策 > 有名な話に、「教師の術策」というものがあります。 この話のテーマは、「おつくうがつてなかなか真剣に走ろうとしない子 ど もがいるとき、どうしたらこの子 どもを全力で走るよう導 くことができる か」、です。 この子 どもがみなさんの子どもだつたら、どうします ?

たぶん、叱つ

てもムダで しょうね。 この話に登場する指導例は次のようなものです。 『まず、数人の子どもを八方に走 らせて、一番早 くゴール した子 どもにご

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日 口 褒美を与 える、 とい うル ール を決める。そ して、問題 とな つている子 ども 1 日 参加 させ、 しかもその子 どもの走る距離を短 くしてや り、わざ と勝たせ i iに しかも連戦連勝 させます。 てあげる。 1 口

1

数人の生徒を八方に走 らせるように したのは、問題の子 どもだけ走る距 │

1離 を短 く していることがバ レないようにするためです。 しか しいずれ この 日 ・ ・ 術策はバ レます。 しか し、 この術策がバ レるのも術策 の うち。 ■ ■ 問題の子 どもは勝利 に気 をよ くして力を出 し切 るよ うにな つただけでな

i

i

いを 受けた ことを 不公平だ と主張するまでにな │ 目く、 自分だけ有利な取 り扱 』 │ │り ま した。 あま りにも劇的で鮮やかすぎる結論なので、 つい「は∼ 、そ うですか ぁ」│ ・

と言いた くなっちゃいますね (笑 )。

ただ この 話は、 い くつ かの教訓を含み ます。例 えば、何か報酬をきつか i

けとして頑張 ることがある こと、 頑張 つている子 どもには恥をかかせない 日 ′´イ

こと、成功体験は徐 々に レベ ルを上げなが ら積み上げてゆ くこと、などです。日 「ほら、やればできるで しょ」ではな く、「ゃ 日 教師が全面に出る ことな く、 ・ れると思 つていたよ」 とい う信頼の態度をも垣間見る ことができるで しよ │

つ°

特に参考 に していただきたいのは、問題 とな つた子 どもが、 自信 をつ け │ たときに、他の人 と同 じ条件 で競争 したい、 と主張 した点です。 自分の力 │ に自信 を持 つ ようになる と、 自分 の力を試 した くなるものだ、 とい うこと │ です。 子 どもの勉強 に付 き合 つていると、その 日その 日にやるべ き ことを こな

したかどうかとい う点だけに目が向かいがちです。 しか し、子 どもが 自分の成長を実感 しているか どうかも同 じくらい重要 日 なのです。そのメルクマールが、「 自分の力を試 したい」です。 もつと問題 │ を解きたい、テス トが楽 しみである、 このよ うな言葉を引き出す ことがで 日 その 日の勉強はとても意義深 いものだ ったに違いあ りません。

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6章 *挫 折 しやすい

(5)一 流の十ンパ師であれ∼結果でなく行動に注目させよ テ レビの クイズ番組を見ていた り、家族で外出 した ときな ど、子 どもが 意外 と豊富 な知識を獲得 してい る と感 じることはないで しょうか。 と同時 に、「テス トで ももっ と点数 を稼 い で くれた らな ∼」 と複雑 な気持 ちにも な って しまい ます。 受験 は基本的 に、「頭 の 良さ 。理解力」 の判定 テス トではな く、「努力・ 我慢力」 の 判定テ ス トです。人が興味を持 たないよ うな科 日で も コ ツ コツ と取 り組んだ ことに対す る努力賞 が、入学許可証なのです。 そ こで気 になるのは、 どのよ うに 「コツコツ取 り組 むべ きか」 とい うこ と。 これが意外 に「ナ ンパ 師」 と共通点 があるのです。 ナ ンパ 師 は、手 当た りしだいに見 かけた女性 に声 をかける。 はたか ら見 る と「あんなにい っぱい フラれて、 よ く恥ずか しくない ものだ」 と、 こち らが気恥ずか しい気 になって しまい ませんか。 しか し、 一流 のナ ンパ 師で あれば、 い くらフラれて も、堂 々 とした ものだ と感心 させ られ ます。 ではなぜ 一 流 のナ ンパ 師は い くらフラれて も大丈夫 なので しょうか。 それ は、一流 のナ ンパ 師 は「 100人 に声 をか けれ ば 1人 くらいは 良 い 返事が もらえる」、 と考 えてい るか らです。テ レアポの名人 も同 じ。「 100 件電話 すれ ば 1件 は成功 す る」 と考 える。 だか ら、 マ シンガ ンの よ うに アタックできるのです。 言 い換 える と、個 々の結果で一 喜 一 憂 しているのではな く、行動 の 回数 「 100回 やれば 1回 は成功す る」 に注 目 してい るのです。それがで きるのは、 とい う勝 ちパ ター ンを獲得 してい るか らなのです。 もち ろん、受験勉強 では、何 も「 100回 」 も練 習す る必要 はあ りませ ん (笑 )。 現実 には、「 ここまで練習すれ ば大丈夫 だ」 と言 えるまで練習す る こと は どうして も必要 です (33ペ ー ジ <提 言 4>参 照 )。 その練習量が十分か

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不十分かを確認す るために、テス トや模試があるのです。 大事な ことは、ち ょっ と努 力 した くらいで欲張 りな結果 を期待 しない こ と。結果 は努力に比 例す る と考 えて 、神経質な ほ どに 目先 の課題 に こだわ る こ とです。 よ く「計算 ミスがな くな らない」 とい う親子漫才 のよ うな話を聞きます (笑 )。

も し本 当に ミスな らば、 ミスは無意 識 の うちに出る以上、意識 しな

いで も問題 が解 けるよ うにな るまで訓 練 す る しかないで しょう。「で きた はず」 は入試 では通 用 しないのです 。 受験対策 は、基 本的 に「メイ ンテキス ト」 と「過去 問」 で済 ませ るべ き です 。何 をメイ ンにす るかは、塾 の先生や知 り合い に相談 して決 める こと になるで しょうけれ ども、 まずはそれをつ ぶす ことで す。 テス トが難 しく思 え るよ うであれ ば、小 4の メイ ンテキス トか らや り 直す。テ ス トで間違 えれば、理解 していない原理 は何 かをメイ ンテキス ト に戻 ってチ ェックす る、 メイ ンテキス トをや り込 んで、体系的な原理 を腹

′´φ

の底 へ 落 とし込む。 この よ うに して、一度 で もテス トが簡単 に思 えるよ うになれば、それが その人の「勝 ちパ ター ン」 とな ります。 一 流 のナ ンパ 師 のよ うに、 日先 の 失敗を乗 り越 えて 、次か ら次 へ と行動を起 こす ことができるよ うにな りま す。 ‐ 「

日 1

‐■ ■ ‐ ‐■ ■‐ ‐ ‐ ‐■ ■ ‐ ‐ … …

提言

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■ ‐ ‐■ ■ ‐ 口

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16

必ず解決 Oτ 酎せる」こいう気概 >

:

1 │ :

受験 に強い子 こどもに共通 していることがあ ります。

それは、 しつ こ くて粘 り強ぃこと、です。

つ ま り、「必ず解決できる」 と思 つて 問題に取 り組んでいるのです。長時 :

:間 かけてダラダラ解いている子 ども とは違います。

.


6章 *挫 折 しやすい しか し、だれでも初めから「必ず解決できる」 と思 つて物事に取 り組む ことはできるんで しようか。 こんな話を聞くことがあ ります。 「できな い」「無理そう」「びみ ょ∼」 という言葉を口にする子 どもは、い つ までた っても自分の殻を破る ことができない。だから、そのような NG ワー ドは絶対に国にさせな い。む しろ、「とんどん良 くなる」「やれば必ず できる」「きつとすごい人になる」「難 しいことは何一 つない」「君の力は無 限だ」 と思うように しなさい、と指導すべ きである、と。 しか し学力については、 いくら念仏のように「自分はできる」 と願 つて みても、それがいつ しか「必ず解決できる」という強靭な意志力に転化 しちや う、なんて夢みたいなことはありませんよ。 もちろん、物の見方が変わればその人の思考や立ち振 る舞いが変わる こ とはあ ります。例えば、平社員だつて社長のような経営的な視点で物事を ′´7

見渡せば、きつと有益な発見ができるはずです。 しか し自分の学力や意志力は経験 の積み重ねによつてのみ、鍛 えること ができます。つまり、問題 と格闘 した経験が多ければ こそ、「次も解決する ことができる」と思えるようになるのです。 受験勉強 は、「必ず解決できる」 と思えるようになるまでが地獄、逆に、 そう思えるようになれば天国

(ス

ター トライン)で す。

そ して長い目で見ると、社会で求められ る人物は、この 「必ず解決できる」 1と いう気概を持つている人物です。 ゲーテは「決 して使い尽 くす ことのな │

│い 資本を作る ことが重要だ」といいますが、まさに「必ず解決できる」とE :い う気概が、「決 して使い尽 くすことのない資本」 の一側面なのかも知れま : lせ

ん。

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(1)「 あた‖ちらして終わる子」こ 「反省 して先へ進む子」 「安岡正篤 一 日一 言―心を養 い 、生を養 う」(致 知 出版社 )と い う本 に、 「自 ら反 (か え)る 」 とい う記述があ ります。かい つ まんで抽 出す る と次 の よ うな内容 です 。 『論語の根本精神 は、自反。例 えば、つ まずいて「 こん ち くしょう」と言 っ て石 を蹴 る人 間はつ ま らない。 本 当 の人 間は、「 しまつた、 うっか りして い た」 と自ら反 る。その人 は確 かな人 であ り、進歩す る人です 。』 受験 の世界 で も、同 じことが 言 えそ うです。模試やテス トに失敗すれば、 だれで も くや しい ものです 。 しか し、周 囲 に 当た り散 らした り、無意味に ジ タバ タ して終わ って しまえば 、そ の先 に進 歩 はあ りません。 そ うではな くて、 自分 の どこが まずか ったのかを真剣 に反 省 して、三 度 と同 じ失敗 を繰 り返 さない と誓 って、次 の行動 に移 る。頭の中であれ これ ′′θ

考 えて もダメ。実行 に移すか どうかがカギ。 これが、 「確かな人」であって、 「進歩す る人 」 なので しょう。 い くら頭 の 良 い子 どもであ って も、勉 強 が 自分 の責任 の 下 で行 うもの、 勉強 の基本 は 自助努力にある、 こ うした意識 がない 限 り、大 きな進歩は見 込 めません。 本章では、原 因帰属 を誤 る子 ども、人に頼 りす ぎる子 ども、 についてみ てゆきたい と思い ます。

(2)親 に認められたい子どもは失敗する 女性は男性 にガ ミガ ミロを出 した くなるものです よね 。 自由 にさせてお くと、浮気 した り、偏食 した り、暴飲暴食 した りす るか ら、「○○ しない よ うに しな さい よ」 ってね。 しか し男 性 とい うのは 自由 に したい ものですか ら、制約を受 けそ うにな る と、む しろ逆 な行動を とっち ゃった りす る (笑 )。


7章 *誤 つた責任帰属・ 過度の他者依存 同 じよ うに、子 どもに もつい 言 って しま う。「 グズ グズ しないで早 く食 「いま、しよ うと思 っていたの !」 べ て勉強 しなさい」 と。す る と子 どもは、 と反論す る。 こ うな る ともう止 ま りません (笑 )。 「だ った ら、早 くしなさい !あ なたが いつまでた って もや らないか ら言 っ てい るんで しょ。」 「お母 さんがガ ミガ ミ言 うか ら、や る気がな くな った じゃな いの

│」

ふふふ っ。 よ くある話 です よね。 で も、 このよ うに反論す る子 どもはそ もそ もや る気がある子 どもですか ら、心配無用です。 ただ、人か ら命令 される ことによって、「や らなきゃ」 とい う殊勝 な気持 ちが、「や らされ てい る」 とい うみ じめな気持 にな って しまっただけです。 この よ うな状態 にな らないよ うにす るには、子 どもの判 断を後押 しす る よ うに、接 し方 を変 えれば済む話 です (97ペ ー ジ以下参照 )。 自由 にす る に もル ール がある ことを教 えて ください。 問題 なのは、子 どもが「親 に認 め られたい」 と思 って頑張 るような場合 です。 子 どもは親 に認 め られたい と思 うと、偏差値 や順位 に過度 に こだわ ろ う とします。誰か らみて も、それが一 番分 か りやす いか らです。 思 うよ うな偏差値 や順位 を手 にす る ことができな くなる と、 そ して もし、 親 には何 も言 えな くなる。場合 によっては、わざ と親の言 う ことと逆 の こ とを した りします。 親 に認 めて もらいたい と思 う子 どもは、親 の レー ルにのって どこかで衝 突事故 を起 こして しま う ことがあるん です。 プ ロ ボ クサ ーの辰吉丈 一 郎 さんが、次 のよ うな話 をされて い ま した。 『 人 間大事 にされ た り大事 に して くれ る人がお った り、優 しくして くれ た り可愛が って くれ る人がおるか ら頑張れる。 しか し、人がお るか ら頑張れ る代 わ りに、勘違 い してそ うい った人のた

′′′


めに頑張 ろ うとす る人 もお る。 失礼やけ ど、だか ら失敗す る。 まず 、 自分 が成功せんか ぎ り、人 は助 け られ ない。 自分 の ために戦 う。 自分 のため に戦 うと、結果 的 に見 てる人が後 で気 づい て くれ るの。 支 えて くれ る人 に対 してあ りが とうって気持 ちを返すん じゃな くて、あ りが とうとい って 自分 な りにや らせて もらう。 また落ちそ うにな った りこ ぼれそ うにな った ら、拾 って くれ るの。そ うした ら、あ りが とうって言 っ て また突 き進 めばいい。 自分が掴む もん掴 めば、掴 ん だ ときに返せ ばいい。誰か のため にや っち ゃ 絶対あかん。成功すれば返せ ばいい。 自分 におつ りがある くらいに。』 本 当に結果 だけが評価 され る、厳 しい世界 で戦 う人の言葉 だ と思 い ます。 受験 の世界 で も、結果的に人が喜んで くれ るのは 良 いの ですが 、逆 に人 を喜 ばせ よ うとして勉強 しよ うとして しま うと、手 っ取 り早 く、偏差値や 順位 に 固執 して しま う。 ′′′

ただでさえ子 どもは、親の期待や要求 に一生 懸命 に応 えよ うとす る性 質 があ ります。 す る と、競 争 の弊害 と同 じよ うに (92ペ ー ジ <提 言 12>参 照 )、 油断、 挫折・ 焦燥、挫折 。諦念 の 罠 にはま りやす くなるのです。 場合 によっては、 うま くゆかない原 因を喜ばせ たい人に責任転嫁 して し ま う こともあ るで しょ う。被害者意 識 は本 来 の理 想 を邪魔 します。 学習効果 の 面 でいえば、人 を喜 ばそ うとして頑 張 る とい うの は、「 どれ だけ頑張ればその人 は喜 んで くれ るか」 とい うふ うに、成功・ 不成功 の基 準を他人 に委ね て しま うことが 問題 です。 だか ら、 自分は いつ までたって も満 足できな い 。 だか らとい って 、親は子 どもに期待す るのを止 める こ とはで きません し、 そ うす るべ きで もあ りません (19ペ ー ジ参照 )。 子 どもが 偏差値や順位 に固 執す るわ りには、勉強量が不足 していた り、 勉強の質が悪 い ときに こそ、子 どもに勉強法を改善す るためのア ドバ イス


7章 *誤 つた責任帰属・ 過度の他者依存 を与 える こ とが必 要な のです。 こだわるべ きは確かな勉 強 のや り方

(2章 参照 )で あ って、偏差値や順

位 は後か らついて くるものだ、 とい う こ とに気付かせ るべ きなんですね 。 ここで、子 どもの勉強法 の改善 に手を貸す場合、子 どもとバ トル にな っ てはいけませんね 。子 どもとバ トル になる一 番 の原因は、基本的帰属 のエ ラー と言われ る ものです。 基本的帰属の エ ラー とい うのは、他者 の言動 の要 因を、その人 に 固有 の 「状況」 よ りも、その人の「態 度や性格」 に求 めやすい 、 とい うものです。 つ ま り、子 どもの成績 が下が った り、子 どもが勉 強 しない ときに、そ の 子 どもが置かれ た状況を改善 しよ うとす るのではな く、 「そ もそ もお まえっ てやつは」 って態度や性格 を非難 して しま う、 とい う こ とです。 その くせ、大人 は私 自身 の ことで うま くいか ない と、 自分 の態 度や性格 は問題 にせず 、環境や状況や相手 のせ いに して しま うんですけ どね (笑 )。 子 どもを追い詰 めるのではな く、子 どもが困 っている ときにその手助 け を してあげる ことができる親が、尊敬 され るのです 。

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<人 │こ 助けき求めろ > 先ほ どの辰吉さんの言葉の中で、 も う 1つ 重要 な ことが あ ります。それ は「 自分が最善を尽 くしても壁を乗 り越 えられないとき、 人が助けて くれる」 とい うことです。 勉強 においても、 頑張 つている子 どもにはた くさんの味方 が つ きます。 先生だけではあ りません。友人 も教 え合 うな ど して助 けて くれ ます し、 自 分よ り賢い人 と付 き合 うこともできます。 自分 は絶対 に これ 以上できない とい う状況 にな つた ときに こそ、人の手 を借 りる ことが できれば、 自分 は今 まで とは違 う一回 り大きい存在になれ

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1士 十

反対 に、独 りよが りで、 自分 は 「ここまで努力 したんだ」 と表現できな :

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│い 子 どもには存在感がな く、有益な援助を受けに くいものです。 ︱

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子 どもには、「 自分 の努力の レベ ルに応 じて、援助の質も異なる」 とい う│ ■ ことを教えて いただきたいと思います。

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(3)書 物の中から学ベ ー 般 に、勉強 は生身の人か ら学ぶか、書物 に学ぶ か、に分かれ ます。 中 学受験 では、ほ とん どの子 どもが「人か ら学ぶ」 が 中心 とな りがちです。 しか も、次か ら次 へ と流れゆ く言葉 の弾丸 の 中で、 どれがポイ ン トなの か反努 して咀疇す る余裕がない ことがあ る。 そ して「人か ら学ぶ」 ことに慣れ きって しまうと、中学受験 を終 えた後 ′′″

も、「人 に監 視 されな い と勉強 しない」「 自発的 に もっ と努力 しよ うとは思 わな くなる」 な どの弊害が生 じます。 これでは何 のために受験 を し、国私 立 中学 に入れ たか分か らな くな って しまい ますね。 そ もそ も、人 は一 般 に知 ってい る ことだけ しか聞 こ うとしませ ん。です か ら、知 らな い ことは耳 に入 りに くい し、忘れ るの も早 い。誤解 も多 い。 聞 くことが 中心 の勉強 は、 メモをす る時間が与 え られない限 り、知識 は広 が りに くいんです 。 しか も、生身 の 人 か ら学ぶ ことがで きる知識量 には限界があ ります し、 言葉 で言 われた ことは忘れやす い面 もあ ります。 その意味では、生身 の人 か ら学ぶ ことはよいきっかけにはな りますが、それ はあ くまでプラスアル フ ァで しかないのです。 中学受験塾 の拘束時間 がび っ くりす るほ ど長時間 にわたるのは、 この点 を如実 に物語 ってい ます。


7章 *誤 つた責任帰属・ 過度の他者依存 受験勉強 に 限 らず 、勉 強 とい うの は基本 的 には書物 か ら学ぶ べ きです。 い ろい ろな人が貴重な知恵 を残 してい るわけですか ら、物理的 に会 う こと ができな くて も、書物 にあたれば十分 学習できるのです。 また、「学ぶ 」 とい う作業 は、 自分 が 知 ってい る ことを出発点 に しない と効果を上 げ ることがで きませんか ら、 自分の ペー スでやるのが基本 なん です。「書籍 か ら学ぶ 」 であれば、 自分 の ペー スを最優先 に して学ぶ こ と ができ、後戻 りして考 える ことがで きる。 勘違 いを見 つ けた り、新発見をす る ことがで きる とい うおまけ もつ きま す。 ですか ら中学受 験生 であ っても、書物 と向き合 う ことが勉強の本来の姿 である こ とを子 どもたちに教 えるべ きだ と思 うので す。 その書物 とは、読書 に限 らず、テキ ス ト、問題集 、過去問な ど、身近 に あるものです。 この点 に関連 して、齋藤孝 さんの「退屈 力」か ら引用 します。

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『学校 の 勉強 な ど実生 活 には何 の役 に も立 たない とい う声を とき どき耳 にす る。 しか しそ う言 う人 は、勉 強 の 効用を一 面的 に しか捉 えていない。 学力をつ けて難関校 を 目指す ことは大事な ことだが 、受験 の準備 だけが 勉強 の 目的ではない。 ここで言 いたいの は、学力を つ ける こと以外 の勉強 の効用 だ。 た とえば 、思考 の粘 り。 そ うした粘 りがあれば情緒 も安定 して くる。 ま た、物事 を多彩な角 度か ら明せ きに捉 える訓練 として 、勉強ほ どふ さわ し い ものはない。 (中 略)読書 とい うのは、 心のあ り方 に非常に大 きな影 響を与 えるものだ。 (中 略 )あ る程 度 しっか りした内容 の 本 を、1ペ ー ジ

1ペ ー ジきっち り目

で追 って理 解 してゆ くとい う、忍耐 を必要 とする丹念 な作 業を続 けてい る と、人 の話 を じっ くり聞 くとい う (姿 勢 がみにつ く)。 (中 略 )そ もそ も、勉強 す る とい う こ と 自体 が 、人 の言 うことを聞 くと


い うことが基本 にな ってい る。』 成績 が 伸 びない とき、その理 由が理解不足 なのか、先生 の教 え方 が悪い のか、は たまた子 どもの理解力がないか らなのか …、 い ろい ろ頭をよぎる ことで しょう。 しか し、それ らの原 因を いちいちあげつ らう前 に、教わ った ことを獲得 す るメカニ ズム

(2章 参照 )を しっか り確認 してお く必要があ ります。

そ してその メカニ ズムを支 えるのは、「先生 の言 う ことを 補完す るため に教材があ るの」 ではな く、「教材 を補完す るために先生が い る」、 とい う 大原則 です。受験勉強で、効果的 に「聞いて、見 て、や ってみ よ」 が実 を 結ぶ のは 、テキ ス トを中心 に学習す る ことなので す。

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′′び

提言 18

<「 子ざもの話きさ<間 <」 0い う教育 > 家庭内教育のうち、「勉強」と同 じくらい重要なものに「人の話 をよく聞 くこと」があ ります。人の話をよく聞 くことの大切さは言 うまでもあ りま せんが、相手 と自分の気持ちを通わせ、相手に安心感を与える ことと引き 換えに、自分も感謝と内省を得る。 人の話を聞くという能力は、授業のときだけでな く、上司や部下との関係、 恋人や友人との関係、すべての生活関係 の基礎となる重要な能力です。 人の話をよく聞くための アケ条は次の通 りです。 ① 自分がや つていることを中断 して間 く ②口をはさまず相槌を打ちながら聞く ○次に自分が何 を言うかを考えないで聞 く ④話の内容と関係ないことを考えないで聞く ⑤聞いて分からない内容があれば質問する ⑥矛盾や饂館があれば指摘 してあげる


7章 *誤 つた責任 帰属 。過度の他者依存 ■ ︱ ■ ■︱

②舌足らずなところは補 つてあげる

家庭内で親が子 どもの話をよく聞 くということを態度で示 してあげる、 らえる心地よさを知 らないと、人の話を聞こうとは しないからですね。

︱ ■ ■I

これは実はとても立派な教育なんです。子 ども自身が自分 の話を聞いても

(4)主 体性がない∼過鷹の他者依存 子 ども と接 していて、「あ∼ 、 もっ としっか りして よ∼」 と思 った こと はあ りませんか。例 えば次 のような場合 です。

*自 分 のや るべ き ことが分か っていない *や った ことを忘れ る

*す ぐ親 を頼 る

る力」ですね。 つ ま り、 自分 の意志 ・ 判 断で行動 しよ うとす る「態度」を 「何 言 い ます。言い換 える と、主体性 は子 どもの積極的な 「態度」 を言 い 、 をす るか」 は別問題 です。 主体性 とい うのは、 いわば「ハ コ」 の よ うな もので、そ のハ コの 中 にい ろい ろな ものを入れなが ら、徐 々に大 き く育 ってい くのです 。小 さい とき か ら、いろい ろな経験 を積みなが ら、徐 々に「 自分 の意志でや ろ う」 と思 えるよ うになるわけです。 そ して主体性は、葛藤 と癒 しの間を行 き来 しなが ら育 ってゆきます。次 の 図を見 て ください 。

一    一

主体性 とは、「 自分 の事 として進んで取 り組 む力」「 自分 の事 として考 え

¨′ 一 ¨′   一 ′ 一

こんな ときに頭を よぎるのが、「主体性がないのではないか」 です。

*手 遅れな ことを相談す る *自 分 で も意味が分 か っていない ことを相談す る *責 め られ る と「 じゃあ、 どうすれ ばいいんだ」 と開き直 る


親 ・ 教師 の強制的態度

B

A

C

D

不安定

親・教師の協働的態度 タテ軸は、子 どもに対する強制的な接 し方 と、子 どもとする協働的な接 ′′′

し方です。 これ らの大人の接 し方に応 じて、子 どもの気持ちは安定 と不安 定 の間を揺れ動 くことにな ります。 葛藤 と癒 しの両方 の契機が両輪 となって子 どもが主体性を身につ けてゆ くわけですが、 これが葛藤だけで癒 しがない と、子 どもはいつまでたって も自分 の態度をはっき りさせることが難 しくな ります。 葛藤だけで癒 しがない場合 とは、例 えば次 のよ うな場合です。 ① 自分で管理できる時間がほ とん どない ②成績が伸びた ときや頑張 った ときに、「たまた まだ」 とか「もっと 頑張れ」 と言われる ③家庭でも休憩な く長時間の学習を強制される ④子 どもが親 に信用されてい ない、あるいは家庭の中で自由な会話が 長続き しない ⑤親同士 の仲が悪かった り、親の意見が大き く食 い違 っている


7章 *誤 つた責任 帰属・ 過度 の他者依存

反対 に、葛藤 がな く癒 しばか りなのは次 のような場合 です。 ①塾 でお客 さん状態になっていて、先生 から放置 されていて何 とも思 わない ②子 どものやる気が失せ ると、先生 も親 もお手上げ状態になる ③テス トに向けて準備 もしない し、テス トの解き直 しもしない こと が常態化 している これ らの よ うに、 自分 の 出番 が有名無実 のままである と、い つ までた っ て も主体性 は身 につかないんですね。 そ うな らないために も、葛藤 と癒 しの両輪で子 どもの力を引 き出す こと が必要 なんです。 例 えば 、親子 で山登 りをす る とします。子 どもは初 めの うちは「登れそ うな気 がす る」 ので、親 についてきます。 しか し道程 を進む うち、次第 に 苦痛 が増 して、 自力で進 むか、それ とも助 けを求 める (断 念す る)か 葛藤 します。 しか し親 は これに手を貸す ことな く、 自力で進 む ことを要求す る。子 ど もは泣 いた りもす るで しようけれ ども、最後 まで 自力 で歩かせ る。 頂上 に達 した ときには、子 どもは「なぜかやればできた」 とい う感慨を 持 つ ことで しよう。 その代 わ り、体力を消耗 した子 どもには、きちん と癒 しを与 える。その 癒 しは、その子 どもが満足 し、笑顔 を取 り戻す ことができるものであれば 十分 です。「よ く頑張 ったな」「できる と思 っていたよ」 とい う声かけだけ で も、顔 の 汗を ぬ ぐいでや るだけで もいいんです。 これが、「葛藤」 と「癒 し」 です。 勉強 で も同 じことです。強 い 力 で グ ッと子 どもを引 き上げる、子 どもは なぜかで きるよ うにな った と自分 の成長 を実感する (19ペ ー ジ参照 )。 そ れが きっか け となって、 自分 の意思 でや ろ うと思 えるよ うになる。

′′タ


さ らに、 強制力を行使 して 子 どもの能 力 を引き上 げ る こ とには、「時 間 の節約」 とい う効果 もあ ります。子 どもの 自発的成長 に任 せておけば 時間 がかか る ことも、強制力 の行使 によって成長が早 まるわけです。 ただ注意が必要 な ことが

2つ あ ります。

第 1に 、子 どもがや っ と解 け るよ うにな ったのを 見届 けて も、それ で 終わ りに しない とい う こ とです。 例 えば、鉄棒 の逆上 が りを練習 していて 、「や った、 で きた

│」

で練習

を止 めて しま うと、翌 日は また同 じ苦労 を して しまい ます。そのよ うなム ダを しないためには、で きるよ うにな った直後に、 同 じことを繰 り返す こ とが必 要 なのです。 勉強 で も同 じことです 。 1回 解 けただけの 自信 と、 2回 以上解 いた後 の 自信 は全 く別 ものなのです 。 第 2に 、順調 に学習 を進 め ていて も、 あ る ところか ら先 へ 進 めな くな ′′θ

る ときに、 無理 にや らせ ない ことです。子 どもに勉強 を教 えていると、 つ い 「で きるはずだ」「なぜ で きないん だ」 と思い込ん で、 しつ こ く何度 も や らせ て しまいがちで すが、冷静に原 因を見定めな くてはな りません。 先 へ 進 めな くなる原 因は、① その前の段 階が定着 していないか 、あるい は、②必要 なステ ップを 飛 ば して高す ぎる課題を設定 したか、の どち らか です。 ① の場合 には、前 の段 階 に立 ち戻 る ことが必要。② の 場合 には、次 に取 り組 ませ る課題の レベ ルを 下 げる必要があ ります。 いずれの場合 にも、必 ず最後 には達成 させ る こ とがポイ ン トです。辛い ばか りで何 も得 るものがない 経験 は、百害 あ って一 利 な し、です。 世 の 中で一 番過酷な刑罰 は、せ っか く自分 で掘 らせ た穴 を 自分で埋 めさ せ ることを毎 日繰 り返 させ る ことだ と言われ ます。達成感 のない労働 ほ ど、 精神的にキ ツイ ものはないんですね。


7章 *誤 つた責任帰属・ 過度の他者依存

STEP 3

STEP 3

′′′

STEP 2

_虚豊壼…

STEP 2

STEP l

_¨ 議 = ==戦

STEP l


FIIIIIIIIIIIIITIIIITITI

提言

19

i

<自 分き評価する能力 >

l

「最後の授業 ぼ くの命があるうち に」 (ラ ンデ ィ・ パ ウシュ)と い う本を 目 ご存知で しようか。大 ヒッ トした本なのでよ くご存 じの方も 多 い と思いま ■ │

ず° すい臓がんで余命 6カ 月を宣告 された大 学教授 が、幼い 3人 の子 どもに

日 あてたメ ッセージ (最 後の授業 )で す。 その 中で も、次のメ ッセージは、日

とても印象的です。

『 *(自 分 が幼 い ころの 我 が家 では)辞 書 は食卓か ら 6歩 の本棚 にあ っ ロ ■ た。わか らない ことが あれば 自分 で答えを見 つ ける」がわが 家のモ ッ トー だ つた。面倒 くさが つて、座 つたままあれ これ 考 えることはあ りえなかつ ′22

i │

た。僕 たちはもつといい方法を知 つていた。百科事典を開け。辞書を開け。日 心を開け。

*最 近 は子供 に自尊心 を与える ことがあ ち こち で話題にな つている。た 日 日

だ し、 自尊心 は与えるものでは ない。 自分 で気づ くものだ。 グ レアム監 督

i

のや り方 に、 甘やかす ことは あ りえなか つた。 グ レアムは子 どもの 自尊心

日 を育てるためにい ちばんいい方法を知 つていた。できないことをや らせて、日

できるまで必死にや らせること、それを繰 り返 させることだ。

*教 育者の いちばんの役割 は、学生が 内省する手助けをする こ とだ。人・ 間が向上する唯一の 方法は、一 グ レアム監 督が教 えて くれたよ うに一 自分 を評価する能力を伸ばせるか どうかだ。』

i

ここで述 べ られている「 自己を評価する能力」 とい うのは、 メタ認知 力 │ に通 じるものがあ ります。メタ認知 とい うのは、 自分で自分をモ ニ タ リン ロ グする力をいい、効率的に学習を進めるうえで欠かせない能力です。 メタ認知 には、主に次の 5つ の 内容があ ります。

:

:


7章 *誤 つた責任帰属・ 過度の他者依存 日 第 1に 、 自分 の知識 についてのメタ認知。「 自分は何 を知 つていて何を知 日 │ら ないか」を認識 しているかどうか、です。「○○の こと知 つてる ?」 つて ■

:子 どもに尋ねたときに「分か らない」 とい う返事が くるときは、 自分 の知 : :識

について整理ができていません。知 つているもの と知 らないものを区別

i

日しておき、知 らない知識の獲得 に集 中的に労力を投下すれ ば、効率的に学 │ 1習 を進めることができます

1

第 2は 、 自分の能力につい てのメタ認知。「 自分は何 ができて何ができな │

1 日 いか」「 自分 はどこまでできるか」を認識 しているかどうか、です。 自分 の ■ 日 ではできな いな と判 断すれば、他人 の援助を得 るな ど して、 目的を達成 i i力 ることができます。 │ lす

1

第 3に 、 自分 の心 と体 につい てのメタ認知。適度な休憩 を入れ ることに 日

│よ って、 よ り集中 して学習をする ことができます。

日 第 4に 、適切な対処方法選択 につい てのメタ認知。 これは、課題解決に 日 ■ ■

iあ

たり、 自分の経験に基づいて最適な方法 を選ぶことができる力です。

′′ヨ

i

5に 、 自分 の行動の結果についてのメタ認知。 これは、 自分の思考を 目 日 第 1行 動に移 し、それを評価 し訂正する力のことです。一定の目的に向か つて、日 1同 じ誤 りを繰 り返さずに、ス トレスな く物事を進展させるのに必要な力で 日 目す。

:

小学生の場合、 これ らの力はす ぐに身 につ くものではあ りません。人の

:助

1

けが必要です。 例えば「知 らないことは辞書で調べ る」という行動を身につけさせる場合、

日言葉で「調べておけ」と言 つただけでは身につ くはずはあ りません。

1

子どもは「辞書を引 くべきだ」には同意 しましたが、「実行すること」に

・ は同意 してはいないのです。親子で良さげな会話 を した り、問題点を話 し i合

1

っただけで進歩 した気になってはいけません。 な らば どうすればい いか と言 うと、 できるようになるまで見届 けて、

ロフィー ドバックするところまでやることです。


日 つまり、子どもが「○○の意味を教えて」と聞いてきたとき、まずは「辞 │ :書 を引きなさい」です (指 示 )。 そ してその様子を観察 しながら (観 察 )、 日 :辞 書の引き方やほかの調べ方を教える

(フ

イー ドバ ツク)。 できるだけ早 く:

フイー ドバ ツクすることで、子どものス トレスを軽減 してあげることがで ■ i lき るわけです。 │

:「 子 どもは信頼 しても信用は しない」 というバランス感覚が大切ですね。日 日つ ま り、気持ちは通 じあ つていても、事実は事実 と して 目をそ らさない こ

とです。 十日 ■■ ヽハ 乙υ :ヨ

"嘔

<マ シ ュマロ脳奮鍛えろ > 幼児期の子 どもに対する「マシ ユマ ロ実験」 とい う有名な話があ ります。 これは、 1960年 代 にアメ リカのスタンフォー ド大学の心理学者達で行われ

′′イ

たものです。 内容は、4歳 の子 どもの 目の前 にマシ ユマロを置 き、 15分 間食 べ るのを 我慢できた らもう 1個 マシユマ ロをあげると言いその 場を去 り、 15分 後 ま でその子 どもを 1人 で マシユマ 回の 前 に残 してお くとい うものです。 どれ だけ待てたか、その 平均は約 6分 だ つたそ うです。 そ して、 10年 後 にその実験を した子 ども達の状況 を確認 したところ、マ シュマ ロを食 べ るのを我慢 していた子 どもの方が、ス トレス耐性や、 学力・ 1問 題処理能力が高 く、社会で成功 しているというものです。 日 成長 して大人にな つても、 この「 自制心」はよ く話題 にな ります。今週 :か らダイ エ ッ トを しよ うと決意 しても、週 末にお友達 とランチがあるか ら i来

週か らに しよう。 こ う してやる べ き ことが どん どん先延ば しにな り、な

│し 崩 し的に希望が失せてい くわけです。

1

小学生の場合、 中学生や高校生 と違 い、 この「 自制心 を養 う」が何 よ り


7章 *誤 つた責任帰属 。過度の他者依存 日 も増 して重要です。小 さなときに こそ必要な教育だか らです。

i

:

と ころが今は、子 どもが中心にな って しまい「子 どもが勉強 して くれな い」 :

も少な くあ りません。 この ような家庭の子 どもの多 くは、おや つ │ 日と嘆 く声 1を 野放図 に食 べ る、 テ レビやゲ ームを際限な くや りつづける、な どの特徴 │

日があ ります。

さ らには、家庭で のお出かけや行事が多 いのも特徴的です。週末 になる

とどこそ こへ おでか け。塾がな い とど こそ こへ お出かけ。子 どもも喜んで いる し、 まあいいか、です。

i

しか し、受験生 とい うのは受験の ことを中心 に考え、行動するものです。│ 成績 が上 が らないか ら気分転換、勉強 つ らいか らひ と休みが必要、頑張 つ │ 日 ているか ら ご褒美、な どとい うよ うに人が与 える休息や ご褒美は、本 当は

子どものためにはな りません。勉強 の悩みは、勉強で しか返す ことができ

i

ないんです。勉強はあ くまで自分 のためにするものです。

日 しなけ して、勉強 │ 勉強 とそれ以外の ことの中心がどちらにあるのか、そ

ればならないなら何をあきらめなければならないのか、を親子ともどもつ │

きつめて考えることが必要なんですね。

ち ょつと厳 しい こともあるとは思いますが、来る受験 に向けて、そ して

i

子 どもの将来のため にも、勉強 を中心に据 えた 「マシ ュマ ロ脳」がで きて 日

:い るか どうか、点検 してみる必要があ りそ うです。

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J

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(1)未 来を予‖するための最良0方 法は、自分でホ来を作‖出すここだ 「計画表」 とか「スケ ジュール」を作 って こられた方 は多い と思い ます。 しか し、せ っか く計画表を作 って もなかなかその通 りには進 まず、つ い 「 自分 は本 当にダメだな」 と思 って しま うで しょ (笑 )。 しか し、計画通 りに事が進 まな くて も、 ダメ人間ではあ りません。計画 表 の利用 の仕方に誤解があ るだけです 。 計画表 は作 った瞬間に過去の もの とな って しまい、 日々変わ りゆ く生活 条件 とはかみ合わな くな りますか ら、計画 した とお りにきっち りと物事 が 進む ことはあ りません。 じゃあ 、 なぜ計画表 を作 るべ きなのか。 それ は、計 画 (予 測 )し た ことと実 際 の 結果 を比較 す る ことに よって、 学習 の仕方を改善するためです。 ′′′

つ ま り、計画 (予 測 )し た通 りに勉強 が進 めば、 うま くい った要因を探 り、その 要 因を強化す る。反対 に計画 (予 測 )し た通 りに勉強が進 まなけ れば、 うま くいか なか った要因を探 り、軌道 を修正す る。 計画 は達 成す べ き目標 ではな く、学習方法を改善す るための手段な ので す。計画 は定 期的に進化 させて こそ意 味があ るものです。 日々勉強 を重ねていて、「 この ままで大丈 夫 なんだろ うか」 と心 配 にな ることは 、誰 にで もある ことです。 しか し、不安なまま勉強を進 める こと ほ ど効率 が悪 い ことは あ りません。 「未来 を予測す る最良の 方法 は 自分 で 未来 を作 り出す こ とだ」 と言われ ますが、 自分 で未来を作 り出すための出発点 が まさに「計 画」 なのです。 や らなけれ ばな らない ことが山積み にな ってい る人 は、「 これがあ るか ら、あれがで きない」 って愚痴を言 い ますが 、結局何 もや っていないの と 同 じです よ。何 か他 に良 い方法がないか と、手を広 げよ うとす る前に、 計 画表を定期 的 に更新 してゆ くことに よって、本 当に必要 な学習法を再発見


8章 *手 を広 げすぎて しま う

しま しょう。

(2)積 上方式から違算方式ヘ 勉強 の進め方 については、積上方式 と逆 算方式 が対脈的に比 較 され るこ とがあ ります。 積上方式 とは 日の 前 の課題を一つ一つ 解決 してゆ く手法を言い、 これに 対 して、逆 算方式 とは到達 目標か ら逆算 して立 てた計画 に従 って課題 を解 決 してゆ く手法を言 い ます。 例 えば、積上方式 は朝食で言 うと、 ち ょうどパ ン食 のよ うな もので、そ の 場 でさっ と仕上 が る。 これ に対 して、逆 算方式 は米食 の よ うな もので、 寝 る前 に翌 日のメニ ューを考 え、米 を とぎ、 タイ マー をかける。 多 くの子 どもたちはふだん「積上方式」で勉強 して、試験が近 づ くと突 然 「逆算方式」 に変更す るため、 試験前 は一 日何十 ペー ジな どとい うハ イ ペー スでや らない と終 わ らな くな って しまう。 「 ひ ぇ∼ 、ど、ど、どうしょ∼ 、 だれか助けて え∼」 ってね (笑 )。 で もですね 、これを何 回 も繰 り返す、つ ま り学習 しない人が、失敗す る。 塾 について行 けな くな る。 笑 い 話では済みません よね。 そ こで、なぜ この よ うな ことに な るのか、計画 さえ立てれば大丈夫 なの か、が 問題 です 。 塾のカ リキ ュラムは通常、逆算方式 で組 まれてい ます。つ ま り、中学受 験 に必 要な学習項 目を小学

4年 生 まで さかのぼ って配列 してあ るのです。

そ して 、逆算方式の本質 は、 日標 か ら逆 算 した学 習計画です。 目標や理 想 を掲 げて、「よつ しゃ、や るぞ

!」

「よ し、できたぞ

!」

とい う気持 ちの

高揚感 が続 くか ら、 結果 として 効率 的 に学習 を進 め ることがで きる (62 ペー ジ <提 言 10>参 照 )。 とすれば、塾のカ リキ ュラムは 「逆算 方式で効率 が良い」 とい うのは確 かにそ うですが、 それ は結果 としてそ うな りうる、 とい うだけの話 です。

′′タ


塾 のカ リキ ュラムの中に見 い 出せ なければ、 子 ども自身が 目標 とか理想 を、 い くら立派なカ リキ ュラム も絵 に描 いた餅 にな って しま う。 この状態 が続 くか ら、「だれか 助 けて ぇ∼」 にな って しま うんです。 だか らとい って、「 目標 を持 って頑張 りな さい」 と言 って も、それ は子 どもに とって漠然 としすぎて心 を打 ちませんね。 ち ょっ と、下 の積上方式 と逆算方式の違 いを見 て ください。

課題の難易度

積上方式 (瓦 屋 )

逆算方式 (ベ ンキ屋 )

易 しい

難 しい

→ 満点主義 (減 点方式 )

→ 合格点主義 (加 点方式 )

→課題 の取捨選択が不要 →課題 の取捨選択が必要

′3´

積上方式 は学校の勉強 のよ うに、 一 般 に課題 の難易度 は易 しく、求め ら れ る成績 は 100点 です。勉強 法 は、瓦屋 さん の よ うに、一 枚 一 枚 きっち りはめ込ん でゆ くよ うなや り方 で進 めてゆ くことにな ります。 これに対 して逆算方式は、受験勉強 のよ うに一 般 に課題 の難易度 が高い ため、合格点 に足 りるだけ の勉 強 をすれば よい。課題 の取捨選択 も必要 で す。勉強法 は、 ペ ンキ屋 のよ うにザー っと一 気 に塗 り、それを何度 も繰 り 返す ことにな ります (31ペ ー ジ参照 )。 優秀 な子 どもが中学受験 で失敗 して しま うのは、課題 が難 しい (逆 算方 式 )の に も関わ らず、頭 の中が満点主義 (積 上方式 )に 支配 され ている、 とい うね じれ現象 に縛 られて い る場合です。 つ ま り、学校 の勉強 にかけてい る努力 と同 じだけの努力 しか払 っていな い くせ に、 100点 とまで はゆか な くて も、周 りの 人 ほ どの点数 が 取 れ な い ことがたま らな く悔 しくて、恥ずか しい。 このよ うな事態 を回避す るためには、積上方式 か ら逆算方式 へ 上手 にス テ ップア ップ してゆ く必要があ ります。


8章 *手 を広げすぎて しまう 繰 り返 しにな りますが、逆算方式 は、① 目標 (理 想 )、 ②計画、③情熱 、 の 3拍 子 が揃 わない とその威力を発揮 しません。 そ して まず、「 目標」 はや るべ き こ とが見 えて こない と、立 て よ うがあ りません。例 えば、 ピア ノを弾いた こ とのない人が これか ら ピアノを 習お うとす る ときに、「あなたの 目標 は何 です か ?」 と聞かれ て も、答 えよ う があ りませんで しょ。 反対 に、社会 人が これか ら英会話 を習お うとす る ときに、「あなたの 目 標 は何 ですか ?」 と間かれれ ば、「海外旅行 」 とか「留学」 とか 目標 を言 うことがで きます。 これはなぜか とい うと、中学生の ときか ら多少は英語 を学んでい るために、 どこか ら学習すれ ば、 どの レベ ル に到達 で きそ う、 とい う見通 しが立 ってい るか らです。 見通 しが立 たない と、 日標 は立てる ことが できないんです。 同 じよ うに、勉強 について もまず、今 自分 が到達 してい る地 点を はっき り認識す る必要 があ ります。 この段階では、積上方式 で、つ ま り瓦屋 さんのよ うに一 枚 一 枚 きちん と 瓦を敷 き詰 め るよ うに勉強 して、できる ことを少 しで も増や してい くこと にな ります。 次に、 目標 の立て方ですが、 日標 が 「ム リだ」 と思 って しま うほ ど高い と、今度 は情熱 がついて これ ませんか ら、それ までの経験 則 か ら、できる かできないかの レベ ルに設定す る こ とが必要 です。 この とき、「 この子 の 目標 は低いな ぁ∼ 」 って 嘆 きた くな る ことっ てあ りますで しょ (笑 )。 そんな ときは、土 日とかを利用 して子 どもに難 問に取 り組 ませ、一時 的 に レベ ル を上 げて しまう、 とい う手段 があ ります (119ペ ー ジ参照 )。 自分 の立 ち位置が高 くなれば欲 が出てきて、子 どもの 目標設定 も高めに 出るはずです。 ただ し、 「毎週特訓す るぞ」は場合 によってはや りすぎです。 親 は「もっ ともっと」 と思 って しま うものですけ どね 。

′ヨ′


このよ うにして、 日標 が定まった ら、後は計画づ くりです。次節でみて ゆ くことにしましょ う。

(3),週 間の学習計画のたて有 子 どもたちの 日々の 学習時間 には、朝起 きて学校 に行 くまで と、学校か ら帰 って きて塾 に行 くまで の 間 に確保 できる「数 十分」 (ス キ マ タイ ム)、 塾 か ら帰 ってきてか ら就寝す るまでの間に確保 で き る「数時間」 (ゴ ール デ ンタイ ム)、 塾 も学校 もな い「終 日」 (フ リー タイ ム )、 この 3つ があ り ます。 月

学校に行 く前

(ス キマタイム)

一    ︼

一′

一′

一3

学校

塾に行 く前

(ス

キマタイム)

フリータイム

塾帰 り∼寝るまで (ゴ ールデンタイム)

そ して 、 スキマ タイムには机がな くて もす ぐで き るもの (暗 記や一 行 間 題 )を 選んでや る。 これ に対 して 、 ゴールデ ンタイ ムには机 の前 で じっ く り取 り組 む作業 (特 に塾 のあった 日は必ず解 き直 し)を す る。そ して、フ リー タイ ムには数時 間 を要す る作業 にあてるよ うに します。 なぜ このよ うに時 間を区別す るので しょうか。 それ は、 ま とまった勉強時間がな い と勉強できな い 、 とい う ことにはな らないか らです。 しか も、 一度 に長時間かけて勉強 しよ うとす る と、 つい ダラダラ しがちです。 課題 ごとにや り方 もかかる時間 も異 なるわけですか ら、 フェー ズ ごとに 必要な時間を割 り当て るために勉強 の機会 を増やす ほ うが、メ リハ リもあ


8章 *手 を広げすぎて しまう る し効率 もよいのです。 例 えば、社会 の知識 につ いて、週 1回 だけま とめて覚 えよ うとす る人 と、

15分 かけて覚 えよ うとす るの と比 べ る と、後者 の方がはるかに実 力 がつ きます。 しか も、「 15分 以内でや る」 な ど、時間をキチ ッと守 ってや

毎日

る と効率が加速 します。 ですか ら、1週 間 の うち 「学習す る機会 をできるだけ増やす」 とい う視 点で、学習計画を作 ってみ て ください 。

(4)試 験前の学習計画のたて有 もうひ とつ 、 日々の勉強 に加 えて大事 なのが、試験や模試の対策 です。 試験対策 は、 自分 の知識 を整理 し、本番 に通 用す るよ うに練習す る重要 な機会 です。試験を受 け る前 に予想 した 自分 の実力 と、試験後の結果 を比 較 して、 自分 の学力や勉強 に対する取 り組み方を改善 してゆ くことができ ます。 ところが小学生の場合、試験や模試 の解 き直 しを指示 され ることはあ っ ても、試験前の準備が十分 である人 は少 な いよ うです。 もち ろん、試験範 囲が あ い まいで あ った り、準備 す る時間がな いな ど、 できない理 由 もあるで しょ う。 しか し、十分な準備を しないで受 けた試験 では、 自分 の実力が反映 され ないわけで すか ら、そんな試験はそ もそ も受ける意味なんてな いん じゃな いで しょうか。 この点 で、多 くの人が麻痺 してい るよ うに思 います。 とりあえず試験 を 受け て、悪 か った ところをチ ェックして、準備不足を反省すれば いい 、と。 ところが実際は、事前 に準備 しない子 どもが、試験後 にきちん と復習す ることはないのです。試験 で問われ る ことに対す る問題意識が薄いか らで す。 試験や模試 は、学習に対 す る取 り組 み方を加速 させ るために有効活用 さ

gヨ ′


れるべ きで、そのへ んに腐 らせてお くべ きではあ りません。 模試 の 10日 ∼

2週 間前 になった ら、 その対策を計画 しま しよう。具体

的 には、日常 のイ ンプ ッ ト期 と、試験

2週 間前 のアウ トプッ ト期 に分 けて、

学習計画 を作 ることにな ります。

【 学習計画作 りの例】 時間の間隔

数十分

インプッ ト期 (平 常期 ) 暗記 (苦 手中心 ) *漢 字 。ことばの知識の暗記 *理 科 。社会の暗記

アウ トプッ ト期 (試 験前) 暗記 (範 囲全体 ) *出 題範囲の知識の暗記

*苦 手分野の反復

*算 数の一行問題

数時間 一

¨ 一

一    一

一イ 一ヨ ′

終日

解き直 し (苦 手中心) *塾 でや つた 問題の解き直 し

解き直 し (範 囲全体) *塾 でや つた 問題の解き直 し

*間 違いノー トの作成

*間 違いノー トの作成

重たい作業

過去間や模試

*読 書

*前 回の模試の解き直 し

*白 地図 。年表の作成

*過 去問

*資 料集の通覧・ 博物館め ぐり *小 学校の理社の教科書の読み *過 去のテキス トの解き直 し

込み

*歓 喜カー ドの作成 試験 には まだ余裕があ る「イ ンプ ッ ト期」 と、試験 間近 の「アウ トプ ッ ト期」 に勉 強 の視点を変 えるのがポイ ン トです。 一 日中休み の ときは、イ ンプ ッ ト期 の 場合、読書 や、 自地図 。年表 の作 成、資料集 の通覧、博物館 め ぐり、暗記 カー ドや間違 い ノー トの作成 に費 やす。他方、アウ トプ ッ ト期 には、 過去 の 模試 の 問題や過去間を時間を計 っ て解 く。 学校 に行 く前の数十分 には、イ ンプ ッ ト期 の場合 、苦手 な分野を集 中的


8章 *手 を広げすぎて しまう に覚 える。 これに対 して、アウ トプ ッ ト期 には試験範囲を広範 囲 に見直す。 この とき、計 算 シー ト、 一 行問題集 、漢字練習帳、暗記 カー ドが威力を発 揮す るで しょう。 受験 時代 の ときを思い出 してい ただければ了解 していただける と思いま すが、イ ンプ ッ ト期 には とにか く参考書 と問題集 とに らめ っこして、苦手 分野 を潰 していきます。 これに対 して 、アウ トプッ ト期 には試験本番 で ミスが出ない よ うに試験 範 囲を くまな く潰 してい くのが よいのです。 そ して、学 校 か ら帰 って塾 に行 くまでの 間 と、塾か ら帰 ってか ら就寝す るまでの間に確保 で きる「数時間」の 間には、その 日の宿題 をや った り、や っ た問題 を解 き直 します 。 こ こで重要 な ことは、そ の 日にや った ことはその 日の うちに復習す る、 あ るいは解 き直す こと、です。 す ぐに解 き直せ ば、解いた り再現 す る時間が短縮 され ます。 これ に対 し て、 しば らく放置 して しま うと、解 い た り再現 す る時間を短縮す る ことが できません。 ときにはす っか り忘れ て しまうこともあるで しょう。 以上 のよ うに、家庭 で確保できる時間に応 じて、イ ンプ ッ ト期 とアウ ト プ ッ ト期 に分 けて、 日々の学習を点検 。モニ タ リング しなが ら、 リス トを 微調整 してい く、 このよ うに して受験勉強の効率 を上げてゆきま しょう。

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<い ったん計画したもの6、 万難き排 Oτ 完成じせさ> これは、元経団連会長の土光敏夫さんの言葉です。 これだけ じや分か り ませんので、もう少 し引用 してみます。 「いつたん計画 したものは、万難を排 して完成させよ。その中で人間形成 ができる。・…計画は、個 々人にとつては、自己研鑽の場をつ くる強烈な意

′ヨ5


■ 思の力によつて、群がる障害に耐 え、陰路 i真

(あ

いろ)を 乗 り越 える過程で、日

の人間形成が行われる。

i

計画 とは、結局、 自分のものであ り、 自分のためにある。その ことを各 日

l

日人が 自覚 した ときに、計画 は真の力を現す。・…やるべ き ことが 決 まつたな │ら ば、執念をもつて とことん まで押 しつ めよ。問題は能力の限界ではな く、

i執

念の欠如である。」

日 とても力強い言葉です。結果ではな く、計画を実現する過程が人 間形成 日に資するのですね。

1 日

受験勉強の是非はすでに解釈 の 自由を獲得 し、 これを語れば神学論争の

しか し少な くとも、 自分の意思で 自分 自身を コン ト回―ルする余地 を広

:げ ることができたならば、受験勉強には意味があるのではないで しょうか。 口 「 自分 に命令できない人は、迷 い子のままである」 (ゲ ーテ)な どの格言 日も示す とお り、 自立 してゆ く過程 に人 は悩むものですが、実は 自立 して初 ︱

ヨび ′

めて人はその真価を発揮 し始めるものなのです。

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(5)計 画の実行を視党化する 学習計画 は立 てたけれ ども、それに意 味 があるか どうかは、や ってみな け りゃ分か りませんね。計画倒れが 一番怖 い。 しか も、継続 して取 り組 まない と、何が良 い要 因で何が悪 い要 因な のか も見 えてきません。 そ こで、誰 の 目に も見 えるよ うに、毎 日、学習 の軌跡 を残 してお くとよ いで しょう。 例 えば、朝、学校帰 り、塾 帰 りの 3回 、カ レンダー に星 印を書 き こませ る と、や らない ことに違和感 を持つ よ うにな ります。 あ くまでゲー ム感 覚 でや るべ きで、子 どもに対す る攻撃材料 に してはいけません (笑 )。


8章 *手 を広 げすぎて しま う あるいは 、や るべ き ことを付箋 に書 いてカ レンダー に貼 っておき、や っ た ものか ら順 にはが してゆ く、 とい う方法 もあるで しょう。 い ずれ に して も小学生 の 場合 は、「励 ま し」 が とて も重要 です。星 印や 付箋な どを利用 して、子 どもを頻繁 に褒 める ことができる仕組みを作 る こ とには大 きな効果があ ります。 子 どもたちには、ぜひ続 け る ことの達成感を獲得 して欲 しいですね。 も ともと夢があ るのではな く、夢が 自分 を作 るか らです。 そ して 、 自分 の夢 を形 にす るのが計画なのです。

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(r)今 のや‖かたで本当にいいのだろうか 初 めて 受験勉強を始 め よ うと思 い立 った ときの 関門は、「塾探 し」 だ と 思 います。 何せ 「初 めて」 ですか ら、 どこの塾 に してよいか迷 うものです。その と き、大 勢 の 人 は 自分 に似 た人 の真似 を しよ うと します。「あの人 がや って いるこ とだか ら…」です 。決断す る労力 も時間 も比較 的少な くてすみ ます。 この よ うに、他人の行動を参考 に して 自分 の行動が適切か どうかを判断 すれば、 うま くい くことが多い ものです (社 会的証明 の原理 といいます )。 しか し反 対 に、予想外の結果 に失望す ることもあ ります。 例 えば 、ある飲食店 で 、入場制限を して店 の 外 に行列を作 らせた としま す。す る と、 この行列が「社会的証明」 とな り、次 々 と人が並 び始め、 つ いには長蛇 の列ができる、 とい うことが あ りえます。 ′イ´

この とき、期 待 していた料理が口 に合 わない場合 でも、やむな くそ こで 食事を とらぎるをえな くな ります。飲食店の場合 な ら「もう来 ない」 で済 むで しょ うけれ ども、塾選 びや教 材選 びの場合 はそ う簡単ではあ りません。 塾に通 わせ、あるい は教材 を与 えるのは、 中学受験ではほんの入 り口に 立 ったに過 ぎません。 人は才能 も個性 も違 い ますか ら、形 だけ人 の真似を して もうま くゆ くは ずがな く、 自分に合 うよ うに合理的にカスタマイズ してゆ く必要があるの です。 そ こで 本章 では、家庭 でできる 中学受験生 のバ ックア ップ方法をみてゆ きたい と思 い ます。

(2)先 生

(塾・ 家庭教師 )を 選ぶ 7つ の基準

塾や家 庭 教 師選 びは相 性選 びの よ うな ところが あ りま して 、 あの子 に とって 良 くて も この子 に とっては良 くない 、なんて ことは よ くあることで


9章 *親 のサポ ー トが うま くゆかない

す。 そ こそ この合格実績 がある塾であれば、あ とは教わる先生 と家庭 との相 性 が決定的 に重要なんですね。放置 される ことは、親 でもツライ ときがあ ります。 そ こで、先生 と家庭 との相性 の 5つ のチ ェックポイ ン トを見てゆきた い と思います。 ①中学受験生を指導で きる教務力があるか 教師 はベテランに越 したことはあ りませんが、それ はベ テランの意味に もよ ります。教師 には「六者訓」とい うものがあ りますが (図 参照)、 まず しっ か り指導できるか、が問題です。

′ 一

入試情報・学習法について

子どもの利益 を守る保護者

ボー⋮ ‘ ;鞠 K

付き、正確な診断と 処方ができる医者

つ : :

子どもの混乱した話を整理 し、子どもにもわかりやすく 説 明し、安心感と信頼感を 与える学者

中学受験生 を教 える場合、相手 は小学生ですか ら、一 方的 に しゃべ りま くるのではな く、子 どもの混乱 した話を整理 し、子 どもに安心感 と信頼感 を与 え られ る人が望 ま しいで しよ う。 また、 中学受験 の指導 ができるか については、四谷大塚 の予習 シ リー ズ が教 えられる、あるいは志望校 の合格実績 があ る、等の点 で判断す る こと

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子どもの行い

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のつまずきを予想して対処できる危


にな ります。 なお、体験授業を したら、次 のよ うなチェックを してお くとよいで しょ つ。

●授業の分か りやすさ

(よ

く分かる

ふつ う

分か りにくい)

●先生の熱意

(よ

く伝わる

ふつ う

伝わ らない)

●授業の満足

(と

ても満足

ふつ う

満足 しなかった)

●授業のテンポ

(適 切だつた

ふつう

不適切だ つた)

●授業の工夫

′イ2

つた

役に立たなかつた

どちらともいえない)

●好 ま しい雰囲気作 り

(作 つていた

作つていなかつた

どちらともいえない

●授業を受けてよかった

(そ

う思う

そうは思わない

どちらともいえない)

●他 の人 にも奨 め た い

(そ う思う

そうは思わない

どちらともいえない)

)

②到着が遅 か つた り早か つた ときに、 こちらに気 を使 つてい るか どうか 塾 での面談や、家庭教師の体験授業 の とき、約束 した時 間 についての対 応 の仕方は重要 です。 例 えば家庭教師 の場合、勝手 な都合 で連 絡な く数十分 も早 く来 た り、息 せ き切 ってなだれ 込んで来 るよ うな人 がいますが 、それは自己中心的な性 格 の表れ とみてよいで しょう。 一 般 に社 会 常識 と して、到 着 す るの は約 束 時 間 の 5分 前 が原 則 です。 も し約束を守れそ うにないな らば 、必ず一報 を入れ る。 そ の よ うな相 手 の 都 合 を考 えた 行 動 を取 る こ とがで きない人 な らば 、 後 々、意思 の すれ違 いが生 じる ことに な ります。

○わざと 10分 くらい無意味に待たせてみる 家庭教師の場合、見ず知 らずの人 とちゃんとうま くやれるか どうかが大 事 です。そ こで適応力があるか どうかを調べ るために、わざ と 10分 くら


9章 *親 のサ ポ ー トが うま くゆかない い無意味 に待たせ てみ る、 とい う方法があ ります。

待たされている間にじっとしていることができれば OK。 そうではなく て、手帳をペラペラめくっていたり、そわそわしていたりした場合、見ず 知らずの環境に適応できない可能性が高いと考えてよいでしよう。 また、他の家族にも挨拶するかをチ ェックするのも、適応力をみるポイ ントになります。 ④先生 の提案 (や り方 )と 違 うや り方 を逆提案 してみ る 親 と教 師 の信頼 関係 は、子 どもの勉強 にものす ご く影響 します。親が先 生 をバ カに していれば、子 どもも必ず先生をバ カに します。親 が先生 に不 信感 を持 っていれば、子 どもも先生を軽視 します。 その よ うな ことが 将来起 こ りうるか どうかをチ ェックするために、先生 の提案 (や り方 )と 違 うや り方 を逆提案 してみ る、とい う方法があ ります。 提案す る内容が どの よ うな もので も構 いません。例 えば、先生が 「 この テキ ス トで い きま しょう」 と言 うの に対 して、「 うち の子 には コチ ラの方 が合 うと思 います け ど、 どうで しよう」 とい つた もので良 いのです 。 大事 な ことは、親 が先生の意見 と異 なる意見を申 し向けた ときに、先生 が どんな表情を してい るか、を見 る ことです。 そ の ときの表 情 が冷 静 であれ ば OK。 そ うで は な くて、先 生 の 表情 が 「ム ッ」 とした り、「ハ ン」 なんて バ カに したよ うな表情 にな った ときは、 相手 の立場 にたって考 えることができな い可能性 があ ります。こち らの「心 配 な気持 ち」を汲 んで、諭す よ うに分 か りやす く説 明 してもらいた い もの です。

⑤ コミュニケーシ ョンを正確にとる ことができるか コ ミュニケーシ ョンを正確に とることは、常に心 しておかなければな り ません。教師は、親 の持つ問題意識を腹 に落 とし込んだ後でない と、きち

′イコ


ん とした提案 をす ることはできないのです。 そ して、 こち らの言 う こ とを先生が正 しく理 解 しているか どうかは、親 が 言 いたい ことを先生が 自分の言葉 で「 こ うい う ことですね」 とフィー ド バ ックできるか どうか 、にかか ってい ます。 例 えば 、話を聞 くときに相槌 を打 った り、 メモを とった り、理解 している こ とを 目が語 ってい るか 、が チ ェックポ イ ン トです。 それに対 して 、親が話 している途 中 に意見を さ しはさむ先生、あるいは、 即答 した後 にその意見を修正 した りす る先生 は、 コ ミュニ ケー シ ョンを正 確 に とることができない と考 えてよいで しょ う。

⑥最後に「まだ申 し上げてないことはあ りますか」 と聞いてみる 子 どもの成績 とか志望校、あるいは不得意分野な ど、すでに出た話を再 び聞いて くるよ うな らば、 コ ミュニケー ションカが低 い証拠です。 ′ `イ

この ような場合、先々も接 していてイライラすることや行き違 いが生 じ ることがあ りますので、慎重 にお付き合 いする必要が 出てきます。 ⑦最高の笑顔 を作 る こ とができるか 小学生を指導 す るには、教師の側 に「懐 の深 さ」 と「動 じない頼 も しさ」 が要求 され ます。いつ も同 じよ うに温か く接 して くれ るか らこそ 、子 ども の信頼を勝 ち取 る こ とができるんで す。 反対 に、笑顔 がない 、敬語 ばか りを使 う、冗談 が通 じない、 うま くいか ない ときに強が りを言 う、他人の欠 点 をあげつ らう、他人 の性格や意見を 悪意 を もって受 け取 る、おか しくないのに笑 う、建前 しか言わな い 、人 の 提案 をあま りに も受 け入れない、極端 に融通がきかない、難 しい理 屈を述 べ て煙 にま く、答 え られない質 問を受 けるとム ッとす る、 とい うのは教師 として頼 りな い感 じが します 。


9章 *親 のサポー トが うま くゆかない

(3)志 望校の決め方 志望校がなかなか決 ま らない、あるい は どのよ うな基準で志望校を決め ればよいか分 か らない方 には、次 のよ うな手順で練 ることをおススメ しま す。 まず、志望校 の 決定 の「 時期」 につ い てですが 、 一 般 に「 小学

6年 生

の 5月 ごろに第 1志 望 を決 め る ご家庭 が多 い」、「志 望校 の難 易度 が高 い ほ ど受験生 本人 の割合が大 きい」 と言われ ます。 しか し多 くの家庭では、予算 (学 費 )。 通学距離 。 学校 の評判 。 偏差値 な ど、 十分 な資料が 揃 ってか ら複数校 を受験 し、合格 した 中か ら進学校 を決める、 こ うい った具合 で しょう。 です か ら、 中学受験 の 学 習 が一通 り終 わ る 6年 生 の 夏 あ た りまで に、 決めておけば十分 です。 次 に、受験校 を決め る主体、 つ ま り「だれが受験校 を決め るか」 です。 ここで大切 な ことは、家族 内 の誰 に志望校 の決定権 があるか とい うこと よ りも、親子 で しっか り話 し合 い、そ の 結果、子 どもの意見を後押 しす る 形を とれ るか どうか、です。 子 どもが 自らの意思 で もの ごとを選択 す るか ら、そ こに責任感が生 まれ るのです。 そ して最後 に、受験 校決定 の「方法」 です。 この点 については、特 に こ れぞ とい う学校がない場合 には、「総合 点」 で決め るほかあ りません。 まずは広 告 の裏紙 と筆記 用具を準備 して、次の

4つ ステ ップに従 って、

遊び気分 でお付 き合い ください。

<第 1ス テ ップ > 志望校 を洗い出す これはあま り考えずに、思 いつ く学校を A、

B、

・とヨコに書き並ベ C・・

て ください。誰 も見てはいませんか ら、大胆にいきましょう。

≦_笙 2丞 量2∠ ≧菫望撞盪選昼基奎生至童登ど1土多金豊±出立│

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志望校を選ぶ基準 はい ろいろです。学費 の安 さ、通学時間の短 さ、入 り たい クラブの有無、入 りたい クラブの強 さ、学力別 クラス編成の有無 、入 りたい 大学 の進学実績、補習 。講習 の有無、学 生食堂の有無、学生寮 の有 無、英検対策 の有無、共学 か どうか、大学 附属か どうか

(さ

らには全員が

大学 に進め るのか)、 な どがあるで しょう。 これ らの例 に縛 られ る ことな く、 できるだけ多 くタテに書 き出 してみて ください。 ここで重 要 な ことは 、今 の偏差値 は考 えず 、 できるだけ多 くの学校 を拾 い 出 し、できるだけ多 くの選択基準 を挙 げ る ことで す。 ここまでで、 ヨコに候補 となる学校、 タテに志望校 を選ぶ基準、 とい う 四角 い表 ができ上が りま した。

≦』聖:L:乙 二2:_三 :生:L基 :塁:堕1翌:重 :墾 ′イ

`

`塁

基奎コ:厘:昌:璽:塵:重聾壁:墜i塾

さて次 に、第 2ス テ ップで書 き出 したそれぞれの基準 について、重要 度 [高 ][中][低 ]を 割 り振 っていき、それぞれの基準のす ぐヨコに書き 足 して ください。 例 えば、学費 の安 さ

[高 ]、

共学か どうか

[中 ]、

学生寮 の有無

[低 ]と

い う具合です。

<笙 豊丞二之亜生≧=菫 菫堕≧璽田匝立る いよいよ志望校を決める段階 に入 りました。学校案 内や志望校 のホー ム ペー ジを見なが ら、志望校を 1つ ずつ 6段 階で評価 して、表を「 +」 「一」 で うめていきます。 ・ す ごくよい 十十+ ・ まあまあ

++

・ 良い点 だが、あま り重要でない 十 。す ごく悪い 一―一 。やや悪 い

一一

・悪 い点だが、あま り重要でない ―


9章 *親 のサポー トが うま くゆかない そ して、重要度 [高 ]の 基準 については「 +」「一」の 数 を 3倍 、重要度 [中 ] の基 準 については「 +」 「―」 の数を

2倍 に します。

その結果、「 +」 の 多さ の順が志望順 位 とな ります。 この一 連 の作業 を、親子でや って欲 しい と思い ます。 この作業 は子 ども が主 体的 に志望 校 を研究 し、真剣 に受験 に立ち向か うためのきっかけにな るか らです。 親 か ら子 どもを見れば、運動会でそ うであるよ うに、つい「 もっと、もっ と」と思 って しま うものです。しか し、 「 あれ もこれ もやれ」で追い込んで も、 それは結局 「何 もす るな」 と言 ってい るの と変わ りはあ りません。 自分 自身が どっちへ 行 きたいか分 か らなければ、 どっちへ 行 って も変 わ りはあ りません。子 ども自身が主体的 に受験校のそれぞれを決 める ことが できるよ うにサポー トしてあげて くだ さい。

(4)子 どもの成長力を信じて持する一―ビグマ

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-7万― オン効果 ―

「理 子 どもに物事 を教 えている ともどか し くなる ことが よ くあ りますね。 解力が悪 いな ぁ∼ 」「物覚 えが悪いな あ∼ 」「要領 が悪いな ぁ∼ 」 です。 誰 で も こ う思 い ます よ、 当然 です (笑 )。 しか し、「 この子 は ダメだか ら自分 が 何 とか しな きゃ」 と思 って子 ども に接す るの と、「子 どもの成長力を信 じて接す る」 の とでは、ず いぶん効 果が違 い ます。「 ピグマ リオ ン効果」 を ご存知 で しょ うか。 ピグマ リオ ン効果 とは、期待す る ことによって 、相手 もその期待 に こた えるよ うになる、 とい う現象を いい ます。その名前 は、ギ リシャ神話 にで て くる ピグマ リオ ン王 が 自分で作 った女 性 の彫刻 のあ ま りの美 しさに恋 を し、彫 刻 に命 が宿 る ことを祈 り続 けた ところ彫刻 に命が吹き込 まれ、幸せ に暮 らした とい うお話 に由来 してい ます。 具体 的 な 内容 は次 の よ うな ものです。 小学生 に知能 テス トを実施す る。 そ して、担任の先生 には知能 テス トの結 果 とは無 関係 にランダムに選んだ


子 どもについ て、「将来 伸 び る子 の 名前を教 え ま しょう」 と告 げ る。それ か ら 1年 ほ どしたあ とで、再び知能 テス トを した ところ、名前をあげ られ た子は、そ うでな い子 に比 べ て明 らかに成績が上 が っていた、といいます 。 指導者 が子 どもに期待 をかけることによって、子 どもが指導者 に信頼感 を抱 き真剣 に物事 に取 り組 む とい う、好循環を示 したわけです。 特 に小学生 の場合、犬 の 嗅覚 ほ どの敏感 さで親 や先生の期待 を感 じ取 り ますか ら、 この ピグマ リオ ン効果 は長期 的 にみて絶大 な見 えぎ る効果を生 むのです。 だか ら、 (親 も含 めて )指 導者 の 期待 が本物 か どうかは とて も重要 なん です。子 どもが「いつ か 驚 かせ てや るぞ」「い つ か喜 ばせ てや るぞ」 と燃 えて くれ るだけの信頼 を よせてい るか どうか 、 です。 この 点 で、第

7章 で ご紹 介 した「最後 の授業 ぼ くの命 が あ る うちに 」

(122ペ ー ジ参照 )に 次 の よ うな話 があ ります。 ′イ′

『十分 に時間をかけて (人 の成長を)待 っていれば、 (そ の)人 はきみを 驚かせて感 動 させ るだろ う。 だれかにい らい ら した り、腹が立 った りす る のは、そ の 人 に十分な時間を与 えていないだけか も しれない。・…ほ とん ど す べ ての人 に長所 はある。 とにか く待 つ ことだ。 いつか見 えて くる。 』 『親が子供 に具体 的な夢 を もつ ことは、かな り破滅的な結果 を もた らし かねない。僕 は大学教授 として、 自分 にまるでふ さわ しくない専攻を選 ん だ不幸な新入生 をた くさん見てきた。彼 らは親 の決 めた電車 に乗 らされた のだが 、そ の ままではた いてい衝突事故を招 く。』 子 どもとの距離の取 り方 は とて も難 しい ものがあ りますが、少 な くとも、 子 どもを信頼 して親が子 どもよ リー 歩下 がるス タンス、子 どもの側か らす れば 「親 が期待 してあえて黙 って見守 って くれて い る」 と感 じるスタンス が必要 なのです。


9章 *親 のサ ポー トが うま くゆかない

(5)中 学受験―一時期日uサ ポー ト法 2月 】中学受験対策の開始時期 はい つ 頃か らが適切 か 【 中学受験 の 対策 は何年生 か らやれ ば よいか につ いては、小学

4年 生 か

ら始め るのが、質・ 量 の両面か らみて適切です。 例 えば大 学受験 の 場合、高校

2年 生 の 夏以 降 か ら徐 々に本腰 を入 れて

現役合格 を 目指す ことにな りますので、約 1年 半 の戦 いにな ります。高校 受験 の場合 の場合 も同様 に、約 1年 半 の 戦 いに な ります。 しか し大学受験や高校受験 の場合 は、それ まで学校の定期 テス ト対策な どで、受験 態勢 に入 る準備 がで きて い ます。 だか ら、約 1年 半 で決着 を つ ける ことができる。 そ うだ とすれば、中学受験 の場合、小学

5年 生の夏 か ら始 める として も、

それまで学習習慣が身 についていなければ、努力に見合 うだけ の成果 を上 げる ことは とて も難 しい。

′イタ

また、抽象 的な 内容 を学ぶ の に小 学

3年 生 で は まだ早 いで す し、 スケ

ジュールを 管理するの も難 しい。 この よ うなわけで、小学

4年 生 か ら徐 々に受験対策 を始 め てゆ くのが

妥当なわけです。 なお、新

5年 生 と新 6年 生 の人 は、新 年度 も必 要 な教材 とそ うでない

教材を選別 してお くとよいで しよう (48ペ ー ジ参照 )。

3月 】入試報告会・ 春休み 【 中学受験 が終了す ると、大手の学習塾が入試報告会を行います。 入試報告会では、①入試動向、②出題傾向、③合格体験、な どが語 られ、 中には私立中学校 の先生を招いてす る講演会などもあ ります。 その塾の生徒だけでな く、一般 の方 も申し込めば参加する ことができる ものがあ りますので、中学受験を初めて経験される方は、一度参加される


ことをおススメ します 。 また、 3月 の下旬 か ら 4月 上旬 にかけて、春休 み を利用 した春期講習 が 始 ま ります。 この時期 は卒業式な どもあ り、あわただ しいのですが、 この あわただ しさは 4月 に入 ってか らも しば らく続 きます。 そのため、せ っか く塾 に入 って もち ょうど中だ るみ して しまう時期 とい えるので、学習習慣を しっか りつ けてお く、あるい は学習習慣を つ け直 し てお くことが必要 です。

5月 06月 】学校見学 (文 化祭 。体育祭 ) 【 5月 の 頃 には、体育祭 を行 う学校 があ りますので、ぜひ足を運 んで志望 校選 びの一 助 に したい もの です (学 校 選 びの方 法 につ いては、 145ペ ー ジ参照 )。 一度 で もその学校 に足 を運ぶ と、校 門、廊下、教室、 グラウン ドな どの ′5´

様子が、 しっか りと頭 に焼 きつ きます。 さ らにも し、秋 の文化祭や学校説 明会 も含 め て 2∼

3回 訪 間す るこ とが できれば、 その学校 はあ たか も 自

分 の母校 の よ うに思 える ことで しょう。 また、 5月 ∼ 6月 は、塾 に入 るのが早 ければ早 い 人 ほ ど、中だるみ との 戦 いの 時期 です。 中 だるみ に陥 った ときに 、や らなければな らない ことを全部 こなそ うと す る と、余計 にや る気 がな くな ります。 中だるみに 陥る原 因は、や らなけれ ばな らない と分 か っていて もそれが 整理 できていないか、 あ るいは、や らなければな らない と納得 していない か、の どち らかです。 この よ うな場合 は、逆 算方式 (129ペ ー ジ参照 )に よって、少 しずつ 自分 のペー スを取 り戻 しま しょう。

7月 ・8月 】夏期講習、学校見学 【

(体 験授業・ オープンスクール)


9章 *親 の サ ポー トが うま くゆかな い

この 時期 には、中学校 の授業や部活動 をお試 しで きる「体験授業」「オー プンス クー ル」 を開催す る学校 があ ります。 ぜひ参加 してみ ま しょう。 また、夏休みをふ り返 ってみて成長 を実感で きるよ うに、夏休み の 目標 の決 め方 を学年別 に見てゆき たい と思 い ます。

(1)夏 体 みに頑張 ったのに成績が下 が る ことが あ る一小 4生 、小 5生 の 場合

7月 か ら 8月 にかけて、夏休みに入 りますが、そ の とき何 を 目標 にす る かが とて も重要 です。 夏休 み に何 を 目標 にす るか につい て は、「偏差値 を上 げる」、「特定 の教 材を仕上 げる」 (塾 の 教材 も含 む)、 「過去間をや る」 (小

6の 場合 )、 な ど

があ ります。 ち ょっ としたの図を見て ください 。 ′ ′

<到 達 点 の 対象 >

`テ

過去間をやる(小

6)

特 定 の教材を仕上 げる

偏差値を上げる

図の

3つ の 目標 の立 て方 の うち、「偏 差値 を上 げ る」が一 番漠然 として

い ます。 つ ま り、「偏差値 を上 げ る」 だけでは、何 を どの程度 やれば いい のかが明 らかでないのです。そのため、勢 いにまかせて手 当た り次第 にや り散 らか して、何が何 だか分 か らない うちに「夏休 み終了

!」

とな りかね


ません。 夏休 みの 目標 としては、 「特定 の教材を仕上 げる」を逆算思考 (129ペ ー ジ参照 )に 従 って 、 コツ コ ツ仕上げてゆ くべ きです。 なお、小

4生 や小 5生 で塾 に通 ってい る人 の場合 、夏期講 習 の最後 に

行われ るテス トで、努力 したわ りには成績 が思わ しくない 、 む しろ成績 が 下が った、 とい う人が出て きます。 夏休みに頑張 ったのに成績 がなぜ下 が るのか。それは、 出題範囲 のズ レ のためです。 模試 の 出題 とい うのは通常、 2ケ 月前 くらい前 の もの も含めて出題 され ます。 なぜ か とい うと、学 習 内容 の定着 度 を確認す るためです 。 だか ら、 夏休みだけ頑張 っても、頑張 った分だけ成績 が上がるわけではないので す。 夏期 講 習 の 内容 を調 べ てみ て、 も し 1学 期 の復 習 が含 まれ ていない と きは、1学 期 のテキス トの復習 も夏休みの課題 目標 に組み込んで ください 。 ′f′

(2)夏 休みに学校別過去 問題集をや る一 小 6生 の場合 学校別 過去 問題集 とい えば 通常、小

6の 秋以降 の模 擬試験 の判定 を も

とに して 、志望校・ 併願校 を決定 してか ら取 りかか る人 が多いよ うです。 このパ ター ンの 人 は、「夏休 み にできるだけ偏差値 を上 げ よ う」 と思 って いる人です。 確か にだれだ って「偏差値 を上げたい」 とは思い ます よ、そ りゃね。 で も「で きるだけ偏差値 を上 げたい、 だか らがむ しゃ らにや る しかない 」 式 の考 え方 は、先 ほ どの ピラ ミッ ドの底辺 の人 の考 え方 です 。モチベー シ ョ ンが続かな い。 痩せ た くて トレーニ ングジムに通 う、英 語が話せ るよ うにな りた くて英 会話 ス クール に通 う、 これ は もっともなんですが、それ だけで 目的が達成 できればそれ は ミラクル です よ、ホ ン トに。 で も普通 は失敗す る。 塾 とか通信教 育 だって 同 じで、ただ利用 していればそれ だけで成績が上


9章 *親 の サポ ー トが うま くゆかな い

が る、なんて ことは あ りえな い。 成果 を上げ られ るか どうかは、 メニ ューが 自分 に合 ってい るか、 も し合 わない ところがあれば、 自分用 にカス タマイズで きるか どうか、にかか っ てい ます。 その よ うな試行錯誤 を経 て、 自分 の立 ち位置 を把握 し、確 固 とした 目標 が定 まる。 だか ら夏休みの 目標 は、「 どの教材 を どのよ うにや るか」 を考 え抜 いて 決 め るべ きです (132ペ ー ジ参照 )。 そ うすれば、夏期講習最後 の模試 で 仮 に思 うよ うな成績が取れな くて も、 どのや り方 が良 くて、 どのや り方が 悪 いかを検証す る ことができます。 さ らに言 うと、夏休 みの 目標 の 1つ として、学校別過去 問題集 を最低 で も 1冊 は仕上げるべ きです。 理 由は次 の 3点 です。 まず 1点 目は、秋 には学校行事 や模 擬試験 な どがあ って休 日が つ ぶれ る ことが 多 く、何校 もの過去問題集 を 一 気につ ぶす ことは物理的にかな り の 困難 を伴 うこと。 次 に 2点 目は、近年 の 中学入試 の 出題傾 向は学 校 によって個性 を打 ち 出 してきているために、画一的な模 擬試験 によっては じき出され る判定結 果 が決 して絶対ではな く、む しろ、 で きるだけ早 く志望校 の クセ と自分 の 弱点 を知 ってお くと有利 であること。 最後 に 3点 目は、 日標 か らの逆 算 思考 によ って行 きたい学校 の対策 を すれば モチベー シ ョンを維持 しやすい、 とい う こ とです。 秋以 降、「 どこに合格 できるかわか らない」 とい うのは想像 を絶す る恐 怖 です。夏休 み に最低 1校 分 で も学 校別過去 間 を潰 してお けば、そ こを 基点 として次 に打 つ 手 が見えてきます。 なお、学校別過去問集 は「 とりあ えず買 ってお こ う」 とな る と、結局 は 使 わず じまいの ものが山積みにな って しまいます ので、 1∼

3冊程度を 目

′53


安 に購入 して ください。

9月 。10月 。11月 】学校説 明会 ・ 模擬試験 【 この時期か ら、学校説明会 が本格化 します 。 それ と同時 に、文化祭や体 育祭を行 う学校 もあ りますので、時間が許す限 り学校に足 を運 んでみて く ださい。 その際には、説明会専用 の ノー トを作 っておいて、気 にな った ことはマ メに記録 してお くと、後 々重宝 します。学 校 ガイ ドの類 は 、網羅的ではあ りますが、その学校の生の様子 を感 じ取 ることができないか らです。 さて勉強面 ですが、 5年 生 と 6年 生 に分 けて注意点を述 べ たい と思い ま す。

(1)リ

アル な挫折 を味わ うとき-5年 生

夏期講 習 が 終 わ り、夏休 み にはや る こ とはや ったはず だ。 (も ち ろん、 ′´イ

親 だって頑張 った。 た くさんの学費 を支払 ったのだ。) で も現実をみれば、頑 張 りに見合 うだけの満足感や達成感 がな く、スラ ンプに陥 ったよ うに思 える。 5年 生の 2学 期 は このよ うに して幕を開けま す。

5年 生の夏休み前か ら、学習 内容が複雑 にな り始め、 1∼ 2回 や っただ けでは腹 の底 に落 とし込めな くな ります。簡単 な課題な らば、できた らや りっ放 しに して も、後です ぐ思 い 出せ るんですが、複雑な課題 では、記憶 に定着 させ る とい うステ ップが必 要 にな ります (31ペ ー ジ参照 )。 それなのに、学習内容が難 しく感 じつつ も、学習に対す る取 り組みが雑 の ままである こ とが多い。 塾 のカ リキ ュラムは一 般 に、「 らせん型学 習」 とい って 、 同 じ分野 を何 度 も学習す る ことに なってい ます。 しか し、 三 度 目以降には複合 問題 の一 部 になっていた りします し、その ときに基本か ら丁寧に教 えて くれるわけ で もあ りませ ん。


9章 *親 のサポー トが うま くゆかない すで にや った学習 内容 なのに、再度や らせてみ る と実質的 には予習か と 思 うほ ど苦戦す る こともあ ります。 これが 2学 期 にな って、いきな り大 きな穴 とな って広が ってゆ くんです。 や っているのに成績が伸 びな い 、 とい うリアルな挫折感を初 めて子 ども自 身 が感 じる瞬間です。 ただ、受験 はだれで も乗 り越 え られ る壁ではあ りません。 それを乗 り越 える術を身 につ けた人 だけが乗 り越 え られ る高 い壁 なんです。 だか ら、 2学 期 にスランプに陥 った とき こそ 、態勢 を立て直すチ ャ ンス だ と思 って ください 。人 も苦 しんでい ます。 学習内容 が難 しく感 じられれば、瓦屋 さんのよ うに知識 をキチ ッと積み 上 げて い く (積 上方式 )。 そ して 自分 の立 ち位置 を明 らか に した ら、 日標 や計画を立 ててステ ップア ップ してゆ く (逆 算方式 )。 こ う して 自分 の能力 や努力 に少 しず つ 自信 がつ くよ うに応援 してあげて ください。

(2)過 去 間中心 の学習 に切 り替 える-6年 生 6年 生の 2学 期 は、受験 があるか らといって、学校 生活 にゆ とりがでる ものではあ りません。受験す る人 もしない人 も同 じように、忙 しい学校生 活 を送 ります。 さ らに、休 日に模擬試験 が行 われて、 ま とまって時間を とる ことが難 し くな り、態勢 を立て直す余裕 もな くな ってゆきます。 誰 しもこの よ うな過酷 な環境 の下 におかれるわけ ですが、 さ らに危険な パ ター ンは「志望校 をなかなか絞 り切 れない場合」 です。 塾 の先生 には過去 間を解 くよ う指導 され る。 志望校 が絞 り切れないのに、 そ の結果、過去間 を大量 に買い込 んで、ち よつと手 をつ けてはや めて、 ま た次のものにち よつ と手 をつ ける。せ つか くの貴重 な時間が台無 しです。 受験直前 の 1月 はほ とん ど勉 強 時 間 はない、 と思 って くだ さい。実 際

′55


には、入試 の前 日まで成績 は伸 び続 け るもので す。 しか し計画 の上 では、 慎重 を期 して、冬期講習前 までには受験校の過去 間 はすべ て心配がないよ うに仕上げてお くのが原則です 。 塾の課題 と過去 間 とどち らを優先 してよいか 分 か らない とい う こともあ るで しょう。 しか しその よ うな ときに こそ「逆 算方式」 です (129ペ ー ジ参照 )。 目 的か ら遡 って 、課題 を取 捨選択 して計画を練 り直す。そ こで優先 され るべ き課題 は、 もちろん過 去間です。合 格す ることが 目的ですか らね。

12月 。1月 】願書提 出・ 試 し受験 【

(1)併 願校 の決 め方― A型 受験 とV型 受験 と試 し受験 併願校 の決 め方 については、 A型 受験 とV型 受験 があ ります。 初 日に実 力相応校を受 験 す るのが A型 受験 、初 日にチ ャ レンジ校を受験 す るのが V ′J`

型受験 です 。 実 は これの どち らかを取 るかは 、非常 に難 しい 選択です。なぜな ら、入 試 の前 日まで成績 は伸 び続ける可能性があるか らです。 そ こで私がおスス メ しているの は、初 日は相応校 とチ ャレンジ校 の両方 に W出 願 してお き、入 試 の 1週 間 ほ ど前 に塾 の 先 生 と相 談 して 実 際 に ど ち らを受験す るかを 決める方法です 。 初 日本番前には、他府県で早 目に実施 され る入学 試験 を試 しに受験する こともできますので 、本番を前 に緊張す るか どうか 、志望校の仕上が り具 合 は どうか、な どを総合的にみて、W出 願 した後 に実 際受験す る学 校 をゆっ くりと決めるのです。 特 に、模擬試験 の判定が芳 しくない場合 に、願 書提 出時に志望校 を下げ るのはそれ までの対策方針を変 更 す る ことにな りますので、混乱 をきたす 恐れがあ ります。


9章 *親 のサポー トが うま くゆかない

)願 書

(

(志 望動機)の 書き方

願書 は入試では最後 の最後 で出席 日数な どがチェックされるだけで、そ んなには気にす る必要はあ りません。 とはいえ、願書 には「志望動機」を 書 く欄があ って、 これが案外頭を痛めます。 「志望動機」 欄 には次のように書 いてお くことをおススメします。 そ こで、 ①それ まで施 してきた家庭での教育方針 ②志望す る学校の教育方針 との整合性 ③入学後 に期待する こと 例 えば、①家庭では家事手伝 いや地域活動 にも積極的に関わるように教 育 してきた、②御校 の全 人格教育 は学力偏重教育 とは一線を画す点 で共感 している、③御校 に入学許可 をいただいたな らば、御校 の指導 の下 でさら に活動範囲を広げてゆけるよう家庭 も支援 してゆきたい。 このような具合です。重要なのは「一読了解」です。 グダグダ書 かない、 読み手がひっかか りを感 じるように しない ことです。

(■

)受 験番号 と願書の提 出

受験番号 は早 目の方が 良 いで しょう。なぜ な らば、繰 り上げ合格 は受験 番号順 に連絡 してい うのが一般的である こと、午後受験 がある ときは早 目 に切 り上げ るために面接時 間 が早 いほ うが いい こと、 が理 由です。 また、願書 は 1校 につ き 2通 は購入 してお くと、書 き損 じた ときに重宝 します。願書提 出時 には次の ことをチ ェック しておきま しょう。 □願書 は 2部 取 り寄せてお く □願書 の コピー を取 ってお く (面 接対策 として) □願書を 出す 日に は印鑑 も持参す る (訂 正 に対応す るため) □願書提 出用 の写真 は早 めに準備 してお く □願書提 出 は電車で行 くよ うに して、時刻 。経路 は前 日に確かめてお く

,7 ′


(

)試 験 直前 と試験 当 日の注意事項 試験直線 と試験 当 日は次の ことに注意 しておきま しょう。

<試 験直前 > ロイ ンフルエ ンザの予 防接種 は、 11月 と 12月 にかな らず受けてお く □早起 きを習慣 にす る (早 起 きはお よそ 2週 間で慣れ る)

<試 験 当 日> □腕 時計 の電池を確認す る □試験 開始 1時 間前 には学校 へ 到着 し、 トイ レの場所 な どを確認 して おく □不意 の事故 の際学校 へ 連絡できるよ うに、学校 の電 話番号を記録 し てお く □試験終 了後の待 ち合 わせ場所 は、混雑 しない ところに決めてお く □試験終 了後、親 は試験 の 出来を聞かない、子 どもは次 に受ける受験 ′5′

校 の過去間に目を通す

(6)心 配するよιIも きず行動 日常生活 には、い ろい ろな心 配事が つ きま とい ます。 特 に大人の悩み は、 「子 ども」 と「お金 」 に尽 きる ともいわれ ます。 具体 的 には、次のよ うな心配があ ります。

1.こ の先、 この子 の 成績や進学 どうな って しま うん だろう。

2.子 どもやその成績 が思い通 りにな らない。 3.こ れ まで、 この子 はよい ことばか りではなか った。

4.子 どもも先生 も信頼 できない し、任せ られない。 5.自 分 の こ とを認 めて もらえない。 しか し、 どんなに心 配 した として も、結 局答 えがでなければ、それ は決 して意味のあることとはいえません。 しか も、 これ らの心 配事は、行動 を 躊躇 させ て しまいます。


9章 *親 のサポー トがうま くゆかない 現在 の行動 を伴わな い「心配」は意味 が あ りません 。意味 がある「心配」は、 「今 日や るべ き ことをや ったか」、「昨 日よ りい くぶん で も進歩があ ったか」 とい う類 の 「確認」 です。 普段 か らや るべ きことを先延ば しに しておきなが ら、それで いて過去や 未来 や他人 の ことを心 配 して も意味がな いんです 。今 や るべ き ことを徹底 してや る、 これが結局 は安心 なんですね。 日本 を代表す る批評家 である小林秀雄 は この点 について、宮本武蔵 の観 法 の一つ である 「我事 において後悔せ ず」を引用 し次 のよ うに述 べ て いま す。 『 自己批判 だ とか 自己精算 だ とかい うものは、皆 嘘 の 皮 である と、武蔵 は言 ってい るのだ。 (中 略 )そ うい う小 賢 しい方法 は、む しろ 自己欺 嚇 に 導 かれ る道 だ と言 えよ う、そ うい う意 味合 いがある と私 は思 う。昨 日の こ とを後悔 したければ、後悔す るがよい 、 いずれ今 日の ことを後悔 しなけれ ばな らぬ明 日がや つて来 るだろう。そ の 日その 日が 自己批判 に暮れ るよ う な道を どこまで歩 いて も、批判す る主体 の姿 に出会 う ことはない。別な道 がきっ とあ るのだ、 自分 とい う本体 に出会 う道があ るのだ、後悔 な どとい うおめ でたい手段で、 自分 を ごまかさぬ と決心 してみ ろ、そ うい う確信を 武蔵 は語 ってい るのであ る。 (中 略)本 当 に知 る とは、行 な う ことだ。』 受験 は腰 をおろ して安住 した くなる 自分 との戦 いで す。勇気 を もって新 たな一 歩 を少 しずつ進 め る ことで、学 び成長 し続 け る ことの楽 しみを子 ど もと共 に味わ ってゆきた い ものです。

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+曰 ■■ う う 憫 Ei日 ∠ 乙

<子 ごも 0や ろ気 ガ出るリス ト> 子 どもがどうしたらやる気になるかは、子 どものおかれた状況 によつて 異な ります。ただ、今お かれている状況を観察すれば、案外 ヒン トがある

Jタ ′


ものです。

日 日

そこで、「子どものやる気が出るリス ト」を挙げておきます。

日 ①∼③は子どもに「 自分はやればできる」というように、子どもに「知 :

日力の向上」を実感させる方法の例です。 これ らの中で最重要なもの は、言 日 日うまでもな く「②わか りやす く説明する」です。 │

次に◎∼⑭は、子 どもたちが「これは使 える !」 と思 うことによって、日

教わったことの有効性を実感する方法の例です。そ して、○∼④は、子 ど│

知力向上 を実感 習

①問

1

1

一 一

│ │ │ │

問題演 習

:

日 │

楽 しさを実感 いて くるよ ⑨ 教 材 に 目を通 して ① 計 算や漢字 練 習 な ││

うに指示する くるよ うに指示 どの 基礎 学習 を習 慣 │: →家で解 けな くても授 → 予 備 知 識 が理 解 を 化 する 日 で解 け る よ うになる 促進する りやす く説明する

l⑩

意 義 や 原 理 原 則 を ⑭意見を発表させる 日 → 自分 に も で き る と 解説する ⑫既知と未知をつな │ つ ①応用場面を提示する 0ず る ③ bebre/afterテ ス ト→ 知 識 の 構 造 化・ 抽 日 を実施する 象 化 に 役 立 つ (使 え │ 確 認 できる る知識を獲得する) ④難問を解決する 立 つ 解 法 を伝 授 ①競争させる → 自分の可能性の広が ぽ ξ → 以 前 よ り早 く解 け りを実感できる

⑥弱点分野 を さかの る 〇親子で教 え合 う、│ → 自分 な りの 学 習 ス 一緒に問題を解 く ぼつて学習する 1 →苦手意識 を克服する タイルを つ る

塾 シス テム ⑦習熟度 別 クラス編

日 日

日家庭学 習

⑤個別に質疑応答する るようになる → 自分 の 考 え 方 を 検│ 証・修正 。強化する

L

:

有効性 を実感

一月

一    一

一θ 一び

一 湘

恭 一

1

1

もたちが「楽 しい」 と思えるような演出方法の例です。

1

成 。進級制度 ③成績表・認定証

タ ン プカ ー ド

1

日 ] 』


9章 *親 のサポー トが うま くゆかない

自分 の知識 を 点検

*自 分 の知 識 は十分 か。

*自 分 の弱 点 は どこか。

(反

自分 の心 と 体 を点検

自分の能 力 を点検

対処方 法 を 点検

行 動 の結 果 を点検

*予 定 通 り進 か、休憩 を ん で い る べ か。 す る き か。 *他 に方 法 は な いか 。

*目 的達 成 の

*自 力 で 出来 *続 行 す べ き る のか、助 け を求 め る べ きか。

行動理論 復・賞 罰重 視 )

影響

ため に成 果 は あが って いるか。

失 敗 に対 する柔軟性 結 果 重 視 ⇔ 思 考 過 程 の重 視

影響

認知理論 (学 び方重視 )

単純反復 重 視 ⇔ 意味理解の重 視

教材に注意 を向ける

必要 な情報 を認知す る

必 要 な情報 を獲 得す る

*教 師 や 教 材 *情 報 の選別 *問 に注 意 を向 け、 それ │二 集 中す る

*興 味 ・欲求

感 情 に影響 され る

必要 な情 報 を保 持 す る

題 演 習 や *反 復 練 習、抽 象 化 ・構 造 意 味理解 を 化、記 憶 術 な 通 じて、問題 ど に よ り忘 を解 決 す る 却 を防 ぐ

応用 す る (転 移 )

学 習成果 自己効 力感 (自 分 は や ればできる と思 う)

*先

行学 習 が 後行学習 を 促進 す る (積 極 的移転 )

′び′ 報酬志 向

*ポ イン ト カー ド *ス タンプ カー ド

自慢材料 を提供

*表 彰状

*認 定証 *成 績表

関係志向

つなが り を実感

*合 宿 *塾 カバ ン *塾 ノー ト *保 護 者 会 *塾 だ よ り *連 絡 帳

実用 志 向

訓練志 向

有効性 を実 感

知力 を

上感 向実

報酬 を 実感

自尊志向

充実 志 向

楽 しさ を実感

*意 義 の解 説 *befOre/after *見 えそ うで *応 用場 面 の テス ト 見 えな い 提示

*分

か りやす い解説 *難 問解 決 *予 習の強制 *学 力別 クラ ス編成 *進 級制度

*個 別 質 疑 *学 習方 法 の 伝授

*で

きるか ど うか微 妙 *体 験 実験 見学 *ゲ ーム 導入


<あ とがき> 「坂 の上 の 雲」 (司 馬遼太郎 )の あ とが きの 一 部 に、明治

33年 当時、陸

軍参謀本部次長 である寺 内正毅 が、陸軍大学校 の教頭 を務 めて いた井 口省 吾 を呼び、教科書がな い ことの不秩序 を指摘 しその是正 を求 めた と こ ろ、 井 回は次の よ うに言 った とあ ります。 『教科書 とい うものは、人 間 が作 るもので、 ところが い ったん これが採 用 されれば 一つの権威 にな り、そ のあ との代 々の教官 は これに準拠 してそ れを踏襲す るだけにな ります。 い ま教科書がな いために教官 たちは頭脳 の かぎ りをつ くして教 えてい るわけであ ります。す なわち教官の能力 如何 が 学生 に影響 す るために、勢 い教官 は懸命 に壁五 せねはな らぬ とい つことに な り、 この た ′φ′

牛 も大 い に啓発 され て ゆ く

と しヽう か た ち

を とってお りま

す。 ま して (創 造性を要す る)戦 術 の分野 にあ っては教科書 は不要であ り ます。 どころか、そのため に弊害 も多 い と思 い ます。 しか しそれで もなお これを作れ とお っ しゃるのであ りま した ら、私 は教頭をやめさせていただ くほかあ りません。』 (下 線お よび括弧挿入 は筆者 による) 同書 によれば当時、築営教範、交通教範 な ど各種 の戦時 マニ ュアルは備 えられた ものの、陸軍大学校 では教科書 は採用 されて いなか った とい う。 ただ、マニ ュアルや教科書が必要か どうか は ここでは 問題 ではあ りません。 私 が本書 を通 じて訴 えたい ことは、教育 における大人の役割 を再認識 し な くてはな らないのではないか、 とい う こ とです。 引用部分 の 中で、教育 のあ りかた の 1つ として肯繁 にあたるのが、「教 官 の能力が学生 の能カ ーひいては学生 が担 う将来 の 日本 のあ り方 ―に影響 す る」 とい う点です。 もちろん、 当時は戦争 とい う国難 に遭遇 していたため、教官は戦役 に耐 え うる学生 を早期 に育成 しなければな らない とい う要請があ った とい う点


で、 現代 と背景を著 しく異 にします。 当時の教官 には、 過酷なまでのプレッ シャーがかかっていたことで しょう。 しか しもし、大人 の能力を土台 として子 どもの能力が築 かれるとい うこ とが無謬なものであるならば、現代 ではむ しろ国難 とい う外圧 の助けを借 りず して、大人が進んで 自らの能力を高め、その知恵を子 どもに伝承 しな ければならない、 とい うことになるのではないで しょうか。 この意味で現代は、大人が主体的に教育問題 に取 り組んでゆ くべ き時代 なのだ と思います。 本書は、大人が教育に関わろうとするときに、遠 くかすれかけた小学生 時代 の子 どもの心情を思 い出し、あ るいは教育 における原理や合理性を追 究 し、よ り効果的な役割を演 じることができるよ うに編集されたものです。 各項 目は隔絶独立 した内容ではな く相互に関連 し、また、実際の運用や 効果 の程度 も人によって異なると思 い ます。本書を手にとられた方が 自ら の知見・ 体験を余 白に追加記入する ことによって、より意義深い教育を実 践 していただきたい と願 っています 。 なお、 巻末には、 ①塾選びチェックシー ト、 ②学校説明会チェックシー ト、 ③過去間チ ェックシー ト、④四谷大塚・サ ピックス算数進度対照表、を付 属 しま した。 算数進度対照表 は、学習項 目全体 を俯蠍 し予測 を立てる こと、あるいは 入塾 の タイ ミングをはか るのに有益 で しょう。 なお、 この対照表 は私 が独 自に概 略を抽 出 した ものに過 ぎず、各塾が正 式 に発表 した ものではない こ とをお 断 りします。 本書 の 内容 に 関す るお問い合わ せ は、著者 ブ ロ グ (http://kyoiku.inね /) までお寄せ ください 。

′ `ヨ


【 付録 1】 塾選びチェックシー ト 塾名 要間 所時

行事

交通機 関 下車 自宅 か ら合 計

駅より

分 (バ ス

徒歩

分)

分程 度

時間

塾説明会

(持 ち物

入塾 テ ス ト

(持 ち物

)

体験 授 業

(持 ち物

)

個 別 相談

)

(持 ち物

カリキュラム

□予習 型

□復 習型

□個 別型

指 導形 態

□集 団

□個 別

□集 団・ 個別 併用

□その他

)

)

(

□その他

(

)

1ク ラ スの人数 クラス分 けの基準 テ ス トの種 類 テ ス トの頻 度 親 の関 わ り方

トーー ′

自習質 の有無

自習室 が あ る (□ 先生 がい る

個 人 面談 の 有無

□随時

受験 情 報 の提 供

□あり

□年

(

チェッ ク項目 授業時間 テ ス トの曜 日

□先 生 はい ない)

□ 自習室 はない

□な し

程度

)

(

(

`イ

)回

)年

生 の場 合

(

□なし

)年 生の場合

費用 (月 謝 ) 月謝以 外 にか か る費用 志 望校 の 合格 実績 (塾 全体 ) 志 望校 の合格 実績 (そ の 校 舎 )

その他

送迎 の必要 性

□必 要

□不要

□そ の他

(

お 弁 当の必要 性

□必 要

□不要

□その他

(

居残 り 。授 業延長

□ある

質 問 に対 す る対応

□ よい

( □普通

時ころまで) □悪い

)

)

□ない □その他

(

)


【 付録 2】 学校説明会チェックシー ト 校合名

塾名

所要 時 間

試験 日

交通 機 関

駅より徒歩

自宅から合計

(バ

下車

分)

分程度

時間

第 1回 (午 前) 第 2回 (午 前) 第 3回

(定 員

名)

(定 員

名)

(定 員

名)

第 4回

(定 員

名)

第 1回 (午 後) 第 2回 (午 後)

(定 員

名)

(定 員

名)

※□選考方法 (科 目・ 面接) □昨年か らの変更点 (昨 年のデータ) □小学校の調査書・ 欠席状況の取 り扱い □兄姉・近親者在籍の優遇の有無 □特定教科の高得点の優遇 □特定教科の足切 りの有無 □入試で出る問題・範囲を教えてくれるか □複数回受験のときの優遇の有無 □部分点の取 り扱い(途 中式の減点加点基準、答えしか書いていない場合・記述の部分点など) □解答欄外の計算や裏面の計算等を評価対象 とするか □繰 り上げ合格の取 り扱い (人数・ 点数・ 連絡方法・ 最終連絡 日)、 昨年度の実績 □模試の成績を考慮 して くれるか

′ 一

カ リキ ュ ラ ム ロ満 足

□普通 □不満

(6年 間 の振 り分 けか たな ど)

進学実績

□満足

□普通 □不満

(前 年度比 伸 び・ 進路指導 な ど)

学校の特色

□満 足 学 習環 境 (補 習・講習など)

□普 通

□不満

□満 足 クラブ活 動 (大 会の実績など)

□普 通

□不満

□普 通 生 徒 の様 子 □満 足 (自 由と規律のバランスなど)

□不満

□ 普通

□不満

□満 足

(寄 付金など特別な費用の有無など)

□満足

□普 通

□不満

¨    一

(回 答 )

¨5   一 一‘   一

選抜方法 ※予め質問事 項 にチ ェック


【 図 3】 過去問チェックシー ト )年

(

(

)分

問 題 番 号 /配 点

1( 大問 2( 大問 3( 大間 4( 大問 5( 人間 6(

1回

教科別 合計点

(満 点

)

′ 一

一 一

¨    一

¨‘ ¨‘

教 科別 合計点

2回 目

合格者平 均 点

(

)分 分

(満 点

)

1(

1回 野

)点

)点

大問 2〈 人間 3( 人間 4(

)点 )点 大間 5( )点 大問 6( )点

合計点

)

4回 目 日

5回 目 日

日 点

2回 目

目 日

3回 目 日

4回 目 日

5回 目 日

点 点

合格者平 均 点

点)

合格 最 低 点

4(2)科 目合 計 点 (満 点

(満 点

)`':〉

5回 目 日

合格者平 均 点

`:::::. (

3回 目 日

問 題 番 号 /配 点

4回 目 日

合格 最 低 点

L[: ネ

2回 目

1回 目 野

)点 )点 )点 )点 )点 )点

教科別 合計点

3回 目 日 点

合格 最 低 点

問 題 番 号 /配 点

1( 大 問 2( 大 問 3( 大 間 4( 大 問 5( 大問 6(

)

(満 点

5回 目 日

)点 )点 )点 )点 )点 )点

太問

4回 目 日

点 点

1( 人間 2( 人間 3( 人間 4( 人間 5( 人間 6(

1回 野

3回 目 日 点

合格者平 均 点

)`夕 )

: 姿 讐 二 罰 女│(

教科別

合格最 低 点

問 題 番 号 /配 点

大問

2回 目

)点 )点 )点 )点 )点 )点

大問

人間

学校名

4(2)科

目合 格 最 低 点

4(2)科

目合 格 者 平 均 点


過去問チェックシー トの使い方】 【 ステップ 1】 【

学校別過去問題集 の 問題 と解答用紙を コピー して、学校 も 塾 もな い 日の午前

9時 か ら、時 間を計 って解 きます。最新

の 年度か ら順 に解 き始めて くだ さい。

│ ステップ 2】 【

過去 問チ ェックシ ー トを コピー し、各教科別 に、①試験時 間、②大間 ごとの 配点、③分 野、④合格最低点、 ⑤合格者 平均点、 をそれぞれ書 き込み ます。

│ ステップ 3】 【

解 いた答案 を採点 して、過去問チ ェックシー トに転記 し、 合格最低点 との差 を認識 します。仮に合格最低点 に到達 し ていて も、悲観 す ることはあ りません。4教 科 (2教 科 ) の合計得点で合否 が決 まります し、実力は入試直前 まで伸 び続けます。 初め の うちに注意 しな くてはならない ことは、「合格点 に達 しているか どうか」で一 喜 一憂す るのではな く、「 ど の分野が弱いのか 」 を把握 してそ こに力を入れて学習する ことです。

ステップ 4】 【

問題 を問いた 日の 午後 に間違 えた問題 を じっ くり復習 しま す。 「答 え合 わせ を した らハ イ 終 わ り !」 で はな く、正解 で あ って も不正解 で あ っても、正解 にた どりつ くため の理 由 をち ゃん と言 えるよ うにします。 また、試験 で直 接 問われ ていな くて も、気 にな った こと は調 べ て解答 に書 き写 してお きま しょう。 もし勉強 してい

′φ7


なか った ところや 知 らない こ とがでて きた ときは、テキス トや ノー トに要 点 を整理 しておきま しょう。 この よ うに復習を し終 えた ら、その 日は羽を伸 ば して遊 びま しょう

!

│ ステップ 5】 【 1 1 :

学校別別過去問題集に掲載されている限 りすべ ての年度を 解き、ステ ップ 2∼ 4を 繰 り返 します。

:

ステップ 6】 【

学校別過去 問題集 1冊 を 1回 や り終 えた ら、さ らに 2回 ∼ 5回 初 めか ら繰 り返 します。 や る 回数 につ い ては、 第 1志 望 校 と第

2志 望校 は 5回

まわす (全 部 で きるまでや る)、 そのほかの学校 は 2回 程

¨ 一

一    一

一′ 一φ ′

度 まわすのが 目安 です 。 前 はできていた 問題 ができていなか った り、反対 に前 は で きなか った 問題 ができていた りして も、動揺 した り油断 してはい けません。正 解・ 不正解 よ りも、正解 にいたる道 す じを しっか り確認 しま しょ う。 また、試験 で直接 問われ ていな くて も、気 にな った こ と はその都度、必ず調 べ ま しよう。 い ろいろな事柄 を関連 付 けて考 えるほ うが、丸 暗記 す るよ りはるかに記 憶 に定着 し やすいか らです (38ペ ー ジ参照 )。

<お 家の方 へ > 学校別過去 問題集 は夏 休みか ら始 めま しょう (153ペ ー ジ参照 )。 準備 としては 、 まず 、 カ レンダー に過去間をや る 日を書 き込み ます。 目 安 と しては、 1日 に 1校

4教 科 です

気 づ きになる と思 い ます)。

(案 外、や る 時 間が少 な い こ とにお


次 に、学校別過去問題集 の問題 と解答用紙、そ して過去問チェックシー トを コピー しておきます。 そ して実施する ときには、初回だけは開始時間 と終了時間を計 ってあげ て ください。また、復習は単に答 え合わせだけにな っていないかをチェッ クしてあげて ください。

一    一

一夕   一 一φ   一 ′ 一 一


四谷大塚・ サピックス算数進度対照表

【 付録 4】

<算 数進度対照表 > (注 意 )内 容 は各塾 が正式 に公 表 した ものではあ りませ んの で、一応 の 目安 として くだ

さい。 また、新 たに習 う項 目のみを表示 し、復習 にあ た る項 目は表示 してい ませ ん。 四谷大塚

4年 生

2月 ・ 和差算 3月

サ ピックス 1大 きな数 (十 進法・ 数の範囲)

。 平行・ 垂直、対頂角・ 同位角・ 錯角 垂直 対頂角 。 同位角・錯角 三角形の内角・ 小数のた し算・ ひき算 1露 好 還元算 (整 数)、 虫食い算 植木算 整数のかけ算 。わ り算 場合の数 (樹 形図) 計算の くふ う 三角形 。四角形 。円の性質 がい数 図形の折 り返 し 数列 (繰 り返 し、等差数列― n番 目の数、 n番 目までの和)

′7θ

推理算 (条 件の読み取 り、対戦表) 和差算 規則性 (表 と規則、図形 と規則)

4月 ∼ 8月

場合の数 (樹 形図) 約数 (約 数の意味、素数、ベン図) 分数の基本 (約 分、通分、大小比較) 倍数 (周 期性、連除法) 三角形の内角・ 外角 長方形、平行四辺形の面積 大 きな数 (十 進法・ 数 の範 囲)、 台形、ひ し形の面積 い数 (約 分、通分、大小比較 ) 立方体・ 直方体の性質 かめ算 (面 積図、 3つ のつるかめ算) 正方形・長方形の面積

グラフと折れ線グラフ

場合の数 (順 列、組み合わせ)

け算 。わ り算

<夏 期講習 > 平面図形 (多 角形 ) 平面図形 (等 積変形) 約数 (最 大公約数、文章題、素因数分解) 倍数 (最 小公倍数、文章題) 規則性 (碁 石を並べ る問題) (た (た

し:算 、ひき算、かけ算) し算、ひき算) 分配算

直方体の表面積・体積 かめ算、過不足算 立体図形 (容 積 と水面の高さ) (道 順 )


9月 ∼ 分母が等 しい分数のた し算・ ひき算 和差算 の復習、や りとり算 1月

平行四辺形・ 台形 の面積 表 とベ ン図 規則性 (周 期算) 場合 の数 (樹 形図)

消去算 小数 (か け算の復習、わ り算) 分数 (か け算、わ り算、分数 と小数の換算) 方陣算

時間の単位 と計算

平均算

分配算 三角形の面積

円とお うぎ形

規則性 (碁 石を並べ る問題 )

(円 周 と弧の長さ)

円とお うぎ形 (面 積) 1水 面の高 さ (棒 を入れる問題)

暦算 円 と正多角形の性質 立方体・ 直方体の展開図

1水 量変化

条件整理 と推理 小数のかけ算・ わ り算

1平 面図形

1規 則性 1速

とグラフ

(循 環小数 )

さ (速 さの単位、速さの 3公 式) (複 合図形、求積 の工夫 )

1場 合の数

図形

(色 のぬ り分け) (角 柱

。円柱)

1童 馨

′7′


5年 生

2月 ・ 3月

四谷大塚

サ ピックス

倍数 (周 期性、連除法) 植木算・ 周期算 循環小数

平面図形 (図 形の分類、図形の移動 ) 数に関する問題 立体図形 (投 影図・展開図、 容器を傾ける、

約数 (約 数の意味、連除法)

水中に物を入れる)

多角形の性質 分数の基本 (約 分、通分) 多角形の面積 分数 (か け算、わ り算、分数 と小数の換算) 規則性 (図 形) 立方体・ 直方体の表面積・ 体積 月∼ 月

ヽ 算・ 追いつき算) 分配算 表 とグラフ

ダイヤグラム

の移動 (面 積変化、グラフ) 数列 (繰 り返 し、等差数列 ― n番 目の 数、底面積の変化 と水深の変化 n番 目までの和) 仕切 りや段差のある水そ う 消去算 割合 (3用 法、百分率、歩合)

3用 法

一 一

一    一

一′ 一Z ′

(容 積 と水面の高さ) (百 分率、歩合) 合 (相 当算) 円 とお うぎ形 (円 周 と弧の長さ) つるかめ算

円 とお うぎ形 (面 積) 平均算 。のべ算 (角 柱・ 円柱) (面 積図)

とグラフ と水深の変化 りや段差のある水そ う (食 塩水 ) 場合の数 (道 順) 場合の数 (道 順・ 組み合わせの復習、色の ぬ り分け) 帯 グラフ・ 円グラフ 平面図形 (複 合図形、求積の工夫) (三 角定規の 3

割合 (相 当算) 割合 (原 価・ 定価・ 利益) (食 塩水 )

<夏 期講習 > 反比例 比 (比 の表 し方、連比、逆比) 比 (比 の文章題、面積・ 体積 と比 ) 円と多角形 (正 多角形、転がる円) 線対称 。点対称 平均算 (面 積図) (図 形 と規則性、暦算 )


の単位、速さの 3 割合 (原 価・ 定価・ 利益) (回 転移動) ・ 過不足算 9月 ∼ 1月

ダイヤグラム ・還元算

旅人算 (速 さと 流水算 時計算 通過算 事算

(出 会 い算・ 追いつき算 ) 当算

集合 素因数分解 転がる円 通過算 比の表 し方 点 の移動 (面 積変化)

(円 )

平面図形 (拡 大 。縮小、相似) 平面図形 (面 積比・ 影)

(連 比、逆比)

n進 法

(比 の文章題 )

図形 の移動

図形 (拡 大・ 縮小、相似 ) 。点対称 図形の折 り返 し

(と

りちがえ算)

ニ ュー トン算

¨    一

ヽ ・ 角す い

回転させてできる立体) と差に関する問題

n進 法

(投 影図、円す い・ 角す い、平

一夕   ¨ 一Z   ¨

時計算

(回 転移動・ 平行移動 )


四谷大塚

6年 生 2月 ・ 底面積の変化 と水深の変化 3月

数列・碁石を並 べ る問題

サ ピックス 割合 (歩 幅 と歩数) 割合 (差 が一定の問題、倍数変化算)

分配算

速さと比

食塩水

平面図形 (面 積比、面積 と比、三角定規の 3辺 の比)

仕事算 ニュー トン算 速さと比

立体図形 (展 開図・ 投影 図・ 回転体、表面積・ 体積比、切断) │ グラフ (グ ラフ と相似、水量 グラフ、2人 の距 │

離の変化 とグラフ)

4月 ∼ 旅 人算 平面図形 7月

(面 積比・ 影 ) 図形の移動 (回 転移動 。平行移動) つるかめ算 (3つ のつるかめ算)

立体図形 (回 転体、容器を傾ける) 図形上の点の移動 立体図形 (投 影図、展開図、切 断) 場合の数 (道 順・ 組み合わせ)

′Zイ

規則性 四角数、方陣算) 復習 と発展的内容


■著者プロフィール■ 山田 正 (や まだ 。ただ し) 教育 ジ ャー ナ リス ト。 専 門分野 は難 関中学受験 指導、 教務・プレゼ ンテー シ ョン研修。大手進学塾 (公 開会社) におい て難関校合格指導 を歴任。株式会社建築資料研 究社 ニ ッケ ンアカデ ミー において、約 1年 とい う短期 間で 60名 に上 る講 師・ 教論を映像講師 に育成。現在、 株式会社 ライセ ンスア カデ ミー において高校生 を対象 とした進路 ア ドバ イザ ー を務め るほか、株式会社湘南 ゼ ミナ ー ル 中学受験 事業部 において教鞭を とる。著書 に「中学受験は親で決 まる」 (ぱ る出版 )。 1968年 5月 8日 生 まれ。慶應義塾 大学経済学部卒 業。本書 の 内容 に関す るお問 い合 わせ は、著者 ブ ロ グ (http://kyOiku.

inb/)ま で。

優秀な子 どもが中学受験 で失敗する 9の 理由 2010年 8月 15日

*定 価はカバーに表示してあります。

第 1刷 発行

正 山 田 清 水 智 貝」 エ ー ル 出版 社

著 者 編集 人 発行所 〒

101-0052 東京都千代田区神 田小川町 2-12 信愛 ビル 4F

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◎ 禁無断転載 ISIBN978-4-7539-2970-2

()3(3291)0306

03(3291)0310

00140-6-33914

乱丁・ 落丁本 はお とりかえいた します。


難関中学受験 完全攻略 マ ニ ュアル 勝利 へ の戦略とその実行方法 ∼合格へのノウハウと受験の対処法のすべて∼

1章 ★中学受験を始める前 に知 っておきたい 受験 の「い ろは」

2章 ★進学塾の正しい選び方 3章 ★しっかりした基礎力をつけるための方法 4章 ★志望校選びのポイント 5章 ★学力を伸ばす勉強スケジュー ルの立て方 6章 ★直前期にすべきこと 7章 ★受験の準備と合格後の手続き はどうすればいいのか ISBN978-4-7539-2963-4

相野主税・著

◎定価 1575円 (税 込 )


ISBIN978-4-7539-2970-2

C6037 ¥1500E │││││││││││││││││││││││││││‖

9784753929702

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1926037015000

優秀な子酬刑 中学受験で 失敗さら 3の理由 │ロ L

も と も とや る気 が な い (動 機 づ けが 弱 い ) フ ェー ズ に適 した能 力 を用 いて い な い 思 考 を行 動 に 移 す こ とが で きな い 最 終 結 果 に対 して 関 心 が 薄 い 集 中 カ ロ持 続 力が 弱 い 挫 折 しやす い 誤 った 責 任 帰 属 ・ 過 度 の 他 者依 存 手 を広 げす ぎて しま う 親 のサ ポー トが うま くゆ か な い

エール出版社◎定価 本 体

1500円



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