Contents
–
Tactical Design –
–
–
–
6
Chapter 0 : Necessity of Civic Pride
求められる市民の主体性
–
–
10
Chapter 1 : Limit of Modern City Planning
近代都市計画の限界
–
–
18
Chapter 2 : Tactical Urbanism
タクティカル・アーバニズムへ
–
–
26
Chapter 3 : Tactical Intrusion into Modern Cities
都市への戦術的介入
–
–
50
Chapter 4 : English Abstract
Tactical Design: Practices for Commonalities through Interventing into the Modernised Cityscape
Chapter 0
– Necessity of Civic Pride
求められる市民の主体性 – – Naoto Yoshioka + Yuka Yoshii + Rebecca Rébillé
吉岡直人 + 吉井優香 + レビエ・レベッカ
–
Chapter 0
求められる市民の主体性
– Necessity of Civic Pride
1 |背景
現代都市においては、近代都市計画を
–
前提とした巨大開発のみならず、市民
本稿では、慶應義塾大学環境情報学部
がみずからの手でまちを知り、使い、暮
水野大二郎研究会のデザインリサーチ
らすことが必要であるといえる。実際
プロジェクトである「Tactical Design」
のところ、それらは「タクティカル・
について述べる。
アーバニズム」として部分的に実践さ
人や資本が都市にグローバルスケー
れている。より多くの市民が都市に対
ルで一極集中している現状は、2015 年
して主体的になりえるこの都市型実践
9 月現在における「難民」問題からも
において、デザインという営為は何を
明らかであろう。近代都市の誕生から
なしえるのだろうか。その可能性を「タ
100 年あまり、私たち都市生活者の日
クティカル・デザイン」という概念と実
常生活は劇的に変化した。というのも、
践でとらえることが本稿の目的である。
技術の発展とそれにともなう移動の加
–
速は、都市そのものの再発明を要求し
–
たからである。都市の設計手法、対象、
2 |構成
主体がめまぐるしく変化していく中で、
–
資本が一極集中して著しい人口増加が
本稿は 3 章構成となっている。1 章では、
生じてしまったのだ。
産業革命以降に行われてきた近代都市
一方で、衰退する都市を転用するよ
計画がトップダウン式からボトムアッ
うな創造的活動も近年では多く見られ
プ式に至るまでの変遷をたどることで、
るようになった。例えば、都市の間隙た
現代都市計画に求められる思想を浮き
る空きスペースが Airbnb に代表され
彫りにする。2 章では、現代的な都市計
るようなクラウド型サービスによって
画の潮流としてのタクティカル・アー
有効活用されている。このような視点
バニズムを紹介し、一般市民が主体性
は、日本においては震災以後の都市像
を持って公共空間をデザインする意義
とも大いに接続することになるだろう。
を確認する。3 章では、1 章と 2 章を踏
一時的に断絶したライフラインのもと、
まえたタクティカル・デザインの実践
市民がみずからの手で生活をすること、
およびオープンソース化の可能性につ
つまり市民の主体的な都市への関わり
いてまとめたあとに、今後の展望を明
方が問われているのである。
らかにしたい。
8 – 求められる市民の主体性|背景
Chapter 1
– Limit of Modern City Planning
近代都市計画の限界 – – Naoto Yoshioka + Rebecca Rébillé
吉岡直人 + レビエ・レベッカ
–
Chapter 1
近代都市計画の限界
– Limit of Modern City Planning
本章では、近代都市計画の理論的支柱
申し分のない最上の生活条件」[前掲書 :
となったル・コルビュジエ、ジェーン・
49]が揃い、問題の解決が図れると考え
ジェイコブス、アンリ・ルフェーブルそ
た。
れぞれの思想に焦点を当てる。それを通
–
じて、近代都市計画の理論的限界と現代
1 . 2 自動車道路と高層建築群による機
都市への応用可能性を提示する。
械時代の都市表現を見出したこと
–
–
–
近世以降のヨーロッパから続く建築様
1 |近代都市計画
式が主流であったという背景もあり、
–
当時の建築家は過去の歴史的様式を深
産業革命以降、19 世紀の都市計画の
く理解した芸術的な作品をつくること
最重要の眼目は高い人口密度、住居と
が求められていた。しかし 19 世紀にな
工場の混在、スラムの拡大といった公
ると、新たに実験科学と応用の時代が
衆衛生の問題であった。都市計画を含
始まり、機械が大量に出現した。それに
む社会実践の多くは、産業革命の成立
ともなって人間の生活や考え方にも変
以後に大量に生み出された労働者に対
化が起こる[前掲書 : 38]。 加えて、一定
する福祉と安寧を提供することが目
不変の性質を持った人工材料の安全度
指された。特にル・コルビュジエ( Le
にもとづいた応力計算の科学的方法の
Corbusier )は、人口過密で悪化する近代
出現によって技術もまた変化した[前掲
都市を批判し、 『輝く都市』[コルビュジエ
書 : 41] 。
1968 a ]においてその対策を提示したこ
エは前時代の都市計画を、
こうした背景から、コルビュジ
とで知られる。
–
平面的で、むしろ後ろ向きで博物館行き
1 . 1 「仕事、余暇、睡眠」と分節化し、
のものであり、もの真似にばかりふけっ
各機能に適した都市型を与えたこと
ていた[コルビュジエ 1968 : 20]
– 産業革命によって都市での工業化が進
と批判し、機能主義、機械主義的な都市
んだことで公害が発生していた当時、
像の提案を目指した。
都市計画によって仕事と余暇と睡眠を
特にコルビュジエは来たる自動車中
分けることで、 「物質的にも感覚的にも
心社会を見越しており、
12 – 近代都市計画の限界|近代都市計画
ら住民主導のまちづくりへと流れを変 速度は夢ではなく、絶対の必要である。私
えさせた人物である。その大きなきっ
は断言する、速度を自由にする都市は成
かけとなったのが、1961 年に出版され
功を自由にすると[コルビュジエ 1967 : 177]
[ジェ た著書『アメリカ大都市の死と生』 イコブズ 2010]である。本書においてジェ
と、自動車専用道路の重要性と移動時
イコブスは、 「組織だった複雑性を持つ
間の短縮を訴えている。
システム」である大都市には多様な用
–
途/機能が経済的/社会的に絶え間な
1 . 3 スラム・クリアランス
く支えあっている秩序があるとした。
–
そして、これを無視した計画は問題を
コルビュジエは都市計画にあたって、人
引き起こすだけとして、コルビュジエ
口流入によって都市部に増加していた
に代表される従来の都市計画を批判し
スラムを「結核菌だらけの古くさい隠
た。
れ場所」[前掲書 : 201]と呼んでいるよう
ジェイコブスは機能主義に立った都市
に、衛生問題を解決するためにスラム・
計画/再開発プロジェクトに対して生
クリアランスの必要性を感じていた。ま
活者の視点から批判し、活気ある都市
た、輝く都市の構想において、オープン
のための多様性のある空間の条件を以
スペースを確保するためにもそれらの
下の 4 つに示した。
地域を取り壊し、その地域には高層住宅
–
を建てる必要があるとした。
2 . 1 . 1 混合一次用途の必要性
–
–
–
その地区や、その内部のできるだけ多く
2 |近代都市計画批判
の部分が、二つ以上の主要機能を果たさ
–
なくてはなりません。できれば三つ以上
しかし、コルビュジエの主張はあまり
が望ましいのです。こうした機能は、別々
にもトップダウン式の空間決定論に寄
の時間帯に外に出る人や、ちがう理由で
りすぎていたがゆえに、生活者の視点
その場所にいて、しかも多くの施設を一
に重きをおく論客から批判を招いた。
緒に使う人が確実に存在するよう保証し
本稿ではその筆頭であるジェーン・
てくれるものでなくてはなりません[前掲
ジェイコブスとアンリ・ルフェーブル
書 : 176 ]。
を取り上げたい。
–
ジェイコブスは有効性についても、そ
2 . 1 ジェーン・ジェイコブス
れぞれの時間帯に街路を利用している
–
人々が、本当に同じ街路を使っていな
ジェーン・ジェイコブス( Jane Jacobs )は、
くてはならない、同じ街路をちがう時
建築家でも思想家でもないライターで
間帯に使っている人々の間で部分的に
ありながら、国家主導のまちづくりか
同じ施設を使う人々がいる、ある時間
13 – 近代都市計画の限界|近代都市計画批判
Chapter 1
近代都市計画の限界
– Limit of Modern City Planning
帯に街路にいる人々の混合比率が他の
208]。また、街路を短くすることは手段
時間帯に街路にいる人々の混合比率と
であり、その目的は「多様性を生み出
ある程度近い構成を持たなくてはなら
して都市計画者以外の多くの人々の計
ない、とする 3 つの条件を示している。
画を喚起すること」[前掲書 : 213]とも語
[前掲書 : 188 - 189]。
られており、設計者の意図の乗り越え
この具体的な成功例としては、フィラ
をうながすための要件としてもとらえ
デルフィア市のリッテンハウス広場が
ることができる。
あげられている。アパートや各種多様
–
な店、事務所といった多様な近隣の存
2 . 1 . 3 古い建物の必要性
在が異なる時間帯に様々な用途を持っ
–
た利用者が公園を利用しているために、
地区は、古さや条件が異なる各種の建物
継続的な活気がもたらされている。
を混在させなくてはなりません。そこに
–
は古い建物が相当数あって、それが生み
2 . 1 . 2 小さな街区の必要性
出す経済収益が異なっているようでなく
–
てはなりません [前掲書 : 214]。
ほとんどの街区は短くなくてはいけませ ん。つまり、街路や、角を曲がる機会は
都市に新しい建物ばかりがあると必然
頻繁でなくてはならないのです[ 前掲書:
的に高家賃となり、その利用は経済的に
205 ]。
限られたものとなる。すると、老舗や標 準化されたものがあふれ、活気があって
失敗した都市地域に典型的に見られる
面白いものが少なくなってしまう。それ
構図としては、長い街区があげられて
を防ぐためには、新しい建物と古い建物
いる。自己孤立的な街路は多様性を損
が混合しているのが望ましい。多様性を
なわせ、単調で標準化された都市を生
生み出すためには、高収益事業、中収益
み出してしまう。都市に活気を持たせ
事業、低収益事業に無収益事業が入り交
るためには、街路を短く多くして 1 つ
じっている必要があるのである 。また、
の目的地に対する経路の選択肢を増や
将来の収益性の観点から見ても、都市は
すことが必要なのである。これにより
一次多様性の混合と二次的多様性を育
引き合う場所の供給は大幅に増え、利
成するための古い建物の混合が必要だ
便性の向上が期待できる[前掲書 : 206 -
としている[前掲書 : 215 - 223]。
14 – 近代都市計画の限界|近代都市計画批判
2 . 1 . 4「密集の必要性」
スペースの喪失、延びきった道路網に
–
対する多額の補修費の投入、経済資源
十分な密度で人がいなくてはなりません。
の不平等な配分、コミュニティに対す
何の目的でその人たちがそこにいるのか
る一体感の喪失といった諸現象をもた
は問いません。そこに住んでいるという
らしたとされる。[川村・小門 1995]すな
理由でそこにいる人々の人口密度も含ま
わちニュー・アーバニズムは、コミュ
れます [前掲書 : 228]。
ニティ崩壊による米国社会問題の解決 策として自動車への依存を減らし、生
街路や公園や事業所を利用する大半は
態系に配慮したうえで、人々が自分が
その地区の住人であるため、そこに十
住むコミュニティに強いアイデンティ
分な密度がなければ利用者が減少し、
ティが持てるような町の創造を提案し
多様性は生まれないとした。また、住戸
たのである。
密度の低い所で過密が起こった場合は、
従来の近代都市計画が職と住の分離、
周辺に気晴らしや逃避になる公共生活
自動車中心のモデルを想定していたの
が少なくなることから、不正や無視が
に対して、ニュー・アーバニズムでは、
横行し治安が悪化するとして、適した
鉄道駅を中心に商業施設や住宅地が囲
住戸密度は治安維持にとっても重用で
んだ徒歩主体のモデルを想定している。
あるという[前掲書 : 236]。
ニュー・アーバニズム誕生のきっかけ
また、ジェイコブスは高密を排除す
となった、メキシコ湾に面したフロリ
ることは過密問題の解決とは関係がな
ダ州シーサイドのまちづくりの特徴は、
いこととして批判した。もともと住ん
多様な用途の施設が共存する、主要施
でいた人々を追い出し、他所に過密を
設に歩いてアクセスできるような適当
招来させてしまうことで、近代都市計
なスケール感がある、地域性に配慮し
画のスラム・クリアランスの問題を悪
た変化に富んだ多様な表情を持ってい
化させるというのである[前掲書 : 235]。
る、環境的配慮が成されていることが
ジェイコブスの指摘は以降の都市
あげられる[松永 2005 : 65]。
計画に影響を与え、1980 年代以降の
–
アメリカを中心とした「ニュー・アー
2 . 2 アンリ・ルフェーブル
バニズム」という新しい潮流が生ま
–
れるに至る。ニュー・アーバニズム
ジェイコブスのみならず、社会学者の
は、自動車中心の郊外住宅開発による
アンリ・ルフェーブル( Henri Lefebvre )も
都心の空洞化に対する批判から誕生し
国家と専門家によって大規模に行われ
た。1995 年に定められたアワニー原
る都市計画に対して批判を浴びせたこ
則によると、従来の郊外の開発パター
とで知られている。
ンが、自動車への過度の依存によって
1950 年代半ばから 1960 年代にかけ
もたらされる交通混雑と大気汚染、誰
てのヨーロッパでは、都市への資本の
もが利用できるような貴重なオープン
流入と人口の集中が加速化し、国家に
15 – 近代都市計画の限界|近代都市計画批判
Chapter 1
近代都市計画の限界
– Limit of Modern City Planning
よる都市計画や民間資本による都市開
2 . 2 . 2 シチュアシオニスト
発が行われた。ルフェーブルは技術主
–
義/構造主義が支配的となった当時の
ルフェーブルの思想は 1960 年代に出
社会を都市と日常生活の観点から批判
現したシチュアシオニストにも多大な
した。ルフェーブルによれば、工業化に
影響を与えている。シチュアシオニス
よって交換価値に還元されてしまった
ト(シチュアシオニスト・インターナショナル)と
都市は完全な都市化 –「都市社会」
は、1957 年から 72 年にかけてフラン
には至らない。 「都市社会」とは、住民、
スはパリを中心に活動した前衛芸術集
使用者、現場にいる人々による主体的
団である。資本主義社会が生み出した
変革の可能性をはらみ、それらの人々
トップダウン式の都市計画による支配
が都市の組織化に介入して空間を我有
的なモニュメントやイメージ –「景
化しうる社会である。すなわち、都市は
観( spéctacle )」を否定し、多様性に富ん
複数の他者によって読み替え/書き換
だ都市空間の「状況( situation )」の構築
えが可能な場であり、誰もが主体性を
を目的とした。また、市民の消費の舞台
持つことができる場であるとした[南後
である日常に着目しながら、創造的な実
2011 : 234 - 236]。
験社会を実現するための「漂流( dérive )」
–
や「転用( détournement )」といった概念
2 . 2 . 1 都市への権利
をつくりだした。 『状況の構築へ –シ
–
チュアシオニスト・インターナショナル
また、ルフェーブルはその主著『都市
の創設』[シチュアシオニスト・インターナショナ
への権利』[ルフェーブル 2011]において、
ル 1994]でも述べられているように、シ
身体を介した時間と空間の我有化にあ
チュアシオニストは生き方を指図され
たって、国家と民間資本による都市計
る世界の重圧に悩まされ、支配権力に
画によって市民が「疎外」されてしまっ
よって整備された都市環境の改変を目
たのだという。しかし、都市を主体的に
指した。そこで大きな役割を果たしたの
利用し使用価値を帯びた「作品」とす
が「心理地理学( psychogéographie )」であ
ることで、再び「都市への権利」を獲得
る。心理地理学とは、 「意識的に整備さ
することができるとした。これも広く
れた環境かそうではないかにかかわら
都市空間における市民の主体性の問題
ず、地理的環境が諸個人の情緒的な行動
としてとらえることができる。
様式に対して直接働きかけてくる、その
16 – 近代都市計画の限界|近代都市計画批判
正確な法則や効果の研究」であり、その
を規定するという空間決定論に立って
研究に用いられる沢山の手法が紹介さ
いたがゆえに、本来都市に「住む」主体
れている。[前掲書 : 125]その手法のひと
である人々を度外視してしまったとい
つに漂流という実験的行動様式があり、
えるだろう。その結果として、 「プルイッ
これは「変化に富んだ環境の中を素早
トアイゴー団地」や「ベルマミーア団
く通過する技術」と言われ、 「実験を連
地」に代表されるような犯罪の温床や
続的に行う期間」を示したりもする[前
スラムを生み出したことは周知の事実
掲書 : 138]。すなわち、本来ならば通行が
である。また、郊外のニュータウン構想
禁じられている場所にあえて侵入した
に見られるように、本来使用されるべ
りすることで、都市の設計者が意図しな
き都市空間が交換価値に還元され、 「幸
かった新しい姿を見出そうとする試み
福のイデオロギー」を通じて消費の対
であった。また、転用という手法は「転
象になったことで、住人の共同体や社
用使用法」において、プロパガンダの道
会生活への主体性が失われてしまった。
具として今までの芸術ジャンルを越え
それを問題視したのが、他ならぬジェ
るもの、ブルジョワの私的所有をなくす
イコブスとルフェーブルであった。
もの、そして秩序を破壊する「真剣なパ
いずれにせよ、求められるは住人が
ロディ( parodique- sérieux )」として表され
主体性の一部を担うボトムアップ式の
ている[前掲書 : 196]。すなわち、転用と
まちづくりである。人々が主体性を取
は国家や専門家によって設計された状
り戻すためには、まちを知り、使い、暮
況を、その意図とは異なる用途で利用す
らす、個人による計画の乗り越えが必
る行為を意味している。
要なのである。しかし、そのためには
–
ジェイコブスの議論だけでは不十分で
2 . 3 ニュー・アーバニズムの失効
ある。たしかにニュー・アーバニズムは
–
都市生活者の視点を取り入れてはいる
近代都市計画の変遷をたどるべく、ル・
ものの、その大がかりな都市計画は依
コルビュジエ、ジェーン・ジェイコブ
然として多くの土地と資源を要求して
ス、アンリ・ルフェーブルの思想をひも
いる。冒頭の難民問題などを鑑みても、
といてきた。それによって、国家や専門
人口が増加する今日の都市地域におい
家主導によるトップダウン式の近代都
て適切でないことは明らかである。し
市計画から、その神話が崩壊したあと
たがって、今日の都市計画はジェイコ
のボトムアップ式の都市計画に至るま
ブスとニュー・アーバニズムのみなら
での潮流を素描した。
ず、ルフェーブルの思想、そしてシチュ
1960 年代当時、急速な人口流入や公
アシオニストの「実践」を今一度再検
害問題といった「混沌」を収めるため
証するべきなのではないであろうか。
にはある程度の「秩序」が必要であっ たことは想像に難くない。しかし、コル ビュジエの議論は空間が社会のあり方
17 – 近代都市計画の限界|近代都市計画批判
Chapter 2
– Tactical Urbanism
タクティカル・アーバニズムへ – – Yuka Yoshii + Ryo Nagara
吉井優香 + 永良凌
–
Chapter 2
タクティカル・アーバニズムへ
– Tactical Urbanism
本章では、1 章でも触れたタクティカ
題となっている現代においては、従来
ル・アーバニズムという潮流を扱う。具
の国や行政がトップダウン式に行って
体的には、2000 年代以降における社
きた都市計画のプロセスは困難を極め
会問題その他の状況を踏まえたうえで、
ている。
タクティカル・アーバニズムの運動が
–
登場したのはなぜか、そしてタクティ
1 . 2 環境管理型権力
カル・アーバニズムとは何かという問
–
いに答えていく。
一方、国家の権力行使の在り方も変化
–
しつつあり、旧時代的な規律や訓練だ
–
けからなるものではない。新しい権力
1 |現代都市の歪み
のインフラを担うのは、都市に張り巡
–
らされた監視カメラや、携帯電話や電
1 . 1 都市への人口集中化、著しい経済
子マネーの利用履歴などの「情報」で
格差などの問題系
ある。それらが刻一刻と記録する情報
–
は、データサイエンティストやエンジ
国連「世界都市化予測 2014」[ United
ニアの思惑と、セキュリティ化の意識
Nations Depar tment of Erouomic and Social
からくる自己防衛的な市民感情に支え
Affairs 2014]によれば、都市部の人口が
られて、単なる「監視」を通り越して
農村部の人口に比べて増加する都市
暴走しつつあるともいえる。この背景
化の傾向にあるという。具体的には、
を踏まえて、思想家の東浩紀は、環境と
2014 年の時点で世界人口の 54%が都
してのアーキテクチャが暗黙裡に人問
市部に居住しているほか、2050 年には
を動かして管理する権力を「環境管理
66 % まで増加すると予測されている。
型権力」と名付けている[東浩紀 2002]。
このデータは都市部と農村部の経済格
我々を囲繞するアーキテクチャは、
差が広がりつつあるということを暗示
ジェレミ・ベンサムが提唱した囚人監
している。
視型システムことパノプティコンさな
急激に都市に集中した人口を支える
がら、それ自体が支配の権カとして振
ためにはインフラや住宅の整備が必要
る舞い始めているのである。
不可欠になる。しかし、前章でも取り上
–
げたように、資源不足や資金不足が課
–
20 – タクティカル・アーバニズムへ|現代都市の歪み
2 |市民主体の都市型実践
Rebar の卓越はその方法をオープン
–
ソースで公開したところにある。体系
2 . 1 タクティカル・アーバニズム
化されたメソッドがインターネット上
–
で公開されたことで、他の都市でも広
トップダウン式に計画されてきた空
く都市への介入が行われる土台が整っ
間 – それが実空間であれ、情報空
たのである。実際に、Parklet というプ
間であれ – は、多種多様化した人々
ロトタイプがサンフランシスコの市の
のニーズや欲求にもはや適合しないの
権力を巻き込んで実践された。サンフ
ではないか。そこで世界各地でカウン
ランシスコでは面積の 25 % が道路と
ター的に生じている運動がタクティカ
公共権利通路である一方で、憩いのス
ル・アーバニズムである。それでは、タ
ペースが不足していることが問題視さ
クティカル・アーバニズムとは一体何
れていた。このプロトタイプが成功を
なのか、事例の一つとして、芸術家集
おさめたことで PARK( ing )day はより
団 Rebar が 2005 年に行なった PARK
様々な都市で展開されることになった
( ing )day [ 1 ] というプロジェクトを以下
のだ。ここで興味深いのは、サンフラン
に紹介する。
シスコ市という「公」民も参画してい
PARK( ing )day と は、数 時 間 レ ン
る点だ。ただ単に「私」空間を形成する
タルした道路脇の駐車スペースにベン
のではないタクティカル・アーバニズ
チ、机、植物や自転車置き場といった
ムは、社会的なステークホルダーとど
要素を配置することで道路を公園にす
のような関係性の上に成立しえるのか。
る( pavement to park )都市型実践である。
幾つかの視点から以下に整理したい。
[1]
[1] サ ン フ ラ ン シ ス コ に お け る Par
klet の 例[ Pavement to Parks
2015 ]。
21 – タクティカル・アーバニズム|市民主体の都市型実践
Chapter 2
タクティカル・アーバニズムへ
– Tactical Urbanism
2 . 1 . 1 官民公私
ると、元々は国や行政によって認可を受
–
けていない「私」的な「民」の活動である。
第一に私たちの日常生活を規定する「官
しかし、結果的により多くの市民のニー
民公私」というフレームがあげられる。
ズを満たすことで、行政からの認可を
[藪 藪野祐三 『ローカル・デモクラシーⅠ』
受けた「公」的な活動に展開されてい
野 2005]によれば、ここでいう公/私が
くことになる。このように、タクティカ
空間や機能というシステムを意味する
ル・アーバニズムは「民」を主体として
軸であるのに対して、 「官/民」はその
「私」と「公」をまたがる横断的な実践
担い手であるアクターを意味している。
であることが見てとれる。
Parklet の例では、芸術家集団という
–
「民」が始めた活動がサンフランシスコ
2 . 1 . 2 公共私
市という「官」を巻き込んだ活動にシ
–
フトしていった。タクティカル・アーバ
第二に「公共私」という組み分けから
ニズムをこの四象限にマッピング [ 2 ] す
タクティカル・アーバニズムの可能性
[2]
[2] 藪野祐三「官民公私論」と「英語 表記による官民公私論」を参考
にした、官民公私論におけるタク ティカル/アーバニズムのゾーニ ング。
22 – タクティカル・アーバニズムへ|市民主体の都市型実践
をとらえたい。社会学者の加藤文俊は、
は、 「共」を取り戻す方法や態度が求め
恩田守雄の指摘を引用しながら「公共」
られる。
という言葉についてこう述べている。 つまり、今日においては「公」と「私」 ぼくたちは、 「公共」と「私」を対比さ
の揺らぎである「共」の空間 [ 3 ] を取り
せて語ることが多いが、じつは「公」(パ
戻すことと、その手段が問われている
(プライベート)のあいだ ブリック)と「私」
ということである。その手段としても
に、 「共」(コモンズ)の領域があった(ある)
タクティカル・アーバニズムは有効な
ことを認識しておくが大切なのだ。 「共」
のではないだろうか。前出の官民公私
は、地域に暮らす人びとの共益が、私益
のフレームにもあるように、個人的な
や公益よりも優先される領域のことだ。 「誰のものでもあって誰のものでもない
ニーズを満たすための「私」の活動が 「公」の領域で実践されることで、誰
場所」ということだろうか。かつては、
のものでもあって誰のものでもない、
わかりやすい形で「共」の存在が認知さ
より多くのニーズを満たす「共」の空
れていたが、現代社会では、もはや「共」
間が構築されていると考えられるから
は独自の領域をもちえず、その存在その
だ。
ものが見えにくくなっているという。そ
–
の結果、 「供出」や「互助」の精神は希
2 . 1 . 3 タクティカル・アーバニズムの
薄になる。身の回りの多くのことがらを、
六要素
「公」か「私」かで判別してしまうからだ。 人びととのかかわりについて考える際に
– タクティカル・アーバニズムの実践には
[3]
[3]「共」 独自の領域の消失。 「 『ゆるさ』 」 [加藤 2015 ]よ があれば( 3 )
り転載。
23 – タクティカル・アーバニズムへ|市民主体の都市型実践
Chapter 2
タクティカル・アーバニズムへ
– Tactical Urbanism
いくつかの共通する要素が存在する。建
という点、また、その手段がオープン
築家の Andrés Duany は『TACTICAL
ソース化されているという点で一致す
URBANISM』[ Duany et al. 2015]序章に
ることがわかる。
おいて、タクティカル・アーバニズムは
–
以下の六要素からなると説明する。
2 . 2 タクティカル・デザイン
A |脱中心化( decentralized )– 今まで
タクティカル・アーバニズムの関連
の国、行政、建築家に集中していた権力
書籍をひもときながらその輪郭のス
を分散する
ケッチを試みた。本章を締めくくるに
B |ボトムアップ( bottom- up )– 市民
あたって、前章の議論と照らし合わせ
自ら、自分たちの住む場を使い倒し、都
ながら「タクティカル・デザイン」と
–
市を自分たちの手に取り戻す。
いう概念を定義しておきたい。Andrés
C|極端な可動性(extraordinarily agile)–
Duany は、
短時間でその場に作り上げられ、元どお りに戻すことができる。
ミシェル・ド・セルトーが『日常的実践の
D|ネットワーク(networked)–ネット
ポイエティーク』で論じているように、戦
ワークにより、他の都市の市民によって
略(ストラテジー)は権力者の有無を言わさ
自分たちの都市で実践できるように公開
ぬ手段であり、戦術(タクティクス)はそれ
され、波及していく。
に対抗する無力な市民の手段である。前
E |低コスト( low- cost )– 小さな取り
者は徐々に力を握り始めてきた後者に圧
組みかつ既にあるものを利活用するた
力をかけることで、互いに拮抗している
め、費用が抑えられる。
のが現状である。
F |ローテク( low- tech )– 専門的で高
トップダウン式に計画されてきた都市を
い技術を用いずとも、誰でも行うことが
一般市民が改造し、自分たちのニーズを
できる。
満たすようにインフラを読み替える様を
これを Parklet の例に当てはめると、活
される。このようなインフォーマルなプ
動の発端が芸術家集団という市民の集
ロセス——ブリコラージュによってつく
観察することで、セルトーの理論は証明
合であるという点、駐車場を数時間だ
られる小規模な都市には、 「共」的な性質
け簡単な手段で憩いの場に変えられる
が付与される[ Ibid.: 10]。
24 – タクティカル・アーバニズムへ|市民主体の都市型実践
と述べているが、ここでいう「読み替 え」のニュアンスは、前章で述べたシ チュアシオニストにおける「転用」の ニュアンスと大きく重なっている。だと すれば、現代都市計画の潮流としてのタ クティカル・アーバニズムは、トップダ ウン式に押しつけられた意味の読み替 えと転用、いわば日常的実践としてのデ ザインによって成立しているのではな いだろうか。正式な職業訓練を受けてい ない「野生のデザイナ」が、小さなデザ インを戦術的かつ日常的に実践してい る。この構図を抽出することによっては じめて、タクティカル・デザインという 概念を定義することができる。 タクティカル・デザインとは、個人と いう単位で行われる、もとある場所や 人工物の読み替えと転用を通じた創造 的行為である。それに対してタクティ カル・アーバニズムとは、都市空間に 対するタクティカル・デザインによっ て果たされる問題解決のひとつのかた ちである。したがって、タクティカル・ アーバニズムを通じて主体性を取り戻 すことは、都市に埋没した「かかわりし ろ」を目ざとく見つけて、生きのびるた めのデザインを行っていくことに他な らない。 以上の議論を下敷きに、我々も都市を 漂流してタクティカル・デザインを実 践した。次章以降はそれに関して言及 する。
25 – タクティカル・アーバニズムへ|市民主体の都市型実践
Chapter 3
– Tactical Intrusion into Modern Cities
都市への戦術的介入 – – Naoto Yoshioka + Hidenori Okamoto + Rebecca Rébillé + Ryo Nagara
吉岡直人 + 岡本英宜 + レビエ・レベッカ + 永良凌
–
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
近代都市計画とタクティカル・アー
1 |アイディエーション
バニズムの潮流を整理することで、タ
–
クティカル・デザインという概念を定
タクティカル・デザインを実践するに
位した。本章ではそれを実践というか
あたって、我々は「私」的空間である住
たちで応用していくわけであるが、都
宅、すなわち「暮らしの機能」を都市へ
市空間における実践の意義を再確認す
と拡張することにした。
るべく、いま一度ルフェーブルと加藤
まずは日本の近代的汎用型住宅の原
文俊の議論をおさらいしたい。
型とされる 51 c 型を参考に、住宅にお
ルフェーブルは、都市から疎外され
けるトイレやリビングといった生活空
てしまった市民が「都市への権利」を
間の要素をブレインストーミングし
獲得するための糸口を「作品」に見出
た。例えば、トイレなら洋式便器やペー
した。この思想はシチュアシオニスト
パーホルダー、リビングなら本棚や新
にも影響を与え、 「漂流」と「転用」を
聞、あるいはその場を象徴する行動と
はじめとする多くの実践的な概念を生
いったふうにである。そしてそれらす
み出した。それらは我々がよりどころ
べての要素を空間に対応させるかたち
にしているデザインという手段の強
でカテゴライズした [ 4 ] 。
度を担保している。また、加藤文俊が
また、これらを具体的に都市に持ち
言及しているように、今日の社会では
出すかたちを考えるべく、 「暮らしの機
「私」と「公」の揺らぎとしての「共」
能」を都市に埋没させる 100 案を捻出
を実現する手段が問われている。そし
した [ 5 ] 。トイレならば公園の茂みを便
て、コミュニケーションの場として設
器に見立てたり、風呂ならば水飲み場
けられる「共」的空間を構築する手段
をシャワーに見立てたりと、都市空間
としてもタクティカル・デザインは有
に存在する要素を転用した表現方法を
効であると考えられた。 「都市への権利」
模索した。
と「共」の獲得を通じて失われた主体
ブレインストーミングを通じて、都
性を取り戻す契機を探るべく、我々も
市に暮らしの機能を拡張するには二種
タクティカル・デザインの実践を行っ
類の視点があることを発見することが
た。
できた。それらは「室内から都市」へ 向かう視点と「都市から室内」へ向か う視点としてそれぞれ整理できる。前
28 – 都市への戦術的介入|アイディエーション
[4]
[5]
[6]
者が住宅が内包する構造と機能を考え
案を拡張させるべく、都市/室内それ
たのち、それらに対応する都市の要素
ぞれの要素を色/形/機能/テクス
を見出すのに対して、後者は都市から
チャといった項目から分析し、類似す
転用可能な要素を見出す。それぞれミ
る人工物やサービス、それに対する人
クロからマクロに室内を拡張する方向
の行動を放射状に書き出していった。
性と、マクロからミクロに都市を読み
以上のような拡散と収縮のプロセ
替える方向性からなる真逆の指向性を
スを経て、最終的にアイデアを 2 つに
持っている。そこで、従来通り前者の拡
絞り、都市を漂流しながら実践を行っ
張案を考える一方で、都市の要素も蒐
た。なお、これらのプロセスは IDEO
集することにした。結果的として、都市
社が体系化したデザイン思考の 5 つの
から要素を見つける [ 6 ]
ステップ – 共感 Emphasize /問題
よりも、室内か
ら抽出した構造と機能を転用するアプ
定義 Define /アイデア創出 Ideate /
ローチの方が多くの案を出すことがで
プロトタイピング Prototyping /検証
きた。だからといって前者に専念する
Test – を参考にしている。
のではなく、二つのアプローチを往来
–
しながら室内と都市を結びつけて考え
–
た。
2 |枯山水 – 都市に庭の機
最後に「暮らしの機能」を都市に埋 没させた 100 案の中から面白いと感じ
能を埋没させる –
られた 10 案を選定し、それぞれ 100 案
第一の実践として、夜間の公園の砂場
まで拡張することで、合計 1 , 000 案を
を転用して枯山水を描いた。枯山水と
捻出する目標を設定した。以下が選定
は、池や遣水といった水を用いること
した 10 案である。なお、案はそれぞれ
なく、石や砂の紋様で山水の風景を表
二つの要素の組み合わせからなってお
現する庭園様式である。
り、前の項が都市の、後の項が室内の要
砂場に模様を描くにあたって、まず
素に対応している。
は道具となる砂紋掻きを制作した。砂 紋掻きとは砂利を引っ掻いた痕跡で紋
A |室外機×干し物
様を描く特殊な器具である。トンボや
B |公園にある土管×寝室
熊手に似た形態をしているが、刃の形
C |ゴミ捨て場×蚊帳
状が極めて特徴的で、三角形の頂点が
D|駅の券売機×バー
地面と接することで砂や砂利をかき分
E |バス停×風呂
けることができる。同様にして三角形
F |公園×冷蔵庫
の谷間によって均されることで、山脈
G|電柱×定規
のように並列な筋が残る仕組みとなっ
H|階段×椅子
ている。今回製作した砂紋描きは刃と
I |電話ボックス×居間
柄の部分からなっている。木製の刃
J |鉄棒×カーテン
は、ホームセンターの木材をレーザー
29 – 都市への戦術的介入|枯山水 – 都市に庭の機能を埋没させる
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
カッターで切り出した二種類の部品を
て大爆発をするのだったらどんなにおも
組み合わせることで構成されている。
しろいだろう。[梶井、1925]
同じく木製の端材からなる柄との接合 部は、接着剤と金属部品を用いて固定
梶井基次郎の小説『檸檬』において、レ
した。
モンは爆破のカタルシスを想起させる
実践にあたっては、制作した砂紋掻
特別な異物として描かれる。丸善にお
きを都市に持ち出したうえで、藤沢市
けるレモンと同じように、公園におけ
の公園 18 カ所に異なる紋様 [ 7 - 24 ] を描
る枯山水もまた異質な存在である。そ
くことにした。警察官に職務質問をさ
れでいて枯山水は、日が昇れば消され
れることがあったものの、作業は徹底
てしまうグラフィティ的な儚さも持ち
して深夜の 23 時から 4 時という時間帯
合わせている。この一点において、我々
で実施した。というのも、公園の砂場は
の実践は犯罪ならぬ実践たりうるので
子供が砂のお城やトンネルをつくって
ある。
遊ぶことが想定された公共空間であり、 夜間に利用されることが少ないからで ある。ジェイコブズによれば、一日の多 くが利用されていない公園の状態は退 屈/危険/空虚といったファクターを あわせ持ち、近隣に対して悪影響を及 ぼす。しかし、人々が公園を「目的材」 として利用するようになれば多様性か ら派生した活気が生まれるという[ジェ イコブズ 同 : 129] 。人気のない夜間の公園
を転用するという行為自体が、都市に 活気をもたらす可能性をはらんでいる のである。 丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を 仕掛けて来た奇怪な悪漢が私で、もう十 分後にはあの丸善が美術の棚を中心とし
30 – 都市への戦術的介入|枯山水 – 都市に庭の機能を埋没させる
[7]
31 – 都市への戦術的介入|枯山水 – 都市に庭の機能を埋没させる
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
– [ 8 ] 網代
円行下原公園にて。
– [ 9 ] 市松
原谷公園にて。
– [ 1 0 ] 海波
下土棚公園にて。
– [ 1 1 ] 観世水
下原公園にて。
32 – 都市への戦術的介入|枯山水 – 都市に庭の機能を埋没させる
– [ 1 2 ] 片男波
中丸公園にて。
– [ 1 3 ] 菊水
円行公園にて。
– [ 1 4 ] 立波
桐谷公園にて。
– [ 1 5 ] うねり/汀線
大塚戸公園にて。
– [ 1 6 ] 山波
とどろき公園にて。
33 – 都市への戦術的介入|枯山水 – 都市に庭の機能を埋没させる
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
– [ 1 7 ] 丸渦
丸岡公園にて。
– [ 1 8 ] 右渦/左渦
第二下土棚公園にて。
– [ 1 9 ] 大波
長後第二公園にて。
– [ 2 0 ] 大渦
四ツ辻公園にて。
34 – 都市への戦術的介入|枯山水 – 都市に庭の機能を埋没させる
– [ 2 1 ] 流水
高倉公園にて。
– [ 2 2 ] 水紋
円行下原公園にて。
– [ 2 3 ] 鑓水
長後新屋敷公園にて。
– [ 2 4 ] 獅子紋
上原公園にて。
35 – 都市への戦術的介入|枯山水 – 都市に庭の機能を埋没させる
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
3 |椅子 – 都市に居間の機能を埋没させる
–
第二の実践として、ビルの壁面に設置されたモニターをテレビに見立てた居間を構 築した。具体的には、本来は車両の逸脱を防止するための舞台装置であるガードレー ルを椅子に「転用」するためのツールキットをデザインした。 椅子らしさ/面白さ/容易さを担保しつつ、いかにして心地の良い「状況」を構 築するかということを念頭に、まずは都内に散在するガードレールのパイプ径や高 さを正確に計測した。これによって、地域間における規格の差異を包摂する設計を行 うことができる。 それに平行して、インスピレーションを得るための観察およびスケッチを街頭で 実施する。成果としては、ガードレールに脚を引っ掛けたり、もたれかかるようにし て座る小学生の姿をしばしば確認することができた。ガードレールに沿って横並び で共空間を展開せざるを得ない様や、椅子の背や座面といったそこにはないものを 読み替える様から発想を得たところで、椅子のプロトタイピングへと踏み切った。 椅子のプロトタイピングは 5 人のプロジェクトメンバーがそれぞれ実施した。い つでも/どこでも/だれでもつくれるようにという配慮から、いずれもホームセン ターなどで手に入る簡単な素材を転用している [ 25 - 30 ] 。
– [25]
ロール式の椅子。ダンボールを折り曲げること で、状況に適した椅子の高さや 形を設計すること ができる。ダンボールの波形構造に由来する軽さ と強さが特徴。
36 – 都市への戦術的介入|椅子 – 都市に居間の機能を埋没させる
– [26]
廃材を転用した椅子。材木店で裁断された板のあ まりが一般的な椅子の座面と同じであったため に、無料で譲り受けた。それを「都市の幸」とし て素材に転用し、板と紐で座面をくくりつけた。
– [27]
ありあわせのもののブリコラージュによる椅子。 ホームセンターで売っているパイプとロープに加 え、義務教育以降は倉庫にしまわれがちな縄跳び を転用した。座面に塩ビ製の縄跳びを用いること で、座り心地の良い椅子となっている。
– [28]
ダンボールを素材にハニカム構造を応用して設計 した椅子。アコーディオン状に伸び縮みするので 持ち運びやすい。また、軽さに反して人の重量に も耐えられる強度を持っている。表面に木目のテ クスチャを貼ることで、アットホームな外観を表 現した。
– [29]
レーザーカッターで切り出した合板の骨組みを、 ウレタンマットでガードレールごと縛り付けた 椅子。釘やボルトといった固定部品を一切使用せ ずに座面を固定しており、脚部に集中する使用者 の体重が椅子を自立させる力として働く。特殊な パーツを増やすことなく椅子らしさを演出した。
37 – 都市への戦術的介入|椅子 – 都市に居間の機能を埋没させる
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
[30]
38 – 都市への戦術的介入|椅子 – 都市に居間の機能を埋没させる
37 – 都市への戦術的介入|椅子 – 都市に居間の機能を埋没させる
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
4 |都市に居住空間そのもの
第二の実践に引き続き、いずれもホー
–
を転用しているが、日常生活に耐えう
第一、第二の実践を踏まえて、 「暮らし
るツールキットとしての強度を高める
の機能」にとどまらず、 「暮らしの空間」
べく、デジタル工作機械を用いて共通
を持ち出す実践を行った。
のロゴやディテールを配したブラン
居住空間のなかには、内部に別の空
ディングを行っている。
間を持つ要素が存在する。例えば、寝室
–
のベッド、脱衣所のカーテン、居間の
–
を埋没させる
こたつといった人工物は、いずれも内
ムセンターなどで手に入る簡単な素材
5 |都市の居住空間を公開する
部と外部を分離するサーフェスからな
–
る「コンテナ」である。これらは家族や
第三の実践の展示とフィールドワーク
同居人が共存しうる室内において、よ
を踏まえて、オープンソース化を見す
りパーソナルな居心地を提供している。
えつつ、第四の実践としての改良を継
この二重の空間構造が部屋の要ともい
続して行った。
うべき居心地を成立させているのだと
具体的な改良点としてはふたつあげ
したら、それを都市に持ち出すことは、
られる。一つ目は、既存のツールキット
居住空間そのものを埋没させることと
の完成度を高めた点である。たとえば
言えるのではないだろうか。部屋その
寝室のベッドに対応していたテントの
ものを持ち運べるのだとすれば、 「都市
場合、その個の構造は踏襲しつつ、メタ
にひきこもる」という倒錯した状況を
ボリズムからヒントを得たモジュール
構築することすらできることだろう。
の設計思想をとりこむことで、互いに
都市生活に主体的でない市民 – とり
着脱可能な共同住宅をゲリラ的に構築
わけ現代の社会問題にもなっているひ
することが可能になった。また、脱衣所
きこもりにとって、このような状況を
に対応していたカーテンは、枠の角度
構築することは都市へ繰り出す動機と
による要請からふたつの壁面を必要と
なりうる。
していたが、固い枠を半円状に曲げら
以上の仮説を踏まえて、6 人のプロジェ
れる塩ビ製のパイプに切り替えたこと
クトメンバーが 3 班に別れてプロトタ
で、幅広い空間に対応させられるよう
イピングを実施した [ 31 - 33 ] 。
になった。
40 – 都市への戦術的介入|都市に居住空間そのものを埋没させる
二つ目は、一般市民の実践をうながす
ガードレールを用いた椅子の設計図 [ 34 -
べく、ツールキットの制作の難易度を下
37 ] に加え、第四の実践における成果物
げた点である。たとえば、第三の実践に
を Tumblr 上でオープンデータ化する
おけるこたつは、レーザーカッターによ
こ と に し た( http://tacticaldesign.tumblr.
るアルミ蒸着シートの切り出し、接着剤
com/ ) 。公開のプラットフォームとして
の塗布、ステッチの縫製といった一連の
Tumblr を採用した背景には、真に市民
工程に三十時間強の作業時間を必要と
による都市計画を波及させるためには
するものであった。この作業時間の短縮
ギークよりも一般市民を包摂するべき
と、ミシンという身体知によらない制
であるということ、 「リブログ」とい
作を可能にするべく、カッティングシー
う機能によって投稿をスクラップでき
トによる無縫製衣服を検討した。これに
ること、タグ付けに対応していること、
よって、アイロンとカッターさえあれば
グループプログという機能を用いて不
初心者でも服を制作することができる
特定多数の市民がアカウントをシェア
ようになった。
することで、アカウントそのものをプ
–
ラットフォームとして機能させられる
–
ことといった利点があげられる。また、
6 |ツールキットのオープン
既存のプラットフォームの転用という
–
思想にも即していると考えられる。
前 章 で 紹 介 し た PARK( ing )day の よ
公開するデータは主に三つに分けら
うに、オープンソースというかたちで
れる。一つ目は、その作品がどのような
波及に成功しているタクティカル・
形状と機能を持っているかということ
アーバニズムの実践は数多く見られる。
を示す投稿である。具体的には、投稿ひ
また、インターネットを通じて専門家
とつあたりに数枚の写真と 150 W 程度
が 市 民 を 支 援 す る「User- generated
のキャプションがあてがわれている。
Urbanism」[ Bela 2015 : 149]と呼ばれる
二つ目は、作品の詳細と制作方法を示
都市計画のプロセスが、従来のトップ
した pdf 文書である。しかし、Tumblr
ダウン式/ボトムアップ式の括りにお
上にはドキュメントファイルをアップ
さまらない設計手法として評価されて
ロードできないことから、その公開に
いる。インターネットやソーシャルメ
あたってはウェブ上で書類を書籍のよ
ソース化
解決策は、第二章でも述べた本研究の
ディアによってリソースの共有が容易
うに閲覧することができるサービス
になることで、プロジェクトの波及効
「issuu」を転用するにいたった。そして
果が高まっているのである。ことデジ
三つ目は、作品に必要なデータである。
タルファブリケーションの文脈におい
具体的には、3 D プリンタやレーザー
て、これらの潮流はオープンデザイン
カッターの加工に用いる RAW データ
という言葉で表されている。
を圧縮ファイルとして共有する。
我々の実践においては、砂紋掻きと
制作プロセスの記述にあたっては、
41 – 都市への戦術的介入|ツールキットのオープンソース化
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
[31]
[32]
[33]
42 – 都市への戦術的介入|都市に居住空間そのものを埋没させる
– [ 31 ]
電柱を転用するテント。電柱は都市にありふれてい て誰もが容易にアクセス可能であり、強度も優れて いる。鬼怒川の決壊時( 2015 年 9 月 10 日)にも電
柱にしがみつき一命を取り留めた人もおり、非常時 においても支えになり得る人工物である。その高さ と強度をもつ電柱を転用し、非常時にも発見されや すくかつ利用者にやすらぎを与える素材を用いた。
– [ 32 ]
都市の熱源を転用するこたつ。平面充填構造のアル ミ蒸着シートからなる裏地が十分な保温性と柔軟性 を持つため、表地は好みに応じる。ファスナーで連 結するモジュール仕様で、普段は外套として着用で きる。普段着として持ち運ぶことで、都市でのすれ 違いがゲリラ的な団らんに転じる契機となる。
– [ 33 ]
都市で人目を遮るためのカーテンとそれを有意の壁 面に設置するためのキット。カーテンの布地は人目 に触れる外側を都市に埋没することを意図し、ファ ブリックプリンターで柄を出力、プリントした。ま た、即興的にキットを収納すると、バッグとしても 使用できる。
43 – 都市への戦術的介入|都市に居住空間そのものを埋没させる
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
[34]
[35]
[36]
44 – 都市への戦術的介入|都市の居住空間を公開する
– [ 34 ]
都市へテントを持ち出して設置した結果、正四面体 という形状は連結可能であるという示唆を得た。そ こで 3 D プリンタによって骨組みを結ぶ各頂点の
ジョイントを出力し、それぞれの面にテントを拡張 できるようにした。一人のためではなく、複数人の ための共同住宅を設えることで、個人の実践を都市 計画の域に拡張することができる。
– [ 35 ]
実際に都市で団らんを楽しむことで、二つの反省が 生じた。第一に、用いる布が純白では「こたつ」で はなく「ティータイム」にしか見えないということ である。第二に、制作に三十時間強の時間がかかる うえに、ステッチを多用するとなると、初心者によ る再現が難しいということである。これらの反省を 踏まえ、布を一般的なこたつに近いフリースに変更 し、縫製をカッティングシートによる熱圧着で代用 した。
– [ 36 ]
最初のプロトタイプは、骨格の制約によって二つの 壁面が交差する隅を見つける必要があり、設置でき る空間が限られていた。そこで、素材に塩ビ製のパ イプを取り入れることで、骨格そのものを半円状に 曲げる構造を採用することにした。これによって カーテンそのものが立体的にせり出し、一面の壁に も設置することができる。また、布やジョイントと いった部品を取り外し可能にすることで、より多く の状況に対応させることができるようになった。
45 – 都市への戦術的介入|都市の居住空間を公開する
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
[37]
[38] [39]
縫 いしろ
ジ
鉄 パ イプ
1100 mm 1120 mm
Sheet B
46 – 都市への戦術的介入|ツールキットのオープンソース化
640 mm 320 mm
– [ 37 ]
ジョイント
http://tacticaldesign.tumblr.com/ – [ 38 ]
issuu にアップロードした pdf 文書。初心者でも理解 960 mm
できるように、写真と図をベースにした構成になっ ている。
– [ 39 ]
第四の実践におけるテントを、第三角法による正投 影図法を用いて図示したもの。設計図にこのような 図面を適宜織り込むことで、世界中の誰もが同じ構
Daijiro Mizuno Lab | Tactical Design >>> バッグウォーマー | Bag Wormer
Scale = 1/10
造を再現することができるようになる。
47 – 都市への戦術的介入|ツールキットのオープンソース化
Chapter 3
都市への戦術的介入
– Tactical Intrusion into Modern Cities
専門性が必要とされない簡易な工程か
したがって、我々がラボでプロトタイ
つ記述とすることを心がけた。実際の
ピングした成果を実空間/情報環境に
ところ、本研究で設計した作品はデジ
広がるフィールドに委ねるべく、より
タル工作機械さえあれば初心者でも
綿密なデザインリサーチの設計をして
DIY 感覚で制作することができる。
いくことが今後の展望である。
また、設計図をデータとして公開す ることは市民の「かかわりしろ」を広 げることに直結する。というのも、ツー ルキットの詳細は個々の環境に応じて 改変可能であるべきだからである。枯 山水であれば砂の面積や性質によって 刃の形状が変わってくるほか、椅子で あればガードレールのパイプ径や高さ、 座れる人数といった目的は無視できな い。数値の微調整を通じてデザインプ ロセスに参画できるのも、ラップトッ プで編集可能なデータならではの特徴 である。 「暮らしの機能」を持ち出すべく砂紋 掻きと椅子の設計を、 「暮らしの空間」 を持ち出すべくベッド、カーテン、こた つの設計を行ってきた。また、それらの 設計図をオープンデータとして公開す る意義を確認した。 しかし、我々の実践はいまだ個人的 実践の域にとどまっており、市民を巻 き込んだ都市型実践のスケールには展 開できていない。 「都市への権利」の獲 得、そして「共」的空間の生成には、ワー クショップの開催が必要不可欠である。
48 – 都市への戦術的介入|ツールキットのオープンソース化
6 |参考文献 五十音順、アルファベット順
–
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Chapter 4
– English Abstract
Tactical Design: Practices for Commonalities through Interventing into the Modernised Cityscape – – Rebecca Rébillé
–
Chapter 4 English Abstract
– Tactical Design: Practices for Commonalities through Interventing into the Modernised Cityscape
1 | Background
work and play. It is in this context
–
that “Tactical Urbanism” holds a key
It is said that, by 2050, 70% of
to regenerate civic pride as well as the
the world population will reside in
rights to the city.Tactical Urbanism
cities. Accordingly it is forecasted
“creates tactile proposals for change
that economic, environmental,
instead of plans or computer-generated
cultural, political, social, and spatial
ponderings that remain abstract” by
inequalities continue to grow rapidly
using “short-term, low-cost and scalable
with the increase of urban population.
interventions and policies”. Despite
Meanwhile, many begin to realize
its informal character often described
that the notion of “Tactical” approach
as Guerilla tactics, Tactical Urbanism
towards issues as such is suggesting a
never loses “sight of long-term and large
new means to reclaim the dynamism of
scale goals”(Lydon & Garcia 2015).
cities.
–
In Japan, at least, using public spaces
–
tactically is a matter of survival since lifeline can be temporary cut off due
3 | Practice Tactical Design
to natural disasters. Whilst it is easy
–
to criticize top-down urban planning
Tactical approaches are described
approach, one has to consider bottom-
as a new potential, which “could
up urban planning -the citizens’
inform design visions for the
tactical approaches to city making- and
outcomes of contemporary urban
create urban conditions which allow
inequality.”(Gadanho 2014). We are
improvised use of public spaces.
conducting practice-led research on
–
tactical approaches towards urban
–
landscape to reexamine the alternative
2 | Theory Tactics for Modernised Cityscape
– To put it in another way, citizens need to know how to be familiarized themselves with the city they live,
52 – English Abstract
use of places and artifacts in the built environment.
4 | Reference –
GADANHO, P. (2014) Uneven Growth: Tactical Urbanisms For Expanding Megacities . The Museum of Modern
Art. LYDON, M. & GARCIA, A. (2015) TACTICAL URBANISM: Short-term Action for Long-term Change . Island
Press.
– 水野大二郎研究室 『Tactical Design』 発行:2016 年 03 月 03 日 第二刷
– – 編集: 水野大二郎 太田知也 中村健太郎 永良凌 岡本英宜
– デザイン:岡本英宜
– 執筆: 岡本英宜 永良凌 吉岡直人 レビエ・レベッカ 吉井優香 木許宏美
– 発行者: 〒 252 - 0082 神奈川県藤沢市遠藤 5322 慶應義塾大学 水野大二郎研究室
– – – 本書の複写/複製/転載を固く禁ずる。
(c) 2016 Daijiro Mizuno All rights reserved.
– Daijiro Mizuno Laboratory Tactical Design Published on: 3 March 2016 – – Editors: Daijiro Mizuno Tomoya Ohta Kentaro Nakamura Ryo Nagara Hidenori Okamoto – Design: Hidenori Okamoto – Writers: Naoto Yoshioka Ryo Nagara Hidenori Okamoto Rebecca Rébillé Yuka Yoshii Hiromi Kimoto – Publisher:
5322 Endo, Fujisawa, Kanagawa Daijiro Mizuno Laboratory, Keio University – – – No part of this publication may be reproduced. (c) 2015 Daijiro Mizuno All rights reserved.