蟲 の
塔
SDL180077
2001年 東京の自邸にて。
拝啓、6歳の僕へ。
君がこの時見ていた小さな生き物たちの世界は、 今はもう都心では失われてしまいました。 17年後、 君はこの時見ていた景色を取り戻すため、 卒業制作に取り組みました。
疑問 都市から虫が消えていっている。 その些細な変化に気づいている人はどれだけいるだろうか? 人間本位の都市開発により自然は追いやられ虫たちの住処は消え去っていく。 それは本来あるべき生態系の共存関係とはかけ離れた姿。 人間だから、都市だからこそできる、虫との新しい共存の仕方はないだろうか?
2017年 銀座の街路樹にて。
提案 日本一の高密都市、銀座において虫たちと共存する都市型ビルを提案する。 人々の生活空間のスキマに虫の住処を挿入するとともに、 生態系の広がりに呼応して、ビルと街が姿を変えていく。 虫と人は互いに支え合いながら都市における新たな関係性を作り、 塔の成長とともに、銀座は人と虫の都となっていく。
農業昆虫
路地の花壇
建物の隙間の土
人の活動が発する熱
商業活動
人の活動が住処を提供する
都市における人と虫の相互作用 季節の虫
日常生活
虫の活動が与える人への恩恵
都市開発
環境指標
都市の虫
季節の訪れ
作物の受粉
環境指標
都市の人
計画概要
1 都市における人と虫の共存の形を模索する 銀座で虫たちの生態調査を行うことで、 都市において虫たちが見出している人との共存の形と、 それに伴い人が虫から受ける恩恵の在り方を模索する。 観察から得た現象を元に、 人と虫の新たな「共生」の関係性を空間として立ち上げる。
2 ペンシルビルの垂直性を用いた生態系のシンボル化 自然を淘汰する高密な都市開発の産物であるペンシルビルに 虫の住処を挿入していくことで蟲の塔を建てる。 垂直性を持った狭小な敷地に建つボリュームは、 時間変化による生態系の変化に伴い姿を変えながら、 塔としての性質を帯びていき、 名も無きペンシルビルはやがて生態系のシンボルとなる。
3 生態系の変化を可視化する建築 蟲の塔を中心として屋上緑化や水場空間の創出を推進していき、 都市における自然環境を改善していく。 かつて都市部にいた虫や生態系が戻ってくることで、 塔には増加した種の住処となる空間が挿入されていき、 塔の中の空間と人々の活動を変えていく。
敷地
皇居 日比谷公園
銀座は日本で最も都市化した 日比谷公園、皇居、浜離宮という都会 生態系のネットワークを分断するよ 自然を淘汰する高密な都市開
ここに蟲の塔を
た地区の一つでありながら、 都会のオアシスの間に位置している。 ように広がるビルの密集市街地は、 市開発の縮図を表している。
塔を計画する。
浜離宮
敷地選定 銀座の街の特性 1. 林立するペンシルビル
密集するペンシルビル群
2. 人々で賑わう銀座中央通り
高密な都市開発と敷
日本有数の繁華街で
地の細分化により、
ある銀座は流行の発
銀座にはペンシルビ
信地として人々を集
ルが林立している。
めている。
狭小な敷地に建つ垂
中でも銀座中央通り
直性を帯びたビルの
沿いには大規模商業
姿は、自然を淘汰す
施設が並び、休日に
る都市開発の産物で
は歩行者天国が開か
あるといえる。
れ賑わいを見せる。
賑わいを見せる銀座中央通り
都市と生態系の状況から設計対象を選定
敷地の縮小
緑地の消失
横のつながりの消失
緑地の分断
高層化
森林伐採
高密な都市開発
「産物」として生まれたペンシルビル 自然との融合 シンボル性の付与 生態系によるメタボリズム
「結果」として失われた生態系 新しい共存の形 シンボル化 変化を可視化
都市における人と虫の新たな関係性を「建築」によって構築する
企業研究に基づく銀座の昆虫の生息種とその役割 1.農業昆虫
2.季節の虫
3.環境浄化
4.環境指標
セイヨウミツバチ
アオスジアゲハ
エンマコオロギ
アオマツムシ
カネタタキ
ジョロウグモ
シオカラトンボ
セイヨウミツバチ
ナガサキアゲハ
ヤマトシジミ
アブラゼミ
ハラビロカマキリ
ナナホシテントウ
エンマコオロギ
ヤマトシジミ
ツマグロヒョウモン
チャバネセセリ
ナミアゲハ
ツマグロヒョウモン
アオスジアゲハ
アシナガバチ
ミミズ
ナガサキアゲハ
ナミアゲハ
銀 座
資生堂による生きもの調査
銀 座 周 辺
資生堂による生態調査を基に、 ハナムグリ
モンキチョウ
アキアカネ
ツクツクボウシ
モンシロチョウ
ジバチ
アキアカネ
イチモンジセセリ
銀座とその周辺の緑地に生息す る昆虫種の中から都市において 重要な役割を持つものを抽出し
モンシロチョウ
オオスカシバ
ミンミンゼミ
ベニシジミ
モンキチョウ
ハナムグリ
モンシロチョウ
カテゴライズした。
ギンヤンマ
銀座周辺に生息する種の行動範囲から敷地を選定
皇居
皇居
銀座の中で見つかる 15の屋上緑地
1km
種類: モンシロチョウ 住処:
日比谷公園
種類:
500m
日当たりの良い緑地 1km
都市の代表的な昆虫であっ たが、ビル群の林立による 陰地の増加によりその数を 減らした。良好な緑地空間
日比谷公園
住処: 日比谷公園、浜離宮
飛行距離: 生息域から1km 備考:
アキアカネ
屋上に確認される 水場空間
備考: 屋上緑地の分布 から想定される 生息域の広がり
1km
飛行距離: 1日1km程度 都市型トンボの代表格。ト ンボ類は水場を生息地とし ており、その生息分布は良 好な水場の有無によって偏
浜離宮庭園
〈分布図〉S=1/xxx
の指標となる農業昆虫。
浜離宮庭園
りを見せる。
〈分布図〉S=1/xxx
銀座にかつて生息していたモンシロチョ ウとアキアカネの2種の行動範囲を、銀 座の自然環境を加味して現在の生息地で ある日比谷公園、浜離宮を中心として測 定した。 それぞれの最長飛行距離は銀座6丁目の 中央通り沿いで交わることがわかったた め、対象敷地はGINZA SIXの向かいに位 置する現在は空き地となっているペンシ ルビルの跡地とした。
GINZA
配置図 S=1/1250 モンシロチョウの行動範囲
アキアカネの行動範囲
対象敷地 : 銀座6丁目中央通り
計画 都市における虫の住まい方から建築を考える
生態調査
都市の人
都市の虫
敷地選定
人と虫の相互作用
高密都市における虫の生態から人と虫の見えざる共生関係を明らかにする
人の目線
虫の行動範囲から敷地を選定
虫の目線
虫の住処の挿入 垂直性を塔に転用
都市開発の産物としての ペンシルビル
蟲の塔の建設
調査より得られた 虫の住処となる空間
都市に住まう虫たちは人々の生活に寄り添
都市の中の自然環境の改善
う形で自らの住処を見出している。
都市に戻る虫たち
生態調査を行い、都市において虫たちの住 処として機能している空間を、都市開発の 「産物」として建てられたペンシルビルの 「垂直性」の中に挿入していき、都市にお ける新たな人と虫の共生のシンボルとなる
虫の住処の付加
「蟲の塔」を建てる。
生態系の変化の可視化
消えゆく虫という些細な変化に気づかなか った人々は、この塔を介して生態系の「増 減」を認識し、それに伴って塔の中の空間
人の気づかない小さな変化
増えた種の住処となる空間 名も無きペンシルビルは生態系の拠点として シンボル性を帯びていく
も変化していく。 塔は人々の自然への関心を喚起し、都市に おける自然環境の改善を促していく。
都市における人と虫の新しい共存の形
1.都市養蜂
2.都市農業
3.自然教育
4.文化
5.都市生産
虫が人に与える恩恵と人が無意識に作り出している虫の住処の相互作用を形にする
人が無意識に作り出している虫の住処
6.自然との暮らし
虫年表を作成し生態系の動向を予測する 文献の記述から都市と銀座における虫
昆虫の存在量の世界的指標
1.5
1.0
0.5
たちの動向を年表にしていく。
モ ン シ ロ チ ョ ウ が 都 市 か ら 姿 を 消 す
2.0
甲五 虫輪 類後 がの 孤都 立市 林開 で発 のに みよ 生り 息 す る よ う に な る
セ ミ の 生 息 種 数 が 激 減 す る
最 後 に 確 認 さ れ る
樹 木 の 伐 採 に よ り 都 市 に お け る
銀 座 で ア キ ア カ ネ の 大 群 が
都 市 養 蜂 が ビ ル の 屋 上 で 始 ま る
銀 座 で ミ ツ バ チ を 用 い た 蟲 の 塔 の 建 設
銀 座 に モ ン シ ロ チ ョ ウ が 戻 る
銀 座 に ア キ ア カ ネ が 戻 る
セ ミ が 銀 座 で 繁 殖 を 始 め る
銀 座 で ハ ナ ム グ リ が 確 認 さ れ る
銀 座 で カ ブ ト ム シ が 発 見 さ れ る
虫の絶滅
0 1960年
1970年
1980年
1990年
2000年
2010年
2020年
2030年
2040年
2050年
2060年
西暦(年)
都市の自然環境を改善していくことで生態系を呼び戻す 2025
2030
2035
2040
2050
銀座で確認された未利用の屋上空間
1年間の調査で見つかった286個、計55013 ㎡の未利用の屋上空間に塔の建設と同時に 屋上緑化や水場空間を創出していく。屋上 づたいに生態系が都市に戻ると同時に、蟲 の塔はその変化を可視化するように姿を変
都市の虫が戻ってくることで変わる街の風景 銀座にアキアカネが戻ってきたら…
銀座にモンシロチョウが戻ってきたら…
銀座にセミが戻ってきたら…
アキアカネの大群が大飛行をしに都市に戻ってくる。空
日なたを好む農業昆虫であるモンシロチョウが都市に戻
セミの鳴き声を聞く文化は高密都市では失われた日本独
を埋め尽くすトンボの大群が銀座の空を赤く染め上げ、
ることで、農作物の生産効率が格段に上昇する。銀座の
自の夏の風物詩である。せわしなく鳴くセミたちは、都
街の人々に秋の訪れを告げる。
ビルでは屋上農園がスタンダード化し、都市における新
市において人々が忘れかけていた過ぎ去っていく季節へ
塔の頭上には水場空間が増築され、9月になると水場空間
しい生産の在り方を築いていく。
は無数のアキアカネで赤く染め上がる。
塔はレタスの垂直農場で埋め尽くされていく。
の慕情を再び思い起こさせる。 塔には高木を植えるためのコンテナが挿入される
生態調査 虫の住処となる都市の空間を記述していく
室外機の前に咲くタンポポ
敷きつめたレンガの隙間から生える小さな草。
手水舎の水を飲むミツバチ。
室外機の前だけ草花が生える。
@銀座七丁目、オフィスビル
人工物のわずかなスキマに潜む都市生態。
近くには養蜂所があるため、ミツバチがたくさんいる。
@銀座八丁目、飲食店街
地下鉄の排熱口で暖をとる鳩。
日比谷公園と浜離宮に挟まれている銀座にはトンボ
中央通り沿いの花壇で花に群がるミツバチたち。
階段の段差に溜まる落ち葉からはコオロギの鳴き声
周囲のレンガやコンクリートの境目からは草花が生える。
が数多く飛来。数少ない水場を生息域にしている。
人の賑わいの中にも生態系は潜んでいる。
ちょっとした段差や壁が自然の堆積物を作る。
路地的スキマの壁沿いに盛り上がった土。虫たちの
落ち葉の山に潜むカネタタキ。建築などの
住宅街での何気ないあふれ出しも虫たちの住処。
中央通りの街路樹を注意深く観察すると、
住処が形成され、どこからか虫の鳴き声が聞こえる…
障壁によってできる自然の堆積物が住処になっている。
@東銀座、住宅街
蛹の抜け殻が見つかった。
銀座のような都市部でも屋上庭園には虫が多く集まる。
養蜂所を中心としたミツバチの活動が屋上庭園では
アオマツムシは銀座の街路樹に棲みつく外来種。
路地に置かれた植木鉢などのあふれ出しにも虫は集
@ギンザシックス、屋上庭園
盛んに見られた。ラベンダーが好物のようだ。
都市環境に適応し、棲みつくことに成功した種。
まる。人の日常と虫の日常が交錯する。
中央通りの街路樹の周りを舞うアゲハ蝶。
昭和通りの街路樹のヘリで獲物を捕食するかまきり。
ほのかに暖かい、マンホールの周囲も住処になる。
室外機の熱で咲く草花。どこからともなく現れる蝶。
都市生態の中にも食物連鎖がある。
@東銀座、二丁目付近
@銀座七丁目、路地付近
飲食店街から発する厨房の熱で周囲は少し暖かい。
花に集まる虫は作物の受粉を媒介する。
人が放置した花壇や植栽が建築に絡みつきながら増殖。
路地のような、スキマのような空間に誘い込まれる蝶。
人の活動で発する熱も生態系の拠り所。
@銀座三越、屋上農園
生態系の格好の住処を作り上げている。
花壇や植木鉢が虫の住処を作る。
咲き始めた通り沿いの街路樹の花に群がる虫たち。
街灯のポールで羽化するセミに遭遇した。
壁に沿って溜まる落ち葉や自然発生的に生える草花が
ミツバチが道路脇の花壇に群がっていた。
@銀座昭和通り、街路樹
銀座のような都市部でも神秘的な瞬間を見ることができる
生態系の住処を提供している。
人のための植栽が虫の住処に。
銀座の屋上では養蜂が行われている。
屋上緑地の笹の葉の上で交尾をするヤマトシジミ。
リーリーリー、と街路樹から虫の音が。姿は見えない。
路地に置かれた手水舎の水を飲むアゲハ蝶。
人と虫が共生する新しい都市生産手法。
@銀座歌舞伎座、屋上庭園
@銀座八丁目、飲み屋街付近
あふれ出しが虫の住処を形成する。
設計手法 生態調査を元に都市における虫の住処の空間の特徴を分析する
スキマ空間
1.路地空間
自然物
誘発
2.建物の隙間
余剰空間
あふれ出し
街路樹
通り沿いの花壇
土溜まり
屋上農地
水場空間
1.屋上空間
計画
2.建物の周囲
触媒 生態調査より、銀座では建物の隙間にでき るスキマ空間と建物が建つことでできるそ の余剰空間に自然物が挿入され、加えて人 の活動によって排出される熱などが触媒と 地下鉄の排熱
室外機
下水の排熱
人の活動
なってその空間に虫の住処が形成されてい ることがわかった。
分析から得られた空間の特徴からダイアグラムを作成し建築を立ち上げる 1.配置 自然を感じる動線空間
屋上緑化や都市農地
路地のような空間
路地のような空間
小さなボリュームを配置することで 多様なスキマ空間を創出
虫しか入れない通路
2.重ね合わせ 虫しか入れない通路
自然を感じる動線空間
ボリュームの重ね合わせにより 余剰空間を作り、自然を挿入
屋上緑化や都市農地
虫の住処と 人の活動空間が 様々な交わりを見せる
プログラム 都市における人と虫の共生関係を図式化する
農業昆虫
路地の花壇
建物の隙間の土
人の活動が発する熱
商業活動
人の活動が住処を提供する
都市における人と虫の相互作用 季節の虫
日常生活
虫の活動が与える人への恩恵
生態調査より、都市においては人の活 動が虫の住処を形成し、虫の活動は人 に多くの恩恵をもたらしていることが
環境指標
都市の虫
わかった。この共生関係を元に塔の中
都市開発 季節の訪れ
作物の受粉
環境指標
で営まれるプログラムを決定し、人と
都市の人
虫の新たな関係性を構築する。
共生関係を元にプログラムを決定し都市における人と虫の新たな関係性を構築する
養蜂所
煙突
ミツバチを用いた新しい都市生産手法
住居
ハチの習性を利用した養蜂煙突
自然と都市をつなぐ養蜂のサイクル
都市の自然と暮らす新しいライフスタイル
養蜂所
共同農地
住居1
都市型の自然との共生の在り方
虫の活動が作物の生産効率を上げる
住居2
保育所
農業効率を上げる虫の活動
虫との触れ合いで育つ自然への意識
共同農地 保育所
オフィス
自然との触れ合いによる都市の教育
働くオフィスワーカーに虫の声が癒しを与える
飲食店
オフィス
虫の声を聞く日本独自の文化
生産された蜂蜜や作物を街に還元する 飲食店
都市生産と結びつく虫の営み
虫の営みと 人の活動が 新たな関係性を構築する
トイレ
エレベーター
カフェ
ガラス越しに人と虫は共存
ピロティ
街路樹を引き込むピロティ空間 1階 GL + 1200
レストラン
厨房からの排熱は虫の住処を形成 テラス席
テラス席
虫の声を楽しむテラス席 2階 GL + 4200
平面図 1:150 0
3
詳細平面図 1:30 6
15 m
0
0.5
1
3 m
虫と人を引き込むピロティ空間
リーリーリー…
リーリーリー…
マツムシの声を聞きながら食事をする
スジグロシロチョウを陰地で見つける
コロコロリー…
人の入れない隙間にいるコオロギの声を聞く
コロコロリー…
入り口 スキマから聞こえるコオロギの鳴き声
オフィス
休憩所
徐々に崩れる土壁から植物が生える
5階 GL + 17200
保育所
管理室
窓を開けると虫の住処が現れる 保育所
遊び場
部屋と部屋の間にある庭のような空間 6階 GL + 20200
詳細平面図 1:30 0
0.5
1
3 m
平面図 1:150 0
3
6
15 m
住宅1
庭
ボリュームの間に現れる庭のような空間
共同農地
虫が作物の受粉を支える共同農地 7階 GL + 22200
住宅2
生活動線に現れる虫の住処 住宅1
倉庫
共同農地
虫の住処となる路地へのあふれ出し 8階 GL + 25200
平面図 1:150 0
3
詳細平面図 1:30 6
15 m
0
0.5
1
3 m
開けた共同農地に飛んでくるアゲハチョウ
住宅の間の庭のような空間も虫の住処
ハチの垂直に飛び上がる習性を生かした養蜂煙突
活動するミツバチと養蜂所で働く人
住宅4
個人農地
住宅の中にある個人農地
養蜂所管理室
吹き抜けのある庭のような空間
11階 GL + 34200
養蜂所煙突
養蜂所
養蜂所の活動を見学
養蜂見学所 蜂蜜貯蔵庫
研究農地
研究員がミツバチの活動量を測定 12階 GL + 37200
詳細平面図 1:30 0
0.5
1
3 m
平面図 1:150 0
3
6
15 m
自然物を用いた壁や床のテクスチャ
時間
土や泥といった自然物を床面や壁面に用いることで、土壌を必要
時が経つにつれて、床や壁は次第にひび割れていき、その割れ目からは植物が芽を出し、新たな種の住処
とする昆虫や土中に生息する昆虫の住処を作る。
をも生み出していく。
塔の中で営まれる人と虫の関わり合い
大きな開口に突然現れる虫の住処
隙間からは虫の声が聞こえる
人と虫は動線を共有する
共存する生産の空間と生活の空間。人は虫に作物を育ててもらう一方で虫に住処を提供する。
人と虫は同じ空間を共有しながら、表裏一体の関係で共存していく
経年変化 生態系の住処としての「屋上空間」の可能性
ギンザシックス
銀座三越
歌舞伎座
銀座松屋
三輪神社
春から夏にかけて、銀座 の中の5つのアクセス可
目視法による種数計測
能な屋上庭園において、 生息する昆虫の種数を目 視法により計測した。
photo
計測の結果、計15種の昆 虫種が銀座の屋上庭園に 定着し、生息しているこ
銀座の中で見つかる屋上庭園の総数
とがわかった。
生息する計15の昆虫の種
面積種数関係
S=
S …昆虫種の数
c …環境指数
A …調査地の総面積
z …定数(0.2)
計算過程
銀座の中では計286個、
調査した5つの屋上庭園の総面積(A) … 6487㎡ 採集した昆虫種の総数(S)
… 15
定数(z)
… 0.2
計55013㎡の未利用の屋
環境指数 (c) … 2.59
上空間が見つかった。 面積種数関係の公式よ り、これらを庭園化した
未利用の屋上空間の可能性を算出
場合の銀座における生態
確認された未利用の屋上空間
未利用の屋上空間の総面積
… 55013㎡
算出した銀座の環境指数(c)
… 2.59
定数(z)
… 0.2
系の増減を予測し、屋上
種数(S)
…8
空間の生態系への貢献可 能性を示す。
全ての未利用の屋上空間が緑化された場合 銀座における環境問題が改善 蟲の塔を中心に銀座の屋
1. 緑地の増加
2. ヒートアイランドの緩和
3. 生態系の回復
上空間の環境を改善して いくことで、都市の環境 問題が改善されていく。 その結果として、銀座に 生態系が戻ることで塔の 姿が変化していき、人々
蟲の塔を中心とした屋上空間の環境改善
銀座の緑被率が6.4%
夏場の平均気温が3℃
計8種の昆虫種が
上昇する
減少する
銀座に戻る
虫年表を元に都市に戻る虫を予測する
銀 座 に モ ン シ ロ チ ョ ウ が 戻 る
昆虫の存在量の世界的指標
1.5
1.0
0.5
2030年 銀座に戻る虫 : アキアカネ 屋上庭園の総面積 : 10000㎡ 増加する種数 : 1
逆算による予測
2.0
蟲 の 塔 の 建 設
銀 座 に ア キ ア カ ネ が 戻 る
セ ミ が 銀 座 で 繁 殖 を 始 め る
銀 座 で ハ ナ ム グ リ が 確 認 さ れ る
銀 座 で カ ブ ト ム シ が 発 見 さ れ る
虫の絶滅 0 2010年
2020年
2030年
2040年 西暦(年)
2050年
2060年
2040年 銀座に戻る虫 : モンシロチョウ 屋上庭園の総面積 : 20000㎡ 増加する種数 : 3
2050年 銀座に戻る虫 : セミ 屋上庭園の総面積 : 30000㎡ 増加する種数 : 5
2055年 銀座に戻る虫 : ハナムグリ 屋上庭園の総面積 : 40000㎡ 増加する種数 : 7
は小さな変化を建築を通 して認識していく。
都市に戻る虫の住処を空間化し塔に挿入していく
自然の空間 深さ10〜20cmの水場
ア キ ア カ ネ の 場 合
置換 10〜20cm
足場となる水草
水盤のような水場空間 アキアカネ等のトンボ類は良好な水場空間に生息する
水場空間を水盤を持ったスラブとして塔の最上部に増築する
キャベツの垂直農場
日当たりの良い場所
モ ン シ ロ チ ョ ウ の 場 合
置換・圧縮
アブラナ科の植物
モンシロチョウは日なたに育つアブラナ科の花に集まる
ファサードのボイドにキャベツの垂直農場を付加していく
筒のようなコンテナ空間
セ ミ の 場 合
深さ50〜100cmの土壌
圧縮 50〜100cm
住処となる高木 高木を植える深い土壌 セミは深い土壌に育つ高木や根を中心に生息する
深い土壌をもつ円筒のコンテナを柱を中心に改築し挿入する
ツタ植物が育つ藤棚
ハ ナ ム グ リ の 場 合
農地や畑
農地や畑
崩された土壁
置換・圧縮
新しく作られた土壌
ハナムグリは土壌のある畑などに主に生息する
土壁を崩すことで土壌を作り藤棚を挿入することで畑を作り出す
2030年
2040年
水場空間
垂直農場
塔を滴る水
銀座にアキアカネが戻る。塔には水場空間が増築される。
銀座にモンシロチョウが戻る。垂直農場が付加されていく。
2050年
2055年
広がる屋上緑地
広がる都市農地
コンバージョン
コンテナ
セミが銀座で繁殖する。樹木を植えるコンテナが挿入される。
銀座でハナムグリが確認される。農地へのコンバージョンを行う。
虫の住処を挿入することで変化する空間とプログラム
2060年断面模型
都市の森林のような樹木盤
増築された水場空間 挿入される筒状のコンテナ
屋上緑化 延長される藤棚
広がりを見せる屋上農地 土壁の減築による改築
挿入される垂直農場
2060年全体模型
垂直農場 モンシロチョウのひなた に集まる習性から、ファ サードには垂直農場が導 入され都市の生産効率を 上昇させる。 都市の新たなファサード のあり方。
円筒コンテナ1
セミの斜め上方に飛び上がる習性から、 四方に開口を持った円筒コンテナが塔に 挿入される。 底面には60〜100cm程度深さのある土壌 が入れられ、セミや森林の生物の住処と なる高木が塔の中に植えられていく。 円筒は塔の中に吹き抜け空間を新たに作 っていく。
水場空間 アキアカネの平坦で 良好な水場空間を好 む習性から、塔の上 には水盤のような空 間が増築される。 秋になると水盤には アキアカネが集ま り、秋の空を幻想的 に赤く染め上げる。 都市における新たな くつろぎの空間とな る。
円筒コンテナ2
庭になる空間
吹き抜けのある動線
庭になる空間
コンテナは吹き抜けを塔の中に作り、空間を変えていく
コンテナを貫く階段
改築による屋内農地
畑に集まる農業昆虫の代表格であるハナムグリが都市に戻ることで、作物の生産効率を上げるために塔の中の土壁 は壊され新たな土壌となって床を埋め尽くす。 新たに生まれた土壌の上にはハナムグリが好むツタ植物の発育を促す藤棚が挿入され、あらたな空間を作りだして いく。
僕の50年後のささやかな夢、 それは銀座でカブトムシを見つけることです。