「茶袋」 の歴史
吉村紙業株式会社の取扱商品の歴史は、 日本茶の包材、特に茶袋の歴史に重なります。 技術の進歩が流通を変えた、という歴史でもあります。
紙茶袋 茶袋とは、いうまでもなくお茶の葉っぱを入れる袋です。 日本茶は、専門店に行って買うのが普通でした。 「この煎茶を 100 グラムください」 とお店で注文すると、店の人が大きな茶箱から注文のお茶の葉を取 り出して袋に詰めてくれました。 この袋が「茶袋」で、最初は紙製だったのです。 写真は、吉村紙業が 1950 年代から 1960 年代に製造していた紙茶 袋です。 手作業と機械加工の組み合わせで作っていました。 お店の人がお茶の葉を詰め、上の方を元結 ( もとゆい ) と呼ばれる ひもで縛ってお客様にお渡しするものです。
ポリ掛け茶袋 お茶の葉にとって大切なのは保存性です。 日本の家庭には居間などに必ず茶筒があって、来客時や食後のくつ ろぎの時間に茶筒から少量お茶の葉を取り出し、急須を使ってみん なでお茶をいただいていました。茶筒には保存性がありました。 皆、お茶屋さんでお茶の葉を買ってくると、茶袋から茶筒に入れ替 えて保存し、使っていました。 したがって当時の紙茶袋はお茶屋さんから家に運ぶだけの袋でし た。紙茶袋には保存性がありませんから。 しかし、吉村紙業は茶袋に対する保存性の付加を徐々に考えていま した。紙茶袋の上にポリエチレンを掛けたのがその第一ステップで す。帰り道で雨に降られても、これなら中のお茶は濡れません。
ポリエチレン茶袋 最初のポリエチレン掛け茶袋は手作業だったので、生産効率は低い ものでした。そして吉村紙業は、すぐに本格的なポリエチレン茶袋 を開発したのです。気密性を飛躍的に高めるために紙の代わりにポ リエチレンを使う。この発想は、吉村紙業二代目の代表、吉村正雄 が考え出したものです。 気密性はぐんと高まりましたが、現在の茶袋に比べると完成度はま だまだでした。 印刷技術も未発達で、この頃は二色刷りか多くても三色刷り。 保存性は少し高まったものの、まだ「店から家に運ぶ袋」の域を出 ていません。
セロコート ガゼット袋 ポリエチレン茶袋の気密性をさらに一歩進めたのが、セロコートの 袋です。セロコートとは、紙とセロハンを貼り合わせた材質の茶袋 です。この新材質によって紐で縛るのではなく口を合わせて閉じる 機能(ヒートシール)ができました。 この頃になると店頭陳列を意識し、デザインも豊富になりました。 ちなみに、真ん中にある緑の袋は今も既製品として生き残っていま す。
セロコート 角底袋 店頭陳列をさらに意識して一歩進めたのが、角底のセロコート袋で す。底を広くし、自立できるようにしたのです。 気密性も高いのでお茶の葉を入れたまま店頭で販売することができ ます。 ここに至って茶袋は「運ぶ」だけではなく「陳列」という役目を果 たすことになりました。
アルミ上質紙袋 お茶の葉を入れて陳列するようになると、中身の品質維持がより重 要になります。具体的には、袋に遮光性、保香性、防湿性などの機 能を付加しなければなりません。 そこで次に考え出されたのが紙にアルミニウム箔をかませるアルミ 上質紙袋です。アルミを使うという新たな材質開発により、特に遮 光性が飛躍的に高まりました。 ただ、ここまでは写真印刷の技術が未成熟ゆえデザインの幅は限ら れていました。 だからこそ、柔軟な発想と工夫で斬新なデザインが生まれました。
平袋の誕生 1960 年代後半の高度成長期に入ってから、お茶はよく売れました。 吉村紙業にとっても大きな成長期、その頃に生まれたのが「平袋」 です。 平袋は、厚みがないかわりに幅が広いためお茶の葉を入れやすいの が特徴です。 材質はともかく、形態としては現在も多く使われています。 この平袋は陳列用にも適していますが、当時はお店で茶箱からお茶 の葉を詰める時に入れやすいという評判で広がりました。
写真印刷の登場 平袋が初めて市場に出回った当初は、まだ写真印刷はありませんで した。しかし、高度成長期は印刷技術をも急速に発展させ、写真印 刷が可能になりました。 吉村紙業もすぐにこの技術を取り入れ、茶畑の写真などを袋にデザ インしたのです。 ただ、カラーの写真印刷の技術は未熟で粗いものでした。 新茶のシーズンには茶畑の写真が最適だとして選んだものの色的に はまだまだ不十分です。
アルミ袋の登場 現在の茶袋は、アルミの平袋が主流ですが、初めて登場したのは 1970 年代の初めです。 吉村紙業では、1960 年代半ばにアルミ箔と紙を使った袋を開発し ていますが、紙をやめて完全密封できるアルミにしたのは静岡工場 を建設した前後のことです。 写真は吉村紙業が製作した初めてのアルミ袋、写真印刷がまだ技術 的に不十分なためイラストなどを使ってデザインしています。 カラー印刷の技術はだいぶ高度化しつつあり、微妙な色も表現でき るようになりました。
高度な写真印刷の袋誕生 吉村紙業の静岡工場が順調に稼働し始めた頃には、写真印刷の技術 もだいぶ進歩しました。 写真は当時のアルミ平袋ですが、色も実際の色に近くなり、新茶の 香りが漂うような茶袋になりました。 茶袋は「陳列」という役割を一歩進めて、 「魅せる」役割を持つよ うになったのです。 一番左にある「水出し煎茶」用の茶袋ですが、茶業界において水出 しのお茶がこの頃から開発されていたというのは注目に値します。
お茶の流通革命 茶袋がアルミ製になったことで茶業界に大き な変化が生まれました。アルミ茶袋はそれまで の茶袋とは保存性が格段に違います。遮光性や 気密性、保香性、防湿性が飛躍的に上がったの です。このことによりお茶の葉の品質保証期間 がグ~ンと伸びました。 すると、お茶の流通も変わって来ました。そ れまでお茶の葉は、生産地で茶箱に入れ、消費 地に運んでいました。消費地のお茶屋さんが店 頭で茶箱から茶袋に入れてお客様にお渡しする という流れです。しかし、茶袋の保存性が格段 に上がり、また高速道路網が発達したことによっ て、生産地で袋詰めして消費地に運ぶという流 通の変化が起こりました。お茶屋さんは袋のま ま仕入れ、袋のまま販売することができるよう になったのです。 「茶流通は川上から川下へ」 パッケージが中身の流通を大きく変えてし まった典型的なケースといえます。
スタンドチャック袋 近年、需要が出てきたのがアルミ製のスタンドチャック袋です。 吉村紙業ではこのタイプの茶袋を 30 年以上前に採用しました。 しかし、早すぎたのか当時はあまり需要が芽生えませんでした。 袋のイメージが工業製品的な雰囲気で、当時としてはお茶のイメー ジとマッチしていなかったのかもしれません。
後加工用の茶袋 1990 年代以降は、材質面ではアルミ製の茶袋が全盛になり、消費 者が商品を選ぶ際に袋のデザインが大きな影響を与えるようになり ます。その結果、お茶屋さんはデザイン力によって袋を選ぶように なりました。 吉村紙業が工夫したのは、セミオーダーメイドのデザインです。 基本デザインを印刷した袋にそれぞれお茶屋さんのご注文に応じた 刷込と呼ばれる後加工印刷を施してオリジナルの茶袋にするもので す。 ①がご注文前の後加工前の袋。②がご注文に応じて商品名などの名 入れをした後加工後の茶袋です。
①
②
クラフト茶袋 少し変わったところでは、クラフト紙を使った茶袋があります。 クラフト紙の内側にはアルミ箔を貼ってあり、 保存性は普通のアルミ茶袋と変わりません。 無地のクラフト袋にシールを貼ったり、印刷をしたりで自由にオリ ジナルの袋を作ることもできます。
後加工の色も多彩に クラフト紙の後加工は、最初は墨一色でしたが、すぐに多彩な色の 刷り込みができるようになりました。 カラー印刷ではありませんが、茶畑や富士山など好みの写真を好み の色で後加工印刷をし、オリジナルの茶袋を作ることができるので す。 小ロットの注文に対応できるので、この茶袋も好評でした。
量販店用の茶袋 2000 年代に入ると、写真技術や製袋技術などが多様化かつ高度化 し、茶袋のデザインも形態も多様になってきました。 写真は量販店用の茶袋で、吉村紙業が既製品として作り込み、販売 しているものです。
四季折々の茶袋 春用、夏用など四季それぞれのイメージをデザイン化した茶袋も好 評を博しています。 右の四つの茶袋がそれで、微妙な色とデザインの違いで季節感を醸 し出しています。 もちろん新茶の季節には新茶用に色とデザインを作り込んで提供し ています。 これは主に専門店でお使いいただいています。
袋の形態も多様化 袋の形態も多彩になってきました。 右上の三点は、水出し用のお茶の葉を入れるチャック付きのスタン ドパックです。 保存性と使い勝手の良さを工夫しています。 購入されたお客様が袋のままリビングのどこかに置いて使い続ける ことができます。 後列一番左の茶袋は、 チャック付きのスタンドパックですが、チャッ クの上はヒートシールになっており、底から内容物を自動充填でき る形状です。お茶屋さんが詰めやすく、また購入されたお客様も使 いやすいという工夫をしています。
小ロットのオリジナル茶袋 既製品茶袋には、一つ問題がありました。 別々の店で同じデザインの茶袋が異なる価格で売られるといった ケースです。 吉村紙業がこの問題を解決するために編み出したのが、小ロットで フルオリジナルをオンデマンド印刷を使って提供できる「エスプリ」 です。 版代不要で、自由にデザインを変えることができるフルオリジナル の茶袋は、茶袋ナンバーワン企業の自負から生み出された最先端の 茶袋といえましょう。
YOSHIMURA PACKAGING
茶袋の役割変遷 茶袋の役割はこんなふうに変わってきました。
入 れ る
お茶葉を茶箱から取り出して入れるための袋
↓ 運
ぶ
お茶葉をお店から家に運ぶための袋
↓ 陳列する
お茶葉を入れて店頭に陳列するための袋
↓ 保存する
購入したお茶葉を使用する時まで そのまま入れておくための袋
↓ 魅 せ る
お茶葉をより美味しく、魅力的に感じさせるための袋
↓ 伝 え る
お茶の魅力やお茶葉の産地など情報を伝えるための袋
↓ 伝 わ る
生活の中でお茶を淹れ、 飲むことの魅力が自然に伝わるための袋
吉村紙業は、人々のより素敵なティータイムを 演出しています。